JP2009270682A - 駆動部支持用軸受 - Google Patents

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Abstract

【課題】駆動部潤滑用オイル中へ流出してもオイルポンプの目詰まりを起こすことがないグリースを封入した駆動部支持用軸受を提供する。
【解決手段】鉱油を主成分とする駆動部潤滑用オイルを貯蔵したケーシング内に組み込まれた駆動部の軸を支持し、該潤滑用オイルと接触する環境下で使用される駆動部支持用軸受であって、該駆動部支持用軸受1は、内部にグリース7が封入されてなり、上記グリース7は、該グリースを 0.075〜0.15 体積%含む駆動部潤滑用オイルとの混合物において、JIS K2518に規定する泡立ち試験での泡安定度が 0 ml となるグリースである。
【選択図】図1

Description

本発明は駆動部潤滑用オイル中で使用する軸受、例えばトランスミッション(MT、AT、CVT)、デファレンシャル、トランスファー等の各駆動軸の支持軸受として使用される駆動部支持用軸受に関する。
トランスミッション(CVT含む)等の各軸の支持軸受として転がり軸受が使用されているが、異物浸入による軸受破損防止して、ユニットの信頼性を向上させる目的から接触ゴムシール付きの軸受が多用されるようになってきている(例えば、特許文献1参照)。軸受が開放型の場合、ミッション内に充填されたオイルで潤滑可能であるが、シール付きの軸受の場合、オイルが軸受内に浸入してくるまでは、予め軸受内部に封入したグリースで潤滑を行なうことになる。
従来、例えば、図2に示すようなシール付き転がり軸受を組み込んだ自動車用変速機が知られている(特許文献2参照)。図2において、自動車用変速機は潤滑油(ミッションオイル)18を貯蔵するケーシング15内に相対回転可能で、同心に配置された入力軸17aと、出力軸17cとを有し、入力軸17aから入力された駆動力は、これら入出力軸17a、17cと平行に配置された伝達軸17bを介して出力軸17cに伝達される。ミッションオイルは図示しないオイルポンプによりミッション内を循環している。これら入力軸17a、出力軸17cおよび伝達軸17bはそれぞれシール付き転がり軸受11、11により、回転自在に支持されている。シール付き転がり軸受11、11は、内輪12および外輪13と、この内輪12および外輪13間に介在する複数の転動体14と、内輪12および外輪13間の隙間の開口を覆うシール部材16とを備え、転動体14の周囲にグリースを封入してなる。
シール部材16で密封しているとはいえ、トランスミッション内にオイルは、図2のように軸受11に浸る程度入っていることや、このシール部材16は異物侵入防止に主眼をおいており、流体の浸入を止める機能を持たせていないことから、シール部材16のすきまからオイルは容易に軸受内部に浸入する。
軸受内部に封入されているグリースは、オイルの侵入と共に徐々に軸受外部に流出する。このグリースとミッションオイルとの親和性が悪いとグリースとミッションオイルが混じり合わず、ミッションオイル中に流出したグリースが浮遊した状態になってしまう。その結果、浮遊したグリースはミッション内を循環しオイルポンプに到達すると、オイルよりも高粘度のため、オイルポンプの目詰まりを起こすなどの不具合が懸念される。
特開2002−327761号公報 米国特許第4309916号公報
本発明はこのような問題に対処するためになされたものであり、駆動部潤滑用オイル中へ流出しても該オイルの循環に支障が生じることがないグリースを封入した駆動部支持用軸受を提供することを目的とする。
本発明の駆動部支持用軸受は、鉱油を主成分とする駆動部潤滑用オイルを貯蔵したケーシング内に組み込まれた駆動部の軸を支持し、該駆動部潤滑用オイルと接触する環境下で使用される駆動部支持用軸受であって、該駆動部支持用軸受は、内部にグリースが封入されてなり、上記グリースは、上記駆動部潤滑用オイルとの混合物において、JIS K2518に規定する泡立ち試験での泡安定度が 0 ml となるグリースであることを特徴とする。
また、上記泡立ち試験に供する上記混合物において、上記グリースは 0.075〜0.15 体積%含まれることを特徴とする。
上記駆動部支持用軸受の内部に封入される上記グリースの量は、該グリースの全量と、上記ケーシング内の上記駆動部潤滑用オイル全量との混合物において、JIS K2518に規定する泡立ち試験での泡安定度が 0 ml となる量であることを特徴とする。
上記グリースの基油は、炭化水素基を有することを特徴とする。特に上記グリースの基油は、鉱油、合成炭化水素油、エステル油、ポリフェニルエーテル油、およびエーテル油から選ばれた少なくとも一つであることを特徴とする。
上記グリースの増ちょう剤は、炭化水素基を有することを特徴とする。特に上記増ちょう剤は、ウレア系化合物であることを特徴とする。
上記グリース中に占める前記基油の含有率が 70 体積%以上であることを特徴とする。
本発明の駆動部支持用軸受は、鉱油を主成分とする該駆動部潤滑用オイルと接触する環境下で使用され、内部にグリースが封入されてなり、このグリースは、該グリースを 0.075〜0.15 体積%含む駆動部潤滑用オイルとの混合物において、JIS K2518に規定する泡立ち試験での泡安定度が 0 ml となるグリースであるので、上記グリースがミッションオイル等の駆動部潤滑用オイル中へ流出しても該オイルとの良好な親和性を示し、異物生成や粘度上昇を防止できる。この結果、本発明の駆動部支持用軸受を用いた自動車用変速機等において、動部内のポンプや油通路の目詰まり等による該オイルの循環流の不具合を防止できる。
また、軸受内部に封入する上記グリースの量が、該グリースの全量と、上記ケーシング内の上記駆動部潤滑用オイル全量との混合物において、JIS K2518に規定する泡立ち試験での泡安定度が 0 ml となる量であるので、該軸受に封入したグリースのすべてがケーシング内の駆動部潤滑用オイルに流出した場合であっても、異物生成や粘度上昇を防止できる。
また、上記グリースに用いられる基油、増ちょう剤が、炭化水素基を有するので、上記グリースがミッションオイル中へ流出しても該オイルとの良好な親和性を示し、上記の泡安定度の条件を満たすことができ、異物生成や粘度上昇を防止できる。
本発明の駆動部支持用軸受を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施例であるシール部材付きの駆動部支持用軸受を示す縦断面図である。シール部材付きの駆動部支持用軸受1は、図1に示すように、内輪2および外輪3と、この内輪2および外輪3間に介在する複数の転動体4と、この転動体4を保持する保持器5と、内輪2および外輪3間の隙間の開口を覆うシール部材6とを備えてなる。転動体4の周囲に基油と増ちょう剤とを含む後述のグリース7を封入してなる。
本発明の駆動部支持用軸受は、鉱油を主成分とする駆動部潤滑用オイルを貯蔵したケーシング内に組み込まれた駆動部の軸(入出力軸、伝達軸等)を支持するものであり、該駆動部潤滑用オイルに浸かって接触する環境下で使用される(図2参照)。
本発明の駆動部支持用軸受では、内部に封入する上記グリース7として、上記駆動部潤滑用オイルとの親和性が高いものを用いることを特徴としている。オイルに対するグリースの親和性はJIS K2518に規定する泡立ち試験の泡安定度で表すことができ、この泡安定度の数値が小さいほど親和度が大きく、グリースがオイル中に溶解しやすいことを意味する。なお、「泡安定度」は上記泡立ち試験に規定する通気条件で発泡させた後、通気を止めた直後から 10分間放置したときの泡の量(ml)である。
本発明では駆動部潤滑用オイルとの親和性が高いグリースとして、具体的には、該グリースを 0.075〜0.15 体積%含む駆動部潤滑用オイルとの混合物において、JIS K2518に規定する泡立ち試験での泡安定度が 0 ml となるグリースを用いる。
トランスミッション等の駆動部潤滑用オイルは、鉱油を主成分に各種添加剤を添加したものであるから、本発明の駆動部支持用軸受に封入するグリースは、駆動部潤滑用オイルの主成分である鉱油と親和性を有することが有効である。鉱油は炭化水素を主とした基(炭化水素基)を有するので、本発明におけるグリースとしては、同様の基を有する基油を用いたグリースを採用することが好ましい。
本発明の駆動部支持用軸受に封入するグリースに使用できる基油としては、上述のように炭化水素基を有するものが好ましい。このような基油としては、パラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油などの鉱油、ポリブテン油、ポリ-α-オレフィン油、アルキルベンゼン油、アルキルナフタレン油、脂環式化合物などの合成炭化水素油、ポリオールエステル油、りん酸エステル油、ジエステル油などのエステル油、ポリフェニルエーテル油、アルキルジフェニルエーテル油などのエーテル油、などが挙げられる。これらの基油は、単独または 2 種類以上組み合せて用いてもよい。
なお、炭化水素基を有しないシリコーン油、ふっ素油などは、鉱油に対して親和性が乏しく、駆動部潤滑用オイルに混入すると、粘度の上昇や異物の形成を招き、駆動部内のポンプや潤滑用オイルの通路で目詰まりを起こす要因となるので、トランスミッションオイル中で用いられる駆動部支持用軸受に封入するグリースの基油としては一般に適していない。
本発明の駆動部支持用軸受に封入するグリース中に占める基油の配合比率は、製造面や流動性の関係から、70 体積%以上であることが好ましい。
本発明の駆動部支持用軸受に封入するグリースに使用できる増ちょう剤としては、特に限定されず、通常のグリースに使用されている増ちょう剤を適宜使用できる。例えば、アルミニウム石けん、リチウム石けん、ナトリウム石けん、複合リチウム石けん、複合カルシウム石けん、複合アルミニウム石けんなどの金属石けん系増ちょう剤、脂肪族ジウレア化合物、脂環族ジウレア化合物、芳香族ジウレア化合物、ポリウレア化合物などのウレア系化合物、などが挙げられる。これらの増ちょう剤は、単独または 2 種類以上組み合せて用いてもよい。増ちょう剤については、基油よりも体積比で含有量は少ないが、上記基油と同様の理由で炭化水素基を有するものが有効である。
本発明の駆動部支持用軸受に封入するグリースには、必要に応じて公知の添加剤を含有させることができる。この添加剤として、例えば、ポリメタクリレート、ポリスチレン等の粘度指数向上剤、二硫化モリブデン、グラファイトなどの固体潤滑剤、金属スルホネート、多価アルコールエステルなどの防錆剤、有機モリブデンなどの摩擦低減剤、エステル、アルコールなどの油性剤、りん系化合物などの摩耗防止剤、などが挙げられる。これらを単独または 2 種類以上組み合せて添加できる。
本発明の駆動部支持用軸受の内部に封入されるグリースの量について説明する。JIS K2518に規定する泡立ち試験において、オイルとグリースとの混合物におけるグリースの比率が大きくなると泡安定度の数値が大きくなる。本発明の駆動部支持用軸受では、該軸受に封入したグリースの全量がケーシング内の駆動部潤滑用オイルに流出した場合でも、異物生成などが起こらないように、封入するグリース量を調整することが好ましい。
具体的には、封入するグリースの量を、該グリースの全量と、ケーシング内の駆動部潤滑用オイル全量との混合物において、泡立ち試験での泡安定度が 0 ml となる量にすることが好ましい。駆動部潤滑用オイルの量は、装置により異なるので、該オイル量も考慮して、封入するグリースの量および種類を上記条件に従い適宜決定する。
参考例1
実施例1〜実施例6に用いるミッションオイルを単独で、JIS K2518に規定する泡立ち試験に供し、通気を止めた直後の泡の量を泡立ち度(mL)として、また、通気を止めた直後から 10分間放置したときの泡の量を泡安定度(mL)として、それぞれ測定した。結果を表1に併記する。
参考例2
実施例7〜実施例11に用いるCVTオイルを単独で、JIS K2518に規定する泡立ち試験に供し、通気を止めた直後の泡の量を泡立ち度(mL)として、また、通気を止めた直後から 10分間放置したときの泡の量を泡安定度(mL)として、それぞれ測定した。結果を表1に併記する。
実施例1〜実施例6
表1に示す混合比にてミッションオイルと、グリースA(基油:鉱油(粘度 110 cSt(40℃)、11 cSt(100℃))、増ちょう剤:ウレア化合物)、または、グリースB(基油:鉱油(粘度 109 cSt(40℃)、12 cSt(100℃))、増ちょう剤:ウレア化合物)との混合物を得て試験片とした。この試験片をJIS K2518に規定する泡立ち試験に供し、通気を止めた直後の泡の量を泡立ち度(mL)として、また、通気を止めた直後から 10分間放置したときの泡の量を泡安定度(mL)として、それぞれ測定した。結果を表1に併記する。
実施例7〜実施例11
表1に示す混合比にてCVTオイルとグリースB(基油:鉱油、増ちょう剤:ウレア化合物)との混合物を得た。この混合物から試料を 5 点採取して実施例7〜実施例11の試験片とした。これらの試験片を実施例1同様の泡立ち試験に供し、結果を表1に併記する。
Figure 2009270682
実施例1〜実施例11はいずれも泡立ち性は低く、各オイルに対して影響が少ないことが判る。
本発明の駆動部支持用軸受は、所定のグリースを封入してなるので、ミッションオイル中へ流出しても該オイルの循環に支障が生じることがない。このため、駆動部潤滑用オイルに浸漬する環境下で使用される駆動部支持用軸受として好適に利用できる。
本発明の一実施例である駆動部支持用軸受を示す縦断面図である。 転がり軸受を組み込んだ自動車用変速機の構造を示す図である。
符号の説明
1 駆動部支持用軸受
2、12 内輪
3、13 外輪
4、14 転動体
5 保持器
6、16 シール部材
7 グリース
11 シール付き転がり軸受
15 ケーシング
17a 入力軸
17b 伝達軸
17c 出力軸
18 駆動部潤滑用オイル

Claims (8)

  1. 鉱油を主成分とする駆動部潤滑用オイルを貯蔵したケーシング内に組み込まれた駆動部の軸を支持し、該駆動部潤滑用オイルと接触する環境下で使用される駆動部支持用軸受であって、
    該駆動部支持用軸受は、内部にグリースが封入されてなり、
    前記グリースは、前記駆動部潤滑用オイルとの混合物において JIS K2518に規定する泡立ち試験での泡安定度が 0 ml となるグリースであることを特徴とする駆動部支持用軸受。
  2. 前記泡立ち試験に供する前記混合物において、前記グリースは 0.075〜0.15 体積%含まれることを特徴とする請求項1記載の駆動部支持用軸受。
  3. 前記駆動部支持用軸受の内部に封入される前記グリースの量は、該グリースの全量と、前記ケーシング内の前記駆動部潤滑用オイル全量との混合物において、JIS K2518に規定する泡立ち試験での泡安定度が 0 ml となる量であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の駆動部支持用軸受。
  4. 前記グリースの基油は、炭化水素基を有することを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載の駆動部支持用軸受。
  5. 前記グリースの基油は、鉱油、合成炭化水素油、エステル油、ポリフェニルエーテル油、およびエーテル油から選ばれた少なくとも一つであることを特徴とする請求項4記載の駆動部支持用軸受。
  6. 前記グリースの増ちょう剤は、炭化水素基を有することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか一項記載の駆動部支持用軸受。
  7. 前記増ちょう剤は、ウレア系化合物であることを特徴とする請求項6記載の駆動部支持用軸受。
  8. 前記グリース中に占める前記基油の含有率が 70 体積%以上であることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか一項記載の駆動部支持用軸受。
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