JP2009269787A - 炭化珪素粉体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 真空乾燥によって炭化珪素前駆体を乾燥させて炭化珪素粉体を製造する場合において、生産性の低下を抑制しつつ、品質を向上させる。
【解決手段】 珪素含有原料と炭素含有原料とを含み、珪素含有原料と炭素含有原料のうち少なくとも一方が液状であり、珪素含有原料と炭素含有原料とが混合された原料混合物が架橋又は重合された炭化珪素前駆体を生成する工程S1と、炭化珪素前駆体を乾燥させる工程S2と、工程S2によって乾燥させられた炭化珪素前駆体を不活性気体の雰囲気下で焼成する工程S3とを含む炭化珪素粉体の製造方法において、工程S2では、炭化珪素前駆体の乾燥時間の経過に連れて、炭化珪素前駆体が配置された配置空間の真空度を低下させる。
【選択図】図1
【解決手段】 珪素含有原料と炭素含有原料とを含み、珪素含有原料と炭素含有原料のうち少なくとも一方が液状であり、珪素含有原料と炭素含有原料とが混合された原料混合物が架橋又は重合された炭化珪素前駆体を生成する工程S1と、炭化珪素前駆体を乾燥させる工程S2と、工程S2によって乾燥させられた炭化珪素前駆体を不活性気体の雰囲気下で焼成する工程S3とを含む炭化珪素粉体の製造方法において、工程S2では、炭化珪素前駆体の乾燥時間の経過に連れて、炭化珪素前駆体が配置された配置空間の真空度を低下させる。
【選択図】図1
Description
本発明は、炭化珪素前駆体を乾燥させる工程と、乾燥させられた炭化珪素前駆体を不活性気体の雰囲気下で焼成する工程とを含む炭化珪素粉体の製造方法に関する。
従来、液状原料、例えば、エチルシリケートのようなシリル化合物と、フェノール樹脂のような残炭率の高いアルコキシドとの混合物を架橋又は重合することによって生成された炭化珪素前駆体を用いる炭化珪素粉体、特に高純度の炭化珪素粉体の製造方法が知られている(例えば、特許文献1)。
具体的には、当該製造方法では、炭化珪素前駆体を乾燥させた後、窒素やアルゴンなどの不活性気体の雰囲気下において炭化珪素前駆体が高温(例えば、約2,000℃)で焼成される。
炭化珪素前駆体は、マイクロウェーブやオーブンを用いた熱による乾燥、或いは真空雰囲気を用いた真空乾燥によって乾燥させられる。熱による乾燥方法では、ホルマリンを含む成分が排出される。このため、環境面を考慮すると、真空乾燥を用いることが好ましい。
特許第2973762号公報(第5頁)
しかしながら、上述した従来の炭化珪素粉体の製造方法には、次のような問題があった。すなわち、真空乾燥によって炭化珪素前駆体を乾燥させる場合、圧力(真空度)の変化によって、炭化珪素前駆体中の珪素含有原料と炭素含有原料とが均一に分散した状態を維持できず、炭化珪素粉体の品質が低下する問題がある。
一方、炭化珪素前駆体を含む合成物を長時間掛けて乾燥させれば、炭化珪素前駆体中の珪素含有原料と炭素含有原料とが均一に分散した状態を維持できると考えられる。しかしながら、この場合、炭化珪素粉体の生産性が低下するため、好ましくない。
そこで、本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、真空乾燥によって炭化珪素前駆体を乾燥させる場合において、生産性の低下を抑制しつつ、さらに品質を向上させた炭化珪素粉体の製造方法を提供することを目的とする。
上述した課題を解決するため、本発明は、次のような特徴を有している。まず、本発明の第1の特徴は、珪素含有原料と炭素含有原料とを含み、前記珪素含有原料と前記炭素含有原料のうち少なくとも一方が液状であり、前記珪素含有原料と前記炭素含有原料とが混合された原料混合物が架橋又は重合された炭化珪素前駆体を乾燥させる工程(工程S2)と、前記乾燥させる工程によって乾燥させられた前記炭化珪素前駆体を不活性気体の雰囲気下で焼成する工程(工程S3)とを含む炭化珪素粉体の製造方法であって、前記乾燥させる工程では、前記炭化珪素前駆体の乾燥時間の経過に連れて、前記炭化珪素前駆体が配置された配置空間の真空度を低下させることを要旨とする。
本発明の第1の特徴によれば、炭化珪素前駆体を乾燥させる工程において、段階的に真空度を低くすることにより、炭化珪素前駆体中の珪素含有原料と炭素含有原料とが均一に分散した状態を維持したまま乾燥させることができる。
従って、本発明の第1の特徴によれば、従来、炭化珪素前駆体を真空乾燥する際に問題となっていた真空度の急激な変化による炭化珪素前駆体の不均一化を防ぐことができる。これにより、炭化珪素前駆体が焼成されてできる炭化珪素粉体の品質を向上させることができる。
また、本発明の第1の特徴によれば、真空乾燥が適用できるので、熱乾燥に比べて、乾燥時間を短縮できる。従って、炭化珪素粉体の生産性の低下を抑制することができる。
本発明の第2の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記乾燥させる工程では、前記真空度を段階的に低下させることを要旨とする。
本発明の第3の特徴は、本発明の第2の特徴に係り、前記乾燥させる工程は、第1真空度において前記炭化珪素前駆体を乾燥させる第1乾燥工程(工程S21)と、前記第1乾燥工程に引き続き、前記第1真空度よりも低い第2真空度において前記炭化珪素前駆体を乾燥させる第2乾燥工程(工程S22)と、前記第2乾燥工程に引き続き、前記第2真空度よりも低い第3真空度において前記炭化珪素前駆体を乾燥させる第3乾燥工程(工程S23)とを有することを要旨とする。
本発明の第4の特徴は、本発明の第1乃至第3の何れか一つの特徴に係り、前記乾燥させる工程の開始時における前記真空度は、6kPa〜10kPaであることを要旨とする。
本発明の第5の特徴は、本発明の第1の特徴に係り、前記乾燥させる工程では、前記炭化珪素前駆体の乾燥時間の経過に連れて、前記配置空間の温度を上昇させることを要旨とする。
本発明の第6の特徴は、本発明の第5の特徴に係り、前記乾燥させる工程では、前記温度を段階的に上昇させることを要旨とする。
本発明の特徴によれば、真空乾燥によって炭化珪素前駆体を乾燥させる場合において、生産性の低下を抑制しつつ、更に品質を向上させた炭化珪素粉体の製造方法を提供することができる。
次に、本発明に係る炭化珪素粉体の製造方法の実施形態について、図面を参照しながら説明する。具体的には、(1)製造方法の説明、(2)実施例、(3)比較例、(4)不良性及び生産性の評価、(5)作用・効果、及び(6)その他の実施形態について説明する。
なお、以下の図面の記載において、同一または類似の部分には、同一または類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率などは現実のものとは異なることに留意すべきである。
したがって、具体的な寸法などは以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
(1)製造方法
(1−1)原料
本実施形態に係る炭化珪素粉体の製造方法は、珪素含有原料と炭素含有原料とが混合された原料混合物を架橋又は重合して炭化珪素前駆体を生成した後、この炭化珪素前駆体を乾燥させて高純度の炭化珪素粉体(いわゆる、高純度プリカーサ法粉体)を製造する方法である。
(1−1)原料
本実施形態に係る炭化珪素粉体の製造方法は、珪素含有原料と炭素含有原料とが混合された原料混合物を架橋又は重合して炭化珪素前駆体を生成した後、この炭化珪素前駆体を乾燥させて高純度の炭化珪素粉体(いわゆる、高純度プリカーサ法粉体)を製造する方法である。
珪素含有原料は、液状の珪素化合物、加水分解性珪素化合物より合成された珪素質固体とを含む群より選ばれる少なくとも1種の珪素含有原料である。
珪素含有原料としては、加水分解性珪酸化合物をトリメチル化して得られる1群のポリマー、加水分解性珪酸化合物と1価もしくは多価アルコール(例えば、ジオール、トリオール)とのエステル(例えば、四塩化珪素とエタノールとの反応で合成されるエチルシリケート)、加水分解性珪素化合物と有機化合物との反応で得られたエステル以外の反応生成物(例えば、テトラメチルシラン、ジメチルジフェニルシラン、ポリジメチルシラン)等の珪素化合物が挙げられる。
珪素化合物は、製造工程で有害元素を含まない原料と、有害元素を含まない触媒とを用いて合成された化合物である。この珪素化合物の有害元素の含有量は、各1ppm以下であることが好ましい。
ここで、半導体製造に有害な元素(以下、有害元素という)とは、ウェハーの熱処理工程で塩化物となって気化してウェハーに不純物として取り込まれることにより、ウェハーの絶縁抵抗の低下やSiO2の耐電圧低下を引き起こす元素のことである。
有害元素の一例としては、Fe、Ni、Cu、Cr、V、W等の重金属元素、Li、Na、K等のアルカリ金属元素、並びにBe、Mg、Ca、B、Al、Ga等のアルカリ土類若しくは両性金属元素などが挙げられる。
加水分解性珪素化合物より合成された珪素質固体も同様に、有害元素の含有量が各1ppm以下であることが好ましい。この珪素質固体は、高温の非酸化性雰囲気中で炭素と反応して炭化珪素を生成するものであればよい。珪素質固体の好ましい例は、四塩化珪素の加水分解により得られる無定型シリカ微粉末である。
炭素含有原料は、有害元素を含まない触媒を用いて合成され、加熱及び/又は触媒、若しくは架橋剤により重合又は架橋して硬化しうる任意の1種もしくは2種以上の有機化合物から構成されるモノマー、オリゴマー及びポリマーである。
炭素含有原料の好適な具体例としては、有害元素を含まない触媒を用いて合成されたフェノール樹脂、フラン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂などの硬化性樹脂が挙げられる。特に、残炭率が高く、作業性に優れているレゾール型またはノボラック型フェノール樹脂が好ましい。
本実施形態に有用なレゾール型フェノール樹脂は、有害元素を含まない触媒(具体的には、アンモニアまたは有機アミン)の存在下において、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、ビスフェノールAなどの1価または2価のフェノール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド類とを反応させて製造する。
触媒として用いる有機アミンは、第一級、第二級、および第三級アミンのいずれでもよい。有機アミンとしては、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルモノエタノールアミン、モノメチルジエタノールアミン、N−メチルアニリン、ピリジン、モルホリン等を用いることができる。
フェノール類とアルデヒド類とをアンモニアまたは有機アミンの存在下に反応させてレゾール型フェノール樹脂を合成する方法は、使用触媒が異なる以外は、従来公知の方法を採用できる。
即ち、フェノール類1モルに対し、1〜3モルのアルデヒド類と0.02〜0.2モルの有機アミン又はアンモニアを加え、60〜100℃に加熱する。
一方、本実施形態に有用なノボラック型フェノール樹脂は、上記と同様の1価または2価フェノール類とアルデヒド類とを混合し、有害元素を含まない酸類(具体的には、塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸またはシュウ酸など)を触媒として反応させて製造することができる。
ノボラック型フェノール樹脂の製造も従来公知の方法を採用できる。即ち、フェノール類1モルに対し、0.5〜0.9モルのアルデヒド類と0.02〜0.2モルの有害元素を含まない無機酸又は有機酸を加え、60〜100℃に加熱する。
(1−2)炭化珪素粉体の製造方法
次に、本実施形態に係る炭化珪素粉体の製造方法の全体概略について説明する。図1は、炭化珪素粉体の製造方法を説明する流れ図である。
次に、本実施形態に係る炭化珪素粉体の製造方法の全体概略について説明する。図1は、炭化珪素粉体の製造方法を説明する流れ図である。
図1に示すように、本実施形態に係る炭化珪素粉体の製造方法は、上述した珪素含有原料と上述した炭素含有原料とから炭化珪素前駆体を生成する工程S1と、工程S1で生成された炭化珪素前駆体を乾燥させる工程S2と、工程S2で乾燥させられた炭化珪素前駆体を焼成する工程S3とを有する。
工程S1は、上述した珪素含有原料と炭素含有原料とを混合した原料混合物を調製する工程である。工程S1では、原料混合物に、必要に応じて重合又は架橋用の触媒又は架橋剤を加え、重合又は架橋反応を生じさせて炭化珪素前駆体を生成する。炭化珪素前駆体は、珪素と炭素と酸素を含有する均一な固形物(ゼリー状物質を含む)である。
工程S2は、炭化珪素前駆体を乾燥する乾燥工程である。乾燥方法は、真空乾燥である。工程S2では、炭化珪素前駆体の乾燥時間の経過に連れて、炭化珪素前駆体が配置された配置空間の真空度を低下させる。具体的に、工程S2では、真空度を段階的に低下させる。
図2は、乾燥時間と真空度との関係を説明する図である。図2において、横軸は乾燥時間であり、縦軸は真空度である。
図2に示すように、工程S2は、真空度が異なる3つの乾燥工程S21、S22、S23を有する。乾燥工程の開始時における真空度は、6kPa〜10kPaに設定される。
第1乾燥工程S21は、第1真空度V1において炭化珪素前駆体を乾燥させる。第1乾燥工程S21は、t1期間に亘って実行される。
第2乾燥工程S22は、第1乾燥工程S21に引き続き実行される。第2乾燥工程S22は、第1真空度V1よりも低い第2真空度V2において炭化珪素前駆体を乾燥させる。第2乾燥工程S22は、(t2−t1)期間に亘って実行される。
第3乾燥工程S23は、第2乾燥工程S22に引き続き実行される。第3乾燥工程S23は、第2真空度V2よりも更に低い第3真空度V3において炭化珪素前駆体を乾燥させる。第3乾燥工程S23は、(t3−t2)期間に亘って実行される。
第1乾燥工程S21,第2乾燥工程S22,第3乾燥工程S23では、1つの乾燥工程が実行されている間は、真空度は変更されない。但し、V1>V2>V3である。
工程S3は、工程S2において、乾燥させられた炭化珪素前駆体を不活性気体の雰囲気下で焼成する工程である。工程S3では、炭化珪素前駆体を不活性気体の雰囲気下で加熱焼成して、炭化珪素前駆体を炭化及び珪化する。
なお、不活性気体雰囲気とは、非酸化性雰囲気である。不活性気体は、例えば、真空、窒素、ヘリウムまたはアルゴンを含む。
工程S3において、炭化珪素前駆体を焼成することにより、目的とする炭化珪素粉末を得る。焼成条件の一例として、加熱温度は、約1600〜2000℃であり、焼成時間は、約30分〜3時間である。
(1−3)炭化珪素粉体の製造方法の変形例
上述した実施形態では、炭化珪素前駆体を乾燥させる工程S2は、真空度の異なる乾燥工程S21,S22,S23を有するとした。工程S2では、更に、炭化珪素前駆体の乾燥時間の経過に連れて、炭化珪素前駆体を配置する配置空間の温度を上昇させてもよい。具体的に、配置空間の温度を段階的に上昇させる。
上述した実施形態では、炭化珪素前駆体を乾燥させる工程S2は、真空度の異なる乾燥工程S21,S22,S23を有するとした。工程S2では、更に、炭化珪素前駆体の乾燥時間の経過に連れて、炭化珪素前駆体を配置する配置空間の温度を上昇させてもよい。具体的に、配置空間の温度を段階的に上昇させる。
図3は、炭化珪素粉体の製造方法の変形例の乾燥工程における乾燥時間、真空度、及び温度の関係を説明する図である。実線は真空度を示し、点線は温度を示す。
変形例として示す炭化珪素粉体の製造方法では、図3に示すように、乾燥工程が進むに連れて真空度を段階的に低くするとともに、乾燥温度を段階的に上昇させる。
図3に示すように、第1乾燥工程S21では、炭化珪素前駆体を配置する配置空間の温度は、第1乾燥温度T1に設定される。
第2乾燥工程S22及び第3乾燥工程S23では、炭化珪素前駆体を配置する配置空間の温度は、第2乾燥温度T2に設定される。なお、1つの乾燥工程が実行されている間は、乾燥温度は変更されない。但し、T2>T1である。
(2)実施例
上述した製造方法に基づいて、炭化珪素粉体を製造した。実施例1〜3では、珪素含有原料として、エチルシリケート40を用いた。また、炭素含有原料として、フェノール樹脂を用いた。
上述した製造方法に基づいて、炭化珪素粉体を製造した。実施例1〜3では、珪素含有原料として、エチルシリケート40を用いた。また、炭素含有原料として、フェノール樹脂を用いた。
実施例1〜3は、乾燥工程S2における乾燥条件が異なる。乾燥工程S2では、温度制御が可能な真空乾燥装置を使用した。
実施例1では、第1乾燥工程S21において、乾燥温度は100℃、真空度は10kPa、乾燥時間は10分に設定された。第2乾燥工程S22において、乾燥温度は200℃、真空度は2kPa、乾燥時間は60分に設定された。第3乾燥工程S23において、乾燥温度は200℃、真空度は0.5kPa、乾燥時間は180分に設定された。
実施例2では、第1乾燥工程S21において、乾燥温度は100℃、真空度は8kPa、乾燥時間は40分に設定された。第2乾燥工程S22において、乾燥温度は200℃、真空度は2kPa、乾燥時間は60分に設定された。第3乾燥工程S23において、乾燥温度は200℃、真空度は0.5kPa、乾燥時間は150分に設定された。
実施例3では、第1乾燥工程S21において、乾燥温度は100℃、真空度は8kPa、乾燥時間は30分に設定された。第2乾燥工程S22において、乾燥温度は200℃、真空度は2kPa、乾燥時間は20分に設定された。第3乾燥工程S23において、乾燥温度は200℃、真空度は0.5kPa、乾燥時間は150分に設定された。
(3)比較例
比較例1,2では、実施例と同様の原料を用いて、乾燥工程S2における真空度と温度との変更パターンを変更して炭化珪素粉体を製造した。
比較例1,2では、実施例と同様の原料を用いて、乾燥工程S2における真空度と温度との変更パターンを変更して炭化珪素粉体を製造した。
比較例1では、第1乾燥工程S21において、乾燥温度は100℃、真空度は10kPa、乾燥時間は80分に設定された。第2乾燥工程S22において、乾燥温度は200℃、真空度は0.5kPa、乾燥時間は60分に設定された。第3乾燥工程S23において、乾燥温度は200℃、真空度は0.5kPa、乾燥時間は180分に設定された。すなわち、比較例1では、乾燥工程は、実質的に2段階であった。
比較例2では、第1乾燥工程S21において、乾燥温度は100℃、真空度は5kPa、乾燥時間は40分に設定された。第2乾燥工程S22において、乾燥温度は200℃、真空度は2kPa、乾燥時間は60分に設定された。第3乾燥工程S23において、乾燥温度は200℃、真空度は0.5kPa、乾燥時間は150分に設定された。すなわち、比較例2では、乾燥工程の開始時の真空度が6kPa以下の場合である。
(4)不良性及び生産性の評価
実施例及び比較例の炭化珪素粉体の不良率と生産性とを評価した。炭化珪素粉体の不良率は、生成した炭化珪素粉体中の余剰炭素率で評価した(フリーカーボン測定法という)。理想的に反応した場合、炭化珪素における珪素と炭素の比は、珪素:炭素=1:1(すなわち、余剰炭素0)となる。余剰炭素は、2%以下であることが好ましい。更に、炭化珪素粉体の余剰炭素は、1%以下であることが理想的である。
実施例及び比較例の炭化珪素粉体の不良率と生産性とを評価した。炭化珪素粉体の不良率は、生成した炭化珪素粉体中の余剰炭素率で評価した(フリーカーボン測定法という)。理想的に反応した場合、炭化珪素における珪素と炭素の比は、珪素:炭素=1:1(すなわち、余剰炭素0)となる。余剰炭素は、2%以下であることが好ましい。更に、炭化珪素粉体の余剰炭素は、1%以下であることが理想的である。
生産性は、第1乾燥工程〜第3乾燥工程までの乾燥時間の総和が短いほど良好であるとした。比較例1の乾燥時間を100として比較した。第3乾燥工程では、具体的に、炭化珪素粉体の水分量が5%以下になったとき、終了した。すなわち、第3乾燥工程に要する時間は、炭化珪素粉体の水分量が5%以下になるまでの時間を示している。結果を下記表1に示す。
表1に示すように、実施例1は、第3乾燥工程S23が終了するまでに、合計280分を要し、生産性の値が130であった。従って、生産性が良好であるといえる。
実際の製造現場では、不良率1%以下であることが求められる。実施例1の不良率は、0.82であった。従って、不良率が実際の仕様に耐えうるものである。
実施例2は、第3乾燥工程S23が終了するまでに、合計250分を要し、生産性の値が130であった。また、不良率は、0.14であった。従って、実施例2の乾燥条件に従うと、不良率、生産性ともに良好な結果を得ることができることが判った。
実施例3は、第3乾燥工程S23が終了するまでに、合計200分を要し、生産性の値が160であった。また、不良率は、0.13であった。従って、実施例3の乾燥条件に従うと、不良率、生産性ともに最も良好な結果を得ることができることが判った。
また、比較例1のように、乾燥工程を2段階とした場合には、乾燥工程を3段階とした場合と比べて、不良率が高まるとともに生産性が低下することが判る。すなわち、炭化珪素粉体における珪素含有原料と炭素含有原料との不均一化が進むことが予想される。
また、比較例2のように、乾燥工程の開始時に、真空度が6kPaを下回る場合には、急激な真空条件下により、突沸現象が起こる。これにより、炭化珪素前駆体中の珪素含有原料と炭素含有原料との不均一化が起こると考えられる。従って、生産性は上がるが不良率が高まる。
開始時における真空度は、10kPaを上回ってもよいが、徐々に真空度が低くなる複数の段階を経て、最終的な第3真空度に到達することを考慮すると、開始時における真空度が10kPaを上回っている場合には、第3真空度に達するまでの時間がかかると考えられる。従って、生産性が低下する。
比較例3では、乾燥温度は、100℃に固定された。このとき、炭化珪素粉体の水分量が5%以下になるまでに、500分を要した。従って、温度一定とした場合には、生産性が著しく低下する。
比較例4では、乾燥温度は、200℃に固定された。この場合には、第1乾燥工程において、炭化珪素前駆体から多くの揮発成分が抜け出るので、炭化珪素前駆体の不均一化が起こりやすくなる。従って、不良率が高まると考えられる。
(5)作用・効果
本実施形態に係る炭化珪素粉体の製造方法は、炭化珪素前駆体を乾燥させる工程S2において、炭化珪素前駆体の乾燥時間の経過に連れて配置空間の真空度を低下する。また、工程S2では、真空度を段階的に低下させる。
本実施形態に係る炭化珪素粉体の製造方法は、炭化珪素前駆体を乾燥させる工程S2において、炭化珪素前駆体の乾燥時間の経過に連れて配置空間の真空度を低下する。また、工程S2では、真空度を段階的に低下させる。
特に、工程S2は、第1真空度V1において炭化珪素前駆体を乾燥させる第1乾燥工程S21と、第1乾燥工程S21に引き続き、第1真空度V1よりも低い第2真空度V2において炭化珪素前駆体を乾燥させる第2乾燥工程S22と、第2乾燥工程S22に引き続き、第2真空度V2よりも低い第3真空度V3において炭化珪素前駆体を乾燥させる第3乾燥工程S23とを有する。ここで、工程S2の開始時における真空度は、6kPa〜10kPaとする。
また、本実施形態に係る炭化珪素粉体の製造方法では、工程S2において、炭化珪素前駆体の乾燥時間の経過に連れて温度を段階的に上昇させる。
本実施形態に係る炭化珪素粉体の製造方法によれば、炭化珪素前駆体を乾燥させる工程S2において、段階的に真空度を低くすることにより、炭化珪素前駆体中の珪素含有原料と炭素含有原料とが均一に分散した状態を維持したまま乾燥させることができる。
すなわち、本実施形態に係る炭化珪素粉体の製造方法は、従来、炭化珪素前駆体を真空乾燥する際に問題となっていた真空度の急激な変化による炭化珪素前駆体の不均一化を防ぐことができる。従って、炭化珪素前駆体が焼成されてできる炭化珪素粉体の品質を向上させることができる。
また、本実施形態に係る炭化珪素粉体の製造方法は、真空乾燥を適用しているために乾燥時間を短縮できる。従って、炭化珪素粉体の製造方法によれば、炭化珪素粉体の生産性の低下を抑制することができる。
また、本実施形態に係る炭化珪素粉体の製造方法は、真空乾燥を適用しているために、閉じた系(クローズドシステム)での乾燥が可能である。すなわち、ホルムアルデヒド等の揮発成分が環境に漏れ出ることを防止できる。
以上のように、上述した炭化珪素粉体の製造方法によれば、真空乾燥の利点を生かしつつ、真空乾燥において課題とされていた生産性の低下を抑制することができる。
(6)その他の実施形態
上述したように、本発明の一実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態が明らかとなろう。
上述したように、本発明の一実施形態を通じて本発明の内容を開示したが、この開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態が明らかとなろう。
上述した実施形態では、炭化珪素粉体の製造方法は、第1〜第3乾燥工程を有するとしたが、3段階に限定されない。乾燥工程は、乾燥時間に連れて真空度が低くなり、最終的に第3真空度(若しくは、第3真空度よりも更に低い真空度)に到達すればよい。例えば、乾燥工程S2は、4段階、5段階に分割されていてもよい。或いは、乾燥工程S2は、乾燥時間に連れて真空度が連続的に低くなってもよい。
各乾燥工程S21,S22,S23における乾燥時間は、実施例に限定されない。同期間としてもよいし、異なってもよい。
また、上述した実施形態の変形例では、乾燥工程において、乾燥温度を段階的に高くするとした。上述した実施形態では、2段階の温度設定としたが、2段階に限定されない。乾燥工程における乾燥温度は、真空度の変更に併せて変更することが可能である。また、乾燥温度は、真空度の変更タイミングから独立したタイミングで変更されてもよい。
このように、本発明は、ここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は、上述の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
Claims (6)
- 珪素含有原料と炭素含有原料とを含み、前記珪素含有原料と炭素含有原料のうち少なくとも一方が液状であり、前記珪素含有原料と前記炭素含有原料とが混合された原料混合物が架橋又は重合された炭化珪素前駆体を乾燥させる工程と、
前記乾燥させる工程によって乾燥させられた前記炭化珪素前駆体を不活性気体の雰囲気下で焼成する工程とを含む炭化珪素粉体の製造方法であって、
前記乾燥させる工程では、前記炭化珪素前駆体の乾燥時間の経過に連れて、前記炭化珪素前駆体が配置された配置空間の真空度を低下させる炭化珪素粉体の製造方法。 - 前記乾燥させる工程では、前記真空度を段階的に低下させる請求項1に記載の炭化珪素粉体の製造方法。
- 前記乾燥させる工程は、
第1真空度において前記炭化珪素前駆体を乾燥させる第1乾燥工程と、
前記第1乾燥工程に引き続き、前記第1真空度よりも低い第2真空度において前記炭化珪素前駆体を乾燥させる第2乾燥工程と、
前記第2乾燥工程に引き続き、前記第2真空度よりも低い第3真空度において前記炭化珪素前駆体を乾燥させる第3乾燥工程とを有する請求項2に記載の炭化珪素粉体の製造方法。 - 前記乾燥させる工程の開始時における前記真空度は、6kPa〜10kPaである請求項1乃至3の何れか一項に記載の炭化珪素粉体の製造方法。
- 前記乾燥させる工程では、前記炭化珪素前駆体の乾燥時間の経過に連れて、前記配置空間の温度を上昇させる請求項1に記載の炭化珪素粉体の製造方法。
- 前記乾燥させる工程では、前記温度を段階的に上昇させる請求項5に記載の炭化珪素粉体の製造方法。
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