JP2009269780A - 結晶の観察方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】微量試料で迅速かつ経済的に多種類の結晶化条件で結晶化を行うことができ、かつ微量試料であっても2ヶ月以上の長期間にわたって結晶析出を観察することのできる結晶の観察方法を提供する。
【解決手段】複数の結晶化区画32及び該結晶化区画32それぞれを区分する凹部34が設けられたマイクロプレート24と、結晶化区画32に対応する位置に、蛋白質結晶化剤を含有する複数の結晶化剤保持部16を有するマイクロアレイ18とを備えた蛋白質結晶化装置を用いて、マイクロアレイ18を支持体20に収納し、該支持体20とマイクロプレート24とを重ね合わせる組み立て工程と、前記組み立て工程の後に、前記凹部に水を充填する水充填工程と、前記水充填工程の後に、析出した結晶をマイクロプレート越しに観察する観察工程とを含む結晶の観察方法。
【選択図】図4

Description

本発明は、結晶の観察方法に関する。
構造ゲノム科学等の分野においては、蛋白質の立体構造と蛋白質の機能との関係を明らかにすることにより、それをコードする遺伝子の機能を解明しようとする研究が広く行われている。蛋白質の立体構造の解析は、通常、解析しようとする蛋白質の結晶化に多くの時間と多量の蛋白質含有試料を費やしており、これらが立体構造解析におけるボトルネックとなっている。そのため、蛋白質の結晶化をハイスループット化する手法として、マイクロ流路プレートを用いる例や、自動ロボットを用いる例等が示されている。
このような、蛋白質を結晶化する手法の具体例としては、マイクロアレイ上で結晶化を行うことにより、多種類の結晶化条件を微量試料で迅速にスクリーニングできる、簡便で経済性に優れた結晶化装置が示されている(例えば、特許文献1、2)。
しかし、特許文献1及び2のような結晶化装置では、微量試料の気泡発生を2ヶ月以上抑え、長期間にわたって結晶析出の観察を継続することが困難であった。そのため、結晶析出に2ヶ月以上を要する場合、結晶析出条件を見逃してしまうことがあった。
近年では、医薬品の開発に直接関係すると目される膜蛋白質や水溶性蛋白質において、結晶化が難しいヒト由来の高分子量の蛋白質等が結晶化の対象になりつつある。それゆえ、構造解析のための結晶化が難しく、結晶化に要する静置時間も長くなってきたため、2ヶ月以上の長期間であっても結晶析出が充分に観察できる方法が必要となっている。
微量試料の気泡発生は、結晶化の間のデバイス(結晶化装置)の乾燥により、微量試料中の水分が乾燥してしまうことが要因として挙げられる。そこで、結晶化の前にデバイスを予め長時間(100時間以上)水に漬け込み、デバイスに水を飽和させておくことで乾燥を防止する方法が示されている(特許文献3)。
国際公開第03/053998号パンフレット 特開2006−124238号公報 特開平2−44089号公報
しかし、この方法では、結晶化を行う前にデバイスを数日間水に漬け込む必要があり、蛋白質結晶化実験のように沢山のデバイスを扱う場合には作業負担が大きい。さらに、蛋白質結晶化実験のように極微量の蛋白質含有試料を扱うデバイスは複雑な形状を有しているため、漬け込むことによりデバイス表面に付着した水を、該表面を乾燥させることなく確実に除去することが難しい。
以上のような理由から、特に微量試料を用いる結晶化条件の検討では、結晶析出に長期間の静置時間を設けることができなかった。そのため、微量試料による結晶化条件のスクリーニング等、結晶析出に長期間を要する蛋白質の結晶化であっても、結晶析出を充分に観察することができる方法が望まれている。
そこで本発明は、微量試料で迅速かつ経済的に多種類の結晶化条件で結晶化を行うことができ、かつ微量試料であっても2ヶ月以上の長期間にわたって結晶析出を観察することのできる結晶の観察方法を目的とする。
本発明の結晶の観察方法は、蛋白質含有試料を充填する複数の結晶化区画及び該結晶化区画それぞれを区分する凹部が設けられた透明素材からなるマイクロプレートと、前記結晶化区画に対応する位置に、蛋白質結晶化剤を含有する複数の結晶化剤保持部を有する透明素材からなるマイクロアレイとを備えた蛋白質結晶化装置を用いて結晶を観察する方法であって、前記蛋白質結晶化剤を含有する結晶化剤保持部を有するマイクロアレイと、前記結晶化区画に蛋白質含有試料が充填されたマイクロプレートとを、前記マイクロアレイを支持する支持体を用いて、各々の蛋白質含有試料と結晶化剤保持部とが接触するように重ね合わせる組み立て工程と、前記組み立て工程の後に、前記凹部に水を充填する水充填工程と、前記水充填工程の後に、析出した結晶をマイクロプレート越しに観察する観察工程とを含む方法である。
本発明の結晶の観察方法は、微量試料で迅速かつ経済的に多種類の結晶化条件で結晶化を行うことができ、かつ2ヶ月以上の長期間にわたって結晶析出を観察することができる。そのため、微量試料で、結晶析出に長期間の静置を要する蛋白質の結晶化のスクリーニングを行うこともできる。
本発明の方法は、蛋白質含有試料を充填する複数の結晶化区画及び該結晶化区画それぞれを区分する凹部が設けられた透明素材からなるマイクロプレートと、前記結晶化区画に対応する位置に、蛋白質結晶化剤を含有する複数の結晶化剤保持部を有する透明素材からなるマイクロアレイとを備えた蛋白質結晶化装置を用いて結晶析出を観察する方法である。
前記蛋白質結晶化装置を用いて、前記結晶化区画に蛋白質含有試料が充填されたマイクロプレートと、前記蛋白質結晶化剤を含有する結晶化剤保持部を有するマイクロアレイとを、各々の蛋白質含有試料と結晶化剤保持部とが接触するように重ね合わせておくことにより、最適な条件下にある蛋白質含有試料中に結晶が析出する。
[蛋白質結晶化装置]
以下、本発明における蛋白質結晶化装置の一実施形態例を図1〜7に基づいて詳細に説明する。
蛋白質結晶化装置1は、図1に示すように、支持体20と、パッキング22と、蛋白質含有試料を充填する複数の結晶化区画32及び該結晶化区画32それぞれを区分する凹部34が設けられたマイクロプレート24と、前記結晶化区画32に対応する位置に、蛋白質結晶化剤を含有する複数の結晶化剤保持部16を有する蛋白質結晶化用マイクロアレイ18(以下、マイクロアレイ18という)とを備えている。
支持体20は、マイクロアレイ18を設置し、これらとマイクロプレート24とを圧着することにより、マイクロアレイ18とマイクロプレート24とを正確に位置決めして積層させる役割を果たす。支持体20を用いることにより、マイクロアレイ18とマイクロプレート24との位置決めと圧着が容易になる。
支持体20の材料及び形状は、マイクロアレイ18を固定できるものであれば特に限定されない。
支持体20の材料としては、蛋白質結晶化装置1を分解せずに迅速、簡便に析出した結晶を顕微鏡で確認して、結晶の成長過程を経時的に観察できる点から、光透過性の材料を用いることが好ましい。
光透過性材料としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリジメチルシロキサン(PDMS)等が挙げられる。
支持体20の面100(以下、支持体面100という)には、図1及び図6に示すように、マイクロアレイ18とパッキング22を設置する位置を決めるマーキング28が施されている。マーキング28の形状は、パッキング22の形状と同じである。そして、マーキング28内のマイクロアレイ支持部26にマイクロアレイ18とパッキング22が設置される。
マーキング28を施す方法は、マイクロアレイ18を正確な位置に固定できるものであれば特に限定されず、例えば、マイクロアレイ18と同形状の窪みを支持体20の支持体面100側に形成する方法であってもよく、マイクロアレイ18を設置する位置に実線、点線等の塗装を行う方法であってもよい。
特に好ましいマーキング28の形成方法は、結晶化区画32に充填された蛋白質含有試料と結晶化剤保持部16とが各々正確に接触するように、マイクロアレイ18とマイクロプレート24とを積層させやすい点から、マイクロアレイ18を支持体20に設置したときにマイクロアレイ18の上面と支持体面100とが同じ高さになるように窪みを形成させる方法である。
また、支持体面100には、マイクロアレイ18とマイクロプレート24とを積層する際、それらを所望の位置に位置決めするためのプレート位置決め部材44が設けられており、マイクロアレイ18とマイクロプレート24とを圧着するためのネジ孔40が設けられている。
プレート位置決め部材44の形状、位置及び個数は、マイクロアレイ18とマイクロプレート24との位置決めができるものであれば特に限定されない。また、ネジ孔40の形状、位置及び個数についても、マイクロアレイ18とマイクロプレート24とを圧着できるものであれば特に限定されない。
パッキング22は、マイクロアレイ18と同じ形状及び面積である中空部23を有している。パッキング22がマーキング28に合わせてマイクロアレイ支持部26上に設置され、パッキング22の中空部23にマイクロアレイ18が設置されることにより、マイクロアレイ18が支持体20に正確に設置される。
パッキング22の材料は、蛋白質結晶化装置1におけるその他の構成要素(支持体20、マイクロアレイ18、マイクロプレート24等)と組み合わせて用いるのに適当なものであれば特に限定はない。パッキング22としては、例えば、シリコンゴム製のパッキング等が挙げられる。
マイクロアレイ18は、図2に示すように、基板10に中空管状体である中空繊維12が2本以上、区画配列されて固定されており、これらの中空繊維12が中空部14を有しており、中空部14中に蛋白質結晶化剤を保持した結晶化剤保持部16を有している。すなわち、マイクロアレイ18は、蛋白質結晶化剤を保持した結晶化剤保持部16を2つ以上有している。マイクロアレイ18は、特に限定されないが、このような2本以上の中空繊維12を有するものであることが好ましい。
マイクロアレイ18の形状等は、結晶化剤保持部16が多数個整列配置されており、結晶析出の観察を妨げないものであれば、特に限定されない。
マイクロアレイ18の形状としては、例えば、円形、正方形、長方形等の形状が挙げられる。また、マイクロアレイ18の厚みは、結晶化の効率の向上や、結晶析出の観察の容易化及び迅速化を考慮して任意に選択することができる。マイクロアレイ18の厚みは、前記の点から、0.1〜5mmであることが好ましく、0.2〜2mmであることがより好ましい。
また、マイクロアレイ18は、透明素材からなるアレイである。ここで、透明とは、光透過率が80%以上であることを意味する。
マイクロアレイ18における基板10の材料としては、例えば、透明な樹脂、ガラス、又はこれらの材料を組み合わせて作製した複合体等が挙げられる。基板10は、蛋白質結晶の析出の有無を容易に確認できる点から、光透過性の高い材料であることが好ましい。
中空繊維12としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート等のメタクリレート系モノマー、メチルアクリレート、エチルアクリレート等のアクリレート系モノマーの単独重合体又はこれらの共重合体、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ノボルネン/エチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ガラス等から形成されるものが挙げられる。
また、中空繊維12は、必要に応じて反応性官能基を導入したものであってもよい。
中空繊維12の内壁表面は、無処理の状態で用いてもよいが、必要に応じて、プラズマ処理やγ線、電子線等の放射線処理を施したものであってもよい。
中空繊維12の外径は、単位面積あたりの結晶化剤保持部16の数を多くする点から、2mm以下であることが好ましく、0.7mm以下であることがより好ましい。また、中空繊維12の内径は、前記外径の範囲内で適宜選択すればよい。
基板10に、2つ以上の中空繊維12を区画配列して固定する方法は特に限定されず、例えば、以下の方法を用いることができる。
まず、中空繊維12を、所定の間隔をもって平行に配列させる。これらの中空繊維12を収束した後に接着することにより、繊維配列体(三次元配列体)を形成することができる。得られた繊維配列体を、ミクロトーム等の切片作成用の装置を用いて、繊維軸と交差する方向、好ましくは繊維軸に対して垂直方向に切断することにより、繊維配列体断面を有する薄片(図2)からなるマイクロアレイを得ることができる。
このとき、中空繊維12を規則的に配列させ、樹脂接着剤等で接着することにより、例えば、縦横に中空繊維12が整然と規則的に配列した中空繊維配列体を得ることができる。中空繊維配列体の形状は特に限定されるものではないが、通常は、繊維を規則的に配列させることにより、正方形、長方形、円形等に形成される。
「規則的に」とは、一定の大きさの枠の中に含まれる繊維の本数が一定となるように順序良く配列させることをいう。例えば、直径1mmの繊維を束にして断面が縦10mm、横10mmの正方形となるように配列させようとする場合は、その正方形の枠内(1cm)における1辺に含まれる繊維の数を10本とし、この10本の繊維を1列に束ねて1層のシートとした後、このシートが10層になるように重ねる。その結果、縦に10本、横に10本、合計100本の繊維を配列させることができる。ただし、繊維を規則的に配列させる手法は、上記のようにシートを重層するものに限定されるものではない。
マイクロアレイ18として、上記のような、複数の中空管状体を配列してなるマイクロアレイを用いることによって、マイクロアレイ18の厚み、結晶化剤保持部16の体積、保持される蛋白質結晶化剤の種類及び濃度等を、良好に制御して、かつ効率良く、蛋白質結晶化装置を得ることができる。
結晶化剤保持部16は、蛋白質結晶化剤を保持する多孔質体(以下、保持相という)に蛋白質結晶化剤を保持させたものである。保持相は、蛋白質結晶化剤を保持することができ、結晶化剤保持部16と結晶化区画32に充填された蛋白質含有試料とを接触させた際に、保持している蛋白質結晶化剤が結晶化区画32の蛋白質含有試料中に移動するものを用いることができる。
前記保持相としては、ゲルを用いることが好ましい。ゲルを用いることにより、結晶化剤保持部16から、結晶化区画32に充填された蛋白質含有試料への蛋白質結晶化剤の移動が、適度に緩やかな速度に制御され、安定した結晶化が実現できる。
ゲルの材料は特に制限されず、例えば、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−アクリロイルアミノエトキシエタノール、N−アクリロイルアミノプロパノール、N−メチロールアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルメタクリレート、(メタ)アクリル酸、アリルデキストリン等の単量体の1種又は2種以上と、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等の多官能性単量体とを水性媒体中で共重合したゲル等が挙げられる。また、アガロース、アルギン酸、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等のゲル、又はこれらを架橋したゲル等を用いることもできる。
マイクロアレイ18に、上記のようなゲルを保持させるには、例えば、ゲルの構成成分であるアクリルアミド等の単量体、多官能性単量体及び開始剤を含む液を中空繊維12等の容器に注入し、重合させてゲル化させればよい。ゲル化させる方法としては、多官能性単量体の存在下に共重合させる方法の他、多官能性単量体の非存在下にその他の単量体を共重合させた後に架橋剤を用いる方法であってもよい。また、ゲル材料としてアガロースを用いる場合は、温度降下によってゲル化を行ってもよい。
蛋白質結晶化剤をゲルに保持させる方法は、特に制限されるものではない。例えば、予め蛋白質結晶化剤と前記重合性単量体とを混合して、中空繊維12等の容器に導入しておき、その後、重合反応を行ってゲルを形成させることにより、蛋白質結晶化剤をゲルに保持させることができる。ここで、蛋白質結晶化剤に多孔性粒子等を含浸させることにより、該粒子をゲルに包括させることもできる。
なお、マイクロアレイ18は、外気との接触を防ぐ密閉性のよい容器やシール等で密閉することにより保存することが好ましい。密閉性のよい容器としては、例えば、気体や水の透過率の小さい高分子材料や、ガラス、金属等からなる容器が挙げられる。また、このようなマイクロアレイは、低温で保存されることが好ましく、特に長期にわたる保存の場合は凍結保存してもよい。
また、各々の結晶化剤保持部16は、異なる蛋白質結晶化条件で調製されたゲルからなることが好ましく、このようにすることで結晶化条件のスクリーニングを一枚のマイクロアレイ上で迅速に行うことができる。
ここで、蛋白質結晶化条件とは、蛋白質結晶化剤の種類及び濃度、蛋白質結晶化剤を保持させる保持相の種類等であり、例えば、蛋白質結晶化剤を保持させて固化させた後のゲルのpH、ゲルの組成、架橋度、結晶化させる際の結晶化剤保持部16及び結晶化区画32の温度、時間、冷却プロファイル等である。
蛋白質結晶化剤の種類としては、例えば、沈殿剤、pH緩衝剤、これらの任意の組み合わせ等が挙げられる。
沈殿剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ポリエチレングリコール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、硫酸アンモニウム等が挙げられる。
pH緩衝剤としては、例えば、酢酸ナトリウム三水和物、リン酸カリウム、イミダゾール、クエン酸ナトリウム、カコジル酸ナトリウム等が挙げられる。
これらは1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
市販品の蛋白質結晶化剤としては、例えば、Emerald BioStructures社製「WIZARD I」「WIZARD II」、Hampton Research社製「Crystal screen」、「Grid Screen」等が挙げられる。
蛋白質結晶化剤の濃度は、用いる蛋白質結晶化剤の種類にもよるが、例えば、ポリエチレングリコールからなる沈殿剤の場合は、5〜50体積%、好ましくは10〜35体積%であり、pH緩衝剤の場合には、0.05〜0.5mol/L、好ましくは0.1〜0.2mol/Lである。
上述のように、各々の結晶化剤保持部16を、それぞれ異なる蛋白質結晶化条件で調製することにより、対象の蛋白質についての結晶化条件のスクリーニングを迅速に行うことができる。スクリーニングの条件としては、例えば、蛋白質結晶化剤の濃度を多段階に設定することが好ましい。具体的には、塩化ナトリウムからなる沈殿剤を用いる場合は、0.5〜4.0mol/Lの範囲内で、5段階、10段階、20段階というような希釈列を作製し、それぞれの濃度の蛋白質結晶化剤を結晶化剤保持部16に充填する方法が挙げられる。
マイクロアレイ18は、10〜1000個の結晶化剤保持部16を有することが、より多数の結晶化条件における結晶化を一括して行えるために好ましい。例えば、通常の蛋白質結晶化条件のスクリーニングにおいては、800種類程度の結晶化条件を検討することが必要であるため、結晶化剤保持部16の数が10以上であることが好ましい。一方、結晶化剤保持部16の数が1000を超えると、結晶化剤保持部16間の間隔が非常に狭くなって取り扱いの効率が低くなる。
図3は、マイクロプレート24の中央部を拡大した模式図である。また、図4は、支持体20、マイクロアレイ18、マイクロプレート24が組み立てられた状態の一部の断面図である。
マイクロプレート24は、図3、4に示すように、マイクロアレイ18の結晶化剤保持部16の各々と対応した配列の結晶化区画32と、該結晶化区画32それぞれを区分するように間に設けられた凹部34とを有する。すなわち、結晶化剤保持部16と同数の結晶化区画32が、マイクロプレート24の反応面102側(図1)に設けられている。なお、各々の結晶化区画32は、マイクロプレート24において凹部34に対して凸な部位である結晶化区画支持部31の先端にそれぞれ支持されている。
マイクロプレート24は、支持体20に支持されたマイクロアレイ18上に積層される。すなわち、マイクロプレート24とマイクロアレイ18とを、各々の結晶化区画32と結晶化剤保持部16とを対応させて積層することにより、図4に示すように、結晶化区画32が結晶化剤保持部16によって密閉され、結晶化区画支持部31に支持された結晶化区画32と結晶化区画32との間には各々凹部34が位置される。また、凹部34は、マイクロアレイ18の基板10部分により塞がれることとなる。
なお、マイクロプレート24においては、前記凹部34を含んだ、マイクロアレイ18の面に対応する領域が凹状となっており(結晶化区画支持部31の部分は除く)、結晶化区画32が配列された領域の外縁部も凹部となっている。以下、マイクロプレート24の反応面102のうち、結晶化区画32が配列された凹状の領域を、シール部30と称する。
本実施形態例では、支持体20上に、マイクロプレート24と支持体20とを積層する際に結晶化区画32と結晶化剤保持部16とを対応させるプレート位置決め部材44がさらに設けられており、マイクロプレート24上に、前記プレート位置決め部材44と対応するプレート位置決め孔46が形成されている。
また、本実施形態例では、図1及び図5に示すように、マイクロプレート24の外側面104から反応面102へ貫通するシール剤注入口48が穿たれている。図5に示すように、2つのシール剤注入口48がシール部30を介して互いに反対側に穿たれている。これにより、マイクロプレート24とマイクロアレイ18を積層させた状態で一方のシール剤注入口48からシール部30にシール剤である水を注入した場合に、初めにシール部30内に存在していた空気が他方のシール剤注入口48から排出されるため、凹部34を含むシール部30に水が確実に充填される。そのため、シール部30において凹部34の間に位置する結晶化区画32がより確実に密閉される。
マイクロプレート24の形状は、マイクロアレイ18と重ね合わせることができるものであれば特に限定されず、マイクロアレイ18の形状を考慮して任意のものを用いることができる。
また、マイクロプレート24は透明素材からなる。マイクロプレート24の材料としては、例えば、透明な樹脂、ガラス等を例示することができ、これらの中から任意のものを選択し、1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。また、マイクロプレート24は、結晶化区画32における蛋白質の結晶化状態を容易に観察するため、特にマイクロアレイ18と重ねた際に各結晶化剤保持部16と対応して重なる部分が高い光透過性を有していることが好ましい。
結晶化区画32の形状は、蛋白質含有試料を充填可能であり、結晶化剤保持部16と接触した際に密閉されるものであれば、特に限定されない。
結晶化区画32の容量は、対象の蛋白質について結晶化条件のスクリーニングを行うことを目的とする場合には、結晶化条件のスクリーニングに要する蛋白質量を低減するために、0.5μL未満であることが好ましい。一方、ここで析出した結晶を引き続いてX線構造解析に供する、又は構造解析に供する結晶を作製するための種結晶として用いることを目的とする場合には、X線構造解析を行うことのできる0.1mm以上の大きな結晶を得るために、結晶化区画32の容量は0.5μL以上であることが好ましい。
結晶化剤保持部16と結晶化区画32との面積の関係は、結晶化剤保持部16と結晶化区画32とが接触する面の面積が、結晶化剤保持部16に保持された蛋白質結晶化剤が結晶化区画32に移動して、該結晶化区画32に充填された蛋白質含有試料と反応することができる条件であればよく、結晶化剤保持部16よりも結晶化区画32の方が大きくてもよい。
ただし、結晶化区画32は、マイクロアレイ18を構成する基板10には接触しないことが好ましい。
本実施形態例では、さらに、図4に示すように、結晶化区画32の間に設けられた凹部34の全てに、シール剤35として水が充填される。結晶化区画32と凹部34とは十分に隔離されているため、マイクロアレイ18とマイクロプレート24とを圧着した状態で水が充填されることにより、水が結晶化区画32内の蛋白質含有試料に浸入することが防止される。
本実施形態の蛋白質結晶化装置1はマイクロプレート24が凹部34を有しており、圧着によりマイクロプレート24とマイクロアレイ18とを積層している際、結晶化区画32からはみ出した蛋白質含有試料は凹部34に流れ込むため、はみ出した蛋白質含有試料が隣接する結晶化区画32に浸入することを防ぐことができる。また、シール剤35として水を凹部34に充填することにより、蛋白質含有試料の蒸発を防止することができ、かつ、はみ出した蛋白質含有試料を洗い流すことで、異なる結晶化区画32の蛋白質含有試料同士の混合及び近接する結晶化区画32への浸入を確実に防止することができる。
本実施形態例では、さらに、支持体20に支持されたマイクロアレイ18とマイクロプレート24とを圧接する機構として、図1に示すように、支持体20を貫通する第一のネジ孔40と、第一のネジ孔40に対応してマイクロプレート24を貫通する第二のネジ孔42とが設けられている。これらの第一のネジ孔40、第二のネジ孔42に、図1に示すようにネジ41が螺挿されることにより、結晶化区画32がより安定に密閉状態に保持される。
また、蛋白質結晶化装置1には、結晶化区画32における蛋白質の結晶化をモニタリングする検出機構をさらに設けてもよい。
前記検出機構としては、例えば、マイクロプレート24の外側面104に設置された顕微鏡と、顕微鏡に搭載されたCCDカメラからなる検出機構等が挙げられる。このような検出機構において、顕微鏡に搭載したCCDカメラにより結晶の析出の様子を撮影記録し、記録された画像データを処理することによって、結晶化の成否を迅速に判断することができ、蛋白質結晶化条件を迅速に決定できる。
なお、本発明の方法に用いる蛋白質結晶化装置は図示したものには限定されない。例えば、本実施形態例においては、マイクロアレイ18が、支持体20のマイクロアレイ支持部26上に設置されているが、マイクロアレイ18は、結晶化剤保持部16が結晶化区画32に対応して該結晶化区画32を密閉できるように設置されていればよい。マイクロアレイ18は、支持体20に接着されていてもよいし、マイクロアレイ支持部26を凹状に形成し、該マイクロアレイ支持部26の底部に接着せずに積層されていてもよい。
マイクロアレイ18は、1枚のみを支持体20に積層してもよく、複数枚を積層してもよい。複数枚のマイクロアレイ18を支持体20に積層すれば、結晶化剤保持部16のゲルの量が厚みの分だけ増加するため、蛋白質含有試料と接触する蛋白質結晶化剤の量を増加させることができる。
[結晶の観察方法]
本発明の結晶の観察方法は、前述の蛋白質結晶化装置を用いて結晶を観察する方法であって、結晶化区画に蛋白質含有試料が充填された透明素材からなるマイクロプレートと、蛋白質結晶化剤を含有する結晶化剤保持部を有する透明素材からなるマイクロアレイとを、各々の蛋白質含有試料と結晶化剤保持部とが接触するように重ね合わせる組み立て工程(1)と、前記組み立て工程(1)の後に、前記凹部に水を充填する水充填工程(2)と、前記水充填工程(2)の後に、析出した結晶をマイクロプレート越しに観察する観察工程(3)とを含む方法である。
以下、本発明の結晶の観察方法の一実施形態例として、前記蛋白質結晶化装置1を用いた方法について説明する。
(蛋白質含有試料の充填)
マイクロプレート24の結晶化区画32に蛋白質含有試料を充填する方法は、特に限定されず、例えば、自動分注機を用いる方法が挙げられる。
本発明において、蛋白質結晶化条件のスクリーニングを目的とする場合は結晶化区画32の容量を0.5μL未満とすることが好ましく、X線構造解析に供する結晶やその種結晶の作製を目的とする場合は結晶化区画32の容量を0.5μL以上とすることが好ましい。
本発明において、蛋白質含有試料とは、結晶化しようとする蛋白質、又は結晶化条件を特定しようとする蛋白質(以下、対象の蛋白質と称する)を含む試料である。蛋白質としては、天然又は合成のペプチド、ポリペプチド、蛋白質及び蛋白質複合体が挙げられる。これらの物質は、天然もしくは合成材料から抽出・単離、又は遺伝子工学的手法もしくは化学合成手法等により生成した後、通常の精製法、例えば溶媒抽出、カラムクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー等を組み合わせて用いることにより、対象の蛋白質を精製しておくことが好ましい。
蛋白質含有試料中の蛋白質濃度及び純度も蛋白質結晶化条件の一要因となるため、数段階の濃度及び純度の蛋白質含有試料を調製して蛋白質結晶化剤と反応させてもよい。蛋白質濃度としては、1〜50mg/mLの範囲内で数段階に変更することが好ましい。また、蛋白質結晶化剤と反応させる蛋白質含有試料の量は、用いる結晶化区画32の容量及び数等に応じて適宜変更すればよい。また、蛋白質含有試料の粘度は、該蛋白質含有試料を保持した結晶化区画32を下に向けてマイクロプレート24を保持した際に結晶化区画32から蛋白質含有試料が漏出しなければ特に限定されない。
蛋白質含有試料は、対象の蛋白質の他、さらに、蛋白質の溶解を助ける蛋白質可溶化剤、還元剤等の安定化剤等を含有してもよい。蛋白質可溶化剤としては、例えば膜蛋白質を溶解させる界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤を用いると、蛋白質含有試料中に膜蛋白質等の水溶解性の低い蛋白質を良好に分散させることができ、本実施形態例の蛋白質結晶化装置1を適用することにより効率よく蛋白質の結晶化が行える。
結晶化区画32への蛋白質含有試料の充填は、XYステージを有する自動分注機(武蔵エンジニアリング(株)社製)に、マイクロプレート24を固定して、結晶化区画32に適量ずつ滴下する方法が挙げられる。適量とは、結晶化区画32の容量が50nLである場合は、50nL以上であり、好ましくは60〜70nLが好ましい。
また、蛋白質含有試料を結晶化区画32に充填する方法としては、蛋白質含有試料を全ての結晶化区画32に同一の分量で充填することができ、結晶化区画32以外の構成要素への付着を抑えられる方法であればよく、例えば、自動分注機を用いずに、ピペッター等を用いて結晶化区画32の各々に蛋白質含有試料を充填してもよい。ただし、蛋白質含有試料の無駄を減らし、迅速に行うためには、前記自動分注機を用いることが好ましい。
なお、蛋白質含有試料の充填においてピペッターを用いる場合は、ピペッターに吸引して保持させた蛋白質含有試料を吐出する機構を用いず、ピペッターの先端部に付着した微量の液滴を結晶化区画32付近に接触させるようにして充填することが好ましい。
(組み立て工程)
マイクロアレイ18は、図1に示すように、支持体20上のマーキング28に合わせてパッキング22を設置し、該パッキング22の中空部23に格納するように支持体20上に設置する。
つぎに、組み立て工程(1)において、蛋白質含有試料が結晶化区画32に充填されたマイクロプレート24を、反応面102を下にして保持し、支持体20に支持されたマイクロアレイ18の上に積層する。このとき、支持体20上に設けられたプレート位置決め部材44が、プレート24に穿たれたプレート位置決め孔46を貫通するようにする。これにより、各々の結晶化区画32の蛋白質含有試料と結晶化剤保持部16とが接触するように対応させて重ね合わされる。
実験操作上、結晶化剤保持部16に保持されているゲルが乾燥した場合は、そのままマイクロプレート24を積層すると結晶化区画32内に気泡が混在する場合がある。そのため、気泡を混在させないようにするために、予め結晶化剤保持部16に蛋白質含有試料を供し、ゲルが充分に膨潤した後にマイクロプレート24を積層するようにしてもよい。このとき、結晶化区画32に入りきらない余分な蛋白質含有試料ははみ出し、結晶化区画32から凹部34へと押し出されて、外縁部(結晶化区画支持部31)により区切られることになる。これにより、結晶化区画32内の蛋白質含有試料と結晶化剤保持部16内のゲルが正確に接触する。
なお、本実施形態例では支持体20に支持されたマイクロアレイ18の上に、マイクロプレート24が反応面102を下にして積層されるが、結晶化区画32に蛋白質含有試料が充填されたマイクロプレート24を、反応面102を上にして静置し、該マイクロプレート24の上に、マイクロアレイ18を支持した支持体20を、支持体面100を下にして積層してもよい。シール剤注入口48からのシール剤35である水の注入、あるいは結晶化区画32に析出した結晶の観察を行いやすい点を考慮すると、マイクロプレート24の外側面104を上にして設置する方法を用いることが好ましい。
マイクロアレイ18を、支持体20とマイクロプレート24とに挟んだまま、ネジ孔40とネジ孔42にネジ41を螺挿して固定する。この作業で圧着の力を緩めると、結晶化区画32内に気泡が発生する原因となるので、そのまま圧力を緩めない状態でネジ41にて固定することが好ましい。
このような圧着方法によれば、結晶化剤保持部16に保持されたゲルを蛋白質含有試料で充分に膨潤させることができる。その後、顕微鏡を用いて、蛋白質含有試料の充填状態を確認する。
(水充填工程)
蛋白質含有試料が各々の結晶化区画32に充填されていることを確認した後、水充填工程(2)において、図5、7に示すように、マイクロプレート24に穿たれたシール剤注入口48から、ピペット等を用いてシール剤35である水をシール部30に充填する。
充填する水は、汚染(コンタミ)やカルシウム析出などにより結晶が見え難くなるおそれがあることから水道水などは避け、蒸留水、イオン交換水、逆浸透水などを用いることが好ましい。
シール剤35である水の注入量は、シール部30の全域において凹部34に水が行き渡り、かつ、一方のシール剤注入口48から水を注入した際に、他方のシール剤注入口48から水が漏出しない最大量であることが好ましい(図5及び図7)。
(観察工程)
水充填工程(2)の後、蛋白質結晶化装置1を、蛋白質が析出するのに充分な時間にわたって、ある温度条件下にて、密閉状態又は大気中で静置する。
蛋白質の結晶化条件のスクリーニングを行っている場合、蛋白質が析出するのに充分な時間とは、特定の蛋白質、濃度、結晶化条件等により異なるが、約1時間〜10日であり、さらに結晶採取を容易くするように結晶を大きく成長させるために、3週間以上静置することが好ましい。結晶化が困難な蛋白質含有試料の結晶化実験においては、2ヶ月以上静置して結晶が析出しないかを観察する。
また、温度条件は、蛋白質結晶化条件の一要因であるため、温度条件を変更して結晶化を行ってもよい。温度条件は、例えば、4℃、15℃、18℃、22℃等のように、複数の段階に設定することが好ましい。
蛋白質が析出するのに充分な時間が経過した後、蛋白質の結晶析出の状況を観察する。このとき、マイクロプレート24の外側面104側からマイクロプレート24越しに結晶の観察を行う。結晶の観察は、例えば光学顕微鏡等にて観察することが好ましい。
このようにして、結晶化条件のスクリーニングを行い、対象の蛋白質について最適な結晶化条件を決定することができる。
この例の蛋白質結晶化装置においては、蛋白質含有試料を結晶化区画32に充填した後に、マイクロプレート24とマイクロアレイ18が積層されることによって、結晶化剤保持部16と蛋白質含有試料を充填した結晶化区画32とが対応するように重ね合わされる。これより、結晶化剤保持部16に保持された蛋白質結晶化剤が、結晶化区画32内へ移動して蛋白質と反応する。各々の結晶化剤保持部16が異なる結晶化条件に設定されている場合、対象の蛋白質が結晶化するために適当な結晶化条件に設定された結晶化区画32内に結晶が析出する。
また、X線構造解析に供する結晶やその種結晶の作製を目的として、結晶化区画32の容量を0.5μL以上とした場合は、全ての結晶化区画32のうち、結晶の析出した結晶化区画32において、引き続いて結晶を成長させることができる。あるいは、析出した結晶を結晶化区画32から回収して種結晶として用い、公知の蛋白質結晶化方法により、種結晶を回収した結晶化区画32と同様の結晶化条件において、構造解析用の結晶を作製することができる。公知の蛋白質結晶化方法としては、例えば、蒸気拡散法、ハンギングドロップ法、シッティングドロップ法、透析法、バッチ法等が挙げられる。
本発明の方法を用いて蛋白質結晶化条件のスクリーニングを行った場合は、求めた最適の結晶化条件において再度、目的蛋白質の結晶化を行い、構造解析用の結晶を得ることができる。そして、得られた構造解析用の結晶を回収し、回収した結晶を公知の方法でX線構造解析に供することにより、対象の蛋白質の立体構造を決定できる。
以上説明した本発明の結晶の観察方法は、微量試料で多種類の結晶化条件で結晶化を行うことができ、かつ2ヶ月以上の長期間にわたって結晶析出を観察することができる。そのため、結晶化が難解で、スクリーニング実験でも2ヶ月以上を要するような蛋白質含有試料であっても、微量試料で多種類の結晶化条件で結晶化を行うことができる。
これは、本発明では凹部にシール剤として水を充填していることで、従来シール剤として用いられていた、水蒸気を通し難いパラフィンオイル等のオイルに比べてマイクロアレイの乾燥を効果的に抑制することができ、結晶化区画32内における蛋白質含有試料中の微量の水分の蒸発を防ぐことができるためであると考えられる。これにより、結晶化区画32内の気泡発生により結晶の観察を妨げられることを抑え、2ヶ月以上の観察を行うことが可能となることから、結晶化が困難な蛋白質含有試料の結晶化の検討も微量で行うことができる。
また、本発明における検討の結果、凹部に水を充填するだけでも気泡の発生を抑制する効果があることがわかったが、このように凹部に水を充填するのみでマイクロアレイの乾燥を防ぐことができることは予想できなかったことである。
このように、本発明の方法は、特許文献3の方法のようにデバイス自身を使用前に100時間以上水に漬け込んで保湿する必要もないため簡便である。また、漬け込んだ水により極微量の蛋白質含有試料が汚染されるおそれもないため、結晶化区画に析出した結晶を2ヶ月以上もの間確実に観察することができる。
また、本発明における蛋白質結晶化装置では、蛋白質含有試料は結晶化区画32内に保持され、結晶化剤保持部16により密閉されており、また、各々の結晶化区画32が凹部34によって隔離されているので、蛋白質の結晶化中においても隣接する結晶化区画32間での蛋白質含有試料の移動や、結晶化剤保持部16間での蛋白質結晶化剤の混合を防止することができる。また、蛋白質含有試料からの溶液の蒸発も抑制することができ、nLレベルの微少量の蛋白質含有試料であっても安定して保持することができる。したがって、高い信頼性をもって蛋白質の結晶化を行うことができ、結晶化条件の好不適を信頼性よく判定できる。
さらに、凹部34にシール剤35として水が充填されると、結晶化中の蛋白質含有試料同士の混合及び近接する結晶化区画32への侵入をより効果的に防ぐことができる。その結果、蛋白質含有試料が微量であっても結晶化条件を良好に制御することができる。
また、マイクロアレイ18を支持した支持体20と、マイクロプレート24とを圧接することにより、結晶化区画32を安定して密閉することができるため、さらに高い信頼性をもって結晶化を行うことができる。
また、結晶化区画32の容量を適宜選択することにより、蛋白質結晶化条件のスクリーニング及び構造解析用の結晶の作製を、いずれも迅速かつ正確に行うことができる。
本発明の結晶の観察方法は、例えば、医薬分野等における研究、開発において、結晶化が難しく、微量試料であっても2ヶ月以上の長期間の観察を要する結晶化条件のスクリーニングに好適に用いることができる。
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明する。ただし、本発明は以下の記載によっては限定されない。
(中空繊維配列体の作製)
結晶化剤保持部を支持する構成要素として、中空繊維配列体を作製した。
直径0.32mmの孔を有し、孔の中心間距離が0.42mmであって、縦横各10列に合計100個配列された厚さ0.1mmの多孔板2枚を重ね、これらの多孔板の各孔に、ポリエチレン製中空繊維(三菱レイヨン(株)社製、外径約500μm、内径約300μm、長さ約100cm)100本を通過させた。ついで、中空繊維を張った状態で、中空繊維の一方の端部から10cmの位置と40cmの位置の2箇所を多孔板に固定し、2枚の多孔板の間隔を30cmとした。
次に2枚の多孔板間の空間の3方をシリコン製の板状物で囲み、開放された残りの一方から、樹脂原料として、ポリウレタン樹脂接着剤からなる樹脂を2枚の多孔板の間に流し込んだ。引き続き、室温で1週間静置し、樹脂を硬化させた。その後、多孔板及び多孔板間に設置した板状物を取り除き、中空繊維配列体を得た。
(中空繊維配列体への高分子ゲルの導入固定化)
以下の組成からなる溶液を調製した。
アクリルアミド(3.7質量部)
メチレンビスアクリルアミド(0.3質量部)
2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩(0.1質量部)
この溶液に以下の蛋白質結晶化剤を混合した。
塩化ナトリウム(2.0mol/L(溶液中))、ポリエチレングリコール(M.W.1500、10体積%(溶液中))。
この混合溶液と、前記中空繊維配列体とをデシケータ中に入れ、各中空繊維の自由端部の内、長い方の端部をこの混合液中に浸漬した状態で、デシケータ内を減圧状態にすることにより、中空繊維の中空部に前記混合液を導入した。ついで、この中空繊維配列体を、内部が水蒸気で飽和された密閉ガラス容器に移し、80℃で4時間かけて重合反応を行った。これにより、蛋白質結晶化剤を含有したアクリルアミドゲルが中空繊維の中空部に固定された中空繊維配列体を得た。
(ゲル充填中空繊維配列体薄片の作製)
前記で得られたアクリルアミドゲル含有中空繊維配列体を、中空繊維の長手方向に直交する方向でミクロトームを用いて約2mmの厚さに切り出すことにより、中空繊維の中空部にゲルが充填された縦横各々10個、計100個の中空繊維が規則的に正方に配列された配列体薄片を得た。図2は、前記工程によって得られたゲル含有中空繊維配列体薄片を示す。図2に示すように、中空繊維12の中空部14には前記で作製した結晶化剤含有アクリルアミドゲルが充填されている。これを、結晶化剤保持部16を有するマイクロアレイ18とした。
[実施例1]
図1に示す蛋白質結晶化装置を用い、リゾチーム(シグマアルドリッチ(株)社製)の結晶化を行った。マイクロアレイとして前記で作製したマイクロアレイ18を用い、支持体20、マイクロプレート24の材料としてアクリル樹脂を用いた。そして、前記マイクロアレイ18を、支持体20のマイクロアレイ支持部26にパッキング22と共に設置した。
(蛋白質含有試料の添加)
自動分注機(武蔵エンジニアリング(株)社製、JET MASTER)を用いて、マイクロプレート24の結晶化区画32に蛋白質含有試料を70nLずつ充填した。結晶化区画32は、直径0.7mm、高さ0.15mmの一端が閉じた円筒状であり、結晶化区画32の容量は50nLであった。自動分注機は特にこの装置に限定されるものではなく、また、滴下量も、各結晶化区画32あたり、結晶化区画32の容量の50nL以上の充分な試料が滴下されていればよい。蛋白質含有試料としては、リゾチーム含有水溶液(80mg/mL)を使用した。
(蛋白質結晶化装置の組み立て、蛋白質結晶化)
ついで、結晶化区画32に蛋白質含有試料が充填されたマイクロプレート24を、反応面102を下にして、支持体20に支持されたマイクロアレイ18の上に、結晶化区画32の蛋白質含有試料と結晶化剤保持部16とが接触するように対応させて積層した。
結晶化区画32に蛋白質含有試料が充填されていることを確認した後、マイクロプレート24に穿たれた一方のシール剤注入口48に、マイクロプレート24の外側面104側から、ピペットを用いてシール剤35である水を注入した。シール剤35としては、純水(MilliQ)を用いた。注入量は、シール部30の全域にシール剤が行き渡り、他方のシール剤注入口48からシール剤があふれる直前までとした
その後、蛋白質結晶化装置を20℃で3週間静置し、光学顕微鏡にてマイクロプレート24越しに結晶化区画32内を観察したところ、結晶の析出が観察できた(図8参照)。
(長期の結晶観察)
さらに引き続き静置して観察を行ったが、気泡の発生は確認されず、2ヶ月後においても結晶化区画32内に気泡が増加する兆候はなく、光学顕微鏡(レンズ72倍以下)により明確に結晶析出を確認することができた(図10参照)。
[比較例1]
シール剤35としてオイル(FOMBLIN)を用いた以外は実施例1と同様にして結晶化を行った。
蛋白質結晶化装置を20℃で3週間静置し、光学顕微鏡にてマイクロプレート24越しに結晶化区画32内を観察したところ、結晶の析出が確認できた(図9参照)。
(長期の結晶観察)
さらに引き続き静置して観察を行ったところ、5週間後から結晶化区画32内に徐々に気泡の発生が観察されるようになり、2ヶ月後には多量に発生した気泡により光学顕微鏡(レンズ72倍以下)を用いても結晶の観察が困難になった(図11参照)。
以上のように、本発明の方法によれば、2ヶ月以上静置しても結晶化区画32内に気泡が発生することを抑えることができ、長期間にわたって結晶の観察が可能である。そのため、本発明の方法を用いれば、2ヶ月以上の長期間の結晶観察を要するスクリーニング実験も可能となる。
本発明における蛋白質結晶化装置の一実施形態例を示す模式図である。 本発明におけるマイクロアレイの一実施形態例を示す図である。 本発明におけるマイクロプレートの一実施形態の一部を示す模式図である。 本発明における蛋白質結晶化装置の一実施形態の一部を示す断面図である。 図3のマイクロプレートの平面図である。 本発明における支持体の一例を示す平面図である。 図1の蛋白質結晶化装置の外側面104側から見た平面図である。 実施例1の3週間後の結晶化区画を光学顕微鏡で観察した図である。 比較例1の3週間後の結晶化区画を光学顕微鏡で観察した図である。 実施例1の2ヵ月後の結晶化区画を光学顕微鏡で観察した図である。 比較例1の2ヵ月後の結晶化区画を光学顕微鏡で観察した図である。
符号の説明
1 蛋白質結晶化装置 16 結晶化剤保持部 18 マイクロアレイ 20 支持体 24 マイクロプレート 32 結晶化区画 34 凹部

Claims (1)

  1. 蛋白質含有試料を充填する複数の結晶化区画及び該結晶化区画それぞれを区分する凹部が設けられた透明素材からなるマイクロプレートと、前記結晶化区画に対応する位置に、蛋白質結晶化剤を含有する複数の結晶化剤保持部を有する透明素材からなるマイクロアレイとを備えた蛋白質結晶化装置を用いて結晶を観察する方法であって、
    前記蛋白質結晶化剤を含有する結晶化剤保持部を有するマイクロアレイと、前記結晶化区画に蛋白質含有試料が充填されたマイクロプレートとを、前記マイクロアレイを支持する支持体を用いて、各々の蛋白質含有試料と結晶化剤保持部とが接触するように重ね合わせる組み立て工程と、
    前記組み立て工程の後に、前記凹部に水を充填する水充填工程と、
    前記水充填工程の後に、析出した結晶をマイクロプレート越しに観察する観察工程とを含むことを特徴とする結晶の観察方法。
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