JP2009262185A - 鋳造開始時の凝固遅れを検知する連続鋳造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、鋼の連続鋳造方法に係り、詳しくは鋳造開始時の凝固遅れを検知する技術に関する。
この種の技術として特許文献1は、連続鋳造方法による鋳造中に鋳片の縦割れ欠陥の発生を検知する、連続鋳造鋼片の表面欠陥検知方法を開示する。この方法においては、鋳型壁内に複数の測温素子を埋設し、この測温結果に基づいて、当該素子に対応する位置の鋳片に縦割れが発生したと判定するようになっている(特許文献1請求項1、特許文献1段落番号0001)。また、実施例として、上記の検知技術を、『鋳造速度(Vc)を1.50m/minから1.94m/minに増速しているときに』(特許文献1段落番号0040)適用し、その結果が良好であったことを報告している。
また、特許文献2には、鋳型コーナー部の抜熱流束と、鋳型面部の抜熱流束と、の割合を所定の範囲内とし、この範囲を外れた場合は、鋳片引き抜き速度を変更するなどし、もって、鋳片の割れやブレークアウトを防止しようとする技術を開示する(特許文献2請求項1、特許文献2段落番号0027)。
ところで、鋳造速度Vc[m/min]を0から例えば1.5まで上昇させる鋳造開始時においては、既に所望の鋳造速度Vc[m/min]が得られている定常状態としての定速鋳造時と比べると、ブレークアウトにつながるような著しい凝固遅れが発生し易い。これは、以下の理由によるものと考える。
即ち、上記の鋳造開始時においては、鋳造速度Vc[m/min]を上昇させるために、浸漬ノズルからの吐出流の流量を増加させる操業となる。このように浸漬ノズルからの吐出流の流量が一定ではなく変動する場合はメニスカスの安定性の確保が困難となる。そして、このメニスカスに乱れが生じると、鋳型鋳片間にエアギャップが生じたり、パウダー焼結層(所謂ベア)やスカムが鋳型鋳片間に捕捉されたりして、鋳型による鋳片の抜熱が局所的に阻害され、著しい凝固遅れが発生する傾向にある。そのようなことから、鋳造開始時は、定速鋳造時と比較して上記著しい凝固遅れが発生し易い。
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、鋳造開始時において、著しい凝固遅れを適切に検知した上で、ブレークアウトを防止する操業技術を提供することにある。
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
本願発明の観点によれば、炭素含有量C[wt%]を0.08〜0.20とする中炭素鋼の連続鋳造を開始するために、鋳造速度Vcを0から所定の鋳造速度Vc1に至るまで増速させるに際し、下記式(1)を満足したとき、鋳造速度Vcの増速を中止して等速とし、下記式(2)を満足したとき、鋳造速度Vcの増速を再開することとする。
ただし、上記式(1)(2)において、qK[MW/m2]は鋳型広面の鋳片健全部に対向する部位であってメニスカス直下における熱流束を意味し、qO[MW/m2]は鋳型広面の鋳片凝固遅れ部に対向する部位であってメニスカス直下における熱流束を意味し、dqK/dt[MW/m2・min]は、上記熱流束qKの変化の割合を意味し、dqO/dt[MW/m2・min]は、上記熱流束qOの変化の割合を意味し、記号Ave(x)は変数xの時間平均を意味し、この時間平均の時間幅Δt[sec]は下記式(3)を満足するものとする。
ただし、上記式(3)において、H[m]は鋳型高さであり、ΔH[m]は鋳型上端からメニスカスに至るまでの距離であり、Vc´[m/min2]は鋳造速度Vc[m/min]の変化の割合[m/min2]である。
以上の方法によれば、鋳造開始時において、著しい凝固遅れを適切に検知した上で、ブレークアウトを防止できる。
話は遡って、上記特許文献1は鋳造速度を増加させる点について言及している。しかし、ここでいう増速とは所詮、定速鋳造時に限った話である。即ち、既に鋳造速度が1.5m/min程度に達している状態から1.94m/minに至るまで増速させる際の上記割合Vc´は本願と比較して全く小さいので、本願が対象としている鋳造開始時の増速と比較して技術的に容易であることは言うに及ばない。
先ず、凝固遅れの程度の指標としての凝固遅れ度Cg[%]を定義する。図1を参照されたい。図1は、凝固遅れ度Cg[%]の説明図である。この凝固遅れ度Cg[%]は鋳片を鋳造方向に対して垂直に切断して得られる切断面に視認し得る負偏析線に基づき鋳片のコーナー部夫々において観念でき、その何れの凝固遅れ度Cg[%]は下記式(4)に基づいて求められる。ただし、下記式(4)中、A[mm]は狭面から5[cm]離れた地点における負偏析線と広面との間の距離であり、B[mm]は負偏析線が広面に最も接近する地点における負偏析線と広面との間の距離である。
次に、図2を参照されたい。図2は、凝固遅れ度Cg[%]と鋳型直下B.O.発生頻度[%]との関係についての実績に基づくグラフである。即ち、溶鋼の炭素含有量C[wt%]を0.08〜0.20とし、鋳型幅W[mm]を1800以下とする鋳型を用い、鋳造速度Vc[m/min]を1.5以上として連続鋳造した際に、各チャージごとに、計3回、鋳片のコーナー部すべての凝固遅れ度Cg[%]を測定し、得られた12(=3×4)の凝固遅れ度Cg[%]のうち最も高い凝固遅れ度Cg[%]を横軸上で5[%]ごとに度数分けした。ここで、横軸上で「40」とあるのは、「40〜45」を意味するものとする。そして、各度数ごとに、サンプル数(データ数、度数分けされたチャージ数)が少なくとも10以上となるように上記の連続鋳造を繰り返した。すべての度数について上記サンプル数が満たされたら、各度数ごとに、(当該度数に分類されたチャージ数)を分母とし(当該度数に分類されたチャージ数のうち、鋳型直下B.O.が発生したチャージ数)を分子とする比率を「鋳型直下B.O.発生頻度[%]」として縦軸に示す。本図によれば、凝固遅れ度Cg[%]が40未満となるように操業すれば、鋳型直下B.O.の発生を防止できることが判る。この意味で、以下、本明細書中において「著しい凝固遅れ」とは、「“凝固遅れ度Cg[%]が40以上である”凝固遅れ」を意味するものとする。
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態を説明する。図3は、連続鋳造機の概略図である。先ず、本図に基づいて、連続鋳造機100の構成と作動を一例として簡単に説明する。
連続鋳造機100は、注湯される溶鋼を冷却して所定形状の凝固シェルを形成するための鋳型1と、図略のタンディッシュに保持される溶鋼を鋳型1へ所定流量で滑らかに注湯するための浸漬ノズル2と、鋳型1の直下から鋳造経路Qに沿って複数で並設されるロール対3と、を備える。本実施形態において前記の鋳造経路Qは、略鉛直方向に延びる垂直経路部と、この垂直経路部に接続され、円弧状に延びる円弧経路部と、更にその下流側に設けられ、水平方向に延びる水平経路部と、前記の円弧経路部及び水平経路部とを滑らかに接続するための矯正経路部と、から成る。
また、前記のロール対3の夫々は、鋳造対象としての鋳片を、両広面でもって挟持する一対のロール3a・3aから構成される。この一対のロール3a・3aのロール面間の最短距離としてのロールギャップ[mm]は適宜の手段により調節可能に構成される。
また、前記の鋳造経路Qの上流には、鋳型1内で形成され、該鋳型1から引き抜かれる凝固シェルに対して所定の流量で冷却水を噴霧する冷却スプレー4が適宜に設けられる。一般に、前記の鋳型1が1次冷却帯と称されるのに対して、この意味で、冷却スプレー4が配される経路部は2次冷却帯と称される。
鋳型1から引き抜かれ、鋳造経路Qに沿って搬送される凝固シェルは、自然放熱や、上記冷却スプレー4などにより更に冷却されて収縮する。従って、上記のロール対3のロールギャップ[mm]は、一般に、鋳造経路Qの下流側へ進むに連れて緩やかに狭くなるように設定される。
以上の構成で、スラブ鋳片の連続鋳造を開始するには、鋳型1へ溶鋼を注湯する前に予め図略のダミーバーを前記の鋳造経路Q内に挿入しておき、浸漬ノズル2を介して鋳型1へ溶鋼を注湯し始めると共に上記ダミーバーを下流側へ引き抜く。この鋳型1への溶鋼の注湯量と、ダミーバーの引き抜き速度と、は、鋳造速度が所定の鋳造速度に至るまでの間、漸増させる。そして、このダミーバーは、所定のメニスカス距離に到達したときに、適宜の手段により回収する。これで、スラブ鋳片が連続的に鋳造されるようになる。
次に、上記の連続鋳造機100の一般的な操業条件を簡単に紹介する。以下は、例示である。
・鋳型幅W[mm]は、800〜2100とする。
・鋳型厚みD[mm]は、230〜280とする。
・鋳型高さH[mm]は、800〜900とする。
・鋳造速度Vc[m/min]は、1.0〜2.0とする。
・溶鋼過熱度ΔT[℃]は、0〜40とする。
・比水量Wt[L/kgSteel]は、1〜3とする。
・鋳型内電磁攪拌強度M−EMS[gauss]は、0〜1000とする。
・溶鋼成分は、当事者間の協定に基づく。代表的な成分は、CやSi、Mnである。これに、CrやCuなどが適宜に添加される。その他の不可避の不純物を含む。
・鋳型幅W[mm]は、800〜2100とする。
・鋳型厚みD[mm]は、230〜280とする。
・鋳型高さH[mm]は、800〜900とする。
・鋳造速度Vc[m/min]は、1.0〜2.0とする。
・溶鋼過熱度ΔT[℃]は、0〜40とする。
・比水量Wt[L/kgSteel]は、1〜3とする。
・鋳型内電磁攪拌強度M−EMS[gauss]は、0〜1000とする。
・溶鋼成分は、当事者間の協定に基づく。代表的な成分は、CやSi、Mnである。これに、CrやCuなどが適宜に添加される。その他の不可避の不純物を含む。
ここで、各用語を簡単に説明する。
・鋳型幅W[mm]及び鋳型厚みD[mm]は、鋳型1の上端で観念される。
・鋳造速度Vc[m/min]は、鋳片の引抜速度であって、前記複数のロール対3のうち最上流に配されるロール対3の周速度で観念される。
・溶鋼過熱度ΔT[℃]は、鋳型1内へ注湯される溶鋼の温度の指標である。
・比水量Wt[L/kgSteel]は、鋼1kgに対して用いられる冷却水の容積を意味する。
・鋳型内電磁攪拌強度M−EMS[gauss]は、鋳型1内の溶鋼を攪拌するために作用される磁場の強度の指標である。
・鋳型幅W[mm]及び鋳型厚みD[mm]は、鋳型1の上端で観念される。
・鋳造速度Vc[m/min]は、鋳片の引抜速度であって、前記複数のロール対3のうち最上流に配されるロール対3の周速度で観念される。
・溶鋼過熱度ΔT[℃]は、鋳型1内へ注湯される溶鋼の温度の指標である。
・比水量Wt[L/kgSteel]は、鋼1kgに対して用いられる冷却水の容積を意味する。
・鋳型内電磁攪拌強度M−EMS[gauss]は、鋳型1内の溶鋼を攪拌するために作用される磁場の強度の指標である。
次に、本実施形態に係る連続鋳造機100の具体的な操業条件を説明する。本実施形態に係る連続鋳造は、下記の通りとする。
鋳造対象たる鋼種は、炭素含有量C[wt%]を0.08〜0.20とする中炭素鋼とする。この鋼種は、周知の通り、凝固時にδ/γ変態し、不均一凝固して著しい凝固遅れが発生し易い鋼種である。
また、鋳造速度Vcを0から所定の鋳造速度Vc1に至るまで増速させるに際し、下記式(1)を満足したとき、鋳造速度Vcの増速を中止して等速とし、下記式(2)を満足したとき、鋳造速度Vcの増速を再開することとする。
以下、上記の式(1)及び(2)を詳細に説明する。
qK[MW/m2]は鋳型広面の鋳片健全部に対向する部位であってメニスカス直下における熱流束を意味し、qO[MW/m2]は鋳型広面の鋳片凝固遅れ部に対向する部位であってメニスカス直下における熱流束を意味する。「鋳型広面の鋳片健全部に対向する部位」と「鋳型広面の鋳片凝固遅れ部に対向する部位」、「メニスカス直下」、それと、「熱流束」の算出方法については後ほど詳細に説明する。
dqK/dt[MW/m2・min]は、上記熱流束qKの変化の割合を意味し、dqO/dt[MW/m2・min]は、上記熱流束qOの変化の割合を意味する。なお、熱流束qK[MW/m2]と熱流束qO[MW/m2]が離散データであることを考慮されたい。
記号Ave(x)は変数xの時間平均を意味し、この時間平均の時間幅Δt[sec]は下記式(3)を満足するものとする。
ただし、上記式(3)において、H[m]は前述の通り鋳型高さであり、ΔH[m]は鋳型上端からメニスカスに至るまでの距離である。また、Vc´[m/min2]は鋳造速度Vc[m/min]の変化の割合[m/min2]である。即ち、Vc´は、前述の通り鋳造開始時において漸増させる鋳造速度Vc[m/min]の変化の割合である。
<鋳型広面の鋳片健全部に対向する部位>
図4を参照されたい。図4は、鋳型の水平断面の模式図である。本図に示されるように、「鋳型広面の鋳片健全部に対向する部位」とは、鋳型広面のうち、健全に凝固シェルが成長する部分としての鋳片健全部に対向する部位を意味する。具体的には、例えば鋳型幅方向の中央などである。
図4を参照されたい。図4は、鋳型の水平断面の模式図である。本図に示されるように、「鋳型広面の鋳片健全部に対向する部位」とは、鋳型広面のうち、健全に凝固シェルが成長する部分としての鋳片健全部に対向する部位を意味する。具体的には、例えば鋳型幅方向の中央などである。
<鋳型広面の鋳片凝固遅れ部に対向する部位>
上記の図4に示されるように、「鋳型広面の鋳片凝固遅れ部に対向する部位」とは、鋳型広面のうち、凝固シェルの成長が上記健全部と比較して最も遅れる部分としての鋳片凝固遅れ部に対向する部位を意味する。
上記の図4に示されるように、「鋳型広面の鋳片凝固遅れ部に対向する部位」とは、鋳型広面のうち、凝固シェルの成長が上記健全部と比較して最も遅れる部分としての鋳片凝固遅れ部に対向する部位を意味する。
<メニスカス直下>
「メニスカス直下」とは、鋳型内の溶鋼の湯面(メニスカス)から鋳造方向へ概ね20〜40mm下方の範囲に存在する熱流束のピーク位置を意味する。鋳型による鋳片の抜熱は、一般的に、このメニスカス直下にてピークを迎える。換言すれば、鋳片から鋳型への熱の移動を鋳造方向に沿って着目すると、この熱の移動は、上記メニスカス直下にて最大となる。即ち、メニスカス直下に鋳造方法における鋳型トータルの約70%を占める最大熱流束が存在する。なお、メニスカス直下の熱流束に着目するのは、監視対象たる熱流束の絶対値を大きく確保できるので、監視結果に混入してくる誤差要因の影響を最大限、抑えることができるからである。
「メニスカス直下」とは、鋳型内の溶鋼の湯面(メニスカス)から鋳造方向へ概ね20〜40mm下方の範囲に存在する熱流束のピーク位置を意味する。鋳型による鋳片の抜熱は、一般的に、このメニスカス直下にてピークを迎える。換言すれば、鋳片から鋳型への熱の移動を鋳造方向に沿って着目すると、この熱の移動は、上記メニスカス直下にて最大となる。即ち、メニスカス直下に鋳造方法における鋳型トータルの約70%を占める最大熱流束が存在する。なお、メニスカス直下の熱流束に着目するのは、監視対象たる熱流束の絶対値を大きく確保できるので、監視結果に混入してくる誤差要因の影響を最大限、抑えることができるからである。
<熱流束>
この熱流束の測定は、公知の種々の方法により実現されよう。即ち、例えば、(i)熱流束計を鋳型広面に複数で埋設し、この熱流束計の出力をモニタリングする方法、(ii)熱電対を鋳型広面に複数で埋設し、この熱電対の出力、鋳型内を流通する冷却水の水温、その他種々の熱伝達係数などを総合的に考慮して数値計算により熱流束を求める方法、(iii)一対の熱電対を鋳型広面に複数対で埋設し、各対の熱電対によって測定した該鋳型の温度対に基づいて熱流束を求める方法、の(i)〜(iii)が挙げられる。勿論、その他の公知の計算的乃至解析的手法も適用可能であって、その選択は操業条件や設備環境などに応じて適宜に選択されよう。
この熱流束の測定は、公知の種々の方法により実現されよう。即ち、例えば、(i)熱流束計を鋳型広面に複数で埋設し、この熱流束計の出力をモニタリングする方法、(ii)熱電対を鋳型広面に複数で埋設し、この熱電対の出力、鋳型内を流通する冷却水の水温、その他種々の熱伝達係数などを総合的に考慮して数値計算により熱流束を求める方法、(iii)一対の熱電対を鋳型広面に複数対で埋設し、各対の熱電対によって測定した該鋳型の温度対に基づいて熱流束を求める方法、の(i)〜(iii)が挙げられる。勿論、その他の公知の計算的乃至解析的手法も適用可能であって、その選択は操業条件や設備環境などに応じて適宜に選択されよう。
以下、本実施形態に係る連続鋳造方法の技術的効果を確認するための試験に関して説明する。上述した各数値範囲などは、下記の確認試験により合理的に裏付けられている。
先ず、各確認試験で採用した熱流束qK[MW/m2]及び熱流束qO[MW/m2]の測定方法を以下、説明する。図6及び図7を参照されたい。図6及び図7は、熱流束の算出方法の説明図である。
・鋳型幅W:800〜1600[mm]
・鋳型銅板厚みdd(図6参照):50[mm]
・鋳型高さH:900[mm]
・熱電対の種類:K熱電対(+:クロメル、−:アルメル)
・熱電対の埋設位置(鋳型幅方向):広面の鋳型全幅方向に20[mm]ピッチ
・熱電対の埋設位置(鋳型高さ方向)及び本数:メニスカス(鋳型上端から100[mm]下方に設定される。)から下方へ10[mm]ピッチで20本
・熱電対の埋設深さ:鋳型銅板の表面から14[mm]
・熱流束算出方法:鋳型全幅に亘って鋳造方向と垂直な方向に複数の熱電対を上記の通り埋設し、これらの熱電対を用いて鋳型内壁の温度計測を行う。熱電対温度データは1秒ごとにコンピュータに取り込まれる。熱電対温度データ、鋳型冷却水温、鋳型銅板厚み、銅熱伝導度、鋳型背面とスリットを流れる冷却水との界面熱伝達係数(スリットを通過する水の流速から算出)から、スリットの形状を考慮して、コンピュータを用い、二次元の差分法で熱流束を算出する。差分法の詳細を下記に示す。鋳型銅板の形状は図6のように反復する形状である。反復形状なので図6の太線で示す領域のみを考えればよい。鋳型銅板表層側から入熱し(q1)、鋳型銅板背面側から抜熱する。銅板を1[mm]ピッチでメッシュ分割して要素を作成し、図7に示すように要素の中心を通過する熱量の収支を計算する。計算の初期条件としてある熱流束を与え、熱電対実測温度T(i,j)と熱電対位置にあたる要素の計算温度T(i,j)とを比較し、その差が1%以下になるまで収束計算を行う。収束したときのq1の値を熱流束値とする。鋳型背面〜冷却水間熱伝達係数h1、鋳型背面〜SUSジャケット間熱伝達係数h2は同一とした。また、鋳型背面〜冷却水間熱伝達係数h1はスリットを流れる冷却水の流速から求めた。
・図6中、h1は鋳型冷却水孔部熱伝達係数を、q1は鋳片〜鋳型間熱流束を示す。銅熱伝導度λは0.849[cal/cm/sec/deg]と、鋳型背面〜冷却水間熱伝達係数h1は0.369[cal/cm/sec/deg]とする(日立造船技報、第34巻、第2号(1973))。鋳型冷却水温Twは鋳型出側水温測定値とする。
・計算式
境界条件(スリット側の鋳型銅板界面)は、下記式(5)のように熱伝達係数で規定する。境界条件(鋳片側の鋳型銅板界面)は、下記式(6)のように熱流束で規定する。銅板内部は、下記式(7)の通りとする。そして、式(5)〜(7)の各式を各要素について立て、温度T(I,J)の収支計算を実施する。なお、各式中、Δxは図6の奥行き(紙面厚み方向)のことを指す(例えば、1mm)。
・鋳型幅W:800〜1600[mm]
・鋳型銅板厚みdd(図6参照):50[mm]
・鋳型高さH:900[mm]
・熱電対の種類:K熱電対(+:クロメル、−:アルメル)
・熱電対の埋設位置(鋳型幅方向):広面の鋳型全幅方向に20[mm]ピッチ
・熱電対の埋設位置(鋳型高さ方向)及び本数:メニスカス(鋳型上端から100[mm]下方に設定される。)から下方へ10[mm]ピッチで20本
・熱電対の埋設深さ:鋳型銅板の表面から14[mm]
・熱流束算出方法:鋳型全幅に亘って鋳造方向と垂直な方向に複数の熱電対を上記の通り埋設し、これらの熱電対を用いて鋳型内壁の温度計測を行う。熱電対温度データは1秒ごとにコンピュータに取り込まれる。熱電対温度データ、鋳型冷却水温、鋳型銅板厚み、銅熱伝導度、鋳型背面とスリットを流れる冷却水との界面熱伝達係数(スリットを通過する水の流速から算出)から、スリットの形状を考慮して、コンピュータを用い、二次元の差分法で熱流束を算出する。差分法の詳細を下記に示す。鋳型銅板の形状は図6のように反復する形状である。反復形状なので図6の太線で示す領域のみを考えればよい。鋳型銅板表層側から入熱し(q1)、鋳型銅板背面側から抜熱する。銅板を1[mm]ピッチでメッシュ分割して要素を作成し、図7に示すように要素の中心を通過する熱量の収支を計算する。計算の初期条件としてある熱流束を与え、熱電対実測温度T(i,j)と熱電対位置にあたる要素の計算温度T(i,j)とを比較し、その差が1%以下になるまで収束計算を行う。収束したときのq1の値を熱流束値とする。鋳型背面〜冷却水間熱伝達係数h1、鋳型背面〜SUSジャケット間熱伝達係数h2は同一とした。また、鋳型背面〜冷却水間熱伝達係数h1はスリットを流れる冷却水の流速から求めた。
・図6中、h1は鋳型冷却水孔部熱伝達係数を、q1は鋳片〜鋳型間熱流束を示す。銅熱伝導度λは0.849[cal/cm/sec/deg]と、鋳型背面〜冷却水間熱伝達係数h1は0.369[cal/cm/sec/deg]とする(日立造船技報、第34巻、第2号(1973))。鋳型冷却水温Twは鋳型出側水温測定値とする。
・計算式
境界条件(スリット側の鋳型銅板界面)は、下記式(5)のように熱伝達係数で規定する。境界条件(鋳片側の鋳型銅板界面)は、下記式(6)のように熱流束で規定する。銅板内部は、下記式(7)の通りとする。そして、式(5)〜(7)の各式を各要素について立て、温度T(I,J)の収支計算を実施する。なお、各式中、Δxは図6の奥行き(紙面厚み方向)のことを指す(例えば、1mm)。
ここで、図5を参照されたい。図5は、熱電対の出力のサンプルである。本図に示す通り、熱電対の出力から読み取る温度データは第一に離散データであり、第二に相当程度のバラツキを含む。鋳造開始時においては、本図に示す通り、熱電対の出力は漸増する。
次に、各試験の試験条件と試験結果を下記表1に示す。
上記表1の各列タイトルを以下の通り説明する。
・「Vc1 m/min」・・・鋳造開始時に鋳造速度を漸増させる際の、鋳造速度の目標値である。中炭素鋼の連続鋳造においては、一般に、概ね1.2〜1.8[m/min]の範囲内の値が採用される。
・「t0 sec」・・・ダミーバーを引き抜き始める時刻を意味する。
・「t1 sec」・・・Δtの始点を意味する。
・「t2 sec」・・・Δtの終点を意味する。
・「判定A」・・・Δtが上記式(3)を満足するか否かの判定である。満たす場合を○とし、満たさない場合を×とする。
・「Vc|t=t2 m/min」・・・時刻t2における鋳造速度を意味する。
・「ΔtREF1」・・・凝固シェルがメニスカスから鋳型下端に至るまでに要する時間を意味する。
・「KO」・・・上記の各式(1)(2)の左辺を短縮して表記したものである。
・「判定B」・・・上記KOが上記式(1)を満足するか否かの判定である。満たす場合を△とし、満たさない場合を○とする。
・「Cgの推定値 %」・・・過去の操業経験と、KO値と、に基づいて推定した、時刻t2においてメニスカス直下に存在していた凝固シェル部分の凝固遅れ度である。
・「Cgの実績値 %」・・・時刻t2においてメニスカス直下に存在していた凝固シェル部分の凝固遅れ度を調査した結果である。
・「t0 sec」・・・ダミーバーを引き抜き始める時刻を意味する。
・「t1 sec」・・・Δtの始点を意味する。
・「t2 sec」・・・Δtの終点を意味する。
・「判定A」・・・Δtが上記式(3)を満足するか否かの判定である。満たす場合を○とし、満たさない場合を×とする。
・「Vc|t=t2 m/min」・・・時刻t2における鋳造速度を意味する。
・「ΔtREF1」・・・凝固シェルがメニスカスから鋳型下端に至るまでに要する時間を意味する。
・「KO」・・・上記の各式(1)(2)の左辺を短縮して表記したものである。
・「判定B」・・・上記KOが上記式(1)を満足するか否かの判定である。満たす場合を△とし、満たさない場合を○とする。
・「Cgの推定値 %」・・・過去の操業経験と、KO値と、に基づいて推定した、時刻t2においてメニスカス直下に存在していた凝固シェル部分の凝固遅れ度である。
・「Cgの実績値 %」・・・時刻t2においてメニスカス直下に存在していた凝固シェル部分の凝固遅れ度を調査した結果である。
次に、図8を参照されたい。図8は、上記表1に基づいて作成した、試験結果を示すグラフである。本図に示されるグラフの横軸は表1の「KO値」、縦軸は表1の「Cgの実績値」である。このグラフにおいて、丸いプロットは上記表1中の試験No.1〜31に対応し、三角のプロットは上記表1中の試験No.32〜38に対応する。先ず、このグラフにおいて、試験No.1〜31に係るデータと、試験No.32〜38に係るデータと、を比較参照されたい。このグラフによれば、試験No.1〜31に係るデータはグラフ中で強い相関関係を示しており、一方で、試験No.32〜38に係るデータは全く相関関係を示していないことがわかる。次に、上記表1の試験No.32〜38の具体的な数値データを参照されたい。上記表1の試験No.32〜38の試験条件の特徴は、Δt[sec]が30未満となっている点である。また、上記表1の試験No.32〜38の試験結果の特徴は、「Cgの推定値 %」と「Cgの実績値 %」に大きな差が認められる点である。これらのことから、以下の技術的事項を言及できる。即ち、”図5に示されるように、熱流束の値には大きなバラツキが必然的に発生するにも拘わらず、時間平均に係るΔt[sec]を十分に長く設定しないと、図8において三角のプロットで示されるように有意なデータが得られない”。
さて、上記表1及び図8によれば、上記式(1)を満足すると、換言すれば、「判定B」の項目が三角とされると、著しい凝固遅れが発生することがわかる。
そこで、試験No.1〜7については、時刻t2の時点で、Vc´を0とした。即ち、時刻t2の時点で、鋳造速度の増速を中止し、鋳造速度を等速へと切り替えた。ここで、下記表2を参照されたい。
上記表2において試験No.1〜7は、前述の表1における試験No.1〜7と同一チャージを意味する。
上述したように、試験No.1〜7のチャージにおいては、時刻t2の時点で上記式(1)が満たされたので、鋳造速度の増速を一旦中止した。
そして、試験No.2〜7においては、上記のKO値が上昇して、上記式(2)を満足するのを待ち、上記式(2)を満足した時点で、鋳造速度の増速を再開した。表2において、列タイトル「KO」の列には、上記の中止後、初めてKO値が0.5を超えた時点でのそのKO値を記入した(ただし、試験No.1を除く。)。従って、この列タイトル「KO」の列の数値は0.5に一致しているわけではないことを理解されたい。また、0.5を超えた上記の時点におけるAve(dqK/dt)及びAve(dqO/dt)も併せて示す。更に、上記の中止後、鋳造速度を再開するまでの待機時間(いわば凝固シェル回復時間)を表2の列タイトル「ΔtREF2」の列に参考として記入した。列タイトル「Cg %」の判定基準は前述同様である。この表2の試験No.2〜7によれば、表1に示されるようにKO値が0.5を下回って、凝固遅れ度Cg[%]が40を超えるような場合でも、一旦、鋳造速度の増速をやめて等速とし、メニスカスを安定させ、KO値が0.5を上回るまで待機しさえすれば、著しい凝固遅れの発生を回避でき、もって、鋳型直下のブレークアウトを防止できることが判る。
一方、表2の試験No.1に示すように、一旦、鋳造速度の増速を中止したとしても、KO値が0.5まで復帰する前に増速を再開すると、著しい凝固遅れの発生を回避できないことが判る。上記式(2)の意義は、主として、表2の試験No.1とNo.2〜7を比較することによって理解されよう。
以上に説明したように上記実施形態において鋳造開始時の凝固遅れを検知する連続鋳造は、以下のような方法で行われる。即ち、炭素含有量C[wt%]を0.08〜0.20とする中炭素鋼の連続鋳造を開始するために、鋳造速度Vcを0から所定の鋳造速度Vc1に至るまで増速させるに際し、下記式(1)を満足したとき、鋳造速度Vcの増速を中止して等速とし、下記式(2)を満足したとき、鋳造速度Vcの増速を再開することとする。
記号Ave(x)は変数xの時間平均を意味し、この時間平均の時間幅Δt[sec]は下記式(3)を満足するものとする。
以上の方法によれば、鋳造開始時において、著しい凝固遅れを適切に検知した上で、ブレークアウトを防止できる。
また、凝固の遅れを取り戻そうと鋳造速度を低下させ若しくは鋳造自体を停止させるような操業とは異なり、一時的な手段としてあくまで増速の中止を採用しているので、生産性の低下が最小限に食い止められる。
最後に、上記式(3)の右辺、即ち、Δtの上限を設けた意義について若干補足説明する。即ち、上記式(3)の右辺は表1のΔtREF1を指している。即ち、この右辺は、メニスカスから鋳型下端に至るまでに要する時間である。この時間をΔtの上限としたのは、以下の理由による。即ち、著しい凝固遅れは鋳型内で発生し、この著しい凝固遅れを鋳型内で回復させるためには、鋳造速度の増速を中止してメニスカスが安定した状態を維持しなければならないからである。
Claims (1)
- 炭素含有量C[wt%]を0.08〜0.20とする中炭素鋼の連続鋳造を開始するために、鋳造速度Vcを0から所定の鋳造速度Vc1に至るまで増速させるに際し、
下記式(1)を満足したとき、鋳造速度Vcの増速を中止して等速とし、
下記式(2)を満足したとき、鋳造速度Vcの増速を再開することとする、
ことを特徴とする、鋳造開始時の凝固遅れを検知する連続鋳造方法
qK[MW/m2]は鋳型広面の鋳片健全部に対向する部位であってメニスカス直下における熱流束を意味し、
qO[MW/m2]は鋳型広面の鋳片凝固遅れ部に対向する部位であってメニスカス直下における熱流束を意味し、
dqK/dt[MW/m2・min]は、上記熱流束qKの変化の割合を意味し、
dqO/dt[MW/m2・min]は、上記熱流束qOの変化の割合を意味し、
記号Ave(x)は変数xの時間平均を意味し、
この時間平均の時間幅Δt[sec]は下記式(3)を満足するものとする。
H[m]は鋳型高さであり、
ΔH[m]は鋳型上端からメニスカスに至るまでの距離であり、
Vc´[m/min2]は鋳造速度Vc[m/min]の変化の割合[m/min2]である。
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