JP2009256768A - チタン酸ストロンチウム薄膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】結晶性の高いRP相を有する層状のチタン酸ストロンチウム薄膜を得る方法を提供する。
【解決手段】所定の第1温度において、チャンバー内に配置されたターゲットにレーザー光をパルス状に照射し、前記ターゲットと対向する位置に配置した基板上にSrO層を形成する工程と、所定の第2温度において、チャンバー内に配置されたターゲットにレーザー光をパルス状に照射し、前記ターゲットと対向する位置に配置した基板上に形成されたSrO層上にSrTiO3層を形成する工程と、を含み、前記第1温度がSrO層のみで結晶成長可能な上限温度よりも低く、前記第2温度がSrTiO3層の結晶化に必要な下限温度よりも高く、前記第1温度が前記第2温度よりも低いことを特徴とする。
【選択図】図2
【解決手段】所定の第1温度において、チャンバー内に配置されたターゲットにレーザー光をパルス状に照射し、前記ターゲットと対向する位置に配置した基板上にSrO層を形成する工程と、所定の第2温度において、チャンバー内に配置されたターゲットにレーザー光をパルス状に照射し、前記ターゲットと対向する位置に配置した基板上に形成されたSrO層上にSrTiO3層を形成する工程と、を含み、前記第1温度がSrO層のみで結晶成長可能な上限温度よりも低く、前記第2温度がSrTiO3層の結晶化に必要な下限温度よりも高く、前記第1温度が前記第2温度よりも低いことを特徴とする。
【選択図】図2
Description
本発明は、結晶性の高いルドルスデン・ポッパー構造のチタン酸ストロンチウム薄膜の製造方法に関する。
チタン酸ストロンチウム(以下STOとする)は、ペロブスカイト結晶構造をとる、ストロンチウムとチタンの複合酸化物であり、バルク単結晶STOは、低温で高い誘電率を示すため、超伝導、誘電体、熱電材料等において有用な材料である。しかしながら、このSTOを薄膜化すると誘電率が低下してしまい、十分な特性を達成することができなかった。
STOはルドルスデン・ポッパー相(以下RP相とする)のときに層状酸化物(Srn+1TinO3n+1、n=1以上)を形成する。このRP相はSrO層とSrTiO3層からなり、SrTiO3の層数nは原理的にはn=1〜無限大まで可能であることが知られている。STO薄膜としてこのようなRP相を有する層状酸化物を利用すれば高い特性が達成できることが期待される。
酸化物系薄膜を製造する方法の1つとしてパルスレーザー堆積法(PLD法)が知られている。このPLD法は、チャンバー内のターゲットにパルスレーザーを断続的に照射し、発生するプルームをターゲットと対向して配置された基板上に堆積させて薄膜を形成する方法であり、薄膜組成比の制御が容易で成膜速度が速い等の利点がある。
このようなPLD法を用いた薄膜製造方法として、第1温度において酸化亜鉛薄膜を成長させながら窒素をドーピングする低温高ドープ層成長ステップと、前記第1温度より高い第2温度において酸化亜鉛薄膜をアニール処理するアニール処理ステップと、第2温度において酸化亜鉛薄膜を成長させる高温低ドープ層成長ステップとを含む、p型酸化亜鉛薄膜製造方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
上記開示技術では、全体として平滑であり、高結晶性、高ドープ濃度の酸化亜鉛薄膜が得られている。しかしながら、同じ条件でのPLD法をSTOの成膜に適用すると、RP相が得ることができない。
そこで本発明では、上記従来の問題を解決し、優れた特性を有するRP相のチタン酸ストロンチウム薄膜の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために本発明によれば、所定の第1温度において、チャンバー内に配置されたターゲットにレーザー光をパルス状に照射し、前記ターゲットと対向する位置に配置した基板上にSrO層を形成する工程と、所定の第2温度において、チャンバー内に配置されたターゲットにレーザー光をパルス状に照射し、前記ターゲットと対向する位置に配置した基板上に形成されたSrO層上にSrTiO3層を形成する工程と、を含み、前記第1温度がSrO層のみで結晶成長可能な上限温度よりも低く、前記第2温度がSrTiO3層の結晶化に必要な下限温度よりも高く、前記第1温度が前記第2温度よりも低いことを特徴とする、チタン酸ストロンチウム(Srn+1TinO3n+1、n=1以上)薄膜の製造方法が提供される。
上記方法において、前記SrO層を形成する工程とSrTiO3層を形成する工程を2回以上繰り返すことが好ましく、前記第1温度を500〜675℃とし、前記第2温度を575〜850℃とすることが好ましく、また前記SrTiO3層を形成する工程の少なくとも一部を、前記第2温度よりも低い第3温度において行うことが好ましい。さらに前記SrO層にランタンをドーピングすることが好ましい。
本発明のチタン酸ストロンチウム薄膜の製造方法は、図1に示すような薄膜製造装置を用いてPLD法により行われる。この薄膜製造装置1は、制御コンピュータ2と、Nd:YAGレーザー3と、光ファイバー4と、レンズ5と、基板ホルダ6と、原料ターゲット7と、ビューポート(エキシマレーザー導入ポート)8と、チャンバー9とを備えている。この薄膜製造装置1は、基本的には当業者に周知にパルスレーザー堆積装置であって、チャンバー9内に配置された原料ターゲット7にビューポート8から導入されたエキシマレーザー10を照射してアブレーションすることで、基板ホルダ6に固定された基板上に薄膜を形成する。この薄膜製造装置1では、コンピュータ2によって制御されたNd:YAGレーザー3を光ファイバー4で導いてレンズ5で集束させ、基板ホルダ6を加熱するように構成されているが、この基板加熱機構としては、必ずしもNd:YAGレーザーを用いる必要はなく、半導体レーザーや赤外線ランプ等の他の光学的方法を用いてもよい。
以下に、このような薄膜製造装置を使用して行う、本発明による薄膜製造方法を説明する。図2に示すように、まず、第1の工程として、所定の第1温度において、チャンバー内に配置されたターゲットにレーザー光をパルス状に照射し、前記ターゲットと対向する位置に配置した基板11上にSrO層12を形成する。この第1温度は、SrO層のみで結晶成長可能な上限温度よりも低い温度であり、好ましくは500〜675℃であり、最も好ましくは575℃である。基板としては、Si、他のペロブスカイト型化合物(強誘電体、超伝導体、誘電体、強磁性体)、MgO等を用いることができる。ターゲットとしてはSrOとSrTiO3の単結晶もしくは多結晶を用いることができる。
次に、第2の工程として、所定の第2温度において、チャンバー内に配置されたターゲットにレーザー光をパルス状に照射し、前記ターゲットと対向する位置に配置した基板11上に形成されたSrO層12上にSrTiO3層13を形成する。この第2温度は、SrTiO3層の結晶化に必要な下限温度よりも高い温度であり、好ましくは575〜850℃であり、最も好ましくは780℃である。さらに、前記第1温度はこの第2温度よりも低いことが必要である。ここでターゲットとしてはSrOとSrTiO3の単結晶もしくは多結晶を用いることができる。このSrO層上に形成されるSrTiO3層の層数nは1以上とし、この層数によって得られるチタン酸ストロンチウム(Srn+1TinO3n+1)のnがきまる。
この第2の工程において、SrTiO3層の層数を2以上とする場合、SrTiO3層を形成する工程の少なくとも一部を、前記第2温度よりも低い第3温度において行うことが好ましい。さらには、図3に示すように、基板11上のSrO層12と接するSrTiO3層14を形成する際の温度を、その後のSrTiO3層15の形成する際の温度より低くすることがより好ましい。この第3の温度は、具体的には575〜780℃とすることが好ましい。このような構成をとることにより、より結晶性の高い層状膜を得ることができる。
以上のようなSrO層とSrTiO3層の形成工程は、必要に応じ、あるいは好ましくは複数回、例えば40回繰り返し、所望の膜厚を達成するようにする。膜厚は、用途によって異なるが、熱電の場合は50μm以上とすることが好ましく、熱電以外の場合は100nm程度とすることが好ましい。
また、本発明の薄膜にドーパントを加えることにより、導電性を付与することができる。SrO層へのドーパントとしてはLa、Y、Pr、Gd、Dy等を用いることができ、特にLaをドーピングすることが好ましい。SrTiO3層へのドーパントとしては、Nb、Ta等を用いることができる。
SrO層にLaをドーピングする場合、SrOとランタンの比は、原子数比で99%:1%〜50%:50%とすることが好ましく、特に50%:50%とすることが好ましい。また、SrTiO3層の層数は5層であることが特に好ましい。
実施例1
PLD法により、図1に示す装置を用い、STO(001)単結晶基板に、以下の表1に示す温度において、SrO1層とSrTiO35層を交互に40周期成膜した。なお、チャンバー内のPo2=1×10-6Torrであり、エキシマレーザーの繰り返し周波数=2Hzとした。また比較として、温度を変化させず、STOが結晶化する最適成長温度(780℃)のみで成膜した場合(表1中の780/780℃)、SrOが成長する温度(575℃)のみで成膜した場合(575/575℃)、PLD法により550℃にて成膜した場合(PLD(550℃))、及びMBE法(分子エピキタシー法)により780℃で成膜した場合(MBE(780℃))についても実験を行った。
PLD法により、図1に示す装置を用い、STO(001)単結晶基板に、以下の表1に示す温度において、SrO1層とSrTiO35層を交互に40周期成膜した。なお、チャンバー内のPo2=1×10-6Torrであり、エキシマレーザーの繰り返し周波数=2Hzとした。また比較として、温度を変化させず、STOが結晶化する最適成長温度(780℃)のみで成膜した場合(表1中の780/780℃)、SrOが成長する温度(575℃)のみで成膜した場合(575/575℃)、PLD法により550℃にて成膜した場合(PLD(550℃))、及びMBE法(分子エピキタシー法)により780℃で成膜した場合(MBE(780℃))についても実験を行った。
こうして得られた各薄膜について、XRD分析を行い、分析結果を表1及び図4に示す。
これらの結果に示すように、本発明の方法により、SrO層の形成を低温において、STO層の形成を高温で行うことにより、超格子ピークが観察され、結晶性の高いRP相を有する層状の薄膜を得ることができた。一方、比較例においてはこの超格子ピークは観察されなかった。さらに、STO層及びSrO層の成長温度を変化させた場合のXRDピーク比の変化を図5に示す。図5より、TSTO=780℃、TSrO=575℃が最適成長条件であるといえる。TSTOが高温側ではI0024が弱くなり、I0020の方が大きくなる。さらにRHEED振動から見積もられるSrO組成通りの構造が観察され、何度も温度を上下させたにもかかわらず、膜表面はきわめて平滑であることがAFMによる観察で確認することができた。
実施例2
ドーパントとしてランタンをドーピングしながらSrO層を形成することを除き、実施例1と同様にしてSrO層を575℃にて形成し、次いでSrTiO3層を780℃にて形成した。得られた薄膜について、SrTiO3層の層数5(n=5)における膜厚(SrO層とSrTiO3層1組を1周期としたときの周期数m)と抵抗率の関係を図6に、膜厚90nmにおけるSrTiO3層の層数nと抵抗率の関係を図7に示す。
ドーパントとしてランタンをドーピングしながらSrO層を形成することを除き、実施例1と同様にしてSrO層を575℃にて形成し、次いでSrTiO3層を780℃にて形成した。得られた薄膜について、SrTiO3層の層数5(n=5)における膜厚(SrO層とSrTiO3層1組を1周期としたときの周期数m)と抵抗率の関係を図6に、膜厚90nmにおけるSrTiO3層の層数nと抵抗率の関係を図7に示す。
これらの図から明らかなように、膜厚が厚いほど抵抗率は低く、またn=5の場合に最も抵抗率の低い薄膜が得られた。
1 薄膜製造装置
2 制御コンピュータ
3 Nd:YAGレーザー
4 光ファイバー
5 レンズ
6 基板ホルダ
7 原料ターゲット
8 ビューポート
9 チャンバー
10 エキシマレーザー
2 制御コンピュータ
3 Nd:YAGレーザー
4 光ファイバー
5 レンズ
6 基板ホルダ
7 原料ターゲット
8 ビューポート
9 チャンバー
10 エキシマレーザー
Claims (5)
- 所定の第1温度において、チャンバー内に配置されたターゲットにレーザー光をパルス状に照射し、前記ターゲットと対向する位置に配置した基板上にSrO層を形成する工程と、
所定の第2温度において、チャンバー内に配置されたターゲットにレーザー光をパルス状に照射し、前記ターゲットと対向する位置に配置した基板上に形成されたSrO層上にSrTiO3層を形成する工程と、
を含み、前記第1温度がSrO層のみで結晶成長可能な上限温度よりも低く、前記第2温度がSrTiO3層の結晶化に必要な下限温度よりも高く、前記第1温度が前記第2温度よりも低いことを特徴とする、チタン酸ストロンチウム(Srn+1TinO3n+1、n=1以上)薄膜の製造方法。 - 前記SrO層を形成する工程とSrTiO3層を形成する工程を2回以上繰り返す、請求項1記載の方法。
- 前記第1温度が500〜675℃であり、前記第2温度が575〜850℃である、請求項1記載の方法。
- 前記SrTiO3層を形成する工程の少なくとも一部を、前記第2温度よりも低い第3温度において行う、請求項1記載の方法。
- SrO層を形成する工程において、SrO層にランタンをドーピングする、請求項1記載の方法。
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JP2008222109A JP2009256768A (ja) | 2008-03-25 | 2008-08-29 | チタン酸ストロンチウム薄膜の製造方法 |
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