JP2009256385A - MRL/lprマウスを用いた抗体の作製 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Fas機能欠損非ヒト動物を抗原で免疫することを特徴とする抗体の作製方法。
【選択図】なし
Description
グリピカンファミリーは、細胞表面上に存在するヘパラン硫酸プロテオグリカンの新しいファミリー報告されている。現在までのところ、グリピカンファミリーのメンバーとして、5種類のグリピカン(グリピカン1、グリピカン2、グリピカン3、グリピカン4およびグリピカン5)が存在することが報告されている。このファミリーのメンバーは、均一なサイズ(約60kDa)のコアタンパク質を持ち、特異的でよく保持されたシステインの配列を共有しており、グリコシルフォスファチジルイノシトール(GPI)アンカーにより細胞膜に結合している。このうちグリピカン3(GPC3)は、発生における細胞分裂やそのパターンの制御に深く関わっていることが知られており、またGPC3遺伝子が肝癌細胞において高発現しており、GPC3遺伝子が癌マーカーとして利用できる可能性があることが知られている。このような特徴を有するGPC3に対する抗体が得られれば、癌の診断、研究に有用であると思われる。
(1)自己免疫疾患を発症する非ヒト動物をグリピカンタンパク質で免疫することを含むグリピカンタンパク質に対する抗体の作製方法、
(2)自己抗体産生非ヒト動物をグリピカンタンパク質で免疫することを含むグリピカンタンパク質に対する抗体の作製方法、
(3)自己免疫疾患を発症する非ヒト動物又は自己抗体産生非ヒト動物が、Fas機能欠損非ヒト動物である(1)または(2)のグリピカンタンパク質に対する抗体の作製方法、
(4)非ヒト動物がマウスである(3)のグリピカンタンパク質に対する抗体の作製方法、
(5)マウスがMRL/lprマウスである(4)のグリピカンタンパク質に対する抗体の作製方法、
(6)グリピカンタンパク質がグリピカン3である(1)から(5)のいずれかのグリピカンタンパク質に対する抗体の作製方法、
(7)Fas機能欠損非ヒト動物を抗原で免疫することを特徴とする抗体の作製方法、
(8)非ヒト動物がマウスである(7)の抗体の作製方法、
(9)マウスがMRL/lprマウスである(8)の抗体の作製方法、
(10)抗原となるタンパク質が、ヒトとマウスで高いアミノ酸配列の相同性を有している、(7)から(9)のいずれかの抗体の作製方法、
(11)アミノ酸配列の相同性が90%以上である、(10)の抗体の作製方法、および
(12)アミノ酸配列の相同性が94%以上である(11)の抗体の作製方法である。
本発明において自己免疫疾患とは、自己抗体によってひき起こされる疾患のことをいう。自己抗体によってひき起こされる疾患は、自己抗体単独でひき起こされる疾患のみでなく、自己抗体と対応抗原との複合体物などの自己抗体と他の物質の複合体によってひき起こされる疾患も含まれる。又、自己抗体の病因性が明らかな疾患のみでなく、自己抗体の存在が病変の成立と密接に関係している疾患も含まれる。自己免疫疾患の具体的な例としては、自己免疫性肝炎、自己免疫性甲状腺炎、自己免疫性水疱症、自己免疫性副腎皮質炎、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性血小板減少性紫斑病、自己免疫性萎縮性胃炎、自己免疫性好中球減少症、自己免疫性精巣炎、自己免疫性脳脊髄炎、自己免疫性レセプター病、自己免疫不妊、リウマチ、クローン病、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、バセドウ病、若年性糖尿病、アジソン病、重症筋無力症、水晶体性ブドウ膜炎、などを挙げることができる。本発明の自己免疫疾患を発症する非ヒト動物は、自己免疫疾患の1つ以上を発症していればよく、自己免疫疾患の種類は特に限定されない。
Fas機能欠損非ヒト動物の具体的な例としては、MRL/lprマウスなどを挙げることができる。Fas遺伝子が突然変異したlprマウス(MRL/lprマウス)は一般的に異常なT細胞の蓄積と全身性エリテマトーデス様の自己免疫疾患を発症する。
Fasリガンド欠損非ヒト動物の具体的な例としては、MRL/gldマウスなどを挙げることができる。
Fas機能欠損マウスやFasリガンド欠損マウスなどは市販されているので、当業者は容易にそれらを入手することが可能である。
又、ジーンターゲッティング法などを用いて、例えば以下の方法により、FasやFasリガンドの発現を人為的に抑制したマウスを作製することも可能である。
抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよいが、モノクローナル抗体が望ましい。
抗原で免疫する動物として、MRL/lprマウスを選択した時もこれらのミエローマ細胞のいずれも用いることができる。
免疫細胞とミエローマ細胞との使用割合は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。前記細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液、その他、この種の細胞培養に用いられる通常の培養液が使用可能であり、さらに、牛胎児血清(FCS)等の血清補液を併用することもできる。
又、本発明の方法により得られたハイブリドーマから、抗体遺伝子をクローニングし、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入すれば、組換え型抗体を作製することができる(例えば、Vandamme, A. M. et al., Eur. J. Biochem.(1990)192, 767-775, 1990参照)。
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V領域をコードするDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAなどと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。
ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、これは、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023号公報、WO 96/02576 号公報参照)。
好ましくは、抗体は、哺乳類細胞、例えばCHO、COS、ミエローマ、BHK、Vero、HeLa細胞中で発現される。
本願明細書記載の実施例において、以下の材料を用いた。
可溶型GPC3、可溶型GPC3コア蛋白質の発現ベクターとして、pCAGGSにDHFR遺伝子及びネオマイシン耐性遺伝子を組み込んだpCXND2、pCXND3を用いた。
DXB11はATCCより購入した細胞を用い、培養には5%FBS(GIBCO BRL CAT# 10099-141, LOT# A0275242)/ Minimum Essential Medium Alpha medium (αMEM(+)) (GIBCO BRL CAT# 12571-071)/ 1% Penicillin-Streptomycin(GIBCO BRL CAT# 15140-122)を用いた。DXB11を用いた発現株の選抜には、500μg/mL Geneticin (GIBCO BRL CAT# 10131-027)/ 5% FBS/ αMEM without ribonucleosides and deoxyribonucleosides (GIBCO BRL CAT# 12561-056) (αMEM(-))/ PSあるいは同培地に終濃度25nMとなるようにMTXを加えたものを用いた。
得られたハイブリドーマは10%FBS / RPMI1640 / 1 x HAT media supplement(SIGMA CAT# H-0262) / 0.5 x BM-Condimed H1 Hybridoma cloning supplement (Roche CAT# 1088947)で培養した。
〔可溶型ヒトGPC3の作製〕
ヒトGPC3をコードする全長cDNAは、大腸癌細胞株Caco2より常法により調製した1st strand cDNAを鋳型とし、上流プライマー(5’- GAT ATC ATG GCC GGG ACC GTG CGC ACC GCG T -3’(配列番号1))、下流プライマー(5’- GCT AGC TCA GTG CAC CAG GAA GAA GAA GCA C -3’(配列番号2))を用いたPCR反応により増幅した。この完全長ヒトGPC3 cDNAを含むプラスミドDNAを用い、可溶型GPC3 cDNA発現プラスミドDNAを構築した。C末端側の疎水領域(564-580アミノ酸)を除くように設計した下流プライマー(5’-ATA GAA TTC CAC CAT GGC CGG GAC CGT GCG C -3’(配列番号3))とEcoRI認識配列、Kozak配列を加えた上流プライマー(5’-ATA GGA TCC CTT CAG CGG GGA ATG AAC GTT C -3’(配列番号4))を用いてPCRを行った。得られたPCR断片(1711bp)をpCXND2-Flagにクローニングした。作製された発現プラスミドDNAをCHO細胞DXB11株へ導入し、500μg/mL Geneticin での選抜により、可溶型GPC3高発現CHO株を得た。
上記野生型ヒトGPC3 cDNAをテンプレートとし、アッセンブリーPCR法によって495番目と509番目のSerをAlaに置換させたcDNAを作製した。この際、C末端にHisタグが付加されるようにプライマーを設計し、得られたcDNAをpCXND3ベクターにクローニングした。作製された発現プラスミドDNAをDXB11株へ導入し、500μg/mL Geneticin での選抜により、可溶型GPC3コア蛋白質高発現CHO株を得た。
1700 cm2ローラーボトルを用い大量培養を行い、培養上清を回収し精製を行った。培養上清をQ sepharose Fast Flow (Amersham CAT# 17-0510-01)にチャージし、洗浄後、500mM NaClを含むリン酸バッファーにより溶出した。次に、Chelating sepharose Fast Flow (Amersham CAT# 17-0575-01)を用いてアフィニティー精製を行った。10〜150mMのイミダゾールでグラジエント溶出を行った。最後にQ sepharose Fast Flow を用いて濃縮し、500mM NaClを含むリン酸バッファーにより溶出した。
ヒトGPC3とマウスGPC3はアミノ酸レベルで94%という非常に高い相同性を示す。ヒトGPC3とマウスGPC3アミノ酸配列の比較を図1に示す。図1の配列中黒三角で示した部分は、N結合グルコシル化部位の可能性のある部位であり、米印で示した部位は、グリコサミノグリカンが結合する可能性のある部位である。従って、通常のマウスへの免疫では抗体を取得し難いことが予想された。しかし、自己免疫疾患モデルマウスとして知られるMRL/lprマウスは種々の自己抗体を産生することから、MRL/lprマウスに免疫することで、マウスと他の種で蛋白相同性の低い抗原はもちろんのこと、GPC3のようにヒトとマウスで相同性の高い抗原に対しても抗体を作製できる可能性がある。そこで、MRL/lprマウスを用いた抗体作製の有用性を確かめる目的で、MRL/lprマウスとBalb/cマウスへの免疫による抗体作製の比較検討を行なった。
免疫原としてヘパラン硫酸付加可溶型GPC3蛋白を用いた。Balb/cマウス(メス、6週齢、日本チャールズリバー)5匹及びMRL/lprマウス(オス、7週齢、日本チャールズリバー)7匹に定法に従い免疫を行なった。すなわち、初回免疫には免疫蛋白質を100μg/匹となるように調製し、FCA(フロイント完全アジュバント(H37 Ra)、Difco(3113-60)ベクトンディッキンソン(cat#231131))を用いてエマルジョン化したものを皮下に投与し、2週間後に50μg/匹となるように調製したものをFIA(フロイント不完全アジュバント、Difco(0639-60)、ベクトンディッキンソン(cat#263910))でエマルジョン化したものを皮下に投与した。以降1週間間隔で追加免疫を合計5回行い、最終免疫については50μg/匹となるようにPBSに希釈し尾静脈内に投与した。1μg/mlの可溶型GPC3コア蛋白質を100μl/ウェルでコートしたイムノプレートを用いたELISAによりGPC3に対する血清中の抗体価が飽和しているのを確認後、Balb/c No.2およびMRL/lpr No.6マウス1匹ずつに最終免疫を施し、定法に従い、マウスミエローマ細胞P3U1とマウス脾臓細胞を混合し、PEG1500(ロシュ・ダイアグノスティック、cat#783 641)により細胞融合を行った。MRL/lprマウスの脾臓由来単核細胞はBalb/cマウスのそれよりも数が多いため、Balb/c由来のハイブリドーマは96穴培養プレート10枚に、MRL/lpr由来のハイブリドーマは20枚に播種した。フュージョン翌日よりHAT培地で選択を開始し、フュージョン後10日目及び14日目に培養上清を回収しELISAスクリーニングを行なった。ELISAスクリーニングは前述の抗体価測定と同様に1μg/mlの可溶型GPC3コア蛋白質を100μl/ウェルでコートしたイムノプレートを用いて行なった。
一般的にIgG3、IgMは補体との結合活性が強くCDC活性を誘導し得るアイソタイプとして知られている。抗GPC3抗体のように癌治療を目的とした場合、1次スクリーニング時にIgG3、IgMを取りこぼすことなくスクリーニングができることは非常に有用である。そこで、2次抗体を変えることでIgG1、IgG2a、IgG2bのみならずIgG3、IgMもとりこぼさず拾う2段階の方法でスクリーニングを行なった。すなわち、一段階目は、2次抗体としてアルカリフォスファターゼ標識-抗マウスIgG(r)抗体(ZYMED社製、Cat No.62-6622)を用いて発色させることでIgG1、IgG2a、IgG2bを取得し、次に、プレートを十分washした後、二段階目はビオチン標識した抗IgG3抗体(MONOSAN社製、Cat No.MON5056B)及びホースラディッシュペルキシダーゼ標識した抗IgM抗体(ZYMED社製、Cat No.62-6820)で再度発色させることで選択的にIgG3及びIgMを取得する方法でスクリーニングを行なった。
Balb/c マウス(No.2)、MRL/lpr マウス(No.6)、各一匹ずつについてフュージョンを行い、GPC3コア蛋白質を抗原としたELISAスクリーニングにより陽性ウェルを選択した。陽性ウエルは24ウェルプレートに拡大した後、限界希釈法(1陽性ウェルにつき96ウェル1 プレートに播きこむ)によりクローニングを行った。
抗体の精製は得られた培養上清から、IgG1、IgG2a、IgG2bについてはProtein Gカラム Hi Trap ProteinG HP(Amersham CAT#17-0404-01)を用いて、IgMについてはProtein Lを用いて精製を行った。具体的に、IgG精製はHi Trap ProteinG HP(Amersham CAT#17-0404-01)を用いて行った。ハイブリドーマ培養上清を直接カラムにチャージし、結合バッファー(20mM Sodium phosphate (pH7.0))にて洗浄後、溶出バッファー(0.1M Glycin-HCl (pH2.7))で溶出した。溶出は中和バッファー(1M Tris-HCl(pH9.0))を加えたチューブに行い直ちに中和した。抗体画分をプールした後、0.05%Tween20/PBSで一昼夜透析を行いバッファー置換した。精製された抗体は0.02%となるようにNaN3を添加した後、4℃で保管した。
一方、IgM精製はImmunoPure Immobilized Protein L (PIERCE CAT#20510)を用いて行った。ハイブリドーマ培養上清を直接カラムにチャージし、結合バッファー(100mM Sodium phosphate (pH7.2), 150mM NaCl)にて洗浄後、溶出バッファー(0.1M Glycin-HCl (pH2.5))で溶出した。溶出後はIgGと同様の操作を行い4℃で保管した。
抗グリピカン3抗体のアイソタイピングは、ImmunoPure Monoclonal Antibody Isotyping Kit II (PIERCE CAT# 37502)を用い、方法は添付のマニュアルに従った。
可溶型GPC3コア蛋白チップの作製
ゲルろ過にて可溶型GPC3コア蛋白を10mM Na Acetate (pH5.0)にバッファー置換した。バッファー置換した可溶型GPC3コア蛋白約10μgを用いて、アミンカップリングキット(BIACORE社製 BR-1000-50)に記載された方法にて、センサーチップCM5(BIACORE社製 BR-1000-14)にアミンカップリングした。この操作にて約3000RUの可溶型GPC3コア蛋白がCM5チップ上に固定化された。
BIACORE(BIACORE社製 BIACORE2000)を用いて以下の速度論的解析を行った。各抗GPC3抗体をHBS-EP バッファーにて希釈して、1.25、2.5、5、10、20μg/mlになるように調製した。ランニングバッファーにHBS-EPバッファー(BIACORE社製 BR-1001-88)を用いて、流速20μl/minにて各濃度の抗体40μlをインジェクトした。抗体をインジェクト中の2分間を結合相とし、その後ランニングバッファーに切り換え、2分間を解離相とした。解離相終了後、10μlの10mM Glycine (pH2.2)、及び5μlの0.05% SDSを連続してインジェクトすることにより、センサーチップを再生した。
この操作により得られたセンサーグラムを重ね書きし、BIAevaluation (ver. 3.0)にて結合速度定数(ka)、解離速度定数(kd)、解離定数(KD)、最大結合量(Rmax)を算出した。
〔リコンビナントGPC3の作製〕
抗GPC3抗体作製のための材料として、C末端側の疎水性領域を欠損させた可溶型GPC3蛋白質を作製した。CHO細胞に可溶型GPC3発現プラスミドDNAを導入し定常発現株を構築した。培養上清をインイオン交換カラムで粗精製、濃縮した後、C末端側に付加したFlagタグを利用したアフィニティー精製を行った。SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動の結果、50〜300kDaのスメアなバンドと、約40kDaのバンドが得られた。GPC3は69kDaのC末端にヘパラン硫酸付加配列を有するプロテオグリカンである。スメアなバンドはヘパラン硫酸修飾を受けたGPC3であると考えられた。約40kDaのバンドはアミノ酸シークエンスの結果、GPC3のN末端側断片を起点としており、GPC3は何らかの切断を受けていることが予想された。
ハイブリドーマ法により抗GPC3抗体を作製した。免疫原としては、精製ヘパラン硫酸付加可溶型GPC3を用いた。血清中のGPC3に対する抗体価が飽和しているのを確認後、マウスミエローマ細胞P3U1とマウス脾臓細胞の細胞融合を行った。Balb/c マウス(No.2)、MRL/lpr マウス(No.6)、各一匹ずつについてフュージョンを行い、GPC3コア蛋白質を抗原としたELISAスクリーニングによりBalb/cマウス、MRL/lprマウス合わせて180個の陽性ウェルを選択した。その結果、OD値0.2以上を示すクローン数はMRL/lprマウス由来が652ウエル、Balb/cマウス由来が16ウエルであり、MRL/lprマウスの方がBalb/cマウスよりもOD値の高い(0.2以上)クローンが約40倍も多く得られた。MRL/lprマウス間での一次スクリーニング結果の比較を、度数(頻度)分布表として図2に示す。
一次スクリーニング後、180の陽性ウェルを24ウェルプレートに拡大した後、限界希釈法(1陽性ウェルにつき96ウェル1 プレートに播きこむ)によりクローニングを行った。最終的に、抗体を安定に産性する47クローンを樹立した。
樹立した抗グリピカン3抗体47クローンについてアイソタイプ解析をしたところ、Balb/c由来の抗体がIgG1、IgG2a、IgG2bの3タイプのみであるのに対し、MRL/lpr由来の抗体にはIgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3という全てのIgGサブクラスとさらにIgMも含まれていた。樹立した47クローンについてのアイソタイプの内分を図3に示す。
Balb/cマウス由来10クローン、MRL/lprマウス由来28クローンの精製抗体を用いてBIACOREによる速度論的解析を行なった。速度論的解析結果を図4に示す。Balb/cマウス由来抗体に比べてMRL/lprマウス由来抗体の方が親和性の高い抗体がより多く含まれていた。Balb/cマウス由来抗体では最も親和性の高いものでの解離定数が10-8Mオーダーであるのに対し、MRL/lprマウス由来抗体には10-10Mオーダーの解離定数を持つ高親和性抗体が4種類(IgG1タイプとIgG2bタイプがそれぞれ2種類)含まれていた。以上のように、MRL/lprマウスからの方がBalb/cマウスよりも約100倍親和性の高い抗体が得られたことから、MRl/lprマウスを用いた抗体作製の有用性が示された。
GPC3はマウスとヒトでアミノ酸レベルで94%という極めて高い相同性を示すことから通常のBalb/cマウス等への免疫では抗体を得難い可能性がある。一方、自己免疫疾患モデルであるMRL/lprマウスはFasリガンドの機能が欠損していることから自己抗体産生B細胞のアポプトーシスが誘導されず免疫寛容を打破する機構が働いているものと思われる。従って、MRL/lprマウス等の自己免疫疾患モデルマウスを用いれば、マウスと他の種で蛋白相同性の低い抗原はもちろんのこと、マウス抗原やGPC3のようにマウスとヒトでアミノ酸レベルで非常に高い相同性を有する抗原に対しても効率良く抗体を作製できる可能性がある。
Claims (6)
- Fas機能欠損非ヒト動物を抗原で免疫することを特徴とする抗体の作製方法。
- 非ヒト動物がマウスである請求項1記載の抗体の作製方法。
- マウスがMRL/lprマウスである請求項2記載の抗体の作製方法。
- 抗原となるタンパク質が、ヒトとマウスで高いアミノ酸配列の相同性を有している、請求項1から3のいずれか1項記載の抗体の作製方法。
- アミノ酸配列の相同性が90%以上である、請求項4記載の抗体の作製方法。
- アミノ酸配列の相同性が94%以上である請求項5記載の抗体の作製方法。
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