JP2009256312A - 免疫調節用組成物およびそれを用いた飲食品または飲食品素材 - Google Patents

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聡 大橋
Toshiya Toda
登志也 戸田
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Abstract

【課題】アレルギー疾患などの免疫異常による疾患等を有効に予防・治療することができ、さらに副作用を生ずることが少なく安全で、かつ服用や摂取が容易な、免疫調節機能を有する組成物およびそれを用いた飲食品または飲食品素材を提供する。
【解決手段】下記の(A)および(B)の少なくとも一つを含有することを特徴とする免疫調節用組成物とする。そして、その免疫調節用組成物を含有する飲食品または飲食品素材とする。
(A)哺乳類の樹状細胞および脾臓細胞の少なくとも一方からインターロイキン10およびインターロイキン12産生を誘導する能力を有するラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FC(Lactococcus lactis subsp. cremoris FC ,FERM AP-20185)。
(B)上記(A)により生産された多糖類。
【選択図】なし

Description

本発明は、免疫調節用組成物およびそれを用いた飲食品または飲食品素材に関するものであり、詳しくは、哺乳類の樹状細胞や脾臓細胞などからインターロイキン10(以下「IL−10」とする)およびインターロイキン12(以下「IL−12」とする)の両方を高産生する能力を有する、免疫調節機能を有する組成物およびそれらを用いた飲食品または飲食品素材に関するものである。
生体の免疫系は、免疫担当細胞間の直接的あるいは間接的な相互作用によって調節されている。しかし、現代社会では、人は近代的な生活習慣の普及と高齢化社会へのシフトに伴い、このような免疫系の恒常性を保つことが困難な状態となっており、アレルギー疾患や炎症性腸疾患、自己免疫疾患など様々な免疫異常による疾患が依然増加している。これらの疾患では、無害な外来抗原や自己抗原への過剰な免疫応答が観察されることから、I型ヘルパーT細胞(以下「Th1細胞」とする)とII型ヘルパーT細胞(以下「Th2細胞」とする)間のバランスの破綻や、免疫応答を負に制御する制御性T細胞の機能低下等が関与していると考えられる。
このような免疫系の恒常性を保つのに重要な役割を果たしているタンパク質分子の一つに、インターロイキンなどのサイトカインがある。サイトカインは超微量で作用することが知られ、免疫系は、このようなサイトカインによって増強されたり、抑制されたりして、複雑にその機能が調節されている。例えば、IL−12はTh1細胞の分化を誘導する。また、Th1細胞はインターフェロンガンマ(以下「IFN−γ」とする)などを産生し、Th2細胞はインターロイキン4(以下「IL−4」とする)やIL−10などを産生している。産生されたこれらのサイトカインは、健全な生体内では互いに作用し合うことにより、Th1細胞とTh2細胞の均衡を保つ等の、様々な免疫応答機能の調節を行なっている。しかし、これらの均衡が崩れたり、制御性T細胞の機能が低下すると免疫異常による疾患が発生すると考えられる。
一方、消化器官における消化管免疫は、生体防御の最前線であり、病原体を認識し応答するが、腸内常在菌や食物などの無害な外来成分に対しては全身性の免疫寛容を誘導し、炎症を回避するという免疫恒常性維持機構を備えている。また、消化器官には、様々な免疫細胞がストックされ、それらが互いに作用し合い上記免疫恒常性維持機構を保持している。このような免疫細胞としては、例えば、腸管上皮細胞に存在する独特のT細胞等があげられる。このT細胞をはじめとする種々の細胞によって、消化器官は細胞性免疫応答も行なっている。
そして、このような細胞性免疫を司るTh1細胞や、免疫調節を司る制御性T細胞は、造血幹細胞が外来成分に誘導されてなるものであるが、その発生・分化や機能成熟過程について詳細は未だ明らかではない。しかし、無菌マウスでは経口の免疫寛容が正常に誘導されないという知見や、制御性T細胞の機能成熟には樹状細胞が関与すること、小腸にはいくつかの機能の異なる樹状細胞が存在すること、樹状細胞の機能成熟には微生物特有の分子が関与することといった知見から、消化器官内に存在する微生物およびこれらの微生物由来成分による消化器官への刺激が、消化器官ひいては全身の免疫恒常性維持に関与するものと考えられる。
また、人体におけるTh1細胞の数量は、生後から徐々に多くなり、成人の時期にピークに達する。しかし、通常、加齢とともにTh1細胞の働きは弱くなり、これを補うために、Th1細胞の分化を誘導するIL−12の産生が必要となる。また、上記制御性T細胞の活性化には、IL−10が関与していることから、IL−10の産生も免疫恒常性維持に重要な役割を担っている。
以上のことから、消化器官内に刺激を与え、免疫恒常性維持を図り、免疫異常による疾患を予防、軽減する手法として、近年、プロバイオティクスが注目を集めている。そして、プロバイオティクスによりサイトカインを誘導する試みとしては、ラクトバチルス属乳酸菌に属する特定の菌株によるIL−10およびIL−12産生の誘導が知られている(特許文献1)。しかし、ラクトコッカス属乳酸菌には、IL−10のみ、あるいはIL−12のみの産生の誘導する特定の菌株が存在することが知られているだけであり、その両方を強く誘導するものは知られていない(特許文献2)。
特開2004−277381号公報 特開2005−154387号公報
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、アレルギー疾患などの免疫異常による疾患等を有効に予防・治療することができ、さらに副作用を生ずることが少なく安全であり、かつ服用や摂取が容易である、免疫調節機能を有する組成物およびそれを用いた飲食品または飲食品素材の提供をその目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、下記の(A)および(B)の少なくとも一つを含有することを特徴とする免疫調節用組成物を第1の要旨とする。
(A)哺乳類の樹状細胞および脾臓細胞の少なくとも一方から、IL−10およびIL−12産生を誘導する能力を有するラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FC(Lactococcus lactis subsp. cremoris FC ,FERM AP-20185)。
(B)上記(A)により生産された多糖類。
また、本発明は、第1の要旨の免疫調節用組成物において、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FC(Lactococcus lactis subsp. cremoris FC ,FERM AP-20185)が、哺乳類の樹状細胞から腫瘍壊死因子−α(TNF−α、以下「TNF−α」とする)およびインターロイキン6(IL−6、以下「IL−6」とする)の少なくとも一方の産生を誘導する能力を有する免疫調節用組成物を第2の要旨とする。
さらに、本発明は、第1または第2の要旨の免疫調節用組成物において、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FC(Lactococcus lactis subsp. cremoris FC ,FERM AP-20185)が、哺乳類の脾臓細胞からインターロイキン4(IL−4、以下「IL−4」とする)の産生抑制を誘導する能力およびインターフェロンγ(IFN−γ、以下「IFN−γ」とする)の産生を誘導する能力の少なくとも一方の能力を有する免疫調節用組成物を第3の要旨とする。
そして、第1〜第3の要旨のいずれかの免疫調節用組成物を含有する飲食品または飲食品素材を第4の要旨とする。
すなわち、本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程において、長期間経口摂取しても安全性が高い乳酸球菌の中に、哺乳類の樹状細胞や脾臓細胞からのIL−10およびIL−12産生を強力に誘導するラクトコッカス属乳酸球菌が存在することを突き止めた。さらに、このようなラクトコッカス属乳酸球菌が作り出す多糖類にも同様にIL−10およびIL−12産生を誘導する効果があることを見いだした。そして、この特定のラクトコッカス属乳酸球菌およびその乳酸球菌により生産された多糖類の少なくとも一つを含有する組成物およびそれを用いた飲食品または飲食品素材を、免疫異常による疾患等の予防・治療用途に用いることにより、従来の化学薬品のように副作用等を生じずに、所期の目的を達成できることを見いだし、本発明に到達した。
以上のように、本発明の免疫調節用組成物は、下記の(A)および(B)の少なくとも一つを含有することにより、哺乳類の免疫系を調節する組成物である。そのため、従来の化学薬品のように副作用や習慣性が少なく、免疫異常による疾患等を有効に予防・治療できる。
(A)哺乳類の樹状細胞および脾臓細胞の少なくとも一方から、IL−10およびIL−12産生を誘導する能力を有するラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FC(Lactococcus lactis subsp. cremoris FC ,FERM AP-20185)。
(B)上記(A)により生産された多糖類。
そして、本発明のなかでも、特に、上記ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FC(Lactococcus lactis subsp. cremoris FC ,FERM AP-20185)が、哺乳類の樹状細胞からTNF−αの産生を誘導する能力を有するものであるときは、産生されたTNF−αが、自然免疫系の一つであるマクロファージの活性化を誘導するとともに、多くの形質転換細胞(腫瘍・がん細胞等)に対し選択的に毒性を有するため、より哺乳類の免疫系の恒常性を保つことが可能となる。また、哺乳類の樹状細胞からIL−6の産生を誘導する能力を有するものであるときは、産生されたIL−6が、抗体を産生するB細胞に働き、その増殖分化を促進することができるため、より哺乳類の免疫系の恒常性を保つ、あるいは、その働きの調節が可能となる。したがって、本発明の中でも特にこれらの産生を誘導する能力を有するものであるときは、免疫異常による疾患等をより有効に予防・治療することができる。
また、本発明のなかでも、特に、上記ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FC(Lactococcus lactis subsp. cremoris FC ,FERM AP-20185)が、哺乳類の脾臓細胞からのIL−4の産生抑制を誘導する能力を有するものであるときは、IL−4の産生を抑制することにより、上記Th2細胞に影響を与えて、液性免疫を抑制することができるため、より哺乳類の免疫系の恒常性を保ち、その働きを調節する効果が期待できる。また、哺乳類の脾臓細胞からIFN−γの産生を誘導する能力を有するものであるときは、産生されたIFN−γが、上記Th2細胞の働きを調節して、免疫系と炎症反応に対する恒常性を保つことが可能となり、加えて、マクロファージを刺激し、マクロファージに細菌を貪食殺菌させることができるため、これもまた、哺乳類の免疫系の恒常性をより保ち、その働きを調節する効果が期待できる。
さらに、これらの免疫調節用組成物を含有する飲食品または飲食品素材においても、免疫異常による疾患等を有効に予防・治療する効果を有する機能性食品または機能性食品素材となることから、その摂取により、高い生体防御機能を維持しつつ、免疫系の恒常性を保つことができるようになり、様々な免疫異常による疾患の予防・治療に優れた効果を発揮する。
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明は、これに限定されるものではない。
本発明の免疫調節用組成物は、先の述べたように、哺乳類の樹状細胞および脾臓細胞の少なくとも一方から、IL−10およびIL−12産生を誘導する能力を有するラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FC(Lactococcus lactis subsp. cremoris FC ,FERM AP-20185)およびそれにより生産された多糖類の少なくとも一つを含有することにより、哺乳類の免疫系の調節を行なうものである。なお、本発明でいうところの哺乳類としては、マウス、ラット、ハムスターなどの実験動物のほか、人や、牛、豚、山羊、羊などの家畜などもを挙げることができる。
本発明において、樹状細胞とは、抗原提示細胞の一つであり、前記Th1細胞およびTh2細胞と相互採用することにより、免疫系の一部を担う細胞を意味するものである。このような樹状細胞は、例えば、マウス等の骨髄細胞の初代短期培養細胞として得ることができるほか、末端血中の単球細胞(モノサイト)に、IL−4、TNF−α、GM−CSFなどのサイトカインを添加することなどの方法によっても得ることができる。
樹状細胞をマウス等の骨髄細胞から培養して得るための培養期間は、たとえばGM−CSFを添加したRPMI(ローズウェル・パーク・メモリアル・インスティチュート)培地を用いる場合は、7日以上15日を超えない期間とすることが好ましい。すなわち、7日未満であるとB細胞などが混入する可能性があり、15日を超えると細胞の増殖機能が低下し、採取できる細胞数が減少する傾向がみられるからである。
本発明において、脾臓細胞とは、免疫臓器の一つである脾臓に由来する細胞を意味し、樹状細胞やマクロファージなどと同じく抗原提示細胞をいうほか、T細胞や抗体産生細胞となるB細胞の集合体をも意味するものである。このような脾臓細胞は、例えば、マウス等の脾臓を採取した後、赤血球を除去するなどの常法により得ることができる。このような樹状細胞や脾臓細胞は、哺乳類から直接摂取した細胞を用いることができることの他、予め株化された細胞を利用することも可能である。
本発明において、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FCとは、本願出願人が、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託しているラクトコッカス属に属する乳酸生産能力を有す球菌、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FC(Lactococcus lactis subsp. cremoris FC ,FERM AP-20185)をいい、生体菌であっても、死菌体であっても良い。
そして、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FCにより生産された多糖類とは、その菌を乳中に含有させて培養することにより、その菌が産生する多糖類で、いわゆる菌体外多糖をいう。以下、本発明において、EPS(ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FCにより生産された多糖類)とする。
上記乳としては、例えば、牛乳などといった動物性のもの(脱脂粉乳であってもよい)や、豆乳のような植物性のものが用いられる。これらは単独であるいは二種以上併せて用いてもよい。なお、上記豆乳は、その原料として、例えば、油脂を含有した丸大豆、脱皮大豆、フレーク大豆などを用い、それらを加工することによって得ることができる。
なお、上記乳として、豆乳のみを用いる場合、そのままでは発酵が促されにくいことから、その5重量%(以下、「%」と略す)程度の割合で、乳糖(ラクトース)を添加することが好ましい。また、上記乳として、豆乳のみを用いる場合でなくても(例えば、豆乳と牛乳との併用や、牛乳のみを用いる場合でも)、適宜、乳糖を添加してもよい。さらに、乳糖以外にも、上記乳に、ブドウ糖,果糖等の糖類を必要に応じて加えてもよい。
このようなラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FCは、あらかじめ乳酸菌の培養の常法にしたがって、任意の方法により培養し、死菌体の場合は、加熱等の手法により殺菌して、本発明の目的に用いることができる。また、EPSは、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FCを乳中で培養することにより、その菌が生産するものであるが、上記培養した乳を加熱等の手法により殺菌しても、本発明における効果を失うものではない。
また、必要に応じ、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FCとともに、例えば、アセトバクター(Acetobacter)属,グルコンアセトバクター(Gluconacetobacter)属等に属する酸性菌や、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidphilus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ブルガリカス(Lactobacillus bulgaricus)、ストレプトコッカス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サーモフィラス(Streptococcus salivarius subsp. thermophilus)等の乳酸菌を、一種あるいは二種以上併せて用いてもよい。特に、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FCとともに、アセトバクター・オリエンタリス(Acetobacter orientalis)、ラクトバチルス・ブルガリカスおよびストレプトコッカス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サーモフィラスからなる群から選ばれた少なくとも一種の菌を併せて用い、得られたものが、本発明品としての諸機能をより発現できることから好ましく、アセトバクター・オリエンタリスを併せて用いて得たものがより好ましい。なお、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FCとともに、ラクトバチルス・ブルガリカスやストレプトコッカス・サリバリウス・サブスピーシーズ・サーモフィラスを併せて用いたものは、風味の改善が顕著になされ、摂取が容易となることから、この併用により、特に、飲食品への適用に有利となる。
そして、本発明の組成物は、例えば、つぎのようにして製造することができる。
まず、上記寄託菌株〔凍結乾燥され粉末状となったものを1g程度。上記粉末1g中の生菌数は1×105 以上(好ましくは1×107 〜1×109 )〕を準備し、これを、殺菌された培養ビンの中に入れる。また、必要に応じ、他の菌(例えば、アセトバクター・オリエンタリス等)も併せて入れる。なお、これらは、粉末状のものに限定されるものではない。そして、殺菌済みの乳(牛乳、豆乳等)を準備し、上記培養ビンの中に、これを所定量(30〜40ml)加える。また、上記乳の中に、必要に応じ、乳糖等の糖類を加える。ここで、上記培養ビンの中へ入れる各材料の順序は、上記と異なっていてもよい。そして、上記培養ビンに蓋をして閉め、よく振とうし、その後、室温(摂氏15〜30℃)環境下で3時間以上、好ましくは8〜24時間、放置する。このようにし、上記菌株を活性化させ、発酵を促す。これにより得られた乳発酵物中に目的とする組成物(哺乳類の樹状細胞や脾臓細胞からIL−10およびIL−12産生を誘導する能力を有するラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FCおよびEPSの少なくとも一つを含有する組成物)を得ることができる。
上記組成物は、乳発酵物から取り出して、適宜、このようなラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FCおよびEPSの少なくとも一つが有効成分となるよう調製して用いることもできるが、乳発酵物そのまま(生菌状態のまま)か、あるいは、85℃×30分程度で加熱殺菌を行い、乳発酵物に含有させたまま用いるように調製することもできる。この乳発酵物は、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FCとEPSの双方を含むため、両者の相乗効果により、より本発明の有する効果が期待できる。また、上記乳発酵物を、凍結乾燥等により乾燥させて粉末化したり、その粉末を、適当な粉末担体に混合させたりして、調製することも可能である。さらに、その粉末を打錠して粒状にしたり、上記粉末をカプセルに封入したりして用いてもよい。さらに、上記乳発酵物を、適当な液状担体に溶解あるいは分散させたりして用いてもよい。
なお、本発明の組成物は、ヒトのみでなく、ペットや家畜等の動物においても、アレルギー疾患などの免疫異常による疾患等を予防・治療するという効果が得られるものであり、その投与量は、投与対象とする生物の違い、投与される者の性別、体重、年齢等の違い、免疫疾患等を予防または治療のいずれを目的とするのかといった違いに応じて、適宜設定される。例えば、成人に対しては、上記組成物を含む乳発酵物を1日あたり60〜600gとなるよう、数回に分けて投与することにより、上記疾患の予防・治療効果を有意に得ることができる。なお、ペットや家畜等の動物においては、本発明の組成物を動物用飼料に含有させることにより、投与することができる。
一方、本発明の組成物は、それを飲食品または飲食品素材に関与させた形態としても提供することができる。上記飲食品としては、例えば、健康食品,特定保健用食品,清涼飲料水,お茶,ゼリー,ヨーグルト,プリン,アイスクリーム,アイスキャンデー,アメ,チョコレート,パン,ケーキ,ハム,ミートソース,カレー,シチュー,チーズ,バター,ドレッシング等があげられる。また、飲食品素材としては、上記飲食品に用いるもの等があげられる。このように、本発明の組成物を飲食品または飲食品素材に含有させると、特別に摂取を意識することなく、手軽に容易に摂取することが可能となるため、長期に渡る摂取を、より困難なく行なうことができる。
つぎに、実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
まず、実施例および比較例に先立ち、マウス骨髄細胞由来樹状細胞(bone marrow-derived dendritic cell)および脾臓細胞を調製した。
〔マウス骨髄由来樹状細胞の調製〕
BALB/cマウスを安楽死させた後、骨髄細胞を採取し、Phycoerythrin(PE)標識抗I−A抗体、PE標識抗CD4抗体およびPE標識抗CD8抗体に反応しなかった細胞を分離し、GM−CSFを添加したRPMI1640培地(Gibco社製)で8日間培養した。そして、培養開始後8日目に、その浮遊細胞を、樹状細胞として得た。
〔脾臓細胞の調製〕
BALB/cマウスを安楽死させた後、脾臓を摂取し、コラゲナーゼ(Sigma社製)を基本培地に入れ緩やかに攪拌して、細胞懸濁液を得た。この細胞懸濁液を1%FCSを添加したRPMI1640培地(Gibco社製)で洗浄して細胞を取り出し、取り出した細胞を1%FCSを添加したRPMI1640培地に懸濁後、400xgで5分間遠心分離してこの細胞懸濁液の上清を除去した。その後、この細胞懸濁液にpH7.5の溶血バッファー(0.155M塩化アンモニウム,0.01Mトリス)と、1%FCSを添加したRPMI1640培地を加え、400xgで7分間遠心分離し、1%FCSを添加したRPMI1640培地で洗浄後、基本培地に懸濁して脾臓細胞を得た。
つぎに、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FCの加熱死菌体、EPSを以下のように調製した。
〔ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FCの加熱死菌体の調製〕
ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FCをGM17液体培地(Difco社製のM17培地950mLに、10%グルコース水溶液50mlを加えたもの)にて30℃の条件で静置培養した後、生理食塩水で3回洗浄し、適量の生理食塩水中に懸濁後、75℃で1時間加熱して加熱死菌体を調製した。
〔EPSの調製〕
0.2重量%の酵母エキスを添加した15重量%脱脂粉乳溶液を、85℃で15分間加熱殺菌し、冷却後、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FCを1重量%添加して、30℃で8時間培養した。このように、培養して得た乳発酵物からEPSを取り出すため、以下の操作を行った。すなわち、上記乳発酵物に対し4重量%となるように100%トリクロロ酢酸を添加し、たんぱく質を変性させ、12000Gで20分間遠心分離を行って、上清を取り出し、さらに12000Gで20分間遠心を行って上清を取り出した。その後、その上清を濾過し、等量のアセトンを注いで、浮上した白色析出物(EPS)を取り出し、その白色析出物を透析膜〔排除分子量(MWCO):3500〕に入れ、4℃の冷蔵庫内で、滅菌水にて3日間の透析を行い、さらに滅菌したリン酸緩衝液(PBS)にて1日間の透析を行った後、凍結乾燥し、目的とするEPSを得た。
以下の実施例および比較例に記載の方法により試料(上清)を回収し、これをもとに後記の測定方法に従い、サイトカイン産生実験を行った。なお、実験は、以下の項目に分けて行っている。
・ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FC(以下「FC菌株」とする)と、EPSの樹状細胞からのサイトカイン産生実験(実施例1〜9および比較例1),(実施例16〜23および比較例8)。
・FC菌株と標準菌株であるラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス ATCC 19257(以下、単なる「標準菌株」とする)の樹状細胞からのサイトカイン産生実験(実施例10〜12および比較例2〜4)。
・FC菌株と標準菌株の脾臓細胞からのサイトカイン産生実験(実施例13〜15および比較例5〜7)。
・FC菌株とEPSの脾臓細胞からのサイトカイン産生実験(実施例24〜32および比較例9)。
〔樹状細胞のサイトカイン産生実験〕
<FC菌株およびEPSのサイトカイン産生実験>
〔実施例1〕
まず、前述のように調製した樹状細胞を、細胞培養用48穴平底プレート(BD FALCON社製)に、6×105cell/0.6ml/wellとなるよう分注した。これに、前述のように調製したFC菌株の加熱死菌体を5cfu/cell添加して24時間培養した後、上清を回収し、これを試料として得た。
〔実施例2〕
添加する加熱死菌体量を25cfu/cellとした。それ以外は、実施例1と同様にして、試料を得た。
〔実施例3〕
添加する加熱死菌体量を50cfu/cellとした。それ以外は、実施例1と同様にして、試料を得た。
〔実施例4〕
加熱死菌体を添加せず、それに代えて、実施例1と同数の加熱死菌体から得られた牛乳由来のEPS(25μg/ml)を添加した。それ以外は、実施例1と同様にし、試料を得た。
〔実施例5〕
加熱死菌体を添加せず、それに代えて、実施例2と同数の加熱死菌体から得られた牛乳由来のEPS(前記〔EPSの調製〕に記載の脱脂粉乳溶液に代えて牛乳を用いたもの)(50μg/ml)を添加した。それ以外は、実施例1と同様にし、試料を得た。
〔実施例6〕
加熱死菌体を添加せず、それに代えて、実施例3と同数の加熱死菌体から得られた牛乳由来のEPS(100μg/ml)を添加した。それ以外は、実施例1と同様にし、試料を得た。
〔実施例7〕
加熱死菌体を添加せず、それに代えて、実施例1と同数の加熱死菌体から得られた脱脂粉乳水溶液由来のEPS(25μg/ml)を添加した。それ以外は、実施例1と同様にし、試料を得た。
〔実施例8〕
加熱死菌体を添加せず、それに代えて、実施例2と同数の加熱死菌体から得られた脱脂粉乳水溶液由来のEPS(50μg/ml)を添加した。それ以外は、実施例1と同様にし、試料を得た。
〔実施例9〕
加熱死菌体を添加せず、それに代えて、実施例3と同数の加熱死菌体から得られた脱脂粉乳水溶液由来のEPS(100μg/ml)を添加した。それ以外は、実施例1と同様にし、試料を得た。
〔比較例1〕
加熱死菌体を添加せず、それに代えて、リン酸緩衝液(PBS)を400μl/ml添加した。それ以外は、実施例1と同様にし、試料を得た。
このようにして得られた試料(実施例1〜9品および比較例1品)について、ELISA(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay、エライザ)法によりサイトカイン濃度の測定を行なった。具体的には、上記試料中のIL−10およびIL−12の測定を、OptEIA ELISAキット(BD Pharmingen)を用いて行なった。そして、上記試料(上清)に対する測定を各2回行い、その平均を標準偏差とともに、下記の表1に示した。
Figure 2009256312
上記表1の結果から、PBSを添加した比較例1品では、IL−10およびIL−12は産出されていないのに対し、実施例1〜9品では、IL−10およびIL−12の双方が産出されていることが示された。よって、FC菌株およびEPSには、それぞれ、樹状細胞から、IL−10およびIL−12を生産誘導する能力があることがわかった。
<FC菌株および標準菌株のサイトカイン産生実験>
〔実施例10〕
前述のように調製した樹状細胞を、細胞培養用48穴平底プレート(BD FALCON社製)に、12×106cell/0.6mL/wellとなるよう分注した。これに、前述のように調製したFC菌株の加熱死菌体を5cfu/cell添加して24時間培養した後、上清を回収し、これを試料として得た。
〔実施例11〕
添加する加熱死菌体量を25cfu/cellとした。それ以外は、実施例10と同様にし、試料を得た。
〔実施例12〕
添加する加熱死菌体量を50cfu/cellとした。それ以外は、実施例10と同様にし、試料を得た。
〔比較例2〕
FC菌株の加熱死菌体を添加せず、それに代えて、上記標準菌株の加熱死菌体を用いた。それ以外は、実施例10と同様にし、試料を得た。なお、上記標準菌株は、ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリスの分類学上の基準株として用いられるものである。
〔比較例3〕
FC菌株の加熱死菌体を添加せず、それに代えて、上記標準菌株の加熱死菌体を用いた。それ以外は、実施例11と同様にし、試料を得た。
〔比較例4〕
FC菌株の加熱死菌体を添加せず、それに代えて、上記標準菌株の加熱死菌体を用いた。それ以外は、実施例12と同様にし、試料を得た。
このようにして得えられた試料(実施例10〜12品および比較例2〜4品)について、OptEIA ELISAキット(BD Pharmingen)を用いてIL−10およびIL−12の測定を行なった。そして、上記試料に対する測定を各3回行い、その平均を標準偏差とともに、下記の表2に示した。
Figure 2009256312
〔脾臓細胞のサイトカイン産生実験〕
<FC菌株および標準菌株のサイトカイン産生実験>
〔実施例13〕
前述のように調製した調製した脾臓細胞を、細胞培養用48穴平底プレート(BD FALCON社製)に、12×106cell/0.6mL/wellとなるよう分注した。これに、前述のように調製したFC菌株の加熱死菌体を5cfu/cell添加して24時間培養した後、上清を回収し、これを試料として得た。
〔実施例14〕
添加する加熱死菌体量を25cfu/cellとした。それ以外は、実施例13と同様にし、試料を得た。
〔実施例15〕
添加する加熱死菌体量を50cfu/cellとした。それ以外は、実施例13と同様にし、試料を得た。
〔比較例5〕
FC菌株の加熱死菌体を添加せず、それに代えて、上記標準菌株の加熱死菌体を用いた。それ以外は、実施例13と同様にし、試料を得た。
〔比較例6〕
FC菌株の加熱死菌体を添加せず、それに代えて、上記標準菌株の加熱死菌体を用いた他は、実施例14と同様にし、試料を得た。
〔比較例7〕
FC菌株の加熱死菌体を添加せず、それに代えて、上記標準菌株の加熱死菌体を用いた他は、実施例15と同様にし、試料を得た。
このようにして得られた試料(実施例13〜15品および比較例5〜7品)について、OptEIA ELISAキット(BD Pharmingen)を用いてIL−10およびIL−12の測定を行なった。そして、上記試料に対する測定を各3回行い、その平均を標準偏差とともに、下記の表3に示した。
Figure 2009256312
表2および表3の結果から、比較例2〜7品である標準菌株には、樹状細胞および脾臓細胞から、IL−10およびIL−12を生産誘導する能力がほとんどないのに対し、実施例10〜15品であるFC菌株には、樹状細胞および脾臓細胞から、IL−10およびIL−12を生産誘導する能力があることがわかった。
これらのことを総括すると、樹状細胞において、FC菌株の加熱死菌体およびEPSのそれぞれを添加したものから、高いIL−10およびIL−12産生がみられたことから、FC菌株は、菌体自体がIL−10およびIL−12産生を誘導する能力があるだけでなく、EPS自体にも、同様にIL−10およびIL−12産生を誘導する能力があることが示された。また、表3に示されるように、脾臓細胞においても、FC菌株の加熱死菌体を添加したものから、高いIL−10およびIL−12産生がみられた。
なお、表2および表3に示された実施例において、FC菌株の加熱死菌体を添加したときの樹状細胞および脾臓細胞のIL−10およびIL−12産生パターンの違いは、脾臓細胞が樹状細胞のほかにマクロファージ、B細胞、T細胞、NK細胞など様々な細胞により構成されることに由来していると考えられる。
そして、脾臓細胞を刺激したときに24時間後までに産生されるIL−10は、主にマクロファージを産生源としていると推測されるが、FC菌株の加熱死菌体を添加した脾臓細胞から高いIL−10の産生がみられた。したがって、FC菌株は、マクロファージのIL−10生産を強く誘導すると考えられる。
つぎに、先の実施例(実施例1〜15)とは別に調製を行なったFC菌株およびEPSを用いて、樹状細胞のサイトカイン産生実験(実施例16〜23)および脾臓細胞のサイトカイン産生実験(実施例24〜32)を行った。なお、FC菌株およびEPSの調製は、先の実施例(実施例1〜15)と同様の方法にて行なっている。
〔樹状細胞のサイトカイン産生実験〕
<FC菌株およびEPSのサイトカイン産生実験>
〔実施例16,17〕〔FC菌株〕
前述のように調製したマウス骨髄由来樹状細胞を、細胞培養用96穴平底プレート(BDFALCON社製)に、2×105cell/0.25ml/wellとなるよう分注し、これに上記のように調製を行なったFC菌株加熱死菌体を、下記の表4に示す割合で添加して、24時間培養した後、上清を回収し、これを試料として得た。
〔実施例18〜20〕〔EPS/牛乳発酵物由来〕
FC菌株加熱死菌体を添加せず、それに代えて、牛乳発酵物由来のEPSを、表4に示す分量を添加した。それ以外は、実施例16と同様にして試料を得た。
〔実施例21〜23〕〔EPS/脱脂粉乳発酵物由来〕
FC菌株加熱死菌体を添加せず、それに代えて、脱脂粉乳発酵物由来のEPSを、表4に示す分量を添加した。それ以外は、実施例16と同様にして試料を得た。なお、各EPS25μg/mlは、FC菌株加熱死菌体5cfu/cell、各EPS50μg/mlは、FC菌株加熱死菌体25cfu/cell、各EPS100μg/mlは、FC菌株加熱死菌体50cfu/cellから得られる量にそれぞれ相当するものである。
〔比較例8〕
FC菌株加熱死菌体および各EPSのいずれも添加せず、それに代えて、リン酸緩衝液(PBS)を400μl/ml添加した。それ以外は、実施例16と同様にし、試料を得た。
Figure 2009256312
このようにして得た試料(実施例16〜23,比較例8)について、OptEIA ELISAキット(BD Pharmingen)を用いてIL−10,IL−12,IL−6およびTNF−αの測定を行なった。そして、上記試料に対する測定は各3回行い、その平均を標準偏差とともに、下記の表5に示した。
Figure 2009256312
表5の結果より、実施例16〜23品では、IL−10,IL−12のみならず、IL−6あるいはTNF−αの産生誘導能力があることがわかる。したがって、IL−10およびIL−12の産生誘導能力を有するFC菌株およびEPSにおいて、さらに、IL−6もしくはTNF−αの産生誘導能力を有するものがあることが示された。
〔脾臓細胞のサイトカイン産生実験〕
<FC菌株およびEPSのサイトカイン産生実験>
〔実施例24〜26〕〔FC菌株〕
前述のように調製した脾臓細胞を、細胞培養用96穴平底プレート(BDFALCON社製)に、5×105cell/0.25ml/wellとなるよう分注し、これに上記のように調製を行なったFC菌株加熱死菌体を、下記の表6に示す割合で添加して、48時間培養した後、上清を回収し、これを試料として得た。
〔実施例27〜29〕〔EPS/牛乳発酵物由来〕
FC菌株加熱死菌体を添加せず、それに代えて、牛乳発酵物由来のEPSを、表6に示す分量を添加した。それ以外は、実施例24と同様にして試料を得た。
〔実施例30〜32〕〔EPS/脱脂粉乳発酵物由来〕
FC菌株加熱死菌体を添加せず、それに代えて、脱脂粉乳発酵物由来のEPSを、表6に示す分量を添加した。それ以外は、実施例24と同様にして試料を得た。なお、各EPS25μg/mlは、FC菌株加熱死菌体5cfu/cell、各EPS50μg/mlは、FC菌株加熱死菌体25cfu/cell、各EPS100μg/mlは、FC菌株加熱死菌体50cfu/cellから得られる量にそれぞれ相当するものである。
〔比較例9〕
FC菌株加熱死菌体および各EPSのいずれも添加せず、それに代えて、リン酸緩衝液(PBS)を400μl/ml添加した。それ以外は、実施例24と同様にし、試料を得た。
Figure 2009256312
このようにして得た試料(実施例24〜32,比較例9)について、OptEIA ELISAキット(BD Pharmingen)を用いてIL−4およびIFN−γの測定を行なった。そして、上記試料に対する測定は各2回行い、その平均を標準偏差とともに、下記の表7に示した。
Figure 2009256312
表7の結果より、比較例9品では、IL−4産生誘導能力があるのに対し、実施例24〜32品では、いずれもIL−4の産生が抑制され、0となっている。一方、実施例24〜32品は、IFN−γの値が高く示され、産生誘導能力があることがわかる。したがって、IL−10およびIL−12の産生誘導能力を有するFC菌株およびEPSにおいて、さらに、IL−4の産生抑制を誘導する能力もしくはIFN−γの産生誘導能力を有するものがあることが示された。
以上のことから、樹状細胞および脾臓細胞においてIL−10を強く誘導するだけでなく、IL−12産生をも誘導するFC菌株は、免疫バランスを整えるのに有用な菌株であることが示された。また、同様に、そのEPSについても有用であることが示された。
そして、その中でも、IL−10およびIL―12産生を誘導する能力に加え、哺乳類の樹状細胞からIL−6産生を誘導する能力を有するものである場合には、産生したIL−6が、B細胞に働き、その増殖分化を促進するため、より免疫系の恒常性を保つ、あるいは働きの調節が可能となる。また、IL−10およびIL―12産生を誘導する能力に加え、哺乳類の樹状細胞からTNF−α産生を誘導する能力を有するものである場合には、産生したTNF−αが、マクロファージの活性化を誘導し、腫瘍やがん細胞等の形質転換細胞に対し選択的に毒性を有するため、免疫異常による疾患等をより有効に予防・治療することができる。
また、上記同様に、IL−10およびIL―12産生を誘導する能力に加え、哺乳類の脾臓細胞からのIL−4産生の抑制を誘導する能力を有するものである場合には、IL−4の産生を抑えることにより、Th2細胞に影響を与え、過剰な液性免疫を抑制することができるため、より免疫系の恒常性を保つ、あるいは働きの調節が可能となる。そして、さらに、IL−10およびIL―12産生を誘導する能力に加え、哺乳類の脾臓細胞からIFN−γの産生を誘導する能力を有するものである場合には、産生したIFN−γが、Th2細胞の働きを調節し、免疫系と炎症反応に対する恒常性を保ち、加えて、マクロファージを刺激し、細菌を貪食殺菌させることができるため、免疫異常による疾患等をより有効に予防・治療することができる。
〔経口摂取した際の免疫調節効果〕
つぎに、生体内における本発明の効果を検証するための実験および検討を行った。実験は、健常な高齢者に下記に示すドリンクタイプの発酵乳を摂取させ、摂取前の血中のIgEと、摂取後の血中のIgEを測定することにより行い、検討は、これらの値を比較することにより行った。
まず、実施例および比較例に先立ち、哺乳類の樹状細胞や脾臓細胞からIL−10およびIL−12産生を誘導する能力を有するFC菌株およびEPSを含むドリンクタイプの発酵乳を調製した。
〔ドリンクタイプの発酵乳の調製〕
下記の表8に示す材料割合で調製した培地に、上記FC菌株およびサーモフィルス菌を添加して培養し、糖液〔ニューフラクト55(昭和産業社製)、ペクチン(CP Kelco ApS社製)、フジフラボンP40(フジッコ社製)、水〕、香料〔牛乳フレーバー(サンアイ化学社製)、白桃フレーバー(大阪香料社製)〕を加えて、FC菌株が1.5×109個/g以上,サーモフィルス菌が3.1×107個/g以上となるように調製した。
Figure 2009256312
〔実施例33〕
上記のように調製したFC菌株およびEPSを含むドリンクタイプの発酵乳を、健常な高齢者(男性32名、女性38名、平均年齢67.1±4.8歳)に対し、その摂取量が150g/日になるよう、1ヶ月間摂取させた。
〔比較例10〕
上記の表8に示す材料割合で調製した培地に、サーモフィルス菌のみを添加し、上記ドリンクタイプの発酵乳と同じ液糖、ペクチン、香料に加え、50%発酵乳酸を上記培地の2.5重量%添加し、実施例1の発酵乳と酸度が同じになるように(サーモフィルス菌が3.1×107個/g以上となるように)調製した。このように調製した発酵乳を、健常な高齢者に対し、実施例33と同様に1ヶ月間摂取させた。
上記の実施例および比較例について、摂取前の高齢者の血中IgE濃度と、摂取後の高齢者の血中IgE濃度の測定を行った。そして、この測定を各2回行い、その平均を標準偏差とともに、下記の表9および図1に示した。
Figure 2009256312
上記表9および図1の結果より、実施例33品の被験者である高齢者の血中IgE濃度は、有意に減少しているのに対し、比較例10品の被験者である高齢者の血中IgE濃度は、変化がほとんど見られなかった。このことから、哺乳類の樹状細胞や脾臓細胞からIL−10およびIL−12産生を誘導する能力を有するFC菌株およびEPSを含む発酵乳には、人体において、Th1細胞とTh2細胞間のバランスを整え、IgEレベルを低くする効果があることがわかった。したがって、このようなFC菌株およびEPSは、生体内においてもIL−10およびIL−12産生を誘導する能力を発揮し、免疫バランスを整えるのに有用であることが示された。
そして、上記FC菌株およびEPSは、生体内においてもIL−10およびIL−12産生を誘導する能力を発揮することが示されたことで、哺乳類の樹状細胞からTNF−αの産生を誘導する能力を有するものにおいても、IL−10およびIL−12と同様に、その能力を生体内で発揮することができるものと考えることができる。したがって、上記FC菌体およびEPSにおいて、IL−10およびIL−12産生を誘導する能力に加えて、哺乳類の樹状細胞からTNF−αの産生を誘導する能力を有するものであるときは、生体内において、マクロファージの活性化を誘導するとともに、腫瘍・がん細胞等の形質転換細胞に対し選択的に毒性を有するようになるため、より免疫バランスを整えることができると考えられる。また、同様に、上記FC菌株およびEPSが、IL−10およびIL−12産生を誘導する能力に加えて、哺乳類の樹状細胞からIL−6の産生を誘導する能力を有するものであるときは、生体内において、B細胞の増殖分化の促進を図ることができ、より免疫系の働きの調節が可能となると考えられる。
また、上記同様の理由により、上記FC菌株およびEPSにおいて、IL−10およびIL−12産生を誘導する能力に加えて、哺乳類の脾臓細胞からIL−4の産生の抑制を誘導する能力を有するものであるときは、IgEの産生を抑制することができ、過剰な液性免疫反応を抑制し、これにより生体の免疫バランスをより保つことができると考えられる。そして、上記FC菌株およびEPSが、IL−10およびIL−12産生を誘導する能力に加えて、IFN−γの産生を誘導する能力を有するものであるときは、同様に、Th2細胞の働きの調節が可能となり、また、マクロファージに細菌を貪食殺菌させることを活発化させて、より免疫系と炎症反応の恒常性を保つことができると考えられる。
実施例33品および比較例10品の経口摂取前後の、被験者の血中IgE濃度を示すグラフ図である。

Claims (4)

  1. 下記の(A)および(B)の少なくとも一つを含有することを特徴とする免疫調節用組成物。
    (A)哺乳類の樹状細胞および脾臓細胞の少なくとも一方から、インターロイキン10(IL−10)およびインターロイキン12(IL−12)産生を誘導する能力を有するラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FC(Lactococcus lactis subsp. cremoris FC ,FERM AP-20185)。
    (B)上記(A)により生産された多糖類。
  2. 上記ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FC(Lactococcus lactis subsp. cremoris FC ,FERM AP-20185)が、哺乳類の樹状細胞から腫瘍壊死因子−α(TNF−α)およびインターロイキン6(IL−6)の少なくとも一方の産生を誘導する能力を有する請求項1記載の免疫調節用組成物。
  3. 上記ラクトコッカス・ラクティス・サブスピーシーズ・クレモリス FC(Lactococcus lactis subsp. cremoris FC ,FERM AP-20185)が、哺乳類の脾臓細胞からインターロイキン4(IL−4)の産生抑制を誘導する能力およびインターフェロンγ(IFN−γ)の産生を誘導する能力の少なくとも一方の能力を有する請求項1または2記載の免疫調節用組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の免疫調節用組成物を含有することを特徴とする飲食品または飲食品素材。



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