JP2009254902A - フレキシブル神経プローブおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 フレキシブルな基板を備え、3次元的な神経組織の計測を可能とする多チャンネル型フレキシブル神経プローブおよびその製法を提供すること。
【解決手段】 本発明の多チャンネル型フレキシブル神経プローブは、フレキシブルな絶縁基板11に挟持された複数本のプローブ電極12と、これらの電極12にそれぞれ接続され、同じくフレキシブルな絶縁基板11−1に挟持された電気的配線16とを備え、前記複数本のプローブ電極12は、それぞれ、ほぼ平行に配置された複数のプローブ導体13〜15により構成され、これらの各プローブ導体13〜15には、前記プローブ電極の異なる高さ位置において記録パッド13−1、14−1、15−1が設けられている。
【選択図】 図1

Description

本発明は生体内の神経系を流れる微弱電気信号の計測や神経系への微弱電気信号入力を行うプローブに関し、特にフレキシブルな基板を用いた多チャンネルのプローブに関するものである。
脳や神経束のような柔軟な生体組織に電極針を挿入し、神経系の情報の計測や神経系への情報入力を行うプローブは、米国ユタ大学のR.A.Normanにより発表されている(非特許文献1参照)。この神経電極はシリコン基板上に多数のシリコン製の電極針が一体に植設されたもので、外観が剣山に類似しているため、ユタ剣山型電極として知られている。また、米国ミシガン大学のK.D.Wiseによっても、シリコン基板に基板とは別に設けられた多数のプローブを組み合わせた剣山電極が発表されている(非特許文献2参照)。
また、複数のフレキシブルな電極針を有するプローブも公表されている(非特許文献3参照)。
IEEE トランザクションズ オン バイオメディカル エンジニアリング 第38巻、第8号 1991年 (第758−768頁、 第7図) IEEE トランザクションズ オン バイオメディカル エンジニアリング 第41巻、第12号 1994年 (第1136−1146頁、 第2図) IEEE プロシーディング オブ ザ 14ス インターナショナルコンファレンス オン マイクロ エレクトロ メカニカル システムズ(Proceeding of the 14th IEEE International Conference on Micro Mechanical Systems) 予稿(第216−219頁、 第4図)
しかしながら、これらのプローブはシリコン等の固い材料で構成された基板に同じくシリコン等の固い材料で構成された電極針が植設されているため、脳や神経束などの柔軟な生体組織に電極針を刺入し埋め込んだ場合、生体部位の形状に整合できずまたその動きに追従できないため、電極針の計測点と対象神経組織との位置合わせが困難であるばかりでなく、生体組織を損傷し、あるいは長期にわたり安定な計測や刺激ができないという問題があった。
また、フレキシブルな電極を有するプローブは、3次元的な計測ができないという問題があった。
さらにまた、従来のプローブには、電極針先端部に複数個の計測点を配置して神経組織内の三次元的な計測や刺激を可能とするものも知られているが、その製造方法が煩雑であり、工業的な生産に適していなかった。
したがって本発明は、上記従来の神経電極の問題点を改良し、フレキシブルな基板を備え、3次元的な神経組織の計測を可能とするとともに、その製造が容易な多チャンネル型フレキシブル神経プローブ及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
また、本発明の多チャンネル型フレキシブル神経プローブは、一対のフレキシブルな絶縁基板間に挟持されたプローブ電極と、このプローブ電極を内部に含み、このプローブ電極に沿って流体を供給するように前記一対のフレキシブルな絶縁基板間に形成された流路と、を備えたことを特徴とするものである。
さらに、本発明の多チャンネル型フレキシブル神経プローブにおいては、前記フレキシブルな絶縁基板は、パリレン樹脂により構成されていることを特徴とするものである。
さらに、本発明の多チャンネル型フレキシブル神経プローブにおいては、前記流路は、前記プローブ電極の先端より延長して形成されていることを特徴とするものである。
さらに、本発明の多チャンネル型フレキシブル神経プローブにおいては、前記流路内には、常温で固体化されるポリエチレングリコールが充填されていることを特徴とするものである。
また、本発明の多チャンネル型フレキシブル神経プローブの製造方法は、半導体基板の表面に第1のパリレン樹脂層を形成する工程と、この第1のパリレン樹脂層の表面に金属層を形成する工程と、この金属層をパターニングして、プローブ電極を形成する工程と、この工程により形成されたプローブ電極の表面を含む前記第1のパリレン樹脂層の表面に、フォトレジスト層を形成する工程と、このフォトレジスト層をの表面を含む前記第1のパリレン樹脂層の表面に、第2のパリレン樹脂層絶縁層を形成する工程と、前記第1および第2のパリレン樹脂層をプラズマエッチングにより、所定の形状にパターニングする工程と、前記フォトレジスト層をエッチングすることにより、前記第1および第2のパリレン樹脂層間に流路を形成する工程と、を備えたことを特徴とするものである。
さらに、本発明の多チャンネル型フレキシブル神経プローブの製造方法においては、前記半導体基板の表面には熱酸化膜が形成されていることを特徴とするものである。
さらに、本発明の多チャンネル型フレキシブル神経プローブの製造方法においては、前記流路内に、過熱して液化されたポリエチレングリコールを充填供給し、常温に冷却して固体化する工程をさらに備えたことを特徴とするものである。
また、本発明のフレキシブル神経プローブは、一対のフレキシブルな絶縁基板間に挟持されたプローブ電極と、このプローブ電極を内部に含み、このプローブ電極に沿って流体を供給するように前記一対のフレキシブルな絶縁基板間に形成された流路と、を備えたことを特徴とするものである。
さらに、本発明のフレキシブル神経プローブにおいては、前記フレキシブルな絶縁基板は、パリレン樹脂により構成されていることを特徴とするものである。
さらに、本発明のフレキシブル神経プローブにおいては、前記流路は、前記プローブ電極の先端より延長して形成されていることを特徴とするものである。
さらに、本発明のフレキシブル神経プローブにおいては、前記流路内には、常温で固体化されるポリエチレングリコールが充填されていることを特徴とするものである。
また、本発明のフレキシブル神経プローブの製造方法は、半導体基板の表面に第1のパリレン樹脂層を形成する工程と、この第1のパリレン樹脂層の表面に金属層を形成する工程と、この金属層をパターニングして、プローブ電極を形成する工程と、この工程により形成されたプローブ電極の表面を含む前記第1のパリレン樹脂層の表面に、フォトレジスト層を形成する工程と、このフォトレジスト層をの表面を含む前記第1のパリレン樹脂層の表面に、第2のパリレン樹脂層絶縁層を形成する工程と、前記第1および第2のパリレン樹脂層をプラズマエッチングにより、所定の形状にパターニングする工程と、前記フォトレジスト層をエッチングすることにより、前記第1および第2のパリレン樹脂層間に流路を形成する工程と、を備えたことを特徴とするものである。
さらに、本発明のフレキシブル神経プローブの製造方法においては、半導体基板の表面には熱酸化膜が形成されていることを特徴とするものである。
さらに、本発明のフレキシブル神経プローブの製造方法においては、前記流路内に、過熱して液化されたポリエチレングリコールを充填供給し、常温に冷却して固体化する工程をさらに備えたことを特徴とするものである。
本発明によれば、フレキシブルな基板を備え、3次元的な神経組織の計測を可能とする製造容易な多チャンネル型フレキシブル神経プローブを提供することができる。
また、本発明の多チャンネル型フレキシブル神経プローブの製造方法によれば、半導体基板を用い、半導体製造技術により製造できるため、微細構造のプローブを複雑な手作業を要することなく製造することができる。
本発明の親出願における多チャンネル型フレキシブル神経プローブの要部構造を示す斜視図である。 図2は図1の一部を拡大して示す平面図である。 図1に示す多チャンネル型フレキシブル神経プローブの製造方法を示す工程図である。 図1に示す多チャンネル型フレキシブル神経プローブの製造方法を示す工程図である。 図1に示す多チャンネル型フレキシブル神経プローブの製造方法を示す工程図であり、どうず(h)は、磁界Hの強さを変化させたときのプローブ電極の曲げ角度の変化を測定した結果を示すグラフである。 製造された多チャンネル型フレキシブル神経プローブの全体の構成を示す斜視図である。 図1に示す多チャンネル型フレキシブル神経プローブの他の製造方法を示す工程図である。 本発明の多チャンネル型フレキシブル神経プローブの実施形態の要部を示す斜視図である。 図8に示すアクチュエータの構成を示す図で、(A)は平面図、(B)および(C)は側面図である。 本発明のさらに他の実施形態を示す図で、流路付のフレキシブルプローブの構成を示す概略斜視図である。 図10に示す流路付のフレキシブルプローブの使用方法を説明するための、プローブ先端部の断面図である。 図10に示す流路付のフレキシブルプローブの製造方法を示す工程図である。
本発明の多チャンネル型フレキシブル神経プローブの実施形態の説明に先立って、本願の親出願に記載された多チャンネル型フレキシブル神経プローブについて、図1乃至図7を参照して説明する。
図1は本発明の多チャンネル型フレキシブル神経プローブの要部構造を示す斜視図であり、図2はその一部を拡大して示す平面図である。図1に示すように、帯状のフレキシブルな絶縁基板11の端部に基板面に垂直な方向に複数本たとえば6本の板状のプローブ電極12が形成されている。フレキシブルな絶縁基板11は例えば厚さが10ミクロン程度のポリイミド薄膜により構成されている。板状のプローブ電極12は図2に示されるように、先端が尖った細長い板状のフレキシブルな絶縁基板11−1内に、その長手方向に沿って3本の配線導体13、14、15がほぼ平行に配置されている。ここで、フレキシブルな絶縁基板11−1は、絶縁基板11の一部を切離することにより形成している。そして、3本のプローブ導体13、14、15は、板状のプローブ電極12の長手方向に沿って平行に配置され、それらの先端が異なる位置において終端している。そして、それぞれの先端部には生体中の神経情報を授受するための記録パッド13−1、14−1、15−1が形成されている。これらの記録パッド13−1、14−1、15−1は、絶縁基板11−1を構成するポリイミド薄膜に形成された微小なスルーホールであり、これらのスルーホールを介して3本のプローブ導体13、14、15の一部が露出されている。また、3本のプローブ導体13、14、15にはそれぞれ電気的配線16が接続され、これらの配線16は帯状のフレキシブルな絶縁基板11上において前記プローブ12が形成されている端部と反対側の端部に向かって延長されている。
このように本発明に係る多チャンネル型フレキシブル神経プローブは、フレキシブルな絶縁基板11上に複数本のプローブ12が垂直方向に形成されるとともに、各プローブ12はその長手方向において異なる高さの位置に複数の信号検出・記録用の記録パッド13−1、14−1、15−1が形成されている。このため、この多チャンネル型フレキシブル神経プローブを生体の測定部位に刺し込むことにより、プローブ電極12が設けられている基板11全体を生体の表面形状に沿って密着させることができるとともに、生体の動きに応じてプローブ電極12を変形させることができるため、プローブの位置を常に測定しようとする神経組織の位置に合致させることができる。また、このような多チャンネル型フレキシブル神経プローブによれば、生体の2次元的な神経情報の測定ができるほか、生体の異なる位置および深さにおける神経情報の測定が可能であり、いわゆる3次元の神経情報の測定が可能となる。
図3乃至図5は上記多チャンネル型フレキシブル神経プローブの製造方法を示す工程図である。まず、図3(a)に示すように、半導体基板であるSi基板21を用意する。このSi基板21は厚さが約200〜250μmの全体として長方形の基板を用いるが、図3乃至図5では長さ方向の一端部のみを示している。このSi基板21の表面に、厚さ約3μmの磁性材料であるNi層22が電着により先端が尖った細長い電極針の形状にパターニング形成される。次に、図3(b)に示すように、Si基板21の表面全面に、ポリイミド樹脂がスピンコーティングにより塗布される。塗布されたポリイミド樹脂が乾燥し、厚さ約10μmの第1層ポリイミド樹脂層23が形成される。このポリイミド樹脂層23の表面全面にチタン(Ti)およびアルミ(Al)が真空蒸着により順次積層され、金属層24が形成される。これらの金属層24はウェットエッチングによりパターニングされ、6本のプローブ電極12およびこれらに接続される電気的配線16が形成される。ここで、6本のプローブ電極12のそれぞれは、図2に示したように、3本のプローブ導体13、14、15により構成されている。このようにして形成された6本のプローブ電極12およびこれらに接続される電気的配線16の表面を含むSi基板21の表面全面には、図3(c)に示すように、第2層ポリイミド樹脂層23´が、同じく約10μmの厚さに再びスピンコーティングにより塗布形成される。
次いで図4(d)に示すように、酸素(O)プラズマエッチングにより、第1層および第2層ポリイミド樹脂層23、23´が所定の形状にパターニングされる。すなわち、6本のプローブ電極12およびこれらに接続される電気的配線16が形成される部分以外の第1層および第2層ポリイミド樹脂層23、23´が除去されるとともに、6本のプローブ電極12の周囲のポリイミド樹脂層23、23´に、根元の部分を除いて切込みが形成される。また、同じく酸素プラズマにより、6本のプローブ電極12のそれぞれを構成する3本のパッド導体13、14、15の先端部にスルーホール25が形成される。これらのスルーホール25は、図2に示した各記録パッド13−1、14−1、15−1に相当する位置のポリイミド樹脂23´に形成される。これらのスルーホール25は、生体中にプローブ電極12が刺し込まれたときに、生体内の神経系に各プローブ導体13、14、15が接触するために形成されている。
この酸素プラズマエッチングプロセスにおいては、図示しないが、金属層24を覆う第2層ポリイミド樹脂23´の表面に配置されたアルミ層がマスクとして用いられる。すなわち、このマスクは第2層ポリイミド樹脂23´の表面全面に真空蒸着されたアルミ層をフォトリソグラフィによってパターニングすることによって形成される。このマスクパターンは、第1層および第2層ポリイミド樹脂層23、23´を除去する部分に窓を形成したもので、この窓を介して酸素プラズマが照射されエッチングが行われる。このアルミ層はHPO、HNO、CHCOOHおよびHOを10:1:1:2の割合で含むエッチング液により除去される。このエッチング液はチタン層を損傷しないため、このエッチングによりプローブ導体13、14、15およびこれらに接続される電気的配線16を構成する金属層24を構成するアルミ層が除去されることはない。
次に、図4(e)に示すように、ディープ・リアクティブ・イオン・エッチング(DRIE)によりポリイミド樹脂23により被覆されていない両側部分を含む全てのSi基板21が除去される。DRIEはSi基板21の裏面から約20μmの厚さでエッチングし、その後表面側からエッチングする。次いでSi基板21は図4(f)に示すように、その裏側からXeFガスを用いた等方性エッチングにより除去される。この結果、プローブ電極12およびこれらに接続される電気的配線16がポリイミド樹脂23、23´によりサンドイッチされた平面構造のプローブが形成される。すなわち、ポリイミド樹脂23、23´はプローブ電極12およびこれらに接続される電気的配線16をその表裏面から挟持し、フレキシブルな絶縁基板26を構成する。
このように構成された平面構造のプローブにその面に対して垂直方向の磁界Hを印加すると、6本のプローブ電極12の裏面に形成された磁性材料であるNi層22が磁力を受け、図5(g)に示すように、6本のプローブ電極12は一斉に絶縁基板26上に直立する。
図5(h)は、磁界Hの強さを変化させたときのプローブ電極12の曲げ角度の変化を測定した結果を示すグラフである。同図から約400mTの磁界印加により、ほぼ90度に曲げられることが分かる。
図6はこのようにして製造された多チャンネル型フレキシブル神経プローブの全体の構成を示す斜視図である。この多チャンネル型フレキシブル神経プローブは、6本のプローブ電極12とこれらに接続される電気的配線16がポリイミド樹脂23、23´によりサンドイッチされた細長い帯状に形成される。そして電気的配線16はプローブ電極12と反対側に設けられたほぼ長方形の端子パッド部27に接続される。この端子パッド部27は6本のプローブ電極12のそれぞれに3個設けられ、全体で18個の記録パッドのそれぞれに対応して18個の端子パッド27−1、27−2、…、27−18が設けられ、対応する記録パッドと端子パッドとが電気的配線16により相互に接続されている。各端子パッド27−1、27−2、…、27−18には、この多チャンネル型フレキシブル神経プローブと情報を授受するための他の各種電子機器(図示せず)からの配線が半田付け等により接続される。
このようにして製造された多チャンネル型フレキシブル神経プローブの寸法は、プローブ電極12および電気的配線16部分が、たとえば、幅が約1.5mm、長さが約2.0cmであり、端子パッド部27は、幅が約1cmで長さが約0.5cmである。
以上説明した多チャンネル型フレキシブル神経プローブの製造方法によれば、半導体基板を用い、半導体製造技術により製造できるため、微細構造のプローブを複雑な手作業を要することなく製造することができる。
また上述した多チャンネル型フレキシブル神経プローブはこれに限定されるものではない。例えば、多チャンネル型フレキシブル神経プローブの全体あるいは各部の寸法、あるいは、プローブ電極、プローブ導体の本数は一例であり、必要に応じて種々の寸法あるいは本数に形成できる。
また、フレキシブルな絶縁基板としてポリイミド樹脂23、23´を用いたが、他の高分子材料を用いてもよい。例えば、パリレン(parylene)のような透明ポリマーを用いることにより、プローブを生体内に刺入する際に、生体内部の細胞などを見ながら刺入することができる。また、ポリジメチルシロキサン(PDMS)あるいは厚膜レジストSU−8(商品名)を用いることも可能である。
パリレンはポリパラキシレンの通称である。パリレンコーティングは、反応性ガスの重合によって行われるため、薄膜の厚さをコントロールできる。さらに、気体であるため、圧力が一定にかかり、均一な薄膜を形成することができる。また、パリレンは生体適合性がよく、絶縁性があり、さらに薄膜にすると柔軟性があるという特徴を有する。また、このパリレン薄膜は、透明で、撥水性、ガスバリア性、耐薬品性、熱安定性にも優れている。このため、神経電極の絶縁膜として適切な材料である。
図7は絶縁基板としてパリレンを用いた場合の多チャンネル型フレキシブル神経プローブの製造方法の概要を示す断面図である。同図(a)に示すように、シリコン基板61上にフォトレジスト62、パリレン層63、アルミニウム層64をコーティングにより積層形成し、同図(b)に示すように、アルミニウム層64をパターニングして電極パッドと配線を形成する。
ここで、パリレン層63は、パリレン蒸着装置により、蒸着により形成する。この装置は、気化室、熱分解室、蒸着室およびバキュームポンプを備え、バキュームポンプにより、気体が気化室、熱分解室、蒸着室へと送られる。まず、パラキシレンから生成したジパラキシレンを気化室に導入して過熱することにより気化させる。この気体は熱分解室に送られて熱分解されて、反応性の高いラジカルパラキシレンモノマーができる。この気体は蒸着室へ移動し、シリコン基板61上に吸着、重合することにより、高分子量のパリレン薄膜が形成される。
次いで、同図(c)に示すように、パリレン層63´を全体にコートし絶縁層とする。次に、同図(d)に示すように、銅(Cu)層65を全面にコートし、ウェットエッチングによりパターニングしてマスクを形成する。そして、同図(e)に示すように、このマスクを介して酸素プラズマ処理により、プローブ電極の周辺輪郭66および記録パッド部67のパリレン層63、63´を除去する。次いで、同図(f)に示すように、フォトレジスト62をアセトンによりエッチングすることにより、シリコン基板61をパリレン層63から剥離する。また、パリレン層63が除去された記録パッド部67にニッケル等の金属導体68をメッキする。そして同図(g)に示すように、パリレン層63、63´でサンドイッチされたアルミニウム層64からなるプローブ導体を折り曲げてプローブ電極部を形成する。
上述した製造方法においては、図7(a)に示すように、シリコン基板61上にフォトレジスト62、パリレン層63、アルミニウム層64をコーティングにより積層形成したが、フォトレジスト62を介することなく、シリコン基板61上に直接、パリレン層63、アルミニウム層64をコーティングにより積層形成してもよい。すなわち、上記の実施形態においては、フォトレジスト62は、シリコン基板61をパリレン層63から剥離するために設けられたが、シリコン基板61上に直接形成したパリレン層63をその柔軟性を利用して機械的に引っ張ることにより、剥離することができる。なお、この場合、シリコン基板61表面に、例えばInternational Products Corporation社製のmicro-90のような界面活性剤を予め塗布し、その上にパリレン層63、アルミニウム層64をコーティングにより積層形成することにより、シリコン基板61とパリレン層63との密着性が低下して剥離が非常に容易になる。しかし、シリコン基板61とパリレン層63との密着性が過度に低下すると、パリレン層63上に電極パッドの製造工程中にパリレン層63がシリコン基板61から剥がれてしまうという問題が生ずる。そこでシリコン基板61表面に熱酸化膜を形成し、その上にパリレン層63、アルミニウム層64をコーティングにより積層形成することにより、上記の問題を防止するとともに、パリレン積層体の製造後に積層体に亀裂を生ずることなくシリコン基板61から剥離することが可能である。
また、上述した説明においては、プローブおよび配線材料としてアルミを用いたが、この代わりに導電性ポリマーあるいはポリシリコンを用いることも可能である。
さらに、上述した製造方法においては、磁界によりプローブを曲折したが、必ずしも磁界を用いる必要はなく、機械的あるいは手作業による曲折も利用できることは言うまでもない。
次に、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。図8および図9は、本発明の実施形態の要部を示す図で、図中図1の構成部分と同一の構成部分には同一の符号が付されている。この実施形態においては、図8に示すように、複数のプローブ電極部12、の絶縁基板11との結合部に振動アクチュエータ71が設けられている。図9は、このアクチュエータ71の構成を示す図で、同図(A)は正面図、(B)は側面図、(C)はその動作状態を示す側面図である。このアクチュエータ71は、図9(A)に示すように、フレキシブルな絶縁基板72上に互いにに逆方向に巻回された平面コイル73、74がパターニングにより形成されている。これらの平面コイル73、74は互いに直列に接続され、コイル巻線の両端は端子パッド75、76に導出されている。
このようなアクチュエータ71に、同図(B)に示すように、絶縁基板72と平行な外部磁界77を印加するとともに、平面コイル73、74の端子パッド75、76から交流電流を供給すると、平面コイル73、74により発生する交番磁界と外部磁界77との相互作用により、アクチュエータ71は同図(C)に示すように、屈曲された状態と、同図(B)に示すような伸張された状態とを交互に繰り返し、外部磁界の印加方向において縦振動を行う。
このようなアクチュエータ71が設けられた多チャンネル型フレキシブル神経プローブに、図8に示すように、プローブ電極部12に沿って外部磁界72を印加することにより、プローブ電極部12をプローブ電極部12に沿って微小振動させることができる。このように、プローブ電極部12を振動させることにより、フレキシブルな基板11−1に挟持されたプローブ導体からなるプローブ電極部12は、生体内に円滑に刺入することができる。
フレキシブルな基板に挟持されたプローブ電極を生体内に刺入するに際し、その一時的に剛性を高めることにより、挿入を容易にすることも可能である。例えば、プローブ電極部に水を付着し、液体窒素に浸漬して瞬間的に凍らせて刺入してもよい。生体に刺入された後においては、温度の上昇とともに氷が溶解し、プローブによる生体内での信号授受には影響しない。また、プローブ電極部にポリエチレングリコール(PEG)を塗布して硬化させ、生体に刺入する。生体に刺入された後においては、PEGは生体内で溶解するため、プローブの機能には影響を与えない。すなわちPEGは、常温では固体であり、50℃以上で液体となり、水溶性がある。したがって、これを過熱して液化した状態で、プローブ電極部に塗布し、常温で硬化させて生体内に挿入する。
さらに、プローブ電極部の強度を一時的に強化する方法としては、各プローブ電極部にその長手方向に流体が供給される流路を形成し、この流路に液体を供給して凍らせることも可能である。あるいは、流路に過熱して液化させたPEGを供給し、常温で硬化させることも可能である。このような流路の形成は、前述した多チャンネル型フレキシブル神経プローブの製造プロセスにおいて、絶縁基板を多層構造とし、多層化された基板の間にフォトリソグラフィ技術を用いて流路を形成することができる。なお、この流路の利用は、上述したような流体の凍結のためだけでなく、他の医薬等の流体を供給することも可能である。
図10は本発明のさらに他の実施形態を示す図で、上述したような流路付のフレキシブルプローブの構成を示す概略斜視図である。このプローブは、パリレンからなるフレキシブルな絶縁基板81上に、例えば金(Au)の薄膜層により構成されるプローブ電極82が形成され、このプローブ電極82に沿って同じくパリレンからなる微小流路83が設けられている。フレキシブルな絶縁基板81は、基部81−1、中央部81−2および先端部81−3から構成され、それぞれの幅が基部から先端に向かって段階的に狭くなっている。基部81−1にはプローブ電極82の接続パッド部82−1が形成され、基部81−1から中央部81−2上には接続パッド部82−1に接続される幅の狭いストライプ状のプローブ電極82−2が形成されている。微小流路83は、フレキシブルな絶縁基板81上にパリレンからなるフレキシブルな第2の絶縁基板84の側縁部を固着して流路を形成するものである。微小流路83は、その幅が絶縁基板81の幅に合わせて基部から先端に向かって段階的に狭くなっている。そして絶縁基板81の基部81−1において幅の広い入口83−1を有し、絶縁基板81の先端部81−3において出口83−2を備えている。微小流路83は絶縁基板81の表面にプローブ電極82に沿って形成され、入口83−1から供給される液体はプローブ電極82に沿って流れ、出口83−2から流出するように形成されている。
図11は、このように構成された流路付のフレキシブルプローブの使用方法を説明するための、プローブ先端部の断面図である。
プローブを構成するフレキシブル絶縁基板の先端部81−3に形成された微小流路83内には、同図(A)に示されるように、生体85に挿入される前に、過熱された液状のPEGが供給され、常温に冷却されて固体化される。この結果、プローブの先端部は剛性化され、この状態で、同図(B)に示されるように、生体85内に挿入される。生体85内おいては、剛性化されたPEGは、微小流路出口83−2から生体85内の生理食塩水を吸収して柔軟化するとともに、導電性を持つように変化する。この結果、プローブ電極82−2の先端は微小流路83内の導体化されたPEGを介して微小流路出口83−2近傍の生体84と電位的に接続される。これによって、プローブ電極82−2は、生体内の電位を検知することが可能になる。プローブ先端部は、生体85内に挿入された状態で時間が経過すると微小流路83内のPEGが生理食塩水により融解され、同図(C)に示されるように、剛性が徐々に失われる。このことはフレキシブルプローブを生体85に挿入した状態での長時間の電位測定に際しては、生体を傷つけることがなく、フレキシブルプローブとして作用することを意味するものである。同図(D)は、プローブ先端部を生体85内の生理食塩水中に挿入された状態でプローブ電極82により測定されたインピーダンスの時間変化を記録したグラフである。プローブ電極82を生体85内に挿入時は高インピーダンスを示すが、約200msec後には、微小流路83内のPEG内生理食塩水が浸透してPEGが導電性を持つ結果、インピーダンスが低下する。
この実施形態の流路付フレキシブルプローブにおいては、金属製のプローブ電極82−2は微小流路83の出口83−2より上流において終端し、生体85内に挿入されたとき、生体85に直接触れることはなく、PEGが介在するため、プローブ電極82−2の金属が生体85内に溶解する怖れがない。
図12は上述した流路付のフレキシブルプローブの製造方法を示す工程図である。
同図(A)に示すように、表面に熱酸化膜が形成されたシリコン半導体基板91上に、パリレン蒸着装置を用いてパリレンを5μm蒸着して第1のパリレン層81´を形成する。その上に金(Au)層を真空蒸着により形成し、フォトリソグラフィにより帯状にパターニングしてプローブ電極82を構成するAu層82´を形成する。すなわち、図示しないが、フォトレジスト(Shipley社製S1818)をスピンコートした後、紫外線露光によりパターニングし、TMAH現像液(東京応化製NMD3)により現像する。
次いでこのプローブ電極82を含む第1のパリレン層81´上にフォトレジスト層86を塗布し、これを所定の幅にパターニングする。そしてフォトレジスト層86の表面を含む第1のパリレン層81´上には、第2のパリレン層84´が蒸着により積層される。そしてこの第2のパリレン層84´の表面には、所定の幅のアルミ層87がマスク層として形成される。すなわち、このマスク層は、第2のパリレン層84´の表面にアルミ層を蒸着し、これを上述と同様なフォトリソグラフィにより所定の幅にパターニングする。ただし、アルミ層のエッチングは混酸アルミ(和光純薬製)で行う。
次に、図11(B)に示すように、アルミ層87をマスクとして、プラズマエッチング装置(サムコインターナショナル社製FA-1)を用い、Oプラズマにより、アルミ層87によりマスクされていない部分の第1および第2のパリレン層81´、84´を除去する。ここで、Oプラズマエッチングの条件は、例えば、流量10ml/min、電力50W、エッチング速度0.4〜0.5μm/minである。
次に、このようにして形成されたパリレン積層体を例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アセトン、エタノールからなるエッチグ液に浸漬してフォトレジスト層86を除去し、図11(C)に示すように、微小流路83を形成する。
最後に、図11(D)に示すように、第1および第2のパリレン層81´、84´をシリコン半導体基板91表面から剥離する。
この実施形態による流路付のフレキシブルプローブによれば、柔軟なフレキシブル基板上に微小流路83とプローブ電極82を配置できるため、従来ガラス管で行われていた試薬注入あるいは生体電位計測が生体内で低侵襲で実現できる。
また、微小流路83の入口83−1から出口83−2へと再生神経軸索を誘導し、微小流路83内に配置されたプローブ電極82により、をすることにより、再生神経軸索に対する計測あるいは刺激が可能となり、神経再生型電極として利用することもできる。
11 絶縁基板
12 プローブ電極
13〜15 プローブ導体
13−1、14−1、15−1 記録パッド
16 電気的配線
21 Si基板
22 Ni層
23 第1層ポリイミド樹脂層
23´ 第2層ポリイミド樹脂層
24 金属層
25 スルーホール
26 フレキシブルな絶縁基板26
27 端子パッド部

Claims (7)

  1. 一対のフレキシブルな絶縁基板間に挟持されたプローブ電極と、このプローブ電極を内部に含み、このプローブ電極に沿って流体を供給するように前記一対のフレキシブルな絶縁基板間に形成された流路と、を備えたことを特徴とするフレキシブル神経プローブ。
  2. 前記フレキシブルな絶縁基板は、パリレン樹脂により構成されていることを特徴とする請求項1記載のフレキシブル神経プローブ。
  3. 前記流路は、前記プローブ電極の先端より延長して形成されていることを特徴とする請求項2記載のフレキシブル神経プローブ。
  4. 前記流路内には、常温で固体化されるポリエチレングリコールが充填されていることを特徴とする請求項3記載のフレキシブル神経プローブ。
  5. 半導体基板の表面に第1のパリレン樹脂層を形成する工程と、この第1のパリレン樹脂層の表面に金属層を形成する工程と、この金属層をパターニングして、プローブ電極を形成する工程と、この工程により形成されたプローブ電極の表面を含む前記第1のパリレン樹脂層の表面に、フォトレジスト層を形成する工程と、このフォトレジスト層の表面を含む前記第1のパリレン樹脂層の表面に、第2のパリレン樹脂層絶縁層を形成する工程と、前記第1および第2のパリレン樹脂層をプラズマエッチングにより、所定の形状にパターニングする工程と、前記フォトレジスト層をエッチングすることにより、前記第1および第2のパリレン樹脂層間に流路を形成する工程と、を備えたことを特徴とするフレキシブル神経プローブの製造方法。
  6. 半導体基板の表面には熱酸化膜が形成されていることを特徴とする請求項5記載のフレキシブル神経プローブの製造方法。
  7. 前記流路内に、過熱して液化されたポリエチレングリコールを充填供給し、常温に冷却して固体化する工程をさらに備えたことを特徴とする請求項6記載のフレキシブル神経プローブの製造方法。
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