JP2009254350A - 宿主dnaの改変方法および選択マーカーカセット - Google Patents

宿主dnaの改変方法および選択マーカーカセット Download PDF

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Abstract

【課題】宿主DNAの対象領域の改変方法および当該方法に用いる選択マーカーカセットを提供する。
【解決手段】与体DNAと宿主DNAとの間で相同組み換えを行う工程を含む宿主DNAの対象領域を改変させる方法であって、前記供与体DNAが、宿主DNA中の、前記対象領域の外側の5’側領域、前記対象領域の外側の3’側領域及び前記対象領域の内側の第1相同組み換え領域に対応する相同領域をこの順で有し、更に前記3’側領域の相同領域及び前記第1相同組み換え領域の相同領域の間に第1選択マーカー遺伝子、発現誘導型プロモーター及び当該発現誘導型プロモーターの制御下に発現可能な第2選択マーカー遺伝子を有し、前記供与体DNAと前記宿主DNAとの間において、前記5’側領域及び前記第1相同組み換え領域で相同組み換えを行う第1工程と、上記相同組み換え後の宿主DNAにおいて、宿主DNA由来の前記3’側領域と供与体DNA由来の前記3’側領域との間で相同組み換えを行う第2工程とを含み、上記第1工程では、前記供与体DNAを組み込んだ宿主を前記第1選択マーカー遺伝子の発現に基づいて選択し、前記第2工程では、前記発現誘導型プロモーターの発現誘導条件下とすることで前記第2の選択マーカー遺伝子の発現に基づいて、宿主DNA中の対象領域が改変された宿主を選択することを特徴とする、宿主DNAの対象領域の改変方法および当該方法に用いる選択マーカーカセット。
【選択図】なし

Description

本発明は、宿主DNA中の対象領域を改変する方法及び選択マーカーカセットに関する。
遺伝子工学分野においては、形質転換体の選抜手段の1つとして薬剤抵抗性遺伝子が利用されている。すなわち、薬剤抵抗性遺伝子の発現による薬剤抵抗性の獲得などを指標として目的の形質転換体を選択している。薬剤抵抗性遺伝子に限らず、栄養要求性に関連する遺伝子なども形質転換体の選択手段として利用されている。形質転換体の選択手段として利用されるこれらの遺伝子は、一般に選択マーカー遺伝子と総称されている。
選択マーカー遺伝子は、形質転換体を選択するためには有用であるが、選択マーカー遺伝子の種類によっては宿主に残存させることによって、例えば、野生型微生物のマーカー遺伝子による汚染などの環境に悪影響を及ぼすといった問題がある。
また、1つの宿主に対して複数の遺伝子改変を行う際には、使用できる選択マーカー遺伝子の種類が限られてしまう。そこで、形質転換体から選択マーカー遺伝子を除去する方法の開発が望まれている。
宿主ゲノムの特定の領域を欠失させた形質転換体を構築する際または宿主DNA中に外来性DNAを導入した形質転換体を構築する際にも、上述した選択マーカー遺伝子が利用されている。
例えば、特許文献1には、リプレッサーと該リプレッサーにより抑制されるプロモーターとを利用して、宿主ゲノムの特定領域を欠失させる方法が開示されている。特許文献1に開示された方法は、一旦、供与体DNAと称するDNA断片を相同組み換えによって宿主ゲノムに組み込み、その後、供与体DNAの一部領域と宿主ゲノムの一部領域との間で相同組み換え行うことによって、供与体DNAとともに宿主ゲノムの特定領域を欠失させる方法である。この方法において、供与体DNAにはリプレッサー遺伝子が含まれており、且つ、宿主ゲノムには、当該リプレッサー存在下で発現が抑制されるプロモーターと該プロモーターの制御下に薬剤耐性遺伝子とが含まれている。この方法において、供与体DNAには選択マーカー遺伝子が含まれているため、これを指標として供与体DNAが組み込まれた宿主DNAを選抜することができる。また同時に、供与体DNAが宿主ゲノムに組み込まれると、薬剤耐性遺伝子の発現抑制によって薬剤感受性株となる。そして、供与体DNAが宿主ゲノムから欠失すると、薬剤耐性遺伝子の発現が回復することとなり薬剤抵抗性株となる。
以上の工程によって、供与体DNA由来の選択マーカー遺伝子を宿主ゲノムに残存させず、宿主ゲノムの特定の領域を欠失させることができる。このように、特許文献1に開示された方法は、選択マーカー遺伝子を有効に利用できる系である点で非常に優れた方法である。しかし、この方法では、宿主ゲノムにリプレッサー存在下で発現が抑制されるプロモーターと当該プロモーターの制御下に発現する薬剤耐性遺伝子とからなる発現カセットを予め導入しておく必要がある。
一方、遺伝子やDNA断片をクローニングする場合、膜蛋白質や宿主内で多量に存在することで致死的に働く蛋白質をコードする遺伝子、又はサイズの非常に大きなDNA断片などをプラスミドに挿入する操作は非常に困難であることが知られている。さらに、複数の遺伝子が一つの生合成に関わる場合又はサブユニットを構成する場合に、これら複数の遺伝子を挿入し、同時に細胞内で発現させることも困難であることが知られている。このようなクローニングが困難とされてきた遺伝子やDNA断片を挿入するために、低コピープラスミドやゲノムライブラリー作製に用いられているベクターであるバクテリオファージ、コスミド等を用いた方法が提案され、問題の解決が図られてきた。また、発現量を厳密にコントロールできるプロモーターを用いる方法、宿主大腸菌のシャペロン機能を強化する等の宿主の改良を行う方法も提案されている。
しかし、宿主の改良方法は目的物の特異性に依存することが多く、特異性に合わせたクローニング方法の選択と調整が必要となる。またファージやコスミドを用いてDNA断片の挿入を行う方法は、一つの細胞の複数の遺伝子座に遺伝子を挿入することは容易ではない。
そのため、従来のファージ等を用いる方法に比べてより簡便な操作で、かつ一つの細胞に比較的長いDNA断片を複数挿入できる方法の開発が望まれていた。とくに最近は、メタゲノム解析による環境中のDNA解析が盛んに行われており、従来の方法ではクローニングが困難なDNA断片を、クローニングすることができる新しいツールおよび方法が望まれてきている。
特開2007−111015号公報
上述のように、従来は宿主DNAを改変した形質転換体を得る場合、選択マーカー遺伝子が形質転換体内に残存するという問題があった。
前記特許文献1に記載された方法でも、予め宿主ゲノムに選択マーカー遺伝子を含む発現カセットを導入する工程が必須となり、作業効率の点から必ずしも優れた方法であるとは言えなかった。さらに、この予め導入した発現カセットは、宿主ゲノムの特定領域を欠失させた後も宿主ゲノム中に残存することになる。
また、従来のプラスミドを用いた方法では、サイズの大きなDNA断片又は致死性の遺伝子を宿主DNAの所望の領域に導入することは困難であった。ファージやコスミドを用いた方法では、一つの細胞の複数の遺伝子座に複数の遺伝子を挿入することは不可能であった。
そこで、本発明は、このような実情に鑑み、使用できる選択マーカー遺伝子の種類に制限されることなく、宿主DNAの所望の領域を非常に簡便な手法で改変することができ、かつ改変の際に使用した選択マーカー遺伝子等が改変後の宿主DNA中に残存しない宿主DNAの改変方法、及びそれに用いる選択マーカーカセットを提供することを課題としている。
具体的には、宿主DNAの所望の領域を欠失させ、かつ欠失後の宿主DNA中に選択マーカー遺伝子等が残存しない宿主DNAの改変方法、また、宿主DNAの任意の領域を所望のDNA配列(特に、サイズの大きなDNA断片、宿主への導入が困難なDNA、複数の遺伝子群など)で置換し、かつ置換後の宿主DNA中には所望のDNA配列のみが挿入され、選択マーカー遺伝子等が残存しない宿主DNAの改変方法を提供することを課題としている。
上述した本発明の課題は、以下の方法によって達成された。
本発明に係る宿主DNAの対象領域の改変方法(以下、本発明の改変方法ともいう。)は、供与体DNAと宿主DNAとの間で相同組み換えを行う工程を含む宿主DNAの対象領域を改変させる方法であって、前記供与体DNAが、宿主DNA中の、前記対象領域の外側の5’側領域、前記対象領域の外側の3’側領域及び前記対象領域の内側の第1相同組み換え領域に対応する相同領域をこの順で有し、更に前記3’側領域の相同領域及び前記第1相同組み換え領域の相同領域の間に第1選択マーカー遺伝子、発現誘導型プロモーター及び当該発現誘導型プロモーターの制御下に発現可能な第2選択マーカー遺伝子を有し、前記供与体DNAと前記宿主DNAとの間において、前記5’側領域及び前記第1相同組み換え領域で相同組み換えを行う第1工程と、上記相同組み換え後の宿主DNAにおいて、宿主DNA由来の前記3’側領域と供与体DNA由来の前記3’側領域との間で相同組み換えを行う第2工程とを含んでいる。
本発明に係る宿主DNAの欠失対象領域の欠失方法(以下、本発明の欠失方法ともいう。)は、供与体DNAと宿主DNAとの間で相同組み換えを行う工程を含む宿主DNAの欠失対象領域を欠失させる方法であって、前記供与体DNAが、宿主DNA中の、前記欠失対象領域の外側の5’側領域、前記欠失対象領域の外側の3’側領域及び前記欠失対象領域の内側の第1相同組み換え領域に対応する相同領域をこの順で有し、更に前記3’側領域の相同領域及び前記第1相同組み換え領域の相同領域の間に第1選択マーカー遺伝子、発現誘導型プロモーター及び当該発現誘導型プロモーターの制御下に発現可能な第2選択マーカー遺伝子を有し、前記供与体DNAと前記宿主DNAとの間において、前記5’側領域及び前記第1相同組み換え領域で相同組み換えを行う第1工程と、上記相同組み換え後の宿主DNAにおいて、宿主DNA由来の前記3’側領域と供与体DNA由来の前記3’側領域との間で相同組み換えを行う第2工程とを含んでいる。
本発明に係る宿主DNAの置換対象領域の置換方法(以下、本発明の置換方法ともいう。)は、供与体DNAと宿主DNAとの間で相同組み換えを行う工程を含む宿主DNAの置換対象領域を所望のDNA配列で置換する方法であって、前記供与体DNAが、宿主DNA中の、置換対象領域(DNA配列挿入領域)の外側の5’側領域、置換対象領域の外側の3’側領域及び置換対象領域の内側の第1相同組み換え領域に対応する相同領域をこの順で有し、前記5’側の相同領域と前記3’側領域の相同領域との間に所望のDNA配列を有し、更に前記3’側領域の相同領域及び前記第1相同組み換え領域の相同領域の間に第1選択マーカー遺伝子、発現誘導型プロモーター及び当該発現誘導型プロモーターの制御下に発現可能な第2選択マーカー遺伝子を有し、前記供与体DNAと前記宿主DNAとの間において、前記5’側領域及び前記第1相同組み換え領域で相同組み換えを行う第1工程と、上記相同組み換え後の宿主DNAにおいて、宿主DNA由来の前記3’側領域と供与体DNA由来の前記3’側領域との間で相同組み換えを行う第2工程とを含んでいる。
上記第1工程では、前記供与体DNAを組み込んだ宿主を前記第1選択マーカー遺伝子の発現に基づいて選択する。また、前記第2工程では、前記発現誘導型プロモーターの発現誘導条件下とすることで前記第2選択マーカー遺伝子の発現に基づいて、宿主DNA中の対象領域が改変された宿主、具体的には欠失対象領域が欠失した宿主、置換対象領域が所望のDNA配列により置換された宿主を選択する。
本発明に係る宿主DNAの対象領域の改変、欠失、置換方法において、前記第2工程での宿主DNAの選択は、例えば、第2の選択マーカー遺伝子の発現に基づいて、対象領域が改変された宿主、欠失対象領域が欠失した宿主、置換対象領域が所望のDNA配列により置換された宿主(以下、これらの宿主を単に「形質転換体」、「変異体」とも言う。)をポジティブセレクションによって選択することができる。
また、本発明に係る宿主DNAの対象領域の改変、欠失、置換方法において、前記第2選択マーカー遺伝子としては、特に限定されないが、例えば宿主細胞の致死を誘導するタンパク質をコードする遺伝子を利用することができる。この場合、前記第2工程を経て供与体DNA由来の選択マーカー遺伝子を欠失し、且つ目的のDNA改変が行われた宿主は生育することができる。一方、供与体DNA由来の選択マーカー遺伝子が宿主ゲノムに残存した宿主は、発現誘導条件下で致死となる。そのため、供与体DNA由来の選択マーカー遺伝子の残存の有無をポジティブセレクションによって判定することができる。ここで、宿主細胞の致死を誘導するタンパク質をコードする遺伝子としては、特に限定されないが、例えばchpA遺伝子を挙げることができる。
また、本発明に係る宿主DNAの対象領域の改変、欠失、置換方法において、前記発現誘導型プロモーターとしては、特に限定されないが、発現誘導物質の存在下に下流の遺伝子発現を誘導するものを使用することができる。
さらに、本発明に係る宿主DNAの対象領域の改変、欠失、置換方法において、前記第1選択マーカー遺伝子としては、特に限定されないが、例えば、薬剤耐性遺伝子を利用することができる。特に、本発明に係る宿主DNAの対象領域の改変、欠失、置換においては、前記選択マーカー遺伝子が欠失するため、改変、欠失、置換後の宿主DNA中に前記選択マーカー遺伝子が残存することを防止できる。
さらにまた、本発明に係る宿主DNAの対象領域の改変、欠失、置換方法において、用いる宿主の種類としては、特に限定されないが、例えば枯草菌を適用することができる。
一方、本発明の前記方法に用いられる選択マーカーカセットは、第1選択マーカー遺伝子、発現誘導型プロモーター及び当該発現誘導型プロモーターの制御下に発現可能な第2選択マーカー遺伝子を有している。さらに、該選択マーカーカセットは、供与体DNA中において、改変対象領域の外側の3’側領域に対応する相同領域と改変対象領域内の第1相同組み換え領域に対応する相同領域との間に位置するように配置される。
ここで、前記第2選択マーカー遺伝子は、宿主細胞の致死を誘導するタンパク質をコードしていることが好ましい。特に、前記第2選択マーカー遺伝子としてはchpA遺伝子を適用することができる。また、前記発現誘導型プロモーターは、発現誘導物質の存在下に下流の遺伝子発現を誘導するものであることが好ましい。さらに、前記第1選択マーカー遺伝子は薬剤耐性遺伝子を利用することができる。また、本発明に係る選択マーカーカセットは枯草菌ゲノム内に組み込んだ状態であってもよい。
さらに、本発明は、本発明の前記方法を用いて対象領域が改変(欠失、置換)された宿主の作成方法に関する。
以上のように、本発明の改変、欠失、置換方法(以下、これらをまとめて「本発明の方法」とも言う。)によれば、宿主DNA中の所望の領域を、非常に簡便な操作で改変させることができる。
本発明の方法では、改変後の宿主DNA中に、改変工程(欠失工程あるいは置換工程)で利用した第1選択マーカー遺伝子及び第2選択マーカー遺伝子が共に残存しない。そのため、本発明の方法によれば、選択マーカー遺伝子の利用範囲を何ら制限することなく、所望の形質転換体を作成することができる。特に、本発明の方法は、宿主DNA中の複数の領域を改変させた変異株を作成する場合において、選択マーカー遺伝子を制限無く使用することができるため、選択マーカー遺伝子を宿主に残存させる遺伝子改変方法に比較し操作を大幅に簡易化することができる。さらに上記選択マーカー遺伝子に加えて、本発明の方法では、改変工程において利用したその他の領域(第一相同組み換え領域、プロモーター配列等)も改変後の宿主DNA中に残存することはない。そのため本発明の方法は、同一の宿主に対して複数回の改変を繰り返し行う場合も、操作を容易に行うことができる。
本発明の方法を用いることで、選択マーカー遺伝子が宿主に残存することによって生じる環境への悪影響を防ぐことができる。例えば、宿主が病原性を有する場合、薬剤耐性遺伝子が残存した菌株、すなわち薬剤耐性菌によって環境が汚染される危険性が存在する。また、薬剤耐性遺伝子が残存した菌株は、通常組み替え生物として扱われるため、拡散防止措置が厳格に要求されることとなる。そのため、該菌株の製造・使用・保存時において、取り扱いに制限が課されたり、拡散を防止するための作業が必要とされるため、作業工程が煩雑化する。本発明の改変方法を用いれば、このような選択マーカー遺伝子の残存に起因する環境面での問題を解決することができる。
また、本発明の方法では、改変対象領域が宿主DNA中の特定の位置に限定されず、任意の領域を改変対象領域とすることができる。
さらに、本発明の方法では、改変対象領域を広範な領域にわたり設定することが可能である。すなわち、宿主DNA中の広範囲にわたる領域を欠失させたり、置換することができる。
本発明に係る宿主DNAの欠失対象領域の欠失方法の一実施態様を示す模式図である。 本発明に係る宿主DNAの置換対象領域の置換方法の一実施態様を示す模式図である。 SOE-PCR断片を用いた2重交差法による薬剤耐性遺伝子導入手順を示す模式図である 本発明に係る宿主DNAの改変方法の一実施態様として、あらかじめ薬剤耐性遺伝子が導入された宿主DNAへ目的DNA配列を挿入する工程を示す模式図である。 実施例1及び実施例2で使用した枯草菌168(aprE::speclacIPspac-chpA)株および枯草菌168(aprE::KmlacIPspac-chpA)株の作製フローを説明する模式図である。 実施例1で行った宿主DNAからの対象領域の欠失工程を示す模式図である。 実施例2で行った宿主DNAへの目的DNA配列の挿入工程を示す模式図である。
以下、図面を参照して宿主DNAの対象領域の改変、欠失、置換方法を詳細に説明する。
本発明において、「宿主DNAの対象領域を改変する」とは、宿主DNA中の対象領域のDNA配列を変化させることをいい、具体的には、宿主DNA中から対象領域のDNA配列を欠失させること、宿主DNA中の対象領域のDNA配列を所望のDNA配列で置換して宿主DNA中に所望のDNA配列を挿入することを言う。
本発明に係る宿主DNAの欠失対象領域の欠失方法の実施態様を図1に示す。図1の実施態様によれば、宿主DNA中の欠失対象領域を欠失させることができる。
本発明に係る宿主DNAの置換対象領域の置換方法の実施態様を図2に示す。図2の実施態様によれば、宿主DNA中の置換対象領域を所望のDNA配列で置換することで当該領域に所望のDNA配列を挿入することができる。
まず、本発明の対象領域について説明する。
本発明において、「宿主DNAの対象領域」とは、宿主DNA中に存在する任意の領域であって、DNA配列の改変を行う領域を言う。具体的には、本発明の欠失方法の場合は、欠失対象領域、すなわち宿主DNAから欠失することが望まれる領域をいい、本発明の置換方法の場合には、置換対象領域、すなわち所望のDNA配列によって置換されることが望まれる宿主DNA上の領域を言う。例えば、対象領域としては、宿主DNAの不要な領域、例えば宿主の物質生産に不要な領域(胞子形成関連遺伝子など)、または宿主の生育、物質生産を阻害する領域(ファージ領域など)、また、宿主内で多数重複している遺伝子や遺伝子グループ(2成分制御系遺伝子など)などが挙げられる。
本発明において、対象領域(欠失対象領域、置換対象領域)は、本発明の改変、欠失、置換方法適用前に既に宿主DNAに存在する領域であればいずれの領域であってよく、例えば、本来的に存在する領域でもよいし、本発明の方法適用前に人為的に導入された領域でもよい。人為的に導入された領域としては、例えば、選択マーカー遺伝子やレポーター遺伝子を含む領域などが挙げられる。
本発明の改変、欠失、置換方法では、対象領域のサイズは、特に限定されないが、1bp以上が好ましく、0.2kb以上がより好ましく、0.5kb以上が最も好ましい。対象領域のサイズは、200kb以下が好ましく、160kb以下がより好ましく、120kb以下が更に好ましく、80kb以下が特に好ましく、40kb以下が最も好ましい。対象領域のサイズを200kb以下とした場合には、対象領域内に生育に必至な遺伝子(以下、「生育必須遺伝子」という)を含まない蓋然性が高いからである。ここで生育必須遺伝子とは、外部から培地へ添加する等の方法によっても補うことのできない機能を有するタンパク質をコードする遺伝子を意味し、宿主ゲノムから削除されると致死となる遺伝子である。換言すると、宿主ゲノムから削除されると宿主が生存できない、すなわち致死となることが知られる遺伝子であっても、培地に補完物質(例えば代謝関連物質等)を添加することによって宿主の生育を維持できるのであれば、対象領域に含まれていても良い。なお、枯草菌において、生育必須遺伝子を含まない最大の領域は、dltA遺伝子〜yycH遺伝子間の約200kbであることが知られている(例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,100,4679(2003)参照)。
本発明の改変、欠失、置換方法においては、先ず、宿主DNA上に対象領域(欠失対象領域、置換対象領域)の外側の5’側領域及び3’側領域を特定する。本発明において、対象領域の外側の5’側領域及び3’側領域とは、対象領域を含まず、かつ対象領域と隣接して対象領域を挟み込む領域を意味する。以下、対象領域(欠失対象領域、置換対象領域)の外側の5’側領域を以下、「5’外側領域」と称し、対象領域の外側の3’側領域を以下、「3’外側領域」と称する。これら5’外側領域A及び3’外側領域Bの塩基配列は、生物ゲノムの塩基配列情報が格納されたデータベースを検索することによって特定することもできるし、宿主DNAにおける欠失対象領域を含む近傍の塩基配列を解析することによって特定することもできる。なお、本明細書において、5’及び3’といった表現は二重鎖核酸における一方の鎖を基準として理解されればよい。
図1および図2において、それぞれ5’外側領域をAで示し、3’外側領域をBで示す。
本発明の改変、欠失、置換方法においては、次いで、宿主DNA上の前記対象領域(欠失対象領域、置換対象領域)の内側に第1相同組み換え領域を特定する。本発明において、第1相同組み換え領域とは、上述した5’外側領域とともに、後述する供与体DNAとの間において第1相同組み換えを生じうる領域である。図1および図2において第1相同組み換え領域をCで示す。
第1相同組み換え領域Cの位置は、上述した5’外側領域の近傍に位置していれば特に限定されないが、5’外側領域から3’方向に0kb〜200kb離間している領域であることが好ましく、0kb〜140kb離間している領域であることが特に好ましい。
第1相同組み換え領域は、前記対象領域の内側に存在する領域であるから、前述の対象領域同様、本発明の改変、欠失、置換方法適用前に既に宿主DNAに存在する領域であればいずれの領域であってよい。例えば、本来的に存在する領域でもよいし、本発明の方法適用前に人為的に導入された領域でもよい。人為的に導入された領域としては、例えば、選択マーカー遺伝子やレポーター遺伝子を含む領域などが挙げられる。
宿主DNAの5’外側領域と3’外側領域との間に十分な長さの第1相同組み換え領域が無い場合、または5’外側領域と3’外側領域との間にDNA配列が全く無い場合は、一般的な遺伝子挿入方法を用いて、あらかじめ既知のDNA配列(例えば、薬剤耐性遺伝子配列等)を宿主DNAに挿入して第1相同組み換え領域とすることができる。例えば、図3に示すように、宿主DNA由来の領域A、領域B、及び薬剤耐性遺伝子配列をSOE(splicing by overlap extension)-PCR法(例えば、Horton,RM.,et al.:Gene,77,pp.61-68(1989)参照)によって構築し、これを用いて宿主DNAの領域Aおよび領域Bで二重交差の相同組換えを起こさせることにより、宿主DNAに薬剤耐性遺伝子を導入することができる。
上述のように、第1相同組み換え領域として薬剤耐性遺伝子等のDNA配列があらかじめ導入された宿主DNAを用いて、本発明の置換方法を行うことで、宿主DNA本来の配列を保持したまま、目的のDNA配列のみを宿主DNAに挿入することが可能となる(図4参照)。この場合、第1相同組み換え領域としてあらかじめ挿入されたDNA配列は、後述の第2相同組み換え工程において宿主DNAより削除され、改変後の宿主DNAに残存することはない(図4(iv)参照)。本発明の置換方法の一実施態様として、このような宿主DNA配列を保持したまま、所望のDNA配列を対象領域に挿入する場合も、本発明の方法に包含される。
宿主DNA中の上記各領域が特定されたら、続いて本発明の改変、欠失、置換方法に用いる供与体DNAを作成する。
供与体DNAは、宿主DNA中の上記5’外側領域及び3’外側領域により挟み込まれる対象領域(欠失対象領域、置換対象領域)を改変、欠失、置換するために用いられる。本発明の改変、欠失、置換方法に用いる供与体DNAは、宿主DNAの5’外側領域A、3’外側領域B及び第1相同組み換え領域Cとそれぞれ相同性を有する領域(相同領域)をこの順で有しており、さらに3’外側領域Bの相同領域及び第1相同組み換え領域Cの相同領域の間に選択マーカーカセットを有している(図1(i)及び図2(i):供与体DNA参照)。以下、供与体DNAのこれらの相同領域を単に、「供与体DNAの5’外側領域」、「供与体DNAの3’外側領域」、「供与体DNAの第1相同組み換え領域」とも称する。また、図1及び図2において、供与体DNAの5’外側領域をA、供与体DNAの3’外側領域をB、供与体DNAの第1相同組み換え領域をCで示す。
ここで選択マーカーカセットとは、第1選択マーカー遺伝子M1、発現誘導型プロモーターと、発現誘導型プロモーターの制御下に発現する第2選択マーカー遺伝子M2を有する核酸断片である。
本発明の改変、欠失、置換方法において、供与体DNAの5’外側領域、3’外側領域及び第1相同組み換え領域はそれぞれ、宿主DNAと供与体DNA間の相同組み換え過程又は供与体DNAが宿主DNAに組み込まれた後の宿主DNA内での相同組み換え過程において、鎖間交換構造の形成に関与する領域である。従って、供与体DNAの5’外側領域、3’外側領域及び第1相同組み換え領域はそれぞれ、宿主DNAにおける対応するそれぞれの領域と鎖間交換構造を形成しうる程度に高い同一性を有している。
具体的に、各領域間の塩基配列の同一性は、例えば、Lipman−Pearson法(Science,227,1435,(1985))によって計算される。具体的には、遺伝情報処理ソフトウェアGenetyx−Win(ソフトウェア開発)のホモロジー解析(Search homology)プログラムを用いて、Unit size to compare(ktup)を2として解析を行うことに基づいて計算することができる。当該計算の結果によれば、各領域間の塩基配列は、60%以上の同一性を有していればよく、80%以上が好ましく、90%以上がさらに好ましく、95%以上が特に好ましく、99%以上の同一性を有していることが最も好ましい。
また、本発明において、供与体DNA及び宿主DNAにおける5’外側領域、3’外側領域または第1相同組み換え領域のサイズは、それぞれ鎖間交換構造を形成しうるサイズであれば特に限定されないが、例えば、各々0.1kb〜3kbであることが好ましく、更には0.5kb〜3kbであることが好ましく、特に0.5kb〜2kbであることが好ましい。
次に、本発明の選択マーカーカセットについて説明する。本発明の選択マーカーカセットは、第1選択マーカー遺伝子M1、発現誘導型プロモーターと、発現誘導型プロモーターの制御下に発現する第2選択マーカー遺伝子M2を有しており、前記供与体DNAの3’外側領域と供与体DNAの第1相同組み換え領域との間に位置する。
選択マーカーカセットのサイズは、特に限定されないが、3kb〜10kbであることが好ましく、3kb〜5kbあることがより好ましい。
本発明に用いられる第1選択マーカー遺伝子M1としては、特に限定されるものではないが、例えば、薬剤耐性遺伝子(クロラムフェニコール耐性遺伝子、エリスロマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、スペクチノマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子及びブラストサイジンS耐性遺伝子等)が挙げられる。さらに、選択マーカー遺伝子M1としては、栄養要求性に関連する遺伝子の欠損等を選択マーカー遺伝子として使用することが可能である。
本発明においては、選択マーカー遺伝子M1として、薬剤耐性遺伝子を用いることが好ましく、スペクチノマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子が特に好ましく用いられる。
本発明に用いられる第2選択マーカー遺伝子M2は、上述した第1選択マーカー遺伝子M1とは異なる遺伝子であって、宿主DNAから脱落したときに選抜可能な表現型を示す遺伝子であれば特に限定されない。
例えば、第2選択マーカー遺伝子M2としてlacZ遺伝子(β−ラクタマーゼをコードする遺伝子)を利用することができる。lacZ遺伝子が発現している細胞をx−gal含有培地において培養すると、x−galが分解され青色のコロニーが観察できる。したがって、lacZ遺伝子を第2選択マーカー遺伝子M2として利用すれば、第2選択マーカー遺伝子M2を脱落した細胞は通常の色調のコロニーを形成することとなるため、コロニーの呈色を観察することで所望の形質転換細胞を選択することができる。また、lacZ遺伝子が発現する細胞をラクトース含有マッコンキー培地で培養するとラクトース分解が観察される。したがって、lacZ遺伝子を第2選択マーカー遺伝子M2として利用すれば、第2選択マーカー遺伝子M2を脱落した細胞ではラクトース分解が進行しないため、培地中のラクトース濃度を観察することでマーカー遺伝子が脱落した細胞を選択することができる。
また、第2選択マーカー遺伝子M2として、amyE遺伝子(アミラーゼをコードする遺伝子)を利用することもできる。amyE遺伝子を発現する細胞をデンプン含有培地で培養すると、デンプン成分の分解によりハロ形成が観察できる。したがって、amyE遺伝子を第2選択マーカー遺伝子M2として利用すれば、第2選択マーカー遺伝子M2を脱落した細胞は、デンプン成分の分解が進行しないため、ハロ形成の有無を観察することで選択することができる。
さらに、第2選択マーカー遺伝子M2として、gfp遺伝子(yfp遺伝子、cfp遺伝子、bfp遺伝子、rfp遺伝子)等の励起光により発光するタンパク質をコードする遺伝子を利用することもできる。例えばgfp遺伝子を第2選択マーカー遺伝子M2として利用した場合、第2選択マーカー遺伝子M2を有する細胞においては蛍光を観察することができ、第2選択マーカー遺伝子M2を脱落した細胞においては蛍光を観察することができない。したがって、細胞の蛍光を観察することによって、第2選択マーカー遺伝子M2の脱落した細胞を選択することができる。
第2選択マーカー遺伝子M2としては、宿主細胞の致死を誘導するタンパク質をコードする遺伝子(以下、致死遺伝子とも称する)を用いることが好ましい。このような致死遺伝子としては、例えば、chpA遺伝子(リボヌクレアーゼをコードする遺伝子)やccdB遺伝子(DNAジャイレースの阻害剤をコードする遺伝子)等の細胞増殖阻害タンパク質をコードする遺伝子、Kid遺伝子,RelE遺伝子,SymE遺伝子(エンドリボヌクレアーゼをコードする遺伝子)、Hok遺伝子,TxpA遺伝子(溶菌ペプチドをコードする遺伝子)、Doc遺伝子(蛋白質合成阻害に関与する遺伝子)、PerE遺伝子(DNAジャイレースの阻害に関与する遺伝子)が挙げられる。
なかでも、本発明において用いることができる致死遺伝子として、chpA遺伝子(リボヌクレアーゼをコードする遺伝子)及びccdB遺伝子(DNAジャイレースの阻害剤をコードする遺伝子)等の細胞増殖阻害タンパク質をコードする遺伝子を利用することがより好ましい。chpA遺伝子等の致死遺伝子が発現する細胞は増殖できず死滅する。したがって、chpA遺伝子等の致死遺伝子を第2選択マーカー遺伝子M2として用いた場合、後述する第2相同組み換え工程で第2選択マーカー遺伝子M2を脱落した細胞は増殖し生育することができるため、コロニー形成の有無を指標として所望の形質転換体を選択することができる。
ここで、chpA遺伝子は、大腸菌におけるトキシンの一種であるmazFをコードする遺伝子として知られている。chpA遺伝子の塩基配列を配列番号1、chpA遺伝子によりコードされるトキシンのアミノ酸配列を配列番号2にそれぞれ示す。
これら第2選択マーカー遺伝子M2は、発現誘導型プロモーターの制御下に発現できるように供与体DNA中または選択マーカーカセット中に配置される。ここで発現誘導型プロモーターとは、特定の条件下でのみ遺伝子発現を誘導する機能を有するプロモーターを意味する。特定の条件とは、誘導物質(インデューサー)の存在条件、炭素源等の培地成分の有無、温度条件等を挙げることができる。
本発明に用いられる発現誘導型プロモーターとしては、発現誘導物質の存在下に下流の遺伝子発現を誘導する機能を持ったプロモーターが好ましい。
具体的に、発現誘導型プロモーターとしては、特に限定されないが、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)の存在下において発現誘導するlacプロモーター、spacプロモーター、ザイロース誘導プロモーター、アラビノース誘導プロモーター、ECFシグマ因子特異的プロモーター(例えば、Bacillus subtilis and its closest relatives.pp289-312,RNA polimerase and Sigma factors.,J.Helmann and C.Moran Jr.,Editors:A.Sonenshein,J Hoch,R Losick,出版社:ASM Press参照)、Mg,Cuの二成分制御系によって制御されるプロモーター等を挙げることができる。なかでも、本発明においては、spacプロモーターが好ましく用いられる。
なお、lacプロモーターやspacプロモーターを利用する場合、供与体DNAまたは選択マーカーカセットには、IPTG非存在下でこれらプロモーターを抑制するリプレッサーをコードするlacI遺伝子が含まれる。このリプレッサーをコードする遺伝子もまた、供与体DNAの3’外側領域B及び第1相同組み換え領域Cの間に配置されることとなる。
上述した5’外側領域A、3’外側領域B、第1選択マーカー遺伝子M1、発現誘導型プロモーター、該発現誘導型プロモーターの制御下に発現する第2選択マーカー遺伝子M2、及び第1相同組み換え領域Cを有する供与体DNAは、例えば、PCR産物等のDNA断片、ゲノムの全体若しくはその一部、プラスミド、シャトルベクター、ヘルパープラスミド、ファージDNA、ウイルスベクター、BAC(例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 87,8242(1990)参照)及びYAC(例えば、Science 236,806(1987)参照)など、更にはプラスミド、シャトルベクター、ヘルパープラスミド、ファージDNA、ウイルスベクター、BAC及びYACなどにクローニングされたDNA断片やゲノムDNAの一部等から調製することができる。例えば、プラスミドとしては、大腸菌(Escherichia coli)由来のプラスミド(例えば、pET30bなどのpET系、pBR322及びpBR325などのpBR系、pUC118、pUC119、pUC18及びpUC19などのpUC系、pBluescript等)、枯草菌(Bacillus subtilis)由来のプラスミド(例えば、pUB110、pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えば、YEp13などのYEp系、YCp50などのYCp系等)などが挙げられる。またファージDNAとしては、λファージ(例えば、Charon4A、Charon21A、EMBL3、EMBL4、λgt10、λgt11、λZAP等)やPBS1ファージ(例えば、J.Bacteriol.90,1575(1965)参照)が挙げられる。さらに、レトロウイルス又はワクシニアウイルスなどの動物ウイルスベクター、カリフラワーモザイクウイルスなどの植物ウイルスベクター、またはバキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。あるいは、LP(Lysis of protoplasts)形質転換方法(例えば、T.Akamatsu及びJ.Sekiguchi,Archives of Microbiology,1987,146,p.353-357;T.Akamatsu及びH.Taguchi,Bioscience,Biotechnology,and Biochemistry,2001,65,4,p.823-829参照)を用いる場合には、例えば、供与体DNAを有する枯草菌等の微生物自体を使用することができる。
本発明の置換方法に用いられる供与体DNAについて、さらに具体的に説明する。
本発明の置換方法に用いられる供与体DNAは、上述した供与体DNAの構成に加えて、さらに供与体DNAの5’外側領域と供与体DNAの3’外側領域との間に所望のDNA配列を有する(図2(i):供与体DNA参照)。
本発明において、「所望のDNA配列(以下、「目的DNA配列」とも言う。)」としては、宿主DNAの対象領域に挿入することができれば、いかなるDNA配列であってもよい。例えば、タンパク質やプロモーター等の調節因子をコードする遺伝子等が挙げられる。また、所望のDNA配列は、これらの遺伝子等を複数含んでいても良い。例えば、目的DNA配列として、プロモーター配列及びタンパク質をコードする遺伝子配列を有していてもよいし、複数の調節因子と複数の遺伝子配列を有していてもよい。
本発明の置換方法において、挿入される目的DNA配列のサイズは、供与体DNAが細胞内に導入できれば特に制限されないが、1bp以上10kb以下であることが好ましく、1bp〜5kbであることがより好ましい。
本発明に用いられる目的DNA配列の調製方法は特に制限されず、例えば、PCR法、DNAリガーゼを用いた方法等により自由に設計・調製することができる。例えば、目的DNA配列として任意のプロモーター配列と任意の遺伝子配列とを結合したDNA配列を調整し、これを宿主DNAの所望の領域に挿入することができる。
また、目的DNA配列及び供与対DNAは、必ずしもPCR産物である必要はない。例えば、制限酵素により消化された目的DNA配列をDNAリガーゼによって供与体DNAの5’外側領域と供与体DNAの3’外側領域との間に結合し、得られたDNA断片(5’外側領域−目的DNA配列−3’外側領域)をPCR法によって増幅し、増幅産物と選択マーカーカセットとをDNAリガーゼにより結合することで供与体DNAを調整することもできる。
本発明の置換方法によれば、宿主DNAの置換対象領域を所望のDNA配列で置換することで、目的のDNA配列を宿主に挿入することができる。さらに、本発明の置換方法を用いれば、従来のプラスミドを用いた方法ではクローニングが困難であったDNA断片(例えば、サイズの大きなDNA配列や膜タンパク質をコードする遺伝子、宿主細胞に導入することで毒性をもち、多コピーのプラスミドでは挿入が困難な遺伝子、又は複数の遺伝子群や複数の調節因子などを含むDNA配列)を、簡便な操作で宿主DNAに挿入することができる。また、本発明の置換方法によれば、宿主DNA中の複数の位置に、複数のサイズの大きなDNA断片を挿入することも可能となる。
そのため、本発明の置換方法を用いれば、例えば、一つの生合成系を作っている蛋白質をコードする遺伝子群や蛋白質複合体を形成して働く蛋白質群をコードする遺伝子群を同一細胞内に挿入することができる。その結果、挿入したこれらの遺伝子群を同時に細胞内で発現させることで、細胞内で遺伝子群の機能解析を行うことも可能になる。また、近年、メタゲノム解析において、環境中のDNAをプラスミドにクローニングし、シークエンスを行うことが進められている。環境中に存在するDNAの中には、プラスミドではクローニングできないDNA断片も多く、このようなDNA断片のクローニング及びDNA断片に含まれる遺伝子の機能解析にも、本発明の置換方法は有用である。
本発明では、以上のようにして構成された供与体DNAを作製し、これを宿主DNA中に導入して宿主DNA内の対象領域(欠失対象領域、置換対象領域)を改変、欠失、置換することができる。ここで、宿主DNAとしては、所定の生物におけるゲノムDNA及びミトコンドリアDNA等を挙げることができる。宿主としては、枯草菌等のバチルス属、大腸菌等のエッシェリヒア属及びシュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属に属する細菌、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)及びシゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母、サル細胞COS−7、Vero、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)及びマウスL細胞等の動物細胞、Sf9等の昆虫細胞、並びにイネ科(例えば、イネ(Oryza sativa)、トウモロコシ(Zea mays))、アブラナ科(例えば、シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))、ナス科(例えば、タバコ(Nicotiana tabacum))及びマメ科(例えば、ダイズ(Glycine max))等の植物が挙げられる。これらの中でも、特に枯草菌を宿主として用いることが好ましい。
上述した宿主に供与体DNAを導入する方法としては、細胞にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えば、カルシウムイオンを用いる方法及びエレクトロポレーション法等が挙げられる。
宿主が枯草菌である場合には、コンピテントセル形質転換法(例えば、J.Bacterial.93,1925(1967)参照)やLP形質転換方法(例えば、T.Akamatsu及びJ.Sekiguchi,Archives of Microbiology,1987,146,p.353-357;T.Akamatsu及びH.Taguchi,Bioscience,Biotechnology,and Biochemistry,2001,65,4,p.823-829参照)を用いることができる。
宿主として酵母を対象とする場合のDNAの導入方法としては、酵母にDNAを導入することができる方法であれば特に限定されず、例えば電気穿孔法(エレクトロポレーション法)、スフェロプラスト法及び酢酸リチウム法等が挙げられる。
動物細胞を宿主とする場合、動物細胞へのDNAの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法及びリポフェクション法等が挙げられる。昆虫細胞を宿主とする場合は、昆虫細胞へのDNAの導入方法としては、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法及びエレクトロポレーション法等が挙げられる。植物を宿主とする場合は、植物細胞へのDNAの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、アグロバクテリウム法、パーティクルガン法及びPEG法等が挙げられる。
上述した手法によって供与体DNAを宿主に導入し、相同組み換えが生じる条件下において供与体DNAと宿主DNAとを近接させ、供与体DNAと宿主DNAとの間で、5’外側領域A及び第1相同組み換え領域Cにおける二重交差の相同組み換え(図1及び図2「第1相同組み換え」参照)を生じさせる。その結果、本発明の欠失方法においては、供与体DNAの3’外側領域B、第1選択マーカー遺伝子M1及び第2選択マーカー遺伝子M2を、宿主DNAの5’外側領域Aと第1相同組み換え領域Cの間に導入することができる(図1(ii)参照)。また、本発明の置換方法においては、供与体DNAの目的DNA配列、3’外側領域B、第1選択マーカー遺伝子M1及び第2選択マーカー遺伝子M2を、宿主DNAの5’外側領域Aと第1相同組み換え領域Cの間に導入することができる(図2(ii)参照)。
ここで、相同組み換えが生じる条件下とは、宿主が本来的に有している組換え反応に関与する酵素等の機能を失っていない状態を意味する。
供与体DNAと宿主DNAとの間の組換え方法としては、例えば、一般的なコンピテントセル形質転換方法(例えば、J.Bacterial.,Vol.93,p.1925(1967)参照)、プロトプラスト形質転換法(例えば、Mol.Gen.Genet.168,111(1979)参照)、エレクトロポレーション法(例えば、FEMS Microbiol.Lett.55,135(1990)参照)又はLP形質転換方法(例えば、T.Akamatsu及びJ.Sekiguchi,Archives of Microbiology,1987,146,p.353-357;T.Akamatsu及びH.Taguchi,Bioscience,Biotechnology,and Biochemistry,2001,65,4,p.823-829参照)が挙げられる。例えば、宿主が枯草菌である場合、コンピテントセル形質転換方法(例えば、J.Bacterial.,Vol.93,p.1925(1967)参照)に従って以下の様に形質転換を行うことができる。
まず、宿主菌株を、SPI培地(0.20%(W/V)硫酸アンモニウム、1.40%(W/V)リン酸水素二カリウム、0.60%(W/V)リン酸二水素カリウム、0.10%(W/V)クエン酸三ナトリウム二水和物、0.50%(W/V)グルコース、0.02%(W/V)カザミノ酸(Difco)、5mM 硫酸マグネシウム、0.25μM塩化マンガン、50μg/mlトリプトファン)において37℃で、例えば生育度(OD600)の値が1程度になるまで振盪培養する。振盪培養後、培養液の一部を9倍量のSPII培地(0.20%(W/V)硫酸アンモニウム、1.40%(W/V)リン酸水素二カリウム、0.60%(W/V)リン酸二水素カリウム、0.10%(W/V)クエン酸三ナトリウム二水和物、0.50%(W/V)グルコース、0.01%(W/V)カザミノ酸(Difco)、5mM硫酸マグネシウム、0.40μM塩化マンガン、5μg/mlトリプトファン)に接種し、更に例えば生育度(OD600)の値が0.4程度になるまで振盪培養することで、コンピテントセルを調製することができる。
次いで、供与体DNAを、宿主菌株のコンピテントセルに添加する。添加する供与体DNA量は特に限定されないが、好ましくは100pg〜100μg、より好ましくは1ng〜10μgを添加する。またコンピテントセルは、好ましくは105〜109CFU、より好ましくは106〜108CFUを使用する。供与体DNAを宿主菌株のコンピテントセルに添加後、1時間〜2時間培養する。
以上の工程により、宿主細胞内に供与体DNAが導入され、供与体DNAと宿主DNAとの間で第1相同組み換えが起こる(図1(i)〜(ii)及び図2(i)〜(ii)「第1相同組み換え」参照)。
第1相同組み換えの後、供与体DNAに含まれる第1選択マーカー遺伝子の発現に基づいて第1相同組み換えが行われた個体を選択することができる。第1相同組み換えが行われた宿主においては第1選択マーカー遺伝子が発現しているため、該遺伝子の表現型を観察することによって第1相同組み換えが行われた宿主をそれ以外の宿主から選択することができる。一例として、第1選択マーカー遺伝子として上述した薬剤抵抗性遺伝子を用いた場合には、薬剤抵抗性を獲得した宿主を選択すればよい。
次いで、第1相同組み換えにより得られた形質転換体(例えば、枯草菌)を単コロニー化後、0〜48時間(好ましくは1〜24時間、特に好ましくは2〜3時間)培養する。培養の間に、図1(iii)及び図2(iii)に示すように、第1相同組み換え後の宿主DNAに内在する2つの3’外側領域(BとB)の間で、相同組み換えが生じることとなる(第2相同組み換え)。その結果、宿主DNAの対象領域(欠失対象領域、置換対象領域)が改変(欠失、置換)され、同時に宿主DNAに挿入された第1選択マーカー遺伝子及び第2選択マーカー遺伝子が、宿主DNAから欠失することとなる(図1(iv)及び図2(iv)参照)。第2相同組み換えにより得られた形質転換体は、第1選択マーカー遺伝子が欠失したことにより表現型が変化することになる。第1選択マーカー遺伝子として薬剤抵抗性遺伝子を利用した場合には、第1相同組み換えで獲得した薬剤抵抗性を喪失し、薬剤感受性の表現型を示すこととなる。
さらに、第2相同組み換えが起こると、発現誘導型プロモーターの制御下に発現可能な第2選択マーカー遺伝子も宿主DNAから欠失することとなる。そのため、第2相同組み換えが起こった宿主においては、発現誘導条件下で宿主細胞を培養しても第2選択マーカー遺伝子が発現することはない。これに対して、第2相同組み換えが生じていない宿主(すなわち、発現誘導型プロモーター及び第2選択マーカー遺伝子が宿主DNA中に残存している個体)においては、発現誘導条件下で宿主細胞を培養すると、第2選択マーカー遺伝子が発現することになる。このように第2選択マーカー遺伝子の発現の有無に基づいて、第2相同組み換えが行われた宿主をそれ以外の宿主から選択することができる。
例えば、第2選択マーカー遺伝子としてlacZ遺伝子を利用した場合には、x−gal含有培地におけるx−gal分解時の青色の有無に基づいて、第2相同組み換えが起こった宿主をそれ以外の宿主から選択することができる。すなわち、第2相同組み換えが起こった宿主では、lacZ遺伝子が発現しないために通常の色調のコロニーを形成する。よって、青色を呈色せず通常の色調のコロニーを形成する宿主を選択することで、第2相同組み換えが起こった宿主のみを選択することができる。
第2選択マーカー遺伝子としてamyE遺伝子を利用した場合には、デンプン含有培地におけるハロ形成の有無に基づいて、第2相同組み換えが起こった宿主をそれ以外の宿主から選択することができる。すなわち、第2相同組み換えが起こった宿主では、amyE遺伝子が発現しないためにはハロを形成しない。よって、ハロ形成を伴わない通常のコロニーを形成する宿主を選択することで、第2相同組み換えが起こった宿主のみを選択することができる。
第2選択マーカー遺伝子としてgfp遺伝子を利用した場合には、蛍光の有無に基づいて、第2相同組み換えが起こった宿主をそれ以外の宿主から選択することができる。すなわち、第2相同組み換えが起こった宿主では、gfp遺伝子が発現しないためには蛍光を呈色しない。よって、蛍光が観察されないコロニーを形成する宿主を選択することで、第2相同組み換えが起こった宿主のみを選択することができる。
本発明においては、第2選択マーカー遺伝子として、第2相同組み換えが生じた形質転換体をポジティブセレクションによって選抜することが可能な選択マーカー遺伝子を用いることが好ましい。このような選択マーカー遺伝子を用いることで、擬陽性クローンを誤って選択してしまうことなく、第2相同組み換えが生じた形質転換体のみを高い精度で取得することができる。
なお、本発明において「ポジティブセレクション」とは、目的の形質転換体のみが特定の培地において増殖能を有することを指標として、目的の形質転換体を選択する方法を言う。
一方、本発明において「ネガティブセレクション」とは、目的の形質転換体のみが特定の培地にて増殖能を失ったことを指標として目的の形質転換体を選択する方法または特定のタンパク質の生産能を失ったことを指標として目的の形質転換体を選択する方法を言う。ここで、「特定の培地において増殖能を失う」とは、例えば、目的の形質転換体が特定のタンパク質の生産能を欠失した結果、特定の培地で増殖または生存できなくなることを意味する。
本発明では、ポジティブセレクションによって目的の形質転換体を選択可能な第2選択マーカー遺伝子として、具体的には前記致死遺伝子(chpA遺伝子、ccdB遺伝子、Kid遺伝子、RelE遺伝子、SymE遺伝子、Hok遺伝子、TxpA遺伝子、Doc遺伝子、PerE遺伝子など)を用いることが好ましい。第2選択マーカー遺伝子として前記致死遺伝子を用いた場合、第2相同組み換えが行われ致死遺伝子が欠落した宿主のみが通常の培地において生育可能となり、第2相同組み換えが起こっていない宿主は致死遺伝子を発現し死滅することとなる。すなわち、第2選択マーカー遺伝子として上述した致死遺伝子を利用した場合には、第2相同組み換えが生じた宿主をポジティブセレクションによって判別することができることになる。そのため、第2相同組み換えが生じた宿主を非常に高精度に選択することができる。
これに対し、第2相同組み換えが生じた形質転換体の選抜をネガティブセレクションで行う場合、擬陽性を示す個体を間違え誤って選択する可能性が高くなる。例えば、第1相同組み換えに利用した第1選択マーカー遺伝子を、第2相同組み換えの際にも選択マーカーとして利用しようとすると、第1相同組み換えが生じた個体をポジティブセレクションしているため、第2相同組み換えが生じた個体の選択にはネガティブセレクションを行うこととなる。
本発明では、第1選択マーカー遺伝子と第2選択マーカー遺伝子の2種類の選択マーカー遺伝子を用い、第2選択マーカー遺伝子の発現が発現誘導型プロモーターにより制御されている。そのため、これらの選択マーカー遺伝子の種類を適宜選択することで、第1相同組み換え後の個体をポジティブセレクションで選抜し、さらに第2相同組み換え後の個体をポジティブセレクションで選抜することが可能となる。その結果、誤って擬陽性クローンを選抜してしまうことなく、目的の形質転換体を極めて高い精度で得ることができる。
第2相同組み換えの生じた宿主をそれ以外の宿主から選抜する具体的な方法としては、例えば、発現誘導型プロモーターとしてspacプロモーター等のIPTGにより発現誘導可能なプロモーターを用いる場合、培地にIPTGを添加することで行う。第2相同組み換えが起こっていない宿主においては、IPTGの添加により上記致死遺伝子が発現するため死滅することとなる。このとき、第2相同組み換えは、染色体複製と同時におこると考えられるため、LB培地など液体培地中で菌のダブリングを6〜10回程度繰り返した細胞を用い、100μM以上のIPTGを含む寒天平板培地に塗布し、コロニーを形成するクローンを取得することが好ましい。
さらに、選択圧に起因するspacプロモーター変異による擬陽性のクローン取得をなくすために、第1選択マーカー遺伝子の欠落による表現型の変化を同時に確認することが好ましい。たとえば、第1選択マーカー遺伝子がスペクチノマイシン耐性遺伝子の場合、100μg/mlのスペクチノマイシンを添加した寒天平板培地上で生育できないクローンを選択し、スペクチノマイシン感受性を確認することが好ましい。このように第1選択マーカー遺伝子の欠落による表現型の変化を指標として併用することで、非常に高い精度(ほぼ100%の確率)で目的とする個体を得ることができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は以下の実
施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
本実施例では、枯草菌168株ゲノム上の1,879,258bpから1,899,742bpまでのpro5領域(20485bp)を欠失対象領域として、当該領域を欠失させる実験を行った。本実施例で使用したプライマー配列を表1にまとめた。またそのフローを図5及び図6に示した。
Figure 2009254350
<供与体DNAの作製>
先ず、枯草菌168株aprE遺伝子領域にスペクチノマイシン耐性遺伝子またはカナマイシン耐性遺伝子、lacI遺伝子、Pspac-chpA遺伝子を含むDNA断片を挿入した枯草菌168(aprE::spec, lacI, Pspac-chpA)株、及び168(aprE::Km, lacI, Pspac-chpA)株を以下のように作製した。
図5に示すように、枯草菌発現ベクターpO2HCを鋳型として、ベクター中のlacIからspacプロモーターを含む該プロモーター下流のSD配列までの領域を、pO2HC-lacF(配列番号3)及びpO2HC-lacR(配列番号4)のプライマーセットを用いてPCR法により増幅した。また、大腸菌W3110株のゲノムを鋳型として、chpA-F(配列番号5)及びchpA-R(配列番号6)のプライマーセットを用いて、ゲノム中のchpA遺伝子の開始コドンから終止コドンまでの領域をPCR法により増幅した。得られた二つの増幅DNA断片をSOE−PCR法(例えば、Gene,77,61(1989)参照)によって結合し、結合DNA断片を作製した。
次に、上記で作製したDNA断片を制限酵素ApaI及びBamHIで消化し、制限酵素処理断片を得た。同様に、ベクターpAPNC213(スペクチノマイシン耐性遺伝子含有)またはpAPNCK(カナマイシン耐性遺伝子含有)を制限酵素ApaI及びBamHIで消化し、制限酵素処理断片を得た。こうして得られた制限酵素処理断片を、DNAライゲースを用いて結合した。
得られた環状DNAを用いて枯草菌168株を形質転換した。100μg/mlのスペクチノマイシンもしくは5μg/mlカナマイシンを含むLB寒天平板培地で培養して、目的の形質転換体を選択し、168(aprE::spec, lacI, Pspac-chpA)及び168(aprE::Km, lacI, Pspac-chpA)株を構築した。
次に、得られた168(aprE::spec, lacI, Pspac-chpA)株または168(aprE::Km,lacI,Pspac-chpA)株の染色体DNAを鋳型として、APNC-Fプライマー(配列番号7)とchpA-Rプライマー(配列番号6)を用いてPCRによりDNA断片を増幅した(図5参照)。増幅したDNA断片を選択マーカー遺伝子カセットと称する。また、枯草菌168株の染色体DNAを鋳型として、欠失対象領域の5’外側領域(断片A)、欠失対象領域の3’外側領域(断片B)及び第1相同組み換え領域(断片C)を、それぞれpro5-DF1(配列番号8)とpro5-DR1(配列番号9)、pro5-DF2(配列番号10)とpro5-DR2(配列番号11)、及びpro5-IF(配列番号12)とpro5-IR(配列番号13)のプライマーセットを用いてPCRにより増幅した(図6(i)参照)。
次に、これらPCRによって得られた選択マーカー遺伝子カセット、5’外側領域(断片A)、3’外側領域(断片B)及び第1相同組み換え領域上流(断片C)並びにpro5-DF1(配列番号8)とpro5-IR(配列番号13)のプライマーセットを用いてSOE−PCR法(Gene,77,61(1989))を行った。これにより、図6(i)に示すように、5’外側領域(断片A)、3’外側領域(断片B)、選択マーカー遺伝子カセット及び第1相同組み換え領域上流(断片C)がこの順で配置したDNA断片を取得することができた。本実施例では、このDNA断片を供与体DNAとして使用した。
<形質転換>
1.第一相同組み換え
上述のように取得された供与体DNAを用いて、枯草菌168株を形質転換した。形質転換の条件は、コンピテントセル形質転換方法(例えば、J.Bacterial.93,192(1967)参照)に従い、PCR産物(供与体DNA)を20μg以上用いて行った。枯草菌形質転換は、1μgのPCR断片を400μlのコンピテントセルに加え、更に1.5時間培養し第1相同組み換え(図6(i)〜(ii)参照)を行った。
第1相同組み換えにより得られた形質転換体は、組み換えにより導入されたスペクチノマイシン耐性遺伝子またはカナマイシン耐性遺伝子を用いて選択した。具体的には、上記形質転換処理後の細胞を100μg/mlのスペクチノマイシンもしくは5μg/mlカナマイシンを含むLB寒天平板培地にて、37℃で一晩培養し、コロニーを形成し、生存可能な菌株を取得した。この培養によって、第1相同組み換えによって供与体DNAが組み込まれてスペクチノマイシン耐性もしくはカナマイシン耐性を獲得した枯草菌のみが生育し、コロニーを形成することとなる。
2.第二相同組み換え
次に、スペクチノマイシン耐性またはカナマイシン耐性遺伝子を指標として選択された形質転換体を、LB液体培地で一晩培養した。培養液を希釈後、1mM IPTGを添加したLB寒天プレートに塗布した。その結果、48個のコロニーが得られた。IPTG含有LB寒天プレート上で生存し、コロニー形成が確認されたこれらの形質転換枯草菌は、第2相同組み換えによって、宿主DNAの欠失対象領域及び供与体DNAがともに改変後の宿主DNAから欠失したものである(図6(iii)〜(iv)参照)。
さらに、本実施例では、以上の実験により得られた形質転換枯草菌の単コロニー48個について、欠失対象領域(pro5領域)の欠失を、pro5-checkFプライマー(配列番号14)とpro5-checkRプライマー(配列番号15)を用いて確認した(図6(iv)参照)。その結果、48個の形質転換体は全てpro5領域が欠失していた。
以上の結果から明らかなように、本実施例で作製した供与体DNAおよびそれに含まれる選択マーカーカセットを用いれば、高い精度で、枯草菌ゲノム中の所望の領域を欠失させることができることが明らかとなった。
また、本実施例では、形質転換過程において使用した選択マーカー遺伝子であるスペクチノマイシン耐性遺伝子またはカナマイシン耐性遺伝子が、最終的に得られた形質転換体に残存していない。したがって、得られた形質転換体は、再度、スペクチノマイシン耐性遺伝子またはカナマイシン耐性遺伝子を選択マーカーとして利用した形質転換実験等に使用可能である。
〔実施例2〕
本実施例では、枯草菌168株ゲノム上の1,690,526bpから1,695,233bpまでのflgB-fliH領域(4708bp)を目的DNA配列として、当該DNA配列を宿主DNAの対象領域に挿入する実験を行った。本実施例で使用したプライマー配列を表2にまとめた。またそのフローを図7に示した。
Figure 2009254350
<供与体DNAの作製>
実施例1で得られた枯草菌168(aprE::spec, lacI, Pspac-chpA)株の染色体DNAを鋳型として、APNC-Fプライマー(配列番号7)とchpA-Rプライマー(配列番号6)を用いてPCRによりDNA断片を増幅した(図5参照)。増幅したDNA断片を選択マーカー遺伝子カセットと称する。また、枯草菌168株の染色体DNAを鋳型として、flgB-fliH領域、挿入領域の5’外側領域(断片A)、挿入領域の3’外側領域(断片B)及び第1相同組み換え領域(断片C)を、それぞれflgB-F(配列番号16)とfliH-R(配列番号17)、aprEclone-fF(配列番号18)とaprEclone-fR(配列番号19)、aprEclone-bF(配列番号20)とaprEclone-bR(配列番号21)、及びaprEclone-mF(配列番号22)とaprEclone-mR(配列番号23)のプライマーセットを用いてPCRにより増幅した(図7(i)参照)。
次に、これらPCRによって得られた選択マーカー遺伝子カセット、5’外側領域(断片A)、flgB-fliH領域、3’外側領域(断片B)及び第1相同組み換え領域上流(断片C)並びにaprEclone-fF(配列番号18)とaprEclone-mR(配列番号23)のプライマーセットを用いてSOE−PCR法(Gene,77,61(1989))を行った。これにより、図7(i)に示すように、5’外側領域(断片A)、flgB-fliH領域、3’外側領域(断片B)、選択マーカー遺伝子カセット及び第1相同組み換え領域上流(断片C)がこの順で配置したDNA断片を取得することができた。本実施例では、このDNA断片を供与体DNAとして使用した。
<形質転換>
1.第一相同組み換え
形質転換および第1相同組み換えにより得られた形質転換体の選択は上述の実施例1と同様に行った。
2.第二相同組み換え
次に、スペクチノマイシン耐性を指標として選択された形質転換体を、LB液体培地で一晩培養した。培養液を希釈後、1mM IPTGを添加したLB寒天プレートに塗布した。その結果、100個以上のコロニーが得られた。IPTG含有LB寒天プレート上で生存し、コロニー形成が確認されたこれらの形質転換枯草菌は、第2相同組み換えによって、宿主DNAの対象領域にflgB-fliH領域(目的DNA配列)が挿入され、同時に選択マーカー遺伝子カセットが改変後の宿主DNAから欠失したものである(図7(iii)〜(iv)参照)。
さらに、本実施例では、以上の実験により得られた形質転換枯草菌の単コロニー24個について、選択マーカーカセットの欠失とflgB-fliH領域の挿入を、aprE-checkFプライマー(配列番号24)とaprE-checkRプライマー(配列番号25)を用いて確認した。その結果、24個の形質転換体は全て選択マーカーカセットが欠失し、かつflgB-fliH領域が挿入されていた。
以上の結果から明らかなように、本実施例で作製した供与体DNAおよびそれに含まれる選択マーカーカセットを用いれば、高い精度で、所望のDNA断片をクローニングすることができることが明らかとなった。
また、本実施例では、形質転換工程において使用した選択マーカー遺伝子であるスペクチノマイシン耐性遺伝子またはカナマイシン耐性遺伝子が、最終的に得られた形質転換体に残存していない。したがって、得られた形質転換体は、再度、スペクチノマイシン耐性遺伝子またはカナマイシン耐性遺伝子を選択マーカーとして利用した形質転換実験等に使用可能である。

Claims (24)

  1. 供与体DNAと宿主DNAとの間で相同組み換えを行う工程を含む宿主DNAの対象領域を改変させる方法であって、
    前記供与体DNAが、宿主DNA中の、前記対象領域の外側の5’側領域、前記対象領域の外側の3’側領域及び前記対象領域の内側の第1相同組み換え領域に対応する相同領域をこの順で有し、更に前記3’側領域の相同領域及び前記第1相同組み換え領域の相同領域の間に第1選択マーカー遺伝子、発現誘導型プロモーター及び当該発現誘導型プロモーターの制御下に発現可能な第2選択マーカー遺伝子を有し、
    前記供与体DNAと前記宿主DNAとの間において、前記5’側領域及び前記第1相同組み換え領域で相同組み換えを行う第1工程と、
    上記相同組み換え後の宿主DNAにおいて、宿主DNA由来の前記3’側領域と供与体DNA由来の前記3’側領域との間で相同組み換えを行う第2工程とを含み、
    上記第1工程では、前記供与体DNAを組み込んだ宿主を前記第1選択マーカー遺伝子の発現に基づいて選択し、
    前記第2工程では、前記発現誘導型プロモーターの発現誘導条件下とすることで前記第2の選択マーカー遺伝子の発現に基づいて、宿主DNA中の対象領域が改変された宿主を選択することを特徴とする、宿主DNAの対象領域の改変方法。
  2. 供与体DNAと宿主DNAとの間で相同組み換えを行う工程を含む宿主DNAの欠失対象領域を欠失させる方法であって、
    前記供与体DNAが、宿主DNA中の、前記欠失対象領域の外側の5’側領域、前記欠失対象領域の外側の3’側領域及び前記欠失対象領域の内側の第1相同組み換え領域に対応する相同領域をこの順で有し、更に前記3’側領域の相同領域及び前記第1相同組み換え領域の相同領域の間に第1選択マーカー遺伝子、発現誘導型プロモーター及び当該発現誘導型プロモーターの制御下に発現可能な第2選択マーカー遺伝子を有し、
    前記供与体DNAと前記宿主DNAとの間において、前記5’側領域及び前記第1相同組み換え領域で相同組み換えを行う第1工程と、
    上記相同組み換え後の宿主DNAにおいて、宿主DNA由来の前記3’側領域と供与体DNA由来の前記3’側領域との間で相同組み換えを行う第2工程とを含み、
    上記第1工程では、前記供与体DNAを組み込んだ宿主を前記第1選択マーカー遺伝子の発現に基づいて選択し、
    前記第2工程では、前記発現誘導型プロモーターの発現誘導条件下とすることで前記第2の選択マーカー遺伝子の発現に基づいて、宿主DNA中の欠失対象領域が欠失した宿主を選択することを特徴とする、宿主DNAの欠失対象領域の欠失方法。
  3. 前記第2工程において、第2の選択マーカー遺伝子の発現に基づいて、宿主DNA中の欠失対象領域が欠失した宿主をポジティブセレクションによって選択することを特徴とする請求項2記載の宿主DNAの欠失対象領域の欠失方法。
  4. 前記第2選択マーカー遺伝子は、宿主細胞の致死を誘導するタンパク質をコードしていることを特徴とする請求項2または3記載の宿主DNAの欠失対象領域の欠失方法。
  5. 前記第2選択マーカー遺伝子はchpA遺伝子であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか一項記載の宿主DNAの欠失対象領域の欠失方法。
  6. 前記発現誘導型プロモーターは、発現誘導物質の存在下に下流の遺伝子発現を誘導するものであることを特徴とする請求項2〜5のいずれか一項記載の宿主DNAの欠失対象領域の欠失方法。
  7. 前記第1選択マーカー遺伝子は薬剤耐性遺伝子であることを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項記載の宿主DNAの欠失対象領域の欠失方法。
  8. 上記宿主が枯草菌であることを特徴とする、請求項2〜7のいずれか一項記載の宿主DNAの欠失対象領域の欠失方法。
  9. 供与体DNAと宿主DNAとの間で相同組み換えを行う工程を含む宿主DNAの置換対象領域を所望のDNA配列で置換する方法であって、
    前記供与体DNAが、宿主DNA中の、前記置換対象領域の外側の5’側領域、前記置換対象領域の外側の3’側領域及び前記置換対象領域の内側の第1相同組み換え領域に対応する相同領域をこの順で有し、前記5’側領域の相同領域と前記3’側領域の相同領域との間に所望のDNA配列を有し、更に前記3’側領域の相同領域及び前記第1相同組み換え領域の相同領域の間に第1選択マーカー遺伝子、発現誘導型プロモーター及び当該発現誘導型プロモーターの制御下に発現可能な第2選択マーカー遺伝子を有し、
    前記供与体DNAと前記宿主DNAとの間において、前記5’側領域及び前記第1相同組み換え領域で相同組み換えを行う第1工程と、
    上記相同組み換え後の宿主DNAにおいて、宿主DNA由来の前記3’側領域と供与体DNA由来の前記3’側領域との間で相同組み換えを行う第2工程とを含み、
    上記第1工程では、前記供与体DNAを組み込んだ宿主を前記第1選択マーカー遺伝子の発現に基づいて選択し、
    前記第2工程では、前記発現誘導型プロモーターの発現誘導条件下とすることで前記第2の選択マーカー遺伝子の発現に基づいて、宿主DNA中の置換対象領域が所望のDNA配列で置換された宿主を選択することを特徴とする、宿主DNAの置換対象領域の置換方法。
  10. 前記第2工程において、第2の選択マーカー遺伝子の発現に基づいて、宿主DNA中の置換対象領域が置換された宿主をポジティブセレクションによって選択することを特徴とする請求項9記載の宿主DNAの置換対象領域の置換方法。
  11. 前記第2選択マーカー遺伝子は、宿主細胞の致死を誘導するタンパク質をコードしていることを特徴とする請求項9または10記載の宿主DNAの置換対象領域の置換方法。
  12. 前記第2選択マーカー遺伝子はchpA遺伝子であることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項記載の宿主DNAの置換対象領域の置換方法。
  13. 前記発現誘導型プロモーターは、発現誘導物質の存在下に下流の遺伝子発現を誘導するものであることを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項記載の宿主DNAの置換対象領域の置換方法。
  14. 前記第1選択マーカー遺伝子は薬剤耐性遺伝子であることを特徴とする請求項9〜13のいずれか一項記載の宿主DNAの置換対象領域の置換方法。
  15. 上記宿主が枯草菌であることを特徴とする、請求項9〜14のいずれか一項記載の宿主DNAの置換対象領域の置換方法。
  16. 前記第1選択マーカー遺伝子、前記発現誘導型プロモーター及び当該発現誘導型プロモーターの制御下に発現可能な前記第2選択マーカー遺伝子を有し、前記供与体DNAの3’側領域の相同領域と第1相同組み換え領域の相同領域との間に位置することを特徴とする、請求項1記載の宿主DNAの対象領域の改変方法に用いられる選択マーカーカセット。
  17. 前記第2選択マーカー遺伝子は、宿主細胞の致死を誘導するタンパク質をコードしていることを特徴とする請求項16記載の選択マーカーカセット。
  18. 前記第2選択マーカー遺伝子はchpA遺伝子であることを特徴とする請求項16または17記載の選択マーカーカセット。
  19. 前記発現誘導型プロモーターは、発現誘導物質の存在下に下流の遺伝子発現を誘導するものであることを特徴とする請求項16〜18のいずれか一項記載の選択マーカーカセット。
  20. 前記第1選択マーカー遺伝子は薬剤耐性遺伝子であることを特徴とする請求項16〜19のいずれか一項記載の選択マーカーカセット。
  21. 枯草菌ゲノム内に組み込まれていることを特徴とする請求項16〜20のいずれか一項記載の選択マーカーカセット。
  22. 請求項1記載の宿主DNAの対象領域の改変方法を用いて、宿主DNAの対象領域を改変させる工程を含む、対象領域が改変された宿主の作成方法。
  23. 請求項2〜8のいずれか一項記載の宿主DNAの欠失対象領域の欠失方法を用いて、宿主DNAから欠失対象領域を欠失させる工程を含む、欠失対象領域の欠失した宿主の作成方法。
  24. 請求項9〜15のいずれか一項記載の宿主DNAの置換対象領域の置換方法を用いて、宿主DNAの置換対象領域を置換させる工程を含む、置換対象領域が置換された宿主の作成方法。
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