JP2007135533A - 高効率遺伝子発現方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】目的物質の生産に必要な複数の遺伝子からなる遺伝子群を細菌において高発現する方法を提供することを解決すべき課題とする。また、複数の遺伝子からなる遺伝子群の発現を必要とする目的物質を高発現して生産する細菌を製造する方法を提供することを解決すべき課題とする。
【解決手段】目的物質の生産に必要な複数の遺伝子からなる遺伝子群を連結集積した遺伝子集積体を細菌ゲノムの複製開始点近傍に挿入することにより、目的物質の生産に必要な複数の遺伝子からなる遺伝子群を細菌において高発現する方法、及び複数の遺伝子からなる遺伝子群の発現を必要とする目的物質を高発現して生産する細菌を製造する方法を提供した。
【選択図】なし

Description

本発明は、細菌における高効率遺伝子発現方法等に関する。具体的には、複数の遺伝子からなる遺伝子群を連結集積した遺伝子集積体を細菌ゲノムの複製開始点近傍に挿入することにより該遺伝子集積体を高発現させる方法、該遺伝子集積体を発現可能な状態で細菌ゲノムの複製開始点近傍に挿入することにより目的物質を高発現させて生産する細菌を製造する方法、該遺伝子集積体をゲノム複製開始点近傍に有する細菌、及び該細菌を用いて該遺伝子集積体により生産される物質を製造する方法等に関する。
生物の行う物質生産等の一連の過程(以下、生合成経路や代謝経路も含め、この過程を「バイオプロセス」と称することがある)の多くは、複数の遺伝子からなる遺伝子群が関与しており、これらの遺伝子は、比較的まとまってゲノム中に存在していることもあるが、ゲノム中に分散していることが多い。近年のゲノムプロジェクトの成果により生物の持つ遺伝子の全貌が明らかにされつつあり、現在、これらのゲノム遺伝子情報を利用してあるバイオプロセスに必要かつ十分な遺伝子群を選び取ることで効率のよいオペロンを再構成したり、あるいは様々な遺伝子の組み合わせで新規オペロンの構築を行ったりすることが可能となっている。なお、ここで言うオペロンは、狭義の意味での2つ以上の複数の遺伝子が一つのmRNAで転写される遺伝子群の総称とは異なり、あるバイオプロセスを構成する一連の遺伝子群がゲノム中の一次配列において集積している状態を指す。このように集積することにより例えばDNA構造変化によるプロモーター活性の変化や転写流れ込みの有無、非翻訳領域の翻訳調節の変化、あるいは制御タンパク質と制御対象領域との相互作用の変化などの様々な要因で、遺伝子発現制御の変化を誘発すると期待される。従って転写単位が1つであることに限定されない。発明者らは、OGAB法と命名した、枯草菌プラスミド形質転換系を利用した多重遺伝子断片の迅速連結法を発明した(特許文献1を参照)。この技術を用いることによりさまざまなオペロンの迅速な作成が可能となった。本明細書では、上述した広義のオペロンを含め、目的物質の生産に必要な複数の遺伝子からなる遺伝子群を連結集積して構築した遺伝子群を、「遺伝子集積体」と称することがある。
しかしながら、現在のところ効率的な遺伝子集積体の発現原理に関する情報は無い。すなわち、遺伝子集積体が構築できたとしてもこれらを宿主細胞中で効率的に発現する方法について知見はない。例えば、枯草菌のプラスミド形質転換法を利用した遺伝子集積においては、その過程において集積プラスミドを構築するために、プラスミド状態で遺伝子集積体の発現を誘導する方法もある(特許文献1を参照)。しかしながら、プラスミドは、ゲノムとは独立に複製するために脱落が起きやすい。プラスミドの脱落を防ぐためにプラスミド中に抗生物質耐性遺伝子を導入し、常に抗生物質という選択圧を掛けることにより、その脱落を防ぐことが出来る。しかしながら、構築したシステムにより生産される物質の生産性や、有害物質の分解などの効率、または、プラスミド保持のために使用される抗生物質のコストとのかねあいで産業化が考慮される。発明者らは、遺伝子集積体を宿主細胞のゲノム中に組み込むことにより遺伝子集積体を安定に保持することが可能であることを、既に見出しており、プラスミドに替わる構築法であることを主張している(特許文献1を参照)。ゲノム中という表現でひとくくりされている内容をさらに細かく検討すると、微生物ゲノム中では、場所により存在する遺伝子の種類に偏りが存在していることが知られている。例えば、全ゲノムが決定された枯草菌の場合、ゲノム複製開始点の近傍の方が、ゲノム複製終結点近傍に比較して生存に必須な遺伝子が密集する傾向にある(非特許文献1を参照)。また、大腸菌と枯草菌においては、全ゲノムの複製開始点を含む1/3の領域において発現レベルの高い必須遺伝子が集積している傾向にある(非特許文献2を参照)。さらに、大腸菌ゲノムに、外来の制御遺伝子とその制御対象のプロモーターの組み合わせを様々な領域に導入して、プロモーターの活性を測定した結果、複製開始点の近傍ほど遺伝子発現効率が高いという知見が得られていた(非特許文献3を参照)。しかし、枯草菌における必須遺伝子の分布領域と遺伝子発現効率の関係は明らかではなく、また遺伝子集積体を細菌ゲノムの様々な領域に挿入し、遺伝子発現効率の検討を行い、該遺伝子集積体が高発現するための該遺伝子集積体の細菌ゲノムへの挿入場所を具体的に示した例はこれまでになかった。
特開2004−129654号公報 Kobayashi, K., et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 100, 4678-4683, 2003 Rocha, E.P.C.A. Microbiology 150, 1609-1627, 2004 Sousa, C., et al. Microbiology 143, 2071-2078, 1997
本発明は、目的物質の生産に必要な複数の遺伝子からなる遺伝子群を細菌において高発現する方法を提供することを解決すべき課題とする。また、複数の遺伝子からなる遺伝子群の発現を必要とする目的物質を高発現して生産する細菌を製造する方法を提供することを解決すべき課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、目的物質の生産に必要な複数の遺伝子からなる遺伝子群を連結集積した遺伝子集積体を、細菌ゲノムの複製開始点近傍に挿入することにより、遺伝子集積体の発現効率が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明によれば、
(1)目的物質の生産に必要な複数の遺伝子からなる遺伝子群を細菌において発現する方法であって、該遺伝子群を連結集積して遺伝子集積体を構築し、該遺伝子集積体を発現可能な状態で細菌ゲノムの複製開始点近傍に挿入することを特徴とする方法、
(2)複数の遺伝子からなる遺伝子群の発現を必要とする目的物質を生産する細菌を製造する方法であって、該遺伝子群を連結集積して遺伝子集積体を構築し、該遺伝子集積体を発現可能な状態で細菌ゲノムの複製開始点近傍に挿入することを特徴とする方法、
(3)細菌ゲノムの複製開始点近傍が、複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ細菌ゲノム全長の1/12長の領域内である、上記(1)または(2)に記載の方法、
(4)目的物質が抗生物質、薬剤耐性関連タンパク質、色素、界面活性物質、ビタミン、アミノ酸、アミノ酸高分子体、金属キレート物質または酵素である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の方法、
(5)細菌がBacillus属細菌、大腸菌、高度好熱菌または放線菌である、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の方法、
(6)Bacillus属細菌が枯草菌である、上記(5)に記載の方法、
(7)枯草菌ゲノムの複製開始点近傍が、複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ350Kbの領域内である、上記(6)に記載の方法、
(8)上記(2)〜(7)のいずれかに記載の方法により製造された細菌、
(9)Bacillus属細菌、大腸菌、高度好熱菌または放線菌である、上記(8)に記載の細菌、
(10)Bacillus属細菌が枯草菌である、上記(9)に記載の細菌、
(11)上記(8)〜(10)のいずれかに記載の細菌を培養して目的物質を製造する方法、
が提供される。
本発明によれば、Bacillus属細菌、大腸菌、高度好熱菌、放線菌などのグラム陽性、陰性を問わず、様々な細菌にバイオプロセスを構成する一連の複数の遺伝子からなる遺伝子群の遺伝子集積体を構築し該遺伝子集積体をゲノムに挿入する際に、その挿入場所を細菌ゲノム複製開始点近傍とすることで、そのバイオプロセスの活性や物質生産能力を高めた状態の株を迅速に構築することが出来る。また、遺伝子集積体がプラスミド中に存在している場合に、プラスミドの菌体内での維持のために抗生物質等などの選択圧を掛けなければならないのに対して、遺伝子集積体をゲノム中に導入する場合は、特に選択圧を掛けなくとも安定に保持されるために、培養のコストを低減することが可能となる。さらに本発明によれば、本来その細菌が有するバイオプロセスを構成する遺伝子集積体のみならず、外来の遺伝子などを用いて構築した新規なバイオプロセスを構成する遺伝子集積体をゲノム中に挿入する際に、ゲノム中での有用な場所に関する情報を提供する。
以下、本発明を更に詳細に説明するが、以下の構成要件の説明は、本発明の実施態様の代表例であり、本発明はこれらの内容のみに特定されるものではない。
なお、本明細書において、DNAやベクターの調製等の分子生物学的手法は、特に明記しない限り、例えば、「Molecular Cloning, A Laboratory Manual (Sambrook and Russell著、Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989))」等の一般的実験書に記載の方法又はそれに準じて行うことができる。
(1)遺伝子集積体の作製
本発明の方法は、目的物質の生産を行うために用いる複数の遺伝子からなる遺伝子群を連結集積し、該遺伝子集積体を発現可能な状態で細菌ゲノムの複製開始点近傍に挿入することを特徴とする。
生物の行う物質生産等の一連の過程の多くは、多数の遺伝子が関与しており、これらの遺伝子はゲノム中に分散していることが多いが、バイオプロセスに必要かつ十分な遺伝子群を選び取ることで、物質生産を効率良く行うことが可能となると考えられる。
遺伝子集積体とは、高効率に物質生産を行うために、目的物質の生産に必要な一連の遺伝子等を連結させたものであり、遺伝子の種類は、原核生物、哺乳動物もしくは植物を含む真核生物の、ゲノムDNA断片、cDNA断片のいずれでもよく、特に制限されない。目的物質の生産に必要な複数の遺伝子からなる遺伝子群は、どのような遺伝子群であってもよいが、例えば抗生物質、薬剤耐性関連タンパク質、色素、界面活性物質、ビタミン、アミノ酸、アミノ酸高分子体、金属キレート物質、酵素等を生産するための遺伝子群が挙げられる。
遺伝子群により産生が制御される抗生物質としては、枯草菌の生産するプリパスタチンやイチュリン等が挙げられ、かかる遺伝子群の具体例としては、プリパスタチンを生産するためのバイオプロセスを構成するdegQ、sfp、pps遺伝子群(Tsuge, K., et al. Antimicrob. Agents Chemother. 43, 2183-2192, 1999)等や、イチュリンを生産するためのバイオプロセスを構成するitu、sfp、degQ遺伝子群等が挙げられる(Tsuge, K., et al. Antimicrob. Agents Chemother. 49, 4641-4648, 2005)。なお、pps遺伝子は、A〜Eの5つのオープンリーディングフレームからなるppsオペロン(ppsABCDE)であるが、本明細書ではこのppsオペロンをpps遺伝子と称する。遺伝子群により産生が制御される薬剤耐性関連タンパク質としては、ブラストサイジンS、クロラムフェニコール、エリスロマイシン、ネオマイシン、スペクチノマイシン等が挙げられ、かかる遺伝子群の具体例としては、多剤薬剤耐性バイオプロセスを構成するbsr, cat, erm, neo, spc遺伝子等が挙げられる(Tsuge, K., et al. Nucleic Acids Res. 31, e133, 2003)。遺伝子群により産生が制御される色素としては、カロテノイド色素等が挙げられ、かかる遺伝子群の具体例としては、Erwiniaのカロテノイド色素を生産するためのバイオプロセスを構成するcrt遺伝子群等が挙げられる(Misawa, N., et al., J. Bacteriol. 177, 6575-6584, 1995)。遺伝子群により産生が制御される界面活性物質としては、サーファクチン等が挙げられ、かかる遺伝子群の具体例としては、枯草菌がサーファクチンを生産するためのバイオプロセスを構成するsrfA/sfp遺伝子群等が挙げられる(Cosmina, P., et al., Mol. Microbiol. 8, 821-831, 1993)。
遺伝子群により産生が制御されるビタミンとしては、チアミン(ビタミンB1)等が挙げられ、かかる遺伝子群の具体例としては、枯草菌のチアミンを生産するためのバイオプロセスを構成するthiA, thiCk, goxB-thiSGFD, ydiA, ytbJ, dxs 遺伝子群等が挙げられる(Perkins, J. B., and Pero, J. Vitamin Biosynthesis, 271-286,In Bacillus subtilis and its closest relatives. Ed. By Sonenshein, A. L., et al. ASM Press, Washington D. C., 2002)。遺伝子群により産生が制御されるアミノ酸としては、含窒素アミノ酸等が挙げられ、かかる遺伝子群の具体例としては、グルタミン酸を生産するためのバイオプロセスを構成するginA, gltAB遺伝子群等が挙げられる(Belitsky, B. R.. Biosynnthesis of amino Acids of the glutamente and asparatate families, alanine, and polyamines, 203-231,In Bacillus subtilis and its closest relatives. Ed. By Sonenshein, A. L., et al. ASM Press, Washington D. C., 2002)。遺伝子群により産生が制御されるアミノ酸高分子体としては、ポリγグルタミン酸等が挙げられ、かかる遺伝子群の具体例としては、枯草菌のポリγグルタミン酸を生産するためのバイオプロセスを構成するdegQ, swrA, pgs遺伝子群等が挙げられる(Stanley, N. R., et al. Mol. Microbiol. 57, 1143-1158, 2005)。遺伝子群により産生が制御される金属キレート物質の具体例としては、シデオフォア等が挙げられ、かかる遺伝子群の具体例としては、シデオフォアを生産するためのバイオプロセスを構成するfur, dhb遺伝子群等が挙げられる(Bsat, N., and Helmann, J. D., J. Bacteriol. 181, 4299-4307, 1999)。
遺伝子群により産生が制御される酵素としては、粉分解酵素、脂肪分解酵素、タンパク質分解酵素、セルロース分解酵素、オキシドレダクターゼまたは植物細胞壁分解酵素等が挙げられ、より具体的には、アミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、プロテアーゼ、グルコースイソメラーゼ、クチナーゼ、エステラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペルオキシダーゼ、ラッカーゼ、カタラーゼ、グルコースオキシダーゼ、リアーゼ、ペクチダーゼ、グルコシダーゼ、マンノシダーゼ、インベルターゼ、トランスフェラーゼ、リボヌクレアーゼ、ガラクトシダーゼ、キチナーゼ等が挙げられ、かかる遺伝子群の具体例としては、枯草菌のアルカリプロテアーゼを生産するためのバイオプロセスを構成するdegQ, apr遺伝子群等が挙げられる(Msadek, T., et al., J. Bacteriol. 173, 2366-2377, 1991)。また、遺伝子群が複合酵素系をコードしてもよい。複合酵素系は、多酵素複合体とも呼ばれ、一定の秩序だった配列をした一連の酵素群または複数のサブユニットで構成される。複合酵素系の遺伝子集積体を作ると、各酵素が近接して存在するため、細胞内の各種代謝反応を効率良く行うことができる。このような、複合酵素系としては、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ、アセチルCoAカルボキシラーゼ、トリプトファンシンターゼ、酵母の脂肪酸合成酵素等が挙げられ、かかる遺伝子群の具体例としては、アセチルCoAを生産するためのバイオプロセスを構成する大腸菌ピルビン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子群のaceEF, lpd遺伝子群等が挙げられる(Guest, J. R., et al. Ann. N. Y. Acad. Sci.573, 76-99, 1989)。
また、高効率に目的物質の生産を行うことができれば、上記DNA断片を適宜組み合わせ、遺伝子集積体とすることもできる。例えば、Bacillus属細菌由来の目的物質を生産する場合、degQ遺伝子を組み合わせた遺伝子集積体を用いることが好ましい。さらに、遺伝子集積体が目的物質の生産に必要な一連の遺伝子を含む場合で、その遺伝子の連結順序、および遺伝子間の距離や塩基配列などについて物質生産に適したものが知られている場合、それらに従って調製することが好ましい。
連結集積した遺伝子集積体は、具体的には、一例として特開2004-129654に記載の方法により調製される。これは、DNAの制限酵素SfiIで消化すると任意の3塩基の3'突出末端を有するDNA断片が得られることを利用し、複数のDNA断片の順序と向きを規定し、これらを連結集積させるものである。すなわち、ある特定の末端を生じるようにデザインされたベクターに、それぞれのDNA断片を挿入し、常法により大腸菌等を形質転換して培養し、これらのプラスミドを増殖・精製し、得られたプラスミドをSfiI消化して、低融点アガロース中で電気泳動してバンドを切り出すことによって、ある特定の末端を有するDNA断片を調製する。もしくは、鋳型DNA上の塩基配列に各突出末端を構成する制限酵素を付加したプライマーを用いたPCR法によりDNA断片を増幅し、得られたDNA断片を該制限酵素によって消化し、適当な方法によって精製することによりDNA断片を調製する(このように、互いにその順序を保ったまま繰り返し連結し得る構造を有しており、以下に述べる連結集積体を構成するDNA断片を、「単位DNA」と称することがある)。続いて、上記のようにして得られたDNA断片を一定の順序と向きを保って連結集積するように、DNAリガーゼなどを用いて常法によりタンデムリーピート状に連結(ライゲーション)を行う。連結したDNA断片は、自然形質転換能および組み換え能を有する細菌(例えば枯草菌コンピテント細胞)に取り込ませて、プラスミドとしたり該細菌ゲノムに挿入したりして、所望の順序と向きを保った遺伝子集積体を有する形質転換体を得て、該形質転換体から所望のDNAを精製することができる。
(2)遺伝子集積体の細菌ゲノムへの挿入
上記(1)のように取得した遺伝子集積体を含むDNAは、該遺伝子群を発現させるために細菌のゲノムに挿入される。
遺伝子集積体を枯草菌に導入してプラスミドとする場合は、上記連結したDNA断片をコンピテントとした枯草菌と共培養を行う。枯草菌をコンピテント細胞とする方法は、Anagnostopoulos,C. and Spizizen, J.J. Bacteriol. 81、741-746.(1961)に記載の方法を用いることができる。
能動的にDNAを取り込む能力を持った枯草菌は、その取り込み過程において、まず、基質となる2本鎖DNAがコンピテント細胞上で切断される。この切断点より、2本鎖のうちの片側のDNA鎖が分解され、残りのもう一方のDNA鎖が1本鎖DNAとして枯草菌の菌体内に取り込まれ、取り込まれた1本鎖DNAは、全く別個に取り込まれた相補鎖の1本鎖DNAと会合し、環状の2本鎖DNAとして修復される。ここで連結されたDNA断片には所望の物質が生産される遺伝子群の他に、枯草菌内で複製・増殖可能なプラスミドを構成するDNA領域が含まれることが必要である。
一方、遺伝子集積体を枯草菌ゲノムに挿入する場合は、枯草菌中で有効な複製開始点と物質生産に必要な遺伝子群を含み、さらに異なる2つの組み換えのための共通配列をその遺伝子群の末端に有する相同組み換え用DNA断片、もしくは、遺伝子集積体とさらに異なる2つの組み換えのための共通配列を含むプラスミドDNAを、組み換えのための共通配列がゲノムDNA中に存在する枯草菌コンピテント細胞と共培養して相同組み換えを誘導するか(間接法)、または、自己複製しない相同組み換え用DNA断片を、組み換えのための共通配列がゲノムDNA中に存在する枯草菌コンピテント細胞に形質転換することで相同組み換えを誘導し(直接法)、遺伝子集積体を枯草菌ゲノムに挿入する。間接法、直接法のどちらを用いても、遺伝子集積体は枯草菌ゲノムDNAと相同組み換えを行うための異なる2つの共通配列を含む必要がある。この共通配列は、枯草菌ゲノムDNAへの遺伝子集積体の挿入に必要不可欠であり、遺伝子集積体を枯草菌ゲノムDNAに挿入するための足場(土台)となるべきものである。この共通配列は、枯草菌ゲノムDNAに存在する配列を用いることもできるし、枯草菌ゲノム以外の任意の配列を用いることもできる。枯草菌ゲノム以外の配列を用いる場合は、共通配列を枯草菌ゲノムにあらかじめ挿入しておく必要がある。枯草菌ゲノムDNA中に存在する上記共通配列の間が遺伝子集積体の挿入部位となる。相同組み換えとは、1対の二本鎖DNAの相同的な塩基配列を持つ部分に起こる組み換えを言うが、相同組換えを生じさせることができる限り、遺伝子集積体中の共通配列と、枯草菌ゲノムDNA中の共通配列とが完全に同一である必要はない。また、共通配列の長さも特に限定されないが、遺伝子集積体から1組の共通配列を除いた長さの5〜15%程度が最適である。
枯草菌と相同組み換え用プラスミドあるいは相同組み換え用DNA断片の共培養による相同組み換えの詳細は、小倉光雄、バイオサイエンスとインダストリー、Vol.57,No.8,532-535(1999)、板谷光泰、日本農芸化学会誌、Vol.67,No.4,703-706(1993)、並びに板谷光泰、日本農芸化学会誌、Vol.68,No.11,1545-1550(1994)などに記載されている方法を用いることができる。
上記のように、連結集積した遺伝子群を含むプラスミドまたは細菌のゲノムの一部を、既知の方法によりDNAの精製を行い、所望の連結集積した遺伝子群を有するDNAを取得する。取得したDNAが遺伝子集積体を有していることは、サザンブロッティング法、PCR法等によって確認することができる。遺伝子断片の数が多かったり、遺伝子断片の長さが比較的長かったりする場合(例えば10kb以上)には、特開2004-129654に記載の方法は、連結集積した遺伝子群の作成方法として特に有効である。ただし、上記した方法に限らず、連結集積した遺伝子群を作成できるのであれば、一般的な遺伝子組み換え法など、どのような方法を用いてもよい。
遺伝子集積体を挿入し、最終的に遺伝子集積体を高発現させるために用いる宿主細菌としては、所望の物質が高効率に生産される細菌であればどのような細菌を用いてもよいが、Bacillus属細菌、放線菌、大腸菌、高度好熱菌が好ましく、枯草菌が最も好ましい。
最終的に遺伝子集積体を高発現させるために用いる宿主細菌が枯草菌の場合は、上記(1)で得られる、枯草菌ゲノムに遺伝子群が挿入された枯草菌をそのまま用いればよい。
遺伝子集積体を挿入する細菌が枯草菌以外(例えば放線菌、大腸菌)の場合は、上記したような方法で作成した遺伝子集積体を、既知の方法によりゲノムの所望の位置に挿入すればよい。
すなわち、細菌と遺伝子集積体は異なる種であってもよく、また、遺伝子集積体はどのような由来であってもかまわない。所望の物質の生産を細菌を利用して効率良く行うことができれば、宿主細菌と遺伝子集積体の組み合わせ、および遺伝子集積体についてのDNA断片(由来する生物種または人工的なDNA等)の組み合わせを自由に行うことができる。
細菌ゲノムの複製開始は、例えば枯草菌や大腸菌のような環状ゲノムの複製の場合には、決まった場所から両方向に向かって起こる。特定のDNA領域(レプリケータ)に特定のタンパク質(イニシエータ)が付くと複製が開始されるメカニズムであるが、複製開始点はこのレプリケータが存在する領域(以下、これを「oriC」と称することがある)、また、複製終結点は環状ゲノムの複製が完了する領域(以下、これを「terC」と称することがある)であるとそれぞれ定義することができる。
また、例えば直鎖状ゲノムを有する放線菌の複製開始点は染色体のほぼ中央に位置し、複製は両方向に向かって起こる。複製終結点は染色体の両末端である。この両末端をつなぎ直鎖状ゲノムを環状ゲノムと見なし、便宜的に円で表示することができる。このように、環状ゲノムでも直鎖状ゲノムでも、複製は複製開始点から両方向に向かっておこるが、複製開始点から見て複製が起こる両方向のことを、「複製開始点を基点とした複製方向」と称し、また複製開始点から複製が起こる領域を「複製開始点を基点として複製方向に〜(長さ)の領域」と称することがある。長さは、例えばゲノム全長を1とした相対値や、塩基長で表すことができる。なお、円で表示する場合、DDBJ/EMBL/GenBankの公共DNAデータベースに登録されている塩基配列情報のうち、塩基番号が増加する方向を「時計回り」、逆に減少する方向を「反時計回り」と称することがある。
例えば、枯草菌の全ゲノムの長さは4200Kbであるが、環状全ゲノムを円で表した場合、複製開始点を0°の位置とすると、複製終結点は173°の位置に表すことができる。以下、特に断らない限り、複製開始点を0°の位置とし、そこを基点として遺伝子集積体を挿入するゲノムの位置を角度で表示する。
遺伝子集積体を挿入するゲノムの複製開始点近傍とは、枯草菌を宿主とする場合、好ましくは複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ枯草菌ゲノム全長の1/12長の領域内(全ゲノムを円で表した場合は複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ30°の領域内;遺伝子の長さで表した場合は複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ350kbの領域内)であり、より好ましくは複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ枯草菌ゲノム全長の1/24長の領域内(全ゲノムを円で表した場合は複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ15°の領域内;遺伝子の長さで表した場合は複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ175kbの領域内)であり、最も好ましくは複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ枯草菌ゲノム全長の1/36長の領域内(全ゲノムを円で表した場合は複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ10°の領域内;遺伝子の長さで表した場合は複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ117kbの領域内)である。
これは、後述する実施例で示すとおり、遺伝子集積体(例としてプリパスタチン合成に関わるdegQ、sfp、ppsを連結集積した遺伝子群)を枯草菌の複製開始点の極近傍(350°;複製開始点を基点として反時計回りに10°)、複製開始点の近傍(28°;複製開始点を基点として時計回りに28°)、複製開始点と複製終結点との中間点(以下、これを「中間点」と称することがある)(270°;複製開始点を基点として反時計回りに90°)、複製終結点の近傍(120°;複製開始点を基点として時計回りに120°)、複製終結点の極近傍(167°;複製開始点を基点として時計回りに167°)、の5箇所に挿入して、その遺伝子発現を検討した結果、検討を行った全ての集積パターンにおいて、複製開始点の近傍、好ましくは極近傍に挿入する方が、複製終結点の極近傍、近傍または中間点に挿入するより、遺伝子集積体の発現量が高いことが明らかとなったことから導き出すことができる。
また、単独の遺伝子(degQまたはpps)のみを複製開始点近傍に挿入した場合にもプリパスタチンの発現量は増加したが、遺伝子集積を行うことで相乗的にプリパスタチンの生産性が高まっており、このことから遺伝子を集積することが、物質生産を行う上で重要であることも示唆される。
また、大腸菌(4640kb)を宿主とする場合、好ましくは複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ全大腸菌ゲノムの1/12長の領域内(全ゲノムを円で表した場合は複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ30°の領域内;遺伝子の長さで表した場合は複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ387kbの領域内)であり、より好ましくは複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ全大腸菌ゲノムの1/24長の領域内(全ゲノムを円で表した場合は複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ15°の領域内;遺伝子の長さで表した場合は複製開始点を基点として複製方向に193kbの領域内)であり、最も好ましくは複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ全大腸菌ゲノムの1/36長の領域内(全ゲノムを円で表した場合は複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ10°の領域内;遺伝子の長さで表した場合は複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ129kbの領域内)である。
また、放線菌(8000kb)を宿主とする場合、好ましくは複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ全放線菌ゲノムの1/12長の領域内(全ゲノムを円で表した場合は複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ30°の領域内;遺伝子の長さで表した場合は複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ667kbの領域内)であり、より好ましくは複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ全放線菌ゲノムの1/24長の領域内(全ゲノムを円で表した場合は複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ15°の領域内;遺伝子の長さで表した場合は複製開始点を基点として複製方向に333kbの領域内)であり、最も好ましくは複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ全放線菌ゲノムの1/36長の領域内(全ゲノムを円で表した場合は複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ10°の領域内;遺伝子の長さで表した場合は複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ222kbの領域内)である。
連結集積された遺伝子集積体が「発現可能な状態」とは、遺伝子集積体の中に、挿入する細菌において遺伝子発現に必要なプロモーター、エンハンサー等の調節領域をあらかじめ含むか、または、遺伝子集積体を挿入する細菌のゲノム中の遺伝子発現調節領域を利用することにより、挿入された遺伝子集積体の発現が行われる状態を指す。
本発明の方法において、遺伝子集積体は、物質生産に必要な一連の遺伝子を含むDNAであるが、挿入DNAとしてイントロンを含むゲノムDNAを用いる場合で、宿主細菌として例えば枯草菌を使用する場合には、枯草菌内でイントロンを含むゲノムDNAを発現できない、即ち目的物質が生産されないことがある。このような場合は、スプライシングを誘起するタンパク質を該宿主細菌細胞に導入することにより、挿入DNAに含まれる遺伝子を発現させることができる。
(3)連結集積された遺伝子群を高発現する細菌
本発明には、連結集積された所望の物質の生産に必要な一連の遺伝子群を、該遺伝子群が発現可能な状態でゲノムの複製開始点近傍に挿入された細菌も含まれる。本発明で用いる細菌の種類は特に限定されず、グラム陽性でもグラム陰性でも任意の細菌を使用できるが、好ましくはBacillus属細菌、大腸菌、高度好熱菌又は放線菌を使用する。
Bacillus属細菌の種類は特に限定されず、例えば、B.subtilis(枯草菌)、B.megaterium(巨大菌)、B.anthracis(脾脱疽菌)、B.cereus、B.stearothermophilus(中度好熱菌)などが挙げられる。好ましくは、DNA取り込み能力と組換え能力に優れたB.subtilis(枯草菌)である。高度好熱菌とは高温下でのみ生育できる細菌の総称である。
(4)上記細菌を用いた所望の目的物質の製造方法
さらに、本発明には、上記した細菌を培養して目的物質を生成させ、この目的物質を採取することにより、目的物質を製造する方法も含まれる。製造された細菌細胞中で目的物質を生産させる方法としては、それ自体既知の方法を用いることができるが、例えば、宿主細菌が枯草菌の場合には、目的物質の生産に必要な遺伝子のプロモーターを誘導物質や温度等の環境因子により誘導出来るように増殖に合わせた物質生産を行う方法等が挙げられる。また、該細菌細胞中で生産される目的物質量の解析は、目的物質の種類や宿主細菌の種類に応じ適宜選択して行うことができる。具体的には、例えば、目的物質が抗生物質で、これを枯草菌により生産させた場合、分泌された生産量を高速クロマトグラフィーや質量分析計、生物アッセイ等の方法を用いて生産物の量を測定する方法、または、プロテアーゼ等の菌体外分泌酵素の場合、その酵素の基質の反応速度を基質物質の吸光度の変化等により、生産量を測定する方法等が用いられる。以上のような測定を行った結果から、遺伝子集積体が細菌ゲノムの複製開始点近傍に挿入された形質転換体のうち、遺伝子集積体を構成する個々のDNA断片の順序と方向の組み合わせで最も生産量の多い組み合わせ(形質転換体)を選択し、これを所望の物質の生産に用いることができる。
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、以下の実施例は本発明の一例を示すものに過ぎず、本発明の範囲は以下の実施例により何ら限定されるものではない。
枯草菌168株(Anagnostopoulos, C. and Spizizen, J., J. Bacteriol. 81, 741-746 (1961))は、当研究室で受け継がれているものを使用した。遺伝子集積に用いる枯草菌と大腸菌のシャトルプラスミドのpGETS109は、特開2004−129654号公報に記載のものを使用した。大腸菌のプラスミドのpBR322は、宝酒造社から購入したものを使用した。
アンピシリン、クロラムフェニコール、テトラサイクリン、スペクチノマイシン、ネオマイシンの抗生物質は、シグマ社から購入した。制限酵素SfiIは、NEB社から購入した。制限酵素NotIは、宝酒造から購入した。他の制限酵素とAlkaline Phosphatase(E.coli)、T4 Polynucleotide Kinase、T4 DNA ligaseは、東洋紡社から購入した。大腸菌を用いたプラスミド作製の際に行ったDNA断片の平滑化とライゲーションには、宝酒造社のDNA Blunting KitとDNA Ligation Kitをそれぞれ用いた。PCRによる遺伝子増幅には、宝酒造社のTaKaRa Ex Taq HSを用い、添付の説明書に従い行った。PCRの反応条件については、98℃、5分の後、以下の温度サイクルを30サイクル行った。98℃、20秒;60℃、30秒;72℃、増幅長さ1 kbあたり1分。PCR産物のクローニングには、Invitrogen社のTOPO XL PCR Cloning Kitを用いた。リゾチームは、生化学工業社製を用いた。LB培地の培地成分及び寒天は、ベクトン・ディッキンソン社製のものを用いた。IPTG(isopropyl s-D-thiogalactopyranoside)は、シグマ社のものを使用した。他のすべての生化学試薬は、シグマ社およびナカライテスク社製のものを使用した。
特記以外のプラスミドの構築は、大腸菌JA221株(CGSC#: 7091)を用いた。サザンハイブリダイゼーションは、Roche社のDIG DNA Labeling and Detection Kitを使用した。構築したプラスミドの抽出、検定、大量調製等の操作法は、標準プロトコール(Sambrook J, 他, Molecular Cloning: A Laboratory Manual. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (1989))に準じた。コンピテント大腸菌JA221及びコンピテント枯草菌の形質転換は、既報の通り行った(Itaya, M. Mol. Gen. Genet., 241, 287-297(1993))。
実施例1 抗カビ物質プリパスタチンの生産に必要な3つの遺伝子degQ、sfp、ppsの遺伝子集積体を枯草菌ゲノムの異なる箇所に導入した株の作成
(1)プリパスタチン産生のための遺伝子
枯草菌の生産するリポペプチド性抗生物質プリパスタチンの生産には現在までにdegQ(0.3 kb)、sfp(1 kb)、pps(38 kb)の3つの遺伝子が必要であることが明らかになっている(Tsuge, K., et al. Antimicrob. Agents Chemother. 43, 2183-2192.(1999))。本実施例で宿主として用いる枯草菌168株は、これが有する変異型degQ遺伝子(degQ0遺伝子)と変異型sfp遺伝子(sfp0遺伝子)が、野生型のdegQ遺伝子とsfp遺伝子と比較してどちらも1塩基の変異により機能不全型になっているため、プリパスタチンを生産しない(Tsuge, K., et al. Antimicrob. Agents Chemother. 43, 2183-2192.(1999))。本実施例においては、活性型の同遺伝子をゲノム中の様々な場所に集積して該宿主に高効率にプリパスタチンを産生させることを試みた。
(2)枯草菌168株ゲノムからのdegQ、sfp、pps遺伝子の除去
活性型のdegQ、sfp、pps遺伝子を含むの3つのDNA断片を枯草菌プラスミド中に集積するにあたり、宿主となる枯草菌にこれらの遺伝子が残存していると、ゲノムとプラスミド間の相同組換え等により、ゲノムとプラスミドの不安定性を引き起こす可能性があるため、本実施例においては、枯草菌8628株ゲノム中に存在するdegQ、sfp、pps遺伝子DNAの完全な欠損株であるBEST8666株を親株として用いた(特開2004−129654号公報、図1)。この株は、ΔdegQ::Pr-neo、Δsfp、Δppsとなっているが、これは、のちの集積プラスミドのゲノム組み込みの際に、組み込む株を選択するためのマーカーである大腸菌ラムダファージ由来のPrプロモーター制御下にあるネオマイシン耐性遺伝子(Pr-neo)をdegQ遺伝子の存在していた場所に持つ。
また、比較対照実験のために上記3つの遺伝子のうちpps遺伝子のみを欠損している菌株の作成を以下の様に行った。まず、BEST8666株のPr-neoの位置の変更について説明する。BEST8666株のPr-neoは、元々degQが存在していた場所(278°)にあるが、これをyvfC-yvePの位置(300°)に変更するため次の操作を行った。一旦Pr-neoをcIリプレッサー遺伝子とスペクチノマイシン耐性遺伝子(spc)に置き換えるために、特開2004−129654号公報に示したpBRΔdegQFのユニークなBglIIサイトにプラスミドpCISP310B(Itaya, M. et al., J. Biochem. 128, 869-875 (2000))由来のcI-spcユニットを導入した、プラスミドpBRΔdegQ::CISPを大腸菌を用いて構築した。このプラスミドをユニークなPvuIIサイトで切断したDNA断片でBEST8666株を形質転換して、BUSY9245株(ΔdegQ:: (cI spc)、Δsfp、Δpps)を得た。次に新たなにPr-neoをΔyvfC-yvePに導入するために、枯草菌ゲノム中のyvfC-yveP 付近のPstI断片を持つプラスミドpNEXT4(Itaya, M., and Tanaka, T. J. Mol. Biol., 220, 631-648. (1991)を制限酵素NotIで切断しyvfC-yveP間の約1kbのNotI断片を取り除いた後、プラスミドpBEST515C由来のPr-neo断片を組み込んだプラスミドpNEXT4-PN2を大腸菌により構築し、このプラスミドをBUSY9245株に導入して、BUSY9246株(ΔdegQ:: (cI spc)、ΔyvfC-yveP::Pr-neo 、Δsfp、Δpps)を構築した。この株のBUSY9246株のΔdegQ:: (cI spc)からcI-spcのユニットを欠損させるために、特開2004−129654号公報に示したpCRΔdegQをこの株に導入して、cI-spcユニットが欠損した株をネオマイシン耐性株として選択し、BUSY9247株(ΔyvfC-yveP::Pr-neo、ΔdegQ、Δsfp、Δpps)を構築した。この株は、結果として上述のBEST8666株(ΔdegQ::Pr-neo、Δsfp、Δpps)に比較してPr-neoの位置が移動している。このBUSY9247株のゲノムDNAを調製し、これにより野生株のBEST8628株(degQ+、sfp+、pps+)を形質転換し、ネオマイシン耐性で選択すると、ΔyvfC-yveP::Pr-neoの導入に伴って、BUSY9247株の様々な遺伝子欠損領域が導入された株が得られた。これらのうちdegQ、sfp、ppsの各遺伝子の内部領域をターゲットとしたコロニーPCRによりsfp遺伝子のみを欠損しているBUSY9256株(ΔyvfC-yveP::Pr-neo、pps+、degQ+、Δsfp)とpps遺伝子のみを欠損しているBUSY9261株(ΔyvfC-yveP::Pr-neo、Δpps、degQ+、sfp+)を選抜した。
(3)遺伝子集積体を受容する宿主細菌株の調製
BEST8666株ゲノム(複製開始点0°/360°、複製終結点173°)中の5箇所の異なる場所(350°(複製開始点の極近傍)、28°(複製開始点の近傍)、270°(中間点)、120°(複製終結点の近傍)、167°(複製終結点の極近傍))への遺伝子集積体の挿入は、相同配列間の組換えにより挿入するための足場配列(pBR322)と組換えを検出するためのマーカー遺伝子のユニットを利用して、以下の様に行った。
(i)複製終結点の極近傍である167°の位置へ遺伝子集積体が挿入された枯草菌を作成するために、枯草菌BEST8666株のΔpps遺伝子領域に(cI spc)のカセットが挿入されたpBR322をゲノム中に持つBEST8824株を使用した(特開2004−129654号公報、図1)。この株は、ΔdegQ::Pr-neo、Δsfp、Δpps::pBR322::(cI spc)となっている。
(ii)複製終結点の近傍である120°の位置に遺伝子集積体が挿入された枯草菌を作成するために、以下の操作を行った。proB遺伝子を含む約3.3 kbのEcoRI断片を大腸菌プラスミドpJOE810のEcoRIサイトにクローニングしたプラスミドpNEXT62(Itaya, M. and Tanaka, T. J. Mol. Biol. 220, 631-648. (1991))を、proB遺伝子コード領域内に存在するNotIサイトで切断して、pBSASE1001(Itaya, M. Mol. Gen. Genet. 241, 287-297. (1993))のNotI断片を連結して得られたpNEXT62Y(Itaya, M. Mol. Gen. Genet. 241, 287-297. (1993))を利用した。このプラスミドをNheIとNdeIで切断することで短い断片を取り除き、換わりにpCISP303#6をNheIとNdeIで切断して得られたcIリプレッサー遺伝子とスペクチノマイシン耐性遺伝子(spc)を持つ断片と連結して、pNEXT62Y::CISPを得た。このプラスミドをPinAIで切断することで直線状にして枯草菌BEST8666株に形質転換してスペクチノマイシン耐性株を選択することにより、proB遺伝子内のpBR322配列中に(cI spc)をクローニングした枯草菌BUSY9403株(ΔdegQ::Pr-neo、Δsfp、Δpps、proB::pBR322::(cI spc))を得た(図1)。
(iii)中間点である270°の位置に遺伝子集積体が挿入された枯草菌を作成するために、以下の操作を行った。ypqB遺伝子を含む約6 kbのEcoRV断片を大腸菌プラスミドpBR322のEcoRVサイトにクローニングしたプラスミドpNEXT55(Itaya, M. and Tanaka, T. J. Mol. Biol. 220, 631-648. (1991))を、ypqB遺伝子コード領域内に存在するNotIサイトで切断して平滑末端にした後、pBR322のEcoRIサイトにクロラムフェニコール耐性遺伝子(cat)をクローニングしたプラスミドpBR322CをPvuIIで切断したものと連結して、プラスミドpNEXT55CAを構築した。このプラスミドを枯草菌BEST8824株に形質転換して、BUSY9105株(ΔdegQ::Pr-neo、Δsfp、Δpps::pBR322::(cI spc)、ypqB::pBR322::cat)を得た。そして、この株にpBR322のEcoRIサイトにcIリプレッサー遺伝子とブラストサイジンS耐性遺伝子(bsr)をクローニングしたプラスミドpBRCIBS(Itaya, M. Biosci. Biotechnol. Biochem. 63, 602-604. (1999))を形質転換して、catの部分を、(cI bsr)に変換した枯草菌BUSY9108株(ΔdegQ::Pr-neo、Δsfp、Δpps::pBR322::(cI spc)、ypqB::pBR322::( c I bsr))を構築した。この株は、pps領域と、ypqB領域の都合2つの領域にcI遺伝子を持つことになる。この株からゲノムDNAを調製してBEST8666株に形質転換して、ブラストサイジンS耐性株を選択することで、ypqB遺伝子内のpBR322配列中に(cI bsr)をクローニングした枯草菌BUSY9124株(ΔdegQ::Pr-neo、Δsfp、Δpps、ypqB::pBR322::(cI bsr))を得た(図1)。
(iv)複製開始点の近傍である28°の位置に遺伝子集積体が挿入された枯草菌を作成するために、以下の操作を行った。amyE遺伝子のコード領域の上流と下流を含むプラスミドpIS284(Tsuge、K. et al., Antimicrob. Agents Chemother., 45, 3566-3573)を、amyE遺伝子コード領域内に存在するDraIIIとSalIサイトで切断して平滑末端にした後、pCISP303#6をPvuIIサイトで切断して得られた断片を連結して、pBR-amyE::CISP-Rを得た。このプラスミドを枯草菌BEST8666株に形質転換してスペクチノマイシン耐性株を選択することにより、amyE遺伝子内のpBR322配列中に(cI spc)をクローニングした枯草菌BUSY9398株(ΔdegQ::Pr-neo、Δsfp、Δpps、ΔamyE::pBR322::(cI spc))を得た(図1)。
(v)複製開始点の極近傍である350°の位置に遺伝子集積体が挿入された枯草菌を作成するために、以下の操作を行った。枯草菌イノシトール代謝オペロン(iolABCDEFGHIJ)に接する上流と下流の約1kbの配列を足場として持ち、間にpBR322のEcoRIサイトにテトラサイクリン耐性遺伝子(tet)をクローニングしたプラスミドpBR322Tcを挿入して作成したプラスミドpBEST10014を、枯草菌BEST8666株に形質転換することで、イノシトール代謝オペロンを欠損させ、替わりにpBR322::tetを持つ枯草菌BUSY8742株(ΔdegQ::Pr-neo、Δsfp、Δpps、ΔiolABCDEFGHIJ::pBR322::tet)を構築した。その後、この株に前述のpBRCIBSを形質転換することにより、tetを(cI bsr)に変換した枯草菌BEST9107株(ΔdegQ::Pr-neo、Δsfp、Δpps、ΔiolABCDEFGHIJ::pBR322:: (cI bsr))を構築した(図1)。
(4)degQ、sfp、pps遺伝子の単位DNAの作製
単位DNAとなる、ある特定の3塩基の3’末端突出をもつDNA断片は、前述の通り、すべてSfiIの消化により得られるように設計されている。ライブラリーの作成を容易にするために、最も長い遺伝子断片のppsについては3’末端突出の形状を1種類のみに限定し、この遺伝子の場所を0番目と便宜上定義した。このpps断片の下流に連結する遺伝子断片の場所を順次1番目、2番目、3番目と定義し、最後に3番目の下流の末端が0番目の上流の末端と連結できるように全ての場所の3’末端突出の形状を固定した。ライブラリー作成に必要な19種類の断片(pps0th、degQ'1stF、degQ'1stR、degQ'2ndF、degQ'2ndR、degQ'3rdF、degQ'3rdR、sfp'1stF、sfp'1stR、sfp'2ndF、sfp'2ndR、sfp'3rdF、sfp'3rdR、pGETS109V1stF、pGETS109V1stR、pGETS109V2ndF、pGETS109V 2ndR、pGETS109V 3rdF、pGETS109V3rdR)は以下に示す方法により本実施例で新規に作成した。
(i)pps0thの断片は、特開2004−129654号公報に記載されたppsの断片と同一のものであり、同公報に記載された方法に準じた方法により取得し、これらの断片は、精製後に一部を電気泳動することにより濃度を測定した後、2.5 fmol/μlとなるようにTEバッファーにより調製した。
(ii)degQとsfpの断片にSfiIサイトを導入するためのベクターで、pps0th下流の1番目と2番目の位置に連結するための3塩基ののりしろを付加するためのベクターである、pBR-1stとpBR-2ndは、特開2004−129654号公報に記載されたものを使用した。pps0th下流の3番目の場所の位置に連結するための3塩基ののりしろを付加するためのベクターは、本実施例で新たに調製した。特開2004−129654号公報に記載のプラスミドpBR322NotIに、配列番号1、2に示す塩基配列を有するオリゴヌクレオチドの3rd-Fと3rd-Rをアニールして、SfiIサイトを2つ持つアダプター3rdを作製し、これを上記pBR322NotIに組み込んだプラスミドpBR-3rdを構築した。このプラスミドには、特開2004−129654号公報に記載されたpBR-1st、pBR-2ndと同様に、2つのSfiIサイトの間(6 bp)にBglIIサイトが存在する。
(iii)degQ'3rdF、degQ'3rdRの取得は、特開2004−129654号公報に記載のdegQ'1stF、degQ'1stR、degQ'2ndF、degQ'2ndRの取得に準じた方法により以下のように行った。特開2004−129654号公報に記載のpCRdegQ'BamHIのBamHI消化物より得られたdegQ'を含む断片を本実施例にて作成したpBR-3rdのBglIIサイトにクローニングした。この際にそれぞれ両方向にクローニングされたクローンを選択することで、pBR-degQ'3rdFとpBR-degQ'3rdRを取得した。特開2004−129654号公報に記載の方法により上述のプラスミドをSfiIにより消化した後、アガロースゲル電気泳動によりベクターと分離し、断片degQ'3rdF、degQ'3rdRを得た。これらの断片は、精製後に一部を電気泳動することにより濃度を測定した後、2.5 fmol/μlとなるようにTEバッファーにより調製した。
(iv)sfp遺伝子のクローニングのために、特開2004−129654号公報に記載のpBR-sfp1stFをプライマーsfp2BamHIFとsfpR-BamHI(配列番号3、4)を用いてPCRにより1 kbのsfp遺伝子を含むDNA断片(以下sfp'とする)を増幅し、これをpCR-XL-TOPOベクター(Invitrogen社)にクローニングしてプラスミドpCRsfp'BamHIを得た。このプラスミドのBamHI消化物より得られたsfp'を含む断片をpBR-1st、pBR-2nd、pBR-3rdのBglIIサイトにクローニングした。この際に両方向にクローニングされたクローンを選択することで、pBR-1stからpBR-sfp'1stFとpBR-sfp'1stRを、pBR-2ndからpBR-sfp'2ndFとpBR-sfp'2ndRを、pBR-3rdからpBR-sfp'3rdFとpBR-sfp'3rdRをそれぞれ取得した。特開2004−129654号公報に記載の方法により上述のプラスミドをSfiIにより消化した後、アガロースゲル電気泳動によりベクターと分離し、断片sfp'1stF、sfp'1stR、sfp'2ndF、sfp'2ndR、sfp'3rdF、sfp'3rdRを得た。これらの断片は、精製後に一部を電気泳動することにより濃度を測定した後、2.5 fmol/μlとなるようにTEバッファーにより調製した。
(v)特開2004−129654号公報に記載のプラスミドpGETS109NotIのNotIサイトに、V-1st-FとV-1st-R(配列番号5、6)、V-2nd-FとV-2nd-R(配列番号7、8)、V-3rd-FとV-3rd-R(配列番号9、10)をアニールして作製したリンカーV-1st、V-2nd、V-3rdをそれぞれ2つの方向に挿入して、V-1stからは、プラスミドpGETS109V-1stFとpGETS109V-1stRを、V-2ndからは、プラスミドpGETS109V-2ndFとpGETS109V-2ndRを、V-3rdからは、プラスミドpGETS109V-3rdFとpGETS109V-3rdRを作製した。これらのプラスミドは、リンカーにより2箇所の SfiIサイトが導入されているが、このサイトをSfiIで切断して短い断片を電気泳動により取り除き、2.5 fmol/μlとなるようにTEバッファーにより調製した。表1に、使用したプライマーの塩基配列を示す。
(5)挿入DNAユニットの調製
特開2004−129654号公報の実施例2(5)に記載の方法により多重遺伝子集積における遺伝子断片の順番の違いや方向の違いを反映したライブラリーの構築を目的として、19種類の遺伝子断片(pps0th、sfp'1stF、sfp'1stR、sfp'2ndF、sfp'2ndR、sfp'3rdF、sfp'3rdR、degQ'1stF、degQ'1stR、degQ'2ndF、degQ'2ndR、degQ'3rdF、degQ'3rdR、pGETS109V1stF、pGETS109V1stR、pGETS109V2ndF、pGETS109V 2ndR、pGETS109V 3rdF、pGETS109V3rdR)を適宜組み合わせることで48種類の集積プラスミド(表2)を以下の手順により調製した。各遺伝子断片(2.5 fmol/μl)を0.5 μlずつと、2×Linear ligationバッファー(132 mM Tris-HCl(pH 7.6), 13.2 mM MgCl2, 20 mM Dithiothreithol, 0.2 mM ATP, 300 mM NaCl, 20 %(w/v) polyethylen glycol)2.5 μlを混合し、そこにT4 DNA Ligase (4 weiss unit/μl)を 0.5 μl添加して、37℃、30分間恒温することでライゲーションした。これらのライゲーション産物を、枯草菌BEST8824株のコンピテント細胞培養液50 μlにそれぞれ添加して37℃、30分間恒温した。その後薬剤耐性遺伝子を発現させるために、LB培地200 μlを添加してから37℃、1時間培養、10 μg/mlのテトラサイクリンを含むLB寒天培地に広げて、37℃で終夜培養した。表2は、枯草菌ゲノム167°の領域(Δpps)に導入した48集積パターンの遺伝子順序と配列を示す。
(6)構築した挿入DNAユニットの宿主ゲノムDNAへの挿入
プラスミド中の構築された遺伝子集積体の枯草菌BEST8824株ゲノムへの挿入は、特開2004−129654号公報に記載の方法により行った。それぞれのライゲーション産物から得られたテトラサイクリン耐性株コロニーから6株を任意に選択して、2本の10 μg/mlのテトラサイクリン入りの2 mlのLB培地に植菌し、一方にプラスミドのコピー数を増加させるための1 mMのIPTGを添加して、37℃で終夜培養した後、IPTGを入れて培養した培養液より少量スケールのプラスミド精製を行った(Tsuge, K., and Itaya, M. Nucleic Acids Res. 31, e133. (2003))。精製したプラスミドを制限酵素消化せずにそのまま電気泳動することにより、大きさを指標としてプラスミド中に正しく単位DNAを集積しているクローンをそれぞれ一株選択し、この株の培養液のうちIPTGを添加せずに培養したものを、LB培地により100倍あるいは10000倍希釈し、3 μg/mlのネオマイシンを含むプレートに100 μlを塗沫し、30℃で一晩培養した。ゲノム中に挿入されている組換えの足場配列(pBR322配列)と集積プラスミドのベクター部分に存在しているpBR322配列間で組換えを起こしたことにより2つのpBR322の配列間に挟まれているcIリプレッサー遺伝子が、遺伝子集積体と置換されることにより、ネオマイシン耐性となった株を得た(特開2004−129654号公報)。ネオマシン耐性株の出現頻度は、プラスミド保持株の104〜106株に1株の頻度であった。そのうちのそれぞれ25株を10 μg/mlのテトラサイクリンを含むプレートと、3 μg/mlのネオマイシンを含むプレートと、50 μg/mlのスペクチノマイシンを含むプレートにレプリカし、プラスミド中の遺伝子集積体が、pBR322の相同領域を利用してゲノムに導入されることで、cIリプレッサー遺伝子とスペクチノマイシン耐性遺伝子が消失し、かつ、プラスミドが残存しない場合に示す表現型である、ネオマイシン耐性、テトラサイクリン感受性、スペクチノマイシン感受性株を得た。これらの株を培養後、アガロースゲルブロック中でゲノムDNAを調製し、制限酵素I-PpoIで消化後パルスフィールドゲル電気泳動により分析した結果、元の宿主に遺伝子集積体が挿入されたことにより発生する、約44kbのバンドを特開2004−129654号公報に記載した方法により確認した。さらに、ゲノムDNAをテンプレートとしたPCRとサザンハイブリダイゼーションにより、3つの遺伝子のdegQ、sfp、ppsが指定した順番に連結していることを特開2004−129654号公報に記載した方法により確認した。これらの遺伝子の配列パターンとそのパターンを持つ株は、表2に示すように命名した。
実施例2 抗カビ物質プリパスタチンの生産に必要な3つの遺伝子degQ、sfp、ppsの遺伝子集積体を枯草菌ゲノムの異なる箇所に導入した株の遺伝子発現効率の比較
(1)遺伝子集積体ライブラリーの遺伝子発現レベルの比較
作成した48通りのライブラリー株と、野生株のBEST8628株と3遺伝子欠損株のBEST8666株をLB培地で37℃、一晩前培養した後、ACS培地(培地1l当たり、スクロース 100 g、クエン酸 11.7 g、硫酸ナトリウム 4 g、酵母エキス 5 g、リン酸水素二アンモニウム 4.2 g、塩化カリウム 0.76 g、塩化マグネシウム・6水和物 0.42 g、塩化亜鉛 0.0104 g、塩化第二鉄・6水和物 0.0245 g、塩化マンガン・4水和物 0.0181 gを溶解し、アンモニア水でpH 6.9に調整後、オートクレーブする)に植菌し、30℃で、5日間振とう培養後、培養液の酸性沈殿のメタノール抽出物を高速液体クロマトグラフィーにより各株のプリパスタチンの生産量を計測する実験を5回行った。その結果を図2に示す。すべての株よりプリパスタチンの産生が確認されたが、遺伝子集積体中の3遺伝子の順序や、ゲノム中での向きにより生産性が異なっており、特に、遺伝子配列パターン25番から32番までの株が平均的に高い生産性を示した。(図2)。
(2)ゲノム中の様々な場所に遺伝子集積体を持つ株の構築
集積パターンの遺伝子集積体の発現効率が、遺伝子集積体の存在するゲノム内の場所に影響するかを調べるために、特定の集積パターン3番と、3番と同じ集積順序で向きが逆転している27番について、実施例1(6)のライブラリーを構築した場所である枯草菌ゲノム中の167°の領域(pps)の他に、28°の領域(amyE)、120°の領域(proB)、270°の領域(ypqB)と、350°の領域(iolABCDEFGHIJ)に各集積パターンを持つ株を構築した(図3と4)。遺伝子(集積体)が350°の領域に導入された株をA株またはF株、28°の領域に導入された株をB株またはG株、270°の領域に導入された株をC株またはH株、120°の領域に導入された株をD株またはI株、350°の領域に導入された株をE株またはJ株、とそれぞれ称することがある。A〜E株は、pps遺伝子の転写向きがゲノム複製方向と同一、F〜J株は、pps遺伝子の転写向きがゲノム複製方法と反対になっている。3遺伝子集積プラスミドをBUSY9398株、BUSY9403株、BUSY9124株とBUSY9107株でそれぞれ作成する際は、実施例1(5)で示した方法で作成した。ゲノムに集積プラスミドを挿入する際には実施例1(6)で示した方法で行ったが、その際、BEST8824株、BUSY9398株、BUSY9403株を宿主としたゲノム組み込み株のスクリーニングでは、スペクチノマイシン感受性を調べているのに対し、BUSY9124株及びBUSY9107株のゲノム組み込み株のスクリーニングでは、ブラストサイジンS感受性を指標にスクリーニングを行った。得られた集積株についてdegQとsfpをプローブとしたサザンハイブリダイゼーションを行い、これらの遺伝子が正しい並びであることを確認して、表3に示すように命名した。表3は、枯草菌ゲノム中の28°の領域(amyE)、120°の領域(proB)、270°の領域(ypqB)と、350°の領域(iolABCDEFGHIJ)に遺伝子集積体をそれぞれ導入した株の構造を、また表4は前記領域に単独遺伝子をそれぞれ導入した株の構造を示す。
また、対照実験として単一の遺伝子のみのゲノム中での場所を移動した際の遺伝子発現効率の影響を調べるために、degQ遺伝子とpps遺伝子の単独移動株の構築を以下の様に行った。
degQ遺伝子のみをゲノム中の270°の領域(ypqB)と、350°の領域(iolABCDEFGHIJ)に移動した株は、特開2004−129654号公報に記載のBEST8635株(ΔdegQ::Pr-neo、sfp+、pps+)に前述のBUSY9124株及びBUSY9107株のゲノムDNAを形質転換してブラストサイジンS耐性株を選択することにより、BUSY9212株(ΔdegQ::Pr-neo、sfp+、pps+、ΔiolABCDEFGHIJ::pBR322:: (cI bs))とBUSY9213株(ΔdegQ::Pr-neo、sfp+、pps+、ypqB::pBR322:: (cI bs))を得た。これらの株にプラスミドpBR-degQ1stRを形質転換して、pBR322の配列を足場として組み換えを行うことで、(cI bsr)の替わりにdegQ遺伝子が挿入された株のBUSY9236株(ΔdegQ::Pr-neo、sfp+、pps+、ΔiolABCDEFGHIJ::pBR322:: degQ)とBUSY9238株(ΔdegQ::Pr-neo、sfp+、pps+、ypqB::pBR322:: degQ)(図5と表4)を得た。
sfp遺伝子のみをゲノム中の270°の領域(ypqB)と、350°の領域(iolABCDEFGHIJ)に移動した株は、以下のように作成した。前述のBUSY9256株((ΔyvfC-yveP::Pr-neo、pps+、degQ+、Δsfp))に前述のBUSY9107株のDNAを形質転換して、ブラストサイジンS耐性株を選択して、BUSY9361株(ΔiolABCDEFGHIJ::pBR322:: (cI bs)、ΔyvfC-yveP::Pr-neo、pps+、degQ+、Δsfp)を得た。また、同様にBUSY9256株に前述のBUSY9108株のDNAを形質転換して、ブラストサイジンS耐性株を選択して、BUSY9363株(ypqB::pBR322:: (cI bs)、ΔyvfC-yveP::Pr-neo、pps+、degQ+、Δsfp)を得た。このように作成したBUSY9361株とBUSY9363株にsfp遺伝子の全長をpGETS109のEcoRIサイトにクローニングしたプラスミドpGETS109sfp1stFを形質転換した。プラスミドを導入した後、このプラスミド中のsfp遺伝子の両末端に存在する2つのpBR322配列がゲノム中に存在するpBR322断片と相同組み換えを起こすことによりsfps遺伝子が組み込まれた株を特開2004−129654号公報に記載の方法によりネオマイシン耐性株として選択し、BUSY9363株から270°の領域(ypqB)にsfp遺伝子のみを導入したBUSY9387株(ΔyvfC-yveP::Pr-neo、Δsfp、ypqB::pBR322::sfp、degQ+、pps+)を、また、BUSY9361株から350°の領域(iolABCDEFGHIJ)にpps遺伝子のみを導入したBUSY9383株(ΔyvfC-yveP::Pr-neo、Δsfp、ΔiolABCDEFGHIJ::pBR322::sfp、degQ+、pps+)をそれぞれ構築した(図5と表4)。
pps遺伝子のみをゲノム中の270°の領域(ypqB)と、350°の領域(iolABCDEFGHIJ)に移動した株は、以下のように作成した。前述のBUSY9261株((ΔyvfC-yveP::Pr-neo、Δpps、degQ+、sfp+))に前述のBUSY9107株のDNAを形質転換して、ブラストサイジンS耐性株を選択して、BUSY9267株(ΔiolABCDEFGHIJ::pBR322:: (cI bs)、ΔyvfC-yveP::Pr-neo、Δpps、degQ+、sfp+)を得た。また、同様にBUSY9261株に前述のBUSY9124株のDNAを形質転換して、ブラストサイジンS耐性株を選択して、BUSY9268株(ypqB::pBR322:: (cI bs)、ΔyvfC-yveP::Pr-neo、Δpps、degQ+、sfp+)を得た。このように作成したBUSY9267株とBUSY9268株にpps遺伝子の全長をクローニングしたプラスミドpGETS113-ppsABCDE(Tomita, S. et al. Appl. Environ. Microbiol. 2508-2513 (2004))を形質転換した。プラスミドを導入した後、このプラスミド中のpps遺伝子の両末端に存在する2つのpBR322配列がゲノム中に存在するpBR322断片と相同組み換えを起こすことによりpps遺伝子が組み込まれた株を特開2004−129654号公報に記載の方法によりネオマイシン耐性株として選択し、BUSY9267株から270°の領域(ypqB)にpps遺伝子のみを導入したBUSY9280株(ΔyvfC-yveP::Pr-neo、Δpps、ypqB::pBR322::pps、degQ+、sfp+)を、また、BUSY9268株から350°の領域(iolABCDEFGHIJ)にpps遺伝子のみを導入したBUSY9281株(ΔyvfC-yveP::Pr-neo、Δpps、ΔiolABCDEFGHIJ::pBR322::pps、degQ+、sfp+)をそれぞれ構築した(図6と表4)。
(3)遺伝子集積体のゲノム中での場所の効果の評価
これらの作成した株の遺伝子発現効率を調べるために、遺伝子集積体中のpps遺伝子がゲノム複製方向と一致するように配列するグループ(図3、表3のA〜E株)と、その逆でpps遺伝子がゲノム複製方向と反対側に配列するグループ(図4、表3のF〜J株)の2つのグループに分けて実施例2(1)と同様の方法により、LB培地で37℃、一晩前培養した後、ACS培地に植菌し、30℃で、5日間振とう培養し、培養液の酸性沈殿のメタノール抽出物を高速液体クロマトグラフィーにより経時的に分析した。その結果、遺伝子集積ライブラリーにおいては、いずれも複製開始点から±30°の位置に集積した株(図3のA株と図4のG株)が最もプリパスタチン生産量が多くなり、複製終結点に近づくにつれ生産量が減少する傾向が得られた。高生産株は、同一の集積パターンが、167°に存在しているときと比較して約2倍程度の生産量の向上が認められた。degQのみを移動したものでは、複製開始点の近傍ほどプリパスタチン生産量の向上がわずかに認められた(図5)。sfpのみを移動したものでも、複製開始点の近傍ほどプリパスタチン生産量の向上がわずかに認められた。さらにpps遺伝子の単独移動株においても同様に、複製開始点の近傍ほど生産量の向上が認められ、野生株に比較して1.2倍近い生産量を示した(図6)。しかしながらこれらの単独移動株(図5のK、M株、図6のO株)は、F株の遺伝子集積体中の遺伝子と同一の向きと場所に単独移動したものであるが、いずれもF株に示されたものを越える生産量を示すものは無かった。これらの結果より、複製終結点近傍で作成された遺伝子集積パターンは、ゲノム中の場所を複製開始点近傍に近づけることで生産量の向上が見込まれ、その遺伝子集積体を構成する遺伝子のどれか単独で同様の場所に移動する場合よりも生産量の向上効果が見込まれることが明らかになった。
本発明によれば、細菌ゲノム中にバイオプロセスを構成する一連の遺伝子群を集積する際に、その集積場所を細菌ゲノム複製開始点近傍とすることで、そのバイオプロセスの活性を高めた状態の株を迅速に構築することが出来る。また、遺伝子集積体がプラスミド中に存在している場合に、プラスミドの菌体内での維持のために抗生物質等などの選択圧を掛けなければならないのに対して、遺伝子集積体をゲノム中に導入する場合は、特に選択圧を掛けなくとも安定に保持されるために、培養のコストを低減することが可能となる。
本発明は、本来その細菌が有する遺伝子のみならず、外来の遺伝子などを用いて構築した新規なバイオプロセスを構築する際にも適応可能だと考えられる。
本実施例で使用した、ゲノム中の様々な場所にプリパスタチン遺伝子集積体を組み込むための宿主菌の構造を示す。5つの連続する矢印は、pps遺伝子を構成する5つのオープンリーディングフレームを示す。 枯草菌ゲノム173°の場所に構築されたプリパスタチンの生産に必要な3つの遺伝子degQ、sfp、ppsの並びの異なる48種類からなるライブラリーのプリパスタチン生産量を示す。 遺伝子集積パターン3番と27番の遺伝子集積体をゲノム中に様々な場所に構築した株のうち、pps遺伝子がゲノムの複製方向と一致する方向の株(A、B、C、D、E株)のゲノム構造とそのプリパスタチン生産量を示す。 遺伝子集積パターン3番と27番の遺伝子集積体をゲノム中に様々な場所に構築した株のうち、pps遺伝子がゲノムの複製方向とは逆の方向の株(F、G、H、I、J株)のゲノム構造とそのプリパスタチン生産量を示す。 degQ遺伝子のみの単独でゲノム中の様々な場所に移動した株(K、L、M、N株)のゲノム構造とそのプリパスタチン生産量を示す。 pps遺伝子のみの単独でゲノム中の様々な場所に移動した株(O株とP株)のゲノム構造とそのプリパスタチン生産量を示す。

Claims (11)

  1. 目的物質の生産に必要な複数の遺伝子からなる遺伝子群を細菌において発現する方法であって、該遺伝子群を連結集積して遺伝子集積体を構築し、該遺伝子集積体を発現可能な状態で細菌ゲノムの複製開始点近傍に挿入することを特徴とする方法。
  2. 複数の遺伝子からなる遺伝子群の発現を必要とする目的物質を生産する細菌を製造する方法であって、該遺伝子群を連結集積して遺伝子集積体を構築し、該遺伝子集積体を発現可能な状態で細菌ゲノムの複製開始点近傍に挿入することを特徴とする方法。
  3. 細菌ゲノムの複製開始点近傍が、複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ細菌ゲノム全長の1/12長の領域内である、請求項1または2に記載の方法。
  4. 目的物質が抗生物質、薬剤耐性関連タンパク質、色素、界面活性物質、ビタミン、アミノ酸、アミノ酸高分子体、金属キレート物質または酵素である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 細菌がBacillus属細菌、大腸菌、高度好熱菌または放線菌である、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. Bacillus属細菌が枯草菌である、請求項5に記載の方法。
  7. 枯草菌ゲノムの複製開始点近傍が、複製開始点を基点として複製方向にそれぞれ350Kbの領域内である、請求項6に記載の方法。
  8. 請求項2〜7のいずれかに記載の方法により製造された細菌。
  9. Bacillus属細菌、大腸菌、高度好熱菌または放線菌である、請求項8に記載の細菌。
  10. Bacillus属細菌が枯草菌である、請求項9に記載の細菌。
  11. 請求項8〜10のいずれかに記載の細菌を培養して目的物質を製造する方法。
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