JP2009247944A - バラスト水処理方法及び装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】第1に殺菌剤使用量を可及的に少なくして処理費用を低減できるバラスト水処理方法及び装置を提供することを目的としている。
また、第2に使用機器に不具合を生じさせることなく殺菌剤の供給量を適正に制御できるバラスト水の処理装置を提供することを目的する。
【解決手段】飽和状態になるとして設定した一定量の殺菌剤を海水中に供給する一定量供給工程と、殺菌剤残留濃度が飽和状態になったかどうかを判定する飽和判定工程と、飽和になったと判定したときに、そのときの飽和殺菌剤濃度と目標とする殺菌剤濃度との濃度差を求め、該濃度差に基づいて前記一定量供給工程で注入している供給量から減量すべき殺菌剤の量を求め、該減量した殺菌剤供給量を供給する減量供給工程とを備えていることを特徴とするバラスト水処理方法。
【選択図】 図1

Description

本発明は、船舶のバラストタンクに積み込まれるバラスト水の処理方法及び装置に係り、特に、バラスト水に含まれる有害細菌類およびプランクトンを効率的に死滅させるための方法及び装置に関する。
一般に、空荷または積荷が少ない状態の船舶は、プロペラ没水深度の確保、空荷時における安全航行の確保等の必要性から、出港前にバラストタンクにバラスト水の注水を行う。逆に港内で積荷をする場合には、バラスト水の排出を行う。
ところで、環境の異なる荷積み港と荷下し港との間を往復する船舶によりバラスト水の注排水が行われると、バラスト水に含まれる微生物の差異により沿岸生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されている。
そこで、船舶のバラスト水管理に関する国際会議において2004年2月に船舶のバラスト水及び沈殿物の規制及び管理のための国際条約が採択され、バラスト水の処理が義務付けられることとなった。
バラスト水の処理基準として国際海事機構(IMO)が定める基準は、船舶から排出されるバラスト水に含まれる50μm以上の生物(主に動物性プランクトン)の数が1m3中に10個以下、10μm以上50μm未満の生物(主に植物性プランクトン)の数が1ml中に10個以下、コレラ菌は100ml中に1cfu未満、大腸菌は100ml中に250cfu未満、腸球菌は100ml中に100cfu未満となっている。
バラスト水の処理技術として、海水をろ過して水生生物を捕捉するろ過装置と、海水中の細菌類を死滅させる殺菌剤をろ過された海水中に供給する殺菌剤供給装置と、殺菌剤が供給されたろ過水の供給を受けて該ろ過水中にキャビテーションを発生させてろ過水中に前記殺菌剤を拡散させると共にろ過水中の水生生物に対して損傷を与えるか死滅させるベンチュリ管とを備えた装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
国際公開WO2006/132157号公報
特許文献1に記載の方法においては、殺菌剤として次亜塩素酸ナトリウムなどを用いて海水中の細菌類を死滅させることが開示されているが、処理費用を低減するためにできるだけ殺菌剤の使用量を抑え、必要最低限の使用量とすることが好ましい。
そのため、海水中の殺菌剤濃度を検出して適正な濃度となるようにすることで殺菌剤の過剰供給にならないように調整することが必要となる。
しかしながら、処理経路に配置したフィルタの目詰まり、バラストタンクへの供給流量の変動などに起因して、同量の殺菌剤を供給しても殺菌剤の残留濃度が異なることがある。
また、殺菌剤を供給してから海水中に拡散するまでの時間や、殺菌剤が殺菌効果を発現するまでの時間(次亜塩素酸ナトリウムでは遊離塩素が発生するまでの時間)などの時間遅れもある。
このため、一般的なフィードバック(PID)制御では適正な供給量制御が困難であるという問題がある。
また、殺菌剤供給量を調整するためには、殺菌剤を供給するためのポンプの出力調整や殺菌剤供給ラインに設けたバルブの開度調整を行う必要があるが、検出した海水中の殺菌剤濃度とあらかじめ定めた所定の殺菌剤濃度と比較して上回るか下回るかを判定して殺菌剤供給量を調整するようにすると、頻繁にポンプの出力調整やバルブの開度調整を行わねばならず、不具合が生じることがある。
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであり、第1に殺菌剤使用量を可及的に少なくして処理費用を低減できるバラスト水処理方法及び装置を提供することを目的としている。
また、第2に使用機器に不具合を生じさせることなく殺菌剤の供給量を適正に制御できるバラスト水の処理装置を提供することを目的する。
本発明の第1の形態に係るバラスト水処理方法は、飽和状態になるとして設定した一定量の殺菌剤を海水中に供給する一定量供給工程と、殺菌剤残留濃度が飽和状態になったかどうかを判定する飽和判定工程と、飽和になったと判定したときに、そのときの飽和殺菌剤濃度と目標とする殺菌剤濃度との濃度差を求め、該濃度差に基づいて前記一定量供給工程で供給している供給量から減量すべき殺菌剤の量を求め、該減量した殺菌剤供給量を供給する減量供給工程とを備えていることを特徴とするものである。
殺菌剤は、海水中の細菌類を死滅させるために供給されるものであり、供給される殺菌剤としては、次亜塩素酸ナトリウム、塩素、二酸化塩素、過酸化水素、オゾン、過酢酸、またはこれらの2種以上の混合物を使用することができる。
一定量供給工程で供給する一定量は、バラスト水中で分解される殺菌剤量を考慮して設定され、例えば残留塩素濃度目標値の2倍に相当する量とする。
飽和判定工程における殺菌剤濃度が飽和状態になったかどうかは、予め定めた方法によって判定すればよく、例えば残留塩素濃度を所定時間ごとにサンプリングし、その変化率が所定値以下になったときに飽和状態になったと判定する。
目標とする殺菌剤濃度は、例えば事前に行なった実験などによって予め設定した値である。
本発明の第2の形態に係るバラスト水処理方法は、上記第1の形態に係るものにおいて、飽和判定工程は、殺菌剤濃度の時間変化量が予め定めた変化量以下になったかどうかによって判定することを特徴とするものである。
本発明の第3の形態に係るバラスト水処理装置は、殺菌剤を海水中に供給する殺菌剤供給装置と、殺菌剤が供給された後の海水中の殺菌剤濃度を検出する殺菌剤濃度検出手段と、殺菌剤供給装置による殺菌剤の供給量を制御する殺菌剤供給量制御装置とを有し、
該殺菌剤供給量制御装置は、殺菌剤の供給当初において予め定めた一定量の殺菌剤供給量を殺菌剤供給装置に指示する一定量供給指示手段と、殺菌剤濃度検出手段の検出値に基づいて殺菌剤濃度が飽和値になっているか否かを判定する飽和判定手段と、飽和判定手段によって飽和になっていると判定されたときにそのときの殺菌剤濃度と予め定めた殺菌剤濃度目標値との濃度差を求め、該濃度差に基づいて減量すべき殺菌剤供給量を演算する減量殺菌剤供給量演算手段と、減量殺菌剤供給量演算手段の演算値に基づいて減量すべき殺菌剤供給量を前記殺菌剤供給装置に指示する減量供給指示手段とを備えていることを特徴とするものである。
殺菌剤供給装置は、処理対象の海水に殺菌剤を供給するものである。殺菌剤供給装置を構成する機器の一例を示すと、殺菌剤を貯留する殺菌剤貯槽、殺菌剤貯槽内の殺菌剤を海水に供給するための配管、該配管の先端側に設けられて殺菌剤を供給先に注入する注入口、殺菌剤貯槽内の殺菌剤を配管に供給するための供給ポンプ、殺菌剤の供給量を調整するバルブなどである。
本発明の第4の形態に係るバラスト水処理装置は、上記第3の形態に係るものにおいて、飽和判定手段は、殺菌剤濃度の時間変化量が予め定めた変化量以下になったかどうかによって判定することを特徴とするものである。
本発明の第5の形態に係るバラスト水処理装置は、上記第3の形態又は第4の形態に係るものにおいて、殺菌剤供給量制御装置は、減量供給指示された後において、供給すべき殺菌剤供給量をフィードバック制御するフィードバック制御手段を有し、該フィードバック制御手段は、海水中の殺菌剤濃度を計測し所定時間の殺菌剤濃度平均値を求め、該殺菌剤濃度平均値が予め定めた殺菌剤濃度の不感帯範囲を逸脱している場合に、前記殺菌剤供給装置が供給する殺菌剤供給量を、目標とする殺菌剤濃度に応じた殺菌剤供給量に(1)式で示す不感帯制御率Rを乗じた供給量とするように調整することを特徴とするものである。
=Rn-1+(x−xave)・a・w ・・・・ (1)
;不感帯制御率
n-1;1回前の不感帯制御率
;殺菌剤濃度目標値
ave;殺菌剤濃度平均値
a;所定の係数
w;不感帯制御幅
フィードバック制御手段の一例として、ベンチュリ管から排出された海水中の殺菌剤濃度を計測する計測装置と、各種のデータを記憶する記憶手段と、殺菌剤供給量を演算する演算手段と、演算手段の演算結果に基づいて機器を制御する制御手段とを備えている。
計測装置は、殺菌剤が供給された海水中の殺菌剤濃度を計測して演算手段に出力する。
記憶手段には、以下の(a)〜(c)に示すデータが記憶されている。
(a)海水中の細菌類を死滅させるに必要最低限の殺菌剤の濃度目標値として予め定められた殺菌剤濃度目標値(x
(b)殺菌剤濃度目標値に対して許容され得る殺菌剤濃度の上下限範囲として予め定められた不感帯範囲(x(1-cL)≦不感帯範囲≦x(1+cH))、
L;不感帯下限幅(例えば0より大きく、0.20未満)
H;不感帯上限幅(例えば0より大きく、0.50未満)
LとcHが等しい場合もある。
(c)殺菌剤供給量(y)と殺菌剤濃度(x)との関係として予め定められた関係式(y=ax+b、a;所定の係数(傾き)であり、0より大きく1未満の数、b;切片であり、0より大きく1未満の数)
上記の関係式は、供給した殺菌剤が拡散され、有効な殺菌成分として効力を発現するまでの過程に影響を与える条件を考慮して、殺菌剤供給量(y)と殺菌剤濃度(x)との関係を定めるものである。
なお、殺菌剤濃度目標値xに対する殺菌剤供給量yは、y=ax+bとなる。
演算手段は、計測装置の計測結果を入力して、所定時間における殺菌剤濃度平均値を求める。そして、その殺菌剤濃度平均値が殺菌剤濃度目標値に対して許容され得る殺菌剤濃度の上下限範囲(不感帯範囲)を逸脱しているかどうかを判断し、逸脱している場合に、供給すべき殺菌剤供給量を記憶手段に記憶されたデータに基づいて演算する。
制御手段は、演算手段の演算結果に基づいて、供給ポンプの回転数等の出力および/または供給量調整バルブの開度の調整制御を行う。
制御の手順は以下の通りである。
<フィードバック制御の手順の一例>
減量供給指示された後、所定時間(例えば5分)経過後において、計測装置が海水中の殺菌剤濃度を計測し、計測結果を演算手段に出力する。
演算手段は、計測結果を入力して、所定時間の殺菌剤濃度平均値xaveを求める。そして、この殺菌剤濃度平均値xaveが予め定めた殺菌剤濃度の不感帯範囲を逸脱しているかどうかを判断し、逸脱している場合に、殺菌剤供給量yを、目標とする殺菌剤濃度に応じた殺菌剤供給量yに不感帯制御率Rを乗じた殺菌剤供給量y(y=y・R)を求める。
求められた殺菌剤供給量yになるように殺菌剤供給量を調整することで、殺菌剤濃度平均値xaveが殺菌剤濃度目標値に対して許容され得る殺菌剤濃度の上下限範囲を超えている場合に、殺菌剤濃度平均値xaveが上下限範囲に入るように調整される。
なお、不感帯制御率Rは(1)式で示される。
=Rn-1+(x−xave)・a・w ・・・・ (1)
n-1:1回前の不感帯制御率
a:所定の係数(0より大きく1未満)
w:不感帯制御幅(0より大きく1未満)
殺菌剤供給量yが求められると、制御手段が求められた殺菌剤供給量yを入力して、求められた殺菌剤供給量とするように、供給ポンプの回転数等の出力および/または供給量調整バルブの開度の調整制御を行う。
本発明の第5の形態によれば、適切な時間の殺菌剤濃度平均値に基づき殺菌剤供給量を調整するため、殺菌剤の残留濃度の変動があったり、殺菌剤を供給してから海水中に拡散する時間や殺菌剤が殺菌効果を発現するまでの時間などの時間遅れがあったりしても、精度よく殺菌剤供給量を制御することができる。
また、殺菌剤濃度目標値に対して許容され得る殺菌剤濃度の上下限範囲を不感帯範囲としてあらかじめ定めておき、不感帯範囲を逸脱している場合に、殺菌剤供給量を調整する操作を行うようにするので、供給用ポンプの回転数等の出力調整やバルブの開度調整を頻繁に行う必要がなく、各機器に不具合が生じにくい。
本発明の第6の形態に係るバラスト水処理装置は、上記第5の形態に係るものにおいて、殺菌剤供給量制御装置は、処理される海水流量を計測し、所定時間の流量平均値を求め、殺菌剤供給量を前記流量平均値に応じて調整することを特徴とするものである。
海水流量が変動すると、殺菌剤供給量を補正する必要がある。しかしながら、殺菌剤供給量を殺菌剤の残留濃度のみに基づいて制御しようとすると、殺菌剤を供給してから海水中に拡散する時間や殺菌剤が殺菌効果を発現するまでの時間などの時間遅れがあり、適切な制御ができない場合がある。
そこで、海水流量の変動を考慮した制御を行うことによって、より適切な殺菌剤供給量の制御ができる。
具体的には、殺菌剤供給量yを下式に基づいて調整する。
y=y・R・(Qave/Q
ave;流量平均値
;基準流量
本発明の第6の形態においては、海水流量の変動に応じて殺菌剤供給量を補正するため、殺菌剤供給量をより精度よく制御することができる。
なお、流量平均値とは予め定めた所定時間における平均流量である。また、基準流量とは、目標とする殺菌剤濃度に対応する殺菌剤供給量yを求めるときの海水の流量である。
本発明の第7の形態に係るバラスト水処理装置は、上記第5の形態又は第6の形態に係るものにおいて、殺菌剤が供給された海水に殺菌剤分解剤を供給する殺菌剤分解剤供給装置と、海水中に残留する殺菌剤濃度を計測し、計測された殺菌剤濃度に基づき、前記殺菌剤分解剤供給装置の殺菌剤分解剤供給量を調整する殺菌剤分解剤供給量制御装置と、を備えたことを特徴とするものである。
このような殺菌剤分解剤供給装置を備えることにより、海水中に残留する殺菌剤を分解し、バラスト水が排出される海域への影響をなくすことができる。また、殺菌剤分解剤供給量制御装置を備えることにより、海水中に残留する殺菌剤濃度に応じて適正に殺菌剤分解剤供給量を調整できる。
殺菌剤分解剤供給量制御装置を構成する機器の一例を示すと、バラストタンクから排出される海水中の殺菌剤濃度を計測する計測装置と、各種のデータを記憶する記憶手段と、殺菌剤分解剤供給量を演算する演算手段と、演算手段の演算結果に基づいて機器を制御する制御手段と、を備えている。
記憶手段には、バラストタンクから排出される海水中の殺菌剤を分解するのに必要な殺菌剤分解剤の供給量(z)と、バラストタンクから排出される海水中の殺菌剤濃度(x)との関係(z=cx+d、c;所定の係数(傾き)、d;切片)が記憶されている。
以上のように構成された殺菌剤分解剤供給量制御装置においては、計測装置がバラストタンクから排出された海水中の殺菌剤濃度を計測する。そして、演算手段が計測装置の計測値を入力して所定時間の殺菌剤濃度平均値xaveを求める。そして、演算手段は、記憶手段に記憶されている関係式に基づいて、該殺菌剤濃度平均値xaveに応じた殺菌剤分解剤供給量(z)を演算する。制御手段は、演算手段が演算した殺菌剤分解剤供給量(z)に基づいて、殺菌剤分解剤供給装置の殺菌剤分解剤供給ポンプやバルブ開度を調整制御する。
なお、次亜塩素酸ナトリウム、塩素等の塩素殺菌剤に対して供給される殺菌剤分解剤としては、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム(亜硫酸水素ナトリウム)、チオ硫酸ナトリウム、を用いることができ、過酸化水素に対して供給される殺菌剤分解剤としては、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム(亜硫酸水素ナトリウム)、チオ硫酸ナトリウム及びカタラーゼ等の酵素を使用することができる。
本発明の第8の形態に係るバラスト水処理装置は、上記第7の形態に係るものにおいて、前記殺菌剤分解剤供給量制御装置は、処理される海水流量を計測し所定時間の流量平均値を求め該流量平均値に基づき、殺菌剤分解剤供給量を調整することを特徴とするものである。
処理される海水流量が変動すると、殺菌剤分解剤供給量を補正する必要がある。そこで、本発明の第8の形態では、殺菌剤分解剤供給量z´を下式に基づいて調整する。
z´=z・(Qave/Q
ave:流量平均値
:基準流量
本発明の第8の形態においては、海水流量の変動に応じて殺菌剤分解剤供給量を補正するため、殺菌剤分解剤供給量をより精度よく制御することができる。
なお、流量平均値とは予め定めた所定時間における平均流量である。また、基準流量とは、基準となる殺菌剤濃度に対応する殺菌剤分解剤供給量zを求めるときの海水の流量である。
本発明の第9の形態に係るバラスト水処理装置は、上記第3〜第8の形態のいずれかのものにおいて、殺菌剤が供給された海水の供給を受けて該海水中にキャビテーションを発生させて海水中に前記殺菌剤を拡散させると共に海水中の水生生物に対して損傷を与えるか死滅させるベンチュリ管を備え、殺菌剤濃度検出手段は前記ベンチュリ管の出口側の海水中の殺菌剤濃度を検出するように構成されていることを特徴とするものである。
ベンチュリ管は、殺菌剤が供給された海水にキャビテーションを発生させて、植物性プランクトン等比較的小型の水生生物に対して損傷を与えるか死滅させる。そして、さらにキャビテーションによって海水中に殺菌剤を急速に拡散させて殺菌剤による細菌類の殺菌作用を促進させる。
このように、ベンチュリ管によるキャビテーションの拡散作用により殺菌剤の海水中への混合を促進するため、殺菌剤を供給するだけの場合に比べて殺菌剤の供給量を低減できる。このため、殺菌剤による環境への影響を低減でき、また殺菌剤を無害化するための殺菌剤分解剤の供給を不要にするかまたは低減できる。
なお、ベンチュリ管を設けた場合には、殺菌剤供給装置は、殺菌剤をベンチュリ管の上流側および/またはベンチュリ管ののど部に供給するのが好ましい。殺菌剤をベンチュリ管の上流側に供給する場合には、キャビテーションが発生するベンチュリ管ののど部に達するまでに殺菌剤を管内である程度拡散させ、次いでキャビテーションにより殺菌剤の拡散、混合を進めて、さらに殺菌剤の細菌類への浸透を促進できるので、殺菌剤の殺滅効果を促進できる。
なお、殺菌剤をベンチュリ管の上流側に供給するためには、ベンチュリ管よりも上流側の直管路に殺菌剤の注入口を設けておけばよい。
また、殺菌剤をベンチュリ管ののど部に供給する場合には、ベンチュリ管のエジェクタ作用により自吸されるので供給ポンプが不要となる。
本発明の第10の形態に係るバラスト水処理装置は、上記第3〜第9の形態のいずれかのものにおいて、殺菌剤供給装置の上流側に、海水をろ過して水生生物を捕捉するろ過装置を備えたことを特徴とするものである。
ろ過装置によって海水中の動物性プランクトン等比較的大型の水生生物を捕捉して除去するため、植物性プランクトン等比較的小型の水生生物や細菌類を殺滅するのに必要な殺菌剤を供給すればよく、殺菌剤の供給量を低減でき、環境への影響を低減でき、また殺菌剤を無害化するための殺菌剤分解剤の供給を不要にするかまたは低減できる。
本発明においては、飽和状態になるとして設定した一定量の殺菌剤を海水中に供給し、飽和状態になったときにその時の飽和濃度と目標とする殺菌剤濃度との濃度差を求め、該濃度差に基づいて前記一定量供給している供給量から減量すべき殺菌剤の量を求め、該減量した供給量を注入するようにしたので、目標とする殺菌剤残留濃度になるまでに要する時間が短縮され、それ故に供給する殺菌剤の量を少なくできる。
また、本発明の第5〜第10の形態においては、減量供給指示された後において、供給すべき殺菌剤供給量をフィードバック制御するフィードバック制御手段を有し、該フィードバック制御手段においては、適切な時間の殺菌剤濃度平均値に基づき殺菌剤供給量を調整するため、殺菌剤の残留濃度の変動があったり、殺菌剤を供給してから海水中に拡散する時間や殺菌剤が殺菌効果を発現するまでの時間などの時間遅れがあったりしても、精度よく殺菌剤供給量を制御することができる。
また、殺菌剤濃度目標値に対して許容され得る殺菌剤濃度の上下限範囲を不感帯範囲としてあらかじめ定めておき、不感帯範囲を逸脱している場合に、殺菌剤供給量を調整する操作を行うようにするので、頻繁に供給用ポンプの回転数等の出力調整やバルブの開度調整を行う必要がなく、供給用ポンプ等の機器類に不具合が生じにくい。
[実施の形態1]
以下、図面を用いて、本発明に係るバラスト水処理装置について、最良の形態の一例を具体的に説明する。
図1は、本発明の第一の実施形態に係るバラスト水の処理装置を示すブロック図である。
本実施の形態のバラスト水処理装置は、海水取入ライン1と、粗ろ過装置2と、ポンプ3と、ろ過装置4と、殺菌剤供給装置5と、ベンチュリ管6と、殺菌剤分解剤供給装置7と、殺菌処理水送水ライン8と、バラストタンク9と、殺菌剤分解処理ライン11と、殺菌剤分解処理水排水ライン12と、を備えている。
バラスト水の無害化処理は、バラスト水をバラストタンクへの積込時、排水時のいずれか、あるいは両方のどのタイミングで処理を行うかは、取水する海域に生息する微生物量や船舶の運航条件によって定めることができる。
以下の説明では、バラスト水の積込み時に海水中の生物殺滅処理を行ない、バラスト水の排出時にバラストタンク9に貯留されたバラスト水を送水しながら、バラスト水に殺菌剤分解剤を供給して殺菌剤を分解処理して海中に排出する場合について説明する。
まず、この場合に使用する各構成について詳細に説明する。
海水取入ライン1は、海水を船内に取り入れる。粗ろ過装置2は、海水取入ライン1から取り入れられた海水中の粗大物を除去する。ポンプ3は、海水を取り込み、あるいは後述のバラストタンク9のバラスト水を後述の殺菌剤分解剤供給装置7を介して海中に排出する。
ろ過装置4は、粗ろ過装置2によって粗大物が除去された海水中に存在するプランクトン類を除去する。殺菌剤供給装置5は、ろ過装置4でろ過された海水に殺菌剤を供給して、細菌類やプランクトンを死滅させる。ベンチュリ管6は、殺菌剤が添加された海水(ろ過水)を導入し、その海水中にキャビテーションを発生させ、海水中の水生生物に損傷を与えあるいはそれらを死滅させるとともに、殺菌剤供給装置5で供給された殺菌剤を海水中に拡散させる。
殺菌処理水送水ライン8は、ベンチュリ管6から排出された生物殺滅処理後の海水を後述のバラストタンク9に送る。バラストタンク9は、殺菌処理水送水ライン8から送られる生物殺滅処理後の海水をバラスト水として貯留する。殺菌剤分解処理ライン11は、バラストタンク9内のバラスト水を、ポンプ3により殺菌剤分解剤供給装置7に送る。
殺菌剤分解剤供給装置7は、殺菌剤が残留しているバラスト水に殺菌剤分解剤を供給する。殺菌剤分解処理水排水ライン12は、殺菌剤分解剤を供給され殺菌剤分解処理が終ったバラスト水を海に排出する。
以下、各装置をさらに詳細に説明する。
1.粗ろ過装置
粗ろ過装置2は、船側部に設けられたシーチェスト(海水吸入口)から取水され、ポンプ3によって海水取水ライン1を通して取水される海水中に含まれる大小様々な夾雑物、水生生物のうち10mm程度以上の粗大物を除去するためのものである。
粗ろ過装置としては10mm程度の孔を設けた筒型ストレーナ(こし器)、水流中の粗大物を比重差により分離するハイドロサイクロン、回転スクリーンにより粗大物を捕捉し掻揚げ回収する装置等を用いることができる。
2.ろ過装置
ろ過装置4は粗ろ過装置2によって粗大物が除去された海水中に存在するプランクトン類を除去するものであり、目開き10〜200μmのものを用いる。
目開きを10〜200μmにしたのは動物性プランクトン、植物性プランクトンの捕捉率を一定のレベルに保ちつつ、逆流洗浄頻度を少なくして寄港地でのバラスト水処理時間を短縮するためである。逆に言えば、目開きが200μmより大きいと動物性プランクトン、植物性プランクトンの捕捉率が著しく低くなるし、目開きが10μmより小さいと逆流洗浄頻度が多くなり寄港地でのバラスト水処理時間が長くなるので好ましくない。特に目開き20〜35μm程度のものを用いるのが、捕捉率と逆流洗浄頻度とを最適に設定できるので、好ましい。
また、ろ過装置4は、ろ過面積1mあたり1日200m以上のろ過速度が得られることが望ましい。ただし、ろ過モジュールの集積によって、より小型化が可能な場合には特に限定しない。
ろ過装置4の具体例としては、ノッチワイヤフィルタまたはウェッジワイヤフィルタを用いることが好ましい。
ノッチワイヤフィルタとは、ノッチ(突起)を設けたワイヤを枠体に巻きつけてノッチによりワイヤ同士の間隔を保持してろ過通路寸法を10〜200μmにした筒型のエレメントをケーシング内に保持し、送水と逆洗浄のためのバルブと配管を設けたものである。このノッチワイヤフィルタの具体例としては、神奈川機器工業製ノッチワイヤフィルタがある。
このノッチワイヤフィルタをろ過エレメントとして複数備え、逆洗手段を備えたものが特開2001−170416に開示されている。ろ過エレメント集合基板や、それぞれのろ過エレメントに小型超音波振動子を取り付け、逆洗時に超音波振動を付加することにより、逆洗浄効果を増大させ、逆洗浄の間隔を延ばしてろ過効率を高めることができる。
ウェッジワイヤフィルタとは、断面が三角形のワイヤを枠体に巻きつけてワイヤ同士の間隔を調整してろ過通路寸法を10〜200μmにした筒型のエレメントをケーシング内に保持し、送水と逆洗浄のためのバルブと配管を設けたものである。このウェッジワイヤフィルタの具体一例としては、東洋スクリーン工業製ウェッジワイヤフィルタがある。
また、ろ過装置4の他の好ましい具体例として積層ディスク型ろ過器がある。積層ディスク型ろ過器とは、両面に複数の斜状溝を形成したドーナツ型のディスクを軸方向に圧締して積層して環状にしたものであり、隣接するディスクの溝によって形成される間隙に通水して、水生生物をろ過するものである。斜状溝の寸法を適宜設定することにより目開きを10〜200μmに設定してろ過する。
なお、積層ディスク型ろ過器においては、逆洗時にはディスクの圧締を解除して、間隙を大きくしてろ過残渣を除去する。
この積層ディスク型ろ過器の具体例としては、Arkal Filtration Systems製のSpin Klin Filter Systemsがる。
なお、ろ過装置4としては、上記の2種類のろ過装置の他、例えば密閉型砂ろ過器、ろ布ろ過器、金属繊維ろ過器など他の種々のろ過装置を用いることができる。
3.殺菌剤供給装置
殺菌剤供給装置5はろ過装置4によってろ過されベンチュリ管6に供給される海水に細菌類を死滅させる殺菌剤を供給するものである。
殺菌剤供給装置は、図2に示すように、殺菌剤を貯留する殺菌剤貯槽21、殺菌剤貯槽21内の殺菌剤をベンチュリ管側に供給するための配管23、該配管23の先端側に設けられて殺菌剤を供給先に注入する注入口25、殺菌剤貯槽内の殺菌剤をベンチュリ管側に供給するための供給ポンプ27、殺菌剤の供給量を調整するバルブ29などを備えている。
供給する殺菌剤としては、塩素、二酸化塩素、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素、オゾン、過酢酸またはこれらの2種以上の混合物が使用できるが、これ以外の殺菌剤を使用することも可能である。
なお、殺菌剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いる場合には、海水中の有効塩素量の濃度を1〜100mg/lとするように供給することが好ましい。
その理由は、有効塩素量の濃度が1mg/lより小さいと次亜塩素酸が水中の還元性物質、有機物と反応して残留しないし、100mg/lより大きいと腐食の問題や次亜塩素酸ナトリウムの貯留槽が大きくなり高コストとなる等の問題があり、不具合が生じるからである。
殺菌剤はベンチュリ管6の上流側および/またはベンチュリ管6ののど部に供給される。殺菌剤をベンチュリ管6の上流側に供給する場合には、殺菌剤をキャビテーションが発生するベンチュリ管のど部に達するまでに管内である程度拡散させておき、次いでキャビテーションにより殺菌剤の拡散、混合を進めて、さらに殺菌剤の細菌類への浸透を促進して殺菌剤の殺滅効果を促進できる。
なお、殺菌剤をベンチュリ管6の上流側に供給するためには、ベンチュリ管6よりも上流側の直管路に殺菌剤の注入口を設けておけばよい。
また、殺菌剤をベンチュリ管6ののど部に供給する場合には、ベンチュリ管6のエジェクタ作用により自吸されるので供給ポンプが不要となる。
殺菌剤供給装置5は、図2に示す殺菌剤供給量制御装置101によって制御され、適正な量の殺菌剤が所定の箇所に供給される。
4.殺菌剤供給量制御装置
殺菌剤供給量制御装置101は、ベンチュリ管6から排出された海水中の殺菌剤濃度を計測する殺菌剤濃度計33と、ベンチュリ管6から排出された海水の流量を計測する流量計35と、各種のデータを記憶する記憶手段103と、殺菌剤の供給当初において予め定めた一定量の殺菌剤供給量を殺菌剤供給装置に指示する一定量供給指示手段105と、殺菌剤濃度検出手段の検出値に基づいて殺菌剤濃度が飽和値になっているか否かを判定する飽和判定手段107と、飽和判定手段107によって飽和になっていると判定されたときにそのときの殺菌剤濃度と予め定めた殺菌剤濃度目標値との濃度差を求め、該濃度差に基づいて減量すべき殺菌剤供給量を演算する減量殺菌剤供給量演算手段109と、減量殺菌剤供給量演算手段109の演算値に基づいて減量すべき殺菌剤供給量を殺菌剤供給装置5に指示する減量供給指示手段111と、減量供給指示された後において、供給すべき殺菌剤供給量をフィードバック制御するフィードバック制御手段113と、を備えている。
殺菌剤濃度計33は、ベンチュリ管6から排出された海水中の殺菌剤濃度を計測して飽和判定手段107、減量殺菌剤供給量演算手段109に出力する。流量計35は、ベンチュリ管6から排出された海水の流量を計測して減量殺菌剤供給量演算手段109に出力する。
記憶手段103には、海水中の細菌類を死滅させるに必要最低限の殺菌剤の濃度目標値として予め定められた殺菌剤濃度目標値(x)が記憶されている。
また、記憶手段103には殺菌剤の供給当初において供給すべき殺菌剤の供給量が記憶されている。
一定量供給指示手段105は、記憶手段103に記憶されている殺菌剤供給当初において供給すべき殺菌剤供給量を読み出して殺菌剤供給装置5に供給指示をする。
飽和判定手段107は、殺菌剤濃度検出手段の検出値に基づいて殺菌剤濃度が飽和値になっているか否かを判定する。
飽和判定手段107による殺菌剤濃度が飽和値になっているか否かの判定は、殺菌剤濃度の時間変化量が予め定めた変化量以下になったかどうかによって判定する。より具体的には、殺菌剤濃度計33による殺菌剤濃度を所定時間ごとに入力し、現在の入力時の濃度と、ひとつ前の入力時の濃度の差が予め定めた値以下であるかどうかを判定し、この差が予め定めた値以下であることが3回連続したときに飽和状態であると判定する。
減量殺菌剤供給量演算手段109は、飽和判定手段107によって飽和になっていると判定されたときにそのときの殺菌剤濃度と予め定めた殺菌剤濃度目標値との濃度差を求め、該濃度差に基づいて減量すべき殺菌剤供給量を演算する。
例えば、殺菌剤として次亜塩素酸ナトリウムを注入している場合について具体例を示すと以下の通りである。
y:次亜塩素酸ナトリウム一定注入量[L/min]
dy:飽和値より計算した減量すべき次亜塩素酸ナトリウム注入量
dC:飽和殺菌剤濃度と予め定めた殺菌剤濃度目標値との差
Qr:定格流量[m3/h]
とすれば、
dy=(dC×Qr)/(0.12×1.1×60×103)
減量供給指示手段111は、減量殺菌剤供給量演算手段109の演算値に基づいて減量すべき殺菌剤供給量を殺菌剤供給装置5に指示する。
フィードバック制御手段113は、減量供給指示された後において、供給すべき殺菌剤供給量をフィードバック制御する。フィードバック制御は例えば一般的なフィードバック(PID)制御であってもよいし、実施の形態2で示す不感帯制御であってもよい。もっとも、不感帯制御によれば、頻繁に供給用ポンプの回転数等の出力調整やバルブの開度調整を行う必要がなく、供給用ポンプ等の機器類に不具合が生じにくいという効果が得られる。
なお、各手段はコンピュータに備えられたCPUが所定のコンピュータプログラムを実行することにより実現されるものである。
5.ベンチュリ管
ベンチュリ管6は、ろ過装置4を通過した生物に対してベンチュリ管により発生せるキャビテーションにより損傷を与えるか殺滅すると共に殺菌剤供給装置5から供給された殺菌剤を海水中に拡散させるものである。
ベンチュリ管6は、管路断面積が徐々に小さくなる絞り部、最小断面積部であるのど部、徐々に管路断面積が広がる広がり部(ディフューザ部)からなる。のど部での流速の急上昇に伴う静圧の急激な低下によりキャビテーション気泡が発生し、広がり部での流速の低下に伴う急激な圧力上昇により成長したキャビテーション気泡が急激に崩壊する。海水中の水生生物はキャビテーション気泡が崩壊することによる衝撃圧、せん断力、高温、酸化力の強いOHラジカルの作用などにより、損傷を受けるか破壊されて死滅する。
このベンチュリ管6のキャビテーションによれば、特に、比較的固い殻を有する原虫類、動物性プランクトンの外殻を破壊し、死滅させることができる。
また、ベンチュリ管6によってキャビテーションを発生させて、植物性プランクトン等比較的小型の水生生物に対して損傷を与えるか死滅させると共に、キャビテーションによって海水中に殺菌剤を急速に拡散させて殺菌剤による細菌類の殺菌作用を促進させる。このようにキャビテーションの拡散作用により殺菌剤の海水中への混合が促進されるため、殺菌剤を注入するだけの場合に比べて殺菌剤の供給量を低減でき、環境への影響を低減でき、また殺菌剤を無害化するための殺菌剤分解剤の供給を不要にするかまたは低減できる。
なお、ベンチュリ管6に海水を供給する際には、ベンチュリ管6ののど部における海水の流速を10〜40m/secとするように海水を送水するのが好ましい。
この理由は、海水を取水してバラストタンクに通水する配管の途中にバラスト水処理装置を設置した場合、配管内の海水の流速がベンチュリ管入り口では通常2〜3m/sであるが、ベンチュリ管のど部の流速が10m/secより小さいと、のど部での流速の上昇比率が十分でなくこれに伴う静圧の急激な低下が十分でないため、大気圧下においてもキャビテーションが発生しない。他方、ベンチュリ管のど部の流速が40m/sより大きいとキャビテーション現象が過剰に発生しベンチュリ管通過に伴う圧力損失が過大となり送水のために消費されるエネルギーが過大となるため、ポンプ動力が過大となり高コストとなるからである。
6.殺菌剤分解剤供給装置
殺菌剤分解剤供給装置7は、殺菌剤を添加された海水に殺菌剤分解剤を供給して海水中に残存する殺菌剤を分解することで、無害化するものである。
この実施形態では、殺菌剤分解剤供給装置7は殺菌剤分解処理ライン11に設けられ、バラスト水の排出時にバラストタンク9に貯留された殺菌剤が残留しているバラスト水に、殺菌剤分解剤を供給して殺菌剤を分解処理して海中に排出するようにしている。
殺菌剤分解剤供給装置7は、図3に示すように、殺菌剤分解剤を貯留する殺菌剤分解剤貯槽51、殺菌剤分解剤貯槽51内の殺菌剤分解剤を殺菌剤分解処理ライン11に供給するための配管53、該配管53の先端側に設けられ、また殺菌剤分解処理ライン11のポンプ3の上流側に設けられて殺菌剤分解剤を殺菌剤が残留しているバラスト水に注入する注入口55、殺菌剤分解剤貯槽51内の殺菌剤分解剤を殺菌剤分解処理ライン11に供給するための供給ポンプ57、殺菌剤分解剤の供給量を調整するバルブ59などを備えている。
次亜塩素酸ナトリウム、塩素等の塩素殺菌剤に対して供給される殺菌剤分解剤としては、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム(亜硫酸水素ナトリウム)、チオ硫酸ナトリウムを用いることができる。
また、過酸化水素に対して供給される殺菌剤分解剤としては、亜硫酸ナトリウム、重亜硫酸ナトリウム(亜硫酸水素ナトリウム)、チオ硫酸ナトリウム及びカタラーゼ等の酵素を使用することができる。但し、これらのみには限定されない。カタラーゼ等の酵素は分解反応の触媒として働き、反応時間が長期間のものである。
殺菌剤分解剤供給装置7は、図3に示す殺菌剤分解剤供給量制御装置61によって制御され、適正な量の殺菌剤分解剤が所定の箇所に供給される。
7.殺菌剤分解剤供給量制御装置
殺菌剤分解剤供給量制御装置61は、バラストタンク9から排出された海水中の殺菌剤残留濃度を計測する殺菌剤濃度計63と、バラストタンク9から排出される海水の流量を計測する流量計65と、殺菌剤分解剤が供給され殺菌剤が分解された海水中の殺菌剤残留濃度を計測する殺菌剤濃度計66と、各種のデータを記憶する記憶手段67と、殺菌剤分解剤供給量を演算する演算手段69と、演算手段69の演算結果に基づいて機器を制御する制御手段71と、を備えている。
殺菌剤濃度計63は、バラストタンク9から排出された海水中の殺菌剤濃度を計測して演算手段69に出力する。流量計65は、バラストタンク9から海へ排出される海水の流量を計測して演算手段69に出力する。殺菌剤濃度計66は、殺菌剤分解剤が供給され殺菌剤が分解された海水中の殺菌剤残留濃度を計測して演算手段69に出力する。
殺菌剤濃度計63として、例えば塩素殺菌剤に由来する残留塩素を計測する場合に、高濃度残留塩素計(例えば計測範囲が0〜30mg/l)と低濃度残留塩素計(例えば計測範囲が0〜3mg/l)を用いて、残留塩素濃度のスプリット検出を行うことにより、低濃度の残留塩素の検出精度を向上させることができる。
殺菌剤が分解された海水中の殺菌剤残留濃度を計測する殺菌剤濃度計66としては、低濃度の殺菌剤濃度を検出できる低濃度殺菌剤濃度計が好ましく、残留塩素を計測する場合には、遊離残留塩素濃度に対応した還元電流を計測する機構の低濃度残留塩素計を用いることが好ましい。このような低濃度の残留塩素の検出精度が高く、また残留塩素が存在しないことを検出できる低濃度残留塩素計を用いることにより、確実に残留塩素がなくなるように塩素分解剤供給量を制御することができ、また、残留塩素が分解され残留塩素がなくなっていることを確認できる。
記憶手段67には、殺菌剤分解剤供給量(z)と殺菌剤残留濃度(x)との関係として予め定められた関係式(z=cx+d、c;所定の係数(傾き)、d;切片)が記憶されている。
上記の関係式は、供給された殺菌剤分解剤が拡散され、有効な殺菌剤分解成分として効力を発現するまでの過程に影響を与える条件を考慮して、殺菌剤分解剤供給量(z)と殺菌剤残留濃度(x)との関係を定めるものである。
演算手段69は、殺菌剤濃度計63の計測結果を入力して、所定時間における殺菌剤残留濃度平均値を求める。また、流量計65の計測結果を入力して、所定時間における流量平均値を求める。
また、供給すべき殺菌剤分解剤供給量を、殺菌剤残留濃度平均値および記憶手段67に記憶されたデータに基づいて演算する。具体的な殺菌剤分解剤供給量の演算方法は後述する。
制御手段71は、演算手段69の演算結果に基づいて、供給ポンプ57の回転数等の出力および/または供給量調整用のバルブ59の開度の調整制御を行う。
また、演算手段69は、殺菌剤濃度計66の計測結果を入力して、殺菌剤残留濃度が許容値より大きい場合には、供給すべき殺菌剤分解剤供給量を調整するように制御手段71に出力したり、図示しない殺菌剤濃度指示計に殺菌剤濃度を出力するようにしてもよい。
以上のように構成された本実施の形態の動作を説明する。
図1に示されたバラスト水処理装置を用いて、バラスト水の積込み時に細菌類やプランクトンの死滅処理を行い、バラスト水の排出時に海水中に残留している殺菌剤を分解して無害化処理を行なうバラスト水の処理方法について説明する。
<バラスト水の積込み時の動作>
バラスト水の積込み時には、ポンプ3を稼動して海水取入ライン1から海水を船内に取り入れ、粗ろ過装置2により粗大物を除去し、ろ過装置4によりろ過装置4の目開きに応じた大きさのプランクトン等を除去する。
ろ過装置4でろ過された海水には殺菌剤供給装置5で殺菌剤が供給される。殺菌剤の供給量は殺菌剤供給量制御装置101によって制御される。
図4は殺菌剤供給量制御装置101による殺菌剤供給量制御の手順を示すフローチャートである。また、図5は本実施の形態における殺菌剤供給量制御を行った場合の、殺菌剤濃度の時間変化と殺菌剤の注入量の時間変化を示すグラフである。なお、図5のグラフにおいては、縦軸の左側が残留塩素濃度(ppm)であり、縦軸の右側が次亜塩素酸曹達供給量(L/min)であり、横軸が時間(min)である。
以下、図4に基づいて殺菌剤供給量制御の手順を説明すると共に、図5を参照しながら殺菌剤濃度及び殺菌剤の注入量の時間変化について説明する。なお、この例では殺菌剤として次亜塩素酸曹達を用いた例である。
殺菌剤供給装置5の運転を開始すると、まずタイマーによって時間T1の間だけ起動運転を開始する(S1)。起動運転は、殺菌剤貯槽21から供給される殺菌剤が殺菌剤濃度計33を設置した位置に至るまでの間行う運転である。
起動運転を開始して、所定の時間T1が経過したかどうかを判断し(S3)、時間T1が経過すると、一定量供給指示手段105は、記憶手段103に記憶されている殺菌剤供給当初において供給すべき殺菌剤供給量を読み出して殺菌剤供給装置5に供給指示をすることにより殺菌剤一定量供給運転を開始する(S5)。この例では、次亜塩素酸曹達の一定供給量は、0.495L/minとしている。
殺菌剤一定量供給運転を開始すると、カウンタIをI=0に設定し、殺菌剤濃度計33によって殺菌剤濃度を測定する(S9)。殺菌剤濃度は、図5に示すように急激に増加してゆき、やがて増加率が緩やかになる。
殺菌剤濃度測定を開始すると、飽和判定手段107によって殺菌剤濃度が飽和値になっているか否かの判定を行う。飽和値になっているか否かの判定は、以下のように行う。
前回(1回前)の殺菌剤濃度計測値と最新の計測値との差(dXc)が予め定めた値(dXs)より小さいかどうかを判断し(S11)、dXcがdXs以上の場合には濃度計測を繰り返す。
dXcがdXsよりも小さいと判断されたときには、カウンタIをI=I+1とし(S13)、カウンタI=3以上になるまで繰り返す(S15)。
この例では、図5に示すように、制御開始から10分後に飽和状態になったと判断された。
そして、カウンタI=3以上になると、減量殺菌剤供給量演算手段109は、そのときの殺菌剤濃度と予め定めた殺菌剤濃度目標値との濃度差を求め、該濃度差に基づいて減量すべき殺菌剤供給量を演算する(S17)。減量すべき殺菌剤供給量の演算方法は前述の通りであり、以下に図5に示した具体的な計算例を示す。
y:次亜塩素酸ナトリウム一定注入量[L/min]=0.495L/min
dC:飽和殺菌剤濃度と予め定めた殺菌剤濃度目標値との差=5ppm
Qr:定格流量[m3/h]=250m3/h
dy:飽和値より計算した減量すべき次亜塩素酸ナトリウム注入量
とすれば、
dy=(5[ppm]×250[m3/h])/(0.12×1.1×60×103)=0.158[L/min]
したがって、減量した後の注入量をytとすれば、
yt=0.495[L/min]―0.158[L/min]=0.337[L/min]
となる。
減量すべき殺菌剤供給量が演算されると、減量供給指示手段111は、減量殺菌剤供給量演算手段109の演算値に基づいて減量すべき殺菌剤供給量を殺菌剤供給装置5に指示することで、減量した殺菌剤量が供給される(S19)。
減量供給指示された後、所定時間(例えば5分)経過すると、フィードバック制御手段113が、殺菌剤濃度を目標値としてフィードバック制御する(S21)。図5に示す例では、フィードバック制御は実施の形態2に示す不感帯制御を行なっており、制御開始から15分後に殺菌剤の供給量の変更を行っている。
フィードバック制御を終了するかどうかを判断し(S23)、終了する場合には運転制御を終了する。
殺菌剤が添加された海水はベンチュリ管6に導入される。ベンチュリ管6において、キャビテーションを発生させ水生生物に損傷を与えると共に、殺菌剤の海水中への拡散が促進され殺菌効果が増大される。
ベンチュリ管6で処理された海水は、殺菌処理水送水ライン8を介してバラストタンク9に送られ貯留される。バラストタンク9内に貯留される海水には、殺菌剤供給装置5で供給された殺菌剤が、適切な濃度で残存することが好ましい。これにより、細菌類やプランクトンの再成長を抑制することができる。
以上のように、本実施の形態においては、ろ過装置4で10〜200μm以上の動物性プランクトン、植物性プランクトンを除去し、ベンチュリ管6でろ過装置4を通過した細菌類やプランクトンに損傷を与えるかあるいは死滅させ、さらに殺菌剤の適量供給により細菌類やプランクトンを死滅させるようにしたので、どのような水質であっても確実かつ安価にIMOが定めるバラスト水基準を満たすバラスト水の処理が実現できる。
そして、本実施の形態においては、飽和状態になるとして設定した一定量の殺菌剤を海水中に供給し、飽和状態になったときにその時の飽和殺菌剤濃度と目標とする殺菌剤濃度との濃度差を求め、該濃度差に基づいて前記一定量供給している供給量から減量すべき殺菌剤の量を求め、該減量した殺菌剤供給量を供給するようにしたので、目標とする残留塩素濃度になるまでに要する時間が短縮され、それ故に供給する殺菌剤の量を少なくできる。
<バラスト水の排出時の動作>
バラスト水の排出時には、ポンプ3を稼動してバラストタンク9からバラスト水を導入し、殺菌剤分解処理ライン11に設けられた殺菌剤分解剤供給装置7から殺菌剤分解剤を供給し、残留する殺菌剤を分解する。
殺菌剤分解剤の供給量は、殺菌剤分解剤供給量制御装置61によって制御され、適正な量の殺菌剤分解剤が所定の箇所に供給される。以下、殺菌剤分解剤の供給量の制御方法を説明する。
殺菌剤濃度計63は、バラストタンク9から排出された海水中の殺菌剤残留濃度を計測して演算手段69に出力する。
演算手段69は、殺菌剤濃度計63の計測結果を入力して、所定時間における殺菌剤残留濃度平均値xaveを求める。殺菌剤残留濃度平均値xaveが求まると、関係式(z=cx+d、c;所定の係数(傾き)、d;切片)に基づいて、殺菌剤分解剤供給量zを求める。
制御手段71は、演算手段69の演算結果に基づいて、供給ポンプ57の回転数等の出力および/または供給量調整用のバルブ59の開度の調整制御を行う。
適量の殺菌剤分解剤が供給されて殺菌剤の分解処理の終ったバラスト水は、殺菌剤分解処理水排水ライン12を介して、海中に排出される。
また、演算手段69は、殺菌剤濃度計66の計測結果を入力して、殺菌剤残留濃度が許容値より大きい場合には、供給すべき殺菌剤分解剤供給量を調整するように制御手段71に出力したり、殺菌剤濃度指示計に殺菌剤濃度を出力するようにしてもよい。殺菌剤濃度指示計による殺菌剤濃度の表示により、残留殺菌剤が分解されてなくなっていることを確認できる。
なお、殺菌剤を分解処理される海水流量を計測し所定時間の流量平均値を求め、殺菌剤分解剤供給量を前記流量平均値に応じて調整することにより、より適切な量の殺菌剤分解剤の供給が可能になる。この場合は、演算手段が、殺菌剤分解剤供給量z´を下式に基づいて演算するようにすればよい。
z´=z・(Qave/Q
ave;流量平均値
;基準流量
なお、上記の例は海水をバラストタンク9に積み込む際に生物殺滅処理を行う場合であるが、海水をバラストタンクに積み込む際には生物殺滅処理をしないで、バラストタンク9から排出する際に生物殺滅処理する場合もある。
この場合は、未処理の海水は、図示していない未処理海水送水ラインを介してバラストタンク9に貯留される。このバラスト水をバラストタンク9から排出する際に、バラストタンク9内の未処理のバラスト水を、図示していないバラスト水供給ラインを介してろ過装置4側に導入して、以降は上記と同様の処理を行う。
生物殺滅処理の終ったバラスト水は、殺菌剤分解剤供給装置7に導入され殺菌剤分解剤を供給され残留する殺菌剤が分解される。殺菌剤の分解処理の終ったバラスト水は、海中に排出される。
また、海水をバラストタンク9に積み込む際とバラストタンク9から排出する際との両方でバラスト水中の生物殺滅処理を行うようにしてもよい。その場合にはバラスト水の排出時の生物殺滅処理は軽度でよい。
なお、図1に示した例は、バラスト水の無害化処理をバラストタンクへの積込時および/または海中への排水時に行うことを想定しているが、積込時、排水時のいずれか、あるいは両方のどのタイミングで処理を行うかは、取水する海域に生息する微生物量や船舶の運航条件によって定めることができる。
[実施の形態2]
図6はフィードバック制御手段113として不感帯制御を行なう場合の構成を示したものである。なお、図2に示した構成と同じ構成は同符号を付し、殺菌剤供給制御装置31の構成のうちフィードバック制御手段113以外は図示を省略している。
本実施の形態に係るフィードバック制御手段113は、各種のデータを記憶する記憶手段37と、殺菌剤供給量を演算する演算手段39と、演算手段39の演算結果に基づいて機器を制御する制御手段41と、を備えている。
殺菌剤濃度計33は、ベンチュリ管6から排出された海水中の殺菌剤濃度を計測して演算手段39に出力する。流量計35は、ベンチュリ管6から排出された海水の流量を計測して演算手段39に出力する。
記憶手段37には、以下の(a)〜(c)のデータが記憶されている。
(a)海水中の細菌類を死滅させるに必要最低限の殺菌剤の濃度目標値として予め定められた殺菌剤濃度目標値(x
(b)殺菌剤濃度目標値に対して許容され得る殺菌剤濃度の上下限範囲として予め定められた不感帯範囲(x(1-cL)≦不感帯範囲≦x(1+cH))、
L;不感帯下限幅(例えば0より大きく、0.20未満)
H;不感帯上限幅(例えば0より大きく、0.50未満)
LとcHが等しい場合もある。
不感帯下限幅cLの範囲を不感帯上限幅cHの範囲より小さくしているのは、殺菌剤濃度の下限を高めにして、確実に生物殺滅処理が行なわれるようにするためである。
(c)殺菌剤供給量(y)と殺菌剤濃度(x)との関係として予め定められた関係式(y=ax+b、a;所定の係数(傾き)であり、0より大きく1未満の数;所定の係数、b;切片、0より大きく1未満の数)
上記の関係式は、供給された殺菌剤が拡散され、有効な殺菌成分として効力を発現するまでの過程に影響を与える条件を考慮して、殺菌剤供給量(y)と殺菌剤濃度(x)との関係を定めるものである。
なお、殺菌剤濃度目標値xに対する殺菌剤供給量yは、y=ax+bとなる。
演算手段39は、殺菌剤濃度計33の計測結果を入力して、所定時間における殺菌剤濃度平均値を求める。また、流量計35の計測結果を入力して、所定時間における流量平均値を求める。
また、殺菌剤濃度平均値が殺菌剤濃度目標値に対して許容され得る殺菌剤濃度の上下限範囲を逸脱しているかどうかを判断する。そして、逸脱している場合に、供給すべき殺菌剤供給量を記憶手段37に記憶されたデータに基づいて演算する。具体的な殺菌剤供給量の演算方法は後述する。
制御手段41は、演算手段39の演算結果に基づいて、供給ポンプ27の出力および/または供給量調整用のバルブ29の開度の調整制御を行う。
以上のように構成された本実施の形態の動作を説明する。
運転開始からフィードバック制御運転までの動作は実施の形態1で説明したのと同じであるので(図4参照)、以下においてはフィードバック制御について説明する。
図7は本実施の形態のフィードバック制御の手順を示すフローチャートである。以下、図7に基づいてフィードバック制御運転について説明する。
フィードバック運転を開始すると、タイマーを時間T2にセットし(S31)、殺菌剤濃度計によって殺菌剤濃度を測定する(S33)。時間T2が経過したかどうかを判断し(S35)、経過したと判断された場合には、時間T2の間の計測濃度の平均値xaveを求める(S37)。xaveは、計測濃度の総和を計測回数で除算することによって求める。
そして、この殺菌剤濃度平均値xaveが予め定めた殺菌剤濃度の不感帯範囲(x(1-cL)≦不感帯範囲≦x(1+cH),cL;不感帯下限幅(例えば0より大きく、0.20未満),cH;不感帯上限幅(例えば0より大きく、0.50未満))を逸脱しているかどうかを判断する(S39)。
そして、逸脱していると判断した場合に、殺菌剤供給量yを、目標とする殺菌剤濃度に応じた殺菌剤供給量yに不感帯制御率Rを乗じた殺菌剤供給量y(y=y・R)を求める(S41)。殺菌剤供給量yが求められると、制御手段41が求められた殺菌剤供給量yを入力して、求められた殺菌剤供給量とするように、供給ポンプ27の回転数等の出力および/または供給量調整バルブ29の開度の調整制御を行う。そして、フィードバック制御運転が終了するかどうかを判断し(S43)、終了しない場合は、S31の処理に戻り、タイマーをリセットして同様の処理を繰り返す。
なお、不感帯制御率Rは(1)式で示される。
=Rn-1+(x−xave)・a・w ・・・・ (1)
n-1:1回前の不感帯制御率(Rの初期値R=1)
a:所定の係数(0より大きく1未満)
w:不感帯制御幅(0より大きく1未満)
なお、処理される海水流量を計測し所定時間の流量平均値を求め、殺菌剤供給量を前記流量平均値に応じて調整することにより、より適切な量の殺菌剤の供給が可能になる。この場合は、演算手段39が、殺菌剤供給量yを下式に基づいて演算するようにすればよい。
y=y・R・(Qave/Q
ave;流量平均値
;基準流量
本実施の形態2のフィードバック制御運転によれば、適切な時間の殺菌剤濃度平均値に基づき殺菌剤供給量を調整するため、殺菌剤の残留濃度の変動があったり、殺菌剤を供給してから海水中に拡散する時間や殺菌剤が殺菌効果を発現するまでの時間などの時間遅れがあったりしても、精度よく殺菌剤供給量を制御することができる。
また、殺菌剤濃度目標値に対して許容され得る殺菌剤濃度の上下限範囲を不感帯範囲としてあらかじめ定めておき、不感帯範囲を逸脱している場合に、殺菌剤供給量を調整する操作を行うようにするので、頻繁に供給用ポンプの回転数等の出力調整やバルブの開度調整を行う必要がなく、供給用ポンプ等の機器類に不具合が生じにくい。
本発明の一実施の形態に係るバラスト水処理装置の説明図である。 本発明の一実施の形態に係るバラスト水処理装置における殺菌剤供給装置及び殺菌剤供給量制御装置の説明図である。 本発明の一実施の形態に係るバラスト水処理装置における殺菌剤分解剤供給装置の説明図である。 本発明の一実施の形態におけるバラスト水処理装置の動作を説明するフローチャートである。 本発明の一実施の形態におけるバラスト水処理装置によって殺菌剤の供給を行なったときの残留塩素濃度と、殺菌剤供給量の時間変化を示すグラフである。 本発明の他の実施の形態に係るバラスト水処理装置における殺菌剤供給量制御装置の説明図である。 本発明の他の実施の形態におけるバラスト水処理装置の動作を説明するフローチャートである。
符号の説明
1 海水取入ライン
2 粗ろ過装置
3 ポンプ
4 ろ過装置
5 殺菌剤供給装置
6 ベンチュリ管
7 殺菌剤分解剤供給装置
8 殺菌処理水送水ライン
9 バラストタンク
11 殺菌剤分解処理ライン
12 殺菌剤分解処理水排水ライン
33 殺菌剤濃度計
35 流量計
37、103 記憶手段
39 演算手段
41 制御手段
101 殺菌剤供給量制御装置
105 一定量供給指示手段
107 飽和判定手段
109 減量殺菌剤供給量演算手段
111 減量供給指示手段
113 フィードバック制御手段

Claims (10)

  1. 飽和状態になるとして設定した一定量の殺菌剤を海水中に供給する一定量供給工程と、殺菌剤残留濃度が飽和状態になったかどうかを判定する飽和判定工程と、飽和になったと判定したときに、そのときの飽和殺菌剤濃度と目標とする殺菌剤濃度との濃度差を求め、該濃度差に基づいて前記一定量供給工程で注入している供給量から減量すべき殺菌剤の量を求め、該減量した殺菌剤供給量を供給する減量供給工程とを備えていることを特徴とするバラスト水処理方法。
  2. 飽和判定工程は、殺菌剤濃度の時間変化量が予め定めた変化量以下になったかどうかによって判定することを特徴とする請求項1に記載のバラスト水処理方法。
  3. 殺菌剤を海水中に供給する殺菌剤供給装置と、殺菌剤が供給された後の海水中の殺菌剤濃度を検出する殺菌剤濃度検出手段と、殺菌剤供給装置による殺菌剤の供給量を制御する殺菌剤供給量制御装置とを有し、
    該殺菌剤供給量制御装置は、殺菌剤の供給当初において予め定めた一定量の殺菌剤供給量を殺菌剤供給装置に指示する一定量供給指示手段と、殺菌剤濃度検出手段の検出値に基づいて殺菌剤濃度が飽和値になっているか否かを判定する飽和判定手段と、飽和判定手段によって飽和になっていると判定されたときにそのときの殺菌剤濃度と予め定めた殺菌剤濃度目標値との濃度差を求め、該濃度差に基づいて減量すべき殺菌剤供給量を演算する減量殺菌剤供給量演算手段と、減量殺菌剤供給量演算手段の演算値に基づいて減量すべき殺菌剤供給量を前記殺菌剤供給装置に指示する減量供給指示手段とを備えていることを特徴とするバラスト水処理装置。
  4. 飽和判定手段は、殺菌剤濃度の時間変化量が予め定めた変化量以下になったかどうかによって判定することを特徴とする請求項3に記載のバラスト水処理装置。
  5. 殺菌剤供給量制御装置は、減量供給指示された後において、供給すべき殺菌剤供給量をフィードバック制御するフィードバック制御手段を有し、該フィードバック制御手段は、海水中の殺菌剤濃度を計測し所定時間の殺菌剤濃度平均値を求め、該殺菌剤濃度平均値が予め定めた殺菌剤濃度の不感帯範囲を逸脱している場合に、前記殺菌剤供給装置が供給する殺菌剤供給量を、目標とする殺菌剤濃度に応じた殺菌剤供給量に(1)式で示す不感帯制御率Rを乗じた供給量とするように調整することを特徴とする請求項3又は4に記載のバラスト水処理装置。
    =Rn-1+(x−xave)・a・w ・・・・ (1)
    ;不感帯制御率
    n-1;1回前の不感帯制御率
    ;殺菌剤濃度目標値
    ave;殺菌剤濃度平均値
    a;所定の係数
    w;不感帯制御幅
  6. 殺菌剤供給量制御装置は、処理される海水流量を計測し、所定時間の流量平均値を求め、殺菌剤供給量を前記流量平均値に応じて調整することを特徴とする請求項5に記載のバラスト水処理装置。
  7. 殺菌剤が供給された海水に殺菌剤分解剤を供給する殺菌剤分解剤供給装置と、海水中に残留する殺菌剤濃度を計測し、計測された殺菌剤濃度に基づき、前記殺菌剤分解剤供給装置の殺菌剤分解剤供給量を調整する殺菌剤分解剤供給量制御装置と、を備えたことを特徴とする請求項5又は6に記載のバラスト水処理装置。
  8. 前記殺菌剤分解剤供給量制御装置は、処理される海水流量を計測し所定時間の流量平均値を求め該流量平均値に基づき、殺菌剤分解剤供給量を調整することを特徴とする請求項7に記載のバラスト水処理装置。
  9. 殺菌剤が供給された海水の供給を受けて該海水中にキャビテーションを発生させて海水中に前記殺菌剤を拡散させると共に海水中の水生生物に対して損傷を与えるか死滅させるベンチュリ管を備え、殺菌剤濃度検出手段は前記ベンチュリ管の出口側の海水中の殺菌剤濃度を検出するように構成されていることを特徴とする請求項3〜8のいずれか一項に記載のバラスト水処理装置。
  10. 殺菌剤供給装置の上流側に、海水をろ過して水生生物を捕捉するろ過装置を備えたことを特徴とする請求項3〜9のいずれか一項に記載のバラスト水処理装置。
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