JP2009239119A - 半導体装置、及び、半導体装置の製造方法 - Google Patents

半導体装置、及び、半導体装置の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】高周波信号のスイッチング素子として使用しても、高調波成分が生じ難く、相互変調歪の発生を抑制可能な半導体装置及び同半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】
半絶縁性基板上に、化合物半導体からなりN型の不純物がドープされたドープ層を有する第1バッファ層を形成し、この第1バッファ層上に、ノンドープの化合物半導体からなる第2バッファ層を形成し、この第2バッファ層上に、トランジスタとして動作する能動層を形成して半導体装置を製造した。また、第1バッファ層を形成する際に、有機金属化合物にN型の不純物を添加した材料を用いてドープ層をエピタキシャル法により形成した。
【選択図】図1

Description

本発明は、半導体装置、及び、半導体装置の製造方法に関するものであり、特に、半絶縁性基板上に、化合物半導体からなるバッファ層を介して、トランジスタとして動作する能動層が形成された半導体装置、及び、同トランジスタの製造方法に関するものである。
従来より、高周波特性に優れ、高速動作が可能な半導体装置として、不純物をドープした化合物半導体層と不純物をドープしていない化合物半導体層とをヘテロ接合させた高電子移動度トランジスタ(以下、「HEMT(High Electron Mobility Transistor)」という。)が広く知られていた(たとえば、特許文献1参照。)。
図8は、従来のHEMT100を示す断面説明図である。なお、図8では、同一材質により構成されている層については、同一のハッチングを付している。
この図8に示すように、HEMT100は、半絶縁性基板であるGaAs(ガリウム・砒素)基板101上に、不純物をドープしていない(以下、「ノンドープ」という。)化合物半導体であるAlGaAs(アルミニウム・ガリウム・砒素)をエピタキシャル成長させて形成したバッファ層102を備え、このバッファ層102上に、トランジスタとして機能する能動層112を備えている。
この能動層112は、バッファ層102上に、N型の不純物が高濃度にドープされたAlGaAsからなる第1の電子供給層103と、ノンドープのAlGaAsからなるスペーサ層104と、ノンドープのInGaAs(インジウム・ガリウム・砒素)からなるチャネル層105と、ノンドープのAlGaAsからなるスペーサ層106と、N+AlGaAsからなる第2の電子供給層107と、第1及び第2の電子供給層103、107よりも低濃度にN型の不純物がドープされたAlGaAsからなるバリア層108とが順次エピタキシャル成長された構造をしている。
そして、バリア層108の所定領域には、P型の不純物を拡散させることによって形成した埋込ゲート領域109を備えており、この埋込ゲート領域109を挟んだバリア層108の表面の所定位置には、バリア層108とオーミック接続したソース電極110と、ドレイン電極111とを備えている。
かかる構成をしたHEMT100において、バッファ層102は、その上面に形成する能動層112の結晶構造を所定の構造とするために重要な層である。
このバッファ層102は、一般に、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を用いて、GaAs基板101上にノンドープのAlGaAsをエピタキシャル成長させることによって形成する。
具体的には、GaAs基板101を挿入したMOCVD装置内に、TMAl(トリメチルアルミニウム)、TMGa(トリメチルガリウム)等の有機金属化合物と、Asの水素化合物であるアルシンとを混合した材料ガスを流入させながら、GaAs基板101を加熱することにより、GaAs基板101上にAlGaAsをエピタキシャル成長させていた。
特開2006−054401号公報
ところが、上記従来のHEMT100は、本来、真性半導体(I型の半導体)層であるはずのバッファ層102がP型の半導体層となり、高周波信号のスイッチング素子として使用した場合に、高調波成分が生じて、相互変調歪が発生するおそれがあった。
すなわち、従来のHEMT100では、バッファ層102の材料の一つであるTMAlにおいてC(炭素)とAlとの結合力が強いため、バッファ層102を形成する工程で、CとAlとが完全に分解されず、バッファ層102中にCが残留することがあった。
このように、バッファ層102にCが残留すると、このCがP型の不純物として作用してバッファ層102中にホール(正孔)が形成され、その結果、HEMTの埋込ゲート領域109に所定の負の電圧を印加した際(HEMT100がピンチオフの状態のとき)に、ソース・ドレイン間の電圧変化に依存して容量が変化する寄生容量が発生する。
図9は、従来構造のHEMTがピンチオフの状態のときにおけるキャリア分布を示した説明図である。この図9では、ソース電極110−ドレイン電極間の電位差が0(V)であり、HEMT100の埋込ゲート領域109にピンチオフ電圧よりも十分に低いゲート電圧として、−6(V)のゲート電圧が印加されているときの、HEMT100内部のキャリア分布を示している。
従来のHEMT100では、上記したのようにバッファ層102内にホールが形成されるため、埋込ゲート領域109に負のゲート電圧を印加すると、図9に示すように、埋込ゲート領域109下方部分のホールHが、埋込ゲート領域109側へ引き寄せられる。
その結果、この埋込ゲート領域109側に引き寄せられた部分のホールHと、
ソース電極110近傍の電子eとの間に、埋込ゲート領域109―ソース電極110間の電圧変化に依存して容量が変化する寄生容量Cssubが形成されると共に、埋込ゲート領域109側に引き寄せられた部分のホールHと、ドレイン電極111近傍の電子eとの間に、埋込ゲート領域109―ドレイン電極110間の電圧変化に依存して容量が変化する寄生容量Cdsubが形成される。
このとき、ソース電極110側に引き寄せされた電子eと埋込ゲート領域109との間に、埋込ゲート領域109―ソース電極110間の電圧変化に依存して容量が変化する寄生容量Cgsが形成されると共に、ドレイン電極111側に引き寄せられた電子eと埋込ゲート領域109との間に、埋込ゲート領域109―ドレイン電極110間の電圧変化に依存して容量が変化する寄生容量Cgdが形成される。
さらに、このとき、ソース電極110―ドレイン電極111間には、絶縁膜を介して、ソース電極110−ゲート電極間に形成される寄生容量と、ゲート電極−ドレイン電極111間に形成される寄生容量との合成容量からなる寄生容量Cdsが形成される。
なお、このソース電極110―ドレイン電極111間に形成される寄生容量Cdsは、その容量がソース電極110―ドレイン電極111間の電圧変化に依存することはない。
このように、従来のHEMT100では、ピンチオフの状態のときに、電圧依存性を有する4つの寄生容量Cssub、Cdsub、Cgd、Cgsと、電圧依存性のない1つの寄生容量Cdsとの合成容量が生じる。
電圧依存性のない一方の寄生容量Cdsは、高調波成分や相互変調歪の発生原因とはならないが、電圧依存性のある他方の4つの寄生容量Cssub、Cdsub、Cgs、Cgdは、高調波成分や相互変調歪の発生原因となる。
そのため、このHEMT100をスイッチング素子として使用した高周波回路は、接続した機器に悪影響を及ぼすおそれがあった。
そこで、請求項1に係る本発明では、半絶縁性基板上に、化合物半導体からなるバッファ層を介して、トランジスタとして動作する能動層が形成された半導体装置において、前記バッファ層は、N型の不純物がドープされたドープ層を有する第1バッファ層と、前記第1バッファ層と前記能動層との間に形成され、ノンドープの化合物半導体からなる第2バッファ層とを有することを特徴とする半導体装置を提供することとした。
また、請求項2に係る本発明では、請求項1に記載の半導体装置において、前記第1バッファ層は、AlGaAsにより構成した層と、GaAsにより構成した層とが交互に積層されて構成され、少なくとも、前記AlGaAsにより構成した層に、前記N型の不純物がドープされていることを特徴とする。
また、請求項3に係る本発明では、半絶縁性基板上に、化合物半導体からなり、N型の不純物がドープされたドープ層を有する第1バッファ層を形成する工程と、前記第1バッファ層上に、ノンドープの化合物半導体からなる第2バッファ層を形成する工程と、前記第2バッファ層上に、トランジスタとして動作する能動層を形成する工程とを有し、前記第1バッファ層を形成する工程は、有機金属化合物にN型の不純物を添加した材料を用いて、前記ドープ層をエピタキシャル成長させる工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法を提供することとした。
本発明では、半絶縁性基板上に、化合物半導体からなるバッファ層を介して、トランジスタとして動作する能動層が形成された半導体装置において、バッファ層を形成する際に、当該バッファ層の材料にN型の不純物をドープしておくことによって、形成後のバッファ層の導電型を可及的にI型に近づけることができるので、トランジスタのゲートに、ピンチオフ電圧よりも十分低いゲート電圧を印加した場合に、内部に生じる寄生容量の電圧依存性を低減することができ、その結果、当該半導体装置を高周波信号のスイッチング素子として使用しても、高調波成分が生じ難く、相互変調歪の発生を抑制することができる。
本実施形態に係る半導体装置は、半絶縁性基板と、この半絶縁性基板上に形成された化合物半導体からなるバッファ層と、このバッファ層上に形成され、トランジスタとして動作する能動層とを備えている。
特に、この半導体装置が備えるバッファ層は、N型の不純物がドープされたドープ層を有する第1バッファ層と、この第1バッファ層と能動層との間に形成され、ノンドープの化合物半導体からなる第2バッファ層とを備えている。
そのため、この半導体装置は、P型の不純物が残留して、導電型がP型になりがちな第1バッファ層の導電型を、バッファ層にN型の不純物をドープしたドープ層を設けることによって、可及的に真性半導体であるI型の導電型に近づけることができる。
その結果、この半導体装置は、トランジスタのゲートに、ピンチオフ電圧よりも十分低いゲート電圧を印加した場合に発生する電圧依存性のある寄生容量を低減することができ、高周波信号のスイッチング素子として使用しても、高調波成分が生じ難く、相互変調歪の発生を抑制することができる。
このように、バッファ層にN型の不純物をドープしたドープ層形成した場合、電圧依存性のある寄生容量を低減することができる一方、ドープ層にドープされたN型の不純物により、トランジスタをピンチオフの状態にしたときに、ソース−ドレイン間にリーク電流が発生することが予想される。
しかし、本実施形態に係る半導体装置では、トランジスタとして動作する能動層と、ドープ層を有する第1バッファ層との間に、ノンドープの化合物半導体からなる第2バッファ層を設けているため、この第2バッファ層と第1バッファ層との間にバンドギャップの差を生じさせることができるので、ピンチオフの状態のときに、ソース−ドレイン間に生じるリーク電流を可及的に低減することができる。
また、この半導体装置において、第1バッファ層は、その全体をAlGaAs(アルミニウム・ガリウム・砒素)からなる単一材料により構成し、この第1バッファ層全体をN型の不純物がドープされたドープ層により構成してもよいが、第1バッファ層の構成は、これに限定するものではなく、他の構造としてもよい。
第1バッファ層の他の構造としては、たとえば、AlGaAsにより構成した層と、GaAs(ガリウム・砒素)により構成した層とを交互に積層してマルチレイヤーバッファを形成し、このマルチレイヤーバッファを構成する各層のうち、少なくとも、AlGaAsにより構成した層に、N型の不純物をドープしておくように構成してもよい。
かかる構成とすることにより、第1バッファ層を構成するAlGaAsからなる層と、GaAsからなる層との各間に、それぞれバンドギャップの差を生じさせることができるので、トランジスタがピンチオフの状態のときのリーク電流の発生をさらに抑制することができると共に、バッファ層上に形成する能動層の結晶構造をより好適な構造に形成することができる。
以下、本実施形態に係る電界効果トランジスタを備えた半導体装置について図面を参照して具体的に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る半導体装置1は、半絶縁性基板であるGaAs基板2上に、化合物半導体であるAlGaAsからなるバッファ層Bを介して、ヘテロ接合型の電界効果トランジスタである高電子移動度トランジスタ(以下、「HEMT(High Electron Mobility Transistor)」という。)として動作する能動層とを備えている。
この半導体装置1が有する能動層は、バッファ層B上に、N型の不純物が高濃度にドープされたAlGaAsからなる第1の電子供給層5と、ノンドープのAlGaAsからなるスペーサ層6と、ノンドープのInGaAs(インジウム・ガリウム・砒素)からなるチャネル層7と、ノンドープのAlGaAsからなるスペーサ層8と、N+AlGaAsからなる第2の電子供給層9と、第1及び第2の電子供給層5、6よりも低濃度にN型の不純物がドープされたAlGaAsからなるバリア層10とが順次エピタキシャル成長されたダブルへテロ接合構造をしている。
そして、バリア層10の所定領域には、P型の不純物を拡散させることによって形成した埋込ゲート領域11を備えており、この埋込ゲート領域11を挟んだバリア層10の表面の所定位置には、バリア層10とオーミック接続したソース電極12と、ドレイン電極13とを備えている。
特に、この半導体装置1のバッファ層Bは、化合物半導体であるAlGaAsからなり、N型の不純物であるSi(シリコン)がドープされたドープ層としての第1バッファ層3と、この第1バッファ層3と能動層の最下層である第1の電子供給層5との間に設けられ、ノンドープの化合物半導体であるAlGaAsからなる第2バッファ層4とを備えている。
このように、本実施形態の半導体装置1は、比較的膜厚の厚い第1バッファ層3にN型の不純物であるSiがドープされているため、仮に、第1バッファ層3を形成した際に、当該第1バッファ層3の内部にP型不純物であるC(炭素)が残留していた場合であっても、第1バッファ層3にドープされたN型の不純物が、第1バッファ層3に残留しているP型の不純物によるP型の導電性を打ち消すように作用するため、形成後の第1バッファ層3全体の導電性を真性半導体であるI型に可及的に近づけることができる。
そのため、HEMTの埋込ゲート領域11に、ピンチオフ電圧よりも十分に低いゲート電圧を印加したとき、すなわち、HEMTがピンチオフの状態のときに、ソース電極と第1バッファ層3との間、及び、ドレイン電極13と第1バッファ層3との間に、ソース電極やドレイン電極に印加される電圧の変化に依存して容量が変化する寄生容量の発生を低減することができる。
図2は、本実施形態の構造をした半導体装置1のHEMTと、従来構造の半導体装置(HEMT100)との各ソース電極12、110―ドレイン電極13、111間に印加する電圧を変化させた場合に、各ソース電極12、110―ドレイン電極13、111間に生じる各寄生容量を合成した合成容量の値を測定した実験結果を示す説明図である。
図2では、横軸にソース電極12、110―ドレイン電極13、111間に印加する電圧をとり、縦軸に寄生容量の合成容量値をとっている。
この図2に示すグラフからも分かるように、本実施形態の半導体装置1のHEMTは、従来のHEMT100に比べて、ソース電極12―ドレイン電極13間に印加する電圧値に対する寄生容量の電圧依存性が低くなっている。
このことから、本実施形態のHEMTと従来のHEMT100との能動層の構造が同じであることを考慮すると、本実施形態のHEMTの能動層よりも下層側に生じる寄生容量の電圧依存性が、従来のHEMT100の能動増よりも下層側に生じる寄生容量Cssub、Cdsub(図9参照)の電圧依存性よりも低くなっていることが容易に推測できる。
このように、本実施形態のHEMTは、従来のHEMT100に比べて、ソース電極12、110―ドレイン電極13、111間に印加する電圧の変化に対して寄生容量の変化が少ないため、高周波信号のスイッチング素子として使用しても、高調波成分が生じ難く、相互変調歪の発生を抑制することができる。
さらに、この半導体装置1が備えるバッファ層Bは、第1バッファ層上に形成されたノンドープのAlGaAsからなる第2バッファ層4を備えているため、バッファ層B中において、この第2バッファ層4と第1バッファ層3との間にバンドギャップの差を生じさせることができるので、ピンチオフの状態のときに、ソース電極12−ドレイン電極13間に生じるリーク電流を可及的に低減することができる。
図3は、埋込ゲート領域11に印加するゲート電圧を変化させた場合に、第2バッファ層4であるノンドープのAlGaAs層を備えた本実施形態の半導体装置1と、第1バッファ層3は備えているが、第2バッファ層4であるノンドープのAlGaAs層を備えていない半導体装置とのソース電極12―ドレイン電極13間に流れるリーク電流の値を測定した測定結果を示す説明図である。
図3では、横軸に埋込ゲート領域11に印加するゲート電圧をとり、縦軸にリーク電流の電流値をとっている。なお、本実施形態では、ゲート電圧が−1(V)よりも高い場合に、HEMTがONし、ゲート電圧が−1(V)よりも低い場合に、HEMTがOFFするように半導体装置1を設計している。
この図3に示すグラフから分かるように、第1バッファ層3とHEMTとの間にノンドープのAlGaAs層からなる第2バッファ層4を介在させない場合には、ゲート電圧を−1(V)よりも十分低くしても、すなわち、HEMTをOFF状態にしても、ソース電極12―ドレイン電極13間に、1.0E−02(A)以上の非常に大きなリーク電流が流れている。
その一方で、本実施形態の半導体装置1のように、第1バッファ層3とHEMTとの間にノンドープのAlGaAs層からなる第2バッファ層4を介在させた場合には、ゲート電圧が0(V)を下回ると、ソース電極12―ドレイン電極13間に流れるリーク電流が急激に減少し、ゲート電圧を−1(V)よりも十分低くすると、すなわち、HEMTをOFF状態にすると、ソース電極12―ドレイン電極13間に流れるリーク電流が非常に小さく、1.0E−12(A)を下回っている。
このように、本実施形態の半導体装置1は、HEMTがOFFのときに、優れたアイソレーション特性を備えているため、高周波信号のスイッチング素子として良好に機能させることができる。
また、本実施形態の半導体装置1では、ソース電極12―ドレイン電極13間に流れるリーク電流を好適に低減するために、第2バッファ層4の厚さを所定の厚さに設計することが望ましい。
図4は、ノンドープ層である第2バッファ層4の厚さを変化させた場合におけるソース電極12―ドレイン電極13間に流れるリーク電流の値を測定した測定結果を示す説明図である。
図4では、横軸にノンドープ層である第2バッファ層4の厚みをとり、縦軸にソース電極12―ドレイン電極13間に流れるリーク電流の値をとっている。
この図4から分かるように、第2バッファ層4の厚さが0.2(μm)を下回ると、ソース電極12―ドレイン電極13間に流れるリーク電流の値が急激に増大する。
そのため、この半導体装置1に設ける第2バッファ層4の厚さは、少なくとも0.2(μm)を超える厚さとなるように構成する必要がある。
ここで、このように構成される半導体装置1の製造方法について説明する。
図1に示す半導体装置1を製造する際には、半絶縁性のGaAs(ガリウム・砒素)からなるGaAs基板2を用意する。
次に、有機金属気相成長法(MOCVD:Metal Organic Chemical Vapor Deposition)を用いて、AlGaAsからなるバッファ層B、N+AlGaAsからなる第1の電子供給層5、I型のAlGaAsからなるスペーサ層6、I型のInGaAsからなるチャネル層7、I型のAlGaAsからなるスペーサ層8、N+AlGaAsからなる第2の電子供給層9、NAlGaAsからなるバリア層10を順次エピタキシャル成長する。
特に、バッファ層Bを形成する工程においては、まず、GaAs基板2を挿入したMOCVD装置内に、TMAl(トリメチルアルミニウム)、TMGa(トリメチルガリウム)等の有機金属化合物と、Asの水素化合物であるアルシンと、N型の不純物であるSiを混合した材料ガスを流入させながら、GaAs基板2を加熱することにより、GaAs基板2上に、N型の不純物がドープされた第1バッファ層3を形成する。
このとき、材料ガスに添加するSiの量は、第1バッファ層3を形成する際に、当該第1バッファ層3内に残留するCの量を予めシミュレーションしておき、その結果に基づいて予測したCの残留量と同量、すなわち、残存するCにより生じるホールの数と、Siを添加することにより生じる電子の数とが同量となる量、若しくは、それよりも若干多い量とする。
予測したCの残留量と上記同量のSiを添加した場合には、形成後の第1バッファ層3の導電性を可及的にI型に近づけることができ、予測したCの残留量よりも若干多くのSiを添加した場合には、そのSiが次に形成するノンドープの第2バッファ層4内へ拡散して、第2バッファ層に残留するCに起因したP型の導電型を多少弱めることができる。
次に、MPCVD装置内に、TMAl、TMGa等の有機金属化合物と、Asの水素化合物であるアルシンとを混合した材料ガスを流入させながら、GaAs基板2を加熱することにより、第1バッファ層3上に、ノンドープのAlGaAsからなる第2バッファ層4を形成する。
その後、材料ガスを適宜変更しながら同じくMOCVD法を用いて、第1の電子供給層5、スペーサ層6、チャネル層7、スペーサ層8、第2の電子供給層9、バリア層10を順次エピタキシャル成長させて、能動層を形成する。
次に、バリア層10の所定領域に、P型の不純物であるZn(亜鉛)を比較的高濃度に拡散させることによって、埋込ゲート領域11を形成する。
その後、バリア層の上面にAuGe(金・ゲルマニウム)、Ni(ニッケル)、Au(金)を順次蒸着させた金属層を形成した後、ソース電極12の形成位置と、ドレイン電極13の形成位置と、埋込ゲート領域11の上部のみを残し、不要な部分の金属層を除去することによって、ソース電極12、ドレイン電極13、ゲート電極(図示略。)を形成して、図1に示すような半導体装置1を製造する。
ここで、このようにして製造された半導体装置1のHEMTをスイッチング用FET(Field Effect Transistor)として使用した場合の等価回路と、その動作等について説明する。図5は、本実施形態の半導体装置1の等価回路及びその動作を示す説明図である。なお、図5の説明では、スイッチング用FETのゲート電極をゲートG、ソース電極をソースS、ドレイン電極をドレインDと称して説明する。
図5(a)に示すように、このスイッチング用FETは、そのゲートGに比較的高い抵抗Rgが接続されている。そのため、このスイッチングFETは、ゲートGにピンチオフ電圧であるVp以上Vf以下の所定のゲート電圧を印加したときにON状態となる。
このとき、このスイッチングFETは、図5(b)に示すように、数(Ω)の抵抗と同一の等価回路で表すことができる。
一方、このスイッチングFETは、そのゲートGにVpよりも十分に低いゲート電圧を印加したときにOFF状態となる。
このとき、このスイッチングFETは、図5(c)に示すように、ソースS−ドレインD間に発生する電圧依存性のない寄生容量Cdsと、ゲートG−ソースS間、及びゲートG−ドレインD間に発生する電圧依存性のある直列に接続された寄生容量Cgs、Cgdと、ドレインD−バッファ層B(図1参照)間、及び、ソースS−バッファ層B(図1参照)間に発生する電圧依存性のある直列に接続された寄生容量Cdsub,Cssubとが並列に接続された合成容量と同一の等価回路となる。
このように、本実施形態の半導体装置1は、ゲートGに抵抗値の高い抵抗Rgを接続することによって、スイッチング用FETとして使用した場合に、ON状態とOFF状態とで明確に抵抗性と容量性とを示すことから、マイクロ波帯用のスイッチ回路として、優れた特性を発揮する。
しかも、この半導体装置1は、上記のように、従来の半導体装置に比べて、電圧依存性のある寄生容量の値が非常に低いので、高周波信号のスイッチング素子として使用しても、高調波成分が生じ難く、相互変調歪の発生を抑制することができる。
さらに、この半導体装置1は、上記のように、バッファ層Bに、厚さを0.2(μm)以上とした第2バッファ層4を設けることによって、OFF状態におけるソースS−ドレインD間のリーク電流を可及的に低減することができるので、高周波信号のスイッチング素子として使用しても、OFF状態のときに優れたアイソレーション特性を発揮する。
次に、本実施形態の半導体装置1の変形例について説明する。図6は、第1の変形例に係る半導体装置1aを示す断面説明図であり、図7は、第2の変形例を示す半導体装置1bを示す断面説明図である。なお、以下の説明では、図1に示した半導体装置1と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明する。
また、図6では、バッファ層を符号Baで示しており、図7では、バッファ層を符号Bbで示している。
図6に示すように、第1の変形例に係る半導体装置1aは、第1バッファ層の構造以外(第2バッファ層4及び能動層)については、図1に示した半導体装置1と同様であるため、ここでは、その説明を省略し、第1バッファ層の構造についてのみ説明することとする。
この第1の変形例に係る半導体装置(以下、「半導体装置1a」という。)の、第1バッファ層は、N型の不純物であるSiを所定量ドープしたAlGaAsからなるドープ層20と、ノンドープのGaAsからなるノンドープ層21aとを交互にエピタキシャル成長させて形成したマルチレイヤーバッファ構造としている。
このように第1バッファ層を構成することによっても、AlGaAsからなる層を形成した際に、その内部に残留するCによるP型の導電性を、ドープするN型の不純物であるSiにより弱めることができるので、この半導体装置1aは、図1に示した半導体装置1と同様に、高周波信号のスイッチング素子として使用しても、高調波成分が生じ難く、相互変調歪の発生を抑制することができる。
また、このようにマルチレイヤーバッファ構造とした場合に、Cが残留するおそれのあるAlGaAsからなる層にのみ、Siをドープすることにより、ドーパントとしてのSiの使用量を低減することができるので、半導体装置1aの製造コストを低減することができる。
また、図7に示すように、第2の変形例に係る半導体装置1bは、第1バッファ層の構造以外(第2バッファ層4及び能動層)については、図1に示した半導体装置1と同様であるため、ここでは、その説明を省略し、第1バッファ層の構造についてのみ説明することとする。
この第2の変形例に係る半導体装置(以下、「半導体装置1b」という。)の、第1バッファ層は、N型の不純物であるSiを所定量ドープしたAlGaAsからなるドープ層20と、N型の不純物であるSiを所定量ドープしたGaAsからなるドープ層21bとを交互にエピタキシャル成長させて形成したマルチレイヤーバッファ構造としている。
このように第1バッファ層を構成することによっても、AlGaAsからなる層を形成した際に、その内部に残留するCによるP型の導電性を、ドープするN型の不純物であるSiにより弱めることができるので、この半導体装置1bは、図1に示した半導体装置1と同様に、高周波信号のスイッチング素子として使用しても、高調波成分が生じ難く、相互変調歪の発生を抑制することができる。
また、この半導体装置1bは、ドーパントとしてのSiの使用量については、第1の変形例に係る半導体装置1aより多くなるため、多少製造コストはかさむものの、第1バッファ層を形成する工程において、常時一定量のSiをMOCVD装置内に流入させることによって、N型の不純物がドープされた第1バッファ層を形成することができるので、製造工程を簡略化することができる。
本実施形態に係る半導体装置を示す断面説明図である。 本実施形態の半導体装置と、従来構造の半導体装置の各ソース電極―ドレイン電極間に印加する電圧を変化させた場合に、各半導体装置に生じる寄生容量の値を測定した実験結果を示す説明図である。 ゲート電圧を変化させた場合に、第2バッファ層を備えた本実施形態の半導体装置と、第2バッファ層を備えていない半導体装置とのソース電極―ドレイン電極間に流れるリーク電流の値を測定した測定結果を示す説明図である。 第2バッファ層の厚さを変化させた場合におけるソース電極―ドレイン電極間に流れるリーク電流の値を測定した測定結果を示す説明図である。 本実施形態の半導体装置の等価回路及びその動作を示す説明図である。 第1の変形例に係る半導体装置を示す断面説明図である。 第2の変形例を示す半導体装置を示す断面説明図である。 従来のHEMTの構造を示す断面説明図である。 従来構造のHEMTがピンチオフの状態のときにおけるキャリア分布を示した説明図である。
符号の説明
1 半導体装置
2 GaAs基板
B バッファ層
3 第1バッファ層
4 第2バッファ層
5 第1の電子供給層
6、8 スペーサ層
7 チャネル層
9 第2の電子供給層
10 バリア層
11 埋込ゲート領域
12 ソース電極
13 ドレイン電極

Claims (3)

  1. 半絶縁性基板上に、化合物半導体からなるバッファ層を介して、トランジスタとして動作する能動層が形成された半導体装置において、
    前記バッファ層は、N型の不純物がドープされたドープ層を有する第1バッファ層と、
    前記第1バッファ層と前記能動層との間に形成され、ノンドープの化合物半導体からなる第2バッファ層と、
    を有することを特徴とする半導体装置。
  2. 前記第1バッファ層は、AlGaAsにより構成した層と、GaAsにより構成した層とが交互に積層されて構成され、
    少なくとも、前記AlGaAsにより構成した層に、前記N型の不純物がドープされていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
  3. 半絶縁性基板上に、化合物半導体からなり、N型の不純物がドープされたドープ層を有する第1バッファ層を形成する工程と、
    前記第1バッファ層上に、ノンドープの化合物半導体からなる第2バッファ層を形成する工程と、
    前記第2バッファ層上に、トランジスタとして動作する能動層を形成する工程と、
    を有し、
    前記第1バッファ層を形成する工程は、
    有機金属化合物にN型の不純物を添加した材料を用いて、前記ドープ層をエピタキシャル成長させる工程を含む
    ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
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