JP2009235095A - 農薬組成物および残留農薬分解剤 - Google Patents

農薬組成物および残留農薬分解剤 Download PDF

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Abstract

【課題】農薬の効果を適切に発揮させつつ残留農薬を充分に低減することのできる農薬組成物、および、残留農薬分解剤を提供すること。
【解決手段】農薬組成物は、農薬活性成分および残留農薬分解剤を含む。残留農薬分解剤は、アパタイト結晶構造に含まれる金属原子の一部が光触媒性金属原子である粉末状の金属修飾アパタイトと、金属修飾アパタイトを被覆する有機物膜とを備える。有機物膜は、金属修飾アパタイトの有する分解作用によって分解され得るものであり、有機物膜の膜厚により、分解作用の抑制される期間が調節されている。
【選択図】なし

Description

本発明は、農作物に残留する農薬活性成分を分解するための成分を含む農薬組成物、および、残留農薬分解剤に関する。
農作物の栽培においては、高い収穫量を達成すべく、病気予防や害虫駆除のために様々な農薬が散布される場合がある。農薬の多くは、有機化合物であり、その作用特性を決定する特徴的な化学構造を分子内に含んでいる。農薬には、害虫やウイルスなどに加えて人体に対しても強い毒性を示すものが多い。また、農薬は、農地およびその周辺の生態環境に対して強い影響力を有し、生態環境を破壊してしまう場合もある。そのため、通常、散布された後において時間の経過とともに農薬の自然分解が進行するように、農薬の分子構造は設計されている。
しかしながら、そのような農薬の自然分解は、一般に緩やかに進行する。そのため、例えば、害虫が発生する時期から農作物の収穫時期までの期間が短い場合には、害虫発生時期に散布した必要量の農薬の多くは収穫時期までには分解されず、多量の農薬が残留農薬として付着したまま農作物は収穫されてしまう。残留農薬が付着した状態で農作物が出荷されるのは、人体などに対する安全性の観点より、好ましくない。収穫時期における残留農薬量を低減するために、害虫発生時期の前に予め農薬を散布しておく手法が採られる場合がある。しかしながら、農薬の自然分解は散布直後から開始するので、害虫発生時期よりも散布が早すぎると、害虫発生時期およびその後の繁殖時期において必要量の農薬が残存しないこととなる。この場合、農薬による充分な効果を得ることができない。このように、従来の農薬技術では、農薬の効果を適切に発揮させ、且つ、残留農薬を低減するのには、困難性がある。農薬およびその分解に関する技術については、例えば下記の特許文献1,2に記載されている。
特開平9−87121号公報 特開2001−10914号公報
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、農薬の効果を適切に発揮させつつ残留農薬を充分に低減することのできる農薬組成物、および、残留農薬分解剤を提供することを目的とする。
本発明の第1の側面によると農薬組成物が提供される。この農薬組成物は、農薬活性成分と、アパタイト結晶構造に含まれる金属原子の一部が光触媒性金属原子である粉末状の金属修飾アパタイトとを含んでいる。光触媒性金属原子とは、酸化物の状態で光触媒中心として機能し得る金属原子をいうものとする。
本発明で用いられる金属修飾アパタイトにおいて、その基本骨格を構成するアパタイトは、次のような一般式によって表すことができる。
Figure 2009235095
式(1)におけるAは、Ca,Co,Ni,Cu,Al,La,Cr,Fe,Mgなどの各種の金属を表す。Bは、PやSなどを表す。Xは、水酸基(−OH)やハロゲン(例えば、F,Cl)などである。より具体的には、金属修飾アパタイトの基本骨格を構成するアパタイトとしては、例えば、ハイドロキシアパタイト、フルオロアパタイト、クロロアパタイトなどが挙げられる。本発明において好適に用いることのできるアパタイトは、上式におけるXが水酸基(−OH)であるハイドロキシアパタイトである。より好ましくは、上式におけるAがカルシウム(Ca)であって、Bがリン(P)であって、Xが水酸基(−OH)であるカルシウムハイドロキシアパタイト、即ちCa10(PO4)6(OH)2である。
カルシウムハイドロキシアパタイト(CaHAP)は、カチオンともアニオンともイオン交換し易いために吸着性に富んでおり、特に有機物を吸着する能力に優れている。そのため、CaHAPについては、クロマトグラフィ用吸着剤、化学センサ、イオン交換体など、幅広い分野への応用技術の研究が盛んに行われている。また、CaHAPは、動物の歯や骨などの生体硬組織の主成分である。CaHAPを含む例えば鶏の骨粉は、土壌のリン酸肥糧として広く利用されている。
本発明で用いられる金属修飾アパタイトに含まれる光触媒性金属原子、すなわち、酸化物の状態で光触媒中心として機能し得る金属原子としては、例えば、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、タングステン(W)、マンガン(Mn)、スズ(Sn)、インジウム(In)、鉄(Fe)などが挙げられる。
これら金属の一部の酸化物は、金属酸化物半導体として光触媒機能を有することが知られている。光触媒機能を有する半導体物質では、一般に、価電子帯と伝導帯のバンドギャップに相当するエネルギーを有する光を吸収することによって、価電子帯の電子が伝導帯に遷移し、この電子遷移により、価電子帯には正孔が生ずる。伝導帯の電子は、当該光触媒性半導体の表面に吸着している物質に移動する性質を有し、これにより当該吸着物質は還元され得る。価電子帯の正孔は、当該光触媒性半導体の表面に吸着している物質から電子を奪い取る性質を有し、これにより当該吸着物質は酸化され得る。
光触媒機能を有する例えば酸化チタン(TiO2)においては、伝導帯に遷移した電子は、空気中の酸素を還元してスーパーオキシドアニオン(・O2 -)を生成させる。これとともに、価電子帯に生じた正孔は、酸化チタン表面の吸着水を酸化してヒドロキシラジカル(・OH)を生成させる。ヒドロキシラジカルは、非常に強い酸化力を有している。そのため、光触媒性酸化チタンに対して例えば有機物が吸着すると、ヒドロキシラジカルが作用することによって、当該有機物は、最終的には水と二酸化炭素に分解される場合がある。
有機物におけるこのような酸化分解反応を光触媒機能に基づいて促進することが可能な酸化チタンは、抗菌剤、殺菌剤、防汚剤、脱臭剤などにおいて、広く利用されている。ただし、酸化チタン自体は、その表面に何らかの物質を吸着する能力に乏しい。
酸化物として光触媒機能を呈する光触媒性金属原子が、上掲の式(1)で表されるアパタイトの結晶構造を構成する金属原子の一部としてアパタイト結晶構造中に取り込まれることによって、アパタイト結晶構造内において光触媒機能を発揮し得る光触媒性部分構造が形成される。光触媒性部分構造とは、より具体的には、式(1)におけるAの一部に代わって取り込まれる光触媒性金属原子と、式(1)における酸素原子とからなり、光触媒機能を有する金属酸化物に相当するものであると考えられる。
このような化学構造を有する金属修飾アパタイトは、光照射条件下においては、高い吸着力および光触媒機能の相乗効果により、吸着力に乏しい光触媒性の金属酸化物半導体よりも効率のよい分解作用を示す。
本発明の第1の側面に係る農薬組成物によると、光触媒性の金属修飾アパタイトの分解作用を有効活用することによって残留農薬を充分に低減することができる。本発明における金属修飾アパタイトは、上述のように、吸着性に優れたアパタイトと光触媒物質とが原子レベルで複合化している。そのため、農薬活性成分と金属修飾アパタイトとを含む農薬組成物を適切な時期に農作物に対して散布した後、金属修飾アパタイトは、日中などの光照射条件下では、農薬活性成分に対して、高い吸着力と光触媒機能とに基づく効率の良い分解作用を示し、優れた残留農薬分解剤として機能する。残留農薬の低減は、特に食用作物において、人体に対する安全性の観点より好ましい。散布する前は、当該農薬組成物を遮光性容器に収容しておくことによって、農薬使用前における金属修飾アパタイトによる農薬活性成分の分解を回避することができる。
一方、特開平7−187933号公報には、吸着性に優れたリン酸カルシウムと、抗菌性を示す銀とが原子レベルで複合化された粒子を製造するための技術が開示されている。当該複合化によって、銀による坑菌効率の向上が図られている。しかしながら、銀は、光触媒機能に基づく分解作用は示さない。したがって、当該複合化粒子は、残留農薬分解剤として機能し得ない。
また、本発明の第1の側面に係る農薬組成物は、農薬ないし農薬活性成分の効果を適切に発揮させるのに適している。従来の農薬組成物を使用するにあたっては、収穫時期における残留農薬量を低減するために、害虫発生時期よりも過度に早く散布しなければならない場合がある。これに対し、本発明に係る農薬組成物を使用するにあたっては、農薬活性成分の分解が促進されるため、従来ほどには早く散布しなくともよい。例えば、本発明に係る農薬組成物では、害虫発生時期から収穫時期までの期間が短い場合であっても、害虫発生時期に散布することが可能となる場合がある。すなわち、本発明に係る農薬組成物は、散布時期について、従来の農薬組成物よりも自由度が高く、従って、農薬の効果を適切に発揮させるのに適している。
このように、本発明の第1の側面に係る農薬組成物を使用すると、農薬活性成分の効果を適切に発揮させつつ残留農薬を充分に低減することが可能なのである。
本発明の第1の側面において、好ましくは、金属修飾アパタイトは、有機物膜により被覆されている。
本発明の第2の側面によると残留農薬分解剤が提供される。この残留農薬分解剤は、アパタイト結晶構造に含まれる金属原子の一部が光触媒性金属原子である粉末状の金属修飾アパタイトと、金属修飾アパタイトを被覆している有機物膜とを備える。
本発明の第1および第2の側面において、好ましくは、有機物膜は光透過性である。
好ましくは、金属修飾アパタイトは、カルシウムハイドロキシアパタイトのCaの一部がTiで置換された化学構造を有する。
好ましくは、金属修飾アパタイトにおいて、CaおよびTiの総和に対するTiの比率は3〜11mol%である。
好ましくは、金属修飾アパタイトは、土壌の微生物システムにおいて分解可能である。
本発明で用いる金属修飾アパタイトの表面化学構造のモデルを表す。 本発明で用いる金属修飾アパタイトの製造方法のフローチャートである。 実施例1,2および比較例1における農薬残存率変化を表す。
本発明に係る農薬組成物は、農薬活性成分と、残留農薬分解剤とを含んでいる。本実施形態においては、農薬組成物は、これらを適切に分散および混合させるための媒体成分を更に含んでおり、使用される前には遮光性容器に収容されている。
農薬活性成分とは、農作物の病気を予防するため、或は農作物から害虫を駆除するために使用される有機系薬剤をいい、殺虫、殺菌、抗ウイルス、殺ダニ、除草などにおいて薬効ないし活性を有する薬剤をいうものとする。そのような農薬活性成分としては、例えば、フェニトロチオン、ピリミジフェン、DDT、マラチオン、ヘキサコナゾール、プロメトリンなどが挙げられる。また、農作物とは、人間の栽培している植物をいい、穀類、果樹、野菜、草花、樹木、芝などが含まれるものとする。
媒体成分としては、農薬の化学種に応じて、例えば水などを用いることができる。
本発明における残留農薬分解剤は、アパタイト結晶構造に含まれる金属原子の一部が光触媒性金属原子である金属修飾アパタイトである。光触媒性金属原子とは、酸化物の状態で光触媒中心として機能し得る金属原子をいう。本実施形態においては、金属修飾アパタイトは、CaHAPのCaの一部がTiで置換されたTi−CaHAPである。
図1は、Ti−CaHAPの表面化学構造のモデルを表す。Ti−CaHAPにおいては、Tiが取り込まれることによって、CaHAP結晶構造中にTiを活性中心とした光触媒性部分構造が形成されている。このようなTi−CaHAPでは、光触媒性部分構造すなわち触媒サイトと、分解対象物である農薬活性成分に対する吸着力が高い吸着サイトとが、同一結晶面上において、原子レベルのスケールで散在している。したがって、Ti−CaHAPは、高い吸着力と光触媒機能とを併有し、農薬組成物などの有機物を効率よく分解することが可能である。
金属修飾アパタイトのアパタイト結晶構造に含まれる全金属原子に対する光触媒性金属原子の存在比率は、金属修飾アパタイトの吸着性および光触媒機能の両方を効果的に向上するという観点より、3〜11mol%の範囲が好ましい。すなわち、Ti−CaHAPでは、Ti/(Ti+Ca)の値が0.03〜0.11(モル比)であるのが好ましい。当該比率が11mol%を上回ると、結晶構造が乱れてしまう場合がある。当該比率が3mol%を下回ると、過剰な吸着サイトに吸着した農薬活性成分が少ない触媒サイトでは充分に処理されない状態となり、分解作用が充分に発揮されない場合がある。
本実施形態の農薬組成物は、農薬活性成分とともに、このようなTi−CaHAPの粉末を残留農薬分解剤として含んでいる。そのため、当該農薬組成物を農作物に対して散布すると、農作物や土壌には農薬活性成分とともにTi−CaHAPが付着する。その後、農薬活性成分は、農薬活性を呈しつつ徐々に自然分解する。これに加えて、農薬活性成分は、例えば日中における光照射条件下において、Ti−CaHAPによっても分解される。
具体的には、光照射条件下において、Ti−CaHAPにおける酸化チタン様の触媒サイトでは、酸化チタンと同様に吸着水からヒドロキシラジカル(・OH)が生成しており、吸着サイトには、農薬活性成分が吸着される。吸着した農薬活性成分は、表面拡散によりTi−CaHAP表面を移動して、触媒サイトおよびその近傍にてヒドロキシラジカルによって酸化分解される。
吸着性に優れたアパタイトと光触媒物質とが原子レベルで複合化しているTi−CaHAPでは、光照射条件下では、このように、高い吸着力および光触媒機能に基づいて効率的に農薬活性成分が分解される。すなわち、農薬活性成分の正味の分解速度は、自然分解のみの分解速度よりも速くなる。そのため、例えば、害虫が発生する時期ないし農薬組成物の散布時から農作物の収穫時期までの期間が短い場合であっても、収穫時期に残存している農薬活性成分を従来よりも低減することが可能となる。
本実施形態の農薬組成物を使用するにあたっては、農薬活性成分の分解が促進されるため、残留農薬低減の観点から害虫発生時期に対して過度に早く農薬組成物を散布しなくともよい。例えば、農薬組成物は、害虫発生時期から収穫時期までの期間が短い場合であっても、害虫発生時期に散布することが可能となる場合がある。すなわち、本発明の農薬組成物は、散布時期について、従来の農薬組成物よりも自由度が高く、従って、農薬活性成分の効果を適切に発揮させるのに適しているのである。
Ti−CaHAPは、CaHAP様の基本骨格を有する。そのため、残留農薬の分解という役割を終えたTi−CaHAPは、雨などで土壌に流れた後に、土壌に生息するバクテリアなどによって分解され得る。したがって、本実施形態の農薬組成物を同一の耕作地において複数回使用しても、残留農薬分解剤は最終的には土壌に蓄積されない。また、Ti−CaHAPは、リン酸およびカルシウムを含んでいるので、分解されることによって土壌に対するリン酸肥糧およびカルシウム肥糧として作用することとなる。これに対し、光触媒性酸化チタンは土壌システムによっては分解されない。そのため、残留農薬組成物として光触媒性酸化チタンを含む農薬組成物を同一の耕作地において複数回使用すると、この残留農薬分解剤は土壌に蓄積されて、当該土壌の生態系が悪影響を受けてしまう場合がある。
本発明においては、Ti−CaHAP粒子を有機膜により被覆してもよい。このような構成では、光照射条件下で被覆箇所にて分解作用を受けるのは当該有機膜である。そのため、被覆箇所においては、Ti−CaHAPによる農薬活性成分の分解は阻害される。その結果、農薬組成物を散布してから所望の期間、すなわち有機膜が充分に分解除去されるまでの期間は、Ti−CaHAPによる農薬活性成分の正味の分解速度は抑制される。
このような有機膜を構成するための有機材料としては、例えば、ゼラチン、寒天、天然樹脂、合成樹脂などが挙げられる。有機膜の膜厚は、例えば0.1〜1μmである。このような有機膜は、例えば、有機膜構成用の有機材料を溶解させた有機溶媒にTi−CaHAP粉末を浸漬し、当該Ti−CaHAP粒子に対して有機材料を吸着させることによって形成することができる。Ti−CaHAP粒子に有機材料を吸着させた後には、Ti−CaHAP粉末を溶媒から引き上げて、これを乾燥する。或は、Ti−CaHAP粉末を溶媒に浸漬したまま当該溶媒を蒸散させてもよい。このようにして形成される有機膜の膜厚を適宜設定することにより、有機膜の被分解量および光透過率の観点から、Ti−CaHAPによる農薬活性成分の分解速度が抑制される期間を調節することができる。
金属修飾アパタイトによる農薬活性成分の正味の分解速度が抑制される期間を設けることにより、当該期間においては農薬活性成分の効果を充分に享受することが可能となる。すなわち、農薬組成物を効果的に使用できるのである。
図2は、本発明における金属修飾アパタイトの製造におけるフローチャートである。金属修飾アパタイトの製造においては、まず、原料混合工程S1において、金属修飾アパタイトを構成するための原料を混合する。例えば、単一の水溶液系に対して、上掲の式(1)におけるA,BOy,Xおよび光触媒性金属に相当する化学種を、各々、所定の量を添加し、混合する。金属修飾アパタイトとしてTi−CaHAPを形成する場合には、Ca供給剤としては、硝酸カルシウムなどを用いることができる。PO4供給剤としては、リン酸などを用いることができる。水酸基は、後述のpH調節時に使用されるアンモニア水、水酸化カルシウム水溶液、または水酸化ナトリウム水溶液などのアルカリ水溶液から供給される。光触媒性金属としてのTiの供給剤としては、塩化チタンや硫酸チタンを用いることができる。
アパタイト結晶構造に含まれる全金属に対する光触媒性金属の比率は、上述のように、3〜11mol%の範囲が好ましい。したがって、原料混合工程S1では、形成される金属修飾アパタイトにおける光触媒性金属の比率が3〜11mol%となるように、各原料について供給量を決定し、供給すべき相対的な物質量を調整するのが好ましい。
次に、pH調節工程S2において、上述のようにして用意された原料溶液について、目的とする金属修飾アパタイトの生成反応が開始するpHに調節する。このpHの調節には、アンモニア水溶液、水酸化カリウム水溶液または水酸化ナトリウム水溶液などを用いることができる。金属修飾アパタイトとして例えばTi−CaHAPを形成する場合には、原料溶液のpHは8〜10の範囲に調節するのが好ましい。
次に、生成工程S3において、金属修飾アパタイトの生成を促進することによって、目的とする金属修飾アパタイトの結晶性を高める。具体的には、例えば、アパタイト成分および光触媒性金属原子の一部を共沈させた原料液を、100℃で6時間にわたってエージングすることによって、結晶性の高い金属修飾アパタイトが得られる。例えばTi−CaHAPを製造する場合には、本工程では、共沈に際してアパタイト結晶構造におけるCa位置にTiイオンが取り込まれ、Ti−CaHAPが成長する。
次に、乾燥工程S4において、前の工程で生成した金属修飾アパタイトを乾燥する。具体的には、生成工程S3にて析出した金属修飾アパタイト粉末をろ過した後、ろ別した沈殿を純水で洗浄し、更に、乾燥する。乾燥温度は、100〜200℃が好ましい。本工程により、原料溶液における液体成分が、金属修飾アパタイトから除去される。
このようにして製造された粉末状の金属修飾アパタイトは、必要に応じて焼結工程S5に付される。焼結工程S5では、乾燥工程S4とは別に、金属修飾アパタイトを再び加熱することによって、金属修飾アパタイトを焼結する。焼結温度は、580〜660℃の範囲が好ましい。例えばTi−CaHAPにあっては、本工程を経ることによって、光触媒活性は向上する。
〔実施例1〕
<残留農薬分解剤の製造>
本実施例では、残留農薬分解剤である金属修飾アパタイトとしてTi−CaHAPを採用した。Ti−CaHAPの製造においては、まず、脱炭酸ガス処理を施した純水を1L用意し、この純水に対して、窒素雰囲気下にて、硝酸カルシウム、硫酸チタン、リン酸を添加して混合した。硝酸カルシウムの濃度は0.09mol/Lとし、硫酸チタンの濃度は0.01mol/Lとし、リン酸の濃度は0.06mol/Lとした。次に、15mol/Lのアンモニア水を添加することによって、当該原料溶液のpHを9.0に調節した。次に、この原料溶液に対して、100℃で6時間、エージングを行った。このような操作を経ることによって、原料溶液にて金属修飾アパタイトの生成および析出が進行し、原料溶液が懸濁した。この懸濁液をろ過した後、分別した沈殿を5Lの純水で洗浄した。次に、70℃のドライオーブン中で12時間にわたって乾燥した。このようにして、平均1粒子径0.05μmのTi−CaHAPが得られた。このTi−CaHAPにおけるTiとCaの存在比率は、Ti:Ca=1:9であった。すなわち、金属修飾アパタイト結晶構造に含まれる全金属原子に対する触媒性金属原子であるTiの存在率は、10mol%であった。TiとCaの存在比率は、ICP−AES(プラズマ発光分析)による定量分析に基づいて同定した。
<農薬組成物の調製>
農薬活性成分としてフェニトロチオンを含む農薬液(商品名:スミチオン、武田園芸製)を水で1000倍に希釈し、当該水溶液に対して、上述のようにして得られたTi−CaHAP粉末を10wt%の濃度で添加して混合した。このようにして、本実施例の農薬組成物を調製した。
<残留農薬分解試験>
上述のようにして得られた農薬組成物に含まれる残留農薬分解剤の分解効果を調べた。具体的には、まず、農薬組成物を、50×50mmのガラス板上に均一にスピンコートした。次に、このようにして農薬組成物が塗布された複数のガラス板を屋外にて4週間放置した。放置の開始から0.5週間ごとに、ガラス板上の一定面積から農薬活性成分を抽出し、農薬活性成分の残存量を測定し、放置開始時の農薬活性成分量に対する当該残存量の比率を算出した。本測定においては、ガスクロマトグラフおよび質量分析装置を併用することによって農薬活性成分を定量した。放置期間を横軸にとり、農薬活性成分の残存率を縦軸にとったプロットに基づくと、図3に示すグラフA1が得られた。
〔実施例2〕
本実施例では、実施例1と同一のTi−CaHAP粉末をゼラチンで被覆した残留農薬分解剤を製造した。具体的には、まず、50℃以上に加熱した水に対して、最終濃度が0.1g/Lとなるようにゼラチンを溶解させた。次に、この溶液に対して、実施例1と同一のTi−CaHAP粉末を添加し、加熱下で1時間攪拌した。これにより、Ti−CaHAP粒子に対してゼラチンを吸着させた。次に、Ti−CaHAP粉末をろ別し、これを乾燥することにより、約0.1μmのゼラチン膜により被覆されたTi−CaHAP粉末を作製した。このようにして、本実施例の残留農薬分解剤を製造した。そして、農薬活性成分としてフェニトロチオンを含む農薬液(商品名:スミチオン、武田園芸製)を水で1000倍に希釈した水溶液に対して、本実施例の残留農薬分解剤を10wt%の濃度で添加して混合することにより、本実施例の農薬組成物を調製した。本実施例の農薬組成物を用いて、実施例1と同様にして残留農薬分解試験を行ったところ、図3に示すグラフA2が得られた。
〔比較例1〕
農薬活性成分を含む農薬液(商品名:スミチオン、武田園芸製)を水で1000倍に希釈することにより、本比較例の農薬組成物を調製した。この農薬組成物を用いて、実施例1と同様にして残留農薬分解試験を行った。その結果、図3に示すグラフB1が得られた。
〔評価〕
図3を参照すると、上述の実施例および比較例で用いた農薬活性成分は、グラフB1で示すように緩やかに自然分解することがわかる。グラフA1とグラフB1を比較すると、農薬組成物が、光触媒性の金属修飾アパタイトであるTi−CaHAP粉末を含む場合には、農薬活性成分は、自然分解よりも急速に分解することが理解できよう。実施例1における分解速度は、比較例1における分解速度の約3倍である。また、グラフA1とグラフA2を比較すると、農薬組成物が、有機膜であるゼラチンで各粒子が被覆されているTi−CaHAP粉末を含む場合には、農薬活性成分の分解は、一定期間抑制された後に促進されることが理解できよう。

Claims (10)

  1. 農薬活性成分と、
    アパタイト結晶構造に含まれる金属原子の一部が光触媒性金属原子である粉末状の金属修飾アパタイトと、を含み、
    前記金属修飾アパタイトは有機物膜により被覆されており、
    前記有機物膜は、前記金属修飾アパタイトの有する分解作用によって分解され得るものであり、前記有機物膜の膜厚により、前記分解作用の抑制される期間が調節されている、農薬組成物。
  2. 前記有機物膜は光透過性である、請求項1に記載の農薬組成物。
  3. 前記金属修飾アパタイトは、カルシウムハイドロキシアパタイトのCaの一部がTiで置換された化学構造を有する、請求項1に記載の農薬組成物。
  4. 前記金属修飾アパタイトにおいて、CaおよびTiの総和に対するTiの比率は3〜11mol%である、請求項3に記載の農薬組成物。
  5. 前記金属修飾アパタイトは、土壌の微生物システムにおいて分解可能である、請求項1に記載の農薬組成物。
  6. 農薬活性成分と混合して使用される残留農薬分解剤であって、
    アパタイト結晶構造に含まれる金属原子の一部が光触媒性金属原子である粉末状の金属修飾アパタイトと、
    前記金属修飾アパタイトを被覆している有機物膜と、を備え、
    前記有機物膜は、前記金属修飾アパタイトの有する分解作用によって分解され得るものであり、前記有機物膜の膜厚により、前記分解作用の抑制される期間が調節されている、残留農薬分解剤。
  7. 前記有機物膜は光透過性である、請求項6に記載の残留農薬分解剤。
  8. 前記金属修飾アパタイトは、カルシウムハイドロキシアパタイトのCaの一部がTiで置換された化学構造を有する、請求項6に記載の残留農薬分解剤。
  9. 前記金属修飾アパタイトにおいて、CaおよびTiの総和に対するTiの比率は3〜11mol%である、請求項8に記載の残留農薬分解剤。
  10. 前記金属修飾アパタイトは、土壌の微生物システムにおいて分解可能である、請求項6に記載の残留農薬分解剤。
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