JP2009234090A - 平版印刷版原版 - Google Patents

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清一 加藤
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Abstract

【課題】製造加工におけるハンドリングや積替え作業で発生する擦りに対し優れた耐傷性を有し、実質的に合紙レスで取り扱え、耐刷性に優れる平版印刷版原版を提供すること。
【解決手段】支持体上に、増感色素、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマーを含有する感光層を有してなる平版印刷版原版であって、前記支持体の前記感光層が設けられる面の中心線平均粗さRaが0.40〜0.60μmの範囲であり、かつ前記感光層の固形分塗布量が0.8〜1.2g/mであることを特徴とする平版印刷版原版である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ネガ型の平版印刷版原版に関し、特に、赤外線レーザー光での直接描画が可能なネガ型の平版印刷版原版に関する。
従来、平版印刷版原版としては親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けた構成を有するPS版が広く用いられ、その製版方法として、通常は、リスフイルムを介してマスク露光(面露光)後、非画像部を溶解除去することにより所望の印刷版を得ていた。近年、画像情報を、コンピューターを用いて電子的に処理、蓄積、出力する、デジタル化技術が広く普及してきている。そして、そのようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきた。その結果レーザー光のような指向性の高い光をデジタル化された画像情報に従って走査し、リスフイルムを介すこと無く、直接印刷版を製造するコンピューター トゥ プレート(CTP)技術が切望されており、これに適応した平版印刷版原版を得ることが重要な技術課題となっている。
このような走査露光可能な平版印刷版原版としては、親水性支持体上にレーザー露光によりラジカルやブレンステッド酸などの活性種を発生しうる感光性化合物を含有した親油性感光性樹脂層(以下、感光層ともいう)を設けた構成が提案され、既に上市されている。この平版印刷版原版をデジタル情報に基づきレーザー走査し活性種を発生せしめ、その作用によって感光層に物理的、或いは化学的な変化を起し不溶化させ、引き続き現像処理することによってネガ型の平版印刷版を得ることができる。
特に、親水性支持体上に、感光スピードに優れる光重合開始剤、付加重合可能なエチレン性不飽和化合物、及びアルカリ現像液に可溶なバインダーポリマーを含有する光重合型の感光層、並びに必要に応じて酸素遮断性の保護層を設けた平版印刷版原版(例えば、特許文献1、参照)は、生産性に優れ、更に現像処理が簡便であり、解像度や着肉性もよいといった利点から、望ましい印刷性能を有するものである。
また、より生産性を向上させるため、つまり、製版スピードを向上させるために、特定の構造を有するシアニン色素、ヨードニウム塩及びエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合可能な化合物よりなる光重合性組成物を感光層に用い、画像様露光後の加熱処理を必要としない記録材料が提案されている(例えば、特許文献2、参照)。しかし、この記録材料は、重合反応時に空気中の酸素による重合阻害により、感度の低下や、形成された画像部の強度低下が起こる場合があるという問題があった。
この問題に対し、感光層上に水溶性ポリマーを含有する保護層を設ける方法、或いは、無機質の層状化合物と水溶性ポリマーを含有する保護層を設ける方法(例えば、特許文献3、参照)が知られている。これらの保護層の存在により、重合阻害が防止され、感光層の硬化反応が促進され、画像部の強度を向上させることが可能となる。
しかしながら、このネガ型平版印刷版は保護層の機械的強度が充分でなく、製造加工、輸送、及びユーザーでの積替え等の刷版取り扱い時に、版面と種々部材が強く接触すると、版面に欠陥が生じ、現像後の画像部に抜けが起こってしまう問題があった。このような問題を低減するため、平版印刷版原版は、一般的に合紙(間紙)を入れて包装されている。但し、この合紙には1)コストアップ、2)合紙廃却などの問題があるため、合紙を用いない「合紙レス化」が強く望まれている。特に最近は、CTPシステムの普及に伴って、露光装置に版材の自動供給装置(オートローダー)を付帯させることが増加しており、事前にわざわざ手作業で合紙を抜き取る煩雑さや、自動合紙取り機構があっても合紙を取り除く動作が生産性を落すため、合紙レス化の要望が一層高まっている。
このような合紙レス化を指向する技術としては、感光層と支持体裏面との接触による感光層の機械的損傷を緩和する工夫を、支持体裏面に施すことが知られている。例えば、感光層とは反対側の面にガラス転移温度60℃以上の、飽和共重合ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂及び塩化ビニリデン共重合樹脂からなる群から選ばれた少なくとも1種の樹脂からなる、被覆層を設けたことを特徴とする感光性平版印刷版(例えば、特許文献4、参照)がある。また、感光層側に施すものとして、最上層に親水性ポリマー及びシリカで表面被覆した有機樹脂微粒子を含有する保護層を有することを特徴とする感光性平版印刷版(例えば、特許文献5、参照)が提案されている。
上述した有機ポリマーによるバックコート層を備える方法を用いることで感光層の損傷を抑制するという一定の効果は得られる。しかしながら、合紙なしで版材を積層した場合、感光層とバックコート層とが擦れることや、版材エッジ部分の微小なバリによって、擦り傷がつき易い事がわかった。また特許文献5のように、最上層にマット剤を有したものも充分に擦り傷を防ぐことが出来ない事がわかった。
特開平10−228109号公報 特公平7−103171号公報 特開平11−38633号公報 特開2005−62456号公報 特開2002−254843号公報 特開2008−15503号公報
上記事情に鑑み、本発明は、製造加工におけるハンドリングや積替え作業で発生する擦りに対し優れた耐傷性を有し、実質的に合紙レスで取り扱え、耐刷性に優れる平版印刷版原版を提供することを目的とする。
本発明者は鋭意研究した結果、特定の表面粗さを有する支持体(好ましくはアルミニウム支持体)上に、所定の固形分塗布量の感光層を形成することにより、上記目的を達成しうることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、以下の構成を有する。
<1>支持体上に、増感色素、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマーを含有する感光層を有してなる平版印刷版原版であって、前記支持体の前記感光層が設けられる面の中心線平均粗さRaが0.40〜0.60μmの範囲であり、かつ前記感光層の固形分塗布量が0.8〜1.2g/mであることを特徴とする平版印刷版原版である。
<2> 前記支持体の表面に平均開口径0.5〜5μmの中波構造と平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造とを重畳した構造の砂目形状を有することを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版原版である。
<3> 前記支持体が、硝酸を含有する水溶液中で交流電流を用いて支持体表面を粗面化する第1の電気化学的粗面化処理と、塩酸を含有する水溶液中で交流電流を用いて支持体表面を粗面化する第2の電気化学的粗面化処理と、をこの順に施すことによって得られることを特徴とする請求項<1>または<2>に記載の平版印刷版原版である。
<4>側鎖にカルボキシル基およびカルボン酸エステル基を有する高分子化合物を含有する中間層と、増感色素、重合開始剤、重合性化合物、及びバインダーポリマーを含有する感光層と保護層と、を順次積層してなることを特徴とする請求項1〜3に記載の平版印刷版原版である。
<5>前記側鎖にカルボキシル基およびカルボン酸エステル基を有する高分子化合物が有する酸基の一部または全てが、中和されていることを特徴とする請求項5に記載の平版印刷版原版である。
本発明によれば、製造加工のハンドリング性と積替え作業で発生する擦りに対し、優れた耐傷性を有し、実質的に合紙レスで取り扱え、耐刷性に優れる平版印刷版原版を提供することができる。
本発明の平版印刷版原版は、支持体上に、増感色素、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマーを含有する感光層を有してなる平版印刷版原版であって、前記支持体の前記感光層が設けられる面の中心線平均粗さRaが0.40〜0.60μmの範囲であり、かつ前記感光層の固形分塗布量が0.8〜1.2g/mであることを特徴とする。
本発明の平版印刷版原版では、上記構成とすることで、製造加工のハンドリング性と積替え作業で発生する擦りに対し、優れた耐傷性を有し、実質的に合紙レスで取り扱え、耐刷性に優れるものとなる。これは、所定の中心線平均粗さRaを持つ支持体上に、当該粗さRaに対して従来よりも少ない所定の固形分塗布量で感光層を設けてなることで、感光層が、支持体表面上の凹凸における凹部で窪んで形成されるためであると考えられる。
〔支持体〕
<中心線平均粗さRa>
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、その感光層が設けられる面の中心線平均粗さRaが0.40〜0.60μmの範囲であり、好ましくは0.45〜0.60μmの範囲であり、より好ましくは0.45〜0.58μmの範囲である。後述する感光層の固形分塗布量を所定範囲にすると共に、この支持体の中心線平均粗さRaが上記範囲であると、製造加工におけるハンドリングや積替え作業で発生する擦りに対し優れた耐傷性を有し、実質的に合紙レスで取り扱え、耐刷性に優れた平版印刷版原版となる。
本発明において、その表面の中心線平均粗さRaの測定方法は、以下の通りである。
触針式粗さ計(例えば、sufcom480A、東京精密社製)で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている平均粗さを5回測定し、その平均値を中心線平均粗さとする。
2次元粗さ測定の条件を以下に示す。
カットオフ値0.8mm、傾斜補正FLAT−ML、測定長3mm、縦倍率10000倍、走査速度0.3mm/sec、触針先端径2μm
<表面の砂目形状>
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、その表面が、平均開口径0.5〜5μmの中波構造と、平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造とを重畳した構造の砂目形状を有することが好ましい。
本発明において、平均開口径0.5〜5μmの中波構造は、主にアンカー(投錨)効果によって感光層を保持し、耐刷力を付与する機能を有する。中波構造のピットの平均開口径が0.5μm以上であれば、支持体表面の上層に設けられる感光層との密着性が良く、平版印刷版の耐刷性に優れる。また、中波構造のピットの平均開口径が5μm以下であれば、アンカーの役割を果たすピット境界部分の数の減少を抑えることができるので、やはり耐刷性の向上に有用である。
上記中波構造に重畳される平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造は、主に耐汚れ性を改良する役割を果たす。中波構造に小波構造を組み合わせることで、印刷時に平版印刷版に湿し水が供給された場合に、その表面に均一に水膜が形成され、非画像部の汚れの発生を抑制することができる。小波構造のピットの平均開口径が0.01μm以上であると、水膜形成に大きな効果が得られ、た、小波構造のピットの平均開口径が0.2μm以下であると、上述した中波構造による耐刷性向上の効果を損なわない。
この小波構造については、ピットの開口径だけでなく、ピットの深さをも制御することで、更に良好な耐汚れ性を得ることができる。即ち、小波構造の開口径に対する深さの比の平均を0.2以上にすることが好ましい。これにより均一に形成された水膜が表面に確実に保持され、非画像部の表面の耐汚れ性が長く維持される。
上記の中波構造と小波構造とを重畳した構造は、更に、平均波長5〜100μmの大波構造と重畳した構造であってもよい。この大波構造は、平版印刷版の非画像部の表面の保水量を増加させる効果を有する。この表面に保持された水が多いほど、非画像部の表面は雰囲気中の汚染の影響を受けにくくなり、印刷途中で版を放置した場合にも汚れにくい非画像部を得ることができる。また、大波構造が重畳されていると、印刷時に版面に与えられた湿し水の量を目視で確認することが容易となる。即ち、平版印刷版の検版性が優れたものとなる。
大波構造の平均波長が上記範囲であれば、中波構造との差による効果的な波形状を達成でき、さらに、露光現像後、大波構造に起因する露出された非画像部のぎらつきや、検版性の低下を抑制できる。なお、大波構造の平均波長は、10〜80μmであるのがより好ましい。
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体において、支持体表面の、中波構造の平均開口径、小波構造の平均開口径および開口径に対する深さの平均、ならびに、大波の平均波長の測定方法は、以下の通りである。
中波構造の平均開口径
電子顕微鏡を用いて支持体の表面を真上から倍率2,000倍で撮影し、得られた電子顕微鏡写真においてピットの周囲が環状に連なっている中波構造のピット(中波ピット)を少なくとも50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出する。大波構造を重畳した構造の場合も同じ方法で測定する。また、測定のバラツキを抑制するために、市販の画像解析ソフトによる等価円直径測定を行うこともできる。この場合、上記電子顕微鏡写真をスキャナーで取り込んでデジタル化し、ソフトウェアにより二値化した後、等価円直径を求める。本発明者が測定したところ、目視測定の結果とデジタル処理の結果とは、ほぼ同じ値を示した。大波構造を重畳した構造の場合も同様であった。
(2)小波構造の平均開口径
高分解能走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて支持体の表面を真上から倍率50,000倍で撮影し、得られたSEM写真において小波構造のピット(小波ピット)を少なくとも50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出する。
(3)小波構造の開口径に対する深さの比の平均
小波構造の開口径に対する深さの比の平均は、高分解能SEMを用いて支持体の破断面を倍率50,000倍で撮影し、得られたSEM写真において小波ピットを少なくとも20個抽出し、開口径と深さとを読み取って比を求めて平均値を算出する。
(4)大波構造の平均波長
触針式粗さ計で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている平均山間隔Smを5回測定し、その平均値を平均波長とする。
<表面処理>
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、後述するアルミニウム板に表面処理を施すことによって、上述した、感光層が設けられる面の中心線平均粗さRaを制御したもの、表面の砂目形状をアルミニウム板の表面に形成させたものであることが好ましい。本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、例えば、アルミニウム板に粗面化処理および陽極酸化処理を施して得ることができるが、この支持体の製造工程は、特に限定されず、粗面化処理および陽極酸化処理以外の各種の工程を含んでいてもよい。
以下に示すように、上述した、感光層が設けられる面の中心線平均粗さRaを制御する、又は表面の砂目形状を形成させるための代表的方法として、アルミニウム板に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法、アルミニウム板に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法、アルミニウム板にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法、アルミニウム板にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではない。
これらの方法において、前記電気化学的粗面化処理の後、更に、アルカリエッチング処理および酸によるデスマット処理を施してもよい。これらの方法により得られた本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、上述したような2種以上の異なる周期の凹凸を重畳した構造が表面に形成されており、平版印刷版としたときの耐汚れ性および耐刷性のいずれにも優れる。以下、表面処理の各工程について、詳細に説明する。
−機械的粗面化処理−
機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理と比較してより安価に、平均波長5〜100μmの凹凸のある表面を形成することができるため、粗面化処理の手段として有効である。機械的粗面化処理方法としては、例えば、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、特開平6−135175号公報および特公昭50−40047号公報に記載されているナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法を用いることができる。また、凹凸面をアルミニウム板に圧接する転写方法を用いることもできる。即ち、特開昭55−74898号公報、特開昭60−36195号公報、特開昭60−203496号公報の各公報に記載されている方法のほか、転写を数回行うことを特徴とする特開平6−55871号公報、表面が弾性であることを特徴とした特願平4−204235号明細書(特開平6−024168号公報)に記載されている方法も適用可能である。
また、放電加工、ショットブラスト、レーザー、プラズマエッチング等を用いて、微細な凹凸を食刻した転写ロールを用いて繰り返し転写を行う方法や、微細粒子を塗布した凹凸のある面を、アルミニウム板に接面させ、その上より複数回繰り返し圧力を加え、アルミニウム板に微細粒子の平均直径に相当する凹凸パターンを複数回繰り返し転写させる方法を用いることもできる。転写ロールへ微細な凹凸を付与する方法としては、特開平3−8635号公報、特開平3−66404号公報、特開昭63−65017号公報の各公報等に記載されている公知の方法を用いることができる。また、ロール表面にダイス、バイト、レーザー等を使って2方向から微細な溝を切り、表面に角形の凹凸をつけてもよい。このロール表面には、公知のエッチング処理等を行って、形成させた角形の凹凸が丸みを帯びるような処理を行ってもよい。また、表面の硬度を上げるために、焼き入れ、ハードクロムメッキ等を行ってもよい。そのほかにも、機械的粗面化処理としては、特開昭61−162351号公報、特開昭63−104889号公報等に記載されている方法を用いることもできる。本発明においては、生産性等を考慮して上述したそれぞれの方法を併用することもできる。これらの機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理の前に行うのが好ましい。
以下、機械的粗面化処理として好適に用いられるブラシグレイン法について説明する。ブラシグレイン法は、一般に、円柱状の胴の表面に、ナイロン(登録商標)、プロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂からなる合成樹脂毛等のブラシ毛を多数植設したローラ状ブラシを用い、回転するローラ状ブラシに研磨剤を含有するスラリー液を噴きかけながら、上記アルミニウム板の表面の一方または両方を擦ることにより行う。上記ローラ状ブラシおよびスラリー液の代わりに、表面に研磨層を設けたローラである研磨ローラを用いることもできる。ローラ状ブラシを用いる場合、曲げ弾性率が好ましくは10,000〜40,000kg/cm、より好ましくは15,000〜35,000kg/cmであり、かつ、毛腰の強さが好ましくは500g以下、より好ましくは400g以下であるブラシ毛を用いる。ブラシ毛の直径は、一般的には、0.2〜0.9mmである。ブラシ毛の長さは、ローラ状ブラシの外径および胴の直径に応じて適宜決定することができるが、一般的には、10〜100mmである。
研磨剤は公知の物を用いることができる。例えば、パミストン、ケイ砂、水酸化アルミニウム、アルミナ粉、炭化ケイ素、窒化ケイ素、火山灰、カーボランダム、金剛砂等の研磨剤;これらの混合物を用いることができる。中でも、パミストン、ケイ砂が好ましい。特に、ケイ砂は、パミストンに比べて硬く、壊れにくいので粗面化効率に優れる点で好ましい。研磨剤の平均粒径は、粗面化効率に優れ、かつ、砂目立てピッチを狭くすることができる点で、3〜50μmであるのが好ましく、6〜45μmであるのがより好ましい。研磨剤は、例えば、水中に懸濁させて、スラリー液として用いる。スラリー液には、研磨剤のほかに、増粘剤、分散剤(例えば、界面活性剤)、防腐剤等を含有させることができる。スラリー液の比重は0.5〜2であるのが好ましい。
機械的粗面化処理に適した装置としては、例えば、特公昭50−40047号公報に記載された装置を挙げることができる。
−電気化学的粗面化処理−
電気化学的粗面化処理(以下、「電解粗面化処理」とも称する)には、通常の交流を用いた電気化学的粗面化処理に用いられる電解液を用いることができる。中でも、塩酸または硝酸を主体とする電解液を用いることで、本発明に特徴的な凹凸構造を表面に形成させることができる。
本発明における電解粗面化処理としては、陰極電解処理の前後に酸性溶液中での交番波形電流による第1の電気化学的粗面化処理および第2の電気化学的粗面化処理を行うことが好ましい。陰極電解処理により、アルミニウム板の表面で水素ガスが発生してスマットが生成することにより表面状態が均一化され、その後の交番波形電流による電解処理の際に均一な電解粗面化が可能となる。この電解粗面化処理は、例えば、特公昭48−28123号公報および英国特許第896,563号明細書に記載されている電気化学的グレイン法(電解グレイン法)に従うことができる。この電解グレイン法は、正弦波形の交流電流を用いるものであるが、特開昭52−58602号公報に記載されているような特殊な波形を用いて行ってもよい。また、特開平3−79799号公報に記載されている波形を用いることもできる。また、特開昭55−158298号公報、特開昭56−28898号公報、特開昭52−58602号公報、特開昭52−152302号公報、特開昭54−85802号公報、特開昭60−190392号公報、特開昭58−120531号公報、特開昭63−176187号公報、特開平1−5889号公報、特開平1−280590号公報、特開平1−118489号公報、特開平1−148592号公報、特開平1−178496号公報、特開平1−188315号公報、特開平1−154797号公報、特開平2−235794号公報、特開平3−260100号公報、特開平3−253600号公報、特開平4−72079号公報、特開平4−72098号、特開平3−267400号公報、特開平1−141094号公報の各公報に記載されている方法も適用できる。また、前述のほかに、電解コンデンサーの製造方法として提案されている特殊な周波数の交番電流を用いて電解することも可能である。例えば、米国特許第4,276,129号明細書および同第4,676,879号明細書に記載されている。
電解槽および電源については、種々提案されているが、米国特許第4203637号明細書、特開昭56−123400号公報、特開昭57−59770号公報、特開昭53−12738号公報、特開昭53−32821号公報、特開昭53−32822号公報、特開昭53−32823号公報、特開昭55−122896号公報、特開昭55−132884号公報、特開昭62−127500号公報、特開平1−52100号公報、特開平1−52098号公報、特開昭60−67700号公報、特開平1−230800号公報、特開平3−257199号公報の各公報等に記載されているものを用いることができる。また、特開昭52−58602号公報、特開昭52−152302号公報、特開昭53−12738号公報、特開昭53−12739号公報、特開昭53−32821号公報、特開昭53−32822号公報、特開昭53−32833号公報、特開昭53−32824号公報、特開昭53−32825号公報、特開昭54−85802号公報、特開昭55−122896号公報、特開昭55−132884号公報、特公昭48−28123号公報、特公昭51−7081号公報、特開昭52−133838号公報、特開昭52−133840号公報、特開昭52−133844号公報、特開昭52−133845号公報、特開昭53−149135号公報、特開昭54−146234号公報の各公報等に記載されているもの等も用いることができる。
電解液である酸性溶液としては、硝酸、塩酸のほかに、米国特許第4,671,859号明細書、同第4,661,219号明細書、同第4,618,405号明細書、同第4,600,482号明細書、同第4,566,960号明細書、同第4,566,958号明細書、同第4,566,959号明細書、同第4,416,972号明細書、同第4,374,710号明細書、同第4,336,113号明細書、同第4,184,932号明細書の各明細書等に記載されている電解液を用いることもできる。
酸性溶液の濃度は0.5〜2.5質量%であるのが好ましいが、上記のスマット除去処理での使用を考慮すると、0.7〜2.0質量%であるのが特に好ましい。また、液温は20〜80℃であるのが好ましく、30〜60℃であるのがより好ましい。
塩酸または硝酸を主体とする水溶液は、濃度1〜100g/Lの塩酸または硝酸の水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸イオンを有する硝酸化合物または塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸化合物の少なくとも一つを1g/Lから飽和するまでの範囲で添加して使用することができる。また、塩酸または硝酸を主体とする水溶液には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。好ましくは、塩酸または硝酸の濃度0.5〜2質量%の水溶液にアルミニウムイオンが3〜50g/Lとなるように、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等を添加した液を用いることが好ましい。
更に、Cuと錯体を形成しうる化合物を添加して使用することによりCuを多く含有するアルミニウム板に対しても均一な砂目立てが可能になる。Cuと錯体を形成しうる化合物としては、例えば、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)等のアンモニアの水素原子を炭化水素基(脂肪族、芳香族等)等で置換して得られるアミン類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸塩類が挙げられる。また、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等のアンモニウム塩も挙げられる。温度は10〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。
電気化学的粗面化処理に用いられる交流電源波は、特に限定されず、サイン波、矩形波、台形波、三角波等が用いられるが、矩形波または台形波が好ましく、台形波が特に好ましい。台形波とは、図1に示したものをいう。この台形波において電流がゼロからピークに達するまでの時間(TP)は1〜3msecであるのが好ましい。1msec未満であると、アルミニウム板の進行方向と垂直に発生するチャタマークという処理ムラが発生しやすい。TPが3msecを超えると、特に硝酸電解液を用いる場合、電解処理で自然発生的に増加するアンモニウムイオン等に代表される電解液中の微量成分の影響を受けやすくなり、均一な砂目立てが行われにくくなる。その結果、平版印刷版としたときの耐汚れ性が低下する傾向にある。
台形波交流のduty比は1:2〜2:1のものが使用可能であるが、特開平5−195300公報に記載されているように、アルミニウムにコンダクタロールを用いない間接給電方式においてはduty比が1:1のものが好ましい。台形波交流の周波数は0.1〜120Hzのものを用いることが可能であるが、50〜70Hzが設備上好ましい。50Hzよりも低いと、主極のカーボン電極が溶解しやすくなり、また、70Hzよりも高いと、電源回路上のインダクタンス成分の影響を受けやすくなり、電源コストが高くなる。
電解槽には1個以上の交流電源を接続することができる。主極に対向するアルミニウム板に加わる交流の陽極と陰極との電流比をコントロールし、均一な砂目立てを行うことと、主極のカーボンを溶解することとを目的として、図2に示したように、補助陽極を設置し、交流電流の一部を分流させることが好ましい。図2において、11はアルミニウム板であり、12はラジアルドラムローラであり、13aおよび13bは主極であり、14は電解処理液であり、15は電解液供給口であり、16はスリットであり、17は電解液通路であり、18は補助陽極であり、19aおよび19bはサイリスタであり、20は交流電源であり、40は主電解槽であり、50は補助陽極槽である。整流素子またはスイッチング素子を介して電流値の一部を二つの主電極とは別の槽に設けた補助陽極に直流電流として分流させることにより、主極に対向するアルミニウム板上で作用するアノード反応にあずかる電流値と、カソード反応にあずかる電流値との比を制御することができる。主極に対向するアルミニウム板上で、陽極反応と陰極反応とにあずかる電気量の比(陰極時電気量/陽極時電気量)は、0.3〜0.95であるのが好ましい。
電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型等の公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているようなラジアル型電解槽が特に好ましい。電解槽内を通過する電解液は、アルミニウムウェブの進行方向に対してパラレルであってもカウンターであってもよい。
(硝酸電解)
硝酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理により、平均開口径0.5〜5μmのピットを形成することができる。ただし、電気量を比較的多くしたときは、電解反応が集中し、5μmを超えるハニカムピットも生成する。このような砂目を得るためには、電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜1000C/dmであるのが好ましく、50〜300C/dmであるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜100A/dmであるのが好ましい。また、高濃度または高温の硝酸電解液を用いると、平均開口径0.2μm以下の小波構造を形成させることもできる。
(塩酸電解)
塩酸はそれ自身のアルミニウム溶解力が強いため、わずかな電解を加えるだけで表面に微細な凹凸を形成させることが可能である。この微細な凹凸は、平均開口径が0.01〜0.2μmであり、アルミニウム板の表面の全面に均一に生成する。このような砂目を得るためには電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜100C/dmであるのが好ましく、20〜70C/dmであるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜50A/dmであるのが好ましい。
このような塩酸を主体とする電解液での電気化学的粗面化処理では、アノード反応にあずかる電気量の総和を400〜1000C/dmと大きくすることでクレーター状の大きなうねりを同時に形成することも可能であるが、この場合は平均開口径10〜30μmのクレーター状のうねりに重畳して平均開口径0.01〜0.4μmの微細な凹凸が全面に生成する。したがって、この場合、平均開口径0.5〜5μmの中波構造を重畳させられないため、上述した表面の砂目形状を作ることができないことがある。
本発明に係るアルミニウム支持体を製造するにあたっては、第1の電解粗面化処理として、上述した硝酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理(硝酸電解)を行い、第2の電解粗面化処理として、上述した塩酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理(塩酸電解)を行うのが好ましい。即ち、特定表面形状を有する本発明に係るアルミニウム支持体は、粗面化処理として、硝酸電解および塩酸電解を順次施し、更に陽極酸化処理を施して製造されることが好ましい。
特に、第1の電解粗面化処理として硝酸電解を行い、第2の電解粗面化処理として塩酸電解を行う場合において、(a)〜(e)の少なくとも一つを満たすようにすると、小波構造の開口径の標準偏差を0.2以下とすることが容易になるので好ましい。
(a)塩酸電解において、電解液の塩酸濃度を1〜8g/Lとする。
(b)塩酸電解において、電気量をアノード反応にあずかる電気量の総和で10〜100C/dmとする。
(c)塩酸電解において、交流の周波数を100〜300Hzとする。
(d)塩酸電解において、交流の波形のTPを2msec以下とする。
(e)塩酸電解後に後述するアルカリエッチング処理を行い、該アルカリエッチング処理において、エッチング量を0.1〜0.5g/mとする。
上記の硝酸、塩酸等の電解液中で行われる第1および第2の電解粗面化処理の間に、アルミニウム板は陰極電解処理を行うことが好ましい。この陰極電解処理により、アルミニウム板表面にスマットが生成するとともに、水素ガスが発生してより均一な電解粗面化処理が可能となる。この陰極電解処理は、酸性溶液中で陰極電気量が好ましくは3〜80C/dm、より好ましくは5〜30C/dmで行われる。陰極電気量が上記範囲であれば、スマット付着量が過不足なく好ましい。また、電解液は上記第1および第2の電解粗面化処理で使用する溶液と同一であっても異なっていてもよい。
−アルカリエッチング処理−
アルカリエッチング処理は、上記アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させることにより、表層を溶解する処理である。
電解粗面化処理より前に行われるアルカリエッチング処理は、機械的粗面化処理を行っていない場合には、前記アルミニウム板(圧延アルミ)の表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等を除去することを目的として、また、既に機械的粗面化処理を行っている場合には、機械的粗面化処理によって生成した凹凸のエッジ部分を溶解させ、急峻な凹凸を滑らかなうねりを持つ表面に変えることを目的として行われる。
アルカリエッチング処理の前に機械的粗面化処理を行わない場合、エッチング量は、0.1〜10g/mであるのが好ましく、1〜5g/mであるのがより好ましい。エッチング量が0.1g/m以上あれば、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等の除去が十分に行われるため、後段の電解粗面化処理において均一なピット生成ができ、ムラの発生を抑えることができる。一方、エッチング量が、10g/m以内であれば、経済的に好ましい。
アルカリエッチング処理の前に機械的粗面化処理を行う場合、エッチング量は、3〜20g/mであるのが好ましく、5〜15g/mであるのがより好ましい。エッチング量が3g/m以上であれば、機械的粗面化処理等によって形成された凹凸を平滑化することができ、後段の電解処理において均一なピット形成をすることができる。また、印刷時の汚れを防止することができる。一方、エッチング量が20g/m以下であれば、凹凸構造の消滅を防止することができる。
電解粗面化処理の直後に行うアルカリエッチング処理は、酸性電解液中で生成したスマットを溶解させることと、電解粗面化処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。電解粗面化処理で形成されるピットは電解液の種類によって異なるためにその最適なエッチング量も異なるが、電解粗面化処理後に行うアルカリエッチング処理のエッチング量は、0.1〜5g/mであるのが好ましい。硝酸電解液を用いた場合、塩酸電解液を用いた場合よりもエッチング量は多めに設定する必要がある。電解粗面化処理が複数回行われる場合には、それぞれの処理後に、必要に応じてアルカリエッチング処理を行うことができる。
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、例えば、カセイアルカリ、アルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、カセイアルカリとしては、例えば、カセイソーダ、カセイカリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、タケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第三リン酸ソーダ、第三リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。中でも、エッチング速度が速い点および安価である点から、カセイアルカリの溶液、および、カセイアルカリとアルカリ金属アルミン酸塩との両者を含有する溶液が好ましい。特に、カセイソーダの水溶液が好ましい。
アルカリ溶液の濃度は、エッチング量に応じて決定することができるが、1〜50質量%であるのが好ましく、10〜35質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液中にアルミニウムイオンが溶解している場合には、アルミニウムイオンの濃度は、0.01〜10質量%であるのが好ましく、3〜8質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液の温度は20〜90℃であるのが好ましい。処理時間は1〜120秒であるのが好ましい。
アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板を、アルカリ溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板を、アルカリ溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、アルカリ溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
−デスマット処理−
電解粗面化処理またはアルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(デスマット処理)が行われる。用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸が挙げられる。上記デスマット処理は、例えば、上記アルミニウム板を塩酸、硝酸、硫酸等の濃度0.5〜30質量%の酸性溶液(アルミニウムイオン0.01〜5質量%を含有する。)に接触させることにより行う。アルミニウム板を酸性溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、酸性溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。デスマット処理においては、酸性溶液として、上述した電解粗面化処理において排出される硝酸を主体とする水溶液もしくは塩酸を主体とする水溶液の廃液、または、後述する陽極酸化処理において排出される硫酸を主体とする水溶液の廃液を用いることができる。デスマット処理の液温は、25〜90℃であるのが好ましい。また、処理時間は、1〜180秒であるのが好ましい。デスマット処理に用いられる酸性溶液には、アルミニウムおよびアルミニウム合金成分が溶け込んでいてもよい。
−陽極酸化処理−
以上のように処理されたアルミニウム板には、更に、陽極酸化処理が施される。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。この場合、例えば、硫酸濃度50〜300g/Lで、アルミニウム濃度5質量%以下の溶液中で、アルミニウム板を陽極として通電して陽極酸化皮膜を形成させることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
この際、少なくともアルミニウム板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分が電解液中に含まれていても構わない。更には、第2、第3の成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、第3の成分としては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオン;アンモニウムイオン等の陽イオン;硝酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げられ、0〜10000ppm程度の濃度で含まれていてもよい。
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm、電圧1〜100V、電解時間15秒〜50分であるのが適当であり、所望の陽極酸化皮膜量となるように調整される。
また、特開昭54−81133号公報、特開昭57−47894号公報、特開昭57−51289号公報、特開昭57−51290号公報、特開昭57−54300号公報、特開昭57−136596号公報、特開昭58−107498号公報、特開昭60−200256号公報、特開昭62−136596号公報、特開昭63−176494号公報、特開平4−176897号公報、特開平4−280997号公報、特開平6−207299号公報、特開平5−24377号公報、特開平5−32083号公報、特開平5−125597号公報、特開平5−195291号公報の各公報等に記載されている方法を使用することもできる。
中でも、特開昭54−12853号公報および特開昭48−45303号公報に記載されているように、電解液として硫酸溶液を用いるのが好ましい。電解液中の硫酸濃度は、10〜300g/L(1〜30質量%)であるのが好ましく、また、アルミニウムイオン濃度は、1〜25g/L(0.1〜2.5質量%)であるのが好ましく、2〜10g/L(0.2〜1質量%)であるのがより好ましい。このような電解液は、例えば、硫酸濃度が50〜200g/Lである希硫酸に硫酸アルミニウム等を添加することにより調製することができる。
硫酸を含有する電解液中で陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板と対極との間に直流を印加してもよく、交流を印加してもよい。アルミニウム板に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dmであるのが好ましく、5〜40A/dmであるのがより好ましい。連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板の一部に電流が集中していわゆる「焼け」が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/mの低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dmまたはそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板に、電解液を介して給電する液給電方式により行うのが好ましい。このような条件で陽極酸化処理を行うことによりポア(マイクロポア)と呼ばれる孔を多数有する多孔質皮膜が得られるが、通常、その平均ポア径は5〜50nm程度であり、平均ポア密度は300〜800個/μm程度である。
陽極酸化皮膜の量は1〜5g/mであるのが好ましい。1g/m以上であると版に傷が入りにくく、一方、5g/m以下であると電力を抑えて製造することができ、経済的にも好ましい。陽極酸化皮膜の量は、1.5〜4g/mであるのがより好ましい。また、アルミニウム板の中央部と縁部近傍との間の陽極酸化皮膜量の差が1g/m以下になるように行うのが好ましい。
陽極酸化処理に用いられる電解装置としては、特開昭48−26638号公報、特開昭47−18739号公報、特公昭58−24517号公報の各公報等に記載されているものを用いることができる。中でも、図3に示す装置が好適に用いられる。図3は、アルミニウム板の表面を陽極酸化処理する装置の一例を示す概略図である。陽極酸化処理装置410において、アルミニウム板416は、図3中矢印で示すように搬送される。電解液418が貯溜された給電槽412にてアルミニウム板416は給電電極420によって(+)に荷電される。そして、アルミニウム板416は、給電槽412においてローラ422によって上方に搬送され、ニップローラ424によって下方に方向変換された後、電解液426が貯溜された電解処理槽414に向けて搬送され、ローラ428によって水平方向に方向転換される。ついで、アルミニウム板416は、電解電極430によって(−)に荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成され、電解処理槽414を出たアルミニウム板416は後工程に搬送される。前記陽極酸化処理装置410において、ローラ422、ニップローラ424およびローラ428によって方向転換手段が構成され、アルミニウム板416は、給電槽412と電解処理槽414との槽間部において、前記ローラ422、424および428により、山型および逆U字型に搬送される。給電電極420と電解電極430とは、直流電源434に接続されている。
図3の陽極酸化処理装置410の特徴は、給電槽412と電解処理槽414とを1枚の槽壁432で仕切り、アルミニウム板416を槽間部において山型および逆U字型に搬送したことにある。これによって、槽間部におけるアルミニウム板416の長さを最短にすることができる。よって、陽極酸化処理装置410の全体長を短くできるので、設備費を低減することができる。また、アルミニウム板416を山型および逆U字型に搬送することによって、各槽412および414の槽壁にアルミニウム板416を通過させるための開口部を形成する必要がなくなる。よって、各槽412および414内の液面高さを必要レベルに維持するのに要する送液量を抑えることができるので、稼働費を低減することができる。
−封孔処理−
本発明においては、必要に応じて陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封じる封孔処理を行ってもよい。封孔処理は、沸騰水処理、熱水処理、蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等の公知の方法に従って行うことができる。例えば、特公昭56−12518号公報、特開平4−4194号公報、特願平4−33952号明細書(特開平5−202496号公報)、特願平4−33951号明細書(特開平5−179482号公報)等に記載されている装置および方法で封孔処理を行ってもよい。
−親水化処理−
陽極酸化処理後または封孔処理後、親水化処理を行ってもよい。親水化処理としては、例えば、米国特許第2,946,638号明細書に記載されているフッ化ジルコニウム酸カリウム処理、米国特許第3,201,247号明細書に記載されているホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,559号明細書に記載されているアルキルチタネート処理、独国特許第1,091,433号明細書に記載されているポリアクリル酸処理、独国特許第1,134,093号明細書および英国特許第1,230,447号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理、米国特許第3,307,951号明細書に記載されているフィチン酸処理、特開昭58−16893号公報および特開昭58−18291号公報に記載されている親油性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、米国特許第3,860,426号明細書に記載されているように、水溶性金属塩(例えば、酢酸亜鉛)を含む親水性セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)の下塗層を設ける処理、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホ基を有する水溶性重合体を下塗りする処理が挙げられる。
また、特開昭62−019494号公報に記載されているリン酸塩、特開昭62−033692号公報に記載されている水溶性エポキシ化合物、特開昭62−097892号公報に記載されているリン酸変性デンプン、特開昭63−056498号公報に記載されているジアミン化合物、特開昭63−130391号公報に記載されているアミノ酸の無機または有機酸、特開昭63−145092号公報に記載されているカルボキシ基またはヒドロキシ基を含む有機ホスホン酸、特開昭63−165183号公報に記載されているアミノ基とホスホン酸基を有する化合物、特開平2−316290号公報に記載されている特定のカルボン酸誘導体、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平3−261592号公報に記載されている1個のアミノ基とリンの酸素酸基1個を持つ化合物、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平5−246171号公報に記載されているフェニルホスホン酸等の脂肪族または芳香族ホスホン酸、特開平1−307745号公報に記載されているチオサリチル酸のようなS原子を含む化合物、特開平4−282637号公報に記載されているリンの酸素酸のグループを持つ化合物等を用いた下塗りによる処理も挙げられる。更に、特開昭60−64352号公報に記載されている酸性染料による着色を行うこともできる。
また、ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸せきさせる方法、親水性ビニルポリマーまたは親水性化合物を塗布して親水性の下塗層を形成させる方法等により、親水化処理を行うのが好ましい。
ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液による親水化処理は、米国特許第2,714,066号明細書および米国特許第3,181,461号明細書に記載されている方法および手順に従って行うことができる。アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を適当量含有してもよい。また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
アルカリ金属ケイ酸塩処理によって吸着するSi量は蛍光X線分析装置により測定することができ、その吸着量は約1.0〜15.0mg/mであるのが好ましい。このアルカリ金属ケイ酸塩処理により、平版印刷版用支持体の表面のアルカリ現像液に対する耐溶解性向上の効果が得られ、アルミニウム成分の現像液中への溶出が抑制されて、現像液の疲労に起因する現像カスの発生を低減することができる。
また、親水性の下塗層の形成による親水化処理は、特開昭59−101651号公報および特開昭60−149491号公報に記載されている条件および手順に従って行うこともできる。この方法に用いられる親水性ビニルポリマーとしては、例えば、ポリビニルスルホン酸、スルホ基を有するp−スチレンスルホン酸等のスルホ基含有ビニル重合性化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の通常のビニル重合性化合物との共重合体が挙げられる。また、この方法に用いられる親水性化合物としては、例えば、−NH基、−COOH基およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物が挙げられる。
−水洗処理−
上述した各処理の工程終了後には水洗を行うのが好ましい。水洗には、純水、井水、水道水等を用いることができる。処理液の次工程への持ち込みを防ぐためにニップ装置を用いてもよい。
<アルミニウム板(圧延アルミ)>
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体を得るためには、公知のアルミニウム板を用いることができる。本発明に用いられるアルミニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる。純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板を用いることもできる。
本明細書においては、上述したアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる各種の基板をアルミニウム板と総称して用いる。前記アルミニウム合金に含まれてもよい異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等があり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。
このように本発明に用いられるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、例えば、アルミニウムハンドブック第4版(1990年、軽金属協会発行)に記載されている従来公知の素材、例えば、JIS A1050、JISA1100、JIS A1070、Mnを含むJIS A3004、国際登録合金 3103A等のAl−Mn系アルミニウム板を適宜利用することができる。また、引張強度を増す目的で、これらのアルミニウム合金に0.1質量%以上のマグネシウムを添加したAl−Mg系合金、Al−Mn−Mg系合金(JISA3005)を用いることもできる。更に、ZrやSiを含むAl−Zr系合金やAl−Si系合金を用いることもできる。更に、Al−Mg−Si系合金を用いることもできる。
JIS1050材に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭59−153861号公報、特開昭61−51395号公報、特開昭62−146694号公報、特開昭60−215725号公報、特開昭60−215726号公報、特開昭60−215727号公報、特開昭60−216728号公報、特開昭61−272367号公報、特開昭58−11759号公報、特開昭58−42493号公報、特開昭58−221254号公報、特開昭62−148295号公報、特開平4−254545号公報、特開平4−165041号公報、特公平3−68939号公報、特開平3−234594号公報、特公平1−47545号公報および特開昭62−140894号公報の各公報に記載されている。また、特公平1−35910号公報、特公昭55−28874号公報等に記載された技術も知られている。
JIS1070材に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−81264号公報、特開平7−305133号公報、特開平8−49034号公報、特開平8−73974号公報、特開平8−108659号公報および特開平8−92679号公報の各公報に記載されている。
Al−Mg系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特公昭62−5080号公報、特公昭63−60823号公報、特公平3−61753号公報、特開昭60−203496号公報、特開昭60−203497号公報、特公平3−11635号公報、特開昭61−274993号公報、特開昭62−23794号公報、特開昭63−47347号公報、特開昭63−47348号公報、特開昭63−47349号公報、特開昭64−1293号公報、特開昭63−135294号公報、特開昭63−87288号公報、特公平4−73392号公報、特公平7−100844号公報、特開昭62−149856号公報、特公平4−73394号公報、特開昭62−181191号公報、特公平5−76530号公報、特開昭63−30294号公報および特公平6−37116号公報の各公報に記載されている。また、特開平2−215599号公報、特開昭61−201747号公報等にも記載されている。
Al−Mn系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭60−230951号公報、特開平1−306288号公報および特開平2−293189号公報の各公報に記載されている。また、特公昭54−42284号公報、特公平4−19290号公報、特公平4−19291号公報、特公平4−19292号公報、特開昭61−35995号公報、特開昭64−51992号公報、特開平4−226394号公報の各公報、米国特許第5,009,722号明細書、同第5,028,276号明細書等にも記載されている。
Al−Mn−Mg系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭62−86143号公報および特開平3−222796号公報に記載されている。また、特公昭63−60824号公報、特開昭60−63346号公報、特開昭60−63347号公報、特開平1−293350号公報の各公報、欧州特許第223,737号明細書、米国特許第4,818,300号明細書、英国特許第1,222,777号明細書の各明細書等にも記載されている。
Al−Zr系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特公昭63−15978号公報および特開昭61−51395号公報に記載されている。また、特開昭63−143234号公報、特開昭63−143235号公報の各公報等にも記載されている。
Al−Mg−Si系合金に関しては、英国特許第1,421,710号明細書等に記載されている。
アルミニウム合金を板材とするには、例えば、下記の方法を採用することができる。まず、所定の合金成分含有量に調整したアルミニウム合金溶湯に、常法に従い、清浄化処理を行い、鋳造する。清浄化処理には、溶湯中の水素等の不要ガスを除去するために、フラックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナフレーク、アルミナボール等をろ材とするフィルタや、グラスクロスフィルタ等を用いるフィルタリング処理、あるいは、脱ガス処理とフィルタリング処理を組み合わせた処理が行われる。
これらの清浄化処理は、溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥や、溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐために実施されることが好ましい。溶湯のフィルタリングに関しては、特開平6−57432号公報、特開平3−162530号公報、特開平5−140659号公報、特開平4−231425号公報、特開平4−276031号公報、特開平5−311261号公報、特開平6−136466号公報の各公報等に記載されている。また、溶湯の脱ガスに関しては、特開平5−51659号公報、実開平5−49148号公報等に記載されている。本願出願人も、特開平7−40017号公報において、溶湯の脱ガスに関する技術を提案している。
ついで、上述したように清浄化処理を施された溶湯を用いて鋳造を行う。鋳造方法に関しては、DC鋳造法に代表される固体鋳型を用いる方法と、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる方法がある。DC鋳造においては、冷却速度が0.5〜30℃/秒の範囲で凝固する。1℃未満であると粗大な金属間化合物が多数形成されることがある。DC鋳造を行った場合、板厚300〜800mmの鋳塊を製造することができる。その鋳塊を、常法に従い、必要に応じて面削を行い、通常、表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmを切削する。その前後において、必要に応じて、均熱化処理を行う。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。熱処理に1時間以上かけることで、均熱化処理の効果が得られる。
その後、熱間圧延、冷間圧延を行ってアルミニウム板の圧延板とする。熱間圧延の開始温度は350〜500℃が適当である。熱間圧延の前もしくは後、またはその途中において、中間焼鈍処理を行ってもよい。中間焼鈍処理の条件は、バッチ式焼鈍炉を用いて280〜600℃で2〜20時間、好ましくは350〜500℃で2〜10時間加熱するか、連続焼鈍炉を用いて400〜600℃で6分以下、好ましくは450〜550℃で2分以下加熱するかである。連続焼鈍炉を用いて10〜200℃/秒の昇温速度で加熱して、結晶組織を細かくすることもできる。
以上の工程によって、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmに仕上げられたアルミニウム板は、更にローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって平面性を改善してもよい。平面性の改善は、アルミニウム板をシート状にカットした後に行ってもよいが、生産性を向上させるためには、連続したコイルの状態で行うことが好ましい。また、所定の板幅に加工するため、スリッタラインを通してもよい。また、アルミニウム板同士の摩擦による傷の発生を防止するために、アルミニウム板の表面に薄い油膜を設けてもよい。油膜には、必要に応じて、揮発性のものや、不揮発性のものが適宜用いられる。
一方、連続鋳造法としては、双ロール法(ハンター法)、3C法に代表される冷却ロールを用いる方法、双ベルト法(ハズレー法)、アルスイスキャスターII型に代表される冷却ベルトや冷却ブロックを用いる方法が、工業的に行われている。連続鋳造法を用いる場合には、冷却速度が100〜1000℃/秒の範囲で凝固する。連続鋳造法は、一般的には、DC鋳造法に比べて冷却速度が速いため、アルミマトリックスに対する合金成分固溶度を高くすることができるという特徴を有する。連続鋳造法に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平3−79798号公報、特開平5−201166号公報、特開平5−156414号公報、特開平6−262203号公報、特開平6−122949号公報、特開平6−210406号公報、特開平6−26308号公報の各公報等に記載されている。
連続鋳造を行った場合において、例えば、ハンター法等の冷却ロールを用いる方法を用いると、板厚1〜10mmの鋳造板を直接、連続鋳造することができ、熱間圧延の工程を省略することができるというメリットが得られる。また、ハズレー法等の冷却ベルトを用いる方法を用いると、板厚10〜50mmの鋳造板を鋳造することができ、一般的に、鋳造直後に熱間圧延ロールを配置し連続的に圧延することで、板厚1〜10mmの連続鋳造圧延板が得られる。
これらの連続鋳造圧延板は、DC鋳造について説明したのと同様に、冷間圧延、中間焼鈍、平面性の改善、スリット等の工程を経て、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.5mmの板厚に仕上げられる。連続鋳造法を用いた場合の中間焼鈍条件および冷間圧延条件については、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−220593号公報、特開平6−210308号公報、特開平7−54111号公報、特開平8−92709号公報の各公報等に記載されている。
このようにして製造されるアルミニウム板には、以下に述べる種々の特性が望まれる。アルミニウム板の強度は、平版印刷版用支持体として必要な腰の強さを得るため、0.2%耐力が140MPa以上であるのが好ましい。また、バーニング処理を行った場合にもある程度の腰の強さを得るためには、270℃で3〜10分間加熱処理した後の0.2%耐力が80MPa以上であるのが好ましく、100MPa以上であるのがより好ましい。特に、アルミニウム板に腰の強さを求める場合は、MgやMnを添加したアルミニウム材料を採用することができるが、腰を強くすると印刷機の版胴へのフィットしやすさが劣ってくるため、用途に応じて、材質および微量成分の添加量が適宜選択される。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−126820号公報、特開昭62−140894号公報等に記載されている。
アルミニウム板の結晶組織は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の結晶組織に起因する面質不良の発生を防止するため、表面においてあまり粗大でないことが好ましい。アルミニウム板の表面の結晶組織は、幅が200μm以下であるのが好ましく、100μm以下であるのがより好ましく、50μm以下であるのが更に好ましく、また、結晶組織の長さが5,000μm以下であるのが好ましく、1,000μm以下であるのがより好ましく、500μm以下であるのが更に好ましい。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−218495号公報、特開平7−39906号公報、特開平7−124609号公報の各公報等に記載されている。
アルミニウム板の合金成分分布は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の合金成分の不均一な分布に起因して面質不良が発生することがあるので、表面においてあまり不均一でないことが好ましい。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−48058号公報、特開平5−301478号公報、特開平7−132689号公報の各公報等に記載されている。
アルミニウム板の金属間化合物は、その金属間化合物のサイズや密度が、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理に影響を与える場合がある。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−138687号公報、特開平4−254545号公報の各公報等に記載されている。
本発明においては、上記に示されるようなアルミニウム板をその最終圧延工程において、積層圧延、転写等により凹凸を付けて用いることもできる。
本発明においてアルミニウム板は、連続した帯状のシート材または板材であることが好ましい。即ち、アルミニウムウェブであってもよく、製品として出荷される平版印刷版原版に対応する大きさ等に裁断された枚葉状シートであってもよい。アルミニウム板の表面のキズは平版印刷版用支持体に加工した場合に欠陥となる可能性があるため、平版印刷版用支持体とする表面処理工程の前の段階でのキズの発生は可能な限り抑制する必要がある。そのためには安定した形態で運搬時に傷付きにくい荷姿であることが好ましい。アルミニウムウェブの場合、アルミニウムの荷姿としては、例えば、鉄製パレットにハードボードとフェルトとを敷き、製品両端に段ボールドーナツ板を当て、ポリチュ−ブで全体を包み、コイル内径部に木製ドーナツを挿入し、コイル外周部にフェルトを当て、帯鉄で絞め、その外周部に表示を行う。また、包装材としては、ポリエチレンフィルム、緩衝材としては、ニードルフェルト、ハードボードを用いることができる。この他にもいろいろな形態があるが、安定して、キズも付かず運送等が可能であればこの方法に限るものではない。
アルミニウム板の厚みは、0.1mm〜0.6mm程度であることが好ましく、0.15mm〜0.4mmであるのがより好ましく、0.2mm〜0.3mmであるのがさらに好ましい。この厚みは、印刷機の大きさ、印刷版の大きさ、ユーザーの希望等により適宜変更することができる。
〔中間層〕
本発明の平版印刷版原版においては、必要に応じて、記録層(感光層)と支持体との間にアルカリ可溶性高分子からなる中間層(下塗り層という)を設けることができる。
露光によりアルカリ現像液への溶解性が低下する赤外線感応層である記録層(感光層)が、露光面又はその近傍に設けられることで赤外線レーザに対する感度が良好となるとともに、支持体と該赤外線感応性の記録層との間にこの下塗り層が存在し、断熱層として機能することで、赤外線レーザの露光により発生した熱が支持体に拡散せず、効率良く使用されることからの高感度化が図れる。
また、露光部においては、アルカリ現像液に対して非浸透性となった感光層(記録層)がこの下塗り層の保護層として機能するために、現像安定性が良好になるとともにディスクリミネーションに優れた画像が形成され、且つ、経時的な安定性も確保されるものと考えられ、未露光部においては、未硬化のバインダー成分が速やかに現像液に溶解、分散し、さらには、支持体に隣接して存在するこの下塗り層がアルカリ可溶性高分子からなるものであるため、現像液に対する溶解性が良好で、例えば、活性の低下した現像液などを用いた場合でも、残膜などが発生することなく速やかに溶解するため、現像性に優れるものと考えられる。
本発明の中間層は、側鎖にカルボキシル基およびカルボン酸エステル基を有する高分子化合物(以下、「特定高分子化合物」とも称することがある)を含有する。
前記特定高分子化合物は、側鎖にカルボキシル基と、カルボン酸エステル基とを、同時に有するものであれば、特に制限はない。例えば、1つの側鎖にカルボキシル基とカルボン酸エステル基とを有するものであっても、カルボキシル基とカルボン酸エステル基が別の側鎖に設けられるものであってもよい。
特定高分子化合物を含有することで、画像形成の際の、未露光領域の現像除去性を高められる。
前記特定高分子化合物は、下記一般式(1)で表される構造単位(i)と、下記一般式(2)で表される構造単位(ii)とを少なくとも有する共重合体であることが好ましい。
一般式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1〜30の置換基、またはハロゲン原子を表す。Lは、単結合又は連結基を表す。nは1〜10の整数を表す。
一般式(2)中、Rは、水素原子、炭素数1〜30の置換基、またはハロゲン原子を表す。Yは、カルボン酸エステル基を含む炭素数2〜30の基を表す。
まず、一般式(1)について説明する。
一般式(1)におけるRは、水素原子、炭素数1〜30の置換基(例えば、炭素数1〜30のアルキル;メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、炭素数1〜30のアルコキシ;メトキシ、エトキシ、ブトキシ、アセトキシ、プロピオニルオキシ、炭素数1〜30のアルコキシカルボニル;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、またはシアノ等)、またはハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)を表す。より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、フッ素原子、または塩素原子であり、特に好ましくは、水素原子またはメチル基である。
一般式(1)におけるLは、単結合又は連結基を表す。ここで、連結基とは、少なくとも1個の非金属原子からなる2価以上の基を示し、好ましくは、原子数0〜60の炭素原子、原子数0〜10の窒素原子、原子数0〜50の酸素原子、及び原子数0〜20の硫黄原子を含んで構成される。より好ましくは、−CR−、−O−、−C=O−、−S−、−S=O−、−S(=O)−、−NR−、ビニレン、フェニレン、シクロアルキレン、ナフチレン、ビフェニレン、(前記Rは水素原子または置換基を表す)、およびこれらの構造単位が組合わされて構成されるものを挙げることができる。Lとして更に好ましくは、単結合、−O(CH−、−NH(CH−、−COO−、−CONH−、(pおよびqは、各々独立に0〜20の整数を表す。)、またはフェニレン基である。Lとして特に好ましくは、単結合、−COO−、−CONH−、またはフェニレン基である。
また、一般式(1)におけるLが−CR−または−NR−で表されるときのRで示される置換基としては、一般式(1)におけるRにおいて説明した置換基と同じ基が挙げられ、好ましくは、メチル基である。
一般式(1)中、nは、1〜10の整数を表す。ここで、nが2以上とは、前記連結基に複数の−COHが結合していることを示す。
次に、一般式(2)について説明する。
一般式(2)中、Yは、カルボン酸エステル基を有する炭素数2〜30の基を表し、炭素数は、好ましくは2〜20、更に好ましくは2〜10である。ここで、前記Yは、カルボン酸エステルを形成するアルキル基、アリール基等と、カルボン酸エステル基とを合わせて炭素数が合計2〜30となればよく、下記構造式(2−1)で表すことができる。
前記構造式(2−1)におけるLは、単結合またはアルキレン基等の2価の連結基であり、Rは、カルボン酸エステルを形成するアルキル基、アリール基等の1価の基である。Rは、さらに置換基としてハロゲン原子やヒドロキシ基を有していてもよい。
とRは、Lの炭素数とRの炭素数との合計が2〜30となる範囲で選ぶことができる。
Yの好ましい例としては、カルボン酸アルキルエステル基(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プルピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、2−ヒドロキシエトキシカルボニル、2−メトキシエトキシカルボニルなど)、カルボン酸アリールエステル基(例えば、フェノキシカルボニル基、4−メトキシフェノキシカルボニル基、ナフタレンオキシカルボニル基)などを挙げることができる。
Yの更に好ましい例としては、カルボン酸アルキルエステル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プルピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、オクチルオキシカルボニル、シクロヘキシルオキシカルボニル、2−エチルヘキシルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、2−ヒドロキシエトキシカルボニル、2−メトキシエトキシカルボニルなど)を挙げることができる。
Yの特に好ましい例としてはメトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プルピルオキシカルボニル、イソプロピルオキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル、ヘキシルオキシカルボニル、2−ヒドロキシエトキシカルボニル、2−メトキシエトキシカルボニルなど)を挙げることができる。
一般式(2)におけるRは、Rと同義であり、好ましい範囲も同様である。
本発明で用いられる高分子化合物において、一般式(1)で表される構造単位(i)の含有量と、一般式(2)で表される構造単位(ii)の含有量とのモル比は、好ましくは0.9:0.1〜0.1:0.9であり、更に好ましくは0.9:0.1〜0.3:0.7であり、特に好ましくは0.8:0.2〜0.3:0.7である。
さらに、特定高分子化合物は、特定高分子化合物中に含まれる酸基の一部または全てが塩基で中和されていることが好ましい。特定高分子化合物が、前記一般式(1)で表される構造単位(i)と前記一般式(2)で表される構造単位(ii)とを少なくとも有する共重合体である場合には、該共重合体中のカルボキシル基の一部または全部が塩基によって中和された高分子化合物であることが好ましい。
前記塩基としては、公知の任意のものを用いることが可能であるが、好ましい例としては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、2族の金属(マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムなど)、その他の金属イオン(アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛など)の水酸化物、酸化物、炭酸塩、炭酸水素塩、アルコキシドなど、アンモニア(気体、または、水溶液)、アミン類(メチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、ピリジン、モルホリン、グアニジンなど)、などを挙げることができる。更に好ましくは、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ金属のアルコキシド、アンモニア水溶液、アミン類などを挙げることができる。特に好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、アンモニア水、トリエチルアミン、ピリジンなどを挙げることができる。
本発明の高分子化合物において、共重合体中のカルボキシル基の中和度は、好ましくは10〜100モル%、更に好ましくは20〜80モル%、特に好ましくは30〜70モル%である。
一般式(1)で表される構成成分(i)および、一般式(2)で表される構成成分(ii)、はそれぞれ1種類のみであっても、2種類以上組み合わされていてもよく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、一般式(1)で表される構成成分(i)および、一般式(2)で表される構成成分(ii)以外の構成成分を更に含んでいてもよい。開始剤、連鎖移動剤などに由来する成分をポリマーの末端、あるいは、側鎖に含有していてもよい。
本発明の共重合体の製造は、常法により行うことができる。具体的には、アニオン重合、ラジカル重合、カチオン重合、高分子反応法、などの公知の方法から選択される任意の合成法が単独または組み合わせて採用される。好ましくは、ラジカル重合、高分子反応法である。
本発明の共重合体の製造方法としては、一般式(1)で表される構成成分(i)に相当する単量体、および、一般式(2)で表される構成成分(ii)に相当する単量体とを少なくとも含有する原料を共重合させた後に中和を行う製造方法、一般式(1)で表される構造単位(i)に相当する単量体の一部または全部をあらかじめ中和した単量体をあらかじめ調整し、一般式(2)で表される構造単位(ii)に相当する単量体を少なくとも含有する原料とを共重合させる製造方法、のいずれかが好ましく選択される。
特に好ましくは、一般式(1)で表される構造単位(i)と、一般式(3)で表される構造単位(iii)とを少なくとも含有する共重合体を、実質的に水を含まない溶媒中(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、アセトン、エチルメチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)で合成した後に、水および塩基を同時(塩基の水溶液を添加する場合も含む)または逐次に添加して中和する製造法が選択される。
本発明で用いられる特定高分子化合物の共重合体の平均分子量は任意であってよいが、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法を用いて測定した時、重量平均分子量(Mw)が1,000〜500,000であることが好ましく、また2,000〜200,000の範囲であることが更に好ましく、5,000〜100,000の範囲であることが特に好ましい。
前記特定高分子化合物中に含まれる未反応モノマー量は任意であるが、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。
以下に本発明で用いられる特定高分子化合物の好ましい例(a−1〜a−24)を、高分子を構成する構造単位とその重合モル比により示す。またこれらの特定高分子化合物の重量平均分子量(Mw)を併せて示す。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。


<下塗り層の形成>
本発明の下塗り層は、支持体上に種々の方法により塗布して設けられる。下塗り層は、例えば、次のような方法で設けることができる。メタノール、エタノール、メチルエチルケトン、アセトニトリル、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどの有機溶剤、もしくはそれらの混合溶剤、あるいは、これら有機溶剤と水との混合溶剤に、本発明の共重合体を溶解させた溶液を支持体上に塗布、乾燥して設ける方法と、メタノール、エタノール、メチルエチルケトンなどの有機溶剤あるいはこれら有機溶剤と水との混合溶剤もしくはそれらの混合溶剤に本発明の高分子化合物を溶解させた溶液に、支持体を浸漬して高分子化合物を吸着させ、しかる後、必要により水などによって洗浄、乾燥して有機下塗り層を設ける方法である。前者の方法では、上記高分子化合物の好ましくは0.005〜20重量%、更に好ましくは0.01〜10重量%、特に好ましくは0.05〜5重量%の濃度の溶液を種々の方法で塗布できる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布などいずれの方法を用いてもよい。また、後者の方法では、溶液の濃度は0.01〜20重量%、好ましくは0.05〜5重量%であり、浸漬温度は20〜90℃、好ましくは25〜50℃であり、浸漬時間は0.1秒〜20分、好ましくは2秒〜1分である。上記の溶液は、アンモニア、トリエチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基性物質や、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸などの無機酸、ニトロベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などの有機スルホン酸、フェニルスルホン酸などの有機ホスホン酸、安息香酸、フマル酸、リンゴ酸などの有機カルボン酸など種々有機酸性物質等によりpHを調整し、pHが0〜12、より好ましくはpHが3〜10の範囲で使用してもよい。本発明の共重合体高分子化合物の乾燥後の被覆量は、2〜100mg/mが好ましく、更に好ましくは3〜50mg/mであり、特に好ましくは4〜30mg/mである。被覆量が2mg/mよりも少ないと、本発明の効果が十分に得られない場合がある。また、100mg/mより多くても同様である。
本発明の下塗り層には、前記高分子化合物である共重合体の他に、更に他の公知の化合物を併用してもよい。公知の下塗り層の具体例としては、特公昭50−7481号公報、特開昭54−72104号公報、特開昭59−101651号公報、特開昭60−149491号公報、特開昭60−232998号公報、特開平3−56177号公報、特開平4−282637号公報、特開平5−16558号公報、特開平5−246171号公報、特開平7−159983号公報、特開平7−314937号公報、特開平8−202025号公報、特開平8−320551号公報、特開平9−34104号公報、特開平9−236911号公報、特開平9−269593号公報、特開平10−69092号公報、特開平10−115931号公報、特開平10−161317号公報、特開平10−260536号公報、特開平10−282682号公報、特開平11−84674号公報、特開平10−69092号公報、特開平10−115931号公報、特開平11−38635号公報、特開平11−38629号公報、特開平10−282645号公報、特開平10−301262号公報、特開平11−24277号公報、特開平11−109641号公報、特開平10−319600号公報、特開平11−84674号公報、特開平11−327152号公報、特開2000−10292号公報、特開2000−235254号公報、特開2000−352854号公報、特開2001−209170号公報、特願平11−284091号公報等に記載のものを挙げることができる。
〔感光層〕
本発明の平版印刷版原版に用いられる感光層は、増感色素、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマーを含有する感光層であって、感光層の固形分塗布量が0.8〜1.2g/mである。
<感光層の固形分塗布量>
本発明の感光層は、その固形分塗布量が0.8〜1.2g/mであり、好ましくは0.9〜1.1g/mである。上記支持体の感光層が設けられる面の中心線平均粗さRaを所定範囲とすると共に、この感光層の固形分塗布量が上記範囲であると、製造加工におけるハンドリングや積替え作業で発生する擦りに対し優れた耐傷性を有し、実質的に合紙レスで取り扱え、耐刷性に優れた平版印刷版原版となる。
<増感色素>
本発明の感光層には、増感色素を含有させる。例えば300〜450nmに極大吸収を有する増感色素や、500〜600nmに極大吸収を有する増感色素、750〜1400nmに極大吸収を有する赤外線吸収剤を添加することで、各々、当業界で通常用いられている405nmのバイオレットレーザ、532nmのグリーンレーザ、803nmのIRレーザに対応した高感度な平版印刷版を提供することができる。
まず、350〜450nmの波長域に極大吸収を有する増感色素について説明する。この様な増感色素としては、例えば、メロシアニン色素類、ベンゾピラン類、クマリン類、芳香族ケトン類、アントラセン類、等を挙げることができる。
360nmから450nmの波長域に吸収極大を持つ増感色素のうち、高感度の観点からより好ましい色素は下記一般式(IX)で表される色素である。
(一般式(IX)中、Aは置換基を有してもよい芳香族環基またはヘテロ環基を表し、Xは酸素原子、硫黄原子またはN−(R3)をあらわす。R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、一価の非金属原子団を表し、AとR1およびR2とR3はそれぞれ互いに結合して、脂肪族性または芳香族性の環を形成してもよい。)
一般式(IX)について更に詳しく説明する。R1、R2およびR3は、それぞれ独立に、一価の非金属原子団であり、好ましくは、置換もしくは非置換のアルキル基、置換もしくは非置換のアルケニル基、置換もしくは非置換のアリール基、置換もしくは非置換の芳香族複素環残基、置換もしくは非置換のアルコキシ基、置換もしくは非置換のアルキルチオ基、ヒドロキシル基、ハロゲン原子を表す。
次に、一般式(IX)におけるAについて説明する。Aは置換基を有してもよい芳香族環基またはヘテロ環基を表し、置換基を有してもよい芳香族環またはヘテロ環の具体例としては、一般式(IX)中のR1、R2およびR3で記載したものと同様のものが挙げられる。
このような増感色素の具体例としては特開2007−58170(段落[0047]〜[0053]に記載の化合物が好ましく用いられる。
さらに、下記一般式(V)〜(VII)で示される増感色素も用いることができる。
式(V)中、R1〜R14は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。但し、R1〜R10の少なくとも一つは炭素数2以上のアルコキシ基を表す。
式(VI)中、R15〜R32は各々独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、シアノ基又はハロゲン原子を表す。但し、R15〜R24の少なくとも一つは炭素数2以上のアルコキシ基を表す。
式(VII)中、R1、R2およびR3は各々独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、−NR45基または−OR6基を表し、R4、R5およびR6は各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表し、k、mおよびnは各々0〜5の整数を表す。
また、特開2007−171406、特開2007−206216、特開2007−206217、特開2007−225701、特開2007−225702、特開2007−316582、特開2007−328243に記載の増感色素も好ましく用いることができる。
増感色素の好ましい添加量は、感光層の全固形分100質量部に対し、好ましくは0.05〜30質量部、更に好ましくは0.1〜20質量部、最も好ましくは0.2〜10質量部の範囲である。
続いて、本発明にて好適に用いられる750〜1400nmに極大吸収を有する増感色素について詳述する。
ここに使用される増感色素は、赤外線レーザの照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、かかる電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動、発熱(光熱変換機能)などが、感光層中に併存する重合開始剤に作用して、該重合開始剤に化学変化を生起させてラジカルを生成させるものと推定されている。いずれせよ、750〜1400nmに極大吸収を有する増感色素を添加することは、750nm〜1400nmの波長を有する赤外線レーザ光での直接描画される製版に特に好適であり、従来の平版印刷版原版に比べ、高い画像形成性を発現することができる。
赤外線吸収剤は、750nm〜1400nmの波長に吸収極大を有する染料または顔料であることが好ましい。
染料としては、市販の染料および例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1または以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子、窒素原子、または硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。Xa -は後述するZa -と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換または無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
一般式(a)中、R1およびR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R1およびR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環または6員環を形成していることが特に好ましい。
一般式(a)中、Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環およびナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子または炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7およびR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、およびスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、およびアリールスルホン酸イオンである。尚、対イオンとして、ハロゲンイオンを含有してないものが特に好ましい。
顔料としては、市販の顔料およびカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレンおよびペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、特に0.08μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。この好ましい粒径の範囲において、感光層中における顔料の優れた分散安定性が得られ、均一な感光層が得られる。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
これらの赤外線吸収剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
これらの赤外線吸収剤は、感光層中における均一性や感光層の耐久性の観点から、感光層を構成する全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で添加することができる。
<重合開始剤>
本発明の感光層には、重合開始剤を含有する。
本発明に用いられる重合開始剤としては、光、熱或いはその両方のエネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を開始、促進する化合物が挙げられる。
本発明に使用できるラジカル発生剤としては、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを使用することができ、本発明において好適に用いられるラジカルを発生する化合物は、熱エネルギーによりラジカルを発生し、重合性の不飽和基を有する化合物の重合を、開始、促進させる化合物を指す。熱ラジカル発生剤としては、公知の重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることができる。また、ラジカルを発生する化合物は、単独又は2種以上を併用して用いることができる。
ラジカルを発生する化合物としては、例えば、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オキシムエステル化合物、オニウム塩化合物、ボレート化合物が挙げられる。特に好ましいラジカル発生化合物としては、ボレート化合物、オニウム化合物が挙げられる。
上記オニウム塩化合物としては、スルホニウム塩、ヨードニウム塩、ジアゾニウム塩が好ましく用いられる。例えば、特開2004−252284の段落[0043]〜[0048]に記載のスルホニウム塩、段落[0050]〜[0058]に記載のヨードニウム塩が挙げれる。
特に反応性、安定性の面から上記オキシムエステル化合物或いはジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、イオン性のラジカル重合開始剤として機能する。
本発明において特に好ましい重合開始剤は、反応性、安定性のバランスから電子供与性基を有するヨードニウム塩、又は電子吸引性基を有するスルホニウム塩であり、中でも、カチオン部を有する骨格にアルコキシ基などを2つ以上有するヨードニウム塩、更に好ましくはアルコキシ基を3つ以上有するヨードニウム塩が最も好ましい。
これらの重合開始剤は、感光層を構成する全固形分に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%の割合で添加することができる。この範囲で、良好な感度と印刷時の非画像部の良好な汚れ難さが得られる。これらの重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらの重合開始剤は他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
<重合性化合物>
本発明の感光層には、重合性化合物を含有する。
前記重合性化合物は、分子内に、単官能基または2官能以上の多官能基を有する化合物であれば特に制限はないが、付加重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物であることが好ましい。
前記付加重合可能なエチレン性不飽和結合を有する化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。この様な化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、またはそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、及び単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、さらにハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926号公報、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号公報、特開昭59−5241号公報、特開平2−226149号公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。さらに、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号公報記載のシクロへキシレン構造を有すものをあげる事ができる。
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(α)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。

前記一般式(α)中、R51及びR52は、各々独立に、HまたはCHを示す。
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。
さらに、特開昭63−277653号公報、特開昭63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
その他の例としては、特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、特公昭52−30490号公報等の各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号公報、特公平1−40337号公報、特公平1−40336号公報等に記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報に記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報に記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。さらに日本接着協会誌 vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
これらの重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な重合性組成物の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、本発明における重合性化合物を、ネガ型平版印刷版原版の感光層として用いる場合には、次のような観点から選択される。感光スピードの点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものが良く、さらに、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感光性と強度の両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や疎水性の高い化合物は、感光スピードや膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましくない場合がある。また、感光層中の他の成分(例えば、後述するバインダーポリマー、前記した光又は熱重合開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。
また、本発明における重合性化合物を平版印刷版原版の感光層として適用した場合は、かかる平版印刷版原版の支持体や後述の保護層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。感光層中の重合性化合物の配合比に関しては、多い方が感度的に有利であるが、多すぎる場合には、好ましくない相分離が生じ、感光層の粘着性による製造工程上の問題(例えば、感光層成分の転写、粘着に由来する製造不良)や、現像液からの析出が生じる等の問題を生じうる。
これらの観点から、重合性化合物は、感光層中の不揮発性成分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。
そのほか、重合性化合物は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量に応じて任意に選択でき、さらに場合によっては前記した下塗り層等の層構成・塗布方法にも用いることができる。
<バインダーポリマー>
本発明の感光層には、バインダーポリマーを含有する。
前記バインダーポリマーは、感光層の皮膜形成剤として機能するポリマーであり、線状有機高分子重合体を含有させることが好ましい。このような「線状有機高分子重合体」としては、どれを使用しても構わない。
このようなバインダーポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル樹脂から選ばれる高分子が好ましい。なかでも、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。
さらに、バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性をもたせることができる。
バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中または側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよいし、高分子反応によって導入してもよい。
ここで架橋性基とは、平版印刷版原版を露光した際に感光層中で起こるラジカル重合反応の過程で高分子バインダーを架橋させる基のことである。このような機能の基であれば特に限定されないが、例えば、付加重合反応し得る官能基としてエチレン性不飽和結合基、アミノ基、エポキシ基等が挙げられる。また光照射によりラジカルになり得る官能基であってもよく、そのような架橋性基としては、例えば、チオール基、ハロゲン基、オニウム塩構造等が挙げられる。なかでも、エチレン性不飽和結合基が好ましく、下記一般式(11)〜一般式(13)で表される官能基が特に好ましい。
上記一般式(11)において、R〜Rは、それぞれ独立に、1価の有機基を表すが、Rとしては、好ましくは、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。また、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
上記一般式(11)において、Xは、酸素原子、硫黄原子、またはN(R12)−を表し、R12は、水素原子、または1価の有機基を表す。ここで、R12は、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
ここで、導入し得る置換基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基などが挙げられる。
上記一般式(12)において、R〜Rは、それぞれ独立に1価の有機基を表すが、R〜Rは、好ましくは、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基が好ましい。
導入し得る置換基としては、一般式(11)と同様のものが例示される。また、Yは、酸素原子、硫黄原子、またはN(R12)−を表す。R12は、一般式(11)のR12の場合と同義であり、好ましい例も同様である。
上記一般式(13)において、Rとしては、好ましくは、水素原子または置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、メチル基が、ラジカル反応性が高いことから好ましい。R10、R11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アミノ基、ジアルキルアミノ基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、置換基を有してもよいアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、置換基を有してもよいアルキルアミノ基、置換基を有してもよいアリールアミノ基、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基、置換基を有してもよいアリールスルホニル基などが挙げられ、なかでも、水素原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基がラジカル反応性が高いことから好ましい。
ここで、導入し得る置換基としては、一般式(11)と同様のものが例示される。また、Zは、酸素原子、硫黄原子、−N(R13)−、または置換基を有してもよいフェニレン基を表す。R13としては、置換基を有してもよいアルキル基などが挙げられ、なかでも、メチル基、エチル基、イソプロピル基が、ラジカル反応性が高いことから好ましい。
上記の中でも、側鎖に架橋性基を有する(メタ)アクリル酸共重合体およびポリウレタンがより好ましい。
架橋性を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカルまたは重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接にまたは重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。または、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。
−アルカリ可溶性バインダーポリマー−
現像処理がアルカリ現像液を用いて行われる態様においては、バインダーポリマーは、アルカリ現像液に溶解する必要があるため、アルカリ水に可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が好ましく使用される。特にpHが10以上のアルカリ現像液を用いる場合には、アルカリ可溶性バインダーが好適に用いられる。
アルカリ水に可溶性である為に、アルカリ可溶性基を有することが好ましい。アルカリ可溶性は酸基であることが好ましく、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、水酸基などが挙げられる。これらのうち、被膜性・対刷性・現像性の両立という観点から、カルボキシル基を有するバインダーポリマーが特に好ましい。
さらに、アルカリ可溶性バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、上記のように架橋性をもたせることができる。バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中または側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよいし、高分子反応によって導入してもよい。
アルカリ可溶性バインダーポリマーの質量平均分子量は、画像形成性や耐刷性の観点から適宜決定される。好ましい質量平均分子量としては、2,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜500,000、更に好ましくは10,000〜200,000の範囲である。また、数平均分子量が1,000以上であるのが好ましく、2,000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(質量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
アルカリ可溶性バインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。
アルカリ可溶性バインダーポリマーは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい
アルカリ可溶性バインダーポリマーの含有量は、感光層の全固形分に対して、通常5〜90質量%であり、10〜70質量%であるのが好ましく、10〜60質量%であるのがより好ましい。この範囲内で、良好な画像部の強度と画像形成性が得られる。
<その他の成分>
本発明の感光層には、更にその用途、製造方法等に適したその他の成分を適宜添加することができる。以下、好ましい添加剤について説明する。
−共増感剤−
前記した重合性化合物、重合開始剤、およびバインダーポリマーを含む重合性組成物にある種の添加剤を用いることで、感度を更に向上させることができる。このような化合物を以後、共増感剤という。これらの作用機構は、明確ではないが、多くは次のような化学プロセスに基づくものと考えられる。即ち、熱重合開始剤により開始される光反応、と、それに引き続く付加重合反応の過程で生じる様々な中間活性種(ラジカル、カチオン)と、共増感剤が反応し、新たな活性ラジカルを生成するものと推定される。これらは、大きくは、(i)還元されて活性ラジカルを生成し得るもの、具体的には、例えば、トリハロメチル−s−トリアジン類や、トリハロメチルオキサジアゾール類、ヘキサアリールビイミダゾール類等、鉄アレーン錯体類、(ii)酸化されて活性ラジカルを生成し得るもの、具体的には、例えば、トリアリールアルキルボレート類、エタノールアミン類、N−フェニルグリシン類、N−フェニルイミノジ酢酸及びその誘導体、N−トリメチルシリルメチルアニリン類等(iii)活性の低いラジカルと反応し、より活性の高いラジカルに変換するか、もしくは連鎖移動剤として作用するもの、具体的には、例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類等の分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群に分類できるが、個々の化合物がこれらのどれに属するかに関しては、通説がない場合も多い。
これらの共増感剤は、単独で又は2種以上併用して用いることができる。使用量は前記重合性化合物100質量部に対し0.05〜100質量部、好ましくは1〜80質量部、更に好ましくは3〜50質量部の範囲が適当である。
−重合防止剤−
また、本発明においては、さらに、感光層の形成に用いる重合性組成物の製造中又は保存中において重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合防止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合防止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t―ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4‘−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2‘−メチレンビス(4−メチル−6−t―ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、平版印刷版原版とする場合、支持体等への塗布後の乾燥の過程でその感光層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、全組成物の約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
−着色剤等−
更に、本発明の平版印刷版原版においては、その感光層の着色を目的として染料もしくは顔料を添加してもよい。これにより、印刷版としての、製版後の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させることができる。着色剤としては、多くの染料は光重合系感光層の感度の低下を生じるので、着色剤としては、特に顔料の使用が好ましい。具体例としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料がある。染料及び顔料の添加量は全組成物の約0.5質量%〜約5質量%が好ましい。
−その他の添加剤−
更に、本発明の平版印刷版原版においては、硬化皮膜の物性を改良するための無機充填剤や、その他、可塑剤、感光層表面のインク着肉性を向上させうる感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
上記可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、結合剤を使用した場合、エチレン性不飽和二重結合を有する化合物と結合剤との合計質量に対し10質量%以下添加することができる。
また、後述する膜強度(耐刷性)向上を目的とした、現像後の加熱・露光の効果を強化するための、UV開始剤や、熱架橋剤等の添加もできる。
その他、感光層と支持体との密着性向上や、未露光領域の現像除去性を高めるための添加剤、下塗り層(中間層)を設けることが可能である。例えば、ジアゾニウム構造を有する化合物や、ホスホン化合物、等、基板と比較的強い相互作用を有する化合物の添加や下塗りにより、密着性が向上し、耐刷性を高めることが可能であり、一方ポリアクリル酸や、ポリスルホン酸のような親水性ポリマーの添加や下塗りにより、非画像部の現像性が向上し、汚れ性の向上が可能となる。
平版印刷版原版は、感光層塗布液や、保護層等の所望の層の塗布液用成分を溶媒に溶かして、適当な支持体上に塗布することにより平版印刷版原版を製造することができる。
ここで使用する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N―ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ―ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。これらの溶媒は、単独あるいは混合して使用することができる。そして、塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
〔保護層〕
本発明の平版印刷版原版は、感光層上に保護層を設けることが好ましい。
保護層は、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、感光層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。このような保護層に関する工夫は従来、種々なされており、例えば、米国特許第3,458,311号明細書および特開昭55−49729号公報に詳しく記載されている。このような保護層を本発明の平版印刷版原版にも適用することができる。
また、本発明の平版印刷版原版は、重合型の感光層を有していることから、露光時において大気中の酸素を遮断して重合阻害作用を呈する酸素遮断能を有することが望ましい。一方で、保存時の安定性或いはセーフライト適性の観点で暗重合防止作用を呈する程度の酸素透過能を有することも望ましく、両機能を有する程度において、低酸素遮断性を有する保護層とすることが望ましい。
−水溶性高分子化合物−
保護層に主成分として用いられる材料としては、比較的、結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることが好ましく、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような水溶性ポリマーが当業界でよく知られている。これらの中で、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性に最も良好な結果を与える。保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要とされる酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル、およびアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。
具体的には、(株)クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。上記の共重合体としては、88〜100%加水分解されたポリビニルアセテートクロロアセテートまたはプロピオネート、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタールおよびそれらの共重合体が挙げられる。その他有用な水溶性高分子化合物としてはポリビニルピロリドン、ゼラチンおよびアラビアゴム等が挙げられ、これらは単独または併用して用いてもよい。
好適に用いられるポリビニルアルコールとしては、ケン化度が71〜100%、分子量が200〜2,400の範囲のものを挙げることができる。良好な酸素遮断性、優れた被膜形成性と低接着性表面を有するという観点で、ケン化度が91モル%以上のポリビニルアルコールを用いることが、より好ましい。
感光層に用いうる市販のポリビニルアルコールとしては、具体的には、株式会社クラレ製の、PVA−102、PVA−103、PVA−104、PVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−120、PVA−124、PVA−117H、PVA−135H、PVA−HC、PVA−617、PVA−624、PVA−706、PVA−613、PVA−CS、PVA−CST、日本合成化学工業株式会社製の、ゴーセノールNL−05、NM−11、NM−14、AL−06、P−610、C−500、A−300、AH−17、日本酢ビ・ポバール株式会社製の、JF−04、JF−05、JF−10、JF−17、JF−17L、JM−05、JM−10、JM−17、JM−17L、JT−05、JT−13、JT−15等が挙げられる。
さらに、ポリビニルアルコールを酸変性したものも好適に用いられる。具体的には、イタコン酸やマレイン酸変性のカルボキシ変性ポリビニルアルコールやスルホン酸変性ポリビニルアルコールが好適なものとして挙げられる。これら酸変性ポリビニルアルコールもケン化度が91モル%以上のものが、より好ましく使用できる。
具体的な酸変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、株式会社クラレ製の、KL−118、KM−618、KM−118、SK−5102、MP−102、R−2105、日本合成化学工業株式会社製の、ゴーセナールCKS−50、T−HS−1、T−215、T−350、T−330、T−330H、日本酢ビ・ポバール株式会社製の、AF−17、AT−17等が挙げられる。
上記の水溶性高分子化合物は、得られる平版印刷原版の感度や、積層した場合に平版印刷版原版同士の接着などを考慮すると、保護層中の全固形分量に対して、45〜95質量%の範囲で含有されることが好ましく、50〜90質量%の範囲で含有されることがより好ましい。
上記水溶性高分子化合物は、少なくとも1種を用いればよく、複数種を併用してもよい。複数種の水溶性高分子化合物を併用した場合でも、その合計の量が上記の質量範囲であることが好ましい。
一方で、保護層においては、感光層の画像部との密着性や、皮膜の均一性も版の取り扱い上極めて重要である。即ち、水溶性ポリマーからなる親水性の層を親油性の感光層に積層すると、接着力不足による膜剥離が発生しやすく、剥離部分が酸素の重合阻害により膜硬化不良などの欠陥を引き起こす。これに対し、これら2層間の接着性を改善すべく種々の提案がなされている。例えば、米国特許出願番号第292,501号明細書、米国特許出願番号第44,563号明細書には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルジョン又は水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体などを20〜60質量%混合し、感光層の上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。これらの公知の技術をいずれも適用することはもちろん可能である。
感光層との接着力、感度、不要なカブリの発生性の観点から、保護層にポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンとを併用してもよい。この場合の添加量比(質量比)は、ケン化度が91モル%以上のポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドンが、3/1以下であることが好ましい。また、ポリビニルピロリドンの他にも、比較的結晶性に優れている、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸、及びこれらの共重合体なども、ポリビニルアルコールと併用することができる。
−フィラー−
本発明に係る保護層には、前記高分子化合物に加え、フィラーを含有することが好ましい。フィラーを含有することによって、感光層表面の耐キズ性の向上が図れ、さらには、平版印刷版原版を、合紙を介することなく積層した場合に生じる隣接する平版印刷版原版との接着が抑制され、平版印刷版原版同士の剥離性を優れたものとしうるため、ハンドリング性が向上するという利点をも有することになる。かかるフィラーとしては、有機フィラー、無機フィラー、無機−有機複合フィラー等のいずれでもよく、またこれらのうち、2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは無機フィラーと有機フィラーの併用である。
フィラーの形状は、目的に応じて適宜選択されるが、例えば、繊維状、針状、板状、球状、粒状(なお、ここで「粒状」とは「不定形状の粒子」を指し、以下、本明細書において同じ意味で用いる。)、テトラポット状およびバルーン状等が挙げられる。これらのうち、好ましいものは板状、球状、粒状である。
有機フィラーとしては、例えば合成樹脂粒子、天然高分子粒子等が挙げられ、好ましくはアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、カルボキシメチルセルロールス、ゼラチン、デンプン、キチン、キトサン等の樹脂粒子であり、より好ましくはアクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等の樹脂粒子が挙げられる。
保護層に添加する有機フィラーに好適な市販のフィラーとしては、具体的には、三井化学製の、ケミパールW100、W200、W300、W308、W310、W400、W401、W4005、W410、W500、WF640、W700、W800、W900、W950、WP100、綜研化学製の、MX−150、MX−180、MX−300、MX−500、MX−1000、MX−1500H、MX−2000、MR−2HG、MR−7HG、MR−10HG、MR−3GSN、MR−5GSN、MR−2G、MR−7G、MR−10G、MR−20G、MR−5C、MR−7GC、SX−130H、SX−350H、SX−500H、SGP−50C、SGP−70C、積水化成品工業製の、MBX−5、MBX−8、MBX−12、MBX−15、MBX−20、MB20X−5、MB30X−5、MB30X−8、MB30X−20、SBX−6、SBX−8、SBX−12、SBX−17等が挙げられる。
粒子サイズ分布は、単分散でも多分散でもよいが、単分散が好ましい。フィラーの大きさは、平均粒子径が1〜20μmであることが好ましく、より好ましくは、平均粒子径が2〜15μm、更に好ましくは、平均粒子径が3〜10μmである。これらの範囲内とすることにより、上記本発明の効果がより有効に発現される。
有機フィラーの含有量は、保護層の全固形分量に対し、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%、さらに好ましくは、2〜10質量%である。
無機フィラーとしては、金属及び金属化合物、例えば、酸化物、複合酸化物、水酸化物、炭酸塩、硫酸塩、ケイ酸塩、リン酸塩、窒化物、炭化物、硫化物及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等が挙げられ、具体的には、雲母化合物、硝子、酸化亜鉛、アルミナ、酸化ジルコン、酸化錫、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、硼酸アルミニウム、酸化マグネシウム、硼酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化チタン、塩基性硫酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、窒化珪素、窒化チタン、窒化アルミ、炭化珪素、炭化チタン、硫化亜鉛及びこれらの少なくとも2種以上の複合化物等が挙げられる。
好ましくは、雲母化合物、硝子、アルミナ、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、硼酸アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウム等が挙げられる。
これらのうち、保護層に特に好適なものとして、雲母化合物が挙げられる。この雲母に代表される無機質の層状化合物について以下に詳述する。
−無機質の層状化合物−
前記保護層は、無機質の層状化合物を含有することが好ましい。無機質の層状化合物を併用することにより、酸素遮断性はさらに高まり、また、保護層の膜強度が一層向上して耐キズ性が向上する他、保護層にマット性を付与することができる。
その結果、保護層は、上記の酸素等の遮断性に加え、変形などによる劣化やキズの発生を抑制することが可能となる。さらに、保護層にマット性を付与することによって、平版印刷版原版を積層した場合に、平版印刷版原版の保護層表面と隣接する平版印刷版原版の支持体裏面との接着を抑制することが可能となる。
無機質の層状化合物としては、例えば、一般式:A(B,C)−5D10(OH,F,O)〔ただし、Aは、K,Na,Caの何れか、B及びCは、Fe(II),Fe(III),Mn,Al,Mg,Vの何れかであり、Dは、Si又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母化合物などが挙げられる。
上記雲母化合物においては、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5(Si10)F等の非膨潤性雲母、及びNaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、Na又はLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg2/5Li1/8(Si10)F等の膨潤性雲母等が挙げられる。更に、合成スメクタイトも有用である。
上記の雲母化合物の中でも、フッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。即ち、この膨潤性合成雲母は、10〜15Å程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘度鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にNa、Ca2+、Mg2+等の陽イオンを吸着している。これらの層間に介在している陽イオンは交換性陽イオンと呼ばれ、いろいろな陽イオンと交換する。特に、層間の陽イオンがLi、Naの場合、イオン半径が小さいため層状結晶格子間の結合が弱く、水により大きく膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、本実施の形態において有用であり、特に、膨潤性合成雲母が好ましく用いられる。
雲母化合物の形状としては、拡散制御の観点からは、厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きいほどよい。従って、アスペクト比は20以上であり、好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の長径に対する厚さの比であり、例えば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
雲母化合物の粒子径は、その平均長径が0.3〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1〜5μmである。また、該粒子の平均の厚さは、0.1μm以下、好ましくは、0.05μm以下、特に好ましくは、0.01μm以下である。具体的には、例えば、代表的化合物である膨潤性合成雲母のサイズは、厚さが1〜50nm、面サイズ(長径)が1〜20μm程度である。
無機質の層状化合物の保護層に含有される量は、積層した場合の平版印刷版原版同士の接着の抑制やキズ発生の抑制、レーザ露光時の遮断による感度低下、低酸素透過性などの観点から、保護層の全固形分量に対し、5〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜40質量%の範囲が特に好ましい。複数種の無機質の層状化合物を併用した場合でも、これらの無機質の層状化合物の合計の量が上記の質量であることが好ましい。
無機質の層状化合物以外の無機フィラーの保護層に含有される量も同様に、保護層の全固形分量に対し、5〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜40質量%の範囲が特に好ましい。
保護層中には、有機フィラーと無機フィラーとを混合して使用することも可能であり、混合比率は重量比で、1:1〜1:5の範囲が好適である。この場合の保護層への含有量としては、保護層の全固形分量に対し、無機フィラー有機フィラーの合計量で5〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜40質量%の範囲がより好ましい。
また、無機−有機複合フィラーを用いることもできる。無機−有機複合フィラーとしては、例えば、上記有機フィラーと無機フィラーの複合化物が挙げられ、複合化に用いられる無機フィラーとしては、金属粉体、金属化合物(例えば、酸化物、窒化物、硫化物、炭化物及びこれらの複合化物等)の粒子が挙げられ、好ましくは酸化物及び硫化物等であり、より好ましくはガラス、SiO、ZnO、Fe、ZrO、SnO、ZnS、CuS等の粒子が挙げられる。無機−有機複合フィラーの保護層への含有量としては、保護層の全固形分量に対し、5〜50質量%の範囲であることが好ましく、10〜40質量%の範囲がより好ましい。
保護層の成分(ポリビニルアルコールや無機質の層状化合物の選択、添加剤の使用)、塗布量等は、酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。
本発明において、保護層は単層に限らず、互いに異なる組成を有する複数の保護層を重層構造で設けることも可能である。重層構造の保護層の好ましい態様としては、感光層に近接して無機質の層状化合物を含有する保護層を下部保護層として設け、その表面にフィラーを含有する保護層を上部保護層として、これらを順次積層する態様が挙げられる。
このような積層構造の保護層を設けることによって、最上層の保護層において、フィラーに起因する耐傷性、耐接着性の利点を十分に生かしながら、下部保護層の優れた酸素遮断性と相俟って、傷の発生及び所望されない酸素透過のいずれに起因する画像欠損も効果的に防止することができる。
本発明における保護層は、25℃−1気圧における酸素透過度が、0.5ml/m・day以上100ml/m・day以下であることが好ましく、このような酸素透過度を達成するように、塗布量を調整することが好ましい。
なお、保護層には、感光層を露光する際に用いる光の透過性に優れ、かつ、露光に関わらない波長の光を効率よく吸収しうる、着色剤(水溶性染料)を添加してもよい。これにより、感度を低下させることなく、セーフライト適性を高めることができる。
(保護層の形成)
保護層の塗布方法は、特に制限されるものではなく、上記成分を含む水性保護層用塗布液を、感光層上に塗布することで実施される。例えば、米国特許第3,458,311号明細書又は特開昭55−49729号公報に記載されている方法も適用することができる。
以下、雲母化合物等の無機質の層状化合物とポリビニルアルコール等の水溶性高分子化合物とを含有する保護層の塗布方法について詳述する。雲母化合物等の無機質の層状化合物が分散する分散液を調製し、その分散液と、上記のポリビニルアルコール等の水溶性高分子化合物(又は、水溶性高分子化合物を溶解した水溶液)とを混合してなる保護層用塗布液を、感光層上に塗布することで保護層が形成される。
保護層に用いる雲母化合物等の無機質の層状化合物の分散方法の例について述べる。まず、水100質量部に先に雲母化合物の好ましいものとして挙げた膨潤性雲母化合物を5〜10質量部添加し、充分水になじませ、膨潤させた後、分散機にかけて分散する。ここで用いる分散機としては、機械的に直接力を加えて分散する各種ミル、大きな剪断力を有する高速攪拌型分散機、高強度の超音波エネルギーを与える分散機等が挙げられる。具体的には、ボールミル、サンドグラインダーミル、ビスコミル、コロイドミル、ホモジナイザー、ティゾルバー、ポリトロン、ホモミキサー、ホモブレンダー、ケディミル、ジェットアジター、毛細管式乳化装置、液体サイレン、電磁歪式超音波発生機、ポールマン笛を有する乳化装置等が挙げられる。一般には、上記の方法で分散した雲母化合物の2〜15質量%の分散物は高粘度或いはゲル状であり、保存安定性は極めて良好である。この分散物を用いて保護層用塗布液を調製する際には、水で希釈し、充分攪拌した後、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子化合物(又は、ポリビニルアルコールなどの水溶性高分子化合物を溶解した水溶液)と配合して調製するのが好ましい。
この保護層用塗布液には、塗布性を向上させための界面活性剤や、得られる被膜の物性改良のための水溶性可塑剤など、公知の添加剤を加えることができる。水溶性の可塑剤としては、例えば、プロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。また、水溶性の(メタ)アクリル系ポリマーを加えることもできる。更に、この塗布液には、感光層との密着性、塗布液の経時安定性を向上するための公知の添加剤を加えてもよい。
保護層の塗布量は、得られる保護層の膜強度や耐キズ性、画質の維持、セーフライト適性を付与するための適切な酸素透過性を維持する観点で、0.1g/m〜4.0g/mが好ましく、0.3g/m〜3.0g/mがより好ましい。
重層構造の保護層を設ける場合の塗布方法には特に制限はなく、同時重層塗布を行う方法、逐次塗布して重層する方法のいずれも適用することができる。
重層塗布を行う場合の、無機質の層状化合物を含有する下部保護層とフィラーを含有する上部保護層との塗布量は、下部保護層が0.1g/m〜1.5g/mが好ましく、0.2g/m〜1.0g/mがより好ましく、上部保護層が0.1g/m〜4.0g/mが好ましく、0.2g/m〜3.0g/mがより好ましい。両者のバランスとしては、1:1〜1:5であることが好ましい。
〔製版方法〕
本発明の平版印刷版原版を用いた製版方法としては、本発明の平版印刷版原版を、露光した後、アルカリ性水溶液による現像処理工程を実施する方法を挙げることができる。さらに、これらの露光処理工程、現像処理工程のほかに、特定pHの処理液による処理工程や、後述する任意の他の工程を有していてもよい。
−露光−
露光処理に用いられる光源としては、750nm〜1400nmの波長で露光し得るものであることが好ましく、赤外線レーザーが好適なものとして挙げられる。中でも、本発明においては、750nm〜1400nmの波長の赤外線を放射する固体レーザーおよび半導体レーザーにより画像露光されることが好ましい。レーザーの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。平版印刷版原版に照射されるエネルギーは10〜300mJ/cmであることが好ましい。露光のエネルギーを上記範囲とすることで、感光層の硬化が十分に進行し、また、感光層がレーザーアブレーションされ、画像が損傷することを防止することができる。
本発明における露光処理では、光源の光ビームをオーバーラップさせて露光することができる。オーバーラップとは副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えば、ビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表わしたとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が0.1以上であることが好ましい。
本発明に使用する露光装置の光源の走査方式は特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、円筒外面方式の場合にはマルチチャンネルが好ましく用いられる。
露光処理された平版印刷版原版は、特段の加熱処理および水洗処理を行なうことなく、現像処理に供されてもよい。この加熱処理を行なわないことで、加熱処理に起因する画像の不均一性を抑制することができる。また、加熱処理および水洗処理を行なわないことで、現像処理において安定な高速処理が可能となる。
−現像−
現像処理では、現像液を用いて、感光層の非画像部を除去する。
なお、本発明においては、上述のように、現像処理における処理速度、即ち、現像処理における平版印刷版原版の搬送速度(ライン速度)は、1.25m/分以上であることが好ましく、より好ましくは、1.35m/分以上である。また、搬送速度の上限値には特に制限はないが、搬送の安定性の観点からは、3m/分以下であることが好ましい。
尚、感光層の、下塗り層が隣接する側とは反対の表面に設けてもよい前記保護層は、前述の通り有機樹脂微粒子と雲母粒子とを含有しているものが好ましく、このような保護層は有機樹脂微粒子の分散性が良好であるため、現像処理後の現像液における有機樹脂微粒子の分散性にも優れる。そのため、本発明に用いる現像液は、経時安定性が良好となる。
以下、本発明に用いられる現像液について説明する。
(現像液)
本発明に用いられる現像液は、pH14以下のアルカリ水溶液であることが好ましく、また、芳香族アニオン界面活性剤を含有することが好ましい。
[芳香族アニオン界面活性剤]
本発明における現像液に用いられる芳香族アニオン界面活性剤は、現像促進効果、重合性ネガ型の感光層成分および保護層成分の現像液中での分散安定化効果があり、現像処理安定化において好ましい。
これら芳香族アニオン界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。芳香族アニオン界面活性剤の添加量は、現像液中における芳香族アニオン界面活性剤の濃度が1.0〜10質量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは2〜10質量%の範囲とすることが効果的である。ここで、含有量が1.0質量%以上であると、現像性低下および感光層成分の溶解性低下を防止することができ、含有量が10質量%以下であると、印刷版の耐刷性の低下を抑制することができる。
前記現像液には、前記芳香族アニオン界面活性剤以外に、その他の界面活性剤を併用してもよい。その他の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンステアレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンアルキルエステル類、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート等のモノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン界面活性剤である。
これらその他の界面活性剤の現像液中における含有量は有効成分換算で、0.1〜10質量%が好ましい。
[2価金属に対するキレート剤]
前記現像液には、例えば、硬水に含まれるカルシウムイオンなどによる影響を抑制する目的で、2価金属に対するキレート剤を含有させることが好ましい。2価金属に対するキレート剤としては、例えば、Na、Na、Na、NaP(NaOP)PONa、カルゴン(ポリメタリン酸ナトリウム)などのポリリン酸塩、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、そのアミン塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、ナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなアミノポリカルボン酸類の他2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2−ホスホノブタノントリカルボン酸−2,3,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2、2、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類を挙げることができ、中でも、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、そのアミン塩;エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、そのアンモニウム塩、そのカリウム塩、;ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、そのアンモニウム塩、そのカリウム塩が好ましい。
このようなキレート剤の最適量は使用される硬水の硬度およびその使用量に応じて変化するが、一般的には、使用時の現像液中に0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲で含有させる。
また、前記現像液には、現像調整剤として有機酸のアルカリ金属塩類、無機酸のアルカリ金属塩類を加えてもよい。例えば、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、クエン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウムなどを単独若しくは2種以上を組み合わせて混合して用いてもよい。
[アルカリ剤]
前記現像液に用いられるアルカリ剤としては、例えば、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、硼酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、および同リチウムなどの無機アルカリ剤および、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤等が挙げられる。本発明においては、これらを単独で用いてもよいし、若しくは2種以上を組み合わせて混合して用いてもよい。
また、上記以外のアルカリ剤として、アルカリ珪酸塩を挙げることができる。アルカリ珪酸塩は塩基と組み合わせて使用してもよい。使用するアルカリ珪酸塩としては、水に溶解したときにアルカリ性を示すものであって、例えば珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウムなどがある。これらのアルカリ珪酸塩は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられる現像液は、支持体の親水化成分としての珪酸塩の成分である酸化ケイ素SiOと、アルカリ成分としてのアルカリ酸化物MO(Mはアルカリ金属またはアンモニウム基を表す)との混合比率、および濃度の調整により、最適な範囲に容易に調節することができる。酸化ケイ素SiOとアルカリ酸化物MOとの混合比率(SiO/MOのモル比)は、支持体の陽極酸化皮膜が過度に溶解(エッチング)されることに起因する放置汚れや、溶解アルミニウムと珪酸塩との錯体形成に起因する不溶性ガスの発生を抑制するといった観点から、好ましくは0.75〜4.0の範囲であり、より好ましくは0.75〜3.5の範囲で使用される。
また、現像液中のアルカリ珪酸塩の濃度としては、支持体の陽極酸化皮膜の溶解(エッチング)抑制効果、現像性、沈殿や結晶生成の抑制効果、および廃液時における中和の際のゲル化防止効果などの観点から、現像液の質量に対して、SiO量として、0.01
〜1mol/Lが好ましく、より好ましくは0.05〜0.8mol/Lの範囲で使用される。
本発明において使用される現像液には、上記の成分の他に、必要に応じて以下のような成分を併用することができる。例えば、安息香酸、フタル酸、p−エチル安息香酸、p−n−プロピル安息香酸、p−イソプロピル安息香酸、p−n−ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、p−2−ヒドロキシエチル安息香酸、デカン酸、サリチル酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等の有機カルボン酸;プロピレングリコール等の有機溶剤;この他、還元剤、染料、顔料、硬水軟化剤、防腐剤等が挙げられる。
本発明に用いられる現像液は、25℃におけるpHが10〜12.5の範囲であることが好ましく、pH11〜12.5の範囲であることがより好ましい。本発明における現像液は、前記界面活性剤を含むため、このような低pHの現像液を用いても、非画像部において優れた現像性を発現する。このように、現像液のpHを比較的低い値とすることにより、現像時における画像部へのダメージを軽減するとともに、現像液の取扱い性にも優れる。
また、前記現像液の導電率xは、2<x<30mS/cmであることが好ましく、5〜25mS/cmであることがより好ましい。
ここで、導電率を調整するための導電率調整剤として、有機酸のアルカリ金属塩類、無機酸のアルカリ金属塩類等を添加することが好ましい。
上記の現像液は、露光された平版印刷版原版の現像液および現像補充液として用いることができ、自動現像機に適用することが好ましい。自動現像機を用いて現像する場合、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液または新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。本発明の製版方法においてもこの補充方式が好ましく適用される。
更に、自動現像機を用いて、現像液の処理能力を回復させるためには、米国特許第4,882,246号に記載されている方法で補充することが好ましい。また、特開昭50−26601号、同58−54341号、特公昭56−39464号、同56−42860号、同57−7427号の各公報に記載されている現像液も好ましい。
本発明で用いられるより好ましい現像補充液は、アルミニウムイオンと水溶性キレート化合物形成能を有するオキシカルボン酸キレート剤と、アルカリ金属の水酸化物と、界面活性剤とを含有し、ケイ酸塩を含有せず、pH11〜13.5の水溶液であることを特徴とする現像補充液である。このような現像補充液を使用することにより、優れた現像性と版材の画像部の強度を損なうことの無い特性を有し、現像液のアルカリによりアルミニウム支持体が溶出されて形成する水酸化アルミニウムの析出が効果的に抑制され、自動現像機の現像浴ローラー表面への水酸化アルミニウムを主成分とする汚れの付着や、引き続く水洗浴内への水酸化アルミニウム析出物の蓄積が低減され、長期間安定に処理することができる。
このようにして現像処理された平版印刷版原版は、特開昭54−8002号公報、同55−115045号公報、同59−58431号公報等の各公報に記載されているように、水洗水、界面活性剤等を含有するリンス液、アラビアガムや澱粉誘導体等を含む不感脂化液で後処理される。本発明に係る平版印刷版原版の後処理にはこれらの処理を種々組み合わせて用いることができる。このような処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
本発明の平版印刷版原版を用いた製版方法においては、画像強度・耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱若しくは、全面露光を行うこともできる。
現像後の加熱には非常に強い条件を利用することができる。通常は加熱温度が200〜500℃の範囲で実施される。現像後の加熱温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じるおそれがある。
以上の処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
印刷時、版上の汚れ除去のため使用するプレートクリーナーとしては、従来より知られているPS版用プレートクリーナーが使用され、例えば、マルチクリーナー、CL−1、CL−2、CP、CN−4、CN、CG−1、PC−1、SR、IC(富士フイルム株式会社製)等が挙げられる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
(実施例1)
<支持体Aの作製>
表面処理は、以下の(a)〜(e)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理及び水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
処理(a)
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径30μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm)を用いブラシ回転数250rpmでアルミ表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。
処理(b)
この板を45℃の25%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、さらに60℃で20%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。
処理(c)
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
処理(d)
次に、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dmの条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
処理(e)
この板を、15%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/mの直流陽極酸化被膜を設けた後、水洗、乾燥し支持体Aとした。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
以上のようにして支持体Aを作製した。
<下塗り層>
次に、このアルミニウム支持体Aの表面に下記下塗り層用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、100℃10秒間乾燥して下塗り層を形成した。塗布量は10mg/mであった。
−下塗り層用塗布液−
・高分子化合物 0.05g
(P−1:メタクリル酸/メタクリル酸メチル/メタクリル酸ナトリウム共重合体:組成比25/50/25、重量平均分子量Mw:35000)
・メタノール 27g
・イオン交換水 3g
<感光層>
得られた下塗り層の上に、下記組成の感光層用塗布液を調製し、ワイヤーバーを用いて乾燥後の塗布量が1.0g/mとなるように塗布し、温風式乾燥装置にて115℃で34秒間乾燥して感光層を形成した。
−感光層用塗布液−
・赤外線吸収剤(下記IR−1) 0.038g
・重合開始剤A(下記S−1) 0.061g
・重合開始剤B(下記I−1) 0.094g
・メルカプト化合物(下記SH−1) 0.015g
・増感助剤(下記T−1) 0.081g
・付加重合性化合物(下記M−1) 0.428g
・バインダーポリマーA(下記B−1) 0.311g
・バインダーポリマーB(下記B−2) 0.250g
・バインダーポリマーC(下記B−3) 0.062g
・重合禁止剤(下記Q−1) 0.0012g
・銅フタロシアニン顔料分散物 0.159g
・フッ素系界面活性剤 0.0081g
(メガファックF−780−F 大日本インキ化学工業(株)、
メチルイソブチルケトン(MIBK)30質量%溶液)
・メチルエチルケトン 5.886g
・メタノール 2.733g
・1−メトキシ−2−プロパノール 5.886g

<保護層>
(下部保護層の形成)
上記のようにして得られた感光層表面に、合成雲母(ソマシフMEB−3L、3.2%水分散液、コープケミカル(株)製)、ポリビニルアルコール(ゴーセランCKS−50:ケン化度99モル%、重合度300、スルホン酸変性ポリビニルアルコール日本合成化学工業株式会社製)界面活性剤A(日本エマルジョン社製、エマレックス710)及び界面活性剤B(アデカプルロニックP−84:旭電化工業株式会社製)の混合水溶液(保護層用塗布液)をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃で30秒間乾燥させた。
この混合水溶液(保護層用塗布液)中の合成雲母(固形分)/ポリビニルアルコール/界面活性剤A/界面活性剤Bの含有量割合は、7.5/89/2/1.5(質量%)であり、塗布量は(乾燥後の被覆量)は0.5g/mであった。
(上部保護層の形成)
下部保護層表面に、有機フィラー(アートパールJ−7P、根上工業(株)製)、合成雲母(ソマシフMEB−3L、3.2%水分散液、コープケミカル(株)製)、ポリビニルアルコール(L−3266:ケン化度87モル%、重合度300、スルホン酸変性ポリビニルアルコール日本合成化学工業株式会社製)、増粘剤(セロゲンFS−B、第一工業製薬(株)製)、高分子化合物A(下記構造)、及び界面活性剤(日本エマルジョン社製、エマレックス710)の混合水溶液(保護層用塗布液)をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃で30秒間乾燥させた。
この混合水溶液(保護層用塗布液)中の有機フィラー/合成雲母(固形分)/ポリビニルアルコール/増粘剤/高分子化合物A/界面活性剤の含有量割合は、4.7/2.8/67.4/18.6/2.3/4.2(質量%)であり、塗布量は(乾燥後の被覆量)は1.8g/mであった。
このようにして、実施例1の平版印刷版原版を製造した。
(実施例2〜3)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、感光層の塗布量を下記表1に示す値となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜3の平版印刷版原版を得た。
(実施例4)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、支持体Aの作製の処理(a)において、ブラシ回転数を190rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例4の平版印刷版原版を得た。このようにして得られた支持体を支持体Bとする。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.40μmであった。
(実施例5)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、支持体Aの作製の処理(a)において、ブラシ回転数を310rpmに変更した以外は、実施例3と同様にして、実施例5の平版印刷版原版を得た。このようにして得られた支持体を支持体Cとする。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.60μmであった。
(比較例1〜2)
実施例1の感光層の塗布量を下記表1に示す値となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例1及び2の平版印刷版原版を得た。
(比較例3)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、支持体Aの作製の処理(a)において、ブラシ回転数を100rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の平版印刷版原版を得た。このようにして得られた支持体を支持体Dとする。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.30μmであった。
(比較例4)
比較例3の平版印刷版原版の製造工程中、感光層の塗布量を下記表1に示す値となるように変更した以外は、比較例3と同様にして比較例4の平版印刷版原版を得た。
(比較例5)
実施例1の支持体Aを、下記支持体Eに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例3の平版印刷版原版を得た。
<支持体Eの作製>
表面処理は、以下の処理(f)〜処理(k)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理及び水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
処理(f)
アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃でエッチング処理を行い、アルミニウム板を5g/m溶解した。その後水洗を行った。
処理(g)
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオン0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後水洗した。
処理(h)
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。この時の電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオン0.5質量%、アンモニウムイオン0.007質量%含む)、温度30℃であった。交流電源は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが2msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で25A/dm、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で250C/cmであった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後水洗を行った。
処理(i)
アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を35℃で行い、アルミニウム板を0.2g/m溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の除去と、生成したピットのエッジ部分を溶解し、エッジ部分を滑らかにした。その後水洗した。
処理(j)
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後スプレーによる水洗を行った。
処理(k)
硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、温度33℃、電流密度が5A/dmで、50秒間陽極酸化処理を行った。その後水洗を行った。この時の陽極酸化皮膜重量が2.7g/mであった。
この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.27μmであった。
(比較例6)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、支持体Aの作製の処理(a)において、ブラシ回転数を400rpmに変更した以外は、実施例1と同様にして、比較例6の平版印刷版原版を得た。このようにして得られた支持体を支持体Fとする。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.70μmであった。
(実施例6)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、支持体Aの作製の処理(d)において、交流電圧の周波数を10Hzに変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例6の平版印刷版原版を得た。このようにして得られた支持体を支持体Gとする。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
(実施例7)
実施例1の平版印刷版原版の製造工程中、支持体Aの作製の処理(c)において、電解液の液温を80℃とし、かつTPを0msecとした以外は、実施例1と同様にして、実施例7の平版印刷版原版を得た。このようにして得られた支持体を支持体Hとする。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
(実施例8〜9)
実施例1の感光層の塗布量を下記表1に示す値となるように変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例8及び9の平版印刷版原版を得た。
(評価)
−平版印刷版用支持体の表面形状の測定−
上記で得られた平版印刷版用支持体の表面の凹部について、下記の測定を行った。結果を表1に示す。なお、第1表中、「−」は、該当する波長の凹部がなかったことを示す。
中波構造の平均開口径(表中、中波平均開口径と表記)
SEMを用いて支持体の表面を真上から倍率2,000倍で撮影し、得られたSEM写真においてピットの周囲が環状に連なっている中波構造のピット(中波ピット)を50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出した。
(2)小波構造の平均開口径(表中、小波平均開口径と表記)
高分解能SEMを用いて支持体の表面を真上から倍率50,000倍で撮影し、得られたSEM写真において小波構造のピット(小波ピット)を50個抽出し、その直径を読み取って開口径とし、平均開口径を算出した。
−平版印刷版原版の評価−
耐傷性評価
得られた平版印刷版原版20枚の間に合紙を挟むことなく積層して積層体を形成した。この積層体を、既にカセットにセットしてある本発明の平版印刷版原版の上にエッジから5cmずらして(積層した20枚の版材がカセット内の版材のエッジから5cm外側へ飛び出した状態で)重ねた後、飛び出した20枚の版材のエッジを水平方向に押し込んで、積層した20枚の一番下の版の裏面アルミニウム支持体が、カセット中の最上の平版印刷版原版の保護層表面をこするようにしながら、カセット内へ設置した。この保護層表面を、アルミニウム支持体裏面でこすられた版材を、耐キズ性の評価用版材とした。
この版材をセッティング部分からオートローダーにて、Creo社製Trendsetter3244に搬送し、解像度2400dpiで50%平網画像を、出力7W、外面ドラム回転数150rpm、版面エネルギー110mJ/cmで露光した。露光後、上記感度評価と同様に現像処理を行なった。得られた平版印刷版の平網画像中に発生したキズの有無を目視評価した。評価は1〜5の官能評価で行い、3が実用下限レベル、2以下は実用上不可レベルとした。
(2)耐刷性評価
作製された平版印刷版原版に、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したCreo社製Trendsetter3244VXにて、解像度175lpiの80%平網画像を、出力8W、外面ドラム回転数206rpm、版面エネルギー100mJ/cmで露光した。露光後、水道水による水洗により保護層を除去した後、(1)感度評価の現像工程と同じ方法で現像した。そして、得られた平版印刷版を、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロンを用いて印刷を行い、ベタ画像部の印刷物を観察し、画像がかすれはじめた枚数(刷了枚数)を耐刷性の指標とした。数字が大きいほど耐刷性が良いことを示す。結果を表1に示す。
表1から明らかなように、支持体の所定の中心線平均粗さRaを持つ面に、所定の固形分塗布量で感光層を形成した平版印刷版原版(実施例1〜9)は、平版印刷版としたときの耐傷性および耐刷性のいずれにも優れる。したがって、製造加工におけるハンドリングや積替え作業で発生する擦りに対し優れた耐傷性を有し、実質的に合紙レスで取り扱え、耐刷性に優れる平版印刷版原版となることがわかる。
これに対し、支持体の中心線平均粗さRa、感光層の固形分塗布量の少なくとも一方が本発明を満たさない比較例1〜6では、平版印刷版としたときの耐傷性および耐刷性のいずか、又は双方が劣るものとなる。
本発明に係る平版印刷版用支持体の作製における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。 本発明に係る平版印刷版用支持体の作製における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。 本発明に係る平版印刷版用支持体の作製における陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。
符号の説明
11 アルミニウム板
12 ラジアルドラムローラ
13a、13b 主極
14 電解処理液
15 電解液供給口
16 スリット
17 電解液通路
18 補助陽極
19a、19b サイリスタ
20 交流電源
21 主電解槽
22 補助陽極槽
410 陽極酸化処理装置
412 給電槽
414 電解処理槽
416 アルミニウム板
418、426 電解液
420 給電電極
422、428 ローラ
424 ニップローラ
430 電解電極
432 槽壁
434 直流電源

Claims (5)

  1. 支持体上に、増感色素、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマーを含有する感光層を有してなる平版印刷版原版であって、前記支持体の前記感光層が設けられる面の中心線平均粗さRaが0.40〜0.60μmの範囲であり、かつ前記感光層の固形分塗布量が0.8〜1.2g/mであることを特徴とする平版印刷版原版。
  2. 前記支持体の表面に平均開口径0.5〜5μmの中波構造と平均開口径0.01〜0.2μmの小波構造とを重畳した構造の砂目形状を有することを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版原版。
  3. 前記支持体が、硝酸を含有する水溶液中で交流電流を用いて支持体表面を粗面化する第1の電気化学的粗面化処理と、塩酸を含有する水溶液中で交流電流を用いて支持体表面を粗面化する第2の電気化学的粗面化処理と、をこの順に施すことによって得られることを特徴とする請求項1または2に記載の平版印刷版原版。
  4. 側鎖にカルボキシル基およびカルボン酸エステル基を有する高分子化合物を含有する中間層と、増感色素、重合開始剤、重合性化合物、及びバインダーポリマーを含有する感光層と保護層と、を順次積層してなることを特徴とする請求項1〜3に記載の平版印刷版原版。
  5. 前記側鎖にカルボキシル基およびカルボン酸エステル基を有する高分子化合物が有する酸基の一部または全てが、中和されていることを特徴とする請求項5に記載の平版印刷版原版。
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