JP2009083305A - 平版印刷用版面保護液および平版印刷版の製版方法 - Google Patents

平版印刷用版面保護液および平版印刷版の製版方法 Download PDF

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敦 坂本
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章浩 遠藤
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Abstract

【課題】新規な組成を有し版面に付着することでインキ払い性を向上させ、特に、有機高分子化合物を含有するバックコート層を有する平版印刷版原版から製版するに当たって、版の裏面から版面保護層が剥離することを抑制し、搬送、折り、孔穿、集積、印刷等の工程を汚染することのない平版印刷用版面保護液を提供すること。
【解決手段】正に帯電した窒素原子を有する化合物、及び/又は、四級ホスホニウム塩化合物を含有することを特徴とする平版印刷用版面保護液。
【選択図】なし

Description

本発明は、平版印刷に用いられる平版印刷用版面保護液およびこれを用いた平版印刷版の製版方法に関する。
従来、平版印刷版原版としては親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けた構成を有するPS版が広く用いられ、その製版方法として、通常は、リスフイルムを介してマスク露光(面露光)後、非画像部を溶解除去することにより所望の印刷版を得ていた。近年、画像情報をコンピューターを用いて電子的に処理、蓄積、出力する、デジタル化技術が広く普及してきている。そして、そのようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきた。その結果レーザー光のような指向性の高い光をデジタル化された画像情報に従って走査し、リスフイルムを介すこと無く、直接印刷版を製造するコンピューター トゥ プレート(CTP)技術が切望されており、これに適応した平版印刷版原版を得ることが重要な技術課題となっている。
このような平版印刷版原版は、原版同士の接着防止機能や、比較的軟らかい感光層又は感光層上に設けられた保護層表面がアルミニウム支持体や支持体裏面に設けられたバックコート層と擦れて生じるキズを防止するために、原版間に合紙が挿入された積層体として供給される。しかしながら、合紙が存在すると不要な廃棄物が発生する上に、露光工程での合紙の除去に要する時間が生産性を低下させる原因となっていた。従って、合紙を用いない場合には、平版印刷版原版同士の耐接着性と感光層又は感光層上に設けられた保護層表面がアルミニウム支持体とこすれて生じるキズの発生を抑制することが望まれる。
特に、親水性支持体上に、感光スピードに優れる光重合開始剤、付加重合可能なエチレン性不飽和化合物、及びアルカリ現像液に可溶なバインダーポリマーを含有する光重合型の記録層、並びに必要に応じて酸素遮断性の保護層を設けた平版印刷版原版(例えば、特許文献1参照)は、感光層が柔らかいことや、オーバーコート層が存在することによりキズがつきやすくなる。このようなキズの発生を防止するために、ガラス転移温度Tgが20℃以上のバックコート層を設ける方法(例えば、特許文献2参照)や、バックコート層として、ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂を用いる方法(例えば、特許文献3参照)などが知られている。しかし、これらの技術を用いてもキズの防止効果が不十分であるため、更なる改良が求められている。
一方、平版印刷版原版は通常、露光、現像後に版面保護液による処理が施され平版印刷版となる。版面保護液による処理の目的は、非画像領域の親水性を保護するのみならず、画像領域の加筆又は修正消去等の画像修正、製版後印刷するまでの期間の保存又は再使用までの保存、印刷機に取り付ける際や取り扱い中の指紋、油脂、塵埃等の付着によって引き起こされる汚れの防止及び傷の発生等からの保護であり、更に酸化汚れの発生を抑えることなど、いわゆる不感脂化である。
露光、現像された平版印刷版を版面保護液で処理すると、版の裏面に版面保護液が回り込むことが避けられず、裏面にも版面保護層が形成される。しかし、特に、上述したバックコート層を有する平版印刷版の裏面に形成された版面保護層は剥離しやすく、その剥離したものが不感脂化処理後の搬送、折り、孔穿、集積、印刷等の工程を汚染するという欠点があった。
したがって、合紙がなくても版の接着あるいは耐キズ性が改良され、同時に平版印刷版の裏面から版面保護層が剥離しない版面保護液による処理方法が求められている。

特開平10−228109号公報 特開平6−332155号公報 特開2005−62456号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、新規な組成を有し版面に付着することでインキ払い性を向上させ、特に、有機高分子化合物を含有するバックコート層を有する平版印刷版原版から製版するに当たって、版の裏面から版面保護層が剥離することを抑制し、搬送、折り、孔穿、集積、印刷等の工程を汚染することのない平版印刷用版面保護液およびこれを用いた平版印刷版の製版方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、以下の発明を見出した。即ち、
<1>
正に帯電した窒素原子を有する化合物、及び/又は、四級ホスホニウム塩化合物を含有することを特徴とする平版印刷用版面保護液である。
<2>
平版印刷版原版を、請求項1に記載の平版印刷用版面保護液を用いて処理する工程を少なくとも経ることにより平版印刷版を作製することを特徴とする平版印刷版の製版方法である。
<3>
前記平版印刷版原版が、支持体と、該支持体の片面に設けられた記録層と、前記支持体の前記記録層が設けられた面と反対面に設けられ且つ有機高分子化合物を含有するバックコート層とを有することを特徴とする<2>に記載の平版印刷版の製版方法である。
<4>
有機高分子化合物の軟化点が70℃以上であることを特徴とする<3>に記載の平版印刷版の製版方法である。
<5>
前記バックコート層が、エポキシ樹脂、フェノール性水酸基を有する樹脂およびロジンからなる群より選択される少なくとも1種以上を含むことを特徴とする<2>〜<4>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法である。
<6>
前記記録層が、赤外線吸収剤、重合開始剤、分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマー、及びビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体を含有することを特徴とする<2>〜<5>のいずれか1つに記載の平版印刷版の製版方法である。
本発明によれば、新規な組成を有し版面に付着することでインキ払い性を向上させ、特に、有機高分子化合物を含有するバックコート層を有する平版印刷版原版から製版するに当たって、版の裏面から版面保護層が剥離することを抑制し、搬送、折り、孔穿、集積、印刷等の工程を汚染することのない平版印刷用版面保護液およびこれを用いた平版印刷版の製版方法を提供することができる。
<<平版印刷用版面保護液>>
本発明の平版印刷用版面保護液(以下、「版面保護液」と略す場合がある)は、正に帯電した窒素原子を有する化合物、及び/又は、四級ホスホニウム塩化合物を含有することを特徴とする。なお、本発明の版面保護液には、上記化合物以外に、通常、従来の版面保護液と同様に、水溶性高分子化合物が含まれ、その他必要に応じて種々の添加剤が含まれる。
正に帯電した窒素原子を有する化合物、及び/又は、四級ホスホニウム塩化合物(以下、これら化合物を「四級オニウム塩化合物」と称すことがある)は、オニウム基を有するために極性が高く、水溶媒を含む版面保護液に分散させることが可能である。
更に、これら化合物は疎水性の傾向を有する置換基を有している。このため、版面保護液によって処理しようとする平版印刷版原版が、有機高分子化合物を含有するバックコート層を有する場合には孔穿、集積、印刷等の工程において、平版印刷版の裏面から版面保護層が剥離することができる。この理由は、有機高分子化合物を含有するバックコート層表面に版面保護液が塗布された場合、塗布から乾燥に際して、版面保護液がバックコート層へと容易に浸透してこれを膨潤させ、結果として版面保護液によって形成された保護層中のバインダー(水溶性高分子化合物)と有機高分子化合物を含有するバックコート層との層間が混合する事で、これら2つの層の密着性が向上するためであると推定される。
以下、本発明の版面保護液に用いられる四級ホスホニウム塩化合物と、正に帯電した窒素原子を有する化合物とについて、各々詳細に説明する。
−四級ホスホニウム塩化合物−
四級ホスホニウム塩化合物(以下、「ホスホニウム化合物」と称す場合がある)としては、代表的には、下記一般式(1)や後述する一般式(2)に示される化合物が挙げられる。
Figure 2009083305
一般式(1)
一般式(1)中、R〜Rは、それぞれ水素原子,アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、複素環基、または、複素環基の誘導体を表し、R〜Rの少なくとも2つがそれぞれ結合して環構造を形成してもよい。
ここで、R1〜Rがアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基であるときの炭素数は通常1〜20、アルケニル基、アルキニル基であるときの炭素数は通常2〜15、シクロアルキル基であるときの炭素数は通常3〜8である。アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が、アリールオキシ基としてはフェノキシ基、ナフチルオキシ基等が、アリールチオ基としてはフェニルチオ基等が、複素環基としてはフリル基、チエニル基等が、それぞれ挙げられる。
また、これらのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環基等における置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、スルフィノ基、スルホ基、ホスフィノ基、ホスホリル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、及びハロゲン原子等が挙げられる。尚、これらの置換基は更に置換基を有していてもよい。
また、Xとしては、Cl,Br,I,等のハロゲンイオン、これらハロゲン原子を含む無機酸アニオン、有機基を有する有機カルボン酸アニオン、または、有機基を有する有機カルボン酸アニオンを表す。ここで、有機基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、メトキシフェニル、ナフチル、フルオロフェニル、ジフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、チエニル、ピロリル等のアルキル基やアリール基が挙げられる。
これらの中でも、Xとしては、Cl、Br、I、ClO 、PF 等が好ましい。以下に一般式(1)で示されるホスホニウム化合物の好適な具体例を示す。
Figure 2009083305
これらの化合物のうち、特に一般式(1)中のR〜Rが全て同じ置換基であることが合成の観点,溶解性の観点から好ましい。全て同じ置換基である場合のR〜Rの具体例としては、アルキル基,アリール基であることが好ましく、炭素数1〜5のアルキル基,炭素数6〜12のフェニル基であることが好ましい。
Figure 2009083305
一般式(2)
一般式(2)中、Ar1〜Ar6は、それぞれ水素原子,アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、複素環基、または、複素環基の誘導体を表し、Ar1〜Ar3の少なくとも2つ、および/または、Ar4〜Ar6の少なくとも2つがそれぞれ結合して環構造を形成してもよい。
ここで、Ar1〜Ar6がアルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基であるときの炭素数は通常1〜20、アルケニル基、アルキニル基であるときの炭素数は通常2〜15、シクロアルキル基であるときの炭素数は通常3〜8であり、アリール基としてはフェニル基、ナフチル基等が、アリールオキシ基としてはフェノキシ基、ナフチルオキシ基等が、アリールチオ基としてはフェニルチオ基等が、複素環基としてはフリル基、チエニル基等が、それぞれ挙げられる。
また、これらのアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環基等における置換基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシル基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、スルフィノ基、スルホ基、ホスフィノ基、ホスホリル基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、ヒドロキシ基、及びハロゲン原子等が挙げられる。尚、これらの置換基は更に置換基を有していてもよい。
また、Xとしては、Cl,Br,I,等のハロゲンイオン、これらハロゲン原子を含む無機酸アニオン、有機基を有する有機カルボン酸アニオン、または、有機基を有する有機カルボン酸アニオンを表す。ここで、有機基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、フェニル、メトキシフェニル、ナフチル、フルオロフェニル、ジフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、チエニル、ピロリル等のアルキル基やアリール基が挙げられる。
これらの中でも、Xとしては、Cl、Br、I、ClO 、PF 等が好ましい。
Lは2価の連結基を表し、2価の連結基としては、炭素数2〜15のアルキレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、炭素数7〜25のアラルキレン基で、NHR、NR 2 、OR、SR、COOR、CN、ハロゲン、NO 2 、CHO、SO 3 R、RCONHNH、RSO 2 NHもしくはモルホリノ基で置換されていても良く、及び/またはピペラジン残基、COO、NR、SO 2 、SO 2 NR、O、S、CONR、CONHCOもしくはCOONRで表される。(R:H、炭素数1〜10のアルキル基もしくは炭素数6〜10のアリール基を示す)
また、nは1〜3の整数を表し、mはn×m=2なる関係を満たす数を表す。以下に一般式(1)で示されるホスホニウム化合物の好適な具体例を示す。
Figure 2009083305
Figure 2009083305
−正に帯電した窒素原子を有する化合物−
正に帯電した窒素原子を有する化合物としては、アンモニウム塩、ピリジニウム塩などが挙げられる。以下、アンモニウム塩と、ピリジニウム塩とに分けてより詳細に説明する。
<アンモニウム塩>
アンモニウム塩としては第四級アンモニウム塩が用いられ、具体例は、(1)アルキルアンモニウム塩としては、塩化ドデシルトリメチルアンモニウム、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ミリスチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化オレイルトリメチルアンモニウム、臭化オレイルトリメチルアンモニウムなどのアルキルトリメチル型のアンモニウム塩、塩化オクチルヘキシルジメチルアンモニウム、塩化ジデシルジメチルアンモニウム、塩化ジオクチルジメチルアンモニウムなどのジアルキルジメチル型のアンモニウム塩、(2)アルキルベンジルのアンモニウム塩としては、塩化ミリスチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ヤシアルキルジメチルベンジルアンモニウム、塩化テトラデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化オクタデシルジメチルベンジルアンモニウム、塩化セチルジメチルベンジルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、塩化オレイルジメチルベンジルアンモニウムなどが挙げられる。
<ピリジニウム塩>
ピリジニウム塩としては、アルキルピリジニウム塩が好ましく用いられる。アルキルピリジニウム塩としては、塩化ラウリルピリジニウム、塩化セチルピリジニウムなどが挙げられる。
版面保護液中に含まれる四級オニウム塩化合物の含有量は、版面保護液1L中に1〜20g含まれていることが好ましく、5〜10g含まれていることがより好ましく、6〜8g含まれていることがさらに好ましい。また、四級オニウム塩化合物は1種単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
−その他の成分−
本発明の版面保護液には上記四級オニウム塩化合物の他に、更に、水溶性高分子化合物;無機酸及び/又は有機酸及び/又はそれらの塩;上記四級オニウム塩化合物以外の界面活性剤;有機溶剤;硝酸塩、硫酸塩;キレート剤;防腐剤;消泡剤などを必要に 応じて添加することができる。以下に各種成分について述べる。
版面保護液には、親水性の維持や傷から版面を保護するために皮膜形成性を有する水溶性高分子化合物を加えることが好ましい。かかる水溶性高分子化合物として、例えばアラビアガム、繊維素誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルプロピルセルロース等)及びその変性体、ポリビニルアルコール及びその誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びその共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体、水溶性大豆多糖類、澱粉誘導体(例えばデキストリン、酵素分解デキストリン、ヒドロキシプロピル化澱粉、酵素分解デキストリン、カルボキシメチル化澱粉、リン酸化澱粉、サイクロデキストリン)、プルラン及びプルラン誘導体、大豆から抽出されるヘミセルロース等があげられる。中でもアラビアガム、デキストリンといった澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロース、大豆多糖類などが好ましく使用することができる。
これら水溶性高分子化合物の含有量は、版面保護液の全質量に対して0.1〜25.0質量%が好ましく、0.3〜20.0質量%がより好ましい。
版面保護液は、一般的には酸性領域pH2〜6の範囲で使用する方が有利である。そのようなpHにするためには一般的には版面保護液中に鉱酸、有機酸、又はそれらの塩などのpH調整剤を添加することができる。
かかるpH調整剤としては、例えば鉱酸としては硝酸、硫酸、燐酸、メタ燐酸、ポリ燐酸などが挙げられる。有機酸としては酢酸、蓚酸、クエン酸、リンゴ酸、マロン酸、酒石酸、p−トルエンスルホン酸、乳酸、レプリン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸などが挙げられる。好ましく使用できる塩として、燐酸水素二ナトリウム、燐酸水素二カリウム、燐酸水素二アンモニウム、燐酸二水素ナトリウム、燐酸二水素カリウム、燐酸二水素アンモニウム、ピロ燐酸カリウム、ヘキサメタ燐酸ナトリウム、トリポリ燐酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
pH調整剤は、鉱酸、有機酸又はそれらの塩から1種単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を併用してもよい。pH調整剤の添加量は版面保護液の全質量に対して、一般的に0.01〜3.0質量%程度であることが好ましい。
本発明の版面保護液にはさらに界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、例えばアニオン界面活性剤及び/又はノニオン界面活性剤が挙げられる。
アニオン界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルジフェニルエーテルモノまたはジスルホン酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。
これらの中でもジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類およびアルキルジフェニルエーテルモノまたはジスルホン酸塩類が好ましく用いられる。
また、ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどが挙げられる。
これらの中でもポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類、ポリオキシエチレンヒマシ油エーテル等が好ましく用いられる。
また、アセチレングリコール系とアセチレンアルコール系のオキシエチレン付加物、フッ素系、シリコン系等のアニオン、ノニオン界面活性剤も同様に使用することができる。
これら界面活性剤は2種以上併用することもできる。例えば、互いに異なる2種以上のアニオン界面活性剤の併用やアニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤の併用が好ましい。これらの化合物は環境面への影響を考慮して適宜選択して使用することが好ましい。
上記の界面活性剤の使用量は特に限定されるものではないが、版面保護液中に0.01〜20質量%含まれることが好ましい。
本発明の版面保護液には、画像部の感脂性を保護するために沸点130℃以上の有機溶剤を添加することができる。この種の有機溶剤は一方で非画像部親水性層上に付着している微量の残量の感光膜を除去し、非画像部の親水性を高める効果を発揮する働きをする。 沸点130℃以上の有機溶剤の具体例として、アルコール類としては、n−ヘキサノール、2−エチルブタノール、n−ヘプタノール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、3,5,5−トリメチルヘキサノール、ノナノール、n−デカノール、ウンデカノール、n−ドデカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール等が挙げられる。
ケトン類としてはメチル−n−アミルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、エチル−n−ブチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジアセトンアルコール、シクロヘキサノン等が挙げられる。
エステル類としては酢酸−n−アミル、酢酸イソアミル、酢酸メチルイソアミル、酢酸メトキシブチル、酢酸ベンジル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸−n−アミル、安息香酸メチル、安息香酸エチル及び安息香酸ベンジルなどの安息香酸エステル類、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸−ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジデシル、フタル酸ジラウリル、フタル酸ブチルベンジルなどのフタル酸ジエステル類、ジオクチルアジペート、ブチルグリコールアジペート、ジオクチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジオクチルセバケートなどの脂肪族二塩基酸エステル類、例えばエポキシ化大豆油などのエポキシ化トリグリセライド類、トリクレジルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリスクロルエチルホスフェートなどの燐酸エステル類等が挙げられる。
多価アルコール類及びその誘導体としてはエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテルアセテート、エチレングリコールベンジルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、メトキシエタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、1−ブトキシエトキシプロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、オクチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、グリセリンモノアセテート、グリセリントリアセテート類を挙げることができる。
炭化水素系としては沸点160℃以上の石油留分の芳香族、脂肪族化合物、スクワランなどが挙げられる。
上記有機溶剤を選択するときの条件としてはその環境安全性、特に臭気が挙げられる。これらの溶剤は1種単独で使用してもよいし、あるいは2種以上を併用してもよい。有機溶剤の使用量は版面保護液中に0.1〜5.0質量%であることが好ましく、0.3〜3.0質量%がより好ましい。
本発明の版面保護液において、これらの有機溶剤は界面活性剤によって可溶化させた溶液タイプとしてもよいし、あるいは油相として乳化分散させた乳化タイプとしてもよい。
版面保護液に含ませることができる硝酸塩、硫酸塩としては、硝酸マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硝酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸アンモニウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸ニッケルなどが挙げられる。これらの使用量は版面保護液中に0.05〜1.0質量%であることが好ましい。
通常、版面保護液は濃縮液として市販され、使用時に水道水、井戸水等を加えて希釈して使用される。この希釈する水道水や井戸水に含まれているカルシウムイオン等が印刷に悪影響を与え、印刷物を汚れ易くする原因となることもある。この場合、キレート化合物を添加して、上記欠点を解消することができる。
好ましいキレート化合物としては、例えば、Na、Na、Na、NaP(NaOP)PONa、カルゴン(ポリメタリン酸ナトリウム)などのポリリン酸塩、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジヒドロキシエチルグリシン、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシイミノジ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;グリコールエーテルジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなアミノポリカルボン酸類、ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;エチレンアジミンテトラ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類、あるいは2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2一ホスホノブタノントリカルボン酸−2,3,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2、2、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることができる。上記キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代りに有機アミンの塩も有効である。
これらキレート剤は版面保護液中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが選ばれる。添加量としては使用時の版面保護液に対して0.001〜1.0質量%が適当である。
本発明の版面保護液にはさらに防腐剤、消泡剤などを添加することができる。防腐剤として例えばフェノール又はその誘導体、ホルマリン、イミダゾール誘導体、デヒドロ酢酸ナトリウム、4−イソチアゾリン−3−オン誘導体、5−クロロ−2−メチル−3−イソチアゾロン、2−メチル−3−イソチアゾロン、ベンゾイソチアゾリン−3−オン、ベンズトリアゾール誘導体、アミジングアニジン誘導体、四級アンモニウム塩類、ピリジン、キノリン、グアニジン等の誘導体、ダイアジン、トリアゾール誘導体、オキサゾール、オキサジン誘導体、及びニトロブロモアルコール系の2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−エタノール、1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−プロパノールオマジンなどがある。
防腐剤の好ましい添加量は、細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、版面保護液中に0.01〜4.0質量%の範囲が好ましい。また種々のカビ、殺菌に対して効力のあるように2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。
また、消泡剤としては一般的なシリコン系の自己乳化型タイプ、乳化タイプ、界面活性剤ノニオン系のHLBの5以下等の化合物を使用することができる。シリコン消泡剤、例えばジメチルシリコーンなどが好ましい。その中で乳化分散型及び可溶化型等がいずれも使用できる。消泡剤の添加量は版面保護液中に0.001〜1.0質量%の範囲が好ましい。
本発明の版面保護液の残余成分としては水が用いられる。版面保護液は溶液タイプ或いは乳化タイプとして調製する場合、それぞれ常法に従って調製することができる。例えば乳化分散は、水相を温度40℃±5℃に調製し、高速攪拌し、水相の中に調製した油相をゆっくり滴下し充分攪拌後、圧力式のホモジナイザーを通して乳化液を作製することができる。
版面保護液の使用態様は特に制限されるものではないが、自動ガム塗布機などを使用すると均一に塗布することができ、好ましい。平版印刷版原版の版面保護液による処理は、現像処理工程の後、無水洗で直ちに行うこともできるし、現像処理後(水洗工程、流水循環水洗あるいは少量の塗りつけ水洗を含む)あるいは界面活性剤を含有するリンス液で処理した後に行うこともできる。
版面保護液による処理は、自動現像機を用いて行うことも適している。この自動現像機は、一般に現像部と後処理部とからなり、平版印刷版原版を搬送する装置、各処理液槽およびスプレー装置からなり、露光済みの平版印刷版原版を水平方向に搬送しながら、ポンプで汲み上げた各処理液をスプレーノズルから吹き付けて現像および後処理するものである。また、処理液が満たされた処理液槽中に液中ガイドロールなどによって浸漬搬送させて現像処理する方法や、現像後一定量の少量の水洗水を版面に供給して水洗し、その廃水を現像液原液の希釈水として再利用する方法も知られている。
このような自動処理においては、各処理液に処理量や稼働時間等に応じてそれぞれの補充液を補充しながら処理することができる。また、実質的に未使用の処理液で処理するいわゆる使い捨て処理方式も適用できる。
上記の版面保護液により処理され版面保護層が塗設された平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
<平版印刷版原版>
本発明の版面保護液により処理される平版印刷版原版としては、公知の平版印刷版原版であれば特に限定されない。しかし、平版印刷版原版は、アルミニウム板等からなる支持体と、該支持体の片面に設けられ、光や熱などのエネルギーの付与により画像形成可能な記録層と、前記支持体の前記記録層が設けられた面と反対面に設けられ且つ有機高分子化合物を含有するバックコート層とを有するものであることが特に好ましい。
このようなバックコート層を設けた平版印刷版原版を、本発明の版面保護液を用いて処理する工程を経て、平版印刷版を作製した場合、版の裏面から版面保護層が剥離することを抑制し、搬送、折り、孔穿、集積、印刷等の工程を汚染することを抑制できる。従って清浄な平版印刷版を得ることができる。それゆえ、本発明の版面保護液による処理を経て作製された平版印刷版は、インキ払いが良好で、印刷開始後、正常な印刷物が得られるまでの損紙が少なくてすむ。さらに、この平版印刷版においては、非画像領域の親水性が保護されるのみならず、画像領域の加筆又は修正消去等の画像修正、製版後印刷するまでの期間の保存又は再使用までの保存や、印刷機に取り付ける際や取り扱い中の指紋、油脂、塵埃等の付着によって引き起こされる汚れの防止及び傷の発生等からの保護が充分になされる。
以下に、上記バックコート層を設けた平版印刷版原版を構成する各層の詳細について説明する。
〔バックコート層〕
バックコート層に含有される有機高分子化合物は特に限定はされないが、エポキシ樹脂、フェノール性水酸基を有する樹脂、ロジンなどが挙げられる。これらの中でもエポキシ樹脂を用いることが特に好ましく、その他にロジン及びフェノール性水酸基を有する樹脂から選ばれる少なくとも1種を含んでいることがより好ましい。中でもエポキシ樹脂とロジンの組み合わせが好適であり、さらにフェノール性水酸基を有する樹脂を含有していてもよい。さらに、バックコート層の種々の特性を向上させるために、その他の樹脂や、添加剤を併用してもよい。
また、有機高分子化合物の軟化点は、合紙なしの積層体を製造した場合、70℃未満では輸送中及び倉庫保管において感材裏面と感光層間の接着が起こり好ましくなく、接着防止の観点からは70℃以上であることが好ましく、90℃以上であることがより好ましい。
以下に、バックコート層に用いられる好適な有機高分子化合物について詳細に説明する。
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、多価アルコールや多価フェノールなどとエピクロロヒドリンとの反応によって得られるグリシジルエーテル化合物若しくはそのプレポリマー、更に、アクリル酸又はメタクリ酸グリシジルの重合体又は共重合体等を挙げることができる。
好適な化合物の具体例としては、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAのジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、レソルシノールジグリシジルエーテル、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル若しくはエピクロロヒドリン重付加物、ビスフェノールFのジグリシジルエーテル若しくはエピクロロヒドリン重付加物、ハロゲン化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル若しくはエピクロロヒドリン重付加物、ビフェニル型ビスフェノールのジグリシジルエーテル若しくはエピクロロヒドリン重付加物、ノボラック樹脂のグリシジルエーテル化物等、更に、メタクリ酸メチル/メタクリ酸グリシジル共重合体、メタクリ酸エチル/メタクリ酸グリシジル共重合体等が挙げられる。
上記の化合物の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)製のjER1001(分子量約900、エポキシ当量450〜500)、jER1002(分子量約1600、エポキシ当量600〜700)、jER1004(分子量約1060、エポキシ当量875〜975)、jER1007(分子量約2900、エポキシ当量2000)、jER1009(分子量約3750、エポキシ当量3000)、jER1010(分子量約5500、エポキシ当量4000)、jER1100L(エポキシ当量4000)、jERYX31575(エポキシ当量1200)、住友化学(株)製のスミエポキシESCN−195XHN、ESCN−195Xl、ESCN−195XF等を挙げることができる。
エポキシ樹脂の重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、1000以上であることが好ましい。より好ましくは、重量平均分子量が1,000〜500,000で、更に好ましくは1,000〜200,000、特に好ましくは1,000〜100,000である。
エポキシ樹脂のバックコート層中の含有量は、平版印刷版を合紙を挟み込むことなく積層した場合の、擦りキズ防止、及び各版間でのスベリ防止の観点から、バックコート層の全質量に対して、50〜100質量%の範囲であることが好ましく、65〜99質量%の範囲であることがより好ましく、70〜97.5質量%の範囲であることが更に好ましい。
(他の樹脂)
−ロジン−
ロジンとしては、例えば、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジン;該天然ロジンから誘導される重合ロジン;前記天然ロジンや重合ロジンを不均化又は水素添加して得られる安定化ロジン;前記天然ロジンや重合ロジンに不飽和カルボン酸類を付加して得られる不飽和酸変性ロジンなどが挙げられる。なお、前記不飽和酸変性ロジンとは、例えば、マレイン酸変性ロジン、無水マレイン酸変性ロジン、フマル酸変性ロジン、イタコン酸変性ロジン、クロトン酸変性ロジン、ケイ皮酸変性ロジン、アクリル酸変性ロジン、メタクリル酸変性ロジンなど、或いはこれらに対応する酸変性重合ロジンが挙げられる。
このようなロジンの中でも、ロジン変性フェノール樹脂又はロジンエステルが好ましく用いられる。
前記ロジンエステルとしては、スーパーエステルE−720、スーパーエステルE−730−55、スーパーエステルE−650、スーパーエステルE−786−60、タマノルE−100、エマルジョンAM−1002、エマルジョンSE−50(以上全て商品名、特殊ロジンエステルエマルジョン、荒川化学工業(株)製)、スーパーエステルL、スーパーエステルA−18、スーパーエステルA−75、スーパーエステルA−100、スーパーエステルA−115、スーパーエステルA−125、スーパーエステルT−125(以上全て商品名、特殊ロジンエステル、荒川化学工業(株)製)等を好ましく用いることができる。
また、ロジンエステルとして、エステルガムAAG、エステルガムAAL、エステルガムA、エステルガムAAV、エステルガム105、エステルガムHS、エステルガムAT、エステルガムH、エステルガムHP、エステルガムHD、ペンセルA、ペンセルAD、ペンセルAZ、ペンセルC、ペンセルD−125、ペンセルD−135、ペンセルD−160、ペンセルKK(以上全て商品名、ロジンエステル系樹脂、荒川化学工業(株)製)、も好ましく用いることができる。
また、前記ロジン変性フェノール樹脂としては、タマノル135、タマノル145、タマノル340、タマノル350、タマノル351、タマノル352、タマノル353、タマノル354、タマノル359、タマノル361、タマノル362、タマノル366、タマノル374、タマノル379、タマノル380、タマノル381、タマノル384、タマノル386、タマノル387、タマノル388、タマノル392、タマノル394、タマノル395、タマノル396、タマノル405、タマノル406、タマノル409、タマノル410、タマノル414、タマノル415(以上全て商品名、ロジン変性フェノール樹脂、荒川化学工業(株)製)、を好ましく用いることができる。
更に、その他のロジンとしては、ロンヂスR、ロンヂスK−25、ロンヂスK−80、ロンヂスK−18(以上全て商品名、ロジン誘導体、荒川化学工業(株)製)パインクリスタルKR−85、パインクリスタルKR−612、パインクリスタルKR−614、パインクリスタルKE−100、パインクリスタルKE−311、パインクリスタルKE−359、パインクリスタルKE−604、パインクリスタル30PX、パインクリスタルD−6011、パインクリスタルD−6154、パインクリスタルD−6240、パインクリスタルKM−1500、パインクリスタルKM−1550(以上全て商品名、超淡色系ロジン誘導体、荒川化学工業(株)製)等が挙げられる。
本発明において使用するロジンの重量平均分子量は、ポリスチレン換算で、1000以上であることが好ましい。より好ましくは、重量平均分子量が1,000〜500,000で、更に好ましくは1,000〜200,000、特に好ましくは1,000〜100,000である。
ロジンのバックコート層中の含有量は、合紙を挟み込むことなく積層した場合の、擦りキズ防止、及び各版間でのスベリ防止の観点から、バックコート層の全質量に対して、0〜50質量%の範囲であることが好ましく、1〜35質量%の範囲であることがより好ましく、2.5〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。
−フェノール性水酸基を有する樹脂−
フェノール性水酸基を有する樹脂としては、例えば、フェノールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、p−クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、m−/p−混合クレゾールとホルムアルデヒドとの縮重合体、フェノールとクレゾール(m−、p−、又はm−/p−混合のいずれでもよい)とホルムアルデヒドとの縮重合体等のノボラック樹脂や、ピロガロールとアセトンとの縮重合体であるピロガロール樹脂を挙げることができる。
また、フェノール性水酸基を有する樹脂として、フェノール性水酸基を有する化合物を共重合させた共重合体を用いることもできる。
ここで、フェノール性水酸基を有する化合物としては、フェノール性水酸基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、又はヒドロキシスチレン等が挙げられる。
フェノール性水酸基を有する樹脂の重量平均分子量は、皮膜性の観点から、ポリスチレン換算で、1000以上であることが好ましい。より好ましくは、重量平均分子量が1,000〜500,000で、更に好ましくは1,000〜200,000、特に好ましくは1,000〜100,000である。
フェノール性水酸基を有する樹脂のバックコート層中の含有量は、皮膜性、記録層側の最表面との耐接着性の観点から、バックコート層の全質量に対して、0.1〜90質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜50質量%の範囲であることがより好ましく、0.5〜30質量%の範囲であることが更に好ましい。
(その他の成分)
更に、バックコート層には、皮膜性向上のために有機、無機の高分子化合物を添加したり、また、可とう性を持たせたり、すべり性を調整する目的で、可塑剤、界面活性剤、その他の添加物を必要により添加できる。
好ましい高分子化合物としては、例えば、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリアミド、不飽和共重合ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリウレア、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリカーボネート、塩素化ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、アクリル系樹脂及びこれらの共重合樹脂、ヒドロキシセルロース、ポリビニルアルコール、セルロースアセテート、カルボキシメチルセルロース等が適している。
これらの高分子化合物としては、ポリスチレン換算で、重量平均分子量が500以上のものが好ましく用いられる。より好ましくは、重量平均分子量が1,000〜500,000であり、更に好ましくは1,000〜200,000であり、特に好ましくは1,000〜100,000である。
バックコート層に用いられる好ましい可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレートなどのフタル酸エステル類、ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリールエチルグリコレート、メチルフタリールエチルグリコレート、ブチルフタリールブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカプリル酸エステルなどのグリコールエステル類、トリクレジールホスフェート、トリフェニルホスフェートなどのリン酸エステル類、ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレエートなどの脂肪族二塩基酸エステル類、ポリグリシジルメタクリレート、クエン酸トリエチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチルなどが有効である。
これらの可塑剤はバックコート層がべとつかない範囲で加えられる。
バックコート層に用いられる界面活性剤の好ましい例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、しょ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどの非イオン性界面活性剤、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類などのアニオン界面活性剤、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などのカチオン性界面活性剤、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類などの両性界面活性剤が挙げられる。
以上挙げた界面活性剤の中でポリオキシエチレンとあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレンなどのポリオキシアルキレンに読み替えることもでき、それらの界面活性剤もまた包含される。
更に好ましい界面活性剤は、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系の界面活性剤である。かかるフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステルなどのアニオン型、パーフルオロアルキルベタインなどの両性型、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩などのカチオン型及びパーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基含有ウレタンなどの非イオン型が挙げられる。
上記の界面活性剤は、単独若しくは2種以上を組み合わせて使用することができ、バックコート層の全質量に対して0.001〜10質量%、より好ましくは0.001〜5質量%の範囲で添加される。
バックコート層には、更に、o−ナフトキノンジアジド化合物、感光性アジド化合物、不飽和二重結合含有モノマーを主成分とする光重合性組成物、桂皮酸やジメチルマレイミド基を含む光架橋性化合物、及びジアゾニウム塩モノマーや芳香族ジアゾニウム塩と反応性カルボニル基含有有機縮合剤(特に、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドなどのアルデヒド類又はアセタール類)とを酸性媒体中で縮合したジアゾ樹脂を耐薬品性の向上などのために添加することができる。このうちポジ型の感光性化合物として知られるo−ナフトキノンジアジド化合物類が好適に用いられる。
バックコート層は、フイルムの熱圧着や溶融ラミネーション法、塗布法によって設けることができるが、溶液からの塗布が薄層を効率よく設ける上でより好ましい。
従って、バックコート層に用いられる樹脂としては非結晶性で、工業用各種有機溶剤に溶け易いものが好ましい。
バックコート層を形成する際に用いられる溶剤としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチル等が挙げられる。
これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして、バックコート層形成用塗布液中の固形分の濃度は、0.5〜50質量%が適当である。
バックコート層の被覆量は、主に、静摩擦係数、擦りキズの発生に影響し得るもので、用途に応じ、適宜、選択することが望ましい。被覆量が少なすぎる場合には、バックコート層の静摩擦係数、擦りキズの発生の効果が十分でなくなる。一方、多すぎる場合には、膜の支持体に対する密着が悪化し、取り扱い時に剥離してしまうため好ましくない。
バックコート層の被覆量は、乾燥後の質量で、0.01〜10g/mの範囲が好ましく、0.05〜7g/mの範囲がより好ましく、0.1〜5g/mの範囲が更に好ましい。
なお、平版印刷版原版を合紙を挟み込むことなく積層した場合、各版間のスベリ性を制御することが好ましい。
各版材間におけるスベリ性は、バックコート層の静摩擦係数をその指標とすることができる。具体的には、本発明で使用する平版印刷版原版において、記録層側の最表面に対するバックコート層の静摩擦係数が0.35〜1.00の範囲であることが好ましく、0.40〜1.00の範囲であることがより好ましい。静摩擦係数がこの範囲にあることで、版材間で滑りが起こらず、安定な積層体を形成することができる。
また、静摩擦係数が上記の範囲にあることで、版材間の摩擦を低減することもできるため、擦りキズの発生を更に抑制することができる。
〔記録層〕
本発明に用いられる平版印刷版原版は、支持体のバックコート層を有する面とは反対側の面に、記録層を有する。
該記録層は、ポジ型であってもよく、ネガ型であってもよく、画像形成の機序は特に限定されるものではない。該記録層の種類としてコンベンショナルポジタイプ、コンベンショナルネガタイプ、フォトポリマータイプ(光重合型)、サーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ(熱重合型及び酸架橋型)などが挙げられる。ここでいう「コンベンショナル」とは、透明陽画又は透明陰画を通して、画像様露光をする従来型の平版印刷版原版を示す。以下、これらの記録層について簡単に説明する。
(コンベンショナルポジタイプ記録層)
コンベンショナルポジタイプ記録層を構成する感光性樹脂組成物の好ましいものとして、o−キノンジアジド化合物とアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する組成物が挙げられる。o−キノンジアジド化合物としては、例えば、1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとフェノール・ホルムアルデヒド樹脂またはクレゾール・ホルムアルデヒド樹脂とのエステルや、米国特許第3,635,709号明細書に記載されている1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホニルクロライドとピロガロール・アセトン樹脂とのエステルがある。アルカリ可溶性高分子化合物は例えば、フェノール・ホルムアルデヒド樹脂、クレゾール・ホルムアルデヒド樹脂、フェノール・クレゾール・ホルムアルデヒド共縮合樹脂、ポリヒドロキシスチレン、N−(4−ヒドロキシフェニル)メタクリルアミドの共重合体、特開平7−36184号公報に記載されているカルボキシ基含有ポリマー等が挙げられる。また、特開昭51−34711号公報に記載されているようなフェノール性ヒドロキシ基を含有するアクリル系樹脂、特開平2−866号に記載されているスルホンアミド基を有するアクリル系樹脂や、ウレタン系の樹脂等、種々のアルカリ可溶性の高分子化合物も用いることができる。さらに感光性樹脂組成物には、特開平7−92660号公報〔0024〕〜〔0027〕で示されている感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や同号公報〔0031〕で示されているような塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましい。
これらo−キノンジアジド化合物とアルカリ可溶性高分子化合物とを含有する感光性組成物を支持体上に設けたコンベンショナルポジ型感光性平版印刷版原版は紫外線を用いて画像様露光された後、アルカリ性現像液で現像される。かかる現像液としては、特公昭57−7427号公報や特許第3086354号公報記載のアルカリ金属珪酸塩水溶液、および特開平8−305039号公報記載の非還元糖と塩基を主成分とする現像液が好ましい例として挙げられる。
(コンベンショナルネガタイプ記録層)
コンベンショナルネガタイプ記録層を構成する感光性樹脂組成物としては、ジアゾ樹脂とアルカリ可溶性または膨潤性の高分子化合物(結合剤)とを含有するものが挙げられる。
ジアゾ樹脂としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩とホルムアルデヒド等の活性カルボニル基含有化合物との縮合物が挙げられ、さらに例えば、p−ジアゾフェニルアミン類とホルムアルデヒドとの縮合物とヘキサフルオロリン酸塩またはテトラフルオロホウ酸塩との反応生成物である有機溶媒可溶性ジアゾ樹脂無機塩が挙げられる。特に、特開昭59−78340号公報に記載されている6量体以上を20モル%以上含んでいる高分子量ジアゾ化合物が好ましい。好適な結合剤としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸またはマレイン酸を必須成分として含む共重合体、例えば、特開昭50−118802号公報に記載されているような2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のモノマーの多元共重合体や、特開昭56−4144号公報に記載されているようなアルキルアクリレート、(メタ)アクリロニトリル、および、不飽和カルボン酸からなる多元共重合体を挙げることができる。さらに感光性樹脂組成物には、特開平7−281425号公報〔0014〕〜〔0015〕で示されている焼出剤、染料、塗膜の柔軟性や耐摩耗性を付与するための可塑剤、現像促進剤等の化合物、塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましい。
上述したコンベンショナルタイプのポジ型もしくはネガ型記録層の下層としては、特開2000−105462号公報に記載されている、酸基を有する構成成分とオニウム基を有する構成成分とを有する高分子化合物を含有する中間層を設けることが好ましい。
このようにして作製されたコンベンショナルネガタイプ感光性樹脂組成物を用いた感光性平版印刷版は、紫外線を用いて画像様露光された後、現像液で現像される。かかるコンベンショナルネガタイプ感光性樹脂組成物用の現像液としては、必要に応じアルカリ剤、有機溶剤、界面活性剤、硬水軟化剤、還元剤、有機カルボン酸、無機塩、消泡剤や更に必要に応じて当業界で知られた種々の添加剤を含有した水溶液が用いられる。特に好ましい例としては、特公昭56−42860号公報、特公昭58−54341号公報、特公平2−37579号公報、特開昭63−200154号公報、および特開昭64−44445号公報記載の現像液などが挙げられる。
(フォトポリマータイプ記録層)
フォトポリマータイプ記録層を構成する光重合型感光性組成物(以下「光重合性組成物」という)は、付加重合可能なエチレン性不飽和結合含有化合物(以下、単に「エチレン性不飽和結合含有化合物」という)と、光重合開始剤と、高分子結合剤とを必須成分として含有し、必要に応じて、着色剤、可塑剤、熱重合禁止剤等の種々の化合物を含有する。
光重合性組成物に含有されるエチレン性不飽和結合含有化合物は、光重合性組成物が活性光線の照射を受けた場合に、光重合開始剤の作用により付加重合し、架橋し硬化するようなエチレン性不飽和結合を有する化合物である。エチレン性不飽和結合含有化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物の中から任意に選択することができ、例えば、モノマー、プレポリマー(即ち、2量体、3量体およびオリゴマー)、これらの混合物、これらの共重合体等の化学的形態を有する。モノマーの例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミドが挙げられる。またウレタン系付加重合性化合物も好適である。
光重合性組成物に含有される開始剤としては、使用する光源の波長により、種々の光重合開始剤または2種以上の光重合開始剤の併用系(光開始系)を適宜選択して用いることができ、例えば、特開2001−22079号公報〔0021〕〜〔0023〕で示されている開始系が好ましい。光重合性組成物に含有される高分子結合剤は、光重合性組成物の皮膜形成剤として機能するだけでなく、記録層をアルカリ現像液に溶解させる必要があるため、アルカリ水に可溶性または膨潤性である有機高分子重合体が使用される。上記高分子としては同号公報〔0036〕〜〔0063〕で示されている物が有用である。その他光重合性組成物には、同号公報〔0079〕〜〔0088〕で示されている添加剤(例えば塗布性を良化するための界面活性剤)を加えることも好ましい。
また、上記記録層の上に、酸素の重合禁止作用を防止するために酸素遮断性保護層を設けることが好ましい。酸素遮断性保護層に含有される重合体としては、ポリビニルアルコール又はその共重合体が挙げられる。さらにフォトポリマータイプの記録層の下層として特開2001−228608号公報〔0124〕〜〔0165〕で示されているような中間層もしくは接着層を設けるのも好ましい。
かかるフォトポリマータイプの光重合型感光性組成物を用いた感光性平版印刷版は高圧水銀灯などの紫外線、アルゴンレーザーおよび紫外線レーザーを用いて画像様露光された後、現像液で現像される。好ましい現像液としては、必要に応じアルカリ剤、有機溶剤、界面活性剤、硬水軟化剤、還元剤、有機カルボン酸、無機塩、消泡剤や更に必要に応じて当業界で知られた種々の添加剤を含有した水溶液が用いられる。特に好ましい例としては、特公昭58−54341号公報、特開平8−248643号公報、特開2002−91015号公報、および特開平8−171214号公報記載の現像液などが挙げられる。
(サーマルポジタイプ記録層)
サーマルポジタイプの記録層は、アルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する。このアルカリ可溶性高分子化合物は、高分子中に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体、およびこれらの混合物を包含し、特に下記(1)や(2)のような酸性基を有するものが、アルカリ現像液に対する溶解性の点で好ましい:(1)フェノール性ヒドロキシ基(−Ar−OH)、(2)スルホンアミド基(−SONH−R)。とりわけ、赤外線レーザ等による露光での画像形成性に優れる点で、フェノール性ヒドロキシ基を有することが好ましく、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−、p−およびm−/p−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂;ピロガロールアセトン樹脂が好ましく挙げられる。さらに詳しくは特開2001−305722号公報の〔0023〕〜〔0042〕で示されている高分子が好ましく用いられる。
光熱変換物質は、露光エネルギーを熱に変換して記録層の露光部領域の相互作用解除を効率よく行うことを可能とする。記録感度の観点から、波長700〜1200nmの赤外域に光吸収域がある顔料または染料が好ましい。染料としては。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体(例えば、ニッケルチオレート錯体)等の染料を用いることができる。中でも、シアニン染料が好ましく、特開2001−305722号公報の一般式(I)で示されたシアニン染料を挙げることができる。サーマルポジタイプの組成物中には、前記コンベンショナルポジタイプで記述した物と同様の感度調節剤、焼出剤、染料等の化合物や塗布性を良化するための界面活性剤を加えることが好ましく、詳しくは特開2001−305722号公報の〔0053〕〜〔0059〕で示されている化合物が好ましい。
サーマルポジタイプの記録層は単層でもよいし、特開平11−218914号公報に記載されているような2層構造として設けてもよい。
サーマルポジタイプの記録層と支持体との間には、下塗層を設けることが好ましい。下塗層に含有される成分としては特開2001−305722号公報の〔0068〕や〔0081〕で示された種々の有機化合物が挙げられる。
これらアルカリ可溶性高分子化合物と光熱変換物質とを含有する感熱性組成物を支持体上に設けたサーマルポジ型感熱性平版印刷版原版は赤外線レーザを用いて画像様露光された後、アルカリ性現像液で現像される。かかる現像液としては、特公昭57−7427号公報、特許第3086354号公報、特開平11−216962号公報、特開2001−51406号公報、特開2001−174981号公報、および特開2002−72501号公報記載の現像液などが好ましい例として挙げられる。
(サーマルネガタイプ記録層)
サーマルネガタイプの記録層は、赤外線レーザ照射部が硬化して画像部を形成するネガ型の記録層である。
このようなサーマルネガタイプの感熱層の一つとして、重合型の層が好適に挙げられる。重合層は、(A)赤外線吸収剤と、(B)ラジカル発生剤(ラジカル重合開始剤)と、発生したラジカルにより重合反応を起こして硬化する(C)ラジカル重合性化合物と、(D)バインダーポリマーとを含有する。
重合層においては、赤外線吸収剤が吸収した赤外線を熱に変換し、この際発生した熱により、オニウム塩等のラジカル重合開始剤が分解し、ラジカルが発生する。ラジカル重合性化合物は、末端エチレン性不飽和結合を有する化合物から選ばれ、発生したラジカルにより連鎖的に重合反応が生起し、硬化する。(A)赤外線吸収剤としては、例えば、前述したサーマルポジタイプの記録層に含有される前記光熱変換物質が挙げられるが、特にシアニン色素の具体例としては特開2001−133969号公報の段落番号〔0017〕〜〔0019〕に記載されたものを挙げることができる。(B)ラジカル発生剤としては、オニウム塩が挙げられ、好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号〔0030〕〜〔0033〕に記載されたものを挙げることができる。(C)ラジカル重合性化合物は、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。(D)バインダーポリマーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましくい、水または弱アルカリ水に可溶性または膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。特にこれらの中で、ベンジル基またはアリル基と、カルボキシ基とを側鎖に有する(メタ)アクリル樹脂が、膜強度、感度および現像性のバランスに優れており、好適である。(C)ラジカル重合性化合物および(D)バインダーポリマーに関しては同号公報〔0036〕〜〔0060〕に詳しく記載された物が使用できる。その他の添加物としては、同号公報〔0061〕〜〔0068〕で示されている添加剤(例えば塗布性を良化するための界面活性剤)を加えることも好ましい。
また、重合型のほかに、サーマルネガタイプの記録層の一つとして、酸架橋型の層が好適に挙げられる。酸架橋層は、(E)光または熱により酸を発生する化合物(以下「酸発生剤」という。)と、(F)発生した酸により架橋する化合物(以下「架橋剤」という。)とを含有し、更に、酸の存在下で架橋剤と反応しうる(G)アルカリ可溶性高分子化合物を含有する。赤外線レーザのエネルギーを効率よく使用するため、酸架橋層には(A)赤外線吸収剤が配合される。(E)酸発生剤としては、光重合の光開始剤、色素類の光変色剤、マイクロレジスト等に使用されている酸発生剤等の、熱分解して酸を発生しうる化合物が挙げられる。(F)架橋剤には、(i)ヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換された芳香族化合物、(ii)N−ヒドロキシメチル基、N−アルコキシメチル基またはN−アシルオキシメチル基を有する化合物、または(iii)エポキシ化合物が挙げられる。(G)アルカリ可溶性高分子化合物としては、ノボラック樹脂、側鎖にヒドロキシアリール基を有するポリマー等が挙げられる。
これら重合型および酸架橋型のサーマルネガタイプ記録層を支持体上に設けたサーマルネガ型感熱性平版印刷版原版は赤外線レーザを用いて画像様露光された後、アルカリ性現像液で現像される。かかる現像液としては、特公昭57−7427号公報、特開2001−133969号公報〔0119〕〜〔0123〕で示される現像液、特願2002−47985号公報、特願2002−59297号公報、および米国特許第5,766,826号公報記載の現像液などが特に好ましい例として挙げられる。
記録層としては、前記フォトポリマータイプ又はサーマルネガタイプの記録層が好ましく用いられる。これらのタイプの記録層の中でも、次に記載の重合性ネガ型記録層が特に好ましく用いられる。
〔重合性ネガ型記録層〕
重合性ネガ型記録層(以下、単に「記録層」と称する場合がある。)は、増感色素、重合開始剤、重合性化合物、及びバインダーポリマーを含有し、更に必要に応じて、着色剤や他の任意成分を含むことが好ましい。
重合性ネガ型記録層は、増感色素に応じたレーザに感応するため、CTPに有用な種々のレーザに感光することができる。例えば、増感色素として赤外線吸収剤を用いた場合について述べれば、重合性ネガ型記録層中に含まれる赤外線吸収剤は、赤外線レーザの照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、かかる電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動、発熱(光熱変換機能)などが、記録層中に併存する重合開始剤に作用して、該重合開始剤に化学変化を生起させてラジカルを生成させる。
この場合のラジカルの生成機構としては、1.赤外線吸収剤の光熱変換機能により発生した熱が、後述する重合開始剤(例えば、スルホニウム塩)を熱分解しラジカルを発生させる、2.赤外線吸収剤が発生した励起電子が、重合開始剤(例えば、活性ハロゲン化合物)に移動しラジカルをさせる、3.励起した赤外線吸収剤に重合開始剤(例えば、ボレート化合物)から電子移動してラジカルが発生する、等が挙げられる。そして、生成したラジカルにより重合性化合物が重合反応を起こし、露光部が硬化して画像部となる。
上記態様の平版印刷版原版は、重合性ネガ型記録層が増感色素として赤外線吸収剤を含有することにより、750nm〜1400nmの波長を有する赤外線レーザ光での直接描画される製版に特に好適であり、従来の平版印刷版原版に比べ、高い画像形成性を発現することができる。
本発明に用いられる平版印刷版原版の記録層は、赤外線吸収剤、重合開始剤(光又は熱によりラジカルを発生する化合物)、分子内にビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマー、及びビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有する重合体を含有する重合性ネガ型記録層が、高感度である点から、好ましい態様である。
以下に、重合性ネガ型記録層を構成する各成分について説明する。
(増感色素)
記録層は、感度の観点から、レーザ露光における露光波長に適合する所定の波長の光を吸収する増感色素を含有する。
この増感色素が吸収し得る波長の露光により後述する重合開始剤のラジカル発生反応や、それによる重合性化合物の重合反応が促進されるものである。このような増感色素としては、公知の分光増感色素又は染料、又は光を吸収して光重合開始剤と相互作用する染料又は顔料が挙げられる。この増感色素が適合する波長のレーザ露光により高感度で電子励起状態となり、かかる電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動などが、後述する重合開始剤に作用して、該重合開始剤に高感度で化学変化を生起させてラジカルを生成させるのに有用である。
増感色素の吸収する光の波長により、記録層は、紫外線から可視光線及び赤外線まで種々の波長に感応することができる。例えば、増感色素として赤外線吸収剤を用いる場合には、波長760nmから1200nmの赤外光に対して感応することになる。また、波長350nmから450nmに極大吸収波長を有する色素を用いることで、青色〜紫の可視光に対して感応することになる。
増感色素として好ましい分光増感色素又は染料は、多核芳香族類(例えば、ピレン、ペリレン、トリフェニレン)、キサンテン類(例えば、フルオレッセイン、エオシン、エリスロシン、ローダミンB、ローズベンガル)、シアニン類(例えば、チアカルボシアニン、オキサカルボシアニン)、メロシアニン類(例えば、メロシアニン、カルボメロシアニン)、チアジン類(例えば、チオニン、メチレンブルー、トルイジンブルー)、アクリジン類(例えば、アクリジンオレンジ、クロロフラビン、アクリフラビン)、フタロシアニン類(例えば、フタロシアニン、メタルフタロシアニン)、ポルフィリン類(例えば、テトラフェニルポルフィリン、中心金属置換ポルフィリン)、クロロフィル類(例えば、クロロフィル、クロロフィリン、中心金属置換クロロフィル)、金属錯体、アントラキノン類(例えば、アントラキノン)、スクアリウム類(例えば、スクアリウム)等が挙げられ、これらは、例えば、特開2005−250438号公報の段落番号〔0188〕〜〔0258〕に詳細に記載され、ここに記載の化合物を適宜選択して増感色素として使用することができる。
中でも、記録層には、増感色素として、以下に詳述する赤外線吸収剤を含有することが好ましい。
赤外線吸収剤は、赤外線レーザの照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、先にのべた電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動に加え、光熱変換機能により熱エネルギーが生成されるため、重合開始剤により高感度で化学変化を生起させるのに有用である。
特に好ましい増感色素である赤外線吸収剤としては、750nm〜1400nmの波長に吸収極大を有する染料又は顔料が好ましく挙げられる。
染料としては、市販の染料及び例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
Figure 2009083305
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記一般式(3)で示されるシアニン色素が挙げられる。
Figure 2009083305
一般式(3)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、−NPh、X−L又は以下に示す基を表す。ここで、Xは酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を示し、Lは、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。
以下に示す基において、X は後述するZ と同様に定義され、Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
Figure 2009083305
及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。記録層形成用塗布液の保存安定性から、R及びRは、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、RとRとは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar、Arは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y、Yは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R、Rは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R、R、R及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Z は、対アニオンを示す。ただし、一般式(3)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZ は必要ない。好ましいZ は、記録層形成用塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
好適に用いることのできる一般式(3)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号[0017]から[0019]に記載されたものを挙げることができる。
また、特に好ましい他の例として更に、前記した特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
但し、対イオンとして、ハロゲンイオンを含有してないものが特に好ましい。
顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。この好ましい粒径の範囲において、記録層中における顔料の優れた分散安定性が得られ、均一な記録層が得られる。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
これらの赤外線吸収剤は、本発明に係る記録層に用いる場合、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
これらの増感色素、好ましくは赤外線吸収剤の添加量は、記録層中における均一性や記録層の耐久性の観点から、記録層を構成する全固形分に対し0.01〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量%の範囲であり、増感色素として染料を用いる場合には、特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料を用いる場合には、特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で添加することができる。
(重合開始剤)
重合開始剤は、後述する重合性化合物の硬化反応を開始、進行させる機能を有し、熱により分解してラジカルを発生する熱分解型のラジカル発生剤、赤外線吸収剤の励起電子を受容してラジカルを発生する電子移動型のラジカル発生剤、又は、励起した赤外線吸収剤に電子移動してラジカルを発生する電子移動型のラジカル発生剤など、エネルギー(例えば、熱又は光)を付与することでラジカルを生成させるものであればいかなる化合物を用いてもよい。例えば、オニウム塩、活性ハロゲン化合物、オキシムエステル化合物、ボレート化合物などが挙げられる。これらは併用してもよい。本発明ではオニウム塩が好ましく、中でも、スルホニウム塩が特に好ましい。
好適に用いられるスルホニウム塩重合開始剤としては、下記一般式(4)で表されるオニウム塩が挙げられる。
Figure 2009083305
一般式(4)中、R11、R12及びR13は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z11は有機又は無機の対イオンを表し、例えば、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボキシレートイオン、及びスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンや該対イオンを構造内に有するものが好ましく、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボキシレートイオン、及びアリールスルホン酸イオンや、該対イオンを構造内に有するものである。
以下に、一般式(4)で表されるオニウム塩の具体例([OS−1]〜[OS−12])を挙げるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2009083305
Figure 2009083305
上記したものの他、特開2002−148790号公報、特開2002−148790号公報、特開2002−350207号公報、特開2002−6482号公報に記載の特定の芳香族スルホニウム塩も好適に用いられる。
上記スルホニウム塩重合開始剤の他にも、他の重合開始剤(他のラジカル発生剤)を用いることができる。他のラジカル発生剤としては、スルホニウム塩以外の他のオニウム塩、トリハロメチル基を有するトリアジン化合物、過酸化物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、キノンジアジド、活性ハロゲン化合物、オキシムエステル化合物、トリアリールモノアルキルボレート化合物などが挙げられ、中でも、高感度であることから、オニウム塩が好ましい。また、上記のスルホニウム塩重合開始剤を必須成分として、これらの重合開始剤(ラジカル発生剤)を併用することもできる。
好適に用い得る他のオニウム塩としては、ヨードニウム塩及びジアゾニウム塩が挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、ラジカル重合の開始剤として機能する。
本発明における他のオニウム塩としては、下記一般式(5)及び(6)で表されるオ
ニウム塩が挙げられる。
Figure 2009083305
一般式(5)中、Ar21とAr22は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。(Z21は(Z11と同義の対イオンを表す。
一般式(6)中、Ar31は、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のア
リール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基又は、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。(Z31は(Z11と同義の対イオンを表す。
以下に、本発明において、好適に用いることのできる一般式(5)で示されるオニウム塩([OI−1]〜[OI−10])、及び一般式(6)で示されるオニウム塩([ON−1]〜[ON−5])の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2009083305
Figure 2009083305

Figure 2009083305
重合開始剤(ラジカル発生剤)として好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133696号公報に記載されたもの等を挙げることができる。
重合開始剤として、有機ホウ素塩や、トリハロアルキル置換化合物が好ましく用いられる。より好ましくは、有機ホウ素塩とトリハロアルキル置換化合物とを組み合わせて用いることである。また、有機ホウ素塩とオニウム塩の組み合わせも好ましく用いられる。
有機ホウ素塩を構成する有機ホウ素アニオンは、下記一般式(7)で表される。
Figure 2009083305
一般式(7)中、R11、R12、R13及びR14は、各々同じであっても異なっていてもよく、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、複素環基を表す。これらの内で、R11、R12、R13及びR14の内の一つがアルキル基であり、他の置換基がアリール基である場合が特に好ましい。
上記の有機ホウ素アニオンは、これと塩を形成するカチオンと同時に存在する。この場合のカチオンとしては、アルカリ金属イオン、オニウムイオン及びカチオン性増感色素が挙げられる。
オニウムイオンとしては、アンモニウムイオン、スルホニウムイオン、ヨードニウムイオン及びホスホニウムイオンが挙げられる。
有機ホウ素塩として、有機ホウ素アニオンとアルカリ金属イオン又はオニウムイオンとの塩を用いる場合には、別に増感色素を添加することで、色素が吸収する光の波長範囲での感光性を付与することが行われる。また、有機ホウ素塩として、カチオン性増感色素の対アニオンを有機ホウ素アニオンとした塩を用いる場合には、該カチオン性増感色素の吸収波長に応じて感光性が付与される。しかし、後者の場合は、更に、アルカリ金属イオン又はオニウムイオンと有機ホウ素アニオンとの塩を併せて含有するのが好ましい。
有機ホウ素塩としては、前記一般式(7)で表される有機ホウ素アニオンを含む塩であり、塩を形成するカチオンとしてはアルカリ金属イオン及びオニウムイオンが好ましく使用される。特に好ましい例は、有機ホウ素アニオンとオニウムイオンとの塩であり、具体的には、テトラアルキルアンモニウム塩等のアンモニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等のスルホニウム塩、トリアリールアルキルホスホニウム塩等のホスホニウム塩が挙げられる。
特に好ましい有機ホウ素塩の具体例(BC−1)〜(BC−6)を下記に示す。
Figure 2009083305
Figure 2009083305
トリハロアルキル置換化合物とは、具体的には、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基等のトリハロアルキル基を分子内に少なくとも一個以上有する化合物であり、好ましい例としては、該トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物として、s−トリアジン誘導体及びオキサジアゾール誘導体が挙げられ、或いは、該トリハロアルキル基がスルホニル基を介して芳香族環或いは含窒素複素環に結合したトリハロアルキルスルホニル化合物が挙げられる。
トリハロアルキル基が含窒素複素環基に結合した化合物の特に好ましい具体例(T−1)〜(T−22)を下記に示す。
Figure 2009083305
Figure 2009083305
Figure 2009083305
Figure 2009083305
重合開始剤として、有機過酸化物を用いることもできる。有機過酸化物としては、例えば、クメンヒドロペルオキシド、第3ブチルヒドロペルオキシド、ジクロルペルオキシド、ジ第3ブチルペルオキシド、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル、及び下記に示す構造を有する化合物等が挙げられる。
Figure 2009083305
なお、重合開始剤(ラジカル発生剤)は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、更に360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
重合開始剤の総含有量は、感度及び印刷時の非画像部に汚れの発生の観点から、記録層を構成する全固形分に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%である。
本発明における重合開始剤としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の重合開始剤を併用する場合は、例えば、好適に用いられるスルホニウム塩重合開始剤のみを複数種用いてもよいし、スルホニウム塩重合開始剤と他の重合開始剤とを併用してもよい。
スルホニウム塩重合開始剤と他の重合開始剤とを併用する場合、その含有比(質量比)としては、100/1〜100/50が好ましく、100/5〜100/25がより好ましい。
また、重合開始剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
記録層に、重合開始剤として好ましい、高感度のスルホニウム塩重合開始剤を用いる場合、ラジカル重合反応が効果的に進行し、形成された画像部の強度が非常に高いものとなる。従って、後述する保護層の高い酸素遮断機能とあいまって、高い画像部強度を有する平版印刷版を作製することができ、その結果、耐刷性が一層向上する。また、スルホニウム塩重合開始剤はそれ自体が経時安定性に優れていることから、作製された平版印刷版原版を保存した際にも、所望されない重合反応の発生が効果的に抑制されるという利点をも有することになる。
(重合性化合物)
重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、即ち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(8)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH=C(R)COOCHCH(R)OH・・・一般式(8)
(ただし、R及びRは、H又はCHを示す。)
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各号公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
本発明において重合性化合物としては、ビニル基が置換したフェニル基を2個以上有するモノマー(以下、適宜、特定モノマーと称する。)も好ましく用いることができる。
前述した重合開始剤(ラジカル発生剤)より発生するラジカルにより生成するスチリルラジカル同士の再結合により効果的に架橋を行うため、この成分を含むことで、高感度で、加熱処理を必要としないネガ型の記録層とすることができる。
本発明における特定モノマーは、代表的には、下記一般式(9)で表される化合物である。
Figure 2009083305
一般式(9)中、Zは連結基を表し、R21、R22、及びR23は、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等であり、更にこれらの基は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等で置換されていてもよい。R24は置換可能な基又は原子を表す。mは0〜4の整数を表し、kは2以上の整数を表す。
一般式(9)で表される化合物について更に詳細に説明する。Zの連結基としては、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−N(R)−、−C(O)−O−、−C(R)=N−、−C(O)−、スルホニル基、複素環構造、及びベンゼン環構造等の単独若しくは2以上が複合した基が挙げられる。ここでR及びRは、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。更に、上記した連結基には、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
で表される連結基を構成する複素環構造としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、これらの複素環構造は更に、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等の置換基を有していてもよい。
また、R24で表される置換可能な基又は原子としては、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基が挙げられ、更に、これらの基又は原子は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等の置換基を有していてもよい。
上記一般式(9)で表される化合物の中でも、下記に示す構造を有するものが好ましい。即ち、一般式(9)におけるR21及びR22は水素原子で、R23は水素原子若しくは炭素数4以下の低級アルキル基(メチル基、エチル基等)で、kは2〜10の整数である化合物が好ましい。
以下に、一般式(9)で表される化合物の具体例(C−1)〜(C−11)を示すが、これらの具体例に限定されるものではない。
Figure 2009083305
Figure 2009083305

Figure 2009083305
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。感光スピードの点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部、即ち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感光性と強度の両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や疎水性の高い化合物は、感光スピードや膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましく無い場合がある。また、記録層を構成する他の成分(例えば、バインダーポリマー、重合開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させ得ることがある。
また、平版印刷版原版では、後述の支持体や保護層等との密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
記録層中の付加重合性化合物の含有量に関しては、感度、相分離の発生、記録層の粘着性、更には、現像液からの析出性の観点から、記録層中の固形分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは40〜75質量%の範囲で使用される。
また、付加重合性化合物は単独で用いても2種以上併用してもよい。その他、付加重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択できる。更に、本発明で使用する平版印刷版原版では、下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施し得る。
(バインダーポリマー)
バインダーポリマーは、膜性向上の観点から含有されるものであって、膜性を向上させる機能を有していれば、種々のものを使用することがすることができる。
−特定バインダーポリマー(1)−
本発明において好適なバインダーポリマーとしては、下記一般式(10)で表される繰り返し単位を有するバインダーポリマーが挙げられる。
以下、一般式(10)で表される繰り返し単位を有するバインダーポリマーを、適宜、特定バインダーポリマー(1)と称し、詳細に説明する。
Figure 2009083305
(一般式(10)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子を含み構成され、その総原子数が2〜82である連結基を表す。Aは酸素原子又は−NR−を表し、Rは水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。nは1〜5の整数を表す。)
まず、一般式(10)におけるRは、水素原子又はメチル基を表し、特にメチル基が好ましい。
一般式(10)におけるRで表される連結基は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される2以上の原子を含み構成され、その総原子数が2〜82であり、好ましくは2〜50であり、より好ましくは2〜30である。ここで示す総原子数は、当該連結基が置換基を有する場合には、その置換基を含めた原子数を指す。より具体的には、Rで表される連結基の主骨格を構成する原子数が、1〜30であることが好ましく、3〜25であることがより好ましく、4〜20であることが更に好ましく、5〜10であることが最も好ましい。なお、本発明における「連結基の主骨格」とは、一般式(10)におけるAと末端COOHとを連結するためのみに使用される原子又は原子団を指し、特に、連結経路が複数ある場合には、使用される原子数が最も少ない経路を構成する原子又は原子団を指す。したがって、連結基内に環構造を有する場合、その連結部位(例えば、o−、m−、p−など)により算入されるべき原子数が異なる。
また、より具体的には、アルキレン、置換アルキレン、アリーレン、置換アリーレンなどが挙げられ、これらの2価の基がアミド結合やエステル結合で複数連結された構造を有していてもよい。
鎖状構造の連結基としては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。また、これらのアルキレンがエステル結合を介して連結されている構造もまた好ましいものとして例示することができる。
この中でも、一般式(10)におけるRで表される連結基は、炭素原子数3から30までの脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。より具体的には、任意の置換基によって一個以上置換されていてもよいシクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、ジシクロヘキシル、ターシクロヘキシル、ノルボルナン等の脂肪族環状構造を有する化合物を構成する任意の炭素原子上の水素原子を(n+1)個除き、(n+1)価の炭化水素基としたものを挙げることができる。また、Rは、置換基を含めて炭素数3から30であることが好ましい。
脂肪族環状構造を構成する化合物の任意の炭素原子は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子から選ばれるヘテロ原子で、一個以上置き換えられていてもよい。耐刷性の点で、Rは縮合多環脂肪族炭化水素、橋架け環脂肪族炭化水素、スピロ脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素環集合(複数の環が結合又は連結基でつながったもの)等、2個以上の環を含有してなる炭素原子数5から30までの置換基を有していてもよい脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。この場合も炭素数は置換基が有する炭素原子を含めてのものである。
で表される連結基としては、特に、連結基の主骨格を構成する原子数が5〜10のものが好ましく、構造的には、鎖状構造であって、その構造中にエステル結合を有するものや、前記の如き環状構造を有するものが好ましい。
で表される連結基に導入可能な置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基及びその共役塩基基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SOH)及びその共役塩基基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、N−アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルスルファモイル基(−SONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルスルファモイル基(−SONHSO(aryl))及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルカルバモイル基(−CONHSO(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルカルバモイル基(−CONHSO(aryl))及びその共役塩基基、アルコキシシリル基(−Si(Oalkyl))、アリーロキシシリル基(−Si(Oaryl))、ヒドロキシシリル基(−Si(OH))及びその共役塩基基、ホスホノ基(−PO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノ基(−PO(alkyl))、ジアリールホスホノ基(−PO(aryl))、アルキルアリールホスホノ基(−PO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−POH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノ基(−POH(aryl))及びその共役塩基基、ホスホノオキシ基(−OPO)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO(alkyl))、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO(aryl))、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPOH(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノオキシ基(−OPOH(aryl))及びその共役塩基基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルボリル基(−B(alkyl))、ジアリールボリル基(−B(aryl))、アルキルアリールボリル基(−B(alkyl)(aryl))、ジヒドロキシボリル基(−B(OH))及びその共役塩基基、アルキルヒドロキシボリル基(−B(alkyl)(OH))及びその共役塩基基、アリールヒドロキシボリル基(−B(aryl)(OH))及びその共役塩基基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
本発明で使用する平版印刷版原版では、記録層の設計にもよるが、水素結合可能な水素原子を有する置換基や、特に、カルボン酸よりも酸解離定数(pKa)が小さい酸性を有する置換基は、耐刷性を下げる傾向にあるので好ましくない。一方、ハロゲン原子や、炭化水素基(アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基)、アルコキシ基、アリーロキシ基などの疎水性置換基は、耐刷を向上する傾向にあるのでより好ましく、特に、環状構造がシクロペンタンやシクロヘキサン等の6員環以下の単環脂肪族炭化水素である場合には、このような疎水性の置換基を有していることが好ましい。これら置換基は可能であるならば、置換基同士、又は置換している炭化水素基と結合して環を形成してもよく、置換基は更に置換されていてもよい。
一般式(10)におけるAがNR−である場合のRは、水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。このRで表される炭素数1〜10までの一価の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−ノルボルニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基等の炭素数1〜10までのアリール基、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個含有する炭素数1〜10までのヘテロアリール基、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−オクチニル基等の炭素数1〜10までのアルキニル基が挙げられる。Rが有してもよい置換基としては、Rが導入し得る置換基として挙げたものと同様である。但し、Rの炭素数は、置換基の炭素数を含めて1〜10である。
一般式(10)におけるAは、合成が容易であることから、酸素原子又は−NH−であることが好ましい。一般式(10)におけるnは、1〜5の整数を表し、耐刷の点で好ましくは1である。
以下に、一般式(10)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2009083305
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一般式(10)で表される繰り返し単位は、バインダーポリマー中に1種類だけであってもよいし、2種類以上含有していてもよい。本発明における特定バインダーポリマー(1)は、一般式(10)で表される繰り返し単位だけからなるポリマーであってもよいが、通常、他の共重合成分と組み合わされ、コポリマーとして使用される。コポリマーにおける一般式(10)で表される繰り返し単位の総含有量は、その構造や、記録層組成物の設計等によって適宜決められるが、好ましくはポリマー成分の総モル量に対し、1〜99モル%、より好ましくは5〜40モル%、更に好ましくは5〜20モル%の範囲で含有される。
コポリマーとして用いる場合の共重合成分としては、ラジカル重合可能なモノマーであれば従来公知のものを制限なく使用できる。具体的には、「高分子データハンドブック−基礎編−(高分子学会編、培風館、1986)」記載のモノマー類が挙げられる。このような共重合成分は1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明で使用する特定バインダーポリマー(1)の分子量は、画像形成性や耐刷性の観点から適宜決定される。好ましい分子量としては、2,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜500,000、更に好ましくは10,000〜200,000の範囲である。
また、特定バインダーポリマー(1)の酸価(meq/g)としては、2.00〜3.60の範囲であることが好ましい。
本発明おける特定バインダーポリマー(1)は単独で使用してもよいし、他のバインダーポリマーを1種以上併用して、混合物として用いてもよい。
併用されるバインダーポリマーは、バインダーポリマー成分の総質量に対し1〜60質量%、好ましくは1〜40質量%、更に好ましくは1〜20質量%の範囲で用いられる。
併用できるバインダーポリマーとしては、従来公知のものを制限なく使用でき、具体的には、本業界においてよく使用されるアクリル主鎖バインダーや、ウレタンバインダー等や、後述するラジカル重合性基を有するバインダーポリマーが好ましく用いられる。
−併用可能な他のバインダーポリマー−
前記特定バインダーポリマー(1)と併用可能な他のバインダーポリマーは、ラジカル重合性基を有するバインダーポリマーであることが好ましい。
そのラジカル重合性基としては、ラジカルにより重合することが可能であれば特に限定されないが、α−置換メチルアクリル基[−OC(=O)−C(−CHZ)=CH、Z=ヘテロ原子から始まる炭化水素基]、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基が挙げられ、この中でも、アクリル基、メタクリル基が好ましい。
かかるバインダーポリマー中のラジカル重合性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、感度や保存性の観点から、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。
また、併用可能な他のバインダーポリマーは、更に、アルカリ可溶性基を有するものが好ましい。バインダーポリマー中のアルカリ可溶性基の含有量(中和滴定による酸価)は、現像カスの析出性や耐刷性の観点から、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜3.0mmol、より好ましくは0.2〜2.0mmol、最も好ましくは0.45〜1.0mmolである。
このようなバインダーポリマーの重量平均分子量は、皮膜性(耐刷性)や、塗布溶剤への溶解性の観点から、好ましくは2,000〜1,000,000、より好ましくは10,000〜300,000、最も好ましくは20,000〜200,000の範囲である。
また、このようなバインダーポリマーのガラス転移点(Tg)は、保存安定性、耐刷性、及び感度の観点から、好ましくは70〜300℃、より好ましくは80〜250℃、最も好ましくは90〜200℃の範囲である。
バインダーポリマーのガラス転移点を高めるため手段としては、その分子中に、アミド基やイミド基を含有することが好ましく、特に、メタクリルアミドやメタクリルアミド誘導体を含有することが好ましい。
本発明において、更に、特公平7−12004号、特公平7−120041号、特公平7−120042号、特公平8−12424号、特開昭63−287944号、特開昭63−287947号、特開平1−271741号の各号公報、特願平11−352691号明細書等に記載される、酸基を含有するウレタン系バインダーポリマーを用いることもできる。バインダーポリマーは、非常に、強度に優れるので、耐刷性・低露光適性の点で有利である。
また、特開平11−171907号公報記載のアミド基を有するバインダーは優れた現像性と膜強度を併せもち、好適である。
更に、この他に水溶性線状有機高分子として、ポリビニルピロリドンやポリエチレンオキサイド等が有用である。また、硬化皮膜の強度を上げるために、アルコール可溶性ナイロンや2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンのポリエーテル等も有用である。
好ましい実施様態においてバインダーポリマーは実質的に水不要でアルカリに可溶なものが用いられる。そうすることで、現像液として、環境上好ましくない有機溶剤を用いないか若しくは非常に少ない使用量に制限できる。このような使用法においてはバインダーポリマーの酸価(ポリマー1g当たりの酸含率を化学等量数で表したもの)と分子量は画像強度と現像性の観点から適宜選択される。好ましい酸価は、0.4〜3.0meq/gであり、好ましい分子量は質量平均分子量で3000から50万の範囲であり、より好ましくは、酸価が0.6〜2.0、分子量が1万から30万の範囲である。
なお、これらのバインダーポリマーは、必要に応じて、後述する特定バインダーポリマー(2)や特定バインダーポリマー(3)と併用することができる。
−特定バインダーポリマー(2)−
また、本発明におけるバインダーポリマーとしては、ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有するバインダーポリマー(以下、適宜、特定バインダーポリマー(2)と称する。)も好適に用いることができる。
ビニル基が置換したフェニル基を側鎖に有するバインダーポリマーとは、ビニル基が置換したフェニル基が直接若しくは連結基を介して主鎖と結合したものである。該連結基としては、特に限定されず、任意の基、原子、又はそれらの複合した基が挙げられる。また、前記フェニル基は、当該ビニル基の他に、置換可能な基若しくは原子で置換されていてもよく、かかる置換可能な基若しくは原子としては、具体的には、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基などが挙げられる。更に、前記ビニル基は、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等で置換されていてもよい。
特定バインダーポリマー(2)としては、下記一般式(11)で表される基を側鎖に有するバインダーポリマーであることが好ましい。
Figure 2009083305

一般式(11)中、Zは連結基を表し、R、R、及びRは、各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、カルボキシ基、スルホ基、ニトロ基、シアノ基、アミド基、アミノ基、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基等を表し、更にこれらの基は、アルキル基、アミノ基、アリール基、アルケニル基、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等で置換されていてもよい。Rは置換可能な基又は原子を表す。nは0又は1を表し、mは0〜4の整数を表し、kは1〜4の整数を表す。
上記一般式(11)について更に詳細に説明する。
としては水素原子が好ましい。
また、Zで表される連結基としては、酸素原子、硫黄原子、アルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、−N(R)−、−C(O)−O−、−C(R)=N−、−C(O)−、スルホニル基、複素環基、及び下記構造式で表される基等の単独若しくは2以上が複合した基が挙げられる。ここで、R及びRは、それぞれ、水素原子、アルキル基、アリール基等を表す。更に、上記した連結基には、アルキル基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
Figure 2009083305
上記複素環基としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環、イソオキサゾール環、オキサゾール環、オキサジアゾール環、イソチアゾール環、チアゾール環、チアジアゾール環、チアトリアゾール環、インドール環、インダゾール環、ベンズイミダゾール環、ベンゾトリアゾール環、ベンズオキサゾール環、ベンズチアゾール環、ベンズセレナゾール環、ベンゾチアジアゾール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キノキサリン環等の含窒素複素環、フラン環、チオフェン環等が挙げられ、更にこれらの複素環には置換基が結合していてもよい。
前記一般式(11)で表される基を側鎖に有するバインダーポリマーの具体例としては、下記に示すものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
なお、構造式中、数字は、共重合体の全組成100質量%中における各繰り返し単位の質量%を表す。
Figure 2009083305
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Figure 2009083305
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特定バインダーポリマー(2)の重量平均分子量としては、5000〜1,000,000であることが好ましく、10,000〜500,000であることがより好ましく、20,000〜300,000であることが更に好ましい。
−特定バインダーポリマー(3)−
また、アリル基を有する有機ポリマーも、本発明におけるバインダーポリマーとして好適に用いることができる。
特に、0.7meq/g〜8.0meq/gのアリル基(即ち、1グラム当たり7×10−4モル〜8.0×10−3モルのアリル基)を含有するバインダーポリマーが好ましい。以下、このバインダーポリマーを特定バインダーポリマー(3)と称して説明する。
特定バインダーポリマー(3)は、アクリル酸アリル、及び/又は、メタクリル酸アリルのポリマー又はコポリマーであることが好ましい。
より具体的には、ポリメタクリル酸アリル等のホモポリマー、上記アクリル酸アリル、及び/又は、メタクリル酸アリルと、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸ブチル、これらのアルキルエステル、酢酸ビニル、スチレン、無水マレイン酸、アクリロニトリル等の他のモノマーと、のコポリマーが含まれる。
特定バインダーポリマー(3)の別の好ましい例としては、ペンダントアリル基、又は末端アリル基のいずれでもよいアリル基を有するポリウレタン(以下、アリル基含有ポリウレタンと称する。)が挙げられる。
アリル基を有するポリウレタンは、ジイソシアナートを過剰のアリル基を有するジオールと反応させてポリウレタンを生成させることにより調製することができる。
また、ジイソシアナートをジメチロールプロピオン酸等のカルボキシル基を有するジオールと反応させることにより、カルボキシル基を有するポリウレタンを調製し、このカルボキシル基を、例えば、アリルアルコールとエステル化することによりアリルエステル基に転化することで、アリル基を有するポリウレタンを得ることができる。
アリル基を有するジオールとしては、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール、及びトリメチロールプロパンアリルエーテルが挙げられる。また、アリルエステル基を有するジオールとしては、アリル4,4−ビス(ヒドロキシエチルオキシフェニル)−ペンタノアート、及び2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパノアートが挙げられる。好ましいジオールは、3−アリルオキシ−1,2−プロパンジオール:(HO)CH−CH(OH)−CH−O−CH−CH=CHである。
これらのアリル基を有するジオールは、単独又は組み合わせで、或いは、更にアリル基を含まないジオールとの組み合わせで用いることができる。但し、これらのジオールは、得られるポリマー中に0.7meq/g〜8.0meq/gの範囲でアリル基が存在するような条件のもとで、使用される。
なお、において用いられる、アリル基を含まないジオールの例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオールが挙げられる。
アリル基を有するポリウレタンは、酸基、すなわちpKが7以下の基(例えば、スルホン酸基、リン酸基、ホスホン酸基、カルボン酸基)を含んでいてもよい。このようなポリウレタンは、アリル基を有するジオールと1つ又は複数の酸基を含むジオールとの混合物の過剰量を、上記のようにジイソシアナートと反応させることによって得られる。1つ又は複数の酸基を含む有用なジオールとしては、例えば、ジアルカノールアルキルスルホン酸、ジアルカノールアルキルリン酸、及びジアルカノールアルキルホスホン酸が挙げられる。
アリル基及び酸基を有するポリウレタンは、カルボキシル基及びアリル基を有するポリウレタンであることが好ましい。カルボキシル基及びアリル基を有するポリウレタンは、ジイソシアナートを、過剰の、アリル基を有するジオール及びカルボキシル基を有するジオールの混合物と反応させて、ポリウレタンを生成させることによって得られる。
このジオールの混合物における混合比は、得られるポリマー中に0.7meq/g〜8.0meq/gの範囲でアリル基が存在するような条件のもとで、決定される。
カルボキシル基を有するジオールとして有用なものは、例えば、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、(2,2−ジメチロールプロパン酸)、2,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロパン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピル)プロパン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)酪酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ペンタン酸、及び酒石酸等のジアルカノールアルカン酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸等のジヒドロキシ安息香酸、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、又は2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物等の酸二無水物と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、1,2−又は1,3−プロパンジオール、ポリプロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール等のジオールと、の反応生成物のような酸二無水物に、ジオールを反応させることにより得られるジヒドロキシジカルボン酸が挙げられる。
また、ポリウレタンを合成する際に用いられるイソシアナートとしては、芳香族及び/又は脂肪族ジイソシアナートを使用することができる。
芳香族ジイソシアナートとしては、例えば、2,4−トルエンジイソシアナート、2,6−トルエンジイソシアナート、p−キシレンジイソシアナート、m−キシレンジイソシアナート、テトラメチルキシレンジイソシアナート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアナート、1,5−ナフタレンジイソシアナート、及び3,3’−ジメチルビフェニル−4,4’−ジイソシアナートが挙げられる。
脂肪族ジイソシアナートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアナート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、4,4−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアナート)、メチルシクロヘキサン−2,4−及び2,6−ジイソシアナート、及び1,4−ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサンが挙げられる。
なお、本発明においては、芳香族ジイソシアナートの方が好ましく用いられる。
以上のような特定バインダーポリマー(3)は、ゲルパーミエーショオンクロマトグラフィーにより測定して、5,000〜1,000,000、好ましくは100,000以下、より好ましくは75,000以下、更により好ましくは50,000以下の重量平均分子量を有する。
特定バインダーポリマー(3)分子は、線状分子又は枝分かれ分子であってよく、好ましくは、1から5の多分散性を有するものである。
また、特定バインダーポリマー(3)は、0〜70mgKOH/gの酸価を有することが好ましく、0〜50mgKOH/gの酸価を有することがより好ましく、0〜30mgKOH/gの酸価を有することが更に好ましい。
本発明において、記録層中のバインダーポリマーの総量は、適宜決めることができるが、記録層中の不揮発性成分の総質量に対し、通常、10〜90質量%であり、好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%の範囲である。
また、後述する重合性化合物とバインダーポリマーは、質量比で1/9〜7/3の範囲とするのが好ましい。
(その他の成分)
本発明における記録層には、以上の基本成分の他に、更にその用途、製造方法等に適したその他の成分を適宜添加することができる。以下、好ましい添加剤に関し例示する。
−着色剤−
記録層には、その着色を目的として、染料若しくは顔料を添加してもよい。これにより、印刷版としての製版後の画像の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させることができる。着色剤としては、具体例としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料があり、中でも、カチオン性染料が好ましい。
また、着色剤としては、上記のような検版性に加え、重合禁止効果を有する吸収極大を500nm〜700nmの範囲に有する染料を用いてもよい。この染料としては、特開2005−107389号公報の段落番号〔0013〕〜〔0017〕に記載のものが用いられる。
着色剤としての染料及び顔料の添加量は、記録層中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約5質量%が好ましい。
−重合禁止剤−
本発明における記録層や、記録層を形成する際に用いられる記録層形成用塗布液においては、重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。
熱重合禁止剤の添加量は、記録層(又は記録層形成用塗布液)中の不揮発性成分の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。
また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、記録層(又は記録層形成用塗布液)中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
−重量平均分子量が3,000以下であり、かつ、カルボン酸基少なくとも1つ有する化合物−
本発明における記録層には、重量平均分子量が3,000以下であり、かつ、カルボン酸基少なくとも1つ有する化合物(以下、適宜、特定カルボン酸化合物と称する。)を含有させてもよい。この特定カルボン酸化合物は、例えば、置換基を有していてもよい脂肪族カルボン酸、置換基を有してもよい芳香族カルボン酸、及び、置換基を有していてもよい複素環に直接連結したカルボン酸等の化合物から選択することができる。これらの中でも、フタル酸誘導体、トリメリット酸誘導体、ピロメリト酸誘導体、コハク酸誘導体、安息香酸誘導体、及びグリシン誘導体等が好適に挙げられる。
本発明において、特定カルボン酸化合物の重量平均分子量は3000以下であり、60〜2000の範囲であることがより好ましく、100〜1500の範囲であることが更に好ましい。重量平均分子量が3000を越えると、特定カルボン酸化合物が支持体に吸着する場合があり好ましくない。
以下に、本発明に好適に用いられる特定カルボン酸化合物の具体例(化合物No.1〜No.21)を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2009083305

Figure 2009083305
〔支持体〕
本発明における支持体としては、紙、ポリエステルフィルム又はアルミニウム板が挙げられ、その中でも、寸法安定性がよく、比較的安価であり、必要に応じた表面処理により親水性や強度にすぐれた表面を提供できるアルミニウム板は更に好ましい。また、特公昭48−18327号公報に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートも好ましい。
本発明において最も好適な支持体としてのアルミニウム板とは、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属板であり、純アルミニウム板の他、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、又はアルミニウム(合金)がラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルム又は紙の中から選ばれる。以下の説明において、上記に挙げたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる支持体をアルミニウム支持体と総称して用いる。前記アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがあり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。本発明では純アルミニウム板が好適であるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のもの、例えば、JIS A 1050、JIS A 1100、JIS A 3103、JIS A 3005などを適宜利用することができる。
また、本発明に用いられるアルミニウム支持体の厚みは、およそ0.1mm〜0.6mm程度である。この厚みは印刷機の大きさ、印刷版の大きさ及びユーザーの希望により適宜変更することができる。
このような支持体(アルミニウム支持体)には、後述の表面処理が施され、親水化される。
(粗面化処理)
粗面化処理方法は、特開昭56−28893号公報に開示されているような機械的粗面化、化学的エッチング、電解グレインなどがある。更に塩酸又は硝酸電解液中で電気化学的に粗面化する電気化学的粗面化方法、及びアルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立でするポールグレイン法、ナイロンブラシと研磨剤で表面を粗面化するブラシグレイン法のような機械的粗面化法を用いることができ、上記粗面化方法を単独或いは組み合わせて用いることもできる。その中でも粗面化に有用に使用される方法は塩酸又は硝酸電解液中で化学的に粗面化する電気化学的方法であり、適する陽極時電気量は50C/dm〜400C/dmの範囲である。更に具体的には、0.1〜50%の塩酸又は硝酸を含む電解液中、温度20〜80℃、時間1秒〜30分、電流密度100C/dm〜400C/dmの条件で交流及び/又は直流電解を行うことが好ましい。
このように粗面化処理したアルミニウム支持体は、酸又はアルカリにより化学的にエッチングされてもよい。好適に用いられるエッチング剤は、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム等であり、濃度と温度の好ましい範囲はそれぞれ1〜50%、20〜100℃である。エッチングのあと表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗いが行われる。用いられる酸は硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸等が用いられる。特に電気化学的粗面化処理後のスマット除去処理方法としては、好ましくは特開昭53−12739号公報に記載されているような50〜90℃の温度の15〜65質量%の硫酸と接触させる方法及び特公昭48−28123号公報に記載されているアルカリエッチングする方法が挙げられる。以上のように処理された後、処理面の表面粗さRaが0.2〜0.5μm程度であれば、特に、方法、条件は限定しない。
(陽極酸化処理)
以上のようにして処理され酸化物層を形成したアルミニウム支持体には、その後に陽極酸化処理がなされる。
陽極酸化処理は硫酸、燐酸、シュウ酸若しくは硼酸/硼酸ナトリウムの水溶液が単独若しくは複数種類組み合わせて電解浴の主成分として用いられる。この際、電解液中に少なくともAl合金板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分はもちろん含まれても構わない。更には第2、第3成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、3成分とは、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオンやアンモニウムイオン等に陽イオンや、硝酸イオン、炭酸イオン、塩素イオン、リン酸イオン、フッ素イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、硼酸イオン等の陰イオンが挙げられ、その濃度としては0〜10000ppm程度含まれてもよい。陽極酸化処理の条件に特に限定はないが、好ましくは30〜500g/リットル、処理液温10〜70℃で、電流密度0.1〜40A/mの範囲で直流又は交流電解によって処理される。形成される陽極酸化皮膜の厚さは0.5〜1.5μmの範囲である。好ましくは0.5〜1.0μmの範囲である。以上の処理によって作製された支持体が、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアのポア径が5〜10nm、ポア密度が8×1015〜2×1016個/mの範囲に入るように処理条件が選択されることが好ましい。
前記支持体表面の親水化処理としては、広く公知の方法が適用できる。特に好ましい処理としては、シリケート又はポリビニルホスホン酸等による親水化処理が施される。皮膜はSi、又はP元素量として2〜40mg/m、より好ましくは4〜30mg/mで形成される。塗布量はケイ光X線分析法により測定できる。
上記の親水化処理は、アルカリ金属ケイ酸塩、又はポリビニルホスホン酸が1〜30質量%、好ましくは2〜15質量%であり、25℃のpHが10〜13である水溶液に、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム支持体を、例えば、15〜80℃で0.5〜120秒浸漬することにより実施される。
前記親水化処理に用いられるアルカリ金属ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどが使用される。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液のpHを高くするために使用される水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがある。なお、上記の処理液にアルカリ土類金属塩若しくは第IVB族金属塩を配合してもよい。アルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩などの水溶性の塩が挙げられる。第IVB族金属塩としては、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムなどを挙げることができる。
アルカリ土類金属塩若しくは、第IVB族金属塩は、単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらの金属塩の好ましい範囲は0.01〜10質量%であり、更に好ましい範囲は0.05〜5.0質量%である。また、米国特許第3,658,662号明細書に記載されているようなシリケート電着も有効である。特公昭46−27481号、特開昭52−58602号、特開昭52−30503号に開示されているような電解グレインを施した支持体と、上記陽極酸化処理及び親水化処理を組合せた表面処理も有用である。
〔中間層(下塗り層)〕
本発明で使用する平版印刷版原版には、記録層と支持体との間の密着性や汚れ性を改善する目的で、中間層(下塗り層)を設けてもよい。このような中間層の具体例としては、特公昭50−7481号、特開昭54−72104号、特開昭59−101651号、特開昭60−149491号、特開昭60−232998号、特開平3−56177号、特開平4−282637号、特開平5−16558号、特開平5−246171号、特開平7−159983号、特開平7−314937号、特開平8−202025号、特開平8−320551号、特開平9−34104号、特開平9−236911号、特開平9−269593号、特開平10−69092号、特開平10−115931号、特開平10−161317号、特開平10−260536号、特開平10−282682号、特開平11−84674号、特開平10−69092号、特開平10−115931号、特開平11−38635号、特開平11−38629号、特開平10−282645号、特開平10−301262号、特開平11−24277号、特開平11−109641号、特開平10−319600号、特開平11−84674号、特開平11−327152号、特開2000−10292号、特開2000−235254号、特開2000−352854号、特開2001−209170号、特願平11−284091号等に記載のものを挙げることができる。
<<製版方法>>
以下、本発明の平版印刷版の製版方法について説明する。本発明の平版印刷版の製版方法は、平版印刷用原版を、本発明の版面保護液を用いて処理する工程を含むものであれば特に限定されないが、具体的には、例えば以下のように実施することができる。
まず、平版印刷版原版は、記録層側の最表面と、バックコート層側の最表面とを直接接触させて複数枚積層してなる積層体(平版印刷版原版の積層体)を形成した後、この積層体をプレートセッター内にセットし、該平版印刷版原版を1枚ずつ自動搬送した後に、露光処理した後、現像処理を行なうことで製版できる。そして水洗等の後処理を経た後、本発明の版面保護液によって処理される。
本発明で使用する平版印刷版原版は、版の間に合紙を挟み込むことなく積層しても、平版印刷版原版の間の密着性や、保護層へのキズの発生が抑制されるため、上記のような製版方法に適用することができる。また、その製版方法に、平版印刷版原版を合紙を挟み込むことなく積層した積層体(平版印刷版原版の積層体)を用いることができることから、合紙の除去が不必要となり、製版工程における生産性が向上する。
平版印刷版原版が、増感色素として赤外線吸収剤を有する重合性ネガ型記録層上に保護層を設けてなる構成の場合、保護層とバックコート層とを直接接触させて複数枚積層してなる積層体を、プレートセッター内にセットし、該平版印刷版原版を1枚ずつ自動搬送した後に、750nm〜1400nmの波長で露光処理した後、実質的に加熱処理を経ることなく、搬送速度が1.25m/分以上の条件にて現像処理を行なうことで製版できる。
〔露光〕
露光処理に用いられる光源としては、公知のものを制限なく用いることができる。光源の波長は300nm〜1200nmの範囲が好ましく、具体的には、各種レーザを光源として用いることができ、中でも、波長760nm〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザを用いることができる。
光源としてはレーザが好ましく、例えば、350〜450nmの波長の入手可能なレーザ光源としては以下のものを利用することができる。
ガスレーザとしては、Arイオンレーザ(364nm、351nm、10mW〜1W)、Krイオンレーザ(356nm,351nm,10mW〜1W)、He−Cdレーザ(441nm,325nm,1mW〜100mW)、固体レーザとして、Nd:YAG(YVO)とSHG結晶×2回の組み合わせ(355mm、5mW〜1W)、Cr:LiSAFとSHG結晶の組み合わせ(430nm,10mW)が挙げられる。半導体レーザ系としては、KNbO、リング共振器(430nm,30mW)、導波型波長変換素子とAlGaAs、InGaAs半導体の組み合わせ(380nm〜450nm、5mW〜100mW)、導波型波長変換素子とAlGaInP、AlGaAs半導体の組み合わせ(300nm〜350nm、5mW〜100mW)、AlGaInN(350nm〜450nm、5mW〜30mW)、その他、パルスレーザとしてNレーザ(337nm、パルス0.1〜10mJ)、XeF(351nm、パルス10〜250mJ)が挙げられる。
特に、この中でAlGaInN半導体レーザ(市販InGaN系半導体レーザ400〜410nm、5〜30mW)が波長特性、コストの面で好適である。
その他、450nm〜700nmの入手可能な光源としてはArレーザ−(488nm)、YAG−SHGレーザ(532nm)、He−Neレーザ(633nm)、He−Cdレーザ、赤色半導体レーザ(650〜690nm)があり、700nm〜1200nmの入手可能な光源としては半導体レーザ(800〜850nm)、Nd−YAGレーザ(1064nm)が好適に利用できる。
その他、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、キセノン灯、メタルハライド灯、紫外のレーザランプ(ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザなど)、可視の各種レーザランプ、蛍光灯、タングステン灯、太陽光等、放射線としては電子線、X線、イオンビーム、遠赤外線なども利用できる。
上記の中でも、像露光に用いられる光線の光源としては、近赤外から赤外領域に発光波長を持つ光源が好ましく、固体レーザ、半導体レーザが特に好ましい。
特に、750nm〜1400nmの波長を露光光源として用いる場合、該波長の光を発するものならば特に際限なく使用できるが、好ましくは750nm〜1400nmの波長の赤外線を放射する固体レーザ、或いは半導体レーザにより画像露光されることが好ましい。
レーザの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。平版印刷版原版に照射される単位あたりのエネルギー量は10〜300mJ/cmであることが好ましい。
本発明における露光処理では、光源の光ビームをオーバーラップさせて露光することができる。オーバーラップとは副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えば、ビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表わしたとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が0.1以上であることが好ましい。
本発明に使用する露光装置の光源の走査方式は特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、円筒外面方式の場合にはマルチチャンネルが好ましく用いられる。
本発明においては、上述のように露光処理された平版印刷版原版は、加熱処理及び水洗処理を行ってもよい。
また、平版印刷版原版の種類によっては、例えば、重合性ネガ型記録層を有する場合には、特段の加熱処理及び水洗処理を行なうことなく、現像処理に供されてもよい。この加熱処理を行なわないことで、加熱処理に起因する画像の不均一性を抑制することができる。また、加熱処理及び水洗処理を行なわないことで、現像処理において安定な高速処理が可能となる。
〔現像〕
本発明における現像処理では、現像液を用いて、記録層の非画像部を除去する。
なお、本発明においては、上述のように、増感色素として赤外線吸収剤を有する重合性ネガ型記録層上に保護層を設けてなる構成の平版印刷版原版の場合、現像処理における処理速度、即ち、現像処理における平版印刷版原版の搬送速度(ライン速度)は、1.25m/分以上であることが好ましく、より好ましくは、1.35m/分以上である。また、搬送速度の上限値には特に制限はないが、搬送の安定性の観点からは、3m/分以下であることが好ましい。
以下、本発明に用いられる現像液について説明する。
(現像液)
本発明に用いられる現像液は、pH14以下のアルカリ水溶液であることが好ましく、また、芳香族アニオン界面活性剤を含有することが好ましい。
(芳香族アニオン界面活性剤)
本発明における現像液に用いられる芳香族アニオン界面活性剤は、現像促進効果、重合性ネガ型の記録層成分及び保護層成分の現像液中での分散安定化効果があり、現像処理安定化において好ましい。中でも、本発明に用いられる芳香族アニオン界面活性剤としては、下記一般式(A)又は一般式(B)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2009083305
上記一般式(A)又は一般式(B)において、R、Rは、それぞれ独立に、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、具体的には、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基等が挙げられ、中でも、エチレン基、プロピレン基が特に好ましい。
m、nは、それぞれ独立に、1〜100から選択される整数を表し、中でも、1〜30が好ましく、2〜20がより好ましい。また、mが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。同じく、nが2以上の場合、複数存在するRは同一でも異なっていてもよい。
t、uは、それぞれ独立に、0又は1を表す。
、Rは、それぞれ独立に、直鎖又は分岐鎖の炭素数1〜20のアルキル基を表し、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ドデシル基等が挙げられ、中でも、メチル基、エチル基、iso−プロピル基、n−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基が特に好ましい。
p、qはそれぞれ、0〜2から選択される整数を表す。Y、Yは、それぞれ単結合、又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し、具体的には、単結合、メチレン基、エチレン基が好ましく、特に単結合が好ましい。
(Zr+、(Zs+は、それぞれ独立に、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、或いは、無置換又はアルキル基で置換されたアンモニウムイオンを表し、具体例としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、アンモニウムイオン、炭素数1〜20の範囲の、アルキル基、アリール基、又はアラルキル基が置換した2級〜4級のアンモニウムイオンなどが挙げられ、特に、ナトリウムイオンが好ましい。r、sはそれぞれ、1又は2を表す。
以下に、具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2009083305
Figure 2009083305
これら芳香族アニオン界面活性剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。芳香族アニオン界面活性剤の添加量は、現像液中における芳香族アニオン界面活性剤の濃度が1.0〜10質量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは2〜10質量%の範囲とすることが効果的である。ここで、含有量が1.0質量%以下であると、現像性低下及び記録層成分の溶解性低下を招き、含有量が10質量%以上であると、印刷版の耐刷性を低下させる。
現像液には、前記芳香族アニオン界面活性剤以外に、その他の界面活性剤を併用してもよい。その他の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンステアレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンアルキルエステル類、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート等のモノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン界面活性剤である。
これらその他の界面活性剤の現像液中における含有量は有効成分換算で、0.1から10質量%が好ましい。
(2価金属に対するキレート剤)
現像液には、例えば、硬水に含まれるカルシウムイオンなどによる影響を抑制する目的で、2価金属に対するキレート剤を含有させることが好ましい。2価金属に対するキレート剤としては、例えば、Na、Na、Na、NaP(NaOP)PONa、カルゴン(ポリメタリン酸ナトリウム)などのポリリン酸塩、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、そのアミン塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、ナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなアミノポリカルボン酸類の他2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2−ホスホノブタノントリカルボン酸−2,3,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2、2、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類を挙げることができ、中でも、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、そのアミン塩;エチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、そのアンモニウム塩、そのカリウム塩、;ヘキサメチレンジアミンテトラ(メチレンホスホン酸)、そのアンモニウム塩、そのカリウム塩が好ましい。
このようなキレート剤の最適量は使用される硬水の硬度及びその使用量に応じて変化するが、一般的には、使用時の現像液中に0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲で含有させる。
また、本発明に係る現像液には、現像調整剤として有機酸のアルカリ金属塩類、無機酸のアルカリ金属塩類を加えてもよい。例えば、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、クエン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウムなどを単独若しくは2種以上を組み合わせて混合して用いてもよい。
(アルカリ剤)
現像液に用いられるアルカリ剤としては、例えば、第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、硼酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、及び同リチウムなどの無機アルカリ剤及び、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤等が挙げられる。本発明においては、これらを単独で用いてもよいし、若しくは2種以上を組み合わせて混合して用いてもよい。
また、上記以外のアルカリ剤として、アルカリ珪酸塩を挙げることができる。アルカリ珪酸塩は塩基と組み合わせて使用してもよい。使用するアルカリ珪酸塩としては、水に溶解したときにアルカリ性を示すものであって、例えば珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウムなどがある。これらのアルカリ珪酸塩は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明に用いられる現像液は、支持体の親水化成分としての珪酸塩の成分である酸化ケイ素SiOと、アルカリ成分としてのアルカリ酸化物MO(Mはアルカリ金属又はアンモニウム基を表す)との混合比率、及び濃度の調整により、最適な範囲に容易に調節することができる。酸化ケイ素SiOとアルカリ酸化物MOとの混合比率(SiO/MOのモル比)は、支持体の陽極酸化皮膜が過度に溶解(エッチング)されることに起因する放置汚れや、溶解アルミニウムと珪酸塩との錯体形成に起因する不溶性ガスの発生を抑制するといった観点から、好ましくは0.75〜4.0の範囲であり、より好ましくは0.75〜3.5の範囲で使用される。
また、現像液中のアルカリ珪酸塩の濃度としては、支持体の陽極酸化皮膜の溶解(エッチング)抑制効果、現像性、沈殿や結晶生成の抑制効果、及び廃液時における中和の際のゲル化防止効果などの観点から、現像液の質量に対して、SiO量として、0.01〜1mol/Lが好ましく、より好ましくは0.05〜0.8mol/Lの範囲で使用される。
本発明において使用される現像液には、上記の成分の他に、必要に応じて以下のような成分を併用することができる。例えば、安息香酸、フタル酸、p−エチル安息香酸、p−n−プロピル安息香酸、p−イソプロピル安息香酸、p−n−ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、p−2−ヒドロキシエチル安息香酸、デカン酸、サリチル酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等の有機カルボン酸;プロピレングリコール等の有機溶剤;この他、還元剤、染料、顔料、硬水軟化剤、防腐剤等が挙げられる。
本発明に用いられる現像液は、25℃におけるpHが10〜12.5の範囲であることが好ましく、pH11〜12.5の範囲であることがより好ましい。本発明における現像液は、前記界面活性剤を含むため、このような低pHの現像液を用いても、非画像部において優れた現像性を発現する。このように、現像液のpHを比較的低い値とすることにより、現像時における画像部へのダメージを軽減するとともに、現像液の取扱い性にも優れる。
また、該現像液の導電率xは、2〜30mS/cmであることが好ましく、5〜25mS/cmであることがより好ましい。
ここで、導電率を調整するための導電率調整剤として、有機酸のアルカリ金属塩類、無機酸のアルカリ金属塩類等を添加することが好ましい。
上記の現像液は、露光された平版印刷版原版の現像液及び現像補充液として用いることができ、自動現像機に適用することが好ましい。自動現像機を用いて現像する場合、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。本発明の製版方法においてもこの補充方式が好ましく適用される。
更に、自動現像機を用いて、現像液の処理能力を回復させるためには、米国特許第4,882,246号に記載されている方法で補充することが好ましい。また、特開昭50−26601号、同58−54341号、特公昭56−39464号、同56−42860号、同57−7427号の各号公報に記載されている現像液も好ましい。
より好ましい現像補充液は、アルミニウムイオンと水溶性キレート化合物形成能を有するオキシカルボン酸キレート剤と、アルカリ金属の水酸化物と、界面活性剤とを含有し、ケイ酸塩を含有せず、pH11〜13.5の水溶液であることを特徴とする現像補充液である。このような現像補充液を使用することにより、優れた現像性と版材の画像部の強度を損なうことの無い特性を有し、現像液のアルカリによりアルミニウム支持体が溶出されて形成する水酸化アルミニウムの析出が効果的に抑制され、自動現像機の現像浴ローラー表面への水酸化アルミニウムを主成分とする汚れの付着や、引き続く水洗浴内への水酸化アルミニウム析出物の蓄積が低減され、長期間安定に処理することができる。
このようにして現像処理された平版印刷版は、任意に水洗水、界面活性剤などを含有するリンス液などにより処理された後、上記の版面保護液によって処理され、該平版印刷版の版面のみならず裏面にも版面保護層が形成される。
以下、実施例によって本発明を説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
〔版面保護液の作製〕
各例で用いる版面保護液1〜12を、以下の表1〜2に示す組成(単位:グラム)に従って調製した。結果を表1〜2の下段に表す
Figure 2009083305
Figure 2009083305
Figure 2009083305
〔平版印刷版の作製〕
各タイプの記録層を有する平版印刷版原版においてバックコート層1〜4を設け、上記版面保護液1〜12で処理し、平版印刷版を得た。なお、バックコート層1〜4は、それぞれ、下記表3に示すバックコート塗布液組成物1〜4を用いて作製した。また、表3中に示す有機高分子化合物組成A〜Dについては、下記表4に示した。
Figure 2009083305
Figure 2009083305
Figure 2009083305
≪光重合型平版印刷版−1≫
(支持体の作製)
厚さ0.30mm、幅1030mmのJIS A 1050アルミニウム板を用いて、以下に示す表面処理を行った。
<表面処理>
表面処理は、以下の(a)〜(f)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理及び水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
(a)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃でエッチング処理を行い、アルミニウム板を5g/m溶解した。その後水洗を行った。
(b)温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオン0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後水洗した。
(c)60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。この時の電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオン0.5質量%、アンモニウムイオン0.007質量%含む)、温度30℃であった。交流電源は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが2msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で25A/dm、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で250C/cmであった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後水洗を行った。
(d)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を35℃で行い、アルミニウム板を0.2g/m溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の除去と、生成したピットのエッジ部分を溶解し、エッジ部分を滑らかにした。その後水洗した。
(e)温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後スプレーによる水洗を行った。
(f)硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、温度33℃、電流密度が5(A/dm)で、50秒間陽極酸化処理を行った。その後水洗を行った。この時の陽極酸化皮膜重量が2.7g/mであった。
このようにして得られたアルミニウム支持体の表面粗さRa、表面積比ΔS、急峻度a45は、それぞれ、Ra=0.27(測定機器;東京精密(株)製サーフコム、蝕針先端径2ミクロンメーター)、ΔS=75%、a45=44%(測定機器;セイコーインスツルメンツ社製SPA300/SPI3800N)であった。
(下塗り層の形成)
続いて、表面処理したアルミニウム支持体の同じ面に、下記下塗り層形成用塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃30秒間乾燥した。塗布量は10mg/mであった。
<下塗り層形成用塗布液>
・下記構造の高分子化合物A(重量平均分子量:10,000) 0.05g
・メタノール 27g
・イオン交換水 3g
Figure 2009083305
(記録層の形成)
下記記録層形成用塗布液Aを調製し、上記のように形成された下塗り層上にワイヤーバーを用いて塗布した。乾燥は、温風式乾燥装置にて125℃で34秒間行った。乾燥後の被覆量は1.4g/mであった。
<記録層形成用塗布液A>
・赤外線吸収剤(IR−1) 0.038g
・重合開始剤A(S−1) 0.061g
・重合開始剤B(I−1) 0.094g
・メルカプト化合物(E−1) 0.015g
・重合性化合物(M−1) 0.425g
(商品名:A−BPE−4 新中村化学工業(株))
・バインダーポリマーA(B−1) 0.311g
・バインダーポリマーB(B−2) 0.250g
・バインダーポリマーC(B−3) 0.062g
・添加剤(T−1) 0.079g
・重合禁止剤(Q−1) 0.0012g
・エチルバイオレット(EV−1) 0.021g
・フッ素系界面活性剤 0.0081g
(メガファックF−780−F 大日本インキ化学工業(株)、
メチルイソブチルケトン(MIBK)30質量%溶液)
・メチルエチルケトン 5.886g
・メタノール 2.733g
・1−メトキシ−2−プロパノール 5.886g
なお、上記記録層形成用塗布液Aに用いた、赤外線吸収剤(IR−1)、重合開始剤A(S−1)、重合開始剤B(I−1)、メルカプト化合物(E−1)、重合性化合物(M−1)、バインダーポリマーA(B−1)、バインダーポリマーB(B−2)、バインダーポリマーC(B−3)、添加剤(T−1)、重合禁止剤(Q−1)、及びエチルバイオレット(EV−1)の構造を以下に示す。
Figure 2009083305
Figure 2009083305
Figure 2009083305
(下部保護層の形成)
形成された記録層上に、合成雲母(ソマシフMEB−3L、3.2%水分散液、コープケミカル(株)製)、ポリビニルアルコール(ゴーセランCKS−50:ケン化度99モル%、重合度300、スルホン酸変性ポリビニルアルコール日本合成化学工業(株)製)、界面活性剤A(日本エマルジョン社製、エマレックス710)、及び界面活性剤B(アデカプルロニックP−84:旭電化工業(株)製)の混合水溶液(下部保護層形成用塗布液)をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃で30秒間乾燥させた。
この混合水溶液(下部保護層形成用塗布液)中の合成雲母(固形分)/ポリビニルアルコール/界面活性剤A/界面活性剤Bの含有量割合は、7.5/89/2/1.5(質量%)であり、塗布量は(乾燥後の被覆量)は0.5g/mであった。
(上部保護層の形成)
下部保護層上に、有機フィラー(アートパールJ−7P、根上工業(株)製)、合成雲母(ソマシフMEB−3L、3.2%水分散液、コープケミカル(株)製)、ポリビニルアルコール(L−3266:ケン化度87モル%、重合度300、スルホン酸変性ポリビニルアルコール日本合成化学工業(株)製)、増粘剤(セロゲンFS−B、第一工業製薬(株)製)、高分子化合物A(前記構造)、及び界面活性剤(日本エマルジョン社製、エマレックス710)の混合水溶液(上部保護層形成用塗布液)をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃で30秒間乾燥させた。
この混合水溶液(上部保護層形成用塗布液)中の有機フィラー/合成雲母(固形分)/ポリビニルアルコール/増粘剤/高分子化合物A/界面活性剤の含有量割合は、4.7/2.8/67.4/18.6/2.3/4.2(質量%)であり、塗布量は(乾燥後の被覆量)は1.2g/mであった。
(バックコート層の形成、及び版面保護液による処理)
保護層を設けた側と反対の面には表3に示す各種バックコート塗布液組成物1〜7をワイヤーバー塗布し、100℃70秒間乾燥し、有機高分子化合物を含むバックコート層を得た。塗布量は0.46g/mだった。
こうして得られた平版印刷版原版をセッティング部分からオートローダーにて、Creo社製Trendsetter3244に搬送し、解像度2400dpiで50%平網画像を、出力7W、外面ドラム回転数150rpm、版面エネルギー110mJ/cmで露光した。露光後、加熱処理、水洗処理は行わず、富士フイルム(株)社製自動現像機LP−1310HIIを用い搬送速度(ライン速度)2m/分、現像温度30℃で現像処理した。なお、現像液はDH−Nの1:4水希釈液を用い、現像補充液はFCT−421の1:1.4水希釈、版面保護液は表1〜2に示す組成の版面保護液1〜12を用いた。こうしてバックコート層上の塗布量0.25g/mの版面保護層を設けた平版印刷版を得た。
≪サーマルポジ型平版印刷版≫
[支持体の作製]
(アルミニウム板)
Si:0.06質量%、Fe:0.30質量%、Cu:0.025質量%、Mn:0.001質量%、Mg:0.001質量%、Zn:0.001質量%、Ti:0.03質量%を含有し、残部はAlと不可避不純物のアルミニウム合金を用いて溶湯を調製し、溶湯処理及びろ過を行った上で、厚さ500mm、幅1200mmの鋳塊をDC鋳造法で作製した。表面を平均10mmの厚さで面削機により削り取った後、550℃で、約5時間均熱保持し、温度400℃に下がったところで、熱間圧延機を用いて厚さ2.7mmの圧延板とした。更に、連続焼鈍機を用いて熱処理を500℃で行った後、冷間圧延で、厚さ0.24mmに仕上げ、JIS 1050材のアルミニウム板を得た。なお、得られたアルミニウムの平均結晶粒径の短径は50μm、長径は300μmであった。このアルミニウム板を幅1030mmにした後、以下に示す表面処理に供した。
(表面処理)
表面処理は、以下の(a)〜(k)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理及び水洗の後には、ニップローラーで液切りを行った。
(a)機械的粗面化処理
図1に示したような装置を使って、比重1.12の研磨剤(パミス)と水との懸濁液を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行った。図1において、1はアルミニウム板、2及び4はローラ状ブラシ、3は研磨スラリー液、5、6、7及び8は支持ローラである。研磨剤の平均粒径は30μm、最大粒径は100μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は45mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板をカセイソーダ濃度2.6質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を10g/m溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
(d)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、液温50℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に示すものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dmであった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、スプレーによる水洗を行った。
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.50g/m溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
(f)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマットに用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
(g)電気化学的粗面化処理
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸5.0g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L含む。)、温度35℃であった。交流電源波形は図2に示した形波であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の炬形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に示すものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
(j)陽極酸化処理
図4に示す構造の陽極酸化装置(第一及び第二電解部長各6m、第一及び第二給電部長各3m、第一及び第二給電部長各2.4m)を用いて陽極酸化処理を行った。第一及び第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度50g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、温度20℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。
前記陽極酸化装置においては、電源67a及び電源67bからの電流は、第一給電部62aに設けられた第一給電電極65aに流れ、電解液を介してアルミニウム板11に流れ、第一電解部63aでアルミニウム板11表面に陽極酸化皮膜を生成させ、第一電解部63aに設けられた電解電極66a及び66bを通り、電極67a及び67bに戻る。
電源67a及び67bから第一給電部62aに給電される電気量と、電源67c及び67dから第二給電部62bに給電される電気量とは等しく、また、第一電解部63a及び第二電解部63bにおける電流密度はともに約30A/dmであった。第二給電部62bでは、第一電解部63aで生成した1.35g/mの酸化皮膜面を通じて給電したことになる。最終的な酸化皮膜量は2.7g/mであった。
(k)アルカリ金属ケイ酸塩処理
陽極酸化処理により得られたアルミニウム支持体を温度30℃の3号ケイ酸ソーダの1質量%水溶液の処理槽中へ、10秒間、浸せきすることでアルカリ金属ケイ酸塩処理(シリケート処理)を行った。その後、井水を用いたスプレーによる水洗を行い、表面シリケート親水化処理された支持体を得た。上記のようにして得られたアルカリ金属珪酸塩処理後のアルミニウム支持体上に、下記組成の下塗り液を塗布し、80℃で15秒間乾燥し、塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は15mg/mであった。
<下塗り液組成>
・下記化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
Figure 2009083305
[重層型記録層の形成]
得られた下塗り済支持体上に、下記組成の下層用塗布液1を塗布量が0.85g/mになるようバーコーターで塗布した後、160℃で44秒間乾燥し、直ちに17〜20℃の冷風で支持体の温度が35℃になるまで冷却した。
その後、下記組成の上層用塗布液1を塗布量が0.22g/mになるようバーコーター塗布した後、148℃で25秒間乾燥し、更に20〜26℃の風で徐冷し、記録層を設けた。
<下層用塗布液1>
・N−(P−アミノスルフォニルフェニル)メタアクリルアミドとメタクリル酸メチルの
共重合体 2.13g
(ヨーロッパ特許330239号明細書 合成例1に記載されているもの)
・シアニン染料A(下記構造) 0.134g
・4,4’−ビスヒドロキシフェニルスルホン 0.126g
・無水テトラヒドロフタル酸 0.190g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミンヘキサフルオロホスフェート
0.032g
・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシナフタレンスルホン酸に変えたもの
0.0781g
・ポリマー1(下記構造) 0.035g
・メチルエチルケトン 25.41g
・1−メトキシ−2−プロパノール 12.97g
・γ−ブチロラクトン 13.18g
Figure 2009083305
<上層用塗布液1>
・m,p−クレゾールノボラック 0.3479g
(m/p比=6/4、重量平均分子量4500、未反応クレゾール0.8質量%含有)
・ポリマー3(下記構造 MEK30%溶液) 0.1403g
・シアニン染料A(上記構造) 0.0192g
・ポリマー1(上記構造) 0.015g
・ポリマー2(下記構造) 0.00328g
・4級アンモニウム塩(下記構造) 0.0043g
・界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル HLB8.5、日光ケミカルズ(株)製 GO−4) 0.008g
・メチルエチルケトン 6.79g
・1−メトキシ−2−プロパノール 13.07g
Figure 2009083305
(バックコート層の形成、及び版面保護液による処理)
記録層を設けた側と反対の面には表3に示すバックコート塗布液組成物3をワイヤーバー塗布し、100℃70秒間乾燥し、有機高分子化合物を含むバックコート層を得た。塗布量は0.46g/mった。
こうして得られた平版印刷版原版をCreo社製Trendsetterにて露光エネルギーを変えて、テストパターンを画像状に描き込みを行った。その後、富士フイルム(株)製現像液DT−2(希釈して、電導度43mS/cmとしたもの)と表1〜2に示す組成の版面保護液1〜12を仕込んだ富士フイルム(株)製PSプロセッサーLP1310HIIを用い、現像温度30℃、現像時間12秒で現像後、版面保護層を設けた平版印刷版を得た。バックコート層上の版面保護層の塗布量は0.25g/mであった。
≪光重合型平版印刷版2≫
(アルミニウム支持体の作製)
厚さ0.3mmのアルミニウム板を10質量%水酸化ナトリウムに60℃で25秒間浸漬してエッチングし、流水で水洗後、20質量%硝酸で中和洗浄し、次いで水洗した。これを正弦波の交番波形電流を用いて1質量%硝酸水溶液中で300クーロン/dmの陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。引き続いて1質量%水酸化ナトリウム水溶液中に40℃で5秒間浸漬後30質量%の硫酸水溶液中に浸漬し、60℃で40秒間デスマット処理した後、20質量%硫酸水溶液中、電流密度2A/dmの条件で陽極酸化皮膜の厚さが2.7g/mになるように、2分間陽極酸化処理した。その表面粗さを測定したところ、0.3μm(JIS B0601によるRa表示)であった。
(中間層の形成)
このように処理されたアルミニウム板に、まずバーコーターを用いて次の中間層液を塗布したあと80℃で20秒間乾燥した。乾燥後の中間層塗布質量は10mg/mであった。
−中間層液−
・下記ゾル液 100g
・メタノール 900g
−ゾル液−
・ホスマーPE(ユニケミカル(株)製) 5g
・メタノール 45g
・水 10g
・85質量%リン酸 5g
・テトラエトキシシラン 20g
・3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン 15g
(記録層の形成)
この上に、下記組成の高感度光重合性組成物P−1を乾燥塗布質量が1.4g/mとなるように塗布し、100℃で1分間乾燥させ、記録層を形成した。
−光重合性組成物P−1−
・ウレタンモノマー(M−1) 4.20重量部
・ポリウレタンバインダー(B−1) 1.80重量部
・ポリウレタンバインダー(B−2) 1.80重量部
・増感色素(C−1) 0.21質量部
・重合開始剤(D−1) 0.81質量部
・連鎖移動剤(E−1) 0.3 質量部
・ε―フタロシアニン分散物(25質量%分散液) 0.76質量部
・フッ素系ノニオン界面活性剤メガファックF780 0.05質量部
(大日本インキ化学工業(株)製)
・メチルエチルケトン 58質量部
・プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート 53質量部
Figure 2009083305
Figure 2009083305
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Figure 2009083305
(酸素遮断層の形成)
上記の記録層表面に、ポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度500)と、ポリビニルピロリドン(BASF社製、ルビスコールK−30)と、下表記載のフッ素系界面活性剤を1.0質量%および界面活性剤パイオニンD230(竹本油脂(株)製)を2質量%の混合水溶液をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃75秒間乾燥させた。なお、塗布量は(乾燥後の被覆量)は2.45g/mであった。
(バックコート層の形成、及び版面保護液による処理)
酸素遮断層を設けた側と反対の面には、表3に示すバックコート塗布液組成物3をワイヤーバー塗布し、100℃で70秒間乾燥し、有機高分子化合物を含むバックコート層を得た。塗布量は0.46g/mだった。
得られた平版印刷版原版を富士フイルム(株)製プレートセッターVx9600CTP(光源波長:405nm)にて感光性平版印刷版上の露光量が0.05mJ/cmになるように調整し、100lpiの1,2,3,4,5,6%の網画像の描き込みを行った。その後、下記組成のアルカリ現像液と表1〜2に示した版面保護液1〜12を仕込んだG&J社製PSプロセッサーIP850HDを用い、プレヒート温度115℃、液温を25℃に保ち、現像時間28秒で現像後、表3に示した組成の版面保護液で処理し、バックコート層上の塗布量0.25g/mの版面保護層を設けた平版印刷版を得た。
アルカリ現像液組成
・水酸化カリウム 0.15g
・ポリオキシエチレンナフチルエーテル(n=13) 5.0g
・キレスト400(キレスト株式会社製キレート剤) 0.1g
・水 94.75g
≪コンベンショナルポジ型平版印刷版≫
厚さ0.30mmのアルミニウム板をナイロンブラシと400メッシュのバミストンの水懸濁液を用いその表面を砂目立てした後、よく水で洗浄した。10%水酸化ナトリウムに70℃で60秒間浸漬してエッチングした後、流水で水洗後20%HNOで中和洗浄、水洗した。これをVA=12.7Vの条件下で正弦波の交番波形電流を用いて1%硝酸水溶液中で260クーロン/dmの陽極時電気量で電解粗面化処理を行った。その表面粗さを測定したところ、0.55μ(R表示)であった。ひきつづいて30%のHSO水溶液中に浸漬し55℃で2分間デスマットした後、20%HSO水溶液中、電流密度2A/dmにおいて厚さが1.6g/mになるように陽極酸化し、基板を調製した。
このように処理された基板の表面に下記組成の下塗り液(A)を塗布し80℃、30秒間乾燥した。乾燥後の被覆量は10mg/mであった。
下塗り液(A)
β−アラニン 0.05g
トリエタノールアミンの塩酸塩 0.05g
メタノール 40 g
純水 60 g
このようにして基板(I)を作製した。
次にこの基板(I)上に次の感光液をロッドコーティングで25ml/m塗設し、100℃で1分間乾燥して記録層を得た。乾燥後の塗布量は約1.0g/mであった。
〔感光液〕
・1,2−ジアゾナフトキノン−5−スルホニルクロリドとピロガロール−アセトン樹脂と のエステル化物(米国特許第3,635,709号明細書の実施例1に記載されているもの) 0.90g
・クレゾール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂(メタ、パラ比:6対4、重量平均分子量3,000、数平均分子量1,000、未反応のクレゾールを0.7%含有)
1.60g
・m−クレゾール−ホルムアルデヒドノボラック樹脂(重量平均分子量1,700、数平均分子量600、未反応のクレゾールを1%含有) 0.3g
・ポリ〔N−(p−アミノスルホニルフェニル)アクリルアミド−コ−ノルマルブチルアクリレート−コ−ジエチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート〕(各モノマーのモル比は順に40:40:20、重量平均分子量40,000、数平均分子量20,000) 0.2g
・p−ノルマルオクチルフェノール−ホルムアルデヒド樹脂 0.02g
(米国特許第4,123,279号明細書に記載されているもの)
・ナフトキノンジアジド−1,2−ジアジド−4−スルホン酸クロライド
0.01g
・テトラヒドロ無水フタル酸 0.02g
・安息香酸 0.02g
・特開昭63−58440号公報記載の化合物 0.02g
・N−(1,2−ナフトキノン−2−ジアジド−4−スルホニルオキシ)−シクロヘキサン− 1,2−ジカルボン酸イミド 0.01g
・ビクトリアピュアーブルーBOH〔保土谷化学(株)製〕の対アニオンを1−ナフタレンスルホン酸に変えた染料 0.05g
・メガファックF−176(大日本インキ化学工業(株)製フッ素系界面活性剤)
0.01g
・メチルエチルケトン 55g
(バックコート層の形成、及び版面保護液による処理)
記録層を設けた側と反対の面に、表3に示すバックコート塗布液組成物3をワイヤーバー塗布し、100℃70秒間乾燥し、有機高分子化合物を含むバックコート層を得た。塗布量は0.46g/mだった。
こうして得られた平版印刷版を光源として2KWメタルハライドランプ(岩崎電気社製アイドルフィン2000)を使用し、8.0mW/cm現像後フォグラPMSK値で10μが再現するように露光時間を調整した。露光後、上記印刷版の平視画像性を目視評価したのち、現像液としてSiO/NaOのモル比が1.74の珪酸ナトリウムの5.26%水溶液(pH=12.7)と、表1〜2に示す組成の版面保護液1〜12を仕込んだ富士フイルム製自動現像機PS−1310VIIで処理し、バックコート層上の塗布量0.25g/mの版面保護層1〜12を設けた平版印刷版を得た。
こうして得られた有機高分子化合物を含むバックコート層と、その上に版面保護層を持つ平版印刷版を、以下の項目に関し、以下の方法で評価した。
<バックコート層と版面保護層との密着力>
バックコート層上に塗布された版面保護層上に強力な粘着テープを貼り、それを剥がすと、バックコート層と版面保護層の間で剥がれる。この時の剥離力(すなわちバックコート層と版面保護層間の密着力)をテンシロン引張試験機で測定した。剥離物が後工程を汚染する故障と数値の関係は、別に実技試験を行い確認した。判定基準は以下のとおりである。
・0.25N/cm以上 :剥離は起こらない。
・0.12N/cm以上0.25N/cm未満 :わずかに剥離するが問題ない程度。
・0.12N/cm未満 :剥離が起こり、後工程を汚染し故障が発生する。
<インキ払い枚数>
平版印刷版をオフセット印刷機に取り付けて印刷を行う際、版表面全面にインキを着けてから印刷を開始し、正常な印刷物が得られるまでの枚数を比較した。枚数は少ない方が損紙が少なく優れていると評価する。
結果を以下の表に示す。
Figure 2009083305
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平版印刷版原版用支持体の作製に用いられる機械的粗面化装置の一例を示す概略構成図である。 平版印刷版原版用支持体の作製に用いられる電気化学的粗面化に用いる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。 平版印刷版原版用支持体の作製に用いられる電気化学的粗面化に用いる2つ以上のラジアルドラムローラを連結した装置の概略構成図である。 平版印刷版原版用支持体の作製に適用可能な二段給電電解法における電解処理装置の概略図である。
符号の説明
1 アルミニウム板
2,4 ローラ状ブラシ
3 研磨スラリー液
5,6,7,8 支持ローラ
11 アルミニウムウエブ
12 ラジアルドラムローラ
13a,13b 主極
14 電解処理液
15a,15b 電解液供給口
16 スリット
17 電解液通路
18 補助陽極
19a,19b サイリスタ
20 交流電源
40,41 主電解槽
50,51 補助陽極槽
62a 第一給電部
62b 第二給電部
63a 第一電解部
63b 第二電解部
64a,64b 支持ローラ
65a 第一給電電極
65b 第二給電電極
66a,66b,66c,66d 電解電極
67a,67b,67c,67d 電源

Claims (4)

  1. 正に帯電した窒素原子を有する化合物、及び/又は、四級ホスホニウム塩化合物を含有することを特徴とする平版印刷用版面保護液。
  2. 平版印刷版原版を、請求項1に記載の平版印刷用版面保護液を用いて処理する工程を少なくとも経ることにより平版印刷版を作製することを特徴とする平版印刷版の製版方法。
  3. 前記平版印刷版原版が、支持体と、該支持体の片面に設けられた記録層と、前記支持体の前記記録層が設けられた面と反対面に設けられ且つ有機高分子化合物を含有するバックコート層とを有することを特徴とする請求項2に記載の平版印刷版の製版方法。
  4. 有機高分子化合物の軟化点が70℃以上であることを特徴とする請求項3に記載の平版印刷版の製版方法。
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