JP2005202121A - 平版印刷版の製版方法及び平版印刷版用リンス液 - Google Patents

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Abstract

【課題】 汚れのない高品質なネガ型平版印刷版を、長期間にわたって安定的に供給しうる平版印刷版原版の製版方法及びそれに用いるネガ型重合系平版印刷版用リンス液を提供する。
【解決手段】 支持体上に重合開始剤、重合性化合物およびバインダーポリマーを含む感光性組成物を有する平版印刷版原版を、露光し、アルカリ性水溶液を用いて現像した後に、pHが8.0〜11.0の範囲にある処理液で処理することを特徴とする。ここで、前記処理液には界面活性剤を含有することが好ましく、感光性組成物には、赤外線吸収剤を含有することが好ましい。
【選択図】 なし

Description

本発明はネガ型の平版印刷版の製版方法に関し、特に、赤外線レーザー光での直接描画、高速処理可能なネガ型の平版印刷版の製版方法およびそれに好適に用いられる平版印刷版用リンス液に関する。
従来、平版印刷版原版としては親水性支持体上に親油性の感光性樹脂層を設けた構成を有するPS版が広く用いられ、その製版方法として、通常は、リスフイルムを介してマスク露光(面露光)後、非画像部を溶解除去することにより所望の印刷版を得ていた。近年、画像情報をコンピューターを用いて電子的に処理、蓄積、出力する、デジタル化技術が広く普及してきている。そして、その様なデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用される様になってきた。その結果レーザー光のような指向性の高い光をデジタル化された画像情報に従って走査し、リスフイルムを介すこと無く、直接印刷版を製造するコンピューター トゥ プレート(CTP)技術が切望されており、これに適応した平版印刷版原版を得ることが重要な技術課題となっている。
このような走査露光可能な平版印刷版原版としては、親水性支持体上にレーザー露光によりラジカルやブレンステッド酸などの活性種を発生しうる感光性化合物を含有した親油性感光性樹脂層(以下、感光層ともいう)を設けた構成が提案され、既に上市されている。この平版印刷版原版をデジタル情報に基づきレーザー走査し活性種を発生せしめ、その作用によって感光層に物理的、或いは化学的な変化を起こし不溶化させ、引き続き現像処理することによってネガ型の平版印刷版を得ることができる。特に、親水性支持体上に感光スピードに優れる光重合開始剤、付加重合可能なエチレン性不飽和化合物、及びアルカリ現像液に可溶なバインダーポリマーを含有する光重合型の感光層、及び必要に応じて酸素遮断性の保護層とを設けた平版印刷版原版は、生産性に優れ、更に現像処理が簡便であり、解像度や着肉性もよいといった利点から、望ましい印刷性能を有する刷版となりうる。
このような平版印刷版原版は、アルカリ現像液によって現像処理され、引き続き水洗、ガム引きされる。この工程において現像浴から出た版はニップローラーにより現像液を搾り取られるが、長期にわたる使用や、ニップローラーの材質によっては感光層成分を含んだ現像液が、水洗浴、さらにはガム浴にまでに持ち込まれる場合がある。水洗浴、またはガム浴に持ち込まれた現像液は低pH化し、このため現像液に溶解していた感光層成分がこれらの浴中で析出した場合、析出した不溶物が印刷版に付着することで印刷物に汚れを生じる。また、析出した不溶物がフィルターやスプレーの目詰まりを引き起こし、長期にわたる処理が不安定になる問題があった。この解決手段として、アルカリ現像した後に界面活性剤を含むリンス液で処理する方法が提案されているが(例えば、特許文献1参照。)、効果が不十分であり、さらなる改善が望まれていた。
特開平8−272083号公報
本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち本発明の目的は、製版処理工程における処理浴内の不溶物の析出を抑制することで、汚れのない、高品質なネガ型平版印刷版を長期間にわたって安定的に供給しうる平版印刷版の製版方法を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は、前記ネガ型重合系記録層を有する平版印刷版の製版方法に好適に用いられる平版印刷版用リンス液を提供することにある。
本発明者は、上記課題を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、アルカリ性水溶液による現像後に、特定pH範囲にある処理液で処理することにより、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明に係る平版印刷版の製版方法は、支持体上に重合開始剤、重合性化合物およびバインダーポリマーを含む感光性組成物を有する平版印刷版原版を、露光し、アルカリ性水溶液を用いて現像した後に、pHが8.0〜11.0の範囲にある処理液で処理することを特徴とする。なお、支持体上に配置された感光性組成物からなる層を以下、適宜、感光層と称する。
また、本発明の平版印刷版用リンス液は、pHが8.0〜11.0の範囲にあり、且つ、アニオン界面活性剤を含有することを特徴とし、重合開始剤、重合性化合物を含有するネガ型重合系記録層を有する平版印刷版原版の製版処理に好適に用いられる。
本発明に係る平版印刷版原版の製版方法においては、前記処理液に界面活性剤を含むことが好ましく、この界面活性剤としては、特にアニオン界面活性剤が好ましい。
また、本発明に係る平版印刷版の製版方法が適用される平版印刷版原版を構成する前記感光性組成物中には赤外線吸収剤を含むことが好ましい。
本発明の作用は明確ではないが以下のように推測される。本発明に係る平版印刷版の製版方法においては、アルカリ性水溶液を用いて現像した後にpHが8.0〜11.0の範囲にある処理液で処理することにより、現像浴から持ち出された現像液中の感光層成分の析出が抑制され、そのような処理液で洗い流されるため、不溶物の発生に起因する汚れの発生や洗浄浴におけるフィルターやスプレーの目詰まりが抑制され、非画像に汚れの付着が無い印刷版を連続的に得ることができるものと推測される。
本発明によれば、長期間連続処理しても、非画像部の汚れや画像欠陥のない、高品質で安定な平版印刷版が得られるネガ型平版印刷版原版の製版方法を提供することができる。
また、本発明の平版印刷版用リンス液は、重合開始剤、重合性化合物を含有するネガ型重合系記録層を有する平版印刷版の製版処理に好適に用いられ、これを用いて処理することで、非画像部の汚れや画像欠陥のない、高品質で安定な平版印刷版を得ることができる。
以下、まず本発明に係る平版印刷版原版について詳細に説明する。
本発明の平版印刷版の製版方法は、支持体上に重合開始剤、重合性化合物およびバインダーポリマーを含む感光性組成物を有し、特に赤外線吸収剤を含有するネガ型平版印刷版原版に適用した場合にその効果が著しいため、この様態について説明する。
以下、まず本発明の方法を好適に適用しうる平版印刷版原版の構成について説明する。本発明に係る平版印刷版原版は、支持体上に、後述する感光性組成物からなるネガ型重合系の感光層を有し、所望により、保護層、下塗り層などの任意の層を有する。
[感光層]
本発明の平版印刷版の製版方法を適用するのに好ましいネガ型平版印刷版原版の感光層は、必須成分として、重合開始剤、重合性化合物(付加重合性化合物ともいう)、バインダーポリマー、及び、好ましくは赤外線吸収剤を含有し、必要に応じて、さらに、着色剤、その他任意成分を含むネガ型重合系感光層である。
本発明におけるネガ型重合系感光層は、CTPに有用な赤外線レーザーに高感度で感光するという観点から、赤外線吸収剤を含有することが好ましい。赤外線吸収剤は、赤外線レーザーの照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、この電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動、発熱(光熱変換機能)などが、感光層中に共存する重合開始剤に作用して、該重合開始剤に化学変化を生起させてラジカルを生成させる。
ラジカルの生成機構としては、1.赤外線吸収剤の光熱変換機能により発生した熱により、後述する重合開始剤(例えば、スルホニウム塩)が熱分解しラジカルを発生する、2.赤外線吸収剤が発生した励起電子が、重合開始剤(例えば、活性ハロゲン化合物)に移動しラジカルを発生する、3.励起した赤外線吸収剤に重合開始剤(例えば、ボレート化合物)から電子が移動してラジカルを発生する、等が挙げられる。そして、生成したラジカルにより重合性化合物が重合反応を起こし、露光部が硬化して画像部となる。
本発明における平版印刷版原版は赤外線吸収剤を含有することにより、750nm〜1400nmの波長を有する赤外線レーザー光での直接描画される製版に特に好適となり、従来の平版印刷版原版に比べ、高い画像形成性を発現することができる。
以下に、本発明に係る平版印刷版原版の感光層を構成する各成分について説明する。
[重合開始剤]
本発明に係る平版印刷版原版の感光層に用いられる重合開始剤は、後述する重合性化合物の硬化反応を開始、進行させる機能を有し、熱により分解してラジカルを発生する熱分解型のラジカル発生剤、赤外線吸収剤の励起電子を受容してラジカルを発生する電子移動型のラジカル発生剤、又は、励起した赤外線吸収剤に電子移動してラジカルを発生する電子移動型のラジカル発生剤など、エネルギーを付与することでラジカルを生成させるものであればいかなる化合物を用いてもよい。
重合開始剤としてはね例えば、オニウム塩、活性ハロゲン化合物、オキシムエステル化合物、ボレート化合物などが挙げられる。これらは1種のみを用いても浴2種以上を併用してもよい。本発明ではオニウム塩が好ましく、中でも、スルホニウム塩が特に好ましい。
本発明において好適に用いられるスルホニウム塩重合開始剤としては、下記一般式(1)で表されるオニウム塩が挙げられる。
Figure 2005202121
一般式(1)中、R11、R12及びR13は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z11−はハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、カルボキシレートイオン、及びスルホン酸イオンからなる群より選択される対イオンを表し、好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、カルボキシレートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
以下に、一般式(1)で表されるオニウム塩の具体例([OS−1]〜[OS−12])を挙げるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2005202121
Figure 2005202121
上記したものの他、特開2002−148790公報、特開2002−148790公報、特開2002−350207公報、特開2002−6482公報に記載の特定の芳香族スルホニウム塩も好適に用いられる。但し、対イオンとして、ハロゲンイオンを含有してないものが特に好ましい。
本発明においては、上記スルホニウム塩重合開始剤の他にも、他の重合開始剤(他のラジカル発生剤)を用いることができる。他のラジカル発生剤としては、スルホニウム塩以外の他のオニウム塩、トリハロメチル基を有するトリアジン化合物、過酸化物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、キノンジアジド、活性ハロゲン化合物、オキシムエステル化合物、トリアリールモノアルキルボレート化合物などが挙げられ、中でも、高感度であることから、オニウム塩が好ましい。また、上記のスルホニウム塩重合開始剤を必須成分として、これらの重合開始剤(ラジカル発生剤)を併用することもできる。
本発明において好適に用い得る他のオニウム塩としては、ヨードニウム塩及びジアゾニウム塩が挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、ラジカル重合の開始剤として機能する。
本発明における他のオニウム塩としては、下記一般式(2)及び(3)で表されるオニウム塩が挙げられる。
Figure 2005202121
一般式(2)中、Ar21とAr22は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。このアリール基が置換基を有する場合の好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、又は炭素原子数12個以下のアリールオキシ基が挙げられる。Z21-はZ11-と同義の対イオンを表す。
一般式(3)中、Ar31は、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下のアリール基を示す。好ましい置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素原子数12個以下のアルキル基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、炭素原子数12個以下のアリールオキシ基、炭素原子数12個以下のアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のジアルキルアミノ基、炭素原子数12個以下のアリールアミノ基又は、炭素原子数12個以下のジアリールアミノ基が挙げられる。Z31-はZ11-と同義の対イオンを表す。
以下に、本発明において、好適に用いることのできる一般式(2)で示されるオニウム塩([OI−1]〜[OI−12])、及び一般式(3)で示されるオニウム塩([ON−1]〜[ON−5])の具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
Figure 2005202121
Figure 2005202121
Figure 2005202121
本発明において重合開始剤(ラジカル発生剤)として好適に用いることのできるオニウム塩の具体例としては、特開2001−133696号公報に記載されたもの等を挙げることができる。但し、対イオンとして、ハロゲンイオンを含有してないものが特に好ましい。
なお、本発明において用いられる重合開始剤(ラジカル発生剤)は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましく、更に360nm以下であることが好ましい。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
本発明における重合開始剤の総含有量は、感度及び印刷時の非画像部に汚れの発生の観点から、感光層を構成する全固形分に対し0.1〜50質量%、好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは1〜20質量%である。
本発明における重合開始剤としては、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上の重合開始剤を併用する場合は、例えば、好適に用いられるスルホニウム塩重合開始剤のみを複数種用いてもよいし、スルホニウム塩重合開始剤と他の重合開始剤を併用してもよい。
スルホニウム塩重合開始剤と他の重合開始剤とを併用する場合の含有比(質量比)としては、100/1〜100/50が好ましく、100/5〜100/25がより好ましい。
また、重合開始剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
本発明における平版印刷版原版の感光層に、重合開始剤として好ましい、高感度のスルホニウム塩重合開始剤を用いることにより、ラジカル重合反応が効果的に進行し、形成された画像部の強度が非常に高いものとなる。従って、後述する保護層の高い酸素遮断機能とあいまって、高い画像部強度を有する平版印刷版を作製することができ、その結果、耐刷性が一層向上する。また、スルホニウム塩重合開始剤はそれ自体が経時安定性に優れていることから、作製された平版印刷版原版を保存した際にも、所望されない重合反応の発生が効果的に抑制されるという利点をも有することになる。
[重合性化合物]
本発明に係る平版印刷版原版の感光層に用いられる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、即ち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシル基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
その他のエステルの例として、例えば、特公昭46−27926、特公昭51−47334、特開昭57−196231記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240、特開昭59−5241、特開平2−226149記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(4)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH2=C(R4)COOCH2CH(R5)OH (4)
(ただし、R4及びR5は、H又はCH3を示す。)
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。更に日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。感光スピードの点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部、即ち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感光性と強度の両方を調節する方法も有効である。大きな分子量の化合物や疎水性の高い化合物は、感光スピードや膜強度に優れる反面、現像スピードや現像液中での析出といった点で好ましく無い場合がある。また、感光層組成物中の他の成分(例えば、バインダーポリマー、開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させ得ることがある。
また、本発明に係る平版印刷版原版では、支持体や後述の保護層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
感光層組成物中の付加重合性化合物の含有量に関しては、感度、相分離の発生、感光層の粘着性、更には、現像液からの析出性の観点から、感光層組成物中の固形分に対して、好ましくは5〜80質量%、更に好ましくは40〜75質量%の範囲で使用される。
また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。その他、付加重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択できる。更に、本発明に係る平版印刷版原版では、下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施し得る。
[バインダーポリマー]
本発明に係る平版印刷版原版の感光層に用いられるバインダーポリマーは、膜性向上の観点から含有されるものであって、膜性を向上させる機能を有していれば、種々のものを使用することがすることができる。中でも、本発明において好適なバインダーポリマーとしては、下記一般式(i)で表される繰り返し単位を有するバインダーポリマーである。以下、一般式(i)で表される繰り返し単位を有するバインダーポリマーを、適宜、特定バインダーポリマーと称し、詳細に説明する。
Figure 2005202121
(一般式(i)中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2は炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群より選択される1以上の原子から構成される連結基を表す。Aは酸素原子又は−NR3−を表し、R3は水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。nは1〜5の整数を表す。)
一般式(i)におけるR1は、水素原子又はメチル基を表し、特にメチル基が好ましい。
一般式(i)におけるR2で表される連結基は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子からなる群から選択される1以上の原子から構成されるもので、その置換基を除く原子数が2〜82であることが好ましい。具体的には、R2で表される連結基の主骨格を構成する原子数が、1〜30であることが好ましく、3〜25であることがより好ましく、4〜20であることが更に好ましく、5〜10であることが最も好ましい。なお、本発明における「連結基の主骨格」とは、一般式(i)におけるAと末端COOHとを連結するためのみに使用される原子又は原子団を指し、特に、連結経路が複数ある場合には、使用される原子数が最も少ない経路を構成する原子又は原子団を指す。したがって、連結基内に環構造を有する場合、その連結部位(例えば、o−、m−、p−など)により算入されるべき原子数が異なる。
また、より具体的には、アルキレン、置換アルキレン、アリーレン、置換アリーレンなどが挙げられ、これらの2価の基がアミド結合やエステル結合で複数連結された構造を有していてもよい。
鎖状構造の連結基としては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。また、これらのアルキレンがエステル結合を介して連結されている構造もまた好ましいものとして例示することができる。
この中でも、一般式(i)におけるR2で表される連結基は、炭素原子数3から30までの脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。より具体的には、任意の置換基によって一個以上置換されていてもよいシクロプロパン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロデカン、ジシクロヘキシル、ターシクロヘキシ
ル、ノルボルナン等の脂肪族環状構造を有する化合物を構成する任意の炭素原子上の水素原子を(n+1)個除き、(n+1)価の炭化水素基としたものを挙げることができる。また、R2は、置換基を含めて炭素数3から30であることが好ましい。
脂肪族環状構造を構成する化合物の任意の炭素原子は、窒素原子、酸素原子、又は硫黄原子から選ばれるヘテロ原子で、一個以上置き換えられていてもよい。耐刷性の点で、R2は縮合多環脂肪族炭化水素、橋架け環脂肪族炭化水素、スピロ脂肪族炭化水素、脂肪族炭化水素環集合(複数の環が結合又は連結基でつながったもの)等、2個以上の環を含有してなる炭素原子数5から30までの置換基を有していてもよい脂肪族環状構造を有する(n+1)価の炭化水素基であることが好ましい。この場合も炭素数は置換基が有する炭素原子を含めてのものである。
2で表される連結基としては、特に、連結基の主骨格を構成する原子数が5〜10のものが好ましく、構造的には、鎖状構造であって、その構造中にエステル結合を有するものや、前記の如き環状構造を有するものが好ましい。
2で表される連結基に導入可能な置換基としては、水素を除く1価の非金属原子団を挙げることができ、ハロゲン原子(−F、−Br、−Cl、−I)、ヒドロキシル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルジチオ基、アリールジチオ基、アミノ基、N−アルキルアミノ基、N,N−ジアルキルアミノ基、N−アリールアミノ基、N,N−ジアリールアミノ基、N−アルキル−N−アリールアミノ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、N−アルキルカルバモイルオキシ基、N−アリールカルバモイルオキシ基、N,N−ジアルキルカルバモイルオキシ基、N,N−ジアリールカルバモイルオキシ基、N−アルキル−N−アリールカルバモイルオキシ基、アルキルスルホキシ基、アリールスルホキシ基、アシルチオ基、アシルアミノ基、N−アルキルアシルアミノ基、N−アリールアシルアミノ基、ウレイド基、N’−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキルウレイド基、N’−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリールウレイド基、N−アルキルウレイド基、N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアルキル−N−アリールウレイド基、N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アリール−N−アリールウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アルキルウレイド基、N’,N’−ジアリール−N−アリールウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アルキルウレイド基、N’−アルキル−N’−アリール−N−アリールウレイド基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アルキル−N−アルコキシカルボニルアミノ基、
N−アルキル−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アルコキシカルボニルアミノ基、N−アリール−N−アリーロキシカルボニルアミノ基、ホルミル基、アシル基、カルボキシル基及びその共役塩基基、アルコキシカルボニル基、アリーロキシカルボニル基、カルバモイル基、N−アルキルカルバモイル基、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N−アリールカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホ基(−SO3H)及びその共役塩基基、アルコキシスルホニル基、アリーロキシスルホニル基、スルフィナモイル基、N−アルキルスルフィナモイル基、N,N−ジアルキルスルフィナモイル基、N−アリールスルフィナモイル基、N,N−ジアリールスルフィナモイル基、N−アルキル−N−アリールスルフィナモイル基、スルファモイル基、N−アルキルスルファモイル基、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N−アリールスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル基、N−アシルスルファモイル基及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルスルファモイル基(−SO2NHSO2(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルスルファモイル基(−SO2NHSO2(aryl))及びその共役塩基基、N−アルキルスルホニルカルバモイル基(−CONHSO2(alkyl))及びその共役塩基基、N−アリールスルホニルカルバモイル基(−CONHSO2(aryl))及びその共役塩基基、
アルコキシシリル基(−Si(Oalkyl)3)、アリーロキシシリル基(−Si(Oaryl)3)、ヒドロキシシリル基(−Si(OH)3)及びその共役塩基基、ホスホノ基(−PO32)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノ基(−PO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノ基(−PO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノ基(−PO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノ基(−PO3H(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノ基(−PO3H(aryl))及びその共役塩基基、ホスホノオキシ基(−OPO32)及びその共役塩基基、ジアルキルホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)2)、ジアリールホスホノオキシ基(−OPO3(aryl)2)、アルキルアリールホスホノオキシ基(−OPO3(alkyl)(aryl))、モノアルキルホスホノオキシ基(−OPO3H(alkyl))及びその共役塩基基、モノアリールホスホノオキシ基(−OPO3H(aryl))及びその共役塩基基、シアノ基、ニトロ基、ジアルキルボリル基(−B(alkyl)2)、ジアリールボリル基(−B(aryl)2)、アルキルアリールボリル基(−B(alkyl)(aryl))、ジヒドロキシボリル基(−B(OH)2)及びその共役塩基基、アルキルヒドロキシボリル基(−B(alkyl)(OH))及びその共役塩基基、アリールヒドロキシボリル基(−B(aryl)(OH))及びその共役塩基基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
本発明に係る平版印刷版原版では、感光層の設計にもよるが、水素結合可能な水素原子を有する置換基や、特に、カルボン酸よりも酸解離定数(pKa)が小さい酸性を有する置換基は、耐刷性を下げる傾向にあるので好ましくない。一方、ハロゲン原子や、炭化水素基(アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基)、アルコキシ基、アリーロキシ基などの疎水性置換基は、耐刷を向上する傾向にあるのでより好ましく、特に、環状構造がシクロペンタンやシクロヘキサン等の6員環以下の単環脂肪族炭化水素である場合には、このような疎水性の置換基を有していることが好ましい。これら置換基は可能であるならば、置換基同士、又は置換している炭化水素基と結合して環を形成してもよく、置換基は更に置換されていてもよい。
一般式(i)におけるAがNR3-である場合のR3は、水素原子又は炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表す。このR3で表される炭素数1〜10までの一価の炭化水素基としては、アルキル基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基が挙げられる。
アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、2−エチルヘキシル基、2−メチルヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−ノルボルニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルキル基が挙げられる。
アリール基の具体例としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基等の炭素数1〜10までのアリール基、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群から選ばれるヘテロ原子を1個含有する炭素数1〜10までのヘテロアリール基、例えば、フリル基、チエニル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基等が挙げられる。
アルケニル基の具体例としては、ビニル基、1−プロペニル基、1−ブテニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−シクロペンテニル基、1−シクロヘキセニル基等の炭素数1〜10までの直鎖状、分枝状、又は環状のアルケニル基が挙げられる。
アルキニル基の具体例としては、エチニル基、1−プロピニル基、1−ブチニル基、1−オクチニル基等の炭素数1〜10までのアルキニル基が挙げられる。R3が有してもよい置換基としては、R2が導入し得る置換基として挙げたものと同様である。但し、R3の炭素数は、置換基の炭素数を含めて1〜10である。
一般式(i)におけるAは、合成が容易であることから、酸素原子又は−NH−であることが好ましい。
一般式(i)におけるnは、1〜5の整数を表し、耐刷の点で好ましくは1である。
以下に、一般式(i)で表される繰り返し単位の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005202121
Figure 2005202121
Figure 2005202121
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Figure 2005202121
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Figure 2005202121
Figure 2005202121
一般式(i)で表される繰り返し単位は、バインダーポリマー中に1種類だけであってもよいし、2種類以上含有していてもよい。本発明における特定バインダーポリマーは、一般式(i)で表される繰り返し単位だけからなるポリマーであってもよいが、通常、他の共重合成分と組み合わされ、コポリマーとして使用される。コポリマーにおける一般式(i)で表される繰り返し単位の総含有量は、その構造や、感光層組成物の設計等によって適宜決められるが、好ましくはポリマー成分の総モル量に対し、1〜99モル%、より好ましくは5〜40モル%、更に好ましくは5〜20モル%の範囲で含有される。
コポリマーとして用いる場合の共重合成分としては、ラジカル重合可能なモノマーであれば従来公知のものを制限なく使用できる。具体的には、「高分子データハンドブック−基礎編−(高分子学会編、培風館、1986)」記載のモノマー類が挙げられる。このような共重合成分は1種類であってもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明における特定バインダーポリマーの分子量は、画像形成性や耐刷性の観点から適宜決定される。好ましい分子量としては、2,000〜1,000,000、より好ましくは5,000〜500,000、更に好ましくは10,000〜200,000の範囲である。
本発明おいて用いられるバインダーポリマーは、特定バインダーポリマー単独であってもよいし、他のバインダーポリマーを1種以上併用して、混合物として用いてもよい。併用されるバインダーポリマーは、バインダーポリマー成分の総質量に対し1〜60質量%、好ましくは1〜40質量%、更に好ましくは1〜20質量%の範囲で用いられる。併用できるバインダーポリマーとしては、従来公知のものを制限なく使用でき、具体的には、本業界においてよく使用されるアクリル主鎖バインダーや、ウレタンバインダー等が好ましく用いられる。
感光層組成物中での特定バインダーポリマー及び併用してもよいバインダーポリマーの合計量は、適宜決めることができるが、感光層組成物中の不揮発性成分の総質量に対し、通常、10〜90質量%であり、好ましくは20〜80質量%、更に好ましくは30〜70質量%の範囲である。
また、このようなバインダーポリマーの酸価(meg/g)としては、2.00〜3.60の範囲であることが好ましい。
(併用可能な他のバインダーポリマー)
前記特定バインダーポリマーと併用可能な他のバインダーポリマーは、ラジカル重合性基を有するバインダーポリマーであることが好ましい。
そのラジカル重合性基としては、ラジカルにより重合することが可能であれば特に限定されないが、α−置換メチルアクリル基[−OC(=O)−C(−CH2Z)=CH2、Z=ヘテロ原子から始まる炭化水素基]、アクリル基、メタクリル基、アリル基、スチリル基が挙げられ、この中でも、アクリル基、メタクリル基が好ましい。
かかるバインダーポリマー中のラジカル重合性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、感度や保存性の観点から、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。
また、併用可能な他のバインダーポリマーは、更に、アルカリ可溶性基を有するものが好ましい。バインダーポリマー中のアルカリ可溶性基の含有量(中和滴定による酸価)は、現像カスの析出性や耐刷性の観点から、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜3.0mmol、より好ましくは0.2〜2.0mmol、最も好ましくは0.45〜1.0mmolである。
このようなバインダーポリマーの質量平均分子量は、皮膜性(耐刷性)や、塗布溶剤への溶解性の観点から、好ましくは2,000〜1,000,000、より好ましくは10,000〜300,000、最も好ましくは20,000〜200,000の範囲である。
また、このようなバインダーポリマーのガラス転移点(Tg)は、保存安定性、耐刷性、及び感度の観点から、好ましくは70〜300℃、より好ましくは80〜250℃、最も好ましくは90〜200℃の範囲である。
バインダーポリマーのガラス転移点を高めるため手段としては、その分子中に、アミド基やイミド基を含有することが好ましく、特に、メタクリルアミドメタクリルアミド誘導体を含有することが好ましい。
[赤外線吸収剤]
本発明に係る平版印刷版原版の感光層には、エネルギー移動機能(電子移動)や光熱変換機能などの発現を目的にして、赤外線吸収剤を含有することが好ましい。
赤外線吸収剤は、赤外線レーザーの照射(露光)に対し高感度で電子励起状態となり、かかる電子励起状態に係る電子移動、エネルギー移動、発熱(光熱変換機能)などが、前述の重合開始剤に作用して、該重合開始剤に高感度で化学変化を生起させてラジカルを生成させるのに有用である。
本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長750nmから1400nmに吸収極大を有する染料又は顔料であり、中でも、カチオン性染料であることが好ましい。赤外線吸収剤として対イオンを有する構造の化合物(カチオン性染料)を用いる場合には、該対イオンがハロゲンイオンでないものを選択することが好ましい。
染料としては、市販の染料及び例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号記載のシアニン染料等を挙げることができる。
また、米国特許第5,156,938号記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号(米国特許第4,327,169号)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として、米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、本発明における赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特願2001−6326、特願2001−237840記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
Figure 2005202121
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい例として下記一般式(a)で示されるシアニン色素が挙げられる。
Figure 2005202121
一般式(a)中、X1は、水素原子、ハロゲン原子、−NPh2、X2−L1又は以下に示す基を表す。ここで、X2は酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を示し、L1は、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、N、S、O、ハロゲン原子、Seを示す。Xa -は後述するZa -と同様に定義され、Raは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表す。
Figure 2005202121
1及びR2は、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。感光層塗布液の保存安定性から、R1及びR2は、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、更に、R1とR2とは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
Ar1、Ar2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられる。Y1、Y2は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R3、R4は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられる。R5、R6、R7及びR8は、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Za-は、対アニオンを示す。ただし、一般式(a)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZa-は必要ない。好ましいZa-は、感光層塗布液の保存安定性から、ハロゲンイオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロフォスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
本発明において、好適に用いることのできる一般式(a)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969公報の段落番号[0017]から[0019]に記載されたものを挙げることができる。
また、特に好ましい他の例として更に、前記した特願平2001−6326、特願平2001−237840明細書に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
但し、対イオンとして、ハロゲンイオンを含有してないものが特に好ましい。
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
顔料の粒径は、感光層中における顔料の優れた分散安定性及び感光層の均一性の観点から0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることが更に好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。
顔料を分散する方法としては、インク製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
これらの赤外線吸収剤は、本発明に係る平版印刷版原版の感光層に用いる場合、他の成分と同一の層に添加してもよいし、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の層を設けそこへ添加してもよい。
これらの赤外線吸収剤は、感光層中における均一性や感光層の耐久性の観点から、感光層を構成する全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜10質量%、染料の場合特に好ましくは0.5〜10質量%、顔料の場合特に好ましくは0.1〜10質量%の割合で添加することができる。
但し、本発明における赤外線吸収剤の添加量は、対イオンを有する構造の赤外線吸収剤でり、該対イオンがハロゲンイオンある場合には、感光層中における均一性や感光層の耐久性や感度と、感光層中のハロゲンイオンの濃度と、を考慮して調整する必要がある。
[着色剤]
更に、本発明に係る平版印刷版原版の感光層は、その着色を目的として、染料若しくは顔料を含有する。これにより、印刷版としての製版後の画像の視認性や、画像濃度測定機適性といったいわゆる検版性を向上させることができる。着色剤としては、具体例としては、例えば、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタンなどの顔料、エチルバイオレット、クリスタルバイオレット、アゾ系染料、アントラキノン系染料、シアニン系染料などの染料があり、中でも、カチオン性染料が好ましい。
着色剤としての染料及び顔料の添加量は、全感光層組成物中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約5質量%が好ましい。
着色剤として対イオンを有する構造の化合物(カチオン性染料)を用いる場合には、該対イオンがハロゲンイオンでないものを選択することが好ましい。
本発明に係る平版印刷版原版の感光層には、以上の基本成分の他に、更にその用途、製造方法等に適したその他の成分を適宜添加することができる。以下、好ましい添加剤に関し例示する。
[重合禁止剤]
本発明に係る平版印刷版原版の感光層においては、重合可能なエチレン性不飽和二重結合を有する化合物、即ち、重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の熱重合禁止剤を添加することが望ましい。適当な熱重合禁止剤としてはハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。
熱重合禁止剤の添加量は、感光層組成物中の不揮発性成分の質量に対して約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。
また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で層の表面に偏在させてもよい。
高級脂肪酸誘導体の添加量は、感光層組成物中の不揮発性成分に対して約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
[その他の添加剤]
更に、本発明に係る平版印刷版原版の感光層には、硬化皮膜の物性を改良するための無機充填剤や、その他可塑剤、感光層表面のインク着肉性を向上させ得る感脂化剤等の公知の添加剤を加えてもよい。可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、バインダーポリマーと付加重合性化合物との合計質量に対し一般的に10質量%以下の範囲で添加することができる。
また、本発明に係る平版印刷版原版の感光層において、後述する膜強度(耐刷性)向上を目的とした、現像後の加熱・露光の効果を強化するために、UV開始剤や、熱架橋剤等の添加も行うことができる。
<アルミニウム支持体>
本発明において用いられる平版印刷版原版の支持体は、アルミニウム支持体である。アルミニウム支持体は寸法安定性がよく、比較的安価であり、必要に応じた表面処理により親水性や強度にすぐれた表面を提供できる。また、特公昭48−18327号に記載されているようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミニウムシートが結合された複合体シートを用いてもよい。
本発明において最も好適な支持体としてのアルミニウム板とは、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とする金属板であり、純アルミニウム板の他、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、又はアルミニウム(合金)がラミネート若しくは蒸着されたプラスチックフィルム又は紙の中から選ばれる。以下の説明において、上記に挙げたアルミニウム又はアルミニウム合金からなる支持体をアルミニウム支持体と総称して用いる。前記アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタンなどがあり、合金中の異元素の含有量は10質量%以下である。本発明では純アルミニウム板が好適であるが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、僅かに異元素を含有するものでもよい。
このように本発明に適用されるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、従来より公知公用の素材のもの、例えば、JIS A 1050、JIS A 1100、JIS A 3103、JIS A 3005などを適宜利用することができる。
また、本発明に用いられるアルミニウム支持体の厚みは、およそ0.1mm〜0.6mm程度である。この厚みは印刷機の大きさ、印刷版の大きさ及びユーザーの希望により適宜変更することができる。このようなアルミニウム支持体には、後述の支持体表面処理が施され、本発明における、感光層が設けられる面の中心線平均粗さRaが0.2〜0.7μmの範囲である支持体が作製される。
以下、本発明における支持体の中心線平均粗さRaを制御するための手段について説明する。
まず、中心線平均粗さRaを制御するための手段としては、粗面化処理が挙げられる。アルミニウム支持体には、機械的粗面化、化学的エッチング、電解研磨処理、及び電気化学的粗面化が単独又は組み合わせて行われ、その表面形状が制御される。
以下に、粗面化処理の例示的態様を示す。
(機械的粗面化)
機械的粗面化処理としては、所望の毛径を有する回転するナイロンブラシロールと、支持体表面に供給される研磨剤を含むスラリー液により、アルミニウム支持体表面を機械的に粗面化処理することができる。研磨剤としては公知の物が使用できるが、珪砂、石英、水酸化アルミニウム又はこれらの混合物が好ましい。この処理方法は、特開平6−135175号公報、特公昭50−40047号公報に詳しく記載されている。
この他にも、スラリー液を吹き付ける方式、ワイヤーブラシを用いた方式、凹凸を付けた圧延ロールの表面形状を金属基体表面に転写する方式などを用いてもよい。この中でも、表面形状を転写する方式としては、例えば、特開平7−205565号公報の段落番号[0004]に記載の方法を用いることができる。これらの機械的粗面化処理は、単独或いは組み合わせて用いることもできる。
これらの各機械的粗面化処理において、中心線平均粗さRaを0.35〜0.55μmの範囲に制御するためには、粗面化処理を行う前の支持体の物性や表面性状に合せた粗面化条件を、適宜、調整する必要がある。
例えば、上記ナイロンブラシロールと、研磨剤を含むスラリー液と、を用いて機械的粗面化を行う方法では、該ナイロンブラシロールの毛の直径や毛長などを調整する、又は、研磨剤の粒径を調整することにより、支持体表面の中心線平均粗さRaを制御することができる。より具体的には、アルミニウム支持体の表面を、ナイロンブラシロールと、研磨剤を含むスラリー液と、を用いて機械的に粗面化する場合、ナイロンブラシロールの毛の直径が0.15〜0.45mmの範囲であることが好ましく、また、研磨剤の平均粒径が15〜50μmの範囲であることが好ましい。これらの条件は、少なくとも一方がこの範囲内であれば、中心線平均粗さRaを上記の範囲に制御することが可能であるが、研磨剤の平均粒径を調整することで中心線平均粗さRaを制御する方が好ましく、いずれの条件もこの範囲内であることが更に好ましい。
なお、機械的粗面化後に、電解研磨処理や化学エッチング処理を施す場合、電気化学的粗面化処理を施す場合には、粗面化状態がそれぞれ変化するため、機械的粗面化においては、その変化を考慮して中心線平均粗さRaを制御することが好ましい。
(酸性水溶液中での電解研磨処理、又は、酸又はアルカリ水溶液中での化学的エッチング処理)
上記の機械的粗面化によって生成した凹凸のエッジ部分を溶解し、滑らかなうねりを持つ表面を得て、汚れ性能がよい印刷版を得る目的でおこなう。このときの金属基体の溶解量は3〜20g/m2が好ましい。
エッチング方法は浸漬でもよいし、スプレーでエッチング液を吹き付けてもよい。好適に用いられるエッチング剤は、苛性ソーダ、炭酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム等であり、濃度と温度の好ましい範囲はそれぞれ1〜50%、20〜100℃である。
電解研磨処理又は化学的エッチング処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち込まないために、また、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するためにニップローラーによる液切りとスプレーによる洗浄を行うことが好ましい。スプレーによる洗浄には、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ酸、ホウフッ化水素酸等の酸が用いられる。
(硝酸又は塩酸を主体とする水溶液中での、直流又は交流を用いた電気化学的粗面化処理)
平均直径約0.5〜20μmのクレーター又はハニカム状のビットを金属基体表面に30〜100%の面積率で生成する目的で行われる。かかる処理は、印刷版の非画像部の汚れにくさと耐刷力を向上する作用を有する。
この方法に適する陽極時電気量は50C/dm2〜400C/dm2の範囲である。更に具体的には、0.1〜50%の塩酸又は硝酸を含む電解液中、温度20〜80℃、時間1秒〜30分、電流密度100C/dm2〜400C/dm2の条件で交流及び/又は直流電解を行うことが好ましい。
なお、電気化学的粗面化処理において、使用電気量の調整によっても、支持体表面の中心線平均粗さRaを制御することができる。
(酸性水溶液中での電解研磨処理、又は、酸又はアルカリ水溶液中での化学的なエッチング処理)
上記の電気化学的粗面化で生成した、スマット成分の除去と、生成したビットのエッジ部分を滑らかにし、印刷版としたときの汚れ性能を良化させる目的で行われる。好ましくは、特開昭53−12739号公報に記載されているような50〜90℃の温度の15〜65質量%の硫酸と接触させる方法、及び、特公昭48−28123号公報に記載されているアルカリエッチングする方法が挙げられる。支持体の溶解量は、0.05〜5g/m2の範囲であることが好ましく、0.1〜3g/m2の範囲であることがより好ましい。
以上のようにして、所定の中心線平均粗さRaに制御された表面を有する支持体(アルミニウム支持体)が作製される。
作製された支持体を平版印刷版原版に用いる場合、以下に示す陽極酸化処理がなされることが好ましい。
(陽極酸化処理)
陽極酸化処理は、硫酸、燐酸、シュウ酸若しくは硼酸/硼酸ナトリウムの水溶液が単独若しくは複数種類組み合わせて電解浴の主成分として用いられる。この際、電解液中に少なくともAl合金板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分はもちろん含まれても構わない。更には、第2、第3成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、3成分としては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオンやアンモニウムイオン等に陽イオンや、硝酸イオン、炭酸イオン、塩素イオン、リン酸イオン、フッ素イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、硼酸イオン等の陰イオンが挙げられ、その濃度としては0〜10000ppm程度が好ましい。陽極酸化処理の条件に特に限定はないが、好ましくは30〜500g/リットル、処理液温10〜70℃で、電流密度0.1〜40A/m2の範囲で直流又は交流電解によって処理される。形成される陽極酸化皮膜の厚さは0.5〜1.5μmの範囲であり、好ましくは0.5〜1.0μmの範囲である。以上の処理によって作製された支持体が、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアのポア径が5〜10nm、ポア密度が8×1015〜2×1016個/m2の範囲に入るように処理条件が選択されるこ
とが好ましい。
前記支持体表面の親水化処理としては、広く公知の方法が適用できる。特に好ましい処理としては、シリケート又はポリビニルホスホン酸等による親水化処理が施される。皮膜はSi、又はP元素量として2〜40mg/m2、より好ましくは4〜30mg/m2で形成される。塗布量はケイ光X線分析法により測定できる。
上記の親水化処理は、アルカリ金属ケイ酸塩、又はポリビニルホスホン酸が1〜30質量%、好ましくは2〜15質量%であり、25℃のpHが10〜13である水溶液に、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム支持体を、例えば、15〜80℃で0.5〜120秒浸漬することにより実施される。
前記親水化処理に用いられるアルカリ金属ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムなどが使用される。アルカリ金属ケイ酸塩水溶液のpHを高くするために使用される水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどがある。なお、上記の処理液にアルカリ土類金属塩若しくは第IVB族金属塩を配合してもよい。アルカリ土類金属塩としては、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウムのような硝酸塩や、硫酸塩、塩酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩などの水溶性の塩が挙げられる。第IVB族金属塩としては、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムなどを挙げることができる。
アルカリ土類金属塩若しくは、第IVB族金属塩は単独又は2種以上組み合わせて使用することができる。これらの金属塩の好ましい範囲は0.01〜10質量%であり、更に好ましい範囲は0.05〜5.0質量%である。また、米国特許第3,658,662号明細書に記載されているようなシリケート電着も有効である。特公昭46−27481号、特開昭52−58602号、特開昭52−30503号に開示されているような電解グレインを施した支持体と、上記陽極酸化処理及び親水化処理を組合せた表面処理も有用である。
<平版印刷版原版の作製>
本発明に係る平版印刷版原版は、支持体上に、感光層を設け、更に必要に応じて、下塗り層や保護層を設けてなる。かかる平版印刷版原版は、上述の各種成分を含む塗布液を、それぞれ、適当な溶媒に溶かして、支持体上に塗布することにより製造することができる。
感光層を塗設する際には、前記感光層成分を種々の有機溶剤に溶かして、支持体又は下塗り層上に塗布される。
ここで使用する溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン、酢酸エチル、エチレンジクロライド、テトラヒドロフラン、トルエン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、アセチルアセトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、3−メトキシプロパノール、メトキシメトキシエタノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3−メトキシプロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、乳酸メチル、乳酸エチルなどがある。これらの溶媒は、単独或いは混合して使用することができる。そして、塗布溶液中の固形分の濃度は、2〜50質量%が適当である。
前記感光層の被覆量は、主に、感光層の感度、現像性、露光膜の強度・耐刷性に影響し得るもので、用途に応じ適宜選択することが望ましい。被覆量が少なすぎる場合には、耐刷性が十分でなくなる。一方多すぎる場合には、感度が下がり、露光に時間がかかる上、現像処理にもより長い時間を要するため好ましくない。本発明の主要な目的である走査露光用平版印刷版原版としては、その被覆量は乾燥後の質量で約0.1g/m2〜約10g/m2の範囲が適当である。より好ましくは0.5〜5g/m2である。
(感光層の物性)
なお、本発明に係る平版印刷版原版における感光層の物性としては、25℃におけるpHが10〜12.5のアルカリ現像液に対する未露光部の現像速度が80nm/sec以上、かつ、該アルカリ現像液の露光部における浸透速度が50nF/sec以下であることが好ましい。
なお、ここで、pH10〜12.5のアルカリ現像液による現像速度とは、感光層の膜厚(m)を現像に要する時間(sec)で除した値であり、アルカリ現像液の浸透速度とは、導電性支持体上に前記感光層を製膜し、現像液に浸漬した場合の静電容量(F)の変化速度を示す値である。
以下に、本発明における「アルカリ現像液に対する現像速度」及び「アルカリ現像液の浸透速度」の測定方法について詳細に説明する。
[アルカリ現像液に対する現像速度の測定]
ここで、感光層のアルカリ現像液に対する現像速度とは、感光層の膜厚(μm)を現像に要する時間(sec)で除した値である。
本発明における現像速度の測定方法としては、図1に示すように、アルミニウム支持体上に未露光の感光層を備えたものをpH10〜12.5の範囲の一定のアルカリ現像液(25℃)中に浸漬し、感光層の溶解挙動をDRM干渉波測定装置で調査した。図1に、感光層の溶解挙動を測定するためのDRM干渉波測定装置の概略図を示す。本発明においては、640nmの光を用い干渉により膜厚の変化を検出した。現像挙動が感光層表面からの非膨潤的現像の場合、膜厚は現像時間に対して徐々に薄くなり、その厚みに応じた干渉波が得られる。また、膨潤的溶解(脱膜的溶解)の場合には、膜厚は現像液の浸透により変化するため、きれいな干渉波が得られない。
この条件において測定を続け、感光層が完全に除去され、膜厚が0となるまでの時間(現像完了時間)(s)と、感光層の膜厚(μm)より、現像速度を以下の式により求めることができる。この現像速度が大きいものほど、現像液により容易に膜が除去され、現像性が良好であると判定する。
(未露光部の)現像速度(μm/sec)=
〔感光層厚(μm)/記録完了時間(sec)〕
[アルカリ現像液の浸透速度の測定]
また、アルカリ現像液の浸透速度とは、導電性支持体上に前記感光層を製膜し、現像液に浸漬した場合の静電容量(F)の変化速度を示す値である。
本発明における浸透性の目安となる静電容量の測定方法としては、図2に示すように、pH10〜12.5の範囲の、一定pHであるアルカリ現像液(25℃)中にアルミニウム支持体上に所定の露光量にて露光を行ない、硬化した感光層を備えたものを一方の電極として浸漬し、アルミニウム支持体に導線をつなぎ、他方に通常の電極を用いて電圧を印加する方法が挙げられる。電圧を印加後、浸漬時間の経過に従って現像液が支持体と感光層との界面に浸透し、静電容量が変化する。
現像液浸透速度は、この静電容量が一定になるまでに要する時間(s)と、一定なったときの静電容量(nF)の値より、以下の式により求めることができる。この浸透速度が小さいものほど、現像液の浸透性が低いと判定する。
(露光部の)現像液浸透速度(nF/sec)=
〔静電容量(nF)/静電容量変化が一定になるまでに要する時間(sec)〕
本発明に係る平版印刷版原版における感光層の好ましい物性としては、上記測定によるpH10〜12.5のアルカリ現像液による未露光部の現像速度は、好ましくは80〜400nm/sec、より好ましくは90〜200nm/secである。
一方、露光部の現像液浸透速度は、好ましくは0〜50nF/sec、より好ましくは0〜10nF/secである。
感光層の未露光部の現像速度や硬化後の感光層に対するアルカリ現像液の浸透速度の制御は、常法により行うことができるが、代表的なものとしては、未露光部の現像速度の向上には、親水性の化合物の添加が有用であり、露光部への現像液浸透抑制には、疎水性の化合物の添加する手段が有用である。
上述の特定バインダーポリマーを使用することで、感光層の現像速度、現像液の浸透速度を容易に上記の好ましい範囲に調製することができる。
[中間層(下塗り層)]
本発明における平版印刷版原版には、感光層と支持体との間の密着性や汚れ性を改善する目的で、中間層(下塗り層)を設けてもよい。このような中間層の具体例としては、特公昭50−7481号、特開昭54−72104号、特開昭59−101651号、特開昭60−149491号、特開昭60−232998号、特開平3−56177号、特開平4−282637号、特開平5−16558号、特開平5−246171号、特開平7−159983号、特開平7−314937号、特開平8−202025号、特開平8−320551号、特開平9−34104号、特開平9−236911号、特開平9−269593号、特開平10−69092号、特開平10−115931号、特開平10−161317号、特開平10−260536号、特開平10−282682号、特開平11−84674号、特願平8−225335号、特願平8−270098号、特願平9−195863号、特願平9−195864号、特願平9−89646号、特願平9−106068号、特願平9−183834号、特願平9−264311号、特願平9−127232号、特願平9−245419号、特願平10−127602号、特願平10−170202号、特願平11−36377号、特願平11−165861号、特願平11−284091号、特願2000−14697号等に記載のものを挙げることができる。
[保護層]
本発明に好適に用いられる平版印刷版原版の感光層は熱重合性ネガ型感光層であり、通常、露光を大気中で行うために、感光層の上に、更に、保護層(オーバーコート層とも呼ばれる。)を設けることが好ましい。保護層は、感光層中で露光により生じる画像形成反応を阻害する、大気中に存在する酸素や塩基性物質等の低分子化合物の感光層への混入を防止し、大気中での露光による硬化反応が効率よく行われることを可能とする。従って、このような保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性が低いことであり、更に、露光に用いる光の透過は実質阻害せず、感光層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像工程で容易に除去できることが望ましい。
このような、保護層に関する工夫が従来よりなされており、米国特許第3、458、311号、特公昭55−49729号に詳しく記載されている。保護層に使用できる材料としては、例えば、比較的結晶性に優れた水溶性高分子化合物を用いることがよく、具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、酸性セルロース類、ゼラチン、アラビアゴム、ポリアクリル酸などのような水溶性ポリマーが知られているが、これらの内、ポリビニルアルコールを主成分として用いることが、酸素遮断性、現像除去性といった基本特性的にもっとも良好な結果を与える。
保護層に使用するポリビニルアルコールは、必要な酸素遮断性と水溶性を有するための、未置換ビニルアルコール単位を含有する限り、一部がエステル、エーテル及びアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を有していてもよい。ポリビニルアルコールの具体例としては71〜100%加水分解され、分子量が300から2400の範囲のものを挙げることができる。
具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105、PVA−110、PVA−117、PVA−117H、PVA−120、PVA−124、PVA−124H、PVA−CS、PVA−CST、PVA−HC、PVA−203、PVA−204、PVA−205、PVA−210、PVA−217、PVA−220、PVA−224、PVA−217EE、PVA−217E、PVA−220E、PVA−224E、PVA−405、PVA−420、PVA−613、L−8等が挙げられる。
保護層の成分(PVAの選択、添加剤の使用)、塗布量等は、酸素遮断性・現像除去性の他、カブリ性や密着性・耐傷性を考慮して選択される。一般には使用するPVAの加水分解率が高い程(保護層中の未置換ビニルアルコール単位含率が高い程)、膜厚が厚い程酸素遮断性が高くなり、感度の点で有利である。しかしながら、極端に酸素遮断性を高めると、製造時・生保存時に不要な重合反応が生じたり、また、画像露光時に、不要なカブリ、画線の太りが生じたりという問題を生じる。また、画像部との密着性や、耐傷性も版の取り扱い上極めて重要である。即ち、水溶性ポリマーからなる親水性の層を親油性の感光層に積層すると、接着力不足による膜剥離が発生しやすく、剥離部分が酸素の重合阻害により膜硬化不良などの欠陥を引き起こす。これに対し、これら2層間の接着性を改善すべく種々の提案がなされている。例えば、米国特許出願番号第292,501号、米国特許出願番号第44,563号には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルジョン又は水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体などを20〜60質量%混合し、感光層の上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。
本発明における保護層に対しては、これらの公知の技術をいずれも適用することができる。このような保護層の塗布方法については、例えば、米国特許第3,458,311号、特公昭55−49729号に詳しく記載されている。
従って、本発明においては、接着力、感度、不要なカブリの観点から、ポリビニルアルコールとポリビニルピロリドンを併用することが好ましい。添加量比(質量比)は、ポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドンが3/1以下であることが好ましい。塗布重量としては、1.0g/m2〜3.0g/m2であることが好ましい。
前記の如きネガ型感光性組成物を有する平版印刷版原版が本発明の製版方法に好適に用いられる。
次に、本発明に係る平版印刷版原版の製版方法について説明する。本発明の製版方法は、支持体上に、重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマーを含有する感光性組成物を有する平版印刷版原版を、露光した後、アルカリ性水溶液による現像処理工程を実施し、引き続き、pHが8.0〜11.0の範囲にある処理液で処理することを特徴とする。
本発明の製版方法においては、これら現像工程、特定pHの処理液による処理工程の他、後述する任意の他の工程を有していてもよい。
この製版方法は、重合開始剤及び重合性化合物及びバインダーポリマーを含有する感光性組成物を有する平版印刷版原版のいずれにも好適に適用できる。具体的には、前記平版印刷版原版の感光層の欄で説明した「重合開始剤、重合性化合物及びバインダーポリマー」の各成分を含有する感光層を有するものであればよく、好ましくは感光層中に赤外線吸収剤を含むものである。また、前記した特定のバインダーポリマーを含む平版印刷版原版の製版にも好適であることはいうまでもない。
また、平版印刷版原版の製版方法が適用される感光層としては、前記特定のバインダーポリマーを含有する感光層と同様に、pH8〜14のアルカリ現像液による未露光部の現像速度が、好ましくは80〜400nm/secであり、同様のアルカリ現像液の感光層に対する浸透速度は90nF/sec以下であることが好ましい。
感光層の未露光部の現像速度や硬化後の感光層に対するアルカリ現像液の浸透速度の制御は、常法により行うことができるが、代表的なものとしては、前記特定バインダーポリマーを使用する方法の他、未露光部の現像速度の向上には、親水性の化合物の添加が有用であり、露光部への現像液浸透抑制には、疎水性の化合物の添加手段が有用である。
平版印刷版原版は、まず、画像様に露光処理がなされる。
露光処理工程に用いられる光源としては、赤外線レーザーが好適なものとして挙げられ、また、紫外線ランプによる記録やサーマルヘッドによる熱的な記録も可能である。
本発明においては、波長750nmから1400nmの赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーにより画像露光されることが好ましい。レーザーの出力は100mW以上が好ましく、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。また、1画素あたりの露光時間は20μ秒以内であることが好ましい。記録材料に照射されるエネルギーは10〜300mJ/cm2であることが好ましい。露光のエネルギーが低すぎると画像記録層の硬化が十分に進行しない。また、露光のエネルギーが高すぎると画像記録層がレーザーアブレーションされ、画像が損傷することがある。
本発明における露光は光源の光ビームをオーバーラップさせて露光することができる。オーバーラップとは副走査ピッチ幅がビーム径より小さいことをいう。オーバーラップは、例えばビーム径をビーム強度の半値幅(FWHM)で表わしたとき、FWHM/副走査ピッチ幅(オーバーラップ係数)で定量的に表現することができる。本発明ではこのオーバーラップ係数が0.1以上であることが好ましい。
本発明に使用する露光装置の光源の走査方式は特に限定はなく、円筒外面走査方式、円筒内面走査方式、平面走査方式などを用いることができる。また、光源のチャンネルは単チャンネルでもマルチチャンネルでもよいが、円筒外面方式の場合にはマルチチャンネルが好ましく用いられる。
本発明においては、露光後すぐに現像処理を行ってもよいが、露光工程と現像工程の間に加熱処理を行ってもよい。この加熱処理の条件としては、温度60〜150℃の範囲において、5秒〜5分間とすることが好ましい。
前記加熱処理としては、従来公知の種々の方法から適宜選択することができる。具体的には、平版印刷版原版をパネルヒーターやセラミックヒーターと接触させながら加熱する方法、ランプや温風により非接触での加熱方法等が挙げられる。前記加熱処理を施すことにより、照射するレーザーの、画像記録に必要なレーザーエネルギー量の低減を図ることができる。
また、平版印刷版原版が保護層を有する場合は、現像工程の前に、保護層を除去するプレ水洗を行ってもよい。プレ水洗は、例えば、平版印刷版原版の保護層表面にスプレーパイプから水が吐出され、かかる保護層が湿潤した後、ブラシローラに保護層を除去するという方法で行なわれる。プレ水洗には、例えば、水道水が用いられる。また、現像工程が自動現像機により行なわれる場合には、該自動現像機内においてプレ水洗工程が行なわれてもよい。
次に、本発明の平版印刷版の製版方法における重要な工程である現像工程について説明する。
本発明に係る平版印刷版原版は、露光された後そのまま、又は、加熱工程やプレ水洗工程を経た後、現像処理される。
かかる現像処理に使用される現像液としては、pH14以下のアルカリ水溶液が特に好ましく、より好ましくは界面活性剤を含有するpH8〜12のアルカリ水溶液である。
本発明の製版方法に用いられる現像液中に含有される界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、αオレフィンスルホン酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホ琥珀酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分鹸化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等のアニオン界面活性剤;
ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンステアレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンアルキルエステル類、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート等のモノグリセリドアルキルエステル類等のノニオン界面活性剤;が好適に挙げられる。
なかでも、特に下記一般式(I−A)又は一般式(I−B)で示されるアニオン界面活性剤が好ましい。
Figure 2005202121
(上記一般式(I−A)又は一般式(I−B)において、R1、R3はそれぞれ、直鎖または分岐鎖の炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し、m、nはそれぞれ、1〜100から選択される整数を表し、mが2以上の場合、R1は2種類以上の基から選択してもよく、nが2以上の場合、R3は2種類以上の基から選択してもよい。R2、R4はそれぞれ、直鎖または分岐鎖の炭素数1〜20のアルキレン基を表し、p、qはそれぞれ、0〜2から選択される整数を表す。Y1、Y2は、それぞれ単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表す。(Z1+、(Z2+はそれぞれ、アルカリ金属イオン、又は、
を表す。)
以下に、本発明において現像液中に含まれる好ましいアニオン界面活性剤の具体例〔(K−1)〜(K−13)〕を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005202121
Figure 2005202121
これらの界面活性剤は単独で用いても良いし、2種類以上を併用しても良い。添加量は、現像性、感光層成分の溶解性と、印刷版の耐刷性とのバランスといった観点からは、現像液中に1〜10質量%が適当であり、好ましくは2〜10質量%を添加することが効果的である。
現像液には消泡剤を含有させてもよい。消泡剤はアセチレンアルコールまたはアセチレングリコールから選択される化合物であり、単独で使用しても、併用しても良い。
アセチレンアルコールとは、分子内にアセチレン結合(三重結合)をもつ不飽和アルコールである。また、アセチレングリコールとは、アルキンジオールとも呼ばれ、分子内にアセチレン結合(三重結合)をもつ不飽和グリコールである。
具体的には、以下の一般式(II)又は一般式(III)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2005202121
(一般式(II)中、R1は炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表す。)
Figure 2005202121
(一般式(III)中、R2及びR3はそれぞれ独立して炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基を表し、a+bは0〜30の数である。)
上記式中、炭素原子数1〜5の直鎖又は分岐鎖のアルキル基として、メチル基、エチル基、イソプロピル基、イソブチル基、イソペンチル基などが挙げられる。
以下に、現像液に用いられる好適な消泡剤の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
Figure 2005202121
Figure 2005202121
これらのアセチレンアルコール、アセチレングリコールは市場で入手することができ、市販品として例えば Air Products and Chemicals Inc.の商品名サフィノールが知られている。市販品の具体例には、上記(3)としてサフィノール61、上記(4)としてオルフィンB、上記(5)としてオルフィンP、上記(7)としてオルフィンY、上記(8)としてサフィノール82、上記(9)としてサフィノール104、オルフィンAK−02、上記(10)としてサフィノール400シリーズ、上記(11)としてサフィノールDF−110などがある。
前記現像液には現像調整剤として有機酸のアルカリ金属塩類、無機酸のアルカリ金属塩類を加えても良い。
例えば、炭酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、クエン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウムなどを単独もしくは2種以上を組み合わせて混合して用いても良い。
前記現像液にはアルカリ剤として、たとえば第3リン酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、硼酸ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、水酸化ナトリウム、同カリウム、同アンモニウム、および同リチウムなどの無機アルカリ剤および、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、n−ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプパノールアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、ピリジン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドなどの有機アルカリ剤を単独もしくは2種以上を組み合わせて混合して用いても良い。また、アルカリ珪酸塩は塩基と組み合わせて使用してもよい。
使用するアルカリ珪酸塩としては、水に溶解したときにアルカリ性を示すものであって、例えば珪酸ナトリウム、珪酸カリウム、珪酸リチウム、珪酸アンモニウムなどがある。これらのアルカリ珪酸塩は1種単独でも、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の現像液は、基板の親水化成分としての珪酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2と、アルカリ成分としてのアルカリ酸化物M2O(Mはアルカリ金属又はアンモニウム基を表す)との混合比率、及び濃度の調整により、最適な範囲に容易に調節することができる。酸化ケイ素SiO2とアルカリ酸化物M2Oとの混合比率(SiO2/M2Oのモル比)は0.75〜4.0であり、好ましくは0.75〜3.5の範囲で使用される。
前記SiO2/M2Oが0.75未満であると、アルカリ性が強くなり、平版印刷版原版の支持体としてのアルミ基板の陽極酸化皮膜が過度に溶解(エッチング)され、前記放置汚れが発生したり、溶解アルミと珪酸との錯体形成による不溶性のカスが生じるという弊害が起こり、4.0更には3.0を超えると、現像性が低下したり珪酸塩の縮合した不溶性のカスが発生するという問題が生じることがある。
また現像液中のアルカリ珪酸塩の濃度としては、アルカリ水溶液の質量に対して、SiO2量として0.01〜1mol/Lが好ましく、より好ましくは0.05〜0.8mol/Lの範囲で使用される。この濃度が0.01mol/L未満であると、アルミ基板の陽極酸化皮膜の溶解(エッチング)抑制効果が得られず、現像性、現像処理能力が低下することがあり、1mol/Lを超えると沈殿や結晶を生成し易くなり、また廃液時の中和の際にゲル化し易くなる結果、廃液処理に支障を来たすことがある。
現像液にはキレート剤を含有させてもよい。キレート剤としては、例えば、Na227、Na533、Na339、Na24P(NaO3P)PO3Na2、カルゴン(ポリメタリン酸ナトリウム)などのポリリン酸塩、例えばエチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、ナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,2−ジアミノシクロヘキサンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1,3−ジアミノ−2−プロパノールテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのようなアミノポリカルボン酸類の他2−ホスホノブタントリカルボン酸−1,2,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;2−ホスホノブタノントリカルボン酸−2,3,4、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ホスホノエタントリカルボン酸−1,2、2、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類を挙げることができる。
このようなキレート剤の最適量は使用される水の硬度およびその使用量に応じて変化するが、一般的には、使用時の現像液中に0.01〜5質量%、より好ましくは0.01〜0.5質量%の範囲で含有させる。
本発明の画像形成方法に使用される現像液には、上記の成分の他に、必要に応じて以下の様な成分を併用することができる。例えば安息香酸、フタル酸、p−エチル安息香酸、p−n−プロピル安息香酸、p−イソプロピル安息香酸、p−n−ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、p−2−ヒドロキシエチル安息香酸、デカン酸、サリチル酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等の有機カルボン酸;イソプロピルアルコール、ベンジルアルコール、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、フェニルセロソルブ、プロピレングリコール、ジアセトンアルコール等の有機溶剤;この他、キレート剤、還元剤、染料、顔料、硬水軟化剤、防腐剤等が挙げられる。
本発明の方法に用いられる現像液の25℃におけるpHは、8〜14であることが好ましく、11〜12.5であるのがより好ましい。また、導電率xは2<x<30mS/cmであることが好ましく、5〜25mS/cmであるのがより好ましい。
この現像液に導電率調整剤として、有機酸のアルカリ金属塩類、無機酸のアルカリ金属塩類を加え、導電率を所望の範囲に調整することができる。
上記現像液は、露光されたネガ型画像形成材料の現像液および現像補充液として用いることができ、自動現像機に適用することが好ましい。自動現像機を用いて現像する場合、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液または新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。本発明の製版方法においてもこの補充方式が好ましく適用される。上記現像液を前記ネガ型感光層を有する平版印刷版原版の現像に使用することにより、本発明の効果は特に顕著になり好ましい。
更に、自動現像機を用いて、該平版印刷版原版を現像する場合には、処理量に応じて現像液が疲労してくるので、補充液又は新鮮な現像液を用いて処理能力を回復させてもよい。この場合米国特許第4,882,246号に記載されている方法で補充することが好ましい。また、特開昭50−26601号、同58−54341号、特公昭56−39464号、同56−42860号、同57−7427号の各公報に記載されている現像液も好ましい。
現像処理工程における処理速度、即ち、現像処理工程における平版印刷版原版の搬送速度(ライン速度)は、1.25m/分以上であることが好ましく、さらに好ましくは、1.35m/分以上である。搬送速度の上限値には特に制限はないが、搬送の安定性の観点からは、3m/分以下であることが好ましい。
本発明の製版方法においては、現像処理工程の後に、特定pHの処理液で処理する工程を有する。
本工程に用いられる処理液は、pHが8.0〜11.0の範囲にあることを要するが、この処理液には、界面活性剤を含有することが好ましく、より好ましくはアニオン界面活性剤を含有する。
このように、アニオン界面活性剤を含有し、pHが8.0〜11.0の範囲にある処理液は、前記したネガ型重合系記録層を有する平版印刷版原版を現像した後に適用する平版印刷版用リンス液として好適に用いられる。
以下、本発明の平版印刷版の製版方法に好適に用いうる本発明の平版印刷版用リンス液について説明する。
本発明に係る平版印刷版の製版方法において、前記処理液(リンス液)に含有される界面活性剤としては、現像液の項目で挙げた界面活性剤が好ましいが、特に前記一般式(I−A)又は一般式(I−B)で示されるアニオン界面活性剤であることが好ましい。
特定pH処理液に含有される前記特定構造を有するアニオン界面活性剤は単独で用いても良いし、2種以上併用してもよい。また、このアニオン界面活性剤を他のアニオン界面活性剤やノニオン界面活性剤の中から選ばれるものと併用してもよい。
界面活性剤の添加量は、感光層成分の溶解性と、印刷版の耐刷性の両立という観点からは、処理液中に0.1〜10質量%が適当であり、効果の観点からはより好ましくは0.1〜5質量%の範囲である。
また、本発明における処理液のpHは8.0〜11.0であることを要するが、好ましくは8.5〜11.0、さらに好ましくは9.5〜10.5である。pHが8.0未満であるとアルカリ可溶性成分(主にバインダーポリマー)が析出しやすくなり、本発明の効果が十分に得られない傾向があり、pHが11.0を超えると画像部にダメージを与え、耐刷低下を招く懸念がある。
本発明の製版方法に用いうる処理液(リンス液)には特定のpHに維持するためのアルカリ剤の他、キレート剤、消泡剤、導電性調整剤等の前述の現像液への添加剤を、現像剤におけるのと同様の添加量範囲で含有させてもよい。
このpHが8.0〜11.0の範囲にある処理液、好ましくは本発明のリンス液で処理する工程は、特定pHの処理液を現像処理後の平版印刷版に噴射するか、または、処理液を満たした処理槽に現像処理後の平版印刷版を浸漬する工程である。
このときの処理液の温度は好ましくは5〜35℃、より好ましくは15〜30℃であり、処理液と平版印刷版との接触時間は、好ましくは1〜30秒、より好ましくは2〜15秒である。
このようにして現像後に特定pHの処理液で処理することにより、現像浴から搬出された現像液の析出が効果的に抑制され、析出物に起因する汚れの発生や処理層における析出物の堆積などに関する問題がなくなるため、非画像部に汚れのない高品質の平版印刷版を連続して得ることができる。
本発明の製版方法により得られた平版印刷版は、本発明における特定pH処理液による処理工程を経た後にアラビアガムや澱粉誘導体等を含む不感脂化液で後処理される。
本発明の製版方法においては、画像強度・耐刷性の向上を目的として、現像後の画像に対し、全面後加熱もしくは、全面露光を行うこともできる。
現像後の加熱には非常に強い条件を利用することができる。通常は加熱温度が200〜500℃の範囲で実施される。現像後の加熱温度が低いと十分な画像強化作用が得られず、高すぎる場合には支持体の劣化、画像部の熱分解といった問題を生じるおそれがある。
以上の処理によって得られた平版印刷版はオフセット印刷機に掛けられ、多数枚の印刷に用いられる。
印刷時、版上の汚れ除去のため使用するプレートクリーナーとしては、公知のPS版用プレートクリーナーが使用され、例えば、CL−1,CL−2,CP,CN−4,CN,CG−1,PC−1,SR,IC(富士写真フイルム株式会社製)等が挙げられる。
以下、実施例によって本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〜7および比較例1〜3〕
[支持体の作成]
厚さ0.30mm、幅1030mmのJIS A 1050アルミニウム板を用いて、以下に示す表面処理を行った。
<表面処理>
表面処理は、以下の(a)〜(f)の各種処理を連続的に行った。なお、各処理及び水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
(a)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃でエッチング処理を行い、アルミニウム板を5g/m2溶解した。その後水洗を行った。
(b)温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオン0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後水洗した。
(c)60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。この時の電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオン0.5質量%、アンモニウムイオン0.007質量%含む)、温度30℃であった。交流電源は電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが2msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で25A/dm2、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で250C/cm2であった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後水洗を行った。
(d)アルミニウム板を苛性ソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%でスプレーによるエッチング処理を35℃で行い、アルミニウム板を0.2g/m2溶解し、前段の交流を用いて電気化学的な粗面化を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の除去と、生成したピットのエッジ部分を溶解し、エッジ部分を滑らかにした。その後水洗した。
(e)温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後スプレーによる水洗を行った。
(f)硫酸濃度170g/リットル(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、温度33℃、電流密度が5(A/dm2)で、50秒間陽極酸化処理を行った。その後水洗を行った。この時の陽極酸化皮膜重量が2.7g/m2であった。
このようにして得られたアルミニウム支持体の表面粗さRaは0.27(測定機器;東京精密(株)製サーフコム、蝕針先端径2ミクロンメーター)であった。
[下塗り層]
次に、このアルミニウム支持体に下記下塗り層塗布液をワイヤーバーにて塗布し、90℃30秒間乾燥した。塗布量は10mg/m2であった。
・下記構造の高分子化合物A 0.05g
・メタノール 27g
・イオン交換水 3g
Figure 2005202121
[感光層]
次に、下記感光層塗布液[P−1]を調整し、上記のアルミニウム支持体にワイヤーバーを用いて塗布した。乾燥は、温風式乾燥装置にて115℃で34秒間行い、平版印刷版原版を得た。乾燥後の被覆量は1.3g/m2であった。
<感光層塗布液[P−1]>
・赤外線吸収剤(IR−1) 0.074g
・重合開始剤(OS−12) 0.280g
・添加剤(PM−1) 0.151g
・重合性化合物(AM−1) 1.00g
・バインダーポリマー(BT−1) 1.00g
・エチルバイオレット(C−1) 0.04g
・フッ素系界面活性剤 0.015g
(メガファックF−780−F 大日本インキ化学工業(株)、
メチルイソブチルケトン(MIBK)30質量%溶液)
・メチルエチルケトン 10.4g
・メタノール 4.83g
・1−メトキシ−2−プロパノール 10.4g
なお、重合開始剤(OS−12)は、前述の一般式(I)で表されるオニウム塩の化合物例として挙げられているものを指す。
上記感光層塗布液に用いた赤外線吸収剤(IR−1)、添加剤(PM−1)、重合性化合物(AM−1)、バインダーポリマー(BT−1)、及びエチルバイオレット(C−1)の構造を以下に示す。
Figure 2005202121
[保護層(オーバーコート層)]
上記の感光層表面に、ポリビニルアルコール(ケン化度98モル%、重合度500)と、ポリビニルピロリドン(BASF社製、ルビスコールK−30)と、の混合水溶液をワイヤーバーで塗布し、温風式乾燥装置にて125℃75秒間乾燥させて保護層を形成し、本発明の製版方法に適用するための平版印刷版原版を得た。なお、ポリビニルアルコール/ポリビニルピロリドンの含有量は4/1(質量比)であり、塗布量は(乾燥後の被覆量)は2.30g/m2であった。
このようにして得られた平版印刷版原版を処理するための現像液、処理液の処方を以下に示す。
[現像液]
下記成分を水に溶解し、KOHでpH=11.95(25℃)になるように現像液を調整した。
・界面活性剤:K−1 4質量%
・消泡剤:オルフィンAK−02 0.08質量%
・エチレンジアミンテトラ酢酸4Na塩 0.16質量%
・炭酸カリウム 0.16質量%
[pHが8.0〜11.0の範囲にある処理液(平版印刷版用リンス液)]
下記成分を水に溶解し、KOH(実施例1〜7、比較例3)またはリン酸(比較例1,2)を添加することで表1に記載のpH(25℃)になるように処理液を調整した。
・界面活性剤(表1に記載の化合物) (表1に記載の量)
・消泡剤:オルフィンAK−02 0.008質量%
・エチレンジアミンテトラ酢酸4Na塩 0.016質量%
・炭酸カリウム 0.016質量%
[評価]
(1)感度評価
得られた平版印刷版原版を、Creo社製Trendsetter3244にて、解像度2400dpi、外面ドラム回転数150rpm、出力0〜8Wの範囲でlogEで0.15ずつ変化させて露光した。なお、露光は25℃50%RHの条件下で行った。露光後、富士フイルム(株)社製自動現像機LP−1310HIIを用い搬送速度(ライン速度)2m/分、現像温度30℃で現像処理した。第一浴には現像液を、第二浴には表1に示した前記特定pHの処理液又は比較処理液を、第三浴には富士フイルム(株)社製GN−2Kの1:1水希釈液を用いた。
現像して得られた平版印刷版の画像部濃度をマクベス反射濃度計RD−918を使用し、該濃度計に装備されている赤フィルターを用いてシアン濃度を測定した。測定した濃度が0.8を得るのに必要な露光量の逆数を感度の指標とした。なお、評価結果は、実施例1で得られた平版印刷版の感度を100とし、他の平版印刷版の感度はその相対評価とした。値が大きいほど、感度が優れていることを示す。結果を表1に示す。
(2)画質評価
得られたネガ型平版印刷版原版を、Creo社製Trendsetter3244にて、解像度2400dpiで80%平網画像を、出力7W、外面ドラム回転数150rpm、版面エネルギー110mJ/cm2で露光した。露光後、感度評価と同様に現像処理を行なった。得られた平版印刷版の平網ムラを目視評価した。評価は1〜5の官能評価で行い、3が実用下限レベル、2以下は実用上不可レベルとした。
(3)印刷性能
画質評価で使用した平版印刷版を、小森コーポレーション(株)製印刷機リスロンを用いて印刷し、非画像部の汚れと耐刷性能を評価した。非画像部の汚れは、1〜5の官能評価で行い、3が実用下限レベル、2以下は実用上不可レベルとした。
(4)連続処理安定性
画質評価で使用した平版印刷版を同条件で露光した版を、現像液45Lに対して3000m2相当を処理した後、全面非画像の版(未露光版)を処理して、版上に付着するカスを目視評価した。評価は1〜5の官能評価で行い、3が実用下限レベル、2以下は実用上不可レベルとした。
以上の結果を表1に示す。
Figure 2005202121
表1から明らかなように、本発明の実施例1〜7の製版方法、即ち、アルカリ性水溶液を用いて現像した後に、pHが8.0〜11.0の範囲にある処理液、即ち、本発明のリンス液で処理することで得られた平版印刷版は、印刷時における非画像部の汚れがなく、耐刷性能が良好であり、長期連続処理安定性に優れていることがわかる。これに対し、pHが規定の範囲外である処理液を用いた比較例1〜3は耐刷性能に劣るか、あるいは、連続処理適性が悪く、実用上問題のあることがわかった。
(実施例8)
前記実施例2で使用した感光層塗布液[P−1]における重合性化合物(AM−1)を下記エチレン性不飽和結合含有化合物(M−1)に、バインダーポリマー(BT−1)を下記ポリウレタン系バインダー(P−2)に変更した他は同様にして平版印刷版原版を得て、実施例2と同様の処理液を用いて製版し、得られた平版印刷版を実施例2と同様に評価した。
Figure 2005202121
評価の結果は、感度100、画質5、汚れ4、耐刷性20万枚、連続処理適性5であり、画像ムラがなく、印刷時の非画像部の汚れ性および耐刷性能、長期連続処理安定性に優れていることがわかった。また、ウレタン系バインダーを用いることで、耐刷性に一層の向上効果が見られた。
感光層の溶解挙動を測定するためのDRM干渉波測定装置の一例を示す概略構成図である。 現像液の感光層への浸透性を評価するのに用いられる静電容量の測定方法の一例を示す概略構成図である。

Claims (5)

  1. 支持体上に重合開始剤、重合性化合物およびバインダーポリマーを含む感光性組成物を有する平版印刷版原版を、露光し、アルカリ性水溶液を用いて現像した後に、pHが8.0〜11.0の範囲にある処理液で処理することを特徴とする平版印刷版の製版方法。
  2. 前記処理液が界面活性剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版の製版方法。
  3. 前記界面活性剤がアニオン界面活性剤であることを特徴とする請求項2に記載の平版印刷版の製版方法。
  4. 前記感光性組成物が、赤外線吸収剤を含むことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の平版印刷版の製版方法。
  5. pHが8.0〜11.0の範囲にあり、且つ、アニオン界面活性剤を含有することを特徴とするネガ型重合系平版印刷版用リンス液。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014203949A (ja) * 2013-04-04 2014-10-27 東京エレクトロン株式会社 基板処理方法、基板処理装置及び記憶媒体

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