JP2009231118A - 放電式2画面サイン灯 - Google Patents

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Abstract

【課題】 2種類の情報を何れも点灯状態で表示可能で、設置スペースが小さく、安価で故障も生じにくい表示装置を提供する。
【解決手段】 第1電極24,第2電極26の上に増厚層40が設けられていることから、それら第1電極24,第2電極26上の静電容量が減少させられているので、点灯発光区画20aにおいては、第1電極24b上の電位差V1の割合が大きくなり、共通電極26c上の電位差V3の割合が小さくなる。すなわち、増厚層40が備えられていない場合に比較して、第1電極24b上の壁電荷50の電位が高くなり、共通電極26c上の壁電荷52の電位が低くなる。そのため、壁電荷52と共通電極28cの消灯発光区画20b内に位置する部分との間の電位差Vm(=Vm1+Vm2+Vm3)が小さくなるので、その消灯発光区画20b内の漏れ放電が発生し難くなる。
【選択図】図6

Description

本発明は、2つの表示パターンを切り替えて発光表示可能な放電式2画面サイン灯に関するものである。
屋内や屋外の各種施設・設備において、例えば2〜4種類程度の複数種類の表示パターンを切り替えて情報を表示することが行われている。表示装置においては、一般に、視認性を高めることを目的として表示パターンを発光させるものが広く使用されている。このような表示装置としては、例えば、以下のA〜Dに示すようなものがある。
A.点灯状態と消灯状態とで異なる情報を表示するもの
この形態の表示装置は、点灯時に表示しようとする表示パターンを透光性を有するガラス板や樹脂板等に形成し、その表示板を蛍光ランプや電球等の発光体が内部に備えられた箱形の灯具の前面に装着して構成される。点灯状態では、表示パターンが内部から照らされることでその表示パターンに示される状態であることが表され、消灯状態では、暗転することでその状態では無いことが表される。例えば、スタジオ等における「ON AIR」の表示や、手術室における「手術中」の表示等で用いられている。
B.上記Aの表示装置を2個並べて一体化させたもの
この形態の表示装置では、2個並べたうちの一方が点灯中は他方が消灯し、点灯中の表示パターンで何れの状態であるかを表示する。例えば、駐車場における「満車|空車」の表示等で用いられている。
C.幕に形成した複数の表示パターンを切り替えて表示するもの
この形態の表示装置は、例えば、複数種類の表示パターンを幕に並べて形成し、これを灯具の前面に配置すると共に、その幕を一方向および反対方向に巻き取ることで表示パターンを変化させる。例えば、鉄道車両における「自由席/指定席」の表示の切り替えや、駅や百貨店等の広告を順次に変更して表示する場合等に用いられている。
D.フルドットディスプレイを用いたもの
この形態の表示装置は、縦横に矩形に配置した多数のドットから入力データ信号に従って発光させて表示するもので、複数の入力データを用意して手動或いは自動的に切り替えることで表示される情報を変化させる。例えば、鉄道車両において、LED等を用いて「特急」「急行」「普通」を表示させる場合等に用いられている。
特開2006−147251号公報
しかしながら、上記Aの表示装置では、消灯状態のときに表示状態にあるのか否かの判断が困難である。Bの表示装置は、この不都合を改善するものであるが、1個の表示に必要なスペースに対して表示パターン数に応じた倍数のスペースが装置の設置に必要になるため、空間の利用効率が悪い問題がある。また、Cの表示装置は、装置が機械仕掛けになって大がかりであると共に、その機械部分に故障が生じ易い問題がある。また、Dの表示装置は、多様な表示が可能に構成されているにも拘わらず限定的な表示パターンのみを表示することから、その表示パターンの焼き付きが生じ易くなる。また、多様な表示を可能とするために複雑な構造や駆動回路が必要であるから装置が高価になり、単純な使用態様に比較して割高になる問題がある。
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的は、2種類の情報を何れも点灯状態で表示可能で、設置スペースが小さく、安価で故障も生じにくい表示装置を提供することにある。
斯かる目的を達成するため、本発明の要旨とするところは、透光性を有する表面板と、その表面板との間に扁平な気密空間を形成する背面板とを備え、その気密空間内で放電させることにより発生した光を前記表面板を通して射出する形式の放電式2画面サイン灯であって、(a)前記気密空間を複数の発光区画に区分するために前記背面板上に突設された隔壁と、(b)前記複数の発光区画の各々に設けられた蛍光体層と、(c)前記複数の発光区画の各々が重複して属することなく且つ各々に属する複数の発光区画の分布範囲が互いに重なるように定められたそれぞれ複数の発光区画から成る互いに異なる表示パターンを形成するための第1発光区画群および第2発光区画群と、(d)前記複数の発光区画のうち前記第1発光区画群に属する各々を通って前記背面板内面に設けられた第1電極と、(e)前記複数の発光区画のうち前記第2発光区画群に属する各々を通って前記背面板内面に前記第1電極と絶縁して設けられた第2電極と、(f)前記複数の発光区画の各々を通って前記背面板内面に設けられ且つ前記第1電極および前記第2電極との間で択一的に放電するための共通電極と、(g)前記複数の発光区画の各々において前記共通電極上よりも前記第1電極および前記第2電極上の方を厚い厚さ寸法で覆う誘電体層とを、含むことにある。
このようにすれば、表面板および背面板間に扁平な気密空間を備えてその気密空間内から発光させる形式の放電式2画面サイン灯において、その気密空間内がそれぞれ蛍光体層が設けられた複数の発光区画に区分されると共に、複数の発光区画でそれぞれ構成される2つの発光区画群によって、互いに異なる複数の表示パターンが形成される。このとき、第1発光区画群および第2発光区画群の発光区画を通る第1電極および第2電極は、互いに絶縁されていることから、それらの一方と共通電極との間に電圧を印加することにより、互いに異なる2つの表示パターンを選択的に表示させることができる。複数の発光区画の各々は第1発光区画群および第2発光区画群の一方だけに属し、重複して属しないので、複雑な配線や制御回路を必要とすることなく、発光させる発光区画群を選択できる。また、2つの発光区画群は、各々に属する発光区画の分布範囲が互いに重なるように定められるので、表面板の面方向において互いに完全に分離する位置関係にはないことから、2つの表示パターンの各々をその重なりの程度に応じた広い範囲で、例えば、何れも表面板全体を利用して表示することができる。したがって、2種類の情報を何れも点灯状態で表示しながら、それら2種類の情報は1つの表示面内で発光区画を分割することで形成していることから、1つの表示装置の大きさで2種類の表示パターンを得ることができる。また、機械的な駆動部分が無用であるからそれによる故障を避けることができ、構造や駆動回路も簡単にできるので、安価な装置が得られる。また、全ての発光区画が何れかの表示パターンで点灯するように構成できるので、フルドットディスプレイで限定的な表示パターンのみを表示させる場合のような表示パターンの焼き付きも生じない。
しかも、第1電極、第2電極、および共通電極は何れも背面板上に設けられていることから面放電させられるため、表面板に配置された電極によって開口率が低下し、延いては輝度が低下することが抑制される。また、製造過程において表面板と背面板との位置ずれによって不点灯や漏れ発光が生ずることがない。因みに、平面放電ランプの電極構成としては、表面板上と背面板上に互いに対向して配置された電極間で放電させる対向放電構造とすることもできるが、この構造では、表面板上の電極によって遮光されて輝度低下する問題や、アッセンブリ時に表面板上の電極と背面板上の電極が位置ずれし得る問題がある。
また、放電は第1電極および第2電極の一方と共通電極との間で行われるため、消灯させる発光区画には、高電圧が印加された電極か接地された電極の一方と、電源回路との接続が断たれたフローティング電極とのみが存在する駆動方法を採ることができる。そのため、漏れ発光が好適に抑制される。
また、発光区画の各々において第1電極および第2電極上の誘電体層厚さが共通電極上よりも厚くされているため、それらの上の静電容量が共通電極上の静電容量よりも小さくなる。そのため、その共通電極上の壁電荷が少なくなり延いては隣接する発光区画内との間の電位差が小さくなるので、漏れ発光が一層抑制される。この結果、完全点灯電圧(すなわち、点灯させようとする発光区画が全ての点灯する電圧)と漏れ開始電圧(すなわち、漏れ発光が発生し始める電圧)との差すなわち動作マージンが拡大される利点がある。因みに、動作マージンを拡大する方法としては、隔壁高さを高くする方法や、第1電極、第2電極、および共通電極を覆う誘電体層の厚さ寸法を全体的に厚くする方法があるが、何れも発光効率が低下するため、輝度と効率の両立が求められていた。
なお、本発明において、「分布範囲が互いに重なる」とは、第1発光区画群に属する発光区画の相互間に第2発光区画群に属する発光区画が存在することを意味する。この結果、2つの表示パターンの各々が形成される範囲には他方の表示パターンを形成するための発光区画が存在することになる。そのため、表示パターンの各々にはそのような発光区画によって非発光部分が生じることから、表示しようとする文字や図形等の本来の形状を表すためには発光しなければならない部分が非発光状態になり得る。例えば、連続すべき線が途切れて断続し、或いは、塗り潰しパターン内に空白が生じ得る。しかしながら、このような断続或いは空白部分が存在しても、近傍の発光区画から発生する光量が十分に多ければ、非発光部分は目立たず、表示品質を実質的に低下させない。また、仮に非発光部分が目立っていても、観察者はその非発光部分を無意識のうちに補完して表示パターンを認識する。したがって、何れにしても、表示しようとする情報は十分に伝達されることになるから、表示パターン内に他の表示パターンを構成するための非点灯の発光区画が存在することは何ら問題にならない。
すなわち、本発明によれば、例えばバックライト、照明ランプ、一般照明等に用いられる平面型放電ランプ(例えば特許文献1を参照。)を利用し、その放電空間を複数に分割して、断続的な発光区画で全体として視認可能な表示パターンを構成することができるのである。このような放電式2画面サイン灯を応用して構成したことから、本発明の表示装置は、厚さ寸法が従来のフルドットディスプレイと同程度以下の薄いものになる利点もある。
なお、「分布範囲が互いに重なる」には、第1発光区画群および第2発光区画群の各々に属する発光区画の分布範囲が互いに完全に重なる場合の他、部分的に重なる場合も含まれる。例えば、2つの表示パターンの中に表示面全体のうちの一部から全く発光させない方が表示品質上好ましい形状が含まれる場合には、部分的な重なり状態が好ましい。例えば、本発明の放電式2画面サイン灯が配置された部分の周囲に備えられた設備との位置関係等により、一方の表示パターンが表示面全体の左方部分を中心に表示し、他方が右方部分を中心に表示することが表示の目的に適う場合などが考えられる。
また、前記蛍光体層は、全ての発光区画に設けられることが好ましいが、必須ではない。例えば、ネオン、ナトリウムや水銀灯のガス放電により発生した光をそのまま表示に利用する発光区画が含まれていることを妨げない。また、各発光区画に設けられる蛍光体層の発光色や塗布パターンは形成しようとする表示パターンに応じて定められる。例えば、発光区画の全体に1色に発光する蛍光体が塗布されてもよいが、一つの発光区画内で複数色の蛍光体を塗り分けることもできる。
ここで、好適には、前記誘電体層は、前記第1電極および前記第2電極上と前記共通電極上との厚さ寸法の差が30(μm)以下である。厚さ寸法の差が大きくなるほど動作マージンは拡大するが、30(μm)を超えると輝度が低下傾向となり、発光効率が低下する。したがって、厚さ寸法の差を30(μm)以下に止めれば、高い発光効率を保ちつつ十分に大きい動作マージンを得ることができる。但し、輝度や発光効率よりも動作マージンを重視する用途では、30(μm)を超える厚さ寸法とすることも好ましい。
また、好適には、前記誘電体層は、前記厚い厚さ寸法の部分が前記複数の発光区画の各々において前記第1電極および前記第2電極の端縁よりも50(μm)以上外側の範囲に亘るものである。このようにすれば、誘電体層が厚くされる範囲が十分に広いことから、その形成位置が電極形成位置に対してずれた場合にも、第1電極および第2電極上の誘電体層厚みが薄い部分が生ずることが好適に抑制される。
また、好適には、前記第1電極および前記第2電極は各々櫛形を成し且つそれらの歯部において互いに嵌め合わされたものであり、前記共通電極はそれら第1電極および第2電極間を蛇行するものである。このようにすれば、櫛形の第1電極および第2電極の間を縫って共通電極が設けられるので、全体で3本の電極および取り出し端子で足りる。
また、好適には、前記隔壁は格子状を成すものであり、前記複数の発光区画は前記第1発光区画群に属するものと前記第2発光区画群に属するものとが互いに隣接して位置するものである。このようにすれば、2つの発光区画群の各々に属する発光区画が市松模様に設けられるため、視認性に優れた平面放電ランプが得られる。
また、好適には、前記第1電極および前記第2電極は前記複数の発光区画の各々の中央部を通るものであり、前記共通電極は前記複数の発光区画の各々の周縁部を通るものである。このようにすれば、互いに電気的に絶縁させられた第1電極と第2電極とが他方の電極が通る発光区画から最も遠い位置を通ることとなるため、漏れ発光が一層抑制される。
なお、前記複数の発光区画の各々の形状は、所望する表示パターンに応じて適宜定められる。例えば、円形、矩形、三角形等のドット状の他、ストライプ状に構成することもでき、適当な図形パターンに構成することもできる。
また、前記複数の発光区画の各々がストライプ状を成す場合において、好適には、前記電極は、そのストライプ状の長手方向に沿って設けられる。このようにすれば、発光区画の形成や蛍光体層の塗り分け等が容易になるため、表示装置を一層安価に製造できる。また、発光区画相互間を隔壁で区分する場合においては、電極が隔壁を跨がない構成とすることができるので、誤放電が生じ難い利点がある。
また、前記気密空間は、放電式2画面サイン灯を構成し得るような扁平なものであれば、表面板側および背面板側が平坦なものに限られない。例えば、背面板や表面板の内面に光の散乱等の目的で凹凸が設けられているものも、請求の範囲に言う「扁平な気密空間」に含まれる。
また、気密空間を形成するための表面板および背面板は、例えばガラス材料で構成されるが、背面板側から光を射出させない場合には、背面板は透光性を有する必要が無いので、セラミックス、琺瑯等の不透明な材料で構成することもできる。
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
図1は、本発明の放電式2画面サイン灯10の一例の構成を説明するための断面を模式的に示す図である。放電式2画面サイン灯10は、例えばキセノン・ガスが放電ガスとして用いられた冷陰極管に分類されるものであって、有害な水銀を含まず、且つ全温度においてmsecオーダで立ち上がる応答性を備えている。
図1において、放電式2画面サイン灯10は、背面板12および表面板14が僅かな間隔を隔てて互いに平行に配置されることにより、全体が薄型平箱状を成している。これら背面板12および表面板14は、それぞれ例えば150×200(mm)程度の大きさを備えたソーダライムガラス製のガラス平板から成るものであり、背面板12の厚さ寸法は1.1(mm)程度、表面板14の厚さ寸法は0.7(mm)程度である。これらはその周縁部に略沿って矩形に設けられた例えばソーダライムガラス製の側壁16を介して相互に気密に固着されており、それらの間に矩形の気密空間18が形成されている。この気密空間18内には、キセノン或いはキセノンを主成分とした混合ガス(例えば、キセノン90(%)、アルゴン10(%))が例えば40(kPa)(≒300(Torr))程度の圧力で封入されている。この封入ガスすなわち放電ガスのガス圧は、気密空間18内の全面で略一様な放電が発生するように定められたものである。このため、気密空間18内には、背面板12および表面板14の相互間隔すなわち気密空間18の高さ寸法を一定に保つと共に、その気密空間18を多数の発光区画20に区分するための例えば格子状の隔壁22が備えられている。
上記の背面板12の内面(気密空間18側の一面)には、図2に平面視にて示すようにそれぞれ櫛形を成す第1電極24および第2電極26と、蛇行形成された共通電極28とが設けられている。第1電極24および第2電極26は櫛形の歯部にそれぞれ互いに平行な多数本の枝電極部30を有するもので、それら多数本の枝電極部30が電気的に絶縁させられた状態で互いに嵌め合わされている。前記共通電極28は、第1電極24および第2電極26の何れとも電気的に絶縁させられた状態で、それら多数本の枝電極部30の間を縫うように設けられている。第1電極24および第2電極26は、例えば220(μm)程度の幅寸法を備えたもので、厚膜スクリーン印刷法を用いてパターン形成された厚膜銀や、アルミニウムの蒸着後にエッチングによりパターン形成された薄膜アルミニウム等から成る。また、共通電極28は、例えば300(μm)程度の幅寸法を備えたもので、第1電極24および第2電極26と同様な材料で構成されている。これら第1電極24,第2電極26、共通電極28は例えば白色の誘電体層32に覆われている。誘電体層32は、例えば低融点ガラスおよびアルミナやチタニア等のフィラー等から成るものであって、例えば30〜100(μm)程度の厚さ寸法、例えば50(μm)程度で設けられている。
背面板12の図2における上端部には、外部回路と接続するための端子部34,36,38が備えられており、上記第1電極24、第2電極26,共通電極28は、それら端子部34,36,38にそれぞれ接続されている。なお、上記図2は前記誘電体層32等を省略して電極24等の配設状態を表したもので、前記隔壁22の位置を破線で示した。前記図1は、この図2におけるI−I視断面に相当するものである。
図3は、発光区画20の一部を拡大して隔壁22と電極24,26,28との位置関係を示す図である。前記第1電極24、第2電極26は、それぞれ隔壁22の格子に対して45度傾斜した向きに沿って設けられており、何れも矩形の発光区画20の対角線上に位置する。すなわち、格子に対して45度傾斜して斜め方向に並ぶ多数の発光区画20の中央部および相対する2つの隅部を通っている。一方、前記共通電極28は、各発光区画20において上記第1電極24および第2電極26の両側に位置し、第1電極24が通る発光区画20の隅部、第2電極26が通る発光区画20の隅部を交互に通るように、すなわち、相互に隣接する発光区画20を順次に通るように形成されている。
したがって、複数の発光区画20は、前記図2における上下方向および横方向の何れにおいても、第1電極24が中央部を通るものおよび第2電極26が中央部を通るものが交互に並んでいる。本実施例においては、第1電極24が通る発光区画20が第1発光区画群に属し、第2電極26が通る発光区画20が第2発光区画群に属する。したがって、本実施例においては、第1発光区画群に属する発光区画20が分布する範囲と、第2発光区画群に属する発光区画20が分布する範囲とは、互いに重なった状態にあり、各発光区画20は何れか一方のみに属し、双方に重複して属するものは無い。
また、図4に図3のD−D視断面を示すように、前記誘電体層32上には、第1電極24および第2電極26の真上の位置に増厚層40が設けられている。増厚層40は、例えば、上記誘電体層32と同材料から成るもので、例えば15〜30(μm)の範囲内、例えば25(μm)程度の厚さ寸法を備えている。増厚層40は、第1電極24,第2電極26の枝電極部30の長手方向に沿って設けられており、それらの上における幅寸法は、例えば、それら電極24,26の幅寸法よりもm=50(μm)程度だけ大きい値である。上記増厚層40は、第1電極24上、第2電極26上の他、隔壁22が設けられている位置にも形成されている。したがって、本実施例においては、発光区画20内における誘電体厚さ寸法(誘電体層32および増厚層40を合わせた厚さ寸法)は、第1電極24上および第2電極26上では75(μm)程度、発光区画20内の残部においては50(μm)程度である。なお、上記増厚層40は、誘電体層32を形成した後、これと同一材料を用いて別パターンで塗布形成したもので、その上に隔壁22を印刷形成する際に安定して形成できるように隔壁22の下にも形成されている。
また、上記の隔壁22は、例えば低融点ガラスに適宜白色のフィラー等を添加した材料などで構成された多孔質体であって、例えば、0.1〜1.2(mm)程度の範囲内、例えば200(μm)程度の高さ寸法と、0.1〜2(mm)程度の範囲内、例えば300(μm)程度の幅寸法とを備え、例えば0.5〜10(mm)程度の範囲内、例えば1.2(mm)程度の中心間隔で設けられている。なお、図4において42は、発光区画20の相互間すなわち隔壁22上に設けられた黒色層である。黒色層42は、例えば、前記誘電体層32や隔壁22等を構成するガラス材料に適宜の黒色顔料を添加したガラスペーストを用いて形成される。
また、前記誘電体層32の表面であって、上記隔壁22の相互間には、発光区画20毎に予め定められたパターンで塗り分けられた蛍光体層44が備えられている。図4等ではこの蛍光体層44の図示を省略した。蛍光体層44の塗布厚みは例えば20〜100(μm)の範囲内、例えば70(μm)程度である。なお、図1においては、背面板12内面のみに蛍光体層44が設けられているが、表面板14内面にも蛍光体層を形成してもよい。表面板側に設ける場合には、光の射出の妨げとならないように5〜20(μm)の範囲内の膜厚とすることが好ましい。第1発光区画群および第2発光区画群でそれぞれ表示する表示パターンは、例えば、上記蛍光体層44の塗り分けによる色相変化にて形成し、補助的に、非点灯としたい発光区画20に蛍光体層44を設けないことで黒を表現する。
このように構成される放電式2画面サイン灯10は、例えば、図5に示すように、高周波インバータ回路46等を用いて、第1電極24および第2電極26の一方に例えば700(V)、20(kHz)程度の高周波正弦波またはパルスを印加すると共に、共通電極28を0(V)(すなわちGND)として駆動される。なお、図5において、インバータ46と第1電極24,第2電極26との間には、切換器48が設けられており、インバータ46の高圧側と第1電極24、第2電極26が択一的に接続される。一方が高圧側に接続されている間は、他方はフローティングにされる。この結果、第1電極24,第2電極26の一方と、共通電極28との間に駆動電圧が印加されるので、それらの間で放電が発生させられ、それによって生じた紫外線で蛍光体層44が発光させられる。なお、駆動電流の周波数や電圧、パルスの場合のパルス幅等は、放電式2画面サイン灯10の大きさや封入ガス圧等に応じて適宜設定される。
すなわち、本実施例によれば、高電圧が印加される第1電極24および第2電極26が各々によって発光させる第1発光区画群または第2発光区画群の一方に属する発光区画20のみを通るように設けられると共に、それら第1電極24および第2電極26の間を通って蛇行する共通電極28が全ての発光区画20を通るように設けられていることから、第1発光区画群の発光区画20から発光させる際には、第2発光区画群の発光区画20には、フローティングとされた第2電極26とGNDレベルの共通電極28のみが存在する。そのため、その第2発光区画群の発光区画20内で放電が発生し、延いては漏れ発光が生ずることが好適に抑制される。
したがって、本実施例によれば、高圧側電極を第1電極24および第2電極26の2系統に分割し、インバータ46から印加される電圧を切換器48を用いて切り替えるだけの簡単な構成で、従来の1種の表示パターンのみが表示される表示面サイズで2種の表示パターンが表示できる利点がある。
しかも、本実施例においては、上記駆動方法において高電圧が印加される第1電極24,第2電極26の上に前述したように増厚層40が設けられていることから、それら第1電極24,第2電極26上の静電容量が減少させられている。そのため、消灯させる発光区画20内から漏れ発光が生じることが好適に抑制される。
図6は、図3におけるE−E視断面に対応するもので、第1電極24に高電圧が印加されることによって左側の発光区画20aが点灯させられ、第2電極26aが通る右側の発光区画20bが消灯させられる場合を示している。上記の図6において、第1電極24bと共通電極26cとの間の電位差Vは、
V=V1+V2+V3 ・・・(1)
で表される。上記(1)式において、気密空間18内の封入ガスの放電開始電圧を超えると放電が発生して電圧を打ち消すことになるので、電極24b、26c間の電圧をいくら高くしても電位差V2は一定の値になる。また、電位差V1、V3の比は、電極24b、26c上にそれぞれ備えられた誘電体による静電容量によって決定される。増厚層40が設けられると、その厚さ寸法が厚くなるほど高電圧側すなわち本実施例では第1電極24b側の静電容量が小さくなる。そのため、増厚層40が備えられていない場合に比較して第1電極24b上の電位差V1の割合が大きくなり、全体の電位差Vは一定であるから、共通電極28c上の電位差V3の割合が小さくなる。すなわち、増厚層40が備えられていない場合に比較して、共通電極26c上の壁電荷52の電位が低くなる(すなわちGND側にシフトする)。
ここで、隔壁22上に形成される上記壁電荷52と、共通電極28cの消灯発光区画20b内に位置する部分との間の電位差Vmによって、その消灯発光区画20b内で漏れ放電が発生する場合を考える。上記電位差Vmは、
m=Vm1+Vm2+Vm3 ・・・(2)
で表される。上述したように電位差V1が大きくなると共にV3が小さくなって、壁電荷52の電位がGND側にシフトしていれば、上記電位差Vmはその壁電荷の低下の程度に応じて小さくなる。この結果、消灯発光区画20b内の漏れ放電が発生し難くなる。
なお、上述した実施例においては、共通電極28をGND側に設定して駆動したが、共通電極28を高電圧側に設定して駆動することもできる。
また、前述した駆動方法では、第1電極24に高電圧を印加する際には、第2電極26をフローティングにしたが、GNDとしても駆動可能である。また、第1電極24,第2電極26に互いに位相が180度異なる正弦波を定常的に印加し、共通電極28に印加する正弦波の位相を第1電極24,第2電極26の何れかと一致させることで駆動することも可能である。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例において上述した実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
図7は、異なる形状の隔壁54によって発光区画56を区画形成した放電式2画面サイン灯の隔壁54と電極58,60,26との位置関係を説明するための前記図3に対応する図である。
図7において、隔壁54は、格子の幅寸法やピッチは前記隔壁22と同一であるが、格子の交点が発光区画56の内周側に拡大されたもので、発光区画56の各々は、隅部が面取りされることによって平面視において八角形を成すものとなっている。上記面取り部分の大きさは、斜め方向に並ぶ発光区画56,56の相互間隔Cが700(μm)となるように定められている。
また、本実施例においても、背面板12上に前記図2に示したものと同一の平面形状で電極が設けられているが、第1電極58,第2電極60は、それらの枝電極部の長手方向において太幅部分と細幅部分とを周期的に備えた形状で設けられている。すなわち、発光区画56内においては、例えば220(μm)程度の幅寸法Aで設けられ、隔壁54の格子の交点部分では、例えば120(μm)程度の幅寸法Bで設けられている。なお、共通電極28は前記図3に示したものと同一構成である。
図8に、上記図7に示される放電式2画面サイン灯に備えられている増厚層62の一つの発光区画56に対応する部分を示す。増厚層62は、このように、第1電極58および第2電極60上の部分および隔壁54下の部分に一様な厚さ寸法で設けられている。なお、前記増厚層40は平面形状の図示を省略したが、上記増厚層62において格子の交点部分の形状が異なる他は同様な形状を備えている。
図9は、前記増厚層40を有する場合と有しない場合とについて、前記隔壁22の高さ寸法を種々変更して、動作マージンを評価した結果を示す図である。なお、この評価では、増厚層40の厚さ寸法を25(μm)とした。
増厚層40が設けられない場合には、隔壁高さを400(μm)にすれば、450(V)程度の動作マージンを確保することができるが、隔壁高さが高くなるほど発光効率が低下する。そこで、隔壁高さを可及的に低くすることが効率面から望まれるが、その高さ寸法が低くなるほど、漏れ発光が生じ易くなって動作マージンが小さくなる。これは、隔壁22の頂部の凹凸で表面板14との間に隙間が形成され、その隙間に電荷が溜まり或いは紫外線の漏れ等が生じるためと考えられる。そのため、例えば、隔壁高さを200(μm)とすると、動作マージンは200(V)程度まで低下する。
これに対して、増厚層40を設けた場合には、隔壁高さが低くなるほど動作マージンが小さくなる傾向は変わらないものの、200(μm)の隔壁高さでも300(V)以上の動作マージンを確保することができた。この評価結果によれば、増厚層40を設けることによる動作マージン拡大効果が明らかである。
図10は、隔壁高さを250(μm)とした場合の増厚層厚さと漏れ開始電圧および完全点灯電圧との関係を評価した結果をまとめたものである。完全点灯電圧は、増厚層40の厚さ寸法を0〜40(μm)程度の範囲で変化させても殆ど変化が認められず、600(V)程度である。一方、漏れ開始電圧は、評価した40(μm)程度までの範囲では、増厚層40の厚さ寸法を厚くするほど高くなる傾向にある。そのため、動作マージンは、増厚層40の厚さ寸法を厚くするほど大きくなり、20(μm)程度で350(V)程度、30(μm)程度で400(V)程度の値が得られた。すなわち動作マージンに関しては、増厚層厚さの上限は認められない。
図11に、増厚層厚さと消費電力当たりの輝度すなわち発光効率との関係を評価した結果を示す。この図11に示されるように、増厚層厚みが30(μm)程度までは、発光効率が120(cd/m2/W)程度に維持されるが、それよりも厚くすると、僅かながら発光効率の低下傾向が認められた。増厚層40は前述したように隔壁22の下にも電極24,26上と同じ厚さ寸法で設けるため、これを厚くすると隔壁高さ寸法も高くなる。そのため、30(μm)を超えるような厚さ寸法では、発光効率が低下するので、動作マージンと発光効率とを両立させる観点では、増厚層厚さを30(μm)以下に留めることが好ましい。
以上、本発明を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は更に別の態様でも実施でき、その主旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得るものである。
本発明の放電式2画面サイン灯の一例の断面構造を模式的に示す図である。 図1の放電式2画面サイン灯の電極配設形状を示す図である。 発光区画を拡大して隔壁と電極との位置関係を説明する図である。 図3におけるD−D視断面を示す図である。 図1の放電式2画面サイン灯の点灯方法を説明する図である。 図3におけるE−E視断面を示す図である。 本発明の他の実施例の放電式2画面サイン灯における隔壁と電極との位置関係を説明するための図3に対応する図である。 図7の放電式2画面サイン灯に備えられている増厚層の平面形状を示す図である。 増厚層の有無および隔壁高さと動作マージンとの関係を評価した結果を示す図である。 増厚層厚さと完全点灯電圧および漏れ開始電圧さとの関係を評価した結果を示す図である。 増厚層厚さと発光効率との関係を評価した結果を示す図である。
符号の説明
10:放電式2画面サイン灯、12:背面板、14:表面板、16:側壁、18:気密空間、20:発光区画、22:隔壁、24:第1電極、26:第2電極、28:共通電極、32:誘電体層、40:増厚層、44:蛍光体層

Claims (6)

  1. 透光性を有する表面板と、その表面板との間に扁平な気密空間を形成する背面板とを備え、その気密空間内で放電させることにより発生した光を前記表面板を通して射出する形式の放電式2画面サイン灯であって、
    前記気密空間を複数の発光区画に区分するために前記背面板上に突設された隔壁と、
    前記複数の発光区画の各々に設けられた蛍光体層と、
    前記複数の発光区画の各々が重複して属することなく且つ各々に属する複数の発光区画の分布範囲が互いに重なるように定められたそれぞれ複数の発光区画から成る互いに異なる表示パターンを形成するための第1発光区画群および第2発光区画群と、
    前記複数の発光区画のうち前記第1発光区画群に属する各々を通って前記背面板内面に設けられた第1電極と、
    前記複数の発光区画のうち前記第2発光区画群に属する各々を通って前記背面板内面に前記第1電極と絶縁して設けられた第2電極と、
    前記複数の発光区画の各々を通って前記背面板内面に設けられ且つ前記第1電極および前記第2電極との間で択一的に放電するための共通電極と、
    前記複数の発光区画の各々において前記共通電極上よりも前記第1電極および前記第2電極上の方を厚い厚さ寸法で覆う誘電体層と
    を、含むことを特徴とする放電式2画面サイン灯。
  2. 前記誘電体層は、前記第1電極および前記第2電極上と前記共通電極上との厚さ寸法の差が30(μm)以下である請求項1の放電式2画面サイン灯。
  3. 前記誘電体層は、前記厚い厚さ寸法の部分が前記複数の発光区画の各々において前記第1電極および前記第2電極の端縁よりも50(μm)以上外側の範囲に亘るものである請求項1または請求項2の放電式2画面サイン灯。
  4. 前記第1電極および前記第2電極は各々櫛形を成し且つそれらの歯部において互いに嵌め合わされたものであり、前記共通電極はそれら第1電極および第2電極間を蛇行するものである請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の放電式2画面サイン灯。
  5. 前記隔壁は格子状を成すものであり、前記複数の発光区画は前記第1発光区画群に属するものと前記第2発光区画群に属するものとが互いに隣接して位置するものである請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の放電式2画面サイン灯。
  6. 前記第1電極および前記第2電極は前記複数の発光区画の各々の中央部を通るものであり、前記共通電極は前記複数の発光区画の各々の周縁部を通るものである請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の放電式2画面サイン灯。
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