JP2009229145A - ピンホールの評価方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属からなる基材の表面に形成された被覆層のピンホールを定量的に評価することができるピンホールの評価方法を提供する。
【解決手段】金属からなる基材と、この基材表面に形成された被覆層とを具える積層構造体(測定対象13)の一端をポテンショスタット/ガルバノスタット装置20に接続し、他端側を電解液BLに浸漬した状態で、測定対象13に一定の電位を印加して経時的な電流の変化を計測し、この結果に基づいてピンホールの量(面積)を求める。測定対象13は、Fe/Ni構造体が挙げられる。ニッケル(Ni)にピンホールが存在すると、ピンホールから露出した鉄(Fe)が電解液中で酸化反応を起こし、この反応に基づく電流が流れる。この電流は、ピンホールの面積と相関がある。
【選択図】図1

Description

本発明は、金属からなる基材上に設けられた被覆層に存在するピンホールを定量的に求められるピンホールの評価方法に関するものである。
従来より、金属からなる基材上に、別の金属やセラミックスといった無機材料、樹脂といった有機材料からなる被覆層を具える積層構造体が工業製品に汎用されている。例えば、鉄は、剛性、加工性、経済性などに優れることから、電子機器の筐体材料などに使用されているが、通常の環境下で腐食し易い(錆び易い)ことから、耐食性を向上するために、合金化したり上記被覆層が施されることが多い。耐食性を高めた代表的な鉄合金がステンレス鋼である。被覆層は、金、銀、クロム、ニッケルといった耐食性の高い金属によるめっきからなるものが挙げられる。その他、TiNといったセラミックスをPVD法やCVD法で形成した薄膜が挙げられる(非特許文献1,特許文献1)。
例えば、下地金属よりも貴な金属からなる被覆層にピンホールといった欠陥が存在すると、下地金属が加速的に腐食される異種金属接触腐食が起こり得る。セラミックスや有機材料は、一般に、それ自体が金属よりも耐食性に優れるものの、これらからなる被覆層にピンホールが存在すると、下地金属が腐食する。そのため、被覆層のピンホールは、できるだけ少ないことが望まれる。
上記ピンホールの評価には、従来、塩水噴霧試験(例えば、MIL-STD-202-101D)やフェロキシル試験(JIS H 8617)が汎用されている。これらの方法は、測定対象を塩水などの所定の試験液に曝した後、腐食状態を目視確認し、腐食の程度の大小でピンホールの多寡の推定を行う。或いは、SEM(Scanning Electron Microscope)といった顕微鏡を用いて、ピンホールを実際に目視することもある。
一方、特許文献1や非特許文献1は、ステンレス鋼上に被覆されたTiN膜のピンホール面積率を臨界不動態化電流密度法(動電位アノード分極法)に基づいて求めることを開示している。この方法は、H2SO4(硫酸)にKSCN(チオシアン酸カリウム)を加えた酸溶液に測定対象を浸漬し、この状態で測定対象に電位を変化させながら印加したときの電流密度を測定し、活性帯域から不動態域に移行する際の不動態化電流(ピーク電流)を用いて、ピンホールの面積を求める。
特開平6-027075号公報 「耐食性ドライコーティング膜の欠陥評価の現状」、杉本克久、材料と環境 Vol.44,No.5,pp.308-313(1995)
工業製品の品質管理をより高精度に行うためには、ピンホールを定量的に評価することが望まれる。例えば、ピンホール量の多寡により、品質の改善度合いを定量的に把握することができる。
特許文献1や非特許文献1は、ピンホールを定量的に評価する手法を開示している。しかし、本発明者らが調べたところ、この手法を、下地金属(基材)が鉄などの酸性条件下で不動化し難い金属から構成される積層構造体に適用すると、精度よく評価できない、即ち、動電位アノード分極法では、ピンホールの検出が可能なピーク電流が得られない場合がある、との知見を得た。また、これらの文献は、被覆層がセラミックスからなるものを対象としており、下地及び被覆層の双方が金属からなる積層構造体に対して、ピンホールを定量するための具体的な手法を開示していない。
一方、塩水噴霧試験などでは、定性的な評価しか行えない。また、塩水噴霧試験は、通常、測定に48時間も要するため、短時間で定量的な測定が行える方法の開発が望まれる。
顕微鏡を用いた場合は、ピンホールが微小であることから倍率が相当大きくないと観察が難しく、せいぜい局所的な評価しかできない。被覆層の状態をより正確に把握するためには、測定対象をより広い範囲に亘って評価できることが望まれる。
そこで、本発明の目的は、金属からなる基材の上に被覆層を具える積層構造体において、この被覆層に存在するピンホールを定量的に測定可能なピンホールの評価方法を提供することにある。
本発明者らが種々検討した結果、以下の知見を得た。異種金属の積層構造体において、例えば、これら金属間のイオン化傾向の差が小さい場合、その他、下地金属が不動態を生成し難い場合や下地金属が電解液中で極端に酸化反応を起こし易い場合などでは、動電位アノード分極測定を行うと、下地金属のピーク電流が得られ難く、ピンホールを定量化するための情報を十分に得ることが難しい。また、動電位アノード分極測定によりピーク電流を取得できても、取得までの間に流れる酸化電流が大きく、下地金属が大きく損傷し、引いては被覆層も損傷を受ける恐れがある。これに対し、定電位アノード分極測定を適用すると、ピンホールを定量化するための情報を精度よく測定できる。本発明は、これらの知見に基づくものである。
本発明ピンホールの評価方法は、金属からなる基材と、この基材表面に形成された被覆層とを具える積層構造体に対して、電気化学的測定により、上記被覆層のピンホールを定量的に評価する。具体的には、この評価方法は、上記積層構造体を電解液に浸漬し、この積層構造体に一定の電位を印加した状態で経時的な電流の変化を計測し、得られた計測結果に基づいて、上記被覆層に存在するピンホールの量を求める。
上記構成によれば、基材が不動態を生成し難い場合や積層構造体を構成する異種金属間のイオン化傾向の差が小さい場合などであっても、被覆層のピンホールを定量的に、かつ高精度に評価できる。また、本発明評価方法は、電気化学的な手法を利用することで、測定対象である積層構造体の広い範囲に亘ってピンホールを容易に評価できる上に、測定時間が短い。以下、本発明の構成をより詳しく説明する。
本発明評価方法は、積層構造体(測定対象)と、この構造体の被覆層のピンホールから露出した基材が酸化反応を起こし得る電解液とを用いた電気化学測定セルを作製し、電解液中の基材(金属)の酸化反応速度又は反応量を電気化学的に測定し、この測定値をピンホールの量として評価する。特に、本発明評価方法は、測定対象を電解液に浸漬した状態で測定対象に一定の電位を印加したときの経時的な電流の変化を測定する定電位アノード分極(アンペロメトリー)法を利用する。測定対象の被覆層にピンホールが存在する場合、ピンホールから基材(金属)が露出し、この露出部分が電解液中で酸化反応を起こすと、その反応速度が電流の変化として表れる。従って、電流の変化を測定し、この結果を利用する、具体的には、所定時間経過後の電流値(mA)や、所定の時間範囲における電流値の積算値(電気量(C)=反応量)を利用することで、ピンホールを定量可能である。
本発明評価方法は、動電位アノード分極測定によりピンホールの評価が行える積層構造体、代表的には、ステンレス鋼にセラミックス被覆層を具えるものに対しても利用することができるが、特に、動電位アノード分極測定によるピーク電流が現れ難い基材を具える積層構造体に利用することができる。このような基材は、例えば、鉄及び鉄合金(ステンレス鋼を除く)といった金属からなるものが挙げられる。特に、鉄は、ステンレス鋼と比較して不動態を生成し難く、酸と反応することからも、本発明方法による評価が好ましい。被覆層は、金属を含む無機材料からなるものでも、樹脂といった有機材料からなるものでもよい。
本発明評価方法は、特に、基材及び被覆層の双方が金属からなる場合であって、基材と被覆層とを構成する各金属のイオン化傾向の差が小さい積層構造体に好適に利用することができる。このような積層構造体は、例えば、基材が鉄又は鉄合金から構成され、被覆層がニッケル及びニッケル合金の1種以上の金属から構成されるNi/Fe構造体(構造体の表面側から順に記載)が挙げられる。
被覆層は、基材と異なる組成の金属無機材料(例えば、ニッケル、クロム、銀、金、及び各元素の合金)、樹脂といった有機材料、セラミックスやDLC(ダイヤモンドライクカーボン)といった非金属無機材料のいずれであっても、本発明評価方法を利用できる。通常の環境下においてクロムは、酸化反応により表面に緻密な不動態膜を形成して導電性が無くなることから、基材が鉄からなる場合、鉄よりも低い電位で連続的に酸化されることはなく、本発明評価方法を利用できる。また、被覆層は、単層でも多層でもよい。即ち、積層構造体は、二層でも、三層以上でもよい。被覆層の形成方法は、被覆層が金属からなる場合、電解めっきや無電解めっきといっためっき法の他、CVD法やPVD法といった蒸着法などが挙げられ、セラミックスやDLCなどからなる場合、CVD法やPVD法が挙げられ、樹脂からなる場合、塗布などが挙げられる。被覆層は、一般に、厚さが薄いほどピンホールといった欠陥が多くなり易いため、本発明評価方法によりピンホールを定量することは、品質管理のための情報(例えば、品質改善を行う指標となる情報)の取得などに貢献すると期待される。
電解液は、積層構造体に一定の電位を印加した状態で基材が酸化反応を起こすものを利用するとよい。例えば、基材が鉄又は鉄合金からなる場合、硫酸や塩酸といった酸の溶液が好ましい。
電解液の濃度は、特に問わないが、高濃度になると、電圧を印加することなく、自発的な反応が起こるなどして、酸化反応を制御し難くなるため、ピンホール量の適切な定量が行い難くなる。従って、電解液の濃度は、測定対象に対応した適切な濃度に調整することが好ましい。例えば、測定対象の基材が鉄又は鉄合金からなり、硫酸溶液を用いる場合、0.1〜5M程度が適切であると考えられる。
本発明評価方法は、上記電解液に測定対象を浸漬したら、測定対象に一定の電位を印加して、経時的な電流の変化を測定する。印加する電位は、ピンホールから露出した基材が酸化し、被覆層の構成材料が酸化しないような電位を適宜設定することができる。印加する電位が高過ぎると、基材の酸化反応が過剰になり、基材が損傷して測定結果に影響を及ぼす恐れがあるため、損傷が無視できると想定される大きさが好ましい。基材の酸化反応に基づく電流が測定可能な範囲で小さい方(例えば、1A/cm2以下)が好ましいと考えられる。
本発明ピンホールの評価方法は、金属からなる基材の上に被覆層を具える積層構造体に対して、上記被覆層に存在するピンホールを定量的に測定できる。
鉄からなる基材の上に、ニッケルめっき(被覆層)が施されたNi/Fe構造体を測定対象とし、電解液として酸溶液を用いてアノード分極測定により、被覆層のピンホールの定量を行う。まず、アノード分極測定の基本的な手順を説明する。
測定は、図1に示すような三電極方式の電気化学測定セル1を構成して行う。セル1は、電解液BLが注入される容器10と、電解液BLに浸漬される基準電極(RE)11及び対極(CE)12並びに測定対象(WE)13とを具え、両極11,12及び測定対象13の一端はそれぞれ、ポテンショスタット/ガルバノスタット装置20に接続される。ここでは、基準電極11にAg/AgCl、対極12にPt、装置20は市販のものを用いた。この装置20をポテンショスタットモードとし、一定の電位を印加する又は所定の掃引速度で電位を掃引して電流の変化を測定する。装置20には、入力手段、記憶手段、演算手段、比較手段、判断手段、表示手段などを具える制御装置(図示せず)を接続させており、一定の電位の印加や電位の掃引、測定結果(分極曲線)の取得などを自動的に行う。
<試験例1 動電位アノード分極測定>
図1に示すセルを用いて、鉄及びニッケルに対して動電位アノード分極測定を行った。
この試験では、鉄板(株式会社ニラコ製、FE-223512、純度99.5%)、ニッケル板(株式会社ニラコ製、NI-313511、純度99%以上)を用意し、各板は、5mm2を露出させ、その他の部分はエポキシ樹脂でマスキングしたものをそれぞれ測定対象とした。
図1の装置20をポテンショスタットモードとし、各測定対象を電解液(1Mの硫酸溶液)に浸漬したら、掃引速度:10mV/sで電位の掃引を開始し、掃引しながら電流の変化を計測する。各測定対象の測定結果(動電位アノード分極曲線)を重ね合わせたグラフを図2に示す。図2において、横軸は印加した電位(V)、縦軸は、測定時に流れた電流(mA)を示す(後述する図3,4も同様)。
図2に示すように鉄は、ニッケルに比べて低い電位で電流が流れており、酸溶液中で酸化し易く、ニッケルは、ある電位(1.5V程度)まではほとんど電流が流れておらず酸化し難いことが分かる。また、電位が1.5V未満であれば、実質的に鉄の酸化電流のみを測定でき、鉄の酸化電流は、ニッケルの影響を受け難いことが分かる。しかし、鉄の酸化電流は、経時的に増加しており、ピーク(増加から減少に変化する点)が観察され難い。つまり、動電位アノード分極測定では、鉄とニッケルとを分離可能な情報を取得できるものの、この情報(鉄の酸化電流)を用いて、ニッケルめっきのピンホールの定量を精度よく行うことは難しいと考えられる。
次に、電解液(硫酸溶液)の濃度を0.1〜5Mに変化させて、上記と同様に鉄の動電位アノード分極測定を行った。その結果を図3に示す。
図3に示すように、電解液の濃度を0.1〜5Mとすると、同じような電位領域(-0.5〜0.5V)において酸化反応に基づく電流が測定可能であることが分かる。しかし、電解液の濃度が同じであっても、ピークを観察できる場合と観察できない場合とがあり、観察されるピークもシャープな形状のものが得られ難い。このようなピーク電流値を用いても、ピンホールを適切に定量できないと考えられる。一方、高濃度の電解液(例えば、5M程度の硫酸溶液)を用いた場合、比較的シャープな鉄の酸化電流のピークを観察することができた。しかし、ピーク値を検出するまでに流れる電流が多いことから、測定対象が基材と被覆層とを具える積層構造体である場合、基材においてピンホールからの露出した部分以外の部分も電解液中で反応して基材が大きく損傷すると考えられる。また、この損傷により被覆層が剥離したり脱落する恐れがある。このような損傷だけでなく、測定結果が正確でないため、誤差が大きくなり、ピンホールを適切に定量できなくなる。これらの点からも、鉄とニッケルのようにイオン化傾向の差が小さい金属の積層構造体において、被覆層のピンホールの定量にあたり動電位アノード分極測定は好ましくないと考えられる。
次に、上記試験例1で用意した鉄板と同じ型番の鉄板について、上記と同様にして酸化電流を測定した(電解液:1M硫酸溶液)。その結果を図4に示す。
図4に示すように、測定対象の材質が同じであれば、酸化電流が流れ始める電位領域(-0.1V以下)における電流値に再現性があることが分かる。しかし、酸化電流のピーク電流値に再現性が認められない。この結果からも、鉄を基材とする積層構造体において、被覆層のピンホールの定量にあたり、動電位アノード分極測定は、高精度なピンホール評価が難しいと考えられる。
<試験例2 定電位アノード分極測定>
図1に示すセルを用いて、鉄の定電位アノード分極測定を行った。
この試験では、上記試験例1で用意した鉄板と同じ型番のものを複数用意し、各板に対してマスキング領域を異ならせて露出面積が異なるものを複数作製し、これらを測定対象とした。
図1の装置20をポテンショスタットモードとし、各測定対象を電解液に浸漬したら、一定の電位を所定時間印加して、経時的な電流の変化を計測する。ここでは、基材が著しく反応しないように、また、酸化電流値の再現性を考慮して、図2〜4に示すグラフから酸化電流の上限を10mAに設定し、この範囲を満たす濃度の電解液として、1Mの硫酸溶液を用いた。また、被覆層の構成材料であるニッケルの酸化電流による影響を受け難く、鉄の酸化電流が適切に測定できると考えられる電位(ここでは、酸化電流値の再現性が高い電位)として、図2〜4に示すグラフから-0.3Vを選択した。このように上記試験例1で行った動電位アノード分極測定は、一定の電位を設定するための予備試験として用いることができる。更に、電位印加時間が長くなると、測定対象の損傷が大きくなるため、ここでは、電位印加時間を20secとした。計測結果(定電位アノード分極曲線)を図5に示す。図5のグラフにおいて、横軸は、電位印加開始からの経過時間(sec)、縦軸は、測定時に流れた電流(mA)を示す。
なお、印加後(20sec後)に若干電流が現れているが、この電流は、20sec時点で電圧の印加を解除しているため、鉄の酸化反応以外の反応に基づくものであると考えられる。また、この試験では、印加直後から時間の経過に伴い滑らかに電流が上昇しているが、基材表面に汚染物質(酸化物など)が存在するといった表面性状の違いを反映した曲線を描くことがある。例えば、印加直後にピーク電流が現れることがある。しかし、このようなピークの出現は、一時的なものであり、数秒後以降では、図5に示すような滑らかな曲線を安定して描く。更に、このような汚染物質が少量存在しても、上述のように短時間で完全に電解・除去されるため、測定値に影響しないと考えられる。汚染物質が多いと思われる場合は、汚染物質の除去といった表面処理を測定対象に行ってから、測定を行うと、より高精度な定量が行えて好ましい。
定電位アノード分極測定では、設定した電位に対応した酸化電流が観察される。時間ごとの電流値を表1に示す。また、時間ごとの電流値を用いて、露出面積(x)と酸化電流(y)との関係線(検量線)を求めた。その結果も表1に示す。更に、10secの時点における検量線を図6に示す。
Figure 2009229145
図5に示すように、同じ時間において、露出面積が大きいほど、酸化電流が大きく、露出面積と酸化電流とは相関があることが分かる。また、表1及び図6に示すように、露出面積に対して、良好な検量線が得られており、図6に示すように露出面積と酸化電流とは、概ね比例の関係にあることが分かる。
この試験から、Ni/Fe構造体といったイオン化傾向の差が小さい異種金属の積層構造体について、定電位アノード分極測定は、被覆層のピンホールの定量に利用できると言える。特に、電流値が比較的小さい電位領域で定電位アノード分極測定を行う本例の評価方法は、ピーク電流値を利用する従来の動電位アノード分極測定に比べて再現性に優れると言える。また、電解液の濃度を0.1〜5Mの範囲で変化させても、電流値が比較的小さい電位領域で定電位アノード分極測定を行うことで、ピンホールを適切に定量できると言える。
例えば、基材の構成金属と同様の金属で構成した試料であって、上記試験例2で説明したように露出面積が異なる複数の試料を照合用測定対象とし、各対象に応じた電解液を用いて、図1に示すセルを構築し、所定の電位を印加した状態で経時的に電流を測定し、露出面積と電流値との検量線を作成する。そして、実際に積層構造体を測定対象として、上記検量線の取得時と同様の条件で定電位アノード分極測定を行い、所望の時点の電流値を検量線に照合し、その電流値に対応した露出面積をピンホールの面積として評価することで、ピンホールを定量化することができる。なお、検量線の作成に当たり、照合用測定対象のn数が多いほど、ピンホールをより高精度に定量できる。
<試験例3 実試料の測定>
図1に示すセルを用いて、鉄からなる基材の上に、ニッケルめっき(被覆層)が施されたNi/Fe構造体について、被覆層に存在するピンホール率を調べた。
この試験では、上記試験例1で用意した鉄板と同じものを用意して基材とし、この基材表面にニッケルめっきを施し、めっき厚さが異なる複数の試料No.11〜No.16を作製した。表2に各試料の基材の面積(mm2)、及びめっき時間(min)を示す。ニッケルめっきは、一般的なワット浴(無光沢)を用いた電解めっきを行った。めっき厚さは、めっき時間を異ならせることで変化させた。めっき時間が長いほど、めっき厚さが厚い。
Figure 2009229145
図1の装置20をポテンショスタットモードとし、各測定対象を電解液に浸漬したら、一定の電位(-0.3V)を印加して(電位印加時間:20sec)、経時的な電流の変化を計測する。計測結果(定電位アノード分極曲線)を図7に示す。図7のグラフにおいて、横軸は、電位印加開始からの経過時間(sec)、縦軸は、測定時に流れた面積当たりの電流(mA/cm2)を示す。図7では、試料No.15,16のグラフが横軸に重なっている(0mA/cm2)。なお、電位を-0.3Vとしたことで、上記試験例2-1で説明したようにニッケルの酸化電流がほとんど測定されない。
得られた計測結果と、図6に示す10secの時点の検量線とを用いて、ピンホール率を求めた。具体的には、図7に示すグラフにおいて、電位印加開始から10secの時点の電流値を読み取り、この電流値を図6に示す検量線に照合し、図6の検量線において、この電流値に対応した露出面積を読み取り(関係式から求め)、この露出面積をピンホールの面積として評価し、(ピンホールの面積/試料面積)×100をピンホール率(%)とした。その結果を図8に示す。また、10secの時点での各試料の電流値、ピンホールの面積を表3に示す。なお、電流値が負の値である試料No.15,16は、ピンホールなし(ピンホール率0%)と評価した。
Figure 2009229145
表3及び図8に示すように、めっき時間が長くなる、つまりめっき厚さが厚くなるに従って、ピンホール率が低減されていることが分かる。即ち、定電位アノード分極測定を行うことで、めっき品質の改善状態を定量的に評価できると言える。
このように定電位アノード分極測定を行うことで、イオン化傾向の差が小さい異種金属が積層されてなる構造体といった工業製品に対して、その表面側に配された金属からなる層(被覆層)に存在するピンホールを定量的に測定できる。そして、この結果情報を品質管理などに利用することで、商品価値の向上に寄与することができると期待される。
なお、上記方法では、ピンホール率が0.01%程度までの定量化が可能である。また、上記方法は、ピンホールの測定に要する時間は、数十秒程度である上に、広範囲に亘る測定を容易に行える。更に、ポテンショスタット/ガルバノスタット装置に接続させる制御装置として、上記検量線を記憶する記憶手段と、この記憶手段から呼び出した検量線と得られた測定結果(所定の時点における電流値)とを照合して、ピンホールの面積を求める照合手段と、得られたピンホールの面積と、予め入力された測定対象の全体面積とからピンホール率を演算する演算手段とを具えるものを利用すると、ピンホール率を自動的に求められる。上記記憶手段には、別途取得した検量線を入力しておく。
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、上記実施形態では、測定値として電流を利用したが、電流値に変えて電気量(電流×経過時間)を利用することができる。また、上記実施形態では、被覆層が一層から構成される例を説明したが、多層構造であってもよい。更に、上記実施形態では、異種金属の積層構造体を例に説明したが、被覆層は、樹脂といった有機材料、TiNといったセラミックスやDLCといった非金属無機材料からなるものでも、本発明評価方法を利用することができる。
本発明ピンホールの評価方法は、金属基材と、その表面に形成された被覆層とを具える積層構造体において、被覆層に存在するピンホールの定量に好適に利用することができる。積層構造体は、例えば、種々の電子機器筐体に利用されているNi/Fe構造体、工業用のボルト・ナットなどに使用するCr/Fe構造体、装飾用のAu/Fe構造体やAg/Fe構造体、TiNといったセラミックス膜/鉄又は鉄合金構造体などが挙げられる。
三電極方式の電気化学測定セルの概略構成図である。 鉄(Fe)及びニッケル(Ni)の動電位アノード分極曲線である。 濃度が異なる複数の電解液を用いた場合についての鉄(Fe)の動電位アノード分極曲線である。 材質が同じ測定対象(鉄)の動電位アノード分極曲線である。 露出面積が異なる測定対象(鉄)の定電位アノード分極曲線である。 10sec時点において、露出面積と電流との関係を示す検量線である。 Ni/Fe構造体の定電位アノード分極曲線である。 めっき時間とピンホール率との関係を示すグラフである。
符号の説明
1 セル 10 容器 11 基準電極 12 対極 13 測定対象
20 ポテンショスタット/ガルバノスタット装置 BL 電解液

Claims (3)

  1. 金属からなる基材と、この基材表面に形成された被覆層とを具える積層構造体を電解液に浸漬し、
    この積層構造体に一定の電位を印加した状態で経時的な電流の変化を計測し、
    得られた計測結果に基づいて、前記被覆層に存在するピンホールの量を求めることを特徴とするピンホールの評価方法。
  2. 前記基材は、鉄又は鉄合金から構成され、
    前記被覆層は、ニッケル、クロム、銀、及び金の1種以上の金属から構成され、
    前記電解液として、酸溶液を用いることを特徴とする請求項1に記載のピンホールの評価方法。
  3. 前記基材は、鉄又は鉄合金から構成され、
    前記被覆層は、有機材料、又は非金属無機材料から構成され、
    前記電解液として、酸溶液を用いることを特徴とする請求項1に記載のピンホールの評価方法。
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