JP2009225661A - 胚性幹細胞のインスリン分泌細胞への分化誘導方法、該方法により誘導されるインスリン分泌細胞およびその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】充分に機能的であり、大量供給が可能で安全なインスリン分泌細胞ならびに該細胞を用いた糖尿病治療薬、バイオ人工膵臓、研究試薬および創薬モデル動物を提供すること。
【解決手段】アクチビンを用いて未分化なES細胞から分化させた胚体内胚葉を、馴化培地を用いてニューロジェニン3発現細胞へ分化させたのちに該細胞を高グルコース培地で刺激することにより、インスリン分泌細胞へ効率的に分化誘導する方法、特には(a)線維芽細胞増殖因子およびアクチビンの存在下に胚性幹細胞を培養することにより胚体内胚葉へ分化させる工程、(b)得られた胚体内胚葉を、線維芽細胞増殖因子の存在下、馴化培地を用いて培養することにより原始膵へ分化させる工程、(c)得られた原始膵を、馴化培地を用いて培養することによりニューロジェニン3発現細胞数を増加させ、ニューロジェニン3発現細胞を得る工程、および(d)得られたニューロジェニン3発現細胞を、高グルコース濃度の無血清細胞培養用培地中で刺激してインスリン分泌細胞へ分化させる工程を含む方法、該方法により誘導されたインスリン分泌細胞、該細胞を含有する糖尿病治療薬、バイオ人工膵臓、研究試薬および創薬モデル動物。
【選択図】なし

Description

本発明は、胚性幹細胞(以下、ES細胞とも言う)のインスリン分泌細胞への分化誘導方法および該方法により誘導されるインスリン分泌細胞、ならびに糖尿病治療薬、バイオ人工膵臓、研究試薬および創薬モデル動物に関する。
2000年カナダ・エドモントンのアルバータ大学から臨床膵島移植7症例についての報告がなされた(非特許文献1参照)。後に‘エドモントン・プロトコール’と呼ばれる免疫抑制剤の斬新な使用法によって膵島移植を受けた全ての1型糖尿病症例でインスリン療法から離脱できたと言うものである。膵島移植はインスリン依存型糖尿病患者にとって現在もっとも理想に近い治療法である。膵臓は外分泌腺と内分泌腺から構成されている。膵臓全容積の98%以上を外分泌腺が占め、内分泌腺は2%以下である。1869年ランゲルハンスによって見いだされた内分泌腺組織は、光学顕微鏡像において外分泌腺組織の海の中に浮かぶように存在する島のように見えることから膵島(islet)と呼ばれる。膵島は内分泌細胞の集団であり、α細胞、β細胞、PP細胞、δ細胞などからなっている。体内のホルモンで唯一血糖を下げる作用をもつインスリンは膵島のβ細胞から分泌される。この膵島を膵臓から単離し、インスリン依存型糖尿病の患者に移植して一旦廃絶した血糖降下システムの置換再生を目指すのが膵島移植である。β細胞は膵島を構成する全細胞の80〜85%を占めている。β細胞は単にインスリンを分泌するのみではない.さらに重要なのは、血中の糖分を感知することができると言うことである。糖代謝におけるインスリン分泌調節の主体は複数の器官が関与した複雑な系に依存していない。すなわち膵島単独で運動時や摂食時などの急激に変化する血糖に対して迅速に反応し、それにみあった適量のインスリンを分泌することによって血糖を非常に狭い範囲に調節することが可能である。効果対象の感知と作用の調節が一種類の細胞単独でおこなわれ、その細胞が膵島の大部分を占めていると言う事実が膵島移植の理論的根拠となっている。
膵島単離成功の是非は、単離に用いる膵臓自体の善し悪しにかかっている。良好な膵島単離のためには外分泌腺組織の状態も良い必要がある。膵島単離を目的とした膵臓摘出には想像以上の繊細さが要求される。例えば、膵臓にさわって圧力をかけるだけでも、膵外分泌細胞はその含有酵素である蛋白分解酵素が放出されるため自己融解がはじまる。また、遠隔地で膵臓が摘出された場合、膵島単離施設までの輸送中の保存についても充分な配慮が必要となる。
インスリンの不足あるいは欠乏がその原因となっている糖尿病が膵島移植の適応となる。活性の低下の原因に基づいて糖尿病は大きく二つに分類される。一つは何らかの原因によって膵β細胞が破壊、障害されてインスリンの分泌がなくなるもの、もう一つは血中にインスリンが正常あるいは正常以上に存在するのだがインスリン抵抗性が末梢組織に存在するためインスリンの作用が低下しているものである。前者が1型糖尿病あるいは若年型糖尿病、後者が2型糖尿病と呼ばれる。膵島移植の適応は1型糖尿病である。2型糖尿病においても病期が進むと糖毒性やβ細胞の疲弊によってインスリンの不足を来すが、2型糖尿病は現在のところ膵島移植の適応とはなっていない。理由は、インスリンの分泌がある程度保たれている2型糖尿病に対してインスリンがほとんど分泌されていない1型糖尿病ではインスリン療法による血糖調節が非常に困難であること、2型糖尿病はその病態の基盤にインスリン抵抗性をもつため膵島移植の効果が懸念されるためである。2型糖尿病でも血糖の厳格な調節は予後に良好に働くが、移植膵島の不足と言う厳然たる事実があり1型糖尿病のみが膵島移植の対象となっている。将来移植膵島の供給が豊富となるような状況下では、インスリン抵抗性を契機としたインスリン非依存型糖尿病もその適応となる可能性は充分にある。
統計によると欧米では年間人口比(10万人中)12人から35人(日本では1.5人)が1型糖尿病を発症している。欧米社会において糖尿病は解決すべき大きな社会問題である。糖尿病の一次予防と、合併症の二次予防のための対策が急務であると言える。
1993年に糖尿病コントロールと合併症に関する臨床試験(Diabetes Control and Complications Trial,DCCT)によるインスリン強化療法の合併症に対する効果が発表されている(非特許文献2参照)。これは、可能な限り厳格なインスリン療法であるインスリン強化療法によって長期合併症の予防が可能かどうかとの疑問に対する臨床試験である。インスリン強化療法は従来のインスリン療法に比べて長期合併症の発症あるいは進行を39%から76%減少させ、同時に低血糖発症率を3倍に増やしたと言う結果であった。この臨床試験によって、糖尿病の長期合併症を回避するためには血糖の厳格な調節が非常に有用であり、インスリン強化療法によってある程度その目標は達成可能であることが示された。だが、このことは同時にインスリン療法では完璧な血糖調節は不可能であり、長期合併症予防にも限界があることを意味した。1型糖尿病は自己免疫の異常によって、インスリンを産生する膵β細胞が特異的に破壊されることで発症する(非特許文献3参照)。その根本的治療には、膵β細胞の再生置換療法のひとつである移植が考えられる。この方法として膵臓移植と膵島移植がある。これら二つの移植の目的は、非常に厳格な血糖調節を可能とし、低血糖さらには長期合併症の発症を回避することである。単にインスリン療法による日常の煩わしさから患者を開放し生活の質(QOL)を向上させる事だけが目的ではない。移植療法はインスリン依存性糖尿病を治癒と言う最終目標に向かわせる手段として、インスリン療法よりは遙かに潜在能力を持った治療法である。しかしながら、現行の膵島移植には大きな問題点がある。移植膵島の不足である。現在の膵島単離技術がいかに向上しようがこれを解決することは不可能である。需要と供給のバランスが違いすぎる。膵島移植が一般的移植医療とはなり得てもそのためのウエイティング・リストは膨大なものとなり、1型糖尿病患者が実際に膵島移植の恩恵を得るには数年から十数年を要すると言う事態になる。すなわち1型糖尿病患者が日常臨床で提示される治療法の選択肢として膵島移植が挙げられることはありえない。
すでに臨床膵島移植で実証された膵島細胞の有効性と移植膵島の絶対的不足と言う2つの現実を前にして、膵島あるいは膵β細胞に匹敵する機能をもつ細胞を作製することは高い社会的貢献と大きな医療経済的影響を有するものである。また、近年急速に進歩し注目を集めている幹細胞研究でも膵内分泌細胞への分化誘導の可能性が示されており(非特許文献4および5参照)、人為的膵β細胞産生に対する関心をさらに助長する要因となっている。
糖尿病の患者数は1型および2型糖尿病ともに増加しており、糖尿病に伴う失明、腎不全および心血管系病変などの重篤な合併症が多発していることからも、急増するであろう当該医療費に対する対策は、高齢化社会をむかえるにあたって、医療上および社会的な緊急課題である。現在臨床で用いられているインスリン投与療法では、たとえ厳格な監視下でも1型糖尿病の血糖コントロール、2型糖尿病の合併症の発症防止は極めて困難である。血糖を感知してそれに対する過不足ない量のインスリンを分泌する細胞を移入することで1型糖尿病を完治できると言う考えが今や世界中で一般的となった。しかしながら、膵臓移植および膵島単離に要する脳死体からの摘出膵はそれを必要とする患者数に対して圧倒的に少なく、今後解消される見込みはない。
そこで、ブタ組織や細胞を利用した研究が進む一方、人畜共通感染症、生体組織適合性や倫理的問題も浮上してきた。とくにウイルスの潜在的危険性が大きな問題となってきた。ブタの臓器や細胞が保有するブタ由来のウイルス(とりわけ、内因性ブタ特異的レトロウイルス(porcine endogenous retrovirus;PERV)は、染色体に組み込まれているために排除は不可能である)がレシピエントに感染して病気を起こす危険性、それが家族や医療スタッフに感染を広げ、さらに社会に新しいウイルス感染を広げる可能性である(非特許文献6参照)。
よって、ヒト成熟膵島β細胞にかわる細胞の供給源として、胚性幹細胞(ES細胞とも言う)や組織幹細胞からのインスリン分泌細胞の分化誘導は魅力的である。よって、これまで多くの研究者によって、当該研究に関する報告がなされている(非特許文献4、7〜12参照)。
しかしながら、非特許文献4、7〜11に記載された手法はインスリン分泌細胞への分化誘導効率が低く(3%以下である)、かつ分泌されるインスリン量も正常膵島と比較するとmg蛋白あたり1,000分の一と少ない。これは、いずれの手法も未分化なES細胞からインスリン分泌細胞を誘導するための初期分化のために、胚様体形成を最初の工程で行っているためである。胚様体形成を行うことで、分化が誘導されるが、細胞が外胚葉、内胚葉、中胚葉と全ての方向への分化してしまうため、目的とするインスリン分泌細胞は、内胚葉に属するために、他の外胚葉や中胚葉へと分化してくる細胞を淘汰することができないため、最終的な分化誘導率が低く成ってしまうと言う欠点を有する。
一方で、未分化なES細胞を胚様体を形成させることなく胚体内胚葉を形成させ、インスリン分泌細胞へ分化誘導させる手法が報告されている(「ダムール法」と言うこともある)(非特許文献12参照)。胚様体形成を行わないこの手法は、胚様体形成を行う手法と比較して効率よくインスリン分泌細胞を得ることが可能である。しかしながら、非特許文献12に記載された従来技術によるインスリン分泌細胞への分化誘導効率は3−12%とかなり低い効率である。また、該従来技術により得られたインスリン分泌細胞のインスリン分泌量が正常膵島の100分の1から500分の1と低い効率である。これは、ダムール法では処置過程において、膵臓の発生過程でβ細胞への分化を抑制(非特許文献13参照)し、膵外分泌細胞を誘導する(非特許文献14参照)と報告されている線維芽細胞増殖因子−10(FGF−10)を使用していることが要因のひとつである。
シャピロ(Shapiro AM)ら,N.Engl.J.Med.,(2000)343,p.230−238. The Diabetes Control and Complications Trial Research Group.N.Engl.J.Med.,(1993)329,p.977−986. アトキンソン(Atkinson MA)ら,N.Engl.J.Med.,(1994)331,p.1428−1436. ルメルスキー(Lumelsky N)ら,Science,(2001),May18;292(5520),p.1389−1394. アッサディ(Assady S)ら,Diabetes,(2001),50,p.1691−1697. ペイシャンス(Patience C)ら,Nat.Med.,(1997),3(3),p.282−286. ホリ(Hori Y)ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,(2002)Dec10;99(25),p.16105−16110. ラジャゴパル(Rajagopal J)ら,Science,(2003)Jan17;299(5605),p.363. シピオネ(Sipione S)ら,Diabetologia,(2004)47(3),p.499−508. ミヤザキ(Miyazaki S)ら,Diabetes.(2004)53(4),p.1030−1037. ハンソン(Hansson M)ら,Diabetes,(2004)53(10),p.2603−2609. ダムール(D’Amour K A)ら,Nat.Biotech.,published online,19 October 2006,doi: 10.1038/nbt1259. ミラレス(Miralles F)ら、Int J Dev Biol. 2006;50(1):17−26. ブシュシャン(Bhushan A)ら、Development. 2001;128(24):5109−17
本発明の目的は、充分に機能的であり、大量供給が可能で安全なインスリン分泌細胞ならびに該細胞を用いた糖尿病治療薬、バイオ人工膵臓、研究試薬および創薬モデル動物を提供することである。
前記問題点に鑑み鋭意検討した結果、アクチビンを用いて未分化なES細胞から分化させた胚体内胚葉を、馴化培地を用いてニューロジェニン3発現細胞へ分化させたのちに該ニューロジェニン3発現細胞を高グルコース培地で刺激することにより、インスリン分泌細胞へ効率的に分化誘導できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、胚性幹細胞のインスリン分泌細胞への分化誘導方法であって、(a)線維芽細胞増殖因子およびアクチビンの存在下に胚性幹細胞を培養することにより胚体内胚葉へ分化させる工程、(b)得られた胚体内胚葉を、線維芽細胞増殖因子の存在下、馴化培地を用いて培養することにより原始膵へ分化させる工程、(c)得られた原始膵を、馴化培地を用いて培養することによりニューロジェニン3(Ngn3)発現細胞数を増加させ、ニューロジェニン3発現細胞を得る工程、および(d)得られたニューロジェニン3発現細胞を、高グルコース濃度の細胞培養用培地中で刺激してインスリン分泌細胞へ分化させる工程を含む方法に関する。
線維芽細胞増殖因子は線維芽細胞増殖因子−10以外の線維芽細胞増殖因子であることが好ましい。
アクチビンはアクチビンAであることが好ましい。
アクチビンの濃度が2〜200ng/mLであることが好ましい。
工程(b)において用いられる馴化培地が、ヒト神経膠芽細胞腫由来細胞株T98Gを無血清細胞培養培地中で培養したものであることが好ましい。
工程(c)において用いられる馴化培地が、ヒト肝内皮細胞株TMNK−1または血管内皮細胞を低グルコース細胞培養培地中で培養したものであることが好ましい。
各工程における培養がそれぞれ、コラーゲンタイプIV、マトリゲル、フィブロネクチン、ジェラチン、ポリオルニチンおよびラミニンよりなる群から選ばれる生体適合性材料を用いる三次元培養であることが好ましい。
工程(a)において用いられる生体適合性材料がコラーゲンタイプIVであることが好ましく、工程(c)において用いられる生体適合性材料がラミニンであることが好ましい。
工程(a)における細胞培養濃度が1×105〜4×105細胞/mLであることが好ましく、工程(b)における細胞培養濃度が1×105〜8×105細胞/mLであることが好ましい。
工程(a)および/または(b)において、線維芽細胞増殖因子の濃度が2〜20ng/mLであることが好ましい。
工程(a)において用いられる培地が、無血清細胞培養用培地中に、ウシ胎仔血清を0.2〜3%含有し、ウシ血清アルブミンを2〜3%含有することが好ましい。
工程(b)において用いられる培地が、馴化培地中にレチノイン酸を1〜50μmol/L含有することが好ましい。
工程(c)において用いられる培地が、馴化培地中にγ−セクレターゼ阻害剤XVIIIを0.25〜2μmol/L含有し、線維芽細胞増殖因子を5〜50ng/mL含有し、上皮増殖因子を5〜50ng/mL含有することが好ましい。
工程(c)において、ニューロジェニン3発現細胞が、セルソーターを用いて選別されることが好ましい。
工程(d)において用いられる培地が、肝細胞増殖因子を2〜50ng/mL含有し、ニコチンアミドを1〜10mmol/L含有し、エクセディン−4を5〜100nmol/L含有し、トログリタゾン1〜10μmol/Lおよび硫酸亜鉛を1〜20μmol/L含有することが好ましい。
工程(d)が、ニューロジェニン3発現細胞を高グルコース濃度の細胞培養用培地、次いで低グルコース濃度の細胞培養用培地中で繰り返し刺激培養する工程からなり、高グルコース濃度の細胞培養用培地中で1回あたり2時間の刺激培養を、1日あたり1〜3回行うことを1〜10日間繰り返すことが好ましい。
工程(d)において用いられる培地が、高グルコース濃度の細胞培養培地中に脂質、アミノ酸、ビタミンおよび/またはミネラルを含有することが好ましい。
工程(d)が、ニューロジェニン3発現細胞にMafA遺伝子を導入し発現させることにより、インスリン分泌細胞のMafA遺伝子発現を増強させることを含むことが好ましい。
胚性幹細胞が哺乳類由来のものであることが好ましく、哺乳類がマウス、ヒト、サルよりなる群から選ばれることがさらに好ましく、哺乳類がマウスであることが最も好ましい。
本発明はまた、前記分化誘導方法により誘導されるインスリン分泌細胞に関する。
インスリン分泌細胞が、スフェロイドを形成しているインスリン分泌細胞を含有することが好ましい。
本発明はさらに、前記インスリン分泌細胞を含有する糖尿病治療剤に関する。
本発明はさらに、前記インスリン分泌細胞を含有するバイオ人工膵臓に関する。
本発明はさらに、前記インスリン分泌細胞を含有する研究試薬に関する。
本発明はさらに、前記インスリン分泌細胞を含有する創薬モデル動物に関する。
本発明の分化誘導方法により、健常ヒト膵臓細胞を代替するのに充分機能的であり、大量供給が可能で安全なインスリン分泌細胞を誘導することができる。また、本発明の糖尿病治療剤、バイオ人工膵臓、研究試薬および創薬モデル動物は、糖尿病に対し安全性の高い治療が実現できる。
本発明は、アクチビンを用いて未分化なES細胞から分化させた胚体内胚葉を、馴化培地を用いてニューロジェニン3発現細胞へ分化させたのちに該細胞を高グルコース培地で刺激することにより、インスリン分泌細胞へ効率的に分化誘導する方法に関する。
本発明のES細胞からインスリン分泌細胞を分化誘導する方法には、(a)線維芽細胞増殖因子およびアクチビンの存在下に胚性幹細胞を培養することにより胚体内胚葉へ分化させる工程、(b)得られた胚体内胚葉を、線維芽細胞増殖因子の存在下、馴化培地を用いて培養することにより原始膵へ分化させる工程、(c)得られた原始膵を、馴化培地を用いて培養することによりニューロジェニン3発現細胞数を増加させ、ニューロジェニン3発現細胞を得る工程、および(d)得られたニューロジェニン3発現細胞を、高グルコース濃度の細胞培養用培地中で刺激してインスリン分泌細胞へ分化させる工程を含む方法が含まれる。
ES細胞としては、哺乳類由来のものが好ましく、哺乳類としては、マウス、ヒト、サルなどが挙げられる。
ES細胞は、受精卵が成長を続ける初期の段階である胚から製造することができる。卵子と精子が1つになった受精卵は、胎児へと成長していく途中で2つ、4つ、8つ・・・と分裂を繰り返し、5、6日目には胚盤胞と呼ばれる状態になる。胚盤胞は直径0.1mmほどの球状のかたまりである内部細胞塊を抱く胞胚腔から構成される。内側の細胞塊は、いずれ内胚葉、中胚葉、外胚葉へと成長し、体のあらゆる細胞を形作っていく部分で、栄養外胚葉はそれらの胎盤を形成し、また胚を外界から隔離する袋を形成する。この内部細胞塊をほぐしたのち、細胞を取り出し、これらの細胞を増殖可能でかつ分化しない環境で培養することによりES細胞を製造することができる。したがって、ES細胞は、前記のとおり胚から製造することができる。
このようなES細胞は、マウスでは1981年にエバンスら(Evans et al., 1981, Nature 292: 154−6.)や、マーチンら(Martin GR. et al., 1981, Proc Natl Acad Sci 78: 7634−8.)によって樹立され、商品としては大日本住友製薬株式会社(大阪、日本)などから購入可能である。
このようなES細胞は、ヒトでは1998年にトムソンら(Thomson et al.,Science,1998,282:1145−7.)によって樹立され、WiCell研究施設(WiCell Research Institute、ウェブサイト:http://www.wicell.org/、マジソン、ウイスコンシン州、米国)から入手可能である。
我国においては、ヒトES細胞の研究はナショナルバイオリソースプロジェクトに指定されており、京都大学再生医科学研究所附属幹細胞医学研究センターで樹立されたヒトES細胞が、「再生医科学研究所ヒトES細胞分配規定」(平成15年11月26日施行)にしたがって、文部科学大臣の確認(承認)を得るなどの一定の条件下に入手が可能であるため、万人が実験を自由に行うことはできない状況がある。しかしながら、非特許文献12においてダムール(Kevin A D’Amour)らがヒトES細胞からインスリン分泌細胞が誘導できることを、また、成体の膵島から分離されたネスチン陽性の幹細胞をアクチビンAとHGFないしはアクチビンAとベータセルリンないしは、ニコチン酸アミドとエクセンディン−4の存在下で培養することでラットおよびヒトで同程度に種を問わずインスリン分泌細胞へ誘導できることを報告している事実を鑑みると、いずれの種由来のES細胞、特にヒト由来のES細胞を使用しても、本発明にしたがってインスリン分泌細胞へ分化誘導することができることは当業者に明らかである(Zulewski H, Abraham EJ, Gerlach MJ, Daniel PB, Moritz W, Muller B, Vallejo M, Thomas MK, Habener JF. Multipotential nestin−positive stem cells isolated from adult pancreatic islets differentiate ex vivo into pancreatic endocrine, exocrine, and hepatic phenotypes. Diabetes 2001;50(3):521−33参照)。
本発明の細胞の培養方法において用いられる培地は、細胞を増殖させることができるものであればいかなる組成のものでもよく、無機質、糖、アミノ酸、ペプチド、ビタミン、有機酸、核酸、pH調整剤、酵素等の細胞の培養に必要な成分を含有するものであればよい。
本発明において、ES細胞の分化誘導培養に用いる容器としては、分化誘導能、機能発現能、および生存能等の点から生体適合性材料を用いたスキャフォールドでコートされた培養皿を使用するのが好ましい。該スキャフォールドとしては、ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲン(コラーゲンタイプIVやコラーゲンタイプIなど)、ジェラチン、エンタクチン、ポリオルニチン、自己組織化能を有するペプチドハイドロゲル、Poly(p−N−vinylbenzyl−D−lactonamide)(PVLA)(ラクトースを側鎖にもつポリスチレン誘導体)などが挙げられる。市販品としてはマトリゲル(Matrigel、ラミニン56%、コラーゲンタイプIV31%、エンタクチン8%からなる、ベクトン ディッキンソン アンド カンパニー製)、グロースファクターリデューストマトリゲル(GFR Matrigel、ラミニン61%、コラーゲンIV30%、エンタクチン7%からなる、ベクトン ディッキンソン アンド カンパニー製)、ピュラマトリックス(PuraMatrix、アミノ酸16残基(Ac−(RADA)4−CONH2)で長さが約5nmのオリゴペプチドであるペプチドハイドロゲル、株式会社スリー・ディー・マトリックス・ジャパン製)、Poly(p−N−vinylbenzyl−D−lactonamide)(PVLA)(有限会社セラジックス製)などが挙げられる。ES細胞から胚体内胚葉への分化誘導培養する工程(工程(a))においては、コラーゲンタイプIVもしくはマトリゲルで加工した培養皿が最も好ましく、次いでフィブロネクチン、ジェラチン、ラミニン、非加工の順が好ましい。胚体内胚葉を原始膵へ分化させる工程(工程(b))においては、コラーゲンタイプIVもしくはマトリゲルで加工した培養皿が最も好ましく、次いでフィブロネクチン、ジェラチン、ラミニン、非加工の順が好ましい。原始膵からニューロジェニン3発現細胞を得る工程(工程(c))においては、ラミニンで加工した培養皿が最も好ましく、次いでマトリゲル、フィブロネクチン、コラーゲンタイプIV、ジェラチン、非加工の順が好ましい。ニューロジェニン3発現細胞からインスリン分泌細胞へ分化させる工程(工程(d))においては、マトリゲル加工培養皿が最も好ましく、ポリオルニチン(polyornitine)、フィブロネクチン、ラミニン、コラーゲンタイプIV、ジェラチン、非加工の順が好ましい。
本発明のES細胞から胚体内胚葉への分化誘導培養する工程(工程(a))において用いられる培地としては、たとえば、(1)ホルモン成長因子を添加した無血清細胞培養用培地、(2)ES分化誘導培地(DMEM F12)〔DMEM(インビトロジェン社製)と栄養素混合物ハムF−12(インビトロジェン社製)が1:1容量比の割合で混合され、4.5mg/mL濃度のグルコース、20%FBS、2mmol/L−グルタミン、25mmol/L HEPES(インビトロジェン社製)、100mg/mLペニシリン、100mg/mLストレプトマイシン(シグマ−アルドリッチ コーポレーション製)を加え、LIFを加えないもの〕、(3)霊長類ES細胞用培地((株)リプロセル製など)、(4)マウス胚性線維芽細胞用馴化培地(R&Dシステム製など)などが挙げられる。なかでもホルモン成長因子を添加した無血清細胞培養用培地が好ましく、無血清細胞培養用培地としては、RPMI1640培地(シグマ社製)、DMEM培地(インビトロジェン社製)、ハムF−12培地(インビトロジェン社製)などが挙げられ、RPMI1640培地、DMEM培地およびハムF−12培地の混合成分から構成される混合培地が好ましい。ホルモン成長因子としては、インスリン、トランスフェリン、亜セレン酸ナトリウム、エタノールアミンなどが挙げられ、インスリン、トランスフェリン、亜セレン酸ナトリウムおよびエタノールアミンを全て添加することが好ましい。市販されている好ましい培地としては、エス・クロン(S−Clone)培地(三光純薬株式会社製)が挙げられ、造血幹細胞研究用無血清基本培地エス・クロンSF−03培地(三光純薬株式会社製)を用いることが好ましい。培養時の細胞濃度は1×105〜4×105細胞/mLであることが好ましく、1.75×105細胞/mLであることが最も好ましい。培養温度は22〜37℃の範囲が好ましく、pHは7.2〜7.4の範囲が好ましい。工程(a)の培養期間は1〜7日程度である。
前記工程(a)に用いる培地には、分化誘導因子、細胞増殖因子などを加えることが好ましい。たとえば、アクチビンおよび/または線維芽細胞成長因子を加えることが好ましく、アクチビンおよび線維芽細胞成長因子の両方を加えることがとくに好ましい。アクチビンとしては、アクチビンA、アクチビンB、アクチビンAB等が挙げられ、好ましいものとしてアクチビンAが挙げられる、次いでアクチビンAB、アクチビンBである。培地に加える濃度としては、アクチビンでは2〜200ng/mL、線維芽細胞成長因子では5〜20ng/mLであることが好ましく、アクチビンでは5〜150ng/mL、線維芽細胞成長因子では10〜20ng/mLであることがさらに好ましく、アクチビンでは10〜100ng/mL、線維芽細胞成長因子では20ng/mLであることが最も好ましい。線維芽細胞増殖因子の濃度が前記範囲未満の場合、細胞が死滅する傾向があり、一方前記範囲を超える場合、中胚葉に分化する傾向がある。さらに前記培地には、ウシ胎仔血清、ヒト血清などの血清および血清アルブミンを添加することが好ましい。たとえば、0.2〜3%のウシ胎仔血清および2〜3%ウシ血清アルブミンを添加することが好ましく、0.2%のウシ胎仔血清および2.5%ウシ血清アルブミンを添加した培地で6〜24時間培養後、1%のウシ胎仔血清および2.5%ウシ血清アルブミンを添加した培地で6〜48時間培養し、次いで3%のウシ胎仔血清および2.5%ウシ血清アルブミンを添加した培地で12〜96時間培養後することがより好ましく、0.2%のウシ胎仔血清および2.5%ウシ血清アルブミンを添加した培地で12〜24時間培養後、1%のウシ胎仔血清および2.5%ウシ血清アルブミンを添加した培地で24〜48時間培養し、次いで3%のウシ胎仔血清および2.5%ウシ血清アルブミンを添加した培地で48〜96時間培養することが最も好ましい。
本発明の胚体内胚葉を原始膵へ分化させる工程(工程(b))において用いる培地としては、たとえば、ヒト細胞株を無血清細胞培養用培地で培養した馴化培地(コンディションド メディウム(CM)とも言う)が挙げられる。ヒト細胞株としては、ヒト神経膠芽細胞腫由来細胞株T98G(ATCC番号、CRL−1690)、神経外胚葉性腫瘍細胞株(human neuroectodermal tumor cell line SK−PN−DW(ATCC番号、CRL−2139)などが挙げられ、ヒトグリア芽種由来細胞株としては、たとえば、以下のものが利用可能である(いずれも、ATCC(米国)から入手可能である。ホームページは、www.atcc.org参照)。
ヒト神経芽細胞株(embryonal neuroblastoma)SK−N−DZ、ATCC番号:CRL−2149
ヒト神経芽細胞株SK−N−AS、ATCC番号:CRL−2137
ヒト神経芽細胞株SK−N−FI、ATCC番号:CRL−2142
ヒト脳由来;線維芽細胞種IMR−32、ATCC番号:CCL−127
ヒト神経芽細胞株CHP−212、ATCC番号:CRL−2273
ヒト神経芽細胞株SH−SY5Y、ATCC番号:CRL−2266
ヒト神経芽細胞株BE(2)−M17、ATCC番号:CRL−2267
ヒト神経芽細胞株BE(2)−C、ATCC番号:CRL−2268
ヒト神経芽細胞株SK−N−BE(2)、ATCC番号:CRL−2271
ヒト神経芽細胞株SK−N−SH、ATCC番号:HTB−11
また、以下の細胞株も利用可能である(Chemiconから入手可能である。ホームページは、www.chemicon.com参照)。
不死化膵間葉細胞株LT2(LT2 Immortalized Pancreatic Mesenchymal Cell Line)、カタログ番号:SCR013
原始膵間葉細胞株VIT1(VIT1 Primary Pancreatic Mesenchymal Cell Line)、カタログ番号:SCR014
なかでも、ヒト神経膠芽細胞腫由来細胞株T98G(ATCC番号、CRL−1690)をエス・クロンSF−03培地で培養した馴化培地を用いることが最も好ましい。馴化培地作製時の細胞培養濃度は5×105〜1×106細胞/mLであることが好ましく、8×105細胞/mLであることが最も好ましい。馴化培地作製時の培養温度は35〜37℃の範囲が好ましく、pHは7.2〜7.5の範囲が好ましい。培養期間は3〜5日程度である。馴化培地を使用する前にはフィルターなどで細胞を除去することが好ましい。胚体内胚葉の培養の細胞濃度は1×105〜8×105細胞/mLであることが好ましく、1.75×105細胞/mLであることが最も好ましい。培養温度は22〜37℃の範囲が好ましく、pHは7.2〜7.5の範囲が好ましい。培養期間は4〜10日程度である。
前記工程(b)に用いる培地には、たとえば、線維芽細胞成長因子および/またはレチノイン酸を加えることが好ましく、レチノイン酸および線維芽細胞成長因子の両方を加えることがとくに好ましい。培地に加える濃度としては、レチノイン酸では1〜50μmol/L、線維芽細胞成長因子では5〜20ng/mLであることが好ましく、レチノイン酸では10〜20μmol/L、線維芽細胞成長因子では10〜20ng/mLであることがさらに好ましく、レチノイン酸では10μmol/L、線維芽細胞成長因子では20ng/mLであることが最も好ましい。線維芽細胞増殖因子の濃度が前記範囲未満の場合、細胞が死滅する傾向があり、一方前記範囲を超える場合、中胚葉に分化する傾向がある。
本発明の原始膵からニューロジェニン3発現細胞を得る工程(工程(c))において用いる培地としては、ヒト細胞株を低グルコース培地で培養した馴化培地が挙げられる。ヒト細胞株としては、ヒト肝内皮細胞株、ヒト血管内皮細胞株、が挙げられ、たとえば、以下の細胞株が利用可能である(ScienCell Research Laboratoriesから入手可能である(http://www.sciencellonline.com/products/endothelial.htm参照))。
カタログ番号1000 HBMEC(ヒト脳血管内皮細胞(Human Brain Microvascular Endothelial Cells))
カタログ番号1300 HCPEC(ヒト脳脈絡叢血管内皮細胞(Human Choroid Plexus Endothelial Cells))
カタログ番号2900 HIMEC(ヒト小腸血管内皮細胞(Human Intestinal Microvascular Endothelial Cells))
カタログ番号6000 HCMEC(ヒト心臓血管内皮細胞(Human Cardiac Microvascular Endothelial Cells)
カタログ番号6100 HAEC(ヒト大動脈血管内皮細胞(Human Aortic Endothelial Cells))
カタログ番号6530 HREC(ヒト網膜血管内皮細胞(Human Retinal Endothelial Cells))
カタログ番号8000 HUVEC(ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(Human Umbilical Vein Endothelial Cells))
カタログ番号8010 HUAEC(ヒト臍帯動脈血管内皮細胞(Human Umbilical Artery Endothelial Cells))
なかでもヒト肝内皮細胞株またはヒト血管内皮細胞株を用いることが好ましく、ヒト肝内皮細胞株TMNT−1細胞(寄託機関:独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、寄託日:平成14年4月16日、受託番号:FERM BP−8017)を用いることが最も好ましい。馴化培地作製時の細胞濃度は5×105〜10×105細胞/mLであることが好ましく、8×105細胞/mLであることが最も好ましい。馴化培地作製時の培養温度は35〜37℃の範囲が好ましく、pHは7.2〜7.5の範囲が好ましい。培養期間は3〜5日程度である。馴化培地を使用する前にはフィルターなどで細胞を除去することが好ましい。
ニューロジェニン3(Ngn3)プロモーター下にeYFP(enhanced yellow fluorescence;増強黄色蛍光タンパク質)を一過性に発現するプラスミドベクターngn3−Spel−eYFP(以下の論文から当該プラスミドベクターは入手可能である。Mellitzer G, Martin M, Sidhoum−Jenny M, Orvain C, Barths J, Seymour PA, Sander M, Gradwohl G. Pancreatic islet progenitor cells in neurogenin 3−yellow fluorescent protein knock−add−on mice.Mol Endocrinol.18(11):2765−76.2004)を導入する時の細胞濃度は100×105〜500×105細胞/mLであることが好ましく、100×105〜200×105細胞/mLであることが最も好ましい。遺伝子導入時の培養温度は35〜37℃の範囲が好ましく、pHは7.2〜7.5の範囲が好ましい。導入期間は1〜5秒程度である。遺伝子導入および選別後の培養における細胞濃度は1×104〜1×105細胞/mLであることが好ましく、3×104〜8×104細胞/mLであることがさらに好ましく、5×104細胞/mLであることが最も好ましい。培養温度は35〜37℃の範囲が好ましく、pHは7.2〜7.5の範囲が好ましい。培養期間は3〜10日程度である。
前記工程(c)に用いる馴化培地には、細胞増殖因子などを加えることが細胞の分化誘導効率を考慮すると好ましい。たとえば、上皮細胞増殖因子および/または線維芽細胞成長因子を加えることが好ましく、上皮細胞増殖因子および線維芽細胞成長因子の両方を加えることがとくに好ましい。培地に加える濃度としては、上皮細胞増殖因子では5〜50ng/mL、線維芽細胞成長因子では5〜50ng/mLであることが好ましく、上皮細胞増殖因子では10〜50ng/mL、線維芽細胞成長因子では10〜50ng/mLであることがさらに好ましく、上皮細胞増殖因子では20ng/mL、線維芽細胞成長因子では20ng/mLであることが最も好ましい。線維芽細胞増殖因子の濃度が前記範囲未満の場合、細胞の増殖が減弱する傾向がある。さらに前記馴化培地には、γ−セクレターゼインヒビターXVIIIを0.25〜2μmol/L添加することが好ましく、0.5〜1.5μmol/L添加することがより好ましく、1μmol/L添加することが最も好ましい。γ−セクレターゼインヒビターXVIIIを添加せずに培養を行うと、細胞の生存率が低下する傾向がある。
本発明のニューロジェニン3発現細胞からインスリン分泌細胞へ分化させる工程(工程(d))において用いる培地としては、ヒト膵島を低グルコース培地で培養した馴化培地、RPMI1640培地、William’s E培地、CMRL1066培地(インビトロジェン社製)、低グルコースDMEM培地(インビトロジェン社製)、などが挙げられ、インスリン分泌細胞の疲弊を防ぐ点から、低グルコース培地を用いることが好ましい。インスリン分泌細胞のグルコース応答性を高める点から、低グルコース培地を用いた培養中、血清無添加の高グルコース培養培地に毎日1〜3回、それぞれ約2時間(限定されないが、1時間〜3時間が好ましく、1時間半から2時間半が更に好ましい。)刺激培養することがより好ましい。細胞培養濃度は1×105〜10×105細胞/mLであることが好ましく、5×105〜7×105細胞/mLであることが最も好ましい。培養温度は22〜37℃の範囲が好ましく、pHは7.2〜7.5の範囲が好ましい。培養期間は1〜10日である事が好ましく、5〜7日であることが最も好ましい。
前記工程(d)に用いる培地には、肝細胞増殖因子、ニコチンアミド、硫酸亜鉛、トログリタゾン(troglitazone)、エクスディン−4(exendin-4)の1種または2種以上加えることが好ましく、全種類加えることがとくに好ましい。培地に加える濃度としては、肝細胞増殖因子では2〜20ng/mL、ニコチンアミドでは1〜10mmol/L、硫酸亜鉛では1〜20μmol/L、トログリタゾンでは1〜10μmol/L、エクスディン4では5〜100nmol/Lであることが好ましく、肝細胞増殖因子では2〜10ng/mL、ニコチンアミドでは5〜10mmol/L、硫酸亜鉛では10〜20μmol/L、トログリタゾンでは5〜10μmol/L、エクスディン−4では10〜100nmol/Lであることがさらに好ましく、肝細胞増殖因子では10ng/mL、ニコチンアミドでは10mmol/L、硫酸亜鉛では16.7μmol/L、トログリタゾンでは10μmol/L、エクスディン−4では100nmol/Lであることが最も好ましい。さらに低グルコース培地には、ウシ胎仔血清、ヒト血清などの血清を添加することが好ましく、3〜5%のウシ胎仔血清を添加することが好ましい。3%のウシ胎仔血清を添加した培地で2〜4日間培養後5%のウシ胎仔血清を添加した培地で3〜5日間培養することがより好ましく、3%のウシ胎仔血清を添加した培地で3日間培養後5%のウシ胎仔血清を添加した培地で4日間培養することが最も好ましい。
工程(d)において、細胞を刺激するときに用いる高グルコース培地には、高グルコースDMEM培地などをそのまま用いることもできるが、高グルコースDMEM培地などにさらに脂質、アミノ酸、ビタミンおよび/またはミネラルを添加して用いることが好ましく、高グルコースDMEM培地に脂質、アミノ酸、ならびにビタミンおよびミネラルを添加して用いることが最も好ましい。
工程(d)において、馴化培地作製に使用するヒト膵島は、健常分離ヒト膵島を不死化し増殖した後に不死化遺伝子を除去して得ることが好ましい。健常分離ヒト膵島は、公知の方法に従ってヒト膵臓から分離することができる(Staudacher C, Ricordi C, Stella M, Socci C, Cammelli L, Ferrari G, Dicarlo V. Minerva Chir. 31: 1665−1668, 1985 または Ricordi C, Finke EH, Lacy PE., Diabetes 35: 649−653, 1986参照)。不死化ヒト膵島は、一対の部位特異的組換え配列に挟まれた不死化遺伝子をベクターにより膵島に導入することにより作製することができる。部位特異的組換え配列としては、LoxP配列やFRT配列などが挙げられ、不死化遺伝子としては、DNA型腫瘍ウイルスの腫瘍抗原(T抗原)遺伝子であるSV40T遺伝子およびヒトテロメラーゼ逆転写酵素(hTERT)遺伝子などがあげられる。不死化遺伝子導入ベクターとしては、SV40T遺伝子を含有するpYK−1ベクターが挙げられ、当該ベクター、ベクター導入方法、SV40T遺伝子の切り出し方法は当業者であれば、本願発明者の一人である小林らの手法:国際公開第2005/100546号パンフレットおよび/またはMiki A, Narushima M, Okitsu T, Takeno Y, Soto−Gutierrez A, Rivas−Carrillo JD, Navarro−Alvarez N, Chen Y, Tanaka K, Noguchi H, Matsumoto S, Kohara M,Lakey JR, Kobayashi E, Tanaka N, Kobayashi N. Maintenance of mouse, rat, and pig pancreatic islet functions by coculture with human islet−derived fibroblasts. Cell Transplant. 2006;15(4):325−34.を参照し作製することができる。
高グルコース培地とは、RPMI1640培地、DMEM培地、ハムF−12培地などの無血清細胞培養用培地中に含まれるグルコース濃度が3600mg/L〜4500mg/Lである培地を示し、低グルコース培地とは、無血清細胞培養用培地中に含まれるグルコース濃度が600mg/L〜1000mg/Lである培地を示す。好ましい高グルコース培地および低グルコース培地としては、それぞれ高グルコースDMEM培地(インビトロジェン社製)ならびにヒト膵島を低グルコース培地で培養した馴化培地および低グルコースDMEM培地(インビトロジェン社製)がそれぞれ挙げられる。
本発明の分化誘導工程それぞれで用いる線維芽細胞増殖因子(FGF)の好ましい例としては、FGF−2、FGF−5などが挙げられ、好ましくない例としては、FGF−10が挙げられる。
用語「インスリン分泌細胞」とは、インスリンを合成し、細胞外へ分泌する能力を有する細胞を意味する。
用語「胚体内胚葉」とは英語ではdefinitive endodermと言い、マウスの3.5日胚は胚盤胞と呼ばれ、外側を包む栄養外胚葉と将来体をつくる内部細胞塊に区別される。内部細胞塊はまだ未分化な状態だが、原腸形成によって内胚葉、中胚葉および外胚葉へと最初の分化を遂げる。内胚葉の分化は少々複雑で、将来胚に取り込まれる胚体内胚葉(Definitive Endoderm)と、胚体外内胚葉をつくる臓側内胚葉(Visceral Endoderm)に分けられる。興味深いことに、胚体内胚葉の一部は、中内胚葉(Mesendoderm)と呼ばれる内胚葉と中胚葉の共通の前駆細胞に由来している(http://www.cdb.riken.jp/jp/04_news/articles/pdf/051201_nishikawa_mesendoderm.pdf参照)。
を意味する。
用語「原始膵」とは英語ではprimitive pancreasと言い、肝芽の少し尾方の腹側から生じる前腸から発生する腹側膵臓芽ventral pancreatic budと、中腸の背側から発生する背側膵臓芽dorsal pancreatic budを併せたもの(http://www.ams−jusei.jp/09/amsnews_pdf/2005−10−21.pdf参照)を意味する。
本発明において、分化誘導を行なう培養工程には、平面培養と三次元培養のいずれも使用できるが、近年、スキャフォールド(足場)上で細胞を三次元培養することでより生体内環境に近い条件を作ることができ、細胞機能が向上することが知られてきており、インスリン分泌能の向上などの点から三次元培養が好ましい。
三次元培養に使用するスキャフォールドとしては、ラミニン、フィブロネクチン、コラーゲンIV、コラーゲンIなどのコラーゲン、ジェラチン、エンタクチン、ペプチドハイドロゲル、poly(p-N-vinylbenzyl-D-lactonamide)(PVLA)などが挙げられる。市販品としては、前記マトリゲル(Matrigel)、グロースファクターリデューストマトリゲル(GFR Matrigel)、ピュラマトリックス(PuraMatrix)などが挙げられる。さらに、後述する不織布などが使用できる。
本発明の方法によりES細胞より分化誘導された胚体内胚葉、原始膵、ニューロジェニン3発現細胞およびインスリン分泌細胞は、形態学的特徴の観察および/または逆転写ポリメラ−ゼ連鎖反応(RT−PCR)で確認できる。
形態学的な確認方法としては、透過電子顕微鏡検査、インスリン染色などが挙げられ、細胞に特異的な形態学的特徴を確認することが挙げられる。
また、RT−PCRにより、分化誘導された細胞の形質を遺伝子の発現から評価することもできる。分化誘導の進行を表わす指標として、工程(a)において胚体内胚葉のマーカーであるFoxa2(肝細胞核因子3β、hepatocyte nuclear factor 3,beta)、Sox17(性決定領域Y、Sex determining region Y)の遺伝子発現が認められる。工程(b)において原始膵のマーカーであるFoxa2、Sox17、Pdx−1(膵転写因子、pancreatic transcription factor)の遺伝子発現が認められる。Shh(ソニックヘッジホッグ)の遺伝子発現が認められない。
本発明に係るES細胞のインスリン分泌細胞への分化誘導方法によれば、アクチビンを用いて未分化なES細胞から分化させた胚体内胚葉を、馴化培地を用いてニューロジェニン3発現細胞へ分化させたのちに該ニューロジェニン3発現細胞を高グルコース培地で刺激することにより、高い分化誘導効率でインスリン分泌細胞を誘導でき、さらにはインスリンを効率よく分泌する細胞の製造が可能となる。本発明の分化誘導方法においては、分化誘導効率および得られる細胞のインスリン分泌能は、従来の手法である胚様体を形成する分化誘導方法と比較してそれぞれ3〜5倍以上および3〜5倍以上となることが好ましく、それぞれ約5〜10倍以上および約5〜10倍以上となることがさらに好ましい。
インスリン分泌能は、培地中に分泌された総タンパク質量(mg)に対するインスリン分泌量(ng)で算出することができ、グルコース刺激後に測定を行いインスリン分泌能を算出することによりインスリン分泌細胞の機能を評価することができる。
インスリン分泌細胞への分化誘導効率は、分化誘導方法における最終工程に用いるインスリンを分泌しない細胞数(本願発明では、分化誘導方法の工程(c)で得られ、工程(d)に用いるニューロジェニン3発現細胞数が該当する)に対するインスリン分泌細胞数で評価することができる。
本願発明の分化誘導方法によれば、40〜60%の分化誘導効率でインスリン分泌細胞を得ることが可能である。この効率は、非特許文献12に記載された分化誘導効率(3−12%、平均7.3%)と比較するとかなり高い。また、本願発明の分化誘導方法により得られたインスリン分泌細胞は、正常膵島の20分の1から50分の1のインスリン分泌能を有する。この分泌能は、該従来技術により得られたインスリン分泌細胞のインスリン分泌能(正常膵島の100分の1から500分の1)と比較するとかなり高い。
また、インスリン分泌細胞は、MafA遺伝子を発現することが好ましい。MafAはインスリンプロモーター上に結合する膵臓のβ細胞におけるインスリンの分泌に必須である転写因子である。MafAKOノックアウトマウスを作製した研究では、このマウスはランゲルハンス島の構築異常や、インスリン分泌異常を示すことから、MafAは糖代謝に非常に重要な因子であることが明らかとなった(ホームページhttp://www.md.tsukuba.ac.jp/basic−med/anatomy/embryology/Maf.html参照)。本発明の分化誘導方法により得られたインスリン分泌細胞は、MafA遺伝子を発現する能力を有する。これに対し従来技術であるダムール法で分化誘導されたインスリン分泌細胞はMafA遺伝子を発現していないことが報告されている(非特許文献12参照)。MafA遺伝子を発現する能力を有する細胞であることは、その細胞がグルコース応答性を有していること、インスリン分泌細胞として成熟していることの指標となる。
MafAはインスリン分泌細胞がみずから発現していることが好ましいが、当該細胞の成熟度を高め、グルコース応答性を高めるために、MafA遺伝子を含有するベクターを工程(d)において細胞に導入し発現させることで、MafA遺伝子発現を増強させることが好ましい態様として挙げられる。
また、本発明の分化誘導方法によれば、インスリン分泌細胞のスフェロイド形成(球形で、直径が100〜300μmである)が可能となる。
用語「スフェロイド」とは、三次元的球状細胞塊を意味する。スフェロイドを形成および/または維持することは、孤立細胞またはいびつなスフェロイドと比較して、前記スフェロイドの生理機能が生体組織により近いことを示す。
培養インスリン分泌細胞の生理機能を検査する方法としては、形態学的検査項目として下記4項目を5段階(1〜5点)評価する方法が挙げられる(文献:Matsumoto Sら、Transplantation、2002;74:1414.参照)
1.形状(shape):
「扁平(flat):1点」、「ほぼ扁平:2点」、「いびつな球状:3点」、「ほぼ球状:4点」、および「球状(spherical):5点」の5段階評価する。この中では、「球状:5点」が最も好ましい。
2.辺縁の形状(border):
「不ぞろいの(irregular):1点」、「ほぼ不ぞろいの:2点」、「やや均整のとれた:3点」、「ほぼ均整のとれた:4点」、および「均整のとれた(well-rounded):5点」の5段階評価する。この中では、「均整のとれた:5点」が最も好ましい。
3.統合性(integrity):
「断片化した(fragmented):1点」、「ほぼ断片化した:2点」、「ややソリッド/コンパクト:3点」、「ほぼソリッド/コンパクト:4点」、および「ソリッド/コンパクト(solid/compact):5点」の5段階評価する。この中では、「ソリッド/コンパクト:5点」が最も好ましい。
4.直径(diameter):
「スフェロイドの個々が100μm未満(all<100μm):1点」、「スフェロイドの個々が100〜150μm:2点」、「スフェロイドの個々が125〜175μm:3点」、「スフェロイドの個々が150〜200μm:4点」、および「スフェロイドの個々中10%以上が200μmより大きい(>10%>200μm):5点」の5段階評価する。その中では、「スフェロイドの個々中10%以上が200μmより大きい:5点」が最も好ましい。
5.染色の均一性(uniformity staining):
「均一ではない(not uniform):1点」、「ほぼ均一でない:2点」、「やや均一:3点」、「ほぼ均一:4点」および「完全に均一(perfectly uniform):5点」の5段階評価する。その中では、「完全に均一:5点」が最も好ましい。
本発明の分化誘導方法で得られるインスリン分泌細胞からなるスフェロイドは、形態学的には、形状が3点以上、辺縁の形状が3点以上、統合性が3点以上、直径が3点以上、染色の均一性が3点以上、評価値の合計が15点以上であることが好ましく、形状が4点以上、辺縁の形状が4点以上、統合性が4点以上、直径が4点以上、染色の均一性が4点以上、評価値の合計が20点以上であることがより好ましく、形状が5点、辺縁の形状が5点、統合性が5点、直径が5点、染色の均一性が5点、評価値の合計が25点であることが最も好ましい。また、本発明の培養方法で得られるインスリン分泌細胞の機能は、グルコース刺激に対してインスリン分泌が低グルコース時と比べ、高グルコース時に1.5倍以上になることが好ましく、2倍以上になることがより好ましく、5倍以上になることが最も好ましい。
上記検査項目において、形状が「扁平」とは細胞を楕円状の球体とみなした際に、長軸/短軸比が10以上であることを示し、「ほぼ扁平」とは前記長軸/短軸比が5以上10未満であることを示し、「いびつな球状」とは前記長軸/短軸比が2以上5未満であることを示し、「ほぼ球状」とは前記長軸/短軸比が1.2以上2未満であることを示し、「球状」とは前記長軸/短軸比が1.2未満であることを示す。
辺縁の形状が「不ぞろいの」とはスフェロイドの辺縁の9割以上がでこぼこしており滑らかさを欠いた辺縁であることを示し、「ほぼ不ぞろいの」とはスフェロイドの辺縁の5割以上〜9割未満が不ぞろいであることを示し、「やや均整のとれた」とはスフェロイドの辺縁の2割以上〜5割未満が不ぞろいであることを示し、「ほぼ均整のとれた」とはスフェロイドの辺縁の1割以上〜2割未満が不ぞろいであることを示し、「均整がとれた」とはスフェロイドの辺縁の1割未満が不ぞろいであることを示す。
統合性が「断片化した」とはスフェロイドの中にくびれがあるものが全体の8割以上であることを示し、「ほぼ断片化した」とはスフェロイドの中にくびれがあるものが全体の6〜8割であることを示し、「ややソリッド/コンパクト」とはスフェロイドの中にくびれがあるものが全体の4〜6割であることを示し、「ほぼソリッド/コンパクト」とはスフェロイドの中にくびれがあるものが全体の2〜4割であることを示し、「ソリッド/コンパクト」とはスフェロイドの中にくびれがあるものが全体の2割以下であることを示す。
直径について、「スフェロイドの個々が100μ未満」とはスフェロイド個々の直径が全て100μm未満であることを示し、「スフェロイドの個々が100〜150μm」とはスフェロイド個々の直径が100〜150μmの範囲であることを示し、「スフェロイドの個々が125〜175μm」とはスフェロイド個々の直径が125〜175μmの範囲であることを示し、「スフェロイドの個々が150〜200μm」とはスフェロイド個々の直径が150〜200μmの範囲であることを示し、「スフェロイドの個々中10%以上が200μmより大きい」とはスフェロイド個々中10%以上が200μmより大きいことを示す。
グルコース刺激に対するインスリン分泌(グルコース応答性インスリン分泌とも言う)とは、インスリン分泌細胞が、例えば培地中において低グルコース濃度から高グルコース濃度への変化(グルコース刺激)を感知してインスリン分泌を促進させることを言う。インスリンは、血糖を下げる方向に作用する唯一のホルモンであり、血中のグルコース濃度に応答して膵臓のランゲルハンス島(膵島)のβ細胞から分泌される。インスリン分泌細胞の機能が良好であれば、グルコース濃度の変動に応じて、適切にインスリンが分泌されるが、インスリン分泌細胞の機能が不良であれば、こうしたグルコース応答性が不良となる。インスリン分泌細胞では、細胞の機能を評価するために、高グルコース濃度時に分泌されるインスリン分泌量に対する低グルコース濃度時に分泌されるインスリン分泌量の比率(高グルコース濃度時のインスリン分泌量/低グルコース濃度時のインスリン分泌量)(stimulation index;SI)として表し比較検討されており(Bergert H, Knoch KP, Meisterfeld R, Jager M, Ouwendijk J, Kersting S, Saeger HD, Solimena M,. Effect of oxygenated perfluorocarbons on isolated rat pancreatic islets inculture.Cell Transplant. 2005;14(7):441−8 参照)、SI値が1.5以上であることが好ましく、2以上であることがより好ましく、5以上であることが最も好ましい。
高グルコース培養とは、培地中のグルコース濃度が3600mg/L〜4500mg/Lであり、低グルコース培養とは、培地中のグルコース濃度が600mg/L〜1000mg/Lである培養条件を示す。
本発明においては、アクチビンを用いて未分化なES細胞から分化させた胚体内胚葉を、馴化培地を用いてニューロジェニン3発現細胞へ分化させたのちに該細胞を高グルコース培地で刺激することにより、インスリン分泌細胞へ効率的に分化誘導を行なうことで、分化誘導効率が高く、高いインスリン分泌能を有するインスリン分泌細胞が大量に供給できる。これを糖尿病治療剤、バイオ人工膵臓、研究試薬または創薬モデル動物の細胞源とすることで万人が恩恵を受けることができる糖尿病治療剤、バイオ人工膵臓、研究試薬または創薬モデル動物の開発が大いに期待できる。
よって、本発明のもう1つの態様は、ES細胞から分化誘導させたインスリン分泌細胞を含有する糖尿病治療剤、バイオ人工膵臓、研究試薬および創薬モデル動物である。
本明細書において糖尿病治療剤とは、インスリン分泌細胞をそのまま、もしくはフィルター濾過などにより濃縮したペレットなどの細胞塊などがあげられる。さらに、前記糖尿病治療剤は、DMSOなどの保護剤を加え、凍結保存することもできる。糖尿病治療剤として、より安全に利用するために、加熱処理、放射線処理、あるいはマイトマイシンC処理など、糖尿病治療剤としての機能を残しつつ、病原体のタンパク質が変性する程度の条件下で処理をすることができる。
前記インスリン分泌細胞を用いた糖尿病治療剤のヒトへの投与形態(移植方法)としては、例えば、ヒト患者の右下腹部に小切開を置き、腸間膜の細い血管を露出して直視下にカテーテルを挿入して細胞を移植する方法、エコーにて肝臓の門脈を同定して、カテーテルを穿刺して細胞を移植する方法、または腹部エコーガイド下に脾臓を直接穿刺することにより脾臓に移植する方法(Nagata H, Ito M, Shirota C, Edge A, McCowan TC, Fox IJ: Route of hepatocyte delivery affects hepatocyte engraftment in the spleen. Transplantation, 76(4):732−4, 2003.参照)が挙げられる。なかでも、エコーにて細胞移植を行なう方法の方が、侵襲が少ないため好ましく、腹部エコーガイド下に脾臓を直接穿刺することにより脾臓や肝臓に移植する方法があり、肝臓が最も好ましい。細胞製剤の投与量(移植量)は、1×108〜1×1010細胞/個体が好ましく、5×108〜1×1010細胞/個体がさらに好ましく、1×108〜1×1010細胞/個体が最も好ましい。また、投与量(移植量)は、投与される患者の年齢、体重、症状などによって適宜変更することができる。
前記インスリン分泌細胞を用いた糖尿病治療剤のマウスへの投与形態(移植方法)としては、例えば、マウスを切開して腎皮膜下に移植する方法が挙げられる。細胞製剤の投与量(移植量)は、3×106〜1×107細胞/個体が好ましく、4×106〜8×106細胞/個体がさらに好ましく、5×106細胞/個体が最も好ましい。
本発明のバイオ人工膵臓を製造する場合、不織布などのスキャフォールドを使用することで細胞を三次元培養することが好ましい。近年、スキャフォールド上で細胞を三次元培養することでより生体内環境に近い条件を作ることができ細胞機能が向上することが知られてきており、不織布などのスキャフォールド上で細胞を培養することが機能の向上に有効である。また、インスリン分泌細胞を高分子素材で作製したデバイス中に封入して免疫系から隔離した状態で生着させることが可能なため、バイオ人工膵臓を使用する患者の身体的負担が軽減される。したがって、本発明のバイオ人工膵臓は21世紀の糖尿病治療における中心的役割を果たすものとして期待される。
バイオ人工膵臓としては、中空糸型のリアクター(デバイス)と分離・培養細胞を組み合わせたハイブリッド型の人工膵臓などが挙げられる。バイオ人工膵臓は、体外に装着して血管に接続するもの、体内に留置して血管に接続するもの、または血管に接続せずに腹腔内に留置するものの、血管に接続せず皮下に留置する4つの形態がある。本発明のインスリン分泌細胞は、いずれの形態のバイオ人工膵臓にも使用可能であるが、ES細胞は、分化誘導すると増殖能力を失うが、分化が不充分であったES細胞が遺残した場合、細胞を生体内に移植すると奇形種を発症する可能性があるため、細胞移入などに伴う危険性を回避し、任意にリアクターを取り出せると言う点から皮下埋め込み体内型であることが好ましい。
バイオ人工膵臓の開発においては、リアクターの設計・開発も重要な要素である。バイオリアクターとしては、体内に留置して使用するバッグ型人工膵臓(たとえば、Alejandro Soto−Gutierrez, Naoya Kobayashi, Jorge David Rivas−Carrillo, Nalu Navarro−Alvarez, Debaio Zhao, Teru Okitsu, Hirofumi Noguchi, Hesham Basma, Yashuhiko Tabata, Yong Chen, Kimiaki Tanaka, Michiki Narushima, Atsushi Miki, Tadayoshi Ueda, Hee−Sook Jun, Ji−Won Yoon, Jane Lebkowski, Noriaki Tanaka & Ira J Fox、「Reversal of mouse hepatic failure using an implanted liver−assist device containing ES cell?derived hepatocytes」nature biotechnology、Volume24、No.11、pp1412 − 1419(Published online: 05 November 2006 | doi:10.1038/nbt1257)参照。以下「SG文献」と言うこともある。当業者であれば、SG文献を参照することで、バッグ型人工膵臓を製造することが可能である。)、サーシ バイオメディカル社(Circe Biomedical Inc.)(レキシントン、マサチューセッツ州、米国)の支援下でシダーズサイナイ医療センター(Cedars-Sinai Medical Center)(ロサンジェルス、カリフォルニア州、米国)のディメトリュー(Demetriou)らを中心としたブタ肝細胞を用いたバイオ人工肝臓治療用のヘパトアシスト(HepatAssist)(Hui T, Rozga J, Demetriou AA. J Hepatobiliary Pancreat Surg 2001; 8: 1−15.)や、ブタ肝細胞を使用したドイツのゲルラック(Gerlach)らのMELS(モジュラー体外肝臓システム(Modular Extracorporeal Liver System))など、様々なタイプが知られている。これらのリアクターは、もちろん本発明において使用することができるが、インスリン分泌細胞が付着するための足場が無いため、細胞はただ単に、中空糸内スペースか、中空糸外スペースに充填されるのみで浮遊した状態となる傾向がある。インスリン分泌細胞は、浮遊状態では、分化機能が充分に発現されない傾向があり、さらに周りの細胞と衝突し、ストレス刺激を受けやすい。
したがって、本発明においては、インスリン分泌細胞に足場が提供できるよう、中空糸と不織布などのスキャフォールドからなるリアクターが好ましい。
中空糸膜としては、膜表面に細胞が付着して物質交換が妨げられることがなければどのようなものでも使用することができ、具体的には、従来医療用に用いられている市販の物、たとえば、ポリスルフォン膜、エチレン−酢酸ビニルランダム共重合体けん化物膜(たとえば、商品名:エバール、クラレメディカル株式会社製など)などが好ましい。市販の中空糸膜のポアサイズは、その用途から透析膜(〜5nm)、血漿成分分離膜(20〜30nm)、血漿分離膜(30〜200nm)などがある。物質の透過性の点からは、血漿分離膜(30〜200nm)が好ましい。拒絶反応の危険性を回避するため、中空糸内を流れる血液中の免疫担当細胞や免疫グロブリンが中空糸外の不織布などのスキャフォールド上に充填した細胞と直接接触することがないよう、30nm〜100nmのポアサイズが最も好ましい。
不織布としては、細胞が接着することが出来るように加工・修飾されているものが好ましい。不織布の線維としては、ポリ四フッ化エチレン(PTFE)などが挙げられる。なかでも、その加工のしやすさの点から、ポリ四フッ化エチレンにポリアミノ酸ウレタン(PAU)加工を施したものが好ましい。
本発明のバイオ人工膵臓の一実施態様を図8に示す。バイオ人工膵臓は、免疫担当細胞の透過を阻止するためのポリエチレン−ビニルアルコール膜(ポアサイズは30nm)(例えば、エバール膜)5、細胞接着のためのPAU加工したPTFE不織布6、およびインスリン分泌細胞7を注入する細胞注入口3および蓋4からなる。PTFE不織布6はポリエチレン−ビニルアルコール膜5に覆われた2層構造となっている。球状(スフェロイド)を呈しているインスリン分泌細胞7はPTFE不織布に付着して存在し、バイオ人工膵臓内部に留まることが可能である。このバイオ人工膵臓を体内に埋め込むと、ポリエチレン−ビニルアルコール膜の周囲に血管が伸びてきて、バイオ人工膵臓内の細胞の栄養供給が可能となる。PEメッシュを有しないポリエチレン−ビニルアルコール膜の外側にさらにPEメッシュ(ポアサイズは約100nm)で覆われた3層構造から構成されるリアクターも可能である。3層構造の場合、PEメッシュ内に血管が伸びてきて、バイオ人工膵臓内の細胞の栄養供給が可能となる。好ましい態様としては、図8に示す2層構造のバイオリアクターが挙げられる。2層のバイオリアクターは、PEメッシュがない分、注入されたインスリン分泌細胞とポリエチレン−ビニルアルコール膜の周囲に誘導された血管がより近くに位置するため、血糖値のコントロールが容易となるため好ましい。なお、当該人工膵臓は、「SG文献」を参照することにより当業者であれば作製することが可能である。
バイオリアクターに細胞または細胞培養物を充填させる方法としては、例えば、バイオリアクターをあらかじめ体内に埋め込んでおき、その後インスリン分泌細胞を充填させる方法、試験管内で細胞を分化誘導しES細胞をインスリン分泌細胞としたのちに、必要な細胞数をバイオリアクターに充填させる方法と、バイオリアクター内部をマトリゲルなどのスキャフォールドであらかじめ加工しておき、そのなかでインスリン分泌細胞を分化誘導する方法とがある。バイオリアクターが、バック型である場合、バック型バイオリアクターをあらかじめ体内に埋め込んでおき、バイオリアクターの周辺に血管が伸長してから、インスリン分泌細胞をバイオリアクターに充填させる方法が好ましい。いずれの場合も、細胞の充填には、細胞懸濁液を10〜50mLの注射器を使用して、リアクターに装着されている細胞注入口より注入することが好ましい。
また、このようなバイオリアクターを使用するバイオ人工臓器による治療は、体外で使用する場合は、安全かつ科学的に施行するために、1)人工臓器リアクターの流入圧と流出圧のリアルタイムでのモニタリング、2)気泡が発生した際のアラームの作動、3)リアクターの温暖化(37℃)などができる機能を一体化した装置で実施されることが好ましい。
本発明のバイオリアクターはまた、有用物質生産、組織や器官・臓器の機能の調査・探索、新薬のスクリーニングや内分泌撹乱物質等の影響を評価するための動物実験代替法等にも好適に適用できる。
本発明のバイオ人工膵臓は、例えば、膵島に本来備わっている産生成分であるインスリンの製造に使用することができる。インスリンの製造は、得られた培地をアフィニティーカラムなど、通常タンパク質の精製に使用される方法によって精製することにより行なうことができる。
本発明のバイオ人工膵臓は、例えば、国内のみならず国際的にも年々増加の一途をたどっている糖尿病患者に移植が可能である。ヒト糖尿病の予防と制圧が、21世紀における人類の大きな課題であるといっても過言ではない。そこで、多くの製薬メーカーが糖尿病薬の開発に取り組んでいる。
本発明の分化誘導方法により得られたインスリン分泌細胞を含有する研究試薬は、例えば、新薬のスクリーニングに用いる研究試薬を意味する。当該研究試薬は、どのような態様で用いてもよいが、インスリン分泌細胞を培養している培養容器にそのまま新薬などを添加し評価する方法、バイオリアクター内に当該細胞を封じ込めて評価する方法などが挙げられる。本明細書では、新薬のかわりに血糖降下薬として市販されているトルブタミドを用いて薬効評価を行うことで本願発明の分化誘導方法により得られたインスリン分泌細胞が研究試薬としても有用であることを示す。
トルブタミドとは、スルフォニル尿素系の血糖降下薬である。トルブタミドは、膵臓に働きかけインスリンの分泌を増やすことで、血糖値を低下させる作用を有する。おもに、2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)に用いられる。薬理作用は、膵臓にあるランゲルハンス島のβ細胞を刺激してインスリン分泌を促進する(膵作用)。ただし、インスリンの代わりにはならないので、インスリンがまったく分泌されない1型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)には無効である(http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se39/se3961006.html参照)。
近年、トラスジェニック(Tg)動物の作成が容易になり、種々のユニークな特性を持つ糖尿病Tg動物が誕生している。これらのTg動物の場合、系統の確立、維持、繁殖、供給は大変な作業である。モデル動物の確立には多年月と多大な労力・忍耐がかかり、近年のように時の流れが速くなる中、なかなかじっくりと取り組める課題ではなくなってきている。さらに、系統の繁殖・維持にはマンパワーと設備が必要であり、役割が終了したモデル動物の場合、消滅してしまう危険もある。また、ヒト糖尿病と糖尿病モデル動物との相違点から、開発医薬品の臨床試験段階でのドロップアウトが多いのが問題となっている。本発明のバイオ人工膵臓は、こうした問題点を解決できるため好ましい。
本明細書において創薬モデル動物とは、本発明の分化誘導方法により得られたインスリン分泌細胞を含有する動物を言う。例えば、ヒト由来のインスリン分泌細胞を有するキメラマウスが挙げられ、ヒト膵島に対する創薬および薬理試験等に用いることができる。
以下、本発明をヒト由来のES細胞を用いた実施例をあげて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
製造例1
ES細胞の調製
129vマウス由来のES細胞(大日本住友製薬株式会社より購入)を、ネオマイシン耐性遺伝子が導入されているフィーダー細胞(マウス由来の胚性線維芽細胞、大日本住友製薬株式会社より購入)を用いて、0.1%ゼラチン水(カタログ番号:R−ES−006B、大日本住友製薬株式会社より購入)でコートした培養フラスコT−75(ファルコン社製、ベクトン デッキンソン アンド カンパニー(Becton, Dickinson and Company)販売)を使用して培養した。細胞培養用培地には、ES培養液(R−ES−101:大日本住友製薬株式会社より購入):ダルベッコ改変イーグル(DMEM)培養液の混合液(1:1容量比)に15%ウシ胎仔血清(FBS)、1%非必須アミノ酸、1%ヌクレオシド、110μmol/L 2−メルカプトエタノール(大日本住友製薬株式会社より購入)、1%ペニシリンおよびストレプトマイシン、1%グルタミン酸、ならびに500U/mLマウス由来白血病抑制因子(LIF)(大日本住友製薬株式会社より購入)を添加したものを使用した。培養液は毎日交換し、ES細胞は、3日毎に継代した。培養プレート中にES細胞が占める割合が80〜90%の状態になったところで、2段階式処置にて、すなわち、まず、0.25%濃度のトリプシン−EDTA(インビトロジェン社製)を添加し、45秒間経過後、トリプシン−EDTA液を取り除くことでフィーダー細胞を一緒に除去し(ES細胞はまだこの段階では培養プレートに残っている)、ついでその2分後にES培養液を加え剥離することによって、培養プレートに残っているES細胞を回収した。
実施例1
工程(a):未分化ES細胞の胚体内胚葉への分化
製造例1で得られた未分化ES細胞は、細胞培養濃度を少なくし(細胞培養濃度:175,000細胞/mL)、コラーゲンタイプIV、マトリゲル、ラミニンタイプ1、ジェラチンのいずれかで加工した培養皿を用いてアクチビンA(Activin A、カタログ番号:338−AC、R&D社製)(0ng/mL、2ng/mL、10ng/mL、100ng/mL、または200ng/mL)、線維芽細胞成長因子(FGF−2、カタログ番号:233−FB/CF、R&D社製)(20ng/mL)、ウシ胎仔血清(FBS)、およびウシ血清アルブミン(BSA)を加えたエス・クロンSF−03培地(製品番号SS−1303、三光純薬株式会社製)で計2日間培養(培養温度:37℃、pH:7.4)を行った。2日間の培養におけるウシ胎仔血清およびウシ血清アルブミン(BSA)の濃度は次のように変化させた。すなわち0.2%FBSおよび2.5%BSAで12時間培養、1%FBSおよび2.5%BSAで12時間培養後3%FBSおよび2.5%BSAで24時間ES細胞を培養した。当該胚体内胚葉への分化判定には、Foxa2とSox17の遺伝子発現をRT−PCR法にて判定した。
試験例1
誘導された胚体内胚葉における遺伝子発現
実施例1に記載の分化誘導された胚体内胚葉において、RT−PCR法により、胚体内胚葉特異的な遺伝子であるFoxa2およびSox17遺伝子の発現を調べた。内因性コントロールとしてGAPDH遺伝子の発現も調べた。RT−PCR法では、細胞を0.25%トリプシン−EDTA(インビトロジェン社製)で処理したのちに回収し、RNAトリゾール(インビトロジェン社製)を用いて製品の取扱説明書にしたがってRNAを抽出した。抽出したRNA2μgを用いてRNA逆転写酵素による逆転写反応(22℃で10分、さらに42℃20分、99℃5分、その後4℃で5分以上静置)を行った。
得られた2μgの逆転写産物を、各プライマー20pmol/mLで、AmpliTag Goldキット(パーキン−エルマー/シータス社、ノーウォーク、コネチカット州、米国)を用い、そのプロトコールにしたがってPCR増幅に用いた。PCR反応は、95℃10分、それから各サイクルで95℃30秒、60℃30秒、72℃30秒をサイクル数だけ繰り返した。その後、4℃で5分以上静置した。各遺伝子に対するプライマーおよびPCR条件を以下に記載する。
Foxa2遺伝子(288bp、60℃、30サイクル)
5′プライマー:5′−TGGTCACTGGGGACAAGGGAA(配列番号1)
3′プライマー:5′−GCAACAACAGCAATAGAGAAC (配列番号2)
Sox17遺伝子(210bp、60℃、35サイクル)
5′プライマー:5′−GCCAAAGACGAACGCAAGCGGT(配列番号3)
3′プライマー:5′−TCATGCGCTTCACCTGCTTG(配列番号4)
当該胚体内胚葉への分化判定には、Foxa2とSox17の遺伝子発現をRT−PCR法にて判定した。レーン1から4は、それぞれ、コラーゲンタイプIV、マトリゲル、ラミニンタイプ1、ジェラチンを示す。コラーゲンタイプIVにて、胚体内胚葉特異的なマーカー遺伝子であるFoxa2およびSox17遺伝子の発現が最も強く確認される。この結果は、本手法により胚体内胚葉の分化誘導が効率よく誘導できることを強く支持している。図2にコラーゲンタイプIVにて同様に未分化マウスES細胞を培養した際のFoxa2とSox17の遺伝子発現を示す。この場合は、アクチビンAを各種濃度で添加した。レーン1から4は、それぞれ、アクチビンAの濃度が2ng/ml、10ng/ml、100ng/ml、200ng/mlである。アクチビンAの濃度が10ng/mlが最も好ましく、100ng/mlが次いで好ましく、200ng/mlが次いで好ましい。図1、2の結果は未分化マウスES細胞をコラーゲンタイプIVにて、線維芽細胞成長因子(FGF−2)(20ng/mL)、ウシ胎仔血清(FBS)、およびウシ血清アルブミン(BSA)を加えたエス・クロンSF−03培地(製品番号SS−1303、三光純薬株式会社製)で計2日間、アクチビンAの濃度が10ng/mlで培養することで、胚体内胚葉の分化誘導が効率よく誘導できることを強く支持している。従来技術であるダムール法では、工程(a)の分化誘導は100ng/mLのアクチビンAが必要であること、低濃度(30ng/mL)のアクチビンAでは分化誘導効率が低いことが記載されている(非特許文献12参照)。本願発明の分化誘導方法の工程(a)では、従来技術であるダムール法と比較して低濃度のアクチビンAでもES細胞を分化誘導しうることが明らかとなった。
実施例2
工程(b):原始膵の形成
実施例1に記載の分化誘導を2日間行った後に、工程(a)で得た胚体胚様体を用いて原始膵の形成を行った。ヒト神経膠芽細胞腫由来細胞株T98G(ATCC番号:CRL−1690、ATCC(米国)から入手可能)をSF−03培地で1日間培養(細胞培養濃度:8×105細胞/mL、培養温度:37℃、pH:7.4)して得られた馴化培地を使用して、工程(a)で得られた胚体内胚葉を5日間培養(培養温度:37℃、pH:7.4)した。上記馴化培地には、レチノイン酸(1μmol/L、10μmol/L、100μmol/Lまたは1000μmol/L)およびFGF−2(20ng/mL)を添加し、コラーゲンタイプIV加工培養皿T−25フラスコ(細胞培養濃度175,000細胞/mL、計700,000細胞)を使用した。工程(b)で得た細胞には、Foxa2(+)、Sox17(+)、Pdx−1(+)、Shh(−)の遺伝子発現を示しており、ES細胞が原始膵への形成を開始していることが確認された。
試験例2
誘導された原始膵における遺伝子発現
実施例2に記載の誘導された原始膵において、RT−PCR法により、原始膵特異的な遺伝子であるPdx−1遺伝子とShh遺伝子の発現を調べた。内因性コントロールとしてGAPDH遺伝子の発現も調べた。また、胚発生の時期に特異的に発現する遺伝子であるShh遺伝子の発現も調べた。RT−PCR法では、細胞を0.25%トリプシン−EDTA(インビトロジェン社製)で処理したのちに回収し、RNAトリゾール(インビトロジェン社製)を用いて製品の取扱説明書にしたがってRNAを抽出した。抽出したRNA2μgを用いてRNA逆転写酵素による逆転写反応(22℃で10分、さらに42℃20分、99℃5分、その後4℃で5分以上静置)を行った。
得られた2μgの逆転写産物を、各プライマー20pmol/mLで、AmpliTag Goldキット(パーキン−エルマー/シータス社、ノーウォーク、コネチカット州、米国)を用い、そのプロトコールにしたがってPCR増幅に用いた。PCR反応は、95℃10分、それから各サイクルで95℃30秒、60℃30秒、72℃30秒をサイクル数だけ繰り返した。その後、4℃で5分以上静置した。各遺伝子に対するプライマーおよびPCR条件を以下に記載する。
Pdx−1遺伝子(451bp、60℃、40サイクル)
5′プライマー:5′−ACCATGAACAGTGAGGAGCA(配列番号5)
3′プライマー:5′−TCCTCTTGTTTTCCTCGGGT(配列番号6)
Shh遺伝子(248bp、60℃、35サイクル)
5′プライマー:5′−CCTCTCCTGCTATGCTCCTG(配列番号7)
3′プライマー:5′−GTGGCGGTTACAAAGCAAAT(配列番号8)
GAPDH遺伝子(171bp、60℃、35サイクル)
5′プライマー:5′−ACCCAGAAGACTGTGGATGG(配列番号9)
3′プライマー:5′−CACATTGGGGGTAGGAACAC(配列番号10)
結果を図3に示す。レーン 1〜4は、それぞれレチノイン酸濃度が1μM 、10μM、100μM、1000μMを示す。10μMのレチノイン酸では、原始膵においては、原始膵特異的なマーカー遺伝子であるPdx−1遺伝子の発現が強く確認されるが、Shhは発現していなかった。この結果は、本手法により原始膵の分化誘導が効率よく誘導できることを強く支持している。
実施例3
工程(c)ニューロジェニン3発現細胞の選別
工程(b)で得られた原始膵を馴化培地を用いて培養することによりニューロジェニン3発現細胞を増加させた。ヒト肝内皮細胞株TMNT−1細胞(寄託機関:独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、寄託日:平成14年4月16日、受託番号:FERM BP−8017、万人が使用できる)を低グルコースDMEM培地(グルコース濃度:1000mg/L、カタログ番号31600−083、インビトロジェン社製)で1日間培養(細胞培養濃度:8×105細胞/mL、培養温度:37℃、pH:7.4)して得られた馴化培地にγ−セクレターゼインヒビターXVIII(Calbiochem社(カタログ番号565779)、またはAlexis Biochemicals社(カタログ番号:ALX−270−415−C250、またはALX−270−415−M001)から購入可能)、FGF−2(20ng/mL)、EGF(20ng/mL)を添加したものを使用して、ラミニン−1(濃度は5μg/cm2)(BD Biosciences社、カタログ番号:354232)で加工した培養皿T−25フラスコ(細胞培養濃度50,000細胞/mL、計200,000細胞)でニューロジェニン3発現細胞を4日間培養(培養温度:37℃、pH:7.4)して誘導した。ニューロジェニン3発現細胞の選別には、ニューロジェニン3遺伝子のプロモーターの下流に増強黄色蛍光タンパク質(eYFP)をコードしている遺伝子を導入しeYFP発現細胞を指標としてセルソーター(MoFlo)を用いて選別した。eYFP遺伝子の導入には、Ngn3プロモーター下にeYFP(enhanced yellow fluorescence;増強黄色蛍光タンパク質)を発現するプラスミドベクター:ngn3−Spel−eYFP(以下の論文から当該プラスミドベクターは入手可能である。Mellitzer G, Martin M, Sidhoum−Jenny M, Orvain C, Barths J, Seymour PA, Sander M, Gradwohl G. Pancreatic islet progenitor cells in neurogenin 3−yellow fluorescent protein knock−add−on mice.Mol Endocrinol.18(11):2765−76.2004)を用いた。その後、一過性にngn3−Spel−eYFPをNucelofector(Amaxa社、取り扱い規約に則れば万人が使用可能である)を使用して導入した。ベクター:ngn3−Spel−eYFP(Mellitzer Gら、Mol.Endocrinol.(2004)Nov;18(11):2765−76参照。Mellitzerからベクターを万人が提供を受けることができる。)をヌクレオフェクター(Amaxa社製、操作方法は以下のホームページを参照 http://www.wako−chem.co.jp/siyaku/info/gene/article/amaxa/pdf/Manual.pdf)を用いて遺伝子導入(細胞培養濃度:5×105細胞/mL、培養温度:37℃、pH:7.4)した。48時間後に、当該細胞を、セルソーターMoFloを使用してeYFPの発現を検討したところ、原始膵の3分の1がeYFPを発現していた。eYFP発現細胞(ニューロジェニン発現細胞)をMoFloを使用して回収した。そして、Ngn3発現細胞をMoFlo(Dako−Cytomation社、取り扱い規約に則れば万人が使用可能である)を使用して回収した。
製造例2
RCNK−1細胞株の樹立
カナダのアルバータ大学から提供された健常分離ヒト膵島(カナダ、アルバータ大学、ヒト膵島移植プログラム、ジョナサン レイキー(Jonathan RT. Lakey)博士より、万人が入手可能である)から、球形のきれいな形態を呈しているものを実体顕微鏡(STEMI、Carl Zeiss社、ドイツ)下にhand pickup法にて10個選別し、これをT25培養フラスコに播いた。培養液は、CMRL1066、インビトロジェン社製)に10%ウシ胎仔血清(FCS、シグマ社)、10-7mol/lインスリン(シグマ社)、10-6mol/lデキサメタゾン(シグマ社)、25μg/ml上皮成長因子(EGF、シグマ社)、10mMニコチンアミド(シグマ社)、抗生物質のペニシリンG/ストレプトマイシン(シグマ社)の組成のものを基本培養液として用いた。当該膵島を、ヌクレオフェクターシステム用緩衝液(NucleofectorTM Solution、和光純薬工業株式会社製)1mlで希釈し、そこにpYK−1のプラスミドDNA(国際公開第2005/100546号パンフレットを参照)のTE緩衝液(TE buffer、シグマ社製)の懸濁液(1μg/μl)2μlを添加して、ヌクレオフェクターシステム(NucleofectorTM system、和光純薬工業株式会社製)により、該システムのプロトコールにしたがって遺伝子導入した。得られた細胞をT−25フラスコに播種し、CS−C無血清培地(CS−SF−4Z0−500、大日本製薬株式会社販売)にて培養を継続した。遺伝導入して48時間後に、100μg/mlのハイグロマイシン含有CS−C無血清培地にて、耐性クローンの選択を行なった。選択開始から2週間後に耐性クローンの出現を認め、4週間後にクローニングリングを使用し、RCNK−1細胞株を樹立した。
実施例4
工程(d)インスリン分泌細胞への分化
(DMEM培地を用いる方法)
工程(c)で得られたニューロジェニン3発現細胞を、3%または5%のウシ胎仔血清(3%ウシ胎仔血清にて3日間、ついで5%ウシ胎仔血清にて4日間培養)、肝細胞増殖因子10ng/mL、ニコチンアミド10mmol/L、エクスディン−4 100nmol/L、トログリタゾン10μmol/L、硫酸亜鉛16.7μmol/Lを加えた低グルコースDMEM培地を用いて7日間培養(培養温度:37℃、pH:7.4)した。培養皿としては、マトリゲルで加工した6−well−plateを使用した。工程(d)においては、毎日、血清非添加の高グルコースDMEM培地(グルコース濃度:4500mg/L、カタログ番号:12800−082、インビトロジェン社製)にて2時間培養(培養温度:37℃、pH:7.4)した後、前記低グルコースDMEM培地で22時間の培養を7日間継続した。なお、高グルコース培地にも肝細胞増殖因子10ng/mL、ニコチンアミド10mmol/L、エクスディン−4 100nmol/L、トログリタゾン10μmol/L、硫酸亜鉛16.7μmol/Lを加えた。
(RCNK−1馴化培地を用いる方法)
工程(c)で得られたニューロジェニン3発現細胞を、低グルコースRCNK−1馴化培地を用いてインスリン分泌細胞へ分化誘導を行った。RCNK−1細胞を低グルコースDMEM+10%FBSで培養し、フラスコに一杯になった時点で核内限局信号(NLS)標識されたCre組換え酵素を産生する複製不可能な組換えアデノベクターAxCANCre(3×108pfu/ml)(理研ジーンバンクより入手可能、RDB No.1748)をMOI(感染多重度)=10〜50(15が好ましい)で2〜4時間(3時間が好ましい)感染させ、RCNK−1細胞をCre/loxPシステムで不死化遺伝子のSV40Tを取り除いた(培養温度:35〜37度)。感染後は、RCNK−1細胞を低グルコースDMEM+5%FBSで2日間(48時間)培養して、その後、低グルコースDMEMのみで培養した。24時間培養した後に、当該低グルコースRCNK−1馴化培地を回収した。なお当該操作は、無血清であるため細胞が弱るまで4回から5回可能である。当該低グルコースRCNK−1馴化培地に3%または5%のウシ胎仔血清(3%ウシ胎仔血清にて3日間、ついで5%ウシ胎仔血清にて4日間培養)、肝細胞増殖因子10ng/mL、ニコチンアミド10mmol/L、エクスディン−4 100nmol/L、トログリタゾン10μmol/L、硫酸亜鉛16.7μmol/Lを加えた培地を用いて7日間培養(培養温度:37℃、pH:7.4)した。低グルコースRCNK−1馴化培地は、培養皿としては、マトリゲルで加工した6−well−plateを使用した。工程(d)においては、毎日、血清非添加の高グルコース濃度に調製したKRBB培地(Krebs Ringer Balanced Buffered(KRBB)(143mM Na, 5.8mM K, 2.5mM Ca, 1.2mM Mg2, 124.1mM Cl, 1.2mM PO−4, 1.2mM SO−4, 25mM HCO−3, 10mM HEPES, 0.2% BSAを含む、以下の論文に詳細に書いてある。Srivastava S, Goren HJ.Insulin constitutively secreted by beta−cells is necessary for glucose−stimulated insulin secretion.Diabetes. 2003 ;52(8):2049−56.参照))に肝細胞増殖因子10ng/mL、ニコチンアミド10mmol/L、エクスディン−4 100nmol/L、トログリタゾン10μmol/L、硫酸亜鉛16.7μmol/Lを加えた培地で2時間培養(培養温度:37℃、pH:7.4)した後、前記RCNK−1馴化培地で22時間の培養を7日間継続した。
実施例5
インスリン分泌細胞のMafA遺伝子発現
本発明の分化誘導方法により得られたインスリン分泌細胞(工程(d)の培養7日目)を位相差顕微鏡下にて観察した(図4(a)参照)。核1はドット状に赤く染まっており、直径が約200μmの球状を呈しているインスリン分泌細胞群全体2は緑に染まっていることからMafA遺伝子の発現が確認できた。MafA遺伝子の発現は、MafA抗体を用いて行った(MafA抗体(BL1069、カタログ番号:A300−611A、BETHYL LABORATORIES,INC.社製。使用方法に関しては、製品に添付の取扱説明書を参照)。なお、添付の写真は白黒2階調に変換したものであるので、染色された色は表現されていない。本発明の分化誘導方法により得られたインスリン分泌細胞は、MafA遺伝子を発現する能力を有するのに対し、従来技術であるダムール法で分化誘導されたインスリン分泌細胞はMafA遺伝子を発現していないことが報告されている(非特許文献12参照)。この結果からも、本願発明の分化誘導方法は従来技術と比較して優れていることが明らかとなった。本願発明が優れている要因としては、ダムール法ではFGF−10を使用しているのに対し、本願発明では工程(c)においてEGFおよびFGF−2を使用した点が考えられる。FGF−10は、膵臓の発生過程でβ細胞への分化を抑制(非特許文献13参照)し、膵外分泌細胞を誘導する(非特許文献14参照)ことが報告されている。一方、EGFとFGF−2が膵臓の発生過程でβ細胞への分化を促進する(Cras−Meneur C, Elghazi L, Czernichow P, Scharfmann R. Epidermal growth factor increases undifferentiated pancreatic embryonic cells in vitro: a balance between proliferation and differentiation. Diabetes. 2001 Jul;50(7):1571−9)ことが報告されている。
実施例6
インスリン分泌細胞のインスリン分泌能の確認および形態学的検討
本願発明の分化誘導方法により得られたインスリン分泌細胞の形態を位相差顕微鏡下にて観察した(図4(b)参照)。なお、核1は赤く染まっており、分化誘導4、7日目においては直径が約200μmの球状を呈しているインスリン分泌細胞群全体2はインスリン分泌を示す緑に染まっている。インスリンの検出は抗インスリン抗体を用いて行った(Sta. Cruz sc−9168,使用方法は製品に添付させている取り扱い説明書を参照)。インスリン分泌細胞は培養日数の増加に伴い緑色を呈していることが確認された。なお、添付の写真は白黒2階調に変換したものであるので、染色された色は表現されていない。図4の写真右下のスケールバーは共に200μmを示す。インスリン分泌細胞は培養日数と共に球状の形態を形成してきている。
分化誘導2日目の細胞の形態学検討
1.形状が「いびつな球状:3点」、2.辺縁の形状が「やや均整のとれた:3点」、3.統合性が「断片化した(fragmented):1点」、4.直径が「培養膵島の個々が125〜175μm:3点」、5.染色の均一性が「やや均一:3点」評価値の合計が13点であった(図4参照)。
分化誘導4日目の細胞の形態学検討
1.形状が「球状:5点」、2.辺縁の形状が「やや均整のとれた:3点」、3.統合性が「ややソリッド/コンパクト:3点」、4.直径が「培養膵島の個々中10%以上が200μmより大きい:5点」、5.染色の均一性が「やや均一:3点」評価値の合計が19点であった(図4参照)。
分化誘導7日目の細胞の形態学検討
1.形状が「球状:5点」、2.辺縁の形状が「均整のとれた:5点」、3.統合性が「ソリッド/コンパクト:5点」、4.直径が「培養膵島の個々中10%以上が200μmより大きい:5点」、5.染色の均一性が「完全に均一:5点」評価値の合計が25点であった(図4参照)。一方、ダムール法により得られたインスリン分泌細胞は球状にはなっていなかった。
ダムール法による細胞の形態学的検討
1.形状が「扁平:1点」、2.辺縁の形状が「不ぞろいの:1点」、3.統合性が「断片化した:1点」、4.直径が「培養膵島の全体が100μm未満:1点」、5.染色の均一性が「やや均一:3点」評価値の合計が7点であった(非特許文献12参照)。
形態学的検討結果より、本発明の分化誘導方法により得られたインスリン分泌細胞は従来技術(ダムール法)より優れていることが明らかとなった。
実施例7
本発明の手法により得られたインスリン分泌細胞の機能評価
1)インスリン分泌
実施例4のDMEM培地を用いた培養により得られたインスリン分泌細胞または実施例4のRCNK−1馴化培地を用いた培養により得られたインスリン分泌細胞を、それぞれDMEM(図5(a)および表1(a)参照)またはKRBB(図5(b)および表1(b)参照)に、3.3mM濃度(低グルコース)ないしは25mM濃度(高グルコース)のグルコースを添加して、各2時間培養(培養温度:37℃、pH:7.4)して、培地中のインスリン分泌量を測定し(Ultrasensitive insulin kit、Mercodia Ultrasensitive Mouse Insulin ELISA、製品番号:10−1150−01、Mercodia社製)従来技術(ダムール法、およびシュローダー法(シュローダーら、nature protocols vol.1, no.2, p.495−507, 2006))との比較を行った(図5、表1(a)および表1(b)参照)。すなわち、低グルコースにて2時間刺激後高グルコースにて2時間刺激(「グルコース刺激:低→高」と略す)した後の培地中のインスリン分泌量を測定、または低グルコースにて2時間刺激後高グルコースにて2時間刺激後再度低グルコースにて2時間刺激(「グルコース刺激:低→高→低」と略す)した後の培地中のインスリン分泌量を測定した。その結果、本願発明の分化誘導方法により得られたインスリン分泌細胞は、低グルコースDMEMで2日、4日、7日、と培養日数が増加するごとに、「グルコース刺激:低→高」した際のインスリン分泌量が増加しており(それぞれ、図5の横軸の1、3、5を参照。)、一方で「グルコース刺激:低→高→低」した際のインスリン分泌量は減少しており(それぞれ、図5の横軸の2、4、6を参照)、インスリン分泌細胞がグルコース応答性を有することが明らかとなった。なお比較として、従来技術であるシュローダー法によるインスリン分泌細胞を「グルコース刺激:低→高」した後の培地中のインスリン分泌量(図5の横軸の7を参照)、ダムール法によるインスリン分泌細胞を「グルコース刺激:低→高→低」した後の培地中のインスリン分泌量(図5の横軸の8を参照)、ダムール法によるインスリン分泌細胞を「グルコース刺激:低→高」した後の培地中のインスリン分泌量(図5の横軸の9を参照)、ダムール法によるインスリン分泌細胞を「グルコース刺激:低→高→低」した後の培地中のインスリン分泌量(図5の横軸の10を参照)を測定した。その結果、本発明の分化誘導方法により得られたインスリン分泌細胞は、従来技術によるインスリン分泌細胞と比較して優れたインスリン分泌能を有し、グルコース応答性も優れていることが明らかとなった。
実施例8
本発明の手法により得られたインスリン分泌細胞の機能評価
2)トルブタミドによる刺激
実施例4により得られたインスリン分泌細胞を、低グルコース濃度のKRBBを培地として用いてインスリン分泌量を測定(図6(a)および表2参照)後、培地を低グルコース濃度のKRBBに10micromol/Lトルブタミド(シグマ社製)で1時間刺激した際の培地中のインスリン分泌量を測定(図6(b)および表2参照)した。その結果、本願発明の分化誘導方法により得られたインスリン分泌細胞は従来技術と比較して高いインスリン分泌能を示した。
実施例9
本発明の手法により得られたインスリン分泌細胞の機能評価
3)糖尿病マウスへの移植実験
重症免疫不全(SCID(severe combined immunodeficiency))マウス(体重20g、日本クレア株式会社)にストレプトゾトシン(220mg/kg)を腹腔内に投与し、一週後に血糖値が360mg/dL以上に2日続けてなった際に、糖尿病と判断した。当該糖尿病マウスを移植実験に使用した。本願発明の分化誘導方法にて得られたインスリン分泌細胞(5×106細胞)、未分化なマウスES細胞(5×106細胞)、および正常マウス膵島450個を移植細胞として用いた。それぞれ5匹の糖尿病マウスに細胞移植を行った。なお、正常な健常マウス(3匹)および移植しない糖尿病マウスをコントロールとして使用した。マウスの左腎皮膜下に移植した後の血糖値の平均を図7および表3に示す。移植後の最初の5日間は中間型ヒトインスリンNPH(Novo Nordisk社製)を2単位皮下注射し、その後の5日間は中間型ヒトインスリンNPH(Novo Nordisk社製)を1単位皮下注射した場合の移植後の血糖値の平均を図7に示す。その後、3日おきに血糖値を測定し、移植後3週目以降は一週間に一回の割合で血糖値をPortable glucose meter FreeStlyle TM(TheraSence社製)を使用して測定した。マウスES細胞を移植したマウスでは、NPH投与を終えた後に血糖値が再度360mg/dL以上になり、治療効果がないことが明らかとなった。これとは対照的に、本願発明の分化誘導方法により得られたインスリン分泌細胞を移植したマウスは、健常マウス膵島を移植したマウスと同様にグルコース濃度が100mg/dL程度を維持することができた。これは、当該インスリン分泌細胞の機能が健常マウス膵島と同程度であり、治療効果があることを示す。なお、治療を行わない糖尿病マウス全て(非治療群)およびES細胞を移植したマウス全ては10週間以内に高血糖により死亡した。
実施例10
本発明の手法により得られたインスリン分泌細胞の機能評価
4)バイオ人工膵臓を用いた糖尿病マウスの治療実験
バイオ人工膵臓を移植する糖尿病マウス(実施例9記載の方法で作製)を切開し、マウス皮下にバッグ型のバイオリアクター(図8参照。SG文献に作製方法が記載されている)を埋め込み3日間かけてバイオリアクター周囲への血管伸長を行った。バイオリアクターを埋め込んでから3日後および10日後に本願発明の分化誘導方法にて得られたインスリン分泌細胞(5×106細胞)、未分化なマウスES細胞(5×106細胞)、および正常マウス膵島450個をそれぞれ5匹の糖尿病マウスに埋め込んだバイオリアクターに細胞充填を行った。なお、正常な健常マウス(3匹)および移植しない糖尿病マウスをコントロールとして使用した。細胞を充填した後のマウス血糖値の平均を図9および表4に示す。充填後の最初の10日間(細胞を充填してから、細胞のインスリン分泌能が回復するまでの間に相当する)は、中間型ヒトインスリンNPH(Novo Nordisk社製)を2単位皮下注射した。NPH注射終了後、3日おきに血糖値を測定し、移植後3週目以降は1週間に1回の割合で血糖値をPortable glucose meter FreeStlyle TM(TheraSence社製)を使用して測定した。マウスES細胞を充填したバイオ人工膵臓を埋め込んだマウスでは、NPH投与を終えた後に血糖値が再度360mg/dL以上になり、治療効果がないことが明らかとなった。これとは対照的に、本願発明の分化誘導方法により得られたインスリン分泌細胞を埋め込んだバイオ人工膵臓を装着したマウスは、健常マウス膵島を充填したバイオ人工膵臓を装着したマウスと同様にグルコース濃度が100mg/dL程度を維持することができた。これは、当該インスリン分泌細胞の機能が健常マウス膵島と同程度であり、治療効果があることを示す。なお、治療を行わない糖尿病マウス全て(非治療群)およびES細胞を充填したバイオ人工膵臓を埋め込んだマウス全ては10週間以内に高血糖により死亡した。
本発明の方法によりマウスES細胞から分化誘導されたマウス胚体内胚葉における胚体内胚葉特異的遺伝子Foxa2およびSox17の遺伝子発現をRT−PCR法にて判定した写真である。レーン1〜4は、それぞれコラーゲンタイプIV、マトリゲル、ラミニンタイプ1、ジェラチンで培養したマウス胚体内胚葉の遺伝子発現を示す。 本発明の方法によりコラーゲンタイプIVで加工した培養皿を用いてマウスES細胞から分化誘導されたマウス胚体内胚葉における胚体内胚葉特異的遺伝子Foxa2およびSox17の遺伝子発現をRT−PCR法にて判定した写真である。レーン1〜4は、それぞれアクチビンAの濃度が2ng/ml、10ng/ml、100ng/ml、200ng/mlで添加し培養したマウス胚体内胚葉の遺伝子発現を示す。 本発明の方法によりマウス胚体内胚葉から分化誘導されたマウス原始膵における原始膵特異的遺伝子Pdx−1の遺伝子発現、ネガティブコントロールであるShh遺伝子発現、および内因性標準であるGAPDH遺伝子発現をRT−PCR法にて判定した写真である。レーン1〜4は、それぞれレチノイン酸濃度が1μM、10μM、100μM、1000μMで添加し培養したマウス原始膵の遺伝子発現を示す。 本発明の分化誘導方法によりマウスES細胞から誘導されたインスリン分泌細胞のMafA遺伝子発現を示す顕微鏡像である。1は核を示し、2は球状を呈すインスリン分泌細胞全体を示す。 本発明の分化誘導方法によりマウスES細胞から誘導されたインスリン分泌細胞の形態を示す顕微鏡像である。1は核を示し、2は球状を示すインスリン分泌細胞を示す。 本発明の分化誘導方法により工程(d)において低グルコースDMEMを用いてマウスES細胞から誘導されたインスリン分泌細胞および従来技術の分化誘導方法によりマウスES細胞から誘導されたインスリン分泌細胞のインスリン分泌能を示すグラフである。横軸の1〜10は、本願発明のインスリン分泌細胞を工程(d)において低グルコースDMEMで2日間培養後「グルコース刺激:低→高」した後の培地中のインスリン分泌量(横軸の1)、本願発明のインスリン分泌細胞を工程(d)において低グルコースDMEMで2日間培養後「グルコース刺激:低→高→低」した後の培地中のインスリン分泌量(横軸の2)、本願発明のインスリン分泌細胞を工程(d)において低グルコースDMEMで4日間培養後「グルコース刺激:低→高」した後の培地中のインスリン分泌量(横軸の3)、本願発明のインスリン分泌細胞を工程(d)において低グルコースDMEMで4日間培養後「グルコース刺激:低→高→低」した後の培地中のインスリン分泌量(横軸の4)、本願発明のインスリン分泌細胞を工程(d)において低グルコースDMEMで7日間培養後「グルコース刺激:低→高」した後の培地中のインスリン分泌量(横軸の5)、本願発明のインスリン分泌細胞を工程(d)において低グルコースDMEMで7日間培養後「グルコース刺激:低→高→低」した後の培地中のインスリン分泌量(横軸の6)、従来技術であるシュローダー法のインスリン分泌細胞を「グルコース刺激:低→高」した後の培地中のインスリン分泌量(横軸の7)、従来技術であるシュローダー法のインスリン分泌細胞を「グルコース刺激:低→高→低」した後の培地中のインスリン分泌量(横軸の8)、従来技術であるダムール法のインスリン分泌細胞を「グルコース刺激:低→高」した後の培地中のインスリン分泌量(横軸の9)、従来技術であるダムール法のインスリン分泌細胞を「グルコース刺激:低→高→低」した後の培地中のインスリン分泌量(横軸の10)をそれぞれ示す。 本発明の分化誘導方法により工程(d)において低グルコースRCNK−1馴化培地を用いてマウスES細胞から誘導されたインスリン分泌細胞および従来技術の分化誘導方法によりマウスES細胞から誘導されたインスリン分泌細胞のインスリン分泌能を示すグラフである。横軸の1〜10は、本願発明のインスリン分泌細胞を工程(d)において低グルコースRCNK−1馴化培地で2日間培養後「グルコース刺激:低→高」した後の培地中のインスリン分泌量(横軸の1)、本願発明のインスリン分泌細胞を工程(d)において低グルコースRCNK−1馴化培地で2日間培養後「グルコース刺激:低→高→低」した後の培地中のインスリン分泌量(横軸の2)、本願発明のインスリン分泌細胞を工程(d)において低グルコースRCNK−1馴化培地で4日間培養後「グルコース刺激:低→高」した後の培地中のインスリン分泌量(横軸の3)、本願発明のインスリン分泌細胞を工程(d)において低グルコースRCNK−1馴化培地で4日間培養後「グルコース刺激:低→高→低」した後の培地中のインスリン分泌量(横軸の4)、本願発明のインスリン分泌細胞を工程(d)において低グルコースRCNK−1馴化培地で7日間培養後「グルコース刺激:低→高」した後の培地中のインスリン分泌量(横軸の5)、本願発明のインスリン分泌細胞を工程(d)において低グルコースRCNK−1馴化培地で7日間培養後「グルコース刺激:低→高→低」した後の培地中のインスリン分泌量(横軸の6)、従来技術であるシュローダー法のインスリン分泌細胞を「グルコース刺激:低→高」した後の培地中のインスリン分泌量(横軸の7)、従来技術であるシュローダー法のインスリン分泌細胞を「グルコース刺激:低→高→低」した後の培地中のインスリン分泌量(横軸の8)、従来技術であるダムール法のインスリン分泌細胞を「グルコース刺激:低→高」した後の培地中のインスリン分泌量(横軸の9)、従来技術であるダムール法のインスリン分泌細胞を「グルコース刺激:低→高→低」した後の培地中のインスリン分泌量(横軸の10)をそれぞれ示す。 本発明の分化誘導方法によりマウスES細胞から誘導されたインスリン分泌細胞および従来技術の分化誘導方法によりマウスES細胞から誘導されたインスリン分泌細胞のトルブタミド刺激前のインスリン分泌能を示すグラフである。横軸の1〜5は、本願発明のインスリン分泌細胞を工程(d)において低グルコースDMEMで2日間培養(横軸の1)、本願発明のインスリン分泌細胞を工程(d)において低グルコースDMEMで4日間培養(横軸の2)、本願発明のインスリン分泌細胞を工程(d)において低グルコースDMEMで7日間培養(横軸の3)、従来技術であるシュローダー法によるインスリン分泌細胞(横軸の4)、および従来技術であるダムール法によるインスリン分泌細胞(横軸の5)を示す。 本発明の分化誘導方法によりマウスES細胞から誘導されたインスリン分泌細胞および従来技術の分化誘導方法によりマウスES細胞から誘導されたインスリン分泌細胞のトルブタミド刺激後のインスリン分泌能を示すグラフである。横軸の1〜5は、本願発明のインスリン分泌細胞を工程(d)において低グルコースDMEMで2日間培養(横軸の1)、本願発明のインスリン分泌細胞を工程(d)において低グルコースDMEMで4日間培養(横軸の2)、本願発明のインスリン分泌細胞を工程(d)において低グルコースDMEMで7日間培養(横軸の3)、従来技術であるシュローダー法によるインスリン分泌細胞(横軸の4)、および従来技術であるダムール法によるインスリン分泌細胞(横軸の5)を示す。 本発明の分化誘導方法によりマウスES細胞から誘導されたインスリン分泌細胞、未分化マウスES細胞、またはマウス膵島を糖尿病マウスへ移植し、移植後の血糖値を測定したグラフである。コントロールとして、健常マウスおよび移植を行っていない糖尿病マウスを用いている。移植後の最初の5日間は健常マウスおよび移植を行っていない糖尿病マウス共に中間型ヒトインスリンNPHを2単位(IU)皮下注射し、その後の5日間は中間型ヒトインスリンNPHを1単位皮下注射している。 本発明のバイオ人工膵臓の一実施態様を示す図である。バイオ人工膵臓は球状を呈しているインスリン分泌細胞7を注入する細胞注入口3、蓋4、免疫担当細胞の透過を阻止するためのポリエチレン−ビニルアルコール膜(ポアサイズは30nm)5、細胞接着のためのPAU加工したPTFE不織布6からなる。 本発明の分化誘導方法によりマウスES細胞から誘導されたインスリン分泌細胞、未分化マウスES細胞、またはマウス膵島を充填した本発明のバイオ人工膵臓を糖尿病マウスへ埋め込み、埋め込み後の血糖値を測定したグラフである。コントロールとして、健常マウスおよび移植を行っていない糖尿病マウスを用いている。移植後の最初の10日間は健常マウスおよび移植を行っていない糖尿病マウス共に中間型ヒトインスリンNPHを2単位(IU)皮下注射している。
符号の説明
1 核
2 インスリン分泌細胞群全体
3 細胞注入口
4 蓋
5 ポリエチレン−ビニルアルコール膜
6 PTFE不織布
7 インスリン分泌細胞
配列番号1:Foxa2遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用5′プライマー
配列番号2:Foxa2遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用3′プライマー
配列番号3:Sox17遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用5′プライマー
配列番号4:Sox17遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用3′プライマー
配列番号5:Pdx−1遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用5′プライマー
配列番号6:Pdx−1遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用3′プライマー
配列番号7:Shh遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用5′プライマー
配列番号8:Shh遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用3′プライマー
配列番号9:GAPDH遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用5′プライマー
配列番号10:GAPDH遺伝子を検出するためのポリメラーゼ連鎖反応用3′プライマー

Claims (29)

  1. 胚性幹細胞のインスリン分泌細胞への分化誘導方法であって、
    (a)線維芽細胞増殖因子およびアクチビンの存在下に胚性幹細胞を培養することにより胚体内胚葉へ分化させる工程、
    (b)得られた胚体内胚葉を、線維芽細胞増殖因子の存在下、馴化培地を用いて培養することにより原始膵へ分化させる工程、
    (c)得られた原始膵を、馴化培地を用いて培養することによりニューロジェニン3発現細胞数を増加させ、ニューロジェニン3発現細胞を得る工程、および
    (d)得られたニューロジェニン3発現細胞を、高グルコース濃度の細胞培養用培地中で刺激してインスリン分泌細胞へ分化させる工程
    を含む方法。
  2. 線維芽細胞増殖因子が線維芽細胞増殖因子−10以外の線維芽細胞増殖因子である請求項1記載の方法。
  3. アクチビンがアクチビンAである請求項1または2記載の方法。
  4. アクチビンの濃度が2〜200ng/mLである請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 工程(b)において用いられる馴化培地が、ヒト神経膠芽細胞腫由来細胞株T98Gを細胞培養培地中で培養したものである請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 工程(c)において用いられる馴化培地が、ヒト肝内皮細胞株TMNK−1(寄託機関:独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター、あて名:日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566)、寄託日:平成14年4月16日、受託番号:FERM BP−8017)または血管内皮細胞を低グルコース細胞培養培地中で培養したものである請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
  7. 各工程における培養がそれぞれ、コラーゲンタイプIV、マトリゲル、フィブロネクチン、ジェラチン、ポリオルニチンおよびラミニンよりなる群から選ばれる生体適合性材料を用いる三次元培養である請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
  8. 工程(a)において用いられる生体適合性材料がコラーゲンタイプIVである請求項7記載の方法。
  9. 工程(c)において用いられる生体適合性材料がラミニンである請求項7または8記載の方法。
  10. 工程(a)における細胞培養濃度が1×105〜4×105細胞/mLである請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  11. 工程(b)における細胞培養濃度が1×105〜8×105細胞/mLである請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
  12. 工程(a)および/または(b)における線維芽細胞増殖因子の濃度が2〜20ng/mLである請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
  13. 工程(a)において用いられる培地が、細胞培養用培地中に、ウシ胎仔血清を0.2〜3%含有し、ウシ血清アルブミンを2〜3%含有する請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
  14. 工程(b)において用いられる培地が、馴化培地中にレチノイン酸を1〜50μmol/L含有する請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
  15. 工程(c)において用いられる培地が、馴化培地中にγ−セクレターゼ阻害剤XVIIIを0.25〜2μmol/L含有し、線維芽細胞増殖因子を5〜50ng/mL含有し、上皮増殖因子を5〜50ng/mL含有する請求項1〜14のいずれかに記載の方法。
  16. 工程(c)において、ニューロジェニン3発現細胞がセルソーターを用いて選別される請求項1〜15のいずれかに記載の方法。
  17. 工程(d)において用いられる培地が、肝細胞増殖因子を2〜50ng/mL含有し、ニコチンアミドを1〜10mmol/L含有し、エクセディン−4を5〜100nmol/L含有し、トログリタゾン1〜10μmol/Lおよび硫酸亜鉛を1〜20μmol/L含有する請求項1〜16のいずれかに記載の方法。
  18. 工程(d)が、ニューロジェニン3発現細胞を高グルコース濃度の細胞培養用培地、次いで低グルコース濃度の細胞培養用培地中で繰り返し刺激培養する工程からなり、高グルコース濃度の細胞培養用培地中で1回あたり2時間の刺激培養を、1日あたり1〜3回行うことを1〜10日間繰り返す請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
  19. 工程(d)において用いられる培地が、高グルコース濃度の細胞培養培地中に脂質、アミノ酸、ビタミンおよび/またはミネラルを含有する請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
  20. 工程(d)が、さらにニューロジェニン3発現細胞にMafA遺伝子を導入し発現させることにより、インスリン分泌細胞のMafA遺伝子発現を増強させることを含む請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
  21. 胚性幹細胞が哺乳類由来のものである請求項1〜20のいずれかに記載の方法。
  22. 哺乳類がマウス、ヒト、サルよりなる群から選ばれる請求項21記載の方法。
  23. 哺乳類がマウスである請求項22記載の方法。
  24. 請求項1〜23のいずれかに記載の方法により誘導されるインスリン分泌細胞。
  25. インスリン分泌細胞が、スフェロイドを形成しているインスリン分泌細胞を含有する請求項24記載のインスリン分泌細胞。
  26. 請求項24または25記載のインスリン分泌細胞を含有する糖尿病治療剤。
  27. 請求項24または25記載のインスリン分泌細胞を含有するバイオ人工膵臓。
  28. 請求項24または25記載のインスリン分泌細胞を含有する研究試薬。
  29. 請求項24または25記載のインスリン分泌細胞を含有する創薬モデル動物。
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