JP2009221953A - 火花点火式エンジン及び点火制御方法 - Google Patents

火花点火式エンジン及び点火制御方法 Download PDF

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Abstract

【課題】圧縮上死点前の熱発生を抑えつつ効率的な燃焼が可能な火花点火式エンジン及び点火制御方法を提供する。
【解決手段】火花点火式エンジンは、燃焼室と、点火装置(先放電用スパークプラグ、後放電用スパークプラグ、先放電用放電回路、後放電用放電回路)と、を備える。圧縮行程においては、点火装置を用いて、燃料に点火するための先放電(D)と、当該先放電による燃焼を加速するための後放電(E)と、を行なうように点火装置を制御する。また、後放電の点火エネルギーEmは、先放電の点火エネルギーEpよりも大きい。
【選択図】図2

Description

本発明は、燃焼室と点火装置とを有する火花点火式エンジン及びその制御方法に関する。
従来、内燃機関の一種として、燃焼室内にて圧縮された混合気を点火プラグで着火させる火花点火式エンジンが知られている。一般的な乗用車用のガソリンエンジンも火花点火式エンジンである。火花点火式エンジンの点火プラグは、先端の電極がシリンダブロックの燃焼室内に突出するようにシリンダヘッドに固定されている。そして、内燃機関においては、点火プラグの電極間に高電圧を加えることによって火花(スパーク)を発生させて、燃焼室内の混合気に点火する。そして、電極間の燃料粒子が、火花放電により活性化されて酸化を起こし、反応熱を発生して火炎核が生じる。そして、この火炎核が成長することによって、燃焼室内全体に燃焼が広がる。
しかしながら、従来、供給される燃料が少ない低負荷領域等では、一回の点火では、その後に火炎核が成長せず、失火を生じることがある。そのため、特許文献1及び特許文献2に記載されているように、連続した複数回のスパークを発生することで、失火を抑制する技術も提案されている。また、従来の内燃機関では、燃焼によるエネルギーを最も効率よく運動エネルギーに変換できるようにするために、燃焼室内の熱発生率(dQ/dt)のピーク位置が圧縮上死点のタイミングの直後となるように、点火時期が制御されている。
特開昭60−147570号公報 特開昭60−150476号公報
従来の火花点火式エンジンにおける、燃焼室内の熱発生率(dQ/dt)のグラフでは、グラフの形状が、圧縮上死点前に立ち上がりを開始する山形状に示される。熱発生率の立ち上がり開始時期がこのような時期になっている理由は、(1)点火プラグの放電による火炎核の形成及び成長、並びに、(2)火炎核を中心とした火炎の伝播、に必要な時間だけ、熱発生率のピークタイミング(圧縮上死点のタイミングの直後)に対する点火プラグの点火時期を早めて、圧縮上死点前に放電を行なっているからである。なお、点火時期を、圧縮上死点後に設定すると、熱発生率のピークタイミングが、より遅いタイミングとなってしまう。そして、このことは、レシプロエンジンの構造上、運動エネルギーへの変換効率の低下を招く。
しかしながら、圧縮上死点前に発生した熱は、圧縮行程において上昇途中のピストンを押し下げるように作用し、これにより、圧縮動作が阻害されて負の仕事が発生する。そのため、圧縮上死点前に熱が発生することは、燃焼効率の観点からは非効率的といえる。特に、近年はポンピングロスや熱損失の改善を目的として、ガソリンエンジン等の火花点火式エンジンでもEGRを利用することが提案されており、EGRを利用すると燃焼室内の燃焼速度が緩慢になるため、上記の問題はより顕著なものとなる。
前述のように、特許文献1及び特許文献2のような、失火を抑制するために複数回の放電を行なう技術も知られている。しかし、複数回の放電を行なう場合において、それぞれの放電による点火後の熱発生の状態は、通常の点火(一回の放電による点火)と殆ど変わらず、複数回の放電により点火をした場合にも、通常の放電による点火と同等の問題が生じる。
そこで、この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、圧縮上死点前の熱発生を抑えつつ効率的な燃焼が可能な火花点火式エンジン及び点火制御方法を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するために、本発明にかかる火花点火式エンジンは、燃焼室と、点火装置と、を備え、圧縮行程においては、前記点火装置を用いて、燃料に点火するための先放電と、当該先放電による燃焼を加速するための、前記先放電より点火エネルギーの大きい後放電と、を行なう。
この構成によると、まず、燃料に点火するための先放電を行なうことにより、燃焼室内において火炎核が成長する。その後、先放電よりも点火エネルギーの大きい後放電を行なって、先放電による燃焼を加速することにより、先放電による燃焼が急激に加速されるので、鋭いピークを有する熱発生率の波形が得られる。そのため、熱発生率のピーク位置を圧縮上死点のタイミングの直後に設定した上で、圧縮上死点前における熱発生を抑制することができる。以上により、圧縮上死点前の熱発生を抑えつつ効率的な燃焼が可能となる。
また、本発明にかかる火花点火式エンジンにおいて、前記点火装置は、前記燃焼室に臨むように配置される先放電用スパークプラグと、当該先放電用スパークプラグに電流を供給する先放電用放電回路と、前記燃焼室に臨むように配置される後放電用スパークプラグと、当該後放電用スパークプラグに電流を供給する後放電用放電回路と、を有し、前記先放電用放電回路及び前記後放電用放電回路に接続され、前記先放電用放電回路及び前記後放電用放電回路を制御する制御手段をさらに備え、前記制御手段は、前記後放電用放電回路を制御して前記後放電を行なう場合には、それに先立つように、前記先放電用放電回路を制御して前記先放電を行なってもよい。
これによると、圧縮上死点前の熱発生を抑えつつ効率的な燃焼が可能となる火花点火式エンジンを、簡易な構成により実現できる。なお、ここで、制御手段が“先放電用放電回路を制御する”とは、先放電用スパークプラグに電流を供給して先放電を行なう制御をすることを示し、制御手段が“後放電用放電回路を制御する”とは、後放電用スパークプラグに電流を供給して後放電を行なう制御をすることを示している。また、制御手段は、先放電用放電回路及び後放電用放電回路の両方を制御することもあり、先放電用放電回路のみを制御することもある。
また、本発明にかかる火花点火式エンジンにおいては、運転領域の一部として、前記燃焼室より排出された排気ガスの一部を、吸気と共に前記燃焼室内へ導入する、EGR領域が設定されており、前記制御手段は、前記後放電用放電回路を、当該EGR領域において制御して、前記後放電を行なってもよい。これによると、ポンピングロス及び熱損失が低減し、燃費が向上する。また、EGRを利用することによって燃焼室内の燃焼速度が緩慢になっても、本構成によって燃焼効率の低下を抑制できる。
また、本発明にかかる火花点火式エンジンにおいて、前記制御手段は、前記後放電の点火エネルギーが前記先放電の点火エネルギーの1.5〜4倍となるように、前記先放電用放電回路及び前記後放電用放電回路を制御してもよい。これによると、後放電の点火エネルギーを、先放電の点火エネルギーよりも確実に大きくすることによって、後放電による燃焼を急速に実行でき、圧縮上死点前の熱発生をより確実に抑制することができる。
また、本発明にかかる火花点火式エンジンにおいて、前記制御手段は、前記先放電及び前記後放電の少なくともいずれか一方が、1サイクルごとに複数回行なわれるように、前記先放電用放電回路及び前記後放電用放電回路の少なくともいずれか一方を制御してもよい。例えば、大量にEGRを導入する高EGR領域においては、燃焼室内における燃焼速度の低下(燃焼状態の緩慢化)が進み、燃焼変動(トルクの変動)が発生しやすくなる。さらに、従来以上にEGR量を増やすことによって燃焼変動が悪化すると、失火に至るケースも生じる。そのため、一度ずつの先放電及び後放電では、火炎核が成長できない、又は、火炎核の成長を加速できない可能性がある。本構成によると、先放電及び後放電の少なくともいずれか一方を複数回行なうことにより、着火性が向上する。そのため、高EGR領域において、従来以上に大量のEGRを導入した場合にも、確実な燃焼を行なうことができる。
また、上記の目的を達成するために、本発明にかかる点火制御方法は、燃焼室と、点火装置と、を有する火花点火式エンジンにおいて、前記点火装置の放電状態を制御するための点火制御方法であって、圧縮行程において、燃料に点火するための先放電を行なう先放電ステップと、圧縮行程において、当該先放電による燃焼を加速するための、前記先放電より点火エネルギーの大きい後放電を行なう後放電ステップと、を備える。この構成によると、圧縮上死点前の熱発生を抑えつつ効率的な燃焼が可能となる。
また、本発明に係る点火制御方法では、前記先放電ステップにおいて、前記後放電の点火エネルギーを、前記先放電の点火エネルギーの1.5〜4倍としてもよい。これによると、後放電の点火エネルギーを、先放電の点火エネルギーよりも確実に大きくすることによって、後放電による燃焼を急速に実行でき、圧縮上死点前の熱発生をより確実に抑制することができる。
また、本発明にかかる点火制御方法では、前記先放電ステップ及び前記後放電ステップの少なくともいずれか一方を、1サイクルごとに複数回行なってもよい。本構成によると、先放電及び後放電の少なくともいずれか一方を複数回行なうことにより、着火性が向上する。そのため、高EGR領域において、従来以上に大量のEGRを導入した場合にも、確実な燃焼を行なうことができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る火花点火式エンジンの全体概略図である。図2は、図1の火花点火式エンジンの点火エネルギー及び点火タイミングを概略的に示すグラフである。図3は、図1の火花点火式エンジンの熱発生率を概略的に示すグラフである。
(全体構成)
まず、本実施形態に係る火花点火式エンジン1について説明する。図1に示すように、火花点火式エンジン1は、燃焼室10、先放電用スパークプラグ53p、後放電用スパークプラグ53m、先放電用放電回路54p、後放電用放電回路54mを有している。また、火花点火式エンジン1は、スロットル3、吸気通路11p、排気通路12p、燃料弁2v(燃料供給量調整手段)、EGR通路30p、EGR弁30v、熱交換器40、吸気弁51v、排気弁52vを有している(これらの詳細については後述する)。さらに、火花点火式エンジン1はECU(Electronic Control Unit)5を有しており、ECU5には、排気弁52v、後放電用放電回路54m、先放電用放電回路54p、吸気弁51v、EGR弁30v、スロットル3、燃料弁2vが、制御用ケーブル5a〜5gを介して電気的に接続されている。そして、ECU5は、EGR弁30v、スロットル3、燃料弁2vの動作を制御するように構成されている。
また、先放電用スパークプラグ53p及び後放電用スパークプラグ53mは、先放電用放電回路54p及び後放電用放電回路54mに対して電気的に接続されている。そのため、ECU5は、先放電用スパークプラグ53p及び後放電用スパークプラグ53mに対して、先放電用放電回路54p及び後放電用放電回路54mを介して接続されているといえる。そして、ECU5は、後放電用放電回路54m、先放電用放電回路54pを制御するように構成されている。また、ECU5は、後放電用放電回路54m及び先放電用放電回路54pを介して、後放電用スパークプラグ53m及び先放電用スパークプラグ53pの動作を間接的に制御するように構成されている。
(ミキサ)
火花点火式エンジン1はガス燃料を用いるエンジンとして構成されており、火花点火式エンジン1においては、吸気通路11pの途中にミキサ4が配置されており、当該ミキサ4へは、ミキサ4へ連通する燃料供給路2pを通って、ガス燃料が供給される(すなわち、燃料供給路2pは、ガス燃料の通路となり、吸気通路11pへと連通している)。そして、ミキサ4において空気と燃料とが混合される。なお、本実施形態においては、ガス燃料を用いる内燃機関を前提としているが、このようなものには限定されず、本技術は、ガソリンエンジン等他の形式の火花点火式エンジンに適用されてもよい。なお、例えばガソリンエンジンの場合には、燃料供給手段として、上記の実施形態におけるミキサに代えて、キャブレタ又はインジェクタを用いる等、燃料供給手段は適宜変更すればよい。
(燃料弁)
燃料弁2vは、燃料供給路2pの途中に設けられている。そして、ECU5が燃料弁2vを制御することによって燃料弁2vの開度が調整され、それにより、吸気通路11pへ供給されるガス燃料の供給量が調整される。
(スロットル)
スロットル3は、図1に示すように、軸3c、弁部3vを駆動するステップモータ(図示せず)を有して構成され、弁部3vは、軸3cを中心として回転可能となっている。そして、ECU5がスロットル3のステップモータを制御することによって、弁部3vの開度が調整され、それにより、吸気通路11pを通って燃焼室10へ供給される吸気量が調整される。
(燃焼室)
燃焼室10は内燃機関においてシリンダとピストン50とにより形成される内部空間である。また、ピストン5は図の上下方向に往復運動する。燃料と空気とが混合した吸気(混合気)は、吸気通路11pを通って燃焼室10へ供給される(図1の矢印B参照)。そして、燃焼後には、排気が排気通路12pを通して排出される(図1の矢印C参照)。吸気通路11pの燃焼室10への開口部、及び、排気通路12pの燃焼室10への開口部には、それぞれ、吸気弁51v、及び、排気弁52vが配置されており、これらが、吸気、圧縮、燃焼、排気の各行程におけるピストン50の上昇・下降に応じて適宜開閉されることにより、吸気及び排気が行なわれる。より詳細には、吸気弁51v、及び、排気弁52vは、それぞれ、カムシャフトに取り付けられたカム51c、及び、カム52cにより開閉駆動される。
(点火装置)
火花点火式エンジン1は、点火装置を備えており、本実施形態において、点火装置は、先放電用スパークプラグ53p、先放電用放電回路54p、先放電用放電回路54p、及び後放電用放電回路54mにより構成される。
先放電用放電回路54pは、先放電用スパークプラグ53pに電流を供給するものであり、後放電用放電回路54mは、後放電用スパークプラグ53mに電流を供給するものである。
先放電用スパークプラグ53p及び後放電用スパークプラグ53mは混合気への着火に用いられるもので、燃焼室10に臨むように配置されている。なお、本実施形態において、点火装置には、先放電用スパークプラグ53pと、後放電用スパークプラグ53mとが含まれるが、このような構成には限られず、例えば、火花点火式エンジンは、一本のスパークプラグを用いて、先放電及び後放電を行なうように構成されていてもよい。この場合には、例えば、高エネルギー用としてコンデンサ放電式の点火システムを利用し、先放電についてはコンデンサを介さずに行ない、後放電の場合にのみ、コンデンサに蓄えられた電荷を利用して行なうようにしてもよい。
先放電用放電回路54p及び後放電用放電回路54mには、コイル、コンデンサ等が含まれており、スパークプラグにより点火を行なうときには、先放電用放電回路54p及び後放電用放電回路54mからスパークプラグへ、必要な電荷が供給される。
(排気及び外部EGRについて)
次に、排気及び外部EGR(Exhaust Gas Recirculation、排気ガス再循環)について説明する。火花点火式エンジン1では、低負荷側の運転領域においてEGR弁30vを開くことにより、排気ガスの一部を、EGR通路30pの途中に設けられた熱交換器40で冷却し、EGR弁30vを通過させて、EGRガスとして、混合気と共に燃焼室10内に供給する。これにより、火花点火式エンジン1のポンピングロス及び熱損失が低減し、燃費が向上する。
以下、より具体的に説明する。燃焼室10からの排気は、排気通路12pを通り、図示しない排気口より外部へ排出されるが、排気通路12pに排出された排気の一部は再び燃焼室10へ供給される。EGR通路30pは、燃焼室10からの排気の一部をEGRガスとして燃焼室10へ還流させるためのもので、分岐位置12bにおいて排気通路12pから分岐し、且つ、その下流端30bが吸気通路11pへと連通するように形成されている。これにより、排気通路12p及び吸気通路11pの内部空間と、EGR通路30pの内部空間とが、EGR通路30pの上流端(分岐位置12b)及び下流端30bにおいて連通している。
EGR通路30pの途中には、EGRガスの冷却を行なう熱交換器40と、EGR通路30pの開閉状態を調整するためのEGR弁30vとが、(EGRガスの流れる方向について)上流側よりこの順に設けられている。熱交換器40は、EGR通路30pの途中に設けられ、EGRガスの冷却装置として機能するものである。熱交換器40の熱交換媒体はエンジンの循環冷却水であり、熱交換器40は、内部をこの循環冷却水が通過することで、熱交換装置として機能する(図1の矢印A、A’参照)。エンジン稼動時に、シリンダブロックを冷却し高温となった循環冷却水は、エンジンより外部のラジエータに循環され、ラジエータで冷却されることにより、その冷却水温度が、70乃至80度程度に維持されている。
なお、本実施形態において、火花点火式エンジン1には、EGR通路30pが形成されており、EGR通路30pの途中には熱交換器40及びEGR弁30vが設けられているが、このような火花点火式エンジンは、外部EGRを利用するものでなくてもよく、例えば、EGR通路30p、EGR弁30v、熱交換器40はなくてもよい。
(EGR領域について)
火花点火式エンジン1においては、運転領域(すなわち、火花点火式エンジン1が運転されるエンジン負荷範囲)の一部として、燃焼室10より排出された排気ガスの一部を、吸気と共に燃焼室10内へ導入する、EGR領域が設定されている。すなわち、EGR領域とは、外部EGRが利用される領域である。そして、本実施形態において、ECU5は、後放電用放電回路54mを、当該EGR領域のうち、高EGR領域(後述)において制御する。
(ECU)
ECU(制御手段)5は、図示しないCPU(CentralProcessing Unit)、メモリ(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory))などを備えて構成されている。ROMには、点火装置(スパークプラグ)の放電状態を制御するための点火制御プログラムを含む各種ソフトウェアが格納されている。そして、これらのソフトウェアには、CPU、メモリなどの各種ハードウェアを、点火制御手段などとして機能させるための手順が記述されている。
次に、ECU5による制御内容について説明する。ECU5は、先放電用放電回路54p及び後放電用放電回路54mを制御する。その結果、火花点火式エンジン1は、点火装置を用いて、燃料に点火するための先放電と、当該先放電による燃焼を加速するための後放電と、を行なう。ここで、後放電とは、先放電の後の放電であって、先放電よりも点火エネルギーの大きい放電のこととである。また、ここで、ECUが“先放電用放電回路54pを制御する”とは、先放電用スパークプラグ53pに電流を供給して先放電を行なう制御をすることを示し、ECU5が“後放電用放電回路54mを制御する”とは、後放電用スパークプラグ53mに電流を供給して後放電を行なう制御をすることを示している。
より具体的に説明すると、ECU5は、後放電用放電回路54mを制御して後放電を行なう場合には、それに先立つように、先放電用放電回路54pを制御して先放電を行なう。すなわち、火花点火式エンジン1においては、後放電が行なわれる場合には、必ず、先放電を行ない、その後、後放電を行なう。
また、本実施形態において、後放電による点火は、高EGR領域において利用される。すなわち、本実施形態において、ECU5は、先放電用放電回路54p及び後放電用放電回路54mを、高EGR領域において制御する。なお、“高EGR領域”とは、外部EGRを大量に使用する領域という意味である。本実施形態では、スロットル3によるポンピングロスを低減する目的で、スロットル3の開度に応じて、つまり、負荷の大きさに応じて、外部EGRの量を制御している。つまり、本実施形態における高EGR領域とは、低負荷運転領域のことを示しており、より具体的には、スロットル開度が小さい場合に生じるポンピングロスを低減するため、大量の外部EGRを導入するようにEGR弁部3vが制御される、低負荷運転領域のことを示す。なお、本実施形態においては、高EGR領域ではない高負荷運転領域では、スロットル3はほぼ全開の状態となっているため、ポンピングロスが小さく、外部EGRを利用するメリットは少ない。そのため、高負荷運転領域では外部EGRの導入を行なわない。
また、ECU5は、後放電の点火エネルギーが、先放電の点火エネルギーの1.5倍以上となるように、先放電用放電回路54p及び後放電用放電回路54mを制御する。具体的には、後放電の点火エネルギーEmは、先放電の点火エネルギーEpの約3倍となっている。なお、後放電の点火エネルギーEmは、先放電の点火エネルギーEpの1.5倍以上であればよく、1.5倍〜4倍の範囲内であることがより好ましい。後放電の点火エネルギーが、先放電の点火エネルギーの1.5倍未満であると、先放電後の燃焼の加速が十分なものとならないために、熱発生率のピーク位置が遅角側に移動し、燃焼効率が低下してしまう。また、後放電の点火エネルギーが、先放電の点火エネルギーの4倍よりも大きいと、急激な燃焼反応により、熱発生率が圧縮上死点前において急速に増加するために、圧縮上死点前の熱発生率が大きくなり、燃焼効率が低下してしまう。なお、後放電の点火エネルギーは、先放電の点火エネルギーの4倍よりも大きくてもよい。
(点火制御方法)
次に、以上のように構成される火花点火式エンジン1における、点火制御方法について説明する。以下の制御は、エンジンの吸気・圧縮・燃焼・排気からなる1サイクルの中の、圧縮行程において行なわれるものである(図2に示した圧縮工程の範囲参照)。
まず、圧縮工程中期以降において、燃料に点火するための先放電を実行する(先放電ステップ。図2のD参照)。次に、当該先放電による燃焼を加速するための後放電を実行する(後放電ステップ。図2のE参照)。上記のように、本実施形態においては、後放電の点火エネルギーEmは、先放電の点火エネルギーEpの約3倍となっている。また、先放電の点火エネルギーEpは、火炎核が成長するために必要なエネルギーであるEoよりも大きく(ほぼEo程度に)設定されており、後放電の点火エネルギーEmは、上記のようにEpの約3倍となっている。そのため、先放電ステップ及び後放電ステップの両方において、火炎核が成長でき、燃料に点火されるようになっている。
次に、図3を参照しながら、火花点火式エンジン1の点火制御による、燃焼室10内の燃焼態様について説明する。図3は、高EGR領域における熱発生率を示しており、図3では、Gで示す実線部の波形が、火花点火式エンジン1の点火制御による熱発生率を表わしている。火花点火式エンジン1においては、後放電時の熱発生率(dQ/dt)のピーク位置(図3の矢印M位置参照)が、圧縮上死点(図3のTDC位置参照)のタイミングの直後に来るように、先放電及び後放電のタイミングが制御される。
高EGR領域では、図3のGのグラフ形状から分かるように、先放電による燃焼が、後放電によって加速される。すなわち、先放電による燃焼状態が、後放電によって急激に強められる。そして、図3のGのグラフ形状から分かるように、後放電位置(図3の矢印位置参照)以後は、グラフの傾きが急になっている。
図3のグラフにおいて、(1)の肩部分までの熱発生は、先放電(図2のD参照)に起因するものである。また、頂上部分(2)を含む熱発生は、主に、後放電(図2のE参照)に起因するものである。
上記のように、先放電は燃料に点火するためのものであって、先放電の点火エネルギーEpはEoよりも大きいので、先放電によって燃焼内では火炎核が成長でき、(1)の肩部までの燃焼が生じる。そして、その状態で後放電が行なわれることにより、先放電による燃焼が後放電によって加速され、ピークの鋭い急激な燃焼が生じる。
また、図3のグラフから分かるように、高EGR領域でこのような制御が行なわれると、図の(1)に示す明確な肩の形状ができる。このような肩部が生じる理由としては、(i)大量の外部EGRを導入しているために、先放電のみでは、途中で火炎核の成長が阻害されてしまい、火炎核が大きく成長できないこと、(ii)後放電により、火炎核が急激に成長すること、という二つの理由がある。
次に、火花点火式エンジン1の点火制御について、従来の点火制御との比較をしながら説明する。図2のZは、従来の火花点火式エンジンにおける放電時の点火エネルギー及び点火タイミングを示している。ここでは、Zの点火エネルギーが、先放電Dと同様に、ほぼEo程度の大きさになるように設定されているものとして説明する。比較例の放電においても、熱発生率のピーク位置が最良となるように、放電Zの点火タイミングを設定する。
上記の特許文献1,2の技術は、“短い周期で複数のスパークを連続して発生させる”ものである。そのため、先放電と後放電とで点火エネルギーの大きさが変化する本発明の技術とは異なり、特許文献1,2の技術における複数のスパークの点火エネルギーの大きさは、それぞれ同一である。また、同一の点火エネルギーによる放電については、一回の放電で正常に点火した場合と、複数回の放電を行なった場合とを比較しても、熱発生率のグラフ形状の違いは殆ど無い。そのため、ここでは、一回のみの放電Zを比較例として示して、本実施形態の放電と比較する。
まず、比較例の放電においては、放電Zによる燃焼の熱発生率を示す波形としては、緩やかな傾斜を有する山なりの波形となる(図3の破線部Y参照)。また、高EGR領域では、大量の外部EGRのために火炎核が成長できないので、比較例の放電においては、図3のYから分かるように、熱発生率が全体的に低く、圧縮上死点後はすぐに失火してしまう。
また、熱発生率を示す波形が、緩やかな斜面を有する山なりの波形となるので、比較例の点火制御によると、圧縮上死点よりも前のタイミングでの熱発生が多くなり、負の仕事が多くなってしまう。
一方、火花点火式エンジン1の点火制御によると、点火エネルギーEpでの先放電の後、Epの約3倍の点火エネルギーEmで後放電を行なうことにより、先放電の後、後放電が急速に行なわれる。そのため、十分な有効仕事量が得られ、且つ、圧縮上死点前の負の仕事を低減できる(図3の斜線部参照)ので、効率的な燃焼が可能となり、燃費が低減される。
火花点火式エンジン1の点火制御における負の仕事の低減について、より詳細に説明する。火花点火式エンジン1の点火制御において、熱発生率を示す波形としては、比較例のYの波形に比べてピークが鋭い波形となる。そのため、ピーク部分において、燃焼期間が短縮できる。すなわち、ピーク幅(例えば半値幅)を短くすることができる。そして、このように、熱発生率を示す波形が、鋭いピークを有する波形となるために、先放電(D参照)を遅角して、先放電による熱発生の立ち上がりを遅くすることができる。また、本実施形態では、EpがほぼEo程度となっているので、先放電による熱発生率の最大値は、火炎核が成長する程度の熱発生率でありながら、最小限に抑えられている。以上により、圧縮上死点前における熱発生を抑制でき、負の仕事が減少する。
(効果)
次に、本実施形態にかかる火花点火式エンジン1及び点火制御方法により得られる効果について説明する。本実施形態にかかる火花点火式エンジン1は、燃焼室10と、点火装置と、を備え、圧縮行程においては、点火装置を用いて、燃料に点火するための先放電と、当該先放電による燃焼を加速するための、先放電より点火エネルギーの大きい後放電と、を行なう。
この構成によると、まず、燃料に点火するための先放電を行なうことにより、燃焼室内において火炎核が成長する。その後、先放電よりも点火エネルギーの大きい後放電を行なって、先放電による燃焼を加速することにより、先放電による燃焼が急激に加速されるので、鋭いピークを有する熱発生率の波形が得られる。そのため、熱発生率のピーク位置を圧縮上死点のタイミングの直後に設定した上で、圧縮上死点前における熱発生を抑制することができる。以上により、圧縮上死点前の熱発生を抑えつつ効率的な燃焼が可能となる。
また、火花点火式エンジン1において、点火装置は、燃焼室10に臨むように配置される先放電用スパークプラグ53pと、当該先放電用スパークプラグ53pに電流を供給する先放電用放電回路54pと、燃焼室10に臨むように配置される後放電用スパークプラグ53mと、当該後放電用スパークプラグ53mに電流を供給する後放電用放電回路54mと、を有し、先放電用放電回路54p及び後放電用放電回路54mに接続され、先放電用放電回路54p及び後放電用放電回路54mを制御するECU5をさらに備え、ECU5は、後放電用放電回路54mを制御して後放電を行なう場合には、それに先立つように、先放電用放電回路54pを制御して先放電を行なう。
これにより、圧縮上死点前の熱発生を抑えつつ効率的な燃焼が可能となる火花点火式エンジンを、簡易な構成により実現できる。
また、火花点火式エンジン1においては、運転領域の一部として、燃焼室10より排出された排気ガスの一部を、吸気と共に燃焼室10内へ導入する、EGR領域が設定されており、ECU5は、後放電用放電回路54mを、当該EGR領域において制御して、後放電を行なう。これにより、ポンピングロス及び熱損失が低減し、燃費が向上する。また、EGRを利用することによって燃焼室内の燃焼速度が緩慢になっても、本構成によって燃焼効率の低下を抑制できる。
また、火花点火式エンジン1において、ECU5は、後放電の点火エネルギーが先放電の点火エネルギーの約3倍となるように、先放電用放電回路54p及び後放電用放電回路54mを制御する。これにより、後放電の点火エネルギーを、先放電の点火エネルギーよりも確実に大きくすることによって、後放電による燃焼を急速に実行でき、圧縮上死点前の熱発生をより確実に抑制することができる。
また、本実施形態にかかる点火制御方法は、燃焼室10と、点火装置と、を有する火花点火式エンジンにおいて、点火装置の放電状態を制御するための点火制御方法であって、圧縮行程において、燃料に点火するための先放電を行なう先放電ステップと、圧縮行程において、当該先放電による燃焼を加速するための、先放電より点火エネルギーの大きい後放電を行なう後放電ステップと、を備える。この構成によると、圧縮上死点前の熱発生を抑えつつ効率的な燃焼が可能となる。
また、本実施形態にかかる点火制御方法では、先放電ステップにおいて、後放電の点火エネルギーを、先放電の点火エネルギーの約3倍としている。これにより、後放電の点火エネルギーを、先放電の点火エネルギーよりも確実に大きくすることによって、後放電による燃焼を急速に実行でき、圧縮上死点前の熱発生をより確実に抑制することができる。
(変形例)
次に、本発明にかかる火花点火式エンジンの変形例について、上記の実施形態と同様の部分については説明を省略し、上記の実施形態と異なる部分を中心に説明する。なお、本変形例においては、上記の実施形態におけるECUによる制御処理の内容が変更されているのみであり、その他は同様であるので、火花点火式エンジンの図示を省略する。図4は、本変形例にかかる火花点火式エンジンの点火エネルギー及び点火タイミングを概略的に示すグラフである。図5は、本変形例にかかる火花点火式エンジンの熱発生率を概略的に示すグラフである。
本変形例にかかる火花点火式エンジンにおいては、ECU(制御手段)は、先放電及び後放電を、1サイクルごとに、二回ずつ行なうように、先放電用放電回路54p及び後放電用放電回路54mを制御する。なお、ECUは、先放電及び後放電の少なくともいずれか一方を、1サイクルごとに、複数回行なうように、先放電用放電回路54p及び後放電用放電回路54mを制御すればよく、制御内容として、例えば、先放電一回に対して後放電二回、先放電二回に対して後放電一回、というものであってもよい。また、先放電または後放電は、三回以上行なわれてもよい。
本変形例にかかる点火制御方法について説明する。本変形例にかかる点火制御方法においては、先放電ステップ及び後放電ステップを、1サイクルごとに、二回ずつ行なう。なお、本変形例にかかる点火制御方法において、先放電ステップ及び後放電ステップの少なくともいずれか一方が、1サイクルごとに、複数回行なわれればよく、例えば、先放電ステップ一回に対して後放電ステップ二回、先放電ステップ二回に対して後放電ステップ一回であってもよい。また、先放電ステップまたは後放電ステップは、三回以上行なわれてもよい。
本変形例においては、先放電が二回行なわれ(図4のJ1,J2参照)、後放電も二回行なわれる(図4のK1,K2参照)。そして、二つの後放電の点火エネルギーEmは、二つの先放電の点火エネルギーEpの約3倍となっている。
次に、図5を参照しながら、本変形例の点火制御による、燃焼室10内の燃焼態様について説明する。図5においては、Lで示す実線部の波形が、本変形例にかかる火花点火式エンジンの点火制御による熱発生率を表わしている。図5のグラフにおいて、(1)の肩部分までは、第1の先放電J1に起因するものであり、(2)の肩部分までは、第2の先放電J2に起因するものである。また、その後の(3)の肩部分までは、主に第1の後放電K1に起因するものであり、(4)の頂上部分は、主に第2の後放電K2に起因する。すなわち、圧縮工程中期以降において、(1)、(2)の肩部までの熱発生は、第1の先放電J1及び第2の先放電J2に起因し、その後の、(3)及び頂上部分(4)を含む熱発生は、主に、第1の後放電K1及び第2の後放電K2に起因する。本変形例において、実線部Lは、上記の実施形態の実線部Gに比べて、さらに先端部が鋭い波形となっており、また、熱発生率の最大値が上記の実線部Gの最大値よりも大きくなっている。
本変形例にかかる火花点火式エンジンについても、上記の実施形態と同様に、二つの後放電の点火エネルギーは、二つの先放電の点火エネルギーの、1.5倍〜4倍の範囲内であることが望ましい。また、本変形例では、二つの先放電の点火エネルギーが等しく、また、二つの後放電の点火エネルギーも等しいが、これらの点火エネルギーの大きさは異なっていてもよい。
本変形例にかかる火花点火式エンジンにおいて、ECUは、先放電及び後放電が、1サイクルごとに、それぞれ二回ずつ行なわれるように、先放電用放電回路54p及び後放電用放電回路54mを制御する。例えば、大量にEGRを導入する高EGR領域においては、燃焼室内における燃焼速度の低下(燃焼状態の緩慢化)が進み、燃焼変動(トルクの変動)が発生しやすくなる。さらに、従来以上にEGR量を増やすことによって燃焼変動が悪化すると、失火に至るケースも生じる。そのため、一度ずつの先放電及び後放電では、火炎核が成長できない、又は、火炎核の成長を加速できない可能性がある。本構成によると、先放電及び後放電の少なくともいずれか一方を複数回行なうことにより、着火性が向上する。そのため、高EGR領域において、従来以上に大量のEGRを導入した場合にも、確実な燃焼を行なうことができる。
また、本変形例にかかる点火制御方法では、先放電ステップ及び後放電ステップを、1サイクルごとに、それぞれ二回ずつ行なう。本構成によると、高EGR領域において、従来以上に大量のEGRを導入した場合にも、確実な燃焼を行なうことができる。
(他の実施形態)
次に、図6を参照しながら、本発明の他の実施形態について説明する。ここでは、上記の実施形態と同様の部分については説明を省略し、上記の実施形態と異なる部分を中心に説明する。なお、本変形例においては、上記の実施形態におけるECUによる制御処理の内容が変更されているのみであり、その他は同様であるので、火花点火式エンジンの図示を省略する。図6は、本発明の他の実施形態にかかる火花点火式エンジンの熱発生率を概略的に示すグラフである。
上記の実施形態では、高EGR領域においてのみ、先放電及び後放電を行ない、その他の領域では従来どおりの放電(先放電のみ)を行なっている。しかし、このような制御には限られず、EGR領域であれば、導入される外部EGRの量によらず、後放電を行なってもよい。本実施形態では、EGR領域のうち、失火が生じない程度に外部EGRが導入される低EGR領域において、後放電が行なわれる。図6は、そのような低EGR領域における熱発生率を示している。
本実施形態に係る火花点火式エンジンの点火制御による、燃焼室10内の燃焼態様について説明する。図6では、Gで示す実線部の波形が、本実施形態に係る火花点火式エンジンの点火制御による熱発生率を表わしている。図6に示すように、火花点火式エンジンにおいては、後放電時の熱発生率(dQ/dt)のピーク位置(図6の矢印M位置参照)が、圧縮上死点(図6のTDC位置参照)のタイミングの直後に来るように、先放電及び後放電のタイミングが制御される。本実施形態では、上記の実施形態と比較して、導入されている外部EGR量が少ないので、燃焼が阻害されない。そのため、(i)上記の実施形態の場合よりも、後放電による熱発生率の最大値(図6の(2)参照)が大きい。また、(ii)上記の実施形態の場合よりも、先放電のタイミングが遅くなっている(図6の矢印位置参照)。そのため、本実施形態において、先放電のタイミングは、図2のDよりも遅くなっている。
低EGR領域では、図6のGのグラフ形状から分かるように、先放電による燃焼が、後放電によって加速される。すなわち、先放電による燃焼状態が、後放電によって急激に強められ、後放電位置(図6の矢印位置参照)以後は、グラフの傾きが急になっている。
図6のグラフにおいて、(1)部分までの熱発生は、先放電に起因するものである。また、頂上部分(2)を含む熱発生は、主に、後放電(図2のE参照)に起因するものである。
本実施形態においても、一回のみの放電Z(図2参照)を比較例として示して、本実施形態の放電と比較する。図6の破線部Yに示すように、比較例の放電においては、燃焼室内の熱発生率のピーク位置が、圧縮上死点のタイミングの直後(図6の矢印M位置参照)に来るように、放電Zの点火タイミングを設定する。放電Zによる燃焼の熱発生率を示す波形としては、緩やかな傾斜を有する山なりの波形となる(図6の破線部Y参照)。そのため、熱発生率のピーク位置が圧縮上死点タイミングの直後に来るようにするには、図2に示すように、Zのタイミングを、火花点火式エンジン1による後放電の点火タイミング(E参照)に対して、進角側の位置に設定する必要がある。
また、熱発生率を示す波形が、緩やかな斜面を有する山なりの波形となるので、従来の点火制御によると、熱発生率のピーク位置が圧縮上死点のタイミングの直後に来るようにした場合に、圧縮上死点よりも前のタイミングでの熱発生が多くなり、負の仕事が多くなってしまう。そこで、例えば、図2のZの位置よりも点火タイミングを遅角した場合には、圧縮上死点よりも前の熱発生量としては少なくなるが、熱発生率のピーク位置は、M位置に対して遅角側、すなわち圧縮上死点からより遠くへ移動してしまい(図の破線部X参照)、ピークがM位置にあるときよりも燃焼効率が低下してしまう。
一方、本実施形態の火花点火式エンジンの点火制御によると、点火エネルギーEpでの先放電の後、Epの約3倍の点火エネルギーEmで後放電を行なうことにより、先放電の後、後放電が急速に行なわれることにより十分な有効仕事量が得られ、且つ、圧縮上死点前の負の仕事を低減できる(図6の斜線部参照)ので、効率的な燃焼が可能となり、燃費が低減される。
本実施形態にかかる、火花点火式エンジンの点火制御における負の仕事の低減について、より詳細に説明する。火花点火式エンジンの点火制御において、熱発生率を示す波形としては、比較例のYの波形に比べてピークが鋭い波形となる。そのため、先放電を遅角して、先放電による熱発生の立ち上がりを遅くすることができる。その結果、圧縮上死点前における熱発生を抑制でき、負の仕事が減少する。
一方、本実施形態における先放電を行なわずに、後放電のみを行なった場合には、図6の二点鎖線部Hのようになる。後放電(図2のE参照)のみを行なった場合においても、熱発生率のピーク位置を圧縮上死点のタイミングの直後に合わせると、Hの波形から分かるように、圧縮上死点前の熱発生が多い。本実施形態の火花点火式エンジンの点火制御によると、この二点鎖線部Hの熱発生と比較しても、圧縮上死点前のタイミングでの熱発生が抑制されることになる。
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更可能である。
例えば、本発明の技術は、EGRを利用しない火花点火式エンジンにも適用可能であり、これによっても、上死点前の熱発生を抑制できる。
本発明の第1実施形態に係る火花点火式エンジンの全体概略図である。 図1の火花点火式エンジンの点火エネルギー及び点火タイミングを概略的に示すグラフである。 図1の火花点火式エンジンの熱発生率を概略的に示すグラフである。 変形例にかかる火花点火式エンジンの点火エネルギー及び点火タイミングを概略的に示すグラフである。 変形例にかかる火花点火式エンジンの熱発生率を概略的に示すグラフである。 本発明の他の実施形態にかかる火花点火式エンジンの熱発生率を概略的に示すグラフである。
符号の説明
1 火花点火式エンジン
5 ECU(制御手段)
10 燃焼室
11p 吸気通路
12p 排気通路
30p EGR通路
30v EGR弁
40 熱交換器
53m 後放電用スパークプラグ
53p 先放電用スパークプラグ
54m 後放電用放電回路
54p 先放電用放電回路

Claims (8)

  1. 燃焼室と、
    点火装置と、を備え、
    圧縮行程においては、前記点火装置を用いて、燃料に点火するための先放電と、当該先放電による燃焼を加速するための、前記先放電より点火エネルギーの大きい後放電と、を行なうことを特徴とする火花点火式エンジン。
  2. 前記点火装置は、前記燃焼室に臨むように配置される先放電用スパークプラグと、当該先放電用スパークプラグに電流を供給する先放電用放電回路と、前記燃焼室に臨むように配置される後放電用スパークプラグと、当該後放電用スパークプラグに電流を供給する後放電用放電回路と、を有し、
    前記先放電用放電回路及び前記後放電用放電回路に接続され、前記先放電用放電回路及び前記後放電用放電回路を制御する制御手段をさらに備え、
    前記制御手段は、前記後放電用放電回路を制御して前記後放電を行なう場合には、それに先立つように、前記先放電用放電回路を制御して前記先放電を行なうことを特徴とする請求項1に記載の火花点火式エンジン。
  3. 運転領域の一部として、前記燃焼室より排出された排気ガスの一部を、吸気と共に前記燃焼室内へ導入する、EGR領域が設定されており、
    前記制御手段は、前記後放電用放電回路を、当該EGR領域において制御して、前記後放電を行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載の火花点火式エンジン。
  4. 前記制御手段は、前記後放電の点火エネルギーが前記先放電の点火エネルギーの1.5〜4倍となるように、前記先放電用放電回路及び前記後放電用放電回路を制御することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の火花点火式エンジン。
  5. 前記制御手段は、前記先放電及び前記後放電の少なくともいずれか一方が、1サイクルごとに複数回行なわれるように、前記先放電用放電回路及び前記後放電用放電回路の少なくともいずれか一方を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の火花点火式エンジン。
  6. 燃焼室と、点火装置と、を有する火花点火式エンジンにおいて、前記点火装置の放電状態を制御するための点火制御方法であって、
    圧縮行程において、燃料に点火するための先放電を行なう先放電ステップと、
    圧縮行程において、当該先放電による燃焼を加速するための、前記先放電より点火エネルギーの大きい後放電を行なう後放電ステップと、を備えることを特徴とする点火制御方法。
  7. 前記先放電ステップにおいて、前記後放電の点火エネルギーを、前記先放電の点火エネルギーの1.5〜4倍とすることを特徴とする請求項6に記載の点火制御方法。
  8. 前記先放電ステップ及び前記後放電ステップの少なくともいずれか一方を、1サイクルごとに複数回行なうことを特徴とする請求項6又は7に記載の点火制御方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2013238220A (ja) * 2012-05-15 2013-11-28 Man Diesel & Turbo Se 燃焼機関
JP2020159247A (ja) * 2019-03-25 2020-10-01 ダイハツ工業株式会社 内燃機関の制御装置

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