JP2009221565A - 高強度低降伏比鋼材およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】鋼構造物に供して好適な、590MPa以上の引張強さと80%以下の低降伏比を備えた高強度低降伏比鋼材を提供する。
【解決手段】質量%で、C:0.06〜0.20%、Si:0.10〜0.50%
Mn:0.1〜2.0%、P:0.02%以下、S:0.0030%以下、Al:0.1%以下、N:0.0070%以下、さらにCr:0.1〜2.0%、Mo:0.1〜2.0%
W:0.1〜1.0%の1種または2種以上を合計で0.5〜3.5%、必要に応じてCu、Ni、Nb、V、Ti、B、Ca、REM、Mgの1種または2種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物で、平均円相当径3〜20μm、かつ面積分率5〜30%のポリゴナルフェライトと、ベイナイトおよびマルテンサイトを備えたミクロ組織を有する鋼材。
【選択図】なし

Description

本発明は、建築、橋梁、ラインパイプ、造船などの鋼構造物に供される、高強度、低降伏比および高靭性の特性を併せ持つ鋼材およびその製造方法に係り、特に、引張強さ(TS)が590MPa以上、降伏比(YR)が80%以下を有する鋼材として好適なものに関する。本明細書においては、板厚9mm以上の高強度低降伏比厚鋼板を中心に記載するが、本発明の対象は、厚鋼板に限ることなく、形鋼、条鋼、鋼管なども含む。
近年、建築、橋梁、ラインパイプ、造船など鋼構造物の大型化や、設計自由度の確保の観点から鋼材の厚肉化、高強度化が進展し、耐震性や耐衝突安全性の観点から、高い許容応力を有するとともに、降伏比を低減することも要求されるようになっている。
降伏比を低減すると、降伏点以上の応力が付加されても破壊までに許容される応力が大きくなり、また、一様伸びが大きくなるため、塑性変形能に優れた鋼材となる。
特に、引張強さが590MPaを超える高張力鋼材では、強度確保のために合金を多量に添加することが一般的で、降伏比が上昇する傾向にあり、延性、靭性も低下する。このため、高強度、低降伏比と高延靱性とを併せ持った鋼材が要望されている種々の提案(例えば、特許文献1〜4)がなされている。
圧延後、直ちに焼入れする直接焼入れ法による低降伏比高張力鋼の製造方法として、特許文献1では、圧延後の冷却開始を遅らせ、5〜60%程度のフェライトを析出させた後、急冷して、フェライト相+硬質相の2相組織とし、高強度化と低降伏比化を実現している。
特許文献2では圧延後の冷却速度を制御することにより、フェライト相+島状マルテンサイトの2相組織とし、特許文献3では、フェライト析出温度域に保持させた後に急冷し、フェライト+硬質相の2相組織とすることにより、高強度化と低降伏比化を達成している。
一方、特許文献4に記載された技術では、熱間圧延後の鋼板を焼入れした後、再度フェライト+オーステナイトの2相域まで加熱し、焼入れした後、焼戻しを行い、高強度化と低降伏比化を達成している。
特公昭58−10442号公報 特開2001−226737号公報 特開平2−34721号公報 特開平4−99817号公報
しかしながら、特許文献1、特許文献2、特許文献3に記載された直接焼入れ法による低降伏比高張力鋼は、高温域からの冷却過程で生成する高温変態フェライトを制御するため、組織サイズは比較的粗大となり、靱性の低下を招くことがある。
また、低温域までの急冷が不可欠であることから高い残留応力が発生し、所定の鋼板形状を確保することが困難である。さらに、製造条件や鋼板内位置により、フェライトと硬質第2相の体積分率が変化することから、安定して高強度化と低降伏比を達成することは容易でない。特許文献4に記載された技術も、煩雑な熱処理プロセスが必要で実機化は容易でない。
そこで、本発明は、煩雑な熱処理を施すことなく、安定した高強度、低降伏比及び靭性を備えた、特に590MPa以上の引張強さと80%以下の降伏比を備えた靭性に優れる高強度低降伏比鋼材およびその製造方法として好適なものを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を達成するため鋭意研究し、強度および降伏比に及ぼす各種要因について以下の知見を得、鋼材内での材質ばらつきが無く、安定して引張強さで590MPa以上、80%以下の低降伏比を備えた母材特性を達成した。
1.590MPa以上の引張強さ、80%以下の低降伏比および高靱性を備えた鋼とする場合、フェライトと、残部をベイナイトおよびマルテンサイトとする混合組織において、前記フェライトの組織形態を適正に制御することが重要である。
2.従来の製造プロセスでは高温からの冷却過程に生成するフェライト粒の粗大化の抑制が課題であったが、これに代わって、鋼材を熱間圧延後に過冷オーステナイト状態へ急速冷却し、この過冷オーステナイト状態での保持後、Ac点以下の温度へ再加熱することによりフェライト変態させれば、フェライト組織の粗大化を防ぎ、さらに、比較的細粒のポリゴナルフェライトを主体とする組織が得られる、というフェライト形態の制御が可能である。
3.そのためには、厳格な成分調整により、Cr:0.1〜2.0%、 Mo:0.1〜2.0%、W:0.1〜1.0%のうち1種または2種を合計で0.5〜3.5%含有することが肝要である。
4.Cr、MoおよびWは、焼入れ性を増大させて、高温オーステナイト域から冷却過程のフェライト変態を抑制するとともに、急速冷却後の低温域では、強力な粒界引きずり効果(ドラッグ効果)により、過冷オーステナイトを安定化させる効果を有する。
5.上記のように成分調整した鋼素材に熱間圧延を施した後、冷却速度と冷却停止温度を適正化した過冷オーステナイト域までの加速冷却処理の後、鋼板内の温度分布を均一にするため一定時間の保持を行い、さらには、Ac点以下の温度域までの再加熱処理を適正化することが重要である。
本発明は、得られた知見に、さらに検討を加えてなされたもので、すなわち、本発明は、
1.鋼組成が、質量%で、
C:0.06〜0.20%
Si:0.10〜0.50%
Mn:0.1〜2.0%
P:0.02%以下
S:0.0030%以下
Al:0.1%以下
N:0.0070%以下を含有し、
さらにCr:0.1〜2.0%
Mo:0.1〜2.0%
W:0.1〜1.0%
の1種または2種以上を合計で0.5〜3.5%含有し、残部がFeおよび不可避的不純物で、ミクロ組織が、平均円相当径3〜20μm、かつ面積分率5〜30%のポリゴナルフェライトと、ベイナイトおよびマルテンサイトを備えた混合組織であることを特徴とする高強度低降伏比鋼材。
2.鋼組成に、質量%でさらに、
Cu:0.1〜1.0%
Ni:0.1〜2.0%
Nb:0.1%以下
V:0.1%以下
Ti:0.03%以下
B:0.005%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする1記載の高強度低降伏比鋼材。
3.鋼組成に、質量%で更に、
Ca:0.005%以下
REM:0.02%以下および
Mg:0.005%以下
の1種または2種以上を含有することを特徴とする1または2記載の高強度低降伏比鋼材。
4.1乃至3の何れか一つに記載の鋼組成からなる鋼片を、1000℃〜1250℃に加熱し、800℃以上の温度域において熱間圧延を終了後、Ar点以上の温度域から5〜100℃/sの冷却速度で500℃〜650℃の温度域まで冷却を行った後、一旦冷却を中断し、10〜1000s保持した後、650℃〜Ac点の温度域まで0.5℃/s以上の昇温速度で再加熱した後、空冷することを特徴とする高強度低降伏比鋼材の製造方法。
5.さらに、400℃以上、Ac点以下で焼戻すことを特徴とする4に記載した高強度低降伏比鋼材の製造方法。
本発明によれば、引張強さ(TS)が590MPa以上で、80%以下の低降伏比を有する高強度低降伏比鋼材を安定して製造することができ、鋼構造物の大型化、鋼構造物の耐震性や安全性向上に大きく寄与し、産業上格段の効果を奏する。
本発明では、高強度と低降伏比を安定して達成するため、ミクロ組織と成分組成を規定する。
[ミクロ組織]
本発明ではミクロ組織を、硬質のベイナイトあるいはマルテンサイト中に、軟質のポリゴナルフェライトを含む混合組織とする。
ポリゴナルフェライトは、平均円相当径3〜20μm、かつ面積分率5〜30%とする。
ポリゴナルフェライトの平均円相当径が3μm未満では、80%以下の低降伏比が得られず、靱性も低下し、一方、20μmを超えると590MPa以上の高強度が得られなくなるため、平均円相当径は3〜20μmとする。なお、好ましくは、5〜18μmである。
ポリゴナルフェライトの面積分率が5%未満では、上記のような、低降伏比化の効果が得られず、一方、30%を超えると強度が低下する。このため、面積分率は5〜30%の範囲に限定する。なお、好ましくは、8〜25%である。
ミクロ組織において、ポリゴナルフェライトを除く残部は、高強度を満足するためベイナイトまたはマルテンサイトとする。なお、本発明では、パーライトおよびセメンタイト等の組織が混在することを許容するが、強度が低下するため、面積分率は少ない方がよく、5%以下とする。
なお、ポリゴナルフェライトの組織形態調査は、鋼板の1/2t部より採取したサンプルの鋼板の1/2t部となる圧延面をナイタール腐食して、倍率1000倍の走査型電子顕微鏡で観察して同定した。
平均円相当径は、倍率1000倍の走査型電子顕微鏡で撮影した画像について、画像解析装置を用いて求めた。
[成分組成]
以下の説明において%は質量%を意味するものとする。
C:0.06〜0.20%
Cは、鋼の強度を増加させ、構造用鋼材として必要な強度を確保するのに有用な元素である。C量が0.06%未満では、焼入れ性が低下するため、圧延後の高温から冷却途中にフェライト変態が生じ、所定のミクロ組織要件を満足できず、強度低下や靱性劣化を生じる。
一方、0.20%を超える含有は、母材および溶接部の靱性を劣化させるとともに、耐溶接割れ性を劣化させる。このため、0.06〜0.20%の範囲に限定する。好ましくは、0.08〜0.18%である。
Si:0.10〜0.50%
Siは、脱酸材として作用し、製鋼上、少なくとも0.10%必要であるが、0.50%を超えて含有すると、母材の靭性が劣化するとともに、溶接性、溶接熱影響部靭性が顕著に劣化するため、0.10〜0.50%の範囲に限定する。好ましくは、0.10〜0.40%である。
Mn:0.1〜2.0%
Mnは、鋼の強度を増加させる効果を有し、引張強度590MPa以上を確保するためには、0.1%以上の含有を必要とする。一方、2.0%を超えて含有すると、母材靭性および溶接熱影響部靭性が著しく劣化するため、0.1〜2.0%の範囲に限定する。好ましくは、0.3〜1.8%である。
P:0.02%以下
Pは、鋼の強度を増加させ靭性を劣化させる元素であり、低減することが望ましい。0.02%を超えて含有されると、この傾向が顕著となるため、上限を0.02%とした。なお、過度のP低減は精錬コストを高騰させ経済的に不利となるため、0.005%以上とすることが望ましい。
S:0.0030%以下
Sは母材の低温靭性を劣化させる元素であり、低減することが望ましい。0.0030%を超えて含有されると、この傾向が顕著となるため、上限を0.0030%とした。
Al:0.1%以下
Alは、脱酸剤として0.1%以下を含有する。Alは高張力鋼の溶鋼脱酸プロセスに於いて、もっとも汎用的に使われる脱酸剤で、鋼中のNをAlNとして固定し、母材の靭性向上に寄与する。なお、このような効果は0.005%以上の含有で認められる。
0.1%を超える含有は、母材の靭性が低下するとともに、溶接時に溶接金属部に混入して、靭性を劣化させるため、0.1%以下に限定した。好ましくは、0.01〜0.07%である。
N:0.0070%以下
Nは不可避的不純物として鋼中に含まれるが、0.0070%を超えて含有すると、母材および溶接部靭性が著しく低下するため、0.0070%以下に限定する。
本発明では、上記成分系に加えて、Cr、MoおよびWの1種または2種以上を合計で0.5〜3.5%となるように含有する。
Cr:0.1〜2.0%、Mo:0.1〜2.0%、W:0.1〜1.0%の1種または2種以上を合計で0.5〜3.5%
Cr、MoおよびWは、本発明の重要な合金元素であり、焼入れ性を増大させて、高強度化に有用な元素である。本発明の特徴の一つは、これらの元素の有するフェライト変態遅延効果を活用することにより、熱間圧延終了後の冷却時に初析フェライトが生成することを抑制することであり、これらの元素はこの目的のために必須の元素である。Cr、MoおよびWは、さらに、過冷オーステナイト域で強力な粒界引きずり効果(ドラッグ効果)を有することから、過冷オーステナイトからの等温ベイナイト変態を抑制することができるので、加速冷却後の500〜650℃での等温保持中には過冷オーステナイトの状態を保ち、その後の加熱によりフェライト組織を生成する、という本発明の特徴的なフェライト組織形態制御を可能とするものである。
このような効果を得るため、Cr、Mo、Wの一種または二種以上を添加する場合は、0.1%以上含有することが好ましいが、Cr、Moの場合は2.0%を超えると、Wの場合は、1.0%を超えると、フェライト変態遅延効果が強すぎて、過冷オーステナイトでの保持後にAc1以下の温度域に再加熱しても十分な量のフェライトが生成せず、ベイナイト主体の組織となってしまうばかりでなく、母材靱性および溶接熱影響部靱性が劣化する。
従って、添加する場合は、Cr、Moは0.1〜2.0%、好ましくは、0.2〜0.1.8%、Wは0.1〜1.0%、好ましくは0.2〜0.8%とする。
さらに、Cr、Mo、Wの一種または二種以上を添加する場合は、合計の含有量で0.5〜3.5%となるように含有することが重要である。Cr、MoおよびWの一種または二種以上の合計の含有量が0.5%未満では、圧延後の冷却過程における初析フェライト変態を抑制することができず、また、過冷オーステナイトのベイナイト等温変態を抑制する効果も十分ではないため、所望するポリゴナルフェライトの組織要件を満足できず、ひいては、低降伏比を達成できない。
一方、Cr、MoおよびWの合計が3.5%を超えると、母材および溶接部の靱性を劣化させるとともに、耐溶接割れ性を顕著に劣化させる。このため、Cr、MoおよびWの合計は0.5〜3.5%の範囲に限定する。好ましくは、0.7〜3.3%である。
なお、Cr、MoおよびWの一種を含有させる場合は、含有する元素が0.5〜3.5%の範囲内となるようにする。
本発明では、強度、靭性などの特性を向上させる場合、上述した基本成分系に加えて、さらに、Cu、Ni、Nb、V、Ti、B、Ca、REM、Mgの1種または2種以上を含有することができる。
Cu、Ni、Nb、V、Ti、Bは、いずれも鋼の強度向上に寄与する元素であり、所望する強度に応じて適宜含有できる。
Cu、Niは、高靭性を保ちつつ強度を増加させることが可能な元素であり、溶接熱影響部靭性への影響も小さいため、高強度化のために有用な元素であり、必要に応じ選択して含有できる。このような効果を得るため、Cu、Niは、0.1%以上の添加が必要である。
一方、Cuは1.0%を超えると熱間脆性を生じて鋼板の表面性状を劣化させ、Niは2.0%を超えて含有しても、上述の効果が飽和し、含有量に見合う効果が期待できなくなり、経済的に不利になる。そのため、Cuを含有させる場合は0.1〜1.0%、Niを含有させる場合は0.1〜2.0%とする。
Nbを添加する場合、0.005%以上含有することが好ましいが、0.1%を超える含有は、母材靭性および溶接部靭性を劣化させるため、0.1%以下に限定することが望ましい。
Vを添加する場合、0.01%以上含有することが好ましいが、0.1%を超える含有は、母材靭性および溶接部靭性を劣化させるため、0.1%以下に限定することが望ましい。
Tiは、Nとの親和力が強く凝固時にTiNとして析出し、溶接部の高靭化に寄与する。一方、0.03%を超えると母材靭性が劣化するため、Tiを含有させる場合には、0.03%以下とする。
Bは、焼入れ性の向上を介して、鋼の強度を増加させる作用を有する。一方、0.005%を超える含有は焼入れ性を著しく増加させ、母材の靭性、延性の劣化をもたらす。このため、Bを含有させる場合は0.005%以下とする。
Ca、REMおよびMgは、いずれも結晶粒の微細化を介して靭性向上に寄与する元素である。Caを添加する場合は、そのような効果を得るため、0.001%以上含有することが好ましく、一方、0.005%を超えて含有しても効果が飽和するため、0.005%以下とする。
REMを添加する場合は、そのような効果を得るため、0.002%以上含有することが好ましく、一方、0.02%を超えて含有しても効果が飽和するため、0.02%以下とする。
Mgを添加する場合は、そのような効果を得るため、0.001%以上含有することが好ましく、一方、0.005%を超えて含有しても効果が飽和するため、0.005%以下とする。
上記した成分以外の残部は、Feおよび不可避的不純物である。以下に本発明に係る
鋼板の、好適な製造方法について詳細に説明する。なお、説明において鋼材の温度は板厚の1/2部の温度とする。
[スラブ加熱温度]
上述した組成の溶鋼を、転炉、電気炉、真空溶解炉等、定法で溶製し、得られた鋼素材を1000℃〜1250℃に再加熱する。
再加熱温度が1000℃未満では、熱間圧延での変形抵抗が高くなり、1パス当たりの圧下量が大きく取れなくなることから、圧延パス数が増加し、圧延能率の低下を招くとともに、鋼素材(スラブ)中の鋳造欠陥を圧着することができない場合がある。
一方、再加熱温度が1250℃を超えると、加熱時のスケールによって表面疵が生じやすく、圧延後の手入れ負荷が増大する。このため、鋼素材の再加熱温度は1000℃〜1250℃の範囲とするのが好ましい。
[熱間圧延]
再加熱された鋼素材は、所定の板厚になるまで、圧延終了温度を800℃以上となる熱間圧延を施す。熱間圧延条件は、圧延終了温度を800℃以上とする以外には、所望の板厚および形状を満足できればよく、その条件はとくに限定されない。
ただし、板厚が80mmを超える極厚鋼板の場合には、ザク圧着のために1パスあたりの圧下率が15%以上となる圧延パスを少なくとも1パス以上確保することが望ましい。
圧延終了温度が800℃未満では、圧延温度がオーステナイト単相域だけではなくフェライト−オーステナイト二相域にかかるため、圧延途中に初析フェライトやパーライトが生成し、所望のミクロ組織が得られなくなるばかりでなく、変形抵抗が高くなりすぎて、圧延荷重が増大し、圧延機への負担が大きくなる。特に、厚肉材を800℃未満まで圧延温度を低下させるためには、圧延途中で待機することが必要で、生産性を大きく阻害する。このため、圧延終了温度を800℃以上とした。
[冷却条件]
圧延終了後の冷却は、2段冷却とする。1段目の冷却は加速冷却とし、圧延終了後、得られた厚鋼板を、Ar点以上の温度域から5〜100℃/sの平均冷却速度で、500℃〜650℃まで冷却する。
冷却停止温度は、特に重要な制御因子であり、冷却停止温度が500℃よりも低くなると、冷却停止時にベイナイト変態、あるいはマルテンサイト変態が進行し、過冷オーステナイトを得ることができない。その結果、ポリゴナルフェライトの面積分率が5%以上とならず、降伏比80%以下を満足することができない。
一方、冷却停止温度が650℃よりも高くなると、ポリゴナルフェライトの面積分率が30%を超えて、平均円相当径も20μmを超えるようになり、590MPa以上の引張強さを満足することができないため、冷却停止温度は500℃〜650℃とする。
また、圧延終了後の冷却速度が5℃/s未満では、加速冷却途中にフェライト変態が進行するため、ポリゴナルフェライトの面積分率が30%を超えて、平均円相当径も20μmを超えるようになり、590MPa以上の引張強さを満足することができない。
一方、冷却速度が100℃/sを超えると、鋼材位置によらずに均一に温度を制御することが困難となり、材質ばらつきが生じるため、冷却速度は5℃/s〜100℃/sとする。
1段目の加速冷却終了後、10〜1000s保持した後、650℃〜Ac点の温度域まで0.5℃/s以上の昇温速度で再加熱した後、2段目の冷却を空冷で行う。
冷却停止後の保持が10s未満では、鋼材内温度分布の均一性が不十分であるため、鋼板内位置による組織形態に差が生じ、材質ばらつきが生じる。
一方、冷却停止後の保持が1000sを超えると、再加熱開始まで長時間を要するために製造効率が低下するだけでなく、保持中に等温ベイナイト変態が進行するため、降伏比80%以下を満足することができない。
再加熱の昇温速度は、0.5℃/s未満では、ベイナイト変態温度域の滞留時間が長く、ベイナイト変態が進行、さらには完了してしまうため、所望のミクロ組織が得られないばかりでなく、目的の再加熱温度まで長時間を要して製造能率が低下するようになるため、0.5℃/s以上とする。
再加熱温度が650℃未満の場合、ポリゴナルフェライトの面積分率と平均円相当径が本発明の規定を満足せず、また、ポリゴナルフェライトの生成後に、未変態オーステナイト中へのCの拡散が進行しないため、空冷後にパーライトが生成し、590MPa以上の引張強さが得られない。
一方、再加熱温度がAc点を超えるとフェライト生成が過剰となり、ポリゴナルフェライトの面積分率と平均粒径が本発明の規定を満足せず、590MPa以上の引張強さが得られないため、再加熱温度は、650℃以上、Ac点未満とする。
なお、再加熱温度は、未変態オーステナイトへのCの拡散を進行させるため、冷却停止温度より50℃以上昇温することが望ましく、保持時間は、生産性を阻害しないように、好ましくは、保持時間15min.以下とする。
再加熱の手段として、雰囲気炉加熱、ガス炎、誘導加熱等が利用できるが、経済性、制御性等を考慮すると、誘導加熱が好ましい。
再加熱後の冷却(2段目の冷却)は、空冷とする。再加熱時に得られた、Cが拡散した未変態オーステナイトが空冷中にベイナイトおよびマルテンサイトに変態し、本発明で規定するミクロ組織が達成される。
再加熱処理後、空冷により鋼材を室温まで冷却した後、焼戻し処理を施してもよい。焼戻し処理は、400℃以上Ac点以下とする。靭性を向上させて所望の強度靭性バランスとすることが可能である。
以上の説明において、Ac点は(1)式により、Ar点は(2)式により求めることが可能である。
Ac(℃)=751−27C+18Si−12Mn−23Cu−23Ni+24Cr+23Mo−40V−6Ti+233Nb−169Al−895B (1)
(但し、元素記号は鋼材中の各元素の質量%での含有量を表す。)
Ar(℃)=910−310C−80Mn−20Cu−15Cr−55Ni−80Mo(2)
(但し、元素記号は鋼材中の各元素の質量%での含有量を表す。)
転炉−取鍋精錬−連続鋳造法で、調製された鋼素材を、熱間圧延により種々の板厚の厚鋼板とした後、加速冷却−保持−再加熱−空冷の処理をおこなった。
表1に鋼素材の成分組成を、表2に鋼板の製造条件とミクロ組織を示す。得られた鋼板からJIS5号引張試験片を採取し、JISZ2241(1998年)の規定に準拠して引張試験を実施し、引張特性を調査した。
また、各厚鋼板の板厚の1/2の位置から、JISZ2202(1998年)の規定に準拠してVノッチ試験片を採取し、JISZ2242(1998年)の規定に準拠してシャルピー衝撃試験を実施し、0℃における吸収エネルギー(vE)を求め、母材靭性を評価した。
これら試験での目標値は、引張強さ590MPa以上で降伏比80%以下、全伸び26%以上、0℃での吸収エネルギーvE>100Jとした。
表3に引張試験とシャルピー衝撃試験の結果を示す。本発明例(条件No.1,6〜10、14、17,18)は、いずれも、目標値を満足する優れた特性を有していることが確認された。
一方、比較例(条件No.2〜5、11〜13、15,16、19〜26)は、母材強度、降伏比、延性、母材靭性のうち、いずれか、あるいは複数の特性が目標値を満足していない。
Figure 2009221565
Figure 2009221565
Figure 2009221565

Claims (5)

  1. 鋼組成が、質量%で、
    C:0.06〜0.20%
    Si:0.10〜0.50%
    Mn:0.1〜2.0%
    P:0.02%以下
    S:0.0030%以下
    Al:0.1%以下
    N:0.0070%以下を含有し、
    さらにCr:0.1〜2.0%
    Mo:0.1〜2.0%
    W:0.1〜1.0%
    の1種または2種以上を合計で0.5〜3.5%含有し、残部がFeおよび不可避的不純物で、ミクロ組織が、平均円相当径3〜20μm、かつ面積分率5〜30%のポリゴナルフェライトと、ベイナイトおよびマルテンサイトを備えた混合組織であることを特徴とする高強度低降伏比鋼材。
  2. 鋼組成に、質量%でさらに、
    Cu:0.1〜1.0%
    Ni:0.1〜2.0%
    Nb:0.1%以下
    V:0.1%以下
    Ti:0.03%以下
    B:0.005%以下の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の高強度低降伏比鋼材。
  3. 鋼組成に、質量%でさらに、
    Ca:0.005%以下
    REM:0.02%以下および
    Mg:0.005%以下
    の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2記載の高強度低降伏比鋼材。
  4. 請求項1乃至3の何れか一つに記載した鋼組成からなる鋼片を、1000℃〜1250℃に加熱し、800℃以上の温度域において熱間圧延を終了後、Ar点以上の温度域から5〜100℃/sの冷却速度で500℃〜650℃の温度域まで冷却を行った後、一旦冷却を中断し、10〜1000s保持した後、650℃〜Ac点の温度域まで0.5℃/s以上の昇温速度で再加熱した後、空冷することを特徴とする高強度低降伏比鋼材の製造方法。
  5. さらに、400℃以上、Ac点以下で焼戻すことを特徴とする請求項4に記載した高強度低降伏比鋼材の製造方法。
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