JP2009221482A - ポリエステル及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】生分解性速度を制御することが可能になったジオール及びジカルボン酸を構成成分とするポリエステルを提供する。
【解決手段】ジオール及びジカルボン酸を構成成分とし、該原料の少なくとも一つの成分がバイオマス資源から誘導されたものであり、ポリエステル中の硫黄原子含有量を原子換算として0.0001ppm以上50ppm以下にすることにより、高分子量の生分解性ポリエステルが得られ、環境問題、化石燃料資源の枯渇問題等の解決に大きく貢献し、実用的な物性を有する樹脂。
【選択図】なし

Description

本発明は、ジオール単位およびジカルボン酸単位を構成成分として含有するポリエステルならびにその製造方法に関する。
現代社会において、各種食品、薬品、雑貨用等の液状物や粉粒物、固形物の包装用資材、農業用資材、建築資材など幅広い用途で、紙、プラスチック、アルミ箔等が用いられている。特にプラスチックは強度、耐水性、成形性、透明性、コスト等において優れており、袋や容器として、多くの用途で使用されている。現在これらの用途に使用されているプラスチックとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等がある。しかしながら、上記プラスチックからなる成形品は、自然環境下においては生分解又は加水分解されないか、又は分解速度が極めて遅いために、使用後埋設処理された場合は土中に残存したり、投棄された場合は景観を損ねたりすることがある。また、焼却処理された場合でも、有害なガスを発生したり、焼却炉を傷めたりするなどの問題がある。
そこで上述の問題を解決する手段として、土中又は水中の微生物によって炭酸ガスと水に分解される生分解性を有する材料についての研究が数多くなされてきた。生分解性材料の代表例としては、ポリ乳酸、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネートアジペートといった脂肪族ポリエステル樹脂やポリブチレンアジペートテレフタレートといった芳香族−脂肪族共重合ポリエステル系樹脂が挙げられる。
その中でポリ乳酸は最も代表的なポリエステルの一つであるが、生分解性速度が極めて緩慢であることが大きな問題である(参考非特許文献1)。一方、ポリエチレンと似た力学特性を持つポリブチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネートアジペート等は、生分解性速度が比較的速い脂肪族ポリエステルであり、使用済みの成形品を生分解させたり、コンポスト化するのが容易であるという利点があるが、未だその速度は充分でなく、またその速度を制御する手法は開発されていない。
ところで、このようなポリエステルは、現在、化石燃料資源由来の原料を重縮合することにより製造されているが、近年の化石燃料資源枯渇への危惧や大気中の二酸化炭素増加という地球規模での環境問題の背景から、バイオマス資源からこれらのポリマーの原料を誘導する手法に注目が注がれている。これらの手法は、この資源が再生可能な資源である為、カーボンニュートラルの観点から今後特に重要なプロセスになると予想されている。
これまでに、発酵法を利用したバイオマス資源由来のグルコース、ブドウ糖、セルロース、油脂などからコハク酸、アジピン酸などのジカルボン酸を製造する技術が開発されてきた(特許文献1、非特許文献1、2、3参照)。
しかしながら、これらのプロセスは、発酵により一旦ジカルボン酸を有機酸塩として得た後に中和、抽出、晶析等の工程を経て目的とするジカルボン酸を製造するプロセスである為、ジカルボン酸中には、バイオマス資源に含まれる窒素原子の他、発酵菌由来の窒素原子やアンモニアならびに金属カチオン等の多くの不純物が混入する特徴がある。
本発明者らは、従来からある生分解性ポリエステルは、生分解性樹脂としての生分解性速度が充分でないとの知見を得た。また、本発明者らは、特定の原料から製造されるポリエステルに関して、その生分解性速度を使用する用途に応じて自在に制御する手法を開発すれば環境問題にも大きく貢献できるのではないかと考えた。本発明は、実用的な物性を有し、且つ生分解性速度の制御が可能な着色の少ない高分子量ポリエステルを提供することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、ポリエステル中に特定範囲内の含有量の硫黄原子が存在すると樹脂の生分解速度が向上するとの知見を得た。このことは、ポリエステル中の硫黄原子の含有量を制御すると樹脂の生分解性速度を制御できることを意味する。
即ち本発明の第1の特徴は、ジオール単位及びジカルボン酸単位を構成成分とするポリエステルであって、該ポリエステル中の硫黄原子含有量が該ポリエステルに対して質量比で0.0001ppm以上50ppm以下であるポリエステルである。
第2は、ジカルボン酸単位が、バイオマス資源から誘導されるものであることを特徴とするポリエステルである。
第3は、バイオマス資源が、植物資源であることを特徴とするポリエステルである。
第4は、ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)が、0.5以上であることを特徴とするポリエステルである。
第5は、ポリエステル中のカルボキシル基末端濃度が、50当量/トン以下であることを特徴とするポリエステルである。
第6は、ポリエステルが、3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸および3官能以上のオキシカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の3官能以上の多官能化合物単位を含有することを特徴とするポリエステルである。
第7は、3官能以上の多官能化合物単位の含有量が、ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対して、0.0001モル%以上0.5モル%以下であることを特徴とするポリエステルである。
第8は、ジカルボン酸単位がバイオマス資源から誘導されたコハク酸単位であることを特徴とするポリエステルである。
第9は、本発明のポリエステル99.9〜0.1重量%に対して熱可塑性樹脂、生分解性樹脂、天然樹脂、または多糖類を0.1〜99.9重量%配合したことを特徴とするポリエステル樹脂組成物である。
第10は、本発明のポリエステルを成形してなる成形体である。
第11は、ジカルボン酸とジオールとの反応によりポリエステルを製造する方法において、反応に供するジカルボン酸がバイオマス資源から誘導されたものであり,該ジカルボン酸中の硫黄原子含有量が,該ジカルボン酸に対して質量比で0.01ppm以上100ppm以下であることを特徴とするポリエステルの製造方法というものである。
本発明によれば、生分解性速度の制御が可能で、着色が少なく、機械的物性に優れ様々な用途展開可能な高分子量ポリエステルを提供できる。また、この手法の開発は、環境問題、化石燃料資源の枯渇問題等の解決に大きく貢献し、実用的な物性を有する樹脂を提供することができる。特に、現在の大気圏の地球環境下で植生した天然材料から発酵等の手法により入手した、いわゆるジオール単位またはジカルボン酸単位をポリエステルのモノマーとして使用するために、原料が非常に安価に入手できる。植物原料生産が各地に分散して多様化できるので、原料供給が非常に安定していること、および大気圏の地球環境下において為されるために、二酸化炭素の吸収および放出の物質収支の較差が比較的均衡している。しかも環境に非常に優しい、安全なポリエステルと認識できる。このような本発明のポリエステルは、材料の物性、構造および機能において評価できるばかりでなく、化石燃料由来のポリエステルには全く期待できない、リサイクルを含めた循環型社会の実現性を潜在的に保有する利点を有する。これは、従来型の化石燃料依存型の指向とは異なる、あらたな視点のポリエステル製造プロセスを提供するものであるから、新たな第2ステージのプラスチックという、全く新たな視点から、プラスチック材料の利用および発展に著しく寄与するものである。本発明のポリエステルは、土壌投棄をやめて仮に焼却処分しても、有害物、悪臭を発生することが少ない。
pKMB1の構築の概略を示す。 pKMB1/ΔLDHの構築の概略を示す。 pTZベクターの構築の概略を示す。 pMJPC1の構築の概略を示す。
以下、本発明につき詳細に説明する。
<ポリエステル>
本発明の対象とするポリエステルは、ジカルボン酸単位およびジオール単位を必須成分とする。なお、本発明においてジカルボン酸単位およびジオール単位を構成するジカルボン酸及びジオールは、少なくともいずれかがバイオマス資源から誘導されたものであることが好ましい。
・ ジカルボン酸単位
ジカルボン酸単位を構成するジカルボン酸としては、脂肪族ジカルボン酸又はそれらの混合物、若しくは、芳香族ジカルボン酸又はそれらの混合物、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸との混合物が挙げられる。これらの中でも脂肪族ジカルボン酸を主成分とするものが好ましい。本発明でいう主成分とは、全ジカルボン酸単位に対して、通常50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上を示す。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸及びイソフタル酸等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステル、具体的には、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等が挙げられる。この内、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸が好ましく、芳香族ジカルボン酸の誘導体としては、ジメチルテレフタレートが好ましい。本件明細書に開示の芳香族ジカルボン酸を使用した場合にも、例えばジメチルテレフタレートと1,4−ブタンジオールのポリエステルのように任意の芳香族ジカルボン酸を使用することにより所望の芳香族ポリエステルが製造できる。
脂肪族ジカルボン酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸又はその誘導体が使用される。脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸ならびにシクロヘキサンジカルボン酸等の、通常、炭素数が2以上40以下の鎖状或いは脂環式ジカルボン酸が挙げられる。また、脂肪族ジカルボン酸の誘導体として、上記脂肪族ジカルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びブチルエステル等の低級アルキルエステルや例えば無水コハク酸等の上記脂肪族ジカルボン酸の環状酸無水物も使用できる。これらの内、脂肪族ジカルボン酸としては、得られる重合体の物性の面から、アジピン酸、コハク酸、ダイマー酸またはこれらの混合物が好ましく、コハク酸を主成分とするものが特に好ましい。脂肪族ジカルボン酸の誘導体としては、アジピン酸及びコハク酸のメチルエステル、またはこれらの混合物がより好ましい。
これらのジカルボン酸は単独でも2種以上混合して使用することもできる。
本発明において、これらのジカルボン酸は、バイオマス資源から誘導されるものが好ましい。
本発明でいうバイオマス資源とは、植物の光合成作用で太陽の光エネルギーがデンプンやセルロースなどの形に変換されて蓄えられたもの、植物体を食べて成育する動物の体や、植物体や動物体を加工してできる製品等が含まれる。この中でも、より好ましいバイオマス資源としては、植物資源であるが、例えば、木材、稲わら、籾殻、米ぬか、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、そば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣、水産物残渣、家畜排泄物、下水汚泥、食品廃棄物等が挙げられる。この中でも木材、稲わら、籾殻、米ぬか、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、おから、コーンコブ、タピオカカス、バガス、植物油カス、芋、そば、大豆、油脂、古紙、製紙残渣等の植物資源が好ましく、より好ましくは、木材、稲わら、籾殻、古米、とうもろこし、サトウキビ、キャッサバ、サゴヤシ、芋、油脂、古紙、製紙残渣であり、最も好ましくはとうもろこし、さとうきび、キャッサバ、サゴヤシである。これらのバイオマス資源は、一般に、窒素原子やNa、K、Mg、Ca等の多くのアルカリ金属、アルカリ土類金属を含有する。
そしてこれらのバイオマス資源は、特に限定はされないが、例えば酸やアルカリ等の化学処理、微生物を用いた生物学的処理、物理的処理等の公知の前処理・糖化の工程を経て炭素源へ誘導される。その工程には、例えば、通常、特に限定はされないが、バイオマス資源をチップ化する、削る、擦り潰す等の前処理による微細化工程が含まれる。必要に応じて、更にグラインダーやミルで粉砕工程が含まれる。こうして微細化されたバイオマス資源は、更に前処理・糖化の工程を経て炭素源へ誘導されるが、その具体的な方法としては、硫酸、硝酸、塩酸、燐酸等の強酸で酸処理、アルカリ処理、アンモニア凍結蒸煮爆砕法、溶媒抽出、超臨界流体処理、酸化剤処理等の化学的方法や、微粉砕、蒸煮爆砕法、マイクロ波処理、電子線照射等の物理的方法、微生物や酵素処理による加水分解等生物学的処理が挙げられる。
上記のバイオマス資源から誘導される炭素源としては、通常、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、タガトース等のヘキソース、アラビノース、キシロース、リボース、キシルロース、リブロース等のペントース、ペントサン、サッカロース、澱粉、セルロース等の2糖・多糖類、酪酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、モノクチン酸、アラキジン酸、エイコセン酸、アラキドン酸、ベヘニン酸、エルカ酸、ドコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リグノセリン酸、セラコレン酸等の油脂、グリセリン、マンニトール、キシリトール、リビトール等のポリアルコール類等の発酵性糖質が用いられ、このうちグルコース、フルクトース、キシロースが好ましく、特にグルコースが好ましい。より広義の植物資源由来の炭素源としては、紙の主成分であるセルロースが好ましい。
これらの炭素源を用いて、微生物変換による発酵法や加水分解・脱水反応・水和反応・酸化反応等の反応工程を含む化学変換法ならびにこれらの発酵法と化学変換法の組み合わせによりジカルボン酸が合成される。これらの中でも微生物変換による発酵法が好ましい。
微生物変換に用いる微生物としては、ジカルボン酸の生産能を有すれば特に限定されないが、例えば、Anaerobiospirillum属 (米国特許第5143833号明細書)等の嫌気性細菌、Actinobacillus属(米国特許第5504004号明細書)、Escherichia属(米国特許第5770435号明細書)等の通性嫌気性細菌、Corynebacterium属(特開平11−113588号公報)などの好気性細菌、Bacillus属、Rizobium属、Brevibacterium属、Arthrobacter属に属する好気性細菌(特開2003−235593号公報)、Bacteroidesruminicola、Bacteroidesamylophilus等の嫌気性ルーメン細菌、E.coli(J.Bacteriol.,57:147−158)又はE.coliの株の変異体(特表2000−500333号公報、米国特許第6159738号明細書)を用いることができる。
より具体的には、本発明に使用できる細菌の親株は、コリネ型細菌(coryneform bacterium)、バチルス属細菌、又はリゾビウム属細菌が好ましく、コリネ型細菌がより好ましい。これらの菌は、微生物変換により琥珀酸の生産能を有する。
コリネ型細菌としては、コリネバクテリウム属に属する微生物、ブレビバクテリウム属に属する微生物又はアースロバクター属に属する微生物が挙げられ、このうち好ましくは、コリネバクテリウム属又はブレビバクテリウム属に属するものが挙げられ、更に好ましくは、コリネバクテリウム・グルタミカム(Corynebacterium glutamicum)、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevibacterium flavum)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス(Brevibacterium ammoniagenes)又はブレビバクテリウム・ラクトファーメンタム(Brevibacterium lactofermentum)に属する微生物が挙げられる。
上記細菌の親株の特に好ましい具体例としては、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233(FERM BP−1497)、同MJ−233 AB−41(FERM BP−1498)、ブレビバクテリウム・アンモニアゲネス ATCC6872、コリネバクテリウム・グルタミカム ATCC31831、及びブレビバクテリウム・ラクトファーメンタムATCC13869等が挙げられる。なお、ブレビバクテリウム・フラバムは、現在、コリネバクテリウム・グルタミカムに分類される場合もあることから(Lielbl, W., Ehrmann, M., Ludwig, W. and Schleifer, K. H., International Journal of Systematic Bacteriology, 1991, vol. 41, p255−260)、本発明においては、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233株、及びその変異株MJ−233 AB−41株はそれぞれ、コリネバクテリウム・グルタミカムMJ−233株及びMJ−233 AB−41株と同一の株であるものとする。
なお、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233は、1975年4月28日に、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所(現独立法人 産業技術総合研究所 特許寄託センター)(〒305−8566日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に受託番号FERM P−3068として寄託され、1981年5月1日にブダペスト条約に基づく国際寄託に移管され、受託番号FERM BP−1497が付与されている。
微生物変換における反応温度、圧力等の反応条件は、選択される菌体、カビなど微生物の活性に依存することになるが、ジカルボン酸を得るための好適な条件を各々の場合に応じて選択すればよい。
微生物変換においては、pHが低くなると微生物の代謝活性が低くなったり、或いは微生物が活動を停止するようになり、製造歩留まりが悪化したり、微生物が死滅するため、通常には中和剤を使用する。通常はpHセンサーによって反応系内のpHを計測し、所定のpH範囲となるように中和剤の添加によりpHを調節する。中和剤の添加方法については特に制限はなく、連続添加であっても間欠添加であってもよい。
中和剤としてはアンモニア、炭酸アンモニウム、尿素、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ土類金属の炭酸塩が挙げられる。好ましくはアンモニア、炭酸アンモニウム、尿素である。なお上記アルカリ(土類)金属の水酸化物としてはNaOH、KOH、Ca(OH)、Mg(OH)等、或いはこれらの混合物などが挙げられ、アルカリ(土類)金属の炭酸塩としては、NaCO、KCO、CaCO、MgCO、NaKCO等、或いはこれらの混合物などが挙げられる。
pH値は、用いる菌体、カビ等の微生物の種類に応じて、その活性が最も有効に発揮される範囲に調整されるが、一般的には、pH4〜10、好ましくは6〜9程度の範囲である。
発酵法を含む製造方法により得られるジカルボン酸の精製方法は、電気透析を用いる方法、イオン交換樹脂を用いる方法、塩交換法等が知られている。例えばジカルボン酸塩を分離し純粋な酸を生成する電気透析および水分解工程を組み合わせて用いることによって製造し、更なる精製を、一連のイオン交換カラムに生成物ストリームを通すことによって達成しても良いし、ジカルボン酸の過飽和溶液に変換するための水分解電気透析を用いても良い(米国特許第5,034,105号明細書)。また、塩交換法としては、例えばジカルボン酸のアンモニア塩を硫酸水素アンモニウム及び/または硫酸と十分に低いpHで混合して反応させジカルボン酸及び硫酸アンモニウムを生成させても良い(特表2001−514900号公報)。イオン交換樹脂を用いる具体的方法としては、ジカルボン酸の溶液から遠心分離、濾過等により菌体等の固形分を除去した後、イオン交換樹脂で脱塩し、その溶液から結晶化或いはカラムクロマトグラフィーによりジカルボン酸を分離精製する方法が挙げられる。その他の精製方法としては、特開平3−30685号公報に記載のように水酸化カルシウムを中和剤として醗酵し、硫酸により硫酸カルシウムを析出させて除去した後、強酸性イオン交換樹脂、弱塩基性イオン交換樹脂を用いて処理する方法や特開平2−283289号公報に記載のように発酵法により生成した琥珀酸塩を、電気透析した後、強酸性イオン交換樹脂、弱塩基性イオン交換樹脂を用いて処理する方法が例示される。更には、USP6284904号明細書ならびに特開2004−196768号公報に記載の方法も好適に使用される。すなわち、本発明においては、精製方法はどのような方法を用いても良く、上記の、電気透析を用いる方法、イオン交換樹脂を用いる方法、硫酸等の酸で処理する方法、水、アルコール、カルボン酸或いはそれらの混合物を用いた晶析ならびに洗浄、ろ過、乾燥などの上記の公知文献や本発明の参考例に記載の任意の単位操作を任意の組み合わせで、必要に応じて繰り返し実施することにより本発明に適した精製されたモノマー原料を製造することができる。これらの中では、特に、コスト、効率の点でイオン交換法又は塩交換法が好ましく、工業的生産性の点で塩交換法が特に好ましい。
精製によりジカルボン酸中に含まれる不純物の窒素化合物や金属カチオンの量を減らすことが、通常、実用的な重合体を得るために必要である。
上述の方法にてバイオマス資源から誘導されたジカルボン酸には、バイオマス資源由来、発酵処理ならびに酸による中和工程を含む精製処理に起因して不純物として窒素原子が含まれてくる。具体的には、アミノ酸、たんぱく質、アンモニウム塩、尿素、発酵菌由来等の窒素原子が含まれてくる。
上述の方法にてバイオマス資源から誘導されたジカルボン酸中に含まれる窒素原子含有量は、ジカルボン酸中に、原子換算として、上限は通常2000ppm以下、好ましくは、1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下である。下限は通常、0.01ppm以上、好ましくは0.05ppm以上、精製工程の経済性の理由からより好ましくは0.1ppm以上、更に好ましくは1ppm以上、特に好ましくは10ppm以上である。
窒素原子含有量は、元素分析法等の公知の方法や、アミノ酸分析計を用い、生体アミノ酸分離条件にて試料中のアミノ酸やアンモニアを分離し、これらをニンヒドリン発色させて検出する方法により測定される値である。
窒素原子含有量が上記の範囲にあるジカルボン酸を用いることで、得られるポリエステルの着色の減少に有利になる。また、ポリエステルの重合反応の遅延化を抑制する効果も併せ持つ。
ジカルボン酸中に含まれる不純物のアンモニアの量を効率的に減らす具体的な方法として、目的とするジカルボン酸よりもpHの高い弱酸性の有機酸を使用した反応晶析方法が挙げられる。
また、発酵法により製造したジカルボン酸を用いる場合には、酸による中和工程を含む精製処理により硫黄原子が含まれてくる場合がある。具体的に、硫黄原子が含有される不純物としては、硫酸、硫酸塩、亜硫酸、有機スルホン酸、有機スルホン酸塩等が挙げられる。
ジカルボン酸中に含まれる硫黄原子含有量は、ジカルボン酸中に、原子換算として、上限は通常100ppm以下、好ましくは、20ppm以下、より好ましくは、上限が10ppm以下、特に好ましくは、上限が5ppm以下、最も好ましくは、上限は0.5ppm以下である。一方、下限は通常、0.001ppm以上、好ましくは、0.01ppm以上、より好ましくは、0.05ppm以上、特に好ましくは、0.1ppm以上である。多すぎると、重合反応の遅延化や生成ポリマーの一部ゲル化、そして生成ポリマーの安定性の低下などが引き起こされる傾向がある。一方、少なすぎる系は、好ましい形態であるが、精製工程が煩雑となり経済的に不利になる。硫黄原子含有量は、公知の元素分析法により測定される値である。
本発明において、上述の方法で得られたバイオマス資源由来のジカルボン酸をポリエステル原料として使用するにあたり、重合系に連結される該ジカルボン酸を貯蔵するタンク内の酸素濃度を一定値以下に制御してもよい。これによりポリエステルの不純物である窒素源の酸化反応による着色を防止することができる。
酸素濃度を制御し原料を貯蔵するためには、通常タンクが用いられる。しかし、タンク以外でも酸素濃度を制御できる装置であれば特に限定されない。貯蔵タンクの種類は具体的には限定は無く、公知の金属製もしくはこれらの内面にガラス、樹脂などのライニングを施したもの、さらにはガラス製、樹脂製の容器などが用いられる。強度の面などから金属製もしくはそれらにライニングを施したものが好んで用いられる。金属製タンクの材としては、公知のものが使用され、具体的には、炭素鋼、フェライト系ステンレス鋼、SUS410等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS310、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼、クラッド鋼、鋳鉄、銅、銅合金、アルミニウム、インコネル、ハステロイ、チタン等が挙げられる。
ジカルボン酸の貯蔵タンク内の酸素濃度は、貯蔵タンク全体積に対して、下限は特に限定されないが、通常0.00001%以上、好ましくは0.01%以上である。一方、上限が16%以下、好ましくは14%以下、より好ましくは、12%以下である。酸素濃度が低すぎる場合には、設備や管理工程が煩雑になり経済的に不利であり、一方、高すぎる場合には、製造されるポリマーの着色が増加する傾向がある。
ジカルボン酸の貯蔵タンク内の温度は、下限が通常−50℃以上、好ましくは0℃以上である。一方、上限が通常200℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは、50℃以下であるが、温度管理の必要がない理由から室温で貯蔵する方法が最も好ましい。温度が低すぎる場合には、貯蔵コストが増大する傾向があり、また、高すぎる場合には、カルボン酸の脱水反応等が併発する傾向がある。
ジカルボン酸の貯蔵タンク内の湿度は、貯蔵タンク全体積に対して、下限は特に限定されないが、通常0.0001%以上、好ましくは 0.001%以上であり、より好ましくは、0.01%以上、最も好ましくは、0.1%以上であり、上限が80%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは、40%以下である。湿度が低すぎる場合には、管理工程が煩雑で経済的に不利になる傾向があり、また、高すぎる場合には、貯蔵タンクや配管へのジカルボン酸の付着、ジカルボン酸のブロック化、貯蔵タンクが金属製の場合にはタンクの腐食等が問題になる傾向がある。
ジカルボン酸の貯蔵タンク内の圧力は、通常、大気圧(常圧)である。
本発明で使用されるジカルボン酸は、通常、着色の少ないものであることが好ましい。本発明で使用されるジカルボン酸の黄色度(YI値)は、その上限が、通常、50以下、好ましくは20以下、より好ましくは10以下、更に好ましくは6以下、特に好ましくは4以下であり、一方、その下限は、特には限定されないが、通常−20以上、好ましくは、−10以上、より好ましくは、−5以上、特に好ましくは−3以上、最も好ましくは−1以上である。高いYI値を示すジカルボン酸の使用は、製造するポリマーの着色が著しい欠点を有する。一方、低いYI値を示すジカルボン酸は、より好ましい形態ではあるが、その製造に極めて高額の設備投資を要する他、多大な製造時間を要するなど経済的に不利な点である。本発明において、YI値は、JIS K7105に基づく方法で測定される値である。
(2)ジオール単位
本発明においてジオール単位とは、芳香族ジオール及び/又は脂肪族ジオールから誘導されるものであり、公知の化合物を用いることができるが、脂肪族ジオールを使用するのが好ましい。
脂肪族ジオールとは、2個のOH基を有する脂肪族及び脂環式化合物であれば特に制限はされないが、炭素数の下限値が2以上であり、上限値が通常10以下、好ましくは6以下の脂肪族ジオールが挙げられる。これらの中では、より融点の高いポリマーが得られる理由から偶数のジオール又はそれらの混合物が好ましい。
脂肪族ジオールの具体例としては、例えば、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコ−ル、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、デカメチレングリコール、1,4−ブタンジオール及び1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらは、単独でも2種以上の混合物として使用してもよい。
この内、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−プロピレングリコ−ル及び1,4−シクロヘキサンジメタノ−ルが好ましく、その中でも、エチレングリコール及び1,4−ブタンジオ−ル、及びこれらの混合物が好ましく、更には、1,4−ブタンジオ−ルが主成分とするもの、または、1,4−ブタンジオ−ルが特に好ましい。ここでいう主成分とは、全ジオール単位に対して、通常50モル%以上、好ましくは60モル%以上、より好ましくは70モル%以上、特に好ましくは90モル%以上を示す。
芳香族ジオールとしては、2個のOH基を有する芳香族化合物であれば、特に制限はされないが、炭素数の下限値が6以上であり、上限値が通常15以下の芳香族ジオールが挙げられる。芳香族ジオールの具体例としては、例えば、ヒドロキノン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、4,4‘−ジヒドロキシジフェニル、ビス(p−ヒドロキシフェニル)メタン及びビス(p−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン等が挙げられる。本発明において、ジオール全量中、芳香族ジオールの含有量は、通常、30モル%以下、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。
また、両末端ヒドロキシポリエーテルを上記の脂肪族ジオールと混合して使用してもよい。両末端ヒドロキシポリエーテルとしては、炭素数は下限値が通常4以上、好ましくは10以上であり、上限値が通常1000以下、好ましくは200以下、更に好ましくは100以下である。
両末端ヒドロキシポリエーテルの具体例としては、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ1,3−プロパンジオール及びポリ1,6−ヘキサメチレングリコール等が挙げられる。また、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールとの共重合ポリエーテル等を使用することもできる。これらの両末端ヒドロキシポリエーテルの使用量は、ポリエステル中の含量として、通常90重量%以下、好ましくは50重量%以下、より好ましくは30重量%以下に計算される量である。
本発明において、これらのジオールは、バイオマス資源から誘導されたものを用いてもよい。具体的には、ジオール化合物はグルコース等の炭素源から発酵法により直接製造してもよいし、発酵法により得られたジカルボン酸、ジカルボン酸無水物、環状エーテルを化学反応によりジオール化合物に変換しても良い。
例えば発酵法により得られたコハク酸、コハク酸無水物、コハク酸エステル、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸エステル、テトラヒドロフラン、γ−ブチロラクトン等から化学合成により1,4−ブタンジオールを製造しても良いし、発酵法により得られた1,3−ブタジエンから1,4−ブタンジオールを製造してもよい。この中でもコハク酸を還元触媒により水添して1,4−ブタンジオールを得る方法が効率的で好ましい。
コハク酸を水添する触媒の例として、Pd、Ru、Re、Rh、Ni、Cu、Co及びその化合物が挙げられ、より具体的には、Pd/Ag/Re、Ru/Ni/Co/ZnO、Cu/Zn酸化物、Cu/Zn/Cr酸化物、Ru/Re、Re/C、Ru/Sn、Ru/Pt/Sn、Pt/Re/アルカリ、Pt/Re、Pd/Co/Re、Cu/Si、Cu/Cr/Mn、ReO/CuO/ZnO、CuO/CrO、Pd/Re、Ni/Co、Pd/CuO/CrO、リン酸Ru、Ni/Co、Co/Ru/Mn、Cu/Pd/KOH、Cu/Cr/Znが挙げられる。この中でもRu/Sn又はRu/Pt/Snが触媒活性の点で好ましい。
更に、バイオマス資源から公知の有機化学触媒反応の組み合わせによりジオール化合物を製造する方法も積極的に用いられる。例えば、バイオマス資源としてペントースを利用する場合には公知の脱水反応、触媒反応の組み合わせで容易にブタンジオール等のジオールを製造できる。
バイオマス資源由来から誘導されたジオールには、バイオマス資源由来、発酵処理ならびに酸による中和工程を含む精製処理に起因して不純物として窒素原子が含まれてくる場合がある。この場合、具体的には、アミノ酸、蛋白質、アンモニア、尿素、発酵菌由来の窒素原子が含まれてくる。
発酵法により製造したジオール中に含まれる窒素原子含有量は、ジオール中に、原子換算として、上限は通常2000ppm以下、好ましくは、1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下、最も好ましくは50ppm以下である。下限は特に制限されないが、通常、0.01ppm以上、好ましくは0.05ppm以上、精製工程の経済性の理由からより好ましくは0.1ppm以上、更に好ましくは1ppm以上、特に好ましくは10ppm以上である。
発酵法により製造したジオールを用いる場合には、酸による中和工程を含む精製処理により硫黄原子が含まれてくる場合がある。この場合、具体的に、硫黄原子が含有される不純物としては、硫酸、亜硫酸、有機スルホン酸塩等が挙げられる。
ジオール中に含まれる硫黄原子含有量は、ジオール中に、原子換算として、上限は通常100ppm以下、好ましくは、20ppm以下、より好ましくは、上限が10ppm以下、特に好ましくは、上限が5ppm以下、最も好ましくは、上限は0.5ppm以下である。一方、下限は特に制限されないが、通常、0.001ppm以上、好ましくは、0.01ppm以上、より好ましくは、0.05ppm以上、特に好ましくは、0.1ppm以上である。多すぎると、重合反応の遅延化や生成ポリマーの一部ゲル化、そして生成ポリマーの安定性の低下などが引き起こされる傾向がある。一方、硫黄原子含有量が少ない程、好ましい形態であるが、精製工程が煩雑となり経済的に不利になる。硫黄原子含有量は、公知の元素分析法により測定される値である。
本発明において、上述の方法で得られたバイオマス資源由来のジオールをポリエステル原料として使用するにあたり、上記不純物に起因するポリエステルの着色を抑制するため、重合系に連結されるジオールを貯蔵するタンク内の酸素濃度や温度を制御してもよい。この制御により、不純物自身の着色や不純物により促進されるジオールの酸化反応が抑制され、例えば、1,4−ブタンジオールを使用する場合の2−(4−ヒドロキシブチルオキシ)テトラヒドロフラン等のジオール酸化生成物によるポリエステルの着色を防止することができる。
酸素濃度を制御し原料を貯蔵するためには、通常タンクが用いられる。しかし、タンク以外でも酸素濃度を制御できる装置であれば特に限定されない。貯蔵タンクの種類は具体的には限定は無く、公知の金属製もしくはこれらの内面にガラス、樹脂などのライニングを施したもの、さらにはガラス製、樹脂製の容器などが用いられる。強度の面などから金属製もしくはそれらにライニングを施したものが好んで用いられる。金属製タンクの材としては、公知のものが使用され、具体的には、炭素鋼、フェライト系ステンレス鋼、SUS410等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS310、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼、クラッド鋼、鋳鉄、銅、銅合金、アルミニウム、インコネル、ハステロイ、チタン等が挙げられる。
ジオールの貯蔵タンク内の酸素濃度は、貯蔵タンク全体積に対して、下限は特に限定されないが、通常0.00001%以上、好ましくは 0.0001%以上であり、より好ましくは、0.001%以上、最も好ましくは、0.01%以上であり、上限が通常10%以下、好ましくは 5%以下、より好ましくは、1%以下、最も好ましくは、0.1%以下である。酸素濃度が低すぎる場合には、管理工程が煩雑となり経済的に不利になる傾向があり、また、高すぎる場合には、ジオールの酸化反応生成物によるポリマーの着色が増大する傾向がある。
ジオールの貯蔵タンク内の貯蔵温度は、下限が通常15℃以上、好ましくは 30℃以上であり、より好ましくは、50℃以上、最も好ましくは、100℃以上であり、上限が230 ℃以下、好ましくは200℃以下、より好ましくは、180℃以下、最も好ましくは、160℃以下である。温度が低すぎる場合には、ポリエステル製造時の昇温に時間を要し、ポリエステル製造が経済的に不利になる傾向があるばかりかジオールの種類によっては固化してしまう場合がある。一方、高すぎる場合には、ジオールの気化により高圧対応の貯蔵設備が必要となり経済的に不利になるばかりかジオールの劣化が増大する傾向がある。
ジオールの貯蔵タンク内の圧力は、通常大気圧(常圧)である。圧力が低すぎたり、高すぎる場合には、管理設備が煩雑になり経済的に不利となる。
本発明において、色相の良いポリマー製造に用いられるジオールの酸化生成物の含有量の上限は、通常、ジオール中、10000ppm以下、好ましくは、5000ppm以下、より好ましくは3000ppm以下、最も好ましくは2000ppm以下である。一方、下限は特に制限されないが、通常、1ppm以上、好ましくは、精製工程の経済性の理由から10ppm以上、より好ましくは100ppm以上である。
本発明のポリエステルとは、上記に列挙したジカルボン酸単位およびジオール単位の範疇に属する各種化合物を主体とする成分の反応により製造されるポリエステルはすべて本発明のポリエステルに含まれるが、典型的なものとして、以下のポリエステルが具体的に例示できる。
コハク酸を用いたポリエステルとしては、コハク酸とエチレングリコールのポリエステル、コハク酸と1,3−プロピレングリコ−ルのポリエステル、コハク酸とネオペンチルグリコールのポリエステル、コハク酸と1,6−ヘキサメチレングリコールのポリエステル、コハク酸と1,4−ブタンジオールのポリエステル及びコハク酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールのポリエステルなどが例示できる。
シュウ酸を用いたポリエステルとしては、シュウ酸とエチレングリコールのポリエステル、シュウ酸と1,3−プロピレングリコ−ルのポリエステル、シュウ酸とネオペンチルグリコールのポリエステル、シュウ酸と1,6−ヘキサメチレングリコールのポリエステル、シュウ酸と1,4−ブタンジオールのポリエステル及びシュウ酸と1,4−シクロヘキサンジメタノールのポリエステルなどが例示できる。
アジピン酸を用いたポリエステルとしては、アジピン酸とエチレングリコールのポリエステル、アジピン酸と1,3−プロピレングリコ−ルのポリエステル、アジピン酸とネオペンチルグリコールのポリエステル、アジピン酸と1,6−ヘキサメチレングリコールのポリエステル、アジピン酸と1,4−ブタンジオールのポリエステル及びアジピン酸1,4−シクロヘキサンジメタノールのポリエステルなどが例示できる。
その他、上記のジカルボン酸を組み合わせたポリエステルも好ましい組み合わせであり、コハク酸とアジピン酸とエチレングリコールのポリエステル、コハク酸とアジピン酸と1,4−ブタンジオールのポリエステル、テレフタル酸とアジピン酸と1,4−ブタンジオールのポリエステル及びテレフタル酸とコハク酸と1,4−ブタンジオールのポリエステルなどが例示できる。
本発明は、上記のジオール成分とジカルボン酸成分に加えて、第3成分として共重合成分を加えた共重合ポリエステルも対象としている。その共重合成分の具体的な例としては、2官能のオキシカルボン酸や、架橋構造を形成するために3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸及び/又はその無水物並びに3官能以上のオキシカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の多官能化合物が挙げられる。これらの共重合成分の中では、高重合度の共重合ポリエステルが容易に製造できる傾向があるため、特に2官能及び/又は3官能以上のオキシカルボン酸が好適に使用される。その中でも、3官能以上のオキシカルボン酸の使用は、後述する鎖延長剤を使用することなく、極少量で容易に高重合度のポリエステルを製造できるのでもっとも好ましい方法である。
2官能のオキシカルボン酸としては、具体的には、乳酸、グリコール酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、カプロラクトン等が挙げられるが、これらはオキシカルボン酸のエステルやラクトン、或いはオキシカルボン酸重合体等の誘導体であっても良い。また、これらオキシカルボン酸は単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体、またはラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体、または水溶液であってもよい。これらの中では、入手の容易な乳酸またはグリコール酸が特に好ましい。形態は、30〜95%の水溶液のものが容易に入手することができるので好ましい。高重合度のポリエステルを容易に製造する目的で2官能のオキシカルボン酸を共重合成分として使用する場合、任意の2官能のオキシカルボン酸を重合時に添加すると所望の共重合ポリエステルが製造できる。具体的には、その効果が発現する使用量の下限としては、通常、原料モノマーに対して通常、0.02モル%以上、好ましくは0.5モル%以上、より好ましくは1.0モル%以上である。一方、使用量の上限は、通常30モル%以下、好ましくは20モル%以下、より好ましくは10モル%以下である。
具体的にそのポリエステルの態様を示すと、2官能のオキシカルボン酸として乳酸を用いると、例えば、コハク酸−1,4−ブタンジオール−乳酸の共重合ポリエステルやコハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−乳酸の共重合ポリエステルとなる。グリコール酸を用いると、例えば、コハク酸−1,4−ブタンジオール−グリコール酸の共重合ポリエステルである。
3官能以上の多価アルコールとしては、具体的には、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられ、単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。
共重合成分の3官能以上の多価アルコールとしてペンタエリスリトールを用いると、例えば、コハク酸−1,4−ブタンジオール−ペンタエリスリトールの共重合ポリエステルやコハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−ペンタエリスリトールの共重合ポリエステルとなる。3官能以上の多価アルコールを任意に変えて、所望の共重合ポリエステルが製造できる。これらの共重合ポリエステルを鎖延長(カップリング)した高分子量のポリエステルも本発明のポリエステルの範疇に属する。
3官能以上の多価カルボン酸またはその無水物としては、具体的には、プロパントリカルボン酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、シクロペンタテトラカルボン酸無水物等が挙げられ、単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。
3官能以上のオキシカルボン酸としては、具体的には、リンゴ酸、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキシメチルグルタル酸、酒石酸、クエン酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸等が挙げられ、単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。特に、入手のし易さから、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸ならびにその混合物が好ましい。
具体的にそのポリエステルの態様を示すと、共重合成分の3官能のオキシカルボン酸としてリンゴ酸を用いる場合、例えば、コハク酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸の共重合ポリエステル、コハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸の共重合ポリエステル、コハク酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−酒石酸の共重合ポリエステル、コハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−酒石酸の共重合ポリエステル、コハク酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−クエン酸の共重合ポリエステル、コハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−クエン酸の共重合ポリエステルとなる。3官能のオキシカルボン酸を任意に変えて、所望の共重合ポリエステルが製造できる。
勿論、更に2官能のオキシカルボン酸との組み合わせで、例えば、コハク酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−乳酸の共重合ポリエステル、コハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−乳酸の共重合ポリエステル、コハク酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−酒石酸−乳酸の共重合ポリエステル、コハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−酒石酸−乳酸の共重合ポリエステル、コハク酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−クエン酸−乳酸の共重合ポリエステル、コハク酸−アジピン酸−1,4−ブタンジオール−リンゴ酸−クエン酸−乳酸の共重合ポリエステルとなる、
上記の3官能以上の多官能化合物単位の量は、ゲルの発生原因となるため通常、ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対して、上限値が通常、5モル%以下、好ましくは1モル%以下、更に好ましくは、0.50モル%以下、特に好ましくは0.3モル%以下である。一方、高重合度のポリエステルを容易に製造する目的で3官能以上の化合物を共重合成分として使用する場合、その効果が発現する使用量の下限値としては、通常、0.0001モル%以上、好ましくは、0.001モル%以上、より好ましくは、0.005モル%以上、特に好ましくは0.01モル%以上である。
本発明のポリエステルは、カーボネート化合物やジイソシアネート化合物等の鎖延長剤を使用することもできるが、その量は、通常、ポリエステルを構成する全単量体単位に対し、カーボネート結合ならびにウレタン結合が通常、10モル%以下、好ましくは5モル%以下、より好ましくは3モル%以下である。しかしながら、本発明のポリエステルを生分解性樹脂として使用する場合には、ジイソシアネートやカーボネート結合が存在すると、生分解性を阻害する可能性があるため、その使用量は、ポリエステルを構成する全単量体単位に対し、カーボネート結合が1モル%未満、好ましくは、0.5モル%以下、より好ましくは0.1モル%以下であり、ウレタン結合が、0.06モル%未満、好ましくは0.01モル%以下、より好ましくは0.001モル%以下である。カーボネート結合量やウレタン結合量は、13C NMR等のNMR測定により算出される。
カーボネート化合物としては、具体的には、ジフェニルカーボネート、ジトリールカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジアミルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネートなどが例示される。その他、フェノール類、アルコール類のようなヒドロキシ化合物から誘導される、同種、または異種のヒドロキシ化合物からなるカーボネート化合物が使用可能である。
ジイソシアネート化合物としては、具体的には、2,4−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合体、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の公知のジイソシアネートなどが例示される。
これらの鎖延長剤(カップリング剤)を用いた高分子量ポリエステルの製造は従来の技術を用いて製造することが可能である。鎖延長剤は、重縮合終了後、均一な溶融状態で無溶媒で反応系に添加し、重縮合により得られたポリエステルと反応させる。
より具体的には、ジオールとジカルボン酸(またはその無水物)とを触媒反応させて得られる、末端基が実質的にヒドロキシル基を有し、重量平均分子量(Mw)が20,000以上、好ましくは40,000以上のポリエステルに上記鎖延長剤を反応させることにより、より高分子量化したポリエステル系樹脂を得ることができる。重量平均分子量が20,000以上のプレポリマーは、少量のカップリング剤の使用で、溶融状態といった苛酷な条件下でも、残存する触媒の影響を受けないので反応中にゲルを生ずることなく、高分子量のポリエステルを製造することができる。
したがって、例えば鎖延長剤として上記のジイソシアナートを用いて更に高分子量化をする場合には、ジオールとジカルボン酸からなる重量平均分子量が20,000以上、好ましくは40,000以上のプレポリマーが、ジイソシアナートに由来するウレタン結合を介して連鎖した線状構造を有するポリエステルが製造される。
鎖延長時の圧力は、通常、0.01MPa以上、1MPa以下、好ましくは、0.05MPa以上、0.5MPa以下、より好ましくは、0.07MPa以上、0.3MPa以下であるが、常圧が最も好ましい。
鎖延長時の反応温度は、下限が通常100℃以上、好ましくは、150℃以上、より好ましくは190℃以上、最も好ましくは200℃以上であり、上限が通常250℃以下、好ましくは240℃以下、より好ましくは230℃以下である。反応温度が低すぎると粘度が高く均一な反応が難しく、高い攪拌動力も要する傾向があり、また高すぎると、ポリエステルのゲル化や分解が併発する傾向がある。
鎖延長を行う時間は、下限が通常0.1分以上、好ましくは1分以上であり、より好ましくは、5分以上であり、上限が通常5時間以下、好ましくは1時間以下、より好ましくは、30分以下、最も好ましくは、15分以下である。時間が短すぎる場合には、添加効果が発現しなくなる傾向があり、また、長すぎる場合には、ポリエステルのゲル化や分解が併発する傾向がある。
また、その他の鎖延長剤として、ジオキサゾリン、珪酸エステルなどを使用してもよい。珪酸エステルとしては、具体的には、テトラメトキシシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジメトキシジメチルシラン、ジフェニルジヒドロキシラン等が例示される。
珪酸エステルは、環境保全ならびに安全性の面の理由からは、特にその使用量に制限はされないが、操作が煩雑になったり、重合速度に影響を与える可能性があるため、その使用量は少ない方が良い場合がある。従って、この含有量は、ポリエステルを構成する全単量体単位に対して、0.1 モル%以下とするのが好ましく、10−5 モル%以下とするのが更に好ましい。
このように、本発明のポリエステルとは、ポリエステル、共重合ポリエステル、鎖延長(カップリング)された高分子量のポリエステル、および変性ポリエステルを包含するものをポリエステルと総称している。
尚、本発明においては実質上鎖延長剤を含有しないポリエステルが好ましい。但し、溶融テンションを高めるために、毒性の低い化合物を添加する限り、少量のパーオキサイドを添加してもよい。
また本発明においては、ポリエステル末端基をカルボジイミド、エポキシ化合物、単官能性のアルコール又はカルボン酸で封止しても良い。
<ポリエステルの製造方法>
ジオール単位及びジカルボン酸単位を主体とするポリエステルの製造は、ポリエステルを製造する公知技術で行うことができる。ただし、本発明におけるポリエステルは、特定範囲内の硫黄原子を含有していることが必須である。このポリエステルを製造する際の重合反応は、従来から採用されている適切な条件を設定することができ、特に制限されない。具体的には、上記のジカルボン酸成分とジオール成分、更にオキシカルボン酸単位や3官能以上の成分を導入する場合には、それらの成分も含めたジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下での重縮合反応を行うといった溶融重合の一般的な方法や、有機溶媒を用いた公知の溶液加熱脱水縮合方法によって製造することができるが、経済性ならびに製造工程の簡略性の観点から、無溶媒下で行う溶融重合法が好ましい。
ポリエステル中に硫黄原子を含有させる方法として、(i)硫黄原子を含有する化合物を重合反応系に添加する方法、(ii)原料モノマーとして硫黄成分を含有するジカルボン酸及び/又はジオールを用いる方法等が挙げられるが、製造プロセスの簡略化の理由から(ii)の方法が好ましい。
(i)硫黄原子を含有する化合物を重合反応系に添加する方法を用いる場合、硫黄原子を含有する化合物を混合する時期は、ポリエステルが重合反応槽から抜き出される前であれば特に限定されない。その場合の硫黄原子を含有する化合物は、硫酸、硫酸塩、亜硫酸、有機スルホン酸、有機スルホン酸塩等が挙げられ、化合物の使用量は、上記のポリエステルに含有される硫黄原子量見合いの量である。
(ii) 原料モノマーとして硫黄成分を含有するジカルボン酸及び/又はジオールを用いる方法については、上述したバイオマス資源由来のジカルボン酸及び/又はジオールを用いる方法が挙げられる。
なお、ポリエステル中の硫黄原子含有量を制御するため、(i)と(ii)を併用してもよい。
また、本発明において、上述の方法で得られたバイオマス資源由来のジカルボン酸及び/またはジオールは、ポリエステル原料として使用するにあたり、ポリエステル製造反応中の酸素濃度を特定値以下に制御された反応槽内でポリエステルを製造してもよい。これにより不純物である窒素化合物の酸化反応によるポリエステルの着色や、例えばジオールとして1,4−ブタンジオールを使用する場合の1,4−ブタンジオールの酸化反応により生成する2−(4−ヒドロキシブチルオキシ)テトラヒドロフラン等のジオール酸化反応生成物によるポリエステルの着色を抑制することができるため、色相の良いポリエステルを製造することができる。
ここでいう製造反応とは、原料をエステル化反応槽へ仕込み、昇温を開始した時点から重縮合反応槽で減圧下にて所望の粘度のポリマーを製造し、反応槽を減圧から常圧以上に復圧するまでの間と定義する。
製造反応中の反応槽中の酸素濃度は、下限は、特に限定されないが通常1.0×10−9%以上、好ましくは1.0×10−7%以上であり、上限が通常10%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは、0.1%以下、最も好ましくは、0.01%以下である。酸素濃度が低すぎる場合には、管理工程が煩雑となる傾向があり、また、高すぎる場合には、上記の理由で得られるポリエステルの着色が著しくなる傾向がある。
本発明において、上述の方法で得られたバイオマス資源由来のジカルボン酸及び/またはジオールをポリエステル原料として使用するにあたり、減圧下での重合反応停止前の攪拌速度を制御してもよい。これにより分解が抑制された粘度の高いバイオマス資源由来のポリエステルを製造することができる。
ここで言う“最終攪拌速度”とは、後述する縮重合反応中において、所望の粘度のポリマーを製造した際の攪拌装置の最低攪拌回転数を示す。但し、製造ポリマー抜き出し操作等に伴う攪拌装置の停止操作は、縮重合反応中の定義の中には含まれない。
減圧下での重合反応時の反応停止前の攪拌速度は、下限が通常0.1rpm以上、好ましくは0.5rpm以上であり、より好ましくは、1rpm以上であり、上限が10rpm以下、好ましくは7rpm以下、より好ましくは、5rpm以下、最も好ましくは、3rpm以下である。攪拌速度が遅すぎる場合には、重合速度が遅くなったり、生成ポリマーに粘度むらが生じる傾向があり、また、速すぎる場合には、せん断発熱により不純物が多いバイオマス資源由来のポリマーの製造においては特にポリマーが分解しやすい傾向がある。本発明においては、通常、少なくとも10rpm以下の回転数で少なくとも5分以上、好ましくは、10分以上、より好ましくは30分以上攪拌して所望のポリエステルを製造するのが好ましい。
また、減圧下での重合開始時の攪拌速度は、下限が通常10rpm以上、好ましくは20rpm以上であり、より好ましくは、30rpm以上であり、その上限は、200rpm以下、好ましくは100rpm以下、より好ましくは、50rpm以下である。攪拌速度が遅すぎる場合には、重合速度が遅くなったり、生成ポリマーに粘度むらが生じる傾向があり、また、速すぎる場合には、せん断発熱により不純物が多いバイオマス資源由来のポリマーの製造時においては特にポリマーが分解しやすい傾向がある。
ここで減圧下での重合反応時の攪拌速度は、ポリエステルの粘度上昇との兼ね合いで、連続的、または多段階で攪拌速度を低減させてもよい。より好ましくは、減圧下での重縮合反応停止前10分間の平均攪拌速度を、減圧下での重縮合反応開始後30分間の平均攪拌速度より低くすることが重要である。この調節を行うことにより不純物が多く熱分解しやすいバイオマス資源由来のポリエステルの製造時の熱分解が抑えられ、安定にポリマーが製造できる。
また、エステル化反応及び/又はエステル交換反応時の攪拌速度を制御することにより、例えば、ジオールとして1,4−ブタンジオールを用いた場合のテトラヒドロフランの副生が低減され、重合速度を向上することができる。
エステル化反応時の攪拌速度は、下限が通常30rpm以上、好ましくは、50rpm以上、より好ましくは、80rpm以上であり、上限は、1000rpm以下、好ましくは500rpm以下である。攪拌速度が遅すぎる場合には、留去効率が悪く、エステル化反応が遅くなる傾向があり、例えばジオールの脱水反応や脱水環化等が引き起こされる傾向がある。それによりジオール/ジカルボン酸の比率が崩れて重合速度が低下したり、より過剰のジオールを仕込む必要が生じる等の欠点を有する、また、速すぎる場合には、余計な動力を消費するため経済的に不利である。
また、バイオマス資源由来のジカルボン酸を、ポリエステル原料として使用するにあたり、ジカルボン酸を貯蔵タンクから反応器へ移送する際の酸素濃度と湿度を制御してもよい。これにより不純物である硫黄成分による移送管内の腐食を防止することができ、更には窒素源の酸化反応による着色を抑えることができ、色相の良いポリエステルを製造することができる。
移送管の種類としては、具体的には、通常の公知の金属製もしくはこれらの内面にガラス、樹脂などのライニングを施したもの、さらにはガラス製、樹脂製の容器などが用いられる。強度の面などから金属製もしくはそれらにライニングを施したものが好んで用いられる。金属製タンクの材としては、公知のものが使用され、具体的には、炭素鋼、フェライト系ステンレス鋼、SUS410等のマルテンサイト系ステンレス鋼、SUS310、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼、クラッド鋼、鋳鉄、銅、銅合金、アルミニウム、インコネル、ハステロイ、チタン等が挙げられる。
移送管内の酸素濃度は、移送管全体積に対して、下限は特に限定されないが、通常0.00001%以上、好ましくは0.01%以上である。一方、上限が通常16%以下、好ましくは14%以下、より好ましくは、12%以下である。酸素濃度が低すぎる場合には、設備投資や管理工程が煩雑になり経済的に不利であり、一方、高すぎる場合には、製造されるポリマーの着色が増加する傾向がある。
移送管内の湿度は、下限は特に限定されないが、通常0.0001%以上、好ましくは0.001%以上であり、より好ましくは、0.01 %以上、最も好ましくは、0.1%以上であり、上限が80%以下、好ましくは60%以下、より好ましくは、40%以下である。湿度が低すぎる場合には、管理工程が煩雑で経済的に不利になる傾向があり、また、高すぎる場合には、貯蔵タンクや配管の腐食が問題になる傾向がある。更に、湿度が高すぎる場合は、貯蔵タンクや配管へのジカルボン酸の付着、ジカルボン酸のブロック化等の問題が生じ、これらの付着現象により配管の腐食が促進される傾向がある。
移送管内の温度は、下限が通常−50℃以上、好ましくは0℃以上である。一方、上限が通常200℃以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは、50℃以下である。温度が低すぎる場合には、貯蔵コストが増大する傾向があり、また、高すぎる場合には、ジカルボン酸の脱水反応等が併発する傾向がある。
移送管内の圧力は、通常、0.1kPaから1MPaであるが、操作性の観点から0.05MPa以上0.3Mpa以下程度の圧力で使用される。
ポリエステルを製造する際に用いるジオールの使用量は、ジカルボン酸またはその誘導体100モルに対し、実質的に等モルであるが、一般には、エステル化及び/又はエステル交換反応及び/又は縮重合反応中の留出があることから、0.1〜20モル%過剰に用いられる。
また、重縮合反応は、重合触媒の存在下に行うのが好ましい。重合触媒の添加時期は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。
重合触媒としては、一般には、周期表で、水素、炭素を除く1族〜14族金属元素を含む化合物が挙げられる。具体的には、チタン、ジルコニウム、錫、アンチモン、セリウム、ゲルマニウム、亜鉛、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選ばれた、少なくとも1種以上の金属を含むカルボン酸塩、アルコキシ塩、有機スルホン酸塩又はβ−ジケトナート塩等の有機基を含む化合物、更には前記した金属の酸化物、ハロゲン化物等の無機化合物及びそれらの混合物が挙げられる。これらの触媒成分は、上記の理由からバイオマス資源から誘導されるポリエステル原料中に含まれる場合がある。その場合は、特に原料の精製を行わず、そのまま金属を含む原料として使用してもよい。しかしながら、製造するポリエステルによってはポリエステル原料中に含まれるナトリウムやカリウム等の1族金属元素の含有量が少ない程、高重合度のポリエステルが製造しやすい場合がある。その様な場合には1族金属元素が実質含まれない程度まで精製された原料が好的に使用される。
これらの中では、チタン、ジルコニウム、ゲルマニウム、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム及びカルシウムを含む金属化合物、並びにそれらの混合物が好ましく、その中でも、特に、チタン化合物、ジルコニウム化合物及びゲルマニウム化合物が好ましい。また、触媒は、重合時に溶融或いは溶解した状態であると重合速度が高くなる理由から、重合時に液状であるか、エステル低重合体やポリエステルに溶解する化合物が好ましい。
チタン化合物としては、テトラアルキルチタネートが好ましく、具体的には、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート、テトラ−n−ブチルチタネート、テトラ−t−ブチルチタネート、テトラフェニルチタネート、テトラシクロヘキシルチタネート、テトラベンジルチタネート及びこれらの混合チタネートが挙げられる。また、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタン(ジイソプロキシド)アセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、チタンビス(エチルアセトアセテート)ジイソプロポキシド、チタン(トリエタノールアミネート)イソプロポキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ブチルチタネートダイマー等も好んで用いられる。更には、酸化チタンや、チタンと珪素を含む複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製のチタニア/シリカ複合酸化物(製品名:C−94))も好んで用いられる。これらの中では、テトラ−n−プロピルチタネート、テトライソプロピルチタネート及びテトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンビス(アンモニウムラクテイト)ジヒドロキシド、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、酸化チタン、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C−94)が好ましく、テトラ−n−ブチルチタネート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタンラクテート、ブチルチタネートダイマー、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C−94)がより好ましく、特に、テトラ−n−ブチルチタネート、ポリヒドロキシチタンステアレート、チタン(オキシ)アセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタニア/シリカ複合酸化物(例えば、Acordis Industrial Fibers社製の製品名:C−94)が好ましい。
ジルコニウム化合物としては、具体的には、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニルジアセテイト、シュウ酸ジルコニウム、シュウ酸ジルコニル、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシド、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネートならびにそれらの混合物が例示される。更には、酸化ジルコニウムや、例えばジルコニウムと珪素を含む複合酸化物も好適に使用される。これらの中では、ジルコニルジアセテイト、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、シュウ酸ジルコニウムカリウム、ポリヒドロキシジルコニウムステアレート、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラ−t−ブトキシドが好ましく、ジルコニルジアセテイト、ジルコニウムテトラアセテイト、ジルコニウムアセテイトヒドロキシド、ジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレート、シュウ酸ジルコニウムアンモニウム、ジルコニウムテトラ−n−プロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシドがより好ましく、特にジルコニウムトリス(ブトキシ)ステアレートが着色のない高重合度のポリエステルが容易に得られる理由から好ましい。
ゲルマニウム化合物としては、具体的には、酸化ゲルマニウムや塩化ゲルマニウム等の無機ゲルマニウム化合物、テトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム及びテトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特に、酸化ゲルマニウムが好ましい。
これらの重合触媒として金属化合物を用いる場合の触媒使用量は、生成するポリエステルに対する金属量として、下限値が通常5ppm以上、好ましくは10ppm以上であり、上限値が通常30000ppm以下、好ましくは1000ppm以下、より好ましくは250ppm以下、特に好ましくは130ppm以下である。使用する触媒量が多すぎると、経済的に不利であるばかりでなくポリマーの熱安定性が低くなるのに対し、逆に少なすぎると重合活性が低くなり、それに伴いポリマー製造中にポリマーの分解が誘発されやすくなる。
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下である。反応雰囲気は、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下である。反応圧力は、通常、常圧〜10kPaであるが、常圧が好ましい。
反応時間は、下限が通常1時間以上であり、上限が通常10時間以下、好ましくは、4時間以下である。
ジカルボン酸成分とジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応後の重縮合反応は、圧力を、下限が通常0.01×10Pa以上、好ましくは0.05×10Pa以上であり、上限が通常1.4×10Pa以下、好ましくは0.4×10Pa以下の真空度下として行う。この時の反応温度は、下限が通常150℃以上、好ましくは180℃以上であり、上限が通常260℃以下、好ましくは250℃以下の範囲である。反応時間は、下限が通常2時間以上であり、上限が通常15時間以下、好ましくは10時間以下である。
本発明においてポリエステルを製造する反応装置としては、公知の縦型あるいは横型撹拌槽型反応器を用いることができる。例えば、同一又は異なる反応装置を用いて、溶融重合のエステル化及び/又はエステル交換の工程と減圧重縮合の工程の2段階で行い、減圧重縮合の反応器としては、真空ポンプと反応器を結ぶ減圧用排気管を具備した攪拌槽型反応器を使用する方法が挙げられる。また、真空ポンプと反応器とを結ぶ減圧用排気管の間には凝縮器を結合し、該凝縮器にて重縮合反応中に生成する揮発成分や未反応原料を回収する方法が好んで用いられる。
本発明においては、ポリエステルの製造方法として、従来の、上記の脂肪族ジカルボン酸を含むジカルボン酸成分と脂肪族ジオール成分とのエステル化反応及び/又はエステル交換反応を行った後、減圧下で、ポリエステルのアルコール末端のエステル交換反応により生成するジオールを留去しながらポリエステルの重合度を高める方法、或いは、ポリエステルの脂肪族カルボン酸末端から脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物環状体を留去させながらポリエステルの重合度を高める方法が用いられる。後者の場合、脂肪族カルボン酸及び/又はその無水物環状体の除去は、通常、上記溶融重合工程における後段の減圧下での重縮合反応中に脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物環状体を加熱留出させる方法が採られるが、重縮合反応条件下では、脂肪族ジカルボン酸は容易に酸無水物環状体になりやすいため、酸無水物環状体の形態で加熱留出させる場合が多い。また、その際、ジオールから誘導される鎖状又は環状エーテル及び/又はジオールもまた脂肪族ジカルボン酸及び/又はその酸無水物環状体と共に除去されてもよい。更に、ジカルボン酸成分とジオール成分の環状単量体を共に留去させる方法は、重合速度が向上するため、好ましい態様である。
また、ポリエステルの製造工程の途中、又は製造されたポリエステルには、その特性が損なわれない範囲において各種の添加剤、例えば、可塑剤、紫外線安定化剤、着色防止剤、艶消し剤、消臭剤、難燃剤、耐候剤、帯電防止剤、糸摩擦低減剤、離型剤、抗酸化剤、イオン交換剤あるいは着色顔料等として無機微粒子や有機化合物を必要に応じて添加してもよい。着色顔料としては、カーボンブラック、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄などの無機顔料の他、シアニン系、スチレン系、フタロシアイン系、アンスラキノン系、ペリノン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、キノクリドン系、チオインディゴ系などの有機顔料等を使用することができる。また、炭酸カルシウムやシリカなどの改質剤も使用することができる。
本発明において、重合反応終了後、重合反応槽より抜き出す際のポリエステルの温度を制御してもよい。これにより、高粘度のポリエステルの抜き出し時の熱分解を抑制させて取り出すことができる。
重合反応槽より抜き出す際のポリエステルの温度は、重合終了後、反応槽の圧力を減圧からから常圧以上に復圧した際の樹脂温度をTeとしたとき、下限は、(Te−50)℃以上、好ましくは(Te−30)℃以上であり、より好ましくは、(Te−20)℃以上、最も好ましくは、(Te−10)℃以上であり、上限が(Te+20)℃以下、好ましくは(Te+10)℃以下、より好ましくは、Te℃以下である。温度が低すぎる場合には、抜き出し時のポリエステルの粘度が上昇し、抜き出し難くなり生産性に問題が生じる傾向があり、また、高すぎる場合には、ポリエステルの熱分解が顕著になる傾向がある。
ここで、抜き出し時のポリエステルの温度は、重合反応層内の温度を測定する目的で取り付けられた熱電対等により測定することができる。
また、本発明において、重合反応終了後、重合反応槽より抜き出されたストランド状のポリエステルを特定温度以下の水性媒体に接触させてもよい。これにより、高粘度のポリエステルの分解を抑制させたまま得ることができる。
ポリエステルを冷却するための媒体としては特に限定されないが、エチレングリコール等のジオール、メタノール、エタノール等のアルコール、アセトン、水が挙げられ、この中では、水が最も好ましい。これらの水性溶媒は、2種以上併用してもよい。
また、溶媒の温度は、下限が通常−20℃以上、好ましくは−10℃以上であり、より好ましくは、0℃以上、最も好ましくは、4℃以上であり、上限が通常20℃以下、好ましくは15℃以下、より好ましくは、10℃以下である。温度が低すぎる場合には、媒体の冷却設備運転コストが高くなり経済的に不利になる傾向があり、また、高すぎる場合には、ストランドでの抜き出し時にポリエステルの熱分解が顕著になる傾向がある。
ポリエステルを冷却する時間は、下限が通常0.1秒以上、好ましくは1秒以上であり、より好ましくは、5秒以上、最も好ましくは、10秒以上であり、上限が通常5分以下、好ましくは2分以下、より好ましくは、1分以下、最も好ましくは、30秒以下である。時間が短すぎる場合には、ストランド同士の融着が著しくなったり、ペレット化が困難になる傾向があり、また、長すぎる場合には、生産性が不利になる傾向がある。
冷却する方法としては、特に限定されないが、例えば、重合槽からポリエステルをストランド状で抜き出し、冷却媒体中を潜らす方法や、冷却媒体をストランドに例えばシャワー状で降りかける等の方法が挙げられる。
<ポリエステルペレット>
重合反応終了後、重合反応槽からストランド状で抜き出されたポリエステルは、水、空気、その他で冷却しながらもしくは冷却後、公知の固定式、回転式のカッターやペレタイザーを用いてペレット化され、貯蔵してもよい。
ペレット形状は通常断面が円形または楕円形である円筒状、もしくは球状に成型される。
ポリエステルペレットの径は、重合槽からの抜出口径、ストランド抜き出し速度、引き取り速度ならびにカッティング速度等の調整により調整される。具体的には、例えば、ポリマー抜き出し時の反応槽の圧力を調整したり、回転式ストランドカッターのカッティング速度を調整することにより調整される。
得られたポリエステルペレットの径は、下限(最小径)が通常0.1mm以上、好ましくは0.2mm以上であり、より好ましくは、0.5mm以上、最も好ましくは、1mm以上であり、上限(最大径)が20mm以下、好ましくは10mm以下、より好ましくは、7mm以下、最も好ましくは、4mm以下である。径が小さすぎる場合には、ペレット貯蔵時の加水分解による劣化が顕著になる傾向があり、また、径が大きすぎる場合には、成型時の食い込みが悪く製品にムラが生じる傾向がある。
本発明のポリエステルペレット中には、径1mm未満の粉状体の割合が2.0重量%以下であることが好ましく、径1mm未満の粉状体の割合が1.0重量%以下であるのがより好ましい。径1mm未満の粉状体の割合が多いと、この粉状体により溶融成形時において、成形機スクリューへの食い込み性が劣って成形機中での滞留時間が長くなり、又表面積が大きいことから熱劣化を起こし易く、それが成形体中にヤケやブツ等の異物として混入され、成形体の機械的強度の低下や外観の不良等の問題を招くこととなる。
尚、ここでいうポリエステルペレットの径とはポリエステルペレットの断面の径、もしくは長さを示す。また、ポリエステルペレットの断面とは、得られたポリエステルペレットの断面積が最大となる断面を示す。
本発明においては、貯蔵時のポリエステルペレット中の水含有量を調整してもよい。その水含有量は、下限は特に限定されないが、通常0.1ppm以上、好ましくは0.5ppm以上であり、より好ましくは、1ppm以上、最も好ましくは、10ppm以上であり、上限が通常3000ppm以下、好ましくは2000ppm以下、より好ましくは、1000ppm以下、特に好ましくは、800ppm以下、最も好ましくは、500ppm以下である。水含有量が少なすぎる場合には、設備や管理工程が煩雑となり経済的に不利になる傾向があるばかりでなく、乾燥時間に多大な時間を要するためポリエステルの着色やブツの生成等の劣化が引き起こされる傾向がある。一方、多すぎる場合には、ペレット保存時の加水分解によるポリエステルの劣化が顕著になる傾向がある。
水含有量(水分量)の測定方法としては、水分気化装置(三菱化学株式会社製VA−100型)を用いて0.5gの試料を200℃で加熱溶融させて試料中の水を気化させた後、気化した全水分量を、微量水分測定装置(三菱化学株式会社製CA−100型)を用いてカール・フィッシャー反応の原理に基づく電量滴定法により定量することにより試料中の水分量を決定すればよい。
更に、本発明においては、ポリエステルペレットは、湿気によりポリエステルが加水分解されやすくポリエステルの特性が低下するため、密閉された状態で保存してもよい。ここでいう密閉された状態とは、ポリエステルの乾燥状態が保たれる状態のことをいう。
密閉する方法は、密閉機能を備えた空間で貯蔵しておく方法、密閉機能を備えた袋に貯蔵しておく方法、密閉機能を備えたシートをポリエステルペレットに覆う方法、乾燥雰囲気下(乾燥空気、窒素流通下を含む)のサイロに貯蔵しておく方法等が挙げられる。この中でも、密閉機能を備えた袋に入れ、貯蔵することが好ましい。
袋の材質としては、気密性の高いものが好ましく、合成樹脂製のフィルムやシートが好ましい。具体的には、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂や塩化ビニル樹脂製のシートあるいはこれらのシートをポリエステルやポリアミドなどのフィルムや各種繊維基材で補強したものなどが挙げられる。これらのシートは必要に応じて、水蒸気や酸素などを遮蔽するバリア層が積層されていても良い。そのような例としてポリエステル/アルミ/ポリエチレンの様な複合フィルム等が挙げられる。
この様な特性を持った包装材は種々市販されているが、ヒートシールにより簡便に密封できるものがよく、熱融着及び/または縫製などの手段で包装袋に成型される。
包装袋の形状は特に制限はなく、平袋、ガゼット袋、角底袋、フレコンなどのフレキシブル容器等公知の包装袋形状を採用することができる。これらの内、包装体としたときの胴部断面形状を概ね矩形とすることを考慮すると底面を有することが好ましく、ガゼット袋、角底袋、フレキシブル容器などが好ましい。そして、底面形状が概ね矩形であると容易に断面形状が概ね矩形の包装体とすることができるのでより好ましい。
また、バイオマス資源由来のポリエステルペレットは、不純物が混入しているので光による着色や劣化が起こりやすいため、遮光して貯蔵してもよい。
遮光する方法としては、ポリエステルが遮光されている状態であれば特に制限されないが、具体的には、遮光機能を備えた空間で貯蔵しておく方法、遮光機能を備えた袋に貯蔵しておく方法、遮光機能を備えたシートをポリエステルペレットに覆う方法等が挙げられる。この中でも、遮光機能を備えた袋に入れ、貯蔵することが好ましい。
遮光の度合いとしては、通常、空間の照度の上限が、通常300ルクス以下、好ましくは70ルクス以下、より好ましくは、1ルクス以下、最も好ましくは、0.001ルクス以下であり、下限は特に限定されない。照度が高すぎる場合には、ポリエステルの着色が顕著になる傾向があり、また、低すぎる場合には、制御が難しく経済的に不利である。
ポリエステルペレットを貯蔵する際の温度は、下限が−50℃以上、好ましくは、−30℃以上であり、より好ましくは、0℃以上であり、上限が80℃以下、好ましくは、50℃以下、より好ましくは、30℃以下であるが、管理工程が必要ではない理由から、室温で保存するのが最も好ましい。温度が低すぎる場合には、管理工程が煩雑となり経済的に不利である傾向があり、また、高すぎる場合には、ポリエステルの劣化が著しくなる傾向がある。
ポリエステルペレットを貯蔵する際の外圧力は、特に限定されないが、通常大気圧(常圧)である。
後述するポリエステル組成物をペレット化して上述の条件にて保存してもよい。
<ポリエステルの物性>
なお、本発明のポリエステルペレットは、以下のような物性を示すポリエステルから得られるものであり、貯蔵した場合においてもその物性の劣化は少ない。
本発明のポリエステルは、汎用のポリマー材料に代わる多くの用途を持っているばかりでなく、その物性特性においても、ポリブチレンサクシネートやポリブチレンサクシネートアジペートのような脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸のポリエステルを例に説明すると密度が1.2〜1.3g/cm、融点は80〜120℃、引張強度30〜80Mpa、極限伸び300〜600%、引張弾性率400〜700Mpa、引張降伏点強度30〜40Mpa、衝撃試験強度5〜20kJ/m程度、ガラス転移点−45〜−25℃というような汎用のポリマーが有する特性を保有する。また、特定の用途を対象とした場合には、前記のような範囲の域を超えた、任意の広範囲の特性を保有するポリエステルとすることができる。さらに各種成形手段により成形品を製造することができる程度の融点、メルトインデックス、溶融粘弾性の特性を有することができる。これらの特性は、使用目的に応じて、ポリエステル原料や添加物の種類、重合条件或いは成形条件等を変えることにより任意に調整することができる。
ここで、本発明のポリエステルの誕生およびその背景を詳述すれば、地上の、大気圏内における、大きなサイクルにおいて、本発明のポリエステルの誕生は、地球環境の保全、省資源、公害防止、美的環境保護、新たな技術開発の指向といった多くの観点からそのポリエステルの存在を評価することができる。
本発明のポリエステルの特徴は、従来の地下の化石燃料依存型、例えば石油資源の依存型のポリエステルに対比して、その地球環境におけるその存在意義において、従来型の認識とは全く異なる理由が成立する。
特に、現在の大気圏という地球環境下で植生した天然材料から発酵等の手法により入手した、いわゆるジオール単位またはジカルボン酸単位をポリエステルのモノマーとして使用するために、原料が非常に安価に入手できる。また、人為的に植物増産を計画的に任意にできるために、植物原料生産が各地、各国に分散して多様化できるので、原料供給にリスクが少なく安定して供給ができる。さらに、モノマーの入手、ポリエステルの合成および生分解という、ポリエステルの原料の段階から使用済みの廃棄という最終段階に至るサイクルが、専ら大気圏下という地球環境の自然プロセスに準拠したものである故に、本発明のポリエステルは信頼性ならびに安心感を与えるサイクルとなる。これは、ポリエステルの技術開発、産業の発展および消費社会の拡充において、無視することができない、重要な背景であることが明らかである。
しかし、本発明のポリエステルの誕生に貢献する主な理由は、技術進歩に立脚した時代の要請ともいえるその背景にあるといえる。いわゆる炭酸ガスによる温室効果を含む地球環境の悪化への対策、石油資源の浪費や枯渇という危機感への対策、さらには非常に重要な、近年発酵技術のようなバイオテクノロジーの著しい発達というその周辺技術の進歩がそれを可能としたものである。まず、大気圏内の植生に依存する手法は、原料である植物の生産において、多量の二酸化炭素を吸収することであり、この吸収量をAbsとする。植物の加工、発酵、処置などの段階で若干の二酸化炭素、熱エネルギーを放出するが、ジオール単位またはジカルボン酸単位が容易に製造することができる。さらに、重合された本発明のポリエステルが地中に埋め立てた場合、水中に放置した場合、または海水中に放置した場合に、微生物などによる分解で、実質的に水と二酸化炭素を放出することになる。この放出量をRelとすると、このAbsとRelの較差が非常に少ないから、この意味で、大気圏における二酸化炭素の物質収支が比較的僅差になるのではないかということである。このように、二酸化炭素の吸収および放出の物質収支が均衡するばかりでなく、エネルギー収支においても有利と考えられる。特に植生依存型指向の本発明は、従来指向の化石燃料依存型のように、大気中に新たな炭酸ガスを増加させる問題が極力抑えられる。
しかも副次効果として、本発明のポリエステル材料は、物性、構造および機能において評価できるばかりでなく、環境に非常に優しい、安全なポリエステルと認識できる。このような化石燃料由来のポリエステルには全く期待できない、植生原料から消失にいたるプロセスは、リサイクルを含めた循環型社会の実現性を潜在的に保有する特徴がある。これは、今後のポリエステルというプラスチックに対して、その製造プロセスにおいて、従来型の化石燃料依存型の指向とは異なる、あらたな循環型の視点のポリエステル製造プロセスを提供するものである。これは時代の要請および進歩に即応した、いわゆるプラスチック産業に対する認識を本質的に変革させるものである。まさに、近年バイオテクノロジーの著しい発達に呼応した、新たな第2ステージのプラスチック時代の始まりともいえるほどの変革とも評価できるといえる。この本発明のポリエステルは潜在的な評価および価値を非常に高めるものであるから、まさに、全く新たな視点から、プラスチック材料の代表的なポリエステルのさらなる利用の拡大、発展および消費に著しく寄与するものである。
本発明のポリエステルは、優れた生分解性の機能を有するが、積極的に地中などに投棄することだけを目的として開発した材料ではない。環境に支障なく、土壌中に投棄が可能であるということの意味もある。例えば移植用苗ポットのような農林水産材料、仮土嚢止めのような土木建築資材のように、回収が困難又は支障となる場合に、放置すれば土にかえるという意味も含むものである。本発明のポリエステルは生分解性特性を有するとはいえ、現在の消費社会において構築されている、分別回収により廃プラとして回収して、再度成形材料に使用することができるという性質も保有する。勿論、回収ポリエステルを再度成形材料として用いることにより成形した成形品を土壌中に投棄しても、最初の成形品同様に生分解性の機能は発現する。さらに、分別回収のシステムで回収して、焼却する場合に、有害物発生、悪臭を発生することなく、燃料として用いて、熱エネルギー源として使用することもできる。本発明のポリエステルは、さらに消費が増大しても、二酸化炭素の増加、大気汚染が進行することに対する対策もできる。
本発明者は、本発明のポリエステルのより実用的な生分解性速度、衝撃強度、引っ張り降伏強度、引っ張り破断強度、引っ張り破断伸び、或いは曲げ弾性率などの物理的強度、着色、黄色度(YI値)というような物理的な特性、大気または土壌中への有害物の発生などの性能に関して、総合的に解析および評価した結果、バイオマス資源由来という特有の事情に起因する、いわゆるポリエステル中に必然的に混入する多くの原因物質の内、硫黄原子が特に生分解の促進に影響する原因物質の一つであるということを突き止めたものである。そして、本発明者らは、実用ポリエステルとして、許容できるポリエステルの硫黄原子含有量が原子換算として0.0001ppm以上50ppm以下であるという事実を突き止めたものである。
ポリエステル原料が、バイオマス資源由来という事情からすれば、製造段階で、中和や、精製など多くの工程で、若干の硫黄が混入することが有り得るという、特有の事情によるものである。硫黄化合物の混在は、ポリエステルの着色、生分解性の促進に微妙に影響することが考えられるが、一方で、生分解後に土壌中に硫黄化合物が残留することになり土壌の酸性または環境汚染上適性でない場合がある。また、仮に現在の消費社会に定着されている分別回収システムにより回収したものを、再利用する場合に、硫黄の混在は、ポリエステルの着色、機械的特性にも影響することにもなる。他の汎用のプラスチック同様に焼却処分しても二酸化硫黄などの発生になる原因にもなり、有毒、悪臭という面からも硫黄の存在が制約される。そのような総合的な事情を勘案すれば、硫黄原子含有量の許容できる最高は50ppm程度といえる。
ポリエステル中に存在する硫黄原子含有量を原子換算で0.0001ppm以上50ppm以下にする理由をさらに詳細に説明する。このポリエステルに混入する硫黄原子は、主にバイオマス資源から誘導されるジオール単位、ジカルボン酸単位を含まれていたものがポリエステル中に残留するからである。この硫黄含有量少なくすることは、ポリエステルの重合における、重合速度、重合度を高めるにおいて、好ましい態様である。一方で、硫黄量を、例えば0.0001以下というような、超微量にまで取り除く為には、非常に高度な技術操作を要するばかりでなく、製造コストが非常に高くなる欠点を有する。ポリエステルに残存する硫黄の量の影響を解析すれば、極微量の硫黄が生分解の促進に関与する挙動を示す。従って、ポリエステルに混在する硫黄に関して、許容できる範囲を模索することが発明の重要な解決すべき課題となる。
この硫黄化合物は、ポリエステル中に、硫酸根、亜硫酸根として存在する場合に、その硫黄を含むポリエステルが土壌中で特に一時に多量に、または継続的に生分解をさせると、蓄積により、土壌の酸性化が単調に進行することになり、微生物への影響、動植物への影響、水質に対する環境汚染が懸念される。グリーンプラとしての、安全、安心というような信頼を失墜することのない安全な範囲を解析・検討した結果、通常の本発明のポリエステルの使用状態では、0.0001〜50ppm程度が、硫黄のpHの影響が自然に消滅する、または自然浄化で回復する適量な範囲であることを知見したものであり、結局、最大50ppmが許容できる範囲である。例えば、120ppm程度の硫黄原子を含有するポリエステルでは土壌のpHが0.2下がるような条件下で300ppm程度の硫黄原子を含有するポリエステルを生分解させるとpH値が0.5程度下がるなど、硫黄原子の含有量に応じて土壌が酸性化が著しくなる傾向にある。
本発明のポリエステルは、生分解性の特性を有するとはいえ、その製品が通常の流通過程で、仮に現在の消費社会に定着されている分別回収システムにより回収したものを、焼却処分される場合には、硫黄化合物特有の二酸化硫黄などのSOxの発生原因になることも有り得るから、有毒、悪臭といった環境面からも硫黄原子の混在に対する配慮が必要である。ポリエステル中に含まれる硫黄の量が多いと、それに比例をして、単調に二酸化硫黄などのSOxが発生することになる。このような焼却処分においても、硫黄原子の混在は、動植物、大気、土壌、水質に対する汚染に繋がることは衆目の知るところであるから、いわゆる硫黄の影響が自然に消滅する、または自然浄化で回復する程度の適量な範囲が、0.0001〜50ppmであるという事実を知見したものである。社会常識からみても、50ppmを超える、例えば100ppm、250ppmなどの硫黄含有量などは多くの二酸化硫黄などSOxの有害ガスの発生源になり、容認できる範囲ではない。
さらに重要なことは、本発明のポリエステルを嗜好品、飲料のような食品のボトル、容器、包装材などに使用した場合の、味覚、毒性などの安全も考慮しなければならない。グリーンプラとしての信頼性を確保することは、環境への影響ばかりでなく、人体、動植物への食品としての影響も高度に配慮したものでなければならない。勿論、硫黄化合物は、微量では、人体への毒性として作用するようなものではないが、臭い、味覚への影響も懸念されるので、消費者に対する信頼を最大限に考慮する必要がある。本発明のポリエステルは、このような製造から、成形、成形品の安全、生分解、回収、焼却というようなあらゆる場合を想定して、その信頼性を確保するために工夫された材料である。そのような諸事情を考慮すれば、ポリエステルの、重合、成形、成形品の使用、生分解、および焼却などのそのような総合的な事情を勘案すれば、国民生活に安全な、信頼のある製品を提供する為には、硫黄原子含有量の許容できる範囲は、30ppm、40ppmなどであるが、最高で50ppm程度といえる。
以下に詳細に本発明のポリエステルが有する代表的な物性値の範囲を開示する。
本発明のポリエステルの融点は、特に制限されないが、通常40℃〜270℃、好ましくは、50℃〜230℃、より好ましくは、60℃〜130℃である。これらは上述した成分によって決まるものであり、適宜成分を選択して上記融点の範囲にあるポリエステルを製造することは可能である。
本発明のポリエステルの数平均分子量は、ポリスチレン換算で通常、下限が通常5000以上、好ましくは1万以上、より好ましくは、1.5万以上であり、上限が通常50万以下、好ましくは30万以下である。
ポリエステル共重合体の組成比は、ジオール単位とジカルボン酸単位のモル比が、実質的に等しいことが必要である。
本発明のポリエステル中の硫黄原子含有量は、原子換算として、上限が、50ppm以下、好ましくは、5ppm以下、より好ましくは、3ppm以下、最も好ましくは、0.3ppm以下である。一方、下限は、特に限定されないが、0.0001ppm以上、好ましくは、0.001ppm以上、より好ましくは、0.01ppm以上であり、特に好ましくは、0.05ppm以上であり、最も好ましくは、0.1ppm以上である。
硫黄含有量が多すぎるとポリエステルの熱安定性や耐加水分解性が低下する傾向があり、少なすぎる系は精製コストが著しく高くなりポリエステルの製造においては経済的に不利になる傾向がある。
本発明のポリマーにおいては、特にバイオマス資源から誘導される原料を用いたポリエステルの場合、例えば、テトテヒドロフランやアセトアルデヒド等の揮発性有機成分がポリエステル中に含有されやすい傾向がある。これらのその含有量の上限は、通常、ポリエステル中、10000ppm以下、好ましくは、3000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、最も好ましくは500ppm以下である。一方、下限は特に制限されないが、通常、1ppb以上、好ましくは、10ppb以上、より好ましくは100ppb以上である。揮発性分量が多いと臭気の原因となり得るほか、溶融成形時の発泡や、保存安定性の悪化を招く場合がある。一方、少なすぎる系は、好ましい形態であるが、このようなポリマーを製造するには極めて高額の設備投資を要する他、多大な製造時間を要するなど経済的に不利である。
本発明で製造されるポリエステルの還元粘度(ηsp/c)値は、実用上十分な力学特性が得られる理由から、0.5以上であり、中でも1.0以上が好ましく、更には1.8以上が好ましく、特に2.0以上が特に好ましい。還元粘度(ηsp/c)値の上限は、ポリエステルの重合反応後の抜き出し易さならびに成形のし易さ等の操作性の観点から、通常、6.0以下、好ましくは5.0以下、更に好ましくは4.0以下である。
本発明でいう還元粘度は以下の測定条件により測定されたものである。
〔還元粘度(ηsp/c)測定条件〕
粘度管:ウベローデ粘度管
測定温度:30℃
溶媒:フェノール/テトラクロロエタン(1:1重量比)溶液
ポリエステル濃度:0.5g/dl
本発明のポリエステルは、ポリエステル(0.5g)をフェノール/テトラクロロエタン(1:1重量比)溶液(容量:1dl)に室温で溶解させた際、均一に溶解するポリエステルが好ましく、ポリエステルの不溶成分が生じる場合、通常、不溶成分量は全ポリエステル中、1重量%以下、より好ましくは、0.1重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下であることが好ましい。
本発明のポリエステルのカルボキシル基末端濃度は、通常、100当量/トン以下であるが、より好ましくは、その濃度は、50当量/トン以下、特に、35当量/トン以下、更には25当量/トン以下であることが好ましく、0.1当量/トン以上、好ましくは0.5当量/トン以上、特に1当量/トン以上が好ましい。この量が多くなると、ポリマーの成形時の熱安定性や比較的長期の使用・保管時の耐加水分解性が低下する傾向があり、カルボキシル基が少なすぎるポリマーは、より好ましい形態ではあるが、このようなポリマーを製造するには極めて高額の設備投資を要する他、多大な製造時間を要するなど経済的に不利な点である。末端カルボキシル基量は、通常、公知の滴定方法により算出されるが、本発明においては、得られたポリエステルをベンジルアルコールに溶解し0.1N NaOHにて滴定した値であり、1×10g当たりのカルボキシル基当量である。
本発明で製造されるポリエステルは、通常、着色の少ないポリエステルであることが好ましい。本発明のポリエステルの黄色度(YI値)は、その上限が、通常、50以下、好ましくは30以下、より好ましくは20以下、更に好ましくは15以下、特に好ましくは10以下であり、一方、その下限は、特には限定されないが、通常−20以上、好ましくは、−10以上、より好ましくは、−5以上、特に好ましくは−3以上、最も好ましくは−1以上である。高いYI値を示すポリエステルは、フィルムやシート等の使用用途が制限される欠点を有する。一方、低いYI値を示すポリエステルは、より好ましい形態ではあるが、このようなポリマーを製造するには製造プロセスが煩雑で極めて高額の設備投資を要するなど経済的に不利な点がある。本発明において、YI値は、JIS K7105に基づく方法で測定される値である。
<ポリエステル組成物>
上述の方法で得られたポリエステルは、従来公知の各種の樹脂とブレンド(混練)することにより、ポリエステル組成物が得られる。このような樹脂としては、従来公知の各種の汎用の熱可塑性樹脂、生分解性樹脂、天然樹脂を用いることができ、好ましくは生分解性高分子や汎用の熱可塑性樹脂が挙げられる。これらを単独で用いても、2種類以上ブレンドして用いてもよい。各種樹脂はバイオマス資源から得られる樹脂であってもよい。
本発明のポリエステルは公知の各種の樹脂とブレンド(混練)により、任意の広範囲の特性を保有するポリエステル組成物とすることができる。例えば、ブレンド比によりその物性値は大きく変動するため特には限定されないが、後述するポリブチレンサクシネートとポリ乳酸とをブレンドさせた系では、引張強度30〜60Mpa、極限伸び3〜400%、引張弾性率500〜3000Mpa、引張降伏点強度30〜50Mpa、曲げ強度30〜100Mpa、曲げ弾性率600〜4000Mpa、衝撃試験強度5〜20kJ/m程度というような汎用のポリマーが有する特性を保有できる。同様に、軟質系の芳香族系ポリエステルとのブレンド系では、引張強度30〜70Mpa、極限伸び400〜800%、引張降伏点強度10〜30Mpaというような汎用のポリマーが有する特性を保有できる。更には、ナイロン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ABS、PET、ポリスチレン等の汎用樹脂との組み合わせにより密度が1〜1.4g/cm、融点は150〜270℃、引張強度30〜80Mpa、極限伸び100〜600%、ガラス転移点−85〜150℃というような汎用のポリマーが有する特性を保有できる。これらの特性は、使用目的に応じて、ポリエステル原料や各種樹脂の種類、ブレンド量比や成形条件等を変えることにより任意に調整することができる。
本発明のバイオマス由来のポリエステルへ配合する汎用の熱可塑性樹脂としては、後述の石油由来のポリエステル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミドの汎用の熱可塑性樹脂を任意に選択できる。この場合には、バイオマス由来のポリエステルとの相溶性を考慮する必要がある。さらに、本発明のバイオマス由来のポリエステルの性質を適正に維持するためには、配合量も重要になる。通常は、バイオマス由来のポリエステルが99.9〜20重量%であり、汎用の可塑性樹脂が0.1〜80重量%程度のブレンドが可能である。しかし、バイオマス由来のポリエステルの生分解性の特性などを維持することを目的とする場合には、汎用の熱可塑性樹脂のブレンド量を50〜1重量%、目的にもよるが、好ましくは30〜3重量%程度とすると生分解性特性を維持しながら所定の物性が得られる。
生分解性を有する高分子としては、脂肪族ポリエステル系樹脂、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリビニルアルコ−ル、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、多糖類、その他の生分解性樹脂が挙げられる。
これらの生分解性高分子のブレンド量は、単に生分解という目的では、両者がいずれも生分解性樹脂であるという事情からすれば、本発明のバイオマス由来のポリエステル99.9〜0.1重量%に対して、生分解性高分子が0.1〜99.9重量%程度ブレンドしても適正に生分解性特性が発現するので、最も適正な特性の発現が可能な組成物である。しかし、本発明のバイオマス由来のポリエステルの観点からは、バイオマス由来のポリエステルが99.9〜40重量%であり、生分解性高分子が0.1〜60重量%程度のブレンドが好ましく、特に、生分解性高分子を5〜50重量%程度のブレンドがより好ましい。
本発明のバイオマス由来のポリエステルへ配合する天然樹脂、多糖類としては、酢酸セルロース、キトサン、セルロース、クロマンインデン、ロジン、リグニン、カゼイン等が列挙できる。この種の天然樹脂、多糖類は、本来自然の状態で水、空気の存在で腐敗して土壌に帰るか、または肥料となる性質を有するものである。本発明のバイオマス由来のポリエステル99.9〜0.1重量%に対して、天然樹脂、多糖類が0.1〜99.9重量%程度ブレンドが可能である。しかし、バイオマス由来のポリエステルの生分解性のみならず、本来のプラスチックに求められる機械的特性、耐水性、耐候性などの諸特性などを維持するためには、天然樹脂、多糖類を5〜50重量%程度ブレンドするのがより好ましい。
本発明のバイオマス由来のポリエステルと天然樹脂、多糖類との相溶性の問題もある。これらを解決すれば、本発明のバイオマス由来のポリエステルと天然樹脂の組成物からなる材料は、使用済後の材料を投棄すれば、早期生分解消失はないにしても、天然樹脂、多糖類は腐敗して、土壌改良剤、堆肥としても有効である。この種のポリエステル組成物は、積極的に自然に、特に土壌に投棄することが推奨される場合があり、まさに、グリーンプラ製品としての有意性を高めることになる。以下に各樹脂の具体的な組成物を開示するが、特に限定されるものではない。
脂肪族ポリエステル系樹脂としては、脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位並びに脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸単位を必須成分とする脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族オキシカルボン酸系樹脂等が挙げられる。
上記脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位の具体例としては、例えば、エチレングリコール単位、ジエチレングリコール単位、トリエチレングリコール単位、ポリエチレングリコール単位、プロピレングリコール単位、ジプロピレングリコール単位、1,3−ブタンジオール単位、1,4−ブタンジオール単位、3−メチル−1,5−ペンタンジオ−ル単位、1,6−へキサンジオール単位、1,9−ノナンジオール単位、ネオペンチルグリコール単位、ポリテトラメチレングリコール単位、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位等が挙げられる。また、これらは2種以上混合して用いることもできる。
上記脂肪族ポリエステル系樹脂を構成する脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸単位の具体例としては、例えば、コハク酸単位、シュウ酸単位、マロン酸単位、グルタル酸単位、アジピン酸単位、ピメリン酸単位、スベリン酸単位、アゼライン酸単位、セバシン酸単位、ウンデカン二酸単位、ドデカン二酸単位、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸単位等が挙げられる。また、これらは2種以上混合して用いることもできる。
上記脂肪族オキシカルボン酸系樹脂を構成する脂肪族オキシカルボン酸単位の具体例としては、例えば、グリコール酸単位、乳酸単位、3−ヒドロキシ酪酸単位、4−ヒドロキシ酪酸単位、4−ヒドロキシ吉草酸単位、5−ヒドロキシ吉草酸単位、6−ヒドロキシカプロン酸単位を挙げることができる。また、これらは2種以上混合して用いることもできる。
上記脂肪族ポリエステル系樹脂には、乳酸単位、6−ヒドロキシカプロン酸単位等のオキシカルボン酸単位が共重合されていても良い。上記記載のオキシカルボン酸単位は、ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対して、上限は通常70モル%以下、好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下、最も好ましくは10モル%以下である。
上記脂肪族ポリエステル系樹脂には3官能以上のアルコール又はカルボン酸が共重合されていても良い。具体的にはトリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、プロパントリカルボン酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、ヒドロキシグルタル酸、ヒドロキシメチルグルタル酸、ヒドロキシイソフタル酸、ヒドロキシテレフタル酸等の3官能以上の多価アルコール、多価カルボン酸、多価オキシカルボン酸が共重合されていても良い。上記の3官能以上の多官能化合物単位の量は、ゲルの発生原因となるため通常、ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対して、上限値が通常、5モル%以下、好ましくは1モル%以下、更に好ましくは、0.50モル%以下、特に好ましくは0.3モル%以下である。一方、高重合度のポリエステルを容易に製造する目的で3官能以上の化合物を共重合成分として使用する場合、その効果が発現する使用量の下限値としては、通常、0.0001モル%以上、好ましくは、0.001モル%以上、より好ましくは、0.005モル%以上、特に好ましくは0.01モル%以上である。また、脂肪族オキシカルボン酸系樹脂には、1,4−ブタンジオール単位、コハク酸単位、アジピン酸単位等の脂肪族及び/又は脂環式ジオール単位並びに脂肪族及び/又は脂環式ジカルボン酸単位、トリメチロールプロパン単位、グリセリン単位、ペンタエリスリトール単位、プロパントリカルボン酸単位、リンゴ酸単位、クエン酸単位、酒石酸単位等の3官能以上の脂肪族多価アルコール単位、脂肪族多価カルボン酸単位、脂肪族多価オキシカルボン酸単位が共重合されていても良い。上記記載の単位の量は、ポリエステルを構成する全単量体単位100モル%に対して、上限は通常90モル%以下、好ましくは70モル%以下、より好ましくは、50モル%以下である。
また、上記脂肪族ポリエステル系樹脂を構成するジオール(多価アルコール)単位、ジカルボン酸(多価カルボン酸)単位、及びオキシカルボン酸単位は、脂肪族系が主成分であるが、生分解性を損なわない範囲で、少量の他の成分、例えば、芳香族ジオール(多価アルコール)単位、芳香族ジカルボン酸(多価カルボン酸)単位、芳香族オキシカルボン酸単位等の芳香族系化合物単位を含有してもよい。芳香族ジオール(多価アルコール)単位の具体例としては、ビスフェノールA単位、1,4−ベンゼンジメタノール単位等が挙げられ、芳香族ジカルボン酸(多価カルボン酸)単位の具体例としては、テレフタル酸単位、イソフタル酸単位、トリメリット酸単位、ピロリメリット酸単位、ベンゾフェノンテトラカルボン酸単位、フェニルコハク酸単位、1,4−フェニレンジ酢酸単位等が挙げられる。芳香族オキシカルボン酸単位の具体例としては、ヒドロキシ安息香酸単位が挙げられる。これらの芳香族系化合物単位の導入量は、全ポリマー中50モル%以下、好ましくは30モル%以下である。
脂肪族ポリエステル系樹脂の製造方法は、公知公用の方法を採用することが出来、特に限定されない。また、生分解性に影響を与えない範囲で、脂肪族ポリエステル系樹脂には、ウレタン結合、アミド結合、カーボネート結合、エーテル結合、ケトン結合等が導入されていても良い。また脂肪族ポリエステルとしては、例えばイソシアネート化合物、エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、酸無水物、過酸化物等を用いて分子量を高めたり、架橋させたものを用いてもよい。さらに末端基をカルボジイミド、エポキシ化合物、単官能性のアルコール又はカルボン酸で封止していても良い。
多糖類としては、セルロース、酢酸セルロースの様な変性セルロース、キチン、キトサン、澱粉、変性澱粉が挙げられる。
その他の分解性樹脂としては、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール等が挙げられる。
汎用の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−α−オレフィン共重合体などのポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリオレフィン、ポリフッ化ビニリデン等の含ハロゲン系樹脂、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体などのスチレン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリイソプレン、ポリブタジエン、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム、スチレン−イソプレン共重合ゴム等のエラストマー、ナイロン6,6、ナイロン6等のポリアミド系樹脂の他、ポリ酢酸ビニル、メタクリレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアセタール、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン等が挙げられる。また各種相溶化剤を併用して、諸特性を調製することもできる。
ポリエステル組成物における本発明のポリエステルに対する上記記載の樹脂の混合比率(重量比)は、上記に詳述しているが、各種樹脂の共通した一般的な配合量を総称として明示すれば、本発明のポリエステル/樹脂が、99.9/0.1以上0.1/99.9以下であることが好ましく、99/1以上 1/99以下であることがより好ましく、最も好ましくは、98/2以上2/98以下である。
また、従来公知の各種添加剤を配合して組成物にすることも出来る。
添加剤としては、例えば、結晶核剤、酸化防止剤、アンチブロッキング剤、紫外線吸収剤、耐光剤、可塑剤、熱安定剤、着色剤、難燃剤、離型剤、帯電防止剤、防曇剤、表面ぬれ改善剤、焼却補助剤、顔料、滑剤、分散助剤や各種界面活性剤などの樹脂用添加剤が挙げられる。これらの添加量は、全組成物中、通常0.01〜5重量%である。これ等は一種又は二種以上の混合物として用いる事もできる。
また、従来公知の各種フィラーを配合して組成物にすることも出来る。機能性添加剤としては、化成肥料、土壌改良剤、植物活性剤なども添加することができる。そのフィラーは、無機系フィラーと有機系フィラーとに大別される。これ等は一種又は二種以上の混合物として用いる事もできる。
無機系フィラーとしては、無水シリカ、雲母、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、ケイ藻土、アロフェン、ベントナイト、チタン酸カリウム、ゼオライト、セピオライト、スメクタイト、カオリン、カオリナイト、ガラス、石灰石、カーボン、ワラステナイト、焼成パーライト、珪酸カルシウム、珪酸ナトリウム等の珪酸塩、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、炭酸第二鉄、酸化亜鉛、酸化鉄、リン酸アルミニウム、硫酸バリウム等の塩類等が挙げられる。無機系フィラーの含有量は、全組成物中、通常1〜80重量%であり、好ましくは3〜70重量%、より好ましくは5〜60重量%である。無機系フィラーの中には、炭酸カルシウム、石灰石のように、土壌改良剤の性質を持ちものもあり、これらの無機系フィラーを特に多量に含むバイオマス由来のポリエステル組成物を、土壌に投棄すれば、生分解後の無機系フィラーは残存して、土壌改良剤としても機能するので、グリーンプラとしての有意性を高める。農業資材、土木資材のように、土壌中に投棄するような用途の場合には、化成肥料、土壌改良剤、植物活性剤のようなものを添加したポリエステルを成形品とすることは、本発明のポリエステルの有用性を高めることになる。
有機系フィラーとしては、生澱粉、加工澱粉、パルプ、キチン・キトサン質、椰子殻粉末、木材粉末、竹粉末、樹皮粉末、ケナフや藁等の粉末などが挙げられる。これ等は一種または二種以上の混合物として使用することも出来る。有機系フィラーの添加量は、全組成物中、通常、0.01〜70重量%である。特にこの有機系フィラー系の充填剤は、ポリエステル組成物の生分解後に、その有機系フィラーが、土壌に残り、土壌改良剤、堆肥としての役割も果すので、グリーンプラとしての役割を高める。
組成物の調製は、従来公知の混合/混練技術は全て適用できる。混合機としては、水平円筒型、V字型、二重円錐型混合機やリボンブレンダー、スーパーミキサーのようなブレンダー、また各種連続式混合機等を使用できる。また混錬機としては、ロールやインターナルミキサーのようなバッチ式混錬機、一段型、二段型連続式混錬機、二軸スクリュー押し出し機、単軸スクリュー押し出し機等を使用できる。混練の方法としては、加熱溶融させたところに各種添加剤、フィラー、熱可塑性樹脂を添加して配合する方法などが挙げられる。また、前記の各種添加剤を均一に分散させる目的でブレンド用オイル等を使用することも出来る。
本発明に係るポリエステルおよびその組成物は、汎用プラスチックに適用される各種成形法に供することが出来る。例えば、圧縮成形(圧縮成形、積層成形、スタンパブル成形)、射出成形、押し出し成形や共押し出し成形(インフレ法やTダイ法によるフィルム成形、ラミネート成形、シート成形、パイプ成形、電線/ケーブル成形、異形材の成形)、中空成形(各種ブロー成形)、カレンダー成形、発泡成形(溶融発泡成形、固相発泡成形)、固体成形(一軸延伸成形、二軸延伸成形、ロール圧延成形、延伸配向不織布成形、熱成形[真空成形、圧空成形]、塑性加工)、粉末成形(回転成形)、各種不織布成形(乾式法、接着法、絡合法、スパンボンド法、等)等が挙げられる。
また、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、各種合目的的二次加工を施すことも可能である。二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング、等)等が挙げられる。
このような成形法により、単層フィルム、多層フィルム、延伸フィルム、収縮フィルム、ラミネートフィルム、単層シート、多層シート、延伸シート、パイプ、電線/ケーブル、モノフィラメント、マルチフィラメント、各種不織布、フラットヤーン、ステープル、捲縮繊維、延伸テープやバンド、筋付きテープ、スプリットヤーン、複合繊維、ブローボトル、発泡体などの各種成形品が得られる。また得られる成形品は、ショッピングバッグ、ゴミ袋、農業用フィルム等の各種フィルム、化粧品容器、洗剤容器、食品容器、漂白剤容器等の各種容器類、釣り糸、漁網、ロープ、結束材、手術糸、衛生用カバーストック材、保冷箱、緩衝材、医療材料、電気機器材料、家電筐体、自動車材料などの用途への使用が期待される。
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これら実施例に限定されるものではない。なお、以下の例における特性値は、次の方法により測定した。また、本発明おけるppmとは、質量ppmである。
希薄溶液粘度(還元粘度):ポリエステルを濃度0.5g/dLとなるようにフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に溶解し、溶液が30℃の恒温槽中で粘度管を落下する時間t(sec)を測定した。また溶媒のみの落下する時間t0(sec)を測定し30℃での還元粘度ηsp/C(=(t−t0)/t0・C)を算出した(Cは溶液の濃度)。
硫黄含有量:試料約0.1gを白金製ボートに採取して石英管管状炉(三菱化学社製AQF−100(濃縮システム))で燃焼し、燃焼ガス中の硫黄分を0.1%−過酸化水素水で吸収させた。その後、吸収液中の硫酸イオンをイオンクロマトグラフ(Dionex社製 ICS−1000型)を用いて測定した。
末端カルボキシル基量:得られたポリエステルをベンジルアルコールに溶解し0.1N NaOHにて滴定した値であり、1×10g当たりのカルボキシル基当量である。
YI値:JIS K7105の方法に基づいて測定した。
参考例1
<遺伝子破壊用ベクターの構築>
(A)枯草菌ゲノムDNAの抽出
LB培地[組成:トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5gを蒸留水1Lに溶解]10mLに、枯草菌(Bacillus subtilis ISW1214)を対数増殖期後期まで培養し、菌体を集めた。得られた菌体を10mg/mLの濃度にリゾチームを含む10mM NaCl/20mMトリス緩衝液(pH8.0)/1mM EDTA・2Na溶液0.15mLに懸濁した。
次に、上記懸濁液にプロテナーゼKを、最終濃度が100μg/mLになるように添加し、37℃で1時間保温した。さらにドデシル硫酸ナトリウムを最終濃度が0.5%になるように添加し、50℃で6時間保温して溶菌した。この溶菌液に、等量のフェノール/クロロフォルム溶液を添加し、室温で10分間ゆるやかに振盪した後、全量を遠心分離(5,000×g、20分間、10〜12℃)し、上清画分を分取し、酢酸ナトリウムを0.3Mとなるように添加した後、2倍量のエタノールを加え混合した。遠心分離(15,000×g、2分)により回収した沈殿物を70%エタノールで洗浄した後、風乾した。得られたDNAに10mMトリス緩衝液(pH7.5)−1mM EDTA・2Na溶液 5mLを加え、4℃で一晩静置し、以後のPCRの鋳型DNAに使用した。
(B)PCRによるSacB遺伝子の増幅およびクローニング
枯草菌SacB遺伝子の取得は、上記(A)で調製したDNAを鋳型とし、既に報告されている該遺伝子の塩基配列(GenBank Database AccessionNo.X02730)を基に設計した合成DNA(配列番号1および配列番号2)を用いたPCRによって行った。
反応液組成:鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.3μM各々プライマー、1mM MgSO、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。
反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、68℃で2分からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの68℃での保温は5分とした。
増幅産物の確認は、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約2kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。
回収したDNA断片は、T4 ポリヌクレオチドキナーゼ(T4 Polynucleotide Kinase:宝酒造製)により5′末端をリン酸化した後、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて大腸菌ベクター(pBluescriptII:STRATEGENE製)のEcoRV部位に結合し、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLアンピシリンおよび50μg/mLX−Galを含むLB寒天培地[トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5g及び寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、次に50μg/mLアンピシリンおよび10%ショ糖を含むLB寒天培地に移し37℃で24時間培養した。これらのクローンのうち、ショ糖を含む培地で生育できなかったものについて、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。SacB遺伝子が大腸菌内で機能的に発現する株は、ショ糖含有培地にて生育不能となるはずである。得られたプラスミドDNAを制限酵素SalIおよびPstIで切断することにより、約2kbの挿入断片が認められ、該プラスミドをpBS/SacBと命名した。
(C)クロラムフェニコール耐性SacBベクターの構築
大腸菌プラスミドベクターpHSG396(宝酒造:クロラムフェニコール耐性マーカー)500ngに制限酵素PshBI10ユニットを37℃で一時間反応させた後、フェノール/クロロフォルム抽出およびエタノール沈殿により回収した。クレノウフラグメント(Klenow Fragment:宝酒造製)により両末端を平滑化した後、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いてMluIリンカー(宝酒造)を連結、環状化させ、大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を34μg/mLクロラムフェニコールを含むLB寒天培地に塗抹した。得られたクローンから常法によりプラスミドDNAを調製し、制限酵素MluIの切断部位を有するクローンを選抜し、pHSG396Mluと命名した。
一方、上記(B)にて構築したpBS/SacBを制限酵素SalIおよびPstIで切断した後、クレノウフラグメントにて末端を平滑化した。これにライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いてMluIリンカーを連結したのち、0.75%アガロースゲル電気泳動によりSacB遺伝子を含む約2.0kbのDNA断片を分離、回収した。このSacB遺伝子断片を、制限酵素MluI切断後、アルカリフォスファターゼ(Alkaline Phosphatase Calf intestine:宝酒造)にて末端を脱リン酸化したpHSG396Mlu断片とライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結させ、大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を34μg/mLクロラムフェニコールを含むLB寒天培地に塗抹した。こうして得られたコロニーを、次に34μg/mLクロラムフェニコールおよび10%ショ糖を含むLB寒天培地に移し37℃で24時間培養した。これらのクローンのうち、ショ糖を含む培地で生育できなかったものについて、常法によりプラスミドDNAを精製した。こうして得られたプラスミドDNAをMluI切断により解析した結果、約2.0kbの挿入断片を持つことが確認され、これをpCMB1と命名した。
(D)カナマイシン耐性遺伝子の取得
カナマイシン耐性遺伝子の取得は、大腸菌プラスミドベクターpHSG299(宝酒造:カナマイシン耐性マーカー)のDNAを鋳型とし、配列番号3および配列番号4で示した合成DNAをプライマーとしたPCR法によって行った。
反応液組成:鋳型DNA1ng、PyrobestDNAポリメラーゼ(宝酒造)0.1μL、1倍濃度添付バッファー、0.5μM各々プライマー、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。
反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、62℃で15秒、72℃で1分20秒からなるサイクルを20回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は5分とした。
増幅産物の確認は、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約1.1kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。回収したDNA断片は、T4 ポリヌクレオチドキナーゼ(T4 Polynucleotide Kinase:宝酒造製)により5′末端をリン酸化した。
(E)カナマイシン耐性SacBベクターの構築
上記(C)で構築したpCMB1を制限酵素Van91IおよびScaIで切断して得られた約3.5kbのDNA断片を0.75%アガロースゲル電気泳動により分離、回収した。これを上記(D)で調製したカナマイシン耐性遺伝子と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結し、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLカナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。
このカナマイシン含有培地上で生育した株は、ショ糖含有培地にて生育不能であることが確認された。また、同株から調製したプラスミドDNAは、制限酵素HindIII消化により354、473、1807、1997bpの断片を生じたことから、図1に示した構造に間違いがないと判断し、該プラスミドをpKMB1と命名した。
参考例2
<LDH遺伝子破壊株の作製>
(A)ブレビバクテリウム・フラバムMJ233−ES株ゲノムDNAの抽出
A培地[尿素 2g、(NHSO 7g、KHPO 0.5g、KHPO0.5g、MgSO・7HO 0.5g、FeSO・7HO 6mg、MnSO・4−5H2O6mg、ビオチン 200μg、チアミン 100μg、イーストエキストラクト 1g、カザミノ酸 1g、グルコース 20g、蒸留水1Lに溶解]10mLに、ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233株を対数増殖期後期まで培養し、得られた菌体から上記参考例1の(A)に示す方法にてゲノムDNAを調製した。
(B)ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子のクローニング
MJ233株ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子の取得は、上記(A)で調製したDNAを鋳型とし、特開平11−206385に記載の該遺伝子の塩基配列を基に設計した合成DNA(配列番号5および配列番号6)を用いたPCRによって行った。
反応液組成:鋳型DNA 1μL、TaqDNAポリメラーゼ(宝酒造) 0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.2μM各々プライマー、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。
反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、55℃で20秒、72℃で1分からなるサイクルを30回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は5分とした。
増幅産物の確認は、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約0.95kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。
回収したDNA断片を、PCR産物クローニングベクターpGEM−TEasy(Promega製)と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLアンピシリンおよび50μg/mLX−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素SacIおよびSphIで切断することにより、約1.0kbの挿入断片が認められ、これをpGEMT/CgLDHと命名した。
(C)ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子破壊用プラスミドの構築
上記(B)で作製したpGEMT/CgLDHを制限酵素EcoRVおよびXbaIで切断することにより約0.25kbからなるラクテートデヒドロゲナーゼのコーディング領域を切り出した。残った約3.7kbのDNA断片の末端をクレノウフラグメントにて平滑化し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて環状化させ、大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLアンピシリンを含むLB寒天培地に塗抹した。この培地上で生育した株を、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素SacIおよびSphIで切断することにより、約0.75kbの挿入断片が認められたクローンを選抜し、これをpGEMT/ΔLDHと命名した。
次に、上記pGEMT/ΔLDHを制限酵素SacIおよびSphIにて切断して生じる約0.75kbのDNA断片を、0.75%アガロースゲル電気泳動により分離、回収し、欠損領域を含むラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子断片を調製した。このDNA断片を、制限酵素SacIおよびSphIにて切断した参考例1にて構築したpKMB1と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLカナマイシンおよび50μg/mLX−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素SacIおよびSphIで切断することにより、約0.75kbの挿入断片が認められたものを選抜し、これをpKMB1/ΔLDHと命名した(図2)。
(D)ブレビバクテリウム・フラバムMJ233−ES株由来ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子破壊株の作製
ブレビバクテリウム・フラバムMJ−233株の形質転換に用いるプラスミドDNAは、pKMB1/ΔLDHを用いて塩化カルシウム法(Journal of Molecular Biology,53,159,1970)により形質転換した大腸菌JM110株から調製した。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233−ES株の形質転換は、電気パルス法(Res.Microbiol., Vol.144, p.181−185, 1993)によって行い、得られた形質転換体をカナマイシン 50μg/mLを含むLBG寒天培地[
トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5g、グルコース 20g、及び寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗抹した。
この培地上に生育した株は、pKMB1/ΔLDHがブレビバクテリウム・フラバムMJ233−ES株菌体内で複製不可能なプラスミドであるため、該プラスミドのラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子とブレビバクテリウム・フラバムMJ−233株ゲノム上の同遺伝子との間で相同組み換えを起こした結果、同ゲノム上に該プラスミドに由来するカナマイシン耐性遺伝子およびSacB遺伝子が挿入されているはずである。
次に、上記相同組み換え株をカナマイシン50μg/mLを含むLBG培地にて液体培養した。この培養液の菌体数約100万相当分を10%ショ糖含有LBG培地に塗抹にした。結果、2回目の相同組み換えによりSacB遺伝子が脱落しショ糖非感受性となったと考えられる株約10個得た。
この様にして得られた株の中には、そのラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子がpKMB1/ΔLDHに由来する変異型に置き換わったものと野生型に戻ったものが含まれる。ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子が変異型であるか野生型であるかの確認は、LBG培地にて液体培養して得られた菌体を直接PCR反応に供し、ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子の検出を行うことによって容易に確認できる。ラクテートデヒドロゲナーゼ遺伝子をPCR増幅するためのプライマー(配列番号7および配列番号8)を用いて分析すると、野生型では720bp、欠失領域を持つ変異型では471bpのDNA断片を認めるはずである。
上記方法にてショ糖非感受性となった菌株を分析した結果、変異型遺伝子のみを有する株を選抜し、該株をブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDHと命名した。
(E)ラクテートデヒドロゲナーゼ活性の確認
上記(D)で作製したブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株をA培地に植菌し、30℃で15時間好気的に振とう培養した。得られた培養物を遠心分離(3,000×g、4℃、20分間)して菌体を回収後、ナトリウム−リン酸緩衝液[組成:50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH7.3)]で洗浄した。
次いで、洗浄菌体0.5g(湿重量)を上記ナトリウム−リン酸緩衝液2mLに懸濁し、氷冷下で超音波破砕器(ブランソン社製)にかけ菌体破砕物を得た。該破砕物を遠心分離(10,000×g,4℃,30分間)し、上清を粗酵素液として得た。対照として、ブレビバクテリウム・フラバム MJ233−ES株の粗酵素液を同様に調製し、以下の活性測定に供した。
ラクテートデヒドロゲナーゼ酵素活性の確認は、両粗酵素液について、ピルビン酸を基質とした乳酸の生成に伴い、補酵素NADHがNAD+に酸化されるのを、340nmの吸光度変化として測定した[L. Kanarek and R. L. Hill, J.Biol. Chem. 239, 4202 (1964)]。反応は、50mM カリウム−リン酸緩衝液(pH7.2)、10mM ピルビン酸、0.4mMNADH存在下、37℃にて行った。その結果、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233−ES株から調製された粗酵素液におけるラクテートデヒドロゲナーゼ活性に対し、ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株から調製された粗酵素液におけるラクテートデヒドロゲナーゼ活性は、10分の1以下であった。
参考例3
<コリネ型細菌発現ベクターの構築>
(A)コリネ型細菌用プロモーター断片の調製
コリネ型細菌で強力なプロモーター活性を有することが報告された特開平7−95891号公報の配列番号4に記載のDNA断片(以降TZ4プロモーターと称する)を利用することとした。本プロモーター断片の取得は、参考例2の(A)で調製したブレビバクテリウム・フラバムMJ233ゲノムDNAを鋳型とし、特開平7−95891号公報の配列番号4に記載の配列を基に設計した合成DNA(配列番号9および配列番号10)を用いたPCRによって行った。
反応液組成:鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製) 0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.3μM各々プライマー、1mM MgSO、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。
反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、60℃で20秒、72℃で30秒からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの72℃での保温は2分とした。
増幅産物の確認は、2.0%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約0.25kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。
回収したDNA断片は、T4 ポリヌクレオチドキナーゼ(T4 Polynucleotide Kinase:宝酒造製)により5′末端をリン酸化した後、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて大腸菌ベクターpUC19(宝酒造)のSmaI部位に結合し、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLアンピシリンおよび50μg/mLX−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成した6クローンについて、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製し、塩基配列を決定した。これ中でTZ4プロモーターがpUC19のlacプロモーターと逆方向に転写活性を有するように挿入されたクローンを選抜し、これをpUC/TZ4と命名した。
次に、pUC/TZ4を制限酵素BamHIおよびPstIで切断して調製したDNA断片に、5’末端がリン酸化された合成DNA(配列番号11および配列番号12)から成り、両末端にそれぞれBamHIとPstIに対する粘着末端を有するDNAリンカーを混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。本DNAリンカーには、リボソーム結合配列(AGGAGG)およびその下流に配したクローニングサイト(上流から順に、PacI、NotI、ApaI)が含まれている。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAの中から制限酵素NotIによって切断されるものを選抜し、これをpUC/TZ4−SDと命名した。
この様にして構築したpUC/TZ4−SDを制限酵素PstIで切断後、クレノウフラグメントにて末端を平滑化し、次いで制限酵素KpnIで切断することにより生じた約0.3kbのプロモーター断片を、2.0%アガロースゲル電気泳動により分離、回収した。
(B)コリネ型細菌発現ベクターの構築
コリネ型細菌にて安定的に自立複製可能なプラスミドとして、特開平12−93183号公報に記載のpHSG298par−repを利用する。本プラスミドは、ブレビバクテリウム・スタチオニスIFO12144株が保有する天然型プラスミドpBY503の複製領域および安定化機能を有する領域と大腸菌ベクターpHSG298(宝酒造)に由来するカナマイシン耐性遺伝子および大腸菌の複製領域を備える。pHSG298par−repを制限酵素SseIで切断後、クレノウフラグメントにて末端を平滑化し、次いで制限酵素KpnIで切断することによって調製したDNAを、上記(A)で調製したTZ4プロモーター断片と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLカナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で生育した株を、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAの中から制限酵素NotIによって切断されるものを選抜し、該プラスミドをpTZ4と命名した(図3に構築手順を示した)。
参考例4
<ピルベートカルボキシラーゼ活性増強株の作製>
(A)ピルベートカルボキシラーゼ遺伝子の取得
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株由来ピルベートカルボキシラーゼ遺伝子の取得は、参考例2の(A)で調製したDNAを鋳型とし、全ゲノム配列が報告されているコリネバクテリウム・グルタミカム ATCC13032株の該遺伝子の配列(GenBank Database Accession No.AP005276)を基に設計した合成DNA(配列番号13および配列番号14)を用いたPCRによって行った。
反応液組成:鋳型DNA1μL、PfxDNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)0.2μL、1倍濃度添付バッファー、0.3μM各々プライマー、1mM MgSO、0.25μMdNTPsを混合し、全量を20μLとした。
反応温度条件:DNAサーマルサイクラー PTC−200(MJResearch社製)を用い、94℃で20秒、68℃で4分からなるサイクルを35回繰り返した。但し、1サイクル目の94℃での保温は1分20秒、最終サイクルの68℃での保温は10分とした。PCR反応終了後、Takara Ex Taq(宝酒造)を0.1μL加え、さらに72℃で30分保温した。
増幅産物の確認は、0.75%アガロース(SeaKem GTG agarose:FMCBioProducts製)ゲル電気泳動により分離後、臭化エチジウム染色により可視化することにより行い、約3.7kbの断片を検出した。ゲルからの目的DNA断片の回収は、QIAQuick Gel Extraction Kit(QIAGEN製)を用いて行った。
回収したDNA断片を、PCR産物クローニングベクターpGEM−TEasy(Promega製)と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLアンピシリンおよび50μg/mLX−Galを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で白色のコロニーを形成したクローンを、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素PacIおよびApaIで切断することにより、約3.7kbの挿入断片が認められ、これをpGEM/MJPCと命名した。
pGEM/MJPCの挿入断片の塩基配列は、アプライドバイオシステム社製塩基配列解読装置(モデル377XL)およびビックダイターミネーターサイクルシークエンスキットver3を用いて決定した。その結果得られたDNA塩基配列および推測されるアミノ酸配列を配列番号15に記載する。また、アミノ酸配列のみを配列番号16に記載する。本アミノ酸配列はコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032株由来のそれと極めて高い相同性(99.4%)を示すことから、pGEM/MJPCの挿入断片がブレビバクテリウム・フラバムMJ233株由来のピルベートカルボキシラーゼ遺伝子であると断定した。
(B)ピルベートカルボキシラーゼ活性増強用プラスミドの構築
上記(A)で作製したpGEM/MJPCを制限酵素PacIおよびApaIで切断することにより生じる約3.7kbからなるピルベートカルボキシラーゼ遺伝子断片を、0.75%アガロースゲル電気泳動により分離、回収した。
このDNA断片を、制限酵素PacIおよびApaIにて切断した、参考例3にて構築したpTZ4と混合し、ライゲーションキットver.2(宝酒造製)を用いて連結後、得られたプラスミドDNAで大腸菌(DH5α株)を形質転換した。この様にして得られた組換え大腸菌を50μg/mLカナマイシンを含むLB寒天培地に塗抹した。
この培地上で生育した株を、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを精製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素PacIおよびApaIで切断することにより、約3.7kbの挿入断片が認められたものを選抜し、これをpMJPC1と命名した(図4)。
(C)ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株への形質転換
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233株内で複製可能なpMJPC1による形質転換用のプラスミドDNAは、上記(B)で形質転換した大腸菌(DH5α株)から調製した。
ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/ΔLDH株への形質転換は、電気パルス法(Res. Microbiol., Vol.144, p.181−185, 1993)によって行い、得られた形質転換体をカナマイシン 50μg/mLを含むLBG寒天培地[トリプトン10g、イーストエキストラクト5g、NaCl 5g、グルコース 20g、及び寒天15gを蒸留水1Lに溶解]に塗抹した。
この培地上に生育した株から、常法により液体培養した後、プラスミドDNAを抽出、制限酵素切断による解析を行った結果、同株がpMJPC1を保持していることを確認し、該株をブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC/ΔLDH株と命名した。
(D)ピルベートカルボキシラーゼ酵素活性
上記(C)で得られた形質転換株ブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC/ΔLDH株をグルコース2%、カナマイシン25mg/Lを含むA培地100mlで終夜培養を行った。得られた菌体を集菌後、50mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)50mlで洗浄し、同組成の緩衝液20mlに再度懸濁させた。懸濁液をSONIFIER 350(BRANSON製)で破砕し、遠心分離した上清を無細胞抽出液とした。得られた無細胞抽出液を用いピルベートカルボキシラーゼ活性を測定した。酵素活性の測定は100mM Tris/HCl緩衝液(pH7.5)、 0.1mg/10mlビオチン、5mM 塩化マグネシウム、50mM 炭酸水素ナトリウム、5mM ピルビン酸ナトリウム 、5mM アデノシン三リン酸ナトリウム、0.32 mM NADH、20units/1.5mlリンゴ酸デヒドロゲナーゼ(WAKO製、酵母由来)及び酵素を含む反応液中で25℃で反応させることにより行った。1Uは1分間に1μmolのNADHの減少を触媒する酵素量とした。ピルベートカルボキシラーゼを発現させた無細胞抽出液における比活性は 0.2U/mg蛋白質であった。なお親株であるMJ233/△LDH株をA培地を用いて同様に培養した菌体では、本活性測定方法によりピルベートカルボキシラーゼ活性は検出されなかった。
参考例5
<発酵液の調製>
尿素:4g、硫酸アンモニウム:14g、リン酸1カリウム:0.5g、リン酸2カリウム0.5g、硫酸マグネシウム・7水和物:0.5g、硫酸第一鉄・7水和物:20mg、硫酸マンガン・水和物:20mg、D−ビオチン:200μg、塩酸チアミン:200μg、酵母エキス:1g、カザミノ酸:1g、及び蒸留水:1000mLの培地100mLを500mLの三角フラスコにいれ、120℃、20分加熱滅菌した。これを室温まで冷やし、あらかじめ滅菌した50%グルコース水溶液を4mL、無菌濾過した5%カナマイシン水溶液を50μL添加し、参考例4(C)で作製したブレビバクテリウム・フラバムMJ233/PC/ΔLDH株を接種して24時間30℃にて種培養した。
尿素:12g、硫酸アンモニウム:42g、リン酸1カリウム:1.5g、リン酸2カリウム1.5g、硫酸マグネシウム・7水和物:1.5g、硫酸第一鉄・7水和物:60mg、硫酸マンガン・水和物:60mg、D−ビオチン:600μg、塩酸チアミン:600μg、酵母エキス3g、カザミノ酸3g、消泡剤(アデカノールLG294:旭電化製):1mL及び蒸留水:2500mLの培地を5Lの発酵糟に入れ、120℃、20分加熱滅菌した。これを室温まで冷やした後、あらかじめ滅菌した12%グルコース水溶液を500mL添加し、これに前述の種培養液を全量加えて、30℃に保温した。通気は毎分500mL、攪拌は毎分500回転で本培養を行った。12時間後にグルコースがほぼ消費されていた。
硫酸マグネシウム・7水和物:1.5g、硫酸第一鉄・7水和物:60mg、硫酸マンガン・水和物:60mg、D−ビオチン:600μg、塩酸チアミン:600μg、消泡剤(アデカノールLG294:旭電化製):5ml及び蒸留水:1.5Lの培地を3Lの三角フラスコに入れ、120℃、20分加熱滅菌した。室温まで冷やした後、上記の本培養により得られた培養液を10000g、5分の遠心分離により集菌した菌体を添加して、O.D.(660nm)が60になるように再懸濁した。この懸濁液1.5Lとあらかじめ滅菌した20%グルコース溶液1.5Lを5Lのジャーファーメンターに入れて混合し、35℃に保温した。pHは2M炭酸アンモニウムを用いて7.6に保ち、毎分500mLで通気、毎分300回転で攪拌しながら反応を行った。反応開始後約50時間でグルコースがほぼ消費されていた。コハク酸が57g/L蓄積されていた。この発酵液を10000g、5分間の遠心分離、限外濾過(日東電工(株)製 NTU−3000−C1R)により菌体と上清に分離した。以上の操作を30回行うことにより、コハク酸発酵液上清を103L得ることが出来た。
<コハク酸醗酵液からの琥珀酸精製>
上記のようにして得られたコハク酸発酵液上清を103L(琥珀酸含有量5.87kg)を、減圧しながらジャケット付き攪拌槽にて濃縮し、琥珀酸の濃度が32.9%、アンモニア11.9%の濃縮液:17.8kg(計算値)を得た。これに酢酸(ダイセル化学社製)を8.58kg加えて30℃まで冷却し、更にメタノール(キシダ化学社製)を4.0kg加えて15℃まで冷却し1時間攪拌した後、20℃にて4時間攪拌を継続した。
結晶が析出しており、これを遠心ろ過器にてろ過を行い、琥珀酸を74.6%、酢酸3.5%、アンモニア12.2%を含有する結晶4.95kgを得た。
酢酸11.3kgに得られた結晶4.9kgをいれ、85℃にて溶解し、直ちに20℃まで冷却した。既に結晶は析出していたが、そのまま更に3時間攪拌を続けた後、遠心ろ過器にてろ過を行い、琥珀酸87.9%、酢酸8.4%、アンモニア0.6%を含有する結晶2.44kgを得た。
5℃に冷やした脱塩水3.5Lにて得られた結晶を懸洗し、これを遠心ろ過器にてろ過すると、琥珀酸90%、酢酸1.7%、アンモニア0.05%(およそ500ppm)含有する2.08kgの結晶が得られた。
この粗琥珀酸結晶2.0kgを28.5Lの脱塩水に溶解し、1Lのイオン交換樹脂(三菱化学社製SK1BH)をつめた塔にSV=2にて通液し、約33Lの処理液を得た。これを減圧したロータリーエバポレータに連続フィードしながら、およそ5.2Lまで濃縮した。この段階で既に結晶が析出していた。更に、5℃に冷却し、2時間攪拌を継続した後、これをろ過すると、琥珀酸96.7%の結晶1.76kgを得た。これを真空乾燥機にて乾燥すると1.68kgの琥珀酸を得る事が出来た。
<硫黄原子含有量 0.2ppmのバイオマス資源由来コハク酸を用いたポリエステル>
実施例1
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧用排気口を備えた反応容器に、硫黄原子含有量 0.2ppmのバイオマス資源由来コハク酸100重量部(YI=2.5)、三菱化学社製工業グレードの1,4―ブタンジオール88.5重量部、リンゴ酸0.37重量部ならびに触媒として二酸化ゲルマニウムを予め0.98重量%溶解させた88%乳酸水溶液5.4重量部を仕込み、窒素―減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。
次に、系内を撹拌しながら220℃に昇温し、この温度で1時間反応させた。次に、30分かけて230℃まで昇温し、同時に1.5時間かけて0.07×10Paになるように減圧し、同減圧度で1.8時間反応を行い重合を終了し、白色のポリエステル(黄色度YIは11)を得た。
得られたポリエステル中の硫黄原子含量は、0.1ppm、ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は2.5、末端カルボキシル基量は26当量/トンあった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
得られたポリエステルを、インフレ成形機を用いて成形温度160℃、ブロー比2.5、厚み20μmとしフィルム成形を行った。成形したフィルムを5cm×18cmの大きさに切り取り、土壌に埋設した。1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月のフィルムの重量減少率を測定し、生分解試験を行った。結果を表1に示す。
実施例2
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧用排気口を備えた反応容器に、実施例1の硫黄原子0.2ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部、旭化成(株)社製工業グレードのアジピン酸32重量部、三菱化学(株)社製工業グレードの1,4−ブタンジオール111.6重量部、リンゴ酸0.48重量部ならびに触媒として二酸化ゲルマニウムを予め0.98重量%溶解させた88%乳酸水溶液7.2重量部を仕込み、窒素−減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。
次に、系内を撹拌しながら220℃に昇温し、この温度で1時間反応させた。次に、30分かけて230℃まで昇温し、同時に1.5時間かけて0.07×10Paになるように減圧し、同減圧度で1.6時間反応を行い重合を終了し、実施例1と同様の白色のポリエステル(黄色度YIは13)を得た。
得られたポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は2.4、末端カルボキシル基量は22当量/トンあった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
実施例3
原料として、実施例1の硫黄原子0.2ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部、三菱化学(株)社製工業グレードの1,4−ブタンジオール81.4重量部、エチレングリコール6.3重量部、リンゴ酸0.37重量部ならびに触媒として二酸化ゲルマニウムを予め0.98重量%溶解させた88%乳酸水溶液5.4重量部を使用した以外は実施例2と同様の重縮合反応条件によって実施例2と同様の白いポリエステルを得た(還元粘度(ηsp/c)は2.4。末端カルボキシル基量は21当量/トン。)。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
実施例4
原料として、実施例1の硫黄原子0.2ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部、三菱化学(株)社製工業グレードの1,4−ブタンジオール81.4重量部、1,4−シクロヘキサンジメタノール12.3重量部、リンゴ酸0.37重量部ならびに触媒として二酸化ゲルマニウムを予め0.98重量%溶解させた88%乳酸水溶液5.4重量部を使用した以外は実施例2と同様の重縮合反応条件によって実施例2と同様の白いポリエステルを得た(還元粘度(ηsp/c)は2.6。末端カルボキシル基量は17当量/トン。)。0.07×10Paの減圧下での重合反応時間は3.8時間かかった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
実施例5
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧用排気口を備えた反応容器に、実施例1の硫黄原子0.2ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部、三菱化学(株)社製工業グレードの1,4−ブタンジオール80.4重量部ならびにリンゴ酸0.37重量部を仕込み、窒素−減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。
次に、系内を撹拌しながら220℃に昇温し、この温度で1時間反応させた。次に、0.11重量部のテトラ−n−ブチルチタネートを0.4重量部のブタノールに希釈した触媒液を反応系へ添加後、30分かけて230℃まで昇温し、同時に1.5時間かけて0.07×10Paになるように減圧し、同減圧度で2時間反応を行い重合を終了し、実施例1と同様の白色のポリエステルを得た(還元粘度(ηsp/c)は2.5。末端カルボキシル基量は11当量/トン。)。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
実施例6
実施例1において、リンゴ酸0.37重量部の代わりにリンゴ酸0.74重量部を仕込んだ以外は実施例1と同様の重縮合反応条件によってポリエステルを製造した。0.07×10Paの減圧下での重合反応時間は1.1時間であった。得られたポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は3.2、末端カルボキシル基量は63当量/トンあった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温でほぼ均一に溶解したが、少量の不溶物が観測された。
<硫黄原子含有量 2ppmのバイオマス資源由来コハク酸を用いたポリエステル>
実施例7
原料として、実施例1の硫黄原子0.2ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部の代わりに硫黄原子2ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸(黄色度YIは3)100重量部を使用した以外は実施例1と同様の重縮合反応条件によってポリエステルを製造した。0.07×10Paの減圧下での重合反応時間は2.1時間であった。
得られたポリエステル(黄色度YIは19)中の硫黄原子含量は、1.4ppm、ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は2.4、末端カルボキシル基量は15当量/トンあった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
<硫黄原子含有量 5ppmのバイオマス資源由来コハク酸を用いたポリエステル>
実施例8
原料として、実施例1の硫黄原子0.2ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部の代わりに硫黄原子5ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸(黄色度YIは7)100重量部を使用した以外は実施例1と同様の重縮合反応条件によってポリエステルを製造した。0.07×10Paの減圧下での重合反応時間は2時間であった。
得られたポリエステル(黄色度YIは22)中の硫黄原子含量は、2.6ppm、ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は2.3、末端カルボキシル基量は19当量/トンあった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
<硫黄原子含有量 18ppmのバイオマス資源由来コハク酸を用いたポリエステル>
実施例9
原料として、実施例1の硫黄原子0.2ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部の代わりに硫黄原子18ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部を使用した以外は実施例1と同様の重縮合反応条件によってポリエステルを製造した。0.07×10Paの減圧下での重合反応時間は3.3時間であった。
得られた褐色のポリエステル(黄色度YIは42)の還元粘度(ηsp/c)は2.4、末端カルボキシル基量は18当量/トンあった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温でほぼ均一に溶解したが、微量の不溶物が観測された。
<硫黄原子含有量 34ppmのバイオマス資源由来コハク酸を用いたポリエステル>
実施例10
原料として、実施例1の硫黄原子0.2ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部の代わりに硫黄原子34ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部を使用した以外は実施例1と同様の重縮合反応条件によってポリエステルを製造した。0.07×10Paの減圧下での重合反応時間は7時間であった。
得られた褐色のポリエステル(黄色度YIは38)の還元粘度(ηsp/c)は2.4、末端カルボキシル基量は30当量/トンあった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温でほぼ均一に溶解したが、少量の不溶物が観測された。
<硫黄原子含有量 290ppmのバイオマス資源由来コハク酸を用いたポリエステル>
実施例11
原料として、実施例1の硫黄原子0.2ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部の代わりに硫黄原子290ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸(黄色度YIは8)100重量部を使用した以外は実施例1と同様の重縮合反応条件によってポリエステルを製造した。0.07×10Paの減圧下で2.5時間重合反応を実施したが得られたポリエステルはこげ茶に着色した(黄色度YIは60以上)。
得られたこげ茶のポリエステル中の硫黄原子含量は、16ppm、ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は1.1、末端カルボキシル基量は69当量/トンあった。
<硫黄原子含有量 330ppmのバイオマス資源由来コハク酸を用いたポリエステル>
実施例12
原料として、実施例1の硫黄原子0.2ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部の代わりに硫黄原子330ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸(黄色度YIは8)100重量部を使用した以外は実施例1と同様の重縮合反応条件によってポリエステルを製造した。0.07×10Paの減圧下で2.5時間重合反応を実施したが得られたポリエステルはこげ茶に着色した(黄色度YIは60以上)。
得られたこげ茶のポリエステル中の硫黄原子含量は、16ppm、ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は0.7、末端カルボキシル基量は139当量/トンあった。
<硫黄原子含有量 10ppmの石油由来のコハク酸を用いたポリエステル>
実施例13
原料として、実施例1の硫黄原子0.2ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部の代わりに硫黄原子含有量として10ppmの硫酸を含有する石油由来のコハク酸100重量部を使用した以外は実施例1と同様の重縮合反応条件によってポリエステルを製造した。0.07×10Paの減圧下での重合反応時間は3時間であった。
得られたポリエステル(黄色度YIは18)の還元粘度(ηsp/c)は2.5、末端カルボキシル基量は22当量/トンあった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解した。
<硫黄原子含有量 40ppmの石油由来のコハク酸を用いたポリエステル>
実施例14
原料として、実施例1の硫黄原子0.2ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸100重量部の代わりに硫黄原子含有量として40ppmの硫酸を含有する石油由来のコハク酸100重量部を使用した以外は実施例1と同様の重縮合反応条件によってポリエステルを製造した。0.07×10Paの減圧下での重合反応時間は4.5時間であった。
ポリマーは着色し(黄色度YIは40)、得られたポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は1.2、末端カルボキシル基量は68当量/トンあった。尚、得られたポリエステル(0.5g)は、1dLのフェノール/テトラクロロエタン(1/1(質量比)混合液)に室温で均一に溶解せず、少量の不溶物が観測された。
本実施例の検討において、ポリエステル中の硫黄原子の含有量が高いほど生分解性が高い傾向があることが見出された。一方、硫黄原子の含有量が多いほどポリエステルの着色や重合阻害が著しくなる傾向があることが判る。また、硫黄原子の含有量が多いほど、一部ゲル化により生成したと考えられる有機溶媒に対する不溶物が多くなる傾向があり、これらが製品中へ混入されると製品の景観を損ねたり、物性の低下が引き起こされる。
<硫黄原子を含まない石油由来コハク酸を用いたポリエステル>
比較例1
実施例1の硫黄原子 0.2ppmを含有するバイオマス資源から誘導したコハク酸の代わりに石油由来の硫黄原子を含まないコハク酸(川崎化成(株)社製工業グレード(黄色度YIは1.5))を使用した以外は実施例1と同様の方法で同様のポリエステルを製造した。得られたポリエステル中には硫黄が含まれていなかった。
得られたポリエステルを、実施例1と同様な試験を行った。結果を表1に示す。
比較例2
攪拌装置、窒素導入口、加熱装置、温度計及び減圧用排気口を備えた反応容器に、石油由来の硫黄原子を含まないコハク酸(川崎化成(株)社製工業グレード(黄色度YIは1.5))100重量部、三菱化学社製工業グレードの1,4―ブタンジオール88.5重量部、リンゴ酸0.37重量部、p−トルエンスルホン酸水和物0.06重量部ならびに触媒として二酸化ゲルマニウムを予め0.98重量%溶解させた88%乳酸水溶液5.4重量部を仕込み、窒素―減圧置換によって系内を窒素雰囲気下にした。
次に、系内を撹拌しながら220℃に昇温し、この温度で1時間反応させた。次に、30分かけて230℃まで昇温し、同時に1.5時間かけて0.07×10Paになるように減圧し、同減圧度で3.5時間反応を行ったがポリエステルの粘度の上昇は観測されなかった。ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)は0.2であり、硫黄原子の含有量は54ppmであった。
表1より、バイオマス資源由来のコハク酸を用いたポリエステルは、土壌中での生分解速度が速いことが確認された。
参考例6
以下に参考例として、本発明のポリエステルおよび各種組成物の成形例および諸物性例を示す。
<組成物の調製>
表2に示す配合割合(重量%)で組成物1および2を調製した。組成物の調製は、テクノベル社製二軸押し出し機(KZW15)を用い、混練温度190℃で実施した。
(註)タルク:富士タルク工業(株)製「PKP−53S」
エコフレックス:ビーエーエスエフジャパン製
また表3に示す配合割合(重量%)で組成物3〜5を調製した。組成物の調製は、東洋精機社製ラボプラストミルを用い、混練温度190℃で実施した。
(註)ポリ乳酸:三井化学(株)製「レイシアH−400」
<射出成形>
表4に示すサンプルをCSI社製卓上射出成形機、ミニマックス成形機を用いて射出成形を行った。成形温度200℃とした。物性評価結果も併せて表4に示す。評価はいずれも23℃、50%RH環境下で実施した。
<シート成形>
Tダイ成形機を用い、表5に示すサンプルのシート成形を行った。成形温度200℃、ロール温度30℃、シート厚みは500μmとした。物性評価結果も併せて表5に示す。評価はいずれも23℃、50%RH環境下で実施した。

(註)引っ張り試験:JIS K7113準拠
2号ダンベル使用(引っ張り速度:50mm/分)
曲げ試験:JIS K7203準拠
MD:シート成形時の流れ方向
TD:流れに垂直方向
<フィルム成形>
表6に示すサンプルを用いてインフレ成形を行った。成形温度160℃、ブロー比2.5、フィルムの厚みは20μmとした。物性評価結果も併せて表6に示す。評価はいずれも23℃、50%RH環境下で実施した。

(註)引っ張り試験:JIS Z1702準拠
MD:フィルム成形時の流れ方向
TD:流れに垂直方向
<発泡成形>
本発明のポリエステルを190℃、10MPaでプレス成形し、厚み1mmのシートを作製した。得られたシートを固体状態において,バルブ付き圧力容器内に仕込み、圧力容器内の温度を、外部熱源を用いて100℃まで加熱すると同時に圧力容器内に二酸化炭素を仕込んだ。この際ポンプで加圧することにより15MPaまで昇圧した。その後2時間,100℃の一定温度,15MPaの一定圧力を保持し、2時間後、圧力容器のバルブを全開放して,急速に圧力容器内の圧力を解放することで発泡体を得た。得られた発泡体は水中で押しても泡が出てこない、独立気泡率の高いものであった。
特開2005−27533号公報
未来材料,第1巻,第11号,31頁(2001) Biotechnology and Bioengineering Symp. No.17(1986)355−363 Journal of the American Chemical Society No.116 (1994) 399−400 Appl.Microbiol Biotechnol No.51 (1999) 545−552

Claims (12)

  1. ジカルボン酸単位およびジオール単位で構成されるポリエステルを製造する方法において、ジカルボン酸原料及びジオール原料の少なくとも一つの成分がバイオマス資源から誘導されたものであり、該ジカルボン酸中の硫黄原子含有量が,該ジカルボン酸に対して質量比で0.01ppm以上100ppm以下であることを特徴とするバイオマス資源由来ポリエステルの製造方法。
  2. バイオマス資源由来ポリエステルの還元粘度(ηsp/c)が0.5〜6.0である請求項1に記載のバイオマス資源由来ポリエステルの製造方法。
  3. ポリエステルのYI値が、−10以上50以下であることを特徴とする請求項1に記載のバイオマス資源由来ポリエステルの製造方法。
  4. ポリエステルのカルボキシル基末端濃度が、100当量/トン以下であることを特徴とする請求項1に記載のバイオマス資源由来ポリエステルの製造方法。
  5. ジカルボン酸原料がバイオマス資源から誘導されたものを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のバイオマス資源由来ポリエステルの製造方法。
  6. ジカルボン酸原料がコハク酸を主成分とすることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のバイオマス資源由来ポリエステルの製造方法。
  7. ジオール原料が1,4−ブタンジオールを主成分とすることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のバイオマス資源由来ポリエステルの製造方法。
  8. 3官能以上の多価アルコール、3官能以上の多価カルボン酸及び3官能以上のオキシカルボン酸からなる群から選ばれる少なくとも1種の3官能以上の多官能化合物の存在下で反応させることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のバイオマス資源由来ポリエステルの製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のバイオマス資源由来ポリエステルの製造方法により得られるバイオマス資源由来ポリエステル。
  10. 請求項9に記載のバイオマス資源由来ポリエステル99.9〜0.1重量%に対して熱可塑性樹脂、生分解性樹脂、天然樹脂、又は多糖類を0.1〜99.9重量%配合したことを特徴とするバイオマス資源由来ポリエステル樹脂組成物。
  11. 請求項9に記載のバイオマス資源由来ポリエステルを成形してなる成形体。
  12. 請求項10に記載のバイオマス資源由来ポリエステル樹脂組成物を成形してなる成形体。
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