JP2009221303A - 摩擦材とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋳鉄製のロータとの摩擦係合に用いられる摩擦材において、ノンアスベスト摩擦材の配合基材に更に繊維長3mm以上12mm以下の熱可塑性繊維を3体積%以上12体積%以下配合し、摩擦材の熱成形後に前記熱可塑性繊維の融点以上の温度で加熱処理することにより、摩擦材内部に空孔を形成させた摩擦材とその製造方法。前記熱可塑性材料として、ポリプロピレン繊維を用いることが好ましい。
【選択図】図1
Description
しかし、公害防止のため摩擦材のノンアスベスト化が進むにつれて使用可能な材料が限定されるようになってきており、このノンアスベスト摩擦材に含有される無機充填材においても粉状の材料の使用が多くなってきた。このため摩擦材の性状としては硬度が大きく気孔率が小さくなる傾向にある。そして、摩擦特性は、初期摩擦係数は上記硬度に依存しているので低下し、また高速効力及びフェード特性は前記気孔率に関連しているのでこれらも低下する傾向にあった。これに加えてノイズも発生しやすくなっていた。
昨今、自動車の高速化に伴い、ブレーキロータ等の摩擦材として、高温域での使用に耐え得るブレーキパッドの開発が急務となっている。ロータは摩擦界面(ロータと摩擦材界面)での急激な温度上昇を引き起こしやすく、250℃以上になると、摩擦係数が0.25以下に低下する所謂フェード現象が発生する。また、そのロータの表面温度上昇によってブレーキ液温度の上昇を引き起こし、さらにべーパロック現象の要因となる。
しかし、フェード特性と耐熱劣化特性を完全に両立させる摩擦材は実用化されていない。
熱成形工程では、結合材を熱による反応で硬化させることにより、摩擦材全体を強固に結合させて一体化させ、強度と硬度をもたせるので、この工程の良否で摩擦材の性能が決まってくる。
配合材料としては、有機繊維、ガラス繊維などの無機繊維、鉄および銅繊維などの金属繊維等の繊維基材、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の充填材、ゴムダスト、カシューダスト、金属酸化物、金属粒子、セラミック粒子等の摩擦調整材、黒鉛、二硫化モリブデン等の潤滑材、フェノール樹脂等の結合材が使用されるが、従来の配合材料を使用した製造方法ではFCロータとの係合に適した気孔を有する摩擦材の製造は難しく、耐摩耗性、耐熱劣化特性の確保とフェード特性の両立に課題が残されていた。
従って、本発明の課題は、他の摩擦特性を犠牲にせず、摩擦材の熱処理によって気孔率を調整して、摩擦材が車両のディスクブレーキ等、特に鋳鉄製ロータと組み合わされたとき、耐熱性、耐摩耗性とフェード特性とを両立させ、高温域での使用に耐えうる摩擦材とその製造方法を提供することである。
すなわち、本発明は下記(1)〜(5)により達成された。
(2)前記熱可塑性繊維の直径が15μm以上500μm以下であることを特徴とする上記(1)に記載の摩擦材。
(3)前記熱可塑性繊維がポリプロピレン繊維であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の摩擦材。
(4)鋳鉄製ロータとの摩擦係合に用いられる摩擦材の製造方法において、少なくとも繊維基材、摩擦調整材、潤滑材、充填材、結合材からなる摩擦材の配合材料に更に融点が摩擦材の成形温度以上であり、後の加熱工程の加熱処理温度以下である熱可塑性繊維材料を配合し、摩擦材の熱成形後に前記熱可塑性繊維材料の融点以上の温度で加熱処理することにより、摩擦材内部に空孔を形成させることを特徴とする摩擦材の製造方法。
(5)前記摩擦材の加熱処理において、温度200℃以上300℃以下で1時間以上5時間以下加熱処理を行うことにより、摩擦材内部に空孔を形成させることを特徴とする上記(4)に記載の摩擦材の製造方法。
更に、本発明の摩擦材は気孔率を調整することによって、発生した熱を摩擦材内部まで伝えることを防ぎ、摩耗量の増加を防止することが出来る。
従って、本発明の製造方法による均一で大きい気孔径の気孔を有する摩擦材の使用により耐摩耗性とフェード特性を両立させることが可能になった。
従来、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂によって成形された摩擦材は、内部に均一で大きい気孔を持ちにくい。本発明においては、ポリプロピレンに代表される低燃焼温度の樹脂を摩擦材に配合し、これを摩擦材の成形後に樹脂の融点以上の温度で高温加熱処理することによって、摩擦材内部に空孔を作ることが可能となる。ここで配合される熱可塑性樹脂の融点は成形温度以上であり、後加熱処理温度(摩擦材の加熱処理工程の温度)以下であることが望ましい。
融点が摩擦材の成形温度以上であり後加熱処理温度以下にある熱可塑性樹脂として、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメタクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオキシアルキレン樹脂およびそれらの混合物等の中から選択することができる。
最も好ましいのは、ポリプロピレンであり、ポリプロピレンは単独重合体であってもよく、プロピレンと、エチレン、1−ブテンおよびイソプレン等をブロック的に共重合し、プロピレンとコモノマーをランダムに共重合した共重合体であってもよい。前記したポリオレフィンの物性値はポリオレフィンの製造法と用途により異なるが、摩擦材に配合する際の物性値は、摩擦材の目標性能により当業者の裁量で決定することが出来る。
ポリプロピレンは比重が0.90〜0.91と汎用プラスチックではもっとも小さく、熱成形時の樹脂流動性に優れ、成形収縮率は1〜2%の範囲であり、ポリスチレン等の非晶性樹脂よりも比較的大きく、成形収縮率の異方性バランスも良好である。
従って、水銀の加圧力を連続的に増大させていくことにより、気孔径とその体積が順次積算されていき、積算値を微分するとグラフの縦軸には微分細孔容積が示される。
摩擦材の気孔率を大きくすると、ブレーキをかけたときに発生するガス圧を下げることができるため、フェード特性が向上する。本発明の摩擦材は均一で大きい気孔径を有し、しかも所定の気孔率を確保できるため、特に、FCロータの急激な温度変化でフェード現象を抑制する摩擦材として有用である。又、FCロータの急激な温度変化に対する摩擦材熱伝導率(断熱効果)の調整手法としても有効である。
具体的な配合割合を示すなら、補強用の繊維基材は、摩擦材全体の5〜30体積%、摩擦調整材が10〜30体積%、潤滑材が5〜15体積%、充填材が20〜55体積%、結合材が5〜15体積%とするのが好ましい。
<摩擦材の作成>
第1表は熱可塑性樹脂材料を除いたノンアスベスト摩擦材の基本摩擦材処方を示す。次に、第2表に示すように、基本摩擦材に対し、合計が100体積%となるようにポリプロピレン(PP)を1体積%(実施例1)、3体積%(実施例2)、5体積%(実施例3)、9体積%(実施例4)、12体積%(実施例5)及び15体積%(実施例6)配合して定法により摩擦材を作成した。
次に、実施例3、実施例4、実施例5及び比較例1の4水準の摩擦材をポロシメータにより測定したときの気孔径と気孔率の関係を図1に示す。図1から、実施例3の摩擦材は気孔径が5μmに分布のピークがあり、実施例4では20μm付近、実施例5では30μm付近にピークのあることが分かった。一方、比較例1の摩擦材の気孔径は0.1〜1μmにピークのあることが分かった。
図1から分かるように、ポリプロピレンが配合された摩擦材は配合しないものに対して大きな気孔径を成形物内にもつことが観測され、また配合量を増やすことによって、気孔径をさらに大きくすることが出来た。
又、理解を容易にするために、PP量7水準のポリプロピレンの配合量と摩擦材の気孔率の関係を図2に示したが、実施例5の摩擦材の気孔率が21%であり、比較例1の摩擦材の気孔率が18%であることを考慮すると、PP量を増やすことで、摩擦材内部の総気孔率を増やせることが分かった。又、本発明の製造方法による摩擦材は均一で気孔径の大きい気孔を有することが分かった。
フェード試験の制動条件は、FCロータを使用して時速280kmから100km、減速度9.8m/s2、45秒間隔で25回制動の摩擦係数を測定し、最小摩擦係数(μ)を計測した。パッドの摩耗量はマイクロメーターにより測定した。400℃における高温圧変量はISO GlobalSpec.「乗用車用ディスクブレーキパッド試験仕様」の「高温圧縮測定試験」に基づき測定した。
図4はポリプロピレン(PP)の配合量と摩擦材の400℃における高温圧変量(μm)も関係を示す図である。同様にPP配合量の増加に従い、高温(400℃)圧変量も増加を続け、12%より多い場合、非常に大きな変形量を示した。目標値である180μm以上230μm以下の数値にPP量3〜12体積%の高温圧変量が入っていた。このことから、PP配合量は3〜12体積%が望ましいことが分かった。
実施例は、前記の400μm径3mm長繊維の9%配合をベースとした繊維径違い(15μm、40μm)のポリプロピレン繊維を使用した。
15、40μm径のポリプロピレン繊維から得られる気孔率は、図5からベースである400μm径のそれと比較すると5%内の気孔率低下に留まることが分かった。図6に示すように、フェード評価時のパッド摩耗量及びフェードμでもベースである400μmと同等の特性を示した。以上からポリプロピレン繊維径の望ましい使用範囲は15μm〜500μmであることが分かった。
実施例は、前記の400μm径の3mm長繊維をベースとした繊維長違い(6mm、12mm)のポリプロピレン繊維を使用した。
ベースである3mm長の繊維と比較すると気孔率の低下が見られたが、前記のフェードμ飽和の10%の範囲内の効力を確保できることが分かった。このことからポリプロピレン繊維長の範囲は今回実施した3〜12mmの範囲で望まれる気孔率及びフェード効力を確保できることが分かった。
以上の測定結果から、ポリプロピレン繊維を5体積%(実施例1)添加するだけでも最小摩擦係数(μ)が比較例1に対して著しく増加したことが示されており、ポリプロピレン繊維を配合して気孔率を調整することでフェード現象を解決できることが分かった。又、本発明の製造方法による摩擦材はFCロータ用摩擦材として優れていることが確認できた。
Claims (5)
- 少なくとも繊維基材、摩擦調整材、潤滑材、充填材及び結合材からなる摩擦材において、該摩擦材の配合材料に更に融点が前記摩擦材の成形温度以上であり、後の加熱工程の加熱処理温度以下である繊維長3mm以上12mm以下の熱可塑性繊維を3体積%以上12体積%以下配合し、摩擦材の熱成形後に該熱可塑性繊維の融点以上の温度で加熱処理することにより、摩擦材内部に空孔を形成させることを特徴とする摩擦材。
- 前記熱可塑性繊維の直径が15μm以上500μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の摩擦材。
- 前記熱可塑性繊維がポリプロピレン繊維であることを特徴とする請求項1又は2に記載の摩擦材。
- 鋳鉄製ロータとの摩擦係合に用いられる摩擦材の製造方法において、少なくとも繊維基材、摩擦調整材、潤滑材、充填材、結合材からなる摩擦材の配合材料に更に融点が摩擦材の成形温度以上であり、後の加熱工程の加熱処理温度以下である熱可塑性繊維材料を配合し、摩擦材の熱成形後に前記熱可塑性繊維材料の融点以上の温度で加熱処理することにより、摩擦材内部に空孔を形成させることを特徴とする摩擦材の製造方法。
- 前記摩擦材の加熱処理において、温度200℃以上300℃以下で1時間以上5時間以下加熱処理を行うことにより、摩擦材内部に空孔を形成させることを特徴とする請求項4に記載の摩擦材の製造方法。
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