JP2009220731A - 車両用騒音制御装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】振動検出用のセンサや振動印加用のアクチュエータに異常が生じた場合であっても車室内の騒音を効果的に低減できるようにする。
【解決手段】振動検出機能と振動印加機能とを併せ持つ複数の複合機能素子20をフロアパネル110に配置し、コントロールユニット30の制御部32からの機能選択状態に応じて、回路切替部33が各複合機能素子20を振動検出部20iとして用いるか、振動印加部20jとして用いるかを選択的に切り替えられるようにする。
【選択図】図2

Description

本発明は、車体の振動を検出し、その検出結果に応じて車体に振動を印加することにより、車室内の騒音を低減させる車両用騒音制御装置に関する。
従来、車室内等において車両の走行に伴い発生する騒音を計測し、その騒音を打ち消すような音波を発生して騒音を低減する騒音制御装置が知られている。また、この種の騒音制御装置においては、騒音を計測するためのマイクロフォンを用いず、加速度センサ等のセンサを用いて車体の振動を検出して、車体の振動を発生源とする車室内の騒音を推定する試みもなされている。例えば、特許文献1においては、車両走行時の車室内騒音と相関が高いドアヒンジ部に加速度センサを貼り付け、その加速度センサの検出する信号から車室内の騒音を推定し、推定した車室内の騒音に基づいて車体のフロアパネルに設置した振動印加用のアクチュエータなどを駆動して騒音制御を行う騒音制御装置が提案されている。
特開平8−292771号公報
しかしながら、以上のような従来の騒音制御装置では、センサで検出した振動に基づいて車室内の騒音を推定し、推定した車室内の騒音に基づいて振動印加用のアクチュエータなどを駆動して騒音制御を行うようにしているため、何らかの理由によりセンサに異常が生じてしてしまうと、車室内の騒音を精度良く推定することが困難となり、車室内の騒音を効果的に低減することが難しくなるという問題があった。また、何らかの理由により振動印加用のアクチュエータに異常が生じた場合にも、適切な騒音制御を行うことが困難となり、車室内の騒音を効果的に低減することが難しくなるという問題があった。
本発明は、以上のような従来技術の問題点に鑑みて創案されたものであって、振動検出用のセンサや振動印加用のアクチュエータに異常が生じた場合であっても車室内の騒音を効果的に低減することができる車両用騒音制御装置を提供することを目的としている。
本発明の車両用騒音制御装置は、上記課題を解決するために、車体の振動を検出する機能と車体に振動を印加する機能とを併せ持つ複数の複合機能素子と、これらの複合機能素子を、車体の振動を検出する振動検出手段として動作させるか、車体に振動を印加する振動印加手段として動作させるかを選択的に切り替える切替手段と、を備える構成としている。
本発明の車両用騒音制御装置によれば、振動検出用のセンサに異常が生じてセンサの数が不足した場合に、複合機能素子の少なくとも1つを振動検出手段として動作させるように切り替えることでセンサ不足を補完することが可能になるので、車室内の騒音を効果的に低減することができる。
また、本発明の車両用騒音制御装置によれば、振動印加用のアクチュエータに異常が生じてアクチュエータの数が不足した場合に、複合機能素子の少なくとも1つを振動印加手段として動作させるように切り替えることでアクチュエータ不足を補完することが可能になるので、車室内の騒音を効果的に低減することができる。
以下、本発明の具体的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
本発明の車両用騒音制御装置は、車体の振動を検出してその検出結果に応じて車体に振動を印加することで車室内の騒音を低減させるものであり、車体の振動を検出する機能と車体に振動を印加する機能とを併せ持つ複数の複合機能素子を用い、この複合機能素子を振動検出手段として動作させるか、あるいは振動印加手段として動作させるかを選択的に切り替えることにより、センサやアクチュエータの異常時にも車室内の騒音を効果的に低減できるようにしたものである。
通常、車両外部から侵入する車室内騒音の原因は、代表的なものとして、エンジンの振動に起因するエンジン騒音、走行時に路面の凹凸の影響がタイヤから進入することに起因するロードノイズ、走行時に空気の気流によって発生する風切音などがある。以下の各実施形態では、主に、ロードノイズを低減させる例を具体的に説明する。
[第1の実施形態]
図1に、路面の凹凸の影響による車体の振動及びロードノイズの主な伝播経路を示す。
タイヤ200から車体に進入したロードノイズの主成分となる振動は、まず車軸120及びサスペンション130の取り付け部からメンバ140と呼ばれる剛性の高い梁状の部材に進入する。その後、メンバ140によって囲まれたフロアパネル110と呼ばれる比較的剛性の低い板状の部材に振動が伝播し、このフロアパネル110が振動する。そして、フロアパネル110の振動により車室内の空気振動が引き起こされ、車室内に共振現象を起こすために、車室内に着座している乗員の頭部付近の所定の制御空間100a,100b(以下、これらを総称する場合は制御空間100と呼ぶ。)において、ロードノイズが聞こえることになる。なお、フロアパネル110の他に、図示しないルーフパネルや窓ガラスが振動することによっても騒音が発生するが、主にサスペンション130の取り付け部から進入するロードノイズは、フロアパネル110の振動と因果関係が高いことがわかっている。このため、フロアパネル110の振動に基づいてロードノイズを打ち消すように騒音制御を行えば、制御空間100におけるロードノイズを低減することができる。また、フロアパネル110を発生源とする騒音には制御対象としてすべて含まれるため、エンジン騒音の一部や車体底部を空気が流れることで発生する風切音についても、ロードノイズと同様に扱うことができる。
本実施形態の車両用騒音制御装置では、図1に示すように、フロアパネル110に振動検出用の複数の加速度センサ10a,10b,10c,10d(以下、これらを総称する場合は加速度センサ10と表記する。)と、振動検出機能と振動印加機能とを併せ持つ複数の複合機能素子20a,20b,20c,20d(以下、これらを総称する場合は複合機能素子20と表記する。)とを配置する。そして、加速度センサ10の振動検出信号と、振動検出に利用している複合機能素子20(以下、このような複合機能素子20を振動検出部20iと呼ぶ。)があればその振動検出部20iの振動検出信号とに基づいて、車室内騒音の推定を行う。そして、推定した車室内騒音を打ち消す制御指令値を生成し、この制御指令値に基づいて振動印加に利用している複合機能素子20(以下、このような複合機能素子20を振動印加部20jと呼ぶ。)を駆動してフロアパネル110に振動を印加し、騒音を打ち消す制御音を車室内に入力することで車室内騒音を低減させるようにしている。
ここで、複合機能素子20としては、例えば、印加される圧力に応じた電圧を出力するとともに電圧の印加により伸縮するピエゾ素子(Piezo-electric actuator)を用いることができる。
本実施形態では、図1に示すように、4つの加速度センサ10a,10b,10c,10dと、4つの複合機能素子20a,20b,20c,20dとを用いて、車室内の2つの制御空間100a,100bにおけるロードノイズを低減する場合を例示する。この例のように、複数のタイヤ加振力と、複数の加速度センサ10a,10b,10c,10dと、複数の複合機能素子20a,20b,20c,20dと、複数の制御空間100a,100bとが存在する場合、加速度センサ10と振動検出部20iでは、すべてのタイヤ加振力と振動印加部20jによる振動とが重なり合って検出され、それぞれの制御空間100a,100bでは、すべてのタイヤ加振力と振動印加部20jによる音とが重なり合って発生することになる。
なお、加速度センサ10と複合機能素子20と制御空間100の数は、図1にて例示した数に限定されるものではなく、以下のような条件を満たす数であればよい。
一般に、振動検出点の数、つまり加速度センサ10の数と複合機能素子20のうちの振動検出部20iの数とを合わせた数は、振動源の数より多いことが必要とされる。フロアパネル110における加速度センサ10と振動検出部20iの数及び設置位置は、各加速度センサ10と振動検出部20iから制御空間100における騒音の音圧との間のコヒーレンスが十分高くなるように(例えば0.9以上)決定すればよい。ここで、コヒーレンスCxy(ω)は、下記の式(1)で定義され、信号xと信号yとの間の因果関係の度合いを表す。
Figure 2009220731
この式(1)において、Pxyは信号xと信号yとの間のクロスパワースペクトルであり、Pxxは信号xのオートパワースペクトルであり、Pyyは信号yのオートパワースペクトルである。また、PはPのエルミート転置行列を表している。
また、複合機能素子20は、一部が振動検出部20iとして利用されることを想定した上で、振動印加部20jとして利用する複合機能素子20で制御空間100における騒音を十分に低減できるだけの数を、フロアパネル110の適切な場所に貼付すればよい。また、制御空間100は、例えば予め所定の空間に設定されていてもよいし、車室内の乗員位置を検出する赤外線センサなどを用いて、乗員の数や位置などに応じて最適となるように適宜設定するようにしてもよい。
なお、本実施形態においては、全てのセンサ10に異常がない場合には全ての複合機能素子20a,20b,20c,20dを振動印加部20jとして使用するものとして説明するが、全てのセンサ10に異常がない場合にも、複合機能素子20a,20b,20c,20dの一部を振動検出部20jとして使用することも可能である。
また、本発明の効果の範囲は、フロアパネル110の振動による騒音低減の範疇にとどまるものではなく、例えばダッシュパネルやフロントガラス、さらにはルーフパネルといった同じメカニズムで発生する車室内の騒音発生源に対しても、当該部位に加速度センサ10や複合機能素子20を設けるようにすれば、同様に、当該部位の振動によって発生する騒音を低減させることができる。
図2は、本実施形態の車両用騒音制御装置の概略構成を説明するブロック図である。本実施形態の車両用騒音制御装置は、上述した加速度センサ10(10a,10b,10c,10d)と複合機能素子20(20a,20b,20c,20d)のほか、これら加速度センサ10及び複合機能素子20が接続されるコントロールユニット30を備えている。
コントロールユニット30は、図2に示すように、増幅部31a,31bと、制御部(第1の制御手段)32と、回路切替部(切替手段)33と、駆動部34とからなる。増幅部31aは、加速度センサ10と制御部32のA/D変換部とに接続され、加速度センサ検出信号を増幅して制御部32に出力する。回路切替部33は、制御部32からの機能選択状態に応じて、複数の複合機能素子20a,20b,20c,20dごとに増幅部31bに接続させるか駆動部34に接続させるかを選択的に切り替える。ここで、増幅部31bの他方は制御部32のA/D変換部に接続されており、増幅部31bに接続された複合機能素子20は、振動検出部20iとして機能することになる。一方、駆動部33の他方は制御部32のD/A変換部に接続されており、D/A変換部から出力される電圧に応じた変位もしくは力を複合機能素子20に発生させるので、駆動部33に接続された複合機能素子20は振動印加部20jとして機能することになる。制御部32は、振動検出電圧に応じて、制御空間100におけるロードノイズを低減するように振動印加部20jへの制御電圧を演算する。ここで、増幅部31と駆動部34は、加速度センサ10や複合機能素子20が電荷チャージタイプである場合には、電荷と電圧との間の変換の機能も担う。
次に、コントロールユニット30の制御部32について、さらに詳しく説明する。
コントロールユニット30の制御部32は、図3のブロック図に示すように、A/D変換部40と、騒音推定部50と、算出部60と、D/A変換部70とから構成される。そして、この制御部32は、例えば、ディジタルコンピュータ上に実装された処理プログラムに従って図4のフローチャートで示す処理を実行し、振動印加部20jの振動発生量を演算して振動印加部20jに対して制御指令を出力する。
すなわち、先ず、ステップS101では、A/D変換部40により、加速度センサ10からの加速度検出電圧をディジタルの加速度検出信号αに変換するとともに、振動検出部20iからの加速度検出電圧をディジタルの加速度検出信号αPiに変換する。ただし、振動印加部20jに用いている複合機能素子20の加速度検出信号αPi成分はゼロである。
次に、ステップS102では、騒音推定部50により、加速度検出信号α,αPiと制御指令前回値uPjとに応じて、各複合機能素子20ごとの機能選択状態を決め、制御空間100での騒音推定値を算出する。
次に、ステップS103では、算出部60により、機能選択状態と騒音推定値に応じて、制御空間100の音圧を低減するように、振動印加部20jとして使用している複合機能素子20への制御指令値を算出する。ただし、振動検出部20iに用いている複合機能素子20の制御指令値uPj成分はゼロとする。
次に、ステップS104では、D/A変換部70により、ディジタル信号の制御指令値uPjを制御電圧に変換し、振動印加部20jへ出力する。
図5は、制御部32における算出部60の内部構成を示すブロック図である。算出部60は、図5に示すように、制御指令値生成フィルタ62と、制御指令値生成フィルタ更新部61とからなる。制御指令値生成フィルタ62は、騒音推定値SPL_estに応じて、騒音を低減するような制御指令値uPjを演算する。この制御指令値生成フィルタ62は、いかなるフィードバック制御を用いて設計してもよいが、例えばH∞制御として設計する場合は以下の手順に従えばよい。
制御対象モデルは、振動印加部20jの入力電圧から制御空間音圧までの伝達関数GPj (s)とする。ここで、sはラプラス演算子である。
この伝達関数GPj (s)に対して、文献「D. McFarlane and K. Glover. "A Loop Shaping Design Procedure Using H∞ Synthesis", IEEE Transactions on Automatic Control. vol.37, no.6, June 1992, pp.759-769」に記載の設計手法を用いることで、騒音を低減する制御部を設計することができる。この手法では、H無限大制御の混合感度問題を解く際に、系の安定余裕を陽に考慮して設計することができる。以下に設計手順を簡単に示す。
先ず、この設計法に則って設定された重み関数Wc(s)とWc(s)を用いて、下記の式(2)のように、重み付けされた仮想の制御対象G(s)を設定する。
Figure 2009220731
次に、G(s)に対して、下記の式(3)の評価式を満足するようにH無限大制御の混合感度問題を解いて、閉ループ系を安定化するC(s)を設計する。
Figure 2009220731
によって求められる。しかし、実際の伝達関数GPj (s)には、重み関数Wc(s)とWc(s)はない。そこで、ここで得られたC(s)に対して、下記式(5)のように重み関数Wc(s)とWc(s)を乗算したコントローラC(s)を実際のコントローラとして用いることで、G(s)に対してC(s)で閉ループ系を安定化したときと同じ状態が、実際の制御対象GPj (s)に対して実現できる。
Figure 2009220731
このコントローラをCPUに実装する場合には、例えばコントローラC(s)に双一次変換を施すことでC(s)を離散化し、IIRフィルタとして実装すればよい。
制御指令値生成フィルタ更新部61では、後述する再構成部による複合機能素子20の機能選択状態に応じて、選択状態が変わった場合に、伝達関数GPj (s)を新しい振動印加部20jのものに更新し、コントローラC(s)を再設計して、制御指令値生成フィルタ62を更新する。このとき、振動検出部20iに機能を切り替えた複合機能素子20への制御指令値が0になるように制御指令値生成フィルタ62を設計する。
図6は、制御部32における騒音推定部50の内部構成を示すブロック図である。騒音推定部50は、図6に示すように、制御指令値uPjから制御空間音圧への伝達特性(GPj )55と、制御指令値uPjから全ての複合機能素子20における検出加速度への伝達特性(GPj αi)53と、制御指令値uPjからセンサ検出加速度への伝達特性(GPj α)54と、センサ検出加速度から制御空間音圧を推定するフィルタ(W)51と、複合機能素子20検出加速度から制御空間音圧を推定するフィルタ(WPi)52と、再構成部80と、減算部58a,58b及び加算部58cとからなる。
騒音推定部50における処理を図7に示すフローチャートに従って説明する。
先ず、ステップS201では、振動印加部20jが発生する振動成分を伝達特性GPj α,GPj αiを用いて算出する。
次に、ステップS202では、加速度検出信号α,αPiから、ステップS201で算出した振動印加部20jが発生する振動成分を、減算部58a,58bで減算する。
次に、ステップS203では、再構成部80において、加速度検出信号α,αPiに基づいて各複合機能素子20の機能選択状態を決定し、複合機能素子20の機能選択状態を変更した場合には、フィルタW,WPiを後述する再構成部80で再構成する。再構成部80については、後で詳しく説明する。
次に、ステップS204では、ステップS202で算出した振動印加部20jの発生する振動成分を減算した加速度検出信号に、フィルタW,WPiを乗算し、加速度検出信号に基づく制御空間音圧の推定値を算出する。
次に、ステップS205では、振動印加部20jが発生する制御空間音圧の推定値を、伝達特性GPj を用いて算出する。
次に、ステップS206では、ステップS204で算出した加速度検出信号に基づく制御空間音圧の推定値と、ステップS205で算出した振動印加部20jが発生する制御空間音圧の推定値とを加算部58cで加算し、制御空間音圧の推定値SPL_estを算出する。
ここで、ステップS202で加速度検出信号α,αPiから、ステップS201で算出した振動印加部20jの発生する振動成分を減算するのは、以下の理由によるためである。
フィルタW,WPiは、ロードノイズ源の力が作用したときの加速度検出信号α,αPiから制御空間音圧への伝達特性に相当する。よって、振動印加部20jの振動による加速度検出信号α,αPiから制御空間音圧への伝達特性としてフィルタW,WPiは対応できないので、加速度検出信号α,αPiに振動印加部20jの振動による加速度が混ざっていると、その分精度が悪化する。そこで、フィルタW,WPiを乗算する前に加速度検出信号α,αPiから振動印加部20jの発生する振動の影響を減算して、ロードノイズ源のみによる制御空間音圧を算出する。そして、これとは別に、制御指令値から制御空間音圧への伝達特性GPj α,GPj αiを用いて、振動印加部20jの発生する振動による制御空間音圧を算出してロードノイズ源のみによる制御空間音圧に加算することで、精度良く制御空間音圧を推定することができる。
次に、騒音推定部50における再構成部80について、さらに詳細に説明する。
再構成部80は、図8のブロック図に示すように、センサ異常検出部(第1の異常検出手段)82a,82bと、記憶部81と、機能選択状態決定部84と、フィルタ更新部85とからなる。再構成部80では、加速度検出信号α, αPiに基づいて、センサ異常検出部82a,82bにより加速度センサ10及び振動検出部20iの異常を検知し、その状況に応じて、機能選択状態決定部84により各複合機能素子20の機能選択状態を決定する。さらに、各複合機能素子20の機能選択状態が変化した場合には、フィルタ更新部85によりフィルタW及びフィルタWPiを再構成する。
再構成部80における処理を図9のフローチャートに従って説明する。
先ず、ステップS301では、センサ異常検出部82a,82bにより、加速度検出信号α, αPiに基づいて、加速度センサ10及び振動検出部20iの異常有無を判定し、異常を検知した場合に次のステップS302に処理を移行する。一方、加速度センサ10及び振動検出部20iの異常を検知しない場合には処理を終了する。ここで、センサ異常検出部82a,82bでの異常検出は、例えば次のように行えばよい。すなわち、車両が走行している際に、加速度センサ10又は振動検出部20iからの加速度検出信号α, αPiが、所定の時間にわたって所定の閾値よりも小さい値であるときに、該当する加速度センサ10又は振動検出部20iが異常である判断する。もしくは、停車中等の入力振動がほとんどない状況で、加速度センサ10又は振動検出部20iが所定の時間にわたって基準範囲外の値を出力している場合に、該当する加速度センサ10又は振動検出部20iが異常である判断する。
次に、ステップS302では、異常を検知した加速度センサ10又は振動検出部20iを用いずに、正常な加速度センサ10と振動検出部20iの加速度検出信号α, αPiのみで制御空間音圧を推定し、騒音制御を行った場合の騒音制御効果を算出する。
次に、ステップS303では、制御空間音圧までのゲインGPj が最も低い振動印加部20jの機能を振動検出部20iに切り替えた場合に、正常な加速度センサ10及び振動検出部20iと新たに機能を切り替えた複合機能素子20とで騒音制御を行った際の騒音制御効果を算出する。
次に、ステップS304では、ステップS302で算出した騒音制御効果と、ステップS303で算出した騒音制御効果とを比較する。そして、ステップS303で算出した騒音制御効果の方が大きい場合にはステップS305に処理を移行し、ステップS303で算出した騒音制御効果の方が小さい場合にはステップS306に処理を移行する。
ステップS305では、制御空間音圧までのゲインGPj が最も低い振動印加部20jの機能を振動検出部20iに切り替えるように機能選択状態を変更し、正常な加速度センサ10及び振動検出部20iと新たに機能を切り替えた複合機能素子20とで騒音推定をするように、フィルタW及びフィルタWPiを再構成する。
一方、ステップS306では、異常な加速度センサ10又は振動検出部20iを騒音推定に用いないように機能選択状態を変更し、正常な加速度センサ10及び振動検出部20iの加速度検出信号α, αPiのみを用いて推定するように、フィルタW及びフィルタWPiを再構成する。
なお、ステップS302とステップS303とで演算する騒音制御効果は、例えば、予め非制御状態で車両走行中の同時刻に測定し、記憶部81に保存しておいた加速度センサ10と複合機能素子20による加速度検出信号αpreと制御空間音圧SPL_preとから、図10に示すようなシミュレーションモデルを用いてオンラインシミュレーションで演算すればよい。ここで、フィルタ(W)51と伝達特性(GPj )55と算出部60とのパラメータは、騒音制御効果を算出したい選択状態における値を用いる。または、選択状態のすべての組み合わせにおいて、予め行った騒音制御シミュレーション結果もしくは実際の騒音制御結果を、選択状態に応じたマップとして記憶部81に保存しておき、このマップを参照して騒音制御効果を算出するようにしてもよい。
次に、フィルタW及びフィルタWPiの再構成方法ついて詳細に説明する.
車体への入力振動fは,伝達関数H(s)を通して加速度センサ10及び振動検出部20iに伝わる。一方で、入力振動fは車室内の空気を伝播して制御空間100での騒音となる。このときの空気伝播の伝達関数をR(s)とおく。また、制御空間100で測定される音圧をSPLとおく。このとき、入力振動fのラプラス変換をf(s),信号SPLのラプラス変換をSPL(s),加速度検出信号α,αPiのラプラス変換をそれぞれα(s),αPi(s)と表すと、各信号間の関係は以下の式(6)〜式(9)で表される。
Figure 2009220731
ここで、Hは各要素が伝達関数である4行2列の行列である。この関係式を用いて、加速度センサ10の信号から騒音の推定値を推定するためには、式(7)を逆にfについて解き、式(6)に代入すればよい。したがって、下記の式(10)で表される。
Figure 2009220731
ここで、Hは伝達関数行列H(s)の逆関数を表す。ここで、Hは正方行列ではなく、長方行列であるので、逆行列を計算することはできない。そこで、擬似逆行列を用いて下記式(11)のように演算を行う。
Figure 2009220731
ただし、mをHの行の数、nをHの列の数としたときに、m≧nであることが、Hを計算できるための必要条件である。
RHは2行4列行列であるので、その要素を下記式(12)のようにおく。
Figure 2009220731
よって、式(8)は下記の式(13)のように変形できる。
Figure 2009220731
このWからWPiを、図6に示したフィルタ(W)51、フィルタ(WPi)52として構成する。したがって、各加速度α,αPiに対するフィルタ51(W)51、フィルタ(WPi)52は、下記式(14)の列ベクトルにより決定される。
Figure 2009220731
ここで、再構成部80で複合機能素子20の機能を選択する際、制御空間100は自由に設定することができるので、機能選択状態決定部84は、各複合機能素子20のうちの一部を振動印加部20jから振動検出部20iに切り替えた場合に、設定した制御空間100での騒音制御効果の悪化が最小となるように、各複合機能素子20の機能を選択することが望ましい。例えば、赤外線センサなどの乗員位置検出手段を用いて車室内の乗員位置を検出し、その位置を制御空間100として設定した場合には、各複合機能素子20のうちの一部を振動印加部20jから振動検出部20iに切り替えた場合に、乗員位置での騒音制御効果の悪化が最小となるように、機能選択状態決定部84が各複合機能素子20の機能を選択する。
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態の車両用騒音制御装置は、振動検出機能と振動印加機能とを併せ持つ複数の複合機能素子20を備え、コントロールユニット30の制御部32からの機能選択状態に応じて、回路切替部33が各複合機能素子20を振動検出部20iとして用いるか、振動印加部20jとして用いるかを選択的に切り替えられるようにしている。したがって、この車両用騒音制御装置によれば、加速度センサ10や振動検出部20iとして動作している複合機能素子20に異常が生じてセンサの数が不足した場合に、振動印加部20jとして機能している複合機能素子20の一部を振動検出部20iに切り替えることでセンサ不足を補完することが可能となり、センサ不足による騒音制御効果の悪化を極力抑制して、車室内の制御空間100における騒音を効果的に低減することができる。
また、本実施形態の車両用騒音制御装置によれば、センサ異常検出部82a,82bにより加速度センサ10或いは振動検出部20iの異常を検知したときに、振動印加部20jとして機能している複合機能素子20の一部を振動検出部20iに切り替えるようにしているので、騒音推定精度の悪化を有効に抑制して適切な騒音制御を行うことができ、車室内の制御空間100における騒音を極めて効果的に低減することができる。
また、本実施形態の車両用騒音制御装置によれば、センサ異常検出部82a,82bにより加速度センサ10或いは振動検出部20iの異常を検知したときに、振動印加部20jとして機能している複合機能素子20の一部を振動検出部20iに切り替えた場合に、切り替えない場合に比べて騒音制御効果が向上するかどうかを判断し、騒音制御効果が向上すると判断した場合に、振動印加部20jとして機能している複合機能素子20の一部を振動検出部20iに切り替えるようにしているので、複合機能素子20の機能の切り替えにより騒音制御効果が却って悪化する不都合を未然に防止して、車室内の制御空間100における騒音を効果的に低減することができる。
また、本実施形態の車両用騒音制御装置によれば、振動印加部20jとして機能している複合機能素子20の一部を振動検出部20iに切り替える場合に、振動印加部20jとして機能している複合機能素子20のうちで、制御空間100までの音の伝達関数のゲインが最も低い複合機能素子20を選択して振動検出部20iに切り替えるようにしているので、よりアクチュエータとしての性能の高い複合機能素子20はそのまま振動印加部20jとして使用することができ、複合機能素子20の機能切り替えによる騒音制御効果の悪化を極力抑制して、車室内の制御空間100における騒音をさらに効果的に低減することができる。
また、本実施形態の車両用騒音制御装置によれば、振動印加部20jとして機能している複合機能素子20の一部を振動検出部20iに切り替える場合に、制御空間100における騒音制御効果の悪化が最小となるように、機能を切り替える複合機能素子20を選択することにより、車室内の制御空間100における騒音をさらに効果的に低減することが可能となる。
また、本実施形態の車両用騒音制御装置によれば、車室内の乗員の位置を赤外線センサなどで検出してその乗員の位置に制御空間100を設定し、振動印加部20jとして機能している複合機能素子20の一部を振動検出部20iに切り替える場合に、制御空間100における騒音制御効果の悪化が最小となるように、機能を切り替える複合機能素子20を選択することにより、特に車室内の乗員の位置における騒音を効果的に低減して、乗員の不快感を効率よく低減させることが可能となる。
[第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
本実施形態の車両用騒音制御装置は、基本的な装置構成及び制御内容は上述した第1の実施形態の車両用騒音制御装置と共通であるが、騒音推定部50の再構成部80における具体的な処理の内容が、上述した第1の実施形態とは異なるものである。以下、第1の実施形態と同様の部分については同一の符号を付して詳細な説明は省略し、本実施形態に特徴的な再構成部80における具体的な処理についてのみ詳細に説明する。
本実施形態の車両用騒音制御装置において、騒音推定部50の再構成部80は、図11のフローチャートで示す処理を行って、各複合機能素子20の機能選択状態を決定するとともにフィルタW及びフィルタWPiの再構成を行う。なお、再構成部80の内部構成は、図8に示した第1の実施形態のものと同様である。
本実施形態の再構成部80における処理を、図11のフローチャートに従って説明する。
先ず、ステップS401では、センサ異常検出部82a,82bにより、加速度検出信号α, αPiに基づいて、加速度センサ10及び振動検出部20iの異常有無を判定し、異常を検知した場合に次のステップS402に処理を移行する。一方、加速度センサ10及び振動検出部20iの異常を検知しない場合には処理を終了する。
次に、ステップS402では、制御空間音圧を正常な加速度センサ10及び振動検出部20iの加速度検出信号α, αPiのみで推定し、騒音制御を行った場合の騒音制御効果を算出する。そして、ステップS403以降の繰り返し演算の回数を示す変数nの値を1に初期設定する。
次に、ステップS403では、制御空間音圧までのゲインGPj がn番目に低い振動印加部20jを選択する。
次に、ステップS404では、正常な加速度センサ10と現在の振動検出部20iによる加速度検出信号α, αPiに対して、ステップS403で選択した振動印加部20jを振動検出部20iに切り替えて検出する加速度検出信号α, αPiが独立性を有するか確認し、独立性を有すればステップS406に処理を移行し、独立性を有しない場合にはステップS405に処理を移行する。ここで、加速度検出信号α, αPiの独立性は、上記式(9)で示した伝達関数Hのランクが、加速度センサ10及び振動検出部20iに異常が検知される前と、振動印加部20jの機能を振動検出部20iに切り替えた後とで同じであるかどうかを確認し、同じであれば独立であると判断し、切り替えた後でも異常検知前のランクより小さい場合、独立でないと判断すればよい。
ステップS405では、n=n+1に更新し、ステップS402に戻る。
一方、ステップS406では、制御空間音圧までのゲインGPj がn番目に低い振動印加部20jの機能を振動検出部20iに切り替えて騒音制御を行った場合の騒音制御効果を算出する。
次に、ステップS407では、ステップS402で算出した騒音制御効果と、ステップS406で算出した騒音制御効果とを比較する。そして、ステップS406で算出した騒音制御効果の方が大きい場合にはステップS408に処理を移行し、ステップS406で算出した騒音制御効果の方が小さい場合にはステップS409に処理を移行する。
ステップS408では、制御空間音圧までのゲインGPj がn番目に低い振動印加部20jの機能を振動検出部20iに切り替えるように機能選択状態を変更し、正常な加速度センサ10及び振動検出部20iと新たに機能を切り替えた複合機能素子20とで騒音推定をするように、フィルタW及びフィルタWPiを再構成する。
一方、ステップS409では、異常な加速度センサ10又は振動検出部20iを騒音推定に用いないように機能選択状態を変更し、正常な加速度センサ10及び振動検出部20iの加速度検出信号α, αPiのみを用いて推定するように、フィルタW及びフィルタWPiを再構成する。
以上の図11に示すフローチャートに従った場合には、振動検出部20iとして使用した場合に独立性を維持できる複合機能素子20のなかで、制御空間100までのゲインが最も低い複合機能素子20の機能選択状態を振動検出部20iに切り替えることになる。ただし、振動検出部20iとして使用した場合に独立性を維持できる複合機能素子20の全てについて、機能選択状態をそれぞれ切り替えた場合の騒音制御効果を繰り返し算出し、振動検出部20iに機能を切り替えたときに騒音制御効果が最大となった複合機能素子20の機能選択状態を振動検出部20iに切り替えるようにしてもよい。
なお、センサ異常検出部82a,82bによる加速度センサ10及び振動検出部20iのの異常の検出は、上述した第1の実施形態と同様に算出すればよい。また、騒音制御効果についても上述した第1の実施形態と同様に算出すればよい。さらに、フィルタW及びフィルタWPiの再構成も上述した第1の実施形態と同様に行えばよい。
以上のように、本実施形態の車両用騒音制御装置によれば、センサ異常検出部82a,82bにより加速度センサ10或いは振動検出部20iの異常を検知したときに、加速度検出信号α, αPiが異常を検知する前と同じ独立性を有するように、振動印加部20jから振動検出部20iへと機能を切り替える複合機能素子20を選択するようにしているので、センサ異常時に振動印加部20jから振動検出部20iへと機能が切替わる複合機能素子20の個数を最小限として、振動印加部20jに余裕を持たせることができ、より適切な騒音制御を行って車室内の制御空間100における騒音をさらに効果的に低減することができる。
また、本実施形態の車両用騒音制御装置によれば、振動検出部20iとして使用した場合に加速度検出信号α, αPiの独立性を維持できる複合機能素子20のなかで、制御空間100までのゲインが最も低い複合機能素子20を振動検出部20iに切り替えるようにしているので、よりアクチュエータとしての性能の高い複合機能素子20は振動印加部20jとして使用することができ、複合機能素子20の機能切り替えによる騒音制御効果の悪化を極力抑制して、車室内の制御空間100における騒音をさらに効果的に低減することができる。
[第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
本実施形態の車両用騒音制御装置は、上述した第2の実施形態と同様、騒音推定部50の再構成部80における具体的な処理の内容が異なる第1の実施形態の変形例である。基本的な装置構成や処理内容は上述した第1の実施形態や第2の実施形態と同様であるので、以下では、本実施形態に特徴的な再構成部80における具体的な処理についてのみ説明する。
本実施形態の車両用騒音制御装置において、騒音推定部50の再構成部80は、以下に示す方法に従って、各複合機能素子20の機能選択状態を決定するとともにフィルタW及びフィルタWPiの再構成を行う。なお、再構成部80の内部構成は、図8に示した第1の実施形態のものと同様である。
本実施形態の再構成部80では、予め、加速度センサ10及び振動検出部20iに起こり得る全ての異常パターンにおいて、正常な複合機能素子20の機能選択状態の全てについて騒音制御効果を算出し、記憶部81に結果を保存しておく。
そして、実際にセンサ異常検出部82a,82bにより加速度センサ10或いは振動検出部20iの異常が検知された場合には、記憶部81に保存されている騒音制御効果を参照して、実現できる複合機能素子20の機能選択状態の中で、騒音制御効果が最大となるものを選択し、それに合わせて各複合機能素子20の機能を選択する。
また、上記以外の方法としては、加速度センサ10と振動検出部20iの全ての異常パターンにおいて、騒音制御効果が最大となる複合機能素子20の機能選択状態を予め記憶部81に記憶させておき、この記憶部81を用いて、異常状態に応じて機能選択状態を直接導き出すようにしてもよい。
以上のように、本実施形態の車両用騒音制御装置によれば、予め記憶部81に記憶させておいた情報に基づいて、騒音制御効果が最大となる複合機能素子20の機能選択状態を求めるようにしているので、複合機能素子20の機能切り替えを実現するための処理を簡素化して処理負荷を低減することができ、騒音制御を効率よく行うことができる。
[第4の実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。なお、以下の説明において、上述した各実施形態で説明した構成と同様の構成については同一の符号を付している。
図12は、本実施形態の車両用騒音制御装置の概略構成を説明するブロック図である。本実施形態の車両用騒音制御装置では、第1乃至第3の実施形態の車両用騒音制御装置で使用していた複数の加速度センサ10は設けられておらず、振動印加用の複数のアクチュエータ11(11a,11b,11c,11d)と、複数の複合機能素子20(20a,20b,20c,20d)とを車両のフロアパネル110に配置している。そして、振動検出部20iの振動検出信号に基づいて車室内騒音の推定を行い、推定した車室内騒音を打ち消す制御指令値を生成し、この制御指令値に基づいてアクチュエータ11や振動印加部20jを駆動してフロアパネル110に振動を印加し、騒音を打ち消す制御音を車室内に入力することで車室内騒音を低減させるようにしている。なお、本実施形態では、4つのアクチュエータ11a,11b,11c,11dと、4つの複合機能素子20a,20b,20c,20dとを用いて、車室内の2つの制御空間100a,100bにおけるロードノイズを低減することを前提とするが、アクチュエータ11と複合機能素子20と制御空間100の数は、第1の実施形態と同様に、適宜変更することが可能である。
本実施形態の車両用騒音制御装置は、図12に示すように、車両のフロアパネル110に配置したアクチュエータ11(11a,11b,11c,11d)と複合機能素子20(20a,20b,20c,20d)のほか、これらアクチュエータ11及び複合機能素子20が接続されるコントロールユニット30を備えている。
コントロールユニット30は、図12に示すように、増幅部31と、制御部(第2の制御手段)32と、回路切替部(切替手段)33と、駆動部34a,34bとからなる。駆動部34aは、アクチュエータ11と制御部32のD/A変換部とに接続され、D/A変換部から出力される電圧に応じた変位もしくは力をアクチュエータ11に発生させる。回路切替部33は、制御部32からの選択状態に応じて、複数の複合機能素子20a,20b,20c,20dごとに増幅部31に接続させるか駆動部34bに接続させるかを選択的に切り替える。ここで、増幅部31の他方は制御部32のA/D変換部に接続されており、増幅部31に接続された複合機能素子20は、振動検出部20iとして機能することになる。一方、駆動部34bの他方は制御部32のD/A変換部に接続されており、D/A変換部から出力される電圧に応じた変位もしくは力を複合機能素子20に発生させるので、駆動部33に接続された複合機能素子20は振動印加部20jとして機能することになる。制御部32は、振動検出電圧に応じて、制御空間100におけるロードノイズを低減するようにアクチュエータ11及び振動印加部20jへの制御電圧を演算する。ここで、増幅部31と駆動部34は、アクチュエータ11や複合機能素子20が電荷チャージタイプである場合には、電荷と電圧との間の変換の機能も担う。
次に、コントロールユニット30の制御部32について、さらに詳しく説明する。
コントロールユニット30の制御部32は、図13のブロック図に示すように、A/D変換部40と、騒音推定部50と、算出部60と、D/A変換部70とから構成される。そして、この制御部32は、例えば、ディジタルコンピュータ上に実装された処理プログラムに従って図14のフローチャートで示す処理を実行し、アクチュエータ11及び振動印加部20jの振動発生量を演算してアクチュエータ11及び振動印加部20jに対して制御指令を出力する。
すなわち、先ず、ステップS501では、A/D変換部40により、振動検出部20iからの加速度検出電圧をディジタルの加速度検出信号αPiに変換する。ただし、振動印加部20jに用いている複合機能素子20の加速度検出信号αPi成分はゼロである。
次に、ステップS502では、騒音推定部50により、加速度検出信号αPiと制御指令前回値u,uPjとに応じて、各複合機能素子20ごとの機能選択状態を決め、制御空間100での騒音推定値を算出する。
次に、ステップS503では、算出部60により、機能選択状態と騒音推定値に応じて、制御空間100の音圧を低減するように、アクチュエータ11と振動印加部20jとして使用している複合機能素子20への制御指令値を算出する。ただし、振動検出部20iに用いている複合機能素子20の制御指令値uPj成分はゼロとする。
次に、ステップS504では、D/A変換部70により、ディジタル信号の制御指令値u,uPjを制御電圧に変換し、アクチュエータ11及び振動印加部20jに出力する。
算出部60の内部構成は、図5に示した第1の実施形態のものと同様であり、制御指令値生成フィルタ62と、制御指令値生成フィルタ更新部61とからなる。制御指令値生成フィルタ62は、騒音推定値SPL_estに応じて、騒音を低減するような制御指令値u,uPjを演算する。この制御指令値生成フィルタ62は、いかなるフィードバック制御を用いて設計してもく、例えば第1の実施形態で説明した手順に従って設計すればよい。
制御指令値生成フィルタ更新部61では、後述する再構成部による複合機能素子20の機能選択状態に応じて、選択状態が変わった場合に、伝達関数GPj (s)を新しい振動印加部20jとアクチュエータ11のものに更新する。そして、上記の手順に従ってコントローラC(s)を再設計して、制御指令値生成フィルタ62を更新する。
図15は、制御部32における騒音推定部50の内部構成を示すブロック図である。騒音推定部50は、図15に示すように、制御指令値前回値uから制御空間音圧への伝達特性(G )57と、制御指令値前回値uPjから制御空間音圧への伝達特性(GPj )55と、制御指令前回値uから全ての複合機能素子20における検出加速度への伝達特性(G αi)56と、制御指令前回値uPjから全ての複合機能素子20における検出加速度への伝達特性(GPj αi)53と、複合機能素子20検出加速度から制御空間音圧を推定するフィルタ(WPi)52と、再構成部80と、減算部58a及び加算部58cとからなる。
騒音推定部50における処理を図16に示すフローチャートに従って説明する。
先ず、ステップS601では、アクチュエータ11と振動印加部20jが発生する振動成分を伝達特性G αi,GPj αiを用いて算出する。
次に、ステップS602では、加速度検出信号αPiから、ステップS601で算出したアクチュエータ11及び振動印加部20jが発生する振動成分を、減算部58aで減算する。
次に、ステップS603では、再構成部80において、制御指令前回値u,uPjと加速度検出信号αPiに基づいて各複合機能素子20の機能選択状態を決定し、複合機能素子20の機能選択状態を変更した場合には、フィルタWPiも後述するフローチャートに従い同時に再構成する。再構成部80については、後で詳しく説明する。
次に、ステップS604では、ステップS602で算出したアクチュエータ11及び振動印加部20jの発生する振動成分を減算した加速度検出信号に、フィルタWPiを乗算し、加速度検出信号に基づく制御空間音圧の推定値を算出する。
次に、ステップS605では、アクチュエータ11及び振動印加部20jが発生する制御空間音圧の推定値を、伝達特性G αi,GPj αiを用いて算出する。
次に、ステップS606では、ステップS604で算出した加速度検出信号に基づく制御空間音圧の推定値と、ステップS605で算出したアクチュエータ11及び振動印加部20jが発生する制御空間音圧の推定値とを加算部58cで加算し、制御空間音圧の推定値SPL_estを算出する。
ここで、ステップS602において、加速度検出信号αPiからステップS601で算出したアクチュエータ11及び振動印加部20jの発生する振動成分を減算するのは、以下の理由によるためである。本実施形態では、上述したように第1の実施形態で説明した構成方法に従ってフィルタWPiを構成している。しかし、この構成方法は、振動検出部20iが受けるアクチュエータ11や振動印加部20jの発生する振動の影響は考慮していない。そのため、フィルタWPiを乗算する前に、加速度検出信号αPiからアクチュエータ11及び振動印加部20jの発生する振動成分を減算しておく必要がある。また、ステップS605で、アクチュエータ11及び振動印加部20jが発生する制御空間音圧を加算しているのも、同様にフィルタWPiを構成する際に、アクチュエータ11や振動印加部20jの発生する制御空間音圧を考慮していないためである。
次に、騒音推定部50における再構成部80について、さらに詳細に説明する。
再構成部80は、図17のブロック図に示すように、アクチュエータ異常検出部(第2の異常検出手段)83と、記憶部81と、機能選択状態決定部84と、フィルタ更新部85とからなる。再構成部80では、制御指令前回値u,uPjと加速度検出信号αPiに基づいて、アクチュエータ異常検出部83によりアクチュエータ11及び振動印加部20jの異常を検知し、その状況に応じて、機能選択状態決定部84により各複合機能素子20の機能選択状態を決定する。さらに、1つ以上の複合機能素子20の機能選択状態が変化した場合には、フィルタ更新部85によりフィルタWPiを再構成する。
再構成部80における処理を図18のフローチャートに従って説明する。
先ず、ステップS701では、アクチュエータ異常検出部83で制御指令前回値u,uPjと加速度検出信号αPiに基づいて、アクチュエータ11及び振動検出部20jの異常有無を判定し、異常を検知した場合に次のステップS702に処理を移行する。一方、アクチュエータ11及び振動検出部20jの異常を検知しない場合には処理を終了する。ここで、アクチュエータ異常検出部83での異常検出は、例えば次のように行えばよい。すなわち、アクチュエータ11又は振動印加部20jにより特徴的な振動を印加しても、全ての振動検出部20iでその振動を検知できない場合に、そのアクチュエータ11又は振動印加部20jが異常である判断する。
次に、ステップS702では、異常を検知したアクチュエータ11又は振動印加部20jを用いずに、正常なアクチュエータ11と振動印加部20jのみを用いて騒音制御を行った場合の騒音制御効果を算出する。
次に、ステップS703では、制御空間音圧までのゲインGPj が最も高い振動検出部20iの機能を振動印加部20jに切り替えて制御系を再構成して騒音制御を行った場合の騒音制御効果を算出する。
次に、ステップS704では、ステップS702で算出した騒音制御効果と、ステップS703で算出した騒音制御効果とを比較する。そして、ステップS703で算出した騒音制御効果の方が大きい場合にはステップS705に処理を移行し、ステップS703で算出した騒音制御効果の方が小さい場合には処理を終了する。
ステップS705では、制御空間音圧までのゲインGPj が最も高い振動検出部20iの機能を振動印加部20jに切り替えるように機能選択状態を変更し、残った振動検出部20iで騒音推定をするように、フィルタWPiを再構成する。
なお、ステップS702とステップS703とで求める騒音制御効果は、例えば第1の実施形態で説明した方法で算出すればよい。
ここで、再構成部80で複合機能素子20の機能を選択する際、制御空間100は自由に設定することができるので、機能選択状態決定部84は、各複合機能素子20のうちの一部を振動検出部20iから振動印加部20jに切り替えた場合に、設定した制御空間100での騒音制御効果の悪化が最小となるように、各複合機能素子20の機能を選択することが望ましい。例えば、赤外線センサなどの乗員位置検出手段を用いて車室内の乗員位置を検出し、その位置を制御空間100として設定した場合には、各複合機能素子20のうちの一部を振動検出部20iから振動印加部20jに切り替えた場合に、乗員位置での騒音制御効果の悪化が最小となるように、機能選択状態決定部84が各複合機能素子20の機能を選択する。
以上、具体的な例を挙げながら詳細に説明したように、本実施形態の車両用騒音制御装置は、振動検出機能と振動印加機能とを併せ持つ複数の複合機能素子20を備え、コントロールユニット30の制御部32からの機能選択状態に応じて、回路切替部33が各複合機能素子20を振動検出部20iとして用いるか、振動印加部20jとして用いるかを選択的に切り替えられるようにしている。したがって、この車両用騒音制御装置によれば、アクチュエータ11や振動印加部20jとして機能している複合機能素子20に異常が生じてアクチュエータの数が不足した場合に、振動検出部20iとして機能している複合機能素子20のうちの一部を振動印加部20jに切り替えることでアクチュエータ不足を補完することが可能となり、アクチュエータ不足による騒音制御効果の悪化を極力抑制して、車室内の制御空間100における騒音を効果的に低減することができる。
また、本実施形態の車両用騒音制御装置によれば、アクチュエータ異常検出部83によりアクチュエータ11或いは振動印加部20jの異常を検知したときに、振動検出部20iとして機能している複合機能素子20の一部を振動印加部20jに切り替えるようにしているので、騒音推定精度の悪化を有効に抑制して適切な騒音制御を行うことができ、車室内の制御空間100における騒音を極めて効果的に低減することができる。
また、本実施形態の車両用騒音制御装置によれば、アクチュエータ異常検出部83によりアクチュエータ11或いは振動印加部20jの異常を検知したときに、振動検出部20iとして機能している複合機能素子20の一部を振動印加部20jに切り替えた場合に、切り替えない場合と比べて騒音制御効果が向上するかどうかを判断し、騒音制御効果が向上すると判断した場合に、振動検出部20iとして機能している複合機能素子20の一部を振動印加部20jに切り替えるようにしているので、複合機能素子20の機能の切り替えにより騒音制御効果が却って悪化する不都合を未然に防止して、車室内の制御空間100における騒音を効果的に低減することができる。
また、本実施形態の車両用騒音制御装置によれば、振動検出部20iとして機能している複合機能素子20の一部を振動印加部20jに切り替える場合に、振動検出部20iとして機能している複合機能素子20のうちで、制御空間100までの音の伝達関数のゲインが最も高い複合機能素子20を選択して振動印加部20jとして機能させるようにしているので、よりアクチュエータとしての性能の高い複合機能素子20を振動印加部20jとして使用することができ、車室内の制御空間100における騒音をさらに効果的に低減することができる。
また、本実施形態の車両用騒音制御装置によれば、振動検出部20iとして動作している複合機能素子20の一部を振動印加部20jに切り替える場合に、制御空間100における騒音制御効果の悪化が最小となるように、機能を切り替える複合機能素子20を選択することにより、車室内の制御空間100における騒音をさらに効果的に低減することが可能となる。
また、本実施形態の車両用騒音制御装置によれば、車室内の乗員の位置を赤外線センサなどで検出してその乗員の位置に制御空間100を設定し、振動検出部20iとして機能している複合機能素子20の一部を振動印加部20jに切り替える場合に、制御空間100における騒音制御効果の悪化が最小となるように、機能を切り替える複合機能素子20を選択することにより、特に車室内の乗員の位置における騒音を効果的に低減して、乗員の不快感を効率よく低減させることが可能となる。
[第5の実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。
本実施形態の車両用騒音制御装置は、基本的な装置構成及び制御内容は上述した第4の実施形態の車両用騒音制御装置と共通であるが、騒音推定部50の再構成部80における具体的な処理の内容が、上述した第4の実施形態とは異なるものである。以下、第4の実施形態と同様の部分については同一の符号を付して詳細な説明は省略し、本実施形態に特徴的な再構成部80における具体的な処理についてのみ詳細に説明する。
本実施形態の車両用騒音制御装置において、騒音推定部50の再構成部80は、図19のフローチャートで示す処理を行って、各複合機能素子20の機能選択状態を決定するとともにフィルタWPiの再構成を行う。なお、再構成部80の内部構成は、図17に示した第4の実施形態のものと同様である。
本実施形態の再構成部80における処理を、図19のフローチャートに従って説明する。
先ず、ステップS801では、アクチュエータ異常検出部83により、制御指令前回値u,uPjと加速度検出信号αPiに基づいて、アクチュエータ11及び振動印加部20jの異常有無を判定し、異常を検知した場合に次のステップS802に処理を移行する。一方、アクチュエータ11及び振動印加部20jの異常を検知しない場合には処理を終了する。
次に、ステップS802では、正常なアクチュエータ11及び振動印加部20jのみを制御振動の印加に用いて騒音制御を行った場合の騒音制御効果を算出する。そして、ステップS803以降の繰り返し演算の回数を示す変数nの値を1に初期設定する。
次に、ステップS803では、制御空間音圧までのゲインGPj がn番目に高い振動検出部20iを選択する。
次に、ステップS804では、ステップS803で選択した振動検出部20iを振動印加部20jに切り替えたときに、加速度検出信号αPiが独立性を保てるかどうかを確認し、独立性を保てればステップS806に処理を移行し、独立性を保てない場合にはステップS805に処理を移行する。
ステップS805では、n=n+1に更新し、ステップS802に戻る。
一方、ステップS806では、制御空間音圧までのゲインGPj がn番目に高い振動検出部20iの機能を振動印加部20jに切り替えて騒音制御を行った場合の騒音制御効果を算出する。
次に、ステップS807では、ステップS802で算出した騒音制御効果と、ステップS806で算出した騒音制御効果とを比較する。そして、ステップS806で算出した騒音制御効果の方が大きい場合にはステップS808に処理を移行し、ステップS806で算出した騒音制御効果の方が小さい場合には処理を終了する。
ステップS808では、制御空間音圧までのゲインGPj がn番目に高い振動検出部20iの機能を振動印加部20jに切り替えるように機能選択状態を変更し、残った振動検出部20iで騒音推定をするように、フィルタWPiを再構成する。
以上の図19に示すフローチャートに従った場合には、振動検出部20iとして使用している複合機能素子20のうち、振動印加部20jに機能を切り替えても加速度検出信号αPiが独立性を維持できる複合機能素子20のなかで、制御空間100までのゲインが最も高い複合機能素子20の機能選択状態を振動印加部20jに切り替えることになる。ただし、振動印加部20jに機能を切り替えても加速度検出信号αPiの独立性を維持できる複合機能素子20の全てについて、機能選択状態をそれぞれ切り替えた場合の騒音制御効果を繰り返し算出し、振動印加部20jに機能を切り替えたときに騒音制御効果が最大となった複合機能素子20の機能選択状態を振動印加部20jに切り替えるようにしてもよい。
なお、アクチュエータ異常検出部83によるアクチュエータ11及び振動印加部20jの異常の検出は、上述した第4の実施形態と同様に算出すればよい。また、騒音制御効果の算出や、フィルタWPiの再構成については、上述した第1の実施形態と同様に行えばよい。
以上のように、本実施形態の車両用騒音制御装置によれば、アクチュエータ異常検出部83によりアクチュエータ11或いは振動印加部20jの異常を検知したときに、加速度検出信号αPiが異常を検知する前と同じ独立性を有するように、振動検出部20iから振動印加部20jへと機能を切り替える複合機能素子20を選択するようにしているので、アクチュエータ異常時に振動検出部20iから振動印加部20jへと機能が切替わる複合機能素子20の個数を最小限として、振動検出部20iに余裕を持たせることができ、より適切な騒音制御を行って車室内の制御空間100における騒音をさらに効果的に低減することができる。
また、本実施形態の車両用騒音制御装置によれば、振動印加部20jとして使用した場合に加速度検出信号αPiの独立性を維持できる複合機能素子20のなかで、制御空間100までのゲインが最も低い複合機能素子20を振動印加部20jに切り替えるようにしているので、よりアクチュエータとしての性能の高い複合機能素子20を振動印加部20jとして使用することができ、車室内の制御空間100における騒音をさらに効果的に低減することができる。
[第6の実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。
本実施形態の車両用騒音制御装置は、上述した第5の実施形態と同様、騒音推定部50の再構成部80における具体的な処理の内容が異なる第4の実施形態の変形例である。基本的な装置構成や処理内容は上述した第4の実施形態や第5の実施形態と同様であるので、以下では、本実施形態に特徴的な再構成部80における具体的な処理についてのみ説明する。
本実施形態の車両用騒音制御装置において、騒音推定部50の再構成部80は、以下に示す方法に従って、各複合機能素子20の機能選択状態を決定するとともにフィルタWPiの再構成を行う。なお、再構成部80の内部構成は、図17に示した第4の実施形態のものと同様である。
本実施形態の再構成部80では、予め、アクチュエータ11及び振動印加部20jに起こり得る全ての異常パターンにおいて、正常な複合機能素子20の機能選択状態の全てについて騒音制御効果を算出し、記憶部81に結果を保存しておく。
そして、実際にアクチュエータ異常検出部83によりアクチュエータ11或いは振動印加部20jの異常が検知された場合には、記憶部81に保存されている騒音制御効果を参照して、実現できる複合機能素子20の機能選択状態の中で、騒音制御効果が最大となるものを選択し、それに合わせて各複合機能素子20の機能を選択する。
また、上記以外の方法としては、アクチュエータ11と振動印加部20jの全ての異常パターンにおいて、騒音制御効果が最大となる複合機能素子20の機能選択状態を予め記憶部81に記憶させておき、この記憶部81を用いて、異常状態に応じて機能選択状態を直接導き出すようにしてもよい。
以上のように、本実施形態の車両用騒音制御装置によれば、予め記憶部81に記憶させておいた情報に基づいて、騒音制御効果が最大となる複合機能素子20の機能選択状態を求めるようにしているので、複合機能素子20の機能切り替えを実現するための処理を簡素化して処理負荷を低減することができ、騒音制御を効率よく行うことができる。
以上、本発明を適用した車両用騒音制御装置の具体例として、第1乃至第6の実施形態について詳細に説明したが、以上の各実施形態は本発明の一例であり、本発明の技術的範囲が以上の実施形態で説明した内容に限定されることを意図するものではない。つまり、本発明の技術的範囲は、以上の実施形態で開示した具体的な技術事項に限らず、この開示から容易に導きうる様々な変形、変更、代替技術なども含むものである。
例えば、以上の各実施形態では、振動検出機能と振動印加機能とを併せ持つ複合機能素子20としてピエゾ素子を用いることを説明したが、複合機能素子20としては、振動検出機能と振動印加機能とを併せ持つものであれば何れのものでも使用可能であり、例えば、超磁歪素子やボイスコイルなども複合機能素子20として有効に利用可能である。
また、第1乃至第3の実施形態では、車両のフロアパネル110の振動を検出するセンサとして加速度センサ10を備える例を説明し、また、第4乃至第6の実施形態では、車両のフロアパネル110に振動を印加するアクチュエータとしてアクチュエータ11を備える例を説明したが、加速度センサ10やアクチュエータ11は必ずしも必要ではなく、フロアパネル110の振動検出とフロアパネル110への振動印加との双方を複合機能素子20のみで行う構成とすることも可能である。この場合には、コントロールユニット30の制御部32が、振動検出部20iとして機能する複合機能素子20の検出信号に基づいて、振動印加部20jとして機能する複合機能素子20の振動発生量を演算するようにすればよい(第3の制御手段)。
路面の凹凸の影響による車体の振動及びロードノイズの主な伝播経路を示す図であり、(a)は車両のフロアパネルを斜め上方から見た模式図、(b)は車両のタイヤ近傍を水平方向に見た模式図である。 第1の実施形態の車両用騒音制御装置の概略構成を説明するブロック図である。 コントロールユニットの制御部の内部構成を示すブロック図である。 制御部による処理の流れを示すフローチャートである。 制御部における算出部の内部構成を示すブロック図である。 制御部における騒音推定部の内部構成を示すブロック図である。 騒音推定部による処理の流れを示すフローチャートである。 騒音推定部における再構成部の内部構成を示すブロック図である。 再構成部による処理の流れを示すフローチャートである。 騒音制御効果をオンラインシミュレーションで演算するためのシミュレーションモデルを示す図である。 第2の実施形態を説明する図であり、再構成部による処理の流れを示すフローチャートである。 第4の実施形態の車両用騒音制御装置の概略構成を説明するブロック図である。 コントロールユニットの制御部の内部構成を示すブロック図である。 制御部による処理の流れを示すフローチャートである。 制御部における騒音推定部の内部構成を示すブロック図である。 騒音推定部による処理の流れを示すフローチャートである。 騒音推定部における再構成部の内部構成を示すブロック図である。 再構成部による処理の流れを示すフローチャートである。 第5の実施形態を説明する図であり、再構成部による処理の流れを示すフローチャートである。
符号の説明
10(10a〜10d) 加速度センサ
11(11a〜11d) アクチュエータ
20(20a〜20d) 複合機能素子
20i 振動検出部
20j 振動印加部
30 コントロールユニット
32 制御部
33 回路切替部
50 騒音推定部
60 算出部
80 再構成部
82a,82b センサ異常検出部
83 アクチュエータ異常検出部
84 機能選択状態決定部
85 フィルタ更新部
100(100a,100b) 制御空間

Claims (16)

  1. 車体の振動を検出すると共に当該車体の振動の検出結果に応じて前記車体に振動を印加することにより、車室内の騒音を低減させる車両用騒音制御装置において、
    前記車体の振動を検出する機能と前記車体に振動を印加する機能とを併せ持つ複数の複合機能素子と、
    前記複合機能素子を、前記車体の振動を検出する振動検出手段として動作させるか、前記車体に振動を印加する振動印加手段として動作させるかを選択的に切り替える切替手段と、を備えることを特徴とする車両用騒音制御装置。
  2. 前記車体の振動を検出する機能のみを持つセンサ素子と、
    前記センサ素子の検出信号及び/又は前記振動検出手段として動作する複合機能素子の検出信号に基づいて、前記振動印加手段として動作する複合機能素子の振動発生量を演算する第1の制御手段と、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用騒音制御装置。
  3. 前記センサ素子の異常及び前記振動検出手段として動作する複合機能素子の異常を検出する第1の異常検出手段をさらに備え、
    前記切替手段は、前記第1の異常検出手段により異常が検出されたときに、前記振動印加手段として動作している複合機能素子のうちの少なくとも1つを前記振動検出手段として動作させるように切り替えることを特徴とする請求項2に記載の車両用騒音制御装置。
  4. 前記切替手段は、前記第1の異常検出手段により異常が検出されたときに、前記振動印加手段として動作している複合機能素子のうちの少なくとも1つを前記振動検出手段として動作させるように切り替えることで切り替えない場合に比べて騒音制御効果が向上するか否かを判断し、騒音制御効果が向上すると判断した場合に、前記振動印加手段として動作している複合機能素子のうちの少なくとも1つを前記振動検出手段として動作させるように切り替えることを特徴とする請求項3に記載の車両用騒音制御装置。
  5. 前記切替手段は、前記振動印加手段として動作している複合機能素子のうちの少なくとも1つを前記振動検出手段として動作させるように切り替える場合に、前記振動印加手段として動作している複合機能素子のうちで前記振動検出手段として動作させるように切り替えた場合の騒音制御効果の悪化が最小となる複合機能素子を選択し、当該複合機能素子を前記振動検出手段として動作させるように切り替えることを特徴とする請求項4に記載の車両用騒音制御装置。
  6. 車室内における乗員の位置を検出する乗員位置検出手段をさらに備え、
    前記切替手段は、前記振動印加手段として動作している複合機能素子のうちの少なくとも1つを前記振動検出手段として動作させるように切り替える場合に、前記振動印加手段として動作している複合機能素子のうちで前記振動検出手段として動作させるように切り替えた場合の前記車室内における乗員の位置での騒音制御効果の悪化が最小となる複合機能素子を選択し、当該複合機能素子を前記振動検出手段として動作させるように切り替えることを特徴とする請求項4に記載の車両用騒音制御装置。
  7. 前記切替手段は、前記第1の異常検出手段により異常が検出されたときに、振動検出信号が異常検出前と同じ独立性を有するように、前記振動印加手段として動作している複合機能素子のうちで前記振動検出手段として動作させるように切り替える複合機能素子を選択することを特徴とする請求項3乃至6のいずれか一項に記載の車両用騒音制御装置。
  8. 前記切替手段は、前記第1の異常検出手段により異常が検出されたときに、前記振動印加手段として動作している複合機能素子のうちで騒音制御の対象となる制御空間までの音の伝達関数のゲインが低い複合機能素子を選択し、当該複合機能素子を前記振動検出手段として動作させるように切り替えることを特徴とする請求項3乃至7のいずれか一項に記載の車両用騒音制御装置。
  9. 前記車体に振動を印加する機能のみを持つアクチュエータ素子と、
    前記振動検出手段として動作する複合機能素子の検出信号に基づいて、前記アクチュエータ素子及び/又は前記振動印加手段として動作する複合機能素子の振動発生量を演算する第2の制御手段と、をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用騒音制御装置。
  10. 前記アクチュエータ素子の異常及び前記振動印加手段として動作する複合機能素子の異常を検出する第2の異常検出手段をさらに備え、
    前記切替手段は、前記第2の異常検出手段により異常が検出されたときに、前記振動検出手段として動作している複合機能素子のうちの少なくとも1つを前記振動印加手段として動作させるように切り替えることを特徴とする請求項9に記載の車両用騒音制御装置。
  11. 前記切替手段は、前記第2の異常検出手段により異常が検出されたときに、前記振動検出手段として動作している複合機能素子のうちの少なくとも1つを前記振動印加手段として動作させるように切り替えることで切り替えない場合に比べて騒音制御効果が向上するか否かを判断し、騒音制御効果が向上すると判断した場合に、前記振動検出手段として動作している複合機能素子のうちの少なくとも1つを前記振動印加手段として動作させるように切り替えることを特徴とする請求項10に記載の車両用騒音制御装置。
  12. 前記切替手段は、前記振動検出手段として動作している複合機能素子のうちの少なくとも1つを前記振動印加手段として動作させるように切り替える場合に、前記振動検出手段として動作している複合機能素子のうちで前記振動印加手段として動作させるように切り替えた場合の騒音制御効果の悪化が最小となる複合機能素子を選択し、当該複合機能素子を前記振動印加手段として動作させるように切り替えることを特徴とする請求項11に記載の車両用騒音制御装置。
  13. 車室内における乗員の位置を検出する乗員位置検出手段をさらに備え、
    前記切替手段は、前記振動検出手段として動作している複合機能素子のうちの少なくとも1つを前記振動印加手段として動作させるように切り替える場合に、前記振動検出手段として動作している複合機能素子のうちで前記振動印加手段として動作させるように切り替えた場合の前記車室内における乗員の位置での騒音制御効果の悪化が最小となる複合機能素子を選択し、当該複合機能素子を前記振動印加手段として動作させるように切り替えることを特徴とする請求項11に記載の車両用騒音制御装置。
  14. 前記切替手段は、前記第2の異常検出手段により異常が検出されたときに、振動検出信号が異常検出前と同じ独立性を有するように、前記振動検出手段として動作している複合機能素子のうちで前記振動印加手段として動作させるように切り替える複合機能素子を選択することを特徴とする請求項10乃至13のいずれか一項に記載の車両用騒音制御装置。
  15. 前記切替手段は、前記第2の異常検出手段により異常が検出されたときに、前記振動検出手段として動作している複合機能素子のうちで騒音制御の対象となる制御空間までの音の伝達関数のゲインが高い複合機能素子を選択し、当該複合機能素子を前記振動印加手段として動作させるように切り替えることを特徴とする請求項10乃至14のいずれか一項に記載の車両用騒音制御装置。
  16. 前記振動検出手段として動作する複合機能素子の検出信号に基づいて、前記振動印加手段として動作する複合機能素子の振動発生量を演算する第3の制御手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の車両用騒音制御装置。
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