JP2009219422A - 水溶性エラスチン混合物とその製造方法並びにそれを含む機能性食品 - Google Patents

水溶性エラスチン混合物とその製造方法並びにそれを含む機能性食品 Download PDF

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Abstract

【課題】機能性食品として利用できる水溶性エラスチン混合物を効率良く製造するための、工業的な製造方法を提供すること。
【解決手段】分子量約4万以下の水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドからなる水溶性エラスチン混合物であって、この混合物中のビューレット法に基づくタンパク質含有率が90重量%以上で、デスモシンとイソデスモシンの含有率が全アミノ酸の1.8〜4.0重量%の範囲にあることを特徴とする水溶性エラスチン混合物。この水溶性エラスチン混合物を製造する方法は、ナノフィルトレート膜を用いてダイアフィルトレーション方式で脱塩処理する工程に特徴がある。
【選択図】なし

Description

本発明は、動物性生体組織から得られる水溶性エラスチン混合物とその製造方法、並びにそれを含む機能性食品に関するものである。
エラスチンは、動物、特に哺乳動物の皮膚の真皮、靭帯、腱、血管壁等の結合組織の中に、コラーゲンと共に存在するタンパク質である。エラスチンは、通常、生体内においては、3次元の網目構造の不溶性のタンパク質として存在している。かかるエラスチンを、酸又はアルカリで加水分解したり、酵素で処理することによって、水溶性エラスチンが得られることは広く知られている。そして、水溶性エラスチンは、水分を豊富に保持する能力を有することから、化粧品、特に保湿剤として利用されている他(例えば、特許文献1〜3)、皮膚に弾力を与える等の美容効果があるとして、コラーゲン等と共に健康食品としても利用されている(例えば、特許文献4〜6)。更に、水溶性エラスチンは、人工血管等の再生医療分野においてもその利用が期待されている(例えば、特許文献7〜10)。
特開昭60−258107号公報 特公平5−20409号公報 特開2002−205913号公報 特開平6−7092号公報 特開2005−13123号公報 特開2005−13124号公報 特公平6−30616号公報 特開平8−33661号公報 特開平9−173361号公報 国際公開第2002/96978号パンフレット
水溶性エラスチンを得る方法・手段は色々と提案されているが、適度の分子量を有する高純度の水溶性エラスチンを得る方法は未だ十分なものではない。エラスチンは動物の生体組織から抽出されるが、この場合、通常、不要部分の除去や脱脂操作等の前処理を施した動物性生体組織が用いられる。そして、前処理された組織を、ギ酸やシュウ酸を含む所定温度の酸性液に溶解したり、或いは、酵素で処理することによって、動物性生体組織に含まれている不溶性エラスチンを断片化し、水溶性エラスチンを溶解した可溶化液が得られる。しかしながら、かかる方法では、水溶性エラスチンが溶解した可溶化液中に、動物性生体組織に含まれるエラスチン以外のコラーゲンやその他のタンパク質も溶解し、最終的に得られる水溶性エラスチンの純度が低下するという問題があった。しかも、可溶化液に溶解した水溶性エラスチンは、可溶化液に長時間溶解していることによって、水溶性エラスチン分子が更に低分子量のポリペプチドへと細断化されてしまい、低温度帯(例えば35〜40℃)でのコアセルベーション能を失ってしまう。そして、コアセルベーション能を失ったエラスチンは、医用材料分野等の用途には適さなくなるという問題もあった。
精製したエラスチンを、熱シュウ酸を用いて抽出処理することによって、水溶性のα−エラスチンとβ−エラスチンが得られることが報告されている(非特許文献1)。しかし、非特許文献1で報告されているα−エラスチンの分子量は70,000で、β−エラスチンの分子量は10,000以下であり、本発明において得られる分子量約4万以下の高純度の水溶性エラスチンとは異なっている。前記特許文献1には、不溶性エラスチンをタンパク分解酵素によって分解し、分子量15,000〜300,000の可溶性エラスチンを得たことが開示されている。しかし、このエラスチンは、分子量の範囲が非常にブロードで、酵素分解の断片等を含み純度の高いものとは考えられない。前記特許文献7にも、不溶性エラスチンをペプシン分解し、分子量が8,300〜640,000の水溶性エラスチンを得たことが報告されているが、このもののアミノ酸組成(特にプロリン、グリシン、アラニン、バリン)から判断する限り、純度の高いものとは考えられない。また、前記特許文献10にも、不溶性エラスチンを熱シュウ酸で処理し、水溶性エラスチンを得たことが報告されており、アミノ酸組成から判断すると高純度のものであることが推定されるが、この文献では、生体適合性機能性材料を得るために、得られた水溶性エラスチンを架橋させている。なお、精製した不溶性エラスチンのアミノ酸組成は、本発明において得られる高純度の水溶性エラスチンのそれと一部重複しており、80〜83%がプロリン、グリシン、アラニン、バリンであり、2〜3%がアスパラギン酸とグルタミン酸であり、0.7〜1.0%がリジン、ヒスチジン、アルギニンであり、0.3〜0.4%がデスモシンとイソデスモシンからなると報告されている(例えば、非特許文献2)。
Biochimica et Biophysica Acta, 310 (1973) 481-486 Analytical Biochemistry 64, 255-259 (1975)
本発明者らは、機能性食品や医薬品として利用できる低分子量で純度の高い水溶性エラスチン、及び化粧品や医療材料として利用できる高分子量で純度の高い水溶性エラスチンを提供することを目的として研究を行い、エラスチンを構成するアミノ酸の79〜84%がプロリン、グリシン、アラニン、バリンからなり、2〜3%がアスパラギン酸とグルタミン酸からなり、0.7〜1.3%がリジン、ヒスチジン、アルギニンからなり、0.2〜0.4%がデスモシンとイソデスモシンからなる、分子量が約1〜3万の低分子量水溶性エラスチンと、分子量が約3〜30万の高分子量水溶性エラスチン、及びその製造方法を既に提案した(特許文献11と12参照)。本発明は、かかる提案を更に実用的且つ工業的観点から改良した発明に関するものである。
国際公開第2006/46626号パンフレット 特開2007−45722号公報
本発明の課題は、機能性食品として有用な、低分子量の水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドからなる水溶性エラスチン混合物を効率良く製造するための、工業的な製造方法を提供することにある。
本発明のうち請求項1記載の発明は、分子量約4万以下、好ましくは約3万以下の水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドからなる水溶性エラスチン混合物であって、該混合物中のビュレット法に基づくタンパク質含有率が90重量%以上、好ましくは94重量%以上で、デスモシンとイソデスモシンの含有率が全アミノ酸の1.8〜4.0重量%の範囲にあることを特徴とする水溶性エラスチン混合物である。本発明におけるタンパク質含有率は、ビュレット法(後述)に基づいて測定された値として定義される。本発明の水溶性エラスチン混合物は、10重量%未満、好ましくは6重量%未満の範囲で、ジペプチドや遊離のアミノ酸や人体に無害な中性塩類を含んでいても良い。なお、本発明において分子量範囲は、TSL−GEL・G2000SWXL
(東ソー社製)を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により求めたものである。本発明において、水溶性エラスチンに由来するペプチドとは、エラスチンのアルカリ加水分解によって得られる、2個以上のアミノ酸がペプチド結合により結合した化合物、好ましくは、構成アミノ酸残基数が約100以下のものを意味し、いわゆるオリゴペプチドやポリペプチドと呼ばれるものも含む。
請求項2記載の発明は、動物性生体組織から水溶性エラスチン混合物を製造する方法であって、(1)動物性生体組織を脱脂処理する脱脂工程、(2)該脱脂処理された動物性生体組織を、低濃度のアルカリ水溶液中に浸漬し、該動物性生体組織からエラスチン以外の不要タンパク質を除去するアルカリ抽出工程、(3)該アルカリ抽出工程で得られたエラスチンを主体とする動物性生体組織残渣を、前記(2)の操作におけるよりも高濃度のアルカリ水溶液に溶解し、水溶性エラスチンを含む水溶液を得るアルカリ溶解工程、(4)該アルカリ溶解工程で得られた水溶性エラスチンを含む水溶液を中和し、得られた中和溶液を膜孔径が0.1〜5μmの範囲のフィルターでろ過する精密ろ過工程、その後、(5)該精密ろ過工程で得られたろ液を、ナノフィルトレート膜を用いてダイアフィルトレーション方式で脱塩処理する脱塩工程からなることを特徴とする水溶性エラスチン混合物の製造方法である。
請求項3記載の発明は、アルカリ抽出工程が、脱脂処理された動物性生体組織を、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを溶液1L当たり0.05モル以上、0.3モル未満、好ましくは0.05〜0.15モル含有するアルカリ水溶液中に、90〜105℃で5〜30分間、好ましくは10〜20分間浸漬することからなる請求項2記載の水溶性エラスチン混合物の製造方法である。
請求項4記載の発明は、アルカリ抽出工程の前に、塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムを溶液1L当たり0.5〜2.0モル含有する塩溶液中に、動物性生体組織を4℃以上、好ましくは4〜35℃で浸漬する前処理を行うことを特徴とする請求項2記載の水溶性エラスチン混合物の製造方法である。
請求項5記載の発明は、アルカリ溶解工程が、アルカリ抽出工程で得られた動物性生体組織残渣を、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを溶液1L当たり0.3モル以上、2モル以下、好ましくは0.5〜1.5モル含有するアルカリ水溶液中に、90〜105℃で20〜240分間、好ましくは60〜160分間浸漬することからなる請求項2記載の水溶性エラスチン混合物の製造方法である。
請求項6記載の発明は、脱塩工程で使用するナノフィルトレート膜の膜孔径が、NaCl阻止率で5〜25%である請求項2記載の水溶性エラスチン混合物の製造方法である。
請求項7記載の発明は、分子量約4万以下、好ましくは約3万以下の水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドからなる水溶性エラスチン混合物であって、該混合物中のビュレット法に基づくタンパク質含有率が90重量%以上、好ましくは94重量%以上で、デスモシンとイソデスモシンの含有率が全アミノ酸の1.8〜4.0重量%の範囲にある水溶性エラスチン混合物含む機能性食品である。
本発明によると、分子量約4万以下の高純度の水溶性エラスチンと、それに由来するペプチドからなる水溶性エラスチン混合物が得られる。そして、本発明の水溶性エラスチン混合物は、消化吸収性が高いので、機能性食品として利用できる。また、本発明の製造方法によると、前記高純度の水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドとの混合物が、工業的な手法で且つ高収率で得られるという特徴がある。
前記請求項1に記載された本発明において、分子量約4万以下の水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドからなる水溶性エラスチン混合物は、該混合物中のビュレット法に基づくタンパク質含有率が90重量%以上、好ましくは94重量%以上のものである。本発明におけるタンパク質含有率は、ビュレット法に基づいて測定された値である。ビュレット法とは、サンプルのタンパク質溶液と既知濃度の標準タンパク質溶液について、アルカリ条件下で銅イオンとペプチド結合との反応を比較することによって定量する方法であり、標準タンパク質としては、通常、ウシ血清アルブミンが用いられ、546nm(又は540nm)の吸光度で測定される。ビュレット法は、2つ以上のペプチド結合が近接して存在する場合に、銅イオンと錯塩を形成し、この錯塩の発色を利用する比色法であるから、トリペプチド以上がタンパク質量として測定される。従って、本発明におけるタンパク質含有率は、トリペプチド以上のオリゴペプチドやポリペプチドやタンパク質の合計の含有率として定義される。
デスモシンとイソデスモシンはエラスチンに特有なアミノ酸であり、本発明においては、それらの含有率が前記混合物中の全アミノ酸の1.8〜4.0重量%、好ましくは2.0〜4.0重量%の範囲にある。また、本発明の水溶性エラスチン混合物は、10重量%未満、好ましくは6重量%未満、更に好ましくは4重量%未満の範囲で、ジペプチドや遊離のアミノ酸や人体に無害な中性塩類を含んでいても良い。
請求項1の発明において、分子量約4万以下の水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドからなる水溶性エラスチン混合物中のアミノ酸組成としては、全アミノ酸の79〜85モル%がプロリンとグリシンとアラニンとバリンからなり、2〜4モル%がアスパラギン酸とグルタミン酸からなり、0.7〜3.5モル%がリジンとヒスチジンとアルギニンからなり、0.2〜0.6モル%がデスモシンとイソデスモシンからなるものが好ましい。
精製した不溶性エラスチンのアミノ酸組成は、80〜83モル%がプロリンとグリシンとアラニンとバリンであり、2〜3モル%がアスパラギン酸とグルタミン酸であり、0.7〜1.0モル%がリジンとヒスチジンとアルギニンであり、0.3〜0.4モル%がデスモシンとイソデスモシンであるとされており、本発明における水溶性エラスチンのアミノ酸組成も殆どこれに近いものであるから、高純度のものであると言える。但し、エラスチンのアミノ酸分析を行うとき、通常、6N塩酸で48時間以上加水分解するが、そのためAsnはAspに変換し、GlnはGluに変換するので、Aspの値はAsp+Asnの合計として、また、Gluの値はGlu+Glnの合計として表される。本発明におけるアミノ酸組成においても、アスパラギン酸の含量には元々のアスパラギンも含み、グルタミン酸の含量には元々のグルタミンも含むものとして定義されている。
本発明において、水溶性エラスチンに由来するペプチドとは、エラスチンのアルカリ加水分解によって得られる、3個以上のアミノ酸がペプチド結合により結合した化合物、好ましくは、構成アミノ酸残基数が約100以下のものを意味し、いわゆるオリゴペプチドやポリペプチドと呼ばれるものも含むものである。本発明における高純度の水溶性エラスチンのアミノ酸組成が前記したとおりであるので、かかる水溶性エラスチンに由来するペプチドも含めた水溶性エラスチン混合物中の全アミノ酸組成もこれに近いものである。
前記請求項2に記載された本発明、即ち、水溶性エラスチン混合物の製造方法について、以下に説明する。かかる製造方法によると、前記請求項1に記載された、分子量約4万以下の水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドからなる水溶性エラスチン混合物を、特に好ましく製造することができる。
請求項2に記載された、動物性生体組織から水溶性エラスチン混合物を製造する方法は、
(1)動物性生体組織を脱脂処理する脱脂工程、(2)該脱脂処理された動物性生体組織を、低濃度のアルカリ水溶液中に浸漬し、該動物性生体組織からエラスチン以外の不要タンパク質を除去するアルカリ抽出工程、(3)該アルカリ抽出工程で得られたエラスチンを主体とする動物性生体組織残渣を、前記(2)の操作におけるよりも高濃度のアルカリ水溶液に溶解し、水溶性エラスチンを含む水溶液を得るアルカリ溶解工程、(4)該アルカリ溶解工程で得られた水溶性エラスチンを含む水溶液を中和し、得られた中和溶液を膜孔径が0.1〜5μmの範囲のフィルターでろ過する精密ろ過工程、その後、(5)該精密ろ過工程で得られたろ液を、ナノフィルトレート膜を用いてダイアフィルトレーション方式で脱塩処理する脱塩工程からなる。
動物性生体組織としては、特に制限はないが、エラスチンの含量が多い点で、豚、馬、牛、羊などの哺乳動物から得られた項靱帯や大動脈血管を使用することが好ましい。動物性生体組織は、先ず、ホモジナイザーを用いてホモジナイズするのが良い。ホモジナイズはミキサー、ミートチョッパーなど動物性生体組織を細断できれば良く、好ましくは3ミリメートル角以下、更に好ましくはペースト状に細断できる器具を用いると良い。細断した動物性生体組織の粒が小さいほど、コラーゲンやその他の不要なタンパク質の除去効率を上げることができるので好ましい。
本発明における(1)動物性生体組織を脱脂処理する工程(脱脂工程)は、前記のごとく
ホモジナイズした動物性生体組織を、例えば、熱水又は熱希薄アルカリ水溶液で煮沸するか、もしくはアセトン等の有機溶媒で処理し、脱脂処理を行うものである。工業的観点からは、熱水処理による方法が好ましく、この場合、70℃以上、好ましくは70〜95℃の熱水で3分以上、好ましくは5〜15分程度の脱脂処理を、2回以上繰り返すのが好ましい。かかる熱水による脱脂処理によって、動物性生体組織中の脂肪含有率を、乾燥重量基準で5重量%以下にまで低下させることができる。
次に本発明では、(2)前記の脱脂工程で脱脂処理された動物性生体組織を、後述の工程(3)よりも低濃度のアルカリ水溶液中に浸漬し、この動物性生体組織からエラスチン以外のコラーゲンやその他の不要タンパク質を除去するアルカリ抽出工程を行う。このアルカリ抽出工程は、具体的には、脱脂処理された動物性生体組織を、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを溶液1L当たり0.05モル以上、0.3モル未満、好ましくは0.05〜0.15モル含有するアルカリ水溶液中に、90〜105℃で5〜30分間、好ましくは10〜20分間浸漬して行うのが好ましい(請求項3の発明)。このアルカリ抽出工程は、脱脂処理された動物性生体組織中の全タンパク質の中、不要タンパク質の除去率が50重量%以上、好ましくは55重量%以上になるまで、繰り返し行うのが好ましい。不要タンパク質が除去されればされるほど純度が高いエラスチンが得られるが、過度に繰り返すと、エラスチン自体の収量が低下するので、不要タンパク質の除去率が55〜90重量%の範囲に留めるのが好ましい。
前記のエラスチン以外のコラーゲンやその他の不要タンパク質の除去処理(アルカリ抽出工程)に際しては、アルカリ水溶液による抽出処理の前に、塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムを溶液1L当たり0.5〜2.0モル含有する塩溶液中に、動物性生体組織を4℃以上、好ましくは4〜35℃で、好ましくは30〜60分程度、好ましくは攪拌しながら浸漬させる前処理を行うのも好ましい(請求項4の発明)。かかる操作によって、脱脂処理された動物性生体組織が膨潤しほぐされるため、その後のアルカリ抽出工程の作業性が高められる。また、かかる前処理は、不溶性エラスチンの水溶性エラスチンへの分解・転化効率を高めるのにも寄与する。
次に本発明では、(3)前記アルカリ抽出工程で得られたエラスチンを主体とする動物性生体組織残渣(前記の不要タンパク質を除去した残りの部分)を、前記(2)の操作におけるよりも高濃度のアルカリ水溶液に溶解し、水溶性エラスチンを含む水溶液を得るアルカリ溶解工程を行う。このアルカリ溶解工程は、具体的には、アルカリ抽出工程で得られた動物性生体組織残渣を、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを溶液1L当たり0.3モル以上、2モル以下、好ましくは0.5〜1.5モル含有するアルカリ水溶液中に、90〜105℃で20〜240分間、好ましくは60〜160分間浸漬して行うのが好ましい(請求項5の発明)。このアルカリ溶解工程は複数回行っても良い。アルカリ溶解工程を、必要により複数回繰り返し、不溶部分を濾別することによって、本発明の水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドからなる水溶性エラスチン混合物を含む水溶液が得られる。
なお、前記(2)の工程で得られたエラスチン(不溶性エラスチン)を主体とする動物性生体組織は、反応系から実際に取出しても良い。取出した不溶性エラスチンは、アミノ酸組成等を解析し、その純度を検証することもできるし、あるいは、不溶性エラスチンは安定であるから、その状態で長期間の保存も可能である。しかしながら、工程の簡便化のためには、アルカリ水溶液の濃度を調節し、引き続き前記(3)のアルカリ溶解工程を行うのが便利である。
次に本発明では、(4)のアルカリ溶解工程で得られた水溶性エラスチンを含む水溶液を中和し、得られた中和溶液を膜孔径が0.1〜5μmの範囲のフィルターでろ過する精密ろ過工程が行われる。中和には一般的な有機、無機の酸を用いることができるが、好ましいのは酢酸である。得られた中和溶液は、膜孔径が0.1〜5μmの範囲のフィルターを単独で又は複数組み合わせて用いて、いわゆる精密ろ過に供される。かかる精密ろ過によって、アルカリ溶解工程で得られた水溶性エラスチンを含む水溶液を中和した際に生じる、微細なコロイド状の浮遊物を分離・ろ過することができる。また、中和液の滅菌も行うことができる。この際、3,000〜9,000G程度の遠心分離により、浮遊物を除去しても良い。この遠心分離の際、水溶液に珪藻土や凝集剤を添加しても良い。
前記アルカリ溶解工程で、例えば、水酸化ナトリウムを用いて水溶性エラスチンを含む水溶液(水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドを含む)を作製し、そして、例えば、得られた水溶液を酢酸で中和して得られた中和液は、塩(酢酸ナトリウム)濃度が4%強と高濃度であり、一方、水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドからなる混合物の濃度は約3%程度である。この中和液を、実験室的に通常良く採用される透析膜による脱塩処理に供しようとすると、数リットル以上の液を処理することは困難であるばかりでなく、濃縮のために多大のエネルギーを必要とするので実用的・工業的には採用できない。また、電気透析等の工業的透析方法では、膜の汚染等のため実用的には採用できない。しかも、本発明の場合は、脱塩処理後の溶液中の混合物の濃度が極端に薄いので、脱塩と共に濃縮も行える方法を採用する必要がある。かかる点を考慮して本発明者らは効率的な脱塩システムについて種々検討を行った結果、ナノフィルトレート(NF)膜を用いたダイアフィルトレーション(水希釈)方式の脱塩処理が、最適であることを知見したものである。
かかる脱塩処理によって、例えば、分子量約4万以下の水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドの混合物の濃度を約10倍に濃縮し、塩が約10,000ppm以下の水溶性エラスチン混合物の水溶液を得ることができる。そして、かかる水溶液を、例えば、常法により凍結乾燥して得られる凍結乾燥物(水溶性エラスチン混合物)は、食した場合に、苦味やエグ味が殆どない高品質のものである。
ナノフィルトレーション(Nano Filtration、NF)とは、細孔径1〜2nmで、分子量200〜1000の物質を除去できる分離膜プロセスのことを言い、ナノメートルサイズの粒子を除去することができ、限外ろ過(UF)と逆浸透(RO)の中間領域で使用される。ナノフィルトレート膜(NF膜)としては、種々のものが公知であり市販されている。本発明において好ましいのは、NaClの阻止率が5%以上、25%以下の範囲のものが適当である(請求項6の発明)。
ダイアフィルトレーション方式とは、不必要な低分子物質(膜を透過する物質)を濃縮液から除く場合、あるいは、必要な低分子物質を透過液側に回収する場合に行われる加水操作である。例えば、タンパク質溶液の脱塩、濃縮やバッファー交換に用いられる。かかる場合、通常、最初の原液の膜透過による濃縮を行った後、例えば、濃縮液と同量の新しい水あるいはバッファーを加えて濃縮液を希釈し、再度膜透過による濃縮を行う。この操作を所望の塩濃度あるいは所望のタンパク質濃縮が得られるまで繰り返す方法である。
本発明で用いられるダイアフィルトレーション方式の概要を図1に示した。本発明においては、かかる濃縮をNF膜を用いるろ過によって行うものである。図1に示し例では、先ず、原液350mlを脱塩・濃縮し70mlまで減らしている。通常、かかる濃縮は1/2〜1/10程度に濃縮するのが好ましい。次いで、図1の例では、新しい水あるいはバッファーを同量加えて濃縮液を希釈し、再度の濃縮を5回繰り返している。この操作は、所望の塩濃度あるいは所望の濃縮が得られるまで繰り返すことができる。次いで、図1の例では、得られた70mlの濃縮液を、更に35mlまで脱塩・濃縮している。通常、最終の濃縮は1/2〜1/5程度に濃縮するのが好ましい。
本発明においては、例えば、150Lの原液(塩の濃度約4%、タンパク質濃度約3%)を、1.8m2のNF膜を用いて、前記 脱塩・濃縮と希釈・濃縮の操作を5〜7回繰り返すことによって所望の塩の濃度が約10,000ppm以下で約10倍のタクパク質等の濃度にまで濃縮できる。なお、本発明の精密ろ過やダイアフィルトレーションは、工業的には、膜モジュールにポンプや原液タンク等が付属して構成される膜分離プロセスを用いて行うことができる。
本発明で得られた分子量約4万以下の水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドからなる水溶性エラスチン混合物であって、混合物中のビュレット法に基づくタンパク質含有率が90重量%以上で、デスモシンとイソデスモシンの含有率が全アミノ酸の1.8〜4.0重量%の範囲にある水溶性エラスチン混合物は、150℃の熱処理を行っても殆ど分解せず、熱に対して非常に安定である。また、pH2〜9の範囲で、100℃で60分間加熱処理しても殆ど分解することがなかった。
本発明で得られる分子量約4万以下の水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドからなる水溶性エラスチン混合物であって、混合物中のビュレット法に基づくタンパク質含有率が90重量%以上で、デスモシンとイソデスモシンの含有率が全アミノ酸の1.8〜4.0重量%の範囲にある水溶性エラスチン混合物、特に、この混合物中の全アミノ酸の79〜85モル%がプロリンとグリシンとアラニンとバリンからなり、2〜4モル%がアスパラギン酸とグルタミン酸からなり、0.7〜3.5モル%がリジンとヒスチジンとアルギニンからなり、0.2〜0.6モル%がデスモシンとイソデスモシンからなる水溶性エラスチン混合物は、消化吸収性に優れているので、機能性食品として利用できる。
現在、健康食品市場が急拡大しているが、高コレステロール、高中性脂肪あるいは高血圧などの症状に個別的に対応する機能性食品はあっても、動脈硬化を総合的に予防し、抑制する万能対応型機能性食品はこれまで皆無である。血管を構成する主成分はエラスチン(約30%)で、次いでコラーゲン(約18%)であるが、コラーゲンは美肌効果を有する食品素材として広く普及してきたものの、エラスチンを素材とした動脈硬化予防・抑制対応型機能性食品は未だ開発されていない。
本発明の水溶性エラスチン混合物は、コレステロールの上昇抑制、中性脂肪の上昇抑制、LDL-コレステロール(悪玉コレステロール)の上昇抑制
、過酸化脂質の上昇抑制などの血中脂質代謝異常の改善作用を持っているので、血管内腔表面の硬化病変抑制作用や、血管弾性機能の低下抑制作用が予想され、動脈硬化予防・抑制万能対応型機能性食品として開発されることが期待できる。
本発明において機能性食品は、その形態は特に限定されるものではなく、本発明の水溶性エラスチン混合物をそのまま飲食品として調製したもの、各種タンパク質、糖類、脂肪、微量元素、ビタミン類等を更に配合したもの、液状、半液体状若しくは固体状にしたもの、一般の飲食品へ添加したものであっても良い。また、食品とは、健康食品、健康補助食品、特定保健用食品等を広く含む意味で用いられる。そして、本発明の機能性食品は、血中脂質代謝異常の改善や血管内腔表面の硬化抑制効果、血管弾性機能の低下抑制効果が期待できるので、動脈硬化予防・抑制万能対応型の機能性食品として提供することができる。
本発明の機能性食品の摂取量は、成人1人1日当たり、水溶性エラスチン混合物換算で0.1〜20g、好ましくは0.5〜10gが適当である。
以下、実施例と比較例により本発明を詳述する。なお、%は特に断らない限り重量基準である。
[実施例1]
(脱脂工程)
動物性生体組織として豚の大動脈を用い、付着している脂肪や筋肉などエラスチン含量の低い部分を刃物などを用いて削ぎ落とし、動物性生体組織をミートチョッパーや粉砕機を用いて微粉砕した。微粉砕した動物性生体組織25kgを、約90℃の熱水約50kgに懸濁・混合し、3000rpmで5分間、遠心分離して脱脂処理を行った。かかる操作を2回繰り返した後、乾燥し、脂肪含有率が乾燥重量当たり約3%の脱脂処理された動物性生体組織(以下、脱脂組織という)を得た。
(塩溶液による前処理)
上記の脱脂組織乾燥物5kgを、50kgの1.0M(1.0モル/L)の塩化ナトリウム水溶液に入れ、室温(約25℃)で1時間攪拌し、組織を膨潤させ、遠心分離にて不要タンパク質の除去を行う前処理を行った。
(アルカリ抽出工程)
上記塩溶液による前処理後に得られた残渣に45kgの0.1M(0.1モル/L)の水酸化ナトリウム水溶液に入れ、98℃で15分間攪拌し、エラスチン以外のコラーゲン等の不要タンパク質の除去処理を行った。不要タンパク質の除去率が55重量%以上になるように、かかる操作を3回繰り返し、タンパク質収率が35.2重量%のエラスチンを主体とする動物性生体組織残渣を得た。
(アルカリ溶解工程)
上記アルカリ抽出工程後に得られた残渣に対して、45kgの0.5M水酸化ナトリウム水溶液を加え、98℃で160分間アルカリ溶解工程を行い、水溶性エラスチンを含む水溶液を得た。
(水溶性エラスチンを含む水溶液の中和と精密ろ過工程)
上記で得られた水溶性エラスチンを含む水溶液約55kgに対して、15Mの酢酸を約1.4kg加えて室温で攪拌し中和を行った。得られた中和液中のビュレット法に基づいたタンパク質濃度は3%で、塩(酢酸ナトリウム)濃度は約4%であった。次いで、中和処理によって生じた微細なコロイド状の浮遊物を分離・ろ過するために遠心分離を行い、上澄み液を膜孔径1μmのバッグフィルター(イートンフィルトレーション社製)を用いてろ過し、次いで、膜孔径0.2μmのプリーツフィルター(CERTAIN-PORE 250L-CES002S0、ROKI TECHNO社製)を用いた精密ろ過を行った。かかる操作で除菌も行われる。
(水溶性エラスチンを含む水溶液の脱塩工程)
次いで、前記中和・精密ろ過処理した水溶性エラスチンを含む水溶液の中の350gを用い、ナノフィルトレート膜を用いて、ダイアフィルトレーション方式で脱塩処理した。ナノフィルトレーション膜としては、ダイセンメンブレンNP010(ダイセン・メンブレン・システムズ社製、NaCl阻止率5〜15%、膜面積55cm)を使用した平膜試験機を用い、圧力:3.0MPa、液温:室温(約25℃)の運転条件で行った。
図1に示したように、先ず、前記350mlの水溶液(原液)を5倍に濃縮後に(透過液280ml)、ダイアフィルトレーション方式で脱塩を行った。即ち、5倍に濃縮した液Aの70mlに同量の水70mlを添加し、140mlの液Bとした。次に、液Bの140mlを濃縮し70mlの液Cとした(透過液70ml)。かかる操作を5回繰り返し、最後に得られた液Dの70mlをそのまま半分の量まで濃縮し、最初の原液から約10倍に濃縮された濃縮液35mlを得た。
上記で得られた濃縮液は、水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドからなる水溶性エラスチン混合物の水溶液である。この水溶性エラスチン混合物の水溶液は、タンパク質濃度が152mg/ml(タンパク質濃度が15.2%)、塩濃度は約0.5%であった。なお、前述のように濃縮前のタンパク質濃度は3%で、脱塩前の塩(酢酸ナトリウム)濃度は約4%であった。この水溶液を凍結乾燥し、水溶性エラスチン粉末を得た。
[実施例2]
水溶性エラスチンを含む水溶液の脱塩工程で、ナノフィルトレート膜として、NTR−7410(日東電工社製、NaCl阻止率5.0〜25.0%、膜面積44cm)を用いた以外は、実施例1と同じようにして、水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドからなる水溶性エラスチン混合物の水溶液を得た。この水溶液は、タンパク質濃度が104mg/ml、塩濃度は約0.9%であった。この水溶液を凍結乾燥し、水溶性エラスチン粉末を得た。
[比較例1]
水溶性エラスチンを含む水溶液の脱塩工程で、膜として、UF−ETNA(アルファ・ラバル社製、分画分子量1,000、NaCl阻止率0%、膜面積55cm)を使用した以外は、実施例1と同様にして、水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドからなる水溶性エラスチン混合物の水溶液を得た。
上記で得られた水溶液は、タンパク質濃度が46.3mg/ml、塩濃度が約0.3%であった。この水溶液を凍結乾燥し、水溶性エラスチン粉末を得た。風味に問題は無かったが、本発明と異なり、ナノフィルトレート膜を用いたものではないので、脱塩工程でのタンパク質の回収率が20%以下で、生産性の点で不適当であった。
[比較例2]
水溶性エラスチンを含む水溶液の脱塩工程で、ナノフィルトレート膜として、ダイセンメンブレンNP030(ダイセン・メンブレン・システムズ社製、NaCl阻止率25〜35%、膜面積55cm)を使用した以外は、実施例1と同様にして、水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドからなる水溶性エラスチン混合物の水溶液を得た。この水溶液を凍結乾燥し、水溶性エラスチン粉末を得た。
上記で得られた水溶液は、タンパク質濃度が164mg/ml、塩濃度が約0.9%であった。この水溶液を凍結乾燥し、水溶性エラスチン粉末を得た。これを試食したところ、エグ味や苦味がやや強かった。
[比較例3]
水溶性エラスチンを含む水溶液の脱塩工程で、ナノフィルトレート膜として、NTR−7430(日東電工社製、NaCl阻止率25.0〜40.0%、膜面積44cm)を用いた以外は、実施例1と同じようにして、水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドからなる水溶性エラスチン混合物の水溶液を得た。
上記で得られた水溶液は、タンパク質濃度が185mg/ml、塩濃度が約1.1%であった。この水溶液を凍結乾燥し、水溶性エラスチン粉末を得た。これを試食したところ、エグ味や苦味がやや強かった。
実施例1と2及び比較例1〜3のデータ等はまとめて表1に示した。表1に示したように、総合評価として、実施例1と2のものが比較例1〜3のものよりも、品質(食味)の点で、またタクパク質収率の点で優れていた。
Figure 2009219422
表1において、(*1)の「タンパク質残存率」とは、(ナノフィルトレート膜処理後の水溶性エラスチン溶液のタンパク質量)÷(ナノフィルトレート膜処理を行う前の水溶性エラスチン溶液のタンパク質量)×100を言う。(*2)は、ナノフィルトレート膜処理した水溶性エラスチン溶液の凍結乾燥物のタンパク質含有率である。(*3)は、全アミノ酸に対する重量%を示す。
[実施例3]
水溶性エラスチンを含む水溶液の脱塩工程のスケールアップ試験として、ダイセンメンブレンNP010(ダイセン・メンブレン・システムズ社製、NaCl阻止率5〜15%、膜面積1.8m)を使用したモジュール(直径2.5インチのスパイラル方式)を用い、圧力:2.5MPa、流量:10L/min、液温:20±2℃の運転条件で行った。
図2に示したように、水溶性エラスチンを含む水溶液の原液50kg(50L)を、先ず5倍に濃縮後に(透過液40L)、ダイアフィルトレーション方式で脱塩を行った。即ち、5倍に濃縮した液aの10Lに同量の水10Lを添加し、20Lの液bとした。次に、液bの20Lを濃縮し10Lの液cとした(透過液10L)。かかる操作を5回繰り返し、最後に得られた液dの10Lをそのまま半分の量まで濃縮し、最初の原液から約10倍に濃縮された濃縮液5Lを得た。この水溶液を凍結乾燥し、水溶性エラスチン粉末を得た。
得られた水溶性エラスチン粉末についてTSK−Gel
G2000SWXL(東ソー社製)を用いた高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって、タンパク質の分子量分布を求めたところ、分子量511未満が9.3%、511〜6500が30.2%、6500〜13700が40.5%、13700〜29000が13.1%、29000〜43000が6.4%、43000〜75000が0.4%、75000を超えるものが0.1%であった。従って、主体は約4万以下の低分子量水溶性エラスチンであることが確認された。
上記水溶性エラスチン粉末のアミノ酸組成は、全アミノ酸の82.2モル%がプロリンとグリシンとアラニンとバリンからなり、3.2モル%がアスパラギン酸とグルタミン酸からなり、2.7モル%がリジンとヒスチジンとアルギニンからなり、0.4モル%(2.0重量%)がデスモシンとイソデスモシンからなっていた。この凍結乾燥物は、150℃の熱処理を行っても殆ど分解せず、熱に対して非常に安定である。また、pH2〜9の範囲で、100℃で60分間加熱処理しても殆ど分解することがなかった。この凍結乾燥物を試食したところ、エグ味も苦味も殆どなかった。
以上のスケールアップ試験として行った実施例3のデータ等を表2に示した。表2に示したように、スケールアップを行っても実施例1と同様に優れた総合評価であった(*1、*2、*3は表1の場合と同じ)。
Figure 2009219422
本発明の実施例1で用いられるダイアフィルトレーション方式の概要を示す図である。 本発明の実施例3で用いられるダイアフィルトレーション方式の概要を示す図である。

Claims (7)

  1. 分子量約4万以下の水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドからなる水溶性エラスチン混合物であって、該混合物中のビュレット法に基づくタンパク質含有率が90重量%以上で、デスモシンとイソデスモシンの含有率が全アミノ酸の1.8〜4.0重量%の範囲にあることを特徴とする水溶性エラスチン混合物。
  2. 動物性生体組織から水溶性エラスチン混合物を製造する方法であって、(1)動物性生体組織を脱脂処理する脱脂工程、(2)該脱脂処理された動物性生体組織を、低濃度のアルカリ水溶液中に浸漬し、該動物性生体組織からエラスチン以外の不要タンパク質を除去するアルカリ抽出工程、(3)該アルカリ抽出工程で得られたエラスチンを主体とする動物性生体組織残渣を、前記(2)の操作におけるよりも高濃度のアルカリ水溶液に溶解し、水溶性エラスチンを含む水溶液を得るアルカリ溶解工程、(4)該アルカリ溶解工程で得られた水溶性エラスチンを含む水溶液を中和し、得られた中和溶液を膜孔径が0.1〜5μmの範囲のフィルターでろ過する精密ろ過工程、その後、(5)該精密ろ過工程で得られたろ液を、ナノフィルトレート膜を用いてダイアフィルトレーション方式で脱塩処理する脱塩工程からなることを特徴とする水溶性エラスチン混合物の製造方法。
  3. アルカリ抽出工程が、脱脂処理された動物性生体組織を、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを溶液1L当たり0.05モル以上、0.3モル未満含有するアルカリ水溶液中に、90〜105℃で5〜30分間浸漬することからなる請求項2記載の水溶性エラスチン混合物の製造方法。
  4. アルカリ抽出工程の前に、塩化ナトリウム及び/又は塩化カリウムを溶液1L当たり0.5〜2.0モル含有する塩溶液中に、動物性生体組織を4℃以上で浸漬する前処理を行うことを特徴とする請求項2記載の水溶性エラスチン混合物の製造方法。
  5. アルカリ溶解工程が、アルカリ抽出工程で得られた動物性生体組織残渣を、水酸化ナトリウム及び/又は水酸化カリウムを溶液1L当たり0.3モル以上、2モル以下含有するアルカリ水溶液中に、90〜105℃で20〜240分間浸漬することからなる請求項2記載の水溶性エラスチン混合物の製造方法。
  6. 脱塩工程で使用するナノフィルトレート膜の膜孔径が、NaCl阻止率で5〜25%である請求項2記載の水溶性エラスチン混合物の製造方法。
  7. 分子量約4万以下の水溶性エラスチンとそれに由来するペプチドからなる水溶性エラスチン混合物であって、該混合物中のビュレット法に基づくタンパク質含有率が90重量%以上で、デスモシンとイソデスモシンの含有率が全アミノ酸の1.8〜4.0重量%の範囲にある水溶性エラスチン混合物含む機能性食品。


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