JP2009217262A - 画像定着部材、画像定着部材を形成するためのプロセス - Google Patents

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Abstract

【課題】画像形成部材の機能を維持する。
【解決手段】融着器ロール1は、ベース部材4と、その上の外側表面2と、を含む。ベース部材4と外側表面2との間に、中間層を有しても良い。外側表面2または中間層のうち少なくとも一方が、ナノカプセルまたはマイクロカプセルの中に封入された修復性物質を含む。ナノカプセルまたはマイクロカプセルから放出した修復性物質により融着器ロール1を補修し、融着器ロール1の機能を維持する。
【選択図】図1

Description

本発明は、融着器または定着部材、ならびにそのような融着器および定着部材を製造するためのプロセスに関する。
典型的な静電写真印刷装置においては、コピーされるオリジナルの光画像が、静電潜像の形で感光体部材の上に記録され、次いでその潜像を、通常トナーと呼ばれている検電性(electroscopic)熱可塑性樹脂粒子を塗布することによって、目に見えるようにする。次いでその目に見えるトナー画像は、束縛のゆるい粉体の形態にあって、容易に乱されたり、破壊されたりする可能性がある。通常そのトナー画像を支持体の上に定着または融着させるが、その支持体は感光体部材そのものであっても、あるいは、他の支持シート、たとえば普通紙、OHPシート、特別にコーティングされた紙などであってもよい。
トナー画像を支持部材の上に定着させるために熱エネルギーを使用することは周知である。熱によって検電性トナー物質を支持表面上に恒久的に融着させるためには、トナー物質の温度を、トナー物質の成分が合着して、粘着性となるような点にまで上げてやる必要がある。この加熱によって、支持部材の繊維または細孔の中へトナーをある程度流入させる。その後で、トナー物質が冷却すると、トナー物質の固化が起き、トナー物質を支持体に強固に結合させる。
典型的には、熱可塑性樹脂粒子を、約90℃〜約160℃の間またはそれ以上の温度に加熱することによって基材に融着させるが、その温度はトナーの中に使用された特定の樹脂の軟化範囲に依存する。しかしながら、基材の温度を実質的に約200℃よりも高い温度に上げるのは望ましいことではないが、その理由は、特にその基材が紙であるような場合には、そのような高温では基材が変色する傾向があるからである。
レンツ(Lentz)の特許文献1には、金属含有充填剤を含むエラストマーの少なくとも1層の外側層を含む融着器部材と、ポリマー性離型剤の使用について開示されている。
レンツらの特許文献2には、その中に金属含有充填剤を含むエラストマー表面層を有する融着器部材と、ポリマー性離型剤の使用について開示されている。
セアノル(Seanor)の特許文献3には、その中に金属含有充填剤を有するエラストマー表面を有する融着器部材と、メルカプト官能性ポリオルガノシロキサン離型剤の使用について開示されている。
ヒークス(Heeks)らの特許文献4には、基材とその上の充填剤成分を含むシリコーンゴム表面層とからなる融着器部材が開示されており、その充填剤成分がシリコーンハイドライド離型オイルと反応する。
フィールド(Field)らの特許文献5には、ブレンドされていないポリジメチルシロキサンを含む、トナー離型剤を用いてコーティングされた、シリコーンエラストマー融着表面を有する融着器部材が開示されている。
ヘンリー(Henry)らの特許文献6には、ヒドロフルオロエラストマー融着器部材の上にアミノ官能性シリコーンオイルを使用して、熱可塑性樹脂のトナー画像を基材に融着させるための方法が教示されている。
チョウ(Chow)らの特許文献7には、熱安定性のFKMヒドロフルオロエラストマー表面を有し、ポリオルガノT型アミノ官能性オイル離型剤を有する融着部材が教示されている。そのオイルは、活性分子あたりに主としてモノアミノ官能基を有していて、ヒドロフルオロエラストマー表面と相互作用させている。
バデシャ(Badesha)らの特許文献8には、ハイドライド離型オイルを用いてコーティングされた融着器部材が開示されている。
チャン(Chang)らの特許文献9には、最外層に低表面エネルギー離型剤を有する融着器部材が開示されている。
モウル(Maul)らの特許文献10には、オイルウェブシステムが開示されている。
フルカワ(Furukawa)らの特許文献11には、ある化学式で表されるフッ素含有有機シリコーン化合物が開示されている。
カトー(Kato)らの特許文献12には、フッ素原子および/またはケイ素原子を含む化合物を電子写真感光性要素の表面に適用することを含む、カラー画像を形成させるための方法が開示されている。
ウネメ(Uneme)らの特許文献13には、フッ素含有シリコーンオイルのコーティングを有する、フルオロ樹脂コーティングされた定着デバイスが開示されている。
エビス(Ebisu)らの特許文献14には、フルオロ樹脂を用いてコーティングされ、フルオロシリコーンポリマー離型剤を有する定着デバイスが開示されている。
ヤマザキ(Yamazaki)らの特許文献15には、加熱部材の表面上にコーティングされたシリコーンオイルを使用する、定着方法が開示されている。
ウネメらの特許文献16には、フルオロ樹脂層表面を有し、撥剤オイルとしてフッ素含有シリコーンオイルを使用した定着デバイスが開示されている。
ヤマザキらの特許文献17には、加熱部材の表面上にコーティングされたシリコーンオイルを有し、ここで、そのシリコーンオイルがフッ素含有シリコーンオイルであって特定の化学式を有している、定着方法が開示されている。
ニシモリ(Nishimori)らの特許文献18には、その上にコーティングされたフッ素含有シリコーンオイルを有し、そのシリコーンオイルが特定の化学式を有する、定着部材が開示されている。
フルカワらの特許文献19には、そのフッ素含有オイルが特定の化学式を有する、加熱定着のための防汚性オイルが開示されている。
オカダ(Okada)らの特許文献20には、特定の化学式を有するフッ素変性シリコーン化合物が開示されており、その化合物は化粧品における撥油のために使用することが可能である。
ケンジオルスキー(Kendziorski)の特許文献21には、より長い浴寿命(bath life)のための、コーティング組成物のためのフルオロシリコーンポリマーが開示されている。
上述の特許および公刊物のそれぞれにおける開示は、ここに引用することにより、それらの内容のすべてを本明細書に取り入れたものとする。上述の特許および公刊物のそれぞれにおける適切な構成要素およびプロセス態様を、本発明の実施態様において、その構成要素およびプロセスのために選択してもよい。
検電性トナー画像の熱融着に関しては、いくつかのアプローチ方法が従来技術において記述されている。そのような方法には、各種の手段によって熱と圧力を実質的に同時にかけることが挙げられるが、そのような手段としては、たとえば加圧接触状態に維持されたロールの対や、ロールと加圧接触状態にあるベルト部材などが挙げられる。熱は、それらのロール部材、板状部材またはベルト部材の片側または両側からかけるのがよい。熱と圧力と接触時間が適切な組合せで与えられたときに、トナー粒子の融着が一般的に起きる。トナー粒子の融着をもたらすための、それらのパラメータのバランスは当業者には周知であり、それらは、特定の機械、プロセス、条件、および印刷基材に合わせて調節することができる。
一般的には、融着器ロールおよび定着ロールは、適切な基材に一層または複数の層を適用することによって調製される。たとえば、円筒状の融着器ロールおよび定着器ロールは典型的には、エラストマー層またはフルオロエラストマー層を、さらなる層の存在下または非存在下に、アルミニウムのコアに塗工することによって調製される。次いでそのコーティングされたロールを、対流オーブン中で加熱して、そのエラストマー物質またはフルオロエラストマー物質を硬化させる。そのような加工は、たとえば特許文献22,6および23に開示されている。それらの開示のすべてを、参考として引用し本明細書に組み入れる。
使用に際しての融着器部材または定着部材の重要な性質としては、熱伝導率およびたとえば硬度のような機械的性質が挙げられる。熱伝導率は、融着器部材または定着器部材が熱を十分に伝達して、トナー粒子に融着のための熱を与えなければならないので、重要である。融着器部材または定着器部材の機械的性質は、その部材が、短時間の間に劣化することなく、その所望の剛性および弾性を維持しなければならないので、重要である。しかしながら、充填剤の担持量を増やすと、部材がより硬くなり、摩耗しやすくなって、コーティング層の機械的性質に悪影響を与える場合がある。たとえば、慣用される金属酸化物、たとえばアルミニウム、鉄、銅、スズ、および亜鉛の酸化物を、充填剤としてもよく、それらについては、特許文献23〜31等に開示されている。それらの金属酸化物充填剤物質は、約60重量%までの量で配合させれば、約0.2〜約1.0Wm−1−1の熱伝導率を与える。しかしながら、先にも述べたように、充填剤の担持量は、高い配合レベルでは硬度が高くなるので、制限しなければならない。
融着器ロールおよび定着ロールならびに融着器部材および定着部材を用いると優れたトナー画像が得られはするが、より最新の、より高速度の電子写真コピー機、デュプリケータ、およびプリンタが開発されてきているので、印刷品質に関しての要求が一段と高くなっていることが判った。改良された定着部材の設計では、より高い感度、より早い放電性、機械的な堅牢性、および製造の容易さを目標としなければならない。帯電画像とバイアス電位の微妙なバランスや、トナーおよび/または現像剤の特性も維持しなければならない。このことによって、定着部材および融着器部材の製造の品質、ひいてはその製造収率に対して、さらなる制約が加わる。融着部材および定着部材は一般的に、電子写真のサイクルに繰り返し暴露され、そのために、その暴露された層が、機械的な摩耗、化学的な攻撃、および熱にさらされる。この繰り返しサイクルのために、暴露された(一または複数の)層の機械的特性および電気的特性が徐々に劣化し、マイクロクラックが生成することも多い。具体的には、構造ポリマー(structural polymers)ではそのようなクラックおよび/またはマイクロクラックが生成しやすく、それらは多くの場合、その構造の内部の深いところで生成するために、検出したり補修したりすることが不可能である。そのようなクラックが一旦発生すると、それらは、融着部材または定着部材の機能性を著しく且つ恒久的に損なう可能性がある。
米国特許第4,257,699号明細書 米国特許第4,264,181号明細書 米国特許第4,272,179号明細書 米国特許第5,401,570号明細書 米国特許第4,515,884号明細書 米国特許第5,512,409号明細書 米国特許第5,516,361号明細書 米国特許第6,253,055号明細書 米国特許第5,991,590号明細書 米国特許第6,377,774号明細書 米国特許第6,197,989号明細書 米国特許第5,757,214号明細書 米国特許第5,716,747号明細書 米国特許第5,698,320号明細書 米国特許第5,641,603号明細書 米国特許第5,636,012号明細書 米国特許第5,627,000号明細書 米国特許第5,624,780号明細書 米国特許第5,568,239号明細書 米国特許第5,463,009号明細書 米国特許第4,968,766号明細書 米国特許第5,501,881号明細書 米国特許第5,729,813号明細書 米国特許第6,395,444号明細書 米国特許第6,159,588号明細書 米国特許第6,114,041号明細書 米国特許第6,090,491号明細書 米国特許第6,007,657号明細書 米国特許第5,998,033号明細書 米国特許第5,935,712号明細書 米国特許第5,679,463号明細書
紙の端部との接触によって融着ロールに恒久的な損傷が生じることは、依然として、融着ロールの初期故障につながる重大な問題である。故障した融着器ロールの交換に要するコストは極めて高く、そのために融着器ロールの寿命を改良すれば、顕著にコストが削減されるであろう。
したがって当業界においては、材料の破壊が起きたときにそれに応答し修正するような改良された定着部材が求められている。そのため、定着部材の構成要素の寿命をその機械の寿命にまで延長させる取り組みにおいては、その環境に応答する性能を有し、損傷が起きたときに自己修復性があるようなデバイスが望ましい。そのようなデバイスでは、使用者または専門技術者のいずれかによるその機械の保守の必要がなくなるであろう。さらに、熱伝導率に悪影響を与えないが、取付けレベルにおいて、部材に対してより低い硬度を与え、部材のその他の望ましい機械的性質の改良、たとえば性能の拡張をするようなタイプの、改良された材料も必要とされている。したがって本明細書の開示は、自己修復が可能な融着器ロールを目的としている。自己修復性を達成するための一つのそのような方法としては、たとえば、融着器ロールの層の中に修復性物質を組み入れることが挙げられる。そのような修復性物質は、たとえばマイクロカプセルの中に封入して、融着器ロールが摩耗したり引っ掻かれたりしたときに、そのカプセルが破裂し、それによって修復性物質を放出し、次いでそれが埋め込まれていた触媒と反応して、重合を起こさせ、損傷の補修または損傷の歯止めを行わせることができる。
融着部材および定着部材を形成するための各種のアプローチ方法が試みられてきたが、改良された画像形成性能とより長い寿命を与え、保守の必要性を低下させるなど、融着部材および定着部材の設計を改良する必要性が依然として存在している。
本発明は、上述の問題点のいくつかまたは全部を対象としており、さらに、電子写真定着部材の離型性能を改良し、機械的性質を維持し、機械的な損傷を補修し、それによって画像形成品質を改良し、寿命を延長させるなどのための、物質と方法をも提供する。
いくつかの実施態様においては、本発明は、画像定着部材であって、基材と、該基材の上の任意の中間層と、該中間層の上の最外層と、を含む画像定着部材であって、その中間層およびその最外層の内の少なくとも一層が、ナノカプセルまたはマイクロカプセルの中に封入された修復性物質を含み、前記修復性物質が、その画像形成定着部材の機能を維持することが可能である、画像定着部材である。
いくつかの実施態様においては、本発明はさらに、画像定着部材を形成するためのプロセスであって、基材の上に最外層と、場合によっては中間層とを塗工する工程を含み、中間層および最外層の内の少なくとも一層が、ナノカプセルまたはマイクロカプセルの中に封入された修復性物質を含み、修復性物質が、画像定着部材の機能を維持することが可能である、プロセスである。
本明細書の開示のこれらおよびその他の利点と特徴は以下の記載、特に添付の図面を参照した場合に、明らかとなるであろう。
本発明の実施形態に係る融着器部材を使用することが可能な融着器システムの断面図である。 本発明の実施例に係る自己修復プロセスを説明する図である。
本発明は、融着器部材または定着部材、ならびにそのような融着器部材および定着部材を製造するためのプロセスに関する。さらに詳しくは、本発明は、そのような融着器部材および定着部材、またはその他の部材を製造するためのプロセスに関し、ここで少なくともその部材の一層が、自己修復が可能な組成物を含んでいる。本発明はさらに、融着部材および定着部材を製造および使用するプロセス、ならびに、そのような融着部材および定着部材を使用する静電写真の印刷装置にも関する。
いくつかの実施態様に従って、融着部材および定着部材などが得られる。いくつかの実施態様においては、各種の部材が当業者公知の各種のプロセスに従って製造されるが、ただし慣用される充填剤物質に代えるかまたはそれらと組み合わせて、自己修復性物質がそれらの部材の中に組み入れられている。
本明細書に記載の「自己修復」という用語は、たとえば、マイクロクラック、ボイドなどが生成した場合に、化学反応または重合によって、画像形成定着部材の所望の機能および性質、たとえば機械的性質および離型性能を保持し、それ自体で再生または補修する、物質の能力を指している。
いくつかの実施態様の典型的な融着器部材(換言すれば、本明細書において定着部材とも呼ばれているもの)が、図1に示された融着器に関連させて説明されるが、ここで、1は、適切なベース部材4の上に外側表面2を含む融着器ロールを示している。ベース部材4は、各種適切な金属たとえば、アルミニウム、陽極処理アルミニウム、鋼、ニッケル、銅などから製造された中空円筒または中空コアとすることができる。別な方法として、ベース部材4が、非金属物質たとえばポリマーから製造された中空円筒または中空コアであってもよいし、あるいは同様の構成のエンドレスベルト(図示せず)であってもよい。図に示されているように、ベース部材4には、それの中空の位置に配置され円筒と同一の広がりを持つ(coextensive)、適切な加熱要素6が含まれている。別な方法として、加熱要素として外部ヒーターを使用してもよい(図示せず)。バックアップロールまたは加圧ロール8が融着器ロール1と協働してニップまたはコンタクト・アーク(contact arc)10を形成し、その間をコピー紙または他の基材12が通過して、それにより、コピー紙または他の基材12の上のトナー画像14が、融着器ロール1の外側表面2と接触する。図に示されているように、バックアップロール8は、その上に軟質の表面層18を有する高質鋼のコアまたは硬質ポリマー基材16を有しているが、組合せがそれらに限定される訳ではない。トナー画像に離型性能を与えるために、送出ユニットたとえば油溜め20から離型剤22を、融着器の表面上に塗布してもよい。離型剤22は典型的にはシリコーンオイルを含み(それらに限定される訳ではない)、それは、室温では固体であっても液体であってもよいが、操作温度では流体である。具体的な離型剤としては、ポリジメチルシロキサン、またはポリジメチルシロキサンと3−アミノプロピルメチルシロキサン、3−メルカプトプロピルメチルシロキサン、3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサンなどからなる群より選択される有機シロキサン類とのコポリマーが挙げられる。
外側表面2にポリマー性離型剤22を塗布するための図1に示された実施態様においては、図示された方向に回転可能に搭載された2本の離型剤送出しロール17,19を設けて、離型剤22を油溜め20から融着器ロールの表面へと送出させる。図示されているように、ロール17はその一部が油溜め20の中に浸漬されており、その表面を使って、油溜めからの離型剤(release agent)を送出しロール19に送出している。調節ブレード(metering blade)24を使用することによって、サブマイクロメートルオーダーの厚みから数マイクロメートルオーダーの厚みの範囲に離型流体(release fluid)の厚みを調節して、ポリマー性離型流体の層を、まず送出しロール19に、次いで融着器ロール1の外側表面2に塗布することができる。そのようにすれば、調節装置24によって、約0.1〜2マイクロメートルまたはそれ以上の厚みの離型流体を、融着器ロール1の表面に塗布することが可能である。
言うまでもないことであるが、図1に示した設計が本発明を限定するようなことはないと理解されたい。たとえば、その他の公知であるか今後開発される静電写真の印刷装置も、本明細書に記載の融着器部材および定着器部材を取り入れたり、使用したりすることもできる。たとえば、実施態様におけるいくつかの装置では、融着器ロールの表面に離型剤を塗布することを必要とせず、そのため、離型剤成分を省略することができる。他の実施態様においては、図示した円筒状の融着器ロールを、エンドレスベルトの融着器部材に置き換えることもできる。さらに他の実施態様においては、その中空の位置に配置された加熱要素以外の方法によって、融着器部材を加熱することも可能である。例えば、所望により、外部加熱要素または複合加熱要素によって加熱することもできる。その他の変更や修正も、当業者には明らかであろう。
本明細書で使用するとき、「融着器(fuser)」または「定着(fixing)」部材、およびそれらから誘導される用語は、ロール、ベルト、例えばエンドレスベルト、平坦な表面、例えばシートもしくはプレート、または熱可塑性のトナー画像を適切な基材に定着させるのに使用されるその他適切な形状などであってよい。それは、融着器部材、加圧部材または離型剤ドナー部材などの形態をとっていてよく、円筒状のロールの形態であるのが望ましい。典型的には、その融着器部材が、中空円筒状の金属コア、たとえば銅、アルミニウム、鋼鉄などでできていて、選択されたエラストマーまたはフルオロエラストマーの外側層を有している。別な方法として、融着器部材がポリマー基材、たとえばポリイミドなどでできていてもよく、選択されたエラストマーまたはフルオロエラストマーの外側層を有していてもよい。そのような層として適切な熱的および機械的性質を有している典型的な材料としては、シリコーンエラストマー、フルオロエラストマー、EPDM(エチレンプロピレンヘキサジエン)、およびテフロン(Teflon)(登録商標)(すなわち、ポリテトラフルオロエチレン)例えばテフロン(登録商標)PFAスリーブ付ローラ(sleeved roller)などが挙げられる。
具体的な実施態様においては、融着器部材またはその他の部材には、コア部材と外側コーティング層に加えて、場合によってはさらに、基材と硬化されたエラストマーの外側層との間に、所望により、一または複数の伝熱性の中間層が含まれていてもよい。そのような中間層のために適切な熱的性質および機械的性質を有する典型的な材料としては、硬化されたシリコーンエラストマー、フルオロエラストマーなどや、金属、金属酸化物、炭化ケイ素、窒化ホウ素などからなる群より選択される充填剤(フィラー)などが挙げられる。さらに、それらの層の間の接着性を改良する目的で、プライマー層、接着層が含まれていてもよい。
いくつかの実施態様においては、融着器部材は、たとえば金属のようなコアと、好ましくは高い熱的機械的強度を有し、熱伝導性および弾力性のある圧縮性材料の、通常は連続の、コーティングとからなっている。融着部材および定着部材のための各種の設計が当業者には公知であり、それらは例えば、米国特許第4,373,239号、米国特許第5,501,881号、米国特許第5,512,409号、および米国特許第5,729,813号などに記載されている。一般的には、そのコアには各種適切な支持材料を含んでいてよく、その周りまたはその上に次の層を形成させる。適切なコア材料としては、金属たとえば、アルミニウム、陽極処理アルミニウム、鋼鉄、ニッケル、銅などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。所望により、そのコア材料を選択して、ポリマー材料たとえば、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトンなどとすることもできるが、それらは場合によっては、繊維、例えばガラスなどが充填されていてもよい。そのコアまたは基材は、機械的に硬質であってもあるいは可撓性があってもよい。
次いで、望ましくは熱伝導性および弾力性のある圧縮性材料である外側層コーティングをそのコア部材に適用する。そのコーティングは各種適切な材料、例えば、熱伝導性を有するフルオロポリマー、エラストマー、またはシリコーン材料であってよいが、これらに限定される訳ではない。一般的には、そのコーティング材料は、トナー粒子を基材に対して融着または定着させるのに望ましい温度に応じて、一般的に約90℃から最高約200℃またはそれ以上の高温に耐えることが可能な熱安定性のエラストマーまたは樹脂材料でなければならない。融着器部材または定着部材において使用されるコーティング材料はさらに、一般的にはその部材に塗布される可能性のあるいかなる離型剤によっても劣化させられることがあってはならないが、そのような離型剤は、溶融されたり粘着性を付与されたりしたトナーのその部材の表面からの離型を促進させるために使用されるものである。
好適なフルオロポリマーとしては、フルオロエラストマーおよびフルオロ樹脂が挙げられる。好適なフルオロエラストマーとしては以下のものが挙げられる(ただし、これらに限定される訳ではない):i)フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー;ii)フッ化ビニリデンと、ヘキサフルオロプロピレンと、テトラフルオロエチレンと、のターポリマー;およびiii)フッ化ビニリデンと、ヘキサフルオロプロピレンと、テトラフルオロエチレンと、キュアサイトモノマー(cure site monomer)と、のテトラポリマー。たとえば、具体的には、好適なフルオロポリマーは以下の特許明細書に詳述されているようなものである:米国特許第5,166,031号、米国特許第5,281,506号、米国特許第5,366,772号、米国特許第5,370,931号、米国特許第4,257,699号、米国特許第5,017,432号、および米国特許第5,061,965号。それらの特許明細書に記載されているように、これらのフルオロポリマー、特に、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマー;フッ化ビニリデンと、ヘキサフルオロプロピレンと、テトラフルオロエチレンと、のターポリマー;およびフッ化ビニリデンと、ヘキサフルオロプロピレンと、テトラフルオロエチレンと、キュアサイトモノマーと、のテトラポリマー、のタイプのものは、各種の名称で商業的に公知であり、例えばバイトンA(VITON A(登録商標))、バイトンE(VITON E(登録商標))、バイトンE60C(VITON E60C(登録商標))、バイトンE430(VITON E430(登録商標))、バイトン910(VITON 910(登録商標))、バイトンGH(VITON GH(登録商標))およびバイトンGF(VITON GF(登録商標))などが挙げられる。バイトン(VITON(登録商標))の名称は、イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・インコーポレーテッド(E. I. DuPont de Nemours, Inc.)(デュポン社)の(登録)商標である。キュアサイトモノマーとしては、例えば4−ブロモペルフルオロブテン−1、1,1−ジヒドロ−4−ブロモペルフルオロブテン−1、3−ブロモペルフルオロプロペン−1、1,1−ジヒドロ−3−ブロモペルフルオロプロペン−1;または、デュポン社から市販されているその他各種の好適な公知のキュアサイトモノマーが使用できる。その他の商業的に入手可能なフルオロポリマーとしては、フルオレル2170(FLUOREL 2170(登録商標))、フルオレル2174(FLUOREL 2174(登録商標))、フルオレル2176(FLUOREL 2176(登録商標))、フルオレル2177(FLUOREL 2177(登録商標))およびフルオレルLVS76(FLUOREL LVS 76(登録商標))などが挙げられるが、フルオレル(FLUOREL(登録商標))はスリーエム・カンパニー(3M Company)の(登録)商標である。市販されているさらなる物質としては、アフラス(AFLAS(登録商標))(ポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレン))およびフルオレルII(FLUOREL II(登録商標))(LII900)(ポリ(プロピレン−テトラフルオロエチレンフッ化ビニリデン))(いずれもスリーエム・カンパニーから入手可能)、さらにはテクノフロン(Tecnoflon)の品番FOR−60KIR(登録商標)、FOR−LHF(登録商標)、NM(登録商標)FOR−THF(登録商標)、FOR−TFS(登録商標)、TH(登録商標)、およびTN505(登録商標)(モンテエディソン・スペシャルティ・ケミカル・カンパニー(Montedison Specialty Chemical Company)から入手可能)などが挙げられる。
本発明の開示において有用なその他のフルオロポリマーとしては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素化エチレンプロピレンコポリマー(FEP)、ポリフルオロアルコキシポリテトラフルオロエチレン(PFAテフロン)などが挙げられる。
本発明の開示における融着器部材の表面に有用な特に好適なフルオロポリマーとしては、フルオロエラストマー、例えばコモノマーとしてヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンを含む、フッ化ビニリデンをベースとするフルオロエラストマー(vinylidenefluoride based fluoroelastomers)のフルオロエラストマーが挙げられる。それらの公知のフルオロエラストマーは、(1)フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとのコポリマーのタイプ、たとえばバイトンA(VITON A(登録商標))として商業的に公知のもの、(2)フッ化ビニリデンと、ヘキサフルオロプロピレンと、テトラフルオロエチレンとのターポリマーのタイプ、たとえばバイトンB(VITON B(登録商標))として商業的に公知のもの、および(3)フッ化ビニリデンと、ヘキサフルオロプロピレンと、テトラフルオロエチレンと、キュアサイトモノマーとのテトラポリマーのタイプ、たとえばバイトンGH(VITON GH(登録商標))またはバイトンGF(VITON GF(登録商標))として商業的に公知のものである。バイトンA(VITON A(登録商標))、バイトンB(VITON B(登録商標))、バイトンGH(VITON GH(登録商標))、バイトンGF(VITON GF(登録商標))およびその他のバイトン(VITON(登録商標))の名称は、デュポン社の(登録)商標である。デュポン社から入手可能なフルオロエラストマーのバイトンGH(VITON GH(登録商標))およびバイトンGF(VITON GF(登録商標))では、フッ化ビニリデンの量が比較的低い。バイトンGF(VITON GF(登録商標))およびバイトンGH(VITON GH(登録商標))は、35重量パーセントのフッ化ビニリデン、34重量パーセントのヘキサフルオロプロピレンおよび29重量パーセントのテトラフルオロエチレンと共に、2重量パーセントのキュアサイトモノマーを含んでいる。さらなる実施態様においては、そのフルオロポリマーが、PFAテフロン、FEP、PTFE、バイトンGF(VITON GF(登録商標))またはバイトンGH(VITON GH(登録商標))である。また別な実施態様においては、そのフルオロポリマーが、PFAテフロン、バイトンGF(VITON GF(登録商標))またはバイトンGH(VITON GH(登録商標))である。
そのコーティングは、当業者に公知の各種適切な方法によってコア部材に塗工することができる。そのような方法としては、たとえば、スプレー法、浸漬法、フローコーティング法、キャスティング法、または成形法などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。典型的には、融着器部材の表面層は、なじみやすさとコストのバランスとして、および厚みに関する製造時のラティチュードを得るために、約4〜約9ミル(約101.6μm〜約228.6μm)、たとえば約6ミル(約152.4μm)の厚みである。言うまでもないことであるが、それ以外の厚みの層を使用することもまた可能である。
いくつかの実施態様においては、融着器部材または定着部材にはさらに、所望により基材と外側層との間に1または複数の熱伝導性中間層が場合によっては含まれていてもよい。そのような中間層には、適切なエラストマー材料と、所望の熱伝導率を達成するための無機充填剤層が含まれていてよい。好適なエラストマー材料の例としては、有機ゴムたとえば、エチレン/プロピレンジエン、融着温度での分解に抵抗性を有する強化有機ゴム、各種のコポリマー、ブロックコポリマー、コポリマーおよびエラストマーのブレンド物などが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。いずれのエラストマーまたは樹脂も、熱酸化安定性を有する、すなわちその融着器部材の操作温度での熱分解に対して抵抗性があるのが望ましい。したがって、融着器部材の操作温度において分解に対して抵抗性のある有機ゴムを使用するのがよい。そのようなものとしては、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、クロロブチルゴム、エチレンプロピレンターポリマーゴム(EPDM)、ブタジエンゴム、エチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、ブタジエン/アクリロニトリルゴム、エチレンアクリルゴム、スチレン/ブタジエンゴムなど、または少なくとも融着器部材の操作温度においてゴムを熱的に安定化させる添加剤を用いて強化された前述のゴムが挙げられる。
中間層に適切なエラストマー材料の例としては、シリコーンゴム、フルオロシリコーン、シロキサンなどが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。好適なシリコーンゴムとしては、室温加硫(room temperature vulcanization、RTV)シリコーンゴム;高温加硫(high temperature vulcanization、HTV)シリコーンゴム、および低温加硫(low temperature vulcanization、LTV)シリコーンゴムを挙げることができる。それらのゴムは公知であって、商品として容易に入手可能であり、例えば、シラスティック(SILASTIC(登録商標))735ブラックRTVおよびシラスティック(SILASTIC(登録商標))732RTV(いずれも、ダウ・コーニング社(Dow Corning)製);および106RTVシリコーンゴムおよび90RTVシリコーンゴム(いずれも、ゼネラル・エレクトリック社(General Electric)製)などが挙げられる。シリコーン材料のさらなる例としては、ダウ・コーニング社のシラスティック(SILASTIC(登録商標))590および591、シルガード(Sylgard)182、およびダウ・コーニング806A樹脂が挙げられる。その他のシリコーン材料としては、フルオロシリコーン、例えばノニルフルオロヘキシル、およびフルオロシロキサン、例えばDC94003およびQ5−8601(いずれも、ダウ・コーニング社から入手可能)が挙げられる。ダウ・コーニング社から入手可能な、シリコーン適合性コーティング(silicone conformable coatings)、例えばX3−6765を使用することも可能である。その他の好適なシリコーン材料としては、シロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン)、例えばフルオロシリコーン、ジメチルシリコーン、液状シリコーンゴム、例えば、ビニル架橋された加熱硬化可能なゴム、またはシラノール室温架橋物質などが挙げられる。好適なシリコーンゴムは、たとえば、ワッカー・シリコーンズ社(Wacker Silicones)、ダウ・コーニング社、ジーイー・シリコーンズ社(GE Silicones)、およびシンエツ社(Shin-Etsu)からも入手することが可能である。
そのような中間層のための適切な熱的および機械的性質を有する典型的な材料としては、たとえば高温加硫性(high temperature vulcanizable)(「HTV」)材料、液状シリコーンゴム(liquid silicone rubbers)(「LSR」)および室温加硫性(room temperature vulcanizable)(「RTV」)の熱伝導性を有する(例えば、0.59Wm−1−1)シリコーンエラストマーが挙げられるが、それらには場合によっては、充填剤物質が含まれていてもよい。充填剤を説明する例としては、金属酸化物たとえば、アルミナ、シリカ、炭化ケイ素、窒化ホウ素などが挙げられる。シリコーンエラストマーは、約2〜10mm(半径)の厚みを有しているのがよい。HTVは、鎖上にメチル置換基(OSi(CH)のみを有する単純なポリジメチルシロキサン(「PDMS」)か、または鎖上にいくつかのビニル基(OSi(CH=CH)(CH))を有する同様の物質かのいずれかであってよい。いずれの物質もペルオキシド硬化によって架橋を生成する。LSRは通常、一つはいくつかのビニル置換基を有し、他の一つはいくつかのヒドリド置換基を有する、二つのタイプのPDMSからなる。それらは別々に保管して、成形の直前に混合する。一方の成分の中の触媒が、一方のタイプの鎖中のヒドリド基(OSiH(CH))を、他方のタイプの鎖中のビニル基に付加させて、架橋を起こさせる。
融着器部材の層、たとえばコア基材と外側層との間の層、コア基材と中間層との間の層、または中間層と外側層との間の層の間の接着力を向上させるために、接着層がさらに含まれていてもよい。好適な接着層としてはシランカップリング剤が挙げられるが、これに限定される訳ではない。たとえば、融着器部材のコアとフルオロエラストマー表面層に接着剤が含まれていてもよく、特に、例えば米国特許第5,049,444号に含まれているような、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンのコポリマーと、少なくとも20重量パーセントの、少なくとも1種の有機官能性シランと活性化剤とを含むカップリング剤とを含むシラン接着剤を使用してもよい。さらに、より分子量の高いヒドロフルオロエラストマー、例えばバイトンGF(VITON GF)の場合には、その接着剤は、米国特許第5,332,641号に記載されているように、溶媒溶液中で、式で表されるアミノシランと共にFKMヒドロフルオロエラストマーから形成されていてもよい。
コア部材に所望の層を塗工してから、そのエラストマー物質を硬化させる。たとえば対流オーブン乾燥法、輻射熱乾燥法など、当業者に公知の各種の硬化方法のいずれを使用してもよい。
いくつかの実施態様においては、本明細書に記載の融着器部材または画像定着部材には、自己修復性物質を含む複合材料コーティング層が含まれる。本明細書に記載する「自己修復」という用語は、例えば、マイクロクラック、ボイドなどが生成した場合に、化学反応または重合によって画像形成定着部材の所望の機能および性質、例えば機械的性質および離型性能を保持し、それ自体で再生または補修する、物質の能力を指している。各種適切な物質を、融着器部材の所望の層に組み入れて、自己修復性能を与えることができる。そのような物質は、それによって、例えば機械的応力などによって、その物質を活性化させることにより自己修復することが可能な層を与えることができる。例えば、外側層の中に組み入れられた自己修復性物質は、構造的欠陥などが原因のマイクロクラックを固定して、残存トナーからの汚染を緩和させるような、自己離型特性のようなメリットを与えることができる。また別な例においては、中間層の中に組み入れられた自己修復性物質は、構造的な欠陥などが原因のボイドまたはマイクロクラックを固定して、機械的または熱的応力による圧縮疲労を防止することにより機械的性質を維持するという利点を与えることができる。したがって、自己修復性物質およびその性質は、融着器部材または定着部材の寿命を延ばし、画像品質を改良し、保守の必要性を低減させるのに役立つ。
いくつかの実施態様においては、自己修復性物質には、モノマー、オリゴマー、またはプレポリマーが含まれていてよく、それらは、活性化されると、先に述べたような、より高い機械的強度および所望の性能特性を有する材料を与えることができる。融着器部材の組立てまたは性能に悪影響が出ないように、本明細書に記載の修復性物質は典型的には、ナノ−カプセルまたはマイクロ−カプセルの中に含まれる。修復性物質を充填したカプセルを、融着器の複合材料層の中に分散させる。融着器部材コーティングの中でたとえば圧力またはクラックのような機械適応力が引き金になって、カプセルのいくつかが破裂して、修復性物質を送り出し、より高い機械的強度と所望の性能特性を有するポリマーを形成することによって、融着器部材の層を補修する。その修復プロセスを容易とするために、重合開始剤または触媒を含ませておいて、それらの修復性物質の化学反応または重合を活性化または促進させてもよい。触媒を、融着器部材コーティングの内部全体に分散させておいてもよい。別な方法として、カプセルの表面上に触媒を埋め込んでおくこともできる。
いくつかの実施態様においては、マイクロカプセルの中に封入された自己修復性物質を、融着器部材のいずれの層に含ませておいてもよい。たとえば、融着器部材の外側層がナノカプセルまたはマイクロカプセルの中に封入された自己修復性物質を含んでいてもよいし、融着器部材の中間層がナノカプセルまたはマイクロカプセルの中に封入された自己修復性物質を含んでいてもよい。所望により、外側層と中間層の両方が、ナノカプセルまたはマイクロカプセルの中に封入された自己修復性物質を含んでいてもよい。ナノカプセルまたはマイクロカプセルは、休止状態の間には自己修復性物質を貯蔵しているだけではなく、ホスト材料の中で損傷が起きたときにはカプセルが破裂して自己修復プロセスのための機械的な引き金として作用する。たとえば、図2に見られるように、加圧ロールによる圧力や融着器101の摩耗によって圧力がかかると、カプセル103が強制的に破裂し、それによって自己修復性物質102が放出し、それがホストのポリマーマトリックスと反応することができる。別な方法としては、融着器101の層の中に埋め込まれた触媒104の存在下に活性化されることによって、その放出された修復性物質がそれ自体と反応する。
場合によっては、自己修復性物質と反応することが可能な触媒または他の化合物を存在させてもよい。そのような触媒または他の化合物は、たとえば、融着器の層の中に埋め込まれていたり、カプセルの表面上に埋め込まれていたり、あるいはナノカプセルまたはマイクロカプセルの中に封入されていたりしてもよい。いくつかの実施態様においては、機械的応力またはクラックが引き金となり、それによってカプセルが修復性物質を放出し、次いでそれが埋め込まれた触媒と反応して重合反応を起こさせるように設計されていてもよい。そのような化学反応または重合反応によって、融着器の所望の機能を回復させたり、あるいはクラックが起きた部分の損傷を補修したりすることができる。別な方法として、いくつかの実施態様においては、触媒を、場合によってはナノカプセルまたはマイクロカプセルの中に封入することもできる。そのような場合、カプセルが破裂すると、触媒が放出されて、次いで自己修復性物質と反応することができる。
いくつかの実施態様においては、修復性物質は、それ自体またはホストのマトリックスポリマーと化学反応したり、重合したりすることができる。適切な修復性物質としては以下のものが挙げられる(これらの限定される訳ではない):i)バイトン(VITON)タイプのフルオロエラストマーと反応することが可能なアミノ官能性ポリシロキサンプレポリマー(金属酸化物触媒を利用して、修復硬化を促進させてもよい);ii)シラングラフトフルオロエラストマー(金属酸化物または湿分を利用して、修復硬化を促進させてもよい);iii)硬化反応することが可能なビニル官能性ポリシロキサンプレポリマー(ラジカル開始剤化合物を利用して、修復硬化を促進させてもよい);iv)加硫性シリコーンプレポリマー、例えばビニル含有ポリシロキサンおよびヒドロシロキサン含有ポリシロキサンなど(ヒドロシリレーション重合開始剤またはヒドロシリレーション触媒、例えば白金触媒を利用して、修復硬化を促進させてもよい)。
具体的な実施態様においては、融着器部材中のフルオロエラストマーからなる外側層の中に修復性物質を組み入れてもよい。好適な修復性物質としては、アミノ官能性シロキサンプレポリマーが挙げられるが、これに限定される訳ではない。そのような物質は、放出されると、ホストのフルオロポリマーと反応することができる。修復性物質として選択することが可能な、ポリシロキサンプレポリマーの例を具体的に示せば、次式からなる群より選択される。
Figure 2009217262


ここで、RおよびRはそれぞれ置換基であり、m、n、およびpはそれぞれ、対応する成分のポリシロキサンのモル比を表している。RおよびRは、水素、1〜約20個の炭素を有するアルキル、1〜約20個の炭素を有するフルオロアルキル、約6〜約30個の炭素を有するアリール、約6〜約30個の炭素を有するフルオロアリールなどからなる群より選択することができる。
融着器部材の外側層コーティングのための修復性物質として選択することが可能なフルオロエラストマープレポリマーの具体例は、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンのコポリマー;フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびテトラフルオロエチレンのコポリマー;フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびペルフルオロ(メチルビニルエーテル)のコポリマー;フッ素化ポリオレフィン、フルオロシリコーン、ならびにペルフルオロポリエーテル、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される。フルオロエラストマープレポリマーにはさらに、ブロミド、ヨーダイド、ビニル基、およびシラン基からなる群より選択される反応性の官能性残基が含まれていてもよい。フルオロエラストマープレポリマーの具体的な例では、次式からなる反応性の官能性残基、およびそれらの混合物が含まれる。式中、RおよびRはそれぞれ1〜約10個の炭素を有するアルキルまたはフルオロアルキルであり、Rは1〜約6個の炭素を有するアルキルであり、nは1〜約10の整数である。
Figure 2009217262
そのような実施態様においては、マイクロカプセルが破裂すると、カプセルの中に保持されていたグラフト化されたバイトンが放出され、次いで湿分または熱に暴露されるとそれがマトリックスと共に重合する。
Figure 2009217262
さらなる実施態様においては、融着器部材中のシリコーンエラストマーを含有する中間層の中に修復性物質を組み入れてもよい。適切な修復性物質としては、ラジカル開始剤化合物の存在下に硬化反応をすることが可能な、ビニル官能性ポリシロキサンプレポリマーが挙げられるが、このものに限定される訳ではない。ビニル官能性ポリシロキサンの具体例は、次式およびそれらの混合物からなる群より選択される。式中、R、RおよびRはそれぞれ、水素、1〜約20個の炭素を有するアルキル、1〜約20個の炭素を有するフルオロアルキル、約6〜約30個の炭素を有するアリール、約6〜約30個の炭素を有するフルオロアリールからなる群より選択される置換基であり、ここでm、nおよびpはそれぞれ、対応する成分のモル比を表している。
Figure 2009217262
さらに、融着器部材の中間層コーティングのための修復性物質として選択することが可能な、シリコーンプレポリマーには、ビニル含有ポリシロキサンおよびヒドロシロキサン含有ポリシロキサンなどの混合物からなる、加硫可能なシリコーンプレポリマーが含まれていてよい。ヒドロシリレーション重合開始剤またはヒドロシリレーション触媒、例えば白金触媒を利用して修復効果を促進させてもよい。そのようなポリシロキサンプレポリマーの具体例は、次式およびそれらの混合物からなる群より選択される。式中、R、RおよびRはそれぞれ、水素、1〜約20個の炭素を有するアルキル、1〜約20個の炭素を有するフルオロアルキル、約6〜約30個の炭素を有するアリール、約6〜約30個の炭素を有するフルオロアリールからなる群より選択される置換基であり、ここでm、nおよびpはそれぞれ、対応する成分のモル比を表している。
Figure 2009217262
ナノカプセルまたはマイクロカプセルの直径および表面モルホロジーが、カプセルの破裂挙動に顕著な影響を与える。マイクロカプセルは加工の際に損傷を受けずにとどまるだけの十分な強さを有していながらも、機械的応力の作用が引き金となったときには破裂するのがよい。いくつかの実施態様においては、マイクロカプセルは、中程度の強さのマイクロカプセルシェルを有しながらも、融着器のコーティング材料に対しては強い接着強さを示してもよい。いくつかの実施態様においては、カプセルが、たとえば、貯蔵寿命を長くするために、封入された(液状の)修復性物質の漏れや拡散に対する抵抗性を長期間にわたって有しているのがよい。いくつかの実施態様においては、たとえば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミドなどからなる好適な壁面を有するカプセルをベースとした系を用いて、それらの特性を組み合わせて有するようにすることができる。
カプセル化技術およびカプセル化プロセスについては、多くの科学文献および特許文献が存在している。たとえば、マイクロカプセル化については、以下の文献に詳細な記述がある:「マイクロカプセル・プロセッシング・アンド・テクノロジー(Microcapsule Processing and Technology)」(アサジ・コンドウ(Asaji Kondo)著、1979、マーセル・デッカー・インコーポレーテッド(Marcel Dekker, Inc.):「マイクロカプセル・アンド・マイクロエンキャプシュレーション・テクニクス(Microcapsules and Microencapsulation Techniques)」(ヌイエス・データ・コーポレーション(Nuyes Data Corp.)、ニュージャージー州パークリッジ(Park Ridge, N. J.)、1976)。カプセル化の例としては、化学的方法、例えば界面重合法、現場(in-situ)重合法、およびマトリックス重合法、ならびに物理的方法たとえば、遠心押出し法、相分離法、および振動によるコア−シェルカプセル化法などが挙げられる。界面重合のために使用できる物質としては、ジアシルクロリドまたはジアシルイソシアネートと、ジ−アルコールもしくはポリ−アルコール、アミン、ポリエステルポリオール、ポリウレア、およびポリウレタンなどとの組合せが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。現場重合のために有用な物質としては、ポリヒドロキシアミドと、アルデヒド、メラミン、または尿素およびホルムアルデヒドなどが挙げられるが、これらに限定される訳ではない。
いくつかの実施態様においては、そのマイクロカプセルが実質的に球状の形状であって、20ナノメートル〜約250ナノメートル、約0.25マイクロメートル〜約5マイクロメートル、または約5マイクロメートル〜約20マイクロメートルの平均直径を有していてよい。マイクロカプセルには、約70%〜約95重量%、例えば約83%〜約92重量%の修復性物質、または他の充填物質が含まれていてよい。したがって、マイクロカプセルが、マイクロカプセルおよびその充填内容物の全凝集物重量の約5%〜約30重量%、例えば約8%〜約17%、または約1%〜約10%を占める。マイクロカプセルのシェル壁の厚みは、約10nm〜約250nm、例えば約20nm〜約200nmであってよい。この範囲のシェル厚みを有するマイクロカプセルは、取扱いおよび製造において破損されない十分な堅牢性を有している。製造の際に、マイクロカプセル材料のナノ粒子が、マイクロカプセルの表面上に形成され、それによって粗い表面モルホロジーが得られる。表面モルホロジーが粗いことによって、例えば、マイクロカプセルがポリマー中に埋め込まれたときに機械的な接着性が向上し、それによって、潤滑メカニズムとしての性能が改良される。
以下において実施例を記述し、本発明を実施する際に使用することが可能な各種の組成物および条件を説明する。すべての割合は、特に断らない限り、重量基準である。しかしながら、本発明の開示は、各種のタイプの組成物を用いて実施することが可能であり、また、上述の開示に従って、および以後において記載するようにして、各種の用途を有することが可能であるということは明らかであろう。
修復性物質を含むマイクロカプセルは、各種の慣用される手段、または当業者には自明の各種のその他の方法、例えば、水中油型エマルションでの現場重合を用いたカプセル化などによって調製することができる。定着部材の自己修復層は、所望のコーティング層を与えるような、各種の慣用される手段、または当業者には自明の各種のその他の方法によって調製することができる。
マイクロカプセルを組み入れた定着部材は、以下の手順に従って調製する。コーティングされた融着器ロールは、バイトン(VITON)ゴムとAO700硬化剤(N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ユナイテッド・ケミカル・テクノロジーズ・インコーポレーテッド(United Chemical Technologies, Inc.)から入手可能)との層を金属基材の上にコーティングすることにより製造する。その融着器ロールの基材は、直径約3インチ(76.2mm)、長さ16インチ(406.4mm)の、円筒状のアルミニウム融着器ロールコアであって、米国特許第5,332,641号の記載に従って、脱脂、グリットブラスト処理、脱脂、そしてシラン接着剤を用いて被覆する。エラストマー層は、バイトン(VITON(商標))ポリマーおよびAO700硬化剤をメチルイソブチルケトン中に2〜10pph(parts per hundred)で含む、溶媒溶液/分散体から調製する。この溶液に、5〜20pphのレベルでアミノ官能性ポリジメチルシロキサンオイルの自己修復性物質を含むマイクロカプセルを添加した。その懸濁液を3インチ(76.2mm)の円筒状ロールの上に、公称厚み約10〜12ミル(254μm〜304.8μm)になるようにスプレーする。次いでそのコーティングされた融着器部材を対流オーブンの中で硬化させる。
1 融着器ロール、2 外側表面、4 ベース部材、6 加熱要素、8 加圧ロール(バックアップロール)、12 基材、14 トナー画像、16 硬質ポリマー基材、17,19 送出しロール、18 表面層、20 油溜め、22 (ポリマー性)離型剤、24 調節装置、101 融着器、102 自己修復性物質、103 カプセル、104 触媒。

Claims (2)

  1. 画像定着部材であって、
    基材と、
    前記基材の上の任意の中間層と、
    前記中間層の上の最外層と、を含み、
    前記中間層および前記最外層の内の少なくとも一層が、ナノカプセルまたはマイクロカプセルの中に封入された修復性物質を含み、前記修復性物質が、前記画像定着部材の機能を維持することが可能である、画像定着部材。
  2. 画像定着部材を形成するためのプロセスであって、
    基材の上に最外層と、場合によっては中間層とを塗工する工程を含み、
    前記中間層および前記最外層の内の少なくとも一層が、ナノカプセルまたはマイクロカプセルの中に封入された修復性物質を含み、前記修復性物質が、前記画像定着部材の機能を維持することが可能である、画像定着部材を形成するためのプロセス。
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