JP2009207491A - 単純ヘルペスウイルスに対するアプタマー - Google Patents

単純ヘルペスウイルスに対するアプタマー Download PDF

Info

Publication number
JP2009207491A
JP2009207491A JP2009024478A JP2009024478A JP2009207491A JP 2009207491 A JP2009207491 A JP 2009207491A JP 2009024478 A JP2009024478 A JP 2009024478A JP 2009024478 A JP2009024478 A JP 2009024478A JP 2009207491 A JP2009207491 A JP 2009207491A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
aptamer
rna
hsv
base sequence
seq
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2009024478A
Other languages
English (en)
Other versions
JP5610459B2 (ja
Inventor
Kumar Penmeccha
クマール ペンメッチャ
Chandra Bose Gopinath Subash
チャンドラ ボウズ ゴビナト スバシュ
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Original Assignee
National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST filed Critical National Institute of Advanced Industrial Science and Technology AIST
Priority to JP2009024478A priority Critical patent/JP5610459B2/ja
Publication of JP2009207491A publication Critical patent/JP2009207491A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5610459B2 publication Critical patent/JP5610459B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Investigating Or Analysing Biological Materials (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Pharmaceuticals Containing Other Organic And Inorganic Compounds (AREA)

Abstract

【課題】単純疱疹ヘルペスウイルス(HSV-1)を標的とするアプタマーを取得し、HSV-1に対して有効でかつ副作用のない抗ウイルス剤、及び該ウイルス検査薬を新たに提供する。
【解決手段】HSV-1単純疱疹ヘルペスウイルス(HSV-1)のgDプロテインに結合能を有するRNA分子アプタマーをSELEX法を用いて作成するとともに、さらにこれは短縮化してアプタマーとする.このアプタマーは、HSV-1に対し特異的であり、該ウイルスの宿主細胞への侵入を阻害する。
【選択図】なし

Description

本発明は、単純疱疹ヘルペスウイルス(HSV-1)のgDプロテインに結合能を有する安定なRNA及び該RNAを用いた、上記単純疱疹ヘルペスウイルスに対する抗ウイルス剤および検査薬に関する。
Herpess implex virus(HSV、単純疱疹へルペスウイルス)はI型(HSV-1)とII型(HSV-2)がある。I型による感染症は,通常は,唇の辺縁部あるいは外鼻孔の水疱発疹を特徴とし、II型は性器にこのような発疹を生じる。I型(HSV-1)とII型(HSV-2)の遺伝子配列は良く似ており、50−70%の相同性がある。また、いくつかのエピトープ(抗原決定基)ではI型とII型の間で交叉反応を生じる。宿主細胞への侵入の際に働く4つの糖タンパク質、つまり、gD,gB,gH,gLが存在し、gCとgBが細胞表面のプロテオグリカンに結合した後に続いて作用する。これらの糖タンパク質のうち、gDは受容体への結合と細胞内への侵入の際に必要である。受容体には2つあり、HSVの侵入を仲介するHVEMとnectin1である。これらの受容体はtumor necrosis factor(腫瘍壊死因子)ファミリーに属し、gDタンパク質のN末端領域を認識する(非特許文献1)。I型とII型のgDタンパク質のアミノ酸配列は良く似ており、84%の相同性がある(図1)。
HSV-1gDタンパク質の結晶構造および受容体HveA(HVEMとも呼ばれる)との複合体の結晶構造が決定されている(特許文献2、3)。これによると、HSV-1gDタンパク質の56残基から184残基に至る構造はVの形をしたIg・foldをしており、細胞表面接着分子に共通した構造である。N末端1-37残基はヘアピン構造をとり、HVEMとの結合を仲介し、gDのectodomainのC末端の(260−316)と同様HSVの侵入に関わる(図2)。275-300残基のinsertion/deletion実験では、HSVの侵入を妨げると報告されている(非特許文献4,5,6)。さらに、gDのectodomainは変わりやすい構造をとり、受容体との結合に合わせやすい構造である。特にTrp294は受容体との結合に大きく関与している役割をしていると思われる。以上のようにgDタンパク質のN末端、C末端は受容体との結合に重要な役割をしている。
一方、アプタマーとは、機能性核酸のことであり、無数の核酸ライブラリーの中から、「SELEX」と呼ばれる方法、つまり、選択、増幅の過程を繰り返す方法により標的化合物に特異的に結合するアプタマー(核酸)を取得することができる。アプタマーの高い識別能から、診断用化合物として利用されてきた経緯がある。抗体と類似の機能をもつが、標的化合物として、イオンのような小さいものから、ウイルスのような巨大複合体まで対象となるので、抗体よりも利用範囲が広い(非特許文献7,8,9)。このうちのいくつかのアプタマーは、ウイルスの表面タンパク質を標的として取得されている。
これには、HIV(Tat,Rev,reverse transcriptase,nucleocapsid protein,gp120,Gag,and integrase),ヒトT-cell leukemia virus type-1(Rex and Tax),B型およびC型肝炎ウイルス(lRES,NS3,and RNA polymerase),およびネコimmunodeficiency virus(reverse transcriptase)などがある。また、ウイルス全体を標的とするものとして、ヒトインフルエンザウイルス、Cytomegalovirus、Rous sarcoma virusなどのアプタマーがある。これらはin vitro,in vivoにおいて抗ウイルス作用をもつことが確認されている(非特許文献10、11)。本発明者はインフルエンザA(H3N2)およびBのHAに対するアプタマーを取得し、インフルエンザが細胞表面に結合するのを妨げる作用をもつことを報告し、このアプクマーは他の型のHAをも識別することも示した(非特許文献10)。
Connolly, S.A., Landsburg, D.J., Carfi, A., Wiley, D.C., Eisenberg, R.J. and Cohen, G.H. 2002. Strcuture-based analysis of the herpes simplex virus glycoprotein D binding site present on herpesvirus entry mediator HveA (HVEM). J. Virol. 76, 10894-10904. Carfi, A., Willis, S. H., Whitbeck, J.C., Krummenacher, C., Cohen, G.H., Eisenberg, R.J. and Wiley, D.C. 2001. Herpes Simplex Virus glycoprotein D bound to the human receptor HveA. Molecular Cell 8, 169-179. Krummenacher, C., Supekar, V.M., Whitbeck, J.C., Lazear, E., Connolly, S.A., Eisenberg, R.J., Cohen, G.H., Wiley, D.C. and Carfi, A. 2005. Structure of unliganded HSV gD reveals a mechanism for receptor-mediated activation of virus entry. EMBO J. 24, 4144-4153. Chiang, H-Y., Cohen, G.H. and Eisenberg, R.J. 1994. Identification of functional regions of herpes simplex virus glycoprotein gD by using linker-insertion mutagenesis. J. Virol. 68, 2529-2543. Milne, R.S.B, Hanna, S.L., Rux, A.H., Willis, S.H., Cohen, G.H. and Eisenberg, R.J. 2003. Functionof herpes simplex virus type 1gD mutants with different receptor-binding affinities in virus entry and fusion. J. Virol. 77, 8961-8972. Zhou, G., Avitabile, E, Campadelli-Fiume, G. and Roizman, B. (2003) The domains of glycoprotein D required to block apoptosis induced by herpes simplex virus 1 are largely distinct from those involved in cell-cell fusion and binding to nectin 1. J. Virol. 77, 3759-3767. Jenison, R.D., Gill, S.C., Pardi, A., and Polisky, B. 1994. High-resolution molecular discrimination by RNA. Science 263, 1425-1429. Tombelli, S., Minunni, M., and Mascini, M. 2005. Analytical applications of aptamers. Biosens. Bioelectron. 20, 2424-2434. Chu, T.C., Marks, J.W. III., Lavery, L.A. , Faulkner, S., Rosenblum, M.G., Ellington, A.D., and Levy, M. 2006. Aptamer: Toxin conjugates that specifically target prostate tumor cells. Cancer Res.66, 5989-5992. Gopinath, S.C.B., Misono, T., Kawasaki, K., Mizuno, T., Imai, M., Odagiri, T., and Kumar, P.K.R. 2006a. An RNA aptamer that distinguishes between closely related human influenza viruses and inhibits hemagglutinin-mediated membrane fusion. J. Gen. Virol. 87, 479-487. Gopinath, S.C.B., Sakamaki, Y., Kawasaki, K. and Kumar, P.K.R. 2006b. An efficient RNA aptamer against human influenza B virus hemagglutinin. J. Biochem. 139, 837-846. Kumar, P.K.R., Machida, K., Urvil, P.T., Kakiuchi, P.N., Vishnuvardhan, D., Shimotohno, K., Taira, K., and Nishikawa, S. 1997. Isolation of RNA aptamers specific to the NS3 protein of hepatitis C virus from a pool of completely random RNA. Virology 237, 270-282. Kumarevel, T.S., Gopinath, S.C.B., Nishikawa, S., Mizuno, H., and Kumar, P.K.R. 2004. Identification of important chemical groups of the hut mRNA for HutP interactions that regulate the hut operon in Bacillus subtilis. Nucleic Acids Res. 32, 3904-3912. Gopinath, S.C.B., Balasundaresan, D., Akitomi, J. and Mizuno, H. 2006c. An RNA aptamer that discriminates bovine factor IX from human factor IX. J. Biochem. 140, 667-676.
本発明は、HSV-1を標的とするアプタマーを取得し、HSV-1に対して有効でかつ副作用の抗ウイルス剤、及び該ウイルス検査薬を新たに提供しようとするものである。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究の結果、HSV-1のエクトドメインgDタンパク質に着目し、該gDドメインに高度に親和性を有し特異的に結合するアプタマー(以下、アプタマー1という場合がある。)を単離することに成功した。このアプタマーの抗ウイルス作用を試験した結果、HSV-1の宿主細胞の侵入を防ぎ、抗ウイルス作用を有すること、HSV-1には結合するがHSV-2には結合しないこと、宿主細胞の受容体には結合しないことを確認し、HSV-1に対する抗ウイルス剤あるいはHSV-1の検査薬として有用であることを見いだすとともに、さらに、アプタマーRNAの短縮化、構成塩基の変換によるgDドメインに対する結合活性の向上、並びに修飾塩基による置換及びアプタマーRNA’末端のインバーストデオキシチミジン(idT)あるいはポリエチレングリコール(PEG)による修飾によってリボヌクレアーゼ耐性をもたせるにも成功し、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)配列番号1または28に示す塩基配列を含むか、あるいは該塩基配列において、1又は数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を含み、かつHSV−1のgDドメインに対し結合能を有することを特徴とするアプタマーRNA。

(2)配列番号2〜6及び27のいずれかで示される塩基配列からなるか、あるいは該塩基配列において、1又は数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を含み、かつHSV−1のgDドメインに対し結合能を有することを特徴とするアプタマーRNA。

(3)配列番号2〜5及び27のいずれかで示される塩基配列において、これら塩基配列中、以下の共通配列における9番目のAがUに置換されている塩基配列からなるか、あるいは該置換塩基配列において、1又は数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を含み、かつHSV−1のgDドメインに対し結合能を有することを特徴とするアプタマーRNA。

CACGAGAGAG GUCGUCCCCA GGGGAGAACU CGUGC

(4)アプタマーRNAが、化学修飾されたヌクレオチドを有することを特徴とする、上記(1)〜(3)のいずれかに記載のアプタマーRNA。

(5)ヌクレオチドにおけるリボース部位の2’位がフルオロ基(2’-F)またはメトキシ基(2’-OMe)により修飾されているか あるいは水素で置換されている(2’-deoxy)ことを特徴とする、上記(4)に記載のアプタマーRNA。

(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のアプタマーRNAが、その3’および/または5’末端がインバーストデオキシチミジン(idT)あるいはポリエチレングリコール(PEG)により修飾されていることを特徴とするアプタマーRNA。

(7)配列番号7に示す塩基配列を含むか、あるいは該塩基配列において、1又は数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を含み、かつHSV−1のgDドメインに対し結合能を有するアプタマーに変換可能なDNA。

(8)配列番号8〜12及び29のいずれかで示される塩基配列からなるか、あるいは該塩基配列において、1又は数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を含み、かつHSV−1のgDドメインに対し結合能を有するアプタマーに変換可能なDNA 。

(9)配列番号8〜12及び29のいずれかで示される塩基配列において、これら塩基配列中、以下の共通配列における9番目のAがTに置換されている塩基配列からなるか、あるいは該置換塩基配列において、1又は数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を含み、かつHSV−1のgDドメインに対し結合能を有するアプタマーに変換可能なDNA。

CACGAGAGAG GTCGTCCCCA GGGGAGAACT CGTGC

(10)上記(7)〜(9)のいずれかに記載のDNAと相補の塩基配列を有するDNA。

(11)上記(7)〜(9)のいずれかに記載のDNAと、その相補のDNAがハイブリダイズした2本鎖DNA。

(12)上記(1)〜(3)のいずれかに記載のアプタマーRNAと相補の塩基配列を有するRNA。

(13)上記(1)〜(6)のいずれかに記載のアプタマーRNAを有効成分として含有することを特徴とするHSV−1検査薬。

(14)上記(1)〜(6)のいずれかに記載のアプタマーRNAを有効成分として含有することを特徴とするHSV−1に対する抗ウイルス剤。
本発明のアプタマーは、抗HSV-1作用を有する。この作用は、HSV-1の宿主細胞との膜融合を介して生じる細胞内侵入に関与するgDドメインに対し特異的に結合し、HSV-1の細胞内侵入を妨げることに起因しており、細胞の受容体には影響を及ぼさない。したがって、本発明のアダプターは、副作用もなく、アプタマーは抗HSV-1剤として極めて有用である。また、HSV-1とHSV-2はその遺伝子配列が近似しており、従来の抗体検査薬ではしばしば交叉反応が生じ、正確にHSV-1のみを検出できない。これに対して本発明のアプタマーはHSV-1のみ認識し、HSV-2に対しては結合せず、両者を識別可能であるので、この点でHSV-1の検査薬としても優れている。
さらに、本発明によれば、アプタマーRNAの構成塩基を変換することによりgDドメインに対する結合能が向上し、また、化学修飾ヌクレオチドによる置換、あるいはその末端のインバーストデオキシチミジン(idT)あるいはポリエチレングリコール(PEG)による修飾によってリボヌクレアーゼ耐性が付与され、その効力をさらに増大させることも可能であり、また、該アプタマーを短縮化することにより、その生産効率を向上することも可能である。
以上の点から、本発明のアプタマーは、特に抗HSV-1剤としてリード化合物になりうるものであって、その医薬開発等において大いに貢献するものである。
HSV−1及びHSV−2の各gDタンパク質のアミノ酸配列のホモロジーを示す図である。 gD−HveA複合体(a)及び該HveA受容体不存在下でのgDタンパク質(b)の結晶構造リボンダイアグラムである。 アプタマー1及びアプタマー5の2次構造モデルを示す図である。 アプタマー1及び5を2’フルオロ化した場合のHSV−1結合能を試験した結果を示す図である。 アプタマー1のどのサイトがgD結合部位であるかどうかを同定するためにリン酸基修飾による干渉解析を行った結果を示す電気泳動図である。 図3の結果から予想されるアプタマー1におけるリン酸基干渉部位を示す図である。 mini−1アプタマーの2次構造モデルを示す図である。 mini−2アプタマーの2次構造モデルを示す図である。 mini−1アプタマーとmini−2アプタマーのgDタンパク質に対する結合能を試験した結果を示すグラフである。 In-line probing法によりmini−2アプタマー−gD複合体の開裂パターンを解析した結果を示す電気泳動図である。 mini−2アプタマーの2次構造上の開裂位置を示す図である。 アプタマー1についてBoundary解析を行った結果を示す電気泳動図である。 mini−3アプタマーの2次構造モデルとそのpseudoknot様構造を示す図である。 アプタマー1についてリボヌクレアーゼによる加水分解部位を解析した結果を示す電気泳動図である。 mini−3アプタマーのgDタンパク質に対する結合能を試験した結果を示すグラフである。 本発明の各アプタマーの抗HSV−1活性及び細胞内毒性を試験した結果を示すグラフである。 HV1-41、HV1-41-II、HV1-41-Va、HV1-41-Va1アプタマーの2次構造モデルを示す図である。このうちHV1-41は、置換部位と結合能を加えた図であり、HV1-41とHV1-41-IIの下線付き残基は置換した残基である。HV1-41-VaとHV1-41-Va1の太字の残基は2’-OMe誘導体である。 HV1-41-IIとHV1-41-Va1アプタマーのgDタンパク質との結合に関するフィルター結合分析図である。 2%血清中でのHV1-41-IIとHV1-41-Va1アプタマーとの安定性の比較結果を示すゲルシフト分析電気泳動図である。 2%血清中でのHV1-41-Va1とHV1-41-Va1-idTアプタマーとの安定性の比較結果を示すゲルシフト分析電気泳動図である。 HV1-41-Va1-idTアプタマーの2次構造モデルを示す図である。
本発明のアプタマーは、単純疱疹ヘルペスウイルス(HSV-1)のgDドメインに結合能を有する。
本発明のアプタマーは、SELEX法により得られた24クローン由来のものであって、その一方は、少なくとも配列番号1または28に示される塩基配列を含むRNAを包含する。さらに具体的なアプタマーRNA分子は、例えば、配列番号2〜5あるいは27に示される塩基配列からなるRNAが挙げられる。これら配列番号2〜5に示されるRNAは、上記配列番号1の塩基配列を共通に有し、さらに、配列番号27に示される塩基配列からなるRNAをも含めて、これらRNAは配列番号28の塩基配列を有する点で共通している。また、この他のアプタマーは、配列番号6に示される塩基配列からなるRNAである。
また、本発明のアプタマーには、上記配列番号2〜5あるいは27のRNA分子における共通配列(配列番号28)部分の9番目のアデニン塩基(A)をウラシル塩基(U)に変更したRNAを含む。これにより、上記gDドメインに対する結合活性が増大する。
一方、本発明においては、上記配列番号で示されるRNAに限らず、これらRNAと対応する配列を有する、配列番号7に示す塩基配列を含むDNA、より具体的には、例えば配列番号8〜12あるいは29に示される塩基配列からなるDNA及び該DNAにおける共通配列(配列番号28)における9番目のアデニン塩基をチミン塩基に変換したDNA、これらDNAと相補のDNA、あるいはこれら相補のDNA鎖同士が2本鎖を構成したdsDNAを包含する。さらに、上記RNAと相補の塩基配列を有するRNAも包含する。これらは それ自体慣用の遺伝子操作手段により、たやすく本発明のアプタマーRNAに変換可能であり、本発明のアプタマー製造用中間体である。また、本発明においては、本発明のアプタマーの塩基配列をヌクレオチド残基を1又は数個欠失、置換、あるいは付加させて改変したものであっても、上記gD タンパク質と結合するものであればこれを包含する。
本発明のアプタマーは、それ自体周知のSELEX(systematic evolution of ligands by
exponential enrichment)法により得られたものである。
SELEX法は、ランダム配列の核酸ライブラリの作成から出発し、標的とするタンパク質との結合性を指標に選別して、PCR増幅するサイクルを複数回繰り返すもので、これにより、標的とするタンパク質に対し高い結合能を有する核酸のみを選別することができる。上記選別及びPCR増幅はそれぞれ、自然界における「淘汰」及び「増殖」に相当し、自然界における進化を試験管内で短時間に再現させるものである。
本発明においては、配列中央の74塩基をランダム領域とするDNAライブラリー(配列番号13)を合成し、PCR増幅した後、逆転写してRNAプールとし、このRNAプールに対し、上記gDタンパク質と結合するRNAを選別、増幅し、このサイクルを複数回繰り返すことにより、該gDタンパク質に対して特異性及び結合性の高い、配列番号5および6に示されるアプタマーを得たものであり、本発明においては配列番号5に示すアプタマー(アプタマー1)をさらに短縮化して、配列番号2〜4に示されるミニアプタマーRNAを得ており、これらはいずれもgDタンパク質に対する結合能を有するが、この中でも44merのミニアプタマー3がgDタンパク質に対し特に高い結合能を有する。一方、これらはインビトロ転写法により得られているが、化学合成法により得られたより短い41merのアプタマーHV1-41(配列番号27)もgDタンパク質に対する結合能を有し、さらに該配列番号27に示される塩基配列中9番目のアデニン塩基をウラシル塩基に変換したアプタマーHV1-41-II(配列番号25)は、HSV-1のgDドメインに対する結合活性が顕著に増大するという結果が得られている。この結果から、上記配列番号27における上記アデニン塩基と対応する、配列番号2〜5のアプタマーの上記共通配列部分における9番目のアデニン塩基をウラシル塩基に置換することにより、同様にgDドメインに対する結合活性が増大すると考えられる。
本発明のアプタマーは、上記したとおり、基本的にはSELEX法により得たものではあるが、本発明においては、アプタマーの塩基配列を明らかにしており、SELEX法によらずとも、この塩基配列から本発明のアプタマーを合成することができる。これには、例えば、それ自体周知の以下の方法を用いることができる。
インビトロ転写法:合成目的のアプタマーRNAに対応する上記DNAを化学合成し、これをPCR増幅し、増幅されたDNAからRNAポリメラーゼによる転写反応によりアプタマーRNAを合成する。例えば、T7プロモータの下流側に上記DNAを連結してPCR増幅し2本鎖DNAを得て、該2本鎖DNAを鋳型として、T7RNAポリメラーゼ、およびATP、GTP、CTP及びUTPからなる該RNAポリメラーゼ基質を含む反応溶液中で、RNA伸長反応を行うことにより、アプタマーRNAを得ることができる。
この方法においては、T7プロモーター配列を含むプラスミドに上記dsDNAを連結したもの、あるいは化学合成したDNAも鋳型として用いることができる。また、上記DNAの合成においては DNA合成装置(例えば、334DNA synthesizer(Applied Biosystems社製))を使用して行うことができる。
化学合成法:RNAの合成には、リボース部位の2'水酸基の保護が必要であり、保護基として種々のアミダイトが開発されてきており、最近開発された2-cyanoethoxymethyl (CEM) 基を用いるとRNA合成時の鎖長伸長反応の効率が高くなり、100 merを超える長鎖RNAの合成も可能となる。本発明のアプタマーRNAはこのような化学合成法を用いて合成することができる。
また、このほか、上記アプタマーRNAと相補のRNAからは、RNA依存RNAポリメラーゼを使用することにより本発明のアプタマーRNAを得ることも可能である。
一方、本発明のアプタマーRNAにおいては、耐リボヌクレアーゼ耐性を付加するために、その配列中に化学修飾(modified)したヌクレオチドを有していても良い。このようなアプタマーRNAは、例えば、アプタマーRNA中のヌクレオチドのリボース部位の2’-OH基を、常法により2’-フロオロ基にまたはメトキシ基(2’-OMe)に、あるいは同リボース部位の2’位を水素に置換(2’-deoxy)することにより得られる。この化学修飾は、ピリミジンヌクレオチド部位がリボヌクレアーゼにより分解されやすいので、ピリミジンヌクレオチドに対してより有効である。
本発明においては、さらにアプタマーRNAの3’および/または5’末端をインバーストデオキシチミジン(idT)あるいはポリエチレングリコール(PEG)により修飾することもでき、これらにより、アプタマーRNAの耐リボヌクレアーゼ耐性はさらに向上し、生体中での分解による活性の低下が抑制され、生体内で有効な抗ウイルス作用を発揮させることが可能となる。
本発明のアプタマーRNAはHSV-1ウイルスの検査薬乃至検出剤として用いられる。例えば、本発明のアプタマーRNAをフルオロセイン、ローダミン、テキサスレッド等の蛍光色素で標識し、被験試料と接触、結合反応を行い、結合しなかったものを除去した後、蛍光あるいはその強度を検出、測定することにより、HSV-1ウイルスの検出、あるいはその量を測定できる。この際、例えば、標識アプタマーRNAあるいは被験試料のいずれかを固定化した基板を用いて行うことができる。
また、結合時に蛍光発光する物質を用いて、本発明のアプタマー及び被験試料のいずれかを標識して、結合時の蛍光あるいはその強度を検出、測定することにより行うことも可能である。このような蛍光色素としては、例えば、フルオロセイン、ローダミン、テキサスレッド等が挙げられる。
また、本発明においては、蛍光色素を標識せずに、HSV-1ウイルスを検出することも可能である。これには、例えば、表面プラズモン共鳴法(SPR)がある。すなわち、分子間の結合反応を、センサー表面でおこる分子間の結合時の微細な質量変化を表面プラズモン共鳴とよばれる光学現象を採用することで測定することができる。SPR法を利用した装置として、Biacore 社製BIACORE3000がある。測定はセンサーチップの金薄膜表面に本発明のアプタマーRNA及び被験試料のいずれかを周知の方法で固定化し、これに被験試料あるいはアプタマーRNAを供給し、結合反応をリアルタイムでモニタリングしながら行う。
また、本発明のアプタマーRNAは、HIV−1ウイルスにおけるgDドメインに結合して、該ウイルスの細胞内侵入を妨げる作用を有し、該作用により抗ウイルス作用を有する。しかも本発明のアプタマーRNAは細胞内毒性が極めて低く、HIV−1ウイルスに対する抗ウイルス剤として用いることができる。本発明のアプタマーRNAを抗ウイルス剤として使用するには、例えば、該アプタマーRNAを含有する液剤、クリーム剤、あるいはパップ剤等の形態として、患部に塗布、貼布する。
以下に本発明の実施例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
(1)ウイルスタンパク
組み換えHSV−1gDタンパク質は、CORTEX BIOCHEM (CA, USA)から購入した、319アミノ酸配列を発現するPichia pastorisから調製された。一方、HSV-2 gDは、Drs. Jerry P. Weir and Clement Meseda from DVP, OVRR/CBER/FDA, Rockville, MD, USAから提供された。これらの配列はpET20b (Novagen)にサブクローン化し、E. coli.sで発現させた。発現タンパク質は、Mono-Q カラムに続きニッケル樹脂によりさらに精製された。
(2)RNAランダムプールの作成
中央の74塩基をランダム領域とする一本鎖DNA(ssDNA)のライブラリーをDNA自動合成機を用いて合成してテンプレートとし、同様に、DNA自動合成機を用いて以下の配列を有するDNAを合成し、5‘プライマー及び3’プライマーとし、PCR増幅した。
〔テンプレート〕
TCTAATACGACTCACTATAGGAGCTCAGCCTTCACTGC--N74---GGCACCACGGTCGGATCCTG, (配列番号13)
なお、上記配列中の下線部分はT7プロモータ領域である。
〔5’末端プライマー〕
5’-TCTAATACGACTCACTATAGGAGCTCAGCCTTCACTGC-3’(配列番号14)
〔3’ 末端プライマー〕
5’-CAGGATCCGACCGTGGTGCC-3’(配列番号15)
PCRは、上記一本鎖DNAランダムライブラリー(1x1014molecules)、5’プライマー及び3’プライマー各0.25 μM を用いて行った。最初のライブラリーのDNA組成を維持して増幅させるため、PCRは8サイクルに限定した。
次いでT7 Ampliscribe kit (Epicentre Technologies)を用いて、インビトロでの転写を行い、増幅されたDNAライブラリーをRNAライブラリーに変換した。
(3)インビトロにおける選別
選別は、上記(2)で得られたRNAライブラリー15 μg (〜1014 RNA molecules)を用い、RNAライブラリーと上記(1)で得られた各精製タンパク質とをモル比で2:1の割合で含むRNA 結合用緩衝液 (50 mM Tris-HCl, 50 mM KCl, pH 7.5)中で行った。選別サイクルの間、タンパク質濃度は、高い親和性を有するRNAを選別するためのサイクルの後になるほど減少した。RNAは、選別サイクルの後、95℃に加熱後、安定な構造を形成させるため室温に冷却した。選別サイクルにおいては、非特異的に結合するRNAを除去するためコンペティターとしてtRNA ( E. coli,のトータルtRNA (Boehringer-Mannheim))を用いた。
RNAは、室温で10分間、上記ターゲットタンパク質とインキュベートした後、タンパク質−RNA複合体は、“Pop-top” フィルターホルダー (Nucleopore)中に固定化された予め湿されたニトロセルロース酢酸フィルター(HAWPフィルター、0.45 μm, 13.0-mm, Millipore)を通して濾過した後、上記RNA結合用緩衝液1mlで洗浄した。フィルター上に残ったRNAを溶出させ、従来法(非特許文献10、11)に従い回収した。回収されたRNAは、50 mM Tris-HCl (pH 8.0), 40 mM KCl, 6 mM MgCl2, 0.4 mM dNTPs, プライマー2.5 μM及び AMV 逆転写酵素 (Seikagaku)5Uを含む反応混合物20 μl中で逆転写された。ヌクレオチドと酵素は、変性及びアニーリングステップ(室温で10分インキュベートに引き続き、90℃で2分)の後加えられた。逆転写は、42℃で1時間行われた。
得られたcDNAはPCRにより増幅され、次の選別ラウンドにおけるRNAを得るための鋳型として用いられた。PCRによる増幅のために、逆転写後の混合物(cDNA反応産物)の 20 μl は、PCR用混合物(10 mM Tris-HCl (pH 8.8), 50 mM KCl、 1.5 mM MgCl2, 0.1% Triton X-100, Taq DNAポリメラーゼ (Takara)5U、及び各プライマー0.4 μM)80 μlで希釈された。反応混合物は、正しい分子サイズで結合する生産物を得るために、94℃70秒、55℃50秒、72℃70秒の各サイクル後に電気泳動にて検出を試みた。
PCR産物は、エタノールで沈殿させ、転写に用いた。インビトロにおける転写は、T7Ampliscribe kit (Epicentre Technologies)を用いて、37℃、3時間行った。DNase I で処理した後、8%変性ポリアクリルアミドゲルで分画された。RNAを上記ゲルから抽出してエタノール沈殿により精製した後に、定量し、次回の選別及び増幅サイクルに用いた。
(4)選別及び増幅サイクル
以下においては、RNAのHSV-1gDタンパク質に対する特異性と高い親和性を有するRNAを得るために、各選別サイクルを行った。これらサイクルにおいては、RNA:タンパク質比、コンペティター濃度及び緩衝液量についての修正を含む。
非特異的に結合するRNAの濃縮を避けるために、第3、第5、7及び第8の各世代の選別には、フィルターではなくxenobindプレート(xenopore社)を使用した。Xenobind選別のために、最初にRNA結合用緩衝液1mlあたり上記gDタンパク質5 μgで各ウエルをコートし、残りの部分をBSA (3% stock solution)でブロックした。次いで、各ウエルを洗浄し、選別に使用した。選別においては、2回目のサイクルで得たRNAプールを、90℃2分間変性させ、次いで異なる構造体の平衡を促進するため室温で10分間冷却した。
RNAプール(0.25 μM)と競合剤のtRNA(40 μM)は、上記結合用緩衝液100 μl中で混合され、BSAでコートされたウエルに2回充填し、室温(25℃)で10分間インキュベートした。結合しなかったRNAは、集められ、HSV1-gDでコートされたウエルに充填した。反応混合物は、さらに10分間インキュベートした。結合しなかったRNA分子は廃棄し、各ウエルは、上記RNA結合用緩衝液300μlで5度洗浄した。結合したRNAは7M 尿素溶液を加えて加熱することで回収し、エタノールで沈殿精製後、逆転写、PCR及びインビトロにおける転写により再生した。このサイクルを8回繰り返し、RNAプールの29%がgDタンパク質に結合するまでに濃縮された。表1に、各サイクル経過後に得られたRNAプールのHSV−gDタンパク質に対する結合試験の結果を示す。
(5)アプタマーの分析
個別のアプタマーを得るために、サイクル8で得られたPCR産物を、マニュファクチュアズプロトコールに従い、直接ベクターpCRII (Invitrogen)に連結した。DNAは、アルカリミニプレップ法により個別のクローンから分離され、DNA シーケンサー (Model 373A, ABI)で、ダイターミネータシーケンシングキット(Applied Biosystems Inc. (ABI))を用いてその塩基配列を調べた。アプタマーの2次構造は、BayesFold プログラム (version 1.01)により予想した。上記個別のアプタマーと同様に、異なる選別サイクルから得られたRNAプールの結合活性を評価するため、 [γ-32P]ATPを使用して放射性標識(ラベル)したRNAを調製し、以前報告した(非特許文献11、12,13)方法と同様のフィルター結合分析を用いて行った。
結合条件及びインビトロにおける転写条件は、RNAとgDプロテインに対するモル比(RNA 20 nM 、標的分子200 nM)をのぞき、選別におけるこれらの条件と類似した条件で行った。
フィルターは1mlの上記結合用緩衝液で洗浄し、空気中で乾燥し、放射線強度は、イメージアナライザー(BAS2500, 富士フイルム)で定量した。結合が特異的であることを確認するため、非特異的コンペティターとして、結合反応においてRNAを10倍モル過剰量加えた。さらに、結合及び識別分析は、先行記述(非特許文献14)に従い、表面プラズモン共鳴装置(SPR)でも行った。
上記取得したクローンの配列解析により、アプタマーはaptamer-1とaptamer-5の2つのクラスに分けられた。
アプタマー1及びアプタマー5は以下に示される。
ただしアンダーライン部はプライマー領域を示し、文字サイズの小さい領域は、ランダム化された核酸対応領域を示す。これら領域は連続している。
アプタマー1とアプタマー5のプール中の存在比率30%と23%であり、上記BayesFoldにより計算したこれらアプタマーの2次構造モデルは、図3に示され、フィルター結合分析によるこれらアプタマーのgDタンパク質結合能は、図4に示される。
HSV-1gDとHSV-2-gD ectodomainのアミノ酸配列は84%の相同性があるが、フィルター結合分析によれば、HSV-2-gDとの結合は見られなかった。また、BIACOREを用いたSurface Plasmon Resonance(SPR)においても、やはり結合は見られなかった。したがって、アプタマー1及び5の結合能は、HSV-1gD に特異的である。
(実施例2)
(1)安定なアプタマーの製造
選別のために使用された最初のプールは、2’-OH 基を含有するRNAを持つように調製された。すなわち、安定なRNAを製造するため、選別されたクローンは、転写工程において2’-フルオロ基で修飾されるよう調製した。2’-フルオロ基によるピリミジン位置の化学修飾は、それらの寿命を延ばすために、シチジン及びウリジンの修飾によりなされた。選別されたアプタマーは、選別プロセスにおいて使用したプライマーと同じプライマーにより増幅された。プライマーの塩基配列は以下に示される。
5’末端プライマー;5’-TCTAATACGACTCACTATAGGAGCTCAGCCTTCACTGC-3(配列番号16)
3’末端プライマー;5’-CAGGATCCGACCGTGGTGCC-3’(配列番号17)
得られたdsDNAは、T7 Durascribe kit (Epicentre Technologies)を使用して、37℃で1晩のインキュベーションを行って、インビトロ転写により安定なRNAに変換された。そして転写されたRNAは上記[0029]と同じ方法により精製された。
精製された各アプタマーの2’-F誘導体とgDタンパク質との結合実験にはFilter-binding assayを用いた。aptamer-1とaptamer-5およびそれらの2’-F誘導体のkDは、順に、235,197,104,241nmであった。各アプタマーのgDタンパク質に対する結合能は図4に示される。aptamer-1は結合能が47%(約2倍)にまで増加したが、aptamer-5では逆に減少した。
従って、この後の実験では、aptamer-1を用いた。また、比較対象のため、aptamer-1と相補的な配列をもつaptamer-1Cも利用した。
(実施例3)
(1)リン酸基修飾と干渉解析
選択したアプタマーのどのサイトがgD結合部位であるかどうかを同定するためにリン酸基修飾解析を行った。実施例1でIn vitro転写で得られたRNA(aptamer-1)を子ウシのフォスファターゼで一時間37℃で処理した後に、フェノールで抽出し、エタノールで沈殿した。RNAは[γ-32P]ATPとT4ポリヌクレオチドキナーゼでラベルし、8% polyacrylamide/7 M urea gelで電気泳動を行った。ラベルしたRNAは95℃で2分間熱して構造をほぐし、室温までゆっくり冷却して正しく折りたたまれた構造に戻した。5’末端をラベルした RNA (1100 Kcpmのカウントをもつ) を緩衝液(20 mM HEPES, pH 8.0, 1 mM EDTA, 2.5 μg tRNA)で溶かし、N-nitroso-N-ethyl-ureaで飽和した5 μlのエタノールで混合した。90°Cで2分間修飾反応し、15 μg のcarrier tRNAを加えて反応を止めた。
なお、N-nitroso-N-ethyl-ureaはリン酸基と反応し、Phosphotriesterをつくり、これはアルカリ処理により容易に加水分解できる。
上記修飾反応によりPhosphotriester化されたアプタマー(aptamer-1)はエタノール沈殿により回収した。アプタマー-gD複合体を得るため、20pMのサンプルを25 μlのselection binding緩衝液で92°Cで2分間処理して変性させ、10分かけて室温までゆっくり冷却した。複合体はnitrocelluloseフィルターを通して分離し、100 mM Tris/HCl pH 9.0の200 μl溶液で50°C、5分間処理し、アプタマーを溶出した。アプタマーを加水分解したRNA産物はエタノール沈殿により回収し、次に8% polyacrylamide/7 M ureaゲルで分離した。確認のため、アプタマーのアルカリ加水分解物とRNase T1分解物は同時に電気泳動した。ゲルを乾燥しX線照射し放射性物質を検出した。結果を図5に示す。図5における+と−は、HSV-1gD存在、非存在時のパターンである。これによれば、アプタマーの29-41残基のリン酸基がHSV-1-gDと結合に関与していること、同様に44-53残基も結合に関与していることが示唆される。予想されるアプタマー(aptamer-1)のリン酸基干渉部位を図6のsite 1およびsite 2に示す。
この結果に基づき、この領域を含む39merの小型アプタマーmini-1(配列番号1;アプタマー1の配列の19-54塩基の5’末端に“gg”、3’末端に“c”の3塩基を加えた39mer)および57merのmini-2(配列番号2;アプタマー1の配列の10-64塩基の5’末端に“gg”の2塩基を加えた57mer)を以下のテンプレートとプライマーを用いてPCRによる増幅を行い、得られたdsDNAをインビトロ転写することにより作成した。
min1 aptamer
テンプレート
5’- GGGCACGAGAGAGGTCGTCCCCAGGGGAGAACTCGTGCC -3’ (配列番号18)
プライマー
5’- AGTAATACGACTCACTATAGGGCACGAGAGAGGTCGTCCCCA -3’(配列番号19)
5’- GGCACGAGTTCTCCCCTGGGGT -3’(配列番号20)

Mini-2 aptamer
テンプレート
実施例1により得られたクローン1(アプタマー1)
プライマー
5’- AGTAATACGACTCAC TATAGGGCCTTCACTGCACGAGAGAGG -3’(配列番号21)
5’- GCCTCCAGGAGCACGA GTTCT -3’(配列番号22)
次いで得られたmini-1 aptamer及びmini-2 aptamerとHSV-1-gDとの結合を調べた。Mini-1 aptamer及びmini-2 aptamerの2次構造予測を図7、8にそれぞれ示し、これらアプタマーについてのgDタンパク質結合試験の結果を図9に示す。これらの短縮化アプタマーはいずれもHSV-1-gD に対し結合能を示したが、mini-1 aptamerの結合能は、mini-2 aptamerの結合能に比べて弱く、一方、mini-2 aptamerは元のアプタマー(aptamer-1)と同程度の結合を示した。
(2)In-Line probing
Mini-2 aptamerのHSV-1-gD結合部位を調べるためにIn-line probing法を試みた。
上記(1)で得られたmini-2 aptamerの3’末端を、32pラベルしたpCpとRNA ligase (Krol and Carbon, 1989)によりラベルした。ラベルしたmini-2 aptamer は5 mM MgCl2, 50 mM Tris-HCl (pH 8.3、25°C) 、100 mM KClを含む溶液で25°Cで40時間反応させた。
この際、タンパク質を加える場合と加えない場合に分け、ある場合はタンパク質濃度を100-300nMに変化させた。それぞれの反応後、分解産物は12% denaturing (7 M urea) PAGEで分解し、autoradiographyを行った。
In-line probing法は、Mgを加え、自然開裂する場所を解析する方法であるが、リン酸基周辺のコンフォメーションが開裂しやすい構造をとったときに開裂が生じる。HSV-1-gD結合部位ではリン酸基周辺のコンフォメーション変化が生じ、開裂パターンの変化が予想される。得られたアプタマーHSV-1-gD複合体の開裂パターンを図10に、その2次元構造上の開裂位置(矢印)を図11に示す。
これによれば、G29,G30,∪34,C38,A39,G40,A44残基の3’末端側リン酸基に開裂が見られる。特にC38の場所で強い開裂が見られ、この場所でのHSV-1-gDとの結合が示唆された。
(3)Boundary解析
分解物フラグメントとHSV-1-gDとの結合を調べ、5’末端あるいは3’末端からどの程度の長さがあれば結合するかを以下のようにして調べた。
aptamer−1の3’末端と5’末端の両方から行った。3’末端をラベルしたaptamer−1と5’末端のラベルしたルaptamer−1は10% polyacrylamide/7 M ureaゲルを用いて電気泳動した。ラベルしたこれらRNAはアルカリ加水分解緩衝液(Ambion) と3 μg のyeast RNA で95℃、15分間反応させ、部分加水分解した。反応は3M酢酸ナトリウム(pH5.2)で中和し、エタノール沈殿した。100kcpmのカウントをもつラベルしたRNAは500 nMのHSV1-gDと室温で10分間、結合用緩衝液中で反応させた。複合体はnitrocelluloseフィルターで分離し、結合した分子は7M尿素を含む緩衝液を加えて95℃、2分間反応して回収し、エタノール沈殿後10% polyacrylamide/7 M ureaゲル上にロードした。確認のため、アプタマーのアルカリ加水分解とRNase T1分解物は同時に電気泳動した。ゲルを乾燥しX線照射しautoradiographyを行った。
結果を図12に示す。3’末端ラベルでは、19番目の残基より3’末端側、5’末端では、60番目の残基より5’末端側となり、従って、19-60残基が結合に関わると示唆された。この結果より、mini-3 aptamerの塩基配列をデザインし、以下のテンプレートとプライマーを用いてPCR増幅し、得られたdsDNAをインビトロ転写することにより、mini-3 aptamerを作成した。
テンプレート
実施例1により得られたクローン1(アプタマー1)
プライマー
5’- AGTAAT ACGACTCACTATAGGGCACGAGAGAGGTCGT -3’(配列番号23) 及び
5’- CCAGGAGCACG AGTTCTC -3’(配列番号24)
作成されたmini-3 aptamerは、19-60残基を含む44merのRNA分子(including gg at 5’-end during transcription)で、その塩基配列は配列番号4に示される。このmini-3 aptamerはmini-2 aptamerよりも高い結合能をもつ(図15)。
一方、アプタマー1の2次構造の最初のモデルはBayesFoldで作成したが、これを確かめるために、リボヌクレアーゼT1による加水分解場所を解析した。この結果は、最初の2次構造モデルをサポートするものではなかった。顕著な加水分解場所は、G27,G29,G30であった。一方、single strandと予想されたG40,G42は加水分解がない、あるいはわずかな加水分解しか見られなかった(図14)。以上から、mini-3アプタマーはpseudoknot様構造(図13)をとると予想された。
(実施例4)
結合阻害解析
(1)アプタマー1と、比較としてアプタマー1C(アプタマー1と相補の配列)について、以下に示すようにCC50、IC50を求め、SIを算出した。
CC50(50%細胞毒性濃度)
培養細胞(Vero cells)はアプタマー1とアプタマー1C(アプタマー1と相補の配列)の濃度を変えながら、5%FBSを含むMEM培地及び無血清MEM培地で、それぞれ37°Cで72時間培養した。生存細胞数はトリパンブルー染色法により決定した。阻害データは、CC50(50%細胞毒性濃度)を基に濃度−応答カーブでプロットした。
IC50(50%阻害濃度)
培養したベロ細胞には、HSV-1の細胞当たり0.1 プラーク生成ユニットで (PFU)で感染する。PBSで3回洗浄後HSV-1あるいは HSV-2を含む保持剤(MEM + 2 % FBS)中で20-24時間培養した。ウイルス生成はベロ細胞の単層上のプラークを基に決定した。抗ウイルス活性はIC50で表した。
選択指数 (SI) の計算
上記試験により得られたCC50及びIC50から、SI( CC50/IC50)算出した。なお、一般的には化合物やアプタマーのSI値が10以上のとき、効き目がある抗ウイルスと評価できる。
結果を表2、図16に示す。これによれば、アプタマー1は、IC50は充分低く、抗ウイルス活性を有していることは明らかであり、他方、細胞毒性は認められず、選択指数は10を超えていた。他方、アプタマー1と相補の配列を有するアプタマー1CはIC50及びCC50とも10以上であり、選択指数は極めて低いものであった。
(2)上記(1)のIC50の測定法と同様にして、HSV−2に対する抗ウイルス活性をIC50として求めた。結果を表3に示す。これによれば、アプタマー1はHSV−2に対して抗ウイルス活性を示さず、抗ウイルス活性はHSV−1に特異的であることが明らかである。
(実施例5)
(1)アプタマーの抗ウイルス作用の解析
ウイルスと宿主細胞との間の相互作用を阻害するアプタマー能について、Aptamer-1の受容体への結合阻害、ウイルスの宿主細胞への侵入阻害について以下の方法で調べた。
(2)ウイルス吸着解析
ベロ細胞懸濁液(1 × 10-4 細胞/25 μl), HSV-1 (1 × 10-4 PFU/25 μl) とaptamer-1あるいは aptamer-1C (0.2, 2 μM)をそれぞれ氷上で3時間冷やした後に、それぞれ25 μl、但しaptamer-1及び aptamer-1Cは50 μlをそれぞれ混合し、4°Cで1時間反応させた。細胞は氷冷したリン酸塩緩衝液(PBS)で3回洗浄後、フリーのウイルスとアプタマーを除いた。細胞ペレットは氷冷PBSで10-100倍に薄めた直後に、ベロ細胞の単層に加えた。その上に、プラーク解析のために、0.5% メチルセルロースを含む試薬を加えた。結果を表4に示す。これによれば、検出されたプラーク数はアプタマーを加えなかった場合と、アプタマーを使用した場合とでほとんど差違がなく、アプタマー1は、細胞表面のウイルス受容体にはほとんど結合しないことが明らかである。
(3)ウイルス侵入解析
氷上で前もって3時間冷やした、24穴プレート中のベロ細胞単層は、HSV-1 (約100 PFU/穴) を用い、aptamer-1あるいは aptamer-1C の存在下または非存在下において4℃で1時間感染させた。氷冷PBSで3回洗浄後、ベロ細胞単層はアプタマーを含む溶液により37℃で反応させた。その0, 0.5, 1, 2, 3, 6時間後、細胞単層は40 mM クエン酸緩衝液(pH 3.0)で1分、非侵入ウイルスを不活性化する処理を行った。その上にプラーク解析のために、0.5% メチルセルロースを含む試薬を加え、2日後に侵入ウイルスをプラークとして検出した。結果を表5に示す。これによれば、アプタマー1は、特に1.0μM濃度で、出現するプラーク数が抑制されており、ウイルスの宿主細胞への侵入を阻害していることが明らかである。また、このことから、アプタマー1はgDタンパク質のC-末端に結合すると考えられる。
(4)ウイルス破壊実験
aptamer-1あるいは aptamer-1Cによる、ウイルス粒子を直接不活性化する効果を決めるために、HSV-1 (2 × 104 PFU/25 μl) を当容積のaptamer-1 あるいはaptamer-1C (10, 20 μM)で37°C、1時間処理した。混合液はアプタマー効果を無視するため100倍に薄め、ベロ細胞単層に加え、1時間室温で放置した。プラーク解析のために、0.5% メチルセルロースを含む試薬を加えた。結果を表6に示す。この結果から明らかなように、アプタマー1は、ウイルス粒子に対する直接効果はほとんどない。
(5)宿主細胞自体に対する前処理による影響
アプタマーが宿主細胞に非特異的に結合しているかどうかを決めるために、ベロ細胞単層を35mmシャーレに置き、aptamer-1 あるいは aptamer-1C (0.1, 1, 10 μM)で 37°C、1時間処理した。アプタマーを除くため、PBSで3回洗浄後、細胞単層はHSV-1 (100 PFU/皿)で1時間、室温で感染させ、出現するプラークを数えた。結果を表7に示す、これによれば、アプタマー1を使用した場合と使用しない場合とで、プラークの出現数はほとんど差がなく、アプタマー1は、Vero細胞に直接作用して、該細胞自体に耐ウイルス作用を付与するものではない。
(実施例6)
(1)In vivoにおける抗ウイルス実験
25 μl HSV-1 (2 × 105 PFU)は、1 μl RNase阻害剤の存在下で、25 μl の試料(PBS, 10 μM aptamer-1, 10 μM aptamer-1C)とそれぞれ混合した。BALB/c マウス (♀, 5-週齢, n = 3)を用い、各混合試料で膣内注射した。感染(p.i.)の3日と5日後、膣内を洗浄(100 μl/マウス)し、個々のマウスのプラーク解析を行った。ヘルペス性病変と死の記録を2週間行った。
結果を表8に示す。これによれば、PBSのみあるいはaptamer-1Cの使用によって死んだマウスはなく、この点では区別がつかなかったが、アプタマー1含有混合試料においては、マウスのプラーク数は、他と比べて減少しており、マウスを使った実験でも、Aptamer-1は抗HSV-1活性をもつことが判明した。
(実施例7)
(1)アプタマーの置換体の作製
アプタマーの結合能、安定性、アプタマー作製のコストダウンに関して最適化アプタマーを得るため、アプタマー残基の置換および修飾を行った。まず置換体の作製は、図13のpseudoknot様構造をもつアプタマーを出発材料にし、化学合成法により行った。5’末端の3個のGはインビトロ転写法による合成の際に必要であったが、化学合成法では不要なため除き、残基番号を改めて割り振りふった(図17のHV1-41(配列番号27))。実施例3において、gDタンパク質との結合が予想されたループ領域のうち、A7からG11に至る残基をそれぞれ置換したところ、A9をUに置換したHV1-41-II(図17)は結合活性が増大した。HV1-41-IIの配列を以下に示し、その2次構造モデルを図17に示す。

アプタマーHV1-41-II(配列番号25)
5’- CACGAGAGUGGUCGUCCCCAGGGGAGAACUCGUGCUCCUGG-3’
(2)安定で安価なアプタマーの製造(2’位の修飾)
RNAはリボース部位2’位に水酸基(2’-OH)をもち、特にピリミジンヌクレオチドはribonucleaseにより分解されやすいので、これを安定化するために、アプタマー(HV1-41-II)の配列(配列番号25) を基に、メトキシ基(2’-OMe)をもつシチジン、ウリジンの各アミダイトを用いて、化学合成法により、メトキシ基で修飾したアプタマーRNAを得た。また、上記アミダイトに加え、メトキシ基修飾したアデノシン、同グアノシンを用いて、アプタマーRNA(HV1-41-II-Va)のステム領域内側の塩基対ヌクレオチドのリボース部位の2位が全てメトキシ基(2’-OMe)で修飾されたアプタマーRNA(HV1-41-II-Va1)を合成し、次いで、さらに、アプタマーRNA末端のidTあるいはPEG修飾によるexonucleaseによる分解抑制効果をみるため、idT及び (CH2)12NH2修飾シチジン(シチジンのリボース5’位に修飾)を使用して、アプタマーRNA(HV1-41-II-Va1の3’-末端、5’-末端がそれぞれidT、(CH2)12NH2で修飾されたアプタマーRNA(HV1-41-II-Va1-idT)を作成した。
なお、この化学修飾RNAの作成は、受託合成会社(Chem Genes Corporation)に依頼した。
化学合成にかかるコストは、メトキシ基(2’-OMe)<水酸基(2’-OH)<フルオロ基(2’-F)の順に高価になるので、メトキシ基(2’-OMe)の利用は安定化とコストの両面で有利である。しかし、この化学修飾は、修飾部位によっては結合活性を消失する可能性ももつ。Cを修飾したものは活性が低下したが、Uを修飾したもの(HV1-41-II-Va)は活性が維持された。このアプタマー(HV1-41-Va)の2次構造モデルを図17に示す。さらにコストを下げるためステム領域の内側の塩基対ヌクレオチドをすべてメトキシ基(2’-OMe)に修飾したHV1-41-Va1の2次構造モデルを図17に示す。
結合活性を評価するため、アプタマーの5’末端をラベルし、以前報告した(非特許文献11、12,13)方法と同様のフィルター結合分析を用いて行った。
すなわち、[γ-32P]ATPを10nMのアプタマーと混合し、結合緩衝液(50mM Tris-HCl, 50mM KCl, pH7.5)中で反応させ、アプタマーの5’末端をラベルした。ラベルしたアプタマーは90℃、2分間で変性させた後に25℃、10分間でアニーリングし、種々の濃度のgDタンパク質と混合して結合実験を行った。
図18にBAS2000装置で読み取った測定結果と、HV1-41-IIとHV1-41-Va1とのHSV−1のエクトドメインgDタンパク質に対する結合能の比較を示す。上段はHV1-41-IIについてのgDに対する結合能をgD濃度に従って示す。各スポットに割り当てられた番号の1は2nMアプタマーのみ、2〜10はgDタンパク質をフィルターに結合させ、2nMアプタマーを加えた後に非結合アプタマーを洗い流したものであるが、このうち2はgD添加なし、3はgD25nMを添加したもの、4はgD50nMを添加したもの、5はgD100nMを添加したもの、6はgD150nMを添加したもの、7はgD200nMを添加したもの、8はgD300nMを添加したもの、9はgD400nMを添加したもの、10はgD800nMを添加したもの。下段はHV1-41-Va1についてのgDに対する結合能で、1は2nMアプタマーのみ、2はgD添加なし、3はgD25nMを添加したもの、4はgD50nMを添加したもの、5はgD100nMを添加したもの、6はgD150nMを添加したもの、7はgD200nMを添加したもの、8はgD300nMを添加したもの、9はgD400nMを添加したもの、10はgD800nMを添加したもの。図18の右側の表は、アプタマーRNAの結合量をRIカウント数で示したもので、1列目はgD濃度、2列目は総カウント数、3列目はgD添加なしのカウント数を差し引いた正味のカウント数、4列目は結合比率(%)を数値で示したものである。図18より、HV1-41-Va1の結合能はHV1-41-IIとほぼ同じであるのは明白である。
図19は、2%ウシ血清中でのHV1-41-IIとHV1-41-Va1との安定性の比較を示したものである。すなわち、以下の相補的プライマー(HV1-41の3’末端側27残基と相補的なDNA)の5’末端をT4 polynucleotide kinaseにより 32Pでラベルし、アプタマーとプライマーとの複合体形成を以下のゲルシフト分析実験で調べたものである。
相補的プライマー(配列番号26)
5’- CCAGGAGCACG AGTTCTCCCCTGGGGA -3’(配列番号26)
アプタマー1μgを2%ウシ血清中でcleavage 緩衝液(1.5 M NaCl; 200 mM Tris-HCl pH 7.4; 20 mM MgCl2; 20 mM CaCl2)とともに37℃で培養(30分、60分、120分)した後に、フェノール-クロロホルム抽出、エタノール沈澱により得られた各産物RNAに相補的プライマーを加えた。次にアニーリング緩衝液中90℃、2分間で変性させた後に25℃、10分間でアニーリングした。図19の15%ネーティブポリアクリルアミド電気泳動図の左端から、Oligo only(プライマーのみ)、Duplex control(アプタマーとプライマーとの複合体)、HV1-41-II添加後0, 30, 60, 120 分, HV1-41- Va1添加後0, 30, 60, 120 分の順に示してあり、下段はプライマー、中断はアプタマーとプライマーとの複合体の泳動位置を示す。また、図中のカッコはアプタマーの分解物を示す。図19より、HV1-41- Va1はHV1-41-IIよりも複合体が多く存在し、分解物が少ないのは明白で、安定であることを示唆する。また、HV1-41- Va1の分解の半減期は2時間以上あることも明白である。
(3)安定で安価なアプタマーの製造(3’-および5’-末端残基の修飾)
ヌクレオチドのリボース部位の2’位の水酸基(2’-OH)の修飾はendonucleaseによる分解を防ぐのに役立つが、RNAの末端より分解を行うexonucleaseを防ぐには不十分で、図19のカッコに示すように分解物が生じるのは、このためと考えられる。exonucleaseによる分解を防ぐため、アプタマーRNA (HV1-41- Va1)の末端の修飾実験を行った。
図21は、この実験に用いた、HV1-41- Va1の3’-末端にはidT、但し5’-末端にはPEG化する前のステップであるアミノカップリング((CH12NH2)したHV1-41-Va1-idTの2次構造モデルを示す図である。なお、5’末端の-(CH2)12NH2基を有するアプタマーRNAは、NHS PEGと反応緩衝液(10%重炭酸ナトリウムを含むDMF)中で反応させることにより((CH12NHCO)を介して、ポリエチレンが結合したアプタマーRNAにたやすく変換することができる。
HV1-41-Va1とHV1-41-Va1-idTとの安定性の比較を、図19と同様の実験方法で行った結果を図20に示す。図の上段の左端から、Oligo only(プライマーのみ)、Duplex control(アプタマーとプライマーとの複合体)、HV1-41- Va1添加後0, 30, 60, 120 分, HV1-41-Va1-idT添加後0, 30, 60, 120 分の順に示してあり、下段はプライマー、中断はアプタマーとプライマーとの複合体の泳動位置を示す。また、図中のカッコはアプタマーの分解物を示す。HV1-41-Va1-idTはHV1-41- Va1に比べ、上記カッコで示した分解物が劇的に減少しており、idTによる安定化の効果は明白である。

Claims (14)

  1. 配列番号1または28に示す塩基配列を含むか、あるいは該塩基配列において、1又は数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を含み、かつHSV−1のgDドメインに対し結合能を有することを特徴とするアプタマーRNA。
  2. 配列番号2〜6及び27のいずれかで示される塩基配列からなるか、あるいは該塩基配列において、1又は数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を含み、かつHSV−1のgDドメインに対し結合能を有することを特徴とするアプタマーRNA。
  3. 配列番号2〜5及び27のいずれかで示される塩基配列において、これら塩基配列中、以下の共通配列における9番目のAがUに置換されている塩基配列からなるか、あるいは該置換塩基配列において、1又は数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を含み、かつHSV−1のgDドメインに対し結合能を有することを特徴とするアプタマーRNA。

    CACGAGAGAG GUCGUCCCCA GGGGAGAACU CGUGC
  4. アプタマーRNAが、化学修飾したヌクレオチドを有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のアプタマーRNA。
  5. ピリミジンヌクレオチドにおけるリボース部位の2’位がフルオロ基(2’-F)またはメトキシ基(2’-OMe)により修飾されているか、あるいは水素で置換されていることを特徴とする、請求項4に記載のアプタマーRNA。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のアプタマーRNAが、その3’および/または5’末端がインバーストデオキシチミジン(idT)あるいはポリエチレングリコール(PEG)により修飾されていることを特徴とするアプタマーRNA。
  7. 配列番号7に示す塩基配列を含むか、あるいは該塩基配列において、1又は数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を含み、かつHSV−1のgDドメインに対し結合能を有するアプタマーに変換可能なDNA。
  8. 配列番号8〜12及び29のいずれかで示される塩基配列からなるか、あるいは該塩基配列において、1又は数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を含み、かつHSV−1のgDドメインに対し結合能を有するアプタマーに変換可能なDNA 。
  9. 配列番号8〜12及び29のいずれかで示される塩基配列において、これら塩基配列中、以下の共通配列における9番目のAがTに置換されている塩基配列からなるか、あるいは該置換塩基配列において、1又は数個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を含み、かつHSV−1のgDドメインに対し結合能を有するアプタマーに変換可能なDNA。

    CACGAGAGAG GTCGTCCCCA GGGGAGAACT CGTGC
  10. 請求項7〜9のいずれかに記載のDNAと相補の塩基配列を有するDNA。
  11. 請求項7〜9のいずれかに記載のDNAと、その相補のDNAがハイブリダイズした2本鎖DNA。
  12. 請求項1〜3のいずれかに記載のアプタマーRNAと相補の塩基配列を有するRNA。
  13. 請求項1〜6のいずれかに記載のアプタマーRNAを有効成分として含有することを特徴とするHSV−1検査薬。
  14. 請求項1〜6のいずれかに記載のアプタマーRNAを有効成分として含有することを特徴とするHSV−1に対する抗ウイルス剤。
JP2009024478A 2008-02-06 2009-02-05 単純ヘルペスウイルスに対するアプタマー Expired - Fee Related JP5610459B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2009024478A JP5610459B2 (ja) 2008-02-06 2009-02-05 単純ヘルペスウイルスに対するアプタマー

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2008026330 2008-02-06
JP2008026330 2008-02-06
JP2009024478A JP5610459B2 (ja) 2008-02-06 2009-02-05 単純ヘルペスウイルスに対するアプタマー

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2009207491A true JP2009207491A (ja) 2009-09-17
JP5610459B2 JP5610459B2 (ja) 2014-10-22

Family

ID=41181257

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2009024478A Expired - Fee Related JP5610459B2 (ja) 2008-02-06 2009-02-05 単純ヘルペスウイルスに対するアプタマー

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5610459B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017510295A (ja) * 2014-03-20 2017-04-13 センター ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィック(シーエヌアールエス) Stat5阻害剤およびその使用

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002016420A2 (en) * 2000-08-01 2002-02-28 University Of Pittsburgh Of The Commonwealth System Of Higher Education Antiviral compounds derived from the hsv gd protein and methods
WO2004052297A2 (en) * 2002-12-06 2004-06-24 Cytogenix, Inc. TREATMENT OF HSV-RELATED PATHOLOGIES USING ssDNA

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002016420A2 (en) * 2000-08-01 2002-02-28 University Of Pittsburgh Of The Commonwealth System Of Higher Education Antiviral compounds derived from the hsv gd protein and methods
WO2004052297A2 (en) * 2002-12-06 2004-06-24 Cytogenix, Inc. TREATMENT OF HSV-RELATED PATHOLOGIES USING ssDNA

Non-Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
JPN6013020622; J. Virol. Vol.72, No.5, 1998, pp.3595-3601 *
JPN6013020623; Proc. Natl. Acad. Sci. USA Vol.84, No.15, 1987, pp.5454-5458 *
JPN6013020624; J. Biol. Chem. Vol.279, No.46, 2004, pp.48410-48419 *

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2017510295A (ja) * 2014-03-20 2017-04-13 センター ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィック(シーエヌアールエス) Stat5阻害剤およびその使用

Also Published As

Publication number Publication date
JP5610459B2 (ja) 2014-10-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Wang et al. A biologically stable DNAzyme that efficiently silences gene expression in cells
Cusack RNA–protein complexes
JP3529135B2 (ja) 特定のrna鎖の切断方法
KR102031715B1 (ko) 표적 단백질에 결합하는 핵산 단편
JPH07501929A (ja) オリゴマーフラグメントの合成非ランダム化
JPH07501527A (ja) 修飾されたピリミジンを含有するオリゴマーを使用する増強された三重らせんおよび二重らせんの成形
US7115738B2 (en) Hydroxyproline/phosphono oligonucleotide analogues, methods of synthesis and methods of use
JP2005514005A5 (ja)
JP2024009977A (ja) 免疫調節性低分子ヘアピンrna分子
SINGH et al. Differential recognition of the polypyrimidine-tract by the general splicing factor U2AF65 and the splicing repressor sex-lethal
KR20150140669A (ko) Il―6에 결합하는 압타머 및 il―6 매개된 질환을 치료하거나 진단하는 데에서 이의 용도
AU2008301890A1 (en) Compositions and methods for the identification of inhibitors of retroviral infection
EP4045656A1 (en) Nucleic acid compounds that bind to retinoic acid-inducible gene i protein
Ren et al. RIG-I recognition of RNA targets: the influence of terminal base pair sequence and overhangs on affinity and signaling
JP2008253176A (ja) 高親和性分子取得のためのリンカー
JP5610459B2 (ja) 単純ヘルペスウイルスに対するアプタマー
JPWO2020054700A1 (ja) オリゴヌクレオチドの検出、または定量方法
CN116555273A (zh) 一种核苷类似物改性的核酸适体及其应用
JP2021517826A (ja) Gys2発現を阻害するための組成物及び方法
JP7017193B2 (ja) Rna作用抑制剤及びその利用
Zon Automated synthesis of phosphorus–sulfur analogs of nucleic acids—25 years on: potential therapeutic agents and proven utility in biotechnology
US20220119812A1 (en) Micro rna interactions as therapeutic targets for covid-19 and other viral infections
Maurya et al. Recent development and applications of xeno nucleic acids
JP6858911B2 (ja) 増殖分化因子11と結合するための核酸化合物
US20220280544A1 (en) Chimeric molecule, pharmaceutical composition, method for cleaving target nucleic acid, and kit for target nucleic acid cleavage or diagnosis

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20110124

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20130430

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20130627

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20140311

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20140605

A911 Transfer of reconsideration by examiner before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20140617

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20140826

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20140827

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5610459

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees