JP2009200436A - 電波吸収用のNiCuZn系フェライトタイル - Google Patents

電波吸収用のNiCuZn系フェライトタイル Download PDF

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Abstract

【課題】電波吸収特性の劣化を招くことなしに反りの発生を抑制した電波吸収用のNiCuZn系フェライトタイルを提供する。
【解決手段】基本成分として、鉄、ニッケル、銅および亜鉛を、それぞれ、Fe2O3換算で 48.0〜50.0 mol%、NiO換算で10.0〜16.0 mol%、CuO換算で3.0〜7.0 mol%およびZnO換算で29.0〜35.0 mol%(但し、Fe2O3+NiO+CuO+ZnO=100 mol%)の範囲で含有するNiCuZn系フェライトタイルにおいて、
該フェライトタイル中に、副成分としてカルシウムを、Ca換算で110〜300 ppmの範囲で含有させ、かつ該フェライトタイルの厚み(B:単位mm)に対する平板部の面積(A:単位mm2)の比(A/B)を1000〜450000mmの範囲に制限する。
【選択図】なし

Description

本発明は、主に高層ビルの外壁部分に使用され、テレビ電波等の電磁波の反射を防止するタイル、または電波暗室の内壁に使用され、電波暗室の内外からの電波を吸収するタイルに用いて好適なNiCuZn系フェライトタイルに関し、特に電波吸収特性の劣化を招くことなしに反りの発生を抑制しようとするものである。
従来から、テレビ電波の反射防止用タイルまたは電波暗室における電波吸収用タイルとして、数百MHzの周波数帯域での電波反射防止特性および電波吸収特性(以下、単に電波吸収特性という)に優れるNiCuZn系フェライトが使用されている。かような用途に使用されるタイル1枚の大きさは、一辺が約100mm、厚さが5〜10mm程度のものが多用されているが、タイル設置工事の作業効率を向上させるためには、より大きなものが望まれる。
一般的にNiCuZn系フェライトは、ノイズフィルターやチョークコイルなどの磁心部品として、広く利用されている。かような用途における大きさは、チップインダクターのように一辺が1mm以下の直方体が多く、またトロイダル、ドラムなどの形状でも寸法が、30mm程度までであり、小型コアが主流である。
従って、磁心部品用途の大きさでは、焼成時に変形は起こりにくい。これに対し、フェライトタイルは磁心部品と比較すると大きさが、格段に大きく、またタイル面積に対して厚みが小さいため、焼成時にタイル自体が反るなどの変形が起こりやすい。
電波吸収用途のフェライトタイルは、壁に敷き詰めて使用するため、特に表面の平行度は重要であり、極力、反りを小さくする必要がある。
フェライトタイルに反りが発生する要因としては、成形時における成形体内部の密度差、焼成時における成形体内部の温度差および成形体と敷板との熱伝導の違いなどが挙げられる。
これらの対策として、成形条件の最適化による成形密度の均一化、焼成炉の温度調整による成形体内部の温度差の解消および最適な敷板の選択が考えられる。
しかしながら、フェライトタイルのような板形状においては、反りなどの変形を完全に防止することは極めて難しい。
従って、反った面を修正するために、焼成後にタイル面の研削を行ったり、また特許文献1に記載のように、成形体を好適には2枚の平板状の空気環流体で挟んだ状態で焼成を行うなどの反り防止策が講じられている。
その他、厚みのあるブロック焼成体を作製した後、それから数枚のタイルを切り出す方法も考えられる。
しかしながら、何れの方法にしても、製造コストの上昇は避けられず、また生産性が低下する。
特開平5−306164号公報
本発明は、上記の問題を有利に解決するもので、電波吸収特性の劣化を招くことなしに反りの発生を効果的に防止した電波吸収用のNiCuZn系フェライトタイルを提案することを目的とする。
まず、発明者らは、電波吸収用タイルとして要求される、数百MHzの周波数帯域で優れた電波吸収特性を発現させるべくフェライトの主成分である鉄、ニッケル、銅および亜鉛の好適含有量範囲(それぞれFe2O3,NiO,ZnO,CuO換算で)を決定した。
次に、上記した好適組成になるフェライトを焼成する際に反りなどの変形を効果的に抑制できる添加物について種々検討を行った。
その結果、微量のカルシウムを添加することにより、電波吸収特性などの電磁気特性を低下させずに、反りを効果的に防止できることの知見を得た。
本発明は上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
1.基本成分として、鉄、ニッケル、銅および亜鉛を、それぞれ、
Fe2O3換算で48.0〜50.0 mol%、
NiO換算で10.0〜16.0 mol%、
CuO換算で3.0〜7.0 mol%および
ZnO換算で29.0〜35.0 mol%
但し、Fe2O3+NiO+CuO+ZnO=100 mol%
の範囲で含有するNiCuZn系フェライトタイルであって、
該フェライトタイルが、副成分としてカルシウムを、Ca換算で110〜300 ppm含有し、かつ該フェライトタイルの厚み(B:単位mm)に対する平板部の面積(A:単位mm2)の比(A/B)が1000〜450000mmであることを特徴とする電波吸収用のNiCuZn系フェライトタイル。
2.下記で規定した前記NiCuZn系フェライトタイルの反り量が0.5%以下であることを特徴とする請求項1記載の電波吸収用のNiCuZn系フェライトタイル。

反り(%)=(x/y)× 100
ここで、xとは、JIS A 5209「陶磁器質タイル」に準じ、タイルの表面の対角線上に対角線の長さの4/5以上を隔てて基点をとり、両基点を結ぶ直線の中点からタイルの表面までの垂直距離(mm)のことである。また、yとは、両基点間の距離(mm)である。
3.前記NiCuZn系フェライトタイルの100 MHzにおける複素透磁率が、μ′:7.5〜9.5およびμ″:75〜90を満足することを特徴とする上記1または2記載の電波吸収用のNiCuZn系フェライトタイル。
本発明によれば、焼成時における反りの発生を効果的に防止することができ、従来のように反った部分を研削するなどの必要がないため、加工コストなどの余計なコストとが掛からず、また研削による材料歩留りの低下も抑制することができる。
さらに、Ca含有量を調整するために添加されるCa源としてのCaCO3やCaOは安価であり、また本発明では添加量も微量で済むため、原料コストの上昇を招くこともない。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、基本成分の組成範囲を前記の範囲に限定した理由について説明する。なお、基本成分であるFe2O3,NiO,CuOおよびZnOの含有量は mol%で示すものとする。また、これらの含有量の合計は100 mol%である。
Fe2O3:48.0〜50.0 mol%
Fe2O3は、電波吸収特性の指標である複素透磁率μ′、μ″の向上に有用な元素であるが、含有量が48.0 mol%に満たないと、μ′およびμ″が周波数に対して全体的に低下するという問題があり、一方50.0 mol%を超えると焼結性が低下し、それに伴いμ′およびμ″が同じく周波数に対して全体的に低下するという不利を招くので、Fe2O3は48.0〜50.0 mol%の範囲に限定した。好ましくはFe2O3:48.5〜49.8 mol%の範囲である。
NiO:10.0〜16.0 mol%
NiOは、複素透磁率μ′、μ″の周波数特性の調整に有用な元素であるが、含有量が10.0 mol%に満たないと、数百MHzより低い周波数帯域でのμ′およびμ″は向上するものの、本発明で目的とする数百MHzでのμ′およびμ″は低下するという問題があり、一方16.0 mol%を超えると、数百MHzより高い周波数帯域でのμ′およびμ″は向上するものの、数百MHzでのμ′およびμ″は低下するという不利を招くので、NiOは10.0〜16.0 mol%の範囲に限定した。より好ましくはNiO:11.0〜13.0 mol%の範囲である。
CuO:3.0〜7.0 mol%
CuOは、焼結性の向上に有効に寄与するが、含有量が7.0 mol%を超えると複素透磁率μ′およびμ″が周波数に対して全体的に低下し、一方3.0 mol%に満たないと焼結性が低下して、やはりμ′およびμ″が周波数に対して全体的に低下するので、CuOは3.0〜7.0 mol%の範囲に限定した。より好ましくはCuO:4.0〜6.0 mol%の範囲である。
ZnO:29.0〜35.0 mol%
ZnOは、NiOと同様、複素透磁率μ′、μ″の周波数特性の調整に有用な元素であるが、含有量が29.0 mol%に満たないと、数百MHzより高い周波数帯域でのμ′およびμ″は向上するものの、数百MHzでのμ′およびμ″は低下するという問題があり、一方35.0 mol%を超えると、数百MHzより低い周波数帯域でのμ′およびμ″は向上するものの、数百MHzでのμ′およびμ″は低下するという不利を招くので、ZnOは29.0〜35.0 mol%の範囲に限定した。より好ましくはZnO:30.0〜33.0 mol%の範囲である。
本発明では、上記した基本組成になるNiCuZn系フェライトタイル中に、副成分として、110〜300 ppmという微量のCaを含有させることによって、電波吸収特性の劣化なしに反りなどの変形を効果的に防止する。Ca含有量を上記の範囲に限定した理由は次のとおりである。
Ca:110〜300 ppm
Ca含有量が、110 ppmより少ない場合には、反りの発生が避けられず、一方300 ppmよりも多い場合には、反りの発生は抑制できるものの、電波吸収特性の劣化を招くため、Ca量は110〜300 ppmの範囲に限定した。より好ましくはCa:140〜240 ppmの範囲である。
また、本発明では、フェライトタイルの形状について、図1に示すように、フェライトタイルの厚みをB(mm)、平板部の面積をA(mm2)としたとき、フェライトタイルの厚みに対する平板部の面積の比(A/B)を1000〜450000mmの範囲に限定する。
その理由は、次のとおりである。A/Bが1000mmより小さい場合、タイル厚みがタイル面積に対して相対的に厚くなるため、形状的に反り発生の懸念が小さいからである。一方、A/Bが450000mmより大きい形状のフェライトタイルの場合は、Ca含有量の如何に関わらず、反りの発生が避けられないためである。
なお、本発明におけるタイル形状としては、フェライトタイルの厚みB:0.1〜15mm、また平板部の面積A:10000〜90000mm2程度とすることが好ましい。
上述したように、基本成分およびタイル形状を適切に調整した上で、適正量のCaを添加することによって、焼成時の反りなどの変形を防止することができる。但し、本発明範囲におけるCa添加によるフェライトタイル焼成時の反り抑制効果のメカニズムについては、まだ解明されていない。
本発明で目標とするは、反り量および電波吸収特性については次のとおりである。
反り量
本発明では、次式で規定した反り量が0.5%以下であることを目標とする。
反り(%)=(x/y)× 100
但し、x:垂直距離(mm)
y:両基点間の距離(mm)
ここで、垂直距離xは、図2に示すように、JIS A 5209「陶磁器質タイル」に準じ、タイルの表面の対角線上に対角線の長さの4/5以上を隔てて基点をとり、両基点を結ぶ直線の中点からタイルの表面までの距離を測定することによって求めることができる。タイル面が正方形または長方形の場合には、上述したとおり、基点を対角線上にとるが、円形の場合には、基点を直径上にとり、また不定形の場合は、面上で最も長い線上にとれば良い。この垂直距離xを両基点間距離yで除することによって得られる値を、反り(単位:%)とする。
電波吸収特性
本発明において、電波吸収特性、100 MHzにおける複素透磁率によって評価するものとし、この複素透磁率のμ′が7.5〜9.5で、かつμ″が75〜90の範囲を満足する場合を、電波吸収特性に優れるという。
ここに、複素透磁率とは、磁性体に交番磁界Hををかける際、磁束密度Bの変化に異相的な遅れが出る場合、正弦波を複素表示したとき、次式で表されるBとHの比、
μ=B/H=μ′−jμ″
をいう。μ′、μ″は実数である。
次に、本発明に従うフェライトタイルの好適製造方法について説明する。
本発明範囲のFe2O3,NiO,ZnO,CuOを秤量し、アトライターまたはボールミルなどの混合機を用いて、湿式または乾式で混合した後、800〜1000℃で仮焼する。仮焼粉に本発明範囲のCa含有量になるようにCaCO3または、CaOを添加した後、アトライターまたはボールミルなどの混合機を用いて、湿式または乾式で、粉砕平均粒径:1〜2μm 程度まで粉砕する。粉砕粉にPVAなどの結合剤を添加し、スプレードライヤーや金網を用いて造粒した後、焼成後に本発明範囲のタイル形状になるように設計した金型に充填して、プレス成形する。得られた成形体を昇温速度:30〜240℃/h、最高温度:1000〜1150℃、最高温度保持時間:1〜10時間、降温速度:30〜240℃/h程度の焼成条件で焼成することにより、反りが抑制されたフェライトタイルを製造することができる。また、Caの添加は、仮焼前に行っても、同様の効果を得ることができる。
なお、本発明のフェライトタイルは、フェライト基板やICなどに用いられる板状のノイズ抑制フェライトのような薄い形状のフェライトなどにも適用することができる。
実施例1
主成分として、Fe2O3:49.5 mol%,NiO:12.4 mol%,ZnO:32.4 mol%およびCuO:5.7 mol%になるように秤量し、振動ボールミルで乾式混合したのち、900℃で仮焼し、 ついでCaCO3を、原料中のCa量が40〜600 ppmとなるように添加したのち、アトライターで湿式粉砕して平均粒径:1.7μm(空気透過法)の原料粉体を得た。これにバインダーであるPVAを加え、スプレードライヤーで造粒した。造粒粉は、所定の金型に充填してプレス成形したのち、焼成炉を用いて、大気雰囲気中で、昇温速度:40℃/h、最高温度:1050℃ 、最高温度保持時間:4h、昇温速度:40℃/hの条件で焼成し、100mm×100mm×6mm(A=10000mm2,B=6mm,A/B=1667)のフェライトタイルを得た。
かくして得られたフェライトタイルの反り量および電波吸収特性について調査した結果を、表1に示す。
なお、反りの測定は前述した方法にて行い、反りの合格基準を≦0.5%とした。
また、電波吸収特性については、同じタイルから、外径:10mm、内径:6mm、高さ:2mmのトロイダルコアを切り出し、インピーダンスアナライザー(アジレント・テクノロジー製4291A)を用いて、100MHzにおける複素透磁率μ′、μ″の電磁気特性を測定することによって評価した。μ′およびμ″の合格基準はそれぞれ、7.5〜9.5、75〜90とした。
Figure 2009200436
同表から明らかなように、フェライトタイル中に適正量のCaを含有する発明例1〜8はいずれも、反り量が0.5%以下であり、また電波吸収特性にも優れていた。
実施例2
主成分として、Fe2O3,NiO,ZnOおよびCuOが、表2の組成になるように秤量し、振動ボールミルで乾式混合した後、870℃で仮焼し、ついでCaCO3を、原料中のCa量が220 ppmとなるように添加したのち、アトライターで湿式粉砕して平均粒径:1.5μm(空気透過法)の原料粉体を得た。これにバインダーであるPVAを加え、スプレードライヤーで造粒した。ついで、実施例1と同様の焼成条件で、実施例1と同様のタイル、トロイダルコアを作製し、反り量および100MHzにおける複素透磁率μ′,μ″を測定した。
得られた結果を、表2に示す。
Figure 2009200436
同表から明らかなように、基本成分が適正範囲を満足する発明例9〜12はいずれも、反り量が0.5%以下であり、また電波吸収特性にも優れていた。
実施例3
主成分として、Fe2O3:49.2 mol%,NiO:12.7 mol%,ZnO:32.6 mol%およびCuO:5.5 mol%になるように秤量し、振動ボールミルで乾式混合した後、910℃で仮焼し、ついでCaCO3を、原料中のCa量が230 ppmとなるように添加したのち、アトライターで湿式粉砕して平均粒径:1.8μm(空気透過法)の原料粉体を得た。これにバインダーであるPVAを加え、ス プレードライヤーで造粒した。ついで、実施例1と同様の焼成条件で、表3に示す形状のタイルを作製し、反り測定を行った。また実施例1と同様のトロイダルコアを作製し、100MHzにおける複素透磁率μ′,μ″を測定した。
得られた結果を、表3に示す。
Figure 2009200436
同表から明らかなように、発明例13〜20はいずれも、反り量が0.5%以下であり、また電波吸収特性にも優れていたが、A/Bが適正範囲を外れた比較例13〜15はいずれも、反り量が0.5%を超え、タイル形状の劣化を余儀なくされた。
フェライトタイルの厚みB(mm)と平板部の面積をA(mm2)との関係を示した図である。 フェライトタイルの反り量の測定要領を示した図である。

Claims (3)

  1. 基本成分として、鉄、ニッケル、銅および亜鉛を、それぞれ、
    Fe2O3換算で48.0〜50.0 mol%、
    NiO換算で10.0〜16.0 mol%、
    CuO換算で3.0〜7.0 mol%および
    ZnO換算で29.0〜35.0 mol%
    但し、Fe2O3+NiO+CuO+ZnO=100 mol%
    の範囲で含有するNiCuZn系フェライトタイルであって、
    該フェライトタイルが、副成分としてカルシウムを、Ca換算で110〜300 ppm含有し、かつ該フェライトタイルの厚み(B:単位mm)に対する平板部の面積(A:単位mm2)の比(A/B)が1000〜450000mmであることを特徴とする電波吸収用のNiCuZn系フェライトタイル。
  2. 下記で規定した前記NiCuZn系フェライトタイルの反り量が0.5%以下であることを特徴とする請求項1記載の電波吸収用のNiCuZn系フェライトタイル。

    反り(%)=(x/y)× 100
    ここで、xとは、JIS A 5209「陶磁器質タイル」に準じ、タイルの表面の対角線上に対角線の長さの4/5以上を隔てて基点をとり、両基点を結ぶ直線の中点からタイルの表面までの垂直距離(mm)のことである。また、yとは、両基点間の距離(mm)である。
  3. 前記NiCuZn系フェライトタイルの100 MHzにおける複素透磁率が、μ′:7.5〜9.5およびμ″:75〜90を満足することを特徴とする請求項1または2記載の電波吸収用のNiCuZn系フェライトタイル。
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