JP2009196927A - 血管障害に起因する網膜障害の進展阻害または治療剤 - Google Patents

血管障害に起因する網膜障害の進展阻害または治療剤 Download PDF

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資弘 瓶井
Yasuo Tano
保雄 田野
Takuhiro Yamamoto
拓広 山本
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健太郎 西田
Mihoko Suzuki
三保子 鈴木
Hirokazu Sakaguchi
裕和 坂口
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Abstract

【課題】 本願発明は、未だ効果的な治療法の確立されていない血管障害に起因する網膜障害に対する新規治療剤または進展阻害剤を提供することを課題とする。
【解決手段】 血液由来あるいは遺伝子組換え技術により調製した活性化プロテインCを主たる有効成分として含有することを特徴とする、血管障害に起因する網膜障害(tPA惹起性膜障害、網膜閉塞症、網膜中心静脈閉塞症、網膜中心動脈閉塞症、未熟児網膜症および糖尿病性網膜症)の治療剤または進展阻害剤。
【選択図】 なし

Description

本願発明は医療用医薬品の分野に属し、血液に由来する成分を有効成分とする医薬品に関する。詳細には血漿蛋白質の眼科領域での新たな用途に関する。さらに詳細には、血液凝固阻害因子の一つである活性化プロテインC(以下、APCと称することがある)を主たる有効成分として含有する、網膜障害に対する進展阻害または治療剤に関する。
本願発明の網膜障害の進展阻害または治療剤の主たる有効成分であるAPCは、血中ではその前駆体のプロテインCとして血管内を循環している。一旦凝固系が作動しトロンビンが形成されると、トロンビンは、血管内皮細胞上の膜蛋白質のトロンボモジュリンに結合し、プロテインCを活性化してセリンプロテアーゼ活性を有するAPCに変換する。APCは、細胞膜リン脂質上で、血液凝固系の活性化第V因子や活性化第VIII因子を選択的に限定分解し失活させ、強力な抗凝固作用を発揮する(例えば、非特許文献1および2)。このAPCによる抗凝固作用はコファクターのプロテインSが存在すると増強される。なおプロテインC、トロンボモジュリン、プロテインS等が関与する凝固制御機構をプロテインC抗凝固系という。
加えて、APCは血管内皮細胞あるいは血小板由来の組織プラスミノーゲン・アクチベーター・インヒビター(PAI)を中和することにより、線溶系の亢進に関与していることが知られている(例えば、非特許文献3および4)。また、トロンビンにより活性化される線溶阻害因子(Thrombin Activatable Fibrinolysis Inhibitor;TAFI)の活性化を抑制することにより線溶系の亢進に関与していることも知られている(例えば、非特許文献5)。
また、in vitroでの実験(非特許文献6)や、ヒヒ敗血症モデルでの動物実験(非特許文献7)により、APCは白血球からのサイトカイン産生を抑制することにより抗炎症作用を有することが示されている。さらに、重症敗血症患者を対象にした大規模臨床試験において、組換えAPC製剤投与により死亡率が有意に低下すること、および炎症性サイトカインであるIL-6のレベルが投与一日目から有意に低下することも示されている(非特許文献8)。
このようにAPCは抗血液凝固作用、抗炎症作用を有することから、臨床においては、先天性プロテインC欠乏症に起因する深部静脈血栓症および急性肺血栓塞栓症、電撃性紫斑病に加えて重症敗血症に適応されている。
組織プラスミノーゲンアクチベーター(以下、tPAと称することがある)は、線溶系に重要な役割を果たすセリンプロテアーゼである。近年、脳梗塞後にtPAを投与する治療法が確立されてきているが、脳梗塞後にtPAを投与すると血管内皮を障害し、出血を惹起しやすくなることが知られている。その機序はtPAがLRP-1を介してNFκBを活性化しMMP-9産生が促進される結果、MMP-9が血管内皮細胞の血液脳関門を傷害することによる(非特許文献9)。また、tPAはカスパーゼ8を活性化し最終的にカスパーゼ3を核内へ移行させ、アポトーシスを起こすことで内皮細胞を障害させるが、このようなtPA投与で惹起される有害事象はAPCを併用することで軽減できることが報告されている(非特許文献10および11)。また、APCは、スフィンゴシンキナーゼ-1を誘導し、スフィンゴシン-1-リン酸形成を高めることで、内皮細胞のバリアー機能を防御し、透過性が亢進することを制御している(非特許文献12)。APCがこのような抗炎症作用、抗アポトーシス作用、細胞保護作用を発揮するには、血管内皮細胞上の膜蛋白質であるプロテインC受容体(endothelial cell protein-C receptor;EPCR)に結合したAPCがトロンビン受容体(protease-activated receptor-1;PAR-1)を活性化することが重要だと考えられている。
網膜は、眼球の構成要素の一つで、眼球の後ろ側の内壁を覆う薄い膜状の組織であり、神経細胞が規則的に並ぶ層構造をしている。視覚的な映像(光情報)を神経信号(電気信号)に変換する働きを持ち、視神経を通して脳中枢へと信号を伝達する。その働きからカメラのフィルムに例えられる。脊椎動物の網膜では、目に入った光は網膜の奥(眼球の壁側)の視細胞層に存在する光受容細胞である視細胞(桿体および錐体)によって感受される。視細胞で光から神経信号へと変換され、その信号は網膜にある様々な神経細胞により複雑な処理を受け、最終的に網膜の表面(眼球の中心側)に存在する神経節細胞から視神経を経て、脳中枢へ情報が伝えられる。従って、網膜が障害されると著しい視力低下や失明を伴うことになる。
網膜の血管が障害されると、網膜の出血、浸出物、浮腫、虚血、梗塞が起こる。代表的な網膜の血管障害としては、糖尿病性網膜症、網膜中心静脈閉塞症などがある。
糖尿病性網膜症は糖尿病に伴う高血糖が原因となり網膜血管の障害が引き起こされて網膜が破壊される疾患である。糖尿病は厚生省調査研究班報告によると、国内に690万人おり、そのうち糖尿病性網膜症の有病率は40%、失明は約3%にものぼると推定されている(非特許文献13)。糖尿病性網膜症の発症メカニズムは次のように考えられている。糖尿病で高血糖になると、種々の代謝異常が起こる。すなわち、ポリオール代謝経路の活性亢進、糖化、ジアシルグリセロール産生増加によるプロテインキナーゼC(PKC)の活性化、活性酸素や過酸化脂質の産生増加等が起こるが、これらの作用が複雑に絡み合って血管壁を構成する血管内皮細胞、周皮細胞や網膜を構成する種々の細胞を障害する。
網膜中心静脈閉塞症は、視神経内で網膜中心静脈に閉塞が生じたもので、強膜篩状板付近での血栓が多い。この付近では、動静脈は外膜を共有しており、動脈系の硬化性変化などによる圧迫を受けやすく、灌流障害つまり静脈内圧上昇・血流うっ滞、さらには、血管内皮細胞の障害をきたしやすい。血液の粘性の変化、凝集能の亢進などが加わると血栓形成が起こり、静脈の閉塞に至る。
未熟児網膜症は、網膜の未熟性を基盤として発生する網膜管の増殖性疾患であるが、その発生メカニズムは完全には解明されていない。網膜血管は胎生4ヶ月頃より視神経乳頭部から発生を開始し、網膜神経線維層内を周辺に向かって発育し、耳側網膜では胎生8ヶ月、耳側網膜では胎生10ヶ月で鋸状縁に達する。従って、未熟児の在胎期間が短いほど、無血管網膜(無血管帯)の面積は広くなり、特に耳側に網膜症が起こりやすい。無血管帯には網膜血管内皮細胞のもとになる紡錘形細胞があり、血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor;以下、VEGFと称することがある)が分泌されている。胎生期の網膜は比較的低い組織酸素濃度の環境にあるが、出生後、呼吸あるいは過剰酸素投与により酸素濃度が上昇すると、VEGFの分泌が減少し血管閉塞、血管発育停止がもたらされる。ところが、出生後の網膜活動開始による新陳代謝の増加から、無血管帯では酸素不足が起こり、VEGFが過剰分泌されて、血管の異常増殖を促す。異常増殖した血管は、網膜内境界膜を破って硝子体に侵入し、漏出した血液成分内に筋芽細胞が現れ、網膜を牽引して網膜剥離を引き起こす。また血管からの漏出による滲出性の網膜剥離を伴うこともある。
これらの血管障害に起因する網膜障害の治療については、例えば糖尿病性網膜症の場合には糖尿病の治療、すなわち、血糖のコントロールが基本で、凝固異常や網膜循環障害に対して補助的な薬物療法がなされるが、いずれの網膜症に対しても有効な薬物は存在しない。網膜浮腫の軽減、増殖網膜症への進行の阻止、黄斑症に対する治療を目的にレーザー光凝固療法が実施されるが、確実に視力が回復する治療法とはいえない。網膜障害が進行すると失明や著しい視力低下をきたすが、上記のように未だその効果的な治療法が確立していない。近年、網膜障害の発生メカニズムの解明が進み、治療法も著しい進歩を遂げてはいるが、例えば糖尿病性網膜症で失明する患者は年間3000人以上と推定されており、治療法の更なる進展が期待されている。
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本願発明の課題は、血管障害に起因する網膜症に対する新規進展阻害または治療剤を提供することにある。詳細には、活性化プロテインCを主たる有効成分として含有する、網膜障害の進展阻害または治療剤を提供する。より詳細には、活性化プロテインCを主な有効成分として含有する、網膜閉塞症、糖尿病網膜症および未熟児網膜症に対する進展阻害または治療剤を提供する。
本願発明者らは、上記の諸背景を鑑み、網膜障害の進展阻害や治療を満足させる薬剤を見出すべく鋭意研究を行った結果、驚くべきことに、従来試みられることのなかった抗血液凝固剤であるAPCの投与により、著しい網膜障害の進展阻害効果や治療効果があることを見出し、これらの知見に基づいて本願発明を完成するに至った。
すなわち、本願発明は、APCを主たる有効成分として含有することを特徴とする、網膜障害の進展阻害または治療剤に関する以下のようなものである。
1)活性化プロテインCを主たる有効成分として含有することを特徴とする、血管障害に起因する網膜障害の進展阻害または治療剤。
2)血管障害に起因する網膜障害が、tPA惹起性膜障害、網膜閉塞症、網膜中心静脈閉塞症、網膜中心動脈閉塞症、未熟児網膜症および糖尿病性網膜症からなる群より選択される、上記1に記載の血管障害に起因する網膜障害の進展阻害または治療剤。
3)血管障害に起因する網膜障害が、未熟児網膜症または糖尿病性網膜症である、上記1または2に記載の血管障害に起因する網膜障害の進展阻害または治療剤。
4)活性化プロテインCが血液を原料として調製されたものである、上記1から3のいずれかに記載の血管障害に起因する網膜障害の進展阻害または治療剤。
5)活性化プロテインCが遺伝子組換え技術により作製されたものである、上記1から3のいずれかに記載の血管障害に起因する網膜障害の進展阻害または治療剤。
本願発明により、現在のところ効果的な治療法の存在しない網膜症に対する有効な治療剤が提供され、該疾患による失明や視力低下の防止が可能となる。本願発明の治療剤により、網膜障害の進展を防止でき、失明まで障害が進行することを防ぐことができる。さらに、網膜障害治療の結果として、該障害患者の著しい視力の改善が期待される。これにより、網膜障害患者のQOLの著しい低下を防止することが期待される。
本願発明で提供される、網膜障害の進展阻害または治療剤は、APCをその主たる有効成分とすることに特徴を有する。
本願発明の網膜障害の進展阻害または治療剤の本態であるAPCを製造する方法は、特に限定されるものではない。例えば、ヒト血液から分離して得られたプロテインCあるいは遺伝子組換え技術により作製したプロテインCを活性化する方法や、ヒト血液よりAPCを分離する方法、あるいは遺伝子組換え技術により直接APCを調製する方法などが挙げられる。
また、プロテインCからAPCへの活性化方法にも特に制約はなく、例えばヒトやウシなどの血液より分離したトロンビンにより活性化する方法や、遺伝子組換え技術により作製したトロンビンにより活性化する方法などにより実施できる。
血液由来のAPCの調製法としては、以下の方法が挙げられる。例えば、特許第3043558号による方法、あるいは、ヒト血漿から抗プロテインC抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製されたプロテインCを、ヒトトロンビンで活性化した後、陽イオンクロマトグラフィーを用いて精製する方法(Blood, vol. 63, p.115-121, 1984)、Kisielによる、ヒト血漿からクエン酸Ba吸着・溶出、硫安分画、DEAE-セファデックスカラムクロマトグラフィー、デキストラン硫酸アガロースクロマトグラフィー及びポリアクリルアミドゲル電気泳動の工程により精製して得られたプロテインCを活性化してAPCとする方法(J. Clin. Invest., vol. 64, p.761-769, 1979)、市販の、プロテインCを含有する第IX因子複合体製剤を出発材料にし、抗PC抗体を用いたアフィニティークロマトグラフィーにより精製されたプロテインCを活性化してAPCとする方法(J. Clin. Invest., vol. 79, p.918-925, 1987)などがある。
遺伝子組換え技術を用いてAPCを調製する方法としては、例えば特開昭61-205487号、特開平1-002338号あるいは特開平1-085084号などに記載された方法などがあるが、目的に応じて適宜選択すればよい。
上述の方法で調製されたAPCの活性を最大限に維持するために、本願発明で使用されるAPCは好適な安定化剤と共に凍結乾燥して保存する。安定化剤としては例えば、アルブミン、アミノ酸、糖などが挙げられる。好適にはアルブミンが用いられる。また、本願発明では、有効成分としてのAPCと適当な賦形剤(例えば、アルブミンなど)を組み合わせ、公知の方法(例えば、特許第2886061号による方法)で本願発明の網膜障害治療剤とすることができる。
本願発明のAPCを本態とする網膜障害の進展阻害または治療剤の投与量については、患者の年齢、病態等により適宜変動し得る。また、投与態様についても特段の制約はないが、最も好適には網膜内投与が行われる。
以下に実施例を挙げて本願発明を具体的に説明するが、本願発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。なお、本実施例に使用した血液由来のAPC(商品名:アナクトC)は、マウス及びイヌでの単回静脈内投与試験、マウス、イヌおよび幼若イヌでの反復静脈内投与試験、マウス生殖試験、局所刺激性試験、一般薬理試験(ビーグル犬を用いた呼吸循環系に及ぼす影響)、ウイルス不活化試験などによりその安全性が確認されている。
《低酸素処理および低酸素下でのtPA処理により惹起される細胞毒性に対するAPCの抑制効果》
4×10個の網膜色素上皮細胞(ARPE-19)を96well培養皿に播種し、低酸素(5%圧)±tPA(20 μg/mL)存在下において、37℃で12時間培養した。また、コントロールとして網膜色素上皮細胞を通常状態において、37℃で12時間培養した。その後、低酸素±tPAによって惹起される細胞毒性の軽減効果を試験するため、一部の細胞群においてはAPCを0.002〜0.2μg/mLの濃度範囲で添加した。また、一部の細胞群においては、網膜治療に使用される薬剤で黄斑浮腫の軽減効果を有するステロイドであるトリアムノシロン(TA)を0.008〜1.6 mg/mLの濃度範囲で添加した。それぞれの薬剤を添加後、細胞を12時間培養し、生存細胞数をカウントすることで生存率を算出した。
図1に示すように、低酸素条件下では約50%、低酸素+tPAの条件下では約10%の細胞しか生存できなかったのに対し、APCを添加した場合は、いずれの量においても細胞死を完全に抑制した。一方、TAを添加した場合は、いずれの量においても細胞死抑制効果を示さなかった。
《低酸素処理および低酸素下でのtPA処理により産生されるカスパーゼ活性に対するAPCの抑制効果》
実施例1と同様の条件で網膜色素上皮細胞(ARPE-19)を培養し、培養上清中の3種のカスパーゼ(カスパーゼ-3、8、9)の活性をELISA法にて測定した。
図2に示すように、低酸素処理および低酸素+tPA処理を施した細胞ではカスパーゼ-3、カスパーゼ-8およびカスパーゼ-9の活性が上昇した。しかし、図3に示すように、tPA処理を施した細胞にAPCを添加すると、いずれの濃度においてもほぼ完全に3種のカスパーゼ活性を抑制した。一方、図4に示すように、tPA処理を施した細胞にTAを添加すると、細胞毒性を示す高用量(0.8および1.6 mg/mL)ではカスパーゼ活性抑制効果を示したが、細胞毒性を示さない低用量(0.008および0.08 mg/mL)ではカスパーゼ活性抑制効果を示さなかった。
《未熟児網膜症モデルでのAPCの効果》
未熟児網膜症モデルとして、低酸素惹起性の血管新生を誘導するため、7日齢のマウス(C57BL/6J)を高酸素下(75%分圧)で7日間飼育後、通常の空気圧下で5日間飼育した(12日齢〜17日齢)。高酸素飼育終了直後に0.15μgのAPCを硝子体内に投与し、17日齢で眼球を取り出した。その後、眼球を10μmにカットし低温切開片を調製し、TUNEL染色およびHE染色を行った。コントロールとしては、APC非投与の反対眼を用いた。
図5に示すように、コントロール(APC非投与)群(図5右図)では、網膜フラットマウント標本で、後極部に無灌流領域が見られ、また網膜血管の蛇行、および、組織学的には網膜表面(硝子体側)に血管房(vessel tuft)が多数認められた。一方、APC投与群(図5左図)では、無灌流領域はほとんど認められず、また蛇行血管は見られなかった。組織学的にも網膜表面に血管房は見られず、ほぼ正常の組織像を呈した。
《網膜中心静脈閉塞症モデルでのAPCの効果》
体重150-200gの有色ラットを用い、尾静脈よりローズベンガル(2mg/kg)を投与し、視神経乳頭縁において主要網膜静脈にレーザー照射(波長514nm、スポットサイズ50μm
、出力100mW、照射時間0.5秒)を行い、静脈閉塞を誘導した。その後、tPA(7.5μg)、APC(1もしくは10μg)を硝子体内に注入し、24時間飼育した後、TUNEL法を用いて細胞死に陥った網膜細胞を染色し、その細胞数カウントした。コントロールとして、同様の処理を行い、人工房水(BSS;目の中と同じ成分の水)を硝子体内に注入したラットを用いた。
図6に示すように、コントロールと比較し、tPA注入群では有意にTUNEL陽性細胞数が増加していた。それに対し、APC注入群においては、1μg および10μgを投与した場合の両者ともTUNEL陽性細胞数が有意に減少し、tPAで誘導された細胞死を抑制した。また、APCを単独で投与した場合においても、コントロールに比べ、細胞死を有意に抑制した。この結果より、APCはtPAにより惹起される細胞死のみならず、単独投与で網膜中心静脈閉塞症に伴う細胞死も抑制できることが分かった。
本願発明により提供される網膜障害の進展阻害または治療剤は、従来、効果的な治療法の確立されていなかった血管障害に起因する網膜障害の、進行防止および治療に利用される。また、その防止および治療効果の結果として、網膜障害患者の視力改善にも利用される。
図1は、APC投与により、低酸素処理(hypoxia)および低酸素下でのtPA処理(hypoxia+tPA)により惹起される細胞毒性を抑制できることを示す図面である。 図2は、低酸素処理および低酸素下でのtPA処理を施した細胞でカスパーゼ-3、カスパーゼ-8およびカスパーゼ-9の活性が上昇することを示す図面である。 図3は、tPA処理を施した細胞において、APC投与によりカスパーゼ-3、カスパーゼ-8およびカスパーゼ-9活性の上昇を抑制できることを示す図面である。 図4は、tPA処理を施した細胞において、カスパーゼ-3、カスパーゼ-8およびカスパーゼ-9活性の上昇を、高濃度のTA投与では抑制できるが、低濃度では抑制できないことを示す図面である。 図5は、未熟児網膜症モデルマウスにおいて、APC投与により異常血管新生を抑制したことを示す図面である。左図はAPC投与群、右図はAPC非投与群を表す。 図6は、網膜中心静脈閉塞症モデルラットにおいて、APC投与によりtPAにより惹起される細胞死を抑制できること、およびAPC単独投与でも網膜中心静脈閉塞症に伴う細胞死を抑制できることを示す図面である。

Claims (5)

  1. 活性化プロテインCを主たる有効成分として含有することを特徴とする、血管障害に起因する網膜障害の進展阻害または治療剤。
  2. 血管障害に起因する網膜障害が、tPA惹起性膜障害、網膜閉塞症、網膜中心静脈閉塞症、網膜中心動脈閉塞症、未熟児網膜症および糖尿病性網膜症からなる群より選択される、請求項1に記載の血管障害に起因する網膜障害の進展阻害または治療剤。
  3. 血管障害に起因する網膜障害が、未熟児網膜症または糖尿病性網膜症である、請求項1または2に記載の血管障害に起因する網膜障害の進展阻害または治療剤。
  4. 活性化プロテインCが血液を原料として調製されたものである、請求項1から3のいずれかに記載の血管障害に起因する網膜障害の進展阻害または治療剤。
  5. 活性化プロテインCが遺伝子組換え技術により作製されたものである、請求項1から3のいずれかに記載の血管障害に起因する網膜障害の進展阻害または治療剤。
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