JP2009191465A - セグメントピース、セグメントリング、及びトンネル覆工体 - Google Patents

セグメントピース、セグメントリング、及びトンネル覆工体 Download PDF

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Abstract

【課題】簡易な構成で、背面からの荷重作用時に内部に発生する腹圧力に対する抵抗力を高めたセグメントピース、そのセグメントピースからなるセグメントリング、及びそのセグメントリングからなるトンネル覆工体を提供する。
【解決手段】セグメントピース10は、セグメントピース10の背面側に配置され、セグメントピース10の周方向に延在するように配筋される背面側主筋20と、セグメントピース10の内面側に配置され、セグメントピース10の周方向に延在するように配筋される内面側主筋30と、背面側主筋20と内面側主筋30との間に配筋されるフープ筋40と、を内部に有する。
【選択図】図1

Description

本発明は、鋼繊維補強高流動コンクリートからなるセグメントピースに係り、特に、強度を高めたセグメントピース、そのセグメントピースからなるセグメントリング、及びそのセグメントリングからなるトンネル覆工体に関する。
一般に、鉄筋コンクリート(Reinforced−Concrete,RC)からなるセグメントピース(以下、RCセグメントピースという)の内部には、主筋と、フープ筋又は配力筋とが埋設されている。ここで、主筋は、RCセグメントピースの背面側と内面側との夫々の位置に、セグメントピースの周方向に延在するように、背面側及び内面側に2段に配筋された鉄筋であり、また、これら2段に配筋された主筋は、セグメントピースの幅方向に間隔を隔てながら複数配置されている。配力筋又はフープ筋は、主筋と直交する方向に、上記2段に複数配筋された主鉄筋を、外側から取り囲むようにして配筋された鉄筋である。
これに対し、従来より本出願人は、鋼繊維補強高流動コンクリート(Steel Fiber Reinforced Concrete,SFRC)を用いることで、鉄筋量を低減することが可能なセグメントピースを提案している(例えば、特許文献1)。
特許文献1に開示するセグメントピースによれば、コンクリートに含まれる鋼繊維により、セグメントピース本体の引張力及びせん断力が向上するので、配力筋やフープ筋を省略して、内部に設置する鉄筋を主筋のみとすることができる。また、鋼繊維補強高流動コンクリートを用いることにより、コンクリート自体のひび割れ分散性も向上する。
特開2004−232258号公報
ところで、トンネル覆工体として設置されたセグメントピースは、背面から土圧等によって押圧された場合に、セグメントピース内部の内面側に周方向の引張力が生じ、この周方向の引張力によって、2次的に半径方向の引張力が発生する。この半径方向の引張力を腹圧力という。
腹圧力は、セグメントピースの設計半径に反比例する特性を示すので、特に半径の小さいセグメントピースは、腹圧力が増大することにより、周方向のひび割れが生じやすくなる。この現象は、特許文献1に記載されるような鋼繊維補強高流動コンクリートを用いたセグメントピースにおいても同様に生じる。
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、背面からの荷重作用時に発生する腹圧力に対する抵抗力を高めたセグメントピース、そのセグメントピースからなるセグメントリング、及びそのセグメントリングからなるトンネル覆工体を提供することを目的とする。
上記の目的を達成するため、本発明は、鋼繊維補強高流動コンクリートからなるセグメントピースであって、
前記セグメントピースの背面側に配置され、前記セグメントピースの周方向に延在するように配筋される背面側主筋と、
前記セグメントピースの内面側に配置され、前記セグメントピースの周方向に延在するように配筋される内面側主筋と、
前記背面側主筋と前記内面側主筋との間に配筋されるフープ筋と、を内部に有することを特徴とする(第1の発明)。
本発明のセグメントピースによれば、背面側主筋と内面側主筋との間に配筋されるフープ筋を有することにより、腹圧力に対して、鋼繊維だけでなくフープ筋によっても抵抗することができることから、腹圧力に対する抵抗力を向上させることができる。これにより、セグメントピースの設計半径が小さく、セグメントピース内に生じる腹圧力が大きくなる場合でも、周方向のひび割れの発生を抑制することができる。
また、上述のRCセグメントピースの内部に配筋されるフープ筋のように、主筋を外側から囲む場合には、セグメントピースの内面表面から鉄筋までの被り厚が、フープ筋の位置で局所的に小さくなる。このため、土圧等の作用によりセグメントピース内に曲げモーメントが発生した際に、そのフープ筋の配筋位置周辺のコンクリートに応力が集中しやすくなり、セグメントピースの内面表面に、フープ筋の配筋位置に沿うようなひび割れが発生しやすくなる。この見解は、トンネル標準示方書シールド工法編にも記載されている(土木学会、2006年、p288)。
このようなフープ筋の配筋位置周辺にコンクリートに応力が集中する傾向は、鋼繊維補強高流動コンクリートからなるセグメントピースのように、鋼繊維が配合されて引張性能が向上されているコンクリートにも同様に起こり、鋼繊維補強高流動コンクリートの本来の特徴でもあるひび割れ分散性を損なわせてしまう。
これに対し、本発明のセグメントピースは、背面側主筋と内面側主筋との間にフープ筋が配筋される。すなわち、RCセグメントピース内のフープ筋のように、主筋を外側から取り囲む構造と比べて、セグメントピースの内面表面から一番近い距離にある鉄筋は主筋となり、セグメントピース内面表面から鉄筋までの被り厚が局所的に小さくなるのを防止できる。
これにより、フープ筋の配筋位置周辺のコンクリートへの応力の集中を抑制することができ、鋼繊維補強高流動コンクリートの特徴であるひび割れ分散性を十分に発揮することができる。
第2の発明は、第1の発明において、前記フープ筋として、周囲長の異なるものが複数配筋されていることを特徴とする。
本発明のセグメントピースによれば、セグメントピース内に発生する腹圧力に対する抵抗力を、より一層向上させることができる。
第3の発明は、セグメントリングにおいて、第1又は2の発明に記載のセグメントピースを、複数用いて環状に組み立ててなることを特徴とする。
第4の発明は、トンネル覆工体において、第3の発明に記載のセグメントリングを、連続してトンネル軸方向に接続してなることを特徴とする。
本発明によれば、簡易な構成で、背面からの荷重作用時に内部に発生する腹圧力に対する抵抗力を高めたセグメントピース、そのセグメントピースからなるセグメントリング、及びそのセグメントリングからなるトンネル覆工体を提供できる。
以下、本発明の好ましい一実施形態について図面に基づき詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係るセグメントピース10を示す図であり、同図(a)はその断面図、同図(b)は図(a)のA−A曲面展開図、同図(c)は図(a)のB−B曲面展開図である。なお、同図(a)は、同図(b)及び同図(c)のC−C断面図である。
図1に示すように、本実施形態に係るセグメントピース10は、背面側主筋20と、内面側主筋30と、フープ筋40又は配力筋50とが配筋されており、コンクリート材料として鋼繊維補強高流動コンクリートが使用されている。
主筋は、セグメントピース10の周方向に延在するように配筋される鉄筋であり、本実施形態のセグメントピース10には、背面側に配置される背面側主筋20と、内面側に配置される内面側主筋30とが配筋されている(図1(a)参照)。また、背面側主筋20及び内面側主筋30は夫々、幅方向に間隔を隔てながら複数配筋されている(図1(b)及び図1(c)参照)。
フープ筋40は、セグメントピース10内部において、背面側主筋20と内面側主筋30と間に、これらの主筋と直交するように配筋されている(図1(a)〜(c)参照)。またフープ筋40は、セグメントピース10の周方向に間隔を隔てながら複数配筋されている(図1(a)〜(c)参照)。
図2は、図1のセグメントピース10におけるフープ筋40の配筋位置を横切るE−E断面図である。
図2に示すように、セグメントピース10内には、フープ筋40として、例えば、周囲長の長い大フープ42と、周囲長の短い小フープ44とが配筋される。大フープ42は、セグメントピース10の幅方向の両端付近まで延在するように配筋され、一方、小フープ44は、セグメントピース10の中央部に配筋されている。
図3は、大フープ42及び小フープ44を拡大して示す図である。
図3に示すように、大フープ42及び小フープ44には、例えば、両端部が鉤状に屈曲されたフックタイプを用いることができる。なお、本実施形態では、配力筋50を用いて大フープ42の端部を連結している。このような大フープ42、小フープ44、及び配力筋50は、鉄筋の組み上げの際に、主筋と結束される。
鋼繊維補強高流動コンクリート(Steel Fiber Reinforced Concrete,SFRC)は、セメントと、細骨材と、粗骨材と、鋼繊維とから構成されているもので、従来からコンクリート構造体に発生するひび割れの減少、或いはひび割れが発生した場合にひび割れの分散効果や、コンクリートの靱性や曲げ強度を増大させ、コンクリート構造体の鉄筋量を減少させる等の目的で用いられているものである。
本実施形態に係るセグメントピース10は、このような構造で各鉄筋が配筋されていることにより、例えば、セグメントピース10がトンネル覆工体の一部として設置され、背面に土圧等の荷重が作用した場合に、セグメントピース10内部の内面側に生じる周方向の引張力により発生した、半径方向の引張力である腹圧力に対して、フープ筋40がセグメントピース10の半径方向に一致するような配置となるので、鋼繊維だけでなくフープ筋40によっても抵抗することができることから、腹圧力に対する抵抗力を向上させることができる。これにより、周方向のひび割れの発生が抑制されることになる。
なお、腹圧力は、セグメントピース10の設計半径に反比例する特性を示すので、特に半径の小さいセグメントピース10の強度を向上させるのに効果的である。
以上説明したセグメントピース10は、環状に組み立てることにより、セグメントリングとなり、このセグメントリングは、トンネル掘削におけるシールド工法を実施する際に、トンネル軸方向に接続していくことにより、トンネル覆工体として利用される。
次に、上記のような配筋構造を有し、鋼繊維補強高流動コンクリートからなるセグメントピースを作製し、曲げ試験を行ったので、以下にその詳細について説明する。
図4は、曲げ試験に用いたセグメントピースの仕様を示す表である。
図4に示すように、直径がφ6600mmのセグメントリングを組み上げるのに用いられる6分割のセグメントピースのうち、A型(68.571°)のセグメントピースを試験体として用いた。具体的に、セグメントピースの寸法は、幅1400mm、高さ320mmとなった。
また、鋼繊維補強高流動コンクリートとして、設計基準強度48N/mmの汎用コンクリートに、0.8vol%の鋼繊維を混入したものを用いた。
そして、このような寸法及び材料からなるセグメントピースについて、中央などの曲げ区間にフープ筋を配筋しないもの(以下、フープ筋なしセグメントピースという)と、フープ筋を配筋したもの(以下、フープ筋ありセグメントピースという)とを作製し、試験体として用いた。なお、フープ筋ありセグメントピースの配筋構造は、図1で示したものと同じである。フープ筋ありセグメントピースは、配筋する鉄筋として、SD345の種類のもので、D19を8本、D16を2本使用しており、総鉄筋量Asが2689.2mm、鉄筋比0.725%となった。また、鉄筋の被り厚は、55mm(有効高さ265mm)に設定した。
図5は、曲げ試験の概要を示す図であり、同図(a)は試験体の側面図、同図(b)は試験体の平面図である。
図5に示すように、曲げ試験は、セグメントピースの内面の両端部を、接触部がローラーとなって可動する支承部に載せ、セグメントピースの背面中央に2点設定された載荷点に荷重をかけたときの、セグメントピースの中心位置のたわみを測定することにより行った。
かかる試験を実施するに際し、セグメントピースには、図中のD1〜D6の位置に垂直変位計を、D7〜D10の位置に水平変位計を設置しており、載荷中における各部位の変位を測定した。
曲げ試験では、このような試験体に対し、10kNピッチで載荷していき、具体的に、クラックの発生状況、セグメントピース中央部の垂直変位、支承部の垂直・水平変位等を測定した。ただし、試験中にクラックが発生した後は、これらの変位計により載荷ピッチを20kNに変更している。
図6は、曲げ試験の試験結果をまとめたグラフである。なお、フープ筋なしセグメントピースの結果は三角印、フープ筋ありセグメントピースの結果は円印でプロットしている。
図6に示すように、降伏に至るまでは、フープ筋ありセグメントピースは、フープ筋なしセグメントピースと比べて、荷重に対する変位が大きいが、降伏後は、変位が進行するにともなって支持荷重の減衰が小さいことが判る。ここで、フープ筋なしセグメントピースには、変位が47mm程で、周方向のひび割れ(すなわちセグメントピース内に生じた腹圧力によるひび割れ)が発生している。
そして、変位が53mm程以上になると、フープ筋ありセグメントピースの支持荷重が、フープ筋なしセグメントピースの支持荷重よりも大きくなる。
その後、フープ筋なしセグメントピースは、変位が68mm程で周方向のひび割れにより破壊したため、測定終了となった。
一方、フープ筋ありセグメントピースは、変位が62mm程でコンクリートが圧壊しながらも、腹圧力による周方向のひび割れは生じることなく、変位が82mm付近まで耐久した。
以上、説明したように本実施形態のセグメントピース10によれば、背面側主筋20と内面側主筋30と間に、これらの主筋と直交するように配筋されるフープ筋40を有することにより、セグメントピース10内に生じる腹圧力に対する抵抗力を向上させることができる。
また、上述したRCセグメントピースの内部に配筋されるフープ筋のように、主筋を外側から囲む場合には、セグメントピースの内面表面から鉄筋までの被り厚が、フープ筋の位置で局所的に小さくなる。このため、土圧等の押圧によりセグメントピース内に曲げモーメントが発生した際に、そのフープ筋の配筋位置周辺のコンクリートに応力が集中しやすくなり、セグメントピースの内面表面に、フープ筋に配筋位置に沿うようなひび割れが発生しやすくなる。
これに対し、本実施形態のセグメントピース10は、背面側主筋20と内面側主筋30との間にフープ筋40が配筋される。すなわち、RCセグメントピース内のフープ筋のように、主筋を外側から取り囲む構造と比べて、セグメントピースの内面表面から一番近い距離にある鉄筋は主筋となり、セグメントピース内面表面から鉄筋までの被り厚が局所的に小さくなるのを防止できる。これにより、フープ筋の配筋位置周辺のコンクリートへの応力の集中を抑制することができ、鋼繊維補強高流動コンクリートの特徴であるひび割れ分散性を十分に発揮することができる。
また、本実施形態のセグメントピース10によれば、セグメントピース10内に、フープ筋40として、周囲長の長い大フープ42と、周囲長の短い小フープ44とが配筋されていることにより、セグメントピース10内に発生する腹圧力に対する抵抗力を、より一層向上させることができる。
本実施形態に係るセグメントピース10の配筋を示す断面図である。 図1のセグメントピース10におけるフープ筋40の配筋位置を横切るE−E断面図である。 大フープ42及び小フープ44を拡大して示す図である。 曲げ試験に用いたセグメントピースの仕様を示す表である。 曲げ試験の概要を示す図であり、同図(a)は試験体の側面図、同図(b)は試験体の平面図である。 曲げ試験の試験結果をまとめたグラフである。
符号の説明
10 セグメントピース
20 背面側主筋
30 内面側主筋
40 フープ筋
42 大フープ
44 小フープ
50 配力筋

Claims (4)

  1. 鋼繊維補強高流動コンクリートからなるセグメントピースであって、
    前記セグメントピースの背面側に配置され、前記セグメントピースの周方向に延在するように配筋される背面側主筋と、
    前記セグメントピースの内面側に配置され、前記セグメントピースの周方向に延在するように配筋される内面側主筋と、
    前記背面側主筋と前記内面側主筋との間に配筋されるフープ筋と、を内部に有することを特徴とするセグメントピース。
  2. 前記フープ筋として、周囲長の異なるものが複数配筋されていることを特徴とする請求項1に記載のセグメントピース。
  3. 請求項1又は2に記載のセグメントピースを、複数用いて環状に組み立ててなることを特徴とするセグメントリング。
  4. 請求項3に記載のセグメントリングを、連続してトンネル軸方向に接続してなることを特徴とするトンネル覆工体。
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