JP2009191287A - 溶融金属保持容器及びその羽口補修方法 - Google Patents

溶融金属保持容器及びその羽口補修方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明は、容易且つ迅速に羽口の交換が可能な溶融金属保持容器及びその羽口補修方法を提供することを目的としている。
【解決手段】溶融金属を保持し、該溶融金属へ撹拌用ガス又は精錬用ガスを吹き込む羽口を底部に備えた溶融金属保持容器において、底部のレンガ積みに配置した羽口レンガの貫通孔に、該貫通孔に密着して嵌め込まれ、内部に羽口が配設されるテーパ付き筒状体を設けるようにした。この場合、前記溶融金属が溶銑又は溶鋼で、溶融金属保持容器が取鍋であることが好ましい。
【選択図】 図1

Description

本発明は、溶融金属保持容器及びその羽口補修方法に係わり、特に溶銑、溶鋼を保持して溶銑の予備脱燐処理、脱硫処理、あるいは溶鋼の真空脱ガス、脱炭、脱酸の二次精錬に用いられる取鍋、溶鋼を鋳型に鋳造する際の中間容器としてのタンディッシュ等、その内部に保持した溶銑、溶鋼へ撹拌用ガス又は精錬用ガスを吹き込む羽口を底部に備えた溶融金属保持容器の寿命延長技術に関する。
溶鋼等の溶融金属を溶製する際、該溶融金属を保持する容器1(以下、溶融金属保持容器という)の底部には、図2に示すように、1〜3個程度で配置した羽口2を介して、酸素又は不活性ガス等を吹き込み、溶融金属を撹拌することが行なわれる。その理由は、精錬の効果が一段と向上するからである。また、底部に配置する羽口2としては、図3に示すように、耐火物のブロック3中に多数の細いガス通路4を設けたり、金属細管5を埋め込んだもの、ガス通路4の平断面がスリット状を呈するもの、多孔質体6で構成したもの(ポーラス・プラグ6という)が利用される(例えば、特許文献1及び2参照)。なお、ポーラス・プラグ6は、ガスの流通部である多孔質体6とそれを支持する上細りのテーパを有するスリーブ耐火物7とが一体に構成されているものもある。ただし、この場合のスリーブ耐火物7は、あくまでも羽口2を形成する際のポーラス・プラグ6を支持するためのものである。
ところで、これらの羽口2は、それを介して溶融金属中へ吹き込まれるガスが通常常温であるため、溶融金属に対しての温度差による熱衝撃、且つ流速が大きいことによる磨耗等に起因して損耗する。そして、この羽口2の損耗が溶融金属保持容器1の寿命を律することになり、該溶融金属保持容器1(取鍋1という場合もある)の使用時には羽口2の補修、つまり補修の容易性及び迅速性が重要な問題となる。
現在の羽口2の補修方法としては、使用後に羽口2を肉眼観察し、図4に示すように、損耗が認められた場合、該取鍋1を、内張り耐火物の温度が400〜600℃とまだ高温にある状態(この状態を、以下に「熱間」と称する)で横倒し、作業員が工具を用いて、損耗した羽口2をその周囲を囲む羽口レンガ8(底部を構成する耐火レンガ9の中に積み込まれ、図5に示すように、羽口2を収納するサイズの貫通孔10を有している耐火部材)から抜き出し、新しい別の羽口と交換することで行われる。
ところが、損耗した羽口2を抜き出した跡の羽口レンガ8の貫通孔10の表面には、溶融金属の地金が付着していることが多く、酸素ガスで溶解、除去することもある。また、その溶解除去に際して、該貫通孔10の表面形状を変化させてしまうことも起きるし、羽口レンガ自体を破損してしまうこともある。この貫通孔10の表面疵は、羽口2と貫通孔10との間に隙間を生じさせる原因になり、溶融金属の漏れを起こすので、羽口レンガ自体の交換が必要となる。この羽口レンガ8の交換作業は、意外に大掛かりな作業となり、溶融金属保持容器1の内部に作業員が立ち入り、羽口レンガ8を壊して新しいものに交換する必要がある。従って、溶融金属保持容器1に作業員が立ち入れる程度の温度まで該溶融金属保持容器1を冷却することが必要となり、溶融金属保持容器1の下記で示す回転率が低下するという別の問題も生じる。
回転率(%)=[(稼動中の溶融金属保持容器数)/(稼動中の溶融金属保持容器数+修理中の溶融金属保持容器数)]×100
特開2007−262471号公報 特開2002−327218号公報
本発明は、かかる事情に鑑み、容易且つ迅速に羽口の交換が可能な溶融金属保持容器及びその羽口補修方法を提供することを目的としている。
発明者は、上記目的を達成するため鋭意研究を重ね、その成果を本発明に具現化した。すなわち、本発明は、溶融金属を保持し、該溶融金属へ撹拌用ガス又は精錬用ガスを吹き込む羽口を底部に備えた溶融金属保持容器において、底部のレンガ積みに配置した羽口レンガの貫通孔に、該貫通孔に密着して嵌め込まれ、内部に羽口が配設されるテーパ付き筒状体を設けたことを特徴とする溶融金属保持容器である。この場合、前記溶融金属が溶銑又は溶鋼で、溶融金属保持容器が取鍋であること、あるいは前記羽口が、耐火物のブロック中に多数の細いガス通路を設けたもの、金属細管を埋め込んだもの、前記ガス通路の平断面がスリット状を呈するもの、及び耐火物のブロックを多孔質体で構成したものの群から選ばれたいずれかであることが好ましい。
また、本発明は、上記した羽口群のいずれかに記載の溶融金属保持容器の羽口を補修するに際して、内部に保持した溶融金属を排出し、底部耐火物の温度が400〜600℃のまだ高温状態にある溶融金属保持容器を横倒し、前記羽口を前記テーパ付き筒状体から抜き出し、熱間で新規なものに交換することを特徴とする溶融金属保持容器の羽口補修方法である。
本発明によれば、羽口の他に、その周囲を囲み、羽口レンガの貫通孔に内挿され、羽口の抜き出し時における該貫通孔の表面破損を防止する筒状体を設けるようにしたので、溶融金属保持容器の羽口補修が容易、且つ迅速にできるようになる。その結果、溶融金属保持容器の寿命が従来に比して1.2倍と格段に向上し、設備コストの削減が期待される。
以下、発明をなすに至った経緯もまじえ、発明の最良の実施形態を説明する。
まず、発明者は、従来の溶融金属保持容器の前記した問題点(羽口レンガから羽口を抜き出した跡の地金の溶解除去に際して、羽口レンガの貫通孔の表面形状を変化させてしまうこと及び羽口レンガ自体の破損)を解消する対策を鋭意検討した。その結果、溶融金属保持容器の底部のレンガ積み(不定形耐火物であっても良い)に配設され、羽口を支持する羽口レンガの貫通孔と羽口との間に、羽口レンガの表面を保護する部材を介在させるのが良いと考え、この考えを具体化することで本発明を完成させた。
つまり、図1に示すように、羽口レンガ8の貫通孔10(図1では、羽口2が嵌め込まれている)に密着して嵌め込まれ、内部には羽口2が配設されるテーパ付き筒状体11を設けるのである。羽口レンガ8をこのような構成にすると、羽口2は該テーパ付き筒状体11から抜きだすことになり、筒状体11の破損があっても、羽口レンガ8の貫通孔10を傷めることが防止できるからである。
ここで、筒状体11は、羽口レンガ8の貫通孔10へ嵌め込んだ際に上部になる側の外径が下部側よりも小さい、つまり下拡大のテーパを有する形状である。羽口レンガ8の貫通孔外周と密接する必要があるからである。また、該筒状体11の内径は、採用する羽口2の外周と密接するように、該羽口2の外周形状と一致させる必要があり、厚みは、溶融金属保持容器1の使用時に溶損等の問題を起こさない程度にする。この厚みによって、採用する羽口2のサイズを決定する配慮も必要である。さらに、その材質には、耐溶損性や耐スポーリング性を要求されるが、溶融金属の精錬に使用実績のある羽口レンガ8の材質とほぼ同等のもので良い。
本発明に係る溶融金属保持容器1の使用対象である溶融金属は、特に限定しないが、溶銑又は溶鋼であることが好ましい。該容器に内張りする耐火物の研究が進み、適正な使用ができるからである。従って、前記筒状体11の材質としては、MgO−Al系耐火物、Al−SiO系耐火物、ハイアルミナ質耐火物、Al−Cr系耐火物等が好ましく利用できる。また、溶融金属保持容器1としては、転炉等の炉方式のものよりも、取鍋、タンディッシュ等であることが好ましい。補修作業が行い易いからである。
さらに、使用する羽口2は、溶融金属の精錬に実績のある公知のものが全て利用できる。つまり、前記したような、耐火物のブロック3中に多数の細いガス通路4を設けたもの、金属細管5を埋め込んだもの、前記ガス通路4の平断面がスリット状を呈するもの、及び耐火物のブロック3を多孔質体(ポーラス・プラグ6)で構成したものの群から適宜選択すれば良い(図3参照)。
次に、本発明に係る溶融金属保持容器の羽口補修方法は、前記筒状体11を有効に利用することで行う。つまり、内部に保持した溶融金属を排出し、底部耐火物(レンガ積み、不定形耐火物)の温度が400〜600℃のまだ高温状態にある時に(溶融金属を排出後10分経過程度で達成)、補修作業場において、図4で既に示したように、溶融金属保持容器1を傾けて横倒しする。そして、作業員が該容器1の底の外側から羽口2を油圧機器等のマニピュレータ15を用いて、テーパ付き筒状体11から抜き出す。羽口2だけが抜けて、その抜き跡に地金付着がなく、筒状体11が健全な場合には、直ちに新しい羽口2を容器1の外側から筒状体11に嵌め込む羽口2の交換作業を行う。一方、前記羽口2の抜き出し時に、羽口2だけが抜けずに、テーパ付き筒状体11の表面が傷ついたり、破損することもある。そのような場合には、該筒状体自体を羽口レンガ8の貫通孔10から引き抜いて除去する。そして、その抜き出し跡に、予じめ準備してある新しい別の筒状体11及び羽口2の嵌めこみを行う。なお、これらの補修作業は、後者の場合でも10分程度の時間で達成できることを確認した。また、補修作業を開始する際の容器底部耐火物の温度を400〜600℃としたのは、400℃未満では冷却に時間がかかり過ぎるし、600℃超ではまだ暑くて作業員の作業環境上、好ましくないからである。
転炉で一次精錬した250トンの溶鋼12をガス底吹き羽口2を備えた取鍋1に出鋼し、所謂「LF」法による二次精錬を行った(図5参照)。この場合、溶融金属12としての溶鋼は、転炉からの出鋼時にスラグ除去が完全になされている。
その二次精錬は、まず、溶鋼12にAl系のフラックス18(スラグを形成するためのもの)を添加し、電極17による加熱で昇温してからアルミニウムを投入して脱酸し、その後は羽口2より吹き込んだ流量500リットル/minのアルゴン・ガス13で溶鋼12を撹拌しながら、形成されたスラグでの還元精錬を行うものである。その際に、取鍋として本発明に係る溶融金属保持容器1を採用し、多数チャージにわたる操業を行った。該溶融金属保持容器1(以下、取鍋1という)の底部の羽口レンガ8には、該羽口レンガ8の貫通孔10を保護するため、テーパ付き筒状体11が嵌め込まれ、その中に羽口2を配設した。該筒状体11の材質は、羽口レンガと同材質のAl−MgO系耐火物で、その製作は、耐火物成形体の製作において公知のラバープレスにて行った。羽口2の種類は、図3に示した所謂「ポーラスプラグ」6であり、その材質は、Alで、形状やサイズは、筒状体11に密接するように形成されている。
操業開始から各チャージの出鋼毎に、空の取鍋底部を観察し、羽口2の損耗状況を観察した。そして、損耗が認められ、補修が必要と判断した場合には、前記した本発明に係る羽口補修方法で、羽口2の交換作業を行った。その補修作業は、極めて円滑に行われ、何らの障害も起きなかった。このような補修作業を継続して行ったが、操業が130チャージを経過した際に羽口レンガ8の損耗も交換が必要と認められるようになったので、取鍋の寿命と判断し、使用を停止した。このチャージ数は、羽口レンガ8にテーパ付き筒状体11を有していない従来の操業での結果(108チャージ)と比べると、1.2倍にもなり、取鍋の寿命が格段に延長されることが確認できた。
本発明に係る溶融金属保持容器を示す縦断面図である。 従来の溶融金属保持容器を示す縦断面図である。 取鍋の底部に配置される羽口の種類を示す図であり、(a)は耐火物ブロック中に細いガス通路を設けたもの又は金属細管を埋め込んだもの、(b)はスリット状ガス通路を有するもの、(c)はブロックを多孔質体で構成したものである。 取鍋の底部に配置した羽口を熱間で補修する様子を示す模式図である。 羽口レンガの一例を示す斜視図である。 所謂「LF法」による操業を示す模式図である。
符号の説明
1 溶融金属保持容器(例えば、取鍋)
2 羽口
3 耐火物のブロック
4 細いガス通路
5 金属細管
6 耐火物の多孔質体(ポーラス・プラグともいう)
7 スリーブ耐火物
8 羽口レンガ
9 取鍋底部を構成する耐火レンガ
10 貫通孔
11 テーパ付き筒状体
12 溶融金属(溶鋼)
13 アルゴン・ガス
14 スリット状ガス通路
15 マニピュレータ
16 棒材
17 加熱用の電極
18 フラックス

Claims (4)

  1. 溶融金属を保持し、該溶融金属へ撹拌用ガス又は精錬用ガスを吹き込む羽口を底部に備えた溶融金属保持容器において、
    底部のレンガ積みに配置した羽口レンガの貫通孔に、該貫通孔に密着して嵌め込まれ、内部に羽口が配設されるテーパ付き筒状体を設けたことを特徴とする溶融金属保持容器。
  2. 前記溶融金属が溶銑又は溶鋼で、溶融金属保持容器が取鍋であることを特徴とする請求項1記載の溶融金属保持容器。
  3. 前記羽口が、耐火物のブロック中に多数の細いガス通路を設けたもの、金属細管を埋め込んだもの、前記ガス通路の平断面がスリット状を呈するもの、及び耐火物のブロックを多孔質体で構成したものの群から選ばれたいずれかであることを特徴とする請求項1又は2記載の溶融金属保持容器。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の溶融金属保持容器の羽口を補修するに際して、
    内部に保持した溶融金属を排出し、底部耐火物の温度が400〜600℃のまだ高温状態にある溶融金属保持容器を横倒し、前記羽口を前記テーパ付き筒状体から抜き出し、熱間で新規なものに交換することを特徴とする溶融金属保持容器の羽口補修方法。
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