JP2009185945A - 無段変速機用ベルトのエレメント - Google Patents

無段変速機用ベルトのエレメント Download PDF

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Abstract

【課題】挟圧力が曲げ荷重として作用する柱部を備えているエレメントの応力集中を抑制して耐久性を向上させる。
【解決手段】姿勢を揃えて環状に配列された状態で、幅方向および高さ方向での中央部に形成されたサドル面9に挿通させて配置したリング8によって結束され、かつ前記サドル面9の両側部に、プーリ13の巻き掛け溝14の内面15に接触する柱部10aが上下方向に延びて形成されている、無段変速機用ベルトのエレメントであって、前記巻き掛け溝14の内面15に接触して挟圧力を受ける側面12を有し、その側面12に、潤滑油を保持させる微細な凹部16が多数形成され、前記側面12のうち前記柱部10aの根本に相当する部分の応力集中係数が前記側面12の他の部分における応力集中係数より小さくなっている。
【選択図】図1

Description

この発明は、プーリの巻き掛け溝に挟み込まれてトルクを伝達するベルトに関し、特に円環状に配列されて環状の帯状材で結束されることによりベルトを構成するエレメントに関するものである。
車両用の無段変速機に用いられるベルトとして、ブロックもしくはエレメントと称される金属片を、多数、環状に配列し、それらの金属片を無端キャリヤ(リングもしくはフープと称されることもある)によって結束した構成のものが知られている。この種のベルトは、互いに接触して配列されている金属片同士の押圧力によってトルクを伝達するように構成されたものであり、駆動側のプーリにおける巻き掛け溝に挟み込まれた金属片が、そのプーリが回転することによりその巻き掛け溝から順次押し出されて先行する金属片を押圧し、こうして前進させられる金属片が従動側のプーリにおける巻き掛け溝に進入することにより、金属片の進行に伴って従動側のプーリにトルクが伝達される。
このようなベルトの一例が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載されたベルトは、ボディ部の左右両側部がプーリに接触するフランク部とされ、そのフランク部に潤滑油を保持させるために微細な凹凸部が形成され、またボディ部の上部で幅方向での中央部に、ネック部が上方に突出して形成されている。そして、ボディ部の上面すなわちネック部の左右両側の部分が、リングを挿通させて接触させるサドル面とされている。なお、ネック部の先端側にはヘッド部が一体に形成され、そのヘッド部の左右両側の部分は、サドル面の上側に延び出たイヤー部とされており、リングの一側部をそのイヤー部とサドル面との間に挿入させるように構成されている。
また、特許文献2には、上記のエレメントに相当するブロックの幅方向での中央部に、前記リングに相当する無端キャリヤを配置するように構成されたベルトが記載されている。すなわち、特許文献2に記載されたベルトは、ほぼ台形状をなす多数のブロックをそれぞれ環状をなす二条の無端キャリヤで結束して、全体として環状に構成されている。そのブロックは、短辺側が内周側となるように環状に配列されその配列状態での左右両側部が、プーリにおけるV字状の巻き掛け溝のテーパ状の内面に対応して傾斜している。また、上下方向および幅方向のほぼ中央部には、無端キャリヤを巻き掛けるサドル面が形成されている。
さらに、無端キャリヤがサドル面から抜け出ることを防止するため、言い換えれば、ブロックが無端キャリヤから外れることを防止するための係止部が設けられている。これらの係止部は、サドル面の左右両側部あるいはサドル面に載せられている無端キャリヤの左右両側部の上側を覆うものであって、サドル面の左右両側で立ち上がった逆L字状の部分であり、各係止部同士の間は開いていてサドル面に対する開口部となっている。そして、特許文献2に記載されたベルトは、オイルによる潤滑を必要としない乾式圧縮伝動ベルトであり、ブロック同士が接触する面にはフッ素樹脂によるコーティングが施されている。
特開2004−324873号公報 特開2000−249195号公報
上述した各特許文献に記載されたベルトは、プーリとの間の伝達トルク容量を確保するために、プーリによってベルトを挟み付けて使用されるので、ベルトを構成している前記エレメントあるいはブロックには圧縮荷重が作用する。特許文献1に記載された構成では、そのボディ部の側面がプーリに接触して挟圧力を受けるので、挟圧力はボディ部の圧縮力として作用する。しかしながら、特許文献2に記載されている構造では、サドル面がブロックの幅方向でのほぼ中央部に形成され、その両側の部分が係止部として上下方向に延び出しており、さらにその係止部での側面もプーリに接触させられてトルク伝達を行う面となっているから、この係止部においては、挟圧力が曲げ荷重として作用する。
特許文献2に記載されたベルトは、前述したように、オイルによる潤滑を行わないタイプであるから、特許文献1に記載されている潤滑油のための微小凹凸部を設ける余地はない。しかしながら、特許文献2に記載されているブロックの形状は、オイルで潤滑するタイプのベルトにおけるエレメントに転用することを積極的に否定するものではないので、特許文献2に記載されている形状のブロックの側面に潤滑油を保持させるためのフランク溝あるいは凹凸部を形成することも考えられる。
このような構成について検討すると、サドル面から上下方向に延び出ている係止部は、いわゆる片持ち状であって挟圧力が曲げ荷重として作用するから、その根本部分での曲げ応力が最も大きくなるのに対して、ブロックの側面のうちその根本部分に対応する部分にもフランク溝もしくは凹凸部が形成されることになる。そのフランク溝あるいは凹凸部は、潤滑油を可及的に均等に分散させて油膜を維持させるように形成する必要があると同時に、プーリに対する接触面すなわちトルク伝達面の面積の減少をできるだけ少なくする必要があるので、微細な溝もしくは凹凸部として形成することになる。
したがって、フランク溝あるいは凹凸部を形成すると、ブロックもしくはエレメントの側面に微細な切り込みを入れた状態になる。その結果、曲げ荷重が作用する係止部の根本部分では、フランク溝あるいは凹凸部を形成したことが要因となって応力集中係数が大きくなり、ブロックもしくはエレメントの耐久性が低下し、ひいてはベルトの耐久性が低下する可能性がある。このような不都合を解消するために、係止部あるいはこれに準ずる片持ち状の部分の根本部分の厚さを厚くしたり、幅を広くすると、ブロックあるいはエレメントが大型化し、ひいてはベルトが大型化したり、重量が増大したりする可能性がある。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、リングを幅方向での中央部分に配置して結束されるエレメントであって、プーリとの間に潤滑油を保持でき、しかも耐久性に優れ、また大型化を回避もしくは抑制することのできる無段変速機用ベルトのエレメントを提供することを目的とするものである。
この発明は、上記の目的を達成するために、曲げ応力が大きくなる箇所の応力集中係数を下げるように構成したことを特徴とするものである。具体的には、請求項1の発明は、姿勢を揃えて環状に配列された状態で、幅方向および高さ方向での中央部分に形成されたサドル面に挿通させて配置したリングによって結束され、かつ前記サドル面の両側部に、プーリの巻き掛け溝の内面に接触する柱部が上下方向に延びて形成されている、無段変速機用ベルトのエレメントにおいて、前記プーリの巻き掛け溝の内面に接触して挟圧力を受ける側面を有し、その側面に、潤滑油を保持させる微細な凹部が多数形成され、前記側面のうち前記柱部の根本に相当する部分の応力集中係数が前記側面の他の部分における応力集中係数より小さくなっていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記側面のうち前記柱部の根本に相当する部分に形成されている前記凹部の内面の曲率半径が、前記側面の他の部分における前記凹部の内面の曲率半径より大きいことにより、前記側面のうち前記柱部の根本に相当する部分の応力集中係数が前記側面の他の部分における応力集中係数より小さくなっていることを特徴とする無段変速機用ベルトのエレメントである。
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記側面のうち前記柱部の根本に相当する部分は前記凹部が形成されずに平坦面とされ、かつ前記側面の他の部分に前記凹部が形成されていることにより、前記側面のうち前記柱部の根本に相当する部分の応力集中係数が前記側面の他の部分における応力集中係数より小さくなっていることを特徴とする無段変速機用ベルトのエレメントである。
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明において、前記凹部は、前記側面に、厚さ方向に向けて形成された溝であることを特徴とする無段変速機用ベルトのエレメントである。
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明において、前記柱部の根本に相当する部分は、前記サドル面を延長した位置に相当する部分であることを特徴とする無段変速機用ベルトのエレメントである。
請求項1の発明によれば、柱部がサドル面から立ち上がって片持ち状に延びており、その柱部の側面もプーリの巻き掛け溝の内面に接触して荷重を受けるので、柱部の根本の部分に大きい曲げ応力が作用する。そして、プーリの巻き掛け溝の内面に接触する側面には潤滑油を保持させる微細な凹部が多数形成されているが、その側面のうち柱部の根本に相当する部分では応力集中係数が他の部分より小さくなっているので、当該部分の曲げ強度が大きく、その結果、エレメントの耐久性を向上させることができる。言い換えれば、柱部の根本に相当する部分の幅を大きくしたり、厚肉にする必要がないので、大型化を回避もしくは抑制することができる。
請求項2の発明によれば、エレメントの側面に形成する凹部の形状を部分的に変えることにより、その側面のうち柱部の根本に相当する部分での応力集中係数を他の部分より小さくすることができる。
請求項3の発明によれば、エレメントの側面に形成する凹部をその側面のうち柱部の根本に相当する部分では形成せずに、当該部分を平坦面とすることにより、すなわち曲率半径が実質的に無限大の面とすることにより、その側面のうち柱部の根本に相当する部分での応力集中係数を他の部分より小さくすることができる。
請求項4の発明によれば、潤滑油を保持するために形成されるいわゆるフランク溝の構成を一部変更することにより、プーリから荷重を受ける側面のうち柱部の根本に相当する部分での応力集中係数を他の部分より小さくすることができる。
請求項5の発明によれば、柱部はサドル面から立ち上がっている構造であり、したがってサドル面を延長した位置に相当する部分の側面で応力集中係数を下げることにより、柱部の根本に相当する部分の曲げ強度を増大させ、エレメントあるいはベルトの耐久性を、大型化を招来することなく、向上させることができる。
つぎに、この発明をより具体的に説明する。先ず、この発明で対象とするベルトについて説明すると、この発明で対象とするベルトは、無段変速機に使用されるものであり、プーリの外周部に形成された断面V字状の巻き掛け溝の内部に挟み込まれ、その結果、プーリとの間で生じる摩擦力でトルクを伝達するように構成されている。その一例を図4に模式的に示してあり、ベルト1は無段変速機を構成している駆動プーリ2と従動プーリ3とに巻き掛けられている。これらの各プーリ2,3は、テーパー面をそれぞれ備えた固定シーブと可動シーブとを対向させて配置することにより、これらのシーブの間に断面V字状の巻き掛け溝4が形成され、その可動シーブを油圧シリンダなどのアクチュエータ5によって固定シーブに対して前後動させることにより、巻き掛け溝4の幅を変化させるように構成されている。
このようにして使用されるこの発明で対象とするベルトは、全体として環状をなし、かつ両側面がV字状もしくはテーパ状をなすように、多数のエレメントをリングで環状に結束して構成されている。上記の図4に示すベルト1を構成しているエレメント6の例を図1に示してある。このエレメント6は、金属製の板片であり、同一の形状および寸法のものが、姿勢を揃えて円環状に配列される。したがって、各エレメント6が平行に並ばずにベルト1の曲率中心を中心としていわゆる扇状(放射状)に開いた状態に配列される箇所が必ず生じる。
各エレメント6を互いに接触させた状態で扇状に開いた配列を可能にするために、エレメント6にはロッキングエッジ7が形成されている。このロッキングエッジ7は、具体的には、エレメントの厚さが変化する境界線もしくは境界領域であり、エレメント6の高さ方向での中央部分(すなわち上端部と下端部との間の部分)に幅方向(プーリの回転中心軸線と平行な方向)に延びて形成されている。すなわち、ベルト1がプーリ2,3に巻き掛かった状態では、エレメント6の上側(ベルト1としては外周側)の周長が長くなるので、エレメント6同士の間隔が広くなり、これとは反対にエレメント6の下側(ベルト1としては内周側)の周長が短くなるので、エレメント6同士の間隔が狭くなる。そのため、エレメント6の下側の部分は、下端側で薄くなるように構成されており、このように板厚がエレメントの上側と下側とで変化する箇所がロッキングエッジ7となっている。したがって、各エレメント6は、ロッキングエッジ7を中心にして板厚方向に回転し、すなわちピッチングが生じて、上記のように扇状に開くようになっている。なお、このロッキングエッジ7は表裏両面のいずれか一方に形成されていればよい。
また、各エレメント6にはリング8を載せる(配置させる)サドル面9が形成されている。そのサドル面9には、多数のエレメント6を結束しているリング8が接触しているので、ベルト1がトルクを伝達している状態ではその接触圧が大きくなるのに対して、エレメント6が直線状に配列されている状態からプーリ2,3に巻き掛かって扇状に開く場合にはリング8とサドル面9との間に摺動が生じ、それに伴って大きい摩擦力が生じる。この摩擦力によるモーメントが大きくならないように、サドル面9は前述したロッキングエッジ7に可及的に近い位置に形成されている。より具体的にはサドル面9より図1での上側の板厚が厚く、下側が薄くなっているので、サドル面9を左右両方向に延長した位置がロッキングエッジ7となっている。したがって、サドル面9は各エレメント6の上下方向での中央部分(すなわち上端部と下端部との間の部分)に形成されている。
この発明で対象とするベルト1におけるリング8は、薄い金属帯を積層して構成され、前記サドル面9に配置されてエレメント6を結束するように構成されている。図1にはそのリング8を二条(二本)サドル面9上に並列に配置した例を示してあるが、この発明においてはリング8は一条(一本)であってもよく、その数は問わない。図1に示す例では、サドル面9は、並列させて配置した二条のリング8の幅以上の幅に形成されている。
この発明に係るベルトにおいても、リングは、サドル面に載っていて、各エレメントが環状の配列を維持するように各エレメントを結束し、各エレメントが半径方向で外側に離脱しないように作用するが、これだけでなく、エレメントがプーリの巻き掛け溝から送り出される際にエレメントを巻き掛け溝から引き抜く作用も行う。そのため、リングがエレメントから半径方向で外側に抜け出ないようにするために、リングをサドル面との間に挟んだ状態に保持するフック部が設けられている。
その例を説明すると、図1において、エレメント6の左右両側に、サドル面9から上方向に延びてサドル面9の上側の一部を覆うフック部10が設けられている。このフック部10は、図1に示すように、サドル面9から図1での上方に延び出ている柱部10aとその柱部10aから幅方向での中心側に向けて延びて前記サドル面9の両側部を覆う鉤部10bとから構成されている。したがって、フック部10は、サドル面9に並列に配置したリング8の左右の側縁部を、鉤部10bとサドル面9との間に緩く挟み込むようになっている。
フック部10の先端部同士すなわち鉤部10b同士は離れていて、ここにサドル面9に対する開口部11が形成されている。そのフック部10同士の間隔、言い換えれば、サドル面9の開口幅は、一本のリング8の幅より広く、かつ二本のリング8の幅を合算した寸法より小さくなっている。
さらに、各エレメント6の左右両側面(すなわちフランク面)12は、プーリ13における巻き掛け溝14の内面15に接触してトルクの伝達を行う面であり、巻き掛け溝14の内面15と平行になっている。そして、これらのフランク面12に、潤滑油を保持するための微小な凹部が形成されている。この凹部は、一例として1mm以下のピッチで、数十μm程度の深さに形成されている。その具体例は、各フランク面12に板厚方向に向けて形成された多数条のフランク溝16である。図1にはそのフランク溝16を誇張して記載してあり、実際のフランク溝16は、曲率半径が0.1〜0.2mm程度の円弧状の内面を備えた、深さが数十μm程度の溝である。
そのフランク溝の形状は、エレメント6の高さ方向での中央部と上部および下部とで異なっている。これは、曲げ応力が大きくなる前記柱部10aの根本部分での応力集中係数を小さくするためであり、図1に示す例では、前記フランク面12のうち前記柱部10aの根本に相当する部分におけるフランク溝16Aの内面の曲率半径R0が、上部および下部に形成されているフランク溝16の内面の曲率半径R1より大きくなっている。
ここで、応力集中係数は、集中応力のピーク値の基準応力に対する割合であって、主として応力集中要素の形状と荷重形式によって決まる形状係数である。その一例として、二点で支持したテストピースの中央部に所定の曲率半径の切り欠き部を形成し、その切り欠き部に荷重を掛けた場合の集中応力と曲率半径との関係を模式的に示すと、図2のとおりである。すなわち、曲率半径が大きくなるほど集中応力は基準応力に近付き、応力集中係数は「1」程度になる。これとは反対に曲率半径が小さくなると、応力集中係数が次第に大きくなり、基準応力を増大させた応力が局部的に作用することになる。
また、この発明においてフランク面12のうち柱部10aの根本に相当する部分とは、要は、エレメント6をプーリ13で挟み付けることに伴って柱部10aに作用する曲げ応力が最も大きくなる箇所を中心とした所定の領域であり、具体的には、サドル面9の延長位置(あるいはロッキングエッジ7の延長位置)を中心とした上下の所定の範囲である。なお、その範囲は、応力集中の低減効果や潤滑油の保持作用などを考慮して実験的に決定すればよい。また、その範囲内に形成する曲率半径の大きいフランク溝16Aの数は、必要に応じて適宜に決めればよく、一本あるいは複数本のフランク溝16Aを設けてよい。
したがって、この発明に係る図1に示すエレメント6においては、柱部10aの根本部分での曲げ応力の集中が抑制もしくは緩和されるので、エレメント6あるいはこれを使用したベルト1の耐久性が向上する。また、応力集中を緩和もしくは抑制できることにより、部分的に幅あるいは厚さを増大させる必要がなく、その結果、エレメント6あるいはこれを使用したベルト1の大型化が回避もしくは抑制される。さらに、図1に示す構成では、応力集中係数を小さくした箇所にもフランク溝16Aが形成されていて、ここに潤滑油を保持することができるから、ベルト1とプーリ13との間の潤滑や冷却を効果的に行うことができる。
なお、この発明は上述した具体例に限定されないのであり、要は、大きい曲げ応力が生じる箇所の応力集中係数が小さくなるように構成されていればよい。例えば、図3に示すように、フランク溝16が形成されていない平坦部16Bを、エレメント6の左右のフランク面12のうち柱部10aの根本に相当する部分に形成してもよい。この平坦部16Bは曲率半径が無限大の曲面と言うことができ、プーリ13における巻き掛け溝14の内面15と平行で、プーリ13に巻き掛かった状態では巻き掛け溝14の内面15に接触する面として形成されている。なお、この平坦部16Bを形成する範囲は、前述した曲率半径が相対的に大きい内面を有するフランク溝16Aが形成される範囲と同じであってもよい。
図3に示すように構成したエレメント6であっても、柱部10aの根本部分での応力集中係数が小さくなり、この部分での実質的な応力を抑制できるので、エレメント6あるいはこれを使用したベルト1を大型化することなくその耐久性を向上させることができる。
さらに、この発明は上述した各具体例に限定されないのであり、二条のリングを有するベルトに使用されるエレメントに限らず、一条のリングで結束されるエレメントであってもよい。また、この発明で対象とするエレメントの柱部は、要は、上下方向(プーリに巻き掛かっている状態ではプーリの半径方向)に片持ち状に延び出ており、かつプーリによる挟圧力が曲げ荷重として作用する部分であり、上述したフック部10に限られない。例えば前述した開口部11を閉じる部材の両端部を固定するように、エレメントの左右両側部に片持ち状に突出させて形成された部分であってもよい。なおまた、上述した各具体例では説明していないが、各エレメントには整列状態での相互の位置を維持するためのディンプルなどの凸部とこれが嵌合するホールなどの凹部とを正面側と背面側とに形成してもよい。
この発明に係るエレメントの一例を示す正面図である。 応力集中係数を説明するための図であって、テストピースに形成した切り欠き部の曲率半径と集中応力との関係を示す図である。 この発明に係るエレメントの他の例を示す正面図である。 この発明で対象とするベルトを用いた無段変速機の模式図である。
符号の説明
1…ベルト、 6…エレメント、 8…リング、 9…サドル面、 10…フック部、 10a…柱部、 10b…鉤部、 11…開口部、 12…フランク面、 13…プーリ、 14…巻き掛け溝、 16,16A…フランク溝、 R0,R1…曲率半径、 16B…平坦部。

Claims (5)

  1. 姿勢を揃えて環状に配列された状態で、幅方向および高さ方向での中央部分に形成されたサドル面に挿通させて配置したリングによって結束され、かつ前記サドル面の両側部に、プーリの巻き掛け溝の内面に接触する柱部が上下方向に延びて形成されている、無段変速機用ベルトのエレメントにおいて、
    前記プーリの巻き掛け溝の内面に接触して挟圧力を受ける側面を有し、
    その側面に、潤滑油を保持させる微細な凹部が多数形成され、
    前記側面のうち前記柱部の根本に相当する部分の応力集中係数が前記側面の他の部分における応力集中係数より小さくなっている
    ことを特徴とする無段変速機用ベルトのエレメント。
  2. 前記側面のうち前記柱部の根本に相当する部分に形成されている前記凹部の内面の曲率半径が、前記側面の他の部分における前記凹部の内面の曲率半径より大きいことにより、前記側面のうち前記柱部の根本に相当する部分の応力集中係数が前記側面の他の部分における応力集中係数より小さくなっている
    ことを特徴とする請求項1に記載の無段変速機用ベルトのエレメント。
  3. 前記側面のうち前記柱部の根本に相当する部分は前記凹部が形成されずに平坦面とされ、かつ前記側面の他の部分に前記凹部が形成されていることにより、前記側面のうち前記柱部の根本に相当する部分の応力集中係数が前記側面の他の部分における応力集中係数より小さくなっている
    ことを特徴とする請求項1に記載の無段変速機用ベルトのエレメント。
  4. 前記凹部は、前記側面に、厚さ方向に向けて形成された溝であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の無段変速機用ベルトのエレメント。
  5. 前記柱部の根本に相当する部分は、前記サドル面を延長した位置に相当する部分であることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の無段変速機用ベルトのエレメント。
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