JP2009179747A - 新規アゾメチン組成物、その成形体、及びそれを含む電子機器 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、置換基をもたないジアミン(安価に入手可能な原料)を用いても、溶解性にすぐれ、且つ、剛直な構造の新規アゾメチン組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、1,3-ジアミノベンゼンまたは、2,4-ジアミノトルエンとテレフタルアルデヒドを組み合わせて合成される、末端にアミノ基を有する芳香族アゾメチン化合物に対して、さらにエポキシ樹脂を添加したことを特徴とする新規アゾメチン組成物を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐熱、機械的強度に優れた硬化物を得ることができる新規アゾメチン組成物、その成形体、及びそれを含む電子機器に関する。
芳香族ジアミンと芳香族ジアルデヒドを混合加熱して得られる芳香族アゾメチン樹脂は、硬く、耐熱性に優れることから、電子・電気機器用途の材料としてのみならず、宇宙分野や航空分野から電子通信分野まで幅広く応用が期待されている樹脂である。
特に、フェニレンジアミンとテレフタルアルデヒドの組み合わせの芳香族アゾメチンは、共役2重結合が分子鎖に沿って繋がることから、極めて剛直な構造となる。また、ドープを行えば、導電性の発現も可能である。
しかしこの種の芳香族アゾメチンは、その剛直さ故に、溶剤への溶解性が低く、キャストによるシート成形は困難とされていた。
この課題を解決するために例えば、側鎖に置換基をもった芳香族アゾメチンの合成の試みがなされている(非特許文献1)。
しかしながら、置換基をもった芳香族ジアミンや芳香族ジアルデヒドは、原料として一般的ではないため、実用化には問題を有していた。
上記事情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、置換基をもたないジアミン(安価に入手可能な原料)を用いても、溶解性にすぐれ、且つ、剛直な構造の新規アゾメチン組成物を提供することにある。
AliG.El-Shekeil, Polymer International 44 (1997) 78-82
本発明者らは、上記課題に対して鋭意研究を行った結果、置換基はもたなくても、ジアミンがパラ配置でない原料を用いた場合に(具体的にはメタ配置の場合に)、たとえ共役がつづく剛直な分子構造であっても溶解性に優れる芳香族アゾメチンが得られることを見出した。
しかしながら、分子が湾曲するために、得られる芳香族アゾメチン樹脂の分子量は低く、高強度を得るに十分なものではなかった。
そこで、上記芳香族アゾメチン樹脂の末端がアミノ基となるように合成を制御した上で、さらに添加剤として、エポキシ樹脂を混合した組成物を作成することで、強度、剛直性、溶解性の全てにバランスがとれた樹脂が得られることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
1. 1,3ジアミノベンゼンまたは、2,4-ジアミノトルエンとテレフタルアルデヒドを組み合わせて合成される、末端にアミノ基を有する芳香族アゾメチン化合物に対して、さらにエポキシ樹脂を添加したことを特徴とする新規アゾメチン組成物。
本発明によれば、溶解性にすぐれ、且つ、剛直な構造の新規アゾメチン組成物を提供することができる。
本発明によって得られる新規アゾメチン組成物を加熱成形して得られる成形体は、耐熱性及び機械的強度に優れているため、電気・電子部品、自動車部品、銅張り積層基板、プリント基板、耐火コーティング、複合材マトリクス樹脂等に好適に用いることが可能である。
以下、本発明について、その好ましい実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明のアゾメチン組成物は、既述の通り、1,3-ジアミノベンゼンまたは、2,4-ジアミノトルエンとテレフタルアルデヒドを組み合わせて合成される、末端にアミノ基を有する芳香族アゾメチン化合物に対して、さらにエポキシ樹脂を添加したことを特徴とする。
本発明のアゾメチン組成物は、このような構成からなるものであるため、溶解性にすぐれ、且つ、剛直な構造のものとなる。
本発明の組成物に含まれる、新規アゾメチン化合物の構造例を下記に示す。
Figure 2009179747
(式1):新規アゾメチン化合物の構造例
(メタ配置成分として2,4-ジアミノトルエンを使用)
本発明に用いられるアゾメチン化合物の特徴は、2重結合と1重結合が交互に続くいわゆる共役構造で剛直な分子構造にも関わらず溶剤への溶解性が高いことである。溶解性が高い理由としては、構成成分にメタ配置の芳香族を用いて、分子を強制的に湾曲させ、多くの自由体積を抱え込むことにあると考えられる。このような分子構造では分子鎖間の会合が阻害されると考えられる。
本発明に係るアゾメチン化合物を得るためには、剛直構造を与えるとともに分子に湾曲構造を与える目的で用いられるジアミンとしての、1,3ジアミノベンゼンまたは、2,4-ジアミノトルエンが用いられる。
本発明では、剛直構造を与えるジアルデヒドとして、テレフタルアルデヒドを用いる。
本発明に係る新規アゾメチン化合物は、分子鎖を強制的に湾曲させるために、重合により高分子量を得ることは難しい。実際に重合される上記新規アゾメチン化合物の分子量は5000(重量平均分子量)以下であり、強度的に十分とはいえない。
そこで、本発明では、ジアミンとジアルデヒドのモル比を前者過剰とすることで上記新規アゾメチン化合物の末端がアミノ基となるようにコントロールした上で、さらにエポキシ樹脂を添加して組成物を作成する。
本発明に用いられるエポキシ樹脂の添加理由は、アミノ基と反応して、全体の分子量を増加させることにある。エポキシ樹脂としては、特に限定されず、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂、等いずれのエポキシ樹脂を用いても効果がある。
[新規アゾメチン化合物の製造方法]
本発明に係る新規アゾメチン化合物は、いかなる方法で製造されてもよく、例えば、以下に示すスキームに従って製造することができる。
本発明に係るアゾメチン化合物は、基本的には、前述した芳香族ジアルデヒドおよび芳香族ジアミンを混合して、必要に応じて溶媒を加え、加熱攪拌する方法で合成することができる。
配合比率に関しては、合成される芳香族アゾメチン化合物の末端官能基がアミノ基になるように制御するために、芳香族ジアルデヒドのモル数/芳香族ジアミンのモル数=0.5〜0.9(モル比)、より好ましくは、0.6〜0.8となるように配合する。
0.9を超えると、必ずしも末端がアミノ基とならないおそれがある。また、0.5未満では、得られる芳香族アゾメチン化合物の分子量が低くなりすぎ、強度が低下するおそれがある。
本発明に用いることのできる溶媒は、出発原料をある程度溶解するものであり、かつ、反応を阻害しないものであれば、特に制限されず、例えば、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられ、好ましくは、沸点が比較的低く、且つ、溶解性のよいジメチルホルムアミドである。
本発明に係る新規アゾメチン化合物を得る際の、反応温度、反応時間についても特に限定されないが、通常、窒素下で50℃〜150℃程度の温度で、30分〜5時間反応させればよい。特に、溶媒にジメチルホルムアミドを用いる場合には、140℃で、約2時間反応させるのが、反応中の副反応を防ぐ観点から好ましい。
反応後の溶液を、例えば多量の水等の貧溶媒に加えることで化合物を析出させることができ、これを分離、乾燥すれば目的の新規アゾメチン化合物を得ることができる。
新規アゾメチン組成物の製造
新規アゾメチン組成物は、例えば、上記で得られた新規アゾメチン化合物とエポキシ樹脂を適当な溶媒の存在下に混合した後に、大きな面積をもつ容器に広げて、常温で溶媒をある程度蒸発させ、最後に真空乾燥することで製造することができる。
新規アゾメチン化合物とエポキシ樹脂の混合割合としては、特に限定されないが、新規アゾメチン化合物中の末端アミノ官能基モル数/エポキシ樹脂中のエポキシ官能基モル数=0.5〜2.0であるのが好ましく、0.7〜1.3であるのがより好ましい。この比率が小さすぎると、新規アゾメチン組成物を熱硬化させた後に、未反応のエポキシが残る恐れがある。また、比率が大きすぎると、エポキシ樹脂による分子量増大効果が小さくなり、結果として機械的強度が低下するおそれがある。
新規アゾメチン組成物の成形
新規アゾメチン組成物の成形法は、特に限定されず、所望の金型内に投入してから、120〜200℃の温度で30分〜2時間加熱することで成形体を得ることができる。
本発明の新規アゾメチン組成物は、フィルム化等の成形を容易に行うことができ、得られる成形体は、耐熱性及び機械的強度に優れているため、電気・電子部品、自動車部品、銅張り積層基板、耐火コーティング、複合材マトリクス樹脂等に好適に用いることが可能である。
(実施例)
以下に実施例を示して、本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下に記載の実施例によって限定されるものではない。なお、以下において%とは、重量%を意味する。
[測定方法]
本明細書中の物性等の測定方法は以下の通りである。
(1)赤外線吸収スペクトル(IRスペクトル)
Bomem Michelson MB100 FT−IR スペクトロメータ
乾燥空気中で32回積算 KBrペレット使用
(2)核磁気共鳴スペクトル(NMRスペクトル)
Varian Inova 社製 1H NMR(600MHz)
重水素ジメチルスルホキシド使用 256回積算 緩和時間10秒
(3)耐熱分解性
高解像度2950熱重量分析装置(TAインスツルメント社製)を用いて、5℃/分の昇温速度で5%重量減少温度(Td5)を測定した。
(4)引張強度
インストロンユニバーサルテスト装置(Model 5565)
試料片(TypeV ASTM D6−38−03)
引っ張り速度 1mm/分
「新規アゾメチン化合物の合成」
還流器を取り付けた容量300ccの丸底フラスコに、2,4-ジアミノトルエン(和光純薬)4.8g、テレフタルアルデヒド4.0g、ジメチルホルムアミド50gを加えて、30℃に設定したオイルバス中で加熱溶解した。
ついで、10gのトルエンを加えた後、ディーンスターク型コレクターをフラスコに取り付け、合成中に発生する水分を除去しながら、150℃で2時間、反応を継続し、その後、室温まで冷却した。
この溶液を、激しく攪拌している100gのメタノール中へ滴下した。析出した固体をろ過した後、さらにメタノールを用いて洗浄した。得られた粉末は、40℃に加熱した真空オーブン中で24時間、真空乾燥を行った。
得られた化合物が、アゾメチンに特有な−HC=N−基と、一級アミンの末端基をもつことを赤外線吸収スペクトルにて確認した。
一級アミン官能基:3439,3372cm-1、イミン官能基:1620cm-1
さらに得られた化合物が、アゾメチンに特有な−HC=N−基をもつことをNMRより確認した。(上記水素の化学シフトが8.4ppmと特異的に高いことを確認)
また、得られた化合物の分子量を推定するために、GPCによる分子量推定評価を行った。Mn(数平均分子量)=1200(ポリスチレン換算値)
「新規アゾメチン組成物の作成」
上記で作成した新規アゾメチン化合物6gに対して、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂(EPON828、シェル化学(株))2g、溶剤としてジメチルホルムアミド24gを配合
して、攪拌することで、均一な新規アゾメチン組成物溶液を作成した。
「シートの作製」
上記で作成した新規アゾメチン組成物溶液を、テフロン(登録商標)容器上に注ぎ込み、そのまま常温で24時間乾燥させた。次いで、180℃の温度に制御された加熱オーブン中に配置し、溶剤の乾燥および熱硬化反応を行った。
新規アゾメチン組成物は、厚み0.1mmのシート状に成形された。
このシートの耐熱分解性および引張強度を測定した。その結果を表1に示す。
(比較例1)
実施例1において、エポキシ樹脂を加えなかったこと以外は、すべて実施例1と同様にしてサンプルを調整した。
Figure 2009179747
以上の結果から明らかなように、本発明の新規アゾメチン組成物は、分子構造が剛直にも関わらず溶剤への溶解性がよく、キャスト等の手段にてフィルムへの成形が可能である。また、エポキシとの組成物は、その分子量増大効果により、引っ張り強度等の機械的物性にも優れたものを得ることができる。

Claims (7)

1,3-ジアミノベンゼンまたは、2,4-ジアミノトルエンとテレフタルアルデヒドを組み合わせて合成される、末端にアミノ基を有する芳香族アゾメチン化合物に対して、さらにエポキシ樹脂を添加したことを特徴とする新規アゾメチン組成物。
前記芳香族アゾメチン化合物が、テレフタルアルデヒド/2,4-ジアミノトルエンのモル比が0.5〜0.9となるように配合して合成される、請求項1記載の新規アゾメチン組成物。
前記芳香族アゾメチン化合物が、さらに、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、及びテトラヒドロフランからなる群より選択される一種以上の溶媒を用いて合成される、請求項1又は2記載の新規アゾメチン組成物。
前記芳香族アゾメチン化合物と前記エポキシ樹脂との混合割合が、該アゾメチン化合物中の末端アミノ官能基モル数/該エポキシ樹脂中のエポキシ官能基モル数=0.5〜2.0である、請求項1〜3の何れかに記載の新規アゾメチン組成物。
前記エポキシ樹脂が、グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及び環式脂肪族エポキシ樹脂からなる群より選択される一種以上である、請求項1〜4の何れかに記載の新規アゾメチン組成物。
請求項1〜5の何れかに記載の新規アゾメチン組成物を加熱して得られる成形体。
請求項6記載の成形体を含む電子機器。
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