JP2009174363A - 可変容量型過給機付き内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 排ガスがタービンに向けて流れる際に通過する開口の面積を変更するベーンがアクチュエータにより駆動され、開口面積が調整され得る可変容量型過給機付き内燃機関に適用され、広い運転領域で開口面積の異常発生の有無を判定し得る制御装置の提供。
【解決手段】 この装置は、原則的にアクチュエータの作動位置を目標値に近づける通常制御を実行する。通常制御中に作動位置が第1位置から同位置よりも開口面積が大きい方向の第2位置に移動する場合にて、作動位置が第1、第2位置にある場合に開口面積Aeq0,Aeqをそれぞれ算出する。差「Aeq−Aeq0」が基準値α以下である場合、開口面積の異常が発生していると判定されて、通常制御に代えて特殊制御が実行される。ここで、開口面積Aeqは内燃機関の運転状態を表すパラメータが利用されて算出され得る。以上のことから、あらゆる運転領域にて開口面積の異常発生の有無が判定され得る。
【選択図】 図17
【解決手段】 この装置は、原則的にアクチュエータの作動位置を目標値に近づける通常制御を実行する。通常制御中に作動位置が第1位置から同位置よりも開口面積が大きい方向の第2位置に移動する場合にて、作動位置が第1、第2位置にある場合に開口面積Aeq0,Aeqをそれぞれ算出する。差「Aeq−Aeq0」が基準値α以下である場合、開口面積の異常が発生していると判定されて、通常制御に代えて特殊制御が実行される。ここで、開口面積Aeqは内燃機関の運転状態を表すパラメータが利用されて算出され得る。以上のことから、あらゆる運転領域にて開口面積の異常発生の有無が判定され得る。
【選択図】 図17
Description
本発明は、内燃機関の排ガスのエネルギーによって駆動される可変容量型過給機(ターボチャージャ)付き内燃機関の制御装置に関する。
内燃機関の過給機は、一般に、内燃機関からの排ガスがタービン羽根車に向けて流れることで駆動されるようになっている。この種の過給機においては、上記排ガスが流れる際に通過する開口の開口面積を変更するもの(所謂可変容量型ターボチャージャ)が広く知られている。可変容量型ターボチャージャは、内燃機関の運転状態に応じて上記開口面積が変更され、排ガスの流速等が調整されるようになっている場合が多い。これにより、内燃機関の運転状態に応じた適切な過給がなされ得る。
この種の可変容量型ターボチャージャは、一般に、上記開口面積を変更する部材(例えば、バリアブルノズル等、以下、「開口面積変更部材」と称呼する。)と、開口面積変更部材を駆動するアクチュエータとを備えている。このアクチュエータの作動位置が変更されることで、上記開口面積の調整が達成される。
上述した開口面積変更部材と、アクチュエータとを備える可変容量型ターボチャージャにおいては、内燃機関の運転状態によって以下のような状態が発生することがある。その状態は、前記アクチュエータの前記作動位置が作動範囲における前記開口面積が小さい方向である第1方向の端から前記作動範囲における前記開口面積が大きい方向である第2方向の端まで移動する場合において、第1所定位置よりも前記第1方向の範囲では前記作動位置が移動しても前記開口面積が一定に維持されるとともに前記第1所定位置よりも前記第2方向の範囲では前記作動位置の移動に応じて前記開口面積が増大していき、前記作動位置が前記第2方向の端から前記第1方向の端まで移動する場合においては、前記作動範囲に亘って前記作動位置の移動に応じて前記開口面積が減少していく状態である。以下、この状態を「ヒステリシス発生状態」とも称呼する。
上記ヒステリシス発生状態では、所望の開口面積が得られず適切な過給が達成されないという事態が発生し得る。換言すれば、上記ヒステリシス発生状態は、上記開口面積の異常が発生している状態を表すものとなり得る。適切な過給を実行する観点から、上記開口面積の異常が発生しているか否かを正確に判定することが望まれている。このため、例えば、上記開口面積に相当する値(例えば、開口面積変更部材の位置)を直接的に検出するセンサを設けることが考えられる。上記センサの検出値に基づいて上記開口面積の異常が発生しているか否かを判定できるからである。ところが、この種のセンサを設置することは、過給機の製造コストの増大等を招くという問題がある。
以上のことを鑑み、特許文献1に記載の可変容量型ターボチャージャの異常判定方法では、以下のように上記開口面積の異常が発生しているか否かが判定される。この方法では、内燃機関がアイドル運転状態にある場合にて、実際の燃料噴射量と基準値との相違の程度が所定の程度よりも大きい場合に上記開口面積の異常が発生していると判定される。
これは、エンジン運転速度が一定である場合、実際の燃料噴射量の基準値からの偏移の程度が、実際の開口面積の基準開口面積からの偏移の程度を表す値となり得ることに基づく。また、アイドル運転状態が、エンジン運転速度が略一定となる状態として利用され得ることにも基づいている。これにより、開口面積を直接的に検出するセンサを用いることなく、上記開口面積の異常が発生しているか否かが判定され得る。
特開平11−62604号公報
ところで、上記特許文献1に記載の異常判定方法は、上述のようにアイドル運転状態にて上記開口面積の異常が発生しているか否かが判定されるようになっている。即ち、上記判定は、内燃機関の運転状態が小さい領域内にある場合にのみ実行され得る。従って、上記判定を実行し得る機会が小さいと考えられる。内燃機関に備えられる可変容量型ターボチャージャにおいては、上記判定が実行され得る内燃機関の運転状態の領域が大きくされることが望まれている。
従って、本発明の目的は、上記開口面積が変更され得る可変容量型ターボチャージャを備えた内燃機関に適用される制御装置であって、上記開口面積の異常が発生しているか否かが判定され得る内燃機関の運転状態の領域を大きくすることができる制御装置を提供することにある。
本発明に係る制御装置は、可変容量型過給機を備えた内燃機関に適用される。また、前記可変容量型過給機は、前記内燃機関の筒内に供給される燃料の燃焼により発生する排ガスのエネルギーにより回転駆動されるタービン羽根車と、前記タービン羽根車の回転により回転駆動されて前記筒内に吸入される空気を圧縮するコンプレッサ羽根車と、上記開口の開口面積を変更する開口面積変更部材と、前記開口面積変更部材を駆動して前記開口面積を調整するアクチュエータとを備える。
本発明に係る制御装置の特徴は、前記内燃機関の運転状態に応じて前記アクチュエータの前記作動位置を制御する通常制御を実行するアクチュエータ制御手段と、少なくとも前記供給される燃料の量と前記吸入される空気の流量と前記開口よりも上流の排気通路での前記排ガスの圧力とに基づいて前記開口面積に相当する値を推定する開口面積推定手段と、前記通常制御の実行中に前記アクチュエータの前記作動位置が第1位置から前記第1位置と異なる第2位置へ移動する場合において前記作動位置が前記第1位置である場合に前記開口面積推定手段により推定される第1開口面積相当値と前記作動位置が前記第2位置である場合に前記開口面積推定手段により推定される第2開口面積相当値との差と前記開口面積の異常発生の有無の判定に使用される基準となる基準値との比較結果に基づいて前記開口面積の異常が発生しているか否かを判定する異常判定手段とを備えたことにある。
ここにおいて、「開口面積に相当する値」は、例えば、開口面積そのものの値、開口面積に相当する開口面積変更部材の姿勢(位置、方向等)を表す値等であって、これらに限定されない。
上記構成における前記開口面積推定手段により、内燃機関のあらゆる運転状態にて開口面積相当値が容易に推定され得る。即ち、内燃機関のあらゆる運転状態にて上記第1、第2開口面積相当値の差が容易に取得され得る。また、上記第1、第2開口面積相当値の差は、開口面積の異常の発生に応じて変化する値となり得る。従って、上記開口面積の異常が発生しているか否かを判定するには、上記第1、第2開口面積相当値の差と、基準値とを比較することが考えられる。
上記構成は係る知見に基づくものである。これによれば、例えば、内燃機関の運転状態がアイドル運転状態等の限られた状態のみならず、あらゆる運転状態にて上記判定が容易に実行され得る。即ち、上記開口面積の異常が発生しているか否かが判定され得る内燃機関の運転状態の領域を大きくすることができる。
この場合、例えば、前記開口面積推定手段が、前記燃料の量と、前記空気の流量と、前記排ガスの圧力とに基づいてタービン流量特性値を算出し、前記算出されたタービン流量特性値と、前記排ガスの圧力とに基づいて前記開口面積相当値を推定するように構成されてもよい。
前記開口面積相当値は、ターボチャージャ固有の特性値としての前記タービン流量特性値及び前記排ガスの圧力と相関関係を持ち得る。この相関関係は容易に求められ得る。従って、上記構成によれば、タービン流量特性値が利用されることで、より一層容易に開口面積相当値が推定され得る。この結果、上記開口面積の異常が発生しているか否かをより一層容易に判定することができる。
また、上記本発明に係る制御装置においては、前記可変容量型過給機が、上記ヒステリシス発生状態が前記内燃機関の運転状態によって発生し得るように構成されていて、前記異常判定手段が、前記アクチュエータの前記作動位置が前記第1位置から前記第1位置よりも前記第2方向の前記第2位置へ移動する場合において前記開口面積の異常が発生しているか否かを判定するように構成され、前記アクチュエータ制御手段が、前記異常が発生していると判定された場合前記通常制御に代えて前記アクチュエータの前記作動位置を前記第1所定位置よりも前記第2方向の第2所定位置まで移動させる特殊制御を実行した後前記通常制御を実行するように構成されることが好適である。
上記ヒステリシス発生状態が発生していると、アクチュエータの作動位置が第1方向から第2方向へ移動する場合(即ち、開口面積が増大していく方向へ移動する場合)、第1所定位置よりも第1方向の範囲に亘って開口面積が一定に維持される。また、第1所定位置よりも第2方向の範囲に亘っては作動位置の移動に応じて開口面積が増大していく。
一方、アクチュエータの作動位置が第2方向から第1方向へ移動する場合(即ち、開口面積が減少していく方向へ移動する場合)、作動範囲全域に亘って作動位置の移動に応じて開口面積が減少していく。これらのことから、アクチュエータの作動位置が第1方向から第2方向へ移動する場合に上記判定が実行される必要性が大きい。
他方、通常制御では、上記ヒステリシス発生状態が発生していないものとして、内燃機関の運転状態に応じてアクチュエータの作動位置を移動させる場合が多い。従って、上記ヒステリシス発生状態が発生しているときに、アクチュエータの作動位置を第1方向から第2方向へ移動させる場合には、通常制御が実行されることは好ましくない。この場合には、通常制御に代えて、アクチュエータの作動位置を第1所定位置よりも第2方向の第2所定位置まで強制的に移動させると好適である。
上記構成はかかる知見に基づくものである。これによれば、開口面積を増大させる要求に応じて、上記判定が適切になされ得る。また、上記ヒステリシス発生状態が発生しているときにアクチュエータの作動位置を第1方向から第2方向へ移動させる場合には、特殊制御が実行された後通常制御が実行され得る。従って、この場合、例えば、(通常制御にて)目標とする開口面積が、第1所定位置よりも第1方向(第2方向)の範囲内の作動位置に対応するものである場合、特殊制御によりアクチュエータの作動位置が一旦第2所定位置まで移動した後、上記目標とする開口面積に対応する作動位置まで第1方向(第2方向)へ移動し得る。これにより、上記ヒステリシス発生状態等の異常状態が発生する場合であっても、所望の過給の程度を得ることができる。
この場合、前記アクチュエータ制御手段が、前記特殊制御の実行中前記アクチュエータの前記作動位置の移動速度を最大に設定するように構成されることが好適である。
これによれば、特殊制御にてアクチュエータの作動位置が最大の移動速度をもって第2所定位置に移動し得る。即ち、上記異常が発生していると判定された場合に、開口面積が目標とする値に到達するまでにかかる時間が短くされ得る。この結果、上記ヒステリシス発生状態等の異常状態が発生する場合であっても、所望の過給の程度を迅速に得ることができる。
以下、本発明による可変容量型過給機付き内燃機関の制御装置の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る制御装置を内燃機関(ディーゼル機関)10に適用したシステムの概略構成を示している。この内燃機関10は、エンジン本体20と、吸気系統30と、排気系統40と、ターボチャージャ50とを備えている。
エンジン本体20には、4つの気筒が直列に配置されている。各気筒の上部には、各気筒に向けて燃料を噴射する図示しない噴射弁が配設されている。各気筒での燃料の燃焼により発生したガスは各気筒から排出される。
吸気系統30は、吸気管31と、吸気管31に連通したインテークマニホールド32とを備えている。この吸気系統30により、エンジン本体20に空気が供給されるようになっている。
排気系統40は、排気管41と、排気管41に連通したエキゾーストマニホールド42とを備えている。この排気系統40により、エンジン本体20からの排ガスが外部に放出されるようになっている。
ターボチャージャ50は、ハウジング51を備えており、ハウジング51には、コンプレッサホイール52及びタービンホイール53が収容されている。コンプレッサホイール52及びタービンホイール53は、タービンシャフト54により同軸的、且つ、一体回転可能に接続されている。また、ハウジング51には、コンプレッサホイール52及びタービンホイール53の外周をそれぞれ渦巻き状に囲うようにコンプレッサ通路51a及びタービン通路51bが形成されている。このコンプレッサ通路51a及びタービン通路51bは、吸気管31及び排気管41と連通するようになっている。これにより、タービンホイール53は、排ガスのエネルギーにより回転駆動される。コンプレッサホイール52は、タービンホイール53の回転により回転駆動されて吸気通路の空気を圧縮する。
また、ターボチャージャ50は、タービンホイール53側に可変ノズル機構60を備えている。この可変ノズル機構60は、タービン通路51bからタービンホイール53に向けて流入する排ガスの流速を調整するようになっている。即ち、ターボチャージャ50は、可変容量型ターボチャージャである。
一方、このシステムは、熱線式エアフローメータ71と、吸気圧力センサ72と、上流側排気圧力センサ73と、下流側排気圧力センサ74と、運転速度センサ75と、アクチュエータ作動位置センサ76と、アクセル開度センサ77とを備えている。
熱線式エアフローメータ71は、コンプレッサホイール52よりも上流の吸気通路に配設されていて、吸入される空気の単位時間あたりの空気流量Ga(質量流量)を検出するようになっている。吸気圧力センサ72は、コンプレッサホイール52よりも下流であって、吸気管31により構成される吸気通路に配設されている。吸気圧力センサ72は、吸気管31内のガスの圧力である吸気圧力Pinを検出するようになっている。
上流側排気圧力センサ73は、タービンホイール53よりも上流であって、排気管41により構成される排気通路に配設されている。上流側排気圧力センサ73は、排気管41内のガスの圧力である上流側排気圧力Pex1を検出するようになっている。下流側排気圧力センサ74は、タービンホイール53よりも下流の排気通路に配設されている。下流側排気圧力センサ74は、タービンホイール53よりも下流の排気通路におけるガスの圧力である下流側排気圧力Pex2を検出するようになっている。
また、運転速度センサ75は、エンジン本体20のクランクシャフトの回転速度から内燃機関10の運転速度NEを検出するようになっている。アクチュエータ作動位置センサ76は、後述する可変ノズル機構60のアクチュエータの作動位置を表す値VNを検出するようになっている。アクセル開度センサ77は、運転者によるアクセルペダル81の操作量Accpを検出するようになっている。
更に、このシステムは、CPU等から構成されるECU(電気制御装置)91を備えている。ECU91は、上記センサ71〜77と電気的に接続されている。また、ECU91は、CPUにセンサ71〜77からの信号を供給するとともに、CPUの指示に応じて可変ノズル機構60のアクチュエータ等にそれぞれ駆動信号を送出する。
図2は、タービンホイール53及び可変ノズル機構60の正面図を示している。可変ノズル機構60は、複数の翼状型ベーン61を備えている。各ベーン61は後述する支軸62の一端にそれぞれ固定されていて、ベーン61及び支軸62は、タービンホイール53の回転軸を中心としてタービンホイール53を囲むように配設されている。このように、ベーン61は、内燃機関10からの排ガスがタービンホイール53に向けて流れる際に、となりあうベーン61により形成される開口を通過するようになっている。
ベーン61は、図2の実線にて示す位置から破線にて示す位置まで回動可能となっている。ベーン61が図2の実線にて示す位置にある場合に、開口面積代表値Aeqが最小となる。一方、ベーン61が図2の破線にて示す位置にある場合には、開口面積代表値Aeqが最大となる。ここで、開口面積代表値Aeqは、となりあうベーン61の間隙(の最小値)にベーン61の回動軸方向の長さを乗じた面積に、ベーン61の個数を乗じた値に、タービンから流出する排ガスが通過する開口の開口面積を考慮した値である。この開口面積代表値Aeqが前記開口面積相当値に対応する。
本例では、ベーン61の全長(ベーン61の上流端から後流端までの長さ)L1に対する、後縁長(ベーン61の回動中心から後流端までの長さ)L2の割合(以下、この割合を「ピボット位置L2/L1」と称呼する。)が、後述するように50%付近の値となるように、ベーン61が構成されている。
図3は、タービンホイール53及び可変ノズル機構60の裏面図を示している。可変ノズル機構60は、上述した支軸62と、環状の第1プレート63と、第1プレート63よりも直径が大きい環状の第2プレート64と、ノズルアーム65とを備えている。
第1プレート63は、タービンホイール53と同軸的にハウジング51に固定されている。第1プレート63には、ベーン61と同数の円柱状支軸62が回動可能、且つ、等間隔に嵌合されている。即ち、各ベーン61も支軸62の回動に連動して回動可能となっている。各ベーン61の回動中心は、各支軸62の回動軸上にそれぞれ位置する。
第2プレート64は、第1プレート63及びタービンホイール53と同軸的、且つ、第1プレート63と相対回転可能に配置されている。第2プレート64には、ベーン61と同数の円柱状ピン66が等間隔に固定されている。また、第2プレート64には、円柱状の駆動ピン67が固定されている。
ベーン61と同数のノズルアーム65は、その一端側が各支軸62の他端にそれぞれ固定されている。即ち、各ノズルアーム65も支軸62の回動に連動して回動可能となっている。各ノズルアーム65の回動中心は、各支軸62の回動軸上にそれぞれ位置する。また、各ノズルアーム65の他端側には、Y字型の二股部65aがそれぞれ備えられている。各ノズルアーム65の二股部65aの間には、ピン66がそれぞれ挟み込まれている。
また、可変ノズル機構60は、モータ68と、駆動アーム69とを備えている。モータ68は、ハウジング51に固定されている。駆動アーム69は、その一端側がモータ68の回転軸68aの一端に固定されている。モータ68の回転軸68aの回動により、駆動アーム69も回動可能となっている。駆動アーム69の他端側には、Y字型の二股部69aが備えられていて、駆動アーム69の二股部69aの間には、駆動ピン67が挟み込まれている。第2プレート64、モータ68、駆動アーム69等により前記アクチュエータが構成されている。また、ベーン61が前記開口面積変更部材の一部に対応する。
なお、本例では、駆動アーム69の二股部69aと駆動ピン67との間におけるバックラッシは、各ノズルアーム65の二股部65aと各ピン66との間におけるものに比して無視できるほど十分に小さいものとする。また、アクチュエータ作動位置センサ76は、モータ68の回転軸68aの回転位相を検出し、アクチュエータの作動位置を表す値VN(以下、「作動位置相当値VN」とも称呼する。)が取得されるようになっている。
上述のように構成された可変ノズル機構60の作動の概略について説明する。本例では、原則的には、アクチュエータ作動位置センサ76により検出される作動位置相当値VNが、目標作動位置相当値VNtに近づくようにモータ68が回転駆動される(PID制御される)。
例えば、モータ68の回転軸68aが図3において反時計回りに回動すると、駆動アーム69も一体的に反時計回りに回動する。即ち、駆動ピン67は、駆動アーム69の回動によりA方向へ押圧される。これにより、第2プレート64は、第1プレート63に対してA方向へ相対回転させられ、各ノズルアーム65の二股部65aの一方側のピン当接部65a1が、(ピン当接部65a1とピン66とが当接している場合)各ピン66によりA方向へそれぞれ押圧される。従って、各ノズルアーム65は、各支軸62を回動中心として時計回りにそれぞれ回動される。この結果、各ベーン61は、各ノズルアーム65と一体的に時計回りにそれぞれ回動される。ピン当接部65a1とピン66とが当接している場合、モータ68の回転軸68aの反時計回りの回動に連動して、開口面積代表値Aeqは増大していく。
一方、モータ68の回転軸68aが図3において時計回りに回動すると、駆動アーム69も一体的に時計回りに回動する。即ち、駆動ピン67は、駆動アーム69の回動によりB方向へ押圧される。これにより、第2プレート64は、第1プレート63に対してB方向へ相対回転させられ、各ノズルアーム65の二股部65aの他方側のピン当接部65a2が、(ピン当接部65a2とピン66とが当接している場合)各ピン66によりB方向へそれぞれ押圧される。従って、各ノズルアーム65は、各支軸62を回動中心として反時計回りにそれぞれ回動される。この結果、各ベーン61は、各ノズルアーム65と一体的に反時計回りにそれぞれ回動される。ピン当接部65a2とピン66とが当接している場合、モータ68の回転軸68aの時計回りの回動に連動して、開口面積代表値Aeqは減少していく。
このように、アクチュエータの作動位置が変更されることにより各ベーン61がそれぞれ駆動され得る。そして、各ベーン61がそれぞれ駆動されることにより、内燃機関10からの排ガスがタービンホイール53に向けて流れる際に通過する開口(即ち、開口面積代表値Aeq)が変更される。
本例では、駆動アーム69(即ち、第2プレート64の各ピン66)は、図3の実線にて示す作動位置から1点鎖線の作動位置までの範囲内で作動位置が変更されるようになっている。図3の実線、及び1点鎖線にて示す作動位置に対応する作動位置相当値VNは、「100(%)」、及び「0(%)」であるものとする。即ち、作動位置相当値VNが0〜100の範囲内の値となるようモータ68が駆動されるようになっている。ここで、VN=100及びVN=0である場合のアクチュエータの作動位置の状態を「全開状態」及び「全閉状態」とも称呼するものとする。
(ヒステリシス発生状態の発生原理)
上述のように構成されたターボチャージャ50においては、内燃機関10の運転状態によって、上記ヒステリシス発生状態が発生する場合がある。これは、各ノズルアーム65の二股部65aと各ピン66との間におけるバックラッシの存在により、アクチュエータの作動位置が変更されてもベーン61が回動しない状態が発生することに基づく。
上述のように構成されたターボチャージャ50においては、内燃機関10の運転状態によって、上記ヒステリシス発生状態が発生する場合がある。これは、各ノズルアーム65の二股部65aと各ピン66との間におけるバックラッシの存在により、アクチュエータの作動位置が変更されてもベーン61が回動しない状態が発生することに基づく。
図4は、ピボット位置L2/L1と、ベーン61に作用するモーメント、及びベーン61を駆動するためのモータ68の所要駆動力との関係を示したグラフである。これらのグラフは、排ガスの流量がある所定の流量(一定)である場合におけるものである。図4の1点鎖線は作動位置相当値VNが「100」である場合、また、図4の破線は作動位置相当値VNが「0」である場合におけるベーン61に作用するモーメントを示している。ここにおける「ベーン61に作用するモーメント」は、排ガスがベーン61にあたることにより発生するモーメントを意味している。
以下、図4に併せて、可変ノズル機構60の拡大図である図5、及び図6も参照しながら、ピボット位置L2/L1が異なる場合における上記モーメントの作用について説明する。また、ベーン61等の作動についても説明する。
図5に示すように、ピボット位置L2/L1が「90(%)」となるようにベーン61等が構成される場合を考える。この場合、VN=0〜100の範囲に亘って、排ガスの流れによりベーン61に大きい開方向のモーメントが作用する。「開方向」は、上記開口面積代表値Aeqが増大しようとする方向を意味するものとする。また、「閉方向」は、上記開口面積代表値Aeqが減少しようとする方向を意味するものとする。
一方、支軸62と、第1プレート63との間には、上記開方向のモーメントと逆方向の摩擦トルクが発生する(図5の破線の矢印を参照)。この摩擦トルクは、円柱状支軸62の側面と、同側面と接する第1プレート63の面(以下、「支軸当接面63a」とも称呼する。)との間における摺動抵抗に基づくものである。ここで、上記開方向のモーメントは上記摩擦トルクより大きい。
従って、第2プレート64の作動位置がA方向へ移動する場合、ノズルアーム65の二股部65aの一方側のピン当接部65a1はピン66を押圧する。これにより、ノズルアーム65は、ピン66のA方向の移動に追従しながら開方向へ回動していく。また、第2プレート64の作動位置がB方向へ移動する場合、ピン66は上記ピン当接部65a1を押圧する。これにより、ノズルアーム65は、ピン66のB方向の移動に抗しながら閉方向へ回動していく。
次に、図6に示すように、ピボット位置L2/L1が「10(%)」となるようにベーン61等が構成される場合を考える。この場合、VN=0〜100の範囲に亘って、排ガスの流れによりベーン61に大きい閉方向のモーメントが作用する。
一方、上述した摩擦トルクの発生と同様、支軸62と、第1プレート63との間には、上記閉方向のモーメントと逆方向の摩擦トルクが発生する(図6の破線の矢印を参照)。ここで、上記閉方向のモーメントは上記摩擦トルクより大きい。
従って、第2プレート64の作動位置がA方向へ移動する場合、ピン66はノズルアーム65の二股部65aの他方側のピン当接部65a2を押圧する。これにより、ノズルアーム65は、ピン66のA方向の移動に抗しながら開方向へ回動していく。また、第2プレート64の作動位置がB方向へ移動する場合、上記ピン当接部65a2はピン66を押圧する。これにより、ノズルアーム65は、ピン66のB方向の移動に追従しながら閉方向へ回動していく。
このように、排ガスの流量が上記所定の流量である場合において、ピボット位置L2/L1が変化することでベーン61に作用するモーメントが変化する。ベーン61に作用するモーメントの変化の傾向は、排ガスの流量が一定の場合、ピボット位置L2/L1が大きいほど(L2/L1が「100(%)」に近づくほど)開方向のモーメントが大きく、ピボット位置L2/L1が小さいほど(L2/L1が「0」に近づくほど)閉方向のモーメントが大きいものとなる(図4の1点鎖線及び破線を参照)
また、ピボット位置L2/L1が「90(%)」(又は、「10(%)」)である場合、第2プレート64のA,B両方向の移動において、上記ピン当接部65a1(又は、上記ピン当接部65a2)とピン66とが常に当接し得る。このため、上記ヒステリシス発生状態が発生し難い。他方、これらの場合、ベーン61に作用するモーメントが大きいため、ベーン61を駆動するためのモータ68の所要駆動力が大きい(図4を参照)。
小さい所要駆動力をもってベーン61の駆動を適切に実行する観点から、本例では、ピボット位置L2/L1が「50(%)」近傍の値(<50(%))に設定されている。このようにピボット位置L2/L1が設定されることにより、上記ヒステリシス発生状態が発生し易くなる。以下、上記ヒステリシス発生状態の発生原理について、図4、及び図7〜図14を参照しながら説明する。
再び図4を参照すると、ピボット位置L2/L1が上記「50(%)」近傍の値に設定されている場合においては、作動位置相当値VNが「100」であるときのベーン61に作用するモーメントが「ウィンドウ」の範囲内のものとなる。一方、作動位置相当値VNが「0」であるときのベーン61に作用するモーメントが「ウィンドウ」の範囲外のものとなる。ここで、上記「ウィンドウ」は、支軸62の側面と、支軸当接面63aとの間における最大静止摩擦力に対応する摩擦トルクに相当する。以下に詳述するように、このことに起因して上記ヒステリシス発生状態が発生する。
図7〜図13は、可変ノズル機構60の拡大図を示している。図7〜図11は、アクチュエータの作動位置が、位置X(VN=100)→位置Y(0<VN<100)→位置Z(VN=0)の順に移動する場合(図4を参照)におけるベーン61等の一連の作動を示している。また、図12及び図13は、アクチュエータの作動位置が、位置Z→位置Y→位置Xの順に移動する場合におけるベーン61等の一連の作動を示している。ここにおいて、位置Yは、ベーン61に作用する開方向のモーメントが上記ウィンドウ範囲外の最小値である場合に対応する位置である。
加えて、図14は、アクチュエータの作動位置が位置X→位置Y→位置Z→位置Y→位置Xの順に移動する場合における、作動位置相当値VNと開口面積代表値Aeqとの関係を示したグラフである。位置X及び位置Yでの開口面積代表値Aeqは、それぞれ値Aeq1及び値Aeq2(>値Aeq1)であるものとする。以下、上記ヒステリシス発生状態の発生原理を説明するために、先ず、第2プレート64の作動位置が、位置X→位置Y→位置Zの順に移動する場合におけるベーン61等の一連の作動について説明していく。
図7は、アクチュエータの作動位置が上記位置Xである場合におけるベーン61等の構成を示している。この場合、ピン66が二股部65aの一方側のピン当接部65a1に当接している(詳細は後述する)。他方、ベーン61には排ガスの流れにより閉方向の小さいモーメントが作用する。この閉方向のモーメントは、上記ウィンドウ範囲内のものとなる(図4の1点鎖線を参照)。従って、支軸62の側面と、支軸当接面63aとの間には、この閉方向のモーメントと逆方向で同じ大きさの静摩擦トルクが発生する。
ここで、第2プレート64の作動位置がA方向へ移動するものとする。ベーン61に作用するモーメントと静摩擦トルクがつりあっているため、第2プレート64及びピン66(即ち、アクチュエータ)の作動位置が移動するにもかかわらず、ベーン61、支軸62及びノズルアーム65は作動されない。
即ち、図8に示すように、A方向へ移動していくアクチュエータの作動位置が、ピン66が二股部65aの他方側のピン当接部65a2に当接する位置X’に達するまで、ベーン61等の位置はアクチュエータの作動位置が位置Xであるときの位置と同一の位置に維持される。そして、アクチュエータの作動位置が上記位置X’に達してから、ピン66が上記ピン当接部65a2をA方向へ押圧することでベーン61等は開方向へ回動していく。
従って、図14に示すように、位置X→位置X’の区間においては、アクチュエータの作動位置のA方向への移動にかかわらず開口面積代表値Aeqが上記値Aeq1に維持される。そして、アクチュエータの作動位置が上記位置X’よりもA方向側へ移動していくのに応じて、開口面積代表値Aeqは上記値Aeq1から増大していく。
図9は、アクチュエータの作動位置が上記位置Yである場合におけるベーン61等の構成を示している。上記位置Xにあったアクチュエータの作動位置が上記位置Yまで移動する行程において、ベーン61に作用するモーメントがゼロとなる位置を境にしてモーメントの作用方向が閉方向から開方向へ変化する(図4を参照)。
従って、アクチュエータの作動位置が上記位置Yに達すると、ベーン61には開方向のモーメントが作用する。他方、支軸62の側面と、支軸当接面63aとの間に、上記開方向のモーメントとは逆方向の摩擦トルクが発生する。上記開方向のモーメントは、上記ウインドウ範囲外の最小値である(図4の位置Yを参照)。従って、この開方向のモーメントは、支軸62の側面と、支軸当接面63aとの間における最大静止摩擦力に対応する摩擦トルクよりも大きい。
このため、図10に示すように、アクチュエータの作動位置が上記位置Yに達したときに、第2プレート64(即ち、ピン66)の作動から独立して、ベーン61等は動摩擦トルクに抗しながら開方向へ所定角度だけ回動する。即ち、ピン66と当接していた上記他方側のピン当接部65a2がピン66から離間してから(図10の破線を参照)、上記一方側のピン当接部65a1がピン66に当接するまで、ベーン61等は開方向へ回動する。ここで、上記位置Yに対応する作動位置相当値VNを値VN*とする。この値VN*は、ターボチャージャ50の設計諸元により決定され得る値である。
そして、アクチュエータの作動位置が位置Yに達してから、上記一方側のピン当接部65a1がピン66をA方向へ押圧することで、ベーン61等はピン66のA方向への移動に追従しながら開方向へ回動していく。
従って、図14に示すように、アクチュエータの作動位置が位置Yに達したときに、上述のように第2プレート64の作動から独立してベーン61等が開方向へ回動するのに対応した分だけ、開口面積代表値Aeqが増大する(図14の破線の矢印を参照)。そして、アクチュエータの作動位置が上記位置YよりもA方向側へ移動していくのに応じて、開口面積代表値Aeqは更に増大していく。
図11は、アクチュエータの作動位置が上記位置Zである場合におけるベーン61等の構成を示している。この場合も、ベーン61には開方向の(作動位置が上記位置Yである場合よりも大きい)モーメントが作用する。この開方向のモーメントは、最大静止摩擦力に対応する摩擦トルクよりも大きい。このため、アクチュエータの作動位置が上記位置Zに達したとき、上記一方側のピン当接部65a1のピン66への当接が維持される。換言すれば、位置Y→位置Zの区間においては、上記一方側のピン当接部65a1がピン66と常時当接する。
従って、図14に示すように、位置Y→位置Zの区間においては、アクチュエータの作動位置のA方向への移動に応じて、開口面積代表値Aeqが上記値Aeq2まで増大する。以上が、アクチュエータの作動位置が位置X→位置Y→位置Zの順に移動する場合における、ベーン61等の一連の作動についての説明である。
次に、アクチュエータの作動位置が、位置Z→位置Y→位置Xの順に移動する場合におけるベーン61等の一連の作動について説明していく。図12は、図11に対応するベーン61等の構成を示した図である。この場合、上述したように上記一方側のピン当接部65a1がピン66に当接している。従って、この状態にて第2プレート64(即ち、ピン66)の作動位置がB方向へ移動していくと、ピン66が上記ピン当接部65a1をB方向へ押圧することで、ベーン61等はピン66のB方向への移動に抗しながら閉方向へ回動していく。
上記位置ZからB方向へ移動していく第2プレート64の作動位置は、上記位置Yを経て上記位置Xへ到達する。位置Z→位置Yの区間において、上述したように開方向のモーメントが上記最大静止摩擦力に対応する摩擦トルクよりも大きい(図10を参照)。従って、この区間においても、上記一方側のピン当接部65a1のピン66への当接が維持される。
そして、上記位置Y→位置Xの区間においては、ベーン61に作用するモーメントが上記ウィンドウ範囲内のものとなる。このため、第2プレート64の作動から独立してベーン61等が作動することなく、この区間においても上記一方側のピン当接部65a1のピン66への当接が維持される。また、この区間では、ベーン61に作用するモーメントがゼロとなる位置を境にしてモーメントの作用方向が開方向から閉方向へ変化する(図4を参照)。
従って、図7に対応する図13に示すように、上記一方側のピン当接部65a1のピン66への当接が維持された状態にて、アクチュエータの作動位置が上記位置Xに達する。このように、位置Z→位置Xの区間においては、上記一方側のピン当接部65a1がピン66と常時当接する。
従って、図14に示すように、位置Z→位置Xの区間においては、アクチュエータの作動位置のB方向への移動に応じて、開口面積代表値Aeqが上記値Aeq2から上記値Aeq1まで減少する。以上が、アクチュエータの作動位置が位置Z→位置Y→位置Xの順に移動する場合における、ベーン61等の一連の作動についての説明である。
以上説明したように、アクチュエータ(即ち、第2プレート64、モータ68、駆動アーム69等)の作動位置が、作動位置相当値VN=100に相当する位置(即ち、上記位置X)からVN=0に相当する位置(即ち、上記位置Z)まで移動する場合において、VN=VN*に相当する位置(即ち、上記位置Y)よりもB方向側の範囲(即ち、上記位置X→位置X’の区間)では作動位置がA方向へ移動しても開口面積代表値Aeqが上記値Aeq1(一定)に維持される。また、VN=VN*に相当する位置よりもA方向側の範囲(即ち、上記位置Y→位置Zの区間)では作動位置のA方向への移動に応じて開口面積代表値Aeqが上記値Aeq2まで増大していく。
一方、アクチュエータの作動位置が、作動位置相当値VN=0に相当する位置からVN=100に相当する位置まで移動する場合においては、この作動範囲(即ち、上記位置Z→位置Xの区間)に亘って、作動位置のB方向への移動に応じて開口面積代表値Aeqが上記値Aeq2から上記値Aeq1まで減少していく。本例におけるターボチャージャ50では、このようなヒステリシス発生状態が内燃機関10の運転状態によって発生し得る(図14を参照)。
ここにおいて、前記第1方向の端は、VN=100に相当する位置(上記位置X)に対応し、前記第2方向の端は、VN=0に相当する位置(上記位置Z)に対応する。また、前記第1所定位置は、VN=VN*に相当する位置(上記位置Y)対応する。
このヒステリシス発生状態は、図4の1点鎖線にて示すモーメントが上記ウィンドウ範囲内のものとなり、且つ、図4の破線にて示すモーメントが上記ウィンドウ範囲外のものとなる場合に限って発生する。ここで、開方向(又は、閉方向)のモーメントは、排ガスの流量が大きいほどゼロから開方向(又は、閉方向)へより大きく乖離した値となる。
例えば、排ガス流量が大きい場合には、本例におけるピボット位置L2/L1での1点鎖線及び破線にて示すモーメントは、それぞれ上記ウインドウ範囲外のものとなり得る。即ち、排ガス流量が大きい場合には、本例のようにピボット位置L2/L1が50%付近の値となるようベーン61が設計されていても、ヒステリシス発生状態が発生しない。
なお、この場合には、アクチュエータの作動位置が上記位置Xであるときに閉方向のモーメントが摩擦トルクよりも大きいため、上記他方側のピン当接部65a2とピン66とが当接する状態となる(図7を参照)。従って、位置X、及び位置Zの両位置においてもバックラッシが存在しない状態となり、位置X→位置Z(又は、位置Z→位置X)の区間ではアクチュエータの作動位置のA方向(又は、B方向)への移動に応じて開口面積代表値Aeqが増大していく(又は、減少していく)。
このように、内燃機関10の運転状態(特に、排ガス流量の大きさ)によって、ヒステリシス発生状態が発生する場合と、発生しない場合がある。
(ヒステリシス発生状態が発生する場合の対処)
本例の制御装置は、原則的には、作動位置相当値VNが目標作動位置相当値VNtに一致するように(近づくように)、モータ68等に駆動指示をする。この目標作動位置相当値VNtは、上述したヒステリシス発生状態が発生していない状態にて、内燃機関10の運転状態に応じて開口面積代表値Aeqが目標とする値となるように予め適合された値である。
本例の制御装置は、原則的には、作動位置相当値VNが目標作動位置相当値VNtに一致するように(近づくように)、モータ68等に駆動指示をする。この目標作動位置相当値VNtは、上述したヒステリシス発生状態が発生していない状態にて、内燃機関10の運転状態に応じて開口面積代表値Aeqが目標とする値となるように予め適合された値である。
他方、上述のように構成されたターボチャージャ50においては、内燃機関10の運転状態によっては、上述したヒステリシス発生状態が発生し得る。このヒステリシス発生状態が発生している場合、例えば、図14に示す上記位置X→位置X’の区間内にアクチュエータの作動位置が移動しても、目標とする開口面積代表値Aeqを得ることができない場合がある。即ち、ヒステリシス発生状態が発生している場合、所望の過給の程度が得られない場合がある。このため、ヒステリシス発生状態が発生しているか否かが検出されることが好ましい。
従って、本例の制御装置は、ヒステリシス発生状態が発生しているか否かを判定する。また、ヒステリシス発生状態が発生していると判定された場合、開口面積代表値Aeqが目標とする値となるように後述する特殊制御を実行する。以下、本例の制御装置の作動について、図15〜図17を参照しながら説明する。
図15は、ヒステリシス発生状態が発生している場合における作動位置相当値VNと開口面積代表値Aeqとの関係を示したグラフである。この図15は、上述した図14に対応するものである。本例では、開口面積代表値Aeqを、作動位置相当値VNが「100」である場合に対応する値Aeq1から増大させる場合における制御装置の作動を説明する。即ち、現時点における作動位置相当値VNが「100」(Aeq=Aeq1)であるものとする。
<アクチュエータ制御>
ECU91のCPUは、図16にフローチャートにより示したアクチュエータ制御ルーチンを所定の間隔毎に繰り返し実行するようになっている。
ECU91のCPUは、図16にフローチャートにより示したアクチュエータ制御ルーチンを所定の間隔毎に繰り返し実行するようになっている。
従って、所定のタイミングが到来すると上記CPUはステップ1600から処理を開始してステップ1605に進み、特殊制御フラグがOffであるか否かを判定する。この特殊制御フラグは、ヒステリシス発生状態が発生していると判定された場合にOffからOnに変更されるフラグであって、上記判定がなされるまではOffに設定されている。
現時点では、ヒステリシス発生状態が発生していると判定されていない。従って、上記CPUはステップ1605にて「Yes」と判定してステップ1610に進み、目標作動位置相当値VNtを決定する。
この目標作動位置相当値VNtは、現時点において運転速度センサ75により検出される運転速度NE、現時点において決定されている(1回の吸気行程あたりの)燃料噴射量qfinの最新値等に基づいて決定される。また、燃料噴射量qfinは、運転速度NE、アクセル開度センサ77により検出されるアクセルペダル81の操作量Accp等に基づいて決定される。より具体的には、例えば、アクセルペダル81の操作量Accpが大きいほど目標作動位置相当値VNtがより小さい値に決定される。
次に、上記CPUはステップ1615に進んで、ステップ1610にて決定された目標作動位置相当値VNtから、現時点においてアクチュエータ作動位置センサ76により検出される作動位置相当値VNを減じることで作動位置相当値偏差ΔVNを求める。
次いで、上記CPUはステップ1620に進み、ステップ1615にて求められた作動位置相当値偏差ΔVNに基づいて通常制御を実行した後、ステップ1695に進んで本ルーチンの処理を一旦終了する。この通常制御では、作動位置相当値VNが目標作動位置相当値VNtに一致するように(近づくように)、作動位置相当値偏差ΔVNに基づくモータ68のPID制御が実行される。作動位置相当値偏差ΔVNが負(又は、正)である場合、第2プレート64が図14のA方向(又は、B方向)へ移動するように制御される。また、作動位置相当値偏差ΔVNの絶対値が大きいほど(即ち、作動位置相当値VNの目標作動位置相当値VNtからの偏移が大きいほど)、モータ68の駆動速度がより大きい速度となるように制御される。
上述のように現時点では、作動位置相当値VNが「100」である。ここで、運転者によるアクセルペダル81の操作により、操作量Accpが増大するものとする。本例では、これに応じて、上記目標作動位置相当値VNtが「100」よりも小さく上記値VN*よりも大きい値VNt1に決定されるものとする。これにより、ステップ1615にて求められる作動位置相当値偏差ΔVNが負の値となり、通常制御によるアクチュエータのA方向への移動が開始される(図15を参照)。なお、ヒステリシス発生状態が発生していない場合には、上記値VNt1に対応する開口面積代表値Aeqは値Aeqt1になるものとする。
以降、上記特殊制御フラグがOffである限り、上記CPUはステップ1605にて「Yes」と判定してステップ1605,1610〜1620の処理を繰り返し実行する。
<ヒステリシス状態発生の検出>
ECU91のCPUは、図17にフローチャートにより示したヒステリシス発生状態検出ルーチンを所定の間隔毎に繰り返し実行するようになっている。
ECU91のCPUは、図17にフローチャートにより示したヒステリシス発生状態検出ルーチンを所定の間隔毎に繰り返し実行するようになっている。
従って、所定のタイミングが到来すると上記CPUはステップ1700から処理を開始してステップ1705に進み、第2プレート64等が開方向(即ち、A方向)へ移動しており、且つ、ヒステリシス発生状態が未判定であるか否かを判定する。ここにおいて、「ヒステリシス発生状態が未判定である」ことは、前回作動位置相当値VNを目標作動位置相当値VNtに一致させる制御が完了してからヒステリシス発生状態が発生したか否かの判定が実行されていないことを意味する。
上記CPUがステップ1705にて「Yes」と判定する場合、上記CPUはステップ1710に進んで現時点がアクチュエータの開方向への移動が開始された直後であるか否かを判定する。一方、上記CPUがステップ1705にて「No」と判定する場合、上記CPUはステップ1795に直ちに進んで本ルーチンの処理を一旦終了する。
現時点は、アクチュエータの開方向への移動が開始された直後であるから、上記CPUはステップ1705,1710にて共に「Yes」と判定してステップ1715に進み、現時点における開口面積代表値Aeqを算出する。
図18は、圧力比Pex1/Pex2と、タービン流量特性値Qと、開口面積代表値Aeqとの関係を示したグラフである。圧力比Pex1/Pex2と、タービン流量特性値Qと、図18に示すグラフとを用いることで、開口面積代表値Aeqが算出される。ここで、圧力比Pex1/Pex2は、現時点において上流側排気圧力センサ73により検出される上流側排気圧力Pex1を、現時点において下流側排気圧力センサ74により検出される下流側排気圧力Pex2で除して得られる値である。
また、タービン流量特性値Qは、下記(1)式と、現時点においてエアフローメータ71により検出される空気流量Ga(質量流量)と、燃料流量Gf(質量流量)と、排気温度Texと、上記検出される上流側排気圧力Pex1とに基づいて算出される。ここで、燃料流量Gfは、下記(2)式に示すように上記決定される燃料噴射量qfinに上記検出される運転速度NEを乗じて得られる値である。
Q=((Ga+Gf)・√Tex)/Pex1 ・・・(1)
Gf=qfin・NE ・・・(2)
Q=((Ga+Gf)・√Tex)/Pex1 ・・・(1)
Gf=qfin・NE ・・・(2)
また、排気温度Texは、タービンホイール53よりも上流の排気通路におけるガスの温度である。この排気温度Texは、図19に示す燃空比qfin/Mc及び運転速度NEと、排気温度Texとの関係を規定するテーブルに基づいて決定される。ここで、燃空比qfin/Mcは、上記決定される燃料噴射量qfinを今回の吸気行程あたりに筒内に吸入される空気量(筒内吸入空気量)Mcで除して得られる値である。また、この筒内吸入空気量Mcは、上記検出される空気流量Ga、上記検出される運転速度NE、及び現時点にて吸気圧力センサ72により検出される吸気圧力Pinに基づいて決定される。このテーブルによれば、燃空比qfin/Mcが大きいほど、又は、運転速度NEが大きいほど、単位時間あたりの筒内での発熱量が大きくなることに起因して排気温度Texがより高い温度に決定される。
上述のように算出されるタービン流量特性値Qは、開口面積代表値Aeqが一定である場合、圧力比Pex1/Pex2が大きいほどより大きくなる。また、タービン流量特性値Qは、圧力比Pex1/Pex2が一定である場合、開口面積代表値Aeqが大きいほどより大きくなる(図18を参照)。このような関係が用いられることで、開口面積代表値Aeqは、圧力比Pex1/Pex2が大きいほど、又は、タービン流量特性値Qが大きいほどより大きい値に算出される。
次に、上記CPUはステップ1720に進んで、開口面積代表値の初期値Aeq0をステップ1715にて算出された開口面積代表値Aeqに更新する。次いで、上記CPUはステップ1725に進みカウンタnをゼロに設定した後、ステップ1795に進んで本ルーチンの処理を一旦終了する。
現時点は、作動位置相当値VNが「100」である状態からアクチュエータの開方向への移動が開始された直後である(図15を参照)。従って、この場合、ステップ1715にて算出される開口面積代表値Aeq(即ち、ステップ1720にて更新される初期値Aeq0)は上記値Aeq1と略同一の値となる。
以降、上記CPUはステップ1710にて「No」と判定してステップ1730に進んでカウンタnをインクリメントするようになる。次に、上記CPUはステップ1735に進んで、カウンタnがカウンタ目標値nref以上であるか否かを判定する。このカウンタ目標値nrefは、カウンタnがカウンタ目標値nrefに達したときの作動位置相当値VNが上記値VN*よりも大きい値となるように設定される。
現時点は、カウンタnがステップ1725にてゼロに設定された直後である。従って、上記CPUはステップ1735にて「No」と判定して直ちにステップ1795に進んで本ルーチンの処理を一旦終了する。
これ以降、上記CPUはステップ1705,1710,1730,1735の処理を繰り返し実行してカウンタnがインクリメントされていく。他方、この処理が繰り返し実行されている間、アクチュエータは開方向(即ち、A方向)へ移動していく。換言すれば、作動位置相当値VNが「100」から減少していく(図15を参照)。
インクリメントされていくカウンタnが上記カウンタ目標値nrefに達すると、減少していた作動位置相当値VNが値VN1(VN*<VN1<100)に達する。これにより、上記処理を繰り返し実行していたCPUはステップ1735に進んだときに「Yes」と判定してステップ1740に進み、現時点における開口面積代表値Aeqを算出するようになる。このステップ1740における開口面積代表値Aeqの算出方法は、上述したステップ1715におけるものと同じである。
次に、上記CPUはステップ1745に進んで、ステップ1740にて算出された開口面積代表値Aeqからステップ1720にて更新された開口面積代表値の初期値Aeq0の最新値を減じた値が、基準値αよりも大きいか否かを判定する。
ここで、基準値αは、ヒステリシス発生状態におけるヒステリシス面積が適正範囲内の最大値となる場合において所定の作動位置相当値VN(本例では、上記値VN1)に対応する開口面積代表値Aeqと、ヒステリシス面積が最大となる場合において上記所定の作動位置相当値VNに対応する開口面積代表値Aeqとの差である。また、上記ヒステリシス面積は、作動位置相当値VNと開口面積代表値Aeqとの関係において、作動位置相当値VNが「100」から「0」まで変化させ、更に「0」から「100」まで変化させた場合における開口面積代表値Aeqの変化の軌跡によって囲まれた部分の面積を意味する。
ステップ1745にて「Yes」と判定される場合、上記CPUはステップ1795に直ちに進んで本ルーチンの処理を一旦終了する。即ち、この場合、上記ヒステリシス発生状態は不発生であると判定され、特殊制御フラグがOffに維持される。従って、この場合には、これ以降も通常制御が実行されていく(図15の破線にて示した丸印を参照)。
一方、ステップ1745にて「No」と判定される場合、上記CPUはステップ1750に進んで上記特殊制御フラグをOffからOnに変更・設定した後、ステップ1795に進む。即ち、この場合、上記ヒステリシス発生状態が発生していると判定される。
本例における内燃機関10の運転状態は、作動位置相当値VNが「100」以下の所定範囲内(図14の位置X→位置X’の区間に対応する範囲内)ではアクチュエータの作動位置が移動しても開口面積代表値Aeqが上記値Aeq1に維持されるものとする。即ち、この運転状態では、作動位置相当値VNが「100」から上記値VN1に達したときの開口面積代表値Aeqが上記値Aeq1となる(図15を参照)。
従って、この場合、ステップ1740にて算出される開口面積代表値Aeqが上記値Aeq1と略同一の値となる。このため、ステップ1745内における値「Aeq−Aeq0」は略ゼロ(<α)となり、上記ヒステリシス発生状態が発生していると判定される。この結果、ステップ1750にて特殊制御フラグがOnに変更・設定される。
以降、上記CPUはステップ1705に進んだとき「No」と判定して直ちにステップ1795に進むようになる。この図17のルーチンが前記異常判定手段の一部に対応し、ステップ1715及びステップ1740が前記開口面積推定手段の一部に対応する。また、作動位置相当値VNが「100」である場合の作動位置が前記第1位置に対応し、作動位置相当値VNが上記値VN1である場合の作動位置が前記第2位置に対応する。加えて、ステップ1715及びステップ1740にて算出される開口面積代表値Aeqが、前記第1開口面積相当値及び前記第2開口面積相当値に対応する。
一方、上述のように特殊制御フラグがOnに変更・設定されている。このため、図16のルーチン処理を繰り返し実行していたCPUは、ステップ1605に進んだとき「No」と判定してステップ1625に進み、特殊制御フラグがOffからOnに変更された直後であるか否かを判定するようになる。
上記CPUはステップ1625にて「Yes」と判定してステップ1630に進んで特殊制御の実行を開始する。この特殊制御では、現時点における作動位置相当値VNの目標作動位置相当値VNtからの乖離の程度にかかわらず、作動位置相当値VNが上記値VN*よりも小さい値となるまでモータ68にA方向の駆動指示がなされる。また、特殊制御においては、モータ68の駆動速度が、変更し得る範囲内の最大速度、且つ、上述した通常制御(PID制御)における駆動速度の範囲の最大速度よりも大きい速度に設定される。即ち、アクチュエータの作動位置のA方向への移動速度が最大速度に設定される。
次に、上記CPUはステップ1635に進んで、現時点において作動位置相当値VNが上記値VN*から余裕値βを減じた値よりも小さいか否かを判定する。現時点は特殊制御が開始された直後であるため、上記CPUはステップ1635にて「No」と判定してステップ1695に直ちに進んで本ルーチンの処理を一旦終了する。
以降、上記CPUはステップ1605,1625,1635にて「No」と判定する処理を繰り返し実行する。これにより、ヒステリシス発生状態が発生していると判定された時点以降、アクチュエータの作動位置はA方向へ最大速度をもって移動していく。換言すれば、作動位置相当値VNが上記値VN1から最大の変化速度をもって減少していく(図15を参照)。
減少していく作動位置相当値VNが図14の位置X’に対応する位置(図8を参照)に到達してからは、ピン66が上記二股部65aの他方側のピン当接部65a2を押圧することで、開口面積代表値Aeqは上記値Aeq1から増大していく。そして、作動位置相当値VNが上記値VN*に達すると、図9及び図10に示すように上記他方側のピン当接部65a2に当接していたピン66は、一方側のピン当接部65a1に当接するようになる。
更に減少していく作動位置相当値VNが値「VN*−β」に達すると、上記処理を繰り返し実行していたCPUはステップ1635に進んだときに「Yes」と判定してステップ1640に進んで特殊制御の実行を終了する。そして、上記CPUはステップ1645に進んで特殊制御フラグをOnからOffに変更・設定した後、ステップ1695に進んで本ルーチンの処理を一旦終了する。この図16のルーチンが前記アクチュエータ制御手段の一部に対応する。また、VN=VN*−βに相当する位置が前記第2所定位置に対応する。
以降、特殊制御フラグがOffに変更・設定されたため、上記CPUはステップ1605に進んだとき「Yes」と判定してステップ1610〜1620の処理を繰り返し実行する。即ち、通常制御が実行されていく。
これにより、正の値の作動位置相当値偏差ΔVNがゼロに近づくように、アクチュエータの作動位置が閉方向(即ち、B方向)へ移動していく。即ち、通常制御により、作動位置相当値VNが値「VN*−β」から値VNt1へ向けて増大していく。ここで、上記B方向への移動が開始するとき、ピン66は上記二股部65aの一方側のピン当接部65a1に当接している。従って、作動位置相当値VNの上記値「VN*−β」からの増大に応じて開口面積代表値Aeqが減少していく。そして、増大していく作動位置相当値VNが上記値VNt1に達すると、開口面積代表値Aeqは上記値Aeqt1に達し得る(図15の白抜きの星印を参照)。
なお、仮に、目標作動位置相当値VNtが上記値VNt1に代えて上記値VN*−βよりも小さい値VNt2に決定された場合にも、上述した作動と同様にヒステリシス発生状態が発生しているか否かの判定が実行される。ヒステリシス発生状態が発生していると判定さた場合、上述した作動と同様に特殊制御が実行されて、作動位置相当値VNが上記値「VN*−β」まで増大する。その後、通常制御が実行されて負の値の作動位置相当値偏差ΔVNがゼロに近づくように、アクチュエータの作動位置がA方向へ移動していく。
即ち、通常制御により、作動位置相当値VNが値「VN*−β」から値VNt2へ向けて減少していく。従って、作動位置相当値VNの上記値「VN*−β」からの減少に応じて開口面積代表値Aeqが増大していく。そして、減少していく作動位置相当値VNが上記値VN2に達すると、開口面積代表値Aeqは、上記値VNt2に対応する開口面積代表値Aeqである値Aeqt2に達し得る(図15の黒塗りの星印を参照)。
以上説明したように、本発明による可変容量型過給機付き内燃機関10の制御装置の実施形態によれば、通常制御によりアクチュエータの作動位置がA方向へ移動する場合において、作動位置が所定位置であるときの開口面積代表値Aeq(初期値Aeq0)と、作動位置が上記所定位置よりもA方向側の位置であるときの開口面積代表値Aeqとが算出される。そして、値「Aeq−Aeq0」が基準値αよりも小さい場合に、上記ヒステリシス発生状態が発生していると判定される。
この開口面積代表値Aeqは、内燃機関10の運転状態を表す所定のパラメータが用いられることで容易に算出(推定)され得る。従って、あらゆる運転状態にて上記ヒステリシス発生状態が発生しているか否かの判定が容易に実行され得る。即ち、上記判定がなされ得る内燃機関の運転状態の領域を大きくすることができる。
また、この装置は、上記ヒステリシス発生状態が発生していると判定された場合、通常制御に代えて、上述した特殊制御を実行する。これにより、作動位置相当値VNが上記値VN*よりも小さい値「VN*−β」となるまでアクチュエータの作動位置が最大速度をもってA方向へ移動する。その後、この装置は、再び通常制御を実行する。
ここで、例えば、通常制御にて目標とする開口面積代表値Aeqが、上記値VN*よりも大きい範囲内の作動位置相当値VNに対応するものである場合(図15の上記値VNt1及び値Aeqt1を参照)であっても、特殊制御により作動位置相当値VNが上記値「VN*−β」に到達した後に、通常制御により作動位置相当値VNが上記値VNt1となるまでアクチュエータがB方向へ移動する。即ち、開口面積代表値Aeqが上記値Aeqt1に到達し得る。この結果、可変ノズル機構60に上記ヒステリシス発生状態等の異常状態が発生する場合であっても、所望の過給の程度を得ることができる。
本発明は上記実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。例えば、上記実施形態においては、開口面積代表値Aeqの算出に上流側排気圧力Pex1を下流側排気圧力Pex2で除した圧力比Pex1/Pex2が用いられているが(図18を参照)、これに代えて、上流側排気圧力Pex1を大気圧で除した値が用いられてもよい。これによれば、下流側排気圧力センサ74を配設する必要がないため、より簡易な構成にて開口面積代表値Aeqを算出することができる。
また、上記実施形態においては、タービン流量特性値Qの算出に用いられる排気温度Texが図19に示すテーブルにて決定されているが、これに代えて、排気温度Texが空気流量Gaに基づいて求められてもよい。また、タービンホイール53よりも上流の排気通路に排気温度を検出するセンサを配設し、排気温度Texが直接検出されてもよい。
加えて、上記実施形態においては、タービン流量特性値Qが算出され、算出されたタービン流量特性値Qと圧力比Pex1/Pex2とに基づいて開口面積代表値Aeqが算出されているが、これに代えて、タービン流量特性値Qを算出することなく空気流量Gaと、燃料噴射量qfinと、上流側排気圧力Pex1とに基づいて開口面積代表値Aeqが算出されてもよい。この場合、例えば、空気流量Gaと、燃料噴射量qfinと、上流側排気圧力Pex1と、開口面積代表値Aeqとの関係を規定するテーブルを用いて開口面積代表値Aeqが決定されたもよい。このテーブルは、空気流量Gaが大きいほど、また、燃料噴射量qfinが大きいほど開口面積代表値Aeqがより大きい値に決定されるように構成される。
10…内燃機関、50…ターボチャージャ、52…コンプレッサホイール(コンプレッサ羽根車)、50…タービンホイール(タービン羽根車)、60…可変ノズル機構、61…ベーン、64…第2プレート、68…モータ、69…駆動アーム、91…電気制御装置。
Claims (4)
- 内燃機関の筒内に供給される燃料の燃焼により発生する排ガスのエネルギーにより回転駆動されるタービン羽根車と、
前記タービン羽根車の回転により回転駆動されて前記筒内に吸入される空気を圧縮するコンプレッサ羽根車と、
前記排ガスが前記タービン羽根車に向けて流れる際に通過する開口の開口面積を変更する開口面積変更部材と、
作動位置を変更することで前記開口面積変更部材を駆動して前記開口面積を調整するアクチュエータと、
を備えた可変容量型過給機を備えた内燃機関に適用され、
前記内燃機関の運転状態に応じて前記アクチュエータの前記作動位置を制御する通常制御を実行するアクチュエータ制御手段と、
少なくとも前記供給される燃料の量と、前記吸入される空気の流量と、前記開口よりも上流の排気通路での前記排ガスの圧力とに基づいて前記開口面積に相当する値を推定する開口面積推定手段と、
前記通常制御の実行中に前記アクチュエータの前記作動位置が第1位置から前記第1位置と異なる第2位置へ移動する場合において、前記作動位置が前記第1位置である場合に前記開口面積推定手段により推定される第1開口面積相当値と前記作動位置が前記第2位置である場合に前記開口面積推定手段により推定される第2開口面積相当値との差と、前記開口面積の異常発生の有無の判定に使用される基準となる基準値との比較結果に基づいて前記開口面積の異常が発生しているか否かを判定する異常判定手段と、
を備えた可変容量型過給機付き内燃機関の制御装置。 - 請求項1に記載の可変容量型過給機付き内燃機関の制御装置において、
前記開口面積推定手段は、
前記燃料の量と、前記空気の流量と、前記排ガスの圧力とに基づいてタービン流量特性値を算出し、前記算出されたタービン流量特性値と、前記排ガスの圧力とに基づいて前記開口面積相当値を推定するように構成された可変容量型過給機付き内燃機関の制御装置。 - 請求項1又は請求項2に記載の可変容量型過給機付き内燃機関の制御装置において、
前記可変容量型過給機は、
前記アクチュエータの前記作動位置が作動範囲における前記開口面積が小さい方向である第1方向の端から前記作動範囲における前記開口面積が大きい方向である第2方向の端まで移動する場合において、第1所定位置よりも前記第1方向の範囲では前記作動位置が移動しても前記開口面積が一定に維持されるとともに前記第1所定位置よりも前記第2方向の範囲では前記作動位置の移動に応じて前記開口面積が増大していき、前記作動位置が前記第2方向の端から前記第1方向の端まで移動する場合においては、前記作動範囲に亘って前記作動位置の移動に応じて前記開口面積が減少していく状態が、前記内燃機関の運転状態によって発生し得るように構成されていて、
前記異常判定手段は、
前記アクチュエータの前記作動位置が前記第1位置から前記第1位置よりも前記第2方向の前記第2位置へ移動する場合において前記開口面積の異常が発生しているか否かを判定するように構成され、
前記アクチュエータ制御手段は、
前記異常が発生していると判定された場合、前記通常制御に代えて、前記アクチュエータの前記作動位置を前記第1所定位置よりも前記第2方向の第2所定位置まで移動させる特殊制御を実行した後、前記通常制御を実行するように構成された可変容量型過給機付き内燃機関の制御装置。 - 請求項3に記載の可変容量型過給機付き内燃機関の制御装置において、
前記アクチュエータ制御手段は、
前記特殊制御の実行中、前記アクチュエータの前記作動位置の移動速度を最大に設定するように構成された可変容量型過給機付き内燃機関の制御装置。
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