JP2009174144A - 振動低減機構 - Google Patents

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Abstract

【課題】機械的なメカニズムによることなく高性能かつ高耐力、大きな応答低減効果が得られ、大規模構造物にも適用可能な振動低減機構を提供する。
【解決手段】構造物におけるフレーム内に層間変形により加力されてロッキングを生じる壁体3を設置し、そのロッキングによる回転慣性質量効果によって振動低減効果を得る。壁体の下部偶角部をフレームの下部入隅部に対して面内相対回転可能に支持するとともに、その回転中心である下部回転中心OAを壁体の重心位置ないし重心近傍位置に設定する。壁体の上部偶角部をフレームの上部入角部に対して面内相対回転可能に支持するとともに、その回転中心である上部回転中心OBを下部回転中心よりも上方に偏位する位置に設定する。フレームの入隅部および入隅部に壁体の偶角部を滑動可能に支持する円弧面からなる滑り面5を有する治具4を設ける。
【選択図】図1

Description

本発明は建物等の構造物に適用して好適な振動低減機構、特に壁体のロッキングにより生じる回転慣性質量効果を利用して振動低減効果を得る構造の振動低減機構に関する。
近年、小さな質量で大きな質量効果を発揮できる方策として回転慣性質量(慣性接続要素)を用いる方法が脚光をあび、それを利用する種々の応答低減機構が提案されている。たとえば特許文献1には、免震対象構造物の上下振動を長周期化する上下免震装置において、免震対象構造物の上下動に連動することで上下振動に関与する慣性質量を増加させる質量付加機構を設けた上下免震装置が提案されている。
この種の機構において慣性質量を生むための具体的な装置としては、ボールねじとフライホイール(回転錘)によるものが一般的であり、特許文献1に示される上下免震装置においても所定の質量を有する円盤をボールねじ式の運動変換機構により回転させる構成の慣性質量付加機構を採用している。
特開2004−44748号公報
上記のようなボールねじとフライホイールによる機構は、コンパクト化できるもののボールねじの負担を考慮するとあまり大きな負担力には対応できないものである。
すなわち、そのような機構では負担力の全てがボールねじに作用することからボールねじに座屈等が生じない範囲で使用する必要があり、それにより得られる慣性質量は現実的には1,000ton程度が限界であってそれ以上の高耐力化を図ることは困難であり、したがって大規模構造物には適用し難いものである。
そのため、上記のような機械的なメカニズムによらずに巨大な回転慣性質量効果が得られる有効適切な機構の開発も望まれていた。
上記事情に鑑み、本発明は機械的なメカニズムによることなく高性能かつ高耐力、大きな応答低減効果が得られて、大規模構造物にも適用可能な振動低減機構を提供することを目的とする。
本発明は、構造物における左右の柱とそれらの間に架設された下階梁と上階梁とにより構成されたフレーム内に、該フレームの面内において下階梁と上階梁との間で生じる相対振動により加力されてロッキングを生じる壁体を設置し、該壁体のロッキングによる回転慣性質量効果によって前記相対振動を低減せしめる構成の振動低減機構であって、前記壁体の下部偶角部を前記フレームの下部入隅部に対して面内相対回転可能に支持するとともに、その回転中心である下部回転中心を該壁体の重心位置ないし重心近傍位置に設定し、前記壁体の上部偶角部を前記フレームの上部入角部に対して面内相対回転可能に支持するとともに、その回転中心である上部回転中心を前記下部回転中心よりも上方に偏位する位置に設定してなり、前記フレームの下部入隅部に前記壁体の下部偶角部を滑動可能に支持する下部滑り面を有する下部治具を設けて、該下部治具における前記下部滑り面を、前記下部回転中心を通りかつ前記壁体に直交する水平軸線を中心線とする円弧面により形成し、前記フレームの上部入隅部に前記壁体の上部偶角部を滑動可能に支持する上部滑り面を有する上部治具を設けて、該上部治具における前記上部滑り面を、前記上部回転中心を通りかつ前記壁体に直交する水平軸線を中心線とする円弧面により形成してなることを特徴とする。
本発明においては、前記上部治具における前記上部滑り面としての円弧面を、前記壁体が前記下部回転中心を中心として回転した際における前記上部回転中心の上下方向の変位を考慮して補正した疑似円弧面とすることが望ましい。
また、前記壁体の下部偶角部と前記下部治具との間、および前記壁体の上部偶角部と前記上部治具との間に、前記壁体を回転可能に支持する滑動機構を介装しても良い。
さらに、前記上部治具または前記下部治具を主治具の両端部に設けて、該主治具を前記上階梁または下階梁に対して面内水平方向に相対変位可能に設置するとともに、該主治具と前記上階梁または下階梁の間に付加バネを介装することも考えられる。
本発明の振動低減機構は、建物等の構造体の水平振動時における層間変形に追随させて壁体をロッキングさせることにより、そのロッキングによる回転慣性質量効果を利用して壁体を回転慣性質量ダンパーとして機能させるものであり、小質量の壁体により巨大な回転慣性質量効果が得られ、構造物の長周期化、地震動入力の低減、遮断振動数における振動低減効果を有効に発揮できる。
特に、壁体を鉄筋コンクリートや鋼材等の一般的な建設資材により形成できるので、従来のボールねじとフライホイールによる機械的なねじ機構による回転慣性質量ダンパーに比べて安価に製作し施工することができるし、応力処理が容易であるので大規模構造物にも支障なく適用可能であり、さらには建物内に躯体として設置される壁体をそのまま回転慣性質量ダンパーとして機能する回転錘として有効利用することが可能である。
また、壁体の質量と寸法、上部回転中心と下部回転中心との間の中心間距離の設定のみで回転慣性質量を任意にかつ幅広く定めることができるし、さらには壁体のロッキングによる回転慣性質量と付加バネとによる固有振動数の設定によりTMD(チューンド・マス・ダンパー:動吸振器)として機能させることも可能である。
図1〜図3は本発明の振動低減機構の基本的な一実施形態を示すものである。これは建物の架構を構成しているフレームの内側、すなわち左右の柱1と上下の梁2(下階梁2Aおよび上階梁2B)との間に壁体3をロッキング可能に設置したものであって、地震時における架構の層間変形に追随して生じる壁体3のロッキングによる回転慣性質量効果を利用して振動低減効果を得るものである。
なお、以下の実施形態は基本的に上下対称形をなしているので、上下に対称配置されている同一構成要素には同一符号を付すが、必要に応じて下部に係わる構成要素には符号に添字Aを付し、上部に係わる構成要素には符号に添字Bを付して両者を区別する。
本実施形態における壁体3は鉄筋コンクリート造ないし鉄骨造もしくはそれらを適宜組み合わせた複合構造の矩形平板状のものであって、その下部偶角部および上部偶角部がそれぞれ治具4(下部治具4Aおよび上部治具4B)を介してフレームの下部入隅部および上部入隅部に対して面内相対回転可能に支持されることにより、そのフレームの内側においてロッキング可能に配置されているものである。
すなわち、図1に示すように、フレームの下部入隅部には滑り面5(下部滑り面5A)を有する下部治具4Aが設置されているとともに、壁体3の下部偶角部にはその下部滑り面5A上を転動する滑動機構6が取り付けられていて、その滑動機構6が下部滑り面5A上を滑らかに転動することによって壁体3は下階梁2Aに対して面内相対回転が可能とされている。そして、下階梁2Aに対する壁体3の回転中心である下部回転中心OAは壁体3の重心位置ないし重心近傍位置に設定されていて、下部治具4Aにおける下部滑り面5Aはその下部回転中心OAを通って壁体3に直交する水平軸線を中心線とする下部回転半径R2の円弧面(円筒面)として形成されている。
また、フレームの上部入隅部には滑り面5(上部滑り面5B)を有する治具4(上部治具4B)が設置されているとともに、壁体3の上部偶角部にはその上部滑り面5Bを転動する滑動機構6が取り付けられていて、その滑動機構6が上部滑り面5B上を滑らかに転動することによって壁体3は上階梁2Bに対して面内相対回転が可能とされている。そして、上階梁2Bに対する壁体3の回転中心である上部回転中心OBは上記の下部回転中心OAよりも偏位寸法aだけ上方に偏位する位置に設定されており、上部治具4Bにおける上部滑り面5Bはその上部回転中心OBを通って壁体3に直交する水平軸線を中心線とする上部回転半径R1の円弧面(円筒面)として形成されている。
なお、上部回転半径R1と下部回転半径R2とは同一であっても良いが、必ずしも同一である必要はない。
上記の滑動機構6としてはたとえば図2に示すものが好適に採用可能である。(a)はローラ支承によるもの、(b)は円弧状に湾曲させたガイドレール7にスライダー8を滑らかにスライド可能に組み付けた構成のリニアガイドと称される形式のものである。これらの滑動機構6はいずれも摩擦係数をμ=0.006程度以下とできるばかりでなく、1台当たりの耐荷重を1,000tonf程度にもできる。しかも(b)に示すリニアガイドでは圧縮力のみならず引張力に対しても抵抗できるので壁体3の浮き上がりを防止することも可能である。
さらに、滑動機構6としては滑り支承によるもの、特にたとえば図2(c)に示すような滑り板9に対して滑り材10を滑らせる構成のものも好適に採用可能であり、それによってもμ=0.013程度以下、耐荷重2,000ton以上とすることが可能である。
なお、(a)のローラ支承および(c)の滑り支承では、一方の滑り面と滑動機構の間に隙間が生じた場合でも、圧縮側の支承で力を伝達できるので問題ない。
また、上記で例示したような滑動機構6における摩擦係数μの設定は、壁体3を有効にロッキングさせるように設定した上で適度の摩擦抵抗を与えるように設定することも考えられ、そのようにすればそれら滑動機構6自体を摩擦ダンパーとしても機能させることも可能であってそれにより壁体3のロッキングを有効に減衰させることが可能となる(この点についての検討は後述する)。
上記構造による本実施形態の振動低減機構では、図1(a)に示す通常時(静止時)の状態から図1(b)に示すように地震時に架構が層間変形を生じた場合、たとえば図示例のように上階梁2Bが下階梁2Aに対して右方向に水平変位δが生じた場合には、壁体3の上部は上部治具4Bを介して水平右方向に加力され、それにより壁体3は加力方向に微小角度だけ回転してロッキングを生じる。
その際の回転角をθとすると、上部回転中心OBは水平方向にδ=asinθだけ変位し、下部回転中心OAと上部回転中心OBとの間の鉛直距離はacosθとなる(上部回転中心OBが下方にa(1-cosθ)だけ変位する)。
そして、そのようなロッキングが生じると、壁体3には大きな回転慣性質量Ψが生じ、それによる回転慣性質量効果により優れた振動低減効果が得られる。すなわち、壁体3の回転慣性モーメントをIpとし、下部回転中心OAを壁体3の重心位置とした場合、壁体3による回転慣性質量Ψは以下となる。
Figure 2009174144
その回転慣性質量Ψは、壁体3の実際の質量に比べて遙かに大きなものとなる。例えば、壁体3が鉄筋コンクリート造であって厚さ500mm、幅8,000mm、高さ6,200mm、密度ρ=2.4の場合、その質量は59.5tonに過ぎないが、回転慣性モーメントはIp=508ton・m2となり、中心間偏位寸法a=500mの場合には壁体3の回転により得られる回転慣性質量はΨ=2,032tonにもなって実際の質量の数十倍にも拡大されることになり、したがって単なる1面のRC壁のみで大規模建物を対象とする場合に必要とされる1,000tonを超えるような大きな慣性質量を容易に確保することが可能である。
なお、中心間偏位寸法aの値をあまり小さくすると回転に対する摩擦抵抗や精度誤差の影響が大きくなるので、壁体3の最大寸法の5%以上の値とすることが望ましい。
また、壁体3の回転に伴い上部回転中心OBはわずかに鉛直変位するが、解析上は高次の微小項であるし、通常はロッキング時の傾斜角θは1/10(6°)程度以下と充分に小さいために回転機構上には殆ど影響がなく、通常は無視して差し支えなく、その場合は上述したように上部滑り面5Bを下部滑り面5Aと同様に単なる円弧面(円筒面)とすることで充分である。
しかし、回転角θがそれ以上に大きくなることを想定する場合、厳密には上部回転中心OBの鉛直偏位を考慮して上部滑り面5Bの形状を以下の手法で補正することが望ましい。
図3に示すように、上階梁2Bの下面中央を原点とするXY座標系を想定し、原点から下部回転中心OAまでの距離b、中心間偏位寸法aとする。この場合、下部回転中心OAおよび上部回転中心OBの座標はそれぞれ(0,-b)、(0,-b+a)である。
壁体3が静止状態にある通常時の場合、上部治具4Bに対する壁体3の上部偶角部の支持点の座標(x0,y0)は、上部回転半径R1、上部回転中心OBとその支持点を結ぶ直線と鉛直線のなす角度φとすると、(x0,y0)=(R1sinφ,-b+a+R1cosφ)である。
その状態から壁体3が図示時計回りに回転角θだけ回転し、上部回転中心OBが下方に変位するとともに下部回転中心OAも時計回りに水平変位して、下部回転中心OAおよび上部回転中心OBの座標がそれぞれ(-asinθ,-b)、(0,-b+acosθ)になったとすると、それに伴い、上部治具4Bによる壁体3の上部偶角部に対する支持点(x,y)の座標は、
(x,y)=(R1sin(φ+θ),-b+acosθ+R1cos(φ+θ)) となる。
具体的な一例を上げれば、R1=5,000mm、φ=60°、a=500mm、b=4,000mmの場合、回転角θが−15°〜+15°の範囲では支持点(x,y)の回転軌跡は図3(b)に実線で示すものとなる。これは破線で示している単なる円弧(半径R1=5,000mm)とほぼ同様ではあるが、回転角θが大きい範囲では単なる円弧よりも曲率がやや大きくなる。
したがって、上部治具4Bにおける上部滑り面5Bの形状をそのような回転軌跡に厳密に合致する形状の疑似円弧面としておくことにより、回転角θが大きくなった場合にも壁体3の上部偶角部が上部滑り面5Bから浮いて離間してしまうことが回避され、壁体3は常に上部治具4Bにより支持されつつ滑らかに滑動して壁体3を安定にロッキングさせることが可能である。
上記の実施形態の振動低減機構による得られる基本的な効果を以下に列挙する。
(1)上記の振動低減機構は壁体3のロッキングにより生じる回転慣性質量を利用する回転慣性質量ダンパーとして機能するものであって、その回転慣性質量ダンパーを構造体バネ(構造剛性)と並列配置した構造の応答低減機構であるので、構造物の長周期化、地震動入力の低減、遮断振動数における振動低減効果を有効に発揮できる。
(2)従来一般のボールねじとフライホイールによる機械的な機構による回転慣性質量ダンパーと比較して回転錘としての壁体3に対する慣性質量の比は小さくなるものの、1,000tonを超えるような巨大な慣性質量効果を容易に実現することができる。
(3)壁体3は鉄筋コンクリートや鋼材ないしそれらの組合せにより安価に製作できるし(但しそれに限定されるものではなく、所望の質量が得られるものであれば適宜の材料が採用可能である)、質量と寸法の設定により回転慣性質量が定まるものであって、下部回転中心OAと上部回転中心OBの双方の回りで回転できるという条件を満たすことのみで巨大な慣性質量が得られるので、従来の機械的なねじ機構によるものよりも安価に製作し施工することができる。
(4)下部回転中心OAと上部回転中心OBとの間の中心間偏位寸法aと壁体3の回転慣性モーメントによって慣性質量が決定されるので、中心間偏位寸法aの値を調整することで慣性質量を任意にかつ幅広く設定することができる。
(5)壁体3と上下の梁2との間での力は円弧状の滑り面4と滑動機構6との間で伝達されるが、その伝達面積は必要に応じて大きくとることができるから、従来のボールねじの断面積だけで負担力を全て処理する機械的な機構と比較して単位面積当たりの応力は小さくなり、応力処理が容易である。
(6)滑動機構6として図2(a)に示したようなローラ支承や図2(c)に示したような滑り支承を採用すれば、支承部と滑り面との間で引張力を伝達せずに圧縮力のみとすることができる。引張と圧縮の両方を伝達する機構だと逃げ寸法を確保することができないが、圧縮のみならば滑り面と支承との間にわずかな隙間があっても問題なく滑動でき、精度管理が容易になることから安価に製造できる。
また、滑動機構6として図2(b)に示したようなようなリニアガイドを採用すれば、圧縮力のみならず引張力に対しても抵抗できて壁体3の浮き上がり(滑り面との離間)を防止することができる。
(7)壁体の四隅の偶角部を滑動可能に支持するので、滑動機構や滑り支承は壁体の四隅部に対してのみ設置することで充分であり、したがって壁体と構造体との接触面積が小さく、支承部品も小さくなることから安価にできる。また、滑り面での接触長さが小さくなることで寸法精度管理も容易である。
(8)上部回転中心OBの回転時の鉛直変位を考慮して上部滑り面4Bを疑似円弧面とすれば、ロッキング回転角が大きくなっても壁体3と上部滑り面4Bとが離間せずに円滑にロッキング振動させることができる。
(9)建物内に躯体として設置される壁体3を回転錘として有効利用することにより、格別の制震機構を設置することによる有効面積の減少を防止することができる。
以上、本発明の基本的な一実施形態について説明したが、以下に他の実施形態を説明する。
上記実施形態では治具4をフレーム内の入隅部に直接固定したが、治具4を他の部材を介して間接的に設置することでも良い。たとえば図4に示すように、上階梁2Bの下面に主治具14を固定してその主治具14の両端部に上部治具4Bを固定することでも良い。勿論、下部治具4Aについても同様の主治具を介して下階梁2Aに対して固定することでも良い。
上記実施形態では上部治具4Bおよび下部治具4Aをいずれもフレームに対して固定したが、上部治具4Bまたは下部治具4Aをフレームに対して面内水平方向に相対変位可能に設置することでも良く、その場合の構成例を図5(a)、(b)に示す。
これは図4に示したように上部治具4Bを主治具14の両端部に設置したうえで、その主治具14を上階梁2Bに対して軸方向に相対変位可能に設置し、主治具14とフレームとの間に付加バネ15および付加減衰16を介装したものである。図5(a)は主治具14と上階梁2Bとの間に付加バネ15としての積層ゴムと付加減衰16としてオイルダンパーを設置したもの、(b)は主治具14の両端部と両側の柱1との間に付加バネ15としてのコイルバネと付加減衰16としてダッシュポットを介装したものであり、いずれも同様に機能するものである。
この場合、壁体3により構成される回転慣性質量ダンパーは付加バネ15に対して直列配置されたうえで構造体バネ(構造剛性)に対して並列配置されることになり、この壁体3による回転慣性質量と付加バネ15とによる振動系をTMD(チューンド・マス・ダンパー:動吸振器)と同様に機能させることができる。
すなわち、付加バネ15のバネ定数k0、壁体3の回転慣性質量Ψ、振動抑制対象振動数f0(振動抑制対象角振動数ω0)の場合、それらの間に次式の関係が成り立つように各諸元を設定する。
Figure 2009174144
上式は、壁体3による回転慣性質量Ψと付加バネ15とによる振動系の固有振動数を振動抑制対象振動数f0に同調させることを意味し、そのような設計とすることによりその振動数での共振特性を大幅に改善して応答低減を図ることができる。特に、振動抑制対象振動数f0を構造物(建物)の固有1次振動数とすることにより、地震時における構造物の固有1次振動数での応答低減を有効に図ることができる。
図5(a)に示す実施形態の場合の具体的な設計例を以下に示す。
壁体3をRC壁とし、壁厚0.5m、幅9m、高さ6m、質量64.8tonとする。
壁体3の中心間偏位寸法a=0.5mとすると、壁体3の回転慣性モーメントIp=632ton・m2、回転慣性質量Ψ=2,527tonとなる。
上記の壁体3により構成される回転慣性質量ダンパーをTMDとして機能させて、周期2秒、固有振動数f0=0.5Hz、ω0=2πf0=3.14rad/sの建物に同調させる設計とする。
付加バネ15として3台の積層ゴムを用いる場合、所要バネ定数はk0=Ψω0 2=25.4tonf/cmである。積層ゴムの材質G12、ゴム厚60mmとすると、ゴムの総所要せん断面積A=12,700cm2、したがって1台当たりの所要せん断面積A=4,200cm2、故に積層ゴムとしては500×850×3台を用いることで充分である。
付加振動系の減衰定数h=0.07とすると、減衰係数c0=2mω0=1,100kN・s/m=11kN/kineであり、汎用の小容量の免震用オイルダンパーを用いることで充分である。
なお、付加減衰16は上記のように付加バネ15に対して並列に設置するばかりでなく、壁体3と上部治具4Bとの間に設置しても良く、その場合は上述したように壁体3と上部治具4Bとの間の滑動機構6における摩擦係数を適正に設定して所望の減衰性能を持たせることにより、それ自体を付加減衰16として機能させることも考えられる。
また、上部治具4Bに代えて下部治具4Aに対して同様の構成を採用することによっても(つまり図5の天地を逆にした構成とすることによっても)、同様の効果が得られる。
さらに、壁体3は上記実施形態のように単純な平板状であることに限らず、所望の質量を確保できかつ上下の偶角部を滑動可能に支持できるものであれば壁体3全体の形状は任意であり、たとえば図6(a)、(b)に示すように所望位置に窓や出入り口等に使用する開口部20を設けたり、さらには(c)に示すように所望形状の変形壁としたうえで窓用の開口部20や配管類を通すための開口部21等を形成することが可能である。
特に、回転錘としての壁体3の中央部の質量は回転慣性質量効果を得る上ではあまり寄与しないし、下部回転中心OAおよび上部回転中心OBは単に仮想中心であってそれらの位置に実際に回転軸やピンの類を設ける必要もないから、壁体3の中央部を切り欠いてそこに開口部20、21を形成することは何らの支障がないばかりか、寧ろ壁体3に好適な質量分布を持たせることになって合理的である。
さらになお、複数の壁体3を組み合わせて中空箱状のユニットを構成してその内部を室として利用することとし、その室全体をロッキングさせることも不可能ではない。
次に、円弧状の滑り面において支承と滑り面の間に作用する摩擦を考慮した検討を行い、滑り面に適切な減衰を与えることによって慣性質量ダンパー機能と減衰機能とを同時に持つ機構となることを説明する。なお、本検討では上部回転半径と下部回転半径をいずれもR1とする。
図3(a)の左上の支承を例にとって、そこでの力の釣り合いを図7(a)に示す。滑り面を介して壁体に加えられる力は、法線方向にFR、接線方向(滑りと逆向き)にFθである。滑り面の摩擦係数をμとすると Fθ=μFR である。これらの水平方向合力が加力Fであり、次式で表される。
Figure 2009174144
一方、下部回転中心点まわりの回転に対する釣り合いは、時計まわりの外力モーメントとして次式となる。
Figure 2009174144
壁体の下部右側の支承にも同じ圧縮力が作用するので、この摩擦力Fθも考慮すると、
Figure 2009174144
壁体の慣性モーメントIθ、壁体がθだけ回転してφが変化すると壁体の慣性モーメントは
Figure 2009174144
下部に対する上部治具の水平変位をxとすると、
Figure 2009174144
Figure 2009174144
摩擦を無視した場合の加力F、慣性質量Ψはそれぞれ
Figure 2009174144
Figure 2009174144
であるから、摩擦を考慮することにより慣性質量Ψが
Figure 2009174144
に増大することとなる。
図7(b)に示すように、加力が上記と同じであって逆方向に回転する場合には、上記と同様に滑り面の摩擦係数をμとすると Fθ=μFR 、これらの水平方向合力が加力Fであり、次式で表される。
Figure 2009174144
一方、下部回転中心点まわりの回転に対する釣り合いは、時計まわりの外力モーメントとして次式となる。
Figure 2009174144
壁体の下部右側の支承にも同じ圧縮力が作用するので、この摩擦力Fθも考慮すると、
Figure 2009174144
壁体の慣性モーメントIθ、壁体がθだけ回転してφが変化すると壁体の慣性モーメントは
Figure 2009174144
下部に対する上部治具の水平変位をxとすると、
Figure 2009174144
Figure 2009174144
摩擦を無視した場合の加力F、慣性質量Ψはそれぞれ
Figure 2009174144
Figure 2009174144
であるから、摩擦を考慮することにより慣性質量Ψが
Figure 2009174144
と低減することとなる。
いま、単位の変位振幅に対して荷重−変位関係の履歴を示すと、図3(c)のような形(くびれたドッグボーン状)となる。なお、摩擦を無視した場合を破線で示してある。
破線の勾配と同じで符号を正にしたバネ剛性をもつ付加振動系を考えたとき、等価減衰定数heqは次式となる。
Figure 2009174144
ここで、図3に示した設計例のようにφ=60°,R1/a=10とすると等価減衰定数heqは次式となる。
Figure 2009174144
摩擦係数μと等価減衰定数Heqとの関係を図3(d)に示し、その縦軸を拡大してHeqを0.5までの範囲としたものを図3(e)に示す。摩擦係数μがμ≦0.042なら減衰定数が求められ、これを超えると壁体が回転しなくなる。
また、同調時の減衰定数をh=0.07とすると、摩擦係数μ=0.016となる。図2(c)に示したような一般的な市販の滑り支承においても摩擦係数μ=0.013程度とできるので、そのような滑り支承による摩擦抵抗で適切な減衰を付与することが可能であることが分かる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでは勿論なく、要は壁体3を回転慣性質量ダンパーとして機能させるようにフレーム内にロッキング可能に設置する構成とする限りにおいて、上記各実施形態を様々に組み合わせることをはじめとしてさらに適宜の設計的変形や応用が可能であることはいうまでもない。
本発明の振動低減機構の一実施形態を示す概略構成図である。 同、滑動機構の例を示す図である。 同、上部滑り面の補正についての説明図である。 本発明の振動低減機構の他の実施形態を示す概略構成図である。 同、さらに他の実施形態を示す概略構成図である。 同、壁体の形態例を示す図である。 同、滑り面の摩擦を考慮する場合の説明図である。
符号の説明
1 柱
2 梁
2A 下階梁
2B 上階梁
3 壁体
4 治具
4A 下部治具
4B 上部治具
5 滑り面
5A 下部滑り面
5B 上部滑り面
6 滑動機構
7 ガイドレール
8 スライダー
9 滑り板
10 滑り材
14 主治具
15 付加バネ
16 付加減衰
20,21 開口部

Claims (4)

  1. 構造物における左右の柱とそれらの間に架設された下階梁と上階梁とにより構成されたフレーム内に、該フレームの面内において下階梁と上階梁との間で生じる相対振動により加力されてロッキングを生じる壁体を設置し、該壁体のロッキングによる回転慣性質量効果によって前記相対振動を低減せしめる構成の振動低減機構であって、
    前記壁体の下部偶角部を前記フレームの下部入隅部に対して面内相対回転可能に支持するとともに、その回転中心である下部回転中心を該壁体の重心位置ないし重心近傍位置に設定し、
    前記壁体の上部偶角部を前記フレームの上部入角部に対して面内相対回転可能に支持するとともに、その回転中心である上部回転中心を前記下部回転中心よりも上方に偏位する位置に設定してなり、
    前記フレームの下部入隅部に前記壁体の下部偶角部を滑動可能に支持する下部滑り面を有する下部治具を設けて、該下部治具における前記下部滑り面を、前記下部回転中心を通りかつ前記壁体に直交する水平軸線を中心線とする円弧面により形成し、
    前記フレームの上部入隅部に前記壁体の上部偶角部を滑動可能に支持する上部滑り面を有する上部治具を設けて、該上部治具における前記上部滑り面を、前記上部回転中心を通りかつ前記壁体に直交する水平軸線を中心線とする円弧面により形成してなることを特徴とする振動低減機構。
  2. 請求項1記載の振動低減機構であって、
    前記上部治具における前記上部滑り面としての円弧面を、前記壁体が前記下部回転中心を中心として回転した際における前記上部回転中心の上下方向の変位を考慮して補正した疑似円弧面としてなることを特徴とする振動低減機構。
  3. 請求項1または2記載の振動低減機構であって、
    前記壁体の下部偶角部と前記下部治具との間、および前記壁体の上部偶角部と前記上部治具との間に、前記壁体を回転可能に支持する滑動機構を介装してなることを特徴とする振動低減機構。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の振動低減機構であって、
    前記上部治具または前記下部治具を主治具の両端部に設けて、該主治具を前記上階梁または下階梁に対して面内水平方向に相対変位可能に設置するとともに、該主治具と前記上階梁または下階梁の間に付加バネを介装してなることを特徴とする振動低減機構。
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