JP2009168128A - 軸受用密封装置、及び車輪支持用軸受ユニット - Google Patents

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Abstract

【課題】軸受への組付けが容易で、組付後の位置ずれを確実に防止することで、長期に亘って一定の密封性能を維持可能な耐久性に優れた軸受用密封装置を提供する。
【解決手段】基端から先端まで所定方向に延出する筒状の固定部62a、及び固定部の基端に連続するとともに、固定部に対して所定角度で延出する円板部62bで成り、いずれかの軌道輪10(16)に固定される環状のスリンガ62を少なくとも備えて構成し、スリンガが固定される軌道輪には、スリンガを固定するための段差部16gを周縁部の全周に亘って設け、段差部は、段差面16hを境にして径差を有する2つの部位が周方向に沿って連続される構造を成すとともに、スリンガは、固定部の先端atの肉厚が当該固定部の他の部位よりも全周に亘って薄肉にされて成る薄肉部62sを備え、薄肉部が軌道輪に設けられた段差部の段差面と接触して変形されることで、軌道輪に位置決め固定される。
【選択図】図1

Description

本発明は、各種の軸受(例えば、自動車の車輪を支持するためのハブユニット軸受(車輪支持用軸受ユニット)等の軸受装置など)の内部を密封状態に保つための密封構造の改良に関し、特に、当該車輪支持用軸受ユニットに設けられた密封装置の位置ずれ防止構造の改良に関する。
従来から、軸受装置には、軸受の内部を外部から遮蔽して密封状態(気密状態、及び液密状態)に保つために各種の密封装置が設けられており、当該密封装置を設けることで、軸受装置の外部から異物(例えば、泥水、塵埃など)が内部に侵入することを防止しているとともに、内部に封入された潤滑剤(例えば、グリース、潤滑油など)が外部へ漏洩することを防止している。
このような密封装置は、接触型と非接触型とに大別することができ、例えば、接触型としては、鋼板等を断面がL字状を成すようにプレス加工などにより成形した環状の芯金の一部に、各種の弾性材(例えば、ゴムやプラスチックなどの樹脂材)を連結した構造を成すシールがあり、非接触型としては、ステンレス板、鉄板等の金属板(鋼板)からプレス加工などにより成形されたシールドがある。さらには、前記接触型シールと非接触型シールド(いわゆるスリンガ)とを断面形状が略箱形(矩形)状となるように組み合わせ、パッケージ構造とした接触型の密封装置(いわゆるパックシール)も知られている(図5(b),(c))。
一般的に、接触型の方が非接触型よりも密封性能が高く、軸受装置の使用条件や使用目的などに応じて要求される密封性(気密性や液密性)のレベルによって、これらの密封装置の使い分けが行われている。
一例として、パックシールは、その断面積が小さく、大きな配設スペースを確保する必要がないという特長を有するだけでなく、その密封性能が非常に高いという優れた特長を有するため、厳しい密封性能(例えば、高レベルの泥水浸入防止効果)が要求される軸受装置、例えば、図5(a)に示すような自動車の車輪を支持するためのハブユニット軸受(以下、軸受ユニットという)Aに対する密封装置として広く使用されている。
図5(b),(c)には、かかるパックシールの構成例が示されており、当該パックシール2は、所定の間隔を空けて対向して配置されたスリンガ22及び芯金(以下、シール芯金という)24と、これらの間に介在するシール26で構成されている。この場合、スリンガ22及びシール芯金24は、いずれも断面形状が略L字状を成す環状に構成されており、シール26は、当該スリンガ22あるいはシール芯金24の一方に連結されるとともに、他方に摺接する複数のリップ部26lを設けて構成されている。
このような構成を成すパックシール2が、図5(a)に示すように軸受ユニットAに組み付けられた場合、スリンガ22は、回転輪10(具体的には、内輪構成体16)に固定(具体的には、嵌合)されて当該回転輪10(内輪構成体16)とともに回転するのに対し、シール芯金24は、静止輪12に固定(具体的には、嵌合)されて常時静止状態に維持される。なお、この際、シール26は、図5(b)に示す構成ではその一部がスリンガ22とともに回転するのに対して、同図(c)に示す構成では回転するスリンガ22にリップ26lを摺接させた状態で静止している。
ところで、パックシール2のスリンガ22及びシール芯金24は、加工の容易性やコストなどを考慮し、通常、薄い鋼板などをプレス加工することによって成形されている。このため、例えば、軸受ユニットAの回転輪10(内輪構成体16)との嵌合面であるスリンガ22の円筒部22aの内径面(図5(b),(c)の下側の面)、並びに静止輪12との嵌合面であるシール芯金24の円筒部24aの外径面(同図の上側の面)の寸法の公差幅は、いずれも約0.1mm程度となり、回転輪10(内輪構成体16)及び静止輪12の寸法公差、あるいは回転軸やハウジング(いずれも図示しない)の寸法公差などが重畳されると、かかる公差幅はさらに大きくなってしまう。この結果、実質的な公差幅によって、回転輪10(内輪構成体16)と嵌合させる際のスリンガ22(円筒部22aの内径面)の嵌合代、並びに静止輪12と嵌合させる際のシール芯金24(円筒部24aの外径面)の嵌合代が、いずれも大きくばらついてしまう場合がある。
例えば、スリンガ22の嵌合代が過大であると、当該スリンガ22を回転輪10(内輪構成体16)へ嵌合させる際、その円筒部22aに連続する薄肉の円板部22b(図5(e))がシール26と接近する方向、若しくはその逆方向のいずれかへテーパ状に傾いて変形してしまう場合がある。図5(d),(e)には、一例として、同図(c)に示すパックシール2を軸受ユニットAへ組み付ける(嵌合させる)際の当該パックシール2の状態が示されており、同図(d)が嵌合前の状態、同図(e)が嵌合後の状態(実線で示すスリンガ22が円板部22bをシール26と接近する方向へ傾けて変形した状態、点線がその逆方向へ円板部22bを傾けて変形した状態)をそれぞれ示す。
このようにスリンガ22が変形すると、当該スリンガ22とシール26のリップ26lとの摺接状態(いわゆる、リップ26lのしめ代(以下、単にしめ代という))が変化してしまう。具体的には、図5(e)の実線で示すようにスリンガ22が円板部22bをシール26と接近する方向へ傾けて変形した場合には、しめ代が増加してしまうのに対し、同図の点線で示すようにスリンガ22がその逆方向へ円板部22bを傾けて変形した場合には、しめ代が減少してしまう。この場合、しめ代が増加すると、スリンガ22とシール26(リップ26l)とが過度に摺接し、摩擦による発熱などが生じて当該スリンガ22及びシール26の早期劣化を招く虞があるのに対し、しめ代が減少すると、スリンガ22とシール26との摺接圧が不足し、パックシール2の密封性能(例えば、泥水浸入防止効果)を低下させてしまう虞がある。
なお、シール芯金24の嵌合代が過大である場合も、静止輪12への嵌合時において、円筒部24aに連続する薄肉の円板部24bがシール26と接近する方向、若しくはその逆方向のいずれかへテーパ状に傾いて変形すると、当該シール芯金24に連結されたシール26のリップ26lとスリンガ22との摺接状態(上述と同様のしめ代)が変化してしまう。結果として、上述したスリンガ22の場合と同様にパックシール2の早期劣化や密封性能の低下を招いてしまう。
したがって、パックシール2を製造する際には、まずシール26のリップ26lのしめ代限界(しめ代の最大値)からスリンガ22及びシール芯金24の最大嵌合代を設定し、次いで当該最大嵌合代から加工時における寸法公差を差し引くことで最小嵌合代を設定する場合が多い。このため、スリンガ22及びシール芯金24の嵌合代が最小値付近に加工された場合、当該スリンガ22やシール芯金24を軸受ユニットAへ組み付ける(嵌合させる)際、不用意に力(押込力)を加えると、これらが必要以上に動いてしまう虞があるだけでなく、当該押込力の大きさによってはこれらが変形してしまう虞もある。
また、嵌合代が最小値付近に加工されたスリンガ22及びシール芯金24は、軸受ユニットAへの組み付け後(嵌合後)、例えば、転動体(玉)18の転動により回転輪10(内輪構成体16)、あるいは静止輪12が瞬間的に撓んだ場合など、クリープにより位置ずれを起こしてしまう虞もある。
このようにスリンガ22やシール芯金24が位置ずれを起こした場合、シール26のリップ26lのしめ代が変動してパックシール2の早期劣化や密封性能(例えば、泥水浸入防止効果)の低下を招いてしまう。
したがって、かかる不都合を回避すべく、スリンガ22及びシール26で成る密封装置2の密封性能の向上を図るとともに、当該密封装置2が軸受ユニットAの内部方向(図5(a)の左方向)へ位置ずれ(移動)することを防止する方策を講じる必要がある。例えば、スリンガ22を軸受ユニットAへ組み付ける(嵌合させる)際、これらがユニット内部方向へ位置ずれ(移動)すること防止するための方策の一つとして、回転輪10(内輪構成体16)の外周面に周方向に沿って連続する段差部を形成し、当該段差部にスリンガ22の円筒部22aの先端部分22tを突き当てる(当接させる)という方策が挙げられる。
例えば、特許文献1には、図6に示すように回転輪10の外周面10aに所定の段差部10sを形成し、当該段差部10sにスリンガ22に連結されたシール26を嵌合させることで、これらのスリンガ22及びシール26で成る密封装置2が軸受の内部方向(同図の左方向)へ位置ずれ(移動)することを防止する構造が一例として開示されている。
登録実用新案第2529956号公報
しかしながら、かかる構造例では、スリンガ22の円筒部22aは、弾性材などで成るシール26で被覆されており、当該構造は、本発明の解決課題であるスリンガ22の円筒部22aの先端部分22tをスムーズに、且つ確実に回転輪10(内輪構成体16)に形成された段差部に突き当てる(当接させる)構造とは異なるものである。
また、上述した段差部にスリンガ22の円筒部22aの先端部分22tを突き当てる(当接させる)という方策においては、スリンガ22の軸方向の長さ(円筒部22aの延出長さ(図5(b)〜(e))の左右方向の距離)や回転輪10(内輪構成体16)の段部の軸方向寸法、組み付けのためにスリンガ22をユニット内部方向へ押し込む(圧入する)際の押込量や押込力にばらつきが生じる。あるいは、スリンガ22を組み付ける際の基準面(圧入基準面)が回転輪10(内輪構成体16)でない場合には、その圧入基準面の位置にもばらつきが生じることとなる。
したがって、スリンガ22の円筒部22aの先端部分22tを前記段差部に突き当てる(当接させる)ためには、これらのばらつきを想定した上でスリンガ22をユニット内部方向へ押し込む(圧入する)必要がある。このため、かかる圧入作業は容易ではなく、スリンガ22の円筒部22aの先端部分22tをスムーズに、且つ確実に前記段差部に突き当てる(当接させる)方策の提案が望まれているが、現状においてはこのような方策は知られていない。
本発明は、このような課題を解決するためになされており、その目的は、軸受への組み付けを容易に成し得るとともに、組み付け後の位置ずれを確実に防止することで、長期に亘って一定の密封性能を保ち続けることが可能な耐久性に優れた軸受用密封装置、及び当該軸受用密封装置を組み付けることで密封性能の向上を図った車輪支持用軸受ユニットを提供することにある。
このような目的を達成するために、本発明に係る軸受用密封装置は、相対回転可能に対向配置された少なくとも一対の軌道輪と、当該軌道輪間へ転動可能に組み込まれた複数の転動体を具備した軸受装置の内部を気密並びに液密に保っており、基端から先端まで所定方向に延出する筒状の固定部、及び当該固定部の基端に連続するとともに、当該固定部に対して所定の角度で延出する円板部で成り、前記いずれかの軌道輪に固定される環状のスリンガを少なくとも備えて構成されている。
そして、前記スリンガが固定される軌道輪には、当該スリンガを固定するための段差部が周縁部の全周に亘って設けられ、当該段差部は、段差面を境にして径差を有する2つの部位が周方向に沿って連続される構造を成すとともに、前記スリンガは、固定部の先端の肉厚が当該固定部の他の部位よりも全周に亘って薄肉にされて成る薄肉部を備え、当該薄肉部が前記軌道輪に設けられた段差部の段差面と接触して変形することで、当該軌道輪に位置決め固定される。
この場合、前記スリンガは、前記段差部が設けられた軌道輪の軸方向の端面を基準として、当該軌道輪に位置決め固定されている。
その際、前記スリンガの円板部には、当該スリンガの回転状態を検出するセンサの被検出体として使用されるエンコーダを取り付けることができる。
ここで、軸受用密封装置は、上述したような構造を成すスリンガ単体構成であってもよいが、当該スリンガと、基端から先端まで所定方向に延出する筒状の芯金固定部、及び当該芯金固定部の基端に連続するとともに、当該芯金固定部に対して所定の角度で延出する芯金円板部で成る環状の芯金と、前記スリンガと芯金との間に介在され、当該スリンガ及び芯金の一方に連結されるとともに、他方に摺接するシールを備え、前記スリンガ、芯金及びシールを断面の輪郭形状が略矩形状となるように組み合わせた構造としてもよい。
また、以上のような軸受用密封装置は、一例として、車体構成部材に固定される静止輪、及び車輪構成部材が固定されて当該車輪構成部材とともに回転する回転輪を相対回転可能に対向配置して成る軌道輪と、当該静止輪と回転輪にそれぞれ形成されて相互に対向する軌道面間へ転動可能に組み込まれた複数の転動体とを具備した車輪支持用軸受ユニットの内部を気密並びに液密に保つための密封装置として適用することができる。
本発明の軸受用密封装置によれば、軸受への組み付けを容易に行うことができるとともに、組み付け後の位置ずれを確実に防止することができる。この結果、長期に亘って一定の密封性能を保ち続けることが可能な耐久性に優れた軸受用密封装置を提供することができる。また、かかる軸受用密封装置を組み付けることで、車輪支持用軸受ユニットの密封性能の向上を図ることができる。
以下、本発明の軸受用密封装置(以下、単に密封装置ともいう)、及び車輪支持用軸受ユニット(以下、単に軸受ユニットともいう)について、添付図面を参照して説明する。なお、本発明に係る軸受用密封装置は、各種の軸受装置の内部を気密、並びに液密に保つ(密封する)ための密封装置として適用することができるが、ここでは、図5(a)に示すような自動車の車輪を支持するためのハブユニット軸受(軸受ユニットA)の内部を密封するために、かかる密封装置が用いられている場合を一例として想定する。この場合、前記密封装置が、自動車の車体内方側(図5(a)の右側)へ配設されている場合を一例として想定している。また、以下の説明においては、便宜上、前記密封装置が配設されている自動車の車体内方側(図5(a)の右側)をインボード側といい、その反対側、すなわち自動車の車体外方側(車輪側(同図の左側))をアウトボード側という。
なお、図5(a)には、自動車の駆動輪(前置エンジン後輪駆動(FR)車及び後置エンジン後輪駆動(RR)車の後輪、前置エンジン前輪駆動(FF)車の前輪及び四輪駆動(4WD)車の全輪)を支持するハブユニット軸受の構成が一例として示されているが、軸受ユニットは、自動車の従動輪(FR車及びRR車の前輪、FF車の後輪)を支持するハブユニット軸受として構成してもよい。
また、軸受ユニットの型式(タイプ)は特に限定されず、例えば、回転輪10(ハブ14)のフランジ14fの有無や数、静止輪12のフランジ12fの有無や数、あるいは内輪構成体16の有無、及び転動体18の種類(玉や各種のころ)などは、いずれも軸受ユニットの使用条件や使用目的などに応じて任意に設定すればよい。さらに、図5(a)に示す構成においては、外方部材(外方軌道輪)を静止輪12、内方部材(内方軌道輪)を回転輪10(ハブ14及び内輪構成体16)としているが、これとは逆に外方部材(外方軌道輪)を回転輪、内方部材(内方軌道輪)を静止輪とした構成の軸受ユニットであってもよい。
なお、内輪構成体16は、静止輪12のインボード側の軌道面12oと対向する軌道面10iが形成され、ハブ14のインボード側に外嵌されて当該ハブ14とともに回転輪10を構成する部材のことを指す。
また、上述したいずれの軸受ユニットにおいても、回転輪10は、車輪構成部材(例えば、ディスクホイール(図示しない))が固定されて当該車輪構成部材とともに回転しているのに対し、静止輪12は、車体構成部材(例えば、懸架装置のナックル(図示しない))に固定されて静止状態に維持される。
図1(a)〜(g)には、本発明の一実施形態に係る軸受用密封装置6が示されており、当該密封装置6は、図5(a)に示すような軸受ユニットA、すなわち、相対回転可能に対向配置して成る軌道輪10,12、当該軌道輪10,12間へ転動可能に組み込まれた複数の転動体(玉)18を具備した車輪支持用軸受ユニット(ハブユニット軸受)の内部を外部から遮蔽し、その内部を密封状態(気密状態並びに液密状態)に保っている。具体的には、軌道輪10,12として、車体構成部材(例えば、懸架装置のナックル(図示しない))に固定される静止輪12、及び車輪構成部材(例えば、ディスクホイール(図示しない))が固定されて当該車輪構成部材とともに回転する回転輪10が相対回転可能に対向配置されており、当該静止輪12及び回転輪10にそれぞれ形成されて相互に対向する軌道面10i,12i間、及び軌道面10o,12o間へ複数の転動体(玉)18が転動可能に組み込まれて、軸受ユニットAが構成されている。
この場合、静止輪12には、その外周面12aから外方(拡径方向)に向かって突出した固定フランジ12fが一体成形されており、当該固定フランジ12fを貫通する固定孔12hに固定用ボルト(図示しない)を挿入し、これを車体側に締結することで、静止輪12を図示しない懸架装置(サスペンション)のナックルに固定することができる。
一方、回転輪10には、略円筒形を成すハブ14が設けられており、当該ハブ14は、ブレーキのブレーキロータ(図示しない)を介して車輪のディスクホイール(図示しない)に固定され、当該ディスクホイールとともに回転するように構成されている。なお、かかるハブ14には、そのアウトボード側にブレーキロータ及びディスクホイールを固定(外嵌)するためのハブフランジ14fが周方向に沿って連続して突設されている。
ハブフランジ14fは、静止輪2を越えて外方(ハブ14の拡径方向)に向かって延出しており、その延出縁付近には、周方向に沿って複数の貫通孔(ボルト孔)14hが設けられている。また、図示しないブレーキロータ及びディスクホイールにも、それぞれ当該ボルト孔14hと連通可能な貫通孔が周方向に沿って複数個(一例として、ボルト孔14hと同数個)設けられている。そして、ハブボルト14bをボルト孔14hから前記貫通孔へ挿通し、ハブナット(図示しない)で締結(供締め)することにより、ブレーキロータ及びディスクホイールをハブフランジ14fに対して位置決めして固定することができる。
また、ハブ14には、そのインボード側に略円筒状の内輪構成体16が外嵌されるようになっており、例えば、静止輪12とハブ14との間に複数の転動体(玉)18を組み込んだ状態で、内輪構成体16をハブ14に形成された段部14sまで当て付けた後、ハブ14のインボード側端部(図5(a)の右端)を加締めることにより、当該内輪構成体16をハブ14のインボード側に固定することができるとともに、軸受ユニットA(より具体的には、転動体(玉)18)に対して所定の予圧を与えることができる。
なお、上述したような加締固定に代えて、例えば、内輪構成体16をハブ14に形成された段部14sまで外嵌した後、インボード側からナットなどの締結部材により締め付けることで、当該内輪構成体16がハブ14のインボード側に固定される場合もある。
また、図5(a)に示す構成においては、転動体(玉)18は、環状の保持器17に形成されたポケットへ1つずつ回転自在に保持された状態で軌道面10i,12i間及び軌道面10o,12o間に組み込まれ、所定間隔(一例として、等間隔)でこれらの間を転動している。
これにより、各転動体(玉)18は、その転動面が相互に接触することなく軌道面10i,12i間及び軌道面10o,12o間をスムーズに転動することができ、結果として、当該各転動体(玉)18が相互に接触して摩擦が生じることによる回転抵抗の増大や、焼付きなどを防止することができる。その際、軸受ユニットAには、このような回転抵抗の増大や焼付きなどをさらに効果的に防止すべく、内部に潤滑剤(一例として、グリース)を封入することが好ましい。
なお、保持器としては、転動体の種類に応じて任意のタイプを適用すればよい。例えば、転動体が玉18である場合、傾斜型(図5(a))や波型などのタイプを適用することができ、転動体が各種のころ(円錐ころ、円筒ころ及び球面ころなど)である場合、もみ抜き型、くし型及びかご型などのタイプを適用することができる。
本実施形態においては、図1(a)〜(g)に示すように、密封装置6は、基端abから先端at(同各図の右端から左端)まで所定方向に延出する筒状の固定部62a、及び当該固定部62aの基端abに連続するとともに、当該固定部62aに対して所定の角度で延出する円板部62bで成り、回転輪10(具体的には、内輪構成体16)に固定される環状のスリンガ62を少なくとも備えて構成されている。
この場合、回転輪10(内輪構成体16)には、スリンガ62を固定するための段差部16gが周縁部に設けられ、当該段差部16gは、段差面16hを境にして径差を有する2つの部位が周方向に沿って連続される構造を成している。図1(b)に示す構成においては、回転輪10(内輪構成体16)の外周部(軌道面10iの溝肩部)のインボード側を全周に亘って当該外周部の他の部位(アウトボード側)よりも凹ませ、前記端部を小径部位、前記他の部位を大径部位として、これらの小径部位と大径部位が段差面16hで連続されて段差部16gが構成されている。
なお、段差部16gの大きさ(小径部位の幅(図1(b)の左右方向の距離)、深さ(小径部位と大径部位の径差(図、上下方向の距離)))及び形状は、当該段差部16gに固定される後述するスリンガ62(具体的には、その固定部62a)の大きさや形状などに応じて任意に設定すればよいため、ここでは特に限定しない。
図1(a)に示す構成において、密封装置6(スリンガ62)は、固定部62aが所定方向(同図の左右方向)に所定の長さ(同図同方向の距離)で延出した円筒状に形成されているとともに、円板部62bが固定部62aに対して略直角に所定の長さ(同図の上下方向の距離)で、当該固定部62aの基端abに連続して拡径方向(同図の上方向)へ延出した円環の平板状(リング板状)に形成されている。すなわち、この場合、スリンガ62は、縦断面形状が略L字状を成すように構成されている。
また、この場合、スリンガ62は、その内径寸法(具体的には、固定部62aの内径寸法)に対し、回転輪10(内輪構成体16)へ嵌合させる際の嵌合代を設けて構成されている。すなわち、スリンガ62は、固定部62aの内径寸法を回転輪10(内輪構成体16)の外径寸法(具体的には、回転輪10(内輪構成体16)が固定部62aと嵌合(当接)する面(図1(b)に示す小径部位の周面、以下、嵌合面16bという)の径寸法)よりも、当該嵌合代の分だけ小さな寸法に設定して構成されている。その際、スリンガ62の固定部62aに設定する嵌合代は、回転輪10(内輪構成体16)の大きさなどに応じて任意に設定すればよい。
なお、固定部62aの大きさ(延出長さ、及び厚さ(図1(a)の上下方向の距離)などの寸法)、及び円板部62bの大きさ(延出長さ、厚さ(同図の左右方向の距離)及び径などの寸法)は、例えば、軸受ユニットAの回転輪10(内輪構成体16)とともに回転可能となるように、当該回転輪10(内輪構成体16)の大きさや形状などに応じて任意に設定すればよいため、ここでは特に限定しない。また、円板部62bの固定部62aに対する傾斜角度も特に限定されず、密封装置6(スリンガ62)の使用条件などに応じて任意に設定すればよい。
さらに、スリンガ62の材質及び形成方法も特に限定されず、例えば、スリンガ62を所定の金属板製(鋼板製)とし、当該金属板(鋼板)をプレス加工することなどによってかかるスリンガ62を形成すればよい。例えば、スリンガ62をステンレス鋼製とした場合、密封装置6を後述するパッケージ構造(パックシール)とした際、シール26のリップ26l(図5(b)〜(e))との摺接面である固定部62aの外周面(図1(a)の上側の面)に対する発錆が防止され、当該外周面との摺接時にリップ26lに傷が生じてしまうことを有効に防止することができる。
スリンガ62は、固定部62aの先端atの肉厚(図1(a)の上下方向の厚み)が当該固定部62aの他の部位よりも全周に亘って薄肉にされて成る薄肉部62sを備え、当該薄肉部62sが回転輪10(内輪構成体16)に設けられた段差部16gの段差面16hと接触して変形されることで、当該回転輪10(内輪構成体16)に位置決め固定される。
図1(a)に示す構成においては、固定部62aの先端atをその内径寸法が当該固定部62aの先端at以外の部位(他の部位)の内径寸法よりも大きく、その外径寸法が当該他の部位の外径寸法よりも小さく設定されて薄肉部62sが形成されている。すなわち、薄肉部62sは、固定部62aの先端atを内径側及び外径側からそれぞれ所定の大きさだけ絞り込み、当該先端atの厚さ(図1(a)の上下方向の距離)を薄くした構造となっている。
このようにスリンガ62(固定部62a)の先端atに薄肉部62sを設けることで、固定部62aの薄肉部62sにおける剛性と、その他の部位の剛性を変化させること、具体的には当該薄肉部62sの剛性を当該他の部位の剛性よりも小さくすることができる。したがって、当該スリンガ62を回転輪10(内輪構成体16)の段差部16gに嵌合する際、その固定部62aの薄肉部62sを回転輪10(内輪構成体16)の段差部16g、具体的にはその段差面16hと接触させ、変形させることができる。
すなわち、嵌合時にスリンガ62から段差面16hへ作用される押圧力(押込力)に対する反力をかかる薄肉部62の変形によって吸収負荷することができ、これにより、回転輪10(内輪構成体16)への嵌合時にスリンガ62自体(特に、円筒部62b)を変形させることなく、スリンガ62の軸受ユニットへの組み付けを容易に行うことができる。また、組み付けられたスリンガ62は、その固定部62aの先端atが回転輪10(内輪構成体16)の段差面16hに当接した状態となるため、固定後における当該スリンガ62の位置ずれを確実に防止することができる。この結果、軸受ユニットの密封性能(気密性能及び液密性能)を長期に亘って一定に保ち続けることができる。
ここで、スリンガ62を回転輪10(内輪構成体16)に嵌合させる場合、以下のような手順で行えばよい。まず、スリンガ62を固定部62aの先端atが回転輪10(内輪構成体16)の段差面16hと正対するように位置付け(図1(b))、当該固定部62aの内周面asを回転輪10(内輪構成体16)の嵌合面16bと接触させつつ、アウトボード側からインボード側へ、当該嵌合面16bに沿ってスリンガ62を押し込む(圧入する)。そのまま、固定部62bの先端atが回転輪10(内輪構成体16)の段差面16hと当接するまでスリンガ62を圧入していく(図1(c))。
そして、この状態でスリンガ62に対して圧入力(先端atから回転輪10(内輪構成体16)の段差面16hに対して作用される押圧力)を加えることで、固定部62aの先端atに設けた薄肉部62sが当該押圧力(圧入力)に対する反力によって変形する(図1(d))。具体的には、薄肉部62sがその幅を縮める(固定部62aがその延出長さ(延出寸法)を短縮させる)ように、固定部62aがつぶれて変形する。この結果、嵌合時にスリンガ62へ作用する段差面16hからの反力をかかる薄肉部62の変形によって吸収負荷することができ、スリンガ62をそれ自体変形させることなく、回転輪10(内輪構成体16)に対して容易に位置決め固定することができる。
なお、回転輪10(内輪構成体16)に嵌合させる際、スリンガ62は、その押込(圧入)の基準面を回転輪10(内輪構成体16)の段差面16h以外(一例として、回転輪10(内輪構成体16)のインボード側の端面16s)とすればよい。また、その圧入に当たっては、スリンガ62の薄肉部62の変形荷重と、固定部62aの段差部16gへの嵌合荷重の和(合計荷重)以上の圧入力で、基準面(回転輪10(内輪構成体16)の端面16s)から所定位置に圧入すればよい。これにより、薄肉部62を容易に変形させ、スリンガ62を回転輪10(内輪構成体16)に対してスムーズ且つ定位置に嵌合固定することができる。
この場合、スリンガ62(固定部62a)に対する薄肉部62sの形成方法は、特に限定されず、当該スリンガ62の材質などに応じて任意の方法で行えばよい。例えば、スリンガ62を所定の金属板製(鋼板製)とし、当該金属板(鋼板)をプレス加工することによって形成した場合、当該スリンガ62(固定部62a)の成形と同時に薄肉部62sを形成することが可能となり、その作業を非常に容易に行うことができる。ただし、プレス加工などにより、一旦スリンガ62の固定部62aを平板状に成形した後、当該成形後の固定部62aの先端atに対して切削加工や研削加工などを施すことで薄肉部62sを形成してもよい。
また、薄肉部62sの大きさ(幅(図1(a)の左右方向の距離)、厚さ(同、上下方向の距離))は、例えば、スリンガ62(固定部62a)の大きさや当該スリンガ62が嵌合される回転輪10(内輪構成体16)の大きさなどに応じて任意に設定すればよいため、ここでは特に限定しない。
ただし、固定部62aの延出長さ(延出寸法)は、スリンガ62の回転輪10(内輪構成体16)への嵌合時に、薄肉部62sがその幅を縮める(固定部62aがその延出長さ(延出寸法)を短縮させる)ことを考慮した寸法に設定しておく必要がある。すなわち、スリンガ62の固定部62bは、薄肉部62sがその幅を縮めて、スリンガ62を回転輪10(内輪構成体16)に対して位置決め固定させた状態において、その基端abが回転輪10(内輪構成体16)のインボード側の端面16sから凸出しない(つまり、円筒部62bのインボード側の面bsが端面16sと略面一となる)寸法に延出長さを予め設定しておけばよい。
したがって、スリンガ62は、回転輪10(内輪構成体16)へ嵌合する際、固定部62bの先端atを回転輪10(内輪構成体16)の段差面16hと当接させた状態においては、図1(c)に示すように、当該固定部62bの基端ab(円筒部62bのインボード側の面bs)が回転輪10(内輪構成体16)の端面16sよりもインボード側へ凸出していてもよい。
さらに、薄肉部62sの大きさ(幅及び厚さ)は、その変形荷重が固定部62aに作用する回転輪10(内輪構成体16)の段差部16gに対する嵌合荷重よりも小さくなるように、設定することが好ましい。その際、スリンガ62の固定部62aの厚さ、及びその嵌合代も同様に、薄肉部62sの変形荷重が当該固定部62aの嵌合荷重よりも小さくなるように設定することが好ましい。
また、薄肉部62sの形状は、図1(a)に示すような固定部62aの先端atを内径側及び外径側からそれぞれ絞り込んだ平板状には限定されず、例えば、スリンガ62(固定部62a)の形状や当該スリンガ62が嵌合される回転輪10(内輪構成体16)の形状などに応じて任意の形状とすることができる。例えば、図1(e)〜(g)には、薄肉部62sの形状を変形した本発明の第1〜第3変形例に係るスリンガ62の構成が示されている。
図1(e)に示す本発明の第1変形例においては、スリンガ62の固定部62aを先端atの内径寸法が当該固定部62aの先端at以外の部位(他の部位)の内径寸法よりも大きく、その外径寸法が当該他の部位の外径寸法と同一寸法に設定されて薄肉部62sが形成されている。すなわち、薄肉部62sは、固定部62aの先端atを内径側のみから所定の大きさだけ絞り込み、当該先端atの厚さ(図1(a)の上下方向の距離)を薄くした構造となっている。なお、これとは逆に、固定部62aの先端atを外径側のみから所定の大きさだけ絞り込み、当該先端atの厚さを薄くして薄肉部62sを形成してもよい。
また、図1(f)に示す本発明の第2変形例においては、スリンガ62の固定部62aを先端atの内径寸法が当該固定部62aの先端at以外の部位(他の部位)の内径寸法よりも徐々に大きく、その外径寸法が当該他の部位の外径寸法よりも徐々に小さく設定されて薄肉部62sが形成されている。すなわち、薄肉部62sは、固定部62aの先端atを内径側及び外径側の両側から先細り状にすることで、当該先端atの厚さ(図1(f)の上下方向の距離)を薄くした構造となっている。
さらに、図1(g)に示す本発明の第3変形例においては、薄肉部62sを上述した第1変形例のように平板状に成形するとともに、その周方向に沿って所定間隔で幅寸法(同図の左右方向の距離)が変化するように複数の切り欠き62vを形成して構成されている。その際、切り欠き62vの大きさや形状、その個数(形成間隔)は、スリンガ62の大きさなどに応じて任意に設定すればよい。例えば、切り欠き62vの形状は、図1(g)に示すような矩形状の他、台形状、半円形や半楕円形などであってもよい。なお、上述した本実施形態(図1(a))、第2変形例(同図(f))に示す形状を成す薄肉部62sに対して同図(g)に示すような切り欠き62vを形成してもよい。
これにより、固定部62aの薄肉部62sの剛性を当該固定部62aの他の部位の剛性よりもさらに小さくすることができる。したがって、当該スリンガ62の回転輪10(内輪構成体16)の段差部16gへの嵌合時、その固定部62aの薄肉部62sが回転輪10(内輪構成体16)の段差面16hと接触した際に、当該薄肉部62sをより容易に変形させることができる。
なお、上述した本実施形態においては、回転輪10(内輪構成体16)の外周部(軌道面10iの溝肩部)に対する段差部16gの形成方法について、特に言及しなかったが、例えば、当該回転輪10(内輪構成体16)の材質などに応じて任意の方法で行えばよい。例えば、段差部16gを回転輪10(内輪構成体16)の成形と同時に形成してもよいし、回転輪10(内輪構成体16)のみをまず成形し、当該成形後の回転輪10(内輪構成体16)に対して旋削加工や切削加工などを施すことで、段差部16gを形成してもよい。
ここで、回転輪10(内輪構成体16)は、転動体(図示しない)をスムーズに転動させるため、その軌道面10iの滑面精度を可能な限り高めた構成としておくことが好ましい。また、回転輪10(内輪構成体16)は、スリンガ62をスムーズに圧入させるとともに、圧入後のスリンガ62を固定する(嵌合させる)ため、回転輪10(内輪構成体16)の嵌合面16bの嵌合代を適正に調整しておくことが好ましい。
このため、軌道面10i及び嵌合面16b(段差部16g)が形成された回転輪10(内輪構成体16)に対し、図2(a)に示すような研削加工を軸受ユニットAの組立前に施している。この場合、例えば、ダイヤモンドホイールなどで成形された砥石50を、軸心に対して斜め方向から軌道面10i及び段差部16gに同時に当て付け、当該砥石50と軌道面10i及び嵌合面16b(段差部16g)を相対的に摺動させることで、これらを同時に研削している。その際、回転輪10(内輪構成体16)に対して所定の逃げ溝16jを予め形成しておくことで、研削加工時に砥石50が回転輪10(内輪構成体16)に干渉(接触)することなく、かかる研削加工をスムーズに行うことが可能となる。
その一方で、このような逃げ溝16jを大きく形成することは、例えば、回転輪10(内輪構成体16)に対する旋削加工コストを増加させることなり、また、嵌合面16bの段差面16hに近い部分に対しては、上述したような砥石50による研削加工を施すことができないことともなる。
このため、かかる逃げ溝16jを形成する場合には、段差面16hからインボード側へスリンガ62(固定部62a)の薄肉部62sの幅(例えば、図1(a)の左右方向の距離)と略同一幅の領域に限って逃げ溝16jを予め形成すればよい。かかる領域は、スリンガ62が回転輪10(内輪構成体16)の嵌合面16bとは接触しない部分であるため、上述した研削加工が施されなくとも特に問題はない。また、研削加工が施されない領域(研削不能領域)(図2(b)に示す凸出部16z)の大きさがスリンガ62の回転輪10(内輪構成体16)への嵌合時において、当該スリンガ62(固定部62a)の薄肉部62sを変形させる際に当該薄肉部62sと干渉しない大きさであれば、当該回転輪10(内輪構成体16)に対して逃げ溝16jを形成しなくともよい。この場合、研削不能領域(凸出部)16zの大きさは、薄肉部62sの内径側の絞り込み量、及び形成幅よりも一回り小さな寸法となるように設定すればよい。
なお、本実施形態においては、段差面16hに対してスリンガ62(固定部62a)の薄肉部62sの先端atを確実に当接させる必要があるため、当該段差面16hを軸方向に対して略垂直に立ち上げた構成、すなわち、段差部16gの小径部位と大径部位とが略直角に連続されるように段差面16hを立ち上げた構成としている。
ここで、軸受ユニットAを組み立てる際には、回転輪10(内輪構成体16)が供給シュート内を移動されて、当該回転輪10(内輪構成体16)の組み付け工程へ供給される。本実施形態のように、回転輪10(内輪構成体16)に対して段差部16gを設けた構成とすると、例えば、そのタイミングによっては、図3(a)に示すように回転輪10(内輪構成体16)が供給シュート内で傾いてその内壁と接触し、ブレーキが掛かったり、当該供給シュート内に引っ掛かり易くなるなどの不都合が生じてしまう場合も想定される。また、供給シュートの幅寸法(径寸法)が大きい場合、例えば、多数の回転輪10(内輪構成体16)を連続して供給シュートに投入した場合など、図3(b)に示すように、ある回転輪10(内輪構成体16)の段差部16gが別の回転輪10(内輪構成体16)の軌道面10iと重なって絡み合い、当該軌道面10iに傷を生じさせてしまう虞も想定される。
そこで、図4(a)に示すように、段差部16gは、その大径部位16dの位置が回転輪10(内輪構成体16)の重心位置Gとアキシアル方向(軸方向(同図の左右方向))に沿って重なる(同一位相となる)ように、当該段差部16gを回転輪10(内輪構成体16)に対して形成することが好ましい。
さらに、図4(b)に示すように、段差部16gの大径部位16dの形状を滑らかな凸曲面状に形成することで、例えば、2つの回転輪10(内輪構成体16)が重なって絡み合った場合であっても、当該大径部位16dにエッジがないため、軌道面10iに傷が生じることを有効に防止することができる。なお、この場合、凸曲面状を成す段差部16gの大径部位16dの頂点位置を回転輪10(内輪構成体16)の重心位置Gとアキシアル方向(軸方向(同図の左右方向))に沿って重なる(同一位相となる)ように、当該段差部16gを回転輪10(内輪構成体16)に対して形成すればよい。
なお、上述した本実施形態においては、密封装置6をスリンガ62の単体構造として説明したが、密封装置6の構成は、このようなスリンガ単体構造には限定されない。
例えば、スリンガ62の円板部62bに対し、当該スリンガ62(具体的には、回転輪10(内輪構成体16))の回転状態を検出するセンサ(図示しない)の被検出体として使用されるエンコーダ(図示しない)を取り付けた構成としてもよい。この場合、一例として、検出体であるセンサを磁気センサとし、当該磁気センサの被検出体として、多極に着磁された所定の磁性材で成る磁極体(センサエンコーダ(図示しない))を円板部62bに取り付けてスリンガ62を構成することができる。
これにより、内部を密封状態(気密状態並びに液密状態)に保ちつつ、その回転状態(例えば、回転速度、回転角度あるいは回転方向など)を計測することが可能なセンサ機能を備えた軸受ユニットを構成することが可能となる。なお、この場合、スリンガ62は、密封装置6として構成されているとともに、磁極体(センサエンコーダ(図示しない))を取り付けるための芯金(すなわち、エンコーダ芯金)としても構成されている。
また、例えば、密封装置6は、パッケージ構造(いわゆる、パックシール)、すなわちスリンガ62(図1(a)〜(g))、芯金(図5(b),(c)に示すようなシール芯金24に相当)及びシール(同図のシール26に相当)を組み合わせた構造であってもよい。
この場合、パックシールは、スリンガ62と、基端から先端まで所定方向に延出する筒状の芯金固定部、及び当該芯金固定部の基端に連続するとともに、当該芯金固定部に対して所定の角度で延出する芯金円板部で成る環状の芯金と、スリンガ62と芯金との間に介在され、当該スリンガ62及び芯金の一方に連結されるとともに、他方に摺接するシールを備えている。そして、スリンガ62、前記芯金及び前記シールを断面の輪郭形状が略矩形状となるように組み合わせることで、密封装置6を構成すればよい(図5(b),(c)に示すようなパックシール2とスリンガ62の構成のみが異なる類似した構成)。
密封装置6をこのようなパッケージ構造(パックシール)とすることで、その密封性能(気密性能及び液密性能)を格段に高めることができる。
以上、本発明に係る密封装置6(スリンガ62、あるいはパックシール)によれば、軸受ユニットAへの組み付けを容易に行うことができるとともに、組み付け後の位置ずれを確実に防止することができる。この結果、かかる密封装置6(スリンガ62、あるいはパックシール)の耐久性の向上を図り、密封性能(気密性能及び液密性能)を長期に亘って一定に保ち続けることができる。
したがって、当該密封装置6(スリンガ62、あるいはパックシール)を組み付けることで、密封性能(気密性能及び液密性能)が向上し、軸受ユニットAを長期に亘って、一定の精度で安定して回転させ続けることが可能となる。
本発明に係る密封装置の構成例を示す図であって、(a)は、スリンガの構成を示す断面図、(b)は、スリンガを回転輪(内輪構成体)へ嵌合させる際、当該スリンガ(固定部)の先端を当該回転輪(内輪構成体)の段差面と正対するように位置付けた状態を示す断面図、(c)は、スリンガを圧入し、その先端が段差面と当接した状態を示す断面図、(d)は、スリンガの薄肉部が変形し、当該スリンガが回転輪(内輪構成体)に対して位置決め固定された状態を示す断面図、(e)は、本発明の第1変形例に係るスリンガの構成を示す断面図、(f)は、本発明の第2変形例に係るスリンガの構成を示す断面図、(g)は、本発明の第3変形例に係るスリンガの構成を示す断面図。 (a)は、回転輪(内輪構成体)の軌道面及び嵌合面を研削加工する方法を説明するための断面図、(b)は、回転輪(内輪構成体)に逃げ溝を設けることなく研削加工を施し、スリンガを位置決め固定した状態を示す断面図。 (a)は、供給シュート内で回転輪(内輪構成体)が傾いて、シュート内壁に接触した状態を示す断面図、(b)は、供給シュート内で2つの回転輪(内輪構成体)の段差部と軌道面とが重なって絡み合った状態を示す断面図。 (a)は、回転輪(内輪構成体)の段差部(大径部位)の位置と当該回転輪(内輪構成体)の重心位置の関係を示す断面図、(b)は、同図(a)において、段差部(大径部位)の形状を凸曲面状とした構成を示す断面図。 従来の密封装置(パックシール)の構成例を示す図であって、(a)は、パックシールが取り付けられた軸受ユニット(ハブユニット軸受)の断面図、(b),(c)は、パックシールの構成を示す断面図、(d)は、軸受ユニット(ハブユニット軸受)への組み付け前のパックシールの状態を示す断面図、(e)は、軸受ユニット(ハブユニット軸受)への組み付け後のパックシールの状態を示す断面図。 従来の密封装置の位置ずれ防止に係る構成例を示す断面図。
符号の説明
6(62) 密封装置(スリンガ)
10(16) 回転輪(内輪構成体)
16g 段差部
16h 段差面
62a 固定部
62b 円板部
62s 薄肉部
at 固定部先端

Claims (5)

  1. 相対回転可能に対向配置された少なくとも一対の軌道輪と、当該軌道輪間へ転動可能に組み込まれた複数の転動体を具備した軸受装置の内部を気密並びに液密に保つための軸受用密封装置であって、当該軸受用密封装置は、基端から先端まで所定方向に延出する筒状の固定部、及び当該固定部の基端に連続するとともに、当該固定部に対して所定の角度で延出する円板部で成り、前記いずれかの軌道輪に固定される環状のスリンガを少なくとも備えて構成されており、
    前記スリンガが固定される軌道輪には、当該スリンガを固定するための段差部が周縁部の全周に亘って設けられ、当該段差部は、段差面を境にして径差を有する2つの部位が周方向に沿って連続される構造を成すとともに、
    前記スリンガは、固定部の先端の肉厚が当該固定部の他の部位よりも全周に亘って薄肉にされて成る薄肉部を備え、当該薄肉部が前記軌道輪に設けられた段差部の段差面と接触して変形することで、当該軌道輪に位置決め固定されることを特徴とする軸受用密封装置。
  2. 前記スリンガは、前記段差部が設けられた軌道輪の軸方向の端面を基準として、当該軌道輪に位置決め固定されていることを特徴とする請求項1に記載の軸受用密封装置。
  3. 前記スリンガの円板部には、当該スリンガの回転状態を検出するセンサの被検出体として使用されるエンコーダが取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の軸受用密封装置。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の構造を成すスリンガと、基端から先端まで所定方向に延出する筒状の芯金固定部、及び当該芯金固定部の基端に連続するとともに、当該芯金固定部に対して所定の角度で延出する芯金円板部で成る環状の芯金と、前記スリンガと芯金との間に介在され、当該スリンガ及び芯金の一方に連結されるとともに、他方に摺接するシールを備え、前記スリンガ、芯金及びシールを断面の輪郭形状が略矩形状となるように組み合わせた構造を成していることを特徴とする軸受用密封装置。
  5. 車体構成部材に固定される静止輪、及び車輪構成部材が固定されて当該車輪構成部材とともに回転する回転輪を相対回転可能に対向配置して成る軌道輪と、当該静止輪と回転輪にそれぞれ形成されて相互に対向する軌道面間へ転動可能に組み込まれた複数の転動体とを具備した車輪支持用軸受ユニットであって、その内部を気密並びに液密に保つために、請求項1〜4のいずれかに記載の軸受用密封装置が設けられていることを特徴とする車輪支持用軸受ユニット。
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