JP2009159897A - 繊維質緑化基盤材及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】植物育成に適し、のり面等道路緑化用又は屋上緑化用等に特に有用で経済的な繊維質緑化基盤材を提供する。
【解決手段】高含水比泥土に古紙破砕物と水溶性高分子物質と助剤を添加して混合することにより土粒子を団粒化し、乾燥して団粒固化させた後に解砕した繊維質緑化基盤材を、(土粒子の量)/(古紙破砕物の量)の比の値を5.0 〜6.0 として製造し、これに37.5mm以下の木質チップを重量比で50〜75% 添加する。木質チップを添加しない繊維質緑化基盤材に比べて透水係数と湿潤時比重が改善され、透水係数は目標値1×10-3〔cm/s〕以上を十分満足し、湿潤時比重は目標値1.0 〔−〕以下を十分満足している。
【選択図】図62

Description

本発明は、従来は多大な費用をかけて産業廃棄物として処理しなければならなかった建設高含水比泥土や浄水発生土等を改質処理し、さらに従来はリサイクル率が低かった建設発生木材等の破砕物である木質チップを混合して得た繊維質処理土に係り、特に植物の育成という観点から見た場合に重要な評価項目について特に優れた性能を有し、のり面等道路緑化用又は屋上緑化用等に特に適している有用な繊維質緑化基盤材と、その製造方法に関するものである。
近年、地球温暖化に関する環境問題は大きな社会問題になっており、様々な分野で地球温暖化に対する取り組みが行なわれている。地球規模の温暖化に加えて都市部は建物や舗装道路で覆われており、緑地が少ないために蒸発による冷却作用が少ない。建物の冷暖房や交通、各種の都市活動に伴って消費されるエネルギー量が大きく、都市を覆う大気は暖められ、ヒートアイランド現象を引き起こしている。このヒートアイランド現象を緩和する方法の1つとして屋上緑化が有望視されている。緑化による気温上昇抑制効果は既に確認されており、一定の敷地面積以上の建物には既に屋上緑化を義務付けようとする動きもある。さらに住宅やマンション、病院などで緑化に対する心理的な効果が注目され、屋上緑化に対する社会的要請も高まってきている。
ところで、現在、廃棄物として処理・処分されていた廃材料の資源リサイクルを促進させるため、建設発生土、砕石残土、火山灰土壌を再利用した人工軽量土壌の研究が行われているが、建設高含水比泥土や浄水発生土等の産業廃棄物を利用した緑化基盤材の再利用に関する研究は一般に不足している。
そこで、本願出願人は、下記特許文献1乃至3に示すように、建設高含水比泥土等をリサイクルして植栽土壌を製造するための発明を種々提案している。
一方、全国の建設発生木材の排出量は約500万トン(国土交通省による平成14年度建設副産物実態調査)でその再資源化率は89%であり再資源化が進んでいるコンクリート塊等と比較すると未だ低い水準に留まっておりリサイクルの一層の推進が求められている。
ところで、一般に建設発生木材は破砕し、木材チップの状態にしてからリサイクルされるが、現状では、中間処理施設等において破砕された木材チップの需要は伸びていない。その要因の一つとして発生から利用までの統一された規格がなく、利用者にとって建設発生木材等を原料とする木材チップの品質に不安が生じていることが挙げられる。
平成15年には千葉県において大量の建設発生木材の破砕物が不法投棄され、自然発火を起こすといった事件が発生するなど建設発生木材の不適正処分は社会問題となっている。
特開2005−269969号公報 特開2005−269970号公報 特許第3828737号公報
上記各特許文献で本願出願人が提案している植栽土壌は、建設高含水比泥土や浄水発生土等をリサイクルして緑化基盤材を生産する発明として有用なものであるが、本願発明者は、建設高含水比泥土や浄水発生土等をリサイクルして製造する緑化基盤材の研究において、さらに植物育成の観点から見て重要な評価項目について特に優れた性能を有し、のり面等道路緑化用又は屋上緑化用等に特に適している有用な繊維質緑化基盤材を提供するべく鋭意努力している。
一方、建設発生木材の破砕物である木質チップについては、そのリサイクルは十分には進んでおらず、その有効な再利用技術が依然として強く求められている現状である。そこで、本願出願人は木質チップ、特に伐採材を粉砕した未分解木質チップ(以下、単に「チップ」とも呼ぶ。)を厚層基材吹付工等の緑化基盤材に利用するという発想を得たが、これを実施したところ、植栽の生育は阻害され、満足のいく結果が得られないことが判明した。
そこで、本願は、本願出願人が提案してきた建設高含水比泥土や浄水発生土等のリサイクルによって製造される緑化基盤材の技術を踏まえ、植物育成に適した特性を有し、のり面等道路緑化用又は屋上緑化用等に特に適しているとともに経済性も兼ね備えた産業上有用な繊維質緑化基盤材を製造し、さらにこれに木質チップを添加して植物育成のための性能を一層向上させることにより、建設発生木材の破砕物である木質チップをリサイクルすることができる技術を提案することを目的としている。
請求項1に記載された繊維質緑化基盤材は、
高含水比泥土に古紙破砕物と水溶性高分子物質と助剤を添加して混合することにより土粒子を団粒化し、これを乾燥して団粒固化させた後に解砕してなる繊維質緑化基盤材において、
(前記土粒子の量)/(前記古紙破砕物の量)の比の値を5.0〜6.0の範囲とし、37.5mm以下の木質チップを重量比で50〜75%添加したことを特徴としている。
請求項2に記載された繊維質緑化基盤材は、
高含水比泥土に古紙破砕物と水溶性高分子物質と助剤を添加して混合することにより、繊維質物質が高含水比泥土中の自由水を吸水し、水溶性高分子物質が土粒子表面の吸着水と反応して架橋作用により土粒子を結合させ、助剤が土粒子の団粒化を促進し、これを乾燥して団粒固化させた後に解砕することにより、前記高含水比泥土の固形成分と前記古紙破砕物と前記助剤とを含み、前記水溶性高分子物質に被覆された粒子の解砕された面が露出してなる繊維質緑化基盤材において、
(前記土粒子の量)/(前記古紙破砕物の量)の比の値を5.0〜6.0の範囲とし、37.5mm以下の木質チップを重量比で50〜75%添加したことを特徴としている。
請求項3に記載された繊維質緑化基盤材の製造方法は、
高含水比泥土に古紙破砕物と水溶性高分子物質と助剤を添加して混合することにより土粒子を団粒化し、これを乾燥して団粒固化させた後に解砕する繊維質緑化基盤材の製造方法において、
(前記土粒子の量)/(前記古紙破砕物の量)の比の値が5.0〜6.0の範囲となる配合として繊維質緑化基盤材を製造し、37.5mm以下の木質チップを重量比で50〜75%添加して混合することを特徴としている。
本願発明の繊維質緑化基盤材及びその製造方法によれば、植物育成の観点から見て重要な評価項目、例えば有効水分保持量、透水係数、湿潤時比重、固相率、気相率、陽イオン交換容量等において満足のいく性能が最小の古紙添加量で得られるので、最も経済的な配合によって緑化(例えばのり面等道路緑化又は屋上緑化等)の目的を最大限に達成することができ、併せて建設高含水比泥土や浄水発生土等の産業廃棄物のリサイクル、さらには建設発生木材の破砕物である木質チップのリサイクルにも資することができる。
本願発明において、(前記土粒子の量)/(前記古紙破砕物の量)の比の値が5.0であるドライ状態の繊維質緑化基盤材は、37.5mm以下の木質チップを重量比で50〜75%添加混合する前の状態では、透水係数と湿潤時比重は性能目標値を満足してはいるものの、必ずしも十分な値とはいえないが、前記木質チップを混合することにより、透水係数と湿潤時比重が一層改善され、すべての評価項目において緑化基盤材として十分に満足のいく性能が得られている。
本発明の実施形態の説明では、まず実施形態Aとして、建設高含水比泥土や浄水発生土(「高含水比泥土」と総称する。)から繊維質緑化基盤材を製造する方法を詳述する。また、フィールド試験を通して当該繊維質緑化基盤材の土壌物理学特性を検証することにより緑化基盤材としての有効性を確認するとともに、当該有効性が得られるとともに経済性も満足する土粒子量/古紙破砕物量比の値(乃至その範囲)について検討した。
次に、実施形態Bとして、実施形態Aで製造した繊維質緑化基盤材に、木質チップを添加・混合して本発明の実施形態の最終生成物である繊維質緑化基盤材を製造する工程と、最終生成物としての当該繊維質緑化基盤材について、土壌物理学特性を検証することにより緑化基盤材としての有効性等について詳述する。
なお、以下の説明においては、繊維質処理土とは、高含水比泥土(例えば建設高含水比泥土や浄水発生土等)に古紙破砕物と水溶性高分子物質である高分子系改良剤、金属塩等の助剤を添加・混合して製造した処理土を指す。なお、ここでは繊維質処理土を材料としてのり面等道路緑化用あるいは屋上緑化用に生成した基盤材を繊維質緑化基盤材と定義する。
《実施形態Aについての説明》
1.1 緑化基盤材としての機能評価
1.1.1 のり面等道路緑化の機能

道路緑化は、図1に示すように景観向上機能、生活環境保全機能、緑陰形成機能、交通安全機能、自然環境保全機能および防災機能に分類される主要な機能をはじめ、多くの機能を有しており、特定の機能を目的として植栽された場合でも、そのほかに種々の効果をもたらすものである。なかでも植物という生物体からなることにより「親しみ」、「潤い」、「生命感」、「やすらぎ」という特有の効果をもたらすことが他の道路施設に見られない最大の特徴である。
道路緑化においては、目的とする主要な機能が最大限に発揮されるのみでなく、その他の機能も幅広く発揮されるように努めることによって、調和のとれた親しみのある道路環境を形成することが必要である。
1.1.2 屋上緑化等の機能

屋上緑化等は、通常空間の緑化と連携し、身近な生活空間の快適性や、さまざまな経済的効果、そして都市全体の環境改善をねらいとし、加えて地球レベルの環境改善をも視野に入れるものである。
都市への急激な人口・業務の集中は、都市の重要な環境財産である緑の減少をもたらし、そのためヒートアイランド現象などのさまざまな都市公害が発生し、都市環境の悪化と生活環境の劣化を引き起こしている。欧米の諸都市と比較して、量的にも質的にも大きく劣るといわれるわが国の都市の緑の実情から見て、また緊急を要する都市公害の軽減と地球レベルの環境改善のためにも当面通常の緑化空間の急速な拡大、改善が望めない現在、屋上緑化等の意義は大きいといえる。
これからの都市づくりの基本的目標は、都市環境に対して低負荷(Low Impact)であり、循環(Circulation )型、共生(Symbiosis )型の都市づくりとなる。
低負荷−ヒートアイランド現象の緩和など都市気候の改善、夏季・冬季のエネルギー消費の低減。
循環−保水力の増大や大気浄化などを通して水や大気の循環構造を作り出す。
共生−生物の生息空間を随所に確保することで、都市の環境改善を実現する。
屋上緑化等は、上記の3つの役割を意識しながら、通常空間の緑化と連携し、身近な空間から始まり、最終的に地球レベルの環境改善への役割を担うことを狙い、行うものである。
1.2 緑化基盤材の性能および試験方法
1.2.1 緑化基盤材の性能および目標値の設定

緑化基盤材として必要な性能としては「保水性」・「軽量性」・「通気性」・「保肥性」が挙げられる。そこで、ここでは、これらの因子について定量的に検討し、本実施形態Aの繊維質処理土が緑化基盤材としての必要性能を有しているかどうかを確認する。具体的には以下の4項目の試験を実施し、緑化基盤材としての適否を評価する。
・保水性 → 有効水分保持量
・軽量性 → 湿潤時比重
・通気性 → 三相分布(固相、液相、気相の分布)および透水係数
・保肥力 → 陽イオン交換容量(CEC :Cation Exchange Capacity)
ここでは、のり面等道路緑化用および屋上緑化用に使用する繊維質処理土が満足すべき目標値(基準値)を設定し、緑化基盤材の定量的評価を行う。以下、各目標値と設定理由について記述する。なお、のり面等道路緑化用基盤材の必要性能に軽量性は特に求められていないが、施工性等を考慮すると軽量であることにこしたことはない。そこでのり面等道路緑化用基盤材の軽量性は、屋上緑化用基盤材の湿潤時比重を当てはめて、のり面等道路緑化用および屋上緑化用に使用する繊維質処理土の目標値は同じとする。
1)有効水分保持量
独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)「工事共通仕様書、平成12年度技術資料」には、のり面等客土品質基準として、真砂土の有効水分保持量(pF1.8 〜3.0 )は60[l/m3 ]以上、同じく山砂は60[l/m3 ]以上、黒土は80[l/m3 ]以上と規定している。
財団法人都市緑化技術開発機構「屋上・壁面緑化技術のてびき」では、屋上緑化による人工土壌の性能の目安としてpF1.5 〜3.8 の範囲で200 [l/m3 ]を超えるものを大、100 〜200 [l/m3 ]を標準と規定している。
以上の文献を参考として、繊維質緑化基盤材の有効水分保持量の性能目標値をpF1.5 〜3.8 の範囲で100 [l/m3 ]以上とする。
2)湿潤時比重
財団法人都市緑化技術開発機構「屋上・壁面緑化技術のてびき」では、pF1.5 での比 重1.0 [−]以下の土壌を「軽量」、0.6 [−]以下の土壌を「超軽量」と規定している。
以上の文献を参考として本発明の繊維質緑化基盤材の湿潤時比重の性能目標値をpF1.5 で比重1.0 [−]以下とする。
3)固相率、気相率
社団法人日本道路協会「道路緑化技術基準・同解説」資料4植栽基盤調査では植栽土壌としては、固相率が火山灰土壌で30%以下、鉱物質土壌では50%程度以下であればよいと規定している。
一方、農山漁村文化協会「図解土壌の基礎知識」では、固相が50%(その中に腐植が4 %)、液相が25%、気相が25%ぐらいが作物根の生育しやすい分布状況であると規定している。
以上の文献を参考として本発明の繊維質緑化基盤材の性能目標値をpF1.5 で固相率30%以下、気相率25%以上とする。
4)透水係数
財団法人都市緑化技術開発機構「屋上・壁面緑化技術のてびき」で屋上緑化による人工土壌の性能の目安として透水係数kは10-3[cm/s]以上と規定している。
一方、社団法人日本道路協会「道路緑化技術基準・同解説」資料4植栽基盤調査では透水係数は10-3[cm/s]以上、または減水速度36[mm/hr ]以上であればよいと規定されている。
以上の文献を参考として本発明の繊維質緑化基盤材の透水係数の性能目標値は10-3[cm/s]以上とする。
5)陽イオン交換容量(CEC )
社団法人日本道路協会「道路緑化技術基準・同解説」資料4植栽基盤調査では植栽地としては6[cmol(+)/kg ]以上であることが望ましいと規定している.
一方、独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)「工事共通仕様書、平成12年度技術資料」No.02-05-2には、のり面等客土品質基準として、
真砂土の陽イオン交換容量 6[cmol(+)/kg ]以上
山砂の陽イオン交換容量 6[cmol(+)/kg ]以上
黒土の陽イオン交換容量 15[cmol(+)/kg ]以上
と規定されている。
以上の文献を参考として本発明の繊維質緑化基盤材の陽イオン交換容量の性能目標値は6[cmol(+)/kg ]以上とする。
1.2.2 実験試料

初めに、緑化基盤材としての可否について検討するため、実際の建設現場から泥水式推進工法余剰泥水(非自硬性高含水比泥土)をサンプリングし、繊維質処理土の生成を行った。泥水の粒径加積曲線、土粒子の密度、シルト/粘土含有率、初期含水比は図2に示すとおりである。粒径加積曲線はJIS A1204 「土の粒度試験方法」に従って測定した。
なお、図2を始めとする本願の図面及び本願の明細書の表等においては、高含水比泥土を通称に従って「建設汚泥」と称する場合もある。
作泥方法は初期含水比W0=166.1%の建設高含水比泥土に加水調整して含水比200 %の泥水を作成した。繊維質物質は新聞古紙を14mm×14mm程度に裁断したものを用いた。水溶性高分子物質である高分子系改良剤としてはアニオン系高分子系ポリアクリルアミド(テルナイト製:ボンテラン-P(商標))を用いた。助剤としては金属塩である塩基性塩化アルミニウム(テルナイト製:ボンテラン-L(商標))を用いた。
本発明で用いる水溶性高分子物質としては、天然高分子、半合成高分子、合成高分子物質があり、例えば、主成分をポリアクリル系ポリマーとする合成水溶性ポリマー粉末(pH7〜8、水分10±2%、嵩比重0.6〜0.7、真比重1.4〜1.5)などが使用できる。水溶性高分子物質については、対象土1m3 に対して1kg以上の割合、例えば表1に示すように1.2kgを添加するのが望ましい。
本発明で用いる助剤としては、2価及び/又は3価の金属塩、例えば、硫酸アルミニウム(硫酸バンド)、ポリ塩化アルミニウム(PAC)などが使用できる。金属塩については、前記建設高含水比泥土のすべての含水比(%)において、対象土1m3 に対して8kg以上の割合、例えば表1に示すように8.6kgを添加するのが望ましい。
本実験に用いた建設高含水比泥土は、土壌の汚染に係る環境基準(人の健康を保護し、および生活環境を保全する上で維持することが望ましい環境基準)よりその安全性を確認した後、実施した。
図2に示した泥水式推進工法余剰泥水(非自硬性高含水比泥土、初期含水比166.1 %)の建設高含水比泥土を原料として、本試験に用いた各改良材の添加量と製造工程は以下のとおりである。なお、改良材数量は団粒化の観点から検討した各薬剤添加量とし、その値を表1に示した。
1)初期含水比166.1 %の建設高含水比泥土を6.0 ×3.0 ×1.3mの貯水槽に入れ、含水比が200 %になるように加水調整する。その後、泥水の容積を図3に示すように計測する。
2)土粒子の団粒化の観点から決定した添加量に従い、古紙破砕物、高分子系改良剤および助剤の添加量を決定する。泥水量および添加量を表2、添加剤量の確認作業を図4に示す。
3)図5に示すように、古紙破砕物1000kgを投入し、ミキシング付バックホウにより古紙破砕物と建設高含水比泥土を撹拌・混合する。
4)図6に示すように、高分子系改良剤17.1kg、助剤122.9kg を投入し、撹拌する。
5)図7に示すように、処理土の上を人が歩けるまでに団粒化していることを確認する。
6)図8に示すように、処理土を含水比10±5 %まで天日乾燥する。
7)図9に示すように、解砕機で粉砕し、8mm メッシュのフルイにてふるい分けする。 表3に解砕機の仕様を示す。
8)図10示すように、解砕完了後袋詰めする。
1.2.3 実験方法

(1)有効水分保持量
緑化基盤材に求められる重要な基本的性能に「保水性」がある。土壌中に存在する水は、降水または灌水後、速やかに下方に移動するもの、植物が吸収できる程度に土壌中に保持されているもの、植物が吸収できないほど土壌に吸着されているもの(無効水)の3種類があり、植物が吸収できる程度に土壌中に保持されている水分量が有効水分保持量[l/m3]と呼ばれる。有効水分保持量の測定は、2点間のpF値における含水量の差を測定することによって求めるが、通常はpF1.8 〜pF3.0 の間の水分量を測定する。ただし、屋上緑化の基準であるpF1.5 〜pF3.8 についても計量するものとする。pFとは土の間隙に保持されている水分を取り出すのに必要なサクション(吸引力)を、水柱高さcmで表した絶対値の常用対数である。
サンプルの作成方法は以下の通りとする。サンプル塊の底部から約1時間ごとに数段階に分けて液面を上げて飽和させる。最後に検体全体が水に浸かるようにしてから12時間静置する。加圧板により突固めを行わず、pF1.8 に調整した検体を図11に示す直径15cmのモールドに、一層17.5cmでランマー2.5kg 、突固め回数10回、落下高さ10cmで試料を作成する。
pF1.5 、1.8 、3.0 時の有効水分保持量の測定(加圧板法、pF1.5 、1.8 、3.0 時の質量の測定)には、突き固めを行った検体の中心から400ml コアサンプラーで採取した試料を用いる。試料を図12に示す加圧器(ダイキ理科工業社製:DIK-9220)にセットし、測定するpF値まで空気圧を負荷して平衡に達するまで排水させ、試料内の土水中ポテンシャルを測定する。正の空気圧を負荷させるため、試料を圧力チャンバー(加圧器)内に置き、セラミック板を介して大気圧中にある蒸留水と接触させる。
平衡した試料の湿潤質量を測定し、チャンバー内に戻す。予定した圧力それぞれに対して同様の作業を繰り返す。予定した圧力での計測が終了したら炉乾燥し、乾燥土質量を測定する。
pF3.8 時の有効水分保持量の測定(遠心法、pF3.8 時の質量の測定)は、財団法人都市緑化技術開発機構「屋上・壁面緑化技術のてびき」の測定方法に記載のとおり遠心法で行い、試料は加圧板法で用いた400ml コアの中心から100ml コアサンプラーにて採取し測定する。
遠心法は、原則としてスイング式または固定式の水平ローター(容器が水平に回転する形式)のものを用いる.今回の試験においては図13に示す固定型水平ローター式の遠心分離機(Sakuma 50A-IVD)および同ローター(Sakuma HB-R )を用いた。供試体を毛管飽和させ、遠心機のローターにセットし、容器には蒸発防止の蓋をする。供試体下端のろ紙面の回転半径r1 [cm]、供試体中央の回転半径r2 [cm]をはかり、所要のポテンシャル値ψになる回転数[rpm ]を次式(1)で算定する。
回転数を徐々に上げ、求めた回転数nに達したならば水分平衡に達するまで回転を続ける.回転停止後、再びr1 [cm]を測定し、これを用いて正しい土中水のポテンシャル値を算定する。その後、供試体湿潤質量を測定し、さらに供試体を炉乾燥して乾燥質量を測定する。
(2)透水係数
土壌の透水性は土壌の孔隙組成と関係し、通気性とも連動する。透水性が不良の場合は湿害となり、過剰の場合は乾燥害を受けやすくなる。また、孔隙組成によっては保水性、透水性ともによい土壌がありうる。
透水性は透水係数で評価する。これは、土壌を移動する水の速さを表すものである。サンプルの作成方法は、以下のとおりである。すなわち、まず試料を飽和させ、24時間十分に吸水させる。突固めを行わずpF1.8 に調整した検体を15cmモールドに一層17.5cmでランマー2.5kg 、突固め回数10回、落下高さ10cmで締固めて試料を作成する。
≪測定方法≫
透水係数は上記の検体の中心から400ml コアサンプラーに採取した試料を用い、図14に示す定水位透水試験装置により定水位法で行う。
(3)三相分布
土壌は、固体である無機質と有機質の粒子と、その間隙(孔隙)を満たす気体(土壌空気)および液体(土壌水分)の三つの相から成り立っている.これらを土壌の三相という。それぞれの体積比率を固相率、液相率(水分率)、気相率(空気率)といい、これらの比率分布を土壌の三相分布という。
三相分布は湿潤時比重と同様にpF1.5 の状態で測定すると定義されている。pF1.5 は圃場容水量とよばれ、排水のよい土壌に降雨があり、1日以上放置したときの水分量である。これは重力水がなくなり(気相が確保され)、有効水(植物が利用できる水)が全量保持されている状態に相当する。
測定は図15に示す三相分布試験機(ダイキ理化工業 DIK-1120)を用いて、実容積測定法により行った。この測定法は、理想気体の圧力P 、容積V 、温度T のとき、その状態は(2)式で表されるというBoyle の法則を基礎としている。
Rは常数であるから、温度が一定であれば、次式が得られる。
この関係は実在気体でも一定の条件のもとで近似的に成立する。いま温度一定の条件のもので、図16のような単一空気系で気体の容積をΔVだけ変化させると、それにともなって生じる圧力の変化量ΔPは、次式(4)で得られる。
ゆえに次式(5)が得られる。
すなわち容積変化ΔVに伴う圧力変化ΔPは、容積に逆比例し、初期の圧力と容積の変化量に正比例する。もちろん変化の方向は逆であって、容積の増減は圧力の減増を生じる。したがって最初の圧力を一定にしておき、容積変化量を一定にすれば、容積変化に伴う圧力の変化は、温度を一定とするかぎり、最初の容積の大きいものほど小さく、最初の容積の小さいものほど大きいことになる。すなわち容積を増加させる膨張過程では、最初の容積の小さいものほど膨張の度合いが大きくなり、圧力の降下量も大きく、逆に容積を減少する圧縮過程では、最初の容積の小さいものほど圧縮度が大きくなり、圧力の増加も大きいことになる。
次に二つの空気系を図17のようにU字型の内径の等しい連通管で連結し、連通管の水面を上下させて圧縮または膨張を左右の空気系に同時に行わせた場合のことを考える。温度はいずれも室温で一定とし、初期圧力はいずれも大気圧に等しい状態とする。すなわち、
式(6)のように容積だけが異なっている場合である。
操作はじめにV1> V2 であれば圧縮過程で常にP1> P2 となるから、連通管内の水面はもとの容積の大きい方のV1の側が高くなる。逆に膨張過程では常にP1> P2 となるから、連通管の径が等しいので、膨張、圧縮の両過程とも連通管の水面は常に同じ高さを示し、P1= P2 が常に成立する。
そこで、圧縮過程で連通管の水面が同じ高さを維持できなかったら、コックK1またはK2を開いて連通管の水面が高かった側の空気室に水を加えて空気容積を減少させ、その後コックを閉じて再び圧縮し、連通管の水面の高さが一致するかどうかを調べる。この操作を繰り返すことによって、操作はじめにV1> V2 であった状態をV1= V2 の状態にもどすことができ、添加した水量を測定することによって最初の容積差を測定することができる。
逆に、はじめの状態がV1= V2 であったのに V2 の側の任意の物質を加えたために空気容積に変化を生じ、V1> V2 となったものであれば、次式(8)が成り立つ。
(8)式より、付加物質の容積が測定できる。土壌の実容積測定装置はこの原理を利用したものである。
(4)湿潤時比重
屋上緑化用の緑化土壌に欠かせない性能である軽量性は、重要な性能といえる。屋上緑化における軽量性は、計画・設計時に考慮すべき項目として、水分を吸収した時点(湿潤時)の質量をpF1.5 での比重を用いて表示するとされており、のり面緑化基盤材においても同様の指標を用いるものとする。すなわち、湿潤時比重は有効水分保持量の測定時のpF1.5 における土壌の比重を測定し、その値で表示する。
(5)陽イオン交換容量(CEC )
土壌養分は、水に溶けた後は陽イオンとして存在するが、粘土や腐植を構成する土壌コロイドはマイナスの電気を帯びている。従って陽イオンとして存在する土壌養分はこのマイナスに荷電した土壌コロイドによって電気的に吸着する。このため、土壌粒子がマイナスの電気を帯びるほど土壌養分の保持能力が大きいといえる。つまり、陽イオン交換容量の値が大きいほど塩基類(肥料分)の保持能力(保肥力)が高いことになる。保肥力が高いと肥料分が有効に利用されるが、保肥力が低いと肥料分の流出による無駄が多くなるため、一回の施肥量を少なくし施肥回数を多くするか、緩効性の肥料を使用する必要がある。
土壌中には実質的に存在しない陽イオン1種を含む酢酸アンモニウムを用い、これを土壌に添加したときの土壌からの浸出液を分解して、CEC 値を実験的に求めることができる。その際、浸出液中には吸着陽イオン以外に、間隙水中に存在していた陽イオンも含まれているのでそれを差し引く意味で次式(9)より計算できる。
ここにTcat は浸出液中の各陽イオン濃度、Tanは浸出液中の各陰イオン濃度である。
(6)実験結果および考察
実際の建設現場から排出された建設高含水比泥土を原料として繊維質処理土を作成し、1.2.3 の方法に従って計測した結果を表4に示す。この表に示されるように有効水分保持量の測定値は性能目標を大きく上回る結果を得た。固相率、透水係数、陽イオン交換容量の各測定値も目標値を上回ることが確かめられた。
以上のように、団粒化の観点から作成した繊維質処理土は、目標値を満足していないパラメーターがあるものの、有効水分保持量や陽イオン交換容量は目標値を大きく上回ることから、緑化基盤材として有効である可能性がある。そこで最適古紙添加量の検討に先立ち、フィールド試験を実施し、緑化基盤材としての有効性を検証した。
(7)施工事例
上述した、のり面等道路緑化用の繊維質処理土を実験試料として厚層基材吹付工による試験施工を実施した。ここでは施工後90日経過時点における植生調査を行い、植生状況が規格値を満足しているか否かを検証した。
1)試験目的
本試験は作成した繊維質処理土が厚層基材吹付け工によるのり面緑化基盤材として有効利用できるかどうかについて調査することを目的とする。本発明では、繊維質緑化基盤材と従来の緑化基盤材であるバーク堆肥を対象とし、混合割合を変化させて厚層基材吹付けを行い、植生状況を比較した。
ここでは施工後90日までの状況について調査し、「道路土工 のり面・斜面安定工指針」社団法人日本道路協会編に記載されている規格値を満足できることを確認する。表5に規格値である播種後の成績判定の目安を示す。
2)施工地の状況
本試験は山形県新庄市内の新庄中核工業団地内において実施した。
・施工箇所: 山形県新庄市大字福田字福田山
(新庄中核工業団地内)
・試験実施日: 平成14年9月6日
・地山状態: 盛土のり面
・のり面勾配: 1:2.0
・法長: 5.5[m ]
・のり面の向き: 南東向き
・気象状況: 晴れ 気温 20 ℃ 無風
3)施工内容
上記の施工箇所に金網張りを行い、図18に示すように試験のり面を5区画(A〜E区画)に分けて緑化基盤材の配合を変え、厚さ3cm を標準として、吹付け造成を行った。なお、使用種子はトールフェスク1種類とした(トールフェスクは各種の立地条件に対して適用性が高いという特性を持った外来草種である)。
また、発芽期待(成立)本数は 100[本/m2 ]とした。通常草種のみの場合は 500[本/m2 ]程度が標準の設計となっているが、あまり多くの本数を設定すると、配合毎の差が無くなり生育の判定が不可能になるので、ここでは極力少なくした.表6に種子量計算条件を示す。
混入種子量は次のように求められる。
混入種子量=発芽期待(成立)本数×(1+施工地条件による補正)
×1m3 当りの有効播種量に換算する倍数/(種子粒数×純度/100×発芽率/100)
= 100×(1 +0.2 )×50/ (400 ×0.989 ×0.87)
≒ 18 [ g/m3
4)材料配合計画
表7に材料配合表、表8および図19に各区画の生育基盤材の配合割合と吹付け施工図を示す。
5)吹付け装置
吹付け装置は通常のモルタルガンを用いて行った。図20にフロー図、図21に吹付け施工完了後の状況を示す。
6)吹付け後の基盤材の厚さ
1区画(3.0m×5.5m=16.5m2)に960lの基盤材を吹付けて、吹付け後の厚さを測定した。仕上り予定厚さsは、吹付けによる材料の圧密率を2とすると、次式(10)のようになる。
吹付け厚さは、0.7m間隔の基盤状目の交点で測定した。表9にそれぞれの試験区画ごとの32地点の吹付け厚さの平均値を示す。実際の吹付け厚さは32〜46mm程度と仕上がり予定厚さより大きくなっている。
平均吹付け厚さより、吹付け面積に対する仕上がり量を算出して、吹付け量に対する仕上り量の割合で、その材料の圧密およびロスを次式(11)で計算する。
圧密を含めたロス率は、表9に示すように吹付け材配合比50:50の場合(試験区画B)が最も小さくなる結果を得た。
7)吹付け後の基盤材の状態
通常の緑化基盤材の場合、基盤材同士が絡み合い、これに接合材が作用して基盤の流亡を防いでいる。繊維質処理土において同等の絡み合いが発生し、流亡せずに十分に生育基盤となりうるかについて検討した。
1.降雪までの状態
吹付け後、3日日に雨が降ったが、雨による基盤材の流亡はどの試験区画ともなかった。
2.融雪後の状態
繊維質処理土の割合が多い試験区画では、雪解けに伴って斜面に沿った雪のグライトと共に雪に引きずられて基盤材が下方にずり落ちることが心配されたが、そのようなことは発生しなかった。
8)試験結果
1.発芽状況
発芽状況の確認の方法としては、のり面から10m ほど離れてのり面全体を見たときの植被率とコドラート( 1.0m ×1.0m)による生育(発芽)本数および草丈を観察した。コドラートによる発芽本数の確認方法を図22に示す。
吹付け後、約2週間目で発芽が確認され、発芽の時期としてはどの区間もほぼ同時期であった。発芽の状況はA区画(繊維質処理土100 %)とB区画(繊維質処理土75%)が特に良く、その他の3区画はほぼ同様の発芽率であった。
2.施工後30日の状況
図23に施工後30日の全景を、また表10に施工後30日の生育本数と草丈を示す。さらに、図24に従来工法Eを比較対象とした生育状況百分率を、図25および図26に施工後30日の植生および生育の状況を示す。
生育本数は発芽期待本数100 [本/ m2 ]に対してA区画(繊維質処理土100 %)とB区画(繊維質処理土75%)においては2倍以上が発芽生育し、C区画(繊維質処理土50%)、D区画(繊維質処理土25%)はほぼ期待とおりの本数が発芽生育を始めた。E区画(繊維質処理土0%)においてはまだ若干発芽が遅れているものと思われる。
3.施工後90日の状況
図27に施工後90日の全景を、また表11に施工後90日の生育本数と草丈を示す。さらに図28に従来工法Eを比較対象とした生育状況百分率を、図29および図30に施工後90日の植生の状況を示す。
生育本数は生育期待本数100 [本/ m2 ]に対してA区画とB区画においては2ヵ月前と変わらず2倍以上の本数が生育した。D区画においても2ヵ月前と変わらず期待どおりの本数が生育した。C区画においては、この2ヵ月の間に2倍ほどが生育し、期待の2倍の本数の生育を確認した。E区画においても生育本数が増し、ほぼ期待どおりの100 [本/ m2 ]に達した。
1ヶ月目はあまり生育の状態が良くなかったC区画が生育を増し、B区画、A区画、C区画そしてD区画とE区画の順に植被率が高くなった。
B区画、A区画においては施工後90日においての植被率が70〜80%以上を満足した。
今回の実験は各配合の差を判定しやすくするために通常の発芽期待(成立)本数に比べ1/5程度と極力本数を少なくしたが、施工後90日の生育でA区画(繊維質処理土100 %)とB区画(繊維質処理土75%)では「道路土工 のり面・斜面安定工指針」の植被率70〜80%以上を満足する結果を得た。
標準的な厚層基材吹付工において用いられる基盤材であるバーク堆肥に比べ、繊維質処理土の混入率が高い区画で優良な生育を確認できた。
1.3 古紙および薬剤の最適添加量に関する考察

1.2.3(6)実験結果および考察、同(7)施工事例の結果より、本実施形態Aで作成した繊維質処理土は繊維質緑化基盤材として有用であることが確認された。しかし、1.2.2 で作成した繊維質処理土は、団粒化の観点から決定された古紙添加量および薬剤添加量で改良されており、これらの添加量が植物の生育という観点から見て、最適な添加量になっているとは必ずしも言えない。また、上述したように、先に作成した緑化基盤材は目標値をクリアしていないパラメーターも存在する。
そこで、ここでは古紙および薬剤の添加量を種々変化させ、軽量性・保水性・通気性・保肥性を定量評価し、最適な添加量を決定し、植物の生育に最も適した繊維質緑化基盤材と、その製造方法を提案する。
1.3.1 建設高含水比泥土・浄水発生土を原料とした繊維質処理土の性能試験の前提条件

(1)土粒子量と古紙破砕物量の添加比
本実施形態Aにおける繊維質処理土の製造工程を図31に示す。盛土・埋戻し材に利用する繊維質固化処理土の製造工程と大きく異なる点は、セメント系固化材を添加しないことおよび、泥水改良完了後に乾燥・解砕・フルイ分けを経て製品化している点である。適切な乾燥工程を経た繊維質処理土は土粒子と古紙破砕物の混合物である。言い換えれば、繊維質処理土は土粒子と古紙破砕物が接着剤の役割を果たす高分子系改良剤と助剤によって結合された処理土である。
繊維質固化処理土においては、古紙破砕物添加量を施工性・運搬性の観点から決定しているが、本実施形態Aの繊維質処理土の製造においては、土粒子量と古紙破砕物量の添加比が緑化基盤材の性能を左右すると考えられるので、その最適添加量(添加比)を決定する必要がある。
さて土粒子密度2.6 [g/cm3 ]とした場合、建設高含水比泥土1m3 中の土粒子量と表1の改良材数量に示した団粒化を指標とした含水比毎の古紙破砕物添加量の関係を図32に示す。一般的な建設高含水比泥土(非自硬性高含水比泥土)は工場入荷時の平均含水比で200 %程度であり、土粒子の質量は図32より419 [kg/cm3]であることが分かる。含水比200 %の泥水に対して添加される古紙破砕物の質量は表1に示すとおり70[kg/m3 ]であり、土粒子量と古紙破砕物添加量の比は土粒子量/古紙破砕物量比=5.99[−]となる。
一方、浄水発生土を利用する場合、繊維質処理土工法では浄水処理における天日乾燥床から排出された浄水発生土を改良し、屋上緑化基盤材にリサイクルする。天日乾燥床からの浄水発生土は含水比500 %を超えるものもある。今、仮に浄水発生土の含水比を500 %とすると、図32より1m3 の泥水中の土粒子量は185 [kg/m3 ]程度と非常に少量である。含水比500 %の浄水発生土に対する古紙破砕物添加量は表1に示すとおり90[kg/m3 ]程度であり、土粒子量と古紙破砕物添加量の比は土粒子量/古紙破砕物量比=2.06[−]である.建設高含水比泥土に比べ土粒子量の割合が1/2.91倍になる。
施工性・運搬性の観点から定めた含水比と古紙破砕物添加量の関係から求めた、土粒子量/古紙破砕物量比と含水比の関係を図33に示すが、この図に示されるように、含水比によって土粒子量/古紙破砕物量比が異なっている。従って、高含水比泥土を緑化基盤材として再資源化する場合には、単に施工性・運搬性の観点から古紙破砕物添加量を決めて処理を施すのではなく、植生土譲としての機能を最大限に発揮する添加量を新たに決定する必要がある。
(2)乾燥条件
図34に示すように、同じ関東ロームの試料でも乱さない試料と空気乾燥試料では、土の状態によってpF−水分曲線が異なることが知られている。これは、乾燥によって粘土粒子の団粒が凝集・粗粒化して、水和されていた水が自由水化することによって保水力が低下するためであると考えられる。
一方、繊維質処理土の製造方法は工場生産方式(天日乾燥の工程を入れているため、ここではDRY 方式と呼ぶ)を採用しており、処理土は天日乾燥あるいは機械式乾燥によって製造されている。しかし、ダム工事・採石場では、乾燥処理は経済性・気象条件等の問題からDRY 方式での繊維質処理土の製造は難しい。一般的に天日乾燥処理を施さず、ストックヤードに野積みする製造方式(ここではWET 方式と呼ぶ)の処理土の含水比はW =40%程度であり、天日乾燥方式で処理された繊維質処理土の含水比はW =10%程度である。そのため、土粒子量と古紙破砕物量の最適添加量比を検証するには、WET 方式の場合はW1=40±5 %、DRY 方式の場合はW2=10±5 %に含水比を調整し、繊維質処理土の性能を評価する必要がある。
(3)性能目標値
繊維質処理土の性能目標値は、表4に示したとおりである。
各性能試験の実験方法は1.2.3 の実験方法に準拠する。
1.3.2 実験試料

繊維質緑化基盤材の配合試験は、実際の建設高含水比泥土の粒度分布を想定した模擬泥水を用い、のり面等道路緑化基盤材の要求性能に最適な土粒子量と古紙破砕物量の添加比について検証する。ここでは、試験供試体の乾燥工程後の含水比をWET 方式およびDRY 方式に対応させW1=40±5 %、W2=10±5 %の2種類とし、さらに土粒子量/古紙破砕物量比を変化させて実験を実施する。
実験には模擬泥水を使用した。本実験では無機の土粒子を使用し、作泥方法は粘土とシルトを40:60で混合し、それに加水調整して泥水を作成した。粘土とシルトを40:60に混合した理由としては、表12に示す実際の泥水式シールド工法脱水ケーキの粒度分布を参考にして決定した。
なお、購入した粘土はスミクレー(住友大阪セメント製)であり、シルトはシルト#250 (丸中白土製)を使用した.各材料の粒度分布・密度・比表面積は図35および表13のとおりである。粘土とシルトを40:60に混合したので、平均土粒子密度は2.623 [g/cm3 ]となる。
1.3.3 実験方法

上述したように、ここでは模擬泥水を使用し、土粒子量/古紙破砕物量比を変化させた試料を作成する.改良直後の改良土は、通常の繊維質処理土製造工程(乾燥工程→解砕→フルイ分け→製品)に準拠して試験試料を製造するがWET 方式による試料を作成する場合は、含水比が40±5 %になった時点で乾燥を中止する。DRY 方式による試料を作成する場合は、含水比が10±5 %になるまで乾燥させる。今回は、表14に示す配合に従って試料を作成した。
高分子系改良剤および助剤は泥水の体積に一定の割合で添加するものとし、高分子系改良剤は1.2 [kg/m3 ]、助剤は8.6 [kg/m3 ]とした。試料の作成は、初期含水比W0=300 %の泥水を30l 改良するのに必要な土粒子、古紙破砕物、高分子系改良剤、助剤を表15に示すように準備する。初めに、土粒子に水を加え、初期含水比300 %の模擬泥水とする。次に、模擬泥水に古紙破砕物を加え、電動ハンドミキサーにて十分に撹拌し、順次高分子系改良剤、助剤を混合する。撹拌が終了したら、ブルーシート上で天日乾燥し、WET 試料として含水比W1=40±5 %になるまで乾燥させる。残りの試料はさらに乾燥を続け、DRY 試料として含水比W2=10±5 %になるまで乾燥させる。乾燥後の試料は再度ハンドミキサーで撹拌し、塊を崩し(解砕する)、4.75mmフルイを通過したものを試料とする。古紙混合の割合が多く、毛羽立ってふるいを通過しづらいものは4.75mm以上の土粒子の塊がないことを確認し、試料とした。
(1)有効水分保持量
図36に土粒子量/古紙破砕物量比と有効水分保持量の関係を示す。また、図37に古紙破砕物量/土粒子量比と有効水分保持量の関係を示す。このように2つの表示を用いているのは、例えばNo.1-1は古紙破砕物量100 %であるため土粒子量は0 %となり、古紙破砕物量/土粒子量比が定義できないためである。そこで図36および図37に分けて表示した。これらの図から考察される結果を以下に記す。
1. 図37に示したNo.1-7土粒子量100 %の場合の有効水分保持量は、pF1.5 〜3.8 で177 [l/m3]となっており、土粒子だけでも性能目標値100 [l/m3]を十分に満足している。ちなみに、これまでにpF1.8 〜3.0 の範囲内において黒ボク土130 [l/m3]、砂質土90[l/m3]の値が報告されている。
2. 図36および図37に示すとおり、W1=40%とW2=10%を比較すると全ての試料においてW2=10%の有効水分保持量が低くなっている。1.3.1 (2)乾燥条件で説明したのと同様の結果が得られ、乾燥によって土粒子が団粒・凝集して粗粒化したと考えられる。
WET W1=40%の試料については古紙破砕物量と有効水分保持量に正の相関関係が見られたが、DRY W2=10%ではその傾向が見られない。古紙破砕物量が少ないNo.2-6、No.2-5、No.2-4に比べて古紙破砕物量の多いNo.2-3の有効水分保持量が少ない結果となった。これは、No.2-3は古紙破砕物量:土粒子量が4.0 :6.0 となり、古紙と土粒子の質量バランスと高分子系改良剤・助剤の相乗効果によって団粒が凝集して乾燥工程によって粗粒化したためであると考えられる。つまり、粗粒化した平均的な孔隙の大きさが、土粒子分の多いNo.2-4、No.2-5、No.2-6の孔隙より大きく、粗孔隙(非毛管孔隙)が増加し、孔隙に保持される水が重力水化したためと考えられる。
3. No.2-2は古紙破砕物量:土粒子量が6.0 :4.0 となりNo.2-3、No.2-4と比べ古紙破砕物量の割合が多くなっている。十分な乾燥により土粒子が粗粒化したとしても古紙破砕物が60%配合されているために乾燥試料全体が毛羽立っており、古紙破砕物近傍の毛管作用によってDRY ・WET の差が無く高い有効水分保持量が確保されたと考えられる。有効水分保持量の試験結果では、全ての試料において目標値pF1.5 〜3.8 の水分量100 [l/m3]を満足する結果が得られた。
(2)透水係数
図38に透水係数と土粒子量/古紙破砕物量比の関係を示す。また、図39に透水係数と古紙破砕物量/土粒子量比の関係を示す。
さて、重力水の下方への移動では粗孔隙が多いほど大きい。重力水の移動は透水性の良否と密接に関係し、透水係数で評価される。透水係数はダルシーの法則を利用して次式(12)から求められる。
つまり、透水係数は試料が水飽和状態に達した後の重力水の移動を定義しているため、圃場容水量pF1.5 以下の重力水の移動の良否であることが図40から判断できる。図38、図39に示すとおりWET 、DRY 状態の透水係数を比較すると、上述したように乾燥によって団粒が凝集して粗粒化することによって粗孔隙の量が多くなりDRY の方が透水係数の改善に大きく貢献しており、速やかな重力水の排水が可能となる。またWET と比較しNo.2-2、No.2-3、No.2-6の透水係数の改善率が顕著である。
透水係数の試験結果からWET 状態ではNo.1-4だけが性能目標値10-3[cm/s]以上を満足している。DRY 状態ではNo.2-5以外は全て性能目標値を満足した。また、古紙破砕物添加量は有効水分保持量の増大には寄与するが、透水係数の改善にはさほど貢献していないことが確かめられた。
(3)三相分布
三相分布は湿潤時比重と同様にpF1.5 の状態で測定する。pF1.5 は図40に示すとおり圃場容水量とよばれ、排水の良い土壌に降雨があり、一日以上放置したときの水分量である。重力水が無くなり気相が確保され植物が利用できるpF1.5 〜3.8 の有効水が全量保持されている状態である。
古紙破砕物添加量と乾燥度の違いによる三相分布と有効水分保持量( pF1.5〜3.8 )の関係を図41に示す。
WET 状態とDRY 状態の無効水(図40に示す吸湿水および膨潤水)を比べるとDRY 状態の方が全般的に減少している。無効水は前述の通り、植物の生育には関与しない水分であり、有効水や気相に変換されれば植物の生育に有益である。しかし、有効水に比べ無効水は土粒子に近い場所にあり、図40に示すように吸着水や膨潤水であり水ポテンシャルが高く吸着力が強い。
ところで透水係数と気相率は密接に関連していると考えられる。そこで両者の関係を図42および図43に示す。
1. 気相率
WET 状態、DRY 状態のどちらも透水係数と気相率は相関関係を示している。言い換えれば降雨があり、一日以上放置したとき重力水が排水され、十分な気相の量を確保するには透水性が重要な要素となる。
表4に示すように、本発明では気相率25%以上の性能目標値を設定したが、WET 状態では全て満足できなかった。DRY 状態ではNo.2-5、No.2-6以外は目標値を満足する結果となった。
2. 固相率
本発明では固相率30%以下の性能目標値と設定したが、WET 状態ではNo.1-6以外の試料で全て満足する結果となった。DRY 状態ではNo.2-6以外の試料で全て満足する結果となった。
(4)湿潤時比重
古紙破砕物添加量と乾燥度の違いによる湿潤時比重の関係を図44および図45に示す。WET W1=40%の試料ではNo.1-1古紙破砕物量100 %およびNo.1-2古紙破砕物量60%の試料において性能目標値湿潤時比重1.0 [−]以下を満足することができた。DRY W2=10%の試料ではNo.2-2、No.2-3、No.2-4の配合で性能目標値を満足する結果となった。すなわち表16に示すとおり重力水を速やかに排水し、気相率を多く有し、かつ透水係数も目標性能値を満足する試料が最も軽量な結果となった。
(5)陽イオン交換容量
陽イオン交換容量についてのデータを図46、図47に示す。陽イオン交換容量はすべてのデータにおいて目標値を満足した。
(6)性能試験結果および考察
表16に模擬泥水から生成した繊維質処理土の性能試験結果を一括して示す。性能目標値を満足するものを薄いグレーで示し、満足しないものを濃いグレーで示した。また、図48に有効水分保持量・透水係数・湿潤時比重・固相率・気相率・陽イオン交換容量から推察される最適な土粒子量/古紙破砕物量比を示す。
最も望ましい配合の決定においては、土粒子量/古紙破砕物量比が大きいものほど古紙破砕物添加量が少なくなることから経済的な配合であるといえる。つまり、本発明では、すべての性能を満足するための最小古紙添加量が最適添加量であると考えられる。図48より、DRY 状態W2=10±5 %では、有効水分保持量・透水係数・固相率・気相率・陽イオン交換容量を全て満足できる配合は土粒子量/古紙破砕物量比が5.0 [−]の配合であることが分かった。WET 状態では湿潤時比重1.0 [−]以下・気相率25%以上の目標値を若干クリアできないが、同比6.0 [−]の配合が最適となる。
すなわち、本例の実験に供した試料のうち、すべての性能評価項目の目標値を満足したのは、表16に示すように、DRY W2=10%の試料ではNo.2-2、No.2-3、No.2-4の3つであり、その土粒子量/古紙破砕物量比は1.5 〜 0.3であるが、土粒子量/古紙破砕物量比が大きいものほど古紙破砕物添加量が少なく経済的な配合であるから、すべての試料について各性能評価項目と土粒子量/古紙破砕物量比との関係を示すグラフを、土粒子量/古紙破砕物量比を共通の横軸として表した図48において、各評価項目において目標値をクリアし、かつ最も大きい土粒子量/古紙破砕物量比を求めると、DRY 状態では5.0 [−]であり、WET 状態では概ね6.0 [−]となる。土粒子量/古紙破砕物量比がこの範囲であれば、本例の繊維質緑化基盤材は、DRY 状態、WET 状態の如何に係わらず、最も少ない経済的な古紙量ですべての性能評価項目の基準値をクリアすることができるので、植物育成に特に適した特性が保証され、のり面等道路緑化用又は屋上緑化用等として最適な繊維質緑化基盤材を安価に提供することが可能となるのである。
そこで次に土粒子の密度を2.6 [g/cm3 ](カッコ内は2.5 [g/cm3 ])とした場合の緑化基盤材の要求性能をもとにした含水比毎の改良材の最適添加量をDRY 方式およびWET 方式のそれぞれに対し計算した。その結果を表17および表18に示す。
1.4 浄水発生土の古紙および薬剤の最適添加量に関する考察
1.4.1 実験試料

本実験では仙台市茂庭浄水場にて発生した浄水発生土を使用した。茂庭浄水場では浄水処理が2系列あり、通常の沈殿した懸濁物質である浄水発生土とそれに粉末の活性炭が入ったものがある。活性炭は高度処理として浄水過程における処理で臭気の吸着、懸濁物沈降促進のために粉黛の活性炭を投入する方法であり、活性炭はそのまま浄水発生土として混ざって排出される。発生土の性状を表19に示す。また、活性炭入り浄水発生土を図49に、活性炭無し浄水発生土を図50に示す。
1.4.2 実験方法

浄水発生土(活性炭入り、活性炭無し)を用い、1.3.3 に示した試験方法に準拠し、それぞれ土粒子量/古紙破砕物量比を変化させた試料を作成した。製品化の過程で乾燥させるために初期含水比は作業性を重視して決定し、300 %とした。表16に示した模擬泥水を用いたのり面等道路緑化基盤材性能試験結果からWET タイプ・W1=40%±5 %の試料では気相率の性能目標値を満足できる結果が得られなかったため、本試験での製造方法は天日乾燥方式(DRY 方式)を採用し、試験試料の乾燥後の含水比をW2=10±5 %とした。
配合計画 土粒子量:古紙破砕物量= 4:6
土粒子量:古紙破砕物量= 6:4
土粒子量:古紙破砕物量=7.5:2.5
土粒子量:古紙破砕物量= 9:1
土粒子量:古紙破砕物量=9.5:0.5
高分子系改良剤及び助剤は泥水の体積に一定の割合で添加するものとし、高分子系改良剤は1.2 [kg/m3 ]、助剤は8.6 [kg/m3 ]とした。試料の作成は含水比300 %の泥水を30l 改良するのに必要な土粒子、古紙破砕物、高分子系改良剤、助剤を表20に示すように準備する。初めに浄水発生土に加水調整して、含水比300 %の原泥を作成した。次に原泥に古紙破砕物を電動ハンドミキサーにて十分に撹拌し、順次高分子系改良剤、助剤を混合した。撹拌が終了したら、ブルーシート上で天日にて十分に乾燥し含水比をW2=10±5 %まで低下させた。乾燥後の試料は再度ハンドミキサーで撹拌し、塊を崩し(解砕する)、4.75mmフルイを通過したものを試料とした。古紙混合の割合が多く、毛羽立ってふるいを通過しづらいものは4.75mm以上の土粒子の塊がないことを確認し試料とした。
浄水発生土による繊維質処理土の性能目標値は、表4に示したとおりである。各性能試験の実験方法は1.2.3 の実験方法に準拠する。
(1)有効水分保持量
有効水分保持量の試験結果を図51に示す。全ての試料において目標値を満足していることが分かる。特にNo.3-4活性炭入りの土粒子量:古紙破砕物量比=7.5 :2.5 のデータを除く全ての試料において財団法人都市緑化技術開発機構 「屋上・壁面緑化技術のてびき」で屋上緑化による人工土壌の性能の目安としている200 [l/m3]以上を満足し、有効水分保持量は「大」といえる。なお活性炭無しの方が有効水分保持量が多いことが確かめられた。
(2)透水係数
透水係数の試験結果を図52に示す。透水係数は活性炭の有無にかかわらず土粒子量/古紙破砕物量比=3[−]の配合が最も大きい値を示した。実際の浄水発生土に対しても古紙破砕物添加量は透水係数の改善には貢献していない。
(3)三相分布
古紙破砕物量と原泥の違いによる三相分布と有効水分保持量の関係を図53に示す。図53は各試料のpF1.5 での三相分布を示し、液相部分についてはpF1.5 〜3.8 の有効水とpF3.8 以上の無効水に分けて表示してある。
活性炭入りと活性炭無しを比較すると、活性炭入りの無効水量が全般的に大きいことが分かる。通常の活性炭の比表面積は150 [m2/g]程度であり、粘土鉱物カオリナイトは10〜20[m2/g]である。土粒子の水分吸着能力は土粒子の比表面積に比例することから、活性炭が混入すると多くの水分が吸着水として活性炭粒子表面に吸着するため、無効水量が大きくなったと推察される。
ここで、透水係数と気相率の関係を図54に示す。透水係数と気相率は相関関係を示し、pF1.5 において重力水として排水された間隙の気相の量と透水性は密接な関係を示していることが分かる。
本発明では固相率30%以下の性能目標値と設定したが、土粒子量/古紙破砕物量比が19.0[−]では活性炭入り・活性炭無しの試料で、ともに固相率の目標値を満足できなかった。
(4)湿潤時比重
湿潤時比重の試験結果を図55に示す。活性炭無しでは湿潤時比重の目標値である1.0 [−]は満足できなかったが、活性炭入りでは1.0 [−]を満足しているものがある。
(5)陽イオン交換容量
保肥力についてのデータを図56に示す。保肥力についてはすべてのデータにおいて目標値を満足した。模擬泥水では顕著な傾向は見られず分からなかったが、浄水発生土活性炭入りのデータでは土粒子量が多いほど陽イオン交換容量が多くなる傾向が見られる。陽イオン交換容量CEC の値は土粒子の比表面積に比例するので、活性炭の影響と考えられる。
(6)性能試験結果および考察
表21に浄水発生土による繊維質処理土の性能試験結果を一括して示す。性能目標値を満足するものを薄いグレーで示し、満足しないものを濃いグレーで示した。また、図57に有効水分保持量・透水係数・湿潤時比重・固相率・気相率・陽イオン交換容量からの最適添加量を示す。
各種試験結果より、有効水分保持量・透水係数・湿潤時比重・固相率・気相率・陽イオン交換容量を全て満足できる配合は活性炭入りでは土粒子量/古紙破砕物量比が6.0 [−]の配合であり、活性炭無しでは全てを満足することはできないが、湿潤時比重以外であれば土粒子量/古紙破砕物量比が6.0 [−]の配合で満足できることが確認された。
すなわち、本例の実験に供した試料のうち、表21に示すように、すべての性能評価項目の目標値を満足したものは存在しないが、すべての試料について各性能評価項目と土粒子量/古紙破砕物量比との関係を示すグラフを、土粒子量/古紙破砕物量比を共通の横軸として表した図57において、各評価項目において目標値をクリアし、かつ最も大きい土粒子量/古紙破砕物量比を求めると、6.0 [−]となる。土粒子量/古紙破砕物量比がこの値であれば、最も少ない経済的な古紙量ですべての性能評価項目の基準値をクリアすることができるので、植物育成に特に適した特性が保証され、のり面等道路緑化用又は屋上緑化用等として最適な繊維質緑化基盤材を安価に提供することが可能となるのである。
土粒子密度を2.6 [g/cm3 ](カッコ内は2.5 [g/cm3 ])とした場合の、緑化基盤材の要求性能をもとにした含水比毎の改良材添加量を表22に示す。
1.5 結言

以上説明した本発明の実施形態Aでは、本発明者が既に提案している繊維質処理土を改良し、のり面等道路緑化基盤材および屋上緑化基盤材により適した性質を得るための具体的な条件について実験的に検討した。そこで、本発明の実施形態Aで得られた成果をまとめると以下のようになる。
1)実際の建設現場から排出された建設高含水比泥土を原料とした繊維質処理土をのり面等道路緑化基盤材として屋外フィールドで試験施工した結果、一般緑化土と比較して植被率・生育本数・草丈すべての調査項目において満足する結果を得た。このことにより、本発明で生成した繊維質処理土が緑化基盤材として有用であることが確認された。
2)市販の屋上緑化人工軽量土壌の有効水分保持量と模擬泥水および浄水発生土を原料とした繊維質処理土の有効水分保持量を比較した結果、繊維質処理土の有効水分保持量は300 [l/m3 ]を超えており、市販の屋上緑化基盤材の有効水分保持量のおよそ3倍の値を確認した。これは古紙破砕物を添加することにより、pF1.5 〜3.8 の毛管孔隙の量が増加するためであると考えられる。
3)試料の乾燥によって土粒子の団粒が凝集し、粗粒化することによってpF1.5 以下の粗孔隙の量が多くなり透水係数が大きくなることが分かった。透水係数と気相率は相関関係を示し、固相率が同程度であれば湿潤時比重も連動することが確かめられた。
4)模擬泥水および浄水発生土を原料とした繊維質緑化土の陽イオン交換容量はすべての試料において目標値を満足した。
5)模擬泥水を原料とした試料の最適添加量は、DRY 状態では、土粒子量/古紙破砕物量比が5.0 [−]の配合であることが分かった。WET 状態では湿潤時比重1.0 [−]以下・気相率25%以上の目標値をクリアできなかったが、現状では同比6.0 [−]の配合が最適となる。
6)浄水発生土を原料とした試料の最適添加量は、活性炭入りでは土粒子量/古紙破砕物量比が6.0 [−]であることが分かった。活性炭無しでは湿潤時比重1.0 [−]以下の目標値を設定しなければ、同比6.0 [−]の配合が最適となる。
本発明では、繊維質処理土に添加する諸材料の最適添加量や性能目標値の検討を行った。また、建設高含水比泥土や浄水発生土を原料としてDRY 方式により製造した繊維質処理土を利用して、のり面等道路緑化植生試験・屋上緑化実地試験等を実施し、実用性を確認した。
ところで、ダムの浚渫工事から排出されるヘドロや砕石場の製造工程から排出されるヘドロは発生量が大量であり、再利用の技術開発はほとんど進んでいない。この問題を解決するため、ヘドロ・泥土を現位置で加工し、緑化基盤材へ再利用する試みが行われている。しかし、一般に緑化基盤材の製造方法は工場生産方式(DRY 方式)を採用しているが、ダム工事・砕石場では、乾燥・解砕作業は経済性・気象条件等の問題から、DRY 方式での緑化土の製造は難しいと思われる。そのため本発明では、性能試験の前提条件としてWET 式とDRY 式を提案した。
WET 方式で生成された土壌は、透水係数を10-3[cm/s]以上に改善できれば連動して液相が減少し気相が増加することになる。それゆえ、例えば現場で発生する廃木材を利用した粗チップ等を混合すれば強制的に間隙を作り、通気させることが可能となりWET 方式による緑化基盤材の性能を向上させることが可能と考えられる。
また、砂丘地では、降雨・灌漑後の重力による水分移動が著しく保水性に乏しいため、作物栽培には頻繁な灌水が必要となる。このような砂丘地にWET 方式による緑化基盤材を混合することにより、砂丘地にとっては有効水分保持量を高める効果が発揮され、また一方でWET 方式による緑化基盤材とっては透水係数が改善され、気相が増加することになる。
《実施形態Bについての説明》

2.1 緑化基盤材としての機能評価
以下、本発明の最終製品である実施形態Bの繊維質緑化基盤材について説明する。
上で説明した実施形態Aに係る繊維質緑化基盤材は、本発明の最終製品ではなく、中間製品である。本発明の繊維質緑化基盤材は、実施形態Aに係る繊維質緑化基盤材に木質チップを添加・混合して製造されるものである。
実施形態Aに係る繊維質緑化基盤材は、上に詳述したように、植物育成に適した特性を有し、のり面等道路緑化用又は屋上緑化用等に特に適しているとともに経済性も兼ね備えた産業上有用な繊維質緑化土であるが、図48に示すように、土粒子量/古紙破砕物量比が5.0の配合であるドライ試料においては、透水係数と湿潤時比重の値は各基準値をクリアしてはいるものの、他の項目に比べれば各基準値に対してぎりぎりの値であるとも言える。
そこで、これをさらに改善するために、実施形態Aに係る繊維質緑化基盤材に木質チップを添加・混合して各土壌物性の変化を確認する。これは、実施形態Aの「1.5 結言」の3)で説明したように、実施形態Aの繊維質緑化基盤材においては、透水係数と気相率と湿潤時重量が互いに連動することが確認されたので、空気を含むため一般に土よりも軽い木質チップを実施形態Aの繊維質緑化基盤材に添加・混合すれば、透水係数と湿潤時比重の改善に効果があると考えられるからである。
そこで、土粒子量/古紙破砕物量比を5.0で調整した実施形態Aの繊維質緑化基盤材(ドライ)に木質チップを混合し、有効水分保持量、透水係数、湿潤時比重、陽イオン交換容量、固相率、気相率の変化を確認し、図58〜図60に示した。混合する木質チップは、粒度(最大長)を37.5mmと19mmの2種類とし、混合重量を0、25、50、75重量%の4種類とした。
(1)有効水分保持量〔l/m3
図58に示すように、木質チップ19mm以下の場合、添加率50〔%〕で353 〔l/m3〕の値を示し、目標値100 〔l/m3〕を十分満足する結果となった。一方、木賃チップ37.5mm 以下の場合、添加率25〔%〕で378 〔l/m3〕の値を示し、目標値100 〔l/m3〕を十分満足する結果となった。
(2)透水係数〔cm/s〕
図58に示すように、木質チップ19mm以下の場合、添加率75%で 3.4×10-3〔cm/s〕の値を示し、木質チップ37.5mm 以下の場合も同様に、添加率75%で3.6 ×10-3〔cm/s〕の値を示し、目標値1 ×10-3〔cm/s〕を十分満足する結果となった。
(3)湿潤時比重〔−〕
図59に示すように、木質チップ19mm以下の場合、添加率75%で0.79〔−〕の値を示し、木質チップ37.5mm 以下の場合も同様に、添加率75%で0.75〔−〕の値を示し、目標値1.0 〔−〕を十分満足する結果となった。
(4)陽イオン交換容量〔cmol(+)/kg〕
図59に示すように、木質チップ19mm以下の場合、添加率75%で38.6 〔cmol(+)/kg〕の値を示した。木質チップ37.5mm 以下の場合は添加率に関連せず変化は見られなかった。
(5)固相率〔%〕
図60に示すように、木質チップの添加率を増やすはど固相率は低下し、目標値30〔%〕以下を大きく下まわり、十分満足する結果となった。
(6)気相率〔%〕
図60に示すように、木質チップの添加率を増やすほど気相率は向上し、目標値25〔%〕以上を大きく上まわり、十分満足する結果となった。
図61には、本例Bの繊維質緑化基盤材(実施形態Aの繊維質緑化基盤材と19mm木質チップの混合率が50:50 )と、比較例である土壌(1)(自然土壌、多腐植質黒ボク土)及び土壌(2)(灰色台地土)のそれぞれについて求めたpF値(屋上緑化の基準であるpF=1.5 〜3.8 )と体積水分率(m3 /m3)の関係(pF−水分曲線)を示す。この図に示す本例Bのデータは前述した図58に示したグラフのデータの一部に相当するものである。その本例Bの繊維質緑化基盤材の有効水分保持量は353l/m3 であり、比較対象である土壌(1) 及び(2) の有効水分保持量は、それぞれ230l/m及び153l/m3 であった。
図61から理解されるように、本例Bの繊維質緑化基盤材の有効水分保持量は353l/m3 であり、300l/m3 を大きく越えており、比較対象である土壌(1),(2) の有効水分保持量である230l/m3,153l/m3 に比べて非常に大きく、屋上緑化用の基盤材として従来の土壌に比べて非常に優れいてることが分かる。
図62には、実施形態Bの繊維質緑化基盤材と、X社乃至W社製造に係る従来の人工土壌及び自然土壌(図61の土壌(1) に相当する黒ボク土)について、前述した各土壌物性に係る6つの項目の各値を比較に供するためにまとめて示した。
以上説明したように、実施形態Bの繊維質緑化基盤材は、木質チップの粒度や配合等を適宜調整することにより、土壌物性に係る諸項目(諸性能)を採用条件に合せて工場で自在に調整可能であることが確認された。
以上、総合的な判断として、土粒子量/古紙破砕物量比5.0 の繊維質緑化基盤材に、木質チップ19mm以下および37.5mm 以下の最適添加率は50〜75%であると判断される。
2.2 従来工法と本例実施形態Bによるのり面緑化工法との経済比較
図63〜65には、従来工法(バーク堆肥)と、実施形態Bの繊維質緑化基盤材を用いたのり面緑化工法との経済比較を、施工厚さt=3、5、7cmについてそれぞれ示した。これらの表図から理解されるように、本例実施形態Bによるのり面緑化工法によれば、施工費等が仮に従来工法と同額であると仮定したとしても、材料費は従来工法に比べてはるかに安価であり、経済的により小さな負担で前述したような大きな効果を得ることができる。
2.3 従来工法と本例実施形態Bによるのり面緑化工法の比較
図66〜68は、従来工法と本例実施形態Bによるのり面緑化工法の概要をそれぞれ示す図であり、図69及び図70は、従来工法と本例実施形態Bによるのり面緑化工法を比較する表図である。
図66〜図70から理解されるように、本例実施形態Bによるのり面緑化工法は、現地で発生する抜根・枝葉・伐採材の木質チップと建設汚泥リサイクル土を有効利用するゼロエミッション型工法であり、環境負荷が極めて小さい。
また、本例実施形態Bの繊維質緑化基盤材は、実施形態Aの繊維質緑化基盤材の繊維と、伐採材等の木質チップとが複雑に絡み合った耐候性の高い基盤を生成するので、降雨等による侵食がほとんど発生しない。
また、木質チップを長さ30mm以下に粉砕すれば、従来のモルタル吹付機での施工が可能となる。また、従来工法と比べて大幅なコスト縮減が可能となる。
2.4 未分解木質チップ使用による効果
本願発明者は、未分解木質チップを厚層基材吹付工等の緑化基盤材に利用した場合に、植栽の生育が阻害されて満足のいく結果が得られないという事実を見出した。そして、その原因を鋭意研究した結果、以下の理由により生育が阻害されるとの知見を得るに至った。
(1)窒素飢餓の問題
完熟していないチップを使用するとチップの分解・発酵の過程で大量の窒素を消費するため、植物の発芽育成に支障が生じる。バーク堆肥、オガクズ堆肥のC/N比(炭素率)は50以上であるが、未分解チップのC/N比は100以上であった(実験値)。
(2)乾燥害の恐れ
未分解チップは微生物によって分解され熱エネルギーが発生する。通気性の良い未分解チップ等は多量に高く積み上げると温度が90℃以上に上昇するので注意が必要である。つまり未分解チップは吸水力が非常に大きく、多量に施用したり、乾燥しやすい条件で施用すると乾燥害をもたらす恐れがある。
(3)フェノール酸による生育阻害
未分解チップが微生物によって分解される過程でフェノール酸という作物生育阻害物質を溶出させる。フェノール酸は多くの菌のエサになるのでフェノール酸が蓄積するのは新鮮有機物(未分解チップ)のごく近くに限定され、その害は根の接触部分で表れる。なお、本願出願人は、通常施用40日後には新鮮有機物(未分解チップ)からのフェノール酸の生成は終了して問題はなくなることを新たに見出した。
ここで、本願出願人は、未分解チップ(有機体炭素)の分解過程を炭素率(C/N比)をもとに以下の様に考察した。
(1)カビが有機体炭素100gをエサにしたとき、菌体合成に4.5〜7.5gの窒素を取り込む。
(2)このカビにおける炭素に対する窒素の必要量は炭素20に対して窒素1である。つまりC/N比は約20である。
(3)施用する有機体炭素のC/N比が20以上だと、炭素が過剰なので菌体は外から窒素を取り込んで増殖(有機化)する。すなわち、土壌中の無機体窒素まで取り込んでしまうため、窒素飢餓となり、植物の生育に必要な窒素分が不足する。
(4)施用する有機体炭素のC/N比が20以下だと窒素が余分になるのでカビはただちに有機物を分解して窒素を放出(無機化)する。この無機化された窒素(無機体窒素)を植物が吸収し生長する。
以上の考察を前提としてさらに研究を進めた結果、前述したように、本発明の実施形態Aの繊維質緑化基盤材と、前記木質チップとを混合すれば、前述したような透水係数と湿潤時比重の改善に止まらず、さらに前述した窒素飢餓・乾燥害・フェノールによる生育阻害の諸問題が解消されて、緑化工法に最適な植栽土壌が製造できることが判明した。
図71(a)に示すように、木質チップを単体で使用して、これに種子を混合して基盤材とした場合には、木質チップ10と種子11が直接触れ合うため、種子はフェノール酸、乾燥害の影響を受けやすいが、同図(b)に示す本例Bの繊維質緑化基盤材のように木質チップ10の間隙を本例Aの繊維質緑化基盤材が充填している場合には、繊維質緑化基盤材が緩衝材となって木質チップ10と種子11が直接接触することが阻害されるため、種子11にとって良好な生育環境が保持されることとなる。
従って、本例Bの繊維質緑化基盤材によれば、施工したのり面において種子は迅速に発芽して良好な生育状況を見せ、従来の基盤材等に比べてはるかに短期間で安定した緑化を実現することができた。これは、本例Bの繊維質緑化基盤材が前述した問題点を解決して従来にない次のような効果を奏しているからであると考えられる。
(1)窒素飢餓の問題点が解消されている。
(2)乾燥害による恐れが解消されている。すなわち、未分解の木質チップと繊維質緑化基盤材からなる本例Bの繊維質緑化基盤材の場合、未分解の木質チップの間隙にある繊維質緑化基盤材が適度な水分を保持できるので、種子の発芽、土壌微生物の繁殖に快適な環境が作り出されている。
(3)フェノール酸による生育阻害が解消されている。すなわち、未分解の木質チップと繊維質緑化基盤材からなる本例Bの繊維質緑化基盤材の場合、土壌微生物の繁殖に快適な環境が作り出されているのでフェノール酸の分解が早い。また、種子が直接チップに接触する可能性が低いためにフェノール酸の影響を受けにくい。
2.4 まとめ
以上説明したように、本発明の実施形態Bに係る繊維質緑化基盤材は、高含水比泥土に古紙破砕物と水溶性高分子物質と助剤を添加して混合することにより土粒子を団粒化し、これを乾燥して団粒固化させた後に解砕してなる繊維質緑化基盤材に対し、37.5mm以下の木質チップを重量比で50〜75%添加したので、木質チップを添加しない繊維質緑化基盤材に比べて透水係数と湿潤時比重がさらに改善された。加えて、木質チップを混合したことにより、窒素飢餓・乾燥害・フェノールによる生育阻害の諸問題が解消されるので、種子にとって良好な生育環境が確保され、緑化工法に最適な軽量人工植栽土壌となった。もとより、廃棄物としての高含水比泥土や建設発生木材等のリサイクルを促進して環境保全に資する効果を奏することは言うまでもない。
道路緑化の機能を、主要な機能と、各主要な機能のさらに下位に位置する機能に分類して示した機能系統分類図である。 実施形態Aにおける実験に使用した建設高含水比泥土の粒径加算曲線等を示す図である。 前記実験に供される高含水比泥土の量を確認する作業の写真を示す図である。 前記実験に使用される添加剤の量を確認する作業の写真を示す図である。 前記実験で投入される古紙破砕物の投入作業の写真を示す図である。 前記実験における高分子改良剤及び助剤の添加・攪拌作業の写真を示す図である。 前記実験において改良が完了した直後の写真を示す図である。 前記実験における天日乾燥状況の写真を示す図である。 前記実験において使用される解砕機の写真を示す図である。 前記実験における製品の袋詰め機及び製品の写真を示す図である。 前記実験において試料の作成に使用するモールドの写真を示す図である。 前記実験において有効水分保持量の測定に用いられる加圧器の写真を示す図である。 前記実験において有効水分保持量の測定に用いられるローターの写真を示す図である。 前記実験において使用される定水位透水試験装置の写真を示す図である。 前記実験において使用される三相分布試験機の写真を示す図である。 前記三相分布試験機における付加物質の容積測定の原理を説明するための単一空気系の模式図である。 前記三相分布試験機における付加物質の容積測定の原理を説明するための単一空気系の模式図である。 前記実験の施行事例における施工地の施行前の全景写真を示す図である。 前記施工事例における繊維質緑化基盤材の吹付け施工図である。 前記施工事例で使用される吹付け装置の全体構成を示す図である。 前記施工事例における吹付け施工完了後の全景写真を示す図である。 前記施工事例におけるコドラートによる発芽本数の確認状況の写真を示す図である。 前記施工事例における吹付け施工完了後30日の全景写真を示す図である。 吹付け施工完了後30日において、従来工法Eを比較対象とした前記施工事例の生育状況百分率を示す図である。 前記施工事例における吹付け施工完了後30日の植生の状況写真を示す図である。 前記施工事例における吹付け施工完了後30日の生育の状況写真を示す図である。 前記施工事例における吹付け施工完了後90日の全景写真を示す図である。 吹付け施工完了後90日において、従来工法Eを比較対象とした前記施工事例の生育状況百分率を示す図である。 前記施工事例における吹付け施工完了後90日の植生の状況写真を示す図である。 前記施工事例における吹付け施工完了後90日の生育の状況写真を示す図である。 繊維質処理土の製造工程を示す流れ図である。 高含水比泥土中の土粒子量と、団粒化を指標とした古紙破砕物添加量との関係を示す図である。 団粒化を指標とした含水比と古紙破砕物添加量の関係から求めた土粒子量/古紙破砕物量比と含水比の関係を示す図である。 関東ロームの試料状態によるpF−水分曲線を示す図である。 実施形態Aにおける実験に使用した模擬泥水の粒径加算曲線等を示す図である。 前記実験における土粒子量/古紙破砕物量比と有効水分保持量の関係を示す図である。 前記実験における古紙破砕物量/土粒子量比と有効水分保持量の関係を示す図である。 前記実験における土粒子量/古紙破砕物量比と透水係数の関係を示す図である。 前記実験における古紙破砕物量/土粒子量比と透水係数の関係を示す図である。 pF概念図である。 前記実験における土粒子量/古紙破砕物量比と三相分布及び有効水分保持量の関係を示す図である。 前記実験における土粒子量/古紙破砕物量比と透水係数及び気相率の関係を示す図である。 前記実験における古紙破砕物量/土粒子量比と透水係数及び気相率の関係を示す図である。 前記実験における土粒子量/古紙破砕物量比と湿潤時比重の関係を示す図である。 前記実験における古紙破砕物量/土粒子量比と湿潤時比重の関係を示す図である。 前記実験における土粒子量/古紙破砕物量比と陽イオン交換容量の関係を示す図である。 前記実験における古紙破砕物量/土粒子量比と陽イオン交換容量の関係を示す図である。 有効水分保持量、透水係数、湿潤時比重、古相率、気相率、陽イオン交換容量から、土粒子量/古紙破砕物量比の最適値(乃至最適範囲)を求めるための図である。 実施形態Aにおける実験に使用した活性炭入り浄水発生土の写真を示す図である。 実施形態Aにおける実験に使用した活性炭無し浄水発生土の写真を示す図である。 前記実験における土粒子量/古紙破砕物量比と有効水分保持量の関係を示す図である。 前記実験における土粒子量/古紙破砕物量比と透水係数の関係を示す図である。 前記実験における土粒子量/古紙破砕物量比と三相分布及び有効水分保持量の関係を示す図である。 前記実験における土粒子量/古紙破砕物量比と透水係数及び気相率の関係を示す図である。 前記実験における土粒子量/古紙破砕物量比と湿潤時比重の関係を示す図である。 前記実験における土粒子量/古紙破砕物量比と陽イオン交換容量の関係を示す図である。 有効水分保持量、透水係数、湿潤時比重、古相率、気相率、陽イオン交換容量から、土粒子量/古紙破砕物量比の最適値(乃至最適範囲)を求めるための図である。 土粒子量/古紙破砕物量比を5.0で調整した実施形態Aの繊維質緑化基盤材(ドライ)に大きさの異なる木質チップを種々の混合率で混合した場合の有効水分保持量と透水係数の変化を示す図である。 土粒子量/古紙破砕物量比を5.0で調整した実施形態Aの繊維質緑化基盤材(ドライ)に大きさの異なる木質チップを種々の混合率で混合した場合の湿潤時比重と陽イオン交換容量の変化を示す図である。固相率、気相率の変化を 土粒子量/古紙破砕物量比を5.0で調整した実施形態Aの繊維質緑化基盤材(ドライ)に大きさの異なる木質チップを種々の混合率で混合した場合の固相率と気相率の変化を示す図である。 本例Bの繊維質緑化基盤材(実施形態Aの繊維質緑化基盤材と19mm木質チップの混合率が50:50 )と、比較例である土壌(1)(自然土壌、多腐植質黒ボク土)及び土壌(2)(灰色台地土)のそれぞれについて求めたpF値(屋上緑化の基準であるpF=1.5 〜3.8 )と体積水分率(m3 /m3)の関係(pF−水分曲線)を示す図である。 実施形態Bの繊維質緑化基盤材と、X社乃至W社の製造に係る従来の人工土壌及び自然土壌について、各土壌物性に係る6項目の各値を比較するための表図である。 従来工法(バーク堆肥)と、実施形態Bの繊維質緑化基盤材を用いたのり面緑化工法との経済比較を示す表図である。 従来工法(バーク堆肥)と、実施形態Bの繊維質緑化基盤材を用いたのり面緑化工法との経済比較を示す表図である。 従来工法(バーク堆肥)と、実施形態Bの繊維質緑化基盤材を用いたのり面緑化工法との経済比較を示す表図である。 従来工法によるのり面緑化工法の概要を示す図である。 従来工法によるのり面緑化工法の概要を示す図である。 本例実施形態Bによるのり面緑化工法の概要を示す図である。 従来工法と本例実施形態Bによるのり面緑化工法を比較する表図である。 従来工法と本例実施形態Bによるのり面緑化工法を比較する表図である。 (a)は比較例である未分解チップ単体の基盤材の拡大図であり、(b)は本発明の本例実施形態Bの繊維質緑化基盤材の拡大図である。

Claims (3)

  1. 高含水比泥土に古紙破砕物と水溶性高分子物質と助剤を添加して混合することにより土粒子を団粒化し、これを乾燥して団粒固化させた後に解砕してなる繊維質緑化基盤材において、
    (前記土粒子の量)/(前記古紙破砕物の量)の比の値を5.0〜6.0の範囲とし、37.5mm以下の木質チップを重量比で50〜75%添加したことを特徴とする繊維質緑化基盤材。
  2. 高含水比泥土に古紙破砕物と水溶性高分子物質と助剤を添加して混合することにより、繊維質物質が高含水比泥土中の自由水を吸水し、水溶性高分子物質が土粒子表面の吸着水と反応して架橋作用により土粒子を結合させ、助剤が土粒子の団粒化を促進し、これを乾燥して団粒固化させた後に解砕することにより、前記高含水比泥土の固形成分と前記古紙破砕物と前記助剤とを含み、前記水溶性高分子物質に被覆された粒子の解砕された面が露出してなる繊維質緑化基盤材において、
    (前記土粒子の量)/(前記古紙破砕物の量)の比の値を5.0〜6.0の範囲とし、37.5mm以下の木質チップを重量比で50〜75%添加したことを特徴とする繊維質緑化基盤材。
  3. 高含水比泥土に古紙破砕物と水溶性高分子物質と助剤を添加して混合することにより土粒子を団粒化し、これを乾燥して団粒固化させた後に解砕する繊維質緑化基盤材の製造方法において、
    (前記土粒子の量)/(前記古紙破砕物の量)の比の値が5.0〜6.0の範囲となる配合として繊維質緑化基盤材を製造し、37.5mm以下の木質チップを重量比で50〜75%添加して混合することを特徴とする繊維質緑化基盤材の製造方法。
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