JP2009156827A - 半導体センシング用電界効果型トランジスタ及びこれを用いた半導体センシングデバイス - Google Patents

半導体センシング用電界効果型トランジスタ及びこれを用いた半導体センシングデバイス Download PDF

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Abstract

【解決手段】シリコン上にゲート絶縁層が形成された電界効果型トランジスタの上記ゲート絶縁層上に、有機シラン単分子膜を介してAu層を積層してなる半導体センシング用電界効果型トランジスタ及び半導体センシングデバイス。
【効果】本発明によれば、分子レベルの有効なセンシング、更には、センサ分子と被検出物質とを適宜選択することにより、生体分子などの分析において有用な鏡像異性体(キラル分子)の選択的検出を可能とする半導体センシングデバイスを提供することができる。
【選択図】図2

Description

本発明は、イオンセンシング、バイオセンシングに好適に用いることができる半導体センシングに用いる電界効果型トランジスタ、特に、バイオマイクロシステム、マイクロ化学分析システムに有効である電界効果型トランジスタ及びこれを用いた半導体センシングデバイスに関する。
イオンセンシングシステム、バイオセンシングシステムは、食品製造・管理、環境計測等、広範な分野に適用されている。イオン・バイオセンシングにおいては、一分子認識、一塩基認識等、イオン、分子レベルでのセンシングの要求がますます高まってきており、それを感知できるシステム、デバイスが必要となっている。更に、微量測定、多種同時測定のために、システム、デバイスの微細化・集積化かつオンチップ化が必要とされる。
このようなセンシングデバイスとしては、電界効果型トランジスタ(FET)を利用したセンシングが提案されており、例えば、電界効果型トランジスタに、有機シラン単分子膜を利用することによって、ゲート表面に生体分子(例えば、DNA、酵素、抗体など)を配列・固定することができ、これにより、高性能な化学センサやバイオセンサとして利用することが可能である。
また、有機シラン単分子膜を利用するもの以外に広く研究されているものとしては、チオール系単分子膜を利用したMOSFETセンサとして、化学センサ・バイオセンサへの応用が提案されている。この場合、チオール系単分子膜によりゲートを修飾するためには、ゲートにAu層を形成し、このAu層にチオール系単分子膜を結合させて修飾する必要があるが、酸化シリコンゲート上にAu層を形成する場合には、通常、TiやCrの密着層を介して形成する必要がある。しかしながら、上記密着層を介して酸化シリコンゲート上にAu層を形成したものでは、分子認識部の破壊が起こって、ゲートにおいてリーク電流が検出される場合が多く、更にはAu層が剥離する場合もあり、チオール系単分子膜の特性を利用したセンサとして、十分な機能が得られていなかった。
これらのセンサの性能は、分子認識場の安定性に大きく影響を受けるため、チオール系単分子膜を利用した化学・バイオセンサへの展開には、ゲートにおける新たな分子認識場の開発が必要である。
特開2004−4007号公報 特開2004−117073号公報 Takuya Nakanishi 他4名, J. Am. Chem. Soc., 2006;128:13322−13323 Mariko Matsunaga 他3名, Chirarity, 19:295−299(2007) Mariko Matsunaga 他3名,Electrochemistry Communications, 9(2007)725−728
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、化学・バイオセンサとして有用な半導体センシング用電界効果型トランジスタとして、チオール基を有する有機分子などを有効に使用できるゲート絶縁層上にAu層を形成した電界効果型トランジスタであり、ゲート絶縁層とAu層との密着性を十分に確保しつつ、ゲートにおけるリーク電流を抑制した高感度かつ高選択性の半導体センシング用電界効果型トランジスタ及びこれを用いた半導体センシングデバイスを提供することを目的とする。
上述したゲートにおけるリーク電流は、特に、シリコン酸化物等で形成されたゲート絶縁層の欠陥部位において、電流のリークが発生してしまうためであると考えられ、ゲート絶縁層をより薄層化した場合に、この問題が更に顕著となる。また、TiやCrの密着層は、ゲート絶縁層に対して、十分な密着性を確保できていないものと考えられる。
本発明者は、上記問題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、シリコン上にゲート絶縁層が形成された電界効果型トランジスタにおいて、チオール基を有する有機分子をセンサ分子又は被検出物質として使用する場合に、ゲート絶縁層上にAu層を設けるが、このAu層を、ゲート絶縁層上に有機シラン単分子膜を形成し、この有機シラン単分子膜を介してゲート絶縁層上に積層することによって、ゲート絶縁層、特に薄層化されたゲート絶縁層との密着性を十分に確保しつつ、更に、ゲートにおけるリーク電流を抑制した高感度かつ高選択性の半導体センシング用電界効果型トランジスタとなること、また、この半導体センシング用電界効果型トランジスタを半導体センシングデバイスにおけるセンサとして用いることにより、分子レベルの有効なセンシングが可能となり、更には、センサ分子と被検出物質とを適宜選択することにより、生体分子などの分析において有用な、鏡像異性体(キラル分子)の選択的検出も可能となることを見出し、本発明をなすに至った。
従って、本発明は、以下の半導体センシング用電界効果型トランジスタ及び半導体センシングデバイスを提供する。
[1] シリコン上にゲート絶縁層が形成された電界効果型トランジスタの上記ゲート絶縁層上に、有機シラン単分子膜を介してAu層を積層してなることを特徴とする半導体センシング用電界効果型トランジスタ。
[2] 上記Au層がAu薄膜又はAu微粒子で構成されていることを特徴とする[1]記載の半導体センシング用電界効果型トランジスタ。
[3] 上記ゲート絶縁層の少なくとも有機シラン単分子膜側の最表面部がシリコン酸化物で構成されていることを特徴とする[1]又は[2]記載の半導体センシング用電界効果型トランジスタ。
[4] 更に、上記Au層にセンサ分子としての有機分子を結合させてなることを特徴とする[1]乃至[3]のいずれかに記載の半導体センシング用電界効果型トランジスタ。
[5] 上記センサ分子としての有機分子がチオール基を有する有機分子であることを特徴とする[1]乃至[4]のいずれかに記載の半導体センシング用電界効果型トランジスタ。
[6] 上記有機シラン単分子膜が、チオール基とアルコキシシリル基とを有するシランカップリング剤により形成されたものであることを特徴とする[5]記載の半導体センシング用電界効果型トランジスタ。
[7] 上記Au層上に、上記センサ分子としての有機分子が単分子膜として形成されていることを特徴とする[5]又は[6]記載の半導体センシング用電界効果型トランジスタ。
[8] [1]乃至[7]のいずれかに記載の半導体センシング用電界効果型トランジスタをセンサとして備える半導体センシングデバイス。
生理活性に差のある鏡像異性体の検出のためこれまで種々のキラルセンサが提案されてきているが、マイクロキラルセンサの報告はほとんどない。マイクロキラルセンサは生体内や生体内と類似な環境において迅速なキラル検出を可能とする点で、他のキラル検出システムと異なる。本発明は、マイクロキラルセンサとして使用することが可能であり、病理研究の発展に寄与すると共に、センサの小型化、オンチップ化によって、在宅医療などにおける有効な検査ツールとして有用である。
本発明によれば、分子レベルの有効なセンシング、更には、センサ分子と被検出物質とを適宜選択することにより、生体分子などの分析において有用な鏡像異性体(キラル分子)の選択的検出を可能とする半導体センシングデバイスを提供することができる。
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
本発明においては、シリコン上にゲート絶縁層が形成された電界効果型トランジスタが用いられる。電界効果型トランジスタとしては、例えば、特開2004−4007号公報(特許文献1)などに記載されている電界効果型トランジスタが挙げられ、例えば、図1に示されるような、シリコン基板20上にシリコン酸化物膜等からなるゲート絶縁層21、ソース電極22、ドレイン電極23を積層すると共に、ソース電極22及びソース電極23の各々の下方にチャンネル領域24,24を設け、被検物質の有無又はその量をソース電極22及びソース電極23の各々の下方に設けられたチャンネル領域24,24を介して各々の電極側で測定される表面電位変化により検出するように構成したものである。なお、図1中、25はフィールド酸化膜、26は保護用酸化膜である。
ゲート絶縁層を構成する材料としては、少なくとも表面側(シリコン基板から離間する側(後述する有機シラン単分子膜が形成される面側))の最表面部がシリコン酸化物、スズ酸化物、ゲルマニウム酸化物、ジルコニウム酸化物、チタニウム酸化物、アルミニウム酸化物、ITO等の金属酸化物、好ましくはシリコン酸化物で構成されていることが必要である。ゲート絶縁層は、シリコン酸化物等の金属酸化物の単層構造のものでも、シリコン酸化物層、低抵抗層になる金属層、シリコン窒化物等の金属窒化物層などから選ばれる層を積層した複層構造のものでもよい。複層構造の場合、シリコン基板側の層もシリコン酸化物等の金属酸化物で構成されていることが好ましい。ゲート絶縁層の上記最表面部の厚さ(ゲート絶縁層が単層である場合は、その全体の厚さ)は、特に限定されるものではないが、100nm以下であることが好ましい。
本発明の電界効果型トランジスタには、ゲート絶縁層上に、有機シラン単分子膜を介してAu層が積層されている。このAu層には、更にセンサ分子としての有機分子を結合させることができる。センサ分子としての有機分子を結合させていないもの(第1の態様)の場合は、後述するセンサ分子としての有機分子のようなAu層と結合を形成する有機分子を対象(被検出物質)とするセンシングを実施する場合に有効である。一方、センサ分子としての有機分子を結合させたもの(第2の態様)の場合は、センサ分子としての有機分子と被検出物質との相互作用により被検出物質をセンシングする場合に有効である。
図2に、本願発明の上記第1の態様の電界効果型トランジスタの一例を示し、図3に、この電界効果型トランジスタのゲート絶縁層上の構成例を模式的に示す。
図2に示される電界効果型トランジスタのゲート絶縁層21上には、図3に示されるように、有機シラン単分子膜(この図の場合は、3−メルカプトプロピルトリアルコキシシランが結合した有機シラン単分子膜)11を介してAu層12が積層されている。この第1の態様の電界効果型トランジスタの場合、Au層12上に、被検出物質が結合することによる表面電位変化を電気信号として検出するものであり、Au層12が直接的な検出部として機能する。
また、図4に、本願発明の上記第2の態様の電界効果型トランジスタの一例を示し、図5に、この電界効果型トランジスタのゲート絶縁層上の構成例を模式的に示す。
図4に示される電界効果型トランジスタのゲート絶縁層21上には、図5に示されるように、有機シラン単分子膜(この図の場合は、3−メルカプトプロピルトリアルコキシシランが結合した有機シラン単分子膜)11を介してAu層12が積層されている。そして、この第2の態様の電界効果型トランジスタの場合、Au層12上(Au層12のシリコン基板20から離間する側)には、センサ分子としての有機分子(この図の場合は、L−ホモシステイン)13が単分子膜として結合している。この第2の態様の電界効果型トランジスタの場合、このAu層12上に結合したセンサ分子としての有機分子13に、被検出物質が作用することによる表面電位変化を電気信号として検出するものであり、このセンサ分子としての有機分子が直接的な検出部として機能する。なお、図2及び4中の各部は、図1と同じ参照符号を付して、説明を省略する。
本発明の電界効果型トランジスタにおいては、ゲート絶縁層上に有機シラン単分子膜が形成されており、ゲート絶縁層とAu層との間に有機シラン単分子膜を形成することによって、電界効果型トランジスタのゲートにおけるリーク電流を抑制することができる。
ゲート絶縁層とAu層との間に形成される有機シラン単分子膜を構成する有機シランとしては、チオール基(メルカプト基)と、好ましくは炭素数1〜4のアルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基など)を有するアルコキシシリル基(密着性等の点でトリアルコキシシリル基が好ましい)とを有するシランカップリング剤が好適である。チオール基は、Au層との間の結合において強固な結合を形成する点、また、アルコキシ基は、金属酸化物(特にシリコン酸化物)表面上に存在するOH基との間で加水分解反応によって強固な結合を形成する点において好適である。また、有機シラン単分子膜を構成する有機シランとしては、シリコン基板表面上で自己組織化単分子膜(SAM)として機能するものが好ましい。
このような有機シラン単分子膜を構成する有機シランとしては、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等を挙げることができ、分子鎖の一方の末端にチオール基、他方の末端にアルコキシシリル基(好ましくはトリアルコキシシリル基)を有し、それらが炭素数3〜20の直鎖状アルケニル基に結合したものが好ましい。
有機シラン単分子膜は、シリコン基板上に有機シラン単分子膜を形成する従来公知の方法で形成することができる。例えば、有機シラン分子を用い、ゲート絶縁層上に気相化学反応(ガス状の有機シラン分子を接触させる方法)又は液相反応(例えば、有機シラン分子を含む溶媒溶液をシリコン基板に接触させる方法など)によって形成することができ、有機シラン単分子や形成条件を最適化することによって、有機シラン分子の自己組織化と共に、有機シラン単分子膜として細密パッキングされた膜が形成される。また、有機シラン単分子膜は、適宜、公知のパターニング手法によりパターニングすれば、所定の部位のみに形成することが可能である。
また、本発明の電界効果型トランジスタにおいては、上記有機シラン単分子膜上にAu層が形成されているが、Au層は、Au薄膜で構成されていても、Au微粒子(Auナノ粒子)で構成されていてもよい。Au層の厚さは、200nm以下、特に50〜200nmとすることが好ましい。
Au層としてAu薄膜を形成する場合は、例えば、真空蒸着等の気相法により、有機シラン単分子膜上に形成することができる。蒸着速度は適宜設定されるが、蒸着の初期段階(有機シラン単分子膜側の形成時)と、蒸着の最終段階(表面側(シリコン基板から離間する側)の形成時)を、蒸着の中間段階(厚さ方向中間の領域の形成時)よりゆっくり(例えば、蒸着速度を1/2〜1/10程度として)成膜することが、密着性向上やより平滑なAu表面の作製の点から好ましい。
また、Au層としてAu微粒子層を形成する場合は、公知のAu微粒子製造法(例えば、気相合成法や、Auを含む塩の溶液から還元剤を用いてAu微粒子を析出させる方法等の液相合成法など)により製造されたAu微粒子を用いることができる。この場合、Au微粒子を溶媒(シリコン基板上に形成された有機シラン単分子膜をシリコン基板から脱離させることがない溶媒)に分散させた懸濁液とし、この懸濁液を有機シラン単分子膜に滴下して、溶媒を揮発させる方法などにより、有機シラン単分子膜上に、Au微粒子の層状の集合体として形成することができる。Au微粒子としては、平均粒径5nm以上のものを用いることができる。なお、平均粒径は、透過型電気顕微鏡像から計測した粒径の平均値として算出することができる。
この場合、Au微粒子の層状の集合体は、Au微粒子がAu層の厚さ方向に複数重なった層状の集合体でもよく、また、Au微粒子がAu層の厚さ方向に重なることなく有機シラン単分子膜上に1個ずつ配列したものであってもよい。
本発明の第1の態様の電界効果型トランジスタにおいては、被検出物質として、後述する第2の態様におけるセンサ分子としての有機分子と同様のものをあげることができる他、Au層と結合を形成する有機分子であれば、いずれも対象とすることができる。
一方、本発明の電界効果型トランジスタにおいては、上記Au層上にセンサ分子(認識場)としての有機分子が結合したものとすることができ、本発明の第2の態様の電界効果型トランジスタにおいては、上記Au層上にセンサ分子としての有機分子が結合している。
このセンサ分子としての有機分子は、被検出物質(例えば、アミノ酸、アミン系分子など)の種類によって適宜選定されるが、Au層と強固に結合する点からチオール基(メルカプト基)を有する有機分子、又はAu層上に形成されたチオール基を有する膜上に化学反応により固定されるものである必要がある。チオール基を有する有機分子としては、例えば、L−ホモシステイン、D−ホモシステイン、L−メチオニン、D−メチオニン、L−システイン、D−システイン等のアミノ酸、アミノ基を末端に有する分子、カルボキシル基を末端に有する分子などが挙げられる。
Au層を上記センサ分子で修飾する方法(Au層上に上記センサ分子としての有機分子を結合させる方法)としては、Au上に有機分子を結合させる従来公知の方法で形成することができる。例えば、チオール基を有する有機分子を用い、Au層(Au薄膜又はAu微粒子)上に気相化学反応(ガス状の上記有機分子を接触させる方法)又は液相反応(例えば、上記有機分子を含む溶媒溶液をAu層に接触させる方法など)によって形成することができる。この場合、センサ分子としての有機分子は、上記Au層上に単分子膜として形成されていることが好ましい。Au層を上記有機分子で修飾する際、有機分子や修飾条件を最適化することによって、上記有機分子の単分子膜を形成することができ、更に、自己組織化機能を有する有機分子を用いれば、上記有機分子の単分子膜として細密パッキングされた膜を形成することができる。
このような電界効果型トランジスタは、半導体イオンセンシング、バイオセンシングデバイス用として好適に用いられる。即ち、このような半導体センシング用電界効果型トランジスタをセンサとして、半導体センシングデバイスを構成することができる。そして、本発明の電界効果型トランジスタを用いることによって、そのゲート絶縁層上に形成したAu層、又はセンサ分子としての有機分子を直接的な検出部とする半導体センシングデバイスを構成し、基本原理として表面上のイオン吸着・バイオ反応等に伴う表面電位変化を電気信号として検出する半導体センシングデバイスとすることができる。
例えば、本発明の電界効果型トランジスタを用いて半導体センシングを実施する場合、例えば、図6に示されるように、図4に示されるようなゲート絶縁層21上に、有機シラン単分子膜11を介してAu層12が積層され、Au層12上に、センサ分子としての有機分子13が単分子膜として結合している電界効果型トランジスタの有機分子13の近傍にゲート電極27を設け、このゲート電極27と、ソース電極22及びドレイン電極23とを電源及び電流計等の計器を介して接続した半導体センシングデバイスを構成し、例えば、被検出物質を含む被検液sを有機分子13とゲート電極27との双方に接触させることによりセンシングが可能である。なお、図6中、aは電流計、eは接地(アース)、pは直流電源である。また、この図では、第2の態様の電界効果型トランジスタを用いるものを示したが、第2の態様の電界効果型トランジスタを用いる場合は、図2に示されるような電界効果型トランジスタを同様に用いればよい。
本発明の電界効果型トランジスタを用いた半導体センシングデバイスは、医療計測、環境測定、食品管理、生化学分析(アミノ酸、DNA、タンパク、酵素、免疫等の解析・細胞解析・分泌物質の同定等)などに適用することができる。また、本発明の電界効果型トランジスタを用いた半導体センシングデバイスによれば、センサ分子としての有機分子をAu層上に形成させた第2の態様において、特に、センサ分子としての有機分子としてチオール基を有するアミノ酸を用いた場合、例えば、アラニン、フェニルアラニン、ロイシン、トリプトファン、ジヒドロキシフェニルアラニン等のアミノ酸の鏡像異性体(D体、L体)の選択的検出が可能である。
以下、実施例を示して、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
〔ゲート絶縁層への有機シラン単分子膜の形成〕
ゲート絶縁層としてSiO2(厚さ20nm、100nm)が形成されているチャンネル領域がn型の電界効果型トランジスタ(FET)を用いた。まず、酸素プラズマクリーニング(200W、3分)によりゲート絶縁層の表面を清浄化した。次に、FETをエタノール−水混合溶媒(エタノール95質量%+水5質量%)約50mlに浸漬し、この溶媒に3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)を5.38×10-3mol添加して、60℃で15分間保持した。その後、FETを取り出し、エタノールでリンスし、N2ガスで乾燥させた。
〔有機シラン単分子膜へのAu薄膜の形成〕
有機シラン単分子膜上に、真空蒸着により下記条件でAu薄膜(厚さ200nm)を形成した。
<Au真空蒸着条件>
温度:加熱なし(成り行き温度)
圧力:約6×10-5Pa
蒸着速度:0.005nm/s(膜厚0〜10nm)
0.02nm/s(膜厚10〜190nm)
0.005nm/s(膜厚190〜200nm)
〔Au薄膜へのセンサ分子としての有機分子による修飾〕
L−ホモシステイン(L−Hcy)を0.5mmol/Lで含むエタノール溶液に、FETを24時間浸漬させた。その後、FETを取り出し、エタノールでリンスし、N2ガスで乾燥させた。
上記製造の各段階における電界効果型トランジスタについて、I−V特性(Vg−Id曲線)を評価した。また、I−V特性評価前後のゲート表面状態を光学顕微鏡により観察した。
[比較例1]
〔ゲート絶縁層へのTi薄膜の形成〕
ゲート絶縁層としてSiO2(厚さ20nm)が形成されているチャンネル領域がn型の電界効果型トランジスタ(FET)を用いた。まず、酸素プラズマクリーニング(200W、3分)によりゲート絶縁層の表面を清浄化した。次に、真空蒸着により下記条件でTi薄膜を形成した。
<Ti真空蒸着条件>
温度:加熱なし(成り行き温度)
圧力:約6×10-5Pa
蒸着速度:0.01nm/s
〔Ti薄膜へのAu薄膜の形成〕
密着性を向上させるために115℃の加熱下で実施した以外は、実施例1と同様の方法で形成した。
〔Au薄膜へのセンサ分子としての有機分子による修飾〕
実施例1と同様の方法で修飾した。
上記製造の各段階における電界効果型トランジスタについて、I−V特性(Vg−Id曲線)を評価した。また、I−V特性評価前後のゲート表面状態を光学顕微鏡により観察した。
[実施例2]
〔ゲート絶縁層への有機シラン単分子膜の形成〕
実施例1と同様の方法で形成した。
〔有機シラン単分子膜へのAu微粒子層の形成〕
トルエン40mlに、30mmol/LのHAuCl4水溶液15mlと、4.2×10-4molのテトラオクチルアンモニウムブロマイド(TOAB)を添加し、室温で1時間攪拌した後、水層を分離除去し、残った油層に0.4mol/LのNaBH4水溶液12.5mlを添加して、攪拌下、20分間放置した。得られたAu微粒子の平均粒径は5nmであった。得られたAu微粒子の分散液を有機シラン単分子膜上に滴下(1滴)し、大気で1時間乾燥させた。その後、水溶液中で超音波洗浄を行った。
〔Au微粒子層へのセンサ分子としての有機分子による修飾〕
実施例1と同様の方法で修飾した。
上記製造の各段階における電界効果型トランジスタについて、I−V特性(Vg−Id曲線)を評価した。
[評価1:製造の各段階における電界効果型トランジスタ(Au薄膜を形成)のI−V特性の評価]
各段階のFETの特性評価を0.5mol/LのK2SO4水溶液中で行った。I−V特性の評価条件は、以下のとおりである。
<I−V特性の評価条件>
Vd:一定(1.0V)
参照電極(ゲート電極):Hg/HgSO4
有機シラン単分子膜を用いた実施例1のFETのリーク電流は、Ti薄膜を密着層として用いた比較例1のFETと比較して3桁以上減少し、10-9Aに抑えることができた。これは、MPTMSが酸化膜の欠陥を補うような絶縁層として機能しているためであると考えられる。
また、図7に、実施例1の製造の各段階における電界効果型トランジスタのVg−Id曲線を示す。MPTMSを用いたことによって、閾値電圧が大幅に正方向にシフトし、曲線の傾きも減少した。このことから、MPTMSがゲートの誘電率を大幅に低下させたことが示唆される。更に、Auを蒸着することで閾値電圧が負にシフトした。これは、Auの表面が+にチャージされることで反転層ができやすくなった効果が現れたものと考えられる。次に、Au薄膜上にL−Hcyを修飾した場合、閾値電圧が更に負にシフトした。これは中性条件下では、L−Hcyがカルボキシル基とアミノ基をもつ両性イオンとして存在するために分子内で分極し、Au表面の誘電率又は正電荷量が増加したためであると考えられる。
[評価2:L−Hcy修飾Au/MPTMS/SiO2ゲートFETのアラニンに対する応答、及びCu(II)の錯体形成反応の評価]
低電圧印加でドレイン電流が観測されるデバイスを用いて、L−Hcy修飾Au/MPTMS/SiO2ゲートFETを作製し(実施例1の方法に従い作成したものである)、D−又はL−アラニン(Ala)に対する応答、及び硫酸銅を滴下したときの錯体形成反応を評価した。I−V特性の評価条件は、以下のとおりである。
<I−V特性の評価条件>
Vd:一定
参照電極(ゲート電極):Hg/HgSO4
電解質液:K2SO4(500mmol/L水溶液 50μL)
混合後の濃度 250mmol/L
被検液:D−又はL−アラニン(0.08mmol/L水溶液 45μL)
混合後の濃度 40μmol/L
CuSO2(0.4mmol/L水溶液 5μL)
混合後の濃度 20μmol/L
まず、K2SO4溶液を滴下し、次に、Ala溶液を添加してから5分後にCuSO2溶液を添加し、CuSO2溶液の最初の添加から1分、10分、15分、20分、30分後と、滴下から測定までの時間について厳密に規定し、経時変化と閾値電圧のシフト量の関係を観測した。結果を図8に示す。
閾値電圧のシフトの方向はAla及びCu(II)の添加に対し、D−Alaの場合では各々+,+、L−Alaでは−,+という鏡像体間で異なる結果が得られた。観測された閾値電圧のシフト量やその方向は、溶液中で双性イオンを持つホモシステインの配向やアミノ基、カルボキシル基の解離状態が、AlaやCu(II)との相互作用により変化し、ゲート表面の誘電率を変化させた結果であると考えられる。つまり、Ala及Cu(II)との相互作用による閾値電圧の変化として、D−Ala及びL−Alaの鏡像体をキラル選択的に検出できることが示された。
[評価3:製造の各段階における電界効果型トランジスタ(Au微粒子層を形成)のI−V特性の評価]
各段階のFETの特性評価を0.5mol/LのK2SO4水溶液中で行った。I−V特性の評価条件は、以下のとおりである。
<I−V特性の評価条件>
Vd:一定
参照電極(ゲート電極):Hg/HgSO4
図9に、実施例2の製造の各段階における電界効果型トランジスタのVg−Id曲線を示す。Auナノ粒子の固定化処理後、実施例1の場合と同様に閾値電圧の負電圧側のシフトが確認された。これより、Auナノ粒子の固定化が示唆される。また、超音波洗浄によっても閾値電圧の負へのシフトが確認され、この処理により、界面活性剤として添加したTOABの一部が除去されたものと考えられる。更に、L−Hcy修飾後は、実施例1の場合と同様に閾値電圧が負にシフトし、Au表面に残留するTOABがL−Hcyに置換されると共に、L−HcyがAuと結合して、Auナノ粒子上に固定されたことが示唆される。
実施例1の場合と比較して、Auナノ粒子を用いたFETの方が、L−Hcy修飾による閾値電圧のシフトの絶対値が大きいことや、最終的なVg−Id曲線の勾配が大きなことは、Auナノ粒子がAu薄膜と比較して単位体積当たりの表面積が大きいことから、より多くのL−Hcyが固定されたものと考えられる。これは、このデバイスが、ホモシステインの回収と検出に特に有効であることを示している。
[評価4:I−V特性評価前後のゲート表面状態の観察]
実施例1及び比較例1において、L−Hcyで修飾した電界効果型トランジスタのI−V特性評価前後のゲート表面状態を図10に示す。実施例1の電界効果型トランジスタは、I−V特性の評価前(図10(A))と、I−V特性の評価後(図10(B))とでは、それらの表面状態に差異はなかったが、比較例1の電界効果型トランジスタは、I−V特性の評価前(図10(C))と、I−V特性の評価後(図10(D))とで、評価後の方に、Au薄膜の明らかな剥離が観察された。
シリコン基板上にゲート絶縁層が形成された電界効果型トランジスタの一例を示す断面図である。 本発明の電界効果型トランジスタ(第1の態様)の一例を示す断面図である。 図2の電界効果型トランジスタのゲート絶縁層上の構成の一例を示す模式図である。 本発明の電界効果型トランジスタ(第2の態様)の一例を示す断面図である。 図4の電界効果型トランジスタのゲート絶縁層上の構成の一例を示す模式図である。 本発明の電界効果型トランジスタ(第2の態様)を備える半導体センシングデバイスの構成の一例を示す概念図である。 Au薄膜を用いた電界効果型トランジスタ(実施例1)のVg−Id曲線である。 本発明の電界効果型トランジスタのアラニンに対する応答、及びCu(II)の錯体形成反応の閾値電圧のシフトを示すグラフである。 Au微粒子を用いた電界効果型トランジスタ(実施例2)のVg−Id曲線である。 I−V特性評価前後のゲート表面状態の光学顕微鏡像である。
符号の説明
11 有機シラン単分子膜
12 Au層
13 センサ分子としての有機分子
20 シリコン基板
21 ゲート絶縁層
22 ソース電極
23 ドレイン電極
24 チャンネル領域
25 フィールド酸化膜
26 保護用酸化膜
27 ゲート電極
a 電流計
e 接地(アース)
p 直流電源
s 被検液

Claims (8)

  1. シリコン上にゲート絶縁層が形成された電界効果型トランジスタの上記ゲート絶縁層上に、有機シラン単分子膜を介してAu層を積層してなることを特徴とする半導体センシング用電界効果型トランジスタ。
  2. 上記Au層がAu薄膜又はAu微粒子で構成されていることを特徴とする請求項1記載の半導体センシング用電界効果型トランジスタ。
  3. 上記ゲート絶縁層の少なくとも有機シラン単分子膜側の最表面部がシリコン酸化物で構成されていることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体センシング用電界効果型トランジスタ。
  4. 更に、上記Au層にセンサ分子としての有機分子を結合させてなることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の半導体センシング用電界効果型トランジスタ。
  5. 上記センサ分子としての有機分子がチオール基を有する有機分子であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の半導体センシング用電界効果型トランジスタ。
  6. 上記有機シラン単分子膜が、チオール基とアルコキシシリル基とを有するシランカップリング剤により形成されたものであることを特徴とする請求項5記載の半導体センシング用電界効果型トランジスタ。
  7. 上記Au層上に、上記センサ分子としての有機分子が単分子膜として形成されていることを特徴とする請求項5又は6記載の半導体センシング用電界効果型トランジスタ。
  8. 請求項1乃至7のいずれか1項記載の半導体センシング用電界効果型トランジスタをセンサとして備える半導体センシングデバイス。
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