JP2009155769A - ポリエステル系溶融紡糸口金の洗浄方法 - Google Patents

ポリエステル系溶融紡糸口金の洗浄方法 Download PDF

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將生 西村
Yukinobu Maesaka
行信 前坂
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Abstract

【課題】従来の口金洗浄方法では、完全に除去できなかったポリマーの炭化物や添加剤、紡糸途中で使用する口金表面洗浄用塗布剤に含まれる無機添加物等の異物を、十分に洗浄することを提供することにあり、さらには口金を腐食することなくこれら異物を除去することが可能な洗浄方法を提供する。
【解決手段】
ポリエステル系溶融紡糸口金を、ソルト分解および/または加水分解で高温処理した後、薬液処理として1次洗浄にアルカリ溶液によるアルカリ洗浄、2次洗浄にリン酸溶液による酸洗浄を施し、次いで超音波洗浄をするポリエステル系溶融紡糸口金の洗浄方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステル系溶融紡糸口金の洗浄方法に関するものである。
これまでに、薬液を使用する口金洗浄方法として、溶融、加水分解、酸化分解工程からなる高温洗浄工程の後、薬液、超音波、および高圧水のうちの少なくとも1つを用いることによる洗浄方法について開示されている(特許文献1)。しかしながらこのような洗浄方法では、薬液処理が記載されているものの、使用する薬液種類がアルカリもしくは酸のいずれか1種類であるため、ポリマー中に添加された物質や、紡糸途中で口金表面洗浄に使用される塗布剤に含まれる物質を口金から完全に除去することはできなかった。除去されなかった異物は、ポリマーの吐出挙動を不安定にさせたり、ポリマー中に脱落し紡出糸条に混入して単糸切れが発生したり、吐出孔に詰まって細糸が発生するなど、製糸安定性を低下させる要因となり問題となっていた。また、ソルト洗浄の後、超音波洗浄で洗浄し、ついで10〜30%硝酸浴中に浸漬後水洗して、再び超音波洗浄したのち乾燥させることを特徴とする洗浄方法が開示されている(特許文献2)。しかしこのような強酸性の薬液による洗浄方法は、金属口金の表面を腐食し、口金吐出孔の欠けや割れを起こし製糸安定性の低下を引き起こすだけでなく、口金寿命の短縮化によるコストデメリットの要因となっていた。またこのような、硝酸をはじめ塩酸や硫酸等強酸類を使用した洗浄方法は、防災、環境衛生などに対する装置および環境面の配慮が必要なことは言うまでもなく、洗浄工程が複雑になりかつ作業環境上にも問題があった。
特開2003−26045号公報(特許請求の範囲) 特開昭56−154510号公報(特許請求の範囲)
本発明は、かかる上記従来技術の欠点を解消せんとするものであり、ポリエステル系溶融紡糸口金において、1次洗浄としてアルカリ洗浄、2次洗浄としてリン酸洗浄と洗浄工程における薬液処理回数と順序を規定することで、ポリマー中に含まれた添加物や、紡糸中に口金表面の洗浄に用いる塗布剤に含まれる添加物等、口金に付着した全ての異物を完全に除去することでができ、かつ弱酸であるリン酸を用いることで、取り扱いが容易で、かつ口金の腐食を発生させない口金洗浄方法を提供するものである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討の結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は上記の目的を達成するため、
(1)ポリエステル系糸用溶融紡糸口金を、ソルト分解および/または加水分解で高温処理した後、薬液処理として1次洗浄にアルカリ溶液によるアルカリ洗浄、2次洗浄にリン酸溶液による酸洗浄を実施し、次いで超音波洗浄をすることを特徴とするポリエステル系溶融紡糸口金の洗浄方法。
(2)アルカリ洗浄に用いるアルカリ溶液の濃度が5〜15重量%、酸洗浄に用いるリン酸溶液の濃度が5〜15%重量であることを特徴とする前記(1)項に記載のポリエステル系溶融紡糸口金の洗浄方法。
(3)アルカリ洗浄に用いるアルカリ溶液の温度が50〜70℃、リン酸溶液の温度が15〜25℃であることを特徴とする前記(1)または(2)項に記載のポリエステル系溶融紡糸口金の洗浄方法。
(4)アルカリ洗浄の洗浄時間が60〜120分、リン酸洗浄の洗浄時間が1〜15時間とする前記(1)〜(3)項のいずれかに記載のポリエステル系溶融紡糸口金の洗浄方法。
(5)溶融紡糸に用いるポリエステル系のポリマー成分が、ポリトリメチレンテレフタレートを含むことを特徴とする前記(1)〜(4)項のいずれかに記載のポリエステル系溶融紡糸口金の洗浄方法。
本発明によれば、ポリエステル系糸用溶融紡糸口金洗浄において、加熱分解の後、薬液処理を実施する際、1次洗浄としてアルカリ洗浄、2次洗浄としてリン酸洗浄と薬液処理回数と順序を規定することで、口金に付着したポリマー中に含まれた添加物や紡糸中に口金表面の洗浄に用いる塗布剤に含まれる添加物等、口金に付着した全ての異物を完全に除去することができ、かつ弱酸であるリン酸を用いることで、従来技術では成し得なかった取り扱いの容易な、口金の腐食を発生させない口金洗浄方法提供することができる。
以下、本発明のポリエステル系溶融紡糸口金の洗浄方法について詳細に説明する。
本発明では、まず紡糸工程で使用した口金を、溶融、分解、酸化処理からなる高温処理を行う。本発明での高温処理方法としては、亜硝酸ソーダ:硝酸ソーダ=1:1からなるソルト浴を410℃〜430℃に加熱したソルト浴槽に60〜90分間投入して行うソルト分解処理、もしくはムーブエンジニアリング社製の加水分解装置を用いて、440℃〜460℃、700分〜900分間加熱して行う加水分解処理のいずれかである。この段階では、口金表面や吐出孔内には、ポリマーの炭化物や添加剤、紡糸途中で使用する口金表面洗浄用塗布剤に含まれる無機添加物等の異物が残存している。
本発明では、これら残存する異物を薬液処理により分解、あるいは除去する方法として、1次分解としてアルカリ洗浄を実施し水洗した後、2次分解としてリン酸洗浄を実施する。
本発明でのアルカリ洗浄に用いるアルカリ種類としては、水酸化ナトリウムや水酸化カルシウム、水酸化カリウムなどが挙げられるが、中でも水酸化ナトリウムが好ましい。
アルカリ洗浄、リン酸洗浄どちらか一方のみであった場合、ポリマー炭化物や添加剤、口金表面洗浄塗布剤に含まれる無機添加物のいずれかが残存してしまう。また1次洗浄にリン酸洗浄、2次洗浄としてアルカリ洗浄を実施した場合、先に行うリン酸洗浄はポリマー炭化物や添加剤の分解、あるいは除去には効果的ではあるが、口金表面洗浄塗布剤に対しては効果が落ちるため、この口金洗浄塗布剤に覆われた、もしくは洗浄塗布剤と混合したその他無機成分の汚れの分解、除去が完全に行われずに口金に残存することになる。この汚れの残存は、ポリエステルにポリトリメチレンテレフタレートを使用した場合より顕著である。
薬液の濃度は、アルカリ溶液では5〜15重量%が良く、好ましくは10重量%以上が良い。リン酸溶液では、5〜15%が良く、洗浄能力と口金表面の腐食ダメージ防止の点から好ましくは10%以上が良い。
薬液の温度は、アルカリ溶液では、洗浄浴槽内での対流発生に伴う溶液の攪拌効果により、洗浄能力強化が期待できるという点から、50〜70℃が良く、このましくは60℃以上が良い。リン酸洗浄は15〜25℃が良く、このましくは20℃以上が良い。この温度範囲を超える温度での洗浄には、冷却もしくは加熱制御する特別な設備が必要であり操業コストの面から好ましくない。
薬液洗浄時間は、洗浄能力の点から、アルカリ洗浄では60〜120分が良く、このましくは90分以上がよい。リン酸洗浄においては、浸漬時間は1〜15時間が良く、このましくは12時間以上が良い。
続いて水洗した後、口金を水槽内に入れ口金吐出孔面と直交するような方向から超音波を当てて、分解されたあとに口金表面もしくは吐出孔内に残存する異物を除去し、最後に仕上げとして乾燥を行う。超音波洗浄に用いる発信の周波数と出力、照射時間は、5〜25KHzと700〜1100W、3〜6分が良く、好ましくは10〜20KHz、800〜1000W、4〜5分が良い。
本発明でポリエステル系糸を構成するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す)、ポリトリメチレンテレフタレート(以下、3GTと略す)、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸(以下、PLAと称す)などの脂肪族ポリエステル等が挙げられる。また、これらのポリエステルは、ジオール成分および酸成分の一部が各々、20モル%以下、より好ましくは10モル%以下の割合で他のエステル結合の形成が可能な共重合成分を含むものであってもよい。共重合可能な化合物として、例えばイソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を挙げることができ、これらは艶消剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料などの添加物を含有していても構わない。
以下、実施例、比較例をもって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また実施例中の評価方法は以下の方法を用いた。
(1)洗浄効果
洗浄後の口金を用いて紡糸した際の操業性を、1t生産量あたりの紡糸糸切れ回数を算出して評価した。
(2)腐食性
同条件で5回繰り返した後、口金吐出孔と表面を100倍の顕微鏡で拡大観察して腐食発生部分の総面積を測定した。
実施例1〜9、比較例1〜4
実施例1
0.23φで24ホールの口金を用いて紡糸速度4000m/minで56デシテックス24フィラメントのPETマルチフィラメントを溶融紡糸した後、使用した口金を、加水分解装置を用いて高温処理を行い、さらに60℃に加熱した10重量%水酸化ナトリウム溶液に60分間浸漬し水洗いをした後、25℃、10重量%リン酸溶液に15時間浸積した。その後水洗いした後、周波数15KHz、出力900Wの超音波洗浄装置を用いて片面4分間、計8分間洗浄を行い、最後に圧空を用いて乾燥した。この洗浄後の口金を用いて紡糸したところ、紡糸糸切れは0.1回/tと非常に良好であった。また腐食について検査したところ、口金吐出孔と表面には腐食は全く観察されなかった。
実施例2
0.23φで24ホールの口金を用いて紡糸速度4000m/minで56デシテックス24フィラメントの3GTマルチフィラメントを溶融紡糸した後、使用した口金を、実施例1と同条件で洗浄を行い、この洗浄後の口金を用いた紡糸したところ、紡糸糸切れは0.4回/tと非常に良好であり、実施例1と同様の方法で腐食に関して検査を行ったところ、口金吐出孔と表面には腐食はまったく観察されなかった。
比較例1
実施例2と同条件で溶融紡糸した後、水酸化ナトリウム溶液に浸積する工程を除く以外は、実施例2と同条件で洗浄を行い、紡糸糸切れを評価した。結果、口金吐出孔には汚れが残り紡糸糸切れは2.7回/tと糸切れが多発した。また実施例1と同様の方法で腐食に関して検査を行ったところ、口金吐出孔と表面には腐食はまったく観察されなかった。
実施例3,4
実施例2と同条件で溶融紡糸した後、水酸化ナトリウム溶液の濃度を、5、20重量%にする以外は、実施例2と同条件で洗浄を行い、紡糸糸切れを評価した。結果、紡糸糸切れは水酸化ナトリウム溶液濃度が5重量%のものが1.2回/tと良好であり、水酸化ナトリウム溶液濃度が20重量%のものが0.3回/tと非常に良好であった。また実施例1と同様の方法で腐食に関して検査を行ったところ、どちらの条件でも口金吐出孔と表面には腐食はまったく観察されなかった。
実施例5
実施例2と同条件で溶融紡糸した後、水酸化ナトリウム水溶液の温度を50℃にする以外は、実施例2と同条件で洗浄を行い、紡糸糸切れを評価した。結果、紡糸糸切れは1.3回/tと良好であった。また実施例1と同様の方法で腐食に関して検査を行ったところ、口金吐出孔と表面には腐食はまったく観察されなかった。
実施例6
実施例2と同条件で溶融紡糸した後、水酸化ナトリウム水溶液の浸積時間を120分にする以外は、実施例2と同条件で洗浄を行い、紡糸糸切れを評価した。結果、紡糸糸切れは0.4回/tと非常に良好であった。また実施例1と同様の方法で腐食に関して検査を行ったところ、口金吐出孔と表面には腐食はまったく観察されなかった。
比較例2
実施例2と同条件で溶融紡糸した後、リン酸の代わりに硝酸を用いること以外は、実施例2と同条件で洗浄を行い、実施例1と同様の方法で腐食に関して検査を行ったところ、口金吐出孔と表面に総面積で225μmの腐食が観察された。操業性に影響を与えるためそのままでは使用できない状態であった。よって操業性評価は実施できなかった。
比較例3
実施例2と同条件で溶融紡糸した後、リン酸溶液に浸積する工程を除く以外は、実施例2と同条件で洗浄を行い、紡糸糸切れを評価した。結果、口金には目視でも確認できる汚れが付着しており紡糸糸切れは4.2回/tと糸切れが多発した。また実施例1と同様の方法で腐食に関して検査を行ったところ、口金吐出孔と表面には腐食はまったく観察されなかった。
実施例7
実施例2と同条件で溶融紡糸した後、リン酸溶液の濃度を5重量%にする以外は、実施例2と同条件で洗浄を行い、紡糸糸切れを評価した。結果、紡糸糸切れは1.1回/tと良好であった。また実施例1と同様の方法で腐食に関して検査を行ったところ、口金吐出孔と表面には腐食はまったく観察されなかった。
実施例8,9
実施例2と同条件で溶融紡糸した後、リン酸溶液の浸積時間を1,12時間とすること以外は、実施例2と同条件で洗浄を行い、紡糸糸切れを評価した。結果、紡糸糸切れはリン酸浸積時間が1時間のものが1.4回/tと良好であり、リン酸浸積時間が12時間のものが0.5回/tと非常に良好であった。また実施例1と同様の方法で腐食に関して検査を行ったところ、どちらの条件でも口金吐出孔と表面には腐食はまったく観察されなかった。
比較例4
実施例2と同条件で溶融紡糸した後、薬液洗浄の順序を変え、先にリン酸溶液に浸積しその後水酸化ナトリウム水溶液に浸漬すること以外は、実施例2と同条件で洗浄を行い、紡糸糸切れを評価した。結果、口金には汚れが残り紡糸糸切れは2.9回/tと糸切れが多発した。また実施例1と同様の方法で腐食に関して検査を行ったところ、口金吐出孔と表面には腐食はまったく観察されなかった。
Figure 2009155769

Claims (5)

  1. ポリエステル系溶融紡糸口金を、ソルト分解および/または加水分解で高温処理した後、薬液処理として1次洗浄にアルカリ溶液によるアルカリ洗浄、2次洗浄にリン酸溶液による酸洗浄を施し、次いで超音波洗浄をするポリエステル系溶融紡糸口金の洗浄方法。
  2. アルカリ洗浄に用いるアルカリ溶液の濃度が5〜15重量%、酸洗浄に用いるリン酸溶液の濃度が5〜15重量%であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル系溶融紡糸口金の洗浄方法。
  3. アルカリ洗浄に用いるアルカリ溶液の温度が50〜70℃、酸洗浄に用いるリン酸溶液の温度が15〜25℃であることを特徴とする請求項1または2に記載のポリエステル系溶融紡糸口金の洗浄方法。
  4. アルカリ洗浄の洗浄時間が60〜120分、酸洗浄の洗浄時間が1〜15時間とすることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエステル系溶融紡糸口金の洗浄方法。
  5. 溶融紡糸に用いるポリエステル系のポリマー成分が、ポリトリメチレンテレフタレートを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステル系溶融紡糸口金の洗浄方法。
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