JP2010274622A - フィルターの洗浄方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】フィルター洗浄能力を上げ、この洗浄期間の短縮を図ることによって、従来並の洗浄期間でフィルム破断を起こさない、充分に清浄な再生フィルターとするためのフィルター洗浄方法を提供する。
【解決手段】ポリエステルフィルムの製造工程で使用する溶融ポリエステル組成物を濾過するためのフィルターを使用後に洗浄して再生するフィルター洗浄方法であって、水酸基を有する化合物の存在下で前記フィルターに付着しているポリエステル組成物を加熱分解した後、アルカリ洗浄剤からなる洗浄液を充填した洗浄浴槽で前記フィルターを超音波洗浄を併用しながら洗浄するフィルター洗浄方法とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリエステル組成物の溶融押出において使用するポリマーフィルターについて、使用後の樹脂及び異物を除去して、再使用できるようにするフィルター洗浄方法に関する。
ポリエステル組成物、取り分けフィルム製造工程においては、ポリマーフィルターとして多くはドーナツ状の円板であるリーフフィルターが使用されている。その使用枚数は時に一度の使用で100枚を超え、単価も数万円であり、使い捨てで使用していては大きなコスト増となる。したがって、使用後のフィルターを洗浄し再使用することは一般的である。
しかしながら、樹脂への添加物の量が多い場合や、共重合成分や異種ポリマーのブレンド使用の場合は、汚れが落ち難い。また不織布フィルターに対して粒焼結のフィルターは空隙率が小さい事もあって、なおさら汚れが落ち難い。このような理由から、これらの洗浄には通常の添加剤の少ない透明フィルム生産で使用した物に比較し、数倍の繰り返し洗浄を行っている。そのため、かつては低コストのブロンズ製のフィルターを使い捨てで使用していたが、昨今入手困難となっている。
ポリマーフィルターの洗浄は、一般にフィルターユニットのハウジングから、シャフトに装着されたフィルターエレメントを抜き取ったのち、シャフトからフィルターエレメントを抜き取るための処理を行う。それは時にユニットごと実施される場合もあるが、熱分解炉や加水分解炉、トリエチレングリコールやエチレングリコールのオートクレーブにて、溶融や燃焼、解重合等によって樹脂を除去する。
その後、湯洗浄や水洗を挟んで、アルカリ洗浄や酸洗浄の薬液洗浄と、ジェット水、スチームや超音波等で、物理的な力で異物を落とす洗浄を組み合わせる。この各洗浄の詳細条件やそれらをどう組み合わせるかはノウハウであり、公知となっていない部分も多い。しかし、特許文献1あるいは特許文献2などにおいて、有機物の除去に対してはアルカリ洗浄が有効と言われ、95℃に加熱した水酸化ナトリウムの循環を3時間にわたってそれぞれ2回程度行うのが一般的である。
ポリマーフィルターの洗浄には、上記のように、多種多様な工程が繰り返し実施されており、1ロットの洗浄を完了する期間として1か月程度を要している。さらに汚れが多いケース、あるいは汚れが落ち難いケースではフィルターの中に残った異物の残渣が、製膜工程でのフィルム破断頻度を数倍に増やしてしまうので、この対策として現状は繰り返し洗浄を実施しており、このために3倍以上の期間を要する事がある。そうすると、フィルターの在庫を大量に持つ必要も発生してしまう。
特公平7−2204号公報 特公昭64−4807号公報
以上に述べた従来技術が有する諸問題に鑑み、本発明の目的は、フィルター洗浄能力を上げ、この洗浄期間の短縮を図ることによって、従来並の洗浄期間でフィルム破断を起こさない、充分に清浄な再生フィルターとするためのフィルター洗浄方法を提供することにある。
ここに、前記課題は下記の(1)〜(3)に係る発明によって解決される。
(1)ポリエステルフィルムの製造工程で使用する溶融ポリエステル組成物を濾過するためのフィルターを使用後に洗浄して再生するフィルター洗浄方法であって、水酸基を有する化合物の存在下で前記フィルターに付着しているポリエステル組成物を加熱分解した後、アルカリ洗浄剤からなる洗浄液を充填した洗浄浴槽で前記フィルターを超音波洗浄を併用しながら洗浄することを特徴とするフィルター洗浄方法。
(2)濃度が7〜17重量%の水酸化ナトリウムを主成分とし、かつその温度が60〜95℃である前記洗浄液を使用することを特徴とする(1)に記載のフィルター洗浄方法。
(3)前記洗浄液の循環流量Q[L/分]とし、また、洗浄の対象とする前記フィルターの合計濾過面積A[m]として、単位濾過面積当りの洗浄液の循環流量Q/Aを50<Q/A<800とすると共に、除去する異物の濾過精度が0.5〜10μmである循環フィルターに前記循環洗浄液を通して異物を除去し、異物を除去した前記循環洗浄液を再び洗浄浴槽に戻すことを特徴とする(1)または(2)に記載のフィルター洗浄方法。
本発明の方法によれば、フィルター内の残渣によるフィルム切断を回避するために、従来の3倍の洗浄期間を必要とする、添加物が多い、洗浄し難い粒焼結タイプのフィルターであっても、従来同等の期間で洗浄を完了する事ができ、特にアルカリ洗浄と超音波洗浄の相乗強化によりそれを実現する。
本発明のフィルター洗浄方法を実施するための装置を例示した概略装置構成図である。
以下、本発明の実施の形態を必要に応じて図面を参照しながら詳細に説明する。
先ず、本発明では、ポリエステル樹脂の溶融押し出し工程において使用した使用済のフィルターを従来通り、水酸基を有する化合物からなる溶媒の存在下で加熱して1枚づつに分解する。例えば、ポリエチレンテレフタレート樹脂では280℃程度に加熱したトリエチレングリコールで3時間以上の処理を行うのが望ましい。
その後、以下に説明する洗浄方法によって洗浄を行う。
図1は、本発明の線状方法に好適に使用できる洗浄装置の一実施形態例を説明するための概略装置構成図である。
この図1において各符号を簡単に説明すると、1は洗浄浴槽、2は超音波振動子、3は支持回転機構、4は液循環系、4aは循環フィルター、4bは液循環ポンプ、5はリーフフィルターからなるフィルターエレメント、そして、6は洗浄液をそれぞれ示す。
なお、この図1に例示した洗浄装置は、1枚のリーフフィルター(以下、単に「フィルター」という)を処理する実施形態であるが、超音波洗浄の性能が維持されるのであれば、洗浄浴槽1を大きくし、複数のフィルターを同時に洗浄しても良い。また、図1の実施形態では、1枚のフィルターを両面から洗浄処理するタイプを例示したが、片面洗浄として、途中で洗浄面を取り交換する方式でも良い。
以上に説明した洗浄装置の実施形態例において、洗浄浴槽1中に後述する洗浄液6が充填され、この洗浄液6にフィルター5が回転支持機構3上に戴置された状態で浸漬される。更に、洗浄液6中に浸漬されたフィルター5を挟んでその前後あるいは左右に超音波振動子2が設けられ、この超音波振動子2によって発生させられた超音波振動が洗浄液6中を伝播してフィルター5に作用することにより、超音波洗浄が行われる。
なお、前記洗浄装置に使用される洗浄浴槽1の材質としては、洗浄液6としてアルカリ洗浄剤を使うために耐アルカリ腐食性が高い材料で作られている必要があり、例えば、好ましい材質を挙げるならばステンレス製、特にはSUS304製が望ましい。また、図中に記載した超音波振動子2は投げ込み式超音波振動子であるが、アルカリに対する耐食性と95℃程度までの耐熱性を満足していれば市販品で構わない。
更に、フィルター5の支持回転機構3はフィルター5を安定して保持しながら回転をさせる機構である。なお、フィルター5の保持方法はセンターポスト部分で把持して回転させる方法もあるが、フィルター5外周にコロなどの回転体で支持して洗浄液6中でフィルター5を転がす方式が望ましい。このような方式が望ましい理由は、濾過の2次側となるフィルター5の内部から除去された異物を効率的に落とすためである。
次に、図1中に示した符号4は、洗浄液循環系を示し、4aは除去した異物をトラップするための循環フィルターであり、4bは循環ポンプである。ここで、先ず前者の循環フィルター4aについて説明すると、その濾過精度は0.5〜10μm、望ましくは1〜5μmであって、粒状ステンレス鋼の焼結タイプが好ましい。また、後者の循環ポンプ4bに関しては、その洗浄表面積、すなわち洗浄対象とするフィルター5に関しては概ね濾過面積の合計である全濾過面積を洗浄対象とするので、これに対して十分な循環流量を持つ循環ポンプ4bを選定する必要がある。
ここで、洗浄液6の流量をQ[L/分]、濾過面積をA[m]とすると、このような全濾過面積あたりの流量Q/Aの値として50〜800である必要があり、望ましくは100〜400である。なお、添加剤が多いフィルター5を洗浄する場合は、除去した異物をトラップする循環フィルター4aの目詰まりが著しいので、分岐弁を設けて循環フィルター4aを連続的に交互に切り替えるとか、フィルター・チェンジャーを設ける等の方策を講じても良い。
本発明で洗浄液6として使用するアルカリ洗浄剤は、pH13以上の強アルカリ性が好ましいが、特開2002−180918号公報にも記載されているように、あまり粘度が高くてはいけない。したがって、10重量%前後の濃度の水酸化ナトリウムを主体としたものを60〜95℃の加熱温度で使用するのが良い。
なお、市販されている水酸化ナトリウム主体の洗浄剤には洗浄効果をあげるため界面活性剤等の添加を行っているものがある。これらが純粋な水酸化ナトリウムより多くの場合洗浄効果が上がることが知られており、これらを使用する場合は、加熱温度として60〜85℃、望ましくは80℃前後が良い。その上限は添加剤の耐熱性より決定される。
また、その濃度に関しても適当な範囲がある。何故ならば、水酸化ナトリウムの割合を増加させてpH値を高くしようとすると、洗浄剤の粘度が高くなると言う弊害が生じるからである。この場合、洗浄液6の特性として強アルカリ性の方が一見洗浄力があるように思えるが、洗浄効果を上げるためには絶えず洗浄対象の表面が清浄な洗浄液6に置換される事が重要であり、そのためにはある程度流動性が必要とされ、その結果として粘度を抑える必要がある。
しかも、本発明は超音波洗浄と組み合わせることに特徴があるので、その超音波の減衰は望ましくなく、このような理由からやはり高い粘度は好ましくない。そこで、本発明者は、強アルカリによる洗浄力と、洗浄液6の置換の効果と、超音波の効果とからなる三つの効果を相乗的に発揮させるためには、洗浄液6中の水酸化ナトリウムの濃度は7〜17重量%で、洗浄液6の温度は60〜85℃が良く、特に10重量%前後で80℃前後が良好であることを究明した。
その際、洗浄対象に接する洗浄液はできるだけ清浄な方が望ましいのは言うまでもない。しかしながら、大量の洗浄液6を使用することは好ましくないので洗浄浴槽1へ洗浄液6を循環させるための前述の循環装置を設けて、洗浄剤の消費量を抑える事が好ましい。
本発明においては、洗浄効果を高めるために超音波洗浄を併用するが、この超音波洗浄は、フィルター5を損傷させなければできるだけ強力な方が良いのは当然である。洗浄対象との距離も超音波による洗浄効果が最大になるようにセッティングする。なお、本発明者らの実験によれば、容易に入手できる最大ワット密度が0.73W/cmの出力を有する超音波洗浄でフィルター5の損傷もなく、かつ十分な洗浄効果を得られた。
洗浄液6の加熱方法は、特に指定しないが、超音波振動子2やフィルター5の支持具などへの加熱を考慮すると、洗浄浴槽1を外壁側から加熱して洗浄液6を加熱するよりも、投げ込み式の電気ヒーターや循環途中で加熱する温水ボイラーのように直接洗浄液6を加熱する方法が良い。
フィルター5から除去した異物の脱落と沈殿を促進するためにフィルター5を回転運動させるが、その回転数は5〜100rpm、望ましくは10〜20rpmが良い。何故ならば、この回転数が速過ぎると超音波洗浄の効果が薄れる懸念があり、遅すぎると超音波振動子2のサイズによっては暴露時間の差が生じて、洗浄斑を生むことになる。なお、暴露時間は少なくても1時間以上になるようにしなければならない。
フィルター5は加温したアルカリ洗浄剤の中で、超音波洗浄を行った後、少なくてもイオン交換水での水洗を行う。上述の洗浄浴槽1中での音波洗浄にて、アルカリ洗浄水を抜き、新たにイオン交換水を張り、同様に超音波洗浄と望ましくは循環フィルター4aを介した水循環を行うことが望ましい。
以下、実施例により本発明のフィルター洗浄方法を詳述する。
TiOを含有する2軸延伸フィルムを製造する工程で使用された12インチサイズのリーフフィルターからなるエレメントを洗浄した。なお、ここで言うフィルム製造工程とは、平均粒径1.5μmなる酸化チタンを約10重量%添加したPETマスターチップと、先に該当工程で生産された屑フィルムを粉砕したのち、溶融生成した回収チップを50:50に混合して、チップ乾燥機にて連続的に170℃で約3時間乾燥した後、溶融押出しし、スリットダイより溶融樹脂をシート状に押し出し、冷却ドラムで固化して引き取り、その後、縦延伸と横延伸とを逐次実施し、2軸延伸ポリエステルフィルムを得る工程である。
粒状ステンレス鋼を焼結したタイプの濾材を採用したリーフフィルターで、内部のバックメタルとリテーナーは金網という、極めて一般的な物である。ACFTDのシングルパスのコンタミテストで捕集効率95%の濾過精度が約50μmというものである。当該工程ではこのフィルターを約100枚使用し、濾過量約300トンで交換したものである。
このフィルターをトリエチレングリコールのオートクレーブにて280℃の液温設定で6時間保持し、ポリエステルを除去する。液を交換してこの処理を2回実施する。その後、本発明の洗浄方法にて、アルカリ洗浄と水洗浄を行った。
用いた洗浄装置は、SUS304製の約60Lの洗浄浴槽に1.5kWの投げ込みヒーターと超音波振動子とフィルターを支持しながら回転させる支持コロが設けてある。超音波振動子は190mmx145mmで200W、26kHzの固定周波数タイプである。フィルターは平行になるようにその両面に配置した。フィルターからの距離はアルミ箔を振動子の正面に置き、激しく穴が開く距離を確認し、フィルター表面から約200mmの位置となった。
洗浄液は佐々木化学薬品社のエスバックH−190Nを希釈して水酸化ナトリウムの濃度が10重量%で使用した。液温度は80℃で温度コントロールした。循環流量は20L/分でQ/Aは約130だった。時間はフィルター1枚あたり2時間であり、支持コロを15rpmで回転させたので、暴露時間としてはおおよそ1.3時間程度であった。
超音波洗浄を併用したアルカリ洗浄の終了後、引き続き洗浄液を洗浄浴槽から抜き取り、洗浄液をイオン交換水に交換したのち、常温で超音波洗浄を30分間実施した。この場合、洗浄により水が濁ることはないので、水の循環は行わなかった。このフィルターをさらに硝酸5重量%で3時間の酸洗浄と水でのリンスのあと、ダストチェックと初期バブルポイントチェックを行った後、オーブンで熱風乾燥したのち通気抵抗チェックを行う。
洗浄したフィルターは洗浄浴槽内の残渣をチェックするダストチェックで比較例よりも残渣は少なかった。また、この洗浄後のフィルターを再び組立て、フィルムの製造ラインに使用したが、5日間無破断で生産が可能であった。むろん、初期バブルポイントや通気抵抗の回復には何ら問題はなかった。
[比較例]
実施例と同一のフィルム生産で使用し、ほぼ同一の濾過量で交換した同形式のフィルターを、トリエチレングリコールのオートクレーブにて280℃の液温設定で6時間保持し、ポリエステルを除去する。但し、液を交換して3回実施した。その後、エスパック10重量%で5時間煮沸して沸騰した湯洗浄を3時間実施した。さらに硝酸5重量%で3時間の酸洗浄を行い、水でのリンスの後、再度エスパックでのアルカリ洗浄を行った。さらに湯洗浄を行ったのちイオン交換水での超音波洗浄を1枚1時間ずつ実施したが、ダストチェックにて、通常の透明フィルムで使用したフィルター洗浄時の残渣レベルになかった。そのため再度、最初のエスパックでのアルカリ洗浄から洗浄を3回繰り返し、何とか通常の残渣レベルとなった。また初期バブルポイントや通気抵抗は何ら問題なかった。しかしここで洗浄したフィルターを実際の製造ラインで使用したところ、1日に数回程度でフィルムの破断が発生し、ラインを休止してフィルター装置を交換する事になってしまった。破断の原因は突き止められていないが、何らかの洗浄残渣が漏れ出してきて、原因物になっているものと考えている。
1:洗浄浴槽
2:超音波振動子
3:支持回転機構
4:液循環系
4a:循環フィルター
4b:循環ポンプ
5:リーフフィルター
6:洗浄液

Claims (3)

  1. ポリエステルフィルムの製造工程で使用する溶融ポリエステル組成物を濾過するためのフィルターを使用後に洗浄して再生するフィルター洗浄方法であって、水酸基を有する化合物の存在下で前記フィルターに付着しているポリエステル組成物を加熱分解した後、アルカリ洗浄剤からなる洗浄液を充填した洗浄浴槽で前記フィルターを超音波洗浄を併用しながら洗浄することを特徴とするフィルター洗浄方法。
  2. 濃度が7〜17重量%の水酸化ナトリウムを主成分とし、かつその温度が60〜95℃である前記洗浄液を使用することを特徴とする、請求項1に記載のフィルター洗浄方法。
  3. 前記洗浄液の循環流量Q[L/分]とし、また、洗浄の対象とする前記フィルターの合計濾過面積A[m]として、単位濾過面積当りの洗浄液の循環流量Q/Aを50<Q/A<800とすると共に、除去する異物の濾過精度が0.5〜10μmである循環フィルターに前記循環洗浄液を通して異物を除去し、異物を除去した前記循環洗浄液を再び洗浄浴槽に戻すことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のフィルター洗浄方法。
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