JP2009155188A - 軽量予混合モルタル - Google Patents
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Abstract
【課題】 開口気孔を有する細骨材を使用した予混合モルタルでは、打設の際の施工性やその後の硬化性が、保存中の吸湿状態の変化によってバラツキ、安定した品質・性状の予混合モルタルを定常的に得ることが難しい。一方、ドライミックス前の骨材段階から密封保管して吸湿防止を維持し続けるのは建築・土木工事向け充填材やグラウト材用の予混合モルタルを得る上では手間とコストがかかり過ぎて実用的ではない。この状況を鑑み、開口気孔を有する軽量骨材を細骨材に使用した場合でも、モルタル保存経過時間の差によって硬化性や硬化後の諸物性に変化が起き難い軽量の予混合モルタルを提供する。
【解決手段】 酸化カルシウム粒とセメントと開口気孔を有する軽量細骨材を含有し、酸化カルシウムの最大粒子径が該軽量細骨材の最大粒子径の25%以下である軽量予混合モルタル。
【選択図】 なし
【解決手段】 酸化カルシウム粒とセメントと開口気孔を有する軽量細骨材を含有し、酸化カルシウムの最大粒子径が該軽量細骨材の最大粒子径の25%以下である軽量予混合モルタル。
【選択図】 なし
Description
本発明は、細骨材に軽量骨材や超軽量骨材を用いて軽量化された軽量予混合モルタルに関する。
建築や土木工事で充填材、裏込材又はグラウト材などとして充填施工されるセメント系モルタルは、施工箇所の隅々まで斑無く行き渡るような流動性が必要なため、概して混練水の使用量が多いものとなっている。このため当該モルタルを打設高さが長い施工箇所に打設すると、モルタルが自重で沈下し易く、その結果、打設体下部に膨れが生じ、変形した施工物になるという問題があった。(例えば、特許文献1参照。)モルタルに用いる骨材を軽量骨材にし、モルタルの単位容積質量を小さくすれば、自重の影響を軽減でき、打設体下部の膨れを抑えられる可能性がある。一方で、軽量骨材は高気孔率にすることで軽量化が達成されているものが多いため、開口気孔を有する骨材では、気孔中に水分が吸着され易い。特に、超軽量骨材のように容重がかなり低い骨材では、気孔率がより高くなることから、開口気孔を有するものでは吸水量も多くなる。吸湿が進んだ開口気孔を有する骨材であっても、直接湿式混合に供する使用であれば特に問題はない。しかるに、吸湿が進んだ開口気孔を有する骨材を、セメント等との乾式混合物である予混合モルタルの細骨材に使用すると、注水前の段階では、時間経過と共に骨材中の水分とセメント等の水和反応性粒子との反応が徐々に増え、水和反応性粒子の表面状態が変化する。特に、予混合モルタルが分散剤類(減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤等と称されているものを含む。)を配合したものでは、水和反応性粒子表面の活性低下により該粒子への分散剤の吸着率も下がり、モルタルの充填施工性が低下することがあった。
特開平8−109053号公報
このように、開口気孔を有する細骨材を含む予混合モルタルでは、打設の際の施工性やその後の硬化性が、保存時間の経過による吸湿状態の変化、即ち吸水量によってバラツキ、安定した品質・性状の予混合モルタルを定常的に得ることが難しい。一方で、ドライミックス前の骨材段階から密封保管を行い、吸湿防止を維持し続けるのは建築・土木工事向け充填材やグラウト材用の予混合モルタルを得る上では手間とコストがかかり過ぎて甚だ実用的ではなかった。本発明は、開口気孔を有する軽量骨材を細骨材に使用した予混合モルタルであって、モルタル保存経過時間の差によって硬化性や硬化後の諸物性に変化が起き難い軽量の予混合モルタルを、多大な手間やコストをかけずに提供することを課題とする。
本発明者は、前記課題解決の為、検討を重ねた結果、開口気孔を有する軽量骨材を細骨材に使用する予混合モルタルにおいて、密封等の特別な措置を講じることなく吸湿が進んだ開口気孔を有する軽量骨材を使用しても、該骨材中の湿分を優先的に反応消費でき、且つモルタル性状に実質支障を及ぼさない物質を配合することで、保存経過時間の差によって予混合モルタル中のセメント粒子の表面活性状態が殆ど変化せず、安定な品質性状の軽量予混合モルタルを長期間保存可能になったことから本発明を完成させた。
即ち、本発明は、次の(1)〜(4)で表される軽量予混合モルタルである。(1)酸化カルシウム粒とセメントと開口気孔を有する軽量細骨材を含有し、酸化カルシウムの最大粒子径が該軽量細骨材の最大粒子径の25%以下である軽量予混合モルタル。(2)酸化カルシウム粒の粒子径が開口気孔を有する軽量細骨材の平均粒子径の25%以下である前記(1)の軽量予混合モルタル。(3)酸化カルシウム粒の含有量が0.5〜3質量%である前記(1)又は(2)の軽量予混合モルタル。(4)さらに、分散剤を含有する前記(1)〜(3)何れかの軽量予混合モルタル。
本発明によれば、特別な保管処置を講じなくても、保存期間の差による性状のバラツキも実質見られない安定した品質性状の軽量予混合モルタルが得られる。しかも、本発明の軽量予混合モルタルの注水混練物は、建築や土木工事向けの充填材、裏込材やグラウト材への用途に用いた場合でも、従来の直接湿式混合して得た軽量モルタルと比べ何等性状的に支障が無いモルタル施工物が得られる。
本発明の軽量予混合モルタルは、開口気孔を有する軽量細骨材を使用して軽量化された乾式混合物である。使用する軽量細骨材は、モルタルやコンクリートに使用できるものなら成分的には限定されず、例えば無機、有機又は両者を複合化したものの何れでも良い。また、構造的には、実質緻密質でない軽量細骨材であれば良く、好ましくは開口気孔を有する軽量細骨材とする。このような骨材として好適には微細な表内の連通孔を多数有し、内部に大規模な空隙を備えたパーライトを挙げることができる。また、例えばガラスバルーン等の中空で閉口気孔構造の軽量骨材では、当該構造で軽量化が図られており、長期間大気中に放置しても吸湿が殆ど無いため、使用は支障がない。一方、緻密質細骨材では、一般にモルタル軽量化が行い難く、また成分的にかなり小さい比重となる骨材では、他のモルタル配合成分との容重差が拡大するためドライミックスによる均質混合が困難になり、好ましくない。また、開口気孔を有する軽量細骨材は、平均粒子径が概ね1mm以下のものが好ましい。平均粒子径が1mmを超えると予混合モルタル中で軽量細骨材が材料分離を起こすことがあるので抵当ではない。予混合モルタルに使用する開口気孔を有する軽量細骨材の量は、後述するセメントの含有量100質量部に対し、3〜30質量部が好ましい。3質量部未満では、モルタル軽量化が達成し難く、また施工後の収縮が大きくなり、ひび割れ等が発生するので適当ではなく、30質量部を超えると強度が低くなるので適当ではない。
本発明の軽量予混合モルタルは、セメントを結合相形成成分として含有する。セメントは水と反応して硬化するセメントなら特に限定されず、例えば、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱等のポルトランドセメント、高炉セメントやフライアッシュセメント等の各種混合セメント、白色セメント、アルミナセメント又はエコセメント等の特殊セメントを挙げることができる。また、任意の2種以上のセメントを併用しても良い。かかるセメントは、BET比表面積が0.7m2/g以上のものが、湿分等による反応活性低下に対する抵抗性を発現できるようになることから好ましい。BET比表面積が0.7m2/g未満のものではこのような抵抗性が乏しいので適当ではない。セメントの軽量予混合モルタル中の含有量は、特に制限されないが、好ましくは60〜95質量%とする。60質量%未満では結合成分が不足し、強度が低下するで適当ではない。95質量%を超えると、注水後の施工物の乾燥収縮が大きくなり、ひび割れが起こる可能性が強まるので適当ではない。
また、本発明の軽量予混合モルタルは、最大粒子径が該軽量細骨材の最大粒子径の25%以下である酸化カルシウム粒を含有する。好ましくは、最大粒子径及び平均粒子径が該軽量細骨材の最大粒子径及び平均粒子径のそれぞれ25%以下である酸化カルシウム粒を含有する。このような粒子径の酸化カルシウム粒を使用することで、軽量予混合モルタルに吸湿が進んだ軽量細骨材を使用しても、軽量予混合モルタルの保存期間が長くても、該酸化カルシウム粒が軽量細骨材から放出された水分と優先的に反応するため、セメントの粒子表面を風化させて反応活性を低減させることは殆ど無く、軽量予混合モルタルの品質性状も経時的な変化が起き難くなる。注水後のモルタルも安定した品質性状のものを得ることができる。使用する酸化カルシウム粒の粒子径の下限値は特に制限されないが、1μm程度とするのが製造時や開封時の取扱上の点から好ましい。酸化カルシウム粒の最大粒子径が軽量細骨材の最大粒子径の25%を超えるものでは、25%以下のものを使用する場合に比べ、酸化カルシウム粒自体の反応活性が低いので吸湿力が弱く、また同じ含有質量では酸化カルシウム粒の含有個数が少ないため軽量骨材の周囲に隣接して軽量骨材中の含水と容易に反応できる機会が減るので好ましくない。
本発明の軽量予混合モルタルは、分散剤を含有するのが好適である。分散剤を含有するモルタルでは、軽量細骨材の吸湿によるセメント粒子の反応活性変化に伴いセメント粒子の分散剤吸着量がより大きく変化し、注水後のモルタル性状に顕著な影響を及ぼすことがある。本発明の軽量予混合モルタルでは、分散剤を含有する場合でもこのような変化が抑制され、分散剤本来の作用が十分発現されるため、施工に適した高い流動性のフレッシュモルタルを容易に得ることができる。含有する分散剤は、モルタルやコンクリートで使用できるものなら何れのものでも良く、減水剤、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤又は流動化剤と称するものでも良い。分散剤の含有量は特に制限されない。好ましくは、含有するセメント100質量部に対し、1質量部以下とする。1質量部を超えると注水後のモルタルで材料分離を生じることがあるので適当ではない。
また、本発明の軽量予混合モルタルは、本発明の効果を実質喪失させない範囲で、前記以外にも他の成分を含むものでも良い。このような成分として、何れもモルタルやコンクリートに使用できる、保水剤、膨張材、収縮低減剤、気泡剤、空気連行剤、消泡剤、凝結促進剤、凝結遅延剤、増粘剤、ポゾラン反応性物質、繊維、ポリマーディスパージョン、再乳化粉末樹脂、抗菌剤、顔料等を例示することができる。また、望ましくは乾式混合時の混合抵抗を抑制する上で、このような成分は粉末や粒状のものを使用するが良い。
また、本発明の軽量予混合モルタルは、前記の軽量細骨材とセメントと酸化カルシウム粒、またはこれらに加えてさらに他の混和成分を加えたものを、例えば任意の順序又は一括で、例えばリボンミキサー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー、傾胴式ミキサー等の乾式混合機に投入し、乾式混合すれば得られる。混合操作条件は制限されない。また、ここに表した以外の方法で製造しても良い。得られた軽量予混合モルタルは、水を加えて混練すれば、例えば建築や土木工事向けの充填材、裏込材又はグラウト材として打設使用可能なフレッシュモルタルを容易に得ることができる。また、本発明の軽量予混合モルタルは、注水時にモルタルやコンクリートに使用できるような混和剤・材を適宜加え、フレッシュモルタルを作製することもできる。
以下、実施例により本発明を具体的に詳しく説明するが、本発明は以下に表す実施例に限定されるものではない。
次に表す吸湿状態の超軽量骨材(A1〜A4)、セメント(B1〜B3)、酸化カルシウム粒(C1〜C3)、分散剤(D)、増粘剤(E)から選定される材料を表1に表した配合量となるよう内容積100リットルのレーディゲミキサ(レーディゲ社製)に1バッチ当たり約33kgの合計量にして一括投入し、温度約20℃、湿度約60%の屋内環境下で1分間乾式混合し、混合物を得た。尚、各軽量骨材、セメント及び酸化カルシウム粒は、市販入手品に分級又は粉砕分級操作を施して表記の粒径やBET比表面積に調整したものである。
A1;真珠岩系多孔質人工軽量骨材(容重0.2kg/L、最大粒径0.6mm、平均粒径0.3mm、含水率0.7%)
A2;真珠岩系多孔質人工軽量骨材(容重0.2kg/L、最大粒径1mm、平均粒径0.6mm、含水率0.6%)
A3;真珠岩系発泡状人工軽量骨材(容重0.2kg/L、最大粒径3mm、平均粒径1.2mm、含水率0.5%)
A4;真珠岩系発泡状中空質人工軽量骨材、容重0.2kg/L、最大粒径1mm、平均粒径0.6mm、含水率<0.01%)
B1;普通ポルトランドセメント(BET比表面積0.88m2/g)
B2;普通ポルトランドセメント(BET比表面積0.97m2/g)
B3;普通ポルトランドセメント(BET比表面積1.08m2/g)
C1;酸化カルシウム(最大粒径75μm、平均粒径20μm)
C2;酸化カルシウム(最大粒径200μm、平均粒径75μm)
C3;酸化カルシウム(最大粒径1mm、平均粒径300μm)
D;ポリカルボン酸系高性能減水剤(商品名「太平洋コアフロー」、太平洋マテリアル社製)
E;セルロース系増粘剤(商品名「メトローズ」、信越化学工業社製)
A2;真珠岩系多孔質人工軽量骨材(容重0.2kg/L、最大粒径1mm、平均粒径0.6mm、含水率0.6%)
A3;真珠岩系発泡状人工軽量骨材(容重0.2kg/L、最大粒径3mm、平均粒径1.2mm、含水率0.5%)
A4;真珠岩系発泡状中空質人工軽量骨材、容重0.2kg/L、最大粒径1mm、平均粒径0.6mm、含水率<0.01%)
B1;普通ポルトランドセメント(BET比表面積0.88m2/g)
B2;普通ポルトランドセメント(BET比表面積0.97m2/g)
B3;普通ポルトランドセメント(BET比表面積1.08m2/g)
C1;酸化カルシウム(最大粒径75μm、平均粒径20μm)
C2;酸化カルシウム(最大粒径200μm、平均粒径75μm)
C3;酸化カルシウム(最大粒径1mm、平均粒径300μm)
D;ポリカルボン酸系高性能減水剤(商品名「太平洋コアフロー」、太平洋マテリアル社製)
E;セルロース系増粘剤(商品名「メトローズ」、信越化学工業社製)
混合後、直ちにミキサ内の混合物を上表面付近から3kg採取し、内寸が約40×60×5cmの紙製袋に梱包し、温度約20℃、湿度約60%に保った屋内に該梱包物を放置した。梱包時から1時間経過後と6ヶ月放置した梱包物を開封し、各開封物3kgに対し、水1.8kgを加えハンドミキサーで約1分間混練した。混練後のフレッシュモルタルを、土木学会基準JSCE−F541「充填モルタルの流動性試験方法」に準拠した方法で、ロート流下時間を測定し、流動性の変化を把握した。その結果を表2に表す。また、該フレッシュモルタルを用い、JIS A 1123の試験方法に準じて、ブリーディングの発生有無を目視で観察した。ブリーディング水の発生が全く見られなかったものをブリーディングの発生「無」と判断し、それ以外の状況になったものは全てブリーディングの発生「有」と判断した。この結果も表2に表す。
表2の結果より、本発明品1〜8は、何れも1時間経過梱包物と6ヶ月経過梱包物のロート流下時間は大差なく、流動性に変化が殆ど生じていないことがわかる。これに対し、本発明外の参考品では、何れも1時間経過梱包物と6ヶ月経過梱包物ものでのロート流下時間の差が顕著で、骨材に予混合モルタルの経過時間による吸水分の影響で性状変化が大きくなることがわかる。
Claims (4)
- 酸化カルシウム粒とセメントと開口気孔を有する軽量細骨材を含有し、酸化カルシウムの最大粒子径が該軽量細骨材の最大粒子径の25%以下である軽量予混合モルタル。
- 酸化カルシウム粒の粒子径が開口気孔を有する軽量細骨材の平均粒子径の25%以下である請求項1の軽量予混合モルタル。
- 酸化カルシウム粒の含有量が0.5〜3質量%である請求項1又は2記載の軽量予混合モルタル。
- さらに、分散剤を含有する請求項1〜3何れか記載の軽量予混合モルタル。
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