JP2009155160A - ボーキサイト溶解残渣の中和方法及び水酸化アルミニウム製造方法 - Google Patents

ボーキサイト溶解残渣の中和方法及び水酸化アルミニウム製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ボーキサイト溶解残渣スラリーが中和処理後においても高濃度の固形分を維持し、短い中和処理時間で早期にpHを安定させる中和方法を提供する。
【解決手段】バイヤー法における水酸化アルミニウム製造工程で生成する脱珪生成物を含むボーキサイト溶解残渣の中和方法において、ボーキサイト溶解残渣またはボーキサイト溶解残渣スラリーと、前記ボーキサイト溶解残渣または前記ボーキサイト溶解残渣スラリーに含まれる全ナトリウム量に対し0.6〜1.2当量の硫酸とを、混合後の固形分濃度が400〜700g/Lとなるように混合して、混合物をゲル化させてから、ボーキサイト溶解残渣中和スラリーを得るボーキサイト溶解残渣の中和方法を提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、バイヤー法における水酸化アルミニウム製造工程で生成する脱珪生成物を含むボーキサイト溶解残渣の中和方法に関し、特に中和後に安定なpHを維持するボーキサイト溶解残渣の中和方法およびその方法を用いる水酸化アルミニウムの製造方法に関する。
ボーキサイトを原料にして水酸化アルミニウムを製造するバイヤー法では、製品としてアルミナ換算1t当たり、約860kgのボーキサイト溶解残渣が発生する。このように多量にボーキサイト溶解残渣が発生するため、効率的に水酸化アルミニウムを製造するためには、ボーキサイト溶解残渣を迅速に処理する必要がある。
バイヤー法では、通常、ボーキサイト鉱中の可溶アルミナ成分を高温で苛性ソーダやアルミン酸ソーダ溶液のアルカリ溶液で溶解・抽出し、抽出処理後のスラリーを固液分離し、ボーキサイト溶解残渣とアルミン酸ソーダ溶液とに分離する。
分離されたボーキサイト溶解残渣は、強アルカリ性を呈しているため、最終的な処分方法(海洋投棄、埋立など)に適合するようにpH調整等の処理をしている。処理されたボーキサイト溶解残渣は、通常、スラリー状態で系外に排出される。
アルミン酸ソーダ溶液から分離されたボーキサイト溶解残渣は、洗浄をしてもpHは12〜13程度である。一般には、さらに、硫酸、塩酸等の無機酸をボーキサイト溶解残渣スラリーに添加して中和処理を行っている。
ただし、ボーキサイト溶解残渣スラリーは、中和後、時間経過にともないスラリーpHが上昇する性質がある。これは、ボーキサイト溶解残渣中に含まれるソーダライトの中和分解速度が遅いこと、あるいは、ソーダライト結晶の細孔に取込まれたアルミン酸ナトリウム等のアルカリ成分の溶出によるものである。
例えば、ボーキサイト溶解残渣スラリーのスラリー液のpHを7付近に中和しても、その後、ボーキサイト溶解残渣中に含まれる未反応のソーダライトから徐々にNaO成分の遊離及び溶出が起こり、ボーキサイト溶解残渣スラリーpHが上昇する。
そこで、ボーキサイト溶解残渣スラリーの酸による中和処理では、所望のpHより低めのpHを目標にして中和処理が行われている。
しかしながら、pHが4.5付近になると、中和時ボーキサイト溶解残渣スラリーは増粘しゲル化する性質がある。そのため、あまり低いpHを目標とすることはできない。
さらに、ボーキサイト溶解残渣スラリー中にソーダライトとして含まれるNaO含有量は、原料ボーキサイトや操業条件によって大きく変動し、例えば、原料ボーキサイト中に含まれる反応性シリカ含有量によっても含有する前記ソーダライト量は大きく変化することがある。すなわち、単にpH調整をするだけでは、ボーキサイト溶解残渣スラリーに含まれるソーダライトによって、必ずしも所望のpH範囲内に制御されていない。
この欠点を解消するために、中和処理を少なくても3段階に分けて行うとともに、第一段階の中和の目標値を7〜10とすることを特徴とするボーキサイト溶解残渣中和方法が下記の特許文献1に開示されている。この中和方法によれば、従来法に比較し、ボーキサイト溶解残渣スラリーの固化が避けられ、中和設備の材質を考慮する必要が無くなり且つ、中和に要する全硫酸量が1段、2段中和に比較して、大幅に減少するとの効果がうたわれている。しかしながら、この方法では、中和を多段階で行うため、長時間を要する。
この問題の解決の手段の一つとして、ボーキサイト溶解残渣スラリーの中和を3N以下の希薄酸を用い、pHを低下させないようにして増粘・ゲル化を避けて、1段階で中和する方法が下記の特許文献2に開示されている。
この方法では酸を添加する操作時間は短くなる。しかし、ボーキサイト溶解残渣に含まれるソーダライトの中和・分解は、希薄酸ではソーダライトに含まれるNaO分の分解速度が遅くなる。このため、pHが安定するまでには、やはり長時間を要する。
また、この方法では、希薄酸を用いるために処理液量が増加し、中和反応装置が膨大な大きさになり、設備費が多大になってしまう。さらに、処理後のスラリーの輸送等の取り扱いを考慮するならば処理液の濃縮が必要となる。
特公昭59−15719号公報 特許第3663647号公報
かかる事情下に鑑み、ボーキサイト溶解残渣スラリーが中和処理後においても高濃度の固形分を維持し、短い中和処理時間で早期にpHを安定させる中和処理を行うことを目的に検討した。その結果、高濃度のボーキサイト溶解残渣スラリーに、ゲル化するようにほぼ当量の硫酸を混合し、再度スラリー化したボーキサイト溶解残渣中和スラリーを得ることにより上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
上記の目的を達成するために、本発明は以下の構成を採用した。
(1) バイヤー法における水酸化アルミニウム製造工程で生成する脱珪生成物を含むボーキサイト溶解残渣の中和方法において、ボーキサイト溶解残渣またはボーキサイト溶解残渣スラリーと、前記ボーキサイト溶解残渣または前記ボーキサイト溶解残渣スラリーに含まれる全ナトリウム量に対し0.6〜1.2当量の硫酸とを、混合後の固形分濃度が400〜700g/Lとなるように混合して、混合物をゲル化させてから、ボーキサイト溶解残渣中和スラリーを得るボーキサイト溶解残渣の中和方法。
(2) 前記ボーキサイト溶解残渣スラリーが、バイヤー法における水酸化アルミニウム製造工程で生成する脱珪生成物を含むボーキサイト溶解残渣を洗浄するか、または希釈して得たスラリーである(1)に記載のボーキサイト溶解残渣の中和方法。
(3) 前記硫酸が、濃硫酸または発煙硫酸である(1)または(2)に記載のボーキサイト溶解残渣の中和方法。
(4) 混合が5分間以内に行われる(1)〜(3)のいずれか1項に記載のボーキサイト溶解残渣の中和方法。
(5) さらに、ゲル化された前記混合物を攪拌する工程を含む(1)〜(4)のいずれか1項に記載のボーキサイト溶解残渣の中和方法。
(6) バイヤー法による水酸化アルミニウムの製造方法であって、工程内で生成する脱珪生成物を含むボーキサイト溶解残渣を、(1)〜(5)のいずれか1項に記載の中和方法で中和する工程を有する水酸化アルミニウムの製造方法。
(7) 中和されたボーキサイト溶解残渣を、中和後1〜8時間で系外に排出する(6)に記載の水酸化アルミニウムの製造方法。
本発明によれば、脱珪生成物を含有するボーキサイト溶解残渣の中和処理において、中和処理液量の増加が少なく、かつ、中和後のスラリーのpHが早く安定するため、所望のpHに制御できたかどうか早期に確認できる。そのため、水酸化アルミニウム製造工程中にボーキサイト溶解残渣中和スラリーがほとんど滞留すること無く、少ない輸送コストおよび処理量でボーキサイト溶解残渣を処分できる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
本発明では、バイヤー法における水酸化アルミニウム製造工程で生成する脱珪生成物を含むボーキサイト溶解残渣またはボーキサイト溶解残渣スラリーと硫酸とを特定の固形分濃度となるように混合し、この混合物をゲル化させる。このゲル状の混合物は、例えば、放置しておくと、再度スラリー化し、pH変化の少ないボーキサイト溶解残渣中和スラリーが得られる。本発明では、このような工程によってボーキサイト溶解残渣またはボーキサイト溶解残渣スラリーの中和を行う。
なお、以下の説明において、硫酸によって中和された後のゲル状の混合物を単に混合物と呼び、ボーキサイト溶解残渣中和スラリーを単に中和スラリーと呼ぶ場合がある。
(ボーキサイト溶解残渣、ボーキサイト溶解残渣スラリー)
バイヤー法による水酸化アルミニウム製造過程で、アルミン酸ソーダ溶液から沈降分離や濾過等の固液分離手段で分離されたボーキサイト溶解残渣は、通常、分離直後はケーキ状または固形分濃度が高いスラリー状であるが、その後の取り扱いの容易さ等を考慮して、必要であれば水等で希釈してスラリー状としてもよい。本明細書では、固液分離後の溶解残渣をボーキサイト溶解残渣と呼び、ボーキサイト溶解残渣を希釈または後述する洗浄を行ってスラリーとなっているものを単にボーキサイト溶解残渣スラリーと呼ぶ。いずれも本発明の中和方法において中和処理することが可能なものである。なお、ケーキとスラリーの相違は、単なる固形分濃度の違いであって、必要であれば、後述する硫酸と混合したときに、固形分濃度が400〜700g/L、好ましくは450〜650g/Lとなるように、固形分濃度を調整する。
混合後の固形分濃度が400g/L未満では、中和後のpHが安定しにくい。また、処理液量が増えてしまう。
一方、固形分濃度が高いと、中和スラリーが高粘度となり取り扱いしにくくなる。容易に取り扱える範囲は混合後の固形分濃度が700g/L以下である。
ボーキサイト溶解残渣またはボーキサイト溶解残渣スラリーの固形分濃度の調整は、ボーキサイト溶解残渣またはスラリーを濃縮(例えば、沈降分離など)または希釈(例えば、水で希釈)すればよい。
前記濃縮や希釈をする工程が、ボーキサイト溶解残渣を洗浄し、付着したアルミン酸ソーダを回収する工程であってもよい。例えば、多段の洗浄シックナーにおいて向流洗浄方式でデカンテーションすることにより、溶解残渣に付着した有効なアルミン酸ソーダを回収することができる。
ボーキサイト溶解残渣を洗浄する場合、洗浄後の溶解残渣は希薄アルミン酸ソーダ溶液を含むスラリーとなる。この時のスラリーの固体濃度も、前記範囲内となるように調整をする。洗浄したボーキサイト溶解残渣スラリーを用いることにより、次工程で使用する硫酸量を節約できるのでこのましい。
(硫酸との混合)
前工程で得たボーキサイト溶解残渣またはボーキサイト溶解残渣スラリーに含まれる全Naに対し0.6〜1.2当量、好ましくは0.7〜1当量の硫酸を前記残渣またはスラリーに混合することにより中和する。
硫酸量が0.6当量未満では中和後の混合物のpHが不安定となりやすい。また、混合物がゲル化しないことがある。硫酸量が1.2当量より多いと、混合物がゲル化したままとなり、再度スラリー化し難いことがある。硫酸の濃度は、中和スラリーが前述の固形分濃度範囲となるように調整すればよい。
ボーキサイト溶解残渣スラリーについては、固形分濃度が低い方が粘度も低く取り扱いがしやすい。そのため、混合する硫酸の濃度は、ボーキサイト溶解残渣スラリーが希釈されないように、出来るだけ高い方が好ましい。すなわち、ボーキサイト溶解残渣スラリーに添加する硫酸は、好ましくは濃硫酸、さらに好ましくは発煙硫酸であり、特に好ましくは40N以上の発煙硫酸である。なお、濃硫酸とは、36N以上の硫酸を指す。
また、ボーキサイト溶解残渣については、中和後の中和スラリーの固形分濃度が前記範囲となるように、混合する硫酸の濃度を調整する。
ボーキサイト溶解残渣またはボーキサイト溶解残渣スラリーに硫酸を混合する際、pHが低下し、混合後のスラリーがゲル化するようにある程度速い速度で添加する。必要な添加速度は、容器や攪拌方法によって異なるが、混合後のスラリー全体がゲル化することを目安にすればよい。通常、5分以内に添加を完了できる速度である。
一般には、ボーキサイト溶解残渣またはボーキサイト溶解残渣スラリーをゲル化させることは、配管の目詰まりや、攪拌機へ高負荷がかかりやすいため、避けるべきことである。しかし、前記条件下で中和させて得られたゲル状の混合物は、そのまま放置しておけば再度スラリー化し、このスラリーのpHは短時間で安定する。このように、pHの安定したボーキサイト溶解残渣中和スラリーが得られる。
(ゲル状の混合物の攪拌)
生成した前記ゲル状の混合物は、攪拌することが時間短縮のために好ましい。この場合、高粘度に対応した攪拌装置が必要となるが、硫酸を均一に混合しやすく、再スラリー化やpH安定化の時間を短縮できるので好ましい。
(pH安定性)
本発明では、通常、中和1時間後、3時間後、8時間後の混合物または中和スラリーのpHと、中和96時間後の中和スラリーのpHとの差が、それぞれ1.2、1.0、0.5以下である。特に、前述したようにゲル状の混合物を攪拌すると、同pHの差は、それぞれ1.0、0.5、0.2以下となるので好ましい。なお、中和後の時間は、硫酸との混合が完了してからの時間である。
すなわち、本発明のボーキサイト溶解残渣の中和方法を有するバイヤー法による水酸化アルミニウム製造方法では、中和後1〜8時間という極めて短時間で、ゲル状の混合物がスラリー化するとともにpHが安定するため、前述したpHの差の範囲内のpH精度で、ボーキサイト溶解残渣中和スラリーを系外に排出可能となる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
尚、以下の実施例、比較例においての測定方法を述べる。
1)pH測定:ガラス電極式pHメーターを用いた。
2)ボーキサイト溶解残渣スラリーの全ソーダ含有量:ボーキサイト溶解残渣スラリーを蒸発皿に採取し110℃で3時間乾燥して乾固させ、得られた乾固試料を解砕した後、蛍光X線分析法にてボーキサイト溶解残渣中スラリーの全ソーダ(T−NaO)量を求めた。
3)固形分濃度:スラリー(またはゲル状の混合物)を濾紙上で吸引濾過し、水洗し、得られた固形分の乾燥質量よりスラリー中の固形分濃度を求めた。
(実施例1)
バイヤー法による水酸化アルミニウム製造過程でアルミン酸ソーダ溶液から分離されたスラリー状の脱珪生成物を含むボーキサイト溶解残渣を水で希釈し、固形分濃度が500g/Lのボーキサイト溶解残渣スラリーとした。このスラリーは、SiO:15質量%、Al:23質量%、Fe:38質量%、TiO:7質量%、NaO:9質量%(いずれの分析値もスラリーの乾燥質量を100質量%とした)の組成を有していた。また、このスラリーのpHは12.3であった。
このボーキサイト溶解残渣スラリー1.5kgを2.5リットルのビーカーに入れ、投げ込み式の攪拌機で攪拌しながらボーキサイト溶解残渣スラリーに含まれる全ソーダ含有量に対する1.0当量の49N発煙硫酸を約1分かけて添加し中和した。硫酸添加後のスラリー中の固形分濃度は481g/Lであった。
このとき、中和後の混合物はゲル状となったが、さらに攪拌を続けたところ、中和25分後には再びスラリー状となって中和スラリーが得られた。
また、攪拌しながら経時でスラリーのpHを測定した。中和後1、3、8、96時間後のpHは、それぞれ6.95,7.33,7.55,7.65であった。pHの変化を図1、表1及び表2に示した。8時間後から96時間後までの間にpHは、0.1だけ増加していた。
(実施例2)
硫酸量を0.8当量とした以外は実施例1と同様に処理および測定を行なった。硫酸を添加するとスラリーはゲル状の混合物となったが、さらに攪拌を続けたところ、中和20分後には再びスラリー状となって中和スラリーが得られた。硫酸添加後のスラリー中の固形分濃度は485g/Lであった。
中和後1、3、8、96時間後のpHは、それぞれ7.16、7.97、8.19、8.07であった。pHの変化を図1、表1及び表2に示した。8時間後から96時間後までの間にpHは、0.12だけ減少していた。
(実施例3)
ボーキサイト溶解残渣を水で希釈せず、また、硫酸量を0.7当量とした以外は実施例1と同様に処理および測定を行なった。硫酸を添加すると、スラリーはゲル状の混合物となったが、さらに攪拌を続けたところ、中和30分後には再びスラリー状となって中和スラリーが得られた。硫酸添加後のスラリー中の固形分濃度は645g/Lであった。
中和後1、3、8、96時間後のpHは、それぞれ8.71、8.76、8.95、8.88であった。pHの変化を図1、表1及び表2に示した。8時間後から96時間後までの間にpHは、0.07だけ減少していた。
(比較例1)
硫酸量を0.5当量とした以外は実施例1と同様に処理および測定を行なった。スラリーは、硫酸添加後もスラリー状態のままであった。硫酸添加後のスラリー中の固形分濃度は490g/Lであった。
中和後1、3、8、96時間後のpHは、それぞれ7.78、8.46、9.34、10.01であった。pHの変化を図1、表1及び表2に示した。8時間後から96時間後までの間にpHは、0.67だけ増加していた。
(比較例2)
用いた硫酸を7Nの希硫酸とした以外は、実施例1と同様に処理および測定を行なった。スラリーは、硫酸添加後もスラリー状態のままであった。硫酸添加後のスラリー中の固形分濃度は391g/Lとなった。中和後1、3、8、96時間後のpHは、それぞれ6.18、6.52、7.66、8.11であった。pHの変化を図1、表1及び表2に示した。8時間後から96時間後までの間にpHは、0.45だけ増加していた。
(比較例3)
用いた硫酸を7Nの希硫酸とし、硫酸量を0.5当量とした以外は実施例1と同様に処理および測定を行なった。スラリーは、硫酸添加後もスラリー状態のままであった。硫酸添加後のスラリー中の固形分濃度は432g/Lとなった。中和後1、3、8、96時間後のpHは、それぞれ7.46、8.78、9.47、10.39であった。pHの変化を図1、表1及び表2に示した。8時間後から96時間後までの間にpHは、0.92だけ増加していた。
なお、表1は、実施例1〜3及び比較例1〜3のボーキサイト溶解残渣中和スラリーのpHと、中和処理後の経過時間との一覧表である。また、表2は、96時間後のpHと0〜8時間のpHとの相対値(差分)と、中和処理後の経過時間との一覧を示すものであって、図1に対応する一覧表である。
Figure 2009155160
Figure 2009155160
以上のように、実施例1〜3では、中和後にゲル状の混合物が生成したものの、20〜30分間放置することによって中和スラリーに変化した。また、中和スラリーのpHは、中和から8時間以上経過することによってほぼ安定し、8時間経過後から96時間経過後までのpHの変化幅の絶対値は、0.2以下になった。
一方、比較例1〜3では、中和後もゲル化せずにスラリーのままであった。これは、硫酸の濃度または当量数が不足したためである。また、中和スラリーのpHは、中和から8時間以上経過しても不安定であった。すなわち、8時間経過後から96時間経過後までのpHの変化幅の絶対値が0.45〜0.92と大きかった。
図1は、実施例1〜3及び比較例1〜3のボーキサイト溶解残渣中和スラリーのpH(96時間経過後のpHとの差)と、中和処理後の経過時間との関係を示すグラフである。

Claims (7)

  1. バイヤー法における水酸化アルミニウム製造工程で生成する脱珪生成物を含むボーキサイト溶解残渣の中和方法において、
    ボーキサイト溶解残渣またはボーキサイト溶解残渣スラリーと、前記ボーキサイト溶解残渣または前記ボーキサイト溶解残渣スラリーに含まれる全ナトリウム量に対し0.6〜1.2当量の硫酸とを、混合後の固形分濃度が400〜700g/Lとなるように混合して、混合物をゲル化させてからボーキサイト溶解残渣中和スラリーを得るボーキサイト溶解残渣の中和方法。
  2. 前記ボーキサイト溶解残渣スラリーが、バイヤー法における水酸化アルミニウム製造工程で生成する脱珪生成物を含むボーキサイト溶解残渣を洗浄するか、または希釈して得たスラリーである請求項1に記載のボーキサイト溶解残渣の中和方法。
  3. 前記硫酸が、濃硫酸または発煙硫酸である請求項1または2に記載のボーキサイト溶解残渣の中和方法。
  4. 混合が5分間以内に行われる請求項1〜3のいずれか1項に記載のボーキサイト溶解残渣の中和方法。
  5. さらに、ゲル化された前記混合物を攪拌する工程を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のボーキサイト溶解残渣の中和方法。
  6. バイヤー法による水酸化アルミニウムの製造方法であって、工程内で生成する脱珪生成物を含むボーキサイト溶解残渣を、請求項1〜5のいずれか1項に記載の中和方法で中和する工程を有する水酸化アルミニウムの製造方法。
  7. 中和されたボーキサイト溶解残渣を、中和後1〜8時間で系外に排出する請求項6に記載の水酸化アルミニウムの製造方法。
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