JP2009154256A - 車輪付脚式移動装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】車輪走行時に路面の凹凸があっても胴体部に衝撃が伝わらないようにするとともに脚制御時にも容易に安定化制御をすることができ,加減速時や旋回時にも横方向の力を受けないようにすることができ,その結果,人や荷物の搬送用途にも使用できるようにする。
【解決手段】車輪走行時に脚が仮想的なバネおよびダンパとなるように制御する。
【選択図】図1

Description

本発明は,脚式歩行と車輪走行を切り替えて動作する車輪付脚式移動装置に関する。
脚式歩行と車輪走行を切り替えて動作する車輪付脚式移動装置は従来あった。従来の車輪付脚式移動装置は,凹凸のある路面や階段等の段差に対しては脚式歩行し,平坦な路面では車輪走行するというものであり,車輪走行時には脚は基本的に動作させず,脚先端の位置を固定としている(例えば,特許文献1参照)。また,通常の乗用車などでは,乗り心地をよくするために車体と車輪との間にバネやダンパを備えている。それと同様に車輪付脚式移動装置でも車輪と足部フレームとの間に緩衝用のゴムやバネ等の弾性部材を設けるというアイデアを提示しているものもある(例えば,特許文献2参照)。本従来例では,そのような弾性部材により路面の凹凸による衝撃を吸収しており,車輪部以外の可動部は,ロボットを1つの剛体と見なして制御を簡略化するために全て固定としている。すなわち車輪走行時には脚は伸縮しないようにしている。
図15は,従来の車輪付脚式移動装置で,脚式歩行時の制御ブロック図である。車輪付脚式移動装置であっても,車輪を停止させておけば従来の二足歩行ロボットなどの脚式移動装置と同様の制御により歩行動作をすることができる。以下では,図15を用いて従来の二足歩行ロボットの制御装置の全体構成を説明する。図15において,100は歩容生成装置であり,上位コンピュータまたは操作者から歩行指令を受け取り,歩行指令の要求を満たすように歩容を生成する。本従来例では,歩行指令とは要求される歩幅と旋回角の組であり,歩容とは上体位置姿勢軌道,足平位置姿勢軌道,ZMP軌道の組である。101は安定化制御器であり,予測しなかった外乱により歩行ロボットが転倒するのを防ぐため,各種センサ情報を用いて歩容生成装置100が生成した歩容を修正する。102は逆キネマティクス演算器であり,安定化制御器101が生成した修正歩容を,逆キネマティクス演算により各関節の関節モータ位置指令に変換する。103は関節モータ位置制御器であり,エンコーダ105からの関節モータ位置情報を用いて,逆キネマティクス演算器102が生成した関節モータ位置指令どおりの位置に動作させるように関節モータのトルクを制御する。ロボットの関節の角度と関節モータの回転量は一対一に対応する。107は関節モータ電流制御器であり,関節モータ位置制御器103が生成した関節モータトルク指令通りのトルクが生じるように関節モータに流す電流を制御する。104は関節モータおよび脚構造であり,関節モータ電流制御器107によって電流を操作される関節モータと脚構造である。脚構造は地面等と接触することにより二足歩行ロボットを移動させる力を発生する。105はエンコーダであり,関節モータ位置を検出し,関節モータ位置制御器103へフィードバックする。関節モータおよび脚構造104が動作した結果,各種状態量が変化する。106は各種センサであり,各種状態量を検出して安定化制御器101にフィードバックする。具体的には,各種状態量とは二足歩行ロボットの上体の傾き,向き,またはそれらの速度,足裏に受ける圧力であり,各種センサ106は,傾斜センサ,ジャイロセンサ,加速度センサ,地磁気センサ,圧力センサ,6軸力センサ,カメラなどが用いられる例が多い。脚式歩行時の歩容生成装置100や安定化制御器101などの演算の詳細は従来の脚式移動装置と同様であり,本発明の本質とは関係ないため省略する。従来の車輪付脚式移動装置では,車輪走行時には歩容生成装置で生成される歩容は,通常,ある足先位置で停止状態とした歩容である。特許文献2では,2脚の受動車輪付脚式移動装置で,足先をハの字として左右に開いたり閉じたりするいわゆるスウィズル動作により走行するというアイデアも示されている。この場合,歩容はそのスウィズル動作になる。このように車輪走行時に脚を動作させる場合でも,鉛直方向の足先位置は固定としていた。
図16は,従来の車輪付脚式移動装置を右から見た側面図と正面図である。図16において,1は胴体部であり,制御装置やバッテリなどをここに固定する。人や荷物を搬送する場合はここに載せる。本従来例では,脚は胴体の左右に1本ずつの2脚の構成となっている。2,5,9,12はロール軸,3,10はピッチ軸,6,13はヨー軸であり,ここにはモータなどのアクチュエータを備え,それぞれの軸まわりに脚を回転させることができる。4はボールねじであり,脚を伸縮できる。7,8,14,15は車輪であり,2本の脚にそれぞれ2つずつ車輪が配置されている。このような構成にすることによって,路面と各脚がそれぞれ2点で接地するため,脚を前後に開いた両脚支持のときには,支持多角形が四角形となり制御なしでも直立を維持できる。また,両脚の計4つの車輪はそれぞれ独立に動作できるようになっているため,片脚支持のときには,その場での旋回も可能である。また,特許文献2の構成では,さらに受動的に回転する車輪を追加し,各脚がそれぞれ3点以上で接地するようにし,片脚のみで支持多角形を構成できるようにしている。このような構成とすることにより,脚式歩行時に片脚支持の状態でもゼロモーメントポイントの位置を変化させることができ,安定化制御が容易になる。
このように,従来の車輪付脚式移動装置は,車輪走行時には脚は動作させず,脚先端の位置を固定としているのである。
特許第3918049号公報(第8頁,図1) 特開2006−55972号公報(第9頁,36乃至41行,および第12頁,図1)
従来の車輪付脚式移動装置は,凹凸のある路面の車輪走行は想定されておらず,脚先端の位置が固定となっていて路面の凹凸による衝撃を脚で吸収することができないので,胴体部に衝撃が伝わり,人が乗る場合には乗り心地が悪く,荷物を搬送する場合には衝撃により破損などが生じやすいという問題があった。また,脚先端に機械的なバネやダンパを備えたような場合は,脚式歩行時にゼロモーメントポイントの応答が遅くなるので,安定化制御が困難になるというような問題もあった。また,従来の車輪付脚式移動装置は,加減速時や旋回時にも脚先端の位置が固定となっていて胴体が路面と水平になっているので,慣性力により横方向の力を受け,人が載る場合には乗り心地が悪く,荷物を搬送する場合には摩擦以上の慣性力を受けると滑るため,荷物が滑り落ちたり衝突したりして破損が生じやすいという問題があった。
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり,車輪走行時に路面の凹凸があっても胴体部に衝撃が伝わらないようにするとともに脚制御時にも容易に安定化制御をすることができ,加減速時や旋回時にも横方向の力を受けないようにすることができ,その結果,人や荷物の搬送用途にも使用できる車輪付脚式移動装置を提供することを目的とする。
上記問題を解決するため,本発明は,次のように構成したのである。
請求項1に記載の発明は,胴体部と,前記胴体部に配置され先端に車輪を備えた車輪付脚と,前記車輪付脚の脚部の動作を制御する脚制御装置と,前記車輪の動作を制御する車輪制御装置とを備え,脚式歩行と車輪走行を切り替えて動作する車輪付脚式移動装置において,前記脚制御装置は,前記車輪走行時に前記車輪付脚が仮想的なバネおよびダンパとなるように制御するとするものである。
また,請求項2に記載の発明は,前記脚制御装置は,前記車輪走行時に前記車輪付脚の足先位置が前後方向に整列したバイク型動作をするとするものである。
また,請求項3に記載の発明は,前記脚制御装置は,前記車輪走行時に前記車輪付脚の足先位置が横方向に整列した倒立振子型動作をするとするものである。
また,請求項4に記載の発明は,前記脚制御装置は,ロール角を検出する傾斜センサを備え,前記バイク型動作をする際に,旋回による遠心加速度ベクトルと重力ベクトルとの和で表される見かけの重力方向に対して前記胴体部のロール角が水平となる状態を偏差零として前記車輪付脚のうち少なくとも1つの足先ヨー角を操作してフィードバック安定化制御するとするものである。
また,請求項5に記載の発明は,前記脚制御装置は,ピッチ角を検出する傾斜センサを備え,前記倒立振子型動作をする際に,前後方向加速度ベクトルと重力ベクトルとの和で表される見かけの重力方向に対して前記胴体部のピッチ角が水平となる状態を偏差零として前記車輪のうち少なくとも1つのトルクを操作してフィードバック安定化制御するとするものである。
また,請求項6に記載の発明は,前記脚制御装置は,前記車輪走行時に前後方向加速度ベクトルと重力ベクトルとの和で表される見かけの重力方向に対して前記胴体部のピッチ角が水平となるように前記車輪付脚の足先位置を制御するとするものである。
また,請求項7に記載の発明は,前記脚制御装置は,前記車輪走行時に旋回による遠心加速度ベクトルと重力ベクトルとの和で表される見かけの重力方向に対して前記胴体部のロール角が水平となるように前記車輪付脚の足先位置を制御するとするものである。
また,請求項8に記載の発明は,前記脚制御装置は,関節角のフィードバックから足先位置を算出する順キネマティクス演算器を備え,足先位置の並進方向3自由度と姿勢角3自由度との計6自由度のうちの1つ以上についてについてそれぞれ独立に制御するとするものである。
また,請求項9に記載の発明は,前記脚制御装置は,前記車輪走行時に前記車輪付脚が足先位置の並進方向3自由度と姿勢角3自由度との計6自由度のうちの1つ以上についてそれぞれ独立に設定されたバネ定数およびダンピング定数の仮想的なバネおよびダンパとなるように制御するとするものである。
また,請求項10に記載の発明は,前記脚制御装置は,関節モータに受けている外乱を推定する外乱オブザーバと,前記外乱を床反力推定値に換算する外乱変換演算器を備え,算出された床反力推定値を用いて前記車輪付脚が仮想的なバネおよびダンパとなるように制御するとするものである。
また,請求項11に記載の発明は,前記脚制御装置は,前記胴体部に操作者が乗るための座席と,旋回半径を操作するためのハンドルとを備え,前記ハンドルの操作量に応じて前記車輪付脚のうち少なくとも1つの足先ヨー角を決定するとするものである。
また,請求項12に記載の発明は,前記脚制御装置は,前記胴体部に操作者が乗るための座席と,旋回半径を操作するためのハンドルとを備え,前記ハンドルの操作量に応じて複数の前記車輪の回転速度またはトルクを決定するとするものである。
また,請求項13に記載の発明は,前記脚制御装置は,前記胴体部に操作者が乗るための座席と,アクセルとを備え,前記アクセルの操作量に応じて前記車輪のうち少なくとも1つの回転速度またはトルクを決定するとするものである。
請求項1に記載の発明によると,実際に機械的な機構としてバネダンパを備えることなく脚により仮想的なバネダンパを構成することができ,車輪走行時には路面の凹凸による衝撃が胴体部に伝わらないようにすることができ,脚式歩行時には剛性が高く安定した姿勢制御をすることができる。
また,請求項2に記載の発明によると,高速走行時にも安定して走行することができる。
また,請求項3に記載の発明によると,少ないコストでその場での停止や旋回ができる装置が構成できる。
また,請求項4に記載の発明によると,高速走行時にも安定して自律動作により走行することができる。
また,請求項5に記載の発明によると,少ないコストで自律動作によりその場での停止や旋回ができる装置が構成できる。
また,請求項6に記載の発明によると,加減速時に胴体部に横方向の力を受けないようにすることができ,物を搬送する際には搬送物の落下などを避けることができ,人を搬送する際には乗り心地を良くすることができる。
また,請求項7に記載の発明によると,旋回時に胴体部に横方向の力を受けないようにすることができ,物を搬送する際には搬送物の落下などを避けることができ,人を搬送する際には乗り心地を良くすることができる。
また,請求項8に記載の発明によると,脚の制御則を関節ごとではなく足先位置の並進方向と姿勢角ごとにそれぞれ設定することができ,剛性や応答性をより適した設定にすることができる。
また,請求項9に記載の発明によると,バネ定数やダンピング定数を足先位置の並進方向と姿勢角ごとにそれぞれ設定することができ,より衝撃吸収性に優れた設定にすることができる。
また,請求項10に記載の発明によると,床反力センサなしにバネダンパ制御をすることができ,コストを安くすることができる。
また,請求項11に記載の発明によると,人が乗ってステアリングを操作して運転することができる。
また,請求項12に記載の発明によると,人が乗って旋回量を操作して運転することができる。
また,請求項13に記載の発明によると,人が乗って速度を操作して運転することができる。
以下,本発明の実施の形態について図を参照して説明する。
図8は本発明の車輪付脚式移動装置の第1実施例の全体構造の図である。左の図が右からの側面図,右の図が正面図である。本実施例は,脚が前後に2本並んだ構成で,装置自体がロボットとして移動するか,荷物を載せて搬送する用途で用いる場合について説明する。この構成では,通常,床面との接地点が前後の2点しかなく,支持多角形がほぼ面積を持たない線となる。以下,このような足先位置での動作をバイク型動作と呼ぶ。バイク型動作では,安定化制御なしではロール方向に回転してしまい,直立状態を保てない。そのため,前述の特許文献1では,車輪を各脚に2つずつ配置して支持多角形の幅を広げ,四角形として直立状態を保っていた。本実施例では,ロール方向については旋回による遠心力で姿勢を保つように制御する。その方法については後述する。
本実施例では,各脚につきそれぞれロール軸関節モータを1つ,ピッチ軸関節モータを2つ備えており,前脚にはさらにヨー軸関節モータを1つ備えている。これらの関節モータにより,後脚の足先位置は並進方向3自由度の動作が可能であり,前脚はさらにヨー軸を加えた計4自由度の動作が可能である。本実施例では,足先の位置を3自由度と4自由度としているが,後脚にもヨー軸を加えたり,さらに足首付近などにロール方向のモータを追加して足先のロール方向の姿勢を制御できるようにしても良い。また,特許文献2にあるように,片脚のみでも車輪が3点以上で接地するような構造とした場合には,さらにモータを1つ追加して足先のピッチ方向の姿勢を制御できるようにしても良い。各足先の位置3自由度,姿勢3自由度の計6自由度を制御可能とした方が,脚式歩行動作時に制御が容易となり,歩行速度なども高められるが,その分コストがかかるためアプリケーションに応じて自由度を決定するべきであろう。また,人間の膝関節に相当するピッチ軸関節モータ57および67は,図ではどちらも前方に曲げているが,例えばピッチ軸関節モータ67のみを逆に曲げ,両方の膝が内側に折り曲げられるようにしてもよく,こうした方が占有スペースが小さくなる利点があるが,脚の取り付け位置が近いと両方の膝が干渉しやすくなる欠点があるので注意が必要になる。また,本実施例では車輪モータは後脚にのみ設置しているが,各脚につきそれぞれ車輪モータを1つ備え,各脚で独立に車輪を駆動できるようにしてもよい。図では簡単のため車輪の軸と車輪モータの軸を直結したように描いているが,実際には車輪モータ60は路面との干渉を避けるため,車輪59より上方の脚構造58付近などに固定し,ベルトなどで動力を伝達する方が現実的である。バイク型動作では,胴体部のピッチ姿勢を制御できるため,加減速時に見かけの重力方向に対して水平になるようにピッチ姿勢を制御しても良い。車輪モータにもエンコーダまたはタコジェネレータを備え,位置または速度フィードバックを用いてフィードバック制御をしてもよいが,車輪と路面との間で滑りが発生したり,車輪の空気圧や負荷の重さ等によって車輪の直径が変化したりするため,フィードバックのためのセンサを用いて車輪モータの位置や速度を正確に検出しても,実際の車体の位置や速度は正確には求められず,さほど性能が向上しない場合が多いため,コストを下げるために車輪モータには位置や速度センサを使用せずにフィードフォワード的な制御としても問題ない。
次に,図2を用いて本発明の車輪付脚式移動装置の制御装置について説明する。車輪式脚式移動装置の最大の利点は,階段や凹凸の激しい路面では脚式歩行動作,比較的平坦な路面では安定性が高くエネルギー効率の良い車輪走行動作,という切替ができる点にある。本発明は脚式歩行動作については従来技術と同様であり,車輪走行動作時の制御に関する部分が特徴であるため,以下では車輪走行動作時の制御についてのみ説明する。制御装置は、図示しない上位の指令生成装置から速度・旋回半径指令を受け取る。指令生成装置は本発明の車輪付脚式移動装置とともに移動するようにしてもよいが、別の場所に設置された計算機や他のロボットから無線通信等で受け取るようにしても良い。指令は様々な与え方が考えられるが、本実施例では、胴体部50の前進方向の速度vと旋回半径rとして与えるものとする。10は車輪モータ指令生成器であり、速度指令から車輪モータ60の速度指令を算出する。滑りなどを無視すれば,胴体部50の速度と車輪モータ60の回転速度は単純な比例の関係にあり,速度指令は車輪59の直径とギヤ比から容易に車輪モータ速度指令に換算できる。11は車輪モータ電流制御器であり,車輪モータ指令生成器10から与えられた車輪モータ速度指令どおりの速度となるように車輪モータ60の電流を制御する。12は車輪モータおよび車輪であり,車輪モータ電流制御器11によって車輪モータの電流が制御され,車輪が回転することにより推進力を得て走行する。13は傾斜指令生成器であり、速度指令と旋回半径指令をもとに胴体部50のピッチ角とロール角の指令値を決定する。ピッチ角とロール角は,実際の(すなわち胴体部の並進加速度を含まない)重力に対して水平の状態を0と定義する。傾斜指令生成器13では,まず次式により前進方向の加速度指令ax,および左右方向の遠心加速度指令ayを算出する。
ピッチ角およびロール角の指令値は見かけの重力に対して水平になるように決定する。このようにすることで,搬送物が水平方向に力を受けなくなる。重力加速度をgとすれば、ピッチ角指令値θyrefおよびロール角指令θxrefは以下のように算出する。
14は足先位置指令生成器であり,ピッチ角・ロール角指令とロール角情報と旋回半径指令をもとに足先位置指令を算出する。ここで,足先位置とは,各足先の車輪の接地中心点の胴体部50に対する相対位置を意味する。ロール角情報とは,傾斜センサ17によって検出された胴体部50のロール角である。実際,ロール角の情報を得るには,傾斜センサ17として胴体部50に傾斜センサを設置すればよく,加速度センサ,ジャイロセンサなどを設置し,その情報から演算して算出してもよい。指令のピッチ角を実現するための足先位置は以下のように計算する。まず,デフォルトの足先位置をあらかじめ決めておく。デフォルト足先位置は,バネダンパ制御のために特異点を避け,上下に動作できる余裕を持たせておく必要がある。本実施例では,両方の膝を少し曲げた状態で胴体部50が水平となるような足先位置とする。胴体部50に固定された座標系を定義し,前方向をX,左方向をY,上方向をZ座標とする。この座標系で前脚のデフォルト足先位置のX,Y,Z座標をそれぞれpDx1,pDy1,pDzとし,後脚のデフォルト足先位置のX,Y,Z座標をそれぞれpDx2,pDy2,pDzとする。デフォルト足先位置のとき胴体部が水平になるようにしているので前後の脚のZ座標は同じpDzである。また,前脚の足先位置指令のX,Y,Z座標をそれぞれpx1,py1,pz1とし,後脚の足先位置指令のX,Y,Z座標をそれぞれpx2,py2,pz2とする。このとき,ピッチ角をθyrefとするためには,以下の関係を満たすように足先位置指令を決定すればよい。
上記の関係を満たす足先指令の与え方として,例えば次式のように与えればよい。
また,旋回半径指令rとロール角指令θxrefを実現するために,前脚の足先位置のヨー角指令pθz1refを決定する。ロール角情報をθxとし,次式のように与える。
ただし,速度vの絶対値があらかじめ設定した最小値より小さいときには最小値でリミットして算出する。kpとkdはロール角比例制御ゲインおよびロール角微分制御ゲインであり,シミュレーションや試行錯誤によって,ロール角が安定となるように決定すればよい。ロール角を制御するにはある程度の速度がなければならないため,バイク型動作では完全に停止した状態では直立を維持できない。ある位置にとどまっていたい場合,その位置で前後に動かし,ステアリング操作によりロール角を制御する。
上記以外の足先位置指令はデフォルト足先位置とすればよい。
15はバネダンパ制御器であり,足先位置指令と床反力情報をもとに,脚がバネとダンパを並列に備えたのと等価に動作するように足先位置指令を修正する。床反力情報とは,床反力センサ16によって検出された床反力であり,本実施例では,床反力情報として,各脚のz方向床反力が得られているものとする。実際,このような情報を得るには,各足先の車輪の軸受などに圧力センサを設置すればよい。本実施例では,次式により前脚の足先位置指令pz1を修正してp’z1を,後脚の足先位置指令pz2を修正してp’z2を算出する。各足先に受けている床反力をf1,f2,各脚に設定する仮想的なバネ定数をそれぞれk1,k2,仮想的なダンピング係数をそれぞれd1,d2とする。
ただし,添え字のiは1または2である。
102は逆キネマティクス演算器であり,バネダンパ制御器101が生成した修正足先位置指令を,逆キネマティクス演算により各関節の関節モータ位置指令に変換する。103は関節モータ位置制御器であり,エンコーダ105からの関節モータ位置情報を用いて,逆キネマティクス演算器102が生成した関節モータ位置指令どおりの位置に動作させるように関節モータのトルクを制御する。107は関節モータ電流制御器であり,関節モータ位置制御器103が生成した関節モータトルク指令通りのトルクが生じるようにモータに流す電流を制御する。104は関節モータおよび脚構造であり,関節モータ電流制御器107によって電流を操作される関節モータと脚構造である。105はエンコーダであり,関節モータ位置を検出し,関節モータ位置制御器103へフィードバックする。関節モータおよび脚構造104が動作した結果,床から受ける反力が変化する。16は床反力センサであり,この床反力を検出してバネダンパ制御器15にフィードバックする。以上のような動作により,脚が仮想的なバネとダンパの役割を果たす。図14に加速時の胴体の傾斜の状態とバネダンパ制御の方向を示す。本実施例ではバネダンパ制御の方向は図のように胴体に対して垂直な方向であるが,路面と垂直な方向としてもよい。
図9は本発明の車輪付脚式移動装置の第2実施例の全体構造の図である。左の図が右からの側面図,右の図が正面図である。本実施例は,脚が左右に2本並んだ構成のものである。実施例1と同様に,各脚につきそれぞれヨー軸関節モータを1つ,ロール軸関節モータを1つ,ピッチ軸関節モータを2つ備えている。この構成では,通常,床面との接地点が左右の2点しかなく,支持多角形がほぼ面積を持たない線となる。以下,このような足先位置での動作を倒立振子型動作と呼ぶ。安定化制御なしではピッチ方向に回転してしまい,直立状態を保てない。そのため,ピッチ方向については前後方向の移動により倒立振子のようにして姿勢を保つか,あるいは前述の特許文献2のように車輪を各脚に前後方向に複数個配置して支持多角形を四角形にする必要がある。ただし,特許文献1の図3にあるように,この構成でも足先位置を前後に並べるように指令することで,実施例1で説明したバイク型動作となる。逆に,実施例1の構成でも足先位置を左右に並べるように指令することで,倒立振子型動作となる。本実施例または実施例1の構成で,走行速度が速いときには旋回性能の良いバイク型動作とし,走行速度が遅いときには低速時にも胴体部の姿勢制御が容易な倒立振子型動作といったように,状況に応じてそれぞれの動作型を切り替えるようにしてもよい。このような構成でも,実施例1と同様にバネ・ダンパ制御できる。
次に,図3を用いて本実施例の車輪付脚式移動装置の制御装置について説明する。本実施例でも実施例1と同様に、胴体部50の前進方向の速度vと旋回半径rを指令として与える。10は車輪モータ指令生成器であり、本実施例では,速度指令,旋回半径指令,ピッチ角情報,車輪モータ位置情報から車輪モータトルク指令を生成する。車輪モータ位置情報とは,車輪モータエンコーダ18によって検出された車輪モータ60および70の回転速度である。ピッチ角を維持したまま速度vで走行するには,胴体速度とピッチ角とピッチ角の微分値を状態変数として状態フィードバックし,モータトルクを操作量として倒立振子の制御をすればよい。胴体速度は,車輪モータ位置情報を微分して車輪モータの回転速度を求め,それを換算して得る。あるいはオブザーバにより推定しても良い。車輪モータエンコーダ18の代わりにタコジェネレータを用いて車輪モータの回転速度を直接検出し,胴体速度に換算しても良い。次に,胴体速度v’と旋回半径指令rを次式により車輪59および車輪69の並進速度指令v1,v2に換算する。
各車輪の並進速度は各車輪モータの回転速度とそれぞれ単純な比例の関係にあるため,車輪の直径とギヤ比から車輪モータ60および70それぞれの回転速度指令w1,w2が容易に算出できる。
11は車輪モータ電流制御器であり,車輪モータ指令生成器10から車輪モータ指令として与えられたトルク指令どおりのトルクとなるように車輪モータ60および70の電流を制御する。
12は車輪モータおよび車輪であり,車輪モータ電流制御器11によって車輪モータの電流が制御され,車輪が回転することにより推進力を得て走行する。
13は傾斜指令生成器であり、胴体速度と旋回半径指令をもとに胴体部50のロール角の指令値を決定する。まず(1)式により左右方向の遠心加速度指令ayを算出し,(2)式によりロール角指令θxrefを算出する。
14は足先位置指令生成器であり,ロール角指令をもとに足先位置指令を算出する。指令のロール角を実現するための足先位置は以下のように計算する。ロール角をθxrefとするためには,以下の関係を満たすように足先位置指令を決定すればよい。ただし,本実施例では添え字の1は左脚,2は右脚を意味する。
上記の関係を満たす足先指令の与え方として,例えば次式のように与えればよい。
上記以外の足先位置指令はデフォルト足先位置とすればよい。以下の脚の制御は実施例1と同様であるので省略する。以上のような動作により,脚が仮想的なバネとダンパの役割を果たす。図13に旋回時の胴体の傾斜の状態とバネダンパ制御の方向を示す。
図10は本発明の車輪付脚式移動装置の第3実施例の全体構造の図である。上の図が右からの側面図,下の図が正面図である。本実施例は,脚が前方中央に1本あり,後方に左右に2本並んだ3脚の構成のものである。前方の脚は,実施例1と同様に,各脚につきそれぞれヨー軸関節モータを1つ,ロール軸関節モータを1つ,ピッチ軸関節モータを2つ備えている。後方の2本の脚もほぼ同じ構成であるが,最上部のヨー関節をなくした点が異なる。この構成では,通常,床面との接地点が3点あり,支持多角形が三角形となるため,安定化制御なしでも直立できる。以下,このような足先位置での動作を3輪型動作と呼ぶ。また,前方の脚には車輪モータを持たない構成とした。ヨー軸関節モータや車輪モータの一部をなくしたのはコストを抑えるためであり,もちろん備えていた方が機能は優れる。この構成では,後方の車輪で駆動し,前方の車輪はステアリングの役割を持つ。この構成でも3本の足先位置を前後に並べるように指令することで,実施例1で説明したバイク型動作となり,左右に並べるように指令することで,実施例2で説明した倒立振子型動作となる。もちろん,3本の脚のうち1本を持ち上げ,接地しない状態としても2脚と同様の制御を用いることができる。このような構成でも,3本の脚それぞれについて実施例1と同様にバネ・ダンパ制御できる。
次に,図4を用いて本発明の車輪付脚式移動装置の制御装置について説明する。10は車輪モータ指令生成器であり、速度指令から車輪モータ60および車輪モータ80の速度指令を算出する。まず,速度指令vと旋回半径指令rを次式により車輪59および車輪79の並進速度指令v1,v2に換算する。
各車輪の並進速度は各車輪モータの回転速度とそれぞれ単純な比例の関係にあるため,車輪の直径とギヤ比から車輪モータ60および80それぞれの回転速度指令w1,w2が容易に算出できる。
11は車輪モータ電流制御器であり,車輪モータ指令生成器10から与えられた車輪モータ速度指令どおりの速度となるように車輪モータ60および80の電流を制御する。12は車輪モータおよび車輪であり,車輪モータ電流制御器11によって車輪モータの電流が制御され,車輪が回転することにより推進力を得て走行する。13は傾斜指令生成器であり、速度指令と旋回半径指令をもとに胴体部50のピッチ角とロール角の指令値を決定する。まず(1)式により前進方向の加速度指令ax,および左右方向の遠心加速度指令ayを算出し,(2)式によりピッチ角指令値θyrefおよびロール角指令θxrefを算出する。
14は足先位置指令生成器であり,ピッチ角・ロール角指令と旋回半径指令をもとに足先位置指令を算出する。ピッチ角指令θyrefとロール角指令θxrefを実現するための足先指令の与え方として,例えば次式のように与えればよい。次式は,簡単のため,指令のピッチ角とロール角を近似的に実現しているが,必要であればロールピッチヨーの定義から厳密に算出しても良い。
ただし,本実施例では添え字の1は前脚,2は後左脚,3は後右脚を意味する。
また,旋回半径指令rを実現するために,前脚の足先位置のヨー角指令pθz1refを決定する。
上記以外の足先位置指令はデフォルト足先位置とすればよい。以下の脚の制御は実施例1と同様であるので省略する。以上のような動作により,脚が仮想的なバネとダンパの役割を果たす。
図11は本発明の車輪付脚式移動装置の第4実施例の全体構造の図である。上の図が右からの側面図,下の図が正面図である。本実施例は,脚を前後左右の4隅に配置した構成のものである。実施例3と同じく,後方の2本の脚は最上部のヨー関節をなくしている。この構成では,通常,床面との接地点が4点あり,支持多角形が四角形となるため,安定化制御なしでも直立できる。以下,このような足先位置での動作を4輪型動作と呼ぶ。また,実施例3と同じく,前方の2本の脚には車輪モータを持たない構成とした。この構成では,後方の車輪で駆動し,前方の車輪はステアリングの役割を持つ。この構成でも4本の足先位置を前後に並べるように指令することで,実施例1で説明したバイク型動作となり,左右に並べるように指令することで,実施例2で説明した倒立振子型動作となる。もちろん,4本の脚のうち1本を持ち上げれば3輪型動作とすることができ,2本を持ち上げれば2脚と同様の制御を用いることができる。このような構成でも,4本の脚それぞれについて実施例1と同様にバネ・ダンパ制御できる。
次に,図4を用いて本発明の車輪付脚式移動装置の制御装置について説明する。10は車輪モータ指令生成器であり、速度指令から車輪モータ60および車輪モータ80の速度指令を算出する。まず,速度指令vと旋回半径指令rを次式により車輪59および車輪79の並進速度指令v1,v2に換算する。
各車輪の並進速度は各車輪モータの回転速度とそれぞれ単純な比例の関係にあるため,車輪の直径とギヤ比から車輪モータ60および80それぞれの回転速度指令w1,w2が容易に算出できる。
11は車輪モータ電流制御器であり,車輪モータ指令生成器10から与えられた車輪モータ速度指令どおりの速度となるように車輪モータ60および80の電流を制御する。12は車輪モータおよび車輪であり,車輪モータ電流制御器11によって車輪モータの電流が制御され,車輪が回転することにより推進力を得て走行する。13は傾斜指令生成器であり、速度指令と旋回半径指令をもとに胴体部50のピッチ角とロール角の指令値を決定する。まず(1)式により前進方向の加速度指令ax,および左右方向の遠心加速度指令ayを算出し,(2)式によりピッチ角指令値θyrefおよびロール角指令θxrefを算出する。
14は足先位置指令生成器であり,ピッチ角・ロール角指令と旋回半径指令をもとに足先位置指令を算出する。ピッチ角指令θyrefとロール角指令θxrefを実現するための足先指令の与え方として,例えば次式のように与えればよい。次式は,簡単のため,指令のピッチ角とロール角を近似的に実現しているが,必要であればロールピッチヨーの定義から厳密に算出しても良い。
ただし,本実施例では添え字の1は前脚,2は後左脚,3は後右脚を意味する。
また,旋回半径指令rを実現するために,前脚の足先位置のヨー角指令pθz1ref,pθz2refを決定する。
上記以外の足先位置指令はデフォルト足先位置とすればよい。以下の脚の制御は実施例1と同様であるので省略する。以上のような動作により,脚が仮想的なバネとダンパの役割を果たす。
図12は本発明の車輪付脚式移動装置の第5実施例の全体構造の図である。左の図が右からの側面図,右の図が正面図である。本実施例は,脚が1本のみの構成のものである。この構成では,通常,床面との接地点がほぼ点であり,ロール方向,ピッチ方向ともに安定化制御が必要である。以下,このような足先位置での動作を1輪型動作と呼ぶ。前述の実施例1乃至5でも,脚1本のみで立たせれば1輪型動作とすることができる。1輪型動作では,脚をヨー回転させる際,反力で胴体部50が回転する。荷物搬送時など,この回転が望ましくない場合は胴体部の上にヨー回転できるテーブルとそれを駆動するヨー軸モータをもう1軸追加し,テーブルが静止座標系で回転しないようによこのような構成でも,実施例1と同様にバネ・ダンパ制御できる。ただし,この構成では脚式歩行動作時に跳躍による移動しかできないため,胴体部に衝撃が加わりやすい。
次に,図5を用いて本実施例の車輪付脚式移動装置の制御装置について説明する。本実施例でも、胴体部50の前進方向の速度vと旋回半径rを指令として与える。10は車輪モータ指令生成器であり、本実施例では,速度指令,ピッチ角情報,車輪モータ位置情報から車輪モータトルク指令を生成する。ピッチ角を維持したまま速度vで走行するには,胴体速度とピッチ角とピッチ角の微分値を状態変数として状態フィードバックし,モータトルクを操作量として倒立振子の制御をすればよい。胴体速度は,車輪モータ位置情報を微分して車輪モータの回転速度を求め,それを換算して得る。胴体速度は車輪モータ60の回転速度と比例関係にあるため,車輪の直径とギヤ比から車輪モータ60の回転速度指令w1が容易に算出できる。
11は車輪モータ電流制御器であり,車輪モータ指令生成器10から車輪モータ指令として与えられたトルク指令どおりのトルクとなるように車輪モータ60の電流を制御する。
12は車輪モータおよび車輪であり,車輪モータ電流制御器11によって車輪モータの電流が制御され,車輪が回転することにより推進力を得て走行する。
13は傾斜指令生成器であり、胴体速度と旋回半径指令をもとに胴体部50のロール角の指令値を決定する。まず(1)式により左右方向の遠心加速度指令ayを算出し,(2)式によりロール角指令θxrefを算出する。
14は足先位置指令生成器であり,旋回半径指令r,ロール角指令θxref,胴体のヨー角情報θxから足先位置のヨー角指令pθz1refを決定する。ヨー角情報は傾斜・方角センサ19によって検出された胴体部50のヨー角であり,傾斜・方角センサ19は例えば地磁気センサやジャイロセンサにより実現できる。まず,胴体のヨー角指令θzrefを次式のように与える。
このとき,足先位置のヨー角指令pθz1refを次式により与える。
ただし,速度vの絶対値があらかじめ設定した最小値より小さいときには最小値でリミットして算出する。Jは胴体部50のヨー軸関節モータ51の関節軸まわりの慣性モーメント,jは脚部全体の慣性モーメントである。kyp,kp,kdはヨー角比例制御ゲイン,ロール角比例制御ゲインおよびロール角微分制御ゲインであり,シミュレーションや試行錯誤によって,ロール角が安定となり,旋回半径が指令どおりになるように決定すればよい。ロール角を制御するにはある程度の速度がなければならないため,1輪型動作では完全に停止した状態では直立を維持できない。ある位置にとどまっていたい場合,その位置で前後に動かし,ステアリング操作によりロール角を制御する。
その他の足先位置指令はデフォルト足先位置とすればよい。以下の脚の制御は実施例1と同様であるので省略する。以上のような動作により,脚が仮想的なバネとダンパの役割を果たす。
以上,実施例1乃至5に述べた制御装置を一般化して表せば図1のようになる。一般化のために,ブロック間で無駄または冗長な情報の伝達があったり,用語を一般化したりしている。例えば,実施例1および実施例3では,車輪モータ指令生成器10の出力する胴体速度は速度指令そのままである。
本実施例では,図9を用いて脚のバネダンパ制御の別の実現方法の例を示す。本実施例で示すバネダンパ制御方法は,前述の実施例1乃至5のいずれにも適用できるものであるため,図1と同様に一般化して図示している。足先位置指令生成器14により生成される足先位置指令や車輪モータの制御方法については実施例1乃至5と同様であるので省略する。15はバネダンパ制御器であり,足先位置指令と床反力情報をもとに修正足先位置指令を生成するが,演算方法が実施例1乃至5と異なるため後述する。23は順キネマティクス演算器であり,エンコーダ105によって検出された関節モータ位置情報から各脚の足先位置情報を算出する。この演算内容は順キネマティクス演算と呼ばれるものであり,脚ごとに回転行列を順に掛けていくことで幾何学的な関係から容易に足先位置を算出できる。21は足先位置制御器であり,修正足先位置指令と足先位置情報を用いて,足先位置が指令通りの位置になるように足先推力指令を生成する。ここで,足先位置の制御は,足先の並進方向位置3自由度,姿勢角3自由度,計6自由度のうち,制御可能なものをそれぞれ独立に制御する。足先推力指令とは,その並進方向位置を制御する並進方向推力と,姿勢角を制御するモーメントの組である。例えば,実施例1の前足では,並進方向位置3自由度とヨー角の計4自由度が制御可能である。その4自由度についてそれぞれPID制御などのフィードバック制御と,フィードフォワード制御などを施す。このような制御方法とすることで,4自由度それぞれに異なる制御則や制御パラメータを用いることができ,例えば足先位置のZ方向のみ制御ゲインを低く設定したりすることができる。ここで,足先位置のZ方向の制御をPD制御とし,P制御ゲインを所望のバネ定数とし,D制御ゲインを所望のダンピング定数とするだけでもバネダンパ制御を実現できるが,このようにすると制御の応答性がバネ定数やダンピング定数によって決まるため,あまり高速での応答はできない。本実施例では,足先位置のZ方向をP制御とし,その他の3つはPID制御とする。制御則や制御パラメータは各脚で同じとし,Z方向のP制御ゲインをKpfとする。このとき,制御によるバネ剛性はKpfとなる。ここで,バネダンパ制御器15に戻って修正足先位置指令の演算方法を説明する。次式により前脚の足先位置指令pziを修正してp’ziを算出する。ただし,添え字のiは1から脚数までの整数で,それぞれの脚を表す数字である。各足先に受けている床反力をfi各脚に設定する仮想的なバネ定数をそれぞれkiとする。
このようにすると,設定したバネ定数通りに足先推力が発生するため,制御による足先の発振が起こりにくい。その他,一般にマニピュレータのインピーダンス制御,またはコンプライアンス制御と呼ばれる方法の多くが本発明のために適用できる。
22は推力変換器であり,足先推力指令を各関節モータのトルクに換算する。以降の演算については実施例1と同様であるので省略する。
本実施例では,図10を用いて床反力センサを用いないで脚のバネダンパ制御の実現する方法の例を示す。本実施例で示すバネダンパ制御方法は,前述の実施例1乃至6のいずれにも適用できるものであるため,図1と同様に一般化して図示している。関節モータ位置制御器103により生成される関節モータトルク指令や車輪モータの制御方法については実施例1乃至6と同様であるので省略する。30は外乱オブザーバであり,関節モータトルク指令と関節モータ位置情報を用いて関節トルク外乱推定値を算出する。外乱オブザーバは,例えば関節モータ速度と関節モータ外乱を状態変数とし,制御対象を剛体として最小次元オブザーバを構成すればよい。31は外乱変換演算器であり,関節トルク外乱推定値から床反力推定値を算出する。これは,関節モータにかかる外乱は全て床反力によるものとみなし,関節モータトルクから床反力への変換行列を計算すればよい。このように,外乱オブザーバを用いることにより床反力センサを用いずに床反力を推定することができる。
実施例1に示した図11のような構造の車輪付脚式移動装置に,一般的な自動二輪車のようにハンドルやアクセルや座席を備えることにより,人を搬送することもできる。その場合,運転者のハンドル操作に応じて旋回半径指令を,アクセル操作に応じて速度指令を生成すればよい。また,運転者のハンドル操作に応じて,例えば前方の脚のヨー軸関節モータ61を回転させるようにしてもよい。バイク型動作では,安定化制御なしではロール方向に回転してしまい直立状態を保てないが,このようにすると人間が自動二輪車と同様にバランスを取って運転することで走行できる。この場合,人間がロール角の安定化制御をするため,傾斜センサ17は不要となり,足先位置指令のヨー軸指令はハンドルの操作に連動させればよい。この場合でも,ピッチ角の制御とバネダンパ制御をすることで乗り心地が改善される。
実施例2に示した図12のような構造の車輪付脚式移動装置に,ハンドルやアクセルや座席を備えることにより,人を搬送することもできる。その場合,運転者のハンドル操作に応じて旋回半径指令を,アクセル操作に応じて速度指令を生成すればよい。倒立振子型動作では,直立状態を保つために安定化制御が必要である。速度指令はアクセルによってあたえてもよいが,従来技術にあるように,操作者が立った状態で乗り,姿勢を前後に傾けることにより速度を操作するようにしてもよい。このような制御は,倒立振子の状態変数として速度を用いず,ピッチ角とピッチ角の微分値のみを状態変数として状態フィードバックを構成することで実現できる。その際,平均的な人間の体重と重心位置を考慮して倒立振子のモデルをつくると安定性が高められる。この場合でも,ロール角の制御とバネダンパ制御をすることで乗り心地が改善される。
実施例3乃至4に示した図10乃至11のような構造の車輪付脚式移動装置に,ハンドルやアクセルや座席を備えることにより,人を搬送することもできる。その場合,運転者のハンドル操作に応じて旋回半径指令を,アクセル操作に応じて速度指令を生成すればよい。この場合でも,ロール角の制御とバネダンパ制御をすることで乗り心地が改善される。
このように,車輪走行時に脚が仮想的なバネ・ダンパとして動作するように制御するようにし,さらに胴体部が見かけの重力に対して水平になるように制御しているので,車輪走行時に路面の凹凸があっても胴体部に衝撃が伝わらないようにでき,脚制御時にも容易に安定化制御をすることができ,胴体部に横方向の力を受けないようにできる。
脚をバネダンパ制御することによって胴体部に衝撃が伝わらないようにすることができ,横方向の力も受けないようにできるので,人や荷物の搬送という用途にも適用できる。
本発明の車輪付脚式移動装置の制御ブロック図 本発明の第1実施例を示す車輪付脚式移動装置の制御ブロック図 本発明の第2実施例を示す車輪付脚式移動装置の制御ブロック図 本発明の第3乃至第4実施例を示す車輪付脚式移動装置の制御ブロック図 本発明の第5実施例を示す車輪付脚式移動装置の制御ブロック図 本発明の第6実施例を示す車輪付脚式移動装置の制御ブロック図 本発明の第7実施例を示す車輪付脚式移動装置の制御ブロック図 本発明の第1実施例の車輪付脚式移動装置の全体構成を示す右側面図と正面図 本発明の第2実施例の車輪付脚式移動装置の全体構成を示す右側面図と正面図 本発明の第3実施例の車輪付脚式移動装置の全体構成を示す右側面図と正面図 本発明の第4実施例の車輪付脚式移動装置の全体構成を示す右側面図と正面図 本発明の第5実施例の車輪付脚式移動装置の全体構成を示す右側面図と正面図 本発明の車輪付脚式移動装置のバネダンパ制御の動作を示す正面図 本発明の車輪付脚式移動装置のバネダンパ制御の動作を示す側面図 従来の車輪付脚式移動装置の脚式歩行動作時の制御ブロック図 従来の車輪付脚式移動装置の全体構成を示す右側面図と正面図
符号の説明
111 胴体部
112 ロール軸
113 ピッチ軸
114 ボールねじ
115 ロール軸
116 ヨー軸
117 車輪
118 車輪
119 ロール軸
120 ピッチ軸
121 ボールねじ
122 ロール軸
123 ヨー軸
124 車輪
125 車輪
100 歩容生成装置
101 安定化制御器
102 逆キネマティクス演算器
103 関節モータ位置制御器
107 関節モータ電流制御器
104 関節モータおよび脚構造
105 エンコーダ
106 各種センサ
10 車輪モータ指令生成器
11 車輪モータ電流制御器
12 車輪モータおよび車輪
13 傾斜指令生成器
14 足先位置指令生成器
15 バネダンパ制御器
16 床反力センサ
17 傾斜センサ
18 車輪モータエンコーダ
19 傾斜・方角センサ
21 足先位置制御器
22 推力変換器
23 順キネマティクス演算器
30 外乱オブザーバ
31 外乱変換演算器
50 胴体部
51 ヨー軸関節モータ
52 脚構造
53 脚構造
54 ロール軸関節モータ
55 ピッチ軸関節モータ
56 脚構造
57 ピッチ軸関節モータ
58 脚構造
59 車輪
60 車輪モータ
61 ヨー軸関節モータ
62 脚構造
63 脚構造
64 ロール軸関節モータ
65 ピッチ軸関節モータ
66 脚構造
67 ピッチ軸関節モータ
68 脚構造
69 車輪
70 車輪モータ
71 ヨー軸関節モータ
72 脚構造
73 脚構造
74 ロール軸関節モータ
75 ピッチ軸関節モータ
76 脚構造
77 ピッチ軸関節モータ
78 脚構造
79 車輪
80 車輪モータ

Claims (13)

  1. 胴体部と,前記胴体部に配置され先端に車輪を備えた車輪付脚と,前記車輪付脚の脚部の動作を制御する脚制御装置と,前記車輪の動作を制御する車輪制御装置とを備え,脚式歩行と車輪走行を切り替えて動作する車輪付脚式移動装置において,
    前記脚制御装置は,前記車輪走行時に前記車輪付脚が仮想的なバネおよびダンパとなるように制御することを特徴とする車輪付脚式移動装置。
  2. 前記脚制御装置は,前記車輪走行時に前記車輪付脚の足先位置が前後方向に整列したバイク型動作をすることを特徴とする請求項1記載の車輪付脚式移動装置。
  3. 前記脚制御装置は,前記車輪走行時に前記車輪付脚の足先位置が横方向に整列した倒立振子型動作をすることを特徴とする請求項1記載の車輪付脚式移動装置。
  4. 前記脚制御装置は,ロール角を検出する傾斜センサを備え,前記バイク型動作をする際に,旋回による遠心加速度ベクトルと重力ベクトルとの和で表される見かけの重力方向に対して前記胴体部のロール角が水平となる状態を偏差零として前記車輪付脚のうち少なくとも1つの足先ヨー角を操作してフィードバック安定化制御することを特徴とする請求項1または2記載の車輪付脚式移動装置。
  5. 前記脚制御装置は,ピッチ角を検出する傾斜センサを備え,前記倒立振子型動作をする際に,前後方向加速度ベクトルと重力ベクトルとの和で表される見かけの重力方向に対して前記胴体部のピッチ角が水平となる状態を偏差零として前記車輪のうち少なくとも1つのトルクを操作してフィードバック安定化制御することを特徴とする請求項1または3記載の車輪付脚式移動装置。
  6. 前記脚制御装置は,前記車輪走行時に前後方向加速度ベクトルと重力ベクトルとの和で表される見かけの重力方向に対して前記胴体部のピッチ角が水平となるように前記車輪付脚の足先位置を制御することを特徴とする請求項1記載の車輪付脚式移動装置。
  7. 前記脚制御装置は,前記車輪走行時に旋回による遠心加速度ベクトルと重力ベクトルとの和で表される見かけの重力方向に対して前記胴体部のロール角が水平となるように前記車輪付脚の足先位置を制御することを特徴とする請求項1記載の車輪付脚式移動装置。
  8. 前記脚制御装置は,関節角のフィードバックから足先位置を算出する順キネマティクス演算器を備え,
    足先位置の並進方向3自由度と姿勢角3自由度との計6自由度のうちの1つ以上についてについてそれぞれ独立に制御することを特徴とする請求項1記載の車輪付脚式移動装置。
  9. 前記脚制御装置は,前記車輪走行時に前記車輪付脚が足先位置の並進方向3自由度と姿勢角3自由度との計6自由度のうちの1つ以上についてそれぞれ独立に設定されたバネ定数およびダンピング定数の仮想的なバネおよびダンパとなるように制御することを特徴とする請求項1記載の車輪付脚式移動装置。
  10. 前記脚制御装置は,関節モータに受けている外乱を推定する外乱オブザーバと,前記外乱を床反力推定値に換算する外乱変換演算器を備え,
    算出された床反力推定値を用いて前記車輪付脚が仮想的なバネおよびダンパとなるように制御することを特徴とする請求項1記載の車輪付脚式移動装置。
  11. 前記脚制御装置は,前記胴体部に操作者が乗るための座席と,旋回半径を操作するためのハンドルとを備え,前記ハンドルの操作量に応じて前記車輪付脚のうち少なくとも1つの足先ヨー角を決定することを特徴とする請求項1記載の車輪付脚式移動装置。
  12. 前記脚制御装置は,前記胴体部に操作者が乗るための座席と,旋回半径を操作するためのハンドルとを備え,
    前記ハンドルの操作量に応じて複数の前記車輪の回転速度またはトルクを決定することを特徴とする請求項1記載の車輪付脚式移動装置。
  13. 前記脚制御装置は,前記胴体部に操作者が乗るための座席と,アクセルとを備え,前記アクセルの操作量に応じて前記車輪のうち少なくとも1つの回転速度またはトルクを決定することを特徴とする請求項1記載の車輪付脚式移動装置。
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