JP2009153422A - 生体サンプルプレート及びそれを用いた生体サンプル分析装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】一つのプレートで生体サンプルを自動でPCRすることができる装置で、このPCR産物の増幅の有無を連続して測定できるPCR反応から電気泳動による確認までを自動化するためにふさわしい構成を持つプレートを工夫したPCR一体型プレート方式PCR装置を提供する。
【解決手段】回転するための回転孔と、測定すべき生体サンプルを収納するための注入チャンバと、前記注入チャンバの前記生体サンプルをPCR増幅するPCR増幅部と、前記PCR増幅部により増幅されたPCR産物を連続して分析でする分析部を備えた生体分析プレート。
【選択図】図2
【解決手段】回転するための回転孔と、測定すべき生体サンプルを収納するための注入チャンバと、前記注入チャンバの前記生体サンプルをPCR増幅するPCR増幅部と、前記PCR増幅部により増幅されたPCR産物を連続して分析でする分析部を備えた生体分析プレート。
【選択図】図2
Description
本発明は、DNAの増幅と分析を行う技術に関する。より詳細には、DNA増幅から分析までの一連の工程を自動化した技術に関する。
近年、様々な疾患に関与する遺伝子の存在が明らかになり、遺伝子診断や遺伝子治療など遺伝子を利用した医療が注目されている他、農畜産分野においても品種判別や品種改良に遺伝子を用いた手法が多く開発されてきており、遺伝子の利用技術が拡大している。
遺伝子を利用するために核酸増幅技術が広く普及している。この技術は一般的にPCR(Polymerase Chaine Reaction)がとして知られており、今日では、PCRは、生体物質の情報解明において必要不可欠な技術となっている。
遺伝子を利用するために核酸増幅技術が広く普及している。この技術は一般的にPCR(Polymerase Chaine Reaction)がとして知られており、今日では、PCRは、生体物質の情報解明において必要不可欠な技術となっている。
PCRを行うためには3つの温度制御をする必要がある。二本鎖のDNAを一本鎖へと解離させる工程(熱変性)、一本鎖に解離したDNAに増幅したい部分の両端の配列と相補的な配列を有したプライマーを結合させる工程(アニーリング) 、プライマーが結合した配列からDNAポリメラーゼによってDNA鎖を伸長させる工程(伸長反応) である。熱変性では95℃で1分間温度をかけることによって、DNAを一本鎖の状態にする。アニーリングの工程では50〜60℃で30秒間反応させることにより、増幅したい領域の末端部分にプライマーと呼ばれる20塩基程度の短いDNAを結合させる。伸長反応は72℃の温度でポリメラーゼを鋳型に付加し、DNA鎖の伸長を行う。通常、ポリメラーゼの伸長時間は1kbp/分と考えられている。これらの温度サイクルを25〜40回行うことで、サイクル数に応じて理論的には2の25乗から2の40乗増幅できる。実質的には目的の領域を10の6乗倍に増幅している。
PCRを行うための調整試薬は増幅するためのポリメラーゼ、ポリメラーゼが最適な環境で働くためのpHや塩濃度を調整したバッファ、dNTP、両末端のプライマー、鋳型、トータルボリュームを調整する滅菌水で構成される。これらの試薬のうち、ポリメラーゼ、バッファ、dNTP、滅菌水はどのようなDNA断片を得たい場合でも共通の試薬であるが、両末端のプライマーと鋳型は増幅したい領域に合わせて用意する必要がある。また、ポリメラーゼは活性を失わないよう細心の注意が必要であり、普段はマイナス20℃で保存されていて、PCRを行なう段階でその都度調整する必要があった。
そのため、PCRを簡便に行う技術の開発が望まれていた。そこで、PCRの簡略化のためには、(1)温度工程の簡素化及び反応時間の短縮化と(2)酵素の粉体化技術の開発が必要となる。まず、温度工程の簡素化及び反応時間の短縮化については、72℃で反応するポリメラーゼ(酵素)を改良し、66℃の低温で反応ができるようになった。この酵素の開発によって、プライマーのアニール温度と伸長反応を同じ温度設定で行うことができ、温度工程を一つ減らすことが可能になった。次の課題である、乾燥状態でも失活しない酵素も開発がなされたため、従来、反応前の最終段階で調整しなければいけなかった酵素の添加をあらかじめ混ぜて用意しておくことができるようになった。
さらなる簡便化のためには、一連のPCR工程を自動化することである。そのために、マイクロタス技術の利用がなされた。マイクロタス技術とは、数百マイクロメートル(100万分の1メートル)の微小な流路(空間)を化学反応に活用する技術のことである。マイクロタス技術を利用した従来の小型の生体サンプルプレートは、サンプルを注入する注入部とサンプルからDNAを抽出する抽出チャンバとPCR反応を行うPCRチャンバを備えたプレートを持ち、このプレート上でPCR増幅を自動で行うように構成されている。
このプレートは、加熱機構と回転機構を併せ持ち、サンプルの移動は回転と毛細管現象を利用して移送している。抽出チャンバやPCRチャンバなどの化学反応や酵素反応を行うチャンバは微小流路によって連結されており、各反応をチップ上でシステマチックに構築することを可能にしている。これらのチャンバをつなぐ流路には、弁が存在し、溶液の移動を制御できる構成になっている。具体的には弁はワックスという固体物質であり、ワックスは熱により融解し、溶液になる。抽出チャンバに入った細胞はアルカリ細胞溶解液で溶解され、ある回転をかけることによって抽出チャンバで抽出されたDNAが流れて増幅反応チャンバに移動する。この増幅反応チャンバでは中和用の緩衝液が加えられた後、PCRに必要なdNTPや塩、緩衝液、酵素と適量の溶出したDNAを含む増幅溶液が加えられ、二本鎖DNAを変性するのに充分な温度と時間をかけて保持し、PCRの熱サイクルを行う(例えば、特許文献1参照。)。
特表2003−502656号公報
しかしながら、前記従来の構成では、生体サンプル中の測定すべきDNAを一つのプレートで自動PCR増幅することはできるが、このPCR産物を測定するためには、別の測定装置を必要とする。生体サンプルの自動測定には、一つのプレートでPCRから測定まで行なう必要があるが、従来の技術では、同一のプレート上でPCRを行ない連続して測定することができないという課題を有していた。
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、生体サンプル中の測定すべきDNAを自動で増幅した後、この増幅されたDNA産物を連続して分析できる生体サンプル分析装置を提供する事を目的とする。
前記従来の課題を解決するために、本発明の生体サンプルプレート及びそれを用いた生体サンプル分析装置は、回転するための回転孔と、測定すべき生体サンプルを収納するための注入チャンバと、前記注入チャンバの前記生体サンプルをPCR増幅するPCR増幅部と、前記PCR増幅部により増幅されたPCR産物を連続して分析でする分析部を備えた生体分析プレートを備えたことを特徴としたものである。
さらに、本発明の生体サンプルプレート及びそれを用いた生体サンプル分析装置は、請求項1に記載の生体分析プレートと、前記生体分析プレートを回転させるためのモータと、
前記生体分析プレートを加熱するための加熱部と、前記生体分析プレートの前記PCR増幅部で前記生体サンプルをPCR増幅する際に前記モータを所定の回転数で回転するとともに前記加熱部に所定の温度パターンで温度を発生するように指示を行う制御部と、を備えたことを特徴としたものである。
前記生体分析プレートを加熱するための加熱部と、前記生体分析プレートの前記PCR増幅部で前記生体サンプルをPCR増幅する際に前記モータを所定の回転数で回転するとともに前記加熱部に所定の温度パターンで温度を発生するように指示を行う制御部と、を備えたことを特徴としたものである。
本発明の生体サンプルプレート及びそれを用いた生体サンプル分析装置によれば、一つのプレートでPCRの増幅から電気泳動による測定までの一連の工程を行うことができる。このように一つのプレートでPCR増幅からPCR産物の分析を人の手を借りずに行うことができるので、迅速な生体サンプルの分析ができる。また、PCR産物を連続して分析するので、PCR産物への異物の混入を防ぐ事ができる。
以下に、本発明の生体サンプルプレート及びそれを用いた生体サンプル分析装置の実施の形態を図面とともに詳細に説明する。
(実施の形態1)
図1に、本発明の生体サンプルプレート200の構成図を示す。生体サンプルプレート200は、アクリル系の樹脂を使用したプレートとその上に接着された熱耐性の粘着フィルム220とから構成されている。生体サンプルプレート200には独立して同一の流路ユニット230が複数存在している。
図1に、本発明の生体サンプルプレート200の構成図を示す。生体サンプルプレート200は、アクリル系の樹脂を使用したプレートとその上に接着された熱耐性の粘着フィルム220とから構成されている。生体サンプルプレート200には独立して同一の流路ユニット230が複数存在している。
図2は、図1で説明したプレート200の一つの流路ユニット230の拡大図である。この図2、図3、図4を用いて本発明のプレートの構成と反応のために必要な試薬について説明する。
本発明の生体サンプルプレート200はPCR増幅を行うためのPCRユニット231と電気泳動を行うための電気泳動ユニット232とから構成される。まず、PCRユニット231について説明する。PCRユニット231には、サンプル注入口211を設けた注入チャンバ201が設けられている。このサンプル注入口211から、PCRを行うために必要な鋳型101と、プライマーF102とプライマーR103と水とを加える。注入チャンバ201からは、流路203を介してPCRチャンバ202が接続されている。
PCRチャンバ202には、PCRを行うために必要な共通試薬である酵素104とdNTP105及びPCRバッファ106があらかじめ入れてある。これらの酵素104とdNTP105とPCRバッファ106は、サンプル注入口211から入れて調整したのでも良い。あるいは、PCR反応を行うために共通の試薬類はあらかじめ生体サンプルプレート200に入れておいてもよい。あらかじめ生体サンプルプレート200に入れておく場合は、乾燥タイプのPCR試薬をPCRチャンバに入れた後、粘着シール220で接着するとよい。また、PCRチャンバ202には、PCR反応中に熱による溶液の蒸発を防ぐためにワックス110を入れておく。このワックス110はPCR反応中、溶液の蓋をする役割を果たし、PCR試薬が蒸発するのを防ぐ。
サンプル注入口211から入れた鋳型101とプライマーF102とプライマーR103は、プレートを回転させると流路203を通ってPCRチャンバ202で酵素104、dNTP105、PCRバッファ106と混合される。鋳型101とプライマーF102とプライマーR103と酵素104とdNTP105とPCRバッファ106との関係を図3に示す。
次に、電気泳動ユニット232について説明する。電気泳動ユニット232には、ポリマー注入口212を設けたポリマー注入チャンバ213が設けられている。電気泳動時に必要となる分子篩効果を持つポリマー120と、二本鎖DNAを標識するためのインターカレーター121とをこのポリマー注入チャンバ213に入れる。これらの状態を図4に示す。なお、プライマーF102かプライマーR103のどちらかを標識する場合は、インターカレーター121は不要である。
さて、生体サンプルプレート200を回転させるとポリマー120は流路215を通って、電極チャンバのプラス極208とマイナス極209(以下、合わせて電極チャンバ210と呼ぶ。) に到達し、これらの電極チャンバにそれぞれ接続された電気泳動流路206と流路217を伝い、測定すべきサンプルを一定量保持するための定量部204で合流する。この時、定量部204と電極チャンバ210の液面の高さが同じ高さになる。もしポリマーの量が少なすぎると、定量部をポリマーが満たすことが出来ず、電流が流れない。逆にポリマーが多すぎる場合は、チャンバ214にポリマーが流れて、電極チャンバの液面の高さは一定に保たれるので、ポリマーの量はある程度余裕を持った構成になっている。PCR反応後に、PCR産物はPCRチャンバ202からのびる流路205を通って、サンプル定量部204へ移送される。余分なPCR産物は廃棄チャンバ207に廃棄される。流路216はそれぞれ液の移送時に空気の逃げ道として必要とされる流路である。電極チャンバ210に電圧を印加すると、サンプル定量部204で定量されたPCR産物は、電気泳動流路206を電気泳動するのでサンプルの分析を行うことが出来る。
図5に、本発明の生体サンプルプレート200を用いた生体サンプル分析装置の構成図を示す。本発明の生体サンプル分析装置は、PCR増幅中に生体サンプルプレート200を回転させるための遠心ブロックと、PCR反応を行うためのPCRブロックと、PCR産物を電気泳動するための電気泳動ブロックと、電気泳動中のPCR反応液170を検出する検出ブロックとで構成される。これらの機能ブロックの実行と停止をシステム制御部370により指令することで、PCR増幅からPCR産物の分析を自動で行う。
遠心ブロックは、生体サンプルプレート200を載置するためのプレートトレイ311と、プレートトレイ311を回転させるためのモータ312と、モータ312を駆動するためのモータ駆動回路313と、回転制御回路314とから構成される。プレートトレイ311とモータ312とは、シャフト315を介して接続されている。回転制御回路314は、モータ駆動回路313に対してモータ312の起動及び停止を指示し、起動の際には回転数の指示を行なう。システム制御部370が、回転制御回路314にモータ312の回転数と回転時間を指示すると、回転制御回路314は、与えられた指令に従いモータ312の回転制御を行なう。
PCRブロックは、生体サンプルプレート200を内部に含むPCRボックス320を持つ。PCRボックス320は、図示しない開閉機構により生体サンプルプレート200をプレートトレイ311に載置出来るように構成されている。PCRボックス320内の温度を上げるためのヒーター321と、加熱時にはヒーター321で発生した熱をPCRボックス320循環させためのファン322が取り付けられている。ファン322はファン駆動回路323で駆動されており、PCR温度制御部324は、ファン駆動回路323へファン322の回転開始及び停止の指令を行なう。高温制御部325は、ヒーター321の近傍に取り付けられた温度センサー326をモニターして98℃を越えないようにヒーター321とファン駆動回路323とを制御する。PCRボックス320にはペルチェ素子を用いた冷却部327が取り付けられており、PCRボックス320の内部に取り付けられた温度センサー328を低温制御部329がモニターすることで冷却部327を制御し、PCRボックス320内の温度が68℃の一定になるような低温制御を行なう。PCR増幅を行なう時の高温から低温へ、低温から高温へのプロセス管理は、PCR温度制御部324が行い、それぞれの期間に応じた指令を高温制御部325と低温制御部329に対して行う。
電気泳動ブロックは、生体サンプルプレート200の電極チャンバ210上に設けられた電極端子に接触するための電極ピン330を持つ電極プレート331が、プレートトレイ301の直上に配置されている。電極プレート331と生体サンプルプレート200とは、図示しない位置合わせ機構により、電極ピン330が生体サンプルプレート200の電極端子に接触できるように構成されている。電極プレート331は、電極プレート上下駆動機構332に接続されており、電極プレート上下駆動機構332は、プレート上下駆動部333により上下に駆動される。電圧制御回路335は、電気泳動時に電極ピン310に所定の電圧を印加する。これらプレート上下駆動部333と電圧制御回路335とは電気泳動制御部334に接続されている。電気泳動制御部334は、電気泳動時には電極プレート331を生体サンプルプレート200の電極端子に接触する位置まで下降させて電極ピン310に所定の電圧を印加し、それ以外の時には生体サンプルプレート200と接触しない位置まで電極プレート331を上昇させるようにプレート上下駆動部333と電圧制御回路335に指令する。
検出ブロックは、蛍光標識されたサンプルの標識剤を励起するためのレーザー341と、コリメータ342と励起光以外の波長をカットする励起フィルタ343と、励起光を反射しサンプルからの蛍光を透過するするダイクロイックミラー344と、生体サンプルプレート200の電気泳動流路に励起光を照射するための対物レンズ345からなる投射光学系を持つ。また、サンプルからの蛍光のみを透過する蛍光フィルタ345、集光レンズ346、スリット347及び光検出器348とからなる検出光学系を持つ。電気泳動流路を流れるサンプルの標識剤から発せられた蛍光は、対物レンズ345を介してダイクロイックミラー344を通過し、蛍光フィルタ345により蛍光領域の光のみ選択される。選択された蛍光は、集光レンズ346とスリット347により光検出器348に集光されサンプルの蛍光量が測定できる。
以上説明した本発明の生体サンプルプレートと生体サンプル分析装置を用いて、サンプルのDNAの自動分析についての具体的な実施の形態について詳細に説明する。
本発明の実施の形態1で用いる鋳型101は、植物、動物、または人の細胞や血液等から抽出したDNAを使用する。プライマーF102とプライマーR103は鋳型101の中で増幅したい領域の末端の配列を持った配列を選定する。例えば、PCR増幅をc−k−rasPCRの増幅はTITANIUM(Clontech社製)を用いて増幅した。鋳型101はras Mutant Set(TaKaRa社製)を用いた。フォワード側のプライマーF102は蛍光色素、ここではCy5で標識した、5’−(Cy5)−GACTGAATATAAACTTGTGG−3‘を、リバース側のプライマーR103は5’−ATCGTCAAGGCACTCTTGCC−3‘を、それぞれ終濃度500nMになるように加えた。その他のPCR反応液の組成(酵素104、dNTP105、PCRバッファ106)はTITANIUM(Clontech社製)にかかれてあるとおりの要領で使用した。この条件で調整されたPCR溶液をPCR反応液170とする。
電気泳動流路に充填するためのポリマー120は分子篩効果を持つものなら何でも良く、例えば、アクリルアミドポリマーやPEG、デキストラン、セルロースなどが挙げられる。PEG(分子量50万)を50mM Tris−Borate(pH7.4)で3.5%になるように希釈し、一晩静置した後、0.45μm以下のフィルタでろ過したものを使用する。
本発明で説明したインターカレーターは、DNAの二本鎖に入り込み蛍光を発する標識剤のことを言う。例えば、エチジウムブロマイドやSYBER GREENなどがある。インターカレーター121はプライマーF102またはプライマーR103のどちらかに蛍光物質等の標識剤を標識している場合は入れる必要はない。
ワックス110は体温よりも高く、酵素反応温度よりも低い温度で融解する性質を持っていれば良い。ワックスが体温以下で融解すると、PCR反応液の調整段階でワックスが液体になってしまうので、PCRチャンバ202にあらかじめ入れられてある酵素103を溶かしてしまい、酵素を失活してしまう恐れがあり、適切でない。またワックスの融点が酵素反応温度よりも高いと、PCR反応を行うより高い温度をかける必要があり、酵素を変性する恐れがあり、適切でない。
ワックスは回転中に温度をかけて融解したものをPCR反応液の蓋をするために使用するものであるので、PCR反応段階でワックスが固形状態で存在することは好ましくない。また、ワックスの沸点は100℃以上がよい。なぜならワックスの沸点が100℃より低い温度ならば、PCRを行うときの反応サイクルでワックスが蒸発してしまい、PCR反応液の蒸発を防ぐ蓋の役割を果たせないので好ましくない。また水より比重が軽い性質でなければならない。なぜなら、ワックスの比重が水より重いと、回転により遠心力がかかった場合にワックスが水より中心方向に対して外側の壁面に存在することになり、PCR反応液の蒸発を防ぐ役割を果たすことができないので好ましくない。以上の条件を満たすワックスであれば何でもよい。今回はAmpliWax(Applied Biosystems)を用いた。
PCRチャンバにおいて行われるDNAの増幅から電気泳動による分析までの一連の動きについて図6から図8を用いて説明する。
まず、鋳型101とプライマーF102とプライマーR103を用意し、プライマーF102とプライマーR103と鋳型101とを最終濃度が一定になるように水を加えたものを注入チャンバ201に入れる。PCRチャンバ202にあらかじめ加えてある酵素104、dNTP105、PCRバッファ106は鋳型101とプライマーF102とプライマーR103と水を注入チャンバ201に加えるときに一緒に加えたのでもよい。ワックス110も後から加えても良いが、融解した液体の状態でピペット操作をすることは困難なのであらかじめプレートに入れておいた方が適切である。ワックス110を後から入れる場合、注入チャンバ201のサンプル注入口211が固形のワックス110より大きな径にする必要があるので、ワックス110はあらかじめ入れておいたほうが適切である。分子ふるい効果を持つポリマー120とインターカレーター121はポリマー注入口212に入れる。
プレート200を回転し、鋳型101プライマーF102とプライマーR103と水とを遠心力で注入チャンバ201とPCRチャンバ202をつなぐ流路203を通ってPCRチャンバ202へ移動させる。本実施例では、縦横10cmのプレートを3000rpmで回転させた。
PCRチャンバ202へ移動させた後、75℃で温度制御しながら回転を続け、ワックス110を溶かす。溶けたワックスが中心方向に、PCR反応試薬が外側に2層を形成するのに必要な時間をかけて行なう。本実施例では、5分程度3000rpmで遠心を行なった。このときの温度範囲は、75℃から80℃が好適である。PCRチャンバ202で熱せられたワックス110は液体状態になり、さらに水より比重の軽いワックス110はPCR反応液170より内側(中心方向)にきて、図6の状態になる。この状態のPCRチャンバの断面図は図7のようになっている。
次にPCR増幅を行なう。PCR反応液170をワックス110により蓋をした状態で、そのままPCR反応サイクルに移行し、95℃と68℃の温度サイクルを25回から40回繰り返すことによって反応液はチャンバ内で移動することなくそして蒸発することなく、反応を行うことができる。
得られたPCR反応液170は温度が高いままで、回転を止め、プレート200を静止状態にした後、温調を止める。このとき、図8に示すようにPCR反応液170はチャンバの底側にワックスは上側に層を形成し、温度の下降とともにワックスは固まる。このとき、室温でワックスを固めてもよいし、冷却部を備えた温調ユニットがあれば、冷やしながら固めたのでもよい。
図6の状態からPCR反応液170が定量部204へ移送される動作について説明する。
プレート200の回転を停止して、温度が十分に冷えてワックス110が固まった状態から(図8)、再びプレートを回転させる。PCR反応液170は流路205を通って定量部204に到達し、残りのPCR反応液は廃棄チャンバ207に流れて、PCR反応液の一部が定量部204に保持される状態となる。PCRチャンバと定量部をつなぐ流路205はPCRチャンバの底部に設けられていて、PCR反応液のみが流路205を通って定量部へ移送できるようになっている。さらに流路205はPCRチャンバ202の中心方向側から流路が伸びているためPCR反応液全てではなく一部だけを取り出すことができる。
プレート200の回転を停止して、温度が十分に冷えてワックス110が固まった状態から(図8)、再びプレートを回転させる。PCR反応液170は流路205を通って定量部204に到達し、残りのPCR反応液は廃棄チャンバ207に流れて、PCR反応液の一部が定量部204に保持される状態となる。PCRチャンバと定量部をつなぐ流路205はPCRチャンバの底部に設けられていて、PCR反応液のみが流路205を通って定量部へ移送できるようになっている。さらに流路205はPCRチャンバ202の中心方向側から流路が伸びているためPCR反応液全てではなく一部だけを取り出すことができる。
そして定量部が満たされた後の残りのPCR反応液は廃棄チャンバへ移動し、必要な分量だけを定量部で保持することができる。このように2段階にPCR反応液を減らしていくことによって微小流路で過剰になりがちな溶液量の微妙な調整ができる工程になっている。
PCR反応液170を定量部204に保持した後、電圧印加部210に電圧を印加する。定量部204に移送されたPCR反応液170が電気泳動流路206を通ってマイナス極209からプラス極208に向かって泳動される。電気泳動されたPCR反応液170を電気泳動流路206を検出ユニットでスキャンすることによってDNAを検出し、PCRによるDNA断片の増幅の有無を電気泳動で確認する。
PCR反応液170を定量部204に保持した後、電圧印加部210に電圧を印加する。定量部204に移送されたPCR反応液170が電気泳動流路206を通ってマイナス極209からプラス極208に向かって泳動される。電気泳動されたPCR反応液170を電気泳動流路206を検出ユニットでスキャンすることによってDNAを検出し、PCRによるDNA断片の増幅の有無を電気泳動で確認する。
一般に、PCR産物を電気泳動して、そのPCR産物が目的の産物であるかどうかを分子量で確認するために、内部標準物質として適当な濃度に調整した標準試料と既知の分子量のDNA断片を含むマーカーDNAを同時に電気泳動する必要がある。PCR産物とマーカーDNAを同一流路で測定する場合、PCR産物とマーカーDNAの標識剤は異なるものである方がよい。たとえばPCR産物をCy5で標識し、マーカーDNAをFAMで標識している場合、635nmの光を当てて、Cy5標識PCR産物を励起し、650nmの蛍光をディテクターで検出することにより、PCR産物を検出する。同じ流路を495nmの光を当てて、マーカーDNAを励起し、512nmの蛍光をディテクターで検出することにより、マーカーDNAを検出し、それぞれのデータを重ね合わせることで、移動度と分子量の関係より、目的の断片の分子量を測定することが出来る。また蛍光量を計算することで、濃度も計算できる。このように同一流路で複数標識のサンプルを測定する場合、装置の仕様としては多色の検出系が必要となる。しかし、流路間のバラツキを考慮する必要がなく、正確で直接的な分子量を測定することが出来る。この場合、内部標準物質は入れなくてもよい。
また、検出系がひとつでPCR産物やマーカーDNAといったDNAの標識剤が一つである場合は、PCR産物とマーカーDNAを電気泳動する流路は変える必要がある。また、PCR産物は内部標準物質と一緒に電気泳動し、マーカーDNAと内部標準物質の移動速度を比較することで流路間のバラツキを考慮する必要がある。内部標準物質を含むPCR産物とマーカーDNAの移動度からPCR産物の分子量を計算することが出来る。
本実施の形態で実験したPCR産物の電気泳動結果を図9に示す。同一検出系でPCR産物と内部標準物質を電気泳動した。縦軸に蛍光強度、横軸に時間(秒)を示している。時間の早い方から、分子量の小さい内部標準物質(10bp)、プライマー(20mer)、PCR産物(60bp)、内部標準物質(200bp)の順にピークが検出されている。今回増幅するPCR産物の長さは60bpであり、これは検出されたピークが示す長さと一致しており、本実施の形態でPCRが行えたことを示唆している。
PCRからPCR産物の確認までを自動で行う本発明は、工程数に応じてチャンバの数を多くし、ワックスによって溶液の流れを制御できることから、DNA抽出等の前処理にも応用展開が可能である。
さらに、DNAの標識のために、従来用いられているエチジウムブロマイドなどの発がん性物質でDNAを電気泳動したゲルを染色する必要がないので、使用者が取り扱い時に汚染されることがない。また、自動化することで、人的操作ミスを減らすことが出来、測定誤差がの低減が図れる。
本発明にかかる生体サンプルプレート及びそれを用いた生体サンプル分析装置は、DNAが含まれた生体サンプルを分析プレートに注入するだけで自動的にDNA増幅して正確にDNA分析を行うことが出来るので、DNA分析を行う生体分析装置に有用である。また、正確さと簡便さを合わせ持つことから、特に野外で用いる医療用検査装置としても有用である。
101 鋳型
102 プライマーF
103 プライマーR
104 酵素
105 dNTP
106 PCRバッファ
110 ワックス
120 ポリマー
121 インターカレーター
151 レーザー
152 励起フィルタ
153 ダイクロイックミラー
154 蛍光フィルタ
155 スリット
156 ディテクター
170 PCR反応液
200 プレート
201 注入チャンバ
202 PCRチャンバ
203 流路
204 定量部
205 流路
206 電気泳動流路
207 廃棄チャンバ
208 プラス極
209 マイナス極
210 電極チャンバ
211 サンプル注入口
212 ポリマー注入口
213 ポリマー注入チャンバ
214 チャンバ
215 流路
216 流路
217 流路
220 粘着シール
230 流路ユニット
231 PCRユニット
232 電気泳動ユニット
311 プレートトレイ
312 モータ
314 回転制御回路
315 シャフト
320 PCRボックス
321 ヒーター
322 ファン
323 ファン駆動回路
324 PCR温度制御部
325 高温制御部
326 温度センサー
327 冷却部
328 温度センサー
329 低温制御部
330 電極ピン
331 電極プレート
332 電極プレート上下駆動機構
333 プレート上下駆動部
334 電気泳動制御部
335 電圧制御回路
370 システム制御部
102 プライマーF
103 プライマーR
104 酵素
105 dNTP
106 PCRバッファ
110 ワックス
120 ポリマー
121 インターカレーター
151 レーザー
152 励起フィルタ
153 ダイクロイックミラー
154 蛍光フィルタ
155 スリット
156 ディテクター
170 PCR反応液
200 プレート
201 注入チャンバ
202 PCRチャンバ
203 流路
204 定量部
205 流路
206 電気泳動流路
207 廃棄チャンバ
208 プラス極
209 マイナス極
210 電極チャンバ
211 サンプル注入口
212 ポリマー注入口
213 ポリマー注入チャンバ
214 チャンバ
215 流路
216 流路
217 流路
220 粘着シール
230 流路ユニット
231 PCRユニット
232 電気泳動ユニット
311 プレートトレイ
312 モータ
314 回転制御回路
315 シャフト
320 PCRボックス
321 ヒーター
322 ファン
323 ファン駆動回路
324 PCR温度制御部
325 高温制御部
326 温度センサー
327 冷却部
328 温度センサー
329 低温制御部
330 電極ピン
331 電極プレート
332 電極プレート上下駆動機構
333 プレート上下駆動部
334 電気泳動制御部
335 電圧制御回路
370 システム制御部
Claims (11)
- 回転するための回転孔と、
測定すべき生体サンプルを収納するための注入チャンバと、
前記注入チャンバの前記生体サンプルをPCR増幅するPCR増幅部と、
前記PCR増幅部により増幅されたPCR産物を連続して分析でする分析部を備えた生体分析プレート。 - 前記生体サンプルは、DNAまたはRNAである請求項1に記載の生体分析プレート。
- 前記PCR増幅部は、注入流路を介して前記注入チャンバと接続されたPCRチャンバと
前記PCRチャンバにてPCR増幅されたPCR産物を前記分析部に送るための送液流路とからなり、
前記PCRチャンバの底部は前記注入流路よりも深い請求項1に記載の生体分析プレート。 - 前記送液流路は、前記PCRチャンバの底部に設けられている請求項3に記載の生体分析プレート。
- 前記PCRチャンバは、その内部に前記生体サンプルをPCR増幅するための試薬とワックス塊とが予め設置されている請求項3に記載の生体分析プレート。
- 前記ワックス塊は、前記PCRチャンバの前記プレート回転面に垂直な断面の表面を全て覆う量である請求項5に記載の生体分析プレート。
- 前記ワックスの比重は、1より小さい請求項5に記載の生体分析プレート。
- 前記ワックスの融点は、前記酵素の反応温度よりも低く、室温(25℃)よりも高い請求項5に記載の生体分析プレート。
- 前記ワックスの沸点は、前記生体サンプルを含む溶液の沸点よりも高い請求項5に記載の生体分析プレート。
- 前記分析部は、前記送液流路に接続されたPCR産物を定量するための定量部と、
電気泳動に必要な緩衝液を入れるための緩衝液注入部と、
前記定量部で定量されたPCR産物を電気泳動するための電気泳動流路と、
前記緩衝液注入部と前記電気泳動流路とを接続するための接続流路と、
前記電気泳動流路に設けられた正負一対の電極を持つ、請求項3に記載の生体分析プレート。 - 請求項1に記載の生体分析プレートと、
前記生体分析プレートを回転させるためのモータと、
前記生体分析プレートを加熱するための加熱部と、
前記生体分析プレートの前記PCR増幅部で前記生体サンプルをPCR増幅する際に
前記モータを所定の回転数で回転するとともに前記加熱部に所定の温度パターンで
温度を発生するように指示を行う制御部と、
を備えた生体サンプル分析装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007333787A JP2009153422A (ja) | 2007-12-26 | 2007-12-26 | 生体サンプルプレート及びそれを用いた生体サンプル分析装置 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2007333787A JP2009153422A (ja) | 2007-12-26 | 2007-12-26 | 生体サンプルプレート及びそれを用いた生体サンプル分析装置 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2009153422A true JP2009153422A (ja) | 2009-07-16 |
Family
ID=40958124
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2007333787A Pending JP2009153422A (ja) | 2007-12-26 | 2007-12-26 | 生体サンプルプレート及びそれを用いた生体サンプル分析装置 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2009153422A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015503100A (ja) * | 2011-12-08 | 2015-01-29 | バイオサーフィット、 ソシエダッド アノニマ | 逐次分注および沈降速度の指標の決定 |
-
2007
- 2007-12-26 JP JP2007333787A patent/JP2009153422A/ja active Pending
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2015503100A (ja) * | 2011-12-08 | 2015-01-29 | バイオサーフィット、 ソシエダッド アノニマ | 逐次分注および沈降速度の指標の決定 |
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