JP2009144913A - 摩擦クラッチおよびそれを備えた車両 - Google Patents

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俊典 猪森
Yosuke Ishida
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Abstract

【課題】構造が簡素であり、クラッチ切断に要する操作荷重の低減が可能な摩擦クラッチを提供する。
【解決手段】クラッチ2は、クランク軸32の回転により回転するクラッチハウジング46と、クラッチハウジング46と共に回転可能であるプレッシャプレート77と、皿ばね83と、プレッシャプレート77の回転力を受け、前記回転力をプレート群66から離反する方向にプレッシャプレート77を移動させる力に変換する倍力機構と、プレッシャプレート77と共に回転する摩擦プレート101と、クラッチ切断時に、摩擦プレート101を押圧する第1押圧プレート102と、摩擦プレート101に圧接されることにより、プレッシャプレート77から回転力を受け、前記回転力を前記倍力機構に伝達する第2押圧プレート103と、第1押圧プレート102を移動させる短プッシュロッド43aと、短プッシュロッド43aを作動させるクラッチ操作子とを備えている。
【選択図】図3

Description

本発明は、摩擦クラッチおよびそれを備えた車両に関する。
従来から、エンジン駆動力の伝達を断続する摩擦クラッチと、この摩擦クラッチを操作するクラッチ操作子とを備えた車両が知られている。クラッチ操作子の例としては、例えば、自動二輪車におけるクラッチレバー等が挙げられる。
一般に、車両が大型化すると摩擦クラッチの容量も大きくなり、摩擦クラッチを切断する際に必要とされる力も大きくなる。そのため、クラッチ操作の負担が大きくなる。そこで、クラッチ操作の負担を軽減するために、いわゆる倍力装置を摩擦クラッチに付加することが提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
下記特許文献2に記載された倍力装置を有する摩擦クラッチは、カウンターシャフト(=回転軸)と、前記回転軸の外周に設けられたクラッチリリースハブ(=従動側回転体)と、クラッチの外郭を形成する有底円筒状のクラッチハウジング(=駆動側回転体)と、前記駆動側回転体に取り付けられたクラッチディスク(=第1のプレート)と、前記従動側回転体に取り付けられ、前記第1のプレートと交互に配置されたクラッチプレート(=第2のプレート)と、前記第1のプレートと前記第2のプレートとを圧接させるクラッチプレッシャディスク(=プレッシャプレート)と、前記プレッシャプレートを前記第1のプレートと前記第2のプレートとが圧接する方向に付勢する弾性体と、前記プレッシャプレートを前記回転軸の軸方向に移動させるロッド状の第1クラッチプッシュピース(=作動軸)および略円筒状の第2クラッチプッシュピースと、前記作動軸を前記回転軸の軸方向に移動させるクラッチ操作系と、前記駆動側回転体と共に回転し前記回転軸の軸方向を移動可能なサブクラッチドライブディスク(=押圧体)、前記作動軸の一端に取り付けられたサブクラッチドリブンディスク(=回転力伝達部材)、および前記回転軸の軸方向で前記押圧体と前記回転力伝達部材との間に介在する摩擦材(摩擦プレート)により構成されたサブクラッチと、を備えている。そして、前記摩擦クラッチは、前記サブクラッチの回転力を利用することにより、前記プレッシャプレートを前記所定の方向と逆の方向に移動させるシフト機構(=倍力装置)と、を備えている。
前記プレッシャプレートは、前記第2クラッチプッシュピースの外周部に圧接されている。また、前記押圧体は、前記第2クラッチプッシュピースの内周部に圧接されている。これにより、前記プレッシャプレートと前記第2クラッチプッシュピースと前記押圧体とは、前記駆動側回転体と共に回転することができる。また、前記プレッシャプレートと前記第2クラッチプッシュピースと前記押圧体とは、共に回転軸の軸方向に移動することが可能である。
前記摩擦クラッチによれば、前記プレッシャプレートと前記第2クラッチプッシュピースと前記押圧体とが前記駆動側回転体と共に回転することができる。そのため、前記クラッチ操作系にてクラッチ切断時に必要な力は、前記押圧体が前記摩擦プレートと接触するまでに前記押圧体を前記回転軸の軸方向に移動させる力のみである。前記押圧体が前記摩擦プレートと接触すると、前記プレッシャプレートは前記押圧体より回転を受け、クラッチが切断する方向に移動する。以上のように、前記摩擦クラッチによれば、クラッチ切断に要する力を低減させることができる。
特開昭52−004955号公報 特許第3381442号公報
しかしながら、特許文献2に記載された倍力装置を有する摩擦クラッチは、前記駆動側回転体の回転は、前記プレッシャプレートと前記第2クラッチプッシュピースとを介して前記サブクラッチのうち前記押圧体に伝達されていた。つまり、前記プレッシャプレートと前記サブクラッチとの間には、前記第2クラッチプッシュピースが介在している。そのため、前記駆動側回転体の回転が前記サブクラッチに伝達されるまでに、余分な伝達経路が介在していた。さらに、前記第2クラッチプッシュピースは、略円筒状の形状を有している。つまり、前記第2クラッチプッシュピースは、軸方向の大きさが比較的大きい部材であるといえる。これにより、前記プレッシャプレートと前記サブクラッチとの間の伝達経路を構成するうえで、前記プレッシャプレートと前記押圧体との形状が複雑になり、その結果、クラッチの構造が複雑であった。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、構造の簡素化が可能であり、クラッチ切断に要する操作荷重の低減が可能な摩擦クラッチを提供することにある。
本発明に係る摩擦クラッチは、駆動側回転体と、従動側回転体と、プレッシャプレートと、弾性体と、倍力機構と、摩擦プレート、押圧体、および回転力伝達部材を有するサブクラッチと、作動軸と、クラッチ操作子と、を備えている。
前記駆動側回転体は、第1のプレートを有し、エンジンのクランク軸の回転により回転する。従動側回転体は、前記第1のプレートに対して所定方向に対向した第2のプレートを有し、前記駆動側回転体の回転を受けて回転することができる。前記プレッシャプレートは、前記駆動側回転体に連結され、前記駆動側回転体に対して軸方向に移動可能であり且つ前記駆動側回転体と共に回転可能であって、所定方向への移動により前記第1のプレートと前記第2のプレートとを互いに接触させる。前記弾性体は、前記プレッシャプレートを前記所定方向に付勢する。倍力機構は、前記プレッシャプレートが前記所定方向と対向する方向に移動するときに、前記プレッシャプレートの回転力を受け、前記回転力を前記第1のプレートと前記第2のプレートとが離反する方向に前記プレッシャプレートを移動させる力に変換する。摩擦プレートは、前記プレッシャプレートと共に回転するように設けられ、前記駆動側回転体の軸方向に関して一方側に設けられた第1摩擦面と他方側に設けられた第2摩擦面とを有する。前記押圧体は、前記プレッシャプレートが前記所定方向と対向する方向に移動するときに、前記第1摩擦面と接触し、前記摩擦プレートを前記一方側から前記他方側に向かって押圧する。前記回転力伝達部材は、前記摩擦プレートの前記第2摩擦面と対向し、クラッチ切断時に前記押圧体から押圧された前記摩擦プレートに圧接されることによって前記プレッシャプレートから回転力を受け、前記回転力を前記倍力機構に伝達する。前記作動軸は、前記押圧体を前記一方側から前記他方側に向かって移動させる。前記クラッチ操作子は、前記押圧体を前記一方側から前記他方側に向かって移動させるように前記作動軸を作動させる。
本発明に係る摩擦クラッチによれば、前記倍力機構が備えられている。前記倍力機構は、クラッチ切断時に前記プレッシャプレートの回転力を受け、前記回転力を前記第1のプレートと前記第2のプレートとが離反する方向に前記プレッシャプレートを移動させる力に変換する。つまり、前記倍力機構が備えられていることにより、前記第1のプレートと前記第2のプレートとが離反する方向に前記プレッシャプレートを移動させるために必要な力が低減される。
さらに、本発明に係る摩擦クラッチによれば、前記摩擦プレートは、前記プレッシャプレートと共に回転するように設けられている。前記プレッシャプレートは、前記駆動側回転体に連結され、前記駆動側回転体に対して軸方向に移動可能であり且つ前記駆動側回転体と共に回転可能である。また、前記駆動側回転体は、エンジンのクランク軸の回転により回転する。そのため、本発明に係る摩擦クラッチによれば、エンジンのクランク軸の回転は、前記駆動側回転体と前記プレッシャプレートとのみを介し、前記摩擦プレートへ伝達される。つまり、本発明に係る摩擦クラッチによれば、前記プレッシャプレートと前記サブクラッチとの間の伝達経路を構成するうえで、前記プレッシャプレートと前記摩擦プレートとの形状を簡素にすることが可能になる。
以上のように、本発明によれば、構造の簡素化が可能であり、クラッチ切断に要する操作荷重の低減が可能な摩擦クラッチを提供することができる。
《実施形態1》
以下、実施形態に係る摩擦クラッチを搭載した自動二輪車1について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に説明する自動二輪車1およびクラッチ2は、本発明を実施した好ましい形態の単なる例示である。本発明に係る車両は、以下に説明する自動二輪車1に限定されるものではない。本発明に係る車両は、モーターサイクル、モペット、スクータ等の自動二輪車に限らず、例えば、ATV(All Terrain Vehicle)等の他の車両であってもよい。なお、本明細書において、自動二輪車とは、旋回する際に車体を傾ける形式の車両を言う。ここでいう自動二輪車は、車輪の数が2つの車両に限定されず、3つ以上の車輪を有していてもよい。
図1は、実施形態に係る自動二輪車1の左側面図である。なお、下記説明において、前後左右の方向は、後述するシート16に着座した乗員から見た方向をいうものとする。
《自動二輪車の構成》
図1に示すように、自動二輪車1は、車両本体7と、車両本体7の前側に設けられた前輪14と、車両本体7の後側に設けられた後輪19とを備えている。
車両本体7は、車体フレーム10を備えている。車体フレーム10は、ヘッドパイプ11を有している。ヘッドパイプ11の上端部には、ハンドル12が取り付けられている。一方、ヘッドパイプ11の下端には、フロントフォーク13を介して、前輪14が回転可能に取り付けられている。
車体フレーム10には、パワーユニット3が懸架されている。また、車体フレーム10には、車体カバー15が取り付けられている。前後方向において、車両本体7のほぼ中央部分から後方側には、シート16が配置されている。シート16の前方には燃料タンク17が配置されている。
車体フレーム10には、リアアーム18が揺動可能に支持されている。リアアーム18の後端部には、後輪19が回転可能に取り付けられている。後輪19は、図示しない動力伝達機構を介してエンジン4(図2参照)に連結されている。これにより、エンジン4の動力が後輪19に伝達され、後輪19が回転することとなる。
ハンドル12の右側には、図示しないアクセルグリップが設けられている。ハンドル12の左側には、左側グリップ29が設けられている。また、ハンドル12の左側であって左側グリップ29の前方には、後述するクラッチ2(図2参照)を断続する際に操作されるクラッチレバー24が設けられている。
車両本体7の左右両側の前後方向中央部には、フットレスト20Lが設けられている。車両本体7の左側かつ左側のフットレスト20Lのやや前方には、後述する変速装置5(図2参照)の変速比を変更する際に操作されるシフトペダル27が設けられている。車両本体7の左側かつシフトペダル27およびフットレスト20Lの下方には、サイドスタンド28が設けられている。
《パワーユニットの構成》
次に、図2を参照しながら、パワーユニット3の主要要素の構成について説明する。図2に示すように、パワーユニット3は、エンジン4と、変速装置5と、クラッチ2とを備えている。エンジン4の種類は特に限定されないが、本実施形態では、エンジン4は水冷式4サイクル並列4気筒型のエンジンである。
図示は省略するが、エンジン4は、4つのシリンダと、各シリンダ内で往復移動するピストンと、コンロッドを介してそれらピストンに連結されたクランク軸32とを有している。クランク軸32は、車幅方向に延びている。なお、符号31は、クランクケースを示している。
図2に示すように、クランク軸32は、クラッチ2を介して、変速装置5に接続されている。変速装置5は、メイン軸33と、ドライブ軸23と、ギヤ選択機構36とを備えている。メイン軸33は、クラッチ2を介してクランク軸32に接続されている。メイン軸33とドライブ軸23とは、それぞれ、クランク軸32と平行に配置されている。
メイン軸33には、多段の変速ギヤ34が装着されている。一方、ドライブ軸23には、多段の変速ギヤ34に対応する複数の変速ギヤ35が装着されている。多段の変速ギヤ34と複数の変速ギヤ35とは、選択された一対のギヤ同士のみで相互に噛合している。複数の変速ギヤ34のうち、選択された変速ギヤ34以外の変速ギヤ34と、複数の変速ギヤ35のうち、選択された変速ギヤ35以外の変速ギヤ35とのうちの少なくとも一方は、メイン軸33またはドライブ軸23に対して回転可能となっている。つまり、選択されていない変速ギヤ34と、選択されていない変速ギヤ35のうちの少なくとも一方は、メイン軸33またはドライブ軸23に対して空転するようになっている。すなわち、メイン軸33とドライブ軸23との間の回転伝達は、相互に噛合する、選択された変速ギヤ34および選択された変速ギヤ35のみを介して行われる。
変速ギヤ34,35の選択は、ギヤ選択機構36によって行われる。具体的に、変速ギヤ34,35の選択は、ギヤ選択機構36のシフトカム37によって行われる。シフトカム37の外周面には、複数のカム溝37aが形成されている。各カム溝37aには、シフトフォーク38が装着されている。各シフトフォーク38は、それぞれメイン軸33およびドライブ軸23の所定の変速ギヤ34および35に係合している。シフトカム37が回転することによって、複数のシフトフォーク38のそれぞれがカム溝37aに案内されてメイン軸33の軸方向に移動する。これにより、変速ギヤ34および35のうちの相互に噛合するギヤが選択される。具体的には、複数の変速ギヤ34および35のうち、シフトカム37の回転角度に応じた位置の一対のギヤのみが、メイン軸33およびドライブ軸23に対して、それぞれスプラインによる固定状態となる。これにより、変速ギヤ位置が決定され、変速ギヤ34および35を介して、メイン軸33とドライブ軸23との間で所定の変速比で回転伝達が行われる。なお、このギヤ選択機構36は、図1に示すシフトペダル27により操作される。
このような構成により、所定の一対の変速ギヤ34,35をメイン軸33およびドライブ軸23に固定し、クラッチ2を接続状態とした上でエンジン4を駆動すると、エンジン4の動力がクラッチ2を介してメイン軸33に伝達される。また、所定の一対の変速ギヤ34,35を介して、メイン軸33とドライブ軸23との間で所定の変速比で回転伝達が行われ、ドライブ軸23が回転駆動される。ドライブ軸23が回転駆動されると、ドライブ軸23と後輪19とを接続するチェーン等の伝達機構(図示省略)によって駆動力が伝達され、後輪19が回転することとなる。なお、前述のエンジン4と後輪19とをつなぐ動力伝達機構は、本実施形態では、クラッチ2、変速装置5およびチェーン等の伝達機構(図示省略)によって構成されている。
《クラッチの構成》
本実施形態では、クラッチ2は湿式多板式の摩擦クラッチによって構成されている。また、クラッチ2は、発進時または停止時において自動的に断続される遠心式のクラッチであるとともに、ライダーのクラッチレバー24の操作によって断続されるクラッチでもある。以下、図2、3、および4を参照しながら、クラッチ2の構成について詳述する。
−クラッチハウジング46−
図3に示すように、クラッチ2は、クラッチハウジング46を備えている。クラッチハウジング46には、メイン軸33が貫通している。クラッチハウジング46は、ハウジング本体46cを有している。ハウジング本体46cは、底部46aによって一端が閉じられた略円筒状に形成されている。ハウジング本体46cの底部46aには、メイン軸33が挿通されている。ハウジング本体46cには、複数対のアーム46dが設けられている。各アーム46dは、底部46aから、車幅方向の外側に向かって延びている。
図3に示すように、車幅方向とは、左右方向のことである。本実施形態では、クラッチ2はメイン軸33の右側に配置されているので、車幅方向の外側は右側、車幅方向の内側は左側となる。そのため、以下では、車幅方向の外側、内側を、それぞれ単に右側、左側と呼ぶこととする。
−シザーズギヤ45−
クラッチハウジング46には、シザーズギヤ45が取り付けられている。シザーズギヤ45は、2枚のギヤ45a,45bと、スプリング49と、2枚のプレート51,52とを備えている。ギヤ45aとギヤ45bとは、この2枚のプレート51,52の間に位置している。2枚のプレート51,52は、メイン軸33の軸方向に関して、リベットや、ビスなどの固定具によって相互に固定されている。これにより、2枚のギヤ45a,45bは、メイン軸33の軸方向に関して、相互に実質的に固定されている。一方、ギヤ45aとギヤ45bとは、回転方向に関して、相互に回転可能となっている。
ギヤ45aとギヤ45bとは、歯数が相互に等しい。ギヤ45aとギヤ45bとは、周方向に関して、それぞれの歯が互い違いに位置するように配置されている。スプリング49は、ギヤ45aとギヤ45bとの間に設けられている。このため、ギヤ45aとギヤ45bとには、スプリング49によってねじりトルクが付与される。これにより、エンジン4の変動トルクが吸収される。
なお、シザーズギヤ45のギヤ45aは、クランク軸32のギヤ32a(図2参照)と噛合している。また、シザーズギヤ45のギヤ45aは、クラッチハウジング46の底部46aに相対回転不能に固定されている。このような構成により、クランク軸32の回転に伴って、シザーズギヤ45のギヤ45aとクラッチハウジング46とは一体的に回転する。
シザーズギヤ45とメイン軸33との間には、ニードルベアリング53と、メイン軸33に対して回転不能に固定されたスペーサ54とが配置されている。このニードルベアリング53によって、シザーズギヤ45は、メイン軸33に対して回転可能となっている。つまり、シザーズギヤ45の回転は、直接メイン軸33に伝わらないようになっている。
−クラッチボス48−
クラッチボス48は、ナット67によって、メイン軸33に対して回転不能に固定されている。つまり、クラッチボス48は、メイン軸33と共に回転する。また、クラッチボス48とシザーズギヤ45との間には、スラストベアリング63が配置されている。これにより、シザーズギヤ45、ニードルベアリング53およびスペーサ54と、クラッチボス48とは、スラストベアリング63によって、所定の距離以下に近づかない様に規制される。すなわち、シザーズギヤ45、ニードルベアリング53およびスペーサ54は、メイン軸33の軸方向に関し、クラッチボス48側への移動を規制される。
−プレート群66−
クラッチハウジング46の内側には、複数のフリクションプレート64が配置されている。各フリクションプレート64は、メイン軸33の回転方向に関して、クラッチハウジング46に対して固定されている。このため、複数のフリクションプレート64は、クラッチハウジング46と共に回転する。なお、各フリクションプレート64は、メイン軸33の軸方向に関して変位可能である。このため、相互に隣接するフリクションプレート64相互間の距離は可変である。
複数のフリクションプレート64は、メイン軸33の軸方向に配列されている。相互に隣接する各フリクションプレート64の間には、クラッチプレート65が配置されている。クラッチプレート65は、隣接するフリクションプレート64に対向している。各クラッチプレート65は、メイン軸33の回転方向に関して、クラッチボス48に対して固定されている。このため、複数のクラッチプレート65は、クラッチボス48と共に回転する。なお、各クラッチプレート65は、メイン軸33の軸方向に関して変位可能である。このため、相互に隣接するクラッチプレート65相互間の距離は可変である。
本実施形態では、これら複数のフリクションプレート64と複数のクラッチプレート65とによってプレート群66が構成されている。
−プレッシャプレート77−
メイン軸33の右側には、プレッシャプレート77が配置されている。プレッシャプレート77は、略円盤形状に形成されている。プレッシャプレート77の中心側部分には、後述するサブクラッチ100が設けられている。プレッシャプレート77の半径方向の外側端部は、アーム46dと係合している。これにより、プレッシャプレート77は、クラッチハウジング46に対して回転不能であり、クラッチハウジング46と共に回転する。
プレッシャプレート77の半径方向外側の部分には、プレート群66側に突出する押圧部77bが形成されている。この押圧部77bは、プレート群66における最も右側に位置するフリクションプレート64に対向している。プレッシャプレート77が左側に移動すると、この押圧部77bが、プレート群66を左向きに押圧する。その結果、プレート群66のフリクションプレート64とクラッチプレート65とが圧接されることになる。
一方、プレッシャプレート77の半径方向外側の部分におけるプレート群66とは反対側の面には、ローラウエイト41を支持するカム面81が形成されている。これらカム面81およびローラウエイト41は、周方向に沿って複数設けられている。複数のカム面81は、メイン軸33の軸心を中心として放射状に配置されている。各カム面81は、半径方向の外側にいくに従って右側に向かうように傾斜している。
プレッシャプレート77よりも右側には、ローラリテーナー78が配置されている。ローラリテーナー78は、メイン軸33の軸方向から見て輪帯状に形成されている。ローラリテーナー78は、プレッシャプレート77のカム面81と対向している。これにより、各カム面81とローラリテーナー78とにより、メイン軸33の半径方向外側に向かって幅狭となる空間82が形成される。
ローラリテーナー78の半径方向の外側端部は、プレッシャプレート77と同様に、複数のアーム46dと係合している。これにより、ローラリテーナー78は、クラッチハウジング46に対して回転不能となっている。言い換えれば、ローラリテーナー78は、クラッチハウジング46と共に回転する。一方、メイン軸33の軸方向に関しては、ローラリテーナー78は、クラッチハウジング46に対して変位可能である。
ローラリテーナー78は、付勢部材としての皿ばね83によって、左側に付勢されている。言い換えれば、ローラリテーナー78は、皿ばね83によって、プレート群66側に付勢されている。これらローラリテーナー78および皿ばね83は、ローラウエイト41をカム面81側に押しつける当接部材70を構成している。
複数の空間82には、それぞれローラウエイト41が配置されている。ローラウエイト41は、クラッチハウジング46の回転に伴って旋回し、その旋回時に生じる遠心力によって、カム面81上を半径方向外側に向かって移動する。そして、ローラウエイト41は、上記遠心力が所定値以上となると、当接部材70からの反力を受けて、前記プレッシャプレート77をプレート群66側に押圧する。
アイドリング状態等のようにクランク軸32の回転速度が所定値よりも小さい場合は、クラッチハウジング46の回転速度も小さくなる。そのため、ローラウエイト41に作用する遠心力は比較的小さく、ローラウエイト41は比較的内側に位置する。これにより、ローラウエイト41がプレッシャプレート77を左向きに押す力は、実質的に零となる。その結果、プレート群66は、実質的にプレッシャプレート77から押圧されない非圧接状態となる。よって、クラッチハウジング46の回転は、クラッチボス48には伝達されない。すなわち、クラッチ2は切断状態となる。
一方、クランク軸32の回転速度が比較的大きくなると、それと共に、クラッチハウジング46の回転速度も比較的大きくなる。そのため、クラッチハウジング46の回転速度が大きくなるにつれ、ローラウエイト41に作用する遠心力が大きくなる。そして、ローラウエイト41に作用する遠心力が所定値以上となると、ローラウエイト41が外側に移動する。これにより、プレッシャプレート77は、ローラウエイト41によって左側に押圧され、プレート群66側に移動する。その結果、プレート群66が圧接され、クラッチ2が接続状態となる。
このようにしてプレート群66が圧接されてクラッチ2が接続されると、クラッチハウジング46の回転がプレート群66を介してクラッチボス48に伝達される。これにより、クラッチボス48は、クラッチハウジング46と共に回転する。
一方、クラッチ2が接続された状態において、クランク軸32の回転速度が小さくなると、ローラウエイト41に作用する遠心力が小さくなる。そのため、ローラウエイト41が半径方向の内側に移動する。その結果、プレッシャプレート77がプレート群66を押圧する力が実質的に零となり、クラッチ2が切断される。
このように、自動二輪車1では、遠心式のクラッチ2が設けられている。そのため、発進時または停止時には、クラッチ2がエンジン4の回転速度に応じて自動的に断続されるため、クラッチレバー24の操作が不要となる。そのため、本実施形態に係る自動二輪車1では、発進時または停止時のライダーの操作負担を軽減することができる。
−サブクラッチ100−
図3に示すように、本実施形態に係るクラッチ2は、サブクラッチ100を備えている。サブクラッチ100は、摩擦プレート101と、摩擦プレート101の左側の面(以下、第1摩擦面という)101aに対向する第1押圧プレート102と、摩擦プレート101の右側の面(以下、第2摩擦面という)101bに対向する第2押圧プレート103とを備えている。
摩擦プレート101は、プレッシャプレート77と共に回転するようにプレッシャプレート77に係合している。具体的には、プレッシャプレート77には、スライドアーム部77cが形成されている。一方、摩擦プレート101の半径方向外側には、溝(図示せず)が形成されている。そして、摩擦プレート101の上記溝がスライドアーム部77cに摺動可能に係合し、摩擦プレート101はプレッシャプレート77と共に回転するように構成されている。
第1押圧プレート102は、後述する短プッシュロッド43aに固定されている。そのため、第1押圧プレート102は、短プッシュロッド43aと共に軸方向に移動自在である。また、第1押圧プレート102は、短プッシュロッド43aと共に回転する。
第2押圧プレート103は、短プッシュロッド43aにセレーション嵌合されている。そのため、第2押圧プレート103は、短プッシュロッド43aと共に回転するが、短プッシュロッド43aに対して軸方向に相対移動可能となっている。第2押圧プレート103は、右側に延びるボス部103aを有している。このボス部103aは、軸受104を介してプレッシャプレート77を回転自在に支持している。これにより、第2押圧プレート103とプレッシャプレート77とは、相対回転自在となっている。また、第2押圧プレート103とプレッシャプレート77とは、軸方向に一体となって移動するように構成されている。
短プッシュロッド43aが右側に移動すると、第1押圧プレート102も右側に移動する。すると、第1押圧プレート102は、摩擦プレート101を第2押圧プレート103側に押しつける。その結果、摩擦プレート101は、第1押圧プレート102と第2押圧プレート103との間に挟まれる。それにより、プレッシャプレート77の回転力が摩擦プレート101を介して第1押圧プレート102および第2押圧プレート103に伝達され、第1押圧プレート102および第2押圧プレート103に回転力が加えられる。
後述するように、メイン軸33の内部には、貫通孔33aが形成されている。この貫通孔33aには、プッシュ機構43の短プッシュロッド43a、ボール43c、および長プッシュロッド43bが挿入されている。そして、この貫通孔33aの内壁と長プッシュロッド43b等との間の隙間89は、クラッチ2にオイルを供給するオイル供給路となっている。
さらに、短プッシュロッド43aには、上記隙間89内のオイルをサブクラッチ100に導くオイル供給路110が形成されている。オイル供給路110は、短プッシュロッド43aの左側部分に形成されたオイル導入路110aと、短プッシュロッド43aの中心部に形成されたオイル通路110bと、短プッシュロッド43aの右側部分に形成されたオイル導出路110cとから構成されている。オイル導入路110aは、半径方向に延びる孔であり、軸方向に延びるオイル通路110bとつながっている。同様に、オイル導出路110cも半径方向に延びる孔であり、オイル通路110bとつながっている。オイル導出路110cの出口、すなわちオイル導出路110cの半径方向外側の開口は、摩擦プレート101の第1摩擦面101aおよび第2摩擦面101bに向かって開口している。そのため、オイル供給路110のオイルは、第1摩擦面101aおよび第2摩擦面101bに向かって供給される。
−倍力機構−
図3に示すように、本実施形態に係るクラッチ2は、倍力機構200を備えている。倍力機構200は、プレッシャプレート77の回転力の一部をクラッチ2を切断する力に変換し、クラッチ2の切断に要する力を低減させるものである。本実施形態に係る倍力機構200は、いわゆるボールカムによって構成されている。倍力機構200は、第2押圧プレート103に固定されたスライド軸201と、第1カムプレート202と、第2カムプレート203と、ボールプレート204と、第2カムプレート203を第1カムプレート202から離反する方向に付勢するコイルばね205とを備えている。スライド軸201の先端側には、コイルばね205の右側部分に当接することによってコイルばね205を支持する支持プレート250が固定されている。
図5(b)に示すように、ボールプレート204には、3つのボール204aが転がり自在に支持されている。3つのボール204aは、スライド軸201の軸心を中心とする円周方向に沿って、均等に配置されている。ただし、ボールプレート204に支持されるボール204aの個数は、3個に限定される訳ではない。
図5(c)に示すように、第1カムプレート202の中心部には、貫通孔202bが形成されている。図3に示すように、この貫通孔202bにスライド軸201が挿通されている。スライド軸201は、第1カムプレート202に対して軸方向に移動自在であり、かつ回転自在である。つまり、第1カムプレート202は、スライド軸201が回転しても回転しないように構成されている。
図5(a)に示すように、第2カムプレート203の中心部には、セレーション孔203bが形成されている。第2カムプレート203は、スライド軸201にセレーション嵌合されている。そのため、第2カムプレート203は、スライド軸201に対して軸方向に移動自在であるが、スライド軸201と共に回転するようになっている。
コイルばね205の一端205aは、第2カムプレート203に係止されている。コイルばね205の他端205bは、クランクケース31に固定されたピン210に係止されている。これにより、第2カムプレート203は、コイルばね205によって、スライド軸201周りに回転するような回転力を受けている。また、第2カムプレート203は、皿ばね83およびコイルばね205の合計の付勢力によって、第1カムプレート202側に向かってスライド軸201の軸方向に移動するようなスライド力を受けている。
第1カムプレート202の右側の面(図5(c)においては紙面表側の面)には、第1カム面202aが形成されている。第2カムプレート203の左側の面(図5(a)においては紙面表側の面)には、第2カム面203aが形成されている。これら第1カム面202aおよび第2カム面203aは、第2カムプレート203が所定方向に回転するとボール204aが両カム面202a,203aの間から乗り上げ、第2カムプレート203が上記所定方向と逆の方向に回転すると、ボール204aが両カム面202a,203aの間に収納されるような形状に形成されている。言い換えると、両カム面202a,203aは、第2カムプレート203が皿ばね83およびコイルばね205の合計の付勢力に対抗して所定方向に回転すると、ボール204aによって両プレート202,203が互いに離反するように押圧され、第2カムプレート203が右側に移動するように形成されている。また、両カム面202a,203aは、第2カムプレート203が逆方向に回転すると、皿ばね83およびコイルばね205の合計の付勢力によって左側に移動するように形成されている。
−クラッチレリーズ機構86−
本実施形態のクラッチ2には、クラッチレリーズ機構86が設けられている。クラッチレリーズ機構86は、自動二輪車1のライダーによるクラッチレバー24の操作を受けて、強制的にプレート群66の圧接状態を解除する。このクラッチレリーズ機構86によって、自動二輪車1のライダーの手動操作によるクラッチ2の切断が可能となっている。
クラッチレリーズ機構86は、プッシュ機構43(図3参照)と、プッシュ機構43を駆動するための駆動機構87(図4参照)とを備えている。図3に示すように、プッシュ機構43は、短プッシュロッド43aと、長プッシュロッド43bと、これら短プッシュロッド43aと長プッシュロッド43bとの間に介在するボール43cとを備えている。メイン軸33の内部には貫通孔33aが形成されており、プッシュ機構43は貫通孔33aの内部に配置されている。なお、貫通孔33aは、クラッチ2の各摺動部などにオイルを供給するためのオイル供給孔を兼ねている。具体的に、貫通孔33aの内壁とプッシュ機構43との間の隙間89を介してオイルがクラッチ2の各摺動部に供給される。
短プッシュロッド43aの右側端は、メイン軸33から突出し、サブクラッチ100の第1押圧プレート102に取り付けられている。そのため、短プッシュロッド43aは、サブクラッチ100が接続されると、プレッシャプレート77と一体となって回転する。また、短プッシュロッド43aは、サブクラッチ100およびクラッチ2が接続されると、クラッチハウジング46と共に回転する。一方、長プッシュロッド43bは、メイン軸33と共に回転しない。このため、短プッシュロッド43aと長プッシュロッド43bとの間にボール43cが設けられ、短プッシュロッド43aと長プッシュロッド43bとの間の摺動抵抗が軽減されている。
図4は、駆動機構87を表す断面図である。図4に示すように、長プッシュロッド43bの左側端は、メイン軸33の左側端よりも左側に位置し、駆動機構87に至っている。なお、図4のメイン軸33の軸心よりも下の部分は、クラッチレリーズ機構86が駆動されていない状態を表している。言い換えれば、図4のメイン軸33の軸心よりも下の部分は、プッシュ機構43が比較的左側に位置し、プッシュ機構43によってプレッシャプレート77が右側に変位していない状態を表している。一方、図4のメイン軸33の軸心よりも上の部分は、クラッチレリーズ機構86が駆動されている状態を表している。言い換えれば、図4のメイン軸33の軸心よりも上の部分は、プッシュ機構43が比較的右側に位置し、プッシュ機構43によってプレッシャプレート77が右側に変位している状態を表している。
図4に示すように、駆動機構87は、シリンダ90とピストン91とを備えている。ピストン91は、シリンダ90に対して、メイン軸33の軸方向に摺動可能である。ピストン91は、長プッシュロッド43bに取り付けられている。このため、ピストン91が摺動することで、長プッシュロッド43bもメイン軸33の軸方向に移動する。
ピストン91とシリンダ90との間には、作動室92が区画形成されている。この作動室92には、オイルが満たされている。
ピストン91とクランクケース31との間には、圧縮コイルばね93が配置されている。ピストン91は、この圧縮コイルばね93によって、左側に付勢されている。つまり、プッシュ機構43が左側に変位してクラッチ2がつながる方向に付勢されている。そのため、自動二輪車1のライダーにより、クラッチレバー24(図1参照)の操作が解除されると、プッシュ機構43は自動的に左側に移動する。
《クラッチの動作》
次に、クラッチ2の動作について説明する。まず、クラッチ2を切断する際の動作について説明する。
自動二輪車1のライダーがクラッチレバー24(図1参照)を握ると、駆動機構87の作動室92の内圧が上昇する。これにより、ピストン91が右側に移動し、長プッシュロッド43bも右側に移動する。すると、ボール43cおよび短プッシュロッド43aも右側に移動し、サブクラッチ100の第1押圧プレート102が右側に移動する。これにより、サブクラッチ100の摩擦プレート101が第1押圧プレート102と第2押圧プレート103との間に挟まれ、サブクラッチ100が接続状態となる。すると、倍力機構200のスライド軸201がプレッシャプレート77と共に所定方向に回転する。
スライド軸201が所定方向に回転すると、倍力機構200の第2カムプレート203も同方向に回転する。すると、ボールプレート204のボール204aが第1カム面202aと第2カム面203aとの間から乗り上がり、第2カムプレート203がボール204aによって右側に押圧される。これにより、スライド軸201も右側に押圧される。その結果、短プッシュロッド43aが第1押圧プレート102および摩擦プレート101を介してプレッシャプレート77を右側に押し出す力と、スライド軸201が第2押圧プレート103および軸受104を介してプレッシャプレート77を右側に引っ張る力とにより、プレッシャプレート77が右側に移動する。これにより、プレート群66の圧接状態が解除され、クラッチ2は切断される。
なお、第2カムプレート203は、所定量以上の回転が規制されている。そのため、クラッチ2が切断された状態では、摩擦プレート101は第1押圧プレート102および第2押圧プレート103に対して回転する。つまり、摩擦プレート101は第1押圧プレート102および第2押圧プレート103に対して滑ることになる。しかし、摩擦プレート101の第1摩擦面101aおよび第2摩擦面101bにはオイルが供給されるので、摩擦プレート101の摩耗は抑制される。
次に、クラッチ2を接続する際の動作について説明する。
クラッチ2を接続する際には、ライダーは、握っていたクラッチレバー24を離す。すると、駆動機構87の作動室92の内圧が減少する。これにより、ピストン91および長プッシュロッド43bが左側に移動する。すると、ボール43cおよび短プッシュロッド43aも左側に移動し、サブクラッチ100の第1押圧プレート102が左側に移動する。これにより、サブクラッチ100の第1押圧プレート102が摩擦プレート101から離れる。また、第2押圧プレート103は、第1押圧プレート102から右向きに押されなくなる。そのため、スライド軸201に対する右向きの押圧力がなくなり、コイルばね205の付勢力を受けた第2カムプレート203が逆方向に回転することによって、第2カムプレート203およびスライド軸201は左側に移動する。その結果、第2押圧プレート103も左側に移動する。
また、プレッシャプレート77は、第1押圧プレート102による右向きの押圧力が解除されるので、皿ばね83等の付勢力によって左側に移動する。その結果、プレッシャプレート77がプレート群66を圧接し、クラッチ2は接続される。なお、この際、サブクラッチ100の摩擦プレート101は、第2押圧プレート103から離反する。
本実施形態に係るクラッチ2では、プレッシャプレート77が皿ばね83から受ける付勢力は、ローラウエイト41の半径方向位置によって変化する。具体的には、プレッシャプレート77の回転数が大きい場合には、ローラウエイト41は半径方向の外側に移動する。その結果、ローラウエイト41は右側に移動し、皿ばね83を大きく変形させることになる。したがって、皿ばね83自体の弾性係数を大きくしなくても、皿ばね83はローラウエイト41によって大きく変形するので、プレッシャプレート77が皿ばね83から受ける付勢力は、相対的に大きくなる。一方、プレッシャプレート77の回転数が小さい場合には、ローラウエイト41は半径方向の内側に移動する。その結果、ローラウエイト41は左側に移動し、皿ばね83の変形量は少なくなる。したがって、プレッシャプレート77が皿ばね83から受ける付勢力は、相対的に小さくなる。
エンジン回転数が大きい場合には、プレッシャプレート77によってプレート群66を大きな押圧力で圧接する必要がある。本実施形態に係るクラッチ2では、エンジン回転数が大きくなると、ローラウエイト41が半径方向外側に移動することによって、皿ばね83の変形量が大きくなる。そのため、皿ばね83の弾性係数を大きくしなくても、十分な大きさの押圧力を得ることができる。したがって、皿ばね83の弾性係数、すなわちばね容量を比較的小さく抑えることができる。
ところで、アイドリング状態等の低速回転時には、ローラウエイト41は半径方向内側に移動し、プレッシャプレート77はプレート群66を圧接しない状態となる。つまり、クラッチアウトの状態となる。そして、アイドリング状態からエンジン回転数が増加すると、やがてローラウエイト41は半径方向の外側に移動し、プレッシャプレート77がプレート群66を圧接する状態となる。つまり、クラッチインの状態となる。ところが、本実施形態に係るクラッチ2では、皿ばね83の弾性係数が比較的小さく、また、クラッチインの瞬間では未だエンジン回転数はそれほど大きくなく、皿ばね83の変形量も比較的小さいため、プレッシャプレート77がプレート群66を圧接する力は比較的小さい。したがって、プレート群66が急激に圧接されることはなく、クラッチ2は滑らかに接続されることになる。
《実施形態の効果》
以上のように、本実施形態に係るクラッチ2によれば、倍力機構200を備えているので、クラッチ2の切断に要する力を低減させることができる。また、本実施形態に係るクラッチ2は、遠心力の大きさに応じた移動量だけ半径方向の外側に移動し、この移動量に応じた力でプレッシャプレート77をプレート群66側に押圧するローラウエイト41を備えている。したがって、エンジン回転数が大きい場合には、ローラウエイト41が半径方向外側に移動することによって、プレッシャプレート77がプレート群66を圧接する力を比較的大きくすることができる。そのため、エンジン回転数が大きい場合であっても、プレート群66における滑りを抑制することができ、クラッチ2の動力伝達効率を向上させることができる。一方、エンジン回転数が小さい場合には、ローラウエイト41が半径方向内側に移動することによって、プレッシャプレート77がプレート群66を圧接する力を比較的小さく抑えることができる。よって、アイドリング状態からクラッチ2を接続する際のショックを低減させることができる。したがって、本実施形態に係るクラッチ2によれば、クラッチ切断時の操作荷重の低減と、アイドリング状態からクラッチ2を接続する際のショックの低減とを両立させることが可能となる。
本実施形態によれば、プレッシャプレート77は、クラッチハウジング46に従って回転するようにクラッチハウジング46に支持または連結されている。プレッシャプレート77の右側の面には、ローラウエイト41を半径方向の外側に行くほど右側に導くカム面81が形成されている。クラッチ2は、ローラウエイト41を介してプレッシャプレート77のカム面81と対向する位置に配置された当接部材70を備えている。当接部材70は、ローラウエイト41が当接するとローラウエイト41にカム面81に向かう方向の反力を与える。
これにより、プレッシャプレート77は、プレート群66を圧接する機能と、ローラウエイト41を支持およびガイドする機能とを有している。そのため、プレート群66を圧接するための部材と、ローラウエイト41を支持およびガイドするための部材とを別々に設ける必要がない。したがって、本実施形態によれば、クラッチ2の部品点数の削減およびコンパクト化を図ることができる。
また、本実施形態によれば、クラッチ2はサブクラッチ100を備えている。サブクラッチ100は、プレッシャプレート77と共に回転するように設けられた摩擦プレート101と、クラッチ切断時に摩擦プレート101の第1摩擦面101aと接触し、摩擦プレート101を右側に押圧する第1押圧プレート102と、クラッチ切断時に摩擦プレート101の第2摩擦面101bと接触し、摩擦プレート101に圧接されることによってプレッシャプレート77から回転力を受け、この回転力を倍力機構200に伝達する第2押圧プレート103とを備えている。
このように、摩擦プレート101は、2つの摩擦面101a,101bを備えている。そのため、プレッシャプレート77から倍力機構200に対して、回転力を効率よく伝達することができる。
また、本実施形態では、サブクラッチ100は、メイン軸33の軸方向に関して、クラッチボス48と当接部材70との間に配置されている。すなわち、クラッチボス48と当接部材70との間の空間を、サブクラッチ100の設置スペースとして有効に活用している。したがって、クラッチ2のコンパクト化を図ることができる。
また、本実施形態に係るクラッチ2は、クラッチボス48に従って回転するようにクラッチボス48に支持または連結されたメイン軸33を備え、このメイン軸33の内部に、軸方向に延びる貫通孔33aが形成されている。また、クラッチ2はプッシュ機構43を備えており、プッシュ機構43は、少なくとも一部が貫通孔33aに挿入され、クラッチ切断時に第1押圧プレート102を右側に押し出す短プッシュロッド43aを有している。そして、短プッシュロッド43aの内部には、サブクラッチ100にオイルを供給するオイル供給路110が形成されている。
このように、本実施形態によれば、オイル供給路110を通じてサブクラッチ100にオイルを直接的に供給することができる。すなわち、クランクケース31内に飛散しているオイルだけでサブクラッチ100に給油を行うのではなく、オイル供給路110を通じてサブクラッチ100にオイルを積極的に供給することができる。したがって、サブクラッチ100に十分な量のオイルを供給することができ、サブクラッチ100の摩耗を抑制することができる。
本実施形態に係るクラッチ2では、倍力機構200はボールカムによって構成されていた。そのため、倍力機構200を小型化することができる。ただし、倍力機構200はボールカムに限らず、その他の構成を有する倍力機構であってもよい。
本実施形態に係るクラッチ2は、複数のフリクションプレート64と複数のクラッチプレート65とが交互に配列された多板式のクラッチである。しかし、クラッチ2は、1枚のフリクションプレートと1枚のクラッチプレートとからなる単板式のクラッチであってもよい。また、摩擦力によって動力を伝達するその他の形式の摩擦クラッチであってもよい。ただし、通常、多板式のクラッチでは、単板式のクラッチに比べて、クラッチの容量が大きい。言い換えると、クラッチを介して伝達される駆動力が大きい。そのため、上述の効果、すなわち、クラッチ切断時の操作荷重の低減と、アイドリング状態からクラッチ2を接続する際のショックの低減とを両立させるという効果が、特に顕著に発揮される。
《変形例》
上記実施形態は、アイドリング状態等の低速回転時には、プレッシャプレート77がプレート群66を圧接しない状態、すなわちクラッチアウトの状態となるように設定されていた。しかし、皿ばね83およびコイルばね205の付勢力を調整することにより、アイドリング状態等の低速回転時においても、プレッシャプレート77がプレート群66を圧接し、いわゆる半クラッチ状態となるようにすることも可能である。
《実施形態2》
《クラッチの構成》
本実施形態に係るクラッチ2は湿式多板式の摩擦クラッチによって構成されている。また、本実施形態に係るクラッチ2は、ライダーのクラッチレバー24の操作によって断続されるクラッチである。ただし、本実施形態に係るクラッチ2は、前記実施形態と異なり、ウエイトローラ41が備えられていない。以下、図6、および図7を参照しながら、本実施形態に係るクラッチ2の構成について詳述する。なお、前記実施形態1と同様の効果を奏するものについては、同符号を付し、説明を省略する。
−プレッシャプレート77−
図6に示すように、メイン軸33の右側には、プレッシャプレート77が配置されている。プレッシャプレート77は、略円盤形状に形成されている。プレッシャプレート77の中心側部分には、後述するサブクラッチ100が設けられている。プレッシャプレート77の半径方向の外側端部は、アーム46dと係合している。これにより、プレッシャプレート77は、クラッチハウジング46に対して回転不能であり、クラッチハウジング46と共に回転する。
プレッシャプレート77の半径方向外側の部分には、プレート群66側に突出する押圧部77bが形成されている。押圧部77bは、プレート群66における最も右側に位置するフリクションプレート64に対向している。プレッシャプレート77が左側に移動すると、押圧部77bが、プレート群66を左向きに押圧する。その結果、プレート群66のフリクションプレート64とクラッチプレート65とが圧接されることになる。
また、プレッシャプレート77は、押圧部77bが形成された位置よりも半径方向の内方の一部において、プレート群66側と反対側に突出したスライドアーム部77cを有している。倍力機構200の摩擦プレート101は、メイン軸33の軸方向に摺動自在にスライドアーム部77cに係合する。
図8(a)に示すように、プレッシャプレート77は、複数のスライドアーム部77cを有している。また、各スライドアーム部77cの間には、溝77eが形成されている。複数のスライドアーム部77cは、円周方向に関して、互いに均等の間隔で設けられ、互いに同一の幅を有している。これにより、複数の溝77eも、円周方向に関して、互いに均等の間隔で形成される。ただし、複数のスライドアーム部77cは、円周方向に関して、互いに異なる幅を有していてもよい。
図8(b)に示すように、摩擦プレート101は、複数の爪101eを有している。複数の爪101eは、摩擦プレート101の外部で放射状に延び、円周方向に関して、互いに均等の間隔で設けられている。また、複数の爪101eは、円周方向に関して、互いに同一の幅を有している。さらに、各爪101eの間には、溝101dが形成されている。ただし、複数の爪101eは、円周方向に関して、互いに異なる幅を有していてもよい。
各爪101eは、プレッシャプレート77の各溝77eに嵌合する。このとき、摩擦プレート101は、プレッシャプレート77に対して摺動可能である。摩擦プレート101は、プレッシャプレート77に対して、図8の紙面表裏方向に摺動する。
プレッシャプレート77は、縦断面において押圧部77bとスライドアーム部77cとの間で直線状に延びている。つまり、プレッシャプレート77は、押圧部77bとスライドアーム部77cとの間で屈曲した部位を有していない。そのため、プレッシャプレート77は、少なくとも押圧部77bとスライドアーム部77cとの間の形状が簡素である。これにより、クラッチ2の構造がより簡素化される。また、縦断面においてプレッシャプレート77が押圧部77bとスライドアーム部77cとの間で屈曲した部位を有していないため、プレッシャプレート77は軸方向に余分な大きさを有することが無い。これにより、クラッチ2の軸方向のコンパクト化が図られる。
なお、前記縦断面とは、プレッシャプレート77の回転中心を含む平面による断面のことである。
プレッシャプレート77の右方には、皿ばね83が設けられている。つまり、皿ばね83は、メイン軸33の軸方向に関して、プレッシャプレート77を基準にプレート群66と反対側に配置されている。ところで、プレッシャプレート77は、押圧部77bが形成された位置よりも半径方向の内方、且つ、スライドアーム部77cが形成された位置よりも半径方向の外方の一部にリテーナー部77dを有している。リテーナー部77dは、皿ばね83が配置されている側に突出している。つまり、リテーナー部77dは、メイン軸33の軸方向に関して、プレッシャプレート77を基準にプレート群66と反対側に突出している。
皿ばね83は、略円盤形状に形成されている。また、皿ばね83は、半径方向の一端側がリテーナー部77dに支持され、半径方向の他端側がクラッチハウジング46のアーム46dに支持されている。
−倍力機構−
本実施形態に係るクラッチ2は、倍力機構220を備えている。倍力機構220は、プレッシャプレート77の回転力の一部をクラッチ2を切断する力に変換し、クラッチ2の切断に要する力を低減させるものである。本実施形態に係る倍力機構220は、いわゆるボールカムによって構成されている。倍力機構220は、少なくとも、第2押圧プレート103に固定されたスライド軸211と、第1カムプレート222と、第2カムプレート223と、複数のボール224と、を備えている。
倍力機構220には、ボール224の数量は3つである。3つのボール224は、対向する第1カムプレート222と第2カムプレート223との間に配置され、第1カムプレート222と第2カムプレート223との間で転がり自在である。3つのボール224は、スライド軸211の軸心を中心とする円周方向に沿って、均等に配置されている。ただし、倍力機構220に設けられるボール224の個数は、3個に限定されない。ボール224は、後述するように、図7に示された仮想線(=一点鎖線)に沿って移動することができる。
第1カムプレート222および第2カムプレート223は、略円盤形状を有している。図7(c)に示すように、第1カムプレート222の中心部には、貫通孔222bが形成されている。図6に示すように、貫通孔222bにスライド軸211が挿通されている。スライド軸211は、第1カムプレート222に対して軸方向に移動自在であり、かつ回転自在である。つまり、第1カムプレート222は、スライド軸211が回転しても回転しないように構成されている。また、スライド軸211が軸方向に移動しても、第1カムプレート222は移動しないように構成されている。
図7(a)に示すように、第2カムプレート223の中心部には、セレーション孔223bが形成されている。第2カムプレート223は、スライド軸211にセレーション嵌合されている。そのため、第2カムプレート223は、スライド軸211に対して軸方向に移動自在であるが、スライド軸211と共に回転するようになっている。
第1カムプレート222は、クランクケース31に固定された複数の締結部材210に係止されている。これにより、第1カムプレート222は、クランクケース31に対して固定される。なお、図6では、締結部材210は、二つが図示されている。締結部材210の数量は、二つ以上であれば、特に限定されない。
スライド軸211の先端側には、ストッパ225が設けられている。ストッパ225により、第2カムプレート223は、スライド軸211に固定される。つまり、第2カムプレート223とスライド軸211とは、一体式に回転し、且つ、軸方向を一体式に移動する。
第1カムプレート222の右側の面(図7(c)においては紙面表側の面)には、第1カム溝222aが形成されている。また、第1カム溝222aの片側端部には、ボール収納溝222cが形成されている。第2カムプレート223の左側の面(図7(a)においては紙面表側の面)には、第2カム溝223aが形成されている。また、第2カム溝223aの片側端部には、ボール収納溝223cが形成されている。ボール収納溝222cおよびボール収納溝223cは、それぞれ他の第1カム溝222aおよび第2カム溝223aの部分よりも溝の深さ(図6での左右方向の幅)が大きい。ボール収納溝222cよりも、溝の深さ(図6での左右方向の幅)が小さい他の部分は、図7(c)において、ボール移動溝222dとして図示される。また、ボール収納溝223cよりも、溝の深さ(図6での左右方向の幅)が小さい他の部分は、図7(a)において、ボール移動溝223dとして図示される。
これら第1カム溝222aおよび第2カム溝223aは、第2カムプレート223が所定方向に回転するとボール224がボール収納溝222cおよびボール収納溝223cからそれぞれボール移動溝222dおよびボール移動溝223dに乗り上げ、第2カムプレート223が前記所定方向と逆の方向に回転すると、ボール224がボール収納溝222cおよびボール収納溝223cの間に収納されるような形状に形成されている。言い換えると、両カム溝222a,223aは、第2カムプレート243が皿ばね83の付勢力に対抗して所定方向に回転すると、ボール224によって両プレート222,223が互いに離反するように押圧され、第2カムプレート223が右側に移動するように形成されている。また、両カム溝222a,223aは、第2カムプレート223が逆方向に回転すると、皿ばね83の付勢力によって第2カムプレート223が左側に移動するように形成されている。
《クラッチの動作》
次に、クラッチ2の動作について説明する。まず、クラッチ2を切断する際の動作について説明する。
自動二輪車1のライダーがクラッチレバー24(図1参照)を握ると、駆動機構87の作動室92の内圧が上昇する。これにより、ピストン91が右側に移動し、長プッシュロッド43bも右側に移動する。すると、ボール43cおよび短プッシュロッド43aも右側に移動し、サブクラッチ100の第1押圧プレート102が右側に移動する。これにより、サブクラッチ100の摩擦プレート101が第1押圧プレート102と第2押圧プレート103との間に挟まれ、サブクラッチ100が接続状態となる。すると、倍力機構220のスライド軸211がプレッシャプレート77と共に所定方向に回転する。
スライド軸211が所定方向に回転すると、倍力機構220の第2カムプレート223も同方向に回転する。すると、3つのボール224は、ボール収納溝222cおよびボール収納溝223cからそれぞれボール移動溝222dおよびボール移動溝223dに乗り上がり、第2カムプレート223がボール224によって右側に押圧される。これにより、スライド軸211も右側に押圧される。その結果、短プッシュロッド43aが第1押圧プレート102および摩擦プレート101を介してプレッシャプレート77を右側に押し出す力と、スライド軸201が第2押圧プレート103および軸受104を介してプレッシャプレート77を右側に引っ張る力とにより、プレッシャプレート77が右側に移動する。これにより、プレート群66の圧接状態が解除され、クラッチ2は切断される。
次に、クラッチ2を接続する際の動作について説明する。
クラッチ2を接続する際には、ライダーは、握っていたクラッチレバー24を離す。すると、駆動機構87の作動室92の内圧が減少する。これにより、ピストン91および長プッシュロッド43bが左側に移動する。すると、ボール43cおよび短プッシュロッド43aも左側に移動し、サブクラッチ100の第1押圧プレート102が左側に移動する。これにより、サブクラッチ100の第1押圧プレート102が摩擦プレート101から離れる。また、第2押圧プレート103は、第1押圧プレート102から右向きに押されなくなる。そのため、スライド軸211に対する右向きの押圧力がなくなる。
ライダーが、握っていたクラッチレバー24を離すと、プレッシャプレート77は、皿ばね83の付勢力によって左側に移動する。ところで、第2押圧プレート103とプレッシャプレート77とは、軸方向に一体となって移動するように構成されている。そのため、プレッシャプレート77が左側に移動するとき、第2押圧プレート103が左側に移動する。また、前述したように、スライド軸211は、第2押圧プレート103に固定されている。そのため、第2押圧プレート103が左側に移動するとき、スライド軸211は、第2押圧プレート103と共に左側に移動する。
第2カムプレート223およびスライド軸211が左側に移動するとき、第2カムプレート223は、前記所定の方向の逆向きに回転する。このとき、複数のボール224は、ボール移動溝222dおよびボール移動溝223dから、ボール収納溝222cおよびボール収納溝223cの間に収納されようとする。
プレッシャプレート77が皿ばね83の付勢力によって左側に移動すると、プレッシャプレート77がプレート群66を圧接し、クラッチ2は接続される。なお、この際、サブクラッチ100の摩擦プレート101は、第2押圧プレート103から離反する。
以上のように、本実施形態および前記実施形態に係るクラッチ2は、クラッチハウジング46と、クラッチボス48と、メイン軸33と、プレッシャプレート77と、倍力機構と、摩擦プレート101と、第1押圧プレート102と、第2押圧プレート103と、短プッシュロッド43aと、クラッチレバー24と、を備えている。ここでいう前記倍力機構は、倍力機構200および倍力機構220のいずれか一方を指す。
クラッチハウジング46は、フリクションプレート64を有し、エンジン4のクランク軸32の回転によって回転する。クラッチボス48は、フリクションプレート64に対してクラッチハウジング46の軸方向に対向したクラッチプレート65を有し、クラッチハウジング46の回転を受けて回転することができる。メイン軸33は、クラッチボス48に支持または連結され、クラッチボス48と共に回転する。プレッシャプレート77は、クラッチハウジング46に連結され、クラッチハウジング46に対して軸方向に移動可能であり且つクラッチハウジング46と共に回転可能である。また、プレッシャプレート77は、左側へ移動することにより、フリクションプレート64とクラッチプレート65とを互いに接触させる。前記倍力機構は、クラッチ2の切断時にプレッシャプレート77の回転力を受け、前記回転力をフリクションプレート64とクラッチプレート65とが離反する方向にプレッシャプレート77を移動させる力に変換する。摩擦プレート101は、プレッシャプレート77と共に回転するように設けられ、左側に設けられた第1摩擦面101aと右側に設けられた第2摩擦面101bとを有している。第1押圧プレート102は、クラッチ2の切断時に第1摩擦面101aと接触し、摩擦プレート101を左側から右側に向かって押圧する。第2押圧プレート103は、摩擦プレート101の第2摩擦面101bと対向し、クラッチ2の切断時に第1押圧プレート102から押圧された摩擦プレート101に圧接されることによってプレッシャプレート77から回転力を受け、前記回転力を前記倍力機構に伝達する。短プッシュロッド43aは、クラッチ2の切断時に第1押圧プレート102を左側から右側に向かって移動させる。また、クラッチレバー24は、クラッチ2の切断時に第1押圧プレート102を左側から右側に向かって移動させるように短プッシュロッド43aを作動させる。
本実施形態および前記実施形態に係るクラッチ2によれば、摩擦プレート101は、プレッシャプレート77と共に回転するように設けられている。プレッシャプレート77は、クラッチハウジング46に連結され、クラッチハウジング46に対して軸方向に移動可能であり、且つ、クラッチハウジング46と共に回転可能である。また、クラッチハウジング46は、エンジン4のクランク軸32の回転により回転する。そのため、本実施形態および前記実施形態に係るクラッチ2によれば、エンジン4のクランク軸32の回転は、クラッチハウジング46とプレッシャプレート77とのみを介し、摩擦プレート101へ伝達される。つまり、クラッチ2によれば、プレッシャプレート77とサブクラッチ100との間の伝達経路を構成するうえで、プレッシャプレート77と摩擦プレート101との形状を簡素にすることが可能になる。したがって、本実施形態および前記実施形態によれば、構造の簡素化が可能であり、クラッチ切断に要する操作荷重の低減が可能な摩擦クラッチを提供することができる。
プレッシャプレート77には、スライドアーム部77cが形成されている。本実施形態では、図6に示すように、スライドアーム部77cは、プレート群66側に突出している。つまり、スライドアーム部77cは、右側に突出していない。これにより、スライドアーム部77cの突出した部分が、クラッチ2の幅を拡大させることがない。また、摩擦プレート101は、摺動自在にスライドアーム部77cとに係合する。これにより、摩擦プレート101は、プレッシャプレート77と共に回転することができる。
以上のように、本発明は、摩擦クラッチおよびそれを備えた車両について有用である。
自動二輪車の側面図である。 パワーユニットの主要要素の構成図である。 実施形態1に係るクラッチの断面図である。 駆動機構の断面図である。 実施形態1に係る倍力機構を示す図であって、(a)は第2カムプレートの裏面図、(b)はボールプレートの表面図、(c)は第1カムプレートの表面図である。 実施形態2に係るクラッチの断面図である。 実施形態2に係る倍力機構を示す図であって、(a)は第2カムプレートの裏面図、(b)は第1カムプレートと第2カムプレートとの間に配置されるボールの表面図、(c)は第1カムプレートの表面図である。 実施形態2に係るプレッシャプレートおよび摩擦プレートを示す図であって、(a)はプレッシャプレートの正面図、(b)は摩擦プレートの正面図である。
符号の説明
1 自動二輪車(車両)
2 クラッチ(摩擦クラッチ)
33 メイン軸(回転軸)
33a 貫通孔(孔)
41 ローラウエイト(遠心ウエイト)
43a 短プッシュロッド(作動軸)
46 クラッチハウジング(駆動側回転体)
48 クラッチボス(従動側回転体)
64 フリクションプレート(第1のプレート)
65 クラッチプレート(第2のプレート)
70 当接部材
77 プレッシャプレート
81 カム面
83 皿ばね(弾性体)
100 サブクラッチ
101 摩擦プレート
101a 第1摩擦面
101b 第2摩擦面
102 第1押圧プレート(押圧体)
103 第2押圧プレート(回転力伝達部材)
110 オイル供給路
200 倍力機構
220 倍力機構

Claims (6)

  1. 第1のプレートを有し、エンジンのクランク軸の回転により回転する駆動側回転体と、
    前記第1のプレートに対して所定方向に対向した第2のプレートを有し、前記駆動側回転体の回転を受けて回転することが可能な従動側回転体と、
    前記駆動側回転体に連結され、前記駆動側回転体に対して軸方向に移動可能であり且つ前記駆動側回転体と共に回転可能であって、所定方向への移動により前記第1のプレートと前記第2のプレートとを互いに接触させるプレッシャプレートと、
    前記プレッシャプレートを前記所定方向に付勢する弾性体と、
    前記プレッシャプレートが前記所定方向と対向する方向に移動するときに、前記プレッシャプレートの回転力を受け、前記回転力を前記第1のプレートと前記第2のプレートとが離反する方向に前記プレッシャプレートを移動させる力に変換する倍力機構と、
    前記プレッシャプレートと共に回転するように設けられ、前記駆動側回転体の軸方向に関して一方側に設けられた第1摩擦面と他方側に設けられた第2摩擦面とを有する摩擦プレートと、
    前記プレッシャプレートが前記所定方向と対向する方向に移動するときに、前記第1摩擦面と接触し、前記摩擦プレートを前記一方側から前記他方側に向かって押圧する押圧体と、
    前記摩擦プレートの前記第2摩擦面と対向し、クラッチ切断時に前記押圧体から押圧された前記摩擦プレートに圧接されることによって前記プレッシャプレートから回転力を受け、前記回転力を前記倍力機構に伝達する回転力伝達部材と、を有するサブクラッチと、
    前記押圧体を前記一方側から前記他方側に向かって移動させる作動軸と、
    前記押圧体を前記一方側から前記他方側に向かって移動させるように前記作動軸を作動させるクラッチ操作子と、
    を備えた摩擦クラッチ。
  2. 前記プレッシャプレートには、スライドアーム部が形成され、
    前記摩擦プレートは、前記スライドアーム部に摺動可能に係合する、
    請求項1に記載の摩擦クラッチ。
  3. 前記従動側回転体に支持または連結され、前記従動側回転体と共に回転する回転軸をさらに備え、
    前記回転軸には、軸方向に延びる孔が形成され、
    前記作動軸は、少なくとも一部が前記回転軸の孔に挿入され、
    前記作動軸の内部には、前記サブクラッチにオイルを供給するオイル供給路が形成されている、請求項1に記載の摩擦クラッチ。
  4. 前記倍力機構はボールカムである、請求項1に記載の摩擦クラッチ。
  5. 前記駆動側回転体は、前記第1のプレートを複数備え、
    前記従動側回転体は、前記第2のプレートを複数備え、
    前記複数の第1のプレートと前記複数の第2のプレートとは、前記所定方向に沿って交互に配置されている、
    請求項1に記載の摩擦クラッチ。
  6. 請求項1に記載の摩擦クラッチを備えた車両。
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