JP3155714U - 摩擦クラッチおよびそれを備えた車両 - Google Patents
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Abstract
【課題】クラッチ操作子と遠心ウエイトを有する摩擦クラッチとを備えた車両において、乗車フィーリングを損なうおそれのある遠心ウエイトの動きを抑制する。【解決手段】遠心ウエイト41の質量をm、回転中心Oから遠心ウエイト41の重心までの距離である公転半径をR、カム面81の遠心ウエイト41と接触している点の接線L1と半径方向L0とがなす角度をα、カム面181の遠心ウエイト41と接触している点の接線L2と半径方向L0とがなす角度をβ、皿ばね83がローラリテーナー78を付勢する付勢力をFとしたときに、下記式ω2=(1/m)・[F(tanα+tanβ)/R]で表される角速度ωが、Rが増加すると増加し、かつRが減少すると減少するようにカム面81およびカム面181を形成した。【選択図】図9
Description
本考案は、摩擦クラッチおよびそれを備えた車両に関する。
従来から、摩擦クラッチと、この摩擦クラッチを操作するクラッチ操作子とを備えた車両が知られている。クラッチ操作子の例として、例えば、自動二輪車におけるクラッチレバー等が挙げられる。摩擦クラッチは、駆動側のプレートと従動側のプレートとを備えている。駆動力を伝達する際には、駆動側プレートと従動側プレートとが互いに押し付けられる。そして、駆動側プレートと従動側プレートとの間に生じる摩擦力によって、駆動側プレートから従動側プレートに駆動力が伝達される。一方、駆動力の伝達を遮断する際には、クラッチ操作子の操作によって、駆動側プレートと従動側プレートとが互いに離反する。
ところで、車両が大型化すると、伝達すべき駆動力も大きくなるため、駆動側プレートと従動側プレートとの間の押し付け力を大きくする必要がある。そこで、押し付け力を補助するため、遠心ウエイトを備えた摩擦クラッチが提案されている(例えば、下記特許文献1参照)。遠心ウエイトを備えた摩擦クラッチでは、エンジンの回転速度の上昇に伴って遠心ウエイトが半径方向の外方に移動する。そして、遠心ウエイトに生じた遠心力の一部が押し付け力に変換され、駆動側プレートと従動側プレートとが強く押し付けられる。
しかしながら、本願考案者は、クラッチ操作子と遠心ウエイトを有する摩擦クラッチとを備えた車両において、遠心ウエイトの動きがクラッチ操作子を通じてライダーに伝わってしまう場合があることを見出した。そして、そのようなことを抑制することにより、乗車フィーリングの向上を図ることができるということに気がついた。
本考案は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、乗車フィーリングを損なうおそれのある遠心ウエイトの動きを抑制することにある。
本考案に係る摩擦クラッチは、クラッチ操作子によって断続される摩擦クラッチであって、第1のプレートを有する駆動側回転体と、前記第1のプレートに対向する第2のプレートを有する従動側回転体と、前記クラッチ操作子が操作されると所定方向に移動して前記第1のプレートと前記第2のプレートとを接触させるプレッシャプレートと、前記プレッシャプレートの前記第1および第2のプレート側と反対の側に形成されたカム面と、前記カム面に対向する対向面を有する対向部材と、前記カム面と前記対向面との間に配置された遠心ウエイトと、前記対向部材を介して前記遠心ウエイトを前記カム面側に付勢する付勢部材と、を備えた摩擦クラッチである。また、本考案に係る摩擦クラッチは、前記遠心ウエイトの質量をm、回転中心から前記遠心ウエイトの重心までの距離である公転半径をR、前記回転中心を含む縦断面における前記カム面の前記遠心ウエイトと接触している点の接線と半径方向との間のなす角の角度をα、前記回転中心を含む縦断面における前記対向面の前記遠心ウエイトと接触している点の接線と半径方向との間のなす角の角度をβ、前記付勢部材が前記対向部材を前記所定方向に付勢する付勢力をFとしたときに、下記式
ω2=(1/m)・[F(tanα+tanβ)/R]
で表される角速度ωが、Rが増加すると増加し、かつRが減少すると減少するものである。
ω2=(1/m)・[F(tanα+tanβ)/R]
で表される角速度ωが、Rが増加すると増加し、かつRが減少すると減少するものである。
本考案によれば、遠心ウエイトを有する摩擦クラッチにおいて、乗車フィーリングを損なうおそれのある遠心ウエイトの動きを抑制することが可能となる。
本願考案者は、鋭意研究の結果、遠心ウエイトの動きがクラッチ操作子を通じてライダーに伝わってしまう現象が、以下のような原因によって生じることを見出した。すなわち、遠心ウエイトを備えた摩擦クラッチ(以下、遠心式摩擦クラッチという)は、遠心ウエイトがカム面上を半径方向に移動するように構成されている。ところが、従来の遠心式摩擦クラッチでは、回転速度が増加して所定の回転速度領域に入ると、遠心ウエイトが半径方向の外側に向かって急に移動し、カムの半径方向外側部分に勢いよく接触する。そして、この遠心ウエイトとカムの半径方向外側部分との接触に起因するわずかな衝撃が、ライダーに伝わってしまう。
本願考案者は、さらなる研究の結果、所定の回転速度領域に入ると遠心ウエイトが急激に移動する原因は、遠心ウエイトに反力を与えるばねの特性と、カムの形状とにあることを見出した。
すなわち、クラッチ操作子によって操作される遠心式摩擦クラッチでは、駆動側プレートと従動側プレートとの相対移動の量(以下、ストロークという)は、クラッチ操作子の操作に伴うストロークと、遠心ウエイトの移動に伴うストロークとの合計となる。そのため、クラッチ操作子によって操作される遠心式摩擦クラッチでは、クラッチ操作子によって操作されない遠心式摩擦クラッチ(言い換えると、遠心ウエイトのみで断続される摩擦クラッチ)に比べて、全体のストロークを比較的長めに設定しなければならない。したがって、遠心ウエイトに反力を与えるばねとして、図7に示すように、幅広いストローク領域にわたって、荷重特性が大きく変化しないようなばね特性を有するばね(例えば、皿ばね等)が選ばれる。
また、クラッチ操作子によって操作される遠心式摩擦クラッチでは、図7に示すように、接続側から切断側(図7における左側から右側)に向かって、遠心ウエイトによるストローク領域S1と、クラッチ操作子によるストローク領域S2、すなわち手動による操作領域S2とが並んでいる。従来の遠心式摩擦クラッチでは、遠心ウエイトによるストローク領域を十分大きくとれるように、カム形状が凸状に形成されている。すなわち、遠心ウエイトが半径方向の内側から外側に移動したときに、当該遠心ウエイトがクラッチ軸方向に比較的たくさん移動できるように、カム形状は、半径方向内側の方が半径方向外側よりも傾斜角度が大きくなるように形成されている。
以上に述べたばね特性とカム形状とにより、所定の回転速度領域に入ると遠心ウエイトが半径方向外方に向かって急に移動する。そして、遠心ウエイトがカムの半径方向外側部分に勢いよく接触し、遠心ウエイトの動きがクラッチ操作子を通じてライダーに伝わってしまう。
本考案は、以上の知見に基づいてなされたものである。詳細は後述するが、従来の摩擦クラッチでは、遠心ウエイトの公転半径Rの増加に伴って角速度ωが減少することがあった。このことが、遠心ウエイトの急激な移動の原因となっていた。これに対し、本考案では、例えばカム面を凹状に形成すること等により、遠心ウエイトの角速度ωが、公転半径Rが増加すると増加し、公転半径Rが減少すると減少するようにした。これにより、遠心ウエイトの急激な移動を防止することができる。以下、本考案の実施の形態について説明する。
<実施形態1>
以下、実施形態に係る摩擦クラッチ2を搭載した自動二輪車1について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に説明する自動二輪車1およびクラッチ2は、本考案を実施した好ましい形態の単なる例示である。本考案に係る車両は、以下に説明する自動二輪車1に限定されるものではない。本考案に係る車両は、モーターサイクル、モペット、スクータ等の自動二輪車に限らず、例えば、ATV(All Terrain Vehicle)等の他の車両であってもよい。なお、本明細書において、自動二輪車とは、旋回する際に車体を傾ける形式の車両を言う。自動二輪車の車輪の数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
以下、実施形態に係る摩擦クラッチ2を搭載した自動二輪車1について、図面を用いて詳細に説明する。但し、以下に説明する自動二輪車1およびクラッチ2は、本考案を実施した好ましい形態の単なる例示である。本考案に係る車両は、以下に説明する自動二輪車1に限定されるものではない。本考案に係る車両は、モーターサイクル、モペット、スクータ等の自動二輪車に限らず、例えば、ATV(All Terrain Vehicle)等の他の車両であってもよい。なお、本明細書において、自動二輪車とは、旋回する際に車体を傾ける形式の車両を言う。自動二輪車の車輪の数は2つに限定されず、3つ以上であってもよい。
図1は、自動二輪車1の左側面図である。なお、下記説明において、前後左右の各方向は、後述するシート16に着座した乗員から見た方向をいうものとする。
《自動二輪車の構成》
図1に示すように、自動二輪車1は、車両本体7と、車両本体7の前側に設けられた前輪14と、車両本体7の後側に設けられた後輪19とを備えている。車両本体7は、車体フレーム10を備えている。車体フレーム10は、ヘッドパイプ11を有している。ヘッドパイプ11の上端部には、ハンドル12が取り付けられている。ヘッドパイプ11の下端には、フロントフォーク13を介して、前輪14が回転可能に取り付けられている。
図1に示すように、自動二輪車1は、車両本体7と、車両本体7の前側に設けられた前輪14と、車両本体7の後側に設けられた後輪19とを備えている。車両本体7は、車体フレーム10を備えている。車体フレーム10は、ヘッドパイプ11を有している。ヘッドパイプ11の上端部には、ハンドル12が取り付けられている。ヘッドパイプ11の下端には、フロントフォーク13を介して、前輪14が回転可能に取り付けられている。
車体フレーム10には、パワーユニット3が懸架されている。また、車体フレーム10には、車体カバー15が取り付けられている。車両本体7の中央部分の後方には、シート16が配置されている。シート16の前方には燃料タンク17が配置されている。
車体フレーム10には、リアアーム18が揺動可能に支持されている。リアアーム18の後端部には、後輪19が回転可能に取り付けられている。後輪19は、図示しない動力伝達機構を介してエンジン4(図2参照)に連結されている。これにより、エンジン4の動力が後輪19に伝達され、後輪19が回転する。
ハンドル12の右側には、図示しないアクセルグリップが設けられている。ハンドル12の左側には、左側グリップ29が設けられている。ハンドル12の左側であって左側グリップ29の前方には、後述するクラッチ2(図2参照)を断続する際に操作されるクラッチレバー24が設けられている。
車両本体7の左右両側には、フットレスト20Lが設けられている。左側のフットレスト20Lの前方には、後述する変速装置5(図2参照)の変速比を変更する際に操作されるシフトペダル27が設けられている。車両本体7の左側かつシフトペダル27およびフットレスト20Lの下方には、サイドスタンド28が設けられている。
《パワーユニットの構成》
図2に示すように、パワーユニット3は、エンジン4と、変速装置5と、クラッチ2とを備えている。エンジン4の種類は特に限定されないが、本実施形態では、エンジン4は水冷式4サイクル並列4気筒型のエンジンである。
図2に示すように、パワーユニット3は、エンジン4と、変速装置5と、クラッチ2とを備えている。エンジン4の種類は特に限定されないが、本実施形態では、エンジン4は水冷式4サイクル並列4気筒型のエンジンである。
図示は省略するが、エンジン4は、4つのシリンダと、各シリンダ内で往復移動するピストンと、コンロッドを介してそれらピストンに連結されたクランク軸32とを有している。クランク軸32は、車幅方向に延びている。なお、符号31は、クランクケースを示している。
クランク軸32は、クラッチ2を介して変速装置5に接続されている。変速装置5は、メイン軸33と、ドライブ軸23と、ギヤ選択機構36とを備えている。メイン軸33は、クラッチ2を介してクランク軸32に接続されている。メイン軸33とドライブ軸23とは、それぞれクランク軸32と平行に配置されている。
メイン軸33には、複数の変速ギヤ34が取り付けられている。ドライブ軸23には、複数の変速ギヤ34に対応する複数の変速ギヤ35が取り付けられている。複数の変速ギヤ34と複数の変速ギヤ35とは、選択された一対のギヤ同士のみで相互に噛み合っている。選択されていない変速ギヤ34と選択されていない変速ギヤ35とのうちの少なくとも一方は、メイン軸33またはドライブ軸23に対して回転可能となっている。メイン軸33とドライブ軸23との間の動力伝達は、選択された変速ギヤ34と選択された変速ギヤ35とを介してのみ行われる。
変速ギヤ34,35の選択は、ギヤ選択機構36によって行われる。シフトカム37の外周面には、複数のカム溝37aが形成されている。各カム溝37aには、シフトフォーク38が装着されている。各シフトフォーク38は、メイン軸33の所定の変速ギヤ34と、ドライブ軸23の所定の変速ギヤ35とに係合している。シフトカム37が回転することにより、複数のシフトフォーク38のそれぞれがカム溝37aに案内され、メイン軸33の軸方向に移動する。これにより、変速ギヤ34および変速ギヤ35のうち、相互に噛み合う一対のギヤが選択される。なお、ギヤ選択機構36は、シフトペダル27(図1参照)によって操作される。
このような構成により、クラッチ2を接続状態とした上でエンジン4を駆動すると、エンジン4の動力がクラッチ2を介してメイン軸33に伝達される。また、所定の一対の変速ギヤ34,35を介して、メイン軸33からドライブ軸23に動力が伝達され、ドライブ軸23が回転する。ドライブ軸23が回転すると、ドライブ軸23と後輪19とに接続されたチェーン等の伝達機構(図示省略)を介して、後輪19に動力が伝達される。その結果、後輪19が回転することとなる。
《クラッチの構成》
クラッチ2は湿式多板式の摩擦クラッチによって構成されている。また、クラッチ2は、自動二輪車1の発進時または停止時において自動的に断続される遠心式のクラッチであるとともに、ライダーのクラッチレバー24の操作によって断続されるクラッチでもある。以下、図2、3、および4を参照しながら、クラッチ2の構成について詳述する。
クラッチ2は湿式多板式の摩擦クラッチによって構成されている。また、クラッチ2は、自動二輪車1の発進時または停止時において自動的に断続される遠心式のクラッチであるとともに、ライダーのクラッチレバー24の操作によって断続されるクラッチでもある。以下、図2、3、および4を参照しながら、クラッチ2の構成について詳述する。
−クラッチハウジング−
図3に示すように、クラッチ2は、クラッチハウジング46を備えている。クラッチハウジング46には、メイン軸33が貫通している。クラッチハウジング46は、ハウジング本体46cを有している。ハウジング本体46cは、底部46aによって一端が閉じられた略円筒状に形成されている。ハウジング本体46cの底部46aには、メイン軸33が挿通されている。ハウジング本体46cには、複数対のアーム46dが設けられている。各アーム46dは、底部46aから、車幅方向の外側(図3における右側)に向かって延びている。
図3に示すように、クラッチ2は、クラッチハウジング46を備えている。クラッチハウジング46には、メイン軸33が貫通している。クラッチハウジング46は、ハウジング本体46cを有している。ハウジング本体46cは、底部46aによって一端が閉じられた略円筒状に形成されている。ハウジング本体46cの底部46aには、メイン軸33が挿通されている。ハウジング本体46cには、複数対のアーム46dが設けられている。各アーム46dは、底部46aから、車幅方向の外側(図3における右側)に向かって延びている。
図3に示すように、車幅方向とは、左右方向のことである。本実施形態では、クラッチ2はメイン軸33の右側に配置されているので、車幅方向の外側は右側、車幅方向の内側は左側となる。そのため、以下では、車幅方向の外側、内側を、それぞれ単に右側、左側と呼ぶこととする。
−シザーズギヤ−
クラッチハウジング46には、シザーズギヤ45が取り付けられている。シザーズギヤ45は、2枚のギヤ45a,45bと、スプリング49と、2枚のプレート51,52とを備えている。ギヤ45aとギヤ45bとは、プレート51,52の間に位置している。ギヤ45aとギヤ45bとは、軸方向には相対移動しないように構成されており、円周方向には相対回転可能に構成されている。
クラッチハウジング46には、シザーズギヤ45が取り付けられている。シザーズギヤ45は、2枚のギヤ45a,45bと、スプリング49と、2枚のプレート51,52とを備えている。ギヤ45aとギヤ45bとは、プレート51,52の間に位置している。ギヤ45aとギヤ45bとは、軸方向には相対移動しないように構成されており、円周方向には相対回転可能に構成されている。
シザーズギヤ45とメイン軸33との間には、ニードルベアリング53と、メイン軸33に対して回転しないスペーサ54とが配置されている。シザーズギヤ45は、ニードルベアリング53を介して、メイン軸33に対して回転可能となっている。つまり、シザーズギヤ45の回転は、メイン軸33に直接伝わらないようになっている。
−クラッチボス−
クラッチボス48は、ナット67によって、メイン軸33に固定されている。クラッチボス48は、メイン軸33と共に回転する。クラッチボス48とシザーズギヤ45との間には、スラストベアリング63が配置されている。これにより、シザーズギヤ45、ニードルベアリング53およびスペーサ54と、クラッチボス48とは、所定の距離以下に近づかない様に規制される。すなわち、シザーズギヤ45、ニードルベアリング53およびスペーサ54は、クラッチボス48側への移動が規制されている。
クラッチボス48は、ナット67によって、メイン軸33に固定されている。クラッチボス48は、メイン軸33と共に回転する。クラッチボス48とシザーズギヤ45との間には、スラストベアリング63が配置されている。これにより、シザーズギヤ45、ニードルベアリング53およびスペーサ54と、クラッチボス48とは、所定の距離以下に近づかない様に規制される。すなわち、シザーズギヤ45、ニードルベアリング53およびスペーサ54は、クラッチボス48側への移動が規制されている。
−プレート群−
クラッチハウジング46の内側には、複数のフリクションプレート64が配置されている。フリクションプレート64は、軸方向に配列されている。各フリクションプレート64は、クラッチハウジング46と共に回転する。各フリクションプレート64は、軸方向に変位可能である。このため、隣接するフリクションプレート64の間隔は可変である。隣接するフリクションプレート64の間には、クラッチプレート65が配置されている。クラッチプレート65は、フリクションプレート64に対向している。各クラッチプレート65は、クラッチボス48と共に回転する。各クラッチプレート65は、軸方向に変位可能であり、隣接するクラッチプレート65の間隔は可変である。本実施形態では、これらフリクションプレート64とクラッチプレート65とによってプレート群66が構成されている。
クラッチハウジング46の内側には、複数のフリクションプレート64が配置されている。フリクションプレート64は、軸方向に配列されている。各フリクションプレート64は、クラッチハウジング46と共に回転する。各フリクションプレート64は、軸方向に変位可能である。このため、隣接するフリクションプレート64の間隔は可変である。隣接するフリクションプレート64の間には、クラッチプレート65が配置されている。クラッチプレート65は、フリクションプレート64に対向している。各クラッチプレート65は、クラッチボス48と共に回転する。各クラッチプレート65は、軸方向に変位可能であり、隣接するクラッチプレート65の間隔は可変である。本実施形態では、これらフリクションプレート64とクラッチプレート65とによってプレート群66が構成されている。
−プレッシャプレート−
メイン軸33の右側には、プレッシャプレート77が配置されている。プレッシャプレート77は、略円盤形状に形成されている。プレッシャプレート77の中心部分には、後述するサブクラッチ100が設けられている。プレッシャプレート77の半径方向の外側端部は、アーム46dに取り付けられている。プレッシャプレート77は、クラッチハウジング46と共に回転する。
メイン軸33の右側には、プレッシャプレート77が配置されている。プレッシャプレート77は、略円盤形状に形成されている。プレッシャプレート77の中心部分には、後述するサブクラッチ100が設けられている。プレッシャプレート77の半径方向の外側端部は、アーム46dに取り付けられている。プレッシャプレート77は、クラッチハウジング46と共に回転する。
プレッシャプレート77の半径方向外側の部分には、プレート群66側に突出した押圧部77bが形成されている。この押圧部77bは、プレート群66のうちの最も右側に位置するフリクションプレート64に対向している。プレッシャプレート77が左方に移動すると、押圧部77bがプレート群66を左方に向かって押圧する。その結果、プレート群66のフリクションプレート64とクラッチプレート65とが圧接される。
一方、プレッシャプレート77の半径方向外側の部分におけるプレート群66とは反対側の面には、遠心ウエイト41と接触するカム面81が形成されている。これらカム面81および遠心ウエイト41は、周方向に沿って複数設けられている。複数のカム面81は、メイン軸33の軸心を中心として放射状に配置されている。各カム面81は、半径方向の外側にいくに従って右側に向かうように傾斜している。なお、カム面81の詳細については後述する。
−ローラリテーナー−
プレッシャプレート77よりも右方には、ローラリテーナー78が配置されている。ローラリテーナー78は、メイン軸33の軸方向から見て輪帯状に形成されている。ローラリテーナー78は、プレッシャプレート77のカム面81と対向する対向部材である。これにより、各カム面81とローラリテーナー78とにより、メイン軸33の半径方向外側に向かって幅狭となる空間82が形成される。
プレッシャプレート77よりも右方には、ローラリテーナー78が配置されている。ローラリテーナー78は、メイン軸33の軸方向から見て輪帯状に形成されている。ローラリテーナー78は、プレッシャプレート77のカム面81と対向する対向部材である。これにより、各カム面81とローラリテーナー78とにより、メイン軸33の半径方向外側に向かって幅狭となる空間82が形成される。
ローラリテーナー78の半径方向の外側端部は、プレッシャプレート77と同様に、複数のアーム46dと係合している。これにより、ローラリテーナー78は、クラッチハウジング46に対して回転不能となっている。言い換えれば、ローラリテーナー78は、クラッチハウジング46と共に回転する。一方、メイン軸33の軸方向に関しては、ローラリテーナー78は、クラッチハウジング46に対して変位可能である。
ローラリテーナー78は、付勢部材としての皿ばね83によって、左側に付勢されている。言い換えれば、ローラリテーナー78は、皿ばね83によって、プレート群66側に付勢されている。これらローラリテーナー78および皿ばね83は、遠心ウエイト41をカム面81側に押しつける当接部材70を構成している。
−遠心ウエイト−
複数の空間82には、それぞれ遠心ウエイト41が配置されている。遠心ウエイト41は、クラッチハウジング46の回転に伴って旋回し、その旋回時に生じる遠心力によって、カム面81上を半径方向外方に向かって移動する。そして、遠心ウエイト41は、上記遠心力が所定値以上となると、当接部材70からの反力を受けて、前記プレッシャプレート77をプレート群66側に押圧する。
複数の空間82には、それぞれ遠心ウエイト41が配置されている。遠心ウエイト41は、クラッチハウジング46の回転に伴って旋回し、その旋回時に生じる遠心力によって、カム面81上を半径方向外方に向かって移動する。そして、遠心ウエイト41は、上記遠心力が所定値以上となると、当接部材70からの反力を受けて、前記プレッシャプレート77をプレート群66側に押圧する。
アイドリング状態等のようにクランク軸32の回転速度が所定値よりも小さい場合は、クラッチハウジング46の回転速度も小さくなる。そのため、遠心ウエイト41に作用する遠心力は比較的小さく、遠心ウエイト41は比較的内側に位置する。図示は省略するが、クラッチ2には、プレート群66を圧接する方向と逆向きにプレッシャプレート77を付勢するスプリングが設けられている。そのため、遠心ウエイト41が比較的内側に位置する場合、遠心ウエイト41がプレッシャプレート77を左向きに押す力と、上記スプリングの付勢力との合力は、実質的に零となる。その結果、プレート群66は、実質的にプレッシャプレート77から押圧されない非圧接状態となる。よって、クラッチハウジング46の回転力は、クラッチボス48には伝達されない。すなわち、クラッチ2は切断状態となる。
一方、クランク軸32の回転速度が比較的大きくなると、それと共に、クラッチハウジング46の回転速度も比較的大きくなる。そのため、クラッチハウジング46の回転速度が大きくなるにつれ、遠心ウエイト41に作用する遠心力が大きくなる。そして、遠心ウエイト41に作用する遠心力が所定値以上となると、遠心ウエイト41が外側に移動する。これにより、プレッシャプレート77は、遠心ウエイト41によって左方に押圧され、プレート群66側に移動する。このとき、上記スプリングの付勢力は、遠心ウエイト41がプレッシャプレート77を左向きに押す力よりも弱くなる。その結果、プレート群66が圧接され、クラッチ2が接続状態となる。
このようにしてプレート群66が圧接されてクラッチ2が接続されると、クラッチハウジング46の回転力がプレート群66を介してクラッチボス48に伝達される。これにより、クラッチボス48は、クラッチハウジング46と共に回転する。
一方、クラッチ2が接続された状態において、クランク軸32の回転速度が小さくなると、遠心ウエイト41に作用する遠心力が小さくなる。そのため、遠心ウエイト41が半径方向の内方に移動する。これにより、遠心ウエイト41がプレッシャプレート77を左向きに押す力と、上記スプリングの付勢力との合力が実質的に零となる。つまり、プレッシャプレート77がプレート群66を押圧する力は、実質的に零となる。そのため、プレート群66は、実質的にプレッシャプレート77から押圧されない非圧接状態となる。その結果、クラッチ2が切断される。
このように、自動二輪車1では、遠心式のクラッチ2が設けられている。そのため、発進時または停止時には、クラッチ2がエンジン4の回転速度に応じて自動的に断続されるため、クラッチレバー24の操作が不要となる。そのため、本実施形態に係る自動二輪車1では、発進時または停止時のライダーの操作負担を軽減することができる。
−カム面−
前述したように、プレッシャプレート77にはカム面81が形成されている。次に、カム面81の詳細について説明する。図6は、カム面81と、遠心ウエイト41に作用する力とを図示した模式図である。図6に示すように、遠心ウエイト41がローラリテーナー78を介して皿ばね83(図6では図示せず)から受ける押圧力をF、遠心ウエイト41がカム面81から受ける反力をN、遠心ウエイト41にかかる遠心力をf1とすると、遠心ウエイト41に働く力の釣合い条件から、
である。なお、角度αは、回転中心Oを含む縦断面において、カム面81の遠心ウエイト41と接触している点Cの接線L1と、半径方向L0とがなす角度である。
前述したように、プレッシャプレート77にはカム面81が形成されている。次に、カム面81の詳細について説明する。図6は、カム面81と、遠心ウエイト41に作用する力とを図示した模式図である。図6に示すように、遠心ウエイト41がローラリテーナー78を介して皿ばね83(図6では図示せず)から受ける押圧力をF、遠心ウエイト41がカム面81から受ける反力をN、遠心ウエイト41にかかる遠心力をf1とすると、遠心ウエイト41に働く力の釣合い条件から、
遠心ウエイト41の質量をm、遠心ウエイト41の回転(すなわち、プレッシャプレート77の回転)の角速度をω、回転中心Oから遠心ウエイト41の重心までの距離、すなわち公転半径をRとする。遠心力f1=m・R・ω2である。上記式(1)および式(2)から、
となる。
ところで、本実施形態では、遠心ウエイト41をカム面81に押しつける付勢力を発生させる付勢部材は、皿ばね83である。皿ばね83は、図7に示すように、幅広いストローク領域にわたって、荷重特性が大きく変化しないような特性を有している。そのため、公転半径Rが増加してストロークSが大きくなっても、付勢力Fがそれほど増加しないストローク領域が存在する。また、皿ばね83によっては、公転半径Rの増加に伴ってストロークSが大きくなっても、Fが減少するストローク領域が存在する場合もある。しかし、式(4)において、Fがそれほど増加しなくても、tanαを適宜増加させてやれば、F・tanαの増加比率がω2の増加比率を常に上回るようにすることが可能である。そこで、本実施形態では、カム面81を、公転半径Rの増加に対するF・tanαの増加比率がω2の増加比率を常に上回るような形状にすることとした。本実施形態では、カム面81を凹状に形成することとした。
−サブクラッチ−
図3に示すように、クラッチ2は、サブクラッチ100を備えている。サブクラッチ100は、摩擦プレート101と、摩擦プレート101の左側の面(以下、第1摩擦面という)101aに対向する第1押圧プレート102と、摩擦プレート101の右側の面(以下、第2摩擦面という)101bに対向する第2押圧プレート103とを備えている。
図3に示すように、クラッチ2は、サブクラッチ100を備えている。サブクラッチ100は、摩擦プレート101と、摩擦プレート101の左側の面(以下、第1摩擦面という)101aに対向する第1押圧プレート102と、摩擦プレート101の右側の面(以下、第2摩擦面という)101bに対向する第2押圧プレート103とを備えている。
摩擦プレート101はプレッシャプレート77と共に回転するように構成されている。プレッシャプレート77には、スライドアーム部77cが形成されている。一方、摩擦プレート101の半径方向外側には、溝(図示せず)が形成されている。そして、摩擦プレート101の前記溝にスライドアーム部77cが取り付けられている。摩擦プレート101はプレッシャプレート77に対して軸方向に摺動可能である。
第1押圧プレート102は、後述する短プッシュロッド43aに固定されている。そのため、第1押圧プレート102は、短プッシュロッド43aと共に軸方向に移動自在である。また、第1押圧プレート102は、短プッシュロッド43aと共に回転する。
第2押圧プレート103は、短プッシュロッド43aにセレーション嵌合されている。そのため、第2押圧プレート103は、短プッシュロッド43aと共に回転するが、短プッシュロッド43aに対して軸方向に相対移動可能となっている。第2押圧プレート103は、右方に延びるボス部103aを有している。このボス部103aは、軸受104を介してプレッシャプレート77を回転自在に支持している。これにより、第2押圧プレート103とプレッシャプレート77とは、相対回転自在となっている。また、第2押圧プレート103とプレッシャプレート77とは、軸方向に一体となって移動するように構成されている。
短プッシュロッド43aが右方に移動すると、第1押圧プレート102も右方に移動する。すると、第1押圧プレート102は、摩擦プレート101を第2押圧プレート103側に押しつける。その結果、摩擦プレート101は、第1押圧プレート102と第2押圧プレート103との間に挟まれる。それにより、プレッシャプレート77の回転力が摩擦プレート101を介して第1押圧プレート102および第2押圧プレート103に伝達され、第1押圧プレート102および第2押圧プレート103に回転力が加えられる。
メイン軸33の内部には、貫通孔33aが形成されている。この貫通孔33aには、プッシュ機構43の短プッシュロッド43a、ボール43c、および長プッシュロッド43bが挿入されている。そして、この貫通孔33aの内壁と長プッシュロッド43b等との間の隙間89は、クラッチ2にオイルを供給するオイル供給路となっている。
さらに、短プッシュロッド43aには、上記隙間89内のオイルをサブクラッチ100に導くオイル供給路110が形成されている。オイル供給路110は、短プッシュロッド43aの左側部分に形成されたオイル導入路110aと、短プッシュロッド43aの中心部に形成されたオイル通路110bと、短プッシュロッド43aの右側部分に形成されたオイル導出路110cとから構成されている。オイル導入路110aは、半径方向に延びる孔であり、軸方向に延びるオイル通路110bとつながっている。同様に、オイル導出路110cも半径方向に延びる孔であり、オイル通路110bとつながっている。オイル導出路110cの出口、すなわちオイル導出路110cの半径方向外側の開口は、摩擦プレート101の第1摩擦面101aおよび第2摩擦面101bに向かって開口している。そのため、オイル供給路110のオイルは、第1摩擦面101aおよび第2摩擦面101bに向かって供給される。
−力増幅機構−
図3に示すように、クラッチ2は、力増幅機構200を備えている。力増幅機構200は、プレッシャプレート77の回転力の一部をクラッチ2を切断する力に変換するものである。力増幅機構200は、ライダーのクラッチ2の切断に要する力を低減させるものである。本実施形態に係る力増幅機構200は、いわゆるボールカムによって構成されている。力増幅機構200は、第2押圧プレート103に固定されたスライド軸201と、第1カムプレート202と、第2カムプレート203と、ボールプレート204と、第2カムプレート203を第1カムプレート202から離反する方向に付勢するコイルばね205とを備えている。スライド軸201の先端側には、コイルばね205の右側部分に当接することによってコイルばね205を支持する支持プレート250が固定されている。
図3に示すように、クラッチ2は、力増幅機構200を備えている。力増幅機構200は、プレッシャプレート77の回転力の一部をクラッチ2を切断する力に変換するものである。力増幅機構200は、ライダーのクラッチ2の切断に要する力を低減させるものである。本実施形態に係る力増幅機構200は、いわゆるボールカムによって構成されている。力増幅機構200は、第2押圧プレート103に固定されたスライド軸201と、第1カムプレート202と、第2カムプレート203と、ボールプレート204と、第2カムプレート203を第1カムプレート202から離反する方向に付勢するコイルばね205とを備えている。スライド軸201の先端側には、コイルばね205の右側部分に当接することによってコイルばね205を支持する支持プレート250が固定されている。
図5(b)に示すように、ボールプレート204には、3つのボール204aが転がり自在に支持されている。3つのボール204aは、スライド軸201の軸心を中心とする円周方向に沿って、均等に配置されている。ただし、ボールプレート204に支持されるボール204aの個数は、3個に限定される訳ではない。
図5(c)に示すように、第1カムプレート202の中心部には、貫通孔202bが形成されている。図3に示すように、この貫通孔202bにスライド軸201が挿通されている。スライド軸201は、第1カムプレート202に対して軸方向に移動自在であり、かつ回転自在である。つまり、第1カムプレート202は、スライド軸201が回転しても回転しないように構成されている。
図5(a)に示すように、第2カムプレート203の中心部には、セレーション孔203bが形成されている。第2カムプレート203は、スライド軸201にセレーション嵌合されている。そのため、第2カムプレート203は、スライド軸201に対して軸方向に移動自在であるが、スライド軸201と共に回転するようになっている。
コイルばね205の一端205aは、第2カムプレート203に係止されている。コイルばね205の他端205bは、クランクケース31に固定されたピン210に係止されている。これにより、第2カムプレート203は、コイルばね205によって、スライド軸201周りに回転するような回転力を受けている。また、第2カムプレート203は、皿ばね83およびコイルばね205の合計の付勢力によって、第1カムプレート202側に向かってスライド軸201の軸方向に移動するような力を受けている。
第1カムプレート202の右側の面(図5(c)においては紙面表側の面)には、第1カム面202aが形成されている。第2カムプレート203の左側の面(図5(a)においては紙面表側の面)には、第2カム面203aが形成されている。これら第1カム面202aおよび第2カム面203aは、第2カムプレート203が所定方向に回転するとボール204aが両カム面202a,203aの間から乗り上げ、第2カムプレート203が上記所定方向と逆の方向に回転すると、ボール204aが両カム面202a,203aの間に収納されるような形状に形成されている。言い換えると、両カム面202a,203aは、第2カムプレート203が皿ばね83およびコイルばね205の合計の付勢力に対抗して所定方向に回転すると、ボール204aによって両プレート202,203が互いに離反するように押圧され、第2カムプレート203が右側に移動するように形成されている。また、両カム面202a,203aは、第2カムプレート203が逆方向に回転すると、皿ばね83およびコイルばね205の合計の付勢力によって左側に移動するように形成されている。
−クラッチレリーズ機構−
クラッチ2には、クラッチレリーズ機構86が設けられている。クラッチレリーズ機構86は、ライダーによるクラッチレバー24の操作を受けて、プレート群66の圧接状態を強制的に解除する。このクラッチレリーズ機構86によって、ライダーの手動操作によるクラッチ2の切断が可能となっている。
クラッチ2には、クラッチレリーズ機構86が設けられている。クラッチレリーズ機構86は、ライダーによるクラッチレバー24の操作を受けて、プレート群66の圧接状態を強制的に解除する。このクラッチレリーズ機構86によって、ライダーの手動操作によるクラッチ2の切断が可能となっている。
クラッチレリーズ機構86は、プッシュ機構43(図3参照)と、プッシュ機構43を駆動するための駆動機構87(図4参照)とを備えている。図3に示すように、プッシュ機構43は、短プッシュロッド43aと、長プッシュロッド43bと、これら短プッシュロッド43aと長プッシュロッド43bとの間に介在するボール43cとを備えている。メイン軸33の内部には貫通孔33aが形成されており、プッシュ機構43は貫通孔33aの内部に配置されている。なお、貫通孔33aは、クラッチ2の各摺動部などにオイルを供給するためのオイル供給孔を兼ねている。貫通孔33aの内壁とプッシュ機構43との間の隙間89を介してオイルがクラッチ2の各摺動部に供給される。
短プッシュロッド43aの右側端は、メイン軸33から突出し、サブクラッチ100の第1押圧プレート102に取り付けられている。そのため、短プッシュロッド43aは、サブクラッチ100が接続されると、プレッシャプレート77と一体となって回転する。また、短プッシュロッド43aは、サブクラッチ100およびクラッチ2が接続されると、クラッチハウジング46と共に回転する。一方、長プッシュロッド43bは、メイン軸33と共に回転しない。このため、短プッシュロッド43aと長プッシュロッド43bとの間にボール43cが設けられ、短プッシュロッド43aと長プッシュロッド43bとの間の摺動抵抗が軽減されている。
図4は、駆動機構87を表す断面図である。図4に示すように、長プッシュロッド43bの左端は、メイン軸33の左端よりも左方に位置し、プッシュロッド駆動機構87に至っている。なお、図4のメイン軸33の軸心よりも下の部分は、クラッチレリーズ機構86が駆動されていない状態を表している。言い換えれば、図4のメイン軸33の軸心よりも下の部分は、プッシュ機構43が比較的左方に位置し、プッシュ機構43によってプレッシャプレート77が右方に変位していない状態を表している。一方、図4のメイン軸33の軸心よりも上の部分は、クラッチレリーズ機構86が駆動されている状態を表している。言い換えれば、図4のメイン軸33の軸心よりも上の部分は、プッシュ機構43が比較的右方に位置し、プッシュ機構43によってプレッシャプレート77が右方に変位している状態を表している。
図4に示すように、駆動機構87は、シリンダ90とピストン91とを備えている。ピストン91は、シリンダ90に対して、メイン軸33の軸方向に摺動可能である。ピストン91は、長プッシュロッド43bに取り付けられている。このため、ピストン91が摺動することで、長プッシュロッド43bもメイン軸33の軸方向に移動する。ピストン91とシリンダ90との間には、作動室92が区画形成されている。この作動室92には、オイルが満たされている。
ピストン91とクランクケース31との間には、圧縮コイルばね93が配置されている。ピストン91は、この圧縮コイルばね93によって、左方に付勢されている。つまり、プッシュ機構43が左方に変位してクラッチ2がつながる方向に付勢されている。そのため、ライダーにより、クラッチレバー24(図1参照)の操作が解除されると、プッシュ機構43は自動的に左方に移動する。
《クラッチの動作》
次に、クラッチ2の動作について説明する。まず、クラッチ2を切断する際の動作について説明する。
次に、クラッチ2の動作について説明する。まず、クラッチ2を切断する際の動作について説明する。
ライダーがクラッチレバー24(図1参照)を握ると、駆動機構87の作動室92の内圧が上昇する。これにより、ピストン91が右方に移動し、長プッシュロッド43bも右方に移動する。すると、ボール43cおよび短プッシュロッド43aも右方に移動し、サブクラッチ100の第1押圧プレート102が右方に移動する。これにより、サブクラッチ100の摩擦プレート101が第1押圧プレート102と第2押圧プレート103との間に挟まれ、サブクラッチ100が接続状態となる。すると、力増幅機構200のスライド軸201がプレッシャプレート77と共に所定方向に回転する。
スライド軸201が所定方向に回転すると、力増幅機構200の第2カムプレート203も同方向に回転する。すると、ボールプレート204のボール204aが第1カム面202aと第2カム面203aとの間から乗り上がり、第2カムプレート203がボール204aによって右方に押圧される。これにより、スライド軸201も右方に押圧される。その結果、短プッシュロッド43aが第1押圧プレート102および摩擦プレート101を介してプレッシャプレート77を右方に押し出す力と、スライド軸201が第2押圧プレート103および軸受104を介してプレッシャプレート77を右方に引っ張る力とにより、プレッシャプレート77が右方に移動する。これにより、プレート群66の圧接状態が解除され、クラッチ2は切断される。
なお、第2カムプレート203は、所定量以上の回転が規制されている。そのため、クラッチ2が切断された状態では、摩擦プレート101は第1押圧プレート102および第2押圧プレート103に対して回転する。つまり、摩擦プレート101は第1押圧プレート102および第2押圧プレート103に対して滑ることになる。しかし、摩擦プレート101の第1摩擦面101aおよび第2摩擦面101bにはオイルが供給されるので、摩擦プレート101の摩耗は抑制される。
次に、クラッチ2を接続する際の動作について説明する。
クラッチ2を接続する際には、ライダーは、握っていたクラッチレバー24を離す。すると、駆動機構87の作動室92の内圧が減少する。これにより、ピストン91および長プッシュロッド43bが左方に移動する。すると、ボール43cおよび短プッシュロッド43aも左方に移動し、サブクラッチ100の第1押圧プレート102が左方に移動する。これにより、サブクラッチ100の第1押圧プレート102が摩擦プレート101から離れる。また、第2押圧プレート103は、第1押圧プレート102から右向きに押されなくなる。そのため、スライド軸201に対する右向きの押圧力がなくなり、コイルばね205の付勢力を受けた第2カムプレート203が逆方向に回転することによって、第2カムプレート203およびスライド軸201は左方に移動する。その結果、第2押圧プレート103も左方に移動する。
また、プレッシャプレート77は、第1押圧プレート102による右向きの押圧力が解除されるので、皿ばね83等の付勢力によって左方に移動する。その結果、プレッシャプレート77がプレート群66を圧接し、クラッチ2は接続される。なお、この際、サブクラッチ100の摩擦プレート101は、第2押圧プレート103から離反する。
本実施形態に係るクラッチ2では、プレッシャプレート77が皿ばね83から受ける付勢力は、遠心ウエイト41の半径方向位置によって変化する。具体的には、プレッシャプレート77の回転速度が大きい場合には、遠心ウエイト41は半径方向の外方に移動する。その結果、遠心ウエイト41は右方に移動し、皿ばね83を大きく変形させることになる。したがって、皿ばね83自体の弾性係数を大きくしなくても、皿ばね83は遠心ウエイト41によって大きく変形するので、プレッシャプレート77が皿ばね83から受ける付勢力は、相対的に大きくなる。一方、プレッシャプレート77の回転速度が小さい場合には、遠心ウエイト41は半径方向の内方に移動する。その結果、遠心ウエイト41は左方に移動し、皿ばね83の変形量は少なくなる。したがって、プレッシャプレート77が皿ばね83から受ける付勢力は、相対的に小さくなる。
エンジン回転速度が大きい場合には、プレッシャプレート77によってプレート群66を大きな押圧力で圧接する必要がある。本実施形態に係るクラッチ2では、エンジン回転速度が大きくなると、遠心ウエイト41が半径方向外方に移動することによって、皿ばね83の変形量が大きくなる。そのため、皿ばね83の弾性係数を大きくしなくても、十分な大きさの押圧力を得ることができる。したがって、皿ばね83の弾性係数、すなわちばね容量を比較的小さく抑えることができる。
ところで、アイドリング状態等の低速回転時には、遠心ウエイト41は半径方向内方に移動し、プレッシャプレート77はプレート群66を圧接しない状態となる。つまり、クラッチアウトの状態となる。そして、アイドリング状態からエンジン回転速度が増加すると、やがて遠心ウエイト41は半径方向の外方に移動し、プレッシャプレート77がプレート群66を圧接する状態となる。つまり、クラッチインの状態となる。ところが、本実施形態に係るクラッチ2では、皿ばね38の弾性係数が比較的小さく、また、クラッチインの瞬間では未だエンジン回転速度はそれほど大きくなく、皿ばね38の変形量も比較的小さいため、プレッシャプレート77がプレート群66を圧接する力は比較的小さい。したがって、プレート群66が急激に圧接されることはなく、クラッチ2は滑らかに接続されることになる。
《実施形態の効果》
以上のように、本実施形態に係るクラッチ2によれば、遠心ウエイト41と接触するカム面81は、公転半径Rの増加に対するF・tanαの増加比率がω2の増加比率を上回るような形状に形成されている。そのため、エンジン回転速度の増加に伴って遠心ウエイト41が半径方向外方に急激に移動することが抑制される。すなわち、図8に示すように、従来のクラッチでは、エンジン回転速度NEが所定回転速度NE1に達するまでは、エンジン回転速度NEの増加に伴って遠心ウエイト41の公転半径Rは徐々に増加していたが、所定回転速度NE1に達すると、遠心ウエイト41は急激に半径方向外方に移動し、公転半径Rは急激に増加していた。ところが、本実施形態によれば、遠心ウエイト41が半径方向外方に急に移動することが抑えられ、公転半径Rが急激に増加することが抑制される。したがって、遠心ウエイト41とプレッシャプレート77の半径方向外側部分とが勢いよく接触することが回避され、その接触に起因する衝撃がライダーに伝わってしまうことを抑制することができる。本実施形態によれば、乗車フィーリングを損なうおそれのある遠心ウエイト41の動きを抑制することが可能となる。
以上のように、本実施形態に係るクラッチ2によれば、遠心ウエイト41と接触するカム面81は、公転半径Rの増加に対するF・tanαの増加比率がω2の増加比率を上回るような形状に形成されている。そのため、エンジン回転速度の増加に伴って遠心ウエイト41が半径方向外方に急激に移動することが抑制される。すなわち、図8に示すように、従来のクラッチでは、エンジン回転速度NEが所定回転速度NE1に達するまでは、エンジン回転速度NEの増加に伴って遠心ウエイト41の公転半径Rは徐々に増加していたが、所定回転速度NE1に達すると、遠心ウエイト41は急激に半径方向外方に移動し、公転半径Rは急激に増加していた。ところが、本実施形態によれば、遠心ウエイト41が半径方向外方に急に移動することが抑えられ、公転半径Rが急激に増加することが抑制される。したがって、遠心ウエイト41とプレッシャプレート77の半径方向外側部分とが勢いよく接触することが回避され、その接触に起因する衝撃がライダーに伝わってしまうことを抑制することができる。本実施形態によれば、乗車フィーリングを損なうおそれのある遠心ウエイト41の動きを抑制することが可能となる。
本実施形態では、カム面81はローラリテーナー78側に向かって凹状に形成されている。そのため、比較的簡単な構成により、遠心ウエイト41の半径方向外方への急激な移動を抑制することができ、乗車フィーリングを損なうおそれのある遠心ウエイト41の動きを抑制することができる。
本実施形態に係るクラッチ2では、遠心ウエイト41をカム面81側に付勢する付勢部材は、皿ばね83である。図7に示すように、皿ばね81は非線形特性、すなわちストローク(言い換えると、変形量)Sと付勢力Fとが正比例しない特性を有している。また、皿ばね83は、ストロークSの増加に伴って付勢力Fが一定となるまたは減少するストローク領域S3を有するようなばね特性を備えており、幅広いストローク領域にわたって荷重特性が大きく変化しないようなばね特性を有している。加えて、上記ストローク領域S3の少なくとも一部は、クラッチレバー24の操作に伴って皿ばね83が変形する領域、すなわち手動操作領域S2に含まれている。
このように、本実施形態では、付勢部材として皿ばね83を用いることにより、ライダーがクラッチレバー24を操作するときの負担を軽減することができる。つまり、手動操作領域S2は、自動操作領域S1のストローク増加側(図7の右側)に隣り合っている。仮に、ストロークの増加に伴って荷重特性が大きくなるような線形のばね特性(図7における破線参照)を有するばねを用いた場合、手動操作領域S2における付勢力Fはストロークの増加に伴って大きくなってしまい、クラッチレバー24を操作するときの必要操作力も大きくなってしまう。しかし、付勢部材として皿ばね83を用いることにより、クラッチレバー24の必要操作力を小さく抑えることができる。
一方、皿ばね83が上述のばね特性を有していることにより、遠心ウエイト41は、回転速度が所定回転速度を超えると、半径方向外方に急激に移動しやすくなる。特に、ストロークSの増加に伴って付勢力Fが一定となるまたは減少するストローク領域S3において、遠心ウエイト41は半径方向外方に急激に移動しやすくなる。ところが、本実施形態によれば、そのような遠心ウエイト41の急激な移動を抑制することができる。したがって、付勢部材として皿ばね81を用いた場合、前述の効果がより顕著に発揮されることになる。
<実施形態2>
実施形態1では、遠心ウエイト41を挟み込むプレッシャプレート77とローラリテーナー78とのうち、プレッシャプレート77にのみカム面81が形成されており、ローラリテーナー78におけるカム面81に対向する対向面78a(図3参照)は、平らな面であった。しかし、ローラリテーナー78の対向面もカム面であってもよい。実施形態2は、ローラリテーナー78の対向面をカム面で形成したものである。
実施形態1では、遠心ウエイト41を挟み込むプレッシャプレート77とローラリテーナー78とのうち、プレッシャプレート77にのみカム面81が形成されており、ローラリテーナー78におけるカム面81に対向する対向面78a(図3参照)は、平らな面であった。しかし、ローラリテーナー78の対向面もカム面であってもよい。実施形態2は、ローラリテーナー78の対向面をカム面で形成したものである。
図9に示すように、実施形態2では、遠心ウエイト41は、プレッシャプレート77のカム面81と、ローラリテーナー78に形成されたカム面181との間に配置されている。皿ばね83の付勢力をF、遠心ウエイト41がカム面81から受ける反力をN1、遠心ウエイト41がカム面181から受ける押圧力をN2とすると、
ローラリテーナー78の軸方向(図9の上下方向)の力の釣合いより、
遠心ウエイト41の同方向の力の釣合いより、
遠心ウエイト41の半径方向(図9の左右方向)の力の釣合いより、
となる。上記式(5)、(6)、(7)より、
という関係が導かれ、上記式(8)を書き直すと、
となる。なお、角度αは、回転中心Oを含む縦断面において、カム面81の遠心ウエイト41と接触している点C1の接線L1と、半径方向L0とがなす角度である。同様に、角度βは、回転中心0を含む縦断面において、カム面181の遠心ウエイト41と接触している点C2の接線L2と、半径方向L0とがなす角度である。
ローラリテーナー78の軸方向(図9の上下方向)の力の釣合いより、
エンジン回転速度の変化時に公転半径Rが唐突に変化することを避けるためには、遠心ウエイト41の可動域全体において、公転半径Rを増加させると角速度ωが必ず増加するようにすればよい。そこで、本実施形態では、カム面81およびカム面181を、上記式(9)において、Rが増加するとωが増加し、かつRが減少するとωが減少するように形成することとした。
その他の構成は実施形態1と同様であるので、それらの説明は省略する。なお、実施形態2においてβ=0とすれば、実施形態1と同様となる。実施形態2は、実施形態1を一般化した形態であると言える。勿論、実施形態2において、α=0とすることも可能である。
本実施形態においても、実施形態1と同様の効果を得ることができる。
《実施形態が実現されているか否かの確認方法》
前述の式(9)は、遠心ウエイト41の質量mを含んだ式である。しかし、カム面81およびカム面181が、Rが増加するとωが増加し、かつRが減少するとωが減少するように形成されているか否かは、以下の方法によっても確認することができる。
前述の式(9)は、遠心ウエイト41の質量mを含んだ式である。しかし、カム面81およびカム面181が、Rが増加するとωが増加し、かつRが減少するとωが減少するように形成されているか否かは、以下の方法によっても確認することができる。
ここで、Rが増加するときにはA>1であり、このときにはω´2>ω2となる必要がある。そのため、式(10)から、ω´2/ω2=B/A>1であり、結局、B>Aとなる。一方、Rが減少するときにはA<1であり、このときにはω´2<ω2となる必要がある。そのため、式(10)から、ω´2/ω2=B/A<1であり、結局、B<Aとなる。なお、A=1のときはRが変化していないので、B=1であり、B=Aである。
このように、Rが増加するときにはB>Aとなり、Rが減少するときにはB<Aとなれば、実施形態が実現されているということができる。したがって、Rの変化に伴う上記倍率AおよびBの大小関係を調べることにより、たとえ遠心ウエイト41の質量mを特定しなくても、実施形態のカム面81,181(αおよびβのいずれか一方が零の場合も含む)が実現されているか否かを確認することが可能である。
《その他の実施形態》
遠心ウエイト41の形状、大きさ、個数等は、何ら限定される訳ではない。また、遠心ウエイト41は、カム面81上を転がるものであってもよく、滑るものであってもよい。
遠心ウエイト41の形状、大きさ、個数等は、何ら限定される訳ではない。また、遠心ウエイト41は、カム面81上を転がるものであってもよく、滑るものであってもよい。
前記各実施形態では、プレッシャプレート77は単一の部材からなり、プレート群66を押しつける押圧部77bとカム面81とは、同一の部材に形成されていた。しかし、プレッシャプレート77は複数の部材からなっていてもよい。押圧部77bとカム面81とは、別部材に形成されていてもよい。
付勢部材は、皿ばね以外のばねであってもよく、その他の付勢部材であってもよい。
《実施例》
図10に示すように、カム面81の基準面81aから皿ばね83の受け面83aまでの距離をH0とする。H0は、下記の式(11)にて表される。
hは公転半径がRのときの皿ばね83の高さであり、y1は公転半径がRのときの基準面81aから遠心ウエイト41の中心までの距離であり、y2は公転半径がRのときのカム面181の基準面181aから遠心ウエイト41の中心までの距離である。hとy1とy2とは、それぞれRの関数である。なお、クラッチ2において、公転半径Rは、所定の最小値R0と最大値R1との間で変化する。
図10に示すように、カム面81の基準面81aから皿ばね83の受け面83aまでの距離をH0とする。H0は、下記の式(11)にて表される。
y1および角度αと、y2および角度βとは、それぞれ下記式(12)、式(13)の関係を有している。
また、下記式(14)と式(15)とのように、公転半径Rの2次式によってそれぞれy1とy2とを定義する。
a1、b1、c1、a2、b2、およびc2は、カム面81、181に形状に応じた定数である。y1、y2は、それぞれカム面81、181の形状を表している。ただし、カム面81、181の形状は、他の数式によって表されていてもよい。
式(14)、式(15)をそれぞれ式(12)、式(13)に代入すると、下記式(17)と式(18)とが得られる。
遠心ウエイト41の半径方向の力の釣合いは、前述の式(8)および式(9)で表される。上記式(9)に上記式(11)、式(16)、式(17)、および式(18)を代入して整理すると、
となる。
上記式(19)により、公転半径Rと角速度ωとの関係を求めることができる。
上記式(19)により、公転半径Rと角速度ωとの関係を求めることができる。
本実施例および比較例では、m、H0、hn、R0、R1、p、q、rの値は、図11に示す通りである。実施例1は、実施形態1の実施例であり、カム面81およびカム面181の各定数が図12(a)で表されるものである。図12(b)は、実施例1における公転半径Rと他のパラメータとの関係を表した表である。実施例2は、実施形態2の実施例であり、カム面81およびカム面181の各定数が図13(a)で表されるものである。図13(b)は、実施例2における公転半径Rと他のパラメータとの関係を表した表である。比較例は、従来の摩擦クラッチの一例であり、カム面81およびカム面181の各定数が図14(a)で表されるものである。この比較例では、カム面81は傾斜した平面であり、カム面181は傾きのない平面である。図14(b)は、比較例における公転半径Rと他のパラメータとの関係を表した表である。
図15は、実施例1および比較例の公転半径Rと角速度との関係を表したグラフである。実施例1の角速度はω、比較例の角速度はωcと表記している。図16は、実施例2および比較例の公転半径Rと角速度ωとの関係を表したグラフである。実施例2の角速度はω、比較例の角速度はωcと表記している。図15および図16から、比較例と異なり実施例1および2では、Rが増加するとωが増加し、Rが減少するとωが減少することが分かる。特に、公転半径RがRcを超えた領域Aにおいて、比較例ではRの増加と共にωcが減少しているのに対し、実施例1および2ではRの増加と共にωが増加していることが分かる(図15および図16のハッチング部分参照)。このωとωcとの差により、遠心ウエイトの急激な移動が防止される。
1 自動二輪車(車両)
2 クラッチ(摩擦クラッチ)
24 クラッチレバー(クラッチ操作子)
41 遠心ウエイト
46 クラッチハウジング(駆動側回転体)
48 クラッチボス(従動側回転体)
64 フリクションプレート(第1のプレート)
65 クラッチプレート(第2のプレート)
77 プレッシャプレート
78 ローラリテーナー(対向部材)
81 カム面
83 皿ばね(付勢部材)
181 カム面
2 クラッチ(摩擦クラッチ)
24 クラッチレバー(クラッチ操作子)
41 遠心ウエイト
46 クラッチハウジング(駆動側回転体)
48 クラッチボス(従動側回転体)
64 フリクションプレート(第1のプレート)
65 クラッチプレート(第2のプレート)
77 プレッシャプレート
78 ローラリテーナー(対向部材)
81 カム面
83 皿ばね(付勢部材)
181 カム面
Claims (9)
- クラッチ操作子によって断続される摩擦クラッチであって、
第1のプレートを有する駆動側回転体と、
前記第1のプレートに対向する第2のプレートを有する従動側回転体と、
前記クラッチ操作子が操作されると所定方向に移動して前記第1のプレートと前記第2のプレートとを接触させるプレッシャプレートと、
前記プレッシャプレートの前記第1および第2のプレート側と反対の側に形成されたカム面と、
前記カム面に対向する対向面を有する対向部材と、
前記カム面と前記対向面との間に配置された遠心ウエイトと、
前記対向部材を介して前記遠心ウエイトを前記カム面側に付勢する付勢部材と、を備え、
前記遠心ウエイトの質量をm、回転中心から前記遠心ウエイトの重心までの距離である公転半径をR、前記回転中心を含む縦断面における前記カム面の前記遠心ウエイトと接触している点の接線と半径方向との間のなす角の角度をα、前記回転中心を含む縦断面における前記対向面の前記遠心ウエイトと接触している点の接線と半径方向との間のなす角の角度をβ、前記付勢部材が前記対向部材を前記所定方向に付勢する付勢力をFとしたときに、下記式
ω2=(1/m)・[F(tanα+tanβ)/R]
で表される角速度ωが、Rが増加すると増加し、かつRが減少すると減少する摩擦クラッチ。 - 前記付勢部材は皿ばねである、請求項1に記載の摩擦クラッチ。
- 前記付勢部材は、変形量と付勢力とが正比例しない特性である非線形特性を有する弾性部材である、請求項1に記載の摩擦クラッチ。
- 前記付勢部材は、変形量の増加に伴って付勢力が一定となるまたは減少する変形領域を有するような特性を備えた弾性部材である、請求項1に記載の摩擦クラッチ。
- 前記変形領域の少なくとも一部は、前記クラッチ操作子の操作に伴って前記弾性部材が変形する領域に含まれている、請求項4に記載の摩擦クラッチ。
- 前記対向面は平らな面である、請求項1に記載の摩擦クラッチ。
- 前記駆動側回転体は、前記第1のプレートを複数備え、
前記従動側回転体は、前記第2のプレートを複数備えている、請求項1に記載の摩擦クラッチ。 - クラッチ操作子によって断続される摩擦クラッチであって、
第1のプレートを有する駆動側回転体と、
前記第1のプレートに対向する第2のプレートを有する従動側回転体と、
前記クラッチ操作子が操作されると所定方向に移動して前記第1のプレートと前記第2のプレートとを接触させるプレッシャプレートと、
前記プレッシャプレートの前記第1および第2のプレート側と反対の側に形成されたカム面と、
前記カム面に対向する平らな面を有する対向部材と、
前記カム面と前記対向部材との間に配置された遠心ウエイトと、
前記対向部材を介して前記遠心ウエイトを前記カム面側に付勢する付勢部材と、を備え、
前記カム面は、前記対向部材側に向かって凹状に形成されている、摩擦クラッチ。 - 請求項1に記載の摩擦クラッチを備えた車両。
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