JP2009144281A - 製紙用シーム付きフェルト - Google Patents
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Abstract
【課題】シーム部と地部との間の物性の違いに起因して発生するシームマークを抑制すると共に抄紙機走行時の異音を低減し、且つ端部接合用のループのずれを抑制してループ接合時の作業性を向上させる。
【解決手段】織機上で抄紙機上の経糸となる打ち込み糸の折り返しにより端部接合用のループ8が形成されると共に、そのループを形成する1対の経糸3・4の双方に緯糸10を絡合させた2重織りで地部が形成された基布1を有し、この基布におけるループの近傍に、そのループを形成する1対の経糸の各々で構成された1重織りの織物層11・12を互いに重ね合わせた態様のラミネート構造部が設けられ、このラミネート構造部において、2つの織物層をそれぞれ構成する緯糸13・14が、互いに対称となる組織で織り込まれると共に、互いに厚さ方向に重なり合うものとする。
【選択図】図1
【解決手段】織機上で抄紙機上の経糸となる打ち込み糸の折り返しにより端部接合用のループ8が形成されると共に、そのループを形成する1対の経糸3・4の双方に緯糸10を絡合させた2重織りで地部が形成された基布1を有し、この基布におけるループの近傍に、そのループを形成する1対の経糸の各々で構成された1重織りの織物層11・12を互いに重ね合わせた態様のラミネート構造部が設けられ、このラミネート構造部において、2つの織物層をそれぞれ構成する緯糸13・14が、互いに対称となる組織で織り込まれると共に、互いに厚さ方向に重なり合うものとする。
【選択図】図1
Description
本発明は、織機上で抄紙機上の経糸となる打ち込み糸の折り返しにより端部接合用のループが形成されると共に、ループを形成する1対の経糸の双方に緯糸を絡合させた2重織りで地部が形成された基布を有する製紙用シーム付きフェルトに関するものである。
抄紙機への掛け入れ作業性を向上させるため、有端のフェルトをフェルトランに引き込んだ上でその両端部を互いに接合して無端とする、いわゆるシーム付きフェルトが広く普及している。この種のシーム付きフェルトでは、基布を構成する経糸の折り返しにより丈方向の端部に形成されたループを、互いの中心孔が整合するように交互にかみ合わせ、これにより形成された共通孔に芯線を通して両端部を接合する構成が一般的である。
このようなシーム付きフェルトでは、シーム部を有するためにエンドレスフェルトでは生じない種々の問題点、例えばシーム部と地部との構造上の違いに起因して、製品にシームマークが発生したり、あるいは抄紙機内を走行中に異音が発生したりする問題点が生じることから、これらの問題点に対して、ループの近傍に地部とは異なる糸を別に追加して対処するようにした種々の技術が知られている(例えば特許文献1〜8参照)。
また、本願出願人は、抄紙機内を走行中に生じる振動・異音を低減することを目的とした製紙用シーム付きフェルトを先に提案した(特許文献9参照)。これは、基布におけるループの近傍に、そのループを形成する一対の経糸の各々で構成される1重織りの織物層を互いに重ね合わせた態様の1重織重合部を設けて、この1重織重合部によりシーム部と2重織りの地部との中間の圧縮特性を得るようにしたものである。
特開昭62−250293号公報
特許3027415号公報
特表2003−504533号公報
特開2002−294579号公報
特開2003−239194号公報
特開2004−169215号公報
特開2004−232142号公報
特開2004−285554号公報
特開2004−36021号公報
しかるに、前記の追加緯糸を配した従来技術では、ループに芯線を挿通して接合した部分の両側のループ際部において、緯糸に相当するものがないために他の部分より空隙が多く、この空隙を埋めるように追加緯糸を配することで、通気度(通水性)などの特性を改善して、シームマークを抑制し、また抄紙機内を走行中に生じる異音を低減することができるが、追加緯糸のみでは、以下に示すように、ループ際の空隙を十分に埋めることができない。
図10は、従来のシーム付きフェルトにおける基布の製織状況を示す模式的な断面図である。ここでは、抄紙機上の経糸101・102を織機上で打込み糸として織り上げられ、抄紙機上の緯糸103は織機上では経糸(整経糸)となっており、ループ形成用芯材104に打込み糸を絡めてループ105を形成しながら袋織りで基布が無端状に織り上げられる。
ここで、ループ105を形成する1対の経糸101・102の双方に絡合するように2重織りで緯糸103が織り込まれた場合、1対の経糸101・102は、ループ形成用芯材104に巻き掛けられることで互いに離間しようとするため、緯糸103をループ105から遠ざけようとする力が発生し、緯糸103をループ105側に十分に寄せることができない。このため、ループ際に大きな隙間が形成され、追加緯糸を配してもループ際の隙間を十分に埋めることができない。
さらに、ループ105の近傍で緯糸103の糸込数を上げてループ105側に緯糸103を無理に寄せる方法もあるが、この方法では、ループ105の近傍に緯糸103の密度が高い部分が発生し、基布に不織繊維層を積層一体化するためのニードリング時の緯糸103の損傷が顕著になることから、強度低下の原因になる。その上、緯糸103が密となる部分では、通気度(通水性)が地部と大きく異なり、さらにループ105の芯線挿通部分とも異なるため、シームマークの原因になり易い。
また、前記の特許文献9に開示されたように、ループの近傍に1重織重合部を設けた構成では、ループ形成用芯材に巻き掛けられることで互いに離間しようとする経糸を緯糸が拘束しないため、緯糸をループから遠ざけようとする力が発生せず、緯糸をループ側に十分に寄せることができない不都合は解消されるが、以下に示すように、ループに大きなずれが発生する難点がある。
図11・図12は、従来のシーム付きフェルトの基布におけるループの状態を示しており、図11(A−1)・(A−2)及び図12は丈方向の模式的な断面図であり、図11(B)は幅方向の模式的な断面図である。
ここで、ループ111の形態は、緯糸114・115、特にループ111の直近の緯糸114・115に大きく影響され、図11(A−1)に示すように、経糸112・113に対して緯糸114・115が上側に位置する場合には、緯糸114・115が経糸112・113を下向きに押圧し、図11(A−2)に示すように、経糸112・113に対して緯糸114・115が下側に位置する場合には、緯糸114・115が経糸112・113を上向きに押圧し、この経糸112・113に対する緯糸114・115の押圧力は、緯糸114・115が互いに対称となる組織で織り込まれていない、すなわち経糸112・113に対する緯糸114・115の絡合形態が上下対称でないと同じ方向となり、図11(B)に示すように、ループ111が上方向または下方向に大きくずれる。
また、図12に示すように、経糸112・113に対する緯糸114・115の絡合形態が上下対称となる場合でも、緯糸114・115が厚さ方向に重なり合っていないと、ループ8に近い方の緯糸114・115(ここでは上側の緯糸114)の影響が大きくなるため、その緯糸114・115の経糸112・113に対する位置関係に応じて上下いずれかの方向にループ111がずれる。
このように経糸112・113に対する緯糸114・115の絡合形態が上下対称とならない場合や、緯糸114・115が厚さ方向に重なり合っていない場合には、ループ111の中心が幅方向に1直線状に並ぶ正規の位置から上下いずれかの向きにずれて、芯線116の挿通が難しくなる。そして、ループ111の直近の緯糸114・115がループ111の形態に与える影響は、最端の緯糸114・115がループ111に近接するのに応じて大きくなり、ループ際部の特性を改善するために、緯糸114・115をループ111に近接するように織り込んだ場合、ループ111に大きなずれが発生し、ループ接合時の作業性を低下させることになる。
本発明は、このような発明者の知見に基づいて案出されたものであり、その主な目的は、シーム部と地部との間の物性の違いに起因して発生するシームマークを抑制すると共に抄紙機走行時の異音を低減し、且つ端部接合用のループのずれを抑制してループ接合時の作業性を向上させることができるように構成された製紙用シーム付きフェルトを提供することにある。
このような課題を解決するために、本発明においては、請求項1に示すとおり、織機上で抄紙機上の経糸となる打ち込み糸の折り返しにより端部接合用のループが形成されると共に、前記ループを形成する1対の経糸の双方に緯糸を絡合させた2重織りで地部が形成された基布を有する製紙用シーム付きフェルトにおいて、前記基布における前記ループの近傍に、そのループを形成する1対の経糸の各々で構成された1重織りの織物層を互いに重ね合わせた態様のラミネート構造部が設けられ、このラミネート構造部において、2つの前記織物層をそれぞれ構成する緯糸が、互いに対称となる組織で織り込まれると共に、互いに厚さ方向に重なり合うものとした。
これによると、製織時に、ループの近傍のラミネート構造部において、2つの織物層をそれぞれ構成する緯糸が経糸のいずれか一方にのみ絡合することから、ループ形成用芯材に巻き掛けられることで互いに離間しようとする経糸を緯糸が拘束しないため、緯糸をループから遠ざけようとする力が発生しない。このため、ループ近傍で緯糸の糸込数を上げることなく、緯糸をループの先端側に寄った状態で織り込むことができ、これによりループ際の隙間がなくなり、さらにループ近傍で緯糸の密度が高くならないため、通気度などの特性が大きく異なる部分がループ際に形成されることを避けることができ、シームマークを抑制すると共に抄紙機走行時の異音を低減することができる。
さらに、2つの織物層をそれぞれ構成する緯糸が、互いに対称となる組織で織り込まれている、すなわち経糸に対する緯糸の絡合形態が互いに対称となり、さらに2つの織物層の各緯糸が、厚さ方向に重なり合うことから、2つの織物層の各緯糸による経糸に対する押圧力が互いに逆向きとなって互いに均衡するため、ループのずれが抑制され、ループの中心が幅方向に1直線状に並ぶため、芯線の挿通が容易になり、ループ接合時の作業性を向上させることができる。
また、2つの織物層の各緯糸が厚さ方向に重なり合い、さらにループ近傍で緯糸の密度が高くならないため、基布に不織繊維層を積層一体化するためのニードリング時の緯糸の損傷を軽減して、強度低下を防ぐことができる。その上、2つの織物層の各緯糸が厚さ方向に重なり合うことで、所要の空隙量を確保可能な2重性が維持されるため、ラミネート構造部の通気度(通水性)を高く保持することができ、これにより通気度の高いシーム部との差が大きくなることを避けることができる。
また、抄紙機内のプレスロールによる加圧時の圧縮特性、特に長期間の使用による厚さ変化特性に関して、ループに芯線を挿通して接合した状態のシーム部は、地部よりも潰れ難い圧縮特性となるが、ラミネート構造部も、2つの織物層が重なり合う2重性により地部より潰れ難い圧縮特性となり、さらにこのラミネート構造部では、シーム部と地部との中間の圧縮特性が得られるため、シーム部で圧縮特性が急激に変化することを避けることができ、これにより走行中の振動・異音を低減することができる。
この場合、2つの織物層の各緯糸の重なり合う割合が低いと、ラミネート構造部の2重性を維持することが困難となることから、2つの織物層の各緯糸のずれ幅が緯糸の径の3/4以内とする、換言すると2つの織物層の各緯糸の重合幅が緯糸の径の1/4以上とすると良い。
前記製紙用シーム付きフェルトにおいては、請求項2に示すとおり、前記ラミネート構造部の各織物層が、平織りの組織で形成された構成とすることができる。
これによると、ループを形成する経糸に対する緯糸の押圧力が均等に作用するため、ループの中心線が幅方向となる正規の姿勢からループが斜めに傾くことを抑制することができる。また、2つの織物層の各緯糸が丈方向にずれ難くなるため、ニードリング時の緯糸の損傷を軽減して、強度低下を防ぐことができる。
前記製紙用シーム付きフェルトにおいては、請求項3に示すとおり、前記ラミネート構造部が、前記ループの直近の緯糸から緯糸4本乃至14本の範囲で設けられた構成とすることができる。
これによると、製織時に緯糸をループに近接させる効果を得ると共に、ラミネート構造部の2重性を確保することができる。ラミネート構造部の範囲が緯糸4本未満であると、製織時のループ近傍での経糸の離間が十分でなく、緯糸をループに近接させる効果が得られない。またラミネート構造部の範囲が緯糸15本以上となると、ラミネート構造部の2つの織物層がずれ易くなり、ラミネート構造部の2重性が損なわれて通気度(通水性)などの特性が悪化するなどの不具合が発生し、望ましくない。
前記製紙用シーム付きフェルトにおいては、請求項4に示すとおり、前記基布が、片側の耳部でのみ前記ループが形成されるように袋状製織された構成とすることができる。
これによると、織機上で抄紙機上の経糸となる打ち込み糸が厚さ方向に真直に折り返される側の耳部で両端のループを形成するため、ループの傾きを避けることができ、さらに2つの織物層によるラミネート構造部の2重性が損なわれることを避けることができる。
前記製紙用シーム付きフェルトにおいては、請求項5に示すとおり、前記ループの直近に、そのループを形成する1対の前記経糸の一方にのみ絡合する態様で、前記ラミネート構造部の織物組織の基本パターンを構成する緯糸とは異なる追加緯糸が織り込まれた構成とすることができる。
これによると、追加緯糸により、ループ際の空隙がさらに埋められるため、シーム部の通気度(通水性)などの特性をより一層改善することができる。
前記製紙用シーム付きフェルトにおいては、請求項6に示すとおり、前記ラミネート構造部における前記ループ寄りの最端の緯糸が、ステープル及びフィラメントのいずれか一方あるいは双方を多数集合させた集合糸材からなる構成とすることができる。
これによると、最端の緯糸が柔軟に撓んで扁平化することから、経糸に対する緯糸の押圧力が緩和されるため、ループの形態をより一層適正化することができる。
このように本発明によれば、ループ近傍で緯糸の糸込数を上げることなく、緯糸をループの先端側に寄った状態で織り込むことができるため、通気度などの特性が大きく異なる部分がループ際に形成されることを避けることができ、これによりシームマークを抑制すると共に抄紙機走行時の異音を低減することができる。しかも、2つの織物層の各緯糸による経糸に対する押圧力が互いに逆向きとなって互いに均衡することから、ループのずれが抑制されるため、芯線の挿通が容易になり、ループ接合時の作業性を向上させることができる。
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明によるシーム付きフェルトの一例を示す丈方向の模式的な断面図である。図2は、図1に示した基布の幅方向の模式的な断面図である。
このシーム付きフェルトは、図1に示すように、ニードリングにより基布1に不織繊維層2を積層一体化してなるものであり、基布1は、第1・第2の経糸3・4が厚さ方向に重ねて設けられた経糸2重構造をなしており、経糸3・4となる糸の折り返しにより丈方向の両端部5・6に端部接合用のループ8がそれぞれ形成され、その互いの中心孔が整合するように交互にかみ合わされて形成された共通孔に幅方向の接合用芯線9を挿通することで両端部5・6が接合される。
この基布1では、ループ8を形成する1対の経糸3・4の双方に緯糸10を絡合させた2重織りで地部が形成されている(図2(A)参照)。また、基布1におけるループ8の近傍には、ループ8から所要の丈方向長に渡って、そのループ8を形成する1対の経糸3・4の各々により互いに離間可能に構成された1重織りの第1・第2の織物層11・12を互いに重ね合わせた態様のラミネート構造部が設けられている(図2(B)参照)。
このラミネート構造部では、製紙面17側(上側)の第1の織物層11において、第1の経糸3にのみ緯糸13が絡合し、また走行面18側(下側)の第2の織物層12において、第2の経糸4にのみ緯糸14が絡合しており、各織物層11・12をそれぞれ構成する緯糸13・14は、互いに対称となる組織で織り込まれると共に、互いに厚さ方向に重なり合っている。
また、2つの織物層11・12をそれぞれ構成する緯糸13・14は、経糸3・4の横1本ごとに浮沈する平織りで織り込まれており、緯糸13が経糸3の上側を通る部分では、緯糸14が経糸4の下側を通り、緯糸13が経糸3の下側を通る部分では、緯糸14が経糸4の上側を通り、ここで緯糸13・14が互いに当接する。
経糸3・4は、ポリアミドなどの高強度な合成樹脂材料からなるモノフィラメント糸であり、これと同様に地の緯糸10及びラミネート構造部の緯糸13・14も、ポリアミドなどの高強度で比較的高剛性な合成樹脂材料からなるモノフィラメント糸である。
図3は、図1に示した基布の製織状況を示す模式図である。図4は、図3に示した基布の製織状況を詳しく示す模式的な断面図である。
基布1は、図3に示すように、抄紙機上の第1・第2の経糸3・4を織機上で打込み糸として織り上げられ、抄紙機上の緯糸10・13・14は織機上では経糸(整経糸)となっており、ループ形成用芯材31に打込み糸を絡めてループ8を形成しながら袋織りで基布1が無端状に織り上げられる。
特にここでは、ループ8が織機上の耳部32・33の一方にのみ形成され、その一方の耳部32において経糸3・4となる打込み糸をループ形成用芯材31に引っ掛けて折り返すことでループ8が形成される。このとき、耳部32・33は、トマホーク35及びテンプル36で保持され、これにより製織時の幅を安定させることができる。
この基布1の製織時においては、図4に示すように、ループ8の近傍のラミネート構造部において、2つの織物層11・12をそれぞれ構成する緯糸13・14が経糸3・4のいずれか一方にのみ絡合しているため、ループ形成用芯材31に巻き掛けられることで互いに離間しようとする経糸3・4を緯糸13・14が拘束せず、緯糸13・14をループ8から遠ざけようとする力が発生しない。
このため、ループ8の近傍で緯糸13・14の糸込数を上げることなく、緯糸13・14をループ8の先端側に寄った状態で織り込むことができ、これによりループ際の隙間がなくなり、さらにループ8の近傍で緯糸13・14の密度が高くならないため、通気度などの特性が大きく異なることを避けることができ、シームマークを抑制すると共に抄紙機走行時の異音を低減することができる。
また、2つの織物層11・12をそれぞれ構成する緯糸13・14が厚さ方向に重なり合うと共に、ループ8の近傍で緯糸13・14の密度が高くならないため、基布1に不織繊維層2を積層一体化するためのニードリング時の緯糸13・14の損傷を軽減して、強度低下を防ぐことができる。さらに緯糸13・14が厚さ方向に重なり合うことで、所要の空隙量を確保可能な2重性が維持されるため、ラミネート構造部の通気度(通水性)を高くすることができ、これにより通気度の高いシーム部との差が大きくなることを避けることができる。
また、抄紙機内のプレスロールによる加圧時の圧縮特性、特に長期間の使用による厚さ変化特性に関して、ループ8に芯線9を挿通して接合した状態のシーム部は、地部よりも潰れ難い圧縮特性となるが、ラミネート構造部も、2つの織物層11・12が重なり合う2重性により地部より潰れ難い圧縮特性となり、さらにこのラミネート構造部では、シーム部と地部との中間の圧縮特性が得られるため、シーム部で圧縮特性が急激に変化することを避けることができ、これにより走行中の振動・異音を低減することができる。
図5は、図1に示した基布におけるループの状態を示しており、図5(A−1)・(A−2)は丈方向の模式的な断面図であり、図5(B)は幅方向の模式的な断面図である。
ラミネート構造部においては、前記のように、上下の織物層11・12をそれぞれ構成する緯糸13・14が互いに対称となる組織で織り込まれている、すなわち経糸3・4に対する緯糸13・14の絡合形態が上下対称になっており、さらに上下の緯糸13・14が厚さ方向に重なり合っている。このため、図5(A−1)・(A−2)に示すように、経糸3・4に対する緯糸13・14の位置が必ず上下逆となり、経糸3・4に対する緯糸13・14の押圧力は互いに逆向きとなって互いに均衡するため、ループ8のずれは発生せず、図5(B)に示すように、ループ8の中心が幅方向に1直線状に並ぶため、芯線の挿通が容易になり、作業性が向上する。
図6は、図1に示したラミネート構造部における緯糸の状態を詳しく示す模式的な断面図である。前記のように、上下の織物層11・12の各緯糸13・14は、厚さ方向に重なり合っているが、この上下の緯糸13・14の重なり合う割合が低いと、ラミネート構造部の2重性を維持することが困難となる、すなわち緯糸13・14の各々が互いに嵌り込む位置に移動してラミネート構造部が潰れた状態になり、2重織りの地部より薄くなる不具合が生じることから、これを避けるために、上下の緯糸13・14のずれ幅が緯糸13・14の径の3/4以内とする、換言すると上下の緯糸13・14の重合幅が緯糸13・14の径の1/4以上とすると良い。
また、ラミネート構造部は、ループ8の直近の緯糸13・14から緯糸4本乃至14本の範囲(図1の例では10本)で設けると良い。ラミネート構造部の範囲が緯糸4本未満であると、図4に示したように製織時のループ8近傍での経糸3・4の離間が十分でなく、緯糸13・14をループ8に近接させる効果が得られない。またラミネート構造部の範囲が緯糸15本以上となると、2つの織物層11・12がずれ易くなるため、ラミネート構造部の2重性が損なわれ、通気度(通水性)などの特性が悪化する。その上、ループ8の中心線が幅方向となる正規の姿勢から斜めに傾く不具合が発生して、両端のループ8をかみ合わせる作業が面倒になり、さらに1対の経糸3・4が互いにずれることで、ニードリング時の経糸3・4の損傷が大きくなり、望ましくない。
図7は、本発明における基布の別の例を示す丈方向の模式的な断面図である。この基布71では、ラミネート構造部におけるループ8寄りの最端の緯糸13a・14aが、モノフィラメント糸からなる地の緯糸10及びラミネート構造部の他の緯糸13・14とは異なり、多数のフィラメントを束ねたマルチフィラメント糸を複数本撚り合わせてできた撚糸からなっており、この最端の緯糸13a・14aが柔軟に撓んで扁平化することから、経糸3・4に対する緯糸13a・14aの押圧力が緩和され、さらにループ8の基部の保持能力が高められるため、ループ8の形態をより一層適正化することができる。
なお、最端の緯糸13a・14aは、ステープル及びフィラメントのいずれか一方あるいは双方を多数集合させた集合糸材からなるものであれば良く、マルチフィラメント糸の撚糸の他に、例えばステープルを紡いで得られる紡績糸や、マルチフィラメント糸と紡績糸との撚糸、マルチフィラメント糸及び紡績糸の少なくともいずれかと他の糸との撚糸なども可能である。
図8は、本発明における基布の別の例を示す丈方向の模式的な断面図である。この基布81では、ループ8の直近に、そのループ8を形成する1対の経糸3・4の一方にのみ絡合する態様で、ラミネート構造部の織物組織の基本パターン(単位組織)を構成する緯糸13・14とは異なる追加緯糸83・84が織り込まれており、この追加緯糸83・84により、ループ8に芯線9を挿通して接合した部分の両側のループ際の空隙がさらに埋められるため、シーム部の通気度(通水性)などの特性をより一層改善することができる。
図7に示した例での最端の緯糸13a・14aは、ラミネート構造部の織物組織の基本パターンを構成するのに対して、この追加緯糸83・84はラミネート構造部の織物組織の基本パターンを構成していない。製織時には、ラミネート構造部の緯糸13・14となる整経糸が通される綜こうとは独立して駆動可能な綜こうに追加緯糸83・84となる整経糸を通して織り上げられ、追加緯糸83・84を、ラミネート構造部の緯糸13・14と同様に平織りで織り込む他、緯糸13・14とは異なる組織で織り込むことができる。
また、この追加緯糸83・84は、図7に示した例での最端の緯糸13a・14aと同様に、経糸3・4に対する押圧力を緩和してループ8の形態を適正化するために、ステープル及びフィラメントのいずれか一方あるいは双方を多数集合させた集合糸材、例えばマルチフィラメント糸の撚糸からなるものとすると良い。
図9は、本発明における基布の製織方法の別の例を示す模式図である。ここでは、ループ8が織機上の耳部91・92の各々で形成され、この耳部91・92において、第1・第2の経糸3・4となる打ち込み糸をループ形成用芯材31に引っ掛けて折り返すことでループ8が形成される。
この場合、経糸3・4となる打ち込み糸は、一方の耳部91側で厚さ方向に真直に折り返されてループ8を形成するのに対して、他方の耳部92側では、次の位置に打ち込み糸を通すために打ち込み糸が厚さ方向に対して斜めに折り返され、この斜めの折り返しで形成されるループ8は斜めに傾いた状態に形成されるが、ラミネート構造部の織物層11・12が互いにずれることでループ8の傾きが修正される。
なお、図9に示した製織方法では、斜めの折り返しで形成されるループ8の傾きを修正することにより、2つの織物層11・12がずれてラミネート構造部の2重性が損なわれるため、図3に示したように、片側の耳部32でのみループ8が形成されるように袋状製織する方法の方が優れている。また、図9に示した製織方法では、ニードリング時にループ8を接合して基布を無端状にする作業が必要になるのに対して、図3に示した製織方法では、ループ8の接合作業が不要であり、さらに丈寸法の大きな基布に対応可能な点でも、図3に示した製織方法の方が優れている。
本発明にかかる製紙用シーム付きフェルトは、シーム部と地部との間の物性の違いに起因して発生するシームマークを抑制すると共に抄紙機走行時の異音を低減し、且つ端部接合用のループのずれを抑制してループ接合時の作業性を向上させる効果を有し、織機上で抄紙機上の経糸となる打ち込み糸の折り返しにより端部接合用のループが形成されると共に、ループを形成する1対の経糸の双方に緯糸を絡合させた2重織りで地部が形成された基布を有する製紙用シーム付きフェルト、特に抄紙機のプレスパート(圧搾部)で用いられるプレスフェルトなどとして有用である。
1 基布
2 不織繊維層
3・4 経糸
8 ループ
9 接合用芯線
10 地の緯糸
11・12 織物層
13・14 緯糸
13a・14a 最端の緯糸
31 ループ形成用芯材
32・33 耳部
71 基布
81 基布
83・84 追加緯糸
91・92 耳部
2 不織繊維層
3・4 経糸
8 ループ
9 接合用芯線
10 地の緯糸
11・12 織物層
13・14 緯糸
13a・14a 最端の緯糸
31 ループ形成用芯材
32・33 耳部
71 基布
81 基布
83・84 追加緯糸
91・92 耳部
Claims (6)
- 織機上で抄紙機上の経糸となる打ち込み糸の折り返しにより端部接合用のループが形成されると共に、前記ループを形成する1対の経糸の双方に緯糸を絡合させた2重織りで地部が形成された基布を有する製紙用シーム付きフェルトであって、
前記基布における前記ループの近傍に、そのループを形成する1対の経糸の各々で構成された1重織りの織物層を互いに重ね合わせた態様のラミネート構造部が設けられ、このラミネート構造部において、2つの前記織物層をそれぞれ構成する緯糸が、互いに対称となる組織で織り込まれると共に、互いに厚さ方向に重なり合うことを特徴とする製紙用シーム付きフェルト。 - 前記ラミネート構造部の各織物層が、平織りの組織で形成されたことを特徴とする請求項1に記載の製紙用シーム付きフェルト。
- 前記ラミネート構造部が、前記ループの直近の緯糸から緯糸4本乃至14本の範囲で設けられたことを特徴とする請求項1若しくは請求項2に記載の製紙用シーム付きフェルト。
- 前記基布が、片側の耳部でのみ前記ループが形成されるように袋状製織されたことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の製紙用シーム付きフェルト。
- 前記ループの直近に、そのループを形成する1対の前記経糸の一方にのみ絡合する態様で、前記ラミネート構造部の織物組織の基本パターンを構成する緯糸とは異なる追加緯糸が織り込まれたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の製紙用シーム付きフェルト。
- 前記ラミネート構造部における前記ループ寄りの最端の緯糸が、ステープル及びフィラメントのいずれか一方あるいは双方を多数集合させた集合糸材からなることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の製紙用シーム付きフェルト。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2007323003A JP2009144281A (ja) | 2007-12-14 | 2007-12-14 | 製紙用シーム付きフェルト |
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JP2007323003A JP2009144281A (ja) | 2007-12-14 | 2007-12-14 | 製紙用シーム付きフェルト |
Publications (1)
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2020012217A (ja) * | 2018-07-20 | 2020-01-23 | 日本フエルト株式会社 | 工業用織物 |
-
2007
- 2007-12-14 JP JP2007323003A patent/JP2009144281A/ja active Pending
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2020012217A (ja) * | 2018-07-20 | 2020-01-23 | 日本フエルト株式会社 | 工業用織物 |
JP7015746B2 (ja) | 2018-07-20 | 2022-02-03 | 日本フエルト株式会社 | 工業用織物 |
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