JP2009144278A - 強化繊維シート、及び布基礎の補強方法 - Google Patents

強化繊維シート、及び布基礎の補強方法 Download PDF

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Abstract

【課題】コンクリート表面のひび割れの補修等に適した強化繊維シートを提供する。
【解決手段】縦糸1が800MPa未満の引張強度、横糸2が800MPa以上の引張強度の強化繊維である強化繊維シートS1。強化繊維シートS1を、縦糸1の方向とひび割れCの方向とが略一致するように、コンクリート表面に貼付け、これにより、強化繊維(つまり、横糸2)は、ひび割れCと略直交する方向(引張応力σが作用する方向)に貼付されることとなり、該引張応力σに抗して、ひび割れCの拡大を抑制する布基礎の補強方法。
【選択図】図2

Description

本発明は、強化繊維シート及び布基礎の補強方法に関する。
従来、コンクリート構造物の補強や補修等のために強化繊維シートが用いられている(例えば、特許文献1参照)。そのような強化繊維シートには、
・ 縦糸(つまり、シートの長手方向に配置される糸)及び横糸(つまり、該縦糸に略直交するように織り込まれる糸)の両方に強化繊維を用いたもの
・ 縦糸(図4の符号21参照)に強化繊維を使用し、横糸(同図の符号22参照)には低強度の繊維を使用したもの
があった。
特開2007−239215号公報
ところで、後者の強化繊維シート(図4に示すような強化繊維シート)は、縦糸21に強化繊維が使用されているので、コンクリート柱状体に巻き付けたりして使用する場合には好適ではあるが、不都合な場合も多い。例えば、図5に符号Cで示すようなひび割れがコンクリート表面に生じているような場合には、そのひび割れCと略直交する方向に引張応力(符号σ参照)が生じていて、該応力は該ひび割れCを拡大するように作用することとなるが、該ひび割れの拡大を抑制するためには、ひび割れCと略直交する方向に強化繊維(図4に示す強化繊維シートの場合には縦糸21)を貼付し配設しなければならず、そのためには、その強化繊維シートを必要長さに複数切断し、それら複数枚の切断シート片(図5の符号S2参照)をひび割れ部分に1枚1枚貼り付けなければならず、その作業が面倒であった。また、ひび割れ補修のため、ひび割れ内にエポキシ樹脂等の樹脂を注入する場合には、ひび割れの表面から樹脂があふれ出ないようにすることが必要であり、そのためには前記複数枚の切断シート片を隙間なく密に貼付けなければならない。これは、施工手間、施工時間を多く費やし、そのことが工事費を増大させる原因となる。
一方、通常の木造建築物では、図3に示すような逆T字形か長方形の断面をした布基礎10が土台として用いられているが、鉄筋を使用していない、いわゆる無筋コンクリートのものも多く、近年は、そのような無筋コンクリートの布基礎を補強したいという要請も多い。
本発明は、上述の問題を解決できる強化繊維シート及び布基礎の補強方法を提供することを目的とするものである。
請求項1に係る発明は、図1に例示するものであって、長手方向(x)に配置される縦糸(1)が、800MPa未満の引張強度を持つ繊維であり、
該縦糸(1)に略直交するように織り込まれる横糸(2)が、800MPa以上の引張強度を持つ強化繊維であることを特徴とする強化繊維シート(S1)に関する。
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、幅が1.1メートル以下であることを特徴とする。
請求項3に係る発明は、図3(a) (b) に例示するものであって、請求項1又は2に記載の強化繊維シートである第1繊維シート(S1)を、その横糸(図1の符号2参照)の延設方向が垂直方向(図3(a)
のy方向)に略一致するように、布基礎の側面(10a)であってその上縁(10b)と下縁(10c)との間に貼付する工程と、
長手方向(図4のx方向)に配置される縦糸(図4の符号21参照)が800MPa以上の引張強度を持つ強化繊維であって該縦糸(21)に略直交するように織り込まれる横糸(同図の符号22参照)が800MPa未満の引張強度を持つ繊維である第2繊維シート(図3(a)
(b) の符号S21参照)を、該縦糸(21)の延設方向が布基礎の長手方向(図3(a) のx方向)に略一致するように、布基礎の側面(10a)であってその上縁(10b)に沿うように貼付する工程と、
該上縁(10b)に沿うように貼付した第2繊維シート(S21)とは別の第2繊維シート(S22)を、縦糸(21)の延設方向が布基礎の長手方向(x方向)に略一致するように、布基礎の側面(10a)であってその下縁(10c)に沿うように貼付する工程と、からなる布基礎の補強方法に関する。
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
請求項1及び2に係る発明によれば、800MPa以上の引張強度を持つ強化繊維が縦糸としてではなく横糸として織り込まれているので、コンクリート表面の狭い領域(略矩形状の領域であって、短辺の方向に引張応力が作用するような領域)に貼付すれば横糸は引張応力が作用する方向(短辺の方向)に配置されることとなるので、その部分を簡単に補強したり補修したりすることができる。
請求項3に係る発明によれば、繊維シートを切ったり貼ったりする回数を必要最小限に抑えることができ、比較的簡単な作業で布基礎を適切に補強することができる。
以下、図1乃至図4に沿って、本発明を実施するための最良の形態について説明する。ここで、図1は、本発明に係る強化繊維シート(つまり、縦糸が800MPa未満の引張強度を持つ繊維であり、横糸が800MPa以上の引張強度を持つ強化繊維であるシート)の構造の一例を示す平面図であり、図2は、図1に示した強化繊維シートを用いてひび割れの補修を行った様子の一例を示す平面図であり、図3(a)
は、図1に示した強化繊維シート等を用いて布基礎の補強を行った様子の一例を示す側面図であり、図3(b) は、その断面図であり、図4は、従来の強化繊維シート(つまり、縦糸が800MPa以上の引張強度を持つ繊維であり、横糸が800MPa未満の引張強度を持つ強化繊維であるシート)の構造の一例を示す平面図である。
本発明に係る強化繊維シートは、図1に符号S1で例示するものであって、その長手方向(図示x方向)に配置される縦糸1が低強度の繊維であって、該縦糸1に略直交するように織り込まれる横糸2が強化繊維であることを特徴とする。具体的には、前記縦糸1が800MPa未満の引張強度を持つ繊維であり、前記横糸2が800MPa以上の引張強度を持つ強化繊維である。この強化繊維シートS1は、コンクリート構造物の補修や補強を行うために使用することができる。
この強化繊維シートS1の幅(図1のy方向の幅)は1.1メートル以下にすると良い。例えば、コンクリートのひび割れ補修用に該シートを使用する場合、シート幅が広ければ広いほどよいというものではなく、ある一定以上の幅は不必要、あるいは補強の意味を持たないという事情がある。この幅は、繊維シートの剛性、コンクリートの強度などに応じて多少は異なるものの、それらを考慮しても1.1メートルを超える繊維シートは、本発明の対象としない。
なお、上述の横糸2としては、例えば、炭素繊維、アラミド繊維、PBO繊維、バサルト繊維、超高強力ポリエステル繊維、ポリアリレート繊維、ガラス繊維などを挙げることができるが、他の繊維を用いても良い。また、縦糸1には、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維などを挙げることができるが、他の繊維を用いても良い。
上述の強化繊維シートS1では、800MPa以上の引張強度を持つ強化繊維が縦糸1としてではなく横糸2として織り込まれているので、コンクリート表面の狭い領域(略矩形状の領域であって、短辺の方向に引張応力が作用するような領域)に貼付すれば横糸は引張応力が作用する方向(短辺の方向)に配置されることとなるので、その部分を簡単に補強したり補修したりすることができる。例えば、図2に示すように、コンクリート表面にひび割れCが生じているような場合には、そのひび割れCと略直交する方向に引張応力(符号σ参照)が生じていて、該応力は該ひび割れCを拡大するように作用することとなるが、該ひび割れCを含む領域(ひび割れ方向が長辺の方向となる矩形領域)に1枚の前記強化繊維シートS1を貼付すれば、ひび割れCと略直交する方向に強化繊維(つまり、横糸2)が貼付されることとなり、ひび割れCの拡大を抑制することができる。したがって、図5にて説明したような、複数のシート片S2に切断する作業や、複数のシート片S2を貼付する作業等は不要となり、従来に比べて作業を簡素化できる。また、ひび割れ内にエポキシ樹脂等を注入する場合であっても、1枚のシートS1を貼付するだけで該樹脂が溢れ出ることを簡単に防止することができる。
一方、上述の強化繊維シートS1を用いて布基礎(木造建築物に用いられる、逆T字形や長方形の断面をした基礎のこと)を補強するようにしても良い。そのような布基礎の補強を行うには、上述した強化繊維シート(以下、“第1繊維シート”とする)S1だけでなく、図4に示した強化繊維シート(つまり、長手方向xに配置される縦糸が800MPa以上の引張強度を持つ強化繊維であって該縦糸に略直交するように織り込まれる横糸が800MPa未満の引張強度を持つ繊維であるシート。以下、“第2繊維シート”とする)S21,S22を用いると良い。
布基礎の補強方法は、
(a) 布基礎10の側面(建築物の外側に露出している面であって、図3(b)
に符号10aで示す面。以下、同じ。)であってその上縁10bと下縁10cとの間に前記第1繊維シートS1を貼付する工程と、
(b) 該布基礎10の側面10aであってその上縁10bに沿うように(該上縁10bに近接した位置に)前記第2繊維シートS21を貼付する工程と、
(c) 該上縁10bに沿うように貼付した第2繊維シートS21とは別の第2繊維シートS22を、布基礎10の側面10aであってその下縁10cに沿うように(該下縁10cに近接した位置に)貼付する工程と、
からなることを特徴とする。この場合、前記第1繊維シートS1及び前記第2繊維シートS21,S22を貼付する方向が重要であって、前記第1繊維シートS1は、その横糸2の延設方向が垂直方向(図3(a) のy方向である上下方向)に略一致するように貼付する必要があり、前記第2繊維シートS21,S22は、その縦糸21の延設方向xが布基礎10の長手方向xに略一致するように貼付する必要がある。この方法によれば、繊維シートを切ったり貼ったりする回数を必要最小限に抑えることができ、比較的簡単な作業で布基礎を適切に補強することができる。
なお、上述の(a)
(b) (c) の工程は、必ずしもその順序で実施する必要はなく、(b) →(c) →(a) の順に実施しても、他の順で実施するようにしても良い。また、上述の(a)
(b) (c) の工程では、各繊維シートS1,S21,S22を布基礎10の側面10aに貼付することとなっているが、この場合の“貼付”とは、
・ 側面10aに直接貼付する場合
・ 他の繊維シート(側面10aに直接貼付されている他の繊維シート)に重ねて貼付する場合(つまり、第1繊維シートS1と第2繊維シートS21,S22とが積層されている状態)
の両方を含む概念である。
本実施例においては、図2に示すように、コンクリート構造物の表面であって、ひび割れCが発生している部分に上述の第1繊維シートS1を貼付した。その際、シートS1の長手方向x(つまり、低強度の繊維である縦糸1の延設方向)がひび割れCの方向と略一致するようにした。
この方法によれば、第1繊維シートS1における高強度の繊維(つまり、横糸2)は、ひびが入った方向と略直交する方向(引張応力σが作用する方向)に貼付されることとなり、ひび割れCの拡大を抑制することができる。その場合、1枚の第1繊維シート片S1を切り取って貼り付けるだけで良いので、図5にて説明したような、複数のシート片S2に切断する作業や、複数のシート片S2を貼付する作業等は不要となり、従来に比べて補修作業を簡素化できる。また、ひび割れの内部にエポキシ樹脂等を注入する場合であっても、1枚のシートS1を貼付するだけで該樹脂が溢れ出ることを簡単に防止することができる。
本実施例においては、図1に示す第1繊維シートS1と、図4に示す第2繊維シートS21,S22とを用いて、布基礎の補強を行った。以下、補強の工程について説明する。
まず、布基礎10の側面10a(ほぼ全面)には、上縁10bから下縁10cに掛けて上述の第1繊維シートS1を貼付した。その場合、第1繊維シートS1の長手方向x(つまり、低強度の繊維である縦糸1の延設方向)が布基礎10の長手方向xと略一致するようにした。次に、布基礎10の上縁10bに沿うように、前記第1繊維シートS1の表面に上述の第2繊維シートS21を貼付し、さらに、布基礎10の下縁10cに沿うように、前記第1繊維シートS1の表面に別の第2繊維シートS22を貼付した。これらの第2繊維シートS21,S22は、その長手方向x(つまり、高強度の繊維である縦糸21の延設方向)が布基礎10の長手方向xと略一致するようにした。なお、各繊維シートS1,S21,S22の貼付には、公知の樹脂接着剤を使用した。
木造建築物の布基礎には、主に、その建築物自体の自重が静的な圧縮荷重として作用しているが、地盤が弱かったり地震が起こったりした場合には、曲げモーメント等が作用して、上縁部分や下縁部分に水平方向(x方向)の引張応力が作用したり、上縁10bから下縁10cに掛けてせん断力による斜め方向の引張応力が作用したりすることがある。第1繊維シートS1及び第2繊維シートS21,S22を図3(a) (b) に示すように貼付した場合には、それらの繊維シートS1,S21,S22がそれぞれの引張応力を受けることとなり、布基礎10を補強することが可能となる。
図1は、本発明に係る強化繊維シート(つまり、縦糸が800MPa未満の引張強度を持つ繊維であり、横糸が800MPa以上の引張強度を持つ強化繊維であるシート)の構造の一例を示す平面図である。 図2は、図1に示した強化繊維シートを用いてひび割れの補修を行った様子の一例を示す平面図である。 図3(a) は、図1に示した強化繊維シート等を用いて布基礎の補強を行った様子の一例を示す側面図であり、図3(b)は、その断面図である。 図4は、従来の強化繊維シート(つまり、縦糸が800MPa以上の引張強度を持つ繊維であり、横糸が800MPa未満の引張強度を持つ強化繊維であるシート)の構造の一例を示す平面図である。 図5は、図4に示す強化繊維シートを用いてひび割れの補修を行った様子の一例を示す平面図である。
符号の説明
1 縦糸
2 横糸
10 布基礎
10a 側面
10b 上縁
10c 下縁
21 縦糸
22 横糸
S1 強化繊維シート(第1繊維シート)
S2,S21,S22 強化繊維シート(第2繊維シート)

Claims (3)

  1. 長手方向に配置される縦糸が、800MPa未満の引張強度を持つ繊維であり、
    該縦糸に略直交するように織り込まれる横糸が、800MPa以上の引張強度を持つ強化繊維である、
    ことを特徴とする強化繊維シート。
  2. 幅が1.1メートル以下である、
    ことを特徴とする請求項1に記載の強化繊維シート。
  3. 請求項1又は2に記載の強化繊維シートである第1繊維シートを、その横糸の延設方向が垂直方向に略一致するように、布基礎の側面であってその上縁と下縁との間に貼付する工程と、
    長手方向に配置される縦糸が800MPa以上の引張強度を持つ強化繊維であって該縦糸に略直交するように織り込まれる横糸が800MPa未満の引張強度を持つ繊維である第2繊維シートを、該縦糸の延設方向が布基礎の長手方向に略一致するように、布基礎の側面であってその上縁に沿うように貼付する工程と、
    該上縁に沿うように貼付した第2繊維シートとは別の第2繊維シートを、縦糸の延設方向が布基礎の長手方向に略一致するように、布基礎の側面であってその下縁に沿うように貼付する工程と、
    からなる布基礎の補強方法。
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