JP2009138524A - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents

内燃機関の排気浄化装置 Download PDF

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郁夫 保田
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Abstract

【課題】NOx触媒の排気前端部での硫黄成分の堆積による同NOx触媒の劣化である前端S被毒劣化の劣化度合いが大きいことに基づいてS被毒回復制御のリッチ時間を長くしようとするとき、それを適切なタイミングで行えるようにする。
【解決手段】NOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いに関しては、内燃機関の使用開始時を起点としたNOx触媒に流入する硫黄成分の総量である総S流入量ΣSUが大となるほど大きくなる。このことを考慮して総S流入量ΣSUに基づき上記劣化度合いを推定する。具体的には、予め実験等により求められた総S流入量ΣSUと上記劣化度合いとの関係を規定したマップを参照して、総S流入量ΣSUに基づき上記劣化度合いの大きさを推定する。これにより、推定される劣化度合いの大きさを正確なものとし、その大きさに基づいてS被毒回復制御のリッチ時間を長くすることを適切なタイミングで行うことができる。
【選択図】図4

Description

本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関する。
自動車用エンジンなどの内燃機関に適用される排気浄化装置として、同機関の排気系に触媒コンバータを設けるとともに、その触媒コンバータに窒素酸化物(NOx)に関する排気浄化を行う吸蔵還元型のNOx触媒を担持したものが知られている。
こうした排気浄化装置では、NOx触媒への硫黄酸化物等の硫黄成分の吸蔵によって同NOx触媒のNOx吸蔵能力が低下する。このため、この種の排気浄化装置の多くは、硫黄成分の吸蔵によって低下したNOx触媒のNOx吸蔵能力を回復すべく、NOx触媒から硫黄成分を放出させるS被毒回復制御を定期的に行うようにしている(特許文献1参照)。上記S被毒回復制御においては、NOx触媒への未燃燃料成分の供給を通じて、同NOx触媒を600〜700℃程度まで昇温するとともに、その高温下で触媒周りの雰囲気をリッチ燃焼時の状態(以下、リッチ燃焼雰囲気という)とすることで、NOx触媒からの硫黄成分の放出及びその還元を促進し、上記NOx吸蔵能力の回復を図るようにしている。
ただし、NOx触媒周りを継続してリッチ燃焼雰囲気化していると、同NOx触媒での未燃燃料成分の酸化による発熱に起因して触媒床温が過上昇するおそれがある。このため、S被毒回復制御では、NOx触媒への未燃燃料成分の供給を通じて同NOx触媒周りの雰囲気をリッチ燃焼雰囲気とするリッチ時間と、上記NOx触媒への未燃燃料成分の供給を停止して同NOx触媒周りの雰囲気をリーン燃焼時の状態とするリーン時間とを交互に繰り返すことが行われる。このようにリッチ時間とリーン時間とを交互に繰り返すことにより、触媒床温を過上昇させることなく同触媒床温の平均値を600〜700℃程度の高温に維持することができ、リッチ時間中に触媒周りの雰囲気がリッチ燃焼雰囲気とされてNOx触媒からの硫黄成分を放出することができるようになる。
ところで、S被毒回復制御中におけるリッチ時間でのNOx触媒の触媒床温の上昇態様に関しては、同NOx触媒の新品時に最も急になり、同NOx触媒の熱劣化等による劣化度合いが大きくなるほど緩やかなものとなる。これは、NOx触媒での未燃燃料成分の酸化による発熱は、NOx触媒の新品時に最も多くなり、NOx触媒での熱劣化等による劣化度合いの増大に伴い少なくなるためである。従って、S被毒回復制御でのリッチ時間は、NOx触媒の触媒床温の過上昇を確実に抑制することを意図して、NOx触媒の新品時における触媒床温の上昇態様に合わせた長さ、言い換えればNOx触媒の新品時におけるリッチ時間中に触媒床温の過上昇を生じさせない程度に短い値に設定される。
ただし、上述したようにリッチ時間の長さを設定すると、NOx触媒の熱劣化等による劣化度合いが大きくなって同リッチ時間中におけるNOx触媒の発熱が少なくなったとき、リッチ時間が触媒床温を適切に上昇させるうえで短すぎる値となり、そのリッチ時間中での触媒床温の適切な上昇を実現することが困難になる。その結果、リッチ時間とリーン時間との繰り返しが行われる際における触媒床温の平均値が低下し、S被毒回復制御でのNOx触媒からの硫黄成分の放出を効果的に行うことが困難になる。
このことに対処するため、特許文献1では、S被毒回復制御でリッチ時間とリーン時間とが繰り返される際におけるNOx触媒の下流側の排気温度の最大値と最小値との差をNOx触媒の劣化度合いに対応する値として求め、その差が小であって上記劣化度合いが大である旨判断されたときS被毒回復制御でのリッチ時間を長くするようにしている。このようにNOx触媒の劣化度合いが大であるときにS被毒回復制御のリッチ時間を長くすれば、上述した問題の発生を回避することができるようになる。
特開2005−105871公報(段落[0073]、図5)
ところで、NOx触媒(触媒コンバータ)においては、その排気上流側の端部である前端部に、S被毒回復制御では放出しきれない硫黄成分が残留して堆積することが確認されている。このようにNOx触媒の前端部に硫黄成分が堆積するのは、以下の[1]〜[3]に示す理由によると推測される。
[1]NOx触媒の前端部は排気の流入する部分であることから、排気中の硫黄成分が吸蔵されやすい。
[2]NOx触媒においては、未燃燃料成分の酸化により発生した熱が排気の流れに伴って排気上流側(前端側)から排気下流側(後端側)に向けて伝播するため、前端部での温度上昇が生じにくくなって硫黄成分が放出されにくくなる。
[3]NOx触媒の前端部は、排気の流入する部分である関係から、S被毒回復制御におけるリッチ時間とリーン時間とを繰り返す際に、それに合わせて追従性よく温度上昇及び温度低下する。その結果、NOx触媒の前端部では、S被毒回復制御中、硫黄成分の放出可能な温度以上となる期間が短くなる。
NOx触媒の前端部に放出しきれない硫黄成分が堆積すると、その部分ではNOx触媒の吸蔵が行われなくなることから、同NOx触媒の前端部で硫黄成分の堆積による触媒能力の劣化(以下、前端S被毒劣化という)が生じる。こうした前端S被毒劣化がNOx触媒に生じたときには、同NOx触媒の前端部での未燃燃料成分の酸化による発熱が少なくなるため、S被毒回復制御を実行したときに上記前端部の温度が硫黄成分の放出可能な温度以上になる期間が短くなり、同前端部での硫黄成分の効果的な放出を行うことが困難になる。更に、NOx触媒の前端部での硫黄成分の効果的な放出を行うことが困難になることに起因して、同前端部に硫黄成分が一層堆積しやすくなり、上記前端S被毒劣化が進むことになる。
NOx触媒における前端S被毒劣化の劣化度合いが大きいとき、S被毒回復制御によりNOx触媒の前端部から硫黄成分を効果的に放出して上記前端S被毒劣化の進行を抑制するためには、同S被毒回復制御のリッチ時間を長くしてNOx触媒の前端部が硫黄成分を放出可能な温度以上になる期間を長くすることが有効である。
しかし、上記前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさによって、S被毒回復制御でリッチ時間とリーン時間とが繰り返される際におけるNOx触媒の下流側の排気温度の最大値と最小値との差が変化するかどうかは不明である。このため、上記前端S被毒劣化の劣化度合いが大きくなったとき、S被毒回復制御でリッチ時間とリーン時間とが繰り返される際におけるNOx触媒の下流側の排気温度の最大値と最小値との差が必ずしも小さくなるとは限らない。従って、特許文献1のNOx触媒の劣化度合いの推定方法、すなわちS被毒回復制御でリッチ時間とリーン時間とが繰り返される際におけるNOx触媒の下流側の排気温度の最大値と最小値との差に基づきNOx触媒の劣化度合いを推定するという方法では、上記前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさを正確に推定できない可能性がある。
そして、上記前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさを正確に推定できない場合、前端S被毒劣化の劣化度合いが大きい旨の判断が不正確になり、ひいてはS被毒回復制御のリッチ時間を長くすることを適切なタイミングで行うこともできなくなり、次のような不具合を招くことになる。すなわち、上記前端S被毒劣化の劣化度合いが小さいうちにS被毒回復制御のリッチ時間を長くしてしまった場合、それにより触媒床温の過上昇が生じてNOx触媒の熱劣化を招くおそれがある。また、上記前端S被毒劣化の劣化度合いが過度に大きくなってからしかS被毒回復制御のリッチ時間を長くすることが行われない場合、NOx触媒の前端部からの硫黄成分の放出を効果的に行えず、同前端部に更に多くの硫黄成分が堆積して前端S被毒劣化の劣化度合いが一層大きくなるおそれがある。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、NOx触媒の排気前端部での硫黄成分の堆積による同NOx触媒の劣化である前端S被毒劣化の劣化度合いが大きいことに基づいてS被毒回復制御のリッチ時間を長くしようとするとき、それを適切なタイミングで行うことのできる内燃機関の排気浄化装置を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、内燃機関の排気系に設けられた吸蔵還元型のNOx触媒と、そのNOx触媒に吸蔵された硫黄成分を放出させるためのS被毒回復制御を実行する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記S被毒回復制御として、前記NOx触媒への未燃燃料成分の供給を通じて同NOx触媒周りの雰囲気をリッチ燃焼時の状態とするリッチ時間と、前記NOx触媒への未燃燃料成分の供給を停止して同NOx触媒周りの雰囲気をリーン燃焼時の状態とするリーン時間とを交互に繰り返し、それによって触媒床温を目標床温へと上昇させるとともに前記リッチ時間中に前記NOx触媒からの硫黄成分の放出を図るものである内燃機関の排気浄化装置において、前記NOx触媒の排気前端部での硫黄成分の堆積による同NOx触媒の劣化である前端S被毒劣化の劣化度合いを内燃機関の運転履歴に基づき推定する推定手段を備え、前記S被毒回復制御での前記リッチ時間の初期値は、前記NOx触媒の新品時に適した値となるよう設定されており、前記制御手段は、前記NOx触媒における前端S被毒劣化の劣化度合いが大きい旨の判断に基づき、前記S被毒回復制御における前記リッチ時間を前記初期値よりも長くするものとした。
NOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いに関しては、内燃機関の総運転時間が長くなるほど大きくなるという傾向を有する。上記構成によれば、こうした傾向を考慮して内燃機関の運転履歴に基づき前端S被毒劣化の劣化度合いを推定することが可能なため、その推定される前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさを正確なものとすることができる。従って、前端S被毒劣化の劣化度合いが大きい旨の判断を適切に行うことができ、その旨の判断に基づいてS被毒回復制御のリッチ時間を長くすることを適切なタイミングで行うことができる。その結果、前端S被毒劣化の劣化度合いが小さいうちにリッチ時間を長くしてしまうことによるNOx触媒の熱劣化や、前端S被毒劣化の劣化度合いが過度に大きくなってからしかリッチ時間が長くされないことによる前端S被毒劣化の進行を抑制することができるようになる。
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明において、前記制御手段は、前記推定手段によって推定される前記前端S被毒劣化の劣化度合いが大きいほど、前記S被毒回復制御における前記リッチ時間を長くすることを要旨とした。
NOx触媒における前端S被毒劣化の劣化度合いが大きくなるほど、NOx触媒の排気前端部からの硫黄成分の放出が行われにくくなるとともに、同排気前端部の温度が上昇しにくくなる。しかし、上記構成によれば、前端S被毒劣化の劣化度合いが大きくなるほど、S被毒回復制御のリッチ時間が長くされてNOx触媒の前端部が硫黄成分を放出可能な温度以上になる期間が長くされる。従って、NOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさに応じた適切な長さにリッチ時間を定めることができ、リッチ時間の長すぎによるNOx触媒の熱劣化の抑制と、リッチ時間の短すぎによる前端S被毒劣化の進行の抑制とを高い次元で両立させることができる。
請求項3記載の発明では、請求項1又は2記載の発明において、前記推定手段は、前記NOx触媒に流入する硫黄成分の総量に対応する総S流入量相当値を求め、その総S流入量相当値が大きくなるほど前記NOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いが大きいと推定することを要旨とした。
NOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いに関しては、内燃機関の総運転時間が長くなり、NOx触媒に流入する硫黄成分の総量に対応する総S流入量相当値が大となるほど、大きくなるという傾向を有する。上記構成によれば、総S流入量相当値が大きくなるほどNOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いが大きいと推定されるため、その推定された前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさを正確なものとすることができる。
請求項4記載の発明では、請求項1又は2発明においては、前記推定手段は、内燃機関の運転時間の総時間に対応する総運転時間相当値を求め、その総運転時間相当値が大きくなるほど前記NOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いが大きいと推定することを要旨とした。
NOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いに関しては、内燃機関の総運転時間が長くなるほど、大きくなるという傾向を有する。上記構成によれば、内燃機関の運転時間の総時間に対応する総運転時間相当値が大きくなるほどNOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いが大きいと推定されるため、その推定された前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさを正確なものとすることができる。
請求項5記載の発明では、請求項1又は2記載の発明において、前記推定手段は、前記NOx触媒が高温となった時間の累積値である高温時間累積値を算出し、その高温時間累積値が大きくなるほど前記NOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いが大きいと推定することを要旨とした。
NOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いに関しては、内燃機関の総運転時間が長くなるほど、大きくなるという傾向を有する。そして、NOx触媒が高温となった時間の累積値である高温時間累積値が大きくなるということは、内燃機関の総運転時間が長くなってS被毒回復制御の実行回数が多くなっていることを意味する。上記構成によれば、高温時間累積値が大きくなるほど前記NOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いが大きいと推定されるため、その推定された前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさを正確なものとすることができる。
以下、本発明を自動車用の内燃機関に適用した一実施形態を図1〜図7に従って説明する。
図1は、本実施形態の排気浄化装置が適用される内燃機関10の構成を示している。この内燃機関10は、コモンレール方式の燃料噴射装置を備えるディーゼル機関となっている。
内燃機関10の吸気系を構成する吸気通路12、及び同機関10の排気系を構成する排気通路14はそれぞれ、内燃機関10における各気筒の燃焼室13に接続されている。そして、吸気通路12にはエアフローメータ16が設けられ、排気通路14には上流側から順にNOx触媒コンバータ25、PMフィルタ26、及び酸化触媒コンバータ27が設けられている。
NOx触媒コンバータ25には、吸蔵還元型のNOx触媒が担持されている。このNOx触媒は、排気の酸素濃度が高いときに排気中のNOxを吸蔵し、排気の酸素濃度が低いときにその吸蔵したNOxを放出する。またNOx触媒は、上記NOx放出時に、還元剤となる未燃燃料成分がその周囲に十分存在していれば、その放出されたNOxを還元して浄化する。
PMフィルタ26は、多孔質材料によって形成されており、排気中の煤を主成分とする微粒子(PM)が捕集されるようになっている。このPMフィルタ26にも、上記NOx触媒コンバータ25と同様に、吸蔵還元型のNOx触媒が担持されており、排気中のNOxの浄化が行われるようになっている。またこのNOx触媒によって触発される反応により、上記捕集されたPMが燃焼(酸化)されて除去されるようにもなっている。
酸化触媒コンバータ27には、酸化触媒が担持されている。この酸化触媒は、排気中の炭化水素(HC)や一酸化炭素(CO)を酸化して浄化する。
なお排気通路14の上記PMフィルタ26の上流側及び下流側には、NOx触媒コンバータ25の下流側の排気の温度を検出する温度センサ28、及びPMフィルタ26通過後の排気の温度を検出する温度センサ29がそれぞれ配設されている。また排気通路14には、上記PMフィルタ26の排気上流側とその排気下流側との差圧を検出する差圧センサ30が配設されている。更に排気通路14の上記NOx触媒コンバータ25の排気上流側、及び上記PMフィルタ26と上記酸化触媒コンバータ27との間には、空燃比を検出する2つの空燃比センサ31、32がそれぞれ配設されている。
内燃機関10の各気筒の燃焼室13には、同燃焼室13内での燃焼に供される燃料を噴射するインジェクタ40がそれぞれ配設されている。各気筒のインジェクタ40は、高圧燃料供給管41を介してコモンレール42に接続されている。コモンレール42には、燃料ポンプ43を通じて高圧燃料が供給される。コモンレール42内の高圧燃料の圧力は、同コモンレール42に取り付けられたレール圧センサ44によって検出されるようになっている。更に燃料ポンプ43からは、低圧燃料供給管45を通じて、低圧燃料が添加弁46に供給されるようになっている。
こうした内燃機関10の各種制御は、電子制御装置50により実施されている。電子制御装置50は、機関制御に係る各種演算処理を実行するCPU、その制御に必要なプログラムやデータの記憶されたROM、CPUの演算結果等が一時記憶されるRAM、外部との間で信号を入・出力するための入・出力ポート等を備えて構成されている。
電子制御装置50の入力ポートには、上述した各センサに加え、機関回転速度を検出するNEセンサ51、アクセル操作量を検出するアクセルセンサ52、内燃機関10の吸気温度を検出する吸気温センサ54、及び、同機関10の冷却水温を検出する水温センサ55等が接続されている。また電子制御装置50の出力ポートには、インジェクタ40、燃料ポンプ43、及び添加弁46等の駆動回路が接続されている。
電子制御装置50は、上記各センサから入力される検出信号より把握される機関運転状態に応じて、上記出力ポートに接続された各機器類の駆動回路に指令信号を出力する。こうして上記インジェクタ40からの噴射燃料に関する燃料噴射量、燃料噴射時期、及び燃料噴射圧の制御、及び上記添加弁46からの燃料添加の制御等の各種制御が電子制御装置50により実施されている。
以上の如く構成された本実施形態では、NOx触媒への硫黄酸化物(SOx)など硫黄成分の吸蔵によって低下した当該NOx触媒のNOx吸蔵能力を回復するためのS被毒回復制御が実施される。こうしたS被毒回復制御においては、機関運転状態に基づき算出されるNOx触媒における硫黄成分の吸蔵量であるS被毒量Sが許容値以上になることに基づき実行開始される。
このS被毒回復制御では、NOx触媒への未燃燃料成分の供給を通じて同触媒を例えば600〜700℃程度まで昇温するとともに、その高温下でNOx触媒周りの雰囲気をリッチ燃焼時の状態(以下、リッチ燃焼雰囲気という)とすることでNOx触媒からの硫黄成分の放出及びその還元を促進し、NOx触媒におけるNOx吸蔵能力の回復が図られる。なお、S被毒回復制御でのNOx触媒への未燃燃料成分の供給は、添加弁46からの排気に対する燃料添加等によって行われる。
そして、S被毒回復制御の実行を通じてS被毒量Sが上記許容値よりも小さい所定値(例えば「0」)まで減少すると、そのS被毒回復制御は終了される。
次に、S被毒回復制御の開始・終了に用いられるS被毒量Sの詳細な算出手順について説明する。
S被毒量Sは、例えばインジェクタ40からの燃料噴射毎に、前回の燃料噴射から今回の燃料噴射までにNOx触媒に吸蔵された硫黄成分の量であるS流入量SU、及び、前回の燃料噴射から今回の燃料噴射までにNOx触媒から放出された硫黄成分の量であるS放出量SDに基づき、以下の式(1)を用いて算出される。
Si =Si-1 +SU−SD …(1)
Si :今回のS被毒量
Si-1 :前回のS被毒量
SU :S流入量
SD :S放出量
式(1)のS流入量SUは、インジェクタ40からの燃料噴射前に算出される燃料噴射量の指令値Qfin 、すなわちインジェクタ40からの一回の燃料噴射で噴射される燃料量の指令値を用いて算出される。具体的には、上記指令値Qfin に対し燃料の硫黄濃度の標準値である硫黄濃度Nを「100」で除算した値(N/100)を乗算することにより、インジェクタ40からの一回の燃料噴射で噴射される燃料に含まれる硫黄成分の量が求められる。そして、この硫黄成分に量に対応した値となる上記乗算後の値「Qfin ・(N/100)」に対し、硫黄量というパラメータをS被毒量というパラメータに変換するための係数Kを乗算することで、上記S流入量SUが算出される。なお、上記係数Kは、空燃比センサ31,32によって検出される空燃比と、温度センサ28,29からの検出信号を用いて推定される触媒床温とに基づきマップを参照して求められるものである。こうして求められた係数Kは、上記空燃比が理論空燃比またはリッチであるときには「0」となり、上記空燃比が理論空燃比よりもリーン側の値であるときにはリーンになるほど且つ触媒床温が高くなるほど大きくなる。
式(1)のS放出量SDは、上記空燃火及び触媒床温に基づき、そのときの触媒床温でNOx触媒周りの雰囲気を上記空燃比に対応する状態としたときにNOx触媒から放出される理論上の硫黄成分の量として算出される。こうして算出されたS放出量SDに関しては、上記空燃比が理論空燃比よりもリッチ側の値であるときには触媒床温が高く且つリッチになるほど「0」よりも大きい値になり、上記空燃比が理論空燃比よりもリーン側の値であるときには「0」に維持される。
従って、式(1)を用いて算出されたS被毒量S(今回のS被毒量Si )は、通常の機関運転時には燃料の消費に伴い上記S流入量SUの分だけ徐々に増加してゆき、S被毒回復制御中には上記S放出量SDの分だけ減少してゆく。このことから、S被毒量Sは、通常の機関運転での燃料消費に伴うNOx触媒への硫黄成分の流入、及びS被毒回復制御中でのNOx触媒からの硫黄成分の放出に伴い、増減する値ということになる。
次に、S被毒量Sに基づき開始・終了されるS被毒回復制御について、図2のタイムチャートを参照して詳しく説明する。
S被毒回復制御では、添加弁46からの燃料添加によるNOx触媒への未燃燃料成分の供給を通じて、NOx触媒の触媒床温の平均値を例えば700℃まで段階的に高くされる目標床温に向けて昇温するとともに、その高温下でNOx触媒周りをリッチ燃焼雰囲気化することが行われる。
上記添加弁46からの燃料添加は、図2(b)に示される添加パルスに従って添加弁46を駆動することによって行われる。ただし、添加弁46からの燃料添加によりNOx触媒周りを継続してリッチ燃焼雰囲気化していると、NOx触媒での未燃燃料成分の酸化による発熱に起因して触媒床温が過上昇するおそれがある。このため、S被毒回復制御では、添加弁46からの燃料添加を停止してNOx触媒周りの雰囲気をリーン燃焼時の状態とするリーン時間と、添加弁46からの燃料添加を行ってNOx触媒周りの雰囲気をリッチ燃焼時の状態(リッチ燃料雰囲気)とするリッチ時間とを交互に繰り返すことが行われる。
より具体的には、上記リーン時間としての第1リーン時間(図2のT1〜T2)が経過するまでは添加弁46からの燃料添加が停止され、その後にリッチ時間(T2〜T3)に移行すると添加弁46からの燃料添加が行われる。更に、リッチ時間(T2〜T3)が経過すると、上記リーン時間として第2リーン時間(T3〜T4)に移行し、同時間中は添加弁46からの燃料添加が停止される。S被毒回復制御では、これら第1リーン時間、リッチ時間、及び第2リーン時間を一周期としてそれら時間が繰り返されることにより、リッチ時間(T2〜T3)とリーン時間(T1〜T2、T3〜T4)とが繰り返されることとなる。これにより、触媒床温を過上昇させることなく同触媒温度の平均値を600〜700℃程度の高温に維持することができ、リッチ時間中にNOx触媒周りの雰囲気が図2(c)に示されるようにリッチ燃焼雰囲気化されて同触媒からの硫黄成分の放出が図られる。
ここで、S被毒回復制御における上記第1リーン時間、リッチ時間、及び第2リーン時間の設定態様について詳しく説明する。
S被毒回復制御では、上記第1リーン時間の開始時点(T1)において、機関負荷及び機関回転速度に基づきリッチ時間が設定される。こうして設定されるリッチ時間に関しては、内燃機関10の排気温度が高くなる運転領域ほど触媒床温が高くなりやすいことに関係して、同排気温度の上昇に伴って短くされる。また、リッチ時間に関しては、内燃機関10の排気流量が少なくなる運転領域ほどNOx触媒から下流側への熱の放出量が少なくなって触媒床温が高くなりやすくなることに関係して、同排気流量の減少に伴って長くされる。なお、機関負荷は例えばインジェクタ40からの燃料噴射量に基づき求められ、機関回転速度はNEセンサ51からの検出信号に基づき求められる。
上記リッチ時間の設定後、その設定されたリッチ時間のほか、後述する要求添加流量Qt(mm3/sec)、必要添加総量Qrich(mm3 )、及び一周期時間Tint(sec )に基づいて第1リーン時間の設定が行われる。
上記要求添加流量Qtは、添加弁46から継続的に燃料を添加する仮定のもと触媒床温を目標床温とするために必要とされる単位時間当たりの燃料添加量であって、目標床温、内燃機関10の排気温度、及び同機関10の排気流量等に基づき所定のタイミング毎(例えば16ms毎)に算出される。なお、内燃機関10の排気温度に関しては温度センサ28,29の検出信号に基づき求めることが可能であり、同機関10の排気流量に関してはエアフローメータ16の検出信号から求めることが可能である。
上記必要添加総量Qrichは、設定されたリッチ時間中にNOx触媒周りの雰囲気を目標とするリッチ燃焼雰囲気とするために必要な燃料添加量の総量であって、内燃機関10の吸入空気量(新気量)、インジェクタ40からの燃料噴射量、及び上記リッチ時間に基づき算出される。なお、内燃機関の吸入空気量はエアフローメータ16の検出信号に基づき求められ、インジェクタ40からの燃料噴射量は同インジェクタ40からの燃料噴射を行う際の燃料噴射量の指令値Qfin に基づき求められる。
上記一周期時間Tintは、第1リーン時間の開始時点から、同第1リーン時間、リッチ時間、及び第2リーン時間を経て、同第2リーン時間の終了する時点までの時間に相当する値であって、上記必要添加総量Qrichを上記要求添加流量Qtで除算することにより得られる。従って、一周期時間Tintに関しては、添加弁46からの燃料添加の流量が要求添加流量Qtとなるような同添加弁46からの継続的な燃料添加によって、必要添加総量Qrichを得るために必要な時間と等しい時間ということになる。
第1リーン時間は、一周期時間Tint及びリッチ時間に基づき、次の計算式「(第1リーン時間)={(一周期時間Tint)−(リッチ時間)}・(3/5) …(2)」を用いて設定される。なお、この式(2)の「3/5」という項は、一周期時間Tintにおけるリッチ時間以外の時間のうち、どの程度の時間を第1リーン時間として割り当てるかを定めるためのものである。この例では、一周期時間Tintにおけるリッチ時間以外の時間のうちの「3/5」が第1リーン時間として割り当てられることとなる。なお、この「3/5」という値は、「0」以上かつ「1」以下の他の値に変更することも可能である。また、第1リーン時間は、上記式(2)から明らかなように、リッチ時間が長い値に設定されるほど長くなるように可変設定される値ということになる。
第1リーン時間の開始後においては、所定のタイミング(この例では16ms)毎に算出される要求添加流量Qt(mm3/sec)に対し同タイミング間の時間を乗算した値を累積し、その累積によって得られた値である要求添加量ΣQr(mm3 )が、上記要求添加流量Qtの算出タイミング毎に算出される。こうして算出される要求添加量ΣQrは、第1リーン時間の開始時点(T1)を基点として、時間経過に伴い例えば図2(a)に二点鎖線で示されるように増加してゆく。
また、第1リーン時間の開始から終了時点(T2)までは添加弁46からの燃料添加は停止される。第1リーン時間が経過してリッチ時間が開始されると、図2(b)に示される添加パルスに基づき添加弁46からの燃料添加が行われる。この添加パルスに基づく添加弁46からの燃料添加が行われる際の添加燃料の単位時間当たりの流量に関しては、算出される要求添加流量Qtと比較して大きなものとなるようにされる。すなわち、こうした添加弁46からの添加燃料の単位時間当たりの流量が得られるよう、リッチ時間における上記添加パルスの長さや間隔等が同リッチ時間の長さ等に基づき可変設定される。
リッチ時間の開始後においては、リッチ時間の開始時点(T2)から16msが経過する毎に同16ms間での添加弁46からの燃料添加量を算出し、その算出した値を累積することにより、リッチ時間中に添加弁46から実際に添加された燃料の総量である実添加量ΣQ(mm3 )が算出される。こうして算出される実添加量ΣQは、リッチ時間の開始時点(T2)を基点として、時間経過に伴い例えば図2(a)に実線で示されるように増加してゆく。
そして、リッチ時間の終了時点(T3)で添加弁46からの燃料添加が停止され、それに伴い実添加量ΣQ(図2(a)の実線)が増加しなくなる。一方、要求添加量ΣQrは、時間経過とともに図2(a)に二点鎖線で示されるように増加してゆくものの、その増加はリッチ時間中における実添加量ΣQの増加よりも緩やかなものとなる。これは、リッチ時間中に添加弁46から添加される燃料の単位時間当たりの流量が要求添加流量Qtよりも大きくされているためである。従って、リッチ時間の開始時点(T2)では実添加量ΣQ(=0)が要求添加量ΣQrよりも小さくなっていても、リッチ時間の途中で実添加量ΣQが要求添加量ΣQrを越えて大きくなり、リッチ時間の終了時点(T3)では実添加量ΣQが要求添加量ΣQrに対しある程度大きな値となる。
リッチ時間の終了後においては、上述したように添加弁46からの燃料添加の停止に伴い実添加量ΣQが増加しなくなるのに対し、要求添加量ΣQrは徐々に増加してゆき、いずれは実添加量ΣQと一致する。このように要求添加量ΣQrが実添加量ΣQと一致するということは、一周期時間Tintにおいて触媒床温を目標床温とするうえで添加弁46からの燃料添加及びその休止が過不足なく行われたことを意味する。従って、リッチ時間が終了した時点(T3)から要求添加量ΣQrが実添加量ΣQと一致した時点(T4)までの時間が、第2リーン時間として設定されていることになる。この第2リーン時間に関しては、リッチ時間が長くなって同時間の終了時点での実添加量ΣQが多くなる関係から、リッチ時間が長い値に設定されるほど長くなるように可変設定される値ということになる。
第2リーン時間が終了した時点(T4)、言い換えれば要求添加量ΣQrが実添加量ΣQと一致した時点では、一周期時間Tintにおいて触媒床温を目標床温とするうえで添加弁46からの燃料添加及びその休止が過不足なく行われた状態となることから、要求添加量ΣQr及び実添加量ΣQがそれぞれリセットされて初期値「0」とされる。
こうして第1リーン時間、リッチ時間、及び第2リーン時間の一周期が終了し、その一周期の終了後に次の一周期が開始されることとなる。こうして第1リーン時間、リッチ時間、及び第2リーン時間の一周期が繰り返される。なお、上記一周期が終了した旨の判断、言い換えれば第2リーン時間が終了した旨の判断に関しては、例えば、リッチ時間の終了後であり且つ実添加量ΣQが要求添加量ΣQr以下になる、という条件の成立に基づいて行われる。
そして、上記一周期が繰り返されることにより、触媒床温の平均値が目標床温(600〜700℃)まで上昇されてNOx触媒が高温下におかれるとともに、リッチ時間中に添加弁46からの燃料添加を通じてNOx触媒周りがリッチ燃焼雰囲気化される。これにより、リッチ時間中にNOx触媒からの硫黄成分の放出及びその還元が促進され、NOx触媒における硫黄成分の吸蔵量が低減されて同NOx触媒のNOx吸蔵能力の回復が図られる。そして、NOx触媒における硫黄成分の吸蔵量である上記S被毒量Sが上述した所定値(この例では「0」)まで低下すると、S被毒回復制御が終了される。
ところで、式(1)を用いて算出(推定)されるNOx触媒のS被毒量Sに関しては、S被毒回復制御の実行中におけるNOx触媒からの硫黄成分の放出量であるS放出量SDを考慮して算出されてはいる。ただし、そのS放出量SDが必ずしもNOx触媒からの実際の硫黄成分の放出量に対応したものになるとは限らない。これは、上記S放出量SDがS被毒回復制御中にNOx触媒から放出される理論上の硫黄成分の量として算出されるものでしかなく、そのS放出量SDに含まれる硫黄成分のうち実際にはS被毒回復制御ではNOx触媒から放出させることができずに同触媒に残留した状態になるものが存在するためである。なお、上述したNOx触媒での硫黄成分の残留は、[発明が解決しようとする課題]の欄に記載した[1]〜[3]の理由により、NOx触媒(正確にはNOx触媒コンバータ25)の排気前端部で生じることとなる。
このように、S被毒量Sの算出に用いられるS放出量SDに関しては、NOx触媒の前端部に残留した状態になる硫黄成分の分だけ、S被毒回復制御中におけるNOx触媒からの硫黄成分の実際の放出量に対しずれた値となる可能性がある。より詳しくは、上記S放出量SDがS被毒回復制御中におけるNOx触媒からの硫黄成分の実際の放出量に対し低下側にずれた値となる可能性がある。こうしたずれが生じた場合、S放出量SDの上記実際の放出量に対する低下側のずれに起因して、そのS放出量SDを用いて算出されるS被毒量Sも実際のS被毒量よりも少なくなって両者の値にずれが生じることとなる。
算出(推定)されたS被毒量Sが実際のS被毒量に対し低下側にずれると、S被毒回復制御の開始後、S被毒量Sが「0」まで減少してS被毒回復制御が終了されたとき、実際のS被毒量は「0」まで減少しておらず、NOx触媒の前端部に硫黄成分がある程度残ったままになる。そして、NOx触媒の使用期間が長くなって同触媒の前端部に常に残留した状態になる硫黄成分が多くなるほど、算出されるS被毒量Sと実際のS被毒量とのずれが広がってゆき、S被毒回復制御の終了時にNOx触媒の前端部に残ったままになる硫黄成分の量が増えてゆく。
NOx触媒の前端部に放出しきれない硫黄成分が堆積すると、その部分ではNOx触媒の吸蔵が行われなくなることから、同NOx触媒の前端部で硫黄成分の堆積による触媒能力の劣化(以下、前端S被毒劣化という)が生じる。こうした前端S被毒劣化がNOx触媒に生じたときには、同NOx触媒の前端部での未燃燃料成分の酸化による発熱が少なくなるため、S被毒回復制御を実行したときに上記前端部の温度が硫黄成分の放出可能な温度以上になる期間が短くなり、同前端部での硫黄成分の効果的な放出を行うことが困難になる。更に、NOx触媒の前端部での硫黄成分の効果的な放出を行うことが困難になることに起因して、同前端部に硫黄成分が一層堆積しやすくなり、上記前端S被毒劣化が進むことになる。
図3は、S被毒回復制御で第1リーン時間、リッチ時間、及び第2リーン時間の一周期が繰り返されたときのNOx触媒周りの雰囲気の状態の変化(図3(a))、及び同NOx触媒の前端部における温度の変化態様(図3(b))を示すタイムチャートである。また、図3(b)において、実線はNOx触媒の新品時における同触媒の前端部の温度の変化態様を示しており、二点鎖線はNOx触媒に前端S被毒劣化が生じたときの同触媒の前端部の温度の変化態様を示している。
同図から分かるように、NOx触媒の前端部の温度に関しては、S被毒回復制御におけるリッチ時間で上昇し、第2リーン時間及び第1リーン時間で低下することから、リッチ時間を長くするほど同時間中の最大値が高くなる。なお、リッチ時間を長くしたときには、それに合わせて第2リーン時間及び第1リーン時間も長くなるため、NOx触媒の前端部の温度の平均値が過度に上昇することはない。この実施形態のリッチ時間に関しては、NOx触媒が新品であるときにリッチ時間中に同NOx触媒の前端部の温度の最大値を許容上限値未満とすることの可能な程度に短い長さとなるよう、機関負荷及び機関回転速度に基づき可変設定される。
このようにリッチ時間を可変設定することにより、NOx触媒の新品時における同触媒の前端部の温度は、S被毒回復制御の実行中に図3(b)に実線で示されるように推移して許容上限値以上となることのないようにされる。ただし、NOx触媒における前端S被毒劣化の劣化度合いが大きくなると、上述した理由によりNOx触媒の前端部の温度が図3(b)の実線で示される状態から二点鎖線で示される状態へと低下する。このため、上記前端部の温度が硫黄成分の放出可能な温度temp1以上になる期間が短くなり、同前端部での硫黄成分の効果的な放出を行うことが困難になるため、NOx触媒での前端S被毒劣化が更に進むようになる。
NOx触媒における前端S被毒劣化の劣化度合いが大きいとき、S被毒回復制御によりNOx触媒の前端部から硫黄成分を効果的に放出して上記前端S被毒劣化の進行を抑制するためには、同S被毒回復制御のリッチ時間を長くしてNOx触媒の前端部の温度が上記温度temp1以上になる期間を長くすることが有効である。具体的には、図4(a)に示されるようにリッチ時間を長くすると、NOx触媒の前端部の温度が上昇する期間(リッチ時間)が長くなるとともに第2リーン時間及び第1リーン時間も長くなるため、同前端部の温度の平均値を過度に上昇させることなく、同温度が図4(b)に実線で示されるように大きな振幅をもって推移するようになる。その結果、NOx触媒の前端部の温度が上記温度temp1以上になる期間が長くなり、その期間中に同前端部から硫黄成分を効果的に放出し、NOx触媒で前端S被毒劣化が進行することを抑制できるようになる。なお、図4(b)の二点鎖線は、前端S被毒劣化の劣化度合いが大きい状態でリッチ時間を長くしない場合のNOx触媒の前端部の温度の変化(図3(b)の二点鎖線の変化と同じ)を示している。
ただし、前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさを正確に推定し、その劣化度合いが大きい旨の判断を適切なタイミングで行って同判断に基づきリッチ時間を適切なタイミングで長くしないと、次のような不具合を招くことになる。すなわち、上記前端S被毒劣化の劣化度合いが小さいうちにS被毒回復制御のリッチ時間を長くしてしまった場合、それにより触媒床温の過上昇が生じてNOx触媒の熱劣化を招くおそれがある。また、上記前端S被毒劣化の劣化度合いが過度に大きくなってからしかS被毒回復制御のリッチ時間を長くすることが行われない場合、NOx触媒の前端部からの硫黄成分の放出を効果的に行えず、同前端部に更に多くの硫黄成分が堆積して前端S被毒劣化の劣化度合いが一層大きくなるおそれがある。
そこで本実施形態では、内燃機関10の運転履歴に基づきNOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いを推定することにより、推定された劣化度合いを正確なものとして同劣化が大きい旨の判断を正確に行い、その旨の判断に基づきリッチ時間を長くすることを適切なタイミングで行えるようにする。
次に、S被毒回復制御での上記リッチ時間を長くする手順について、リッチ時間可変ルーチンを示す図5のフローチャートを参照して説明する。このリッチ時間可変ルーチンは、電子制御装置50を通じて、例えば16ms毎などの所定時間毎の時間割り込みにて周期的に実行される。
同ルーチンにおいては、S被毒回復制御中であるとき(S101:YES)、機関負荷及び機関回転速度に基づき、図6のマップを参照してリッチ時間の算出が行われる(S102)。こうして算出されるリッチ時間に関しては、NOx触媒が新品であるときにS被毒回復制御でのリッチ時間中に同NOx触媒の前端部の温度の最大値が許容上限値未満となる値とされる。すなわち、算出されるリッチ時間がこのような値となるよう上記マップが予め実験等に基づき定められている。算出されたリッチ時間は、内燃機関10の排気温度の高くなる運転領域ほど短くされるとともに、同機関10の排気流量の少なくなる運転領域ほど長くされる。
リッチ時間が算出された後、NOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いが内燃機関10の運転履歴に基づき推定される(S102)。この実施形態では、上記運転履歴として、内燃機関10の使用開始時を起点としたNOx触媒に流入する硫黄成分の総量である総S流入量ΣSUが用いられる。同総S流入量ΣSUは、式(1)で用いられるS流入量SUをその算出タイミング毎(燃料噴射タイミング毎)に累積することによって求められる値である。そして、総S流入量ΣSUに基づき、マップを参照して前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさが推定される。このマップとしては、総S流入量ΣSUと前端S被毒劣化の劣化度合いとの関係を規定したものとして、予め実験等により定められたものが用いられる。従って、総S流入量ΣSUに基づき上記マップを参照して推定された前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさは正確なものとなる。
前端S被毒劣化の劣化度合いが推定された後、その劣化度合いの大きさが予め定められた判定値以上であるか否かが判断される(S104)。そして、ここで肯定判定であれば前端S被毒劣化の劣化度合いが大きい旨判断され、リッチ時間を補正するための補正係数Krの算出が行われる(S105)。具体的には、前端S被毒劣化の劣化度合いが大きくなるほど、補正係数Krが「1.0」よりも大きい値となるように算出される。一方、ステップS104で否定判定がなされた場合には、補正係数Krが初期値である「1.0」に設定される(S106)。従って、上記補正係数Krは、前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさに応じて、図7に示されるように変化することとなる。
上記のように補正係数Krが算出された後、同補正係数Krを用いてリッチ時間の補正が行われる(S107)。すなわち、補正係数KrをステップS102で算出されたリッチ時間に乗算し、その乗算後の値を新たなリッチ時間として設定する。これにより、前端S被毒劣化の劣化度合いが大きい旨判断された場合には、その劣化度合いが大きくなるほどリッチ時間が長くなるように補正される。一方、前端S被毒劣化の劣化度合いが大きい旨の判断がなされていない場合には、補正係数Krが「1.0」とされるため、上記補正後のリッチ時間はステップS102で算出されたリッチ時間と等しい値になる。
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)NOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いに関しては、内燃機関10の総運転時間が長くなり、同機関10の使用開始時を起点としたNOx触媒に流入する硫黄成分の総量である総S流入量ΣSUが大となるほど、大きくなるという傾向を有する。こうした傾向を考慮して総S流入量ΣSUに基づき前端S被毒劣化の劣化度合いを推定している。具体的には、予め実験等により求められた総S流入量ΣSUと前端S被毒劣化の劣化度合いとの関係を規定したマップを参照して、総S流入量ΣSUに基づき前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさを推定している。これにより、総S流入量ΣSUが大となるほど前端S被毒劣化の劣化度合いが大きいと推定され、その推定される前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさを正確なものとすることができる。従って、前端S被毒劣化の劣化度合いが大きい旨の判断を適切に行うことができ、その旨の判断に基づいてS被毒回復制御のリッチ時間を長くすることを適切なタイミングで行うことができる。その結果、前端S被毒劣化の劣化度合いが小さいうちにリッチ時間を長くしてしまうことによるNOx触媒の熱劣化や、前端S被毒劣化の劣化度合いが過度に大きくなってからしかリッチ時間が長くされないことによる前端S被毒劣化の進行を抑制することができる。
(2)NOx触媒における前端S被毒劣化の劣化度合いが大きくなるほど、NOx触媒の排気前端部からの硫黄成分の放出が行われにくくなるとともに、同排気前端部の温度が上昇しにくくなる。しかし、前端S被毒劣化の劣化度合いが大きくなるほど、S被毒回復制御のリッチ時間が長くされてNOx触媒の前端部が硫黄成分を放出可能な温度(温度temp1)以上になる期間が長くされる。従って、NOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさに応じた適切な長さにリッチ時間を定めることができ、リッチ時間の長すぎによるNOx触媒の熱劣化の抑制と、リッチ時間の短すぎによる前端S被毒劣化の進行の抑制とを高い次元で両立させることができる。
なお、上記実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・内燃機関10の使用開始時点からの燃料噴射量の指令値Qfin を燃料噴射タイミング毎に累積した値である燃料噴射量累積値を、上記総S流入量ΣSUに相当する値である総S流入量相当値として、同総S流入量ΣSUの代わりに用いてもよい。
・前端S被毒劣化の劣化度合いを推定するために用いられる内燃機関10の運転履歴として、総S流入量ΣSUを用いる代わりに内燃機関10の総運転時間に相当する値(以下、総運転時間相当値という)を用いてもよい。なお、NOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いに関しては、内燃機関10の総運転時間相当値が長くなるほど、大きくなるという傾向を有する。こうした総運転時間相当値としては、内燃機関10の運転時間の累積値や内燃機関10の搭載される自動車の走行距離を用いることが可能である。この場合、予め実験等により求められた総運転時間相当値(運転時間の累積値、走行距離等)と前端S被毒劣化の劣化度合いとの関係を規定したマップを参照して、総運転時間相当値に基づき前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさが推定される。これにより、総運転時間相当値が大となるほど前端S被毒劣化の劣化度合いが大きいと推定され、その推定される前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさを正確なものとすることができる。
・前端S被毒劣化の劣化度合いを推定するために用いられる内燃機関10の運転履歴として、総S流入量ΣSUを用いる代わりにNOx触媒が高温となった時間の累積値である高温時間累積値を用いてもよい。なお、NOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いに関しては、内燃機関10の総運転時間が長くなるほど、大きくなるという傾向を有する。そして、上記高温時間累積値が大きくなるということは、内燃機関の総運転時間が長くなってS被毒回復制御の実行回数が多くなっていることを意味する。この場合、予め実験等により求められた高温時間累積値と前端S被毒劣化の劣化度合いとの関係を規定したマップを参照して、高温時間累積値に基づき前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさが推定される。これにより、高温時間累積値が大となるほど前端S被毒劣化の劣化度合いが大きいと推定され、その推定される前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさを正確なものとすることができる。
・S被毒回復制御のリッチ時間を長くすることを補正係数Krによる補正を通じて実現する代わりに、リッチ時間を算出するためのマップを前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさに応じて複数用意しておき、同劣化度合いの大きさに対応したマップを切り換えて用いることにより実現するにようにしてもよい。
・NOx触媒コンバータ25の前端部に温度センサを設けて同前端部の温度を検出し、その検出された温度が許容上限値となるよう同温度に基づきリッチ時間をフィードバック補正してもよい。
・NOx触媒への未燃燃料成分の供給を排気行程でのインジェクタ40からの燃料噴射等によって行うようにしてもよい。
本実施形態の排気浄化装置が適用される内燃機関全体を示す略図。 (a)〜(c)は、S被毒回復制御中における燃料添加量の実値と要求値との推移、添加弁を駆動するための添加パルスの変化、及びNOx触媒周りの雰囲気の変化を示すタイムチャート。 (a)及び(b)は、S被毒回復制御におけるNOx触媒周りの雰囲気の変化、及び、NOx触媒の前端部の温度の変化を示すタイムチャート。 (a)及び(b)は、S被毒回復制御のリッチ時間を長くしたときにおける同制御でのNOx触媒周りの雰囲気の変化、及びNOx触媒の前端部の温度の変化を示すタイムチャート。 リッチ時間を長くする手順を示すフローチャート。 リッチ時間を算出するためのマップ。 前端S被毒劣化の劣化度合いの大きさの変化に対する補正係数Krの推移を示すグラフ。
符号の説明
10…内燃機関、12…吸気通路、13…燃焼室、14…排気通路、16…エアフローメータ、25…NOx触媒コンバータ、26…PMフィルタ、27…酸化触媒コンバータ、28,29…温度センサ、30…差圧センサ、31,32…空燃比センサ、40…インジェクタ、41…高圧燃料供給管、42…コモンレール、43…燃料ポンプ、44…レール圧センサ、45…低圧燃料供給管、46…添加弁、50…電子制御装置(制御手段、推定手段)、51…NEセンサ、52…アクセルセンサ、54…吸気温センサ、55…水温センサ。

Claims (5)

  1. 内燃機関の排気系に設けられた吸蔵還元型のNOx触媒と、そのNOx触媒に吸蔵された硫黄成分を放出させるためのS被毒回復制御を実行する制御手段とを備え、前記制御手段は、前記S被毒回復制御として、前記NOx触媒への未燃燃料成分の供給を通じて同NOx触媒周りの雰囲気をリッチ燃焼時の状態とするリッチ時間と、前記NOx触媒への未燃燃料成分の供給を停止して同NOx触媒周りの雰囲気をリーン燃焼時の状態とするリーン時間とを交互に繰り返し、それによって触媒床温を目標床温へと上昇させるとともに前記リッチ時間中に前記NOx触媒からの硫黄成分の放出を図るものである内燃機関の排気浄化装置において、
    前記NOx触媒の排気前端部での硫黄成分の堆積による同NOx触媒の劣化である前端S被毒劣化の劣化度合いを内燃機関の運転履歴に基づき推定する推定手段を備え、
    前記S被毒回復制御での前記リッチ時間の初期値は、前記NOx触媒の新品時に適した値となるよう設定されており、
    前記制御手段は、前記NOx触媒における前端S被毒劣化の劣化度合いが大きい旨の判断に基づき、前記S被毒回復制御における前記リッチ時間を前記初期値よりも長くするものである
    ことを特徴とする内燃機関の排気浄化装置。
  2. 前記制御手段は、前記推定手段によって推定される前記前端S被毒劣化の劣化度合いが大きいほど、前記S被毒回復制御における前記リッチ時間を長くする
    請求項1記載の内燃機関の排気浄化装置。
  3. 前記推定手段は、前記NOx触媒に流入する硫黄成分の総量に対応する総S流入量相当値を求め、その総S流入量相当値が大きくなるほど前記NOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いが大きいと推定する
    請求項1又は2記載の内燃機関の排気浄化装置。
  4. 前記推定手段は、内燃機関の運転時間の総時間に対応する総運転時間相当値を求め、その総運転時間相当値が大きくなるほど前記NOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いが大きいと推定する
    請求項1又は2記載の内燃機関の排気浄化装置。
  5. 前記推定手段は、前記NOx触媒が高温となった時間の累積値である高温時間累積値を算出し、その高温時間累積値が大きくなるほど前記NOx触媒の前端S被毒劣化の劣化度合いが大きいと推定する
    請求項1又は2記載の内燃機関の排気浄化装置。
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