JP2009138293A - 漂白アルカリ化学パルプの製造方法 - Google Patents

漂白アルカリ化学パルプの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】リグノセルロース物質を原料とし、アルカリ蒸解工程後に、元素状塩素及び次亜塩素酸共に用いない漂白工程を有する漂白アルカリ化学パルプの製造方法であって、アルカリ蒸解工程後に、酸処理工程、漂白工程、をこの順に有する漂白アルカリ化学パルプの製造方法に関し、前記酸処理工程におけるパルプ紙力の維持、HexA基の除去率向上、カッパー価の低減を図ることができる、漂白アルカリ化学パルプの製造方法を提供する。
【解決手段】リグノセルロース物質を原料とし、アルカリ蒸解工程後に、元素状塩素及び次亜塩素酸共に用いない漂白工程を有する漂白アルカリ化学パルプの製造方法であって、アルカリ蒸解工程後に、酸処理工程、漂白工程、をこの順に有し、前記漂白工程前段の酸処理工程において、酸の添加と併せて、過酸を添加する。
【選択図】なし

Description

本発明は、リグノセルロース物質を原料とし、アルカリ蒸解工程後に、元素状塩素及び次亜塩素酸共に用いない漂白工程を有する漂白アルカリ化学パルプの製造方法であって、アルカリ蒸解工程後に、酸処理工程、漂白工程、をこの順に有する漂白アルカリ化学パルプの製造方法に関するものである。
漂白アルカリ化学パルプの製造方法には、ソーダパルプ法やクラフトパルプ法にて、木材チップ等のリグノセルロース物質を苛性ソーダのみ又は苛性ソーダと硫化ソーダの混合の蒸解液で蒸解し、得られたアルカリ化学パルプを、更にアルカリ酸素脱リグニンを行い又は行わず、洗浄精選を行った後、漂白工程を経るのが一般的である。また、ソーダパルプ法はクラフトパルプ法に比べ歩留が低く、パルプの強度が劣り、且つ、蒸解薬品の苛性ソーダの回収率が低い問題を有するため、クラフトパルプ法が現在主流の蒸解法となっている。
アルカリ化学パルプの漂白方法には、主に下記の3方法がある。即ち、従来の塩素漂白方法、近年の無塩素漂白方法(Elemental Chlorine−Free:ECF)及び完全無塩素漂白方法(Totally Chlorine−Free:TCF)である。
塩素漂白では、元素状塩素や次亜塩素酸塩と、二酸化塩素、酸素、過酸化水素、苛性ソーダ等の薬品との組合せによりアルカリ化学パルプを漂白処理するが、塩素漂白法において生成する有機塩素化合物が、環境に悪影響を及ぼす恐れがあり、近年の環境保護の高まりも受け、元素状塩素の使用が避けられている。更に、次亜塩素酸塩を使用する漂白方法においては、次亜塩素酸の使用により発生するクロロホルムが、人体に悪影響を及ぼす懸念もあるため、現在では、塩素と次亜塩素酸塩を含まないECF及びTCFによる漂白方法が主流になっている。
これらECF及びTCFによる漂白方法において使用する薬品は、ECF漂白方法では、二酸化塩素、過酸化水素、オゾン、酸素、苛性ソーダ等が用いられ、TCF漂白方法では、キレート剤、過酸化水素、オゾン、酸素、苛性ソーダ及び過酢酸等が用いられるが、ECF漂白方法による漂白パルプはTCF漂白方法による漂白パルプより白色度が高く、コストも安価であるため、ECF漂白方法の採用が国内では増加している。
アルカリ蒸解過程では、リグノセルロース物質のヘミセルロースであるキシランの側鎖を有する、4−O−メチルグルクロン酸残基が、アルカリ加水分解により脱メトキシールされ、ヘキセンウロン酸(HexA)を生成する(例えば、Jiang,Z−h.,Lierop,B.V.,Berry,R.Hexenuronic acid groups in pulping and bleaching chemistry.Tappi Journal 83(1):167−175(2000)参照。)。HexAの化学構造にはエノールエテール基を有し、特徴として、求電子および求核の攻撃を受けやすいため、ECF漂白方法、TCF漂白方法で使用される二酸化塩素、オゾン等を消費してしまうため、漂白薬品のコストアップの原因になる。また、HexAは二酸化塩素、オゾンとの反応により蓚酸(シュウ酸)を生成し、精選設備においてカルシウムと結合することで蓚酸カルシウムとなり、スケールの問題を発現する。
さらに、特許文献1には、ECF漂白方法において、特に二酸化塩素を用いる漂白方法においては、漂白後のパルプが黄変化する問題を有し、この問題に対して、ECF漂白工程の前工程で、硫酸などによりアルカリ化学パルプの酸処理を行い、黄変化の原因物質と考えられているHexAを分解、除去する方法が開示されている。
一方、アルカリ蒸解過程においては、過蒸解と未蒸解を避けるため、蒸解度合の指標として、カッパー価が広く使用されている。カッパー価とは、25℃の温度と10分間の反応時間の一定条件下で、0.1N過マンガン酸カリウムの100ml添加量の半分が消費されるように、測定パルプのサンプル量を調整する測定方法である。
一般的に、カッパー価は、パルプに含まれるリグニン含有量と相当すると考えられるが、最近では、HexAも過マンガン酸カリウムを消費する事が見出されているため、カッパー価は、リグニンおよびHexAを含めた含有量を示しているといえる。因みに、10μmolのHexAは0.84のカッパー価に相当する(例えば、Li,J.,Gellerstedt,G.The contribution to kappa number from hexeneuronic acid groups in pulp xylan.Carbohydrate Research 302:213−218(1997)参照。)。
カッパー価に関して、例えば、特許文献2には、次の酸処理の条件と効果を記載している。
(1)酸処理の条件は、温度:85〜150℃、pH:2〜5、反応時間:5分〜10時間。
(2)酸処理によりパルプのカッパー価が3〜6単位減少し、HexA基が少なくとも50%除去される。
前記特許文献2に記載の条件とその効果については、下記業界誌にも記載されている。例として、フィンランドのUPM−キミネ社ヴィサフォレスト工場では、酸処理の温度86℃、pH3.5、滞留時間7時間の条件を使用した場合、カッパー価が3.5ポイント低下し、パルプ紙力が15%減少した(例えば、Siltala,M.,Winberg,K.,Alenius,M.,Henricson,K.,Lonnberg,B.,Keskinen,N.Mill scale application for selective hydrolysis of hexenuronic acid groups in TCFz bleaching of kraft pulp.In Proceedings of 1998 International Pulp Bleaching Conference,Book 1,pp.279−287参照。)。また、ブラジルのリオクラビン工場では、温度90℃、pH3.5、滞留時間140分の酸処理条件下では、パルプのカッパー価が3.5ポイント減少し、同時にパルプの紙力が10ポイント/1ポイントカッパー価下がった(例えば、Ratnieks,E.,Ventura,J.W.,Mensch,M.R.,Zanchin,R.A.Acid stage improves production in eucalyptus fiber line.Canada Pulp & Paper 102(12):T345−T348(2001)参照。)。
これら、紙・パルプ製造工場の実績から、酸処理を行ったパルプは、パルプ紙力が低下することが認められている。
このパルプ紙力低下の課題を改善する方策として、例えば、特許文献3には、酸処理工程において、硫酸の添加の他に、亜硫酸塩を添加することによりパルプの紙力が維持し、且つ、カッパー価を減少させる技術が開示されている。また、例えば、特許文献1は、酸処理工程での硫酸の添加の他に二酸化塩素発生システムからなる副産物質であるセスキ芒硝を添加する技術が開示されている。
然しながら、上記の特許文献に記載されている添加剤である、亜硫酸塩及びセスキ芒硝は、共に還元剤であり、弱酸でも薬品が以下の反応1にて分解する問題を有する。
(化1)
Na2SO3+2H+→2Na++H2O+SO2(反応1)
さらに、これらの還元剤の飽和溶液のpHは弱アルカリ性であるため酸処理工程で使用すると、酸処理の酸性溶液のpHが上がり、また、反応1により、酸の濃度が下がるため、特許文献1又は特許文献3に開示された技術により、酸処理を行ったパルプのカッパー価の減少、パルプ紙力の維持、HexA基の除去等という向上効果が得られるかどうかは疑問に思われる。即ち、酸処理を行ったパルプのカッパー価の減少、パルプ紙力の維持、HexA基の除去率向上等の課題がまだ残っている。
特開2004−339628号公報 特許第3534412号公報 特開2003−213582号公報
本発明が解決しようとする主たる課題は、リグノセルロース物質を原料とし、アルカリ蒸解工程後に、元素状塩素及び次亜塩素酸共に用いない漂白工程を有する漂白アルカリ化学パルプの製造方法であって、アルカリ蒸解工程後に、酸処理工程、漂白工程、をこの順に有する漂白アルカリ化学パルプの製造方法に関し、前記酸処理工程におけるパルプ紙力の維持、HexA基の除去率向上、カッパー価の低減を図ることができる、漂白アルカリ化学パルプの製造方法を提供することにある。
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
リグノセルロース物質を原料とし、アルカリ蒸解工程後に、元素状塩素及び次亜塩素酸共に用いない漂白工程を有する漂白アルカリ化学パルプの製造方法であって、
前記アルカリ蒸解工程後に、酸処理工程、前記漂白工程、をこの順に有し、
前記漂白工程前段の酸処理工程において、酸の添加と併せて、過酸を添加する、
ことを特徴とする漂白アルカリ化学パルプの製造方法。
〔請求項2記載の発明〕
前記酸処理工程が以下の処理条件で成される、請求項1記載の漂白アルカリ化学パルプの製造方法。
1)前記過酸として、一過硫酸塩化合物からなるカロ酸(Caro‘s acid)を用いる。
2)このカロ酸の添加量を、前記リグノセルロース物質の絶乾量(質量基準)に対して、0.05〜1.0%とする。
〔請求項3記載の発明〕
前記酸処理工程が、更に以下の処理条件で成される、請求項2記載の漂白アルカリ化学パルプの製造方法。
1)pHを、1.0〜5.0とする。
2)温度を、60〜100℃とする。
3)処理時間を1〜5時間とする。
〔請求項4記載の発明〕
前記リグノセルロース物質が、広葉樹チップ、針葉樹チップ及び非木材物質のいずれか一種以上からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の漂白アルカリ化学パルプの製造方法。
本発明によると、リグノセルロース物質を原料とし、アルカリ蒸解工程後に、元素状塩素及び次亜塩素酸共に用いない漂白工程を有する漂白アルカリ化学パルプの製造方法であって、アルカリ蒸解工程後に、酸処理工程、漂白工程、をこの順に有する漂白アルカリ化学パルプの製造方法に関し、前記酸処理工程におけるパルプ紙力の維持、HexA基の除去率アップ、カッパー価低減の改善が図られる漂白アルカリ化学パルプの製造方法となる。
本発明は、リグノセルロース物質を原料とし、アルカリ蒸解工程後に、元素状塩素及び次亜塩素酸共に用いない漂白工程を有する漂白アルカリ化学パルプの製造方法であって、アルカリ蒸解工程後に、酸処理工程、漂白工程、をこの順に有する漂白アルカリ化学パルプの製造方法に関し、前記酸処理工程において、好ましくはpH1.0〜5.0、より好ましくはpH2.0〜4.0、好ましくは温度60〜100℃、より好ましくは温度70〜95℃、好ましくは反応時間1〜5時間、より好ましくは1.5〜3.5時間、大気圧の酸性水溶液にリグノセルロース物質の絶乾量に対する0.05〜1.0%の過酸、好ましくは一過硫酸塩化合物のカロ酸、より好ましくは0.1〜0.5%の一過硫酸塩化合物のカロ酸を添加すると、カロ酸等を添加しない酸処理よりカッパー価が0〜23.1%、HexA基が18.5〜37.7%更に低下し、且つ、パルプの強度品質が同等で酸処理が改良された漂白アルカリ化学パルプが得られる。一過硫酸塩化合物のカロ酸の他の過酸としては、過蟻酸、過酢酸等を例示することができ、これらの過酸でも同様な効果が得られる。
本発明において、酸処理工程のpHが1.0未満では、設備上困難であり、pHが5.0を超えるとHexA基の除去率アップ、カッパー価低減の効果が見られない。
また、酸処理工程の温度が60℃未満では、HexA基の除去率アップ、カッパー価低減の効果が見られない。温度が100℃を超えると圧力容器の設備が必要になり、設備の保全と操業の安全性の問題が生じる。
更に、酸処理工程の反応時間が1時間未満では、HexA基の除去率アップ、カッパー価低減の効果が見られない、反応時間が5時間を越えてもHexA基の除去率、カッパー価低減は頭打ちになり、費用対効果が見られない。
さらには、過酸のリグノセルロース物質の絶乾量に対する添加量が、0.05%未満では、HexA基の除去率アップ、カッパー価低減の効果が見られない。添加量が1.0%を超えるとHexA基の除去率、カッパー価低減は頭打ちになり、費用対効果が見られない。
以下、本願発明をさらに詳しく説明する。
HexA基は酸性環境において非常に不安定である。HexA基を分解するには、酸処理が一般的な公知手段であり、分解物質は、主に2−フロン酸(約90%)、5−フォルミル−2−フロン酸(約10%)及び微量の蟻酸である(例えば、Jiang,Z−h.,Lierop,B.V.,Berry,R.Hexenuronic acid groups in pulping and bleaching chemistry.Tappi Journal 83(1):167−175(2000)参照。)。しかし、酸処理工程はHexA基を完全に分解できないため、よりHexA基の高除去率の改良された酸処理工程が必要となっている。
例えば、オゾンによる漂白工程を初段に有するECF漂白シーケンスにおいて、HexA基はオゾンと反応し、テトラジアルドーズ、テトラウロン酸及び蓚酸の反応物質が生成される。一方、二酸化塩素による漂白工程を初段に有するECF漂白シーケンスの場合では、HexA基が二酸化塩素と反応し、テトラ酸、ペンタ酸、2−クロロ−2−デオキシペンタ酸、3−デオキシ−3,3−ジクロロ−2−オキソヘキサ酸等を生成する(例えば、Vuorinen,T.,Fagerstrom,P.,Rasanen,E.,Vikkula,A.Selective hydrolysis of hexenuronic acid groups opens new possibilities for development of bleaching processes.In Proceedings of 1997 International Society of Wood and Pulping Chemistry Conference,pp.M4−1〜M4−4参照。)。即ち、酸処理工程後のHexA基が残存すると、ECF漂白工程で用いられる高価なオゾン、二酸化塩素を消費し、漂白薬品費の上昇を招くため、更なるHexA基の除去率を向上させる酸処理工程が必要である。
本形態においては、リグノセルロース物質の種類、アルカリ蒸解の方法と条件、ECF・TCF漂白シーケンスの組合せ、アルカリ酸素脱リグニン有無等いずれにもかかわらず、ECF・TCF漂白工程に移行する前の酸処理工程で、過酸、特には一過硫酸塩化合物のカロ酸をリグノセルロース物質の絶乾量に対し0.05〜1.0%、より好ましくは0.1〜0.5%添加することにより、更には、酸処理工程の処理条件として、好ましくはpH1.0〜5.0、より好ましくはpH2.0〜4.0、好ましくは温度60〜100℃、より好ましくは温度70〜95℃、好ましくは反応時間1〜5時間、より好ましくは1.5〜3.5時間で酸処理を行うことで、酸処理後のパルプのカッパー価を0〜23.1%、HexA基を18.5〜37.7%更に向上させることができることを見出したものである。 本発明者等の知見では、HexA基と一過硫酸塩化合物のカロ酸との反応は、反応2にて行われると思われる。
(化2)
Figure 2009138293
本形態で使用するリグノセルロース物質としては、木材物質(広葉樹、針葉樹)のほか、非木材物質(ケナフト、わら、バガス、竹等)も使用することができる。そして、アルカリ蒸解法は、例えば、従来のキンベンショナル、改良されたソーダパルプ法、クラフトパルプ法等の蒸解法を例示することができる。
また、本形態で採用することができる未晒パルプの製造工程の中のアルカリ酸素脱リグニン工程と洗浄・精選の工程における設備及び操業方法は、従来公知のものを好適に用いることができる。
本形態では、カロ酸としてE.I.du Pont de Memours & Co.の商品であるオキソンを使用しているが、カロ酸は硫酸と過酸化水素の反応からなる生成物質であり、酸処理工程で硫酸が使用された場合、過酸化水素を添加することによりカロ酸が生成され(反応3)、オキソンを使用しなくともカロ酸の添加と同等の効果を得ることができる。なお、本発明者等の知見では、カロ酸を生成するためには、硫酸と過酸化水素のモル比の1:1から1:1/16までが適正な範囲と思われる。
(化3)
2SO4 + H22→H2SO5+H2O(反応3)
〔その他〕
上記記載の本形態の酸処理工程が改良された漂白アルカリ化学パルプの製造方法においては、次のような効果がある。
(1)本発明の酸処理工程が改良された漂白アルカリ化学パルプの製造方法において、例えば、酸処理のpHを1.0〜5.0、温度60℃〜100℃、反応時間を1〜5時間の条件下で酸の添加の他に、リグノセルロース物質の絶乾量に対し0.05〜1.0%の過酸、特には一過硫酸塩化合物のカロ酸を添加することにより、酸処理後のパルプのカッパー価を0〜23.1%、HexA基を18.5〜37.7%更に向上させることができる。
(2)更に、漂白排水のCOD負荷が減少することにより地球環境を保護でき、排水処理薬品の費用も低減可能な効果がある。
(3)酸処理工程の酸排水は塩素根がなく、且つ、リグニン、HexA基の分解物質の有機物質が含まれるため、蒸解工程において生じる黒液に混合して、アルカリ蒸解法の薬品回収工程へ移行することにより、エネルギー源として利用可能であり、環境にも優しい技術となる。
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるのではない。なお、実施例における酸処理は、ポリエチレン袋を用いて行った。
(パルプのサンプル)
アルカリ酸素脱リグニン後の未晒広葉樹クラフトパルプ(LUKPと略)は、実生産現場でLUKPサンプルを採取し、洗浄を行わず、試験を実施するまで5℃の冷蔵庫で保管して実施例に供した(パルプ濃度32%;カッパー価10.3;HexA基50.6mmol/kg)。
(実施例1)
本試験例では、カロ酸としてE.I.du Pont de Memours & Co.のオキソン(一過硫酸塩化合物 = 2 KHSO5・KHSO4・K2SO4)(Sigma & Aldrich 商品番号 22803−6)を使用した。
250g(絶乾量)のLUKPを用意し、イオン交換水で11%濃度スラリ−にパルプを稀釈し、次いで4N硫酸でpHを約2.1になるまでpH調製を行い、10%オキソン溶液を用いてLUKP絶乾量に対するカロ酸に換算した添加量が0.05%になるように添加した後、再度、イオン交換水でパルプ濃度10%のパルプスラリーを調製した(硫酸添加率:2.11%、pH:2.1)。このパルプスラリーを、83℃の恒温槽にて135分間保持し、酸処理した。酸処理後のLUKPをろ過し、イオン交換水(2.5L)で洗浄した。得られたパルプについて、白色度、カッパー価、HexA基の含有量を分析した。
(実施例2〜実施例16)
カロ酸に換算した添加率が0.1%(実施例2〜実施例4、実施例6、実施例11〜実施例16)、0.2%(実施例7)、0.03%(実施例5)、0.3%(実施例8)となるように、10%オキソン溶液を添加し、表1に記載の条件以外は実施例1と同様な作業を行った。
(実施例4、実施例11〜15)
カロ酸に換算した10%オキソン溶液の添加率は0.1%であるが、パルプスラリーのpHを1.2(実施例4)(硫酸添加率:2.94%、pH:1.2)、pHを3.2(実施例11〜13)(硫酸添加率:1.24%、pH:3.2)、pHを4.0(実施例14)(硫酸添加率:1.08%、pH:4.0)、pHを4.8(実施例15)(硫酸添加率:0.34%、pH:4.8)とした。
(比較例)
カロ酸を添加せずにパルプスラリーのpHを2.1(比較例1、比較例4、比較例5)(硫酸添加率:2.11%、pH:2.1)、pHを3.2(比較例2)(硫酸添加率:1.24%、pH:3.2)、あるいはpHを4.0(比較例3)(硫酸添加率:1.08%、pH:4.0)とした。
表1に記載の条件以外は、実施例1と同様な作業を行った。
(パルプ品質の測定方法)
酸処理後LUKPは、「JIS P 8121」記載のカナダ標準濾水度(フリーネス)で未叩解フリーネスを測定し、更に「JIS P 8221−2」記載のPFIミルにより500ml CSFのフリーネスになるまで 叩解を行い、「JIS P 8222」及び「JIS P 8223」記載の方法にて手抄シートを作成し、紙質試験に供した。測定品質項目は、白色度、カッパー価、HexA基、裂断長、伸び、比破裂度、比引裂度とした。
カッパー価:「JIS P 8211」記載の方法にてカッパー価を測定した。
白色度 :「JIS P 8212」記載の方法を基にISO白色度を求めた。
裂断長 :「JIS P 8113」記載の方法にて裂断長を測定した。
比破裂度 :「JIS P 8112」記載の方法を用いて比破裂度として示した。
比引裂度 :「JIS P 8116」記載の方法で比引裂度を測定した。
伸び :「JIS P 8113」記載の方法にて伸びを算出した。
HexA基:次の文献に詳細に記載した方法にてHexA基の測定を行った。
<文献>
Dyer,T.J.,Ragauskas,A.J.,“Examining the impact of process variables on brown−stock kraft pulp”.In:CD−ROM Proceedings of 2003 Tappi Fall Technical Conference.Tappi Press,Atlanta,GA.論文の番号7−1。
結果を表1に示す。
Figure 2009138293
表1に示すように、一定の酸処理温度83℃とpH2.1では、実施例は比較例1よりパルプの白色度が0〜1ポイント高く、カッパー価が16.5〜23.1%低く、HexA基が18.5〜37.7%低減した。同一の酸処理の温度90℃とpH3.2の条件下では、カロ酸の添加率0.1%(実施例11)が無添加(比較例2)に比べ白色度が0.3ポイント高く、カッパー価がほぼ同等であるが、HexA基が20.7%減少した。酸処理の温度97℃とpH4.0の条件下でも同様な結果が得られた。即ち、カロ酸の添加により、酸処理工程におけるパルプ紙力の維持、HexA基の除去率向上、カッパー価の低減を図ることができることが知見される。
温度及びpHが異なる酸処理を行ったパルプをフリーネス500mlCSFになるまで叩解し、裂断長、伸び、比破裂度と比引裂度を測定した。結果を表2に示す。
Figure 2009138293
同一の酸処理の温度とpHの条件下では、実施例6、11、14は、各々の相当の比較例1、2、3に比べ裂断長、伸び、比破裂度、比引裂度全てほぼ同等の結果であり、カロ酸の添加により酸処理工程が改善されることが知見される。
本発明は、リグノセルロース物質を原料とし、アルカリ蒸解工程後に、元素状塩素及び次亜塩素酸共に用いない漂白工程を有する漂白アルカリ化学パルプの製造方法であって、アルカリ蒸解工程後に、酸処理工程、漂白工程、をこの順に有する漂白アルカリ化学パルプの製造方法として、適用可能である。

Claims (4)

  1. リグノセルロース物質を原料とし、アルカリ蒸解工程後に、元素状塩素及び次亜塩素酸共に用いない漂白工程を有する漂白アルカリ化学パルプの製造方法であって、
    前記アルカリ蒸解工程後に、酸処理工程、前記漂白工程、をこの順に有し、
    前記漂白工程前段の酸処理工程において、酸の添加と併せて、過酸を添加する、
    ことを特徴とする漂白アルカリ化学パルプの製造方法。
  2. 前記酸処理工程が以下の処理条件で成される、請求項1記載の漂白アルカリ化学パルプの製造方法。
    1)前記過酸として、一過硫酸塩化合物からなるカロ酸(Caro‘s acid)を用いる。
    2)このカロ酸の添加量を、前記リグノセルロース物質の絶乾量(質量基準)に対して、0.05〜1.0%とする。
  3. 前記酸処理工程が、更に以下の処理条件で成される、請求項2記載の漂白アルカリ化学パルプの製造方法。
    1)pHを、1.0〜5.0とする。
    2)温度を、60〜100℃とする。
    3)処理時間を1〜5時間とする。
  4. 前記リグノセルロース物質が、広葉樹チップ、針葉樹チップ及び非木材物質のいずれか一種以上からなる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の漂白アルカリ化学パルプの製造方法。
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